(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】制振装置付き構築物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20221102BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20221102BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20221102BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
E04H9/02 311
E04H9/02 351
E04B1/26 F
E04B1/58 D
F16F15/02 Z
(21)【出願番号】P 2018222005
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592123923
【氏名又は名称】株式会社タカミヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【氏名又は名称】安藤 武
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼宮 一雅
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-031654(JP,A)
【文献】特開2011-038312(JP,A)
【文献】特開平09-067862(JP,A)
【文献】特開2006-348543(JP,A)
【文献】特開2001-295375(JP,A)
【文献】特開2016-211292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 1/00-1/36
E04B 1/58
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本の棒状部材により四角形に形成された四角形フレームを備えている構築物であって、
前記四角形フレームの内側に制振装置が配置され、この制振装置が、長さ方向が前記四角形フレームの対角線方向となっているとともに、前記長さ方向の両端部が
前記四角形フレームに連結され、軸力の作用による塑性変形により振動エネルギを吸収して振動を抑制するための芯部材と、この芯部材が挿通されている空間が内部に設けられ、前記芯部材の外周を、この芯部材の前記長さ方向が長さ方向となって覆っている拘束部材と、前記芯部材の外側において前記空間に充填され、この芯部材に圧縮力が作用したときに、前記芯部材がこの芯部材の前記長さ方向と角度をなす方向に変形することを前記拘束部材と共に拘束するための充填材と、を含んで構成されている制振装置付き構築物において、
前記四角形フレームの4個の角部のうち、前記芯部材の長さ方向が向かう2個の角部と、残りの2個の角部のうちの1個の角部との合計3個の角部について、L字状の折曲部材を含んで形成された接続部材が配置され、これらの接続部材は、これらの接続部材が配置されている前記3個の角部のそれぞれを形成している前記4本の棒状部材のうちの2本の棒状部材に結合具で結合され、残りの1個の角部には、この角部を形成している前記4本の棒状部材のうちの2本の棒状部材に結合具で結合される接続部材が配置されておらず、
前記L字状の折曲部材は、水平部と、この水平部の端部から鉛直方向に延びる鉛直部とからなるL字状に折り曲げられた板金製であり、
前記芯部材の長さ方向が向かう前記2個の角部に配置されたそれぞれの前記L字状の折曲部材には、前記L字状の折曲部材の前記水平部と前記鉛直部の部分において、溶接で接合されて前記L字状の折曲部材を補強するための板金製の連結部材が結合されており、
前記芯部材及び前記拘束部材の前記長さ方向は、上下方向の成分を有する方向であり、
前記芯部材の長さ方向が向かう前記2個の角部に配置されたそれぞれの前記L字状の折曲部材のうち、一方の前記L字状の折曲部材の前記鉛直部は、このL字状の折曲部材の前記水平部から上方へ立ち上がった立上部であり、前記一方のL字状の折曲部材に結合されている前記連結部材に前記芯部材の下端部が連結されているとともに、他方の前記L字状の折曲部材の前記鉛直部は、このL字状の折曲部材の前記水平部から下方へ垂下した垂下部であり、前記他方のL字状の折曲部材に結合されている前記連結部材に前記芯部材の上端部が連結されており、
前記残りの2個の角部のうちの前記1個の角部に配置された前記接続部材は、前記L字状の折曲部材のみによって形成されており、
前記芯部材の長さ方向が向かう前記2個の角部に配置されたそれぞれの前記L字状の折曲部材と、前記残りの2個の角部のうちの前記1個の角部に配置された前記L字状の折曲部材との合計3個の前記L字状の折曲部材は、寸法及び形状が同じになっていることを特徴とする制振装置付き構築物。
【請求項2】
請求項1に記載の制振装置付き構築物において、前記立上部を有する前記L字状の折曲部材に結合されている前記連結部材には、このL字状の折曲部材の前記水平部と前記立上部との接続部よりも前記水平部と前記立上部との両側の箇所において、前記連結部材の一部を切欠することで形成された切欠部が設けられており、前記垂下部を有する前記L字状の折曲部材に結合されている前記連結部材には、前記切欠部が設けられておらず、前記芯部材の長さ方向が向かう前記2個の角部に配置されているそれぞれの前記L字状の折曲部材に結合されている2個の前記連結部材は、前記切欠部を除くと、寸法及び形状が同じになっていることを特徴とする制振装置付き構築物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制振装置付き構築物において、
前記芯部材の長さ方向が向かう前記2個の角部に配置されたそれぞれの前記L字状の折曲部材に結合されている前記連結部材は、前記芯部材
の前記下端部と前記上端部とに、前記四角形フレームの内部の面と直角をなす方向となっている前記芯部材の厚さ方向での重なり合いをもって連結されており、
前記芯部材の長さ方向が向かう前記2個の角部に配置されたそれぞれの前記L字状の折曲部材に結合されている前記連結部材が、前記芯部材の前記厚さ方向となっている前記
L字状の折曲部材の幅方向の中央部又は略中央部に結合されていないことにより、前記芯部材が、前記芯部材の前記厚さ方向となっている前記4本の棒状部材の幅方向の中央部又は略中央部に配置されていることを特徴とする制振装置付き構築物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の制振装置付き構築物において、前記合計3個の角部を形成している前記2本の棒状部材は、凹凸嵌合により接続されていることを特徴とする制振装置付き構築物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の制振装置付き構築物において、前記残りの1個の角部を形成している前記2本の棒状部材は、凹凸嵌合により接続されていることを特徴とする制振装置付き構築物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の制振装置付き構築物において、前記4本の棒状部材は、木材により形成されていることを特徴とする制振装置付き構築物。
【請求項7】
請求項2に記載の制振装置付き構築物において、前記切欠部が形成された前記連結部材が結合されている前記L字状の折曲部材は、基礎に載置された土台部材と、この土台部材に立設された柱部材とを接続するものとなっているとともに、このL字状の折曲部材の前記水平部には、前記切欠部の真下又は略真下において、孔が形成されており、この孔に、前記基礎に埋設されて前記土台部材を上方へ貫通しているアンカー部材の上端部が挿入され、この上端部に形成されている雄ねじ部に、
前記土台部材と、前記切欠部が形成された前記連結部材が結合されている前記L字状の折曲部材とを
前記基礎に固定するためのナットが螺合されていることを特徴とする制振装置付き構築物。
【請求項8】
