(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】癌を処置するためのリルゾール、リルゾールプロドラッグまたはリルゾール類似体と免疫療法との併用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221102BHJP
A61K 31/428 20060101ALI20221102BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221102BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K31/428
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018560520
(86)(22)【出願日】2017-05-19
(86)【国際出願番号】 US2017033688
(87)【国際公開番号】W WO2017201501
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-04-24
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517178900
【氏名又は名称】バイオヘイブン・ファーマシューティカル・ホールディング・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ブラディミア・コリック
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/007235(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0045401(US,A1)
【文献】特表2019-516712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 31/428
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リルゾールプロドラッグおよびチェックポイント阻害剤を含む、癌の処置のための組合せ医薬であって、該処置を必要とする対象体に有効量のリルゾールプロドラッグおよびチェックポイント阻害剤を含む併用療法を施すために用いられる組合せ医薬であり、
該リルゾールプロドラッグが、下記式:
【化1】
を有するかまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物であり、
チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体である、組合せ医薬。
【請求項2】
チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、PDR001、MEDI068
0およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の組合せ医薬。
【請求項3】
リルゾールプロドラッグおよびチェックポイント阻害剤の組合せが、他の抗癌標準治療療法と併せてまたは逐次的に投与される、請求項1または2記載の組合せ医薬。
【請求項4】
処置される癌が神経膠芽腫である、請求項1~3いずれか1項記載の組合せ医薬。
【請求項5】
処置される癌が黒色腫である、請求項1~3いずれか1項記載の組合せ医薬。
【請求項6】
リルゾールプロドラッグおよびチェックポイント阻害剤が、少なくとも2.0の60日目のマウス生存比(MSR
60)を提供する能力を有する、請求項1~5いずれか1項記載の組合せ医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年5月20日に出願された米国仮出願番号第62/339,433号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、腫瘍学的疾患または癌を処置するために免疫治療剤の治療効果を増強するためのリルゾール、リルゾールの類似体、リルゾールのプロドラッグおよび他の関連リルゾール化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リルゾール(6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール-2-アミン)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の処置に使用されている医薬品である。最近、リルゾールは、他の臨床的有用性を有することが示されてきた。例えば、総用量100mgで1日2回リルゾールを経口投与することにより、気分障害、不安症、難治性うつ病、強迫性不安症などの精神神経症状および精神神経障害を緩和または処置することができる。同様に、高用量のリルゾールがいくつかの抗癌効果を有する可能性があるという指摘がいくつかあるが、それ自体で治療的抗癌効果を有することが示されていない。
【0004】
近年、免疫系を標的とする多数の抗癌療法が、多くの種類の腫瘍にわたって強力な効力を示している。新たな免疫治療剤を用いて癌を処置するこの進化なアプローチにもかかわらず、多くの患者は、免疫療法による処置に対して完全応答または寛解を示さない。また、特定の併用免疫腫瘍剤は、著しい毒性(主に、自己免疫反応)を有する。免疫腫瘍療法の効果をさらに増大または増強することが緊急に必要とされている。免疫学標的抗癌剤による癌への治療アプローチの例としては、抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA4、または他の免疫療法またはチェックポイント阻害剤標的が挙げられる。免疫腫瘍標的の他の例としては、以下のものが挙げられる:CTLA4、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4;Ig、免疫グロブリン;LAG3、リンパ球活性化遺伝子3;mAb、モノクローナル抗体;PD-1、プログラム細胞死タンパク質1;PDL、PD-1リガンド;TIM3、T細胞膜タンパク質3、CD40L、A2aR、アデノシンA2a受容体;B7RP1、B7関連タンパク質1;BTLA、BおよびTリンパ球アテニュエーター;GAL9、ガレクチン9;HVEM、ヘルペスウイルス侵入メディエーター;ICOS、誘導性T細胞共刺激分子;IL、インターロイキン;KIR、キラー細胞免疫グロブリン様受容体;LAG3、リンパ球活性化遺伝子3;PD-1、プログラム細胞死タンパク質1;PDL、PD-1リガンド;TGFβ、トランスフォーミング増殖因子β;TIM3、T細胞膜タンパク質3;およびCD27。他の免疫標的としては、以下のものが挙げられる:抗VEGF2モノクローナル抗体(Mab)、抗EGFrMab、IDO1阻害剤、抗B7-H3Mab、抗GITRMab、抗CD137Mab、抗CD20Mab、IL-15スーパーアゴニスト/IL-15Rα-Fc融合タンパク質、抗CXCR4Mab、インターロイキン21、インターロイキン21、抗KIRMab、抗CD27Mab、抗CSF-1RMab、抗CTLA-4MAb+GMCSF、抗CD30MAb、抗LAG3Mab、抗CD19Mab、抗OX40Mab、抗CD73Mab、OX40アゴニスト、または、二特異的分子、免疫系を標的とする小分子、もしくは抗薬物コンジュゲートまたはワクチンを包含する他の薬剤。
