(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】グラフェン含有トナーおよびその関連方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/09 20060101AFI20221102BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20221102BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20221102BHJP
G03G 9/093 20060101ALI20221102BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G03G9/09
G03G9/08 391
G03G9/087 331
G03G9/093
G03G9/097 365
G03G9/097 375
G03G9/08 381
(21)【出願番号】P 2019002375
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2022-01-04
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ユー・チー
(72)【発明者】
【氏名】シゲン・リー
(72)【発明者】
【氏名】チー-ミン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ピーエヌ・ヴェアジン
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ジー・ザルツ
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-210967(JP,A)
【文献】特開2011-008162(JP,A)
【文献】特開2016-066017(JP,A)
【文献】中国特許第103728854(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンと、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶質ポリエステル樹脂と、を含むコアを含むグラフェン含有トナーであって、前記コア上にシェルをさらに含む、グラフェン含有トナー。
【請求項2】
前記グラフェンは、前記コア内に均質に分布するとともに前記トナー内に完全に封入されている、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記グラフェンは、約10重量%以下の量で前記トナー中に存在する、請求項1に記載のトナー。
【請求項4】
前記グラフェンは、グラフェンナノプレートレットの形態である、請求項1に記載のトナー。
【請求項5】
前記グラフェンナノプレートレットは、約6nm~約8nmの範囲内の平均厚さおよび約0.5μm~約5μmの範囲内の平均直径を特徴とする、請求項4に記載のトナー。
【請求項6】
前記非晶質ポリエステル樹脂は、第1の非晶質ポリエステル樹脂であり、前記コアはさらに第2の非晶質ポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載のトナー。
【請求項7】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、式I
【化1】
(式中、aおよびbの各々は1~12の範囲内にあり、pは10~100の範囲内にある)を有する請求項6に記載のトナー。
【請求項8】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、ポリ(1,6-ヘキシレン-1,12-ドデカノエート)である、請求項7に記載のトナー。
【請求項9】
前記第1の非晶質ポリエステル樹脂は、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール-コ-テレフタレート-フマレート-ドデセニルスクシネート)であり、前記第2の非晶質ポリエステル樹脂が、ポリ(プロポキシル化エトキシル化ビスフェノール-コ-テレフタレート-ドデセニルスクシネート-トリメリト酸無水物)である、請求項7に記載のトナー。
【請求項10】
前記シェルは、前記第1の非晶質ポリエステル樹脂、前記第2の非晶質ポリエステル樹脂、またはその両方を含む、請求項6に記載のトナー。
【請求項11】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、式I
【化2】
(式中、aおよびbの各々は1~12の範囲内にあり、pは10~100の範囲内にある)を有する、請求項10に記載のトナー。
【請求項12】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、ポリ(1,6-ヘキシレン-1,12-ドデカノエート)である、請求項11に記載のトナー。
【請求項13】
