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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】金属片内蔵合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20221102BHJP
   E04C 2/04 20060101ALN20221102BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
E04C2/04 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018220917
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020083707
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】599093524
【氏名又は名称】旭ビルウォール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】圷 千尋
(72)【発明者】
【氏名】和久井 智
(72)【発明者】
【氏名】伊勢谷 三郎
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/02898(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0079474(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0006939(US,A1)
【文献】特開2007-002434(JP,A)
【文献】特開2005-320214(JP,A)
【文献】特開2009-068539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00 - 29/00
B32B 17/00
E04B 2/72
E04C 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間膜を介して2枚の外側ガラス板の間に配された中間ガラス板と、
該中間ガラス板の側縁から内側に向けて切欠かれた切り欠き部と、
該切り欠き部内に配されている金属片と、
該金属片に形成されて前記中間ガラス板の側縁と直交方向を向いて開口しているボルト孔と、
該ボルト孔を中心として前記中間ガラス板の側縁方向両側に延びる前記金属片の外側側面と、
該外側側面と対向する前記切り欠き部の内側側面と、
該内側側面と前記外側側面とが前記中間ガラス板の側縁と直交方向に対して重なり合っている重なり部とを備え
前記外側側面は、前記中間ガラス板の側縁に対して遠ざかる方向に向けて斜めに形成されていることを特徴とする金属片内蔵合わせガラス。
【請求項2】
前記金属片は、前記中間膜を介して前記2枚の外側ガラス板と接着されていることを特徴とする請求項1に記載の金属片内蔵合わせガラス。
【請求項3】
前記外側ガラス板は、さらに外側にガラス板が配された合わせガラスであることを特徴とする請求項1に記載の金属片内蔵合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間に位置するガラス板に金属片が配設された金属片内蔵合わせガラスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、ガラス板同士が中間膜を介して接着されて形成されている。この合わせガラスは、ガラス板が3枚以上の複数枚であったとしても、それぞれが中間膜を介して接着されていれば合わせガラスと称される。
【0003】
一方で、建物壁面としての役割を持たせたフェースガラスが知られている。このフェースガラスを支持あるいは補強するために、フェースガラスに対して垂直方向に配されたリブガラスが用いられている(例えば特許文献1参照)。上述した合わせガラスがこのリブガラスに用いられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-43456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、リブガラスはフェースガラスに対して垂直方向から配されるので、強度を保持しつつこれらを接続させるには、種々の金属部材を用いた接続構造を採用しなければならない。この接続構造は大変複雑であり、部品点数も増加し、施工の際も手順が増え、生産性に問題がある。特にプレート状の連結部材がリブガラスの側面を覆っていると、見栄えが悪くなってしまう。このことは、見栄えをよくするためのフェースガラスの効果に相反するものである。