請求項7に記載の制振装置付き構築物において、前記残りの2個の角部のうちの前記1個の角部に配置された前記接続部材を形成している前記L字状の折曲部材は、前記基礎に載置された土台部材と、この土台部材に立設された柱部材とを接続するものとなっているとともに、このL字状の折曲部材の前記水平部には、孔が形成されており、この孔に、前記基礎に埋設されて前記土台部材を上方へ貫通しているアンカー部材の上端部が挿入され、この上端部に形成されている雄ねじ部に、
前記土台部材と、
前記残りの2個の角部のうちの前記1個の角部に配置された前記接続部材を形成している前記L字状の折曲部材とを
前記基礎に固定するためのナットが螺合されていることを特徴とする制振装置付き構築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等による揺れを抑えるための制振装置が設置された制振装置付き構築物に係り、例えば、地震対策や風圧対策等が施される木軸組みやツーバイフォー等の工法により構築される構築物に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、地震等による揺れを抑えるための制振装置が設置された制振装置付き構築物が示されている。この構築物は、4本の棒状部材により四角形に形成された四角形フレームを備えており、この四角形フレームの内側に制振装置が配置され、この制振装置は、長さ方向が四角形フレームの対角線方向となっているとともに、長さ方向の両端部が四角フレームに連結され、軸力の作用による塑性変形により振動エネルギを吸収して振動を抑制するための芯部材と、この芯部材が挿通されている空間が内部に設けられ、芯部材の外周を、この芯部材の前記長さ方向が長さ方向となって覆っている拘束部材と、芯部材の外側において前記空間に充填され、この芯部材に圧縮力が作用したときに、芯部材がこの芯部材の長さ方向と角度をなす方向に変形することを拘束部材と共に拘束するための充填材と、を含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように4本の棒状部材により四角形に形成された四角形フレームを備えて構築される構築物では、この四角形フレームに4個の角部が存在し、これらの角部のそれぞれは、4本の棒状部材のうち、2本の棒状部材により形成されるが、2本の棒状部材同士を接続するためのブラケット等の接続部材の個数を削減できれば、部材点数や作業工数の削減により、構築物の構築コストを低減することができる。
【0005】
本発明の目的は、2本の棒状部材同士を接続するためのブラケット等の接続部材の個数を削減することができるようになる制振装置付き構築物を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制振装置付き構築物は、4本の棒状部材により四角形に形成された四角形フレームを備えている構築物であって、前記四角形フレームの内側に制振装置が配置され、この制振装置が、長さ方向が前記四角形フレームの対角線方向となっているとともに、前記長さ方向の両端部が前記四角フレームに連結され、軸力の作用による塑性変形により振動エネルギを吸収して振動を抑制するための芯部材と、この芯部材が挿通されている空間が内部に設けられ、前記芯部材の外周を、この芯部材の前記長さ方向が長さ方向となって覆っている拘束部材と、前記芯部材の外側において前記空間に充填され、この芯部材に圧縮力が作用したときに、前記芯部材がこの芯部材の前記長さ方向と角度をなす方向に変形することを前記拘束部材と共に拘束するための充填材と、を含んで構成されている制振装置付き構築物において、前記四角形フレームの4個の角部のうち、前記芯部材の長さ方向が向かう2個の角部と、残りの2個の角部のうちの1個の角部との合計3個の角部について、L字状の折曲部材を含んで形成された接続部材が配置され、これらの接続部材は、これらの接続部材が配置されている前記3個の角部のそれぞれを形成している前記4本の棒状部材のうちの2本の棒状部材に結合具で結合され、残りの1個の角部には、この角部を形成している前記4本の棒状部材のうちの2本の棒状部材に結合具で結合される接続部材が配置されていないことを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明に係る制振装置付き構造物では、四角形フレームの4個の角部のうち、芯部材の長さ方向が向かう2個の角部と、残りの2個の角部のうちの1個の角部との合計3個の角部については、L字状の折曲部材を含んで形成された接続部材が配置され、これらの接続部材は、これらの接続部材が配置されている3個の角部のそれぞれを形成している4本の棒状部材のうちの2本の棒状部材に結合具で結合され、残りの1個の角部には、この角部を形成している4本の棒状部材のうちの2本の棒状部材に結合具で結合される接続部材が配置されていないため、2本の棒状部材同士を接続するためのブラケット等の接続部材の個数を削減することができ、これにより、接続部材の個数の削減や、接続部材を2本の棒状部材に結合具で結合するための作業工数の削減により、構築物の構築コストを低減することができる。
【0008】
また、地震等による横荷重が前述した四角形フレームに作用したときには、制振装置の芯部材を含む部材に作用する荷重が、四角形フレーム内での閉じたベクトル荷重となるため、上述した残りの1個の角部に、この角部を形成している4本の棒状部材のうちの2本の棒状部材同士を接続するためのブラケット等の接続部材が配置されていなくても、これらの棒状部材同士の接続状態を確保することができる。
【0009】
以上の本発明に係る制振装置付き構築物において、四角形フレームの4個の角部のうち、芯部材の長さ方向が向かう2個の角部に配置されている接続部材を、芯部材の端部が連結されている連結部材が折曲部材に結合された2個のガセットプレートとしてもよい。
【0010】
これによると、芯部材の長さ方向が向かう2個の角部に配置されている接続部材は、芯部材の端部が連結される連結部材が前記折曲部材に結合されているガセットプレートとなるため、この接続部材を制振装置の芯部材の両端部を連結するための部材として利用できることになる。
【0011】
また、上述したように四角形フレームの4個の角部のうち、芯部材の長さ方向が向かう2個の角部に配置されている接続部材を、芯部材の端部が連結されている連結部材が折曲部材に結合された2個のガセットプレートとする場合であって、連結部材を、芯部材に、四角形フレームの内部の面と直角をなす方向となっている芯部材の厚さ方向での重なり合いをもって連結する場合には、連結部材を、芯部材の厚さ方向となっている折曲部材の幅方向の中央部又は略中央部に結合せず、これにより、芯部材が、この芯部材の厚さ方向となっている4本の棒状部材の幅方向の中央部又は略中央部に配置されるようにすることが好ましい。
【0012】
これによると、芯部材を、この芯部材の厚さ方向となっている4本の棒状部材の幅方向の中央部又は略中央部に配置できるようになるため、地震等によって四角形フレームに生ずる振動を芯部材に一層確実に伝達でき、これにより、芯部材の塑性変形によって振動エネルギが一層有効に吸収できることになる。
【0013】
また、4本の棒状部材のうち、1本の棒状部材が、基礎の上面に載置されていて、アンカー部材とこのアンカーの上部に螺合されたナットとにより基礎に結合された土台部材となっている場合には、前記2個のガセットプレートのうち、土台部材に前記結合具で結合された接続部材となっているガセットプレートの前記連結部材には、ナット及びこのナットを回転操作するための工具がこの連結部材と干渉することをなくすための切欠部を設けることが好ましい。
【0014】
これによると、基礎の上面に載置された土台部材をアンカー部材とナットによりガセットプレートと共に基礎に固定するための作業を、ナット及びこのナットを回転操作するための工具が連結部材と干渉することを切欠部によってなくして確実に行えるようになる。
【0015】
また、以上説明した本発明に係る制振装置付き構築物において、前述した残りの2個の角部のうちの1個の角部に配置されている接続部材を、前述した折曲部材のみからなるブラケットとしてもよい。
【0016】
これによると、この接続部材の形状及び構造の簡単化を図ることができる。