前記シェルは、前記第1および第2の非晶質ポリエステル樹脂の両方を含み、前記第1の非晶質ポリエステル樹脂は、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール-コ-テレフタレート-フマレート-ドデセニルスクシネート)であり、前記第2の非晶質ポリエステル樹脂は、ポリ(プロポキシル化エトキシル化ビスフェノール-コ-テレフタレート-ドデセニルスクシネート-トリメリト酸無水物)である、請求項11に記載のトナー。
【請求項14】
ワックスをさらに含む、請求項1に記載のトナー。
【請求項15】
前記トナーは、着色剤を含まない、請求項1に記載のトナー。
【請求項16】
前記トナーは、外面添加剤を含み、約130℃以下の最低定着温度を示す、請求項1に記載のトナー。
【請求項17】
グラフェンナノプレートレットと、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶質ポリエステル樹脂と、を含むコアを含むグラフェン含有トナーであって、前記コア上にシェルをさらに含み、前記グラフェンナノプレートレットは、前記コア内に均質に分布するとともに前記トナー内に完全に封入されており、さらに前記グラフェンは前記トナー中に約10重量%以下の量で存在する、グラフェン含有トナー。
【請求項18】
請求項1に記載のグラフェン含有トナーを製造する方法であって、
グラフェン分散液、結晶性ポリエステル樹脂を含む第1のエマルション、非晶質ポリエステル樹脂を含む第2のエマルション、および任意にワックス分散液を含む混合物を形成することと、
前記混合物を凝集させて所定の大きさの粒子を形成することと、
前記所定の大きさの前記粒子上に前記シェルを形成してコア-シェル粒子を形成することと、
前記コア-シェル粒子を合一させて前記グラフェン含有トナーを形成することと、を含む方法。
【請求項19】
請求項1に記載のグラフェン含有トナーを使用する方法であって、
電子写真プリンタを用いて前記グラフェン含有トナーを含む画像を形成することと、
前記グラフェン含有トナーを含む前記画像を受像媒体に転写することと、
前記グラフェン含有トナーを前記受像媒体に定着させることと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トナー用途用の従来の印刷システムは、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラック(CMYK)トナーステーションを含む4つのステーションからなる。第5の色または特殊色の追加によって色域拡張を可能にする第5の電子写真ステーションの概念を含む印刷システムが開発されている。そのマシンは、いつでもCMYKトナーに加えて第5のステーション内の第5の色を印刷することが可能である。同様に、第5のステーションで印刷される金属インク配合物を開発することが望ましい。金属色相、特に銀色や金色を作ることができるトナーは、その審美的魅力のために、例えば、ウェディングカード、招待状、宣伝広告などにおいて、とりわけ望ましい。金属色相はCMYK原色の混合物からは得ることができない。しかしながら、金属効果は、アルミニウムフレーク顔料を使用することによって実現されている。
【0002】
本開示は、グラフェン含有トナー、このトナーの製造方法およびこのトナーの使用方法の例示的な例を提供する。
【0003】
一態様では、グラフェン含有トナーを提供する。実施形態では、グラフェン含有トナーは、グラフェンと、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶質ポリエステル樹脂と、を含むコアを含み、トナーはコア上にシェルをさらに含む。実施形態では、グラフェン含有トナーは、グラフェンナノプレートレットと、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶質ポリエステル樹脂と、を含むコアを含み、トナーはコア上にシェルをさらに含み、グラフェンナノプレートレットは、コア内に均質に分布するとともにトナー内に完全に封入されており、グラフェンはトナー中に約10重量%以下の量で存在する。
【0004】
別の態様では、グラフェン含有トナーの製造方法を提供する。実施形態では、グラフェン含有トナーの製造方法は、グラフェンを含むグラフェン分散液、結晶性ポリエステル樹脂を含む第1のエマルション、非晶質ポリエステル樹脂を含む第2のエマルション、および任意にワックス分散液を含む混合物を形成することと、その混合物を凝集させて所定の大きさの粒子を形成することと、上記した所定の大きさの粒子上に上記したシェルを形成してコア-シェル粒子を形成することと、そのコア-シェル粒子を合一させてグラフェン含有トナーを形成することと、を含む。
【0005】