【0006】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、リブガラス側面に接続のための部材が配されることなく、フェースガラスとの接続を強固に維持することができ、リブガラスとして用いたときに見栄えのよい金属片内蔵合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、中間膜を介して2枚の外側ガラス板の間に配された中間ガラス板と、該中間ガラス板の側縁から内側に向けて切欠かれた切り欠き部と、該切り欠き部内に配されている金属片と、該金属片に形成されて前記中間ガラス板の側縁と直交方向を向いて開口しているボルト孔と、該ボルト孔を中心として前記中間ガラス板の側縁方向両側に延びる前記金属片の外側側面と、該外側側面と対向する前記切り欠き部の内側側面と、該内側側面と前記外側側面とが前記中間ガラス板の側縁と直交方向に対して重なり合っている重なり部とを備えたことを特徴とする金属片内蔵合わせガラスを提供する。
【0008】
好ましくは、前記金属片は、前記中間膜を介して前記2枚の外側ガラス板と接着されている。
【0009】
好ましくは、前記外側ガラス板は、さらに外側にガラス板が配された合わせガラスである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属片側面の一部である外側側面と、切り欠き部側面の一部である内側側面とが中間ガラス板の側縁と直交方向に対して重なり合っている重なり部が形成されているので、ボルト孔にボルトが挿通されて金属片が外側方向に引っ張られたとしても、重なり部により金属片が外側に抜けてしまうことを防止できる。したがって、このような金属片内蔵合わせガラスをフェースガラスに対するリブガラスとして用いた場合には、これらの接続を強固に維持することができる。このように金属片にボルトを挿通するのみでフェースガラスとの強固な接続を実現できるので、リブガラス側面に接続のための部材が配されることなく、リブガラスとして用いたときに見栄えがよくなる。
【0011】
また、金属片が中間膜を介して2枚の外側ガラス板と接着されているので、金属片は重なり部に加え、中間膜による接着によっても切り欠き部内に確実に保持される。このため、重なり部の長さを短く設定することができるので、金属片の大きさを小さくすることができる。これにより、合わせガラス全体としての意匠性が向上する。また、このように重なり部を設けることで、中間膜が劣化して接着性能がなくなってきたとしても、金属片は確実に切り欠き部内に保持される。
【0012】
また、外側ガラス板の外側にさらにガラス板を配し、これらを中間膜を介した合わせガラスとすることで、さらに全体として強度の高い金属片内蔵合わせガラスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る金属片内蔵合わせガラスの概略斜視図である。
図2】本発明に係る金属片内蔵合わせガラスの金属片近傍の概略平面図である。
図3】本発明に係る金属片内蔵合わせガラスをリブガラスとして用いたときの概略斜視図である。
図4図3の接続部分の概略断面図である。
図5図4の変形例を示す概略断面図である。
図6】金属片の変形例を示す概略図である。
図7】金属片の変形例を示す概略図である。
図8】金属片の変形例を示す概略図である。
図9】金属片の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、本発明に係る金属片内蔵合わせガラス1は、複数枚のガラス板からなる。図の例では、2枚の外側ガラス板3a、3bの間に配された中間ガラス板4がそれぞれ中間膜2にて接着されている合計3枚のガラス板からなる金属片内蔵合わせガラス1を示している。なお、以下に示す本発明の効果は、外側ガラス板3a、3bの外側にさらに中間膜2を介してガラス板を配したような合わせガラスにも適用可能である。この場合は、合計5枚のガラス板で金属片内蔵合わせガラス1が構成されることになり、全体としての強度がさらに向上する。さらに強度を高めるために、外側ガラス板3a、3bのさらに外側に、2枚以上のガラス板で形成された合わせガラスを用いてもよい。ガラス板同士を接着する中間膜2としては、アイオノマー樹脂からなるSG膜(セントリグラス中間膜)や、PVB膜、EVA膜を使用することができるが、透明度、耐久性、剛性の点からSG膜が好ましい。
【0015】
中間ガラス板4の側縁4aからは、中間ガラス板4の内側に向けて切り欠き部5が切欠かれて形成されている。この切り欠き部5は、中間ガラス板4を貫通して形成されている。切り欠き部5内には、金属片6が配されている。図の例では、切り欠き部5は中間ガラス板4の側縁4aからこの側縁4aに対して垂直方向に延びる筋状の連通部7と、この連通部7の端部から左右方向(中間ガラス板4の側縁4aに対して略平行方向)に拡径して広がった収容部8で形成されている。金属片6は、この収容部8内に配されている。