【0005】
阻害性チェックポイント分子であるプログラム死1(PD-1)は、T細胞上で発現して末梢免疫応答を制限する。PD-1とその対応するリガンドB7-H1(PD-L1)またはB7-DC(PD-L2)とのライゲーションは、T細胞エフェクター活性化の直接阻害およびT細胞「枯渇」をもたらすことが示されている。PD-L1およびPD-L2は、様々なヒト癌における腫瘍細胞上でアップレギュレートされることが示されており、これは免疫回避の潜在的メカニズムを表している。さらにまた、PD-1の発現は、腫瘍浸潤リンパ球において増加する。抗PD-1は、PD-1の増加を遮断することができるか、またはその効果を変えることができる。
【0006】
リルゾールは、グルタミン酸調節剤として作用することを含む、複数の作用様式を有する。「条件付(conditionally)」必須アミノ酸であるグルタミンは、高分子(macromolecular)合成および腫瘍細胞代謝にとって最も重要であることが示されている。種々の固形悪性腫瘍は、グルタミンをグルタミン酸に変換するリン酸依存性グルタミナーゼ(GLS)を過剰発現することが示されており、癌代謝におけるグルタミンの役割をさらに強調している。しかしながら、グルタミン酸は、重要な窒素「廃棄物」バンクであり、種々の細胞代謝経路において重要である。このように、免疫細胞に対するグルタミン/グルタミン酸レベルの低下は、増殖およびエフェクター機能を低下させ、抗腫瘍免疫媒介応答を制限し得る。リルゾールのようなグルタミン調節剤は、疾患を処置するために免疫経を標的とする抗癌剤との併用療法の一部として有効であり得る。特に、リルゾールのようなグルタミン酸調節剤は、癌のような増殖性疾患を処置するために、免疫治療剤、例えば特定の抗癌剤と併用される。リルゾールの類似体もまた、同様の効果を有し得る。
【0007】
他の多数のグルタミン酸調節剤が知られている。これらとしては、メマンチン、n-アセチルシステイン、アマンタジン、トピラマート、プレガバリン、ラモトリギン、ケタミン、s-ケタミン、AZD8108、AZD6765、BHV-4157、デキストロメトルファン、AV-101、CERC-301、GLY-13、およびそれらのプロドラッグまたは類似体が挙げられるが、これらに限定されない。これらのグルタミン酸調節剤としては、また、NMDA受容体アンタゴニスト、カイニン酸(kainite)受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アンタゴニスト、代謝型グルタミン酸受容体、または興奮性アミノ酸トランスポーターもしくは小胞グルタミン酸輸送を標的とする薬剤も挙げられるが、これらに限定されない。これらのグルタミン酸調節剤は、グルタミン/グルタミン酸レベルの減少を引き起こし得るか、または興奮性アミノ酸輸送体の発現を増加させることによってグルタミン酸の循環を増加させて、増殖およびエフェクター機能の減少を減少させ得る。
【0008】
同時または逐次提供される、リルゾール(または関連化合物)を免疫療法剤または他の抗癌薬と併用する併用療法は、優れた癌処置特性を有し得る。実際、相乗効果が存在し得る。したがって、本発明は、このような組合せに関する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、疾患、特に癌を処置するために、グルタミン酸調節剤および免疫療法剤を有する併用免疫療法を使用する。好ましいグルタミン酸調節剤は、リルゾールであり、好ましい免疫療法剤は、抗PD-1のようなチェックポイント阻害剤である。グルタミン酸調節剤は、癌細胞を免疫治療剤のような抗癌剤に対してより感受性にすると考えられる。
【0010】
グルタミン酸調節剤は、経口的に、舌下に、皮下的に、または他の送達手段で投与され得る。グルタミン酸調節剤は、体内で薬剤を放出するプロドラッグ、持続放出ビヒクル、遅延放出ビヒクル、または他の好適な送達形態であり得る。グルタミン酸調節剤および免疫療法剤は、同時にまたは逐次送達され得る。薬剤が逐次送達される場合、どちらかの薬剤が最初に投与されてよく、時差(separation of time)は、他の薬剤の投与を開始する前に1つの薬剤の投与を完全に終了するか、またはそれらはやがて混ざり合うことができることを含み得る。
【0011】
好ましいグルタミン酸調節剤としては、アマンタジン、ラモトリギン、メマンチン、ならびに最も好ましいリルゾールおよびそのプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。リルゾールのプロドラッグは、米国特許出願第14/385,551号、米国特許出願第14/410,647号、PCT出願第PCT/US2016/019773号およびPCT出願第PCT/US2016/019787号に記載されている(その記載内容は、出典明示により本明細書の一部を構成する)。安定性および優れた特性を提供するリルゾールの舌下製剤は、PCT出願第PCT/US2015/061106号およびPCT出願第PCT/US2015/061114号に記載されている(その記載内容もまた出典明示により本明細書の一部を構成する)。
【0012】
本発明に有用な舌下製剤は、リルゾールまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、エナンチオマー、水和物もしくはプロドラッグの有効量を含む。該製剤は、リルゾールが比較的大量に舌下製剤に組み込まれて舌下送達されるのに十分な溶解性を提供する。該製剤は、好ましくは、リルゾールの改変された口腔内崩壊製剤である。マンニトールおよびゼラチンを包含する賦形剤を混合し、水で可溶化し、別々に製粉されている活性医薬成分(または「API」)であるリルゾールと混合する前に脱気する。APIの粒径(D50)は、約2ミクロン未満である。該混合物を、急速冷凍により凍結乾燥し、次いで、凍結乾燥する。該製剤は、良好な経口嗜好性を有する。
【0013】
より低い治療用量を達成するために本発明において有用な舌下製剤のためのグルタミン酸調節剤の有効量は、経口投与した薬剤のものよりも少なくてよい。さらにまた、グルタミン酸調節剤の舌下製剤の有効用量は、経口投与した薬剤の約1~95%であり得る。免疫治療剤の舌下製剤を調製することができる程度まで、それはまた改善された特性を有し得る。
【0014】