別の態様では、グラフェン含有トナーを使用する方法を提供する。実施形態では、グラフェン含有トナーを使用する方法は、グラフェンと、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶質ポリエステル樹脂と、を含むコアを含むとともにさらにコア上にシェルを含んだグラフェン含有トナーを含む画像を電子写真プリンタを用いて形成することと、そのグラフェン含有トナーを含む画像を受像媒体に転写することと、グラフェン含有トナーをその受像媒体に定着させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】グラフェン含有トナーの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【0007】
本開示は、グラフェン含有トナー、このトナーの製造方法およびこのトナーの使用方法の例示的な例を提供する。グラフェン含有トナーは、1つまたは複数のポリマー樹脂内に分散されたグラフェンを含むコアと、コア上のシェルとを含み、シェルはまた、コア内に上記樹脂(複数可)と同じでも同じでなくてもよい1つまたは複数のポリマー樹脂を含む。グラフェンは、トナーに取り込むことが特に困難である。これは、グラフェンの導電特性に少なくとも部分的に起因し、その特性はトナーを電子写真プロセスで使用するのに十分な摩擦帯電を実現するのを妨げる可能性がある。しかしながら、本発明のトナーの少なくともいくつかの実施形態は、電子写真印刷での使用を可能にする帯電およびブロッキング特性の種類も維持しつつ、1つまたは複数の有利な特性、例えば最低定着温度(MFT)の抑制を提供するのに十分な量のグラフェンを含む。グラフェンは少なくともいくつかの金属的特徴を示すので、本発明のトナーの少なくともいくつかの実施形態は、アルミニウムフレークベースのトナーの代替物として使用することができ、アルミニウムフレーク組成物によってもたらされる健康および安全性の問題を排除する。
【0008】
グラフェン
本トナーはグラフェンを含む。本明細書において、「グラフェン」という用語は、グラフェンの単一層、ならびにグラフェンの複数の層、例えばグラフェンの複数の自己組織化単一層を包含することができる。異なる形態のグラフェンが使用されてもよく、グラフェンは、シートまたは非平面の粒子の形態であってもよい。実施形態において、グラフェンは、グラフェンナノプレートレットの形態である。グラフェンナノプレートレットは、グラフェンのいくつかの単一層で構成される。グラフェンナノプレートレットは、非常に薄いが大きな直径を有する高アスペクト比のナノ粒子である。グラフェンナノプレートレットのサイズおよび形態は、純粋なグラファイト組成物が優れた電気的および熱的導体となる一方で、有用な機械的特性(例えば、剛性および強度)を有するこの種のグラフェンを提供する。いくつかの実施形態では、約6nm~約8nmの範囲の平均厚さおよび約0.5μm~約100μmの範囲の平均直径を有するグラフェンナノプレートレットが使用される。いくつかの実施形態では、約6nm~約8nmの範囲内の平均厚さおよび約0.5μm~約10μmの範囲内の平均直径を有するグラフェンナノプレートレットが使用される。いくつかの実施形態では、約6nm~約8nmの範囲の平均厚さおよび約0.5μm~約5μmの範囲の平均直径を有するグラフェンナノプレートレットが使用される。このような実施形態では、グラフェンナノプレートレットは、約120m2/gから約150m2/gの範囲内の平均表面積を有してもよい。「平均」とは、グラフェンナノプレートレットの代表的な集団に対する平均値を意味する。市販のグラフェンナノプレートレット、例えば、XG Sciences and Strem Chemicals社のものなどを使用してもよい。
【0009】
上記のように、グラフェンは、本トナーのコア内に存在する。実施形態において、グラフェンは、粒子の表面でまたは表面上に存在しないように、トナーの粒子(すなわち、コア-シェル粒子)内に完全に封入される。実施形態では、グラフェンはトナーのシェル内に存在しない。これらの場合、「存在ない」とは、グラフェンが存在しないか、または量が少なすぎてトナーの特性に何ら影響を及ぼさないような「実質的に存在しない」ことを意味する(以下においてさらに説明する)。カプセル化は、以下の実施例において説明する透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認してもよい。グラフェンは、トナー粒子のコアの樹脂マトリクス全体に均質に分布していてもよい。「均質」とは、「実質的に均質」を意味し、「存在しない」に関して上述した意味に類似する意味を有する。分布は、TEMを用いて確認してもよい。
【0010】
本発明のトナー中のグラフェンの量は、用途に応じて変化してもよい。実施形態において、グラフェンは、トナーの重量と比較した場合、約0.1重量%~約15重量%、約0.2重量%~約10重量%、約5重量%~約8重量%、または約0.1重量%~約5重量%の量で存在する。
【0011】
樹脂
本発明のトナーは、上述のグラフェンを含有するポリマーマトリクスを提供する種々の樹脂を含んでもよい。本トナーは、2種以上の異なるタイプの樹脂を含んでもよい。樹脂は、非晶質樹脂、結晶性樹脂、または結晶性樹脂と非晶質樹脂との混合物であってもよい。樹脂は、非晶質ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、または結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステル樹脂との混合物を含むポリエステル樹脂であってもよい。