【0017】
また、四角形フレームの4個の角部のうち、接続部材が配置されていない1個の角部を形成している2本の棒状部材を、凹凸嵌合により接続してもよい。
【0018】
これによると、接続部材が配置されていない1個の角部を形成している2本の棒状部材は、凹凸嵌合により接続されるため、四角形フレームに地震等による振動が生じても、これらの棒状部材同士の接続状態を一層有効に確保することができる。
【0019】
以上説明した本発明は、四角形フレームを形成する4本の棒状部材が木材により形成される木造の構築物に一層有効に適用できるものであり、この木造の構築物は、軸組み工法や、ツーバイフォー工法、パネル工法等により構築されるものでよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、2本の棒状部材同士を接続するためのブラケット等の接続部材の個数を削減できるようになるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る制振装置が設置されている構築物の四角形フレームの部分と、その隣接する部分とを示す正面図であって、壁用面部材が取り付けられたときを示す図である。
【
図2】
図2は、壁用面部材を取り付ける以前の状態を示す
図1と同様の図である。
【
図3】
図3は、四角形フレームの部分を示す
図1の一部拡大図である。
【
図4】
図4は、四角形フレームの部分を示す
図2の一部拡大図である。
【
図5】
図5は、芯部材を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図6】
図6は、
図1~
図4で示されている第1ガセットプレートを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1~
図4で示されている第2ガセットプレートを示す斜視図である。
【
図12】
図12は、第1別実施形態に係る拘束部材が用いられた制振装置を示す
図4と同様の図である。
【
図17】
図17は、第3別実施形態に係る拘束部材を構成する2個の拘束部材要素を分離して示した図であって、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図4には、本発明の一実施形態に係る制振装置10が設置されている構築物の一部が示されている。
図1及び
図3では、本実施形態に係る制振装置10が内部に配置されている壁の表面を形成する壁用面部材も示されており、
図1及び
図3の一部拡大図である
図2及び
図4では、この壁用面部材を省略した状態、言い換えると、壁用面部材が取り付けられる以前の状態が示されている。
【0023】
本実施形態に係る構築物は、軸組み工法で構築された建物であり、この建物は、
図1~
図4において、水平方向が長さ方向となっている2本の横長棒状部材1,2と、これらの横長棒状部材1,2の間に水平方向の間隔をあけて配設され、上下方向が長さ方向となっている縦長棒状部材3~5とを含んで建てられている。建物を構成していて、この建物の構造材となっているこれらの棒状部材1~5は、建物の1階の部分を形成しているため、2本の横長棒状部材1,2のうち、下側の横長棒状部材1は、
図3及び
図4に示されているように、コンクリート基礎7の上面に載置されて、このコンクリート基礎7にアンカー部材6で結合された土台部材である。また、上側の横長棒状部材2は、この土台部材1と平行に配設された梁部材であり、土台部材1に立設されている縦長棒状部材3~5は、この梁部材2を上端で支持する柱部材である。
【0024】
なお、本実施形態に係る制振装置10は、軸組み工法で構築された建物の1階に設置されているが、この制振装置10は2階以上の階に設置してもよい。
【0025】
本実施形態に係る建物は木造の建物であるため、土台部材1と梁部材2と柱部材3~5は、それぞれの長さ方向と直交する断面形状が四角形となっている木材で形成されている。なお、この木材は、無垢の木材でもよく、あるいは、集成材による木材でもよい。
【0026】
図2及び
図4に示されているように、土台部材1と柱部材3~5は、土台部材1の上面に形成した凹部(ほぞ穴)1Aに柱部材3,4,5の下端に設けた凸部(ほぞ)3A,4A,5Aを嵌入した凹凸嵌合(ほぞ継ぎ)により接続されており、また、梁部材2と柱部材3,4,5は、梁部材2の下面に形成した凹部2Aに柱部材3,4,5の上端に設けた凸部3B,4B,5Bを嵌入した凹凸嵌合により接続されている。なお、土台部材1と、柱部材3~5のうち、少なくとも1本の柱部材とを、コ字形状のかすがいによって結合してもよく、また、梁部材2と、柱部材3~5のうち、少なくとも1本の柱部材とを、コ字形状のかすがいによって結合してもよい。
【0027】
土台部材1と、梁部材2と、柱部材3~5のうち、土台部材1及び梁部材2の長さ方向に互いに隣接している2本の柱部材3,4とにより、
図2及び
図4に示されているように、正面視で四角形となっている四角形フレーム8が形成され、
図4に示されているように、4個の角部A,B,C,Dを有するこの四角形フレーム8の内側に、本実施形態に係る制振装置10が、土台部材1及び梁部材2の長さ方向となっている水平方向に対する角度をなして配設されている。この制振装置10は、長さ方向が対角をなす2個の角部A,Dに向う方向となっているために、この長さ方向が四角フレーム8の対角線方向となっていて、長さ方向の両端部が四角形フレーム8に連結されている芯部材11と、この芯部材11の長さ方向の両端部を除き、芯部材11の外周を、芯部材11の長さ方向が長さ方向となって覆っている拘束部材12と、を含んで構成されたものとなっている。芯部材11の下端部11Aは、4個の角部A,B,C,Dのうち、土台部材1と柱部材3により形成されている角部Aに配置されていて、これらの土台部材1と柱部材3とを接続するための接続部材ともなっている第1ガセットプレート21に連結され、芯部材11の上端部11Bは、4個の角部A,B,C,Dのうち、梁部材2と柱部材4により形成されている角部Dに配置されていて、これらの梁部材2と柱部材4とを接続するための接続部材ともなっている第2ガセットプレート22に連結されている。
【0028】
このため、本実施形態では、土台部材1と柱部材3とを接続するための接続部材、及び梁部材2と柱部材4とを接続するための接続部材は、芯部材11の長さ方向の両端部が連結された第1及び第2ガセットプレート21,22となっている。
【0029】
なお、
図4に示されているように、土台部材1と柱部材4の下端部は、角部Cに配置されていて、これらの土台部材1と柱部材4とを接続するための接続部材となっているブラケット23により接続されているが、前述した4個の角部A~Dのうち、残りの角部Bには、梁部材2と柱部材3の上端部とを接続するための接続部材となっているブラケットは配置されておらず、梁部材2と柱部材3の上端部は、前述した凹部2Aと凸部3Bによる凹凸嵌合で接続されているだけである。
【0030】
図5には、制振装置10の芯部材11だけが示されており、
図5(A)は正面図であり、
図5(B)は側面図である。この芯部材11は、一定の厚さ寸法が長さ方向に連続している板状の細長部材となっており、また、芯部材11は、厚さ方向と直交する幅方向の寸法が同じになっている上述の下端部11A及び上端部11Bと、芯部材11の長さ方向中央部に長い寸法で設けられ、下端部11A及び上端部11Bよりも幅方向の寸法が小さくなっているくびれ部11Cと、このくびれ部11Cと下端部11Aとの間及びくびれ部11Cと上端部11Bとの間に設けられ、くびれ部11Cから下端部11A及び上端部11Bに向かって幅寸法が次第に拡大している幅寸法拡大部11D,11Eとからなるものとなっている。このよう形状を有する芯部材11は、例えば、低降伏点鋼や、一般構造用鋼、建築構造用圧延鋼、溶接構造用鋼により製造され、芯部材11の全長のうち、長い寸法で形成されているくびれ部11Cは、この芯部材11に降伏点を超える軸力である引っ張り力や圧縮力が作用したときに塑性変形する塑性化部となっている。
【0031】
図6には、
図1~
図4で示されている第1ガセットプレート21が示されている。