癌または症状を処置するための製剤の一部としてのグルタミン酸調節剤は、約400mg/日以下、約300mg/日以下、約150mg/日以下、約100mg/日以下、約70mg/日以下、約60mg/日以下、約50mg/日以下、約42.5mg/日以下、約37.5mg/日以下、約35mg/日以下、約20mg/日以下、約17.5mg/日以下、約15mg/日以下、約10mg/日以下、約5mg/日以下、約1mg/日以で投与され得る。加えて、免疫治療剤は、約1~100mg/kg;例えば、1mg/kg、2mg、kg、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、50mg/kg、75mg/kg、100mg/kg、または中間値で投与される。好ましい免疫治療剤は、抗PD-1である。
【0015】
投与は、毎日、隔日、毎週、またはさらに高い時間間隔をおいてもよい。特定の状況下では、より頻繁に投与することができる。加えて、グルタミン酸調節剤および免疫治療剤は、同時または逐次に送達することができる。
【0016】
本発明のこれらおよび他の態様および特徴は、図面および詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】図面の唯一の図は、組合せが神経膠芽腫動物モデルにおける生存率を変更したかを示すために、3つのレベルのリルゾールプロドラッグ(BHV-4157)、抗PD-1、抗PD-1とBHV-4157との種々の組合せ、および対照を試験する、実施例1に記載の試験の結果を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
以下の詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのを助けるために提供される。当業者は、本開示の趣旨または範囲から逸脱せずに、本明細書に記載の実施態様に改変および変更を加えることができる。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を説明するためだけのものであって、限定することを意図するものではない。本明細書に記載の全ての刊行物、特許出願、特許、図面および他の参考文献は、明示的に出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する。
【0019】
以下の用語は、本発明を記載するために使用される。ある用語が本明細書において具体的に定義されていない場合、その用語は、本発明を説明する際のその使用に関連してその用語を適用する当業者によって当該技術分野で認識された意味を与えられる。
【0020】
冠詞「a」および「an」は、本明細書および特許請求の範囲で用いられる場合、文脈上明白に他の意味が指示されていない限り、その冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「an element」とは、1つのelementまたは2つ以上のelementを意味する。
【0021】
用語「リルゾール」は、本明細書で用いられる場合、以下のとおりの化学構造を有する薬物をいう。それは、現在、リルテック(RILUTEK(登録商標))として市販されている。用語「リルゾール」とは、全てのプロドラッグ、エナンチオマー、または誘導体およびその薬学的に許容される塩もいう。
【化1】
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「舌下投与」とは、化学薬品または薬物を対象体の舌の下に置くことによって投与する経路をいう。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「プロドラッグ」は、変化した形態またはより活性の低い形態で投与され得る薬物の前駆体である。プロドラッグは、加水分解または他の代謝経路によって生理学的環境において活性薬物形態に変換され得る。
【0024】
用語「リルゾールプロドラッグ」とは、修飾を有するリルゾールからの誘導体である化合物をいう。リルゾールプロドラッグとは、身体によってリルゾールの活性形態に代謝される化合物をいうこともできる。
【0025】
用語「ALS」とは、本明細書で用いられる場合、筋萎縮性側索硬化症を意味する。
【0026】
用語「免疫療法抗癌剤」は、免疫系を標的として抗癌治療効果をもたらす薬剤を含む。このような標的および薬剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA4または他の免疫療法もしくはチェックポイント阻害剤標的。免疫腫瘍標的の他の例としては、以下のものが挙げられる:CTLA4、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4;Ig、免疫グロブリン;LAG3、リンパ球活性化遺伝子3;mAb、モノクローナル抗体;PD-1、プログラム細胞死タンパク質1;PDL、PD-1リガンド;TIM3、T細胞膜タンパク質3、CD40L、A2aR、アデノシンA2a受容体;B7RP1、B7関連タンパク質1;BTLA、BおよびTリンパ球アテニュエーター;GAL9、ガレクチン9;HVEM、ヘルペスウイルス侵入メディエーター;ICOS、誘導性T細胞共刺激分子;IL、インターロイキン;KIR、キラー細胞免疫グロブリン様受容体;LAG3、リンパ球活性化遺伝子3;PD-1、プログラム細胞死タンパク質1;PDL、PD-1リガンド;TGFβ、トランスフォーミング増殖因子β;TIM3、T細胞膜タンパク質3;およびCD27。他の免疫標的としては以下のものが挙げられる:抗VEGF2モノクローナル抗体(Mab)、抗EGFrMab、IDO1阻害剤、抗B7-H3Mab、抗GITRMab、抗CD137Mab、抗CD20Mab、IL-15スーパーアゴニスト/IL-15Rα-Fc融合タンパク質、抗CXCR4Mab、インターロイキン21、インターロイキン21、抗KIRMab、抗CD27Mab、抗CSF-1RMab、抗CTLA-4MAb+GMCSF、抗CD30MAb、抗LAG3Mab、抗CD19Mab、抗OX40Mab、抗CD73Mab、OX40アゴニスト、または二特異的分子、免疫系を標的とする小分子、または抗薬物コンジュゲートまたはワクチンを包含する他の薬剤、またはニボルマブ(オプジーボ(Opdivo))、ペンブロリズマブ(キートルーダ(Keytruda))、ピディリズマブ、イピリムマブ(ヤーボイ(Yervoy))、PDR001、MEDI0680、アテゾリズマブ、デュルバルマブまたはそれらの組合せ。
【0027】