【0012】
結晶性樹脂
樹脂は、ジオールを任意選択の触媒の存在下で二酸と反応させることによって形成される結晶性ポリエステル樹脂であってもよい。結晶性ポリエステルを形成するために、好適な有機ジオールとしては、約2~約36個の炭素原子を有する脂肪族ジオールを含み、その例として、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3ジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールなど、これらの組み合わせ、およびそれらの構造異性体を含むようなものなどが挙げられる。脂肪族ジオールは、例えば、樹脂の約40~約60モルパーセント、樹脂の約42~約55モルパーセント、樹脂の約45~約53モルパーセントの量で選択されてもよく、樹脂の第2のジオールを、約0~約10モルパーセント、または樹脂の約1~約4モルパーセントの量で選択してもよい。
【0013】
結晶性樹脂の調製のために選択されるビニルジオールまたはビニルエステルを含む有機ジオールまたはジエステルとしては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、ジメチルフマレート、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、シス-1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸およびメサコン酸、それらのジエステルまたは無水物が挙げられる。有機二酸は、例えば、約40~約60モルパーセントの樹脂、約42~約52モルパーセントの樹脂、約45~約50モルパーセントの樹脂の量で選択されてもよく、第2の二酸を、約0~約10モルパーセントの樹脂の量で選択することもできる。
【0014】
結晶性(非晶質も)ポリエステルに利用し得る重縮合触媒としては、テトラアルキルチタネート、ジブチルスズオキシドなどのジアルキルスズオキシド、ジブチルスズジラウレートなどのテトラアルキルスズ、およびブチルスズオキシドヒドロキシド、アルミニウムアルコキシド、アルキル亜鉛、ジアルキル亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一スズ、またはそれらの組み合わせが挙げられる。そのような触媒は、ポリエステル樹脂を生成するために使用される出発二酸またはジエステルをベースにして、例えば、約0.01モルパーセント~約5モルパーセントの量で利用されてもよい。
【0015】
結晶性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、およびそれらの混合物などが挙げられる。特定の結晶性樹脂は、ポリ(エチレン-アジペート)、ポリ(プロピレン-アジペート)、ポリ(ブチレン-アジペート)、ポリ(ペンチレン-アジペート)、ポリ(ヘキシレン-アジペート)、ポリ(オクチレン-アジペート)、ポリ(エチレン-スクシネート)、ポリ(プロピレン-スクシネート)、ポリ(ブチレン-スクシネート)、ポリ(ペンチレン-スクシネート)、ポリ(ヘキシレン-スクシネート)、ポリ(オクチレン-スクシネート)、ポリ(エチレン-セバケート)、ポリ(プロピレン-セバケート)、ポリ(ブチレン-セバケート)、ポリ(ペンチレン-セバケート)、ポリ(ヘキシレン-セバケート)、ポリ(オクチレン-セバケート)、ポリ(デシレン-セバケート)、ポリ(デシレン-デカノエート)、ポリ(エチレン-デカノエート)、ポリ(エチレン-ドデカノエート)、ポリ(ノニレン-セバケート)、ポリ(ノニレン-ドデカノエート)、コポリ(エチレン-フマレート)-コポリ(エチレン-セバケート)、コポリ(エチレン-フマレート)-コポリ(エチレン-デカノエート)、コポリ(エチレン-フマレート)-コポリ(エチレン-ドデカノエート)、コポリ(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール-デカノエート)-コポリ(ノニレン-デカノエート)、ポリ(オクチレン-アジペート)、およびそれらの混合物が挙げられる。ポリアミドの例としては、ポリ(エチレン-アジパミド)、ポリ(プロピレン-アジパミド)、ポリ(ブチレン-アジパミド)、ポリ(ペンチレン-アジパミド)、ポリ(ヘキシレン-アジパミド)、ポリ(オクチレン-アジパミド)、ポリ(エチレン-スクシンイミド)、ポリ(プロピレン-セバカミド)、およびそれらの混合物が挙げられる。ポリイミドの例としては、ポリ(エチレン-アジピミド)、ポリ(プロピレン-アジピミド)、ポリ(ブチレン-アジピミド)、ポリ(ペンチレン-アジピミド)、ポリ(ヘキシレン-アジピミド)、ポリ(オクチレン-アジピミド)、ポリ(エチレン-スクシンイミド)、ポリ(プロピレン-スクシンイミド)、ポリ(ブチレン-スクシンイミド)、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0016】