図4で示す角部Aに配置されるこの第1ガセットプレート21は、土台部材1の長さ方向である水平方向に延びる水平部25Aと、この水平部25Aの後端から柱部材3の長さ方向である上方へ立ち上がった立上部25BとからなるL字状に折り曲げられた板金製の折曲部材25に、この折曲部材25の補強部材ともなっている板金製の連結部材26を結合したものである。この連結部材26は、後述するように、芯部材11の下端部11Aを連結するために第1ガセットプレート21に設けられたものであり、連結部材26の下面と側面とが折曲部材25の水平部25Aと立上部25Bとに溶接で接合されている。連結部材26で仕切られている水平部25Aの両側には、
図4で示されているように、第1ガセットプレート21を土台部材1に結合するための結合具となっている釘27を挿入するための孔28が設けられ、また、連結部材26で仕切られている立上部25Bの両側には、
図4で示されているように、第1ガセットプレート21を柱部材3に結合するための結合具となっている釘29を挿入するための孔30が設けられている。
【0032】
また、
図6に示されているように、連結部材26には、折曲部材25の水平部25Aと立上部25Bとの接続部よりも水平部25Aと立上部25Bとの両側の箇所において、連結部材26の一部を切欠することで形成された切欠部26Aが設けられ、この切欠部26Aの真下又は略真下において、水平部25Aに孔31が形成されている。この孔31には、
図4で示したコンクリート基礎7に埋設されて土台部材1を上方へ貫通している2本のアンカー部材6のうち、第1ガセットプレート21側に配置されたアンカー部材6の上端部が挿入され、この上端部に刻設されている雄ねじ部に
図4のナット6Aを螺合して締め付けることにより、コンクリート基礎7の上面に載置されている土台部材1は、第1ガセットプレート21と共にコンクリート基礎7にアンカー部材6及びナット6Aにより固定されている。
【0033】
なお、第1ガセットプレート21の連結部材26には切欠部26Aが設けられているため、アンカー部材6の上端部に刻設されている雄ねじ部にナット6Aを螺合して締め付ける作業を、
図4から分かるように、ナット6Aと、このナット6Aを回転操作する工具とが連結部材26と干渉することなく確実に行えることになる。
【0034】
また、折曲部材25の水平部25Aに設けられた孔28に挿入された釘27により、この水平部25Aが土台部材1に結合されるとともに、折曲部材25の立上部25Bに設けられた孔30に挿入された釘29により、この立上部25Bが柱部材3に結合されるため、土台部材1と柱部材3は、これらの土台部材1と柱部材3とを接続するための接続部材となっている第1ガセットプレート21におけるL字状の折曲部材25により接続されている。
【0035】
図6に示されているように、第1ガセットプレート21の連結部材26には孔
34が形成されており、孔
34と、
図5で示されている芯部材11の下端部11Aに形成された孔32とに
図4のボルト33を挿入し、ボルト33にナットを螺合して締め付けることにより、芯部材11の下端部11Aは第1ガセットプレート21に連結されている。
【0036】
図7には、
図1~
図4で示されている第2ガセットプレート22が示されている。
図4で示す角部Dに配置されるこの第2ガセットプレート22は、梁部材2の長さ方向である水平方向に延びる水平部35Aと、この水平部35Aの後端から柱部材4の長さ方向である下方へ垂下した垂下部35BとからなるL字状に折り曲げられた板金製の折曲部材35に、この折曲部材35の補強部材ともなっている板金製の連結部材36を結合したものである。この連結部材36は、後述するように、芯部材11の上端部11Bを連結するために第2ガセットプレート22に設けられたものであり、連結部材36の上面と側面とが折曲部材35の水平部35Aと垂下部35Bとに溶接で接合されている。連結部材36で仕切られている水平部35Aの両側には、
図4で示されているように、第2ガセットプレート22を梁部材2に結合するための結合具となっている釘37を挿入するための孔38が設けられ、また、連結部材36で仕切られている垂下部35Bの両側には、
図4で示されているように、第2ガセットプレート22を柱部材4に結合するための結合具となっている釘39を挿入するための孔40が設けられている。
【0037】
この第2ガセットプレート22には、第1ガセットプレート21と異なり、第1ガセットプレート21の連結部材26に形成された切欠部26Aと同様の切欠部は設けられていない。そして、第1ガセットプレート21の折曲部材25では、連結部材26で仕切られている水平部25Aの両側に設けられている孔28の個数は、それぞれ1個であったが、第2ガセットプレート22の折曲部材35では、連結部材36で仕切られている水平部35Aの両側に設けられている孔38の個数は、それぞれ複数個となっている。
【0038】
この第2ガセットプレート22では、折曲部材35の水平部35Aに設けられた孔38に挿入された釘37により、この水平部35Aが梁部材2に結合されるとともに、折曲部材35の垂下部35Bに設けられた孔40に挿入された釘39により、この垂下部35Bが柱部材4に結合されるため、梁部材2と柱部材4は、これらの梁部材2と柱部材4とを接続するための接続部材となっている第2ガセットプレート22におけるL字状の折曲部材35により接続されていることになる。
【0039】
また、
図7に示されているように、第2ガセットプレート22の連結部材36には孔41が形成されており、孔41と、
図5で示されている芯部材11の上端部11Bに形成された孔42とに
図4のボルト43を挿入し、ボルト43にナットを螺合して締め付けることにより、芯部材11の上端部11Bは第2ガセットプレート22に連結されている。
【0040】
図8には、
図1~
図4で示されているブラケット23が示されている。
図4で示す角部Cに配置されるこのブラケット23は、梁部材2の長さ方向である水平方向に延びる水平部23Aと、この水平部23Aの後端から柱部材4の長さ方向である上方へ立ち上がった立上部23BとからなるL字状に折り曲げられた板金製の折曲部材となっている。水平部23Aには、
図4で示されているように、ブラケット23を土台部材1に結合するための結合具となっている釘45を挿入するための孔46が設けられ、また、立上部23Bには、
図4で示されているように、ブラケット23を柱部材4に結合するための結合具となっている釘47を挿入するための孔48が設けられている。
【0041】
また、水平部23Aには孔49が形成されている。この孔49には、
図4で示したコンクリート基礎7に埋設されて土台部材1を上方へ貫通している2本のアンカー部材6のうち、ブラケット23側に配置されたアンカー部材6の上端部が挿入され、この上端部に刻設されている雄ねじ部に
図4のナット6Aを螺合して締め付けることにより、コンクリート基礎7の上面に載置されている土台部材1は、ブラケット23と共にコンクリート基礎7にアンカー部材6及びナット6Aにより固定されている。
【0042】
このブラケット23では、水平部23Aに設けられた孔46に挿入された釘45により、この水平部23Aが土台部材1に結合されるとともに、立上部23Bに設けられた孔48に挿入された釘47により、この立上部23Bが柱部材4に結合されるため、土台部材1と柱部材4は、これらの土台部材1と柱部材4とを接続するための接続部材となっていて、L字状の折曲部材のみで形成されていてブラケット23により結合されることになる。
【0043】
以上の第1ガセットプレート21と第2ガセットプレート22とブラケット23において、第1ガセットプレート21の折曲部材25と、第2ガセットプレート22の折曲部材35と、ブラケット23は、それぞれの寸法及び形状が同じになっており、このため、これらの折曲部材25,35とブラケット23を共通化して製造することができる。また、第1ガセットプレート21の折曲部材25に設けられているそれぞれの孔28,30,31の大きさ、配置位置及び個数は、ブラケット23に設けられているそれぞれの孔46,48,49の大きさ、配置位置及び個数と同じになっているため、これらの孔28,30,31,46,48,49を含めて折曲部材25とブラケット23を共通化して製造することができる。