【0016】
金属片6には、ボルト孔9が形成されている。このボルト孔9は、金属片6が切り欠き部5内に収容された状態で、中間ガラス板4の側縁と直交方向を向いて開口している。ボルト孔9にはボルト10が螺合され、金属片6を介して金属片内蔵合わせガラス1と他の部材との接続に使用される(図2では説明の便宜上ボルト10を記載)。図の例では、ボルト孔9に螺合されたボルト10が連通部7に沿って配されるようにボルト孔9が開口している。
【0017】
金属片6は側面を有し、この側面の一部として、ボルト孔9を中心として中間ガラス板4の側縁4a方向両側に延びる外側側面11を有している。切り欠き部5は内側面を有し、この内側面の一部として、外側側面11と対向している内側側面12を有している。この内側側面12は外側側面11と対向しているので、内側側面12と外側側面11とは中間ガラス板4の側縁4aと直交方向に対して重なり合っていることになる。この重なった部分は重なり部13として形成されている。すなわち、金属片6は中間ガラス板4の側縁4a方向に対して移動しようとしても、外側側面11が内側側面12に引っかかるので、その移動が重なり部13により制限されることになる。
【0018】
このように、金属片6の側面の一部である外側側面11と、切り欠き部5の側面の一部である内側側面12とが中間ガラス板4の側縁4aと直交方向に対して重なり合っている重なり部13が形成されているので、ボルト孔9にボルト10が挿通されて金属片6が外側方向(側縁4a方向)に引っ張られたとしても、重なり部13により外側側面11が内側側面12に引っかかるので、金属片6が切り欠き部5から外側に抜けてしまうことを防止できる。したがって、このような金属片内蔵合わせガラス1をフェースガラスに対するリブガラスとして用いた場合には、これらの接続を強固に維持することができる。このように金属片6にボルト10を挿通するのみでフェースガラスとの強固な接続を実現できるので、リブガラス側面に接続のための部材が配されることなく、リブガラスとして用いたときに見栄えがよくなる。なお、金属片内蔵合わせガラス1はリブガラスのみに利用できるものではなく、例えば階段の踏み板としても利用できる。
【0019】
なお、金属片6を形成する金属材料としては、種々の金属材料を用いることができるが、ガラスの線膨張係数が約8.5~9.0×10-6/℃であることを考慮すると、同じような線膨張係数を有するチタンを用いることが好ましい。線膨張係数が揃っていれば、温度等によりガラスが延びたりしたとき等に追従して同じように延びるため、金属片6と切り欠き部5との位置関係に影響を与えることを抑制できる。ガラスと同じような線膨張係数としては他に鉄もあるが、錆びるという点からやはりチタンが好ましい。
【0020】
金属片6の表面(中間ガラス板4の表裏面側)には、外側ガラス板3a、3bと中間ガラス板4とを接着する中間膜2が配されている。したがって、金属片6もこの中間膜2を介して2枚の外側ガラス板3a、3bと接着されている。このように、金属片6が中間膜2を介して2枚の外側ガラス板3a、3bと接着されているので、金属片6は重なり部13に加え、中間膜2による接着によっても切り欠き部5内に確実に保持される。このため、重なり部13の長さを短く設定することができるので、金属片6の大きさを小さくすることができる。これにより、金属片内蔵合わせガラス1全体としての意匠性が向上する。また、このように重なり部13を設けることで、中間膜2が劣化して接着性能がなくなってきたとしても、金属片6は確実に切り欠き部5内に保持される。なお、金属片6の大きさを小さくすることができることは、金属片6を形成する金属材料について線膨張係数をガラスと揃えなくてもよいことに寄与する。例えばこのような場合はステンレスも使用可能となる。
【0021】
金属片6が切り欠き部5内に配された際、互いが接触して傷つけることを防止するため、金属片6と切り欠き部5との間には緩衝材14が介装される。この緩衝材14としては、中間膜2と同様のSG膜が好適に利用できるが、シリコンやポリカーボネート、あるいはナイロンを使用してもよい。また、ボルト10と切り欠き部5との間にも緩衝材としてのゴム15が配されている。
【0022】
図3に示すように、金属片内蔵合わせガラス1の使用例の一つとして、リブガラスとして用いることができる。このリブガラス(金属片内蔵合わせガラス1)は、建物壁面の役割としてのフェースガラス16を支持あるいは補強するため、フェースガラス16の目地部分24に対して直交して配される。このとき、リブガラスの一端面側(中間ガラス板4の側面4a側)は接続ユニット17を介してフェースガラス16と接続される。図4に示すように、接続ユニット17は、フェースガラス16の外側に配される外側プレート18と、この外側プレート18に対してフェースガラス16を挟んで対向している内側プレート19(図3では省略)とを有している。なお、図の例ではフェースガラス16は2枚のガラス板からなる合わせガラスである。