用語「癌」としては、以下の増殖性疾患が挙げられるが、これらに限定されない:急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、小児癌、AIDS関連癌、カポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、肛門癌、アストロサイトーマ、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、皮膚癌(非黒色腫)、胆管癌、膀胱癌、骨癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、骨肉腫および悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、胚芽腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、乳癌、気管支癌、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、カルチノイド腫瘍、消化器癌、心臓腫瘍、原発リンパ腫、子宮頚癌、胆管癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉腫およびセザリー症候群、非浸潤性乳管癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜癌、脳室上衣腫、食道癌、感覚神経芽腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌、眼球内黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、骨悪性線維性組織球腫および骨肉腫(Fibrous Histiocytoma of Bone, Malignant, and Osteosarcoma)、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、卵巣および精巣の胚細胞腫瘍(Germ Cell Tumor, Ovarian, Testicular)、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞(肝)癌、ランゲルハンス細胞組織球増殖症(Histiocytosis, Langerhans Cell)、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、カポジ肉腫、腎臓、腎細胞、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭癌、白血病(慢性リンパ性(CLL)、慢性骨髄性(CML)、ヘアリー細胞)、口唇および口腔癌(Lip and Oral Cavity Cancer)、肝癌(原発)、肺癌(非小細胞、小細胞)、リンパ腫(ホジキン、非ホジキン)、マクログロブリン血症(ワルデンストレーム)、男性乳癌、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫,原発不明の転移性頚部扁平上皮癌(Metastatic Squamous Neck Cancer with Occult Primary)、NUT遺伝子関与正中管癌(Midline Tract Carcinoma Involving NUT Gene)、口部癌(Mouth Cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、骨髄性白血病(慢性(CML))(Myelogenous Leukemia, Chronic (CML))、骨髄性白血病(急性(AML)骨髄腫)(Myeloid Leukemia, Acute (AML) Myeloma)、多発性骨髄増殖性腫瘍(Multiple, Myeloproliferative Neoplasms)、鼻腔および副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌(Oral Cancer)、口腔癌(Oral Cavity Cancer)、口唇および中咽頭癌、骨肉腫および骨悪性線維性組織球腫(Osteosarcoma and Malignant Fibrous Histiocytoma of Bone)、卵巣癌、低悪性度腫瘍(Low Malignant Potential Tumor)、膵癌、膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)、乳頭腫、傍神経節腫、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、妊娠期乳癌(Pregnancy and Breast Cancer)、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発腹膜癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎)癌(腎盂および尿管)(Renal Cell (Kidney) Cancer, Renal Pelvis and Ureter)、移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、子宮横紋筋肉腫(Rhabdomyosarcoma, Uterine)、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明の転移性頚部扁平上皮癌(Squamous Neck Cancer with Occult Primary, Metastatic)、胃癌、T細胞リンパ腫、精巣癌、喉の癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行上皮癌(Transitional Cell Cancer of the Renal Pelvis and Ureter)、原発不明の尿管および腎盂移行上皮癌(Unknown Primary, Ureter and Renal Pelvis, Transitional Cell Cancer)、尿管癌、子宮癌、子宮内膜子宮肉腫(Endometrial, Uterine Sarcoma)、膣癌、外陰癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍。
【0028】
用語「処置」とは、対象体または特にヒトにおける状態または疾患の処置をいい、以下のことを包含し得る:(i)疾患にかかりやすい素因をもっているが該疾患を有するとまだ診断されていない対象体において該疾患または状態が生じることを予防すること;(ii)該疾患または状態を阻害すること、すなわち、その発生を抑止すること;該疾患または状態を緩和すること、すなわち、該状態の退行を引き起こすこと;または(iii)該疾患によって生じる状態、すなわち、疾患の症状を寛解することまたは緩和すること。「処置」は、本明細書で用いられる場合、他の標準的な治療と併せてまたは単独で使用され得る。
【0029】
用語「有効な」とは、意図された用途の文脈内で使用されたときに意図された結果をもたらす、化合物、組成物または成分の量を記載するために使用される。
【0030】
用語「有効量」とは、処置を必要とする対象体に投与したとき、本明細書に定義されるように処置をもたらすのに十分な量をいう。有効量は、処置されている対象体および病態、苦痛の重篤度および投与方法に応じて変わり、当業者はルーチン的に決定することができる。
【0031】