実施形態において、結晶性ポリエステル樹脂は、以下の式(I)を有する:
【0017】
【0018】
式中、aおよびbの各々は1~12、2~12、または4~12の範囲にあってよく、さらにpは10~100、20~80、または30~60の範囲にあってもよい。実施形態において、結晶性ポリエステル樹脂は、ドデカン二酸と1,6-ヘキサンジオールとの反応によって生成され得るポリ(1,6-ヘキシレン-1,12-ドデカノエート)である。
【0019】
上記のように、開示された結晶性ポリエステル樹脂は、重縮合触媒の存在下で、適切な有機ジオールと適切な有機二酸とを反応させる重縮合プロセスによって調製されてもよい。しかしながら、有機ジオールの沸点が約180℃~約230℃であるいくつかの例では、有機ジオールと有機二酸との化学量論的等モル比が利用されてもよく、ジオール、例えばエチレングリコールまたはプロピレングリコールが、約0.2~1モル当量の過剰量で重縮合プロセス中に蒸留によって利用され、除去されてもよい。利用される触媒の量は様々であってよく、例えば約0.01~約1モルパーセントまたは約0.1~約0.75モルパーセントなどの量の結晶性ポリエステル樹脂で選択されることができる。
【0020】
結晶性樹脂は、例えば、トナーの約1重量%~約85重量%、トナーの約5重量%~約50重量%、またはトナーの約10重量%~約35重量%で存在してもよい。
【0021】
結晶性樹脂は、例えば、約30℃~約120℃、約50℃~約90℃、または約60℃~約80℃などの様々な融点を有することができる。結晶性樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合、例えば、約1,000~約50,000、約2,000~約25,000、または約5,000~約20,000の数平均分子量(Mn)、ならびにGPCによって測定した場合、例えば、約2,000~約100,000、約3,000~約80,000、または約10,000~約30,000の重量平均分子量(Mw)を有してもよい。結晶性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、約2~約6、約3~約5、または約2~約4であってもよい。
【0022】
アモルファス樹脂
樹脂は、ジオールを任意選択の触媒の存在下で二酸と反応させることによって形成される非晶質ポリエステル樹脂であってもよい。非晶質ポリエステルの調製のために選択されるビニル二酸またはビニルジエステルを含む二酸またはジエステルの例としては、ジカルボン酸またはジエステル、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、フマル酸、トリメリト酸、ジメチルフマレート、ジメチルイタコエート、シス-1,4ジアセトキシ-2-ブテン、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、コハク酸、コハク酸無水物、ドデシルコハク酸、ドデシルコハク酸無水物、グルタル酸、グルタル酸無水物、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジエチルイソフタレート、ジメチルフタレート、フタル酸無水物、ジエチルフタレート、ジメチルスクシネート、ジメチルフマレート、ジメチルマレエート、ジメチルグルタレート、ジメチルアジペート、ジメチルドデシルスクシネート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。有機二酸またはジエステルは、例えば、樹脂の約40~約60モルパーセント、樹脂の約42~約52モルパーセント、樹脂の約45~約50モルパーセントの量で存在してもよい。
【0023】
非晶質ポリエステルの生成に利用され得るジオールの例としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2,2-ジメチルプロパンジオール、2,2,3-トリメチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ドデカンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)-ビスフェノールA、ビス(2-ヒドロキシプロピル)-ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、キシレンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ビス(2-ヒドロキシエチル)オキシド、ジプロピレングリコール、ジブチレン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。選択される有機ジオールの量は、様々であってよく、例えば、有機ジオールは、樹脂の約40~約60モルパーセント、樹脂の約42~約55モルパーセント、または樹脂の約45~約53モルパーセントの量で存在してもよい。