【0023】
外側プレート18には内側プレート19に向けて延びるボルト20が一体として形成されていて、ボルト20は内側プレート19に対して螺着されている。このため、外側プレート18及び内側プレート19はフェースガラス16を挟持して強固に固定されている。なお、フェースガラス16を傷つけないために、内側プレート19とフェースガラス16との間には緩衝材となるゴム21が配され、外側プレート18とフェースガラス16との間にも緩衝材となるゴム22が配されている。外側プレート18は屋外環境にさらされるため、雨水等の水分流入を防ぐためのシール材23がさらに設けられる。外側プレート18及び内側プレート19はいずれも金属製である。上述したボルト10は、内側プレート19と一体として形成されていて、ボルト孔9に螺入されている。このような構造により、リブガラスは強固にフェースガラス16に接続される。そして、リブガラスは接続部分にて何らの部材にも覆われていないので見栄えがよい。
【0024】
このとき、図5に示すように、内側プレート19の両端部を内側方向に屈曲させて屈曲部25を設けてもよい。この屈曲部25にてリブガラス(金属片内蔵合わせガラス1)の端部を挟持してもよい。これにより、さらに強固にリブガラスをフェースガラス16に固定できる。なお、図3図5の例はフェースガラス16を外側プレート18及び内側プレート19で挟み込む、いわゆるMPG工法で形成されたものを示したが、本発明の特徴はあくまで金属片6を合わせガラスに内蔵させた点であり、本発明の金属片内蔵合わせガラス1をフェースガラス16へ取り付ける際は上記MPG工法の他、SSG工法(内側に接続具を配してシール材で接続する工法)やその他の取付工法にも適用することができる。
【0025】
図6図9は金属片6の変形例を示している。金属片6の変形に伴い、切り欠き部5の形状もそれぞれこれに追従して変形している。図6では、金属片6は平面視で略矩形形状を有している。図7では図6の矩形形状の金属片6の角をさらに丸めた形状としている。これらの金属片6は、切り欠き部5の収容部8に収容され、ボルト10は連通部7に沿って延びている。
【0026】
一方で図8では金属片6は平面視にて、側縁4a側が短い略台形形状を有している。このように外側側面11が斜めであったとしても、側縁4aに対して直交方向では内側側面12と重なって重なり部13が形成されているので、上述した効果と同様の効果を得ることができる。また図8の例では、上述した連通部7(図2参照)は切り欠き部5に設けていない。金属片6が抜けないという効果は重なり部13があれば実現できるため、ボルト10を挿通するための連通部7はこの効果を実現する上では不要であるため省略してもよい。このようにすれば、見た目をすっきりさせることができ、審美性が向上する。また図9に示すように、切り欠き部5内での金属片6の形状は図8と同様として、ボルト孔9の入口を側縁4aの外側に形成するためにこの部分の金属片6を延ばしてもよい。これにより、露出した部分のボルト10の強度を補強することができる。
【0027】
図2、あるいは図8図9に示すように、外側側面11が側縁4aに対して図6図7のように平行ではなく、斜めである場合、側縁4aに近い側の金属片6の角6aの位置を側縁4aに対して遠方に配することができる。ガラス全体に応力がかかった場合、側縁4aに近い側の金属片6の角6aから側縁4aに向けてクラックが発生するため、このように側縁4aと角6aとの距離を大きくすることで、引張強度を大きくすることができ、このようなクラックの発生を抑制できる。ただし、図6図7の例では連通部7を設けて側縁4aと角6aとの距離を稼いでいるため、外側側面11が側縁4aと平行であっても連通部7を設けて引張強度を大きくすることもできる。また、このように外側側面11を斜めにすることで、金属片6の大きさを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1:金属片内蔵合わせガラス、2:中間膜、3a、3b:外側ガラス板、4:中間ガラス板、4a:中間ガラス板の側縁、5:切り欠き部、6:金属片、6a:側縁に近い側の金属片の角、7:連通部、8:収容部、9:ボルト孔、10:ボルト、11:外側側面、12:内側側面、13:重なり部、14:緩衝材、15:ゴム、16:フェースガラス、17:接続ユニット、18:外側プレート、19:内側プレート、20:ボルト、21:ゴム、22:ゴム、23:シール材、24:目地部分、25:屈曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9