用語「薬学的に許容される塩」とは、本明細書全体を通して、該当する場合、化合物の溶出およびバイオアベイラビリティを向上させるために、患者の消化管の胃液または消化液への化合物の溶解性を増大させるために提供される、本明細書に記載の1つ以上の化合物またはプロドラッグの塩形態を表すために使用される。薬学的に許容される塩は、該当する場合には、無機および有機の塩基および酸に由来するものが挙げられる。適切な塩としては、製薬技術分野において周知の多数の酸および塩基の中でも、カリウムおよびナトリウムのようなアルカリ金属、およびカルシウムおよびマグネシウムのようなアルカリ土類金属に由来するもの、ならびにアンモニウム塩が挙げられる。ナトリウムおよびカリウム塩は、本発明によるリン酸塩の中和塩として特に好ましい。好ましい実施態様において、本説明は、親化合物の生物学的有効性および特性を保持し、投与量として生物学的にまたは他に有害ではない、本明細書に記載の修飾ペプチドの薬学的に許容される塩を提供する。本発明の化合物は、アミノ基およびカルボキシ基の存在によってそれぞれ酸性塩および塩基性塩の両方を形成することができる。
【0032】
用語「Cmax」とは、本明細書で用いられる場合、初回用量の投与と二次用量(second dose)の投与との間の、対象体の血液、血清、特定のコンパートメントまたは試験領域における薬物の最大濃度をいう。用語Cmaxは、指定されている場合には、用量標準化比(dose normalized ratios)をいうこともできる。
【0033】
用語「Tmax」とは、本明細書で用いられる場合、対象体の血液、血清、特定のコンパートメントまたは試験領域の最大濃度(Cmax)に達した、薬物投与後の時または期間をいう。
【0034】
用語「AUC」(曲線下面積)とは、対象体が吸収したか曝露された薬物の合計量をいう。一般に、AUCは、濃度がごくわずかになるまでの経時的な対象体中の薬物濃度のプロットにおける数学的方法から得られ得る。用語「AUC」(曲線下面積)はまた、(より早い時間間隔でAUCを増加させることになる舌下吸収の場合のように)特定の時間間隔での部分AUCをいうこともあり得る。
【0035】
本発明は、免疫治療剤およびグルタミン酸調節剤を用いる併用療法に関する。これら2つの薬物の組合せは、組合せ製品として単回投与で投与すること、同一もしくは異なるフォーマットを使用して同時に投与すること、または同一または異なる送達形態を用いて逐次投与することができる。例えば、免疫治療剤およびグルタミン酸調節剤の両者を錠剤にまたは舌下剤形の一部にすることができる場合、それらを一緒に投与することができる。同様に、免疫治療剤が注射(ボーラスまたは静脈内)によってのみ投与することができ、グルタミン酸調節剤が同じフォーマットで投与することができる場合、これはまた同時または逐次投与にも使用することができる。しかしながら、免疫治療剤が注射によってのみ送達することができ(例えば、抗体である場合)、グルタミン酸調節剤が錠剤として投与または舌下投与することができる場合、この2つの薬剤の送達は、異なるフォーマットによって起こり得る。
【0036】
グルタミン酸調節剤のいくつかは舌下投与され得る。PCT出願第PCT/US2015/061106号およびPCT出願第PCT/US2015/061114号には、好ましいグルタミン酸調節剤であるリルゾールの舌下製剤が記載されている。舌下製剤は、必要とする対象体に有効量で投与され得る。対象体は、動物またはヒトであり得る。
【0037】
本発明と共に使用するため、グルタミン酸調節剤またはその薬学的に許容される塩は、舌下投与に適した医薬組成物に製剤化することができる。免疫治療剤は注射がより標準的であるが、いくつかの状況においては、免疫治療剤もまた舌下剤として製剤化することができるが。
【0038】
リルゾールおよびその薬学的に許容される塩のようなグルタミン酸調節剤は、当該技術分野において周知の薬学的に許容される担体を使用して、舌下または頬側投与に適した用量に製剤化することができる。このような担体は、舌下投与用のグルタミン酸調節剤を、処置される対象体による舌下吸収のために、錠剤、散剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などの剤形に製剤化することを可能にする。これらの担体は、糖、デンプン、セルロースおよびその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、乳化剤、等張生理食塩水、パイロジェンフリー水およびそれらの組合せから選択され得るが、これらに限定されない。特に、それが唾液に容易に溶解する場合には、いかなる形態の物質も舌下投与に許容され得る。
【0039】
舌下投与された化学薬剤または薬物は、舌の下の粘膜を通って毛細血管に拡散し、次いで、該対象体の静脈循環に入ることができる。このように、舌下投与は、消化管における分解、肝臓における薬物代謝による変質などのリスクなしで、静脈循環への直接またはより迅速な進入を可能にするという点で経口投与よりも有利であり得る。市場の様々な薬は、舌下投与用に設計されている。リルゾールは、一般的に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の処置に使用される。しかしながら、他の使用が見出されており、特に、リルゾールまたはリルゾールのプロドラッグまたはその薬学的に許容される塩は、癌を含む他の障害の処置のために舌下投与に供される。
【0040】
医薬組成物は、承認された医薬成分、すなわちリルゾールを、それらの意図された目的を達成するのに有効な量で含み得る。例えば、対象体に舌下投与されるグルタミン酸調節剤の用量は、免疫治療剤と組み合わせて症状の軽減などの経時的な対象体における有益な応答を提供するのに十分である。組合せは、相乗効果を有し得る。
【0041】
投与されるグルタミン酸調節剤の量および免疫治療剤の量は、処置される対象体の年齢、性別、体重および総体的な健康状態を含めて、処置される対象体に依存し得る。これに関して、投与のための薬剤の正確な量は、医師の判断に依存する。該症状および障害に関連する状態の処置または軽減において投与されるグルタミン酸調節剤および免疫治療剤の有効量を決定する際に、医師は、症状の重篤度または障害の進行を含む臨床的因子を評価し得る。いくつかの状態において、グルタミン酸調節剤または免疫治療剤の急速な吸収が望まれ得る。いかなる場合も、当業者は、本発明の化学薬剤の適切な投与量を容易に決定することができる。
【0042】
医薬組成物は、また、他の薬学的に許容される担体および/または賦形剤、例えば、結合剤、滑沢剤、希釈剤、コーティング剤、崩壊剤、障壁層成分、流動促進剤、着色剤、溶解性増強剤、ゲル化剤、充填剤、タンパク質、コファクター、乳化剤、可溶化剤、懸濁化剤およびそれらの混合物も含む。当業者は、他のどのような薬学的に許容される担体および/または賦形剤が本発明の製剤に含まれ得るか分かる。賦形剤の選択は、組成物の特徴および製剤中の他の薬学的に活性な化合物の性質に依存する。適切な賦形剤は、当業者に知られており(Handbook of Pharmaceutical Excipients, fifth edition, 2005 edited by Rowe et al., McGraw Hillを参照)、予想外の特性を有する新規舌下製剤を得るために用いられる。