【0044】
また、第1ガセットプレート21の折曲部材25に設けられている孔30の大きさ、配置位置及び個数は、第2ガセットプレート22の折曲部材35に設けられている孔40の大きさ、配置位置及び個数と同じになっているため、第1ガセットプレート21の折曲部材25に孔28,31を形成する以前であって、第2ガセットプレート22の折曲部材35に孔38を形成する以前においては、孔30,40を形成するための作業を含めて折曲部材25,35を共通化して製造することができる。
【0045】
さらに、第1ガセットプレート21の連結部材26と第2ガセットプレート22の連結部材36については、連結部材26の切欠部26Aを除くと、これらの連結部材26,36の寸法及び形状は同じであって、連結部材26の孔31の大きさ、配置位置及び個数は、連結部材36の孔41の大きさ、配置位置及び個数と同じであるため、孔41を含めて連結部材36と同じなっている部材を2個製造し、これらの部材のうち、1個の部材を第2ガセットプレート22の連結部材36とすることができ、また、残りの1個の部材に切欠部26Aを形成することにより、この部材を第1ガセットプレート21の連結部材26とすることができる。
【0046】
図9は、
図3のS9-S9線断面図であり、
図10は、
図3のS10-S10線断面図である。これらの
図9及び
図10に示されているように、制振装置10の芯部材11は、
図2及び
図4で示した拘束部材12の内部に形成された空間50に挿通されており、この空間50は拘束部材12の全長に渡って貫通して形成されているとともに、空間50には、充填材51がグラウト材として充填されており、本実施形態の充填材51はモルタルである。このため、芯部材11の全長のうち、芯部材11の長さ方向と同じ方向が長さ方向となっている拘束部材12により覆われている範囲において、芯部材11の外周は、空間50に充填されたモルタルによる充填材51で覆われている。
【0047】
図9及び
図10に示されているように、本実施形態に係る拘束部材12は、この拘束部材12の長さ方向と直交する断面形状が四角形となっている角材により形成されたものとなっており、このため、拘束部材12の長さ方向と直交する方向におけるこの拘束部材12の両側の外面は、拘束部材12の全長に渡る長さを有する面接触部12A,12Bとなっている。また、本実施形態に係る拘束部材12は木材で形成されており、この木材は、無垢材でもよく、集成材でもよい。さらに、拘束部材12の内部に形成されている空間50は、この拘束部材12の長さ方向と直交する断面形状が円形となっているものである。
【0048】
このため、本実施形態に係る拘束部材12は、無垢材又は集成材で形成された角材の内部に、拘束部材12の長さ方向と直交する断面形状が円形となっている空間50を、ドリル等の工具を備えた切削加工装置により拘束部材12の全長に渡って形成したものとなっている。そして、空間50に芯部材11を挿通する作業を行い、この後に、空間50に充填材51としてのモルタルを打設、充填し、このモルタルの固化により、芯部材11は拘束部材12に不動状態で配置される。このため、拘束部材12は、モルタルを打設するための型枠ともなっている。また、空間50に芯部材11を挿通する作業を行う以前において、
図9及び
図10に示されているように、固化したモルタルが芯部材11に付着することを防止するためのクリアランス材(アンボント材)52を芯部材11の外面に塗布する作業が行われている。
【0049】
また、本実施形態では、
図4のS11-S11線断面図である
図11に示されているように、断面形状が前述の四角形となっている土台部材1におけるこの土台部材1の長さ方向と直交する2つの方向での寸法のうち、水平の幅方向での幅寸法W1と、断面形状が四角形となっている柱部材3におけるこの柱部材3の長さ方向と直交する2つの方向での寸法のうち、水平の幅方向での幅寸法W2は、同じ又は略同じになっている。また、これらの幅寸法W1,W2と、断面形状が四角形となっている拘束部材12におけるこの拘束部材12の長さ方向と直交する2つの方向での寸法のうち、幅方向での幅寸法W3は、言い換えると、拘束部材12の上述した2つの面接触部12A,12Bの間の間隔寸法W3は、同じ又は略同じになっている。なお、土台部材1の幅寸法W1は、断面形状が四角形となっている
図4の梁部材2についても同じであり、また、柱部材3の幅寸法W2は、断面形状が四角形となっている
図4の柱部材4についても同じである。
【0050】
また、上述した土台部材1の幅方向や、梁部材2の幅方向、さらには、柱部材3,4の幅方向は、
図4で示した四角形フレーム8の内部の面と直角をなす方向のことであり、この方向は、制振装置10の主要部材となっている芯部材11の厚さ方向ともなっている。
【0051】
このため、拘束部材12における幅寸法W3の幅方向と直角をなす方向での寸法を、柱部材3,4における幅寸法W2の幅方向と直角をなす左右方向での寸法と同じ又は略同じにすることにより、拘束部材12を、柱部材3,4と同じ材料の角材を拘束部材12と同じ長さ寸法で切断することにより容易に形成することができる。
【0052】
また、拘束部材12における幅寸法W3の幅方向と直角をなす方向での寸法を、梁部材2における幅寸法W1の幅方向と直角をなす上下寸法と同じ又略同じにすることにより、拘束部材12を、梁部材2と同じ材料の角材を拘束部材12と同じ長さ寸法で切断することにより容易に形成することができる。
【0053】
さらに、土台部材1の高さ寸法は、柱部材3,4における幅寸法W2の幅方向と直角をなす水平の方向での左右寸法と異なっているが、拘束部材12における幅寸法W3の幅方向と直角をなす方向での寸法を、土台部材1の高さ寸法と同じ又は略同じにすることにより、拘束部材12を、土台部材1と同じ材料の角材を拘束部材12と同じ長さ寸法で切断することにより容易に形成することができる。
【0054】
このため、本実施形態によると、拘束部材12を、四角形フレーム8を形成している前述の4本の棒状部材となっている土台部材1、梁部材2及び柱部材3,4と同じ木材で形成することができるとともに、拘束部材12の断面形状は、土台部材1、梁部材2及び柱部材3,4の断面形状と同じ四角形となっているため、拘束部材12におけるこの拘束部材12の長さ方向と直交する2つの方向での寸法のうち、少なくとも1つの寸法を、土台部材1、梁部材2及び柱部材3,4におけるこれらの部材1~4のそれぞれの長さ方向と直交する2つの方向での寸法のうち、少なくとも1つの寸法と同じ又は略同じにすることにより、拘束部材12を、土台部材1、梁部材2及び柱部材3,4との関係において、材料と断面形状と寸法の点において共通化することができ、このため、拘束部材12に関する製造コストを低く抑えて制振装置10を製造できることになる。
【0055】
なお、制振装置10の芯部材11は、
図11に示されているように、土台部材1及び梁部材2における幅寸法W1の幅方向の中央部又は略中央部の位置であって、柱部材3,4における幅寸法W2の幅方向の中央部又は略中央部の位置ともなっている箇所に配置することが求められるため、
図11から分かるように、拘束部材12の長さ方向の両端面から突出している芯部材11の長さ方向の両端部11A,11Bを、第1ガセットプレート21の連結部材26及び第2ガセットプレート22の連結部材36に、芯部材11の厚さ方向での重なり合いをもって連結するようにしている本実施形態の場合には、これらの連結部材26、36は、
図6及び
図7に示されているように、第1及び第2ガセットプレート21,22の折曲部材25,35の幅方向の中央部又は略中央部に配置されておらず、これらの折曲部材25,35の幅方向の両端部のうち、一方の端部から距離W4となっていて、他方の端部から距離W5となっている位置において、すなわち、折曲部材25,35の幅方向の中央部又は略中央部からずれた位置において、連結部材26,36は第1及び第2ガセットプレート21,22の折曲部材25,35に溶接で結合されている。これらの距離W4、W5は、
図11にも示されている。
【0056】
本実施形態に係る制振装置10は、