【0043】
加えて、舌下使用のための医薬組成物は、承認された医薬成分、すなわちリルゾールをさらなる賦形剤と組み合わせることによって得ることができ、また、処置される対象体による舌下吸収のために、錠剤、散剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などのような投与剤形を得るために加工してもよい。好適な賦形剤は、充填剤、例えば、ラクトース、シュークロース、マンニトールまたはソルビトールを包含する糖;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニル-ピロリドン(PVP)であり得るが、これらに限定されない。所望により、崩壊剤も同様に併せることができ、例示的な崩壊剤としては、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩を挙げることができるが、これらに限定されない。組成物は、調剤方法のいずれかによって調製され得るが、すべて方法は、1つ以上の上記化学薬剤を1つ以上の必要な成分を構成する担体と組み合わせる工程を含む。一般に、本発明の医薬組成物は、当該技術分野で知られている慣用の方法で、例えば、慣用の混合、溶解、造粒、糖衣製造、リビゲート(levigating)、乳化、カプセル化、封入、凍結乾燥のプロセスなどによって、製造され得る。
【0044】
本発明の組み合わせ製品に有用な舌下製剤は、経口的に溶解または崩壊する錠剤(ODT)の形態で調製することができる。本明細書で用いられる場合、ODTは、グルタミン酸調節剤および/または免疫治療剤を水溶性希釈剤と混合し、錠剤に打錠するすることによって調製され得る。活性な生成物を含む懸濁液は、適切な賦形剤を用いて調製することができ、該懸濁液は、ブリスターパック剤に調剤され、凍結乾燥することができる。ODTに使用することができる例示的な凍結乾燥製剤プラットフォームは、ZYDIS(登録商標)(Catalent, Somerset, NJ, USA)製剤である。特に、水を包含する賦形剤を混合し、グルタミン酸調節剤をサイズに合わせて別に粉砕し、賦形剤と混合する。次いで、懸濁液を、急速冷凍および凍結乾燥によって凍結乾燥させる。他のODT調製方法を制限なく使用することができ、その一般的な方法の詳細な記載は、例えば、米国特許第5,631,023号;第5,837,287号;第6,149,938号;第6,212,791号;第6,284,270号;第6,316,029号;第6,465,010号;第6,471,992号;第6,471,992号;第6,509,040号;第6,814,978号;第6,908,626号;第6,908,626号;第6,982,251号;第7,282,217号;第7,425,341号;第7,939,105号;第7,993,674号;第8,048,449号;第8,127,516号;第8,158,152号;第8,221,480号;第8,256,233号;および第8,313,768号に記載されている(各々、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
【0045】
本発明において有用な舌下製剤は、グルタミン酸調節剤または有効量のグルタミン酸調節剤プロドラッグを含むことができる。同様に、特定の状況において、免疫治療剤は、プロドラッグにすることができる。プロドラッグは、活性物質と類似のまたはより活性の低い形態であり得る。プロドラッグは、舌下投与された場合、改善された生理化学的、生理学的薬物動態学的または治療的特性を有し得る。プロドラッグは、経口投与または舌下投与された場合に副作用を軽減し得る。
【0046】
舌下製剤化された、化合物、または最終生成物のサブポーションの臨床的または治療的効果は、標準試験パラメータによって測定されるように、医薬薬剤について改善された薬物動態プロファイルを有し得る。グルタミン酸調節剤または全組成物が舌下投与されると、該薬物のTmax、CmaxおよびAUCは、同じ用量の同じ化合物の経口投与型と比較して改善され得る。例えば、グルタミン酸調節剤の舌下製剤は、経口投与したグルタミン酸調節剤よりも大きいCmaxを有して、治療上有益な効果を提供し得る。グルタミン酸調節剤の舌下製剤は、経口投与したグルタミン酸調節剤よりも早いかまたは小さいTmaxを有して、治療上有益な効果、および場合によってはより迅速な治療効果を提供し得る。別法として、グルタミン酸調節剤の舌下製剤は、経口投与したグルタミン酸調節剤よりも大きい、薬剤1mgあたりのAUCを有し得る。加えて、グルタミン酸調節剤は免疫治療剤をより効果的にすることができるので、固有の副作用を減少させながら同じ結果を達成するために、より少ない量の免疫治療剤が必要とされ得る。
【0047】
本発明は、癌のような疾患を処置する方法を提供する。該方法は、該処置を必要とする対象体に、有効量のグルタミン酸調節剤またはその薬学的に許容される塩および抗癌剤、好ましくは免疫治療剤、またはその薬学的に許容される塩を舌下投与することを含む。
【0048】
かかる処置を必要とする対象体の同定は、対象体または医療専門家の判断であり得、主観的(例えば、意見)または客観的(例えば、試験または診断方法により測定可能)であり得る。同定された対象体は、該処置を必要とする動物またはヒト、特にヒトであり得る。このような処置は、疾患に苦しんでいる対象体、特にヒトに、適切に投与される。
【0049】
処置の有効量は、処置される対象体および疾患、苦痛の重篤度および投与方法に依存して変わり、当業者によってルーチン的に決定され得る。
【0050】
組合せ製品の治療効果は、特にそれが症状の処置に適用される場合、その投与から約数分~約1時間以内に生じることが明らかであり得る。特に、治療効果は、投与から約1分以内、約2分以内、約3分以内、約4分以内、約5分以内、約6分以内、約7分以内、約8分以内、約9分以内、約10分以内、約11分以内、約12分以内、約13分以内、約14分以内、約15分以内、約16分以内、約17分以内、約18分以内、約20分以内、約60分以内、約90分以内に始まり得る。しかしながら、疾患の長期的な治癒または寛解は、投与から数週間または数ヶ月間は起こらないかもしれない。
【0051】
症状に対する効果は、その投与から約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間、約2日間、または約3日間またはそれ以上の間維持され得る。うまくいけば、病態に対する長期的な効果が達成されると、疾患および症状は、永久に排除される。
【0052】
舌下投与のためのグルタミン酸調節剤の有効量または用量は、経口投与した薬剤よりも少ない量であり得る。特に、リルゾールなどのグルタミン酸調節剤の舌下投与における有効量は、経口投与した薬剤自体の投与量の約1~95%であり得る。加えて、免疫治療剤の量の同様の減少は、いずれかの投与様式による、グルタミン酸調節剤自体の投与によって達成され得る。