図1及び
図3に示されているように、壁55の内部に収納配置されており、このため、
図9及び
図10に示されているように、拘束部材12は、壁55の厚さ方向両側を形成する2枚の壁用面部材57,58で挟まれた状態で前述の四角形フレーム8の内側に配置されている。
図1及び
図3には、これらの壁用面部材57,58のうち、例えば、室内側の面部材となっていて、石膏ボード等で形成されている壁用面部材57を柱部材3~5に止着するための止着具となっている釘56が示されており、室外側の面部材となっていて、サイディングボート等で形成されている壁用面部材58も、図面では示されていないが、柱部材3~5に止着具となっている釘により止着されている。
【0057】
これらの壁用面部材57,58は、
図9及び
図10に示されているように、拘束部材12の長さ方向と直交する方向におけるこの拘束部材12の両側の外面となっている面接触部12A,12Bと面接触しており、壁用面部材57は、止着具である釘59により面接触部12Aに止着されているとともに、壁用面部材58は、止着具である釘60により面接触部12Bに止着されており、これらの釘59,60は、
図3から分かるように、拘束部材12の長さ方向に等間隔で複数本が打ち込まれている。
【0058】
また、釘59,60は、
図9及び
図10に示されているように、拘束部材12の内部に、この拘束部材12の長さ方向と直交する方向における断面形状が円形となって設けられている空間50のこの円形の中心部から半径方向にずれた位置、
図9及び
図10の実施形態では、拘束部材12の上端部に近い位置と、拘束部材12の下端部に近い位置とにおいて、壁用面部材57,58から拘束部材12へ打ち込まれている。
【0059】
以上のように本実施形態の拘束部材12の外面には、壁用面部材57,58が面接触する面接触部12A,12Bが設けられ、これらの面接触部12A,12Bに壁用面部材57,58が釘59,60によって止着されているため、制振装置10が配置される前述の四角形フレーム8の内側に、制振装置10と干渉してしまうために中間柱部材や横桟等を設けることができなくても、壁用面部材57,58を、制振装置10の構成部材となっている拘束部材12に取り付けることができ、これにより、これらの壁用面部材57,58が壁55の厚さ方向に撓み変形等することを有効に防止できる。
【0060】
また、拘束部材12の内部に断面形状が円形となって設けられている空間50のこの円形の中心部から半径方向にずれた位置において、釘59,60により壁用面部材57,58が拘束部材12の面接触部12A,12Bに止着されているため、釘59,60を、円形の空間50を避けて、拘束部材12の充分に深い内部まで侵入させることができ、これにより、釘59,60による壁用面部材57,58の拘束部材12への取付強度を大きくできる。
【0061】
なお、壁用面部材57,58を拘束部材12の面接触部12A,12Bに止着するための止着具は、釘59,60に限定されず、ステープルでもよく、あるいは、スクリュー釘でもよい。
【0062】
図4に示されているように、制振装置10が内側に配置された前述した四角形フレーム8が一部に設けられている建物に、地震等による横荷重F1,F2が作用すると、四角形フレーム8が菱形状に変形することにより、長さ方向が四角形フレーム8の対角線方向となっていて、長さ方向の両端部11A,11Bが第1ガセットプレート21と第2ガセットプレート22を介して四角形フレーム8に連結されている芯部材11には、軸力である引っ張り力や圧縮力が作用し、これらの軸力が、芯部材11における
図5で説明した塑性化部となっているくびれ部11Cを塑性変形させることにより、この塑性変形によって建物の振動エネルギが吸収されて振動が抑制される。また、芯部材11に過大の圧縮力が作用したときには、この芯部材11が、この芯部材11の長さ方向と角度をなす方向である芯部材11の厚さ方向に、すなわち、前述した壁55の厚さ方向に座屈変形しようとするが、この座屈変形は、拘束部材12の内部の空間50に充填材51として充填されているモルタルと拘束部材12とによる拘束作用に阻止される。さらに、本実施形態の壁用面部材57,58は、釘56により柱部材3~5に止着されているとともに、釘59,60により拘束部材12にも止着されているため、壁用面部材57,58によっても建物の振動エネルギが吸収されて振動が抑制される。
【0063】
また、本実施形態では、
図11で説明したように、芯部材11の長さ方向の両端部は、第1及び第2ガセットプレート21,22の連結部材26,36に芯部材11の厚さ方向での重なり合いをもって連結されているが、これらの連結部材26,36は、
図6、
図7で示したように、これらのガセットプレート21,22の折曲部材25,35の幅方向の中央部又は略中央部に配置されておらず、これらの連結部材26,36が折曲部材25,35の幅方向の中央部又は略中央部からずれた位置に配置されていることにより、芯部材11は、四角形フレーム8を形成している4本の棒状部材となっている土台部材1、梁部材2及び柱部材3,4の幅方向の中央部又は略中央部に配置されているため、地震等によって四角形フレーム8に作用する横荷重F1,F2による振動を芯部材11に一層確実に伝達することができ、これにより、芯部材11のくびれ部11Cの塑性変形によって建物の振動エネルギを一層有効に吸収することができて振動を有効に抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態によると、芯部材11は、この芯部材11に軸力となって作用する引っ張り力と圧縮力の両方に有効なブレース部材となっているため、四角形フレーム8の内側に制振装置10を設置することにより、この四角形フレーム8の隣に形成されている別の四角形フレームの内側に、制振装置10の芯部材11とは水平方向に対する傾斜角度を逆としたブレース部材を配置する必要がなくなり、これにより、木軸組み構造となっている建物の構造を簡単化できる。
【0065】
また、地震等による横荷重F1,F2が四角形フレーム8に作用したときには、
図4で示されている柱部材3,4の上端部は、これらの柱部材3,4の下端部に対して水平方向へ移動するため、これらの柱部材3,4には、土台部材1から下端部が外れようとする上方への引っ張り力が作用する。しかし、芯部材11の下端部11Aを四角形フレーム8に連結している第1ガセットプレート21は、土台部材1に釘27で結合された水平部25Aと、柱部材3に釘29で結合された立上部25Bとを有する折曲部材25を備えたものとなっているため、柱部材3の下端部が、上方への引っ張り力によって土台部材1から外れることを、第1ガセットプレート21により阻止することができる。また、ブラケット23も、土台部材1に釘45で結合された水平部23Aと、柱部材4に釘47で結合された立上部23Bとを有する折曲部材となっているため、柱部材4の下端部が、上方への引っ張り力によって土台部材1から外れることを、このブラケット23により阻止することができる。
【0066】
さらに、芯部材11の上端部11Bを四角形フレーム8に連結している第2ガセットプレート22は、梁部材2に釘37で結合された水平部35Aと、柱部材4に釘39で結合された垂下部35Bとを有する折曲部材35を備えたものとなっているため、柱部材4の上端部が梁部材2に対してこの梁部材2の長さ方向にずれることを、第2ガセットプレート22により阻止することができる。
【0067】
また、
図4で示した横荷重F1,F2のうち、横荷重F1が四角形フレーム8に作用したときには、制振装置10の芯部材11に圧縮荷重が作用し、土台部材1には角部Aから角部Cに向かう荷重が作用し、柱部材4には引っ張り荷重が作用して、これらの荷重は四角形フレーム8内での閉じたベクトル荷重となり、また、横荷重F2が四角形フレーム8に作用したときには、制振装置10の芯部材11に引っ張り荷重が作用し、柱部材4には圧縮荷重が作用し、土台部材1には角部Cから角部Aに向かう荷重が作用して、これらの荷重も四角形フレーム8内での閉じたベクトル荷重となるため、四角形フレーム8の4個の角部A~Dのうち、角部Bに、この角部Bを形成している梁部材2と柱部材3のそれぞれに釘等の結合具で結合されるL字状に折り曲げられた板金製の折曲部材を配置しなくても、これらの梁部材2と柱部材3との接続状態を確保できることになる。また、前述したように、梁部材2と柱部材3は、梁2の下面に形成された凹部2Aに柱部材3の上端部に設けられた凸部3Bを嵌入した凹凸嵌合により接続されているため、角部Bに、梁部材2と柱部材3のそれぞれに釘等の結合具で結合されるL字状に折り曲げられた板金製の折曲部材を配置しなくても、この凹凸嵌合により、梁部材2と柱部材3との接続状態を一層確実に確保できる