【0053】
任意の投与回数としては、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日おきに1回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、2週間おきに1回、1か月に1回または2回などが挙げられる。
【0054】
グルタミン酸調節剤は、そのまま使用することができるか、またはプロドラッグの形態であってもよい。リルゾールのプロドラッグは、米国特許出願第14/385,551号、米国特許出願第14/410,647号、PCT出願第PCT/US2016/019773号およびPCT出願第PCT/US2016/019787号に記載されている。好ましいリルゾールプロドラッグは、エナンチオマー、ジアステレオマー、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、ならびにそれらの複合体を包含する、構造:
【化2】
[式中、R
23は、H、CH
3、CH
2CH
3、CH
2CH
2CH
3、CH
2CCH、CH(CH
3)
2、CH
2CH(CH
3)
2、CH(CH
3)CH
2CH
3、CH
2OH、CH
2OCH
2Ph、CH
2CH
2OCH
2Ph、CH(OH)CH
3、CH
2Ph、CH
2(シクロヘキシル)、CH
2(4-OH-Ph)、(CH
2)
4NH
2、(CH
2)
3NHC(NH
2)NH、CH
2(3-インドール)、CH
2(5-イミダゾール)、CH
2CO
2H、CH
2CH
2CO
2H、CH
2CONH
2、およびCH
2CH
2CONH
2からなる群から選択される]
を有する。
【0055】
好ましいリルゾールプロドラッグは、下記式:
【化3】
を有する。
【0056】
当業者であれば、類似または変種プロドラッグを他のグルタミン酸調節剤から製造することができることを認識する。このような薬剤は、本発明の組み合わせの一部として有用である。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0058】
この実施例において、免疫治療剤である抗PD-1と併せたグルタミン酸調節剤であるBHV-4157の組合せの効果は、Zeng, J., et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys., 2013 June 1; 86(2):343-349に実質的に記載されている神経膠腫モデル(その一部を以下に再現する)においていずれか単独のものと比較した。
【0059】
細胞
GL261-Luc細胞は、5%COおよび5%O2に維持した湿式インキュベーター(Gibco)において、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)+10%ウシ胎仔血清+1%ペニシリンストレプトマイシン中にて37℃で増殖させる。
【0060】
腫瘍モデル
4~6週齢または6~8週齢の雌性C57BL/6Jマウス(Harlan)を、Sonabend AM, Velicu S, Ulasov IV, et al. A safety and efficacy study of local delivery of インターロイキン12 transgene by PPC polymer in a model of experimental glioma. Anticancer Drugs. 2008;19:133-142に記載の同所性神経膠腫実験に使用する。同系神経膠腫を確立するために、130,000個のGL261-Luc細胞を1分間にわたって左線条体に1μLの体積で定位的に以下の座標に注射する:前方1mm、ブレグマから側方1mm、および皮質表面から深さ3mm。移植から7日目、21日目および35日目にルシフェラーゼイメージングにより腫瘍負荷をモニターし、各群の平均腫瘍放射輝度がほぼ同等になるようにマウスを腫瘍放射輝度に基づいて無作為に処置アームに割り当てる。動物が予め決定された神経脱落の兆候(歩行不能(failure to ambulate)、体重減少>20%体重、嗜眠、猫背の姿勢)を示した時に、該動物を安楽死させる。腫瘍の発生率は100%である。生存実験において、各アームは、マウス6~10匹を有する。全ての実験は少なくとも3回繰り返される。
【0061】
抗PD-1抗体
ハムスター抗マウスPD-1モノクローナル抗体産生ハイブリドーマG4は、Hirano F, Kaneko K, Tamura H, et al. Blockade of B7-H1 and PD-1 by monoclonal antibodies potentiates cancer therapeutic immunity. Cancer Res. 2005;65:1089-1096に記載されているように抗体を産生するために使用される。
【0062】
具体的なプロトコール
4~6週齢の雌性C57BL/6Jマウスの左線条体に各々130,000個のGL261細胞を頭蓋内移植した。マウスは、Johns Hopkins University Animal FacilityのInstitutional Animal Care and Use Committeeプロトコルに従って収容および維持した。腫瘍負荷を評価するために7日目、21日目および35日目にマウスを生物発光IVIS(登録商標)イメージング(Perkin Elmer)によって画像化し、以下のように、1アーム当たり10匹のマウスの群に無作為に割り当てた:
1. 対照
2. 抗PD-1
3. トリグリルゾール15mg/kg
4. トリグリルゾール30mg/kg
5. トリグリルゾール45mg/kg
6. 抗PD-1+トリグリルゾール15mg/kg
7. 抗PD-1+トリグリルゾール30mg/kg
8. 抗PD-1+トリグリルゾール45mg/kg
【0063】
【0064】
0日目は、頭蓋内移植の日を表す。対照アーム1は処置を受けなかった。対照アーム2には、10日目、12日目、14日目に腹腔内注射により200μg/動物の用量でαPD-1だけを投与した。対照アーム3、4および5には、10日目から始めて毎日、腹腔内注射により15、30および45mg/kg(それぞれ)の用量でBHV-4157だけを投与した。対照アーム6、7および8には、10日目から始めて毎日、腹腔内注射により15、30および45mg/kg(それぞれ)の用量でBHV-4157を投与し、10日目、12日目、14日目に腹腔内注射により200μg/動物の用量でαPD-1を投与した。
【0065】
マウスがIVISイメージングにより腫瘍負荷が無いことを示した時に処置を終了した。動物は、中枢神経系障害、猫背の姿勢(hunched posture)、嗜眠、体重減少および歩行不能を含むヒトのエンドポイントに従って安楽死させた。
【0066】
実験の目的は、併用療法がどちらかの療法単独よりも利益をもたらすかどうかを確かめることであった。結果を
図1に示す。