【0068】
したがって、本実施形態によると、板金製の折曲部材だけで形成されているブラケット23は、四角形フレーム8を形成する4個の角部A~Dのうち、土台部材1と柱部材4との継ぎ箇所となっている角部Cだけに配置すればよく、角部Bには配置しなくもよく、このため、ブラケット23の個数の削減と、ブラケット23の取付作業工数の削減とにより、建物全体のコストの低減化を図ることができる。なお、ブラケット23を、
図4に示されているように、四角形フレーム8の内側の角部Cではなく、外側の角部C’に配置してもよい。
【0069】
また、前述したように、壁用面部材57,58が止着される柱部材3,4の幅寸法W2と、拘束部材12の2つの面接触部12A,12Bの間の間隔寸法W3は、同じ又は略同じになっているため、
図9及び
図10に示されているように、壁用面部材57,58を面接触部12A,12Bに直接接触させて、釘59,60により壁用面部材57,58を面接触部12A,12Bに容易に止着することができる。
【0070】
なお、幅寸法W2よりも間隔寸法W3が小さくなる場合には、壁用面部材57,58と面接触部12A,12Bとの間に、無垢材又は集成材等によるスペース部材を介設することにより、このスペース部材を介して釘59,60で壁用面部材57,58を面接触部12A,12Bに止着してもよい。
【0071】
また、壁用面部材57,58のうちの一方だけを、面接触部12A,12Bのうちの一方だけに止着してもよい。したがって、拘束部材12に設ける面接触部の個数は1個でもよい。
【0072】
図12には、第1別実施形態に係る制振装置110が示されている。この制振装置110の拘束部材112は、この拘束部材112の長さ寸法よりも短い寸法を有していて、それぞれが同じ長さ寸法となっている複数個の拘束部材要素112Aを拘束部材112の長さ方向に連設して結合した部分を有して構成されたものとなっている。すなわち、それぞれの拘束部材要素112Aは、拘束部材112をこの拘束部材112の長さ方向に複数個に分割した状態で形成されているものとなっており、これらの拘束部材要素112Aは、前述した実施形態の拘束部材12と同様に、無垢の木材又は集成材による木材により形成され、また、それぞれの拘束部材要素112Aにおける拘束部材112の長さ方向と直交する断面形状は、四角形であり、さらに、それぞれの拘束部材要素112Aの内部に形成されている空間150(
図14を参照)は、拘束部材112の長さ方向と直交する断面形状が円形となっているものである。
【0073】
図13には、拘束部材112だけが示されており、この拘束部材112の長さ方向の両方の端面には、金属製の塞ぎ板66,67が配置されている。
図14に示されているように、平面視で四角形となっているこれらの塞ぎ板66,67とそれぞれの拘束部材要素112Aには、4個の隅部のそれぞれにおいて、
図13で示す孔66A,67A,112Bが形成されており、塞ぎ板66,67の孔66A,67Aと拘束部材要素112Aの孔112Bとに、それぞれの拘束部材要素112Aを拘束部材112の長さ方向に貫通する細長部材となっている雄ねじ棒部材68が挿通され、塞ぎ板66,67から突出した雄ねじ棒部材68の両端部にナット68Aが螺合されて締め付けられている。これにより、塞ぎ板66,67とそれぞれの拘束部材要素112Aは、雄ねじ棒部材68とナット68Aによる結合手段69により、拘束部材112の長さ方向に連設されて結合されている。
【0074】
塞ぎ板66,67には、塞ぎ板66が示されている
図14に示されているように、拘束部材要素112Aの内部に形成されている空間150の中心部と一致する位置において、長孔70が形成され、また、この長孔70からずれた位置であって、空間150内の位置において、小孔71が形成されている。
【0075】
それぞれの拘束部材要素112Aの内部に形成された空間150に芯部材11を挿通し、この芯部材11の長さ方向の両端部を塞ぎ板66,67の長孔70から突出させた後に、塞ぎ板66,67とそれぞれの拘束部材要素112Aとを結合手段69により拘束部材112の長さ方向に連設して結合し、次いで、塞ぎ板66,67の両方に設けられている小孔71のうち、一方の小孔71から、それぞれの拘束部材要素112Aの内部の空間150に充填材51であるモルタルを打設して、この打設によって圧縮されるそれぞれの空間150内の空気を他方の小孔71から排出させる。これにより、芯部材11の長さ方向がそれ自身の長さ方向となって芯部材11の外周を覆っている拘束部材112の内部に、芯部材11の外側を覆った状態で充填材としてのモルタルを充填することができる。
【0076】
なお、
図13で示した塞ぎ板66,67は、複数個の拘束部材要素112Aのそれぞれが木材で形成されていても、上述のナット68Aの締め付けを行ったときに、拘束部材112の長さ方向の両端部に配置された拘束部材要素112Aにナット68Aによる窪み等が生じないようにするための座金として機能する。
【0077】
図13で示した塞ぎ板66,67と同様の部材は、
図4等で示した前述の実施形態の拘束部材12の内部の空間50にモルタルを打設する際に、この拘束部材12の長さ方向の両端面に仮止めされて取り付けられ、この空間50に打設されたモルタルが固化した後に、塞ぎ板66,67と同様の部材の取り外しが行われる。
【0078】
図12及び
図13の第1別実施形態に係る拘束部材112では、この拘束部材112が、拘束部材112の長さ寸法よりも短い寸法を有していて、拘束部材112の長さ方向に連設されて結合された複数個の拘束部材要素112Aを含んで形成されているため、拘束部材112の内部に空間150を設けるための孔開け作業を、それぞれの拘束部材要素112Aについて個別に行えることになり、このため、この孔開け作業の容易化を図ることができる。
【0079】
図15は、第2別実施形態に係る拘束部材212を示す。この拘束部材212も、第1別実施形態の拘束部材112と同様に、拘束部材212の長さ寸法よりも短い寸法を有していて、それぞれが同じ長さ寸法となっている複数個の拘束部材要素212Aを拘束部材212の長さ方向に連設して結合したものとなっているため、それぞれの拘束部材要素212Aは、拘束部材212をこの拘束部材212の長さ方向に複数個に分割した状態で形成されているものとなっている。また、それぞれの拘束部材要素212Aは、無垢の木材又は集成材による木材により形成され、また、それぞれの拘束部材要素212Aにおける拘束部材212の長さ方向と直交する断面形状は、四角形であり、さらに、それぞれの拘束部材要素212Aの内部に形成されている空間は、拘束部材212の長さ方向と直交する断面形状が円形となっているものである。
【0080】
そして、拘束部材212の長さ方向に連設されている複数個の拘束部材要素212Aは、互いに接着材により結合されている。すなわち、この拘束部材要素212Aは、
図12及び
図13の実施形態の拘束部材要素112Aと比較すると、この拘束部材要素112Aに形成されていた孔112Bを省略したものと同じになっている。
【0081】
この拘束部材212によると、
図13等で示した結合手段69は必要でなくなり、また、第1別実施形態の拘束部材112と同様に、拘束部材212の内部に空間を設けるための孔開け作業を、それぞれの拘束部材要素212Aについて個別に行えるため、この孔開け作業の容易化を図ることができる。
【0082】
図16は、第3別実施形態に係る拘束部材312を示す。この拘束部材312は、この拘束部材312を拘束部材312の長さ方向と直交する方向に等分割した状態で形成されている2個の拘束部材要素312Aにより構成されている。