図1から明らかなように、併用療法は、いずれの個別療法よりも実質的に優れており、その効果は、単に相加的ではなく、相乗的に見える。かくして、グルタミン酸/グルタミン代謝に対するグルタミン酸調節剤の効果は腫瘍細胞を弱め、抗PD-1抗体をより効果的にすると思われる。まったく驚くべきことに、本発明によれば、移植から約30日目、40日目および60日目のマウスの生存率について、免疫療法抗癌剤と併せてグルタミン酸調節剤で処置したマウスの生存率は、免疫療法抗癌剤単独と比較して、約2倍以上であった。下記の表1は実施例1からのデータを示す。
【0067】
【0068】
「MSRx」とも称される用語「マウス生存比」とは、実施例1に記載の手順に従って、マウスに腫瘍を移植してから「x」日後の、(i)免疫療法抗癌剤+グルタミン酸調節剤によって処置されたマウスの生存率を(ii)免疫療法抗癌剤単独で処置したマウスの生存率で割ることによって算出した値をいう。かくして、MSR60とは、腫瘍移植から60日目のマウス生存比をいう。
【0069】
表1から、26日目までに、アーム1(対照)のマウスは0%の生存率を有し、アーム2(PD-1)のマウスは、50%の生存率を有し、アーム6、7および8のマウスは少なくとも70~80%の生存率を有したことが分かる。したがって、26日目に、マウス生存比(MSR26)は約1.4~1.6(すなわち、70/50および80/50)であった。28日目には、アーム1(対照)のマウスは、0%の生存率を有し、アーム2(PD-1)のマウスは、30%の生存率を有し、アーム6、7および8のマウスは、少なくとも60~80%の生存率を有した。したがって、28日目に、マウス生存比(MSR28)は約2.0~2.6(すなわち、60/30および80/30)であった。60日目に、アーム1(対照)のマウスは0%の生存率を有し、アーム2(PD-1)のマウスは30%の生存率を有し、アーム6、7および8のマウスは60~70%の生存率を有した。したがって、60日目に、マウス生存比(MSR60)は約2.0~2.3(すなわち、60/30および70/30)であった。好ましくは、本発明によれば、腫瘍移植から26日目に測定したとき、マウス生存比(MSR26)は、少なくとも1.4、より好ましくは少なくとも1.6である。好ましくは、本発明によれば、腫瘍移植から28日目に測定したとき、マウス生存比(MSR28)は、少なくとも2.0、より好ましくは少なくとも2.6である。好ましくは、本発明によれば、腫瘍移植から60日目に測定したとき、マウス生存比(MSR60)は、少なくとも2.0、より好ましくは少なくとも2.3である。好ましくは、本発明によれば、未処置マウスが0%の生存率に達した時点またはその後腫瘍移植から60日目までに測定したマウス生存比は、少なくとも1.4、少なくとも1.6、少なくとも2.0、少なくとも2.3、または少なくとも2.6である。
【0070】
典型的には、本発明による併用療法、すなわち、免疫療法抗癌剤およびグルタミン酸調節剤は、少なくとも2.0、より典型的には少なくとも2.3(60日目に測定した、MSR60)のマウス生存比をもたらす。
【0071】
結果を
図1に示す。
図1から明らかなように、併用療法は、いずれの個別療法よりも実質的に優れており、その効果は、単に相加的ではなく、相乗的に見える。かくして、グルタミン酸/グルタミン代謝に対するグルタミン酸調節剤の効果は腫瘍細胞を弱め、抗PD-1抗体をより効果的にすると思われる。
【0072】
種々の固形悪性腫瘍は、グルタミンをグルタミン酸に変換するリン酸依存性グルタミナーゼ(GLS)を過剰発現することが示されており、癌代謝におけるグルタミンの役割を強調している。しかしながら、グルタミン酸は、重要な窒素「廃棄物」バンクであり、種々の細胞代謝経路において重要である。このように、免疫細胞に対するグルタミン/グルタミン酸レベルの低下は、増殖およびエフェクター機能を低下させ、抗腫瘍免疫媒介応答を制限し得る。この効果はGLS産生腫瘍細胞に対して明らかであるが、グルタミン酸受容体は多数の他の腫瘍細胞に見られ、この併用療法はそれらの細胞に対しても同様に有効であり得ると考えられる。
【0073】
本明細書で引用された全ての特許、公開された特許出願および他の参考文献の全内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する。
【0074】
当業者であれば、ルーチンに過ぎない実験法を用いて、本明細書に記載されている特定の手順に対する多数の等価物を認識するかまたは確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲によってカバーされる。
また、本願は以下の態様も包含する。
[態様1]
癌の処置方法であって、該処置を必要とする対象体に有効量のリルゾールおよびチェックポイント阻害剤からなる併用療法を投与することによる、方法。
[態様2]
リルゾールおよびチェックポイント阻害剤が、同時にまたは逐次的に投与される、態様1記載の方法。
[態様3]
チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1またはCTLA-4を標的とする、態様1記載の方法。
[態様4]
チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、イピリムマブ、PDR001、MEDI0680、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよび「それらの組み合わせからなる群から選択される、態様1記載の方法。
[態様5]
リルゾールが、リルゾールの類似体もしくはプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、エナンチオマーもしくは水和物の形態である、態様1記載の方法。
[態様6]
リルゾールおよびチェックポイント阻害剤の組合せが、他の抗癌標準治療療法と併せてまたは逐次的に投与される、態様1記載の方法。
[態様7]
組合せが、リルゾールおよび抗PD1または抗PD-L1であり、処置される癌が神経膠芽腫である、態様1記載の方法。
[態様8]
組合せが、リルゾールおよび抗PD1または抗PD-L1であり、処置される癌が黒色腫である、態様1記載の方法。
[態様9]
プロドラッグが、下記式:
【化5】
を有する、態様5記載の方法。
[態様10]
リルゾールおよびチェックポイント阻害剤が、少なくとも2.0の60日目のマウス生存比(MSR
60
)を提供する能力を有する、態様1記載の方法。
[態様11]
リルゾールおよびチェックポイント阻害剤が、少なくとも2.0の60日目のマウス生存比(MSR
60
)を提供する能力を有する、態様4記載の方法。
[態様12]
リルゾールのプロドラッグおよびチェックポイント阻害剤が、少なくとも2.0の60日目のマウス生存比(MSR
60
)を提供する能力を有する、態様5記載の方法。
[態様13]
リルゾールのプロドラッグおよびチェックポイント阻害剤が、少なくとも2.0の60日目のマウス生存比(MSR
60
)を提供する能力を有する、態様9記載の方法。