図17に示されているように、無垢の木材又は集成材による木材により形成されている拘束部材要素312Aは2個用いられ、それぞれの拘束部材要素312Aは、
図17(A)に示されているように、拘束部材312の長さ方向と直交する2つの方向での寸法のうち、一方の寸法が長くて、他方の寸法が短くなっている長方形の平面形状を有し、長辺部には、半円状の凹部312Bが拘束部材要素312Aの全長に渡って形成されている。このような2個の拘束部材要素312Aを、凹部312B同士を向かい合わせて接着剤で結合することにより、長さ方向と直交する断面形状が四角形となっていて、内部に円形の空間が全長に渡って貫通形成されている拘束部材312を製造することができる。
【0083】
図18は、第4別実施形態に係る拘束部材412を示す。この拘束部材412は、この拘束部材412を、拘束部材412の長さ方向と、この長さ方向と直交する方向との両方に分割した状態で形成されている複数個の拘束部材要素412Aにより構成されている。したがって、無垢の木材又は集成材による木材により形成されているそれぞれの拘束部材要素412Aは、第3別実施形態の拘束部材要素312Aを拘束部材412の長さ方向に複数個に等分割した状態のものとなっており、それぞれの拘束部材要素412Aの長辺部には、第3別実施形態の拘束部材要素312Aと同様に、半円状の凹部が拘束部材要素412Aの全長に渡って形成されている。
【0084】
この実施形態の拘束部材412は、2個の拘束部材要素412Aを、これらの拘束部材要素412Aに設けられている半円状の凹部同士を向かい合わせて接着剤により結合し、このように接着剤で結合された2個の拘束部材要素412Aからなる組みを、拘束部材412の長さ方向に複数組連設して、これらの組みの拘束部材要素412Aを接着剤で結合することによって製造される。なお、複数個の拘束部材要素412Aを拘束部材412の長さ方向に連設して接着剤で結合する作業を前作業として行い、この前作業によって得られた拘束部材412の長さ方向に長い2つの拘束部材要素412Aの組みを、半円状の凹部同士を向かい合わせて接着剤により結合する作業を後作業として行うことによっても、長さ方向と直交する断面形状が四角形となっていて、内部に円形の空間が全長に渡って貫通形成されている拘束部材412を製造することができる。
【0085】
図19は、第5別実施形態に係る拘束部材512を示す。この拘束部材512の拘束部材要素512Aは、第4実施形態の拘束部材要素412Aと同じ材料、同じ寸法及び同じ形状に形成されているものであって、それぞれの拘束部材要素412Aに、
図13で示した第1別実施形態の拘束部材要素112Aと同様に、ナット68Aと共に結合手段69を構成する部材であって、それぞれの拘束部材要素512Aを拘束部材512の長さ方向に貫通する細長部材となっている雄ねじ棒部材68を貫通させるための孔512Bを形成したものとなっている。
【0086】
このため、この実施形態の拘束部材512は、
図13で示した塞ぎ板66,67と、雄ねじ棒部材68及びナット68Aからなる結合手段69を用いて製造される。すなわち、2個の拘束部材要素512Aを、これらの拘束部材要素512Aに設けられている半円状の凹部同士を向かい合わせて接着剤により結合し、このように接着剤で結合された2個の拘束部材要素512Aからなる組みを、拘束部材512の長さ方向に複数組連設し、これらの組みを構成しているそれぞれの拘束部材要素512Aの孔512Bに雄ねじ棒部材68を挿通し、雄ねじ棒部材68の長さ方向の両端部を、拘束部材512の長さ方向の両端部に配置された塞ぎ板66,67の孔66A,67Aに挿入し、雄ねじが形成されていて、これらの孔66A,67Aから突出した雄ねじ棒部材68の長さ方向の両端部にナット68Aを螺合して締め付けることにより、この実施形態の拘束部材512が製造される。
【0087】
なお、このようにして拘束部材512を製造する際に、2個の拘束部材要素512Aからなる組みを、拘束部材512の長さ方向に複数組連設するときに、それぞれの組みを接着剤で結合し、さらに、それぞれの組みを、上述したように雄ねじ棒部材68とナット68Aからなる結合手段69によって結合するようにしてもよい。
【0088】
また、雄ねじ棒部材68とナット68Aからなる結合手段69と同様の結合手段は、
図16及び
図17で示した第3別実施形態の拘束部材要素312A同士を結合するために用いてもよく、また、
図18の第4別実施形態において、半円状の凹部同士が向かい合わせられる2個の拘束部材要素412Aを結合するためや、
図19の第5実施形態において、半円状の凹部同士が向かい合わせられる2個の拘束部材要素512Aを結合するためにも用いてもよい。なお、このような結合手段を用いる場合には、雄ねじ部材の両端部と、これらの端部に螺合されるナットとが、拘束部材312,412,512におけるこれらの拘束部材312,412,512の長さ方向と直交する側面から突出しないようにするために、これらの側面に凹部を形成し、これらの凹部の内部に、雄ねじ部材の両端部と、これらの端部に螺合されたナットとを没入させることが好ましい。
【0089】
以上説明したそれぞれの別実施形態に係る拘束部材112,212,312,412,512は、
図4等で示した拘束部材12と同様に、これらの拘束部材112,212,312,412,512の長さ方向と直交する断面形状が四角形となっているものであるため、拘束部材112,212,312,412,512の外面には、
図4等で示した拘束部材12と同様に、壁用面部材と面接触することが可能となっている面接触部が設けられることになり、この面接触部に壁用面部材を釘等の止着具により止着することが可能となる。
【0090】
また、以上説明したそれぞれの実施形態における拘束部材12,112,212,312,412,512は、無垢の木材又は集成材による木材により形成されていたが、これらの拘束部材12,112,212,312,412,512を、繊維強化プラスチック(FRP)により形成してもよく、あるいは、粉砕された木材粉と合成樹脂が含有成分となっている木質風合材料(ミサワホーム株式会社の商品名「M-WOOD」又は「M-WOOD2」)により形成してもよく、あるいは、アルミやアルミ合金等の金属により形成してもよい。
【0091】
また、壁用面部材57,58を拘束部材12,112,212,312,412,512に止着するための釘59,60等の止着具を拘束部材12,112,212,312,412,512に直接打ち込むことが拘束部材12,112,212,312,412,512の材質等のために困難又は不可能である場合には、拘束部材12,112,212,312,412,512の内部に侵入する止着具の軸部よりも直径が小さいドリル等の工具により、壁用面部材57,58と拘束部材12,112,212,312,412,512とに下穴をあけ、そして、止着具を釘やステープルとする場合には、これらの下穴に止着具を打ち込みによって圧入することにより、また、止着具をスクリュー釘とする場合には、これらの下穴に止着具をねじ込むことにより、壁用面部材57,58を拘束部材12,112,212,312,412,512に止着してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、例えば、木軸組みやツーバイフォー等の工法により構築される構築物が地震等で揺れることを抑えるために利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1,2 横長棒状部材である土台部材と梁部材
3~5 縦長棒状部材である柱部材
6 アンカー部材
6A ナット
7 コンクリート基礎
8 四角形フレーム
10,110 制振装置
11 芯部材
11A,11B 芯部材の長さ方向の両端部
12,112,212,312,412,512 拘束部材
21 接続部材である第1ガセットプレート
22 接続部材である第2ガセットプレート
23 接続部材であって、折曲部材でもあるブラケット
25,35 折曲部材
26,36 連結部材
26A 切欠部
27,29,37,39,45,47 結合具である釘
50,150 空間
51 充填材
A,B,C,C’,D 角部