【0024】
適切な結晶性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、およびそれらの混合物などが挙げられる。
【0025】
樹脂として不飽和非晶質ポリエステル樹脂を利用してもよい。そのような樹脂の例としては、米国特許第6,063,827号に開示されているものが挙げられ、その開示は、参照によりその全体がここに組み込まれる。例示的な不飽和非晶質ポリエステル樹脂としては、限定されないが、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールコフマレート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノールコフマレート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノールコフマレート)、ポリ(コプロポキシル化ビスフェノールコエトキシル化ビスフェノールコフマレート)、ポリ(1,2-プロピレンフマレート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールコマレアート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノールコマレアート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノールコマレアート)、ポリ(コプロポキシル化ビスフェノールコエトキシル化ビスフェノールコマレアート)、ポリ(1,2-プロピレンマレアート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールコイタコネート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノールコイタコネート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノールコイタコネート)、ポリ(コプロポキシル化ビスフェノールコ-エトキシル化ビスフェノールコイタコネート)、ポリ(1,2-プロピレンイタコネート)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
適切なポリエステル樹脂は、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールAコフマレート)樹脂のような非晶質ポリエステルであってもよい。そのような樹脂およびその製造工程の例としては、米国特許第6,063,827号に開示されているものが挙げられ、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0027】
適切なポリエステル樹脂としては、非晶質酸性ポリエステル樹脂が含まれる。非晶質酸ポリエステル樹脂は、プロポキシ化ビスフェノールA、エトキシル化ビスフェノールA、テレフタル酸、フマル酸、およびドデセニルコハク酸無水物、例えばポリ(プロポキシル化ビスフェノール-コ-テレフタレート-フマレート-ドデセニルスクシネート)の任意の組み合わせをベースにしてもよい。使用され得る別の非晶質酸ポリエステル樹脂は、ポリ(プロポキシル化エトキシル化ビスフェノール-コ-テレフタレート-ドデセニルスクシネート-トリメリト酸無水物)である。
【0028】
樹脂として利用され得る線状非晶質プロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂の一例は、Resana S/A Industrias Quimicas,Sao Paulo BrazilによるSPARIIの商品名で入手可能である。市販されている他のプロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂としては、Kao Corporation,JapanによるGTUFおよびFPESL-2、およびReichhold,Research Triangle Park,N.C.によるEM181635などが挙げられる。
【0029】
非晶質樹脂または非晶質樹脂の組み合わせは、例えば、トナーの約5重量%~約95重量%、トナーの約30重量%~約90重量%、またはトナーの約35重量%~約85重量%の量で存在してもよい。
【0030】
非晶質樹脂または非晶質樹脂の組み合わせは、約30℃~約80℃、約35℃~約70℃、または約40℃~約65℃のガラス転移温度を有してもよい。ガラス転移温度は示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定してもよい。非晶性樹脂は、GPCによって測定して場合、例えば、約1,000~約50,000、約2,000~約25,000、または約1,000~約10,000のMn、ならびにGPCによって測定して場合、例えば、約2,000~約100,000、約5,000~約90,000、約10,000~約90,000、約10,000~約30,000、または約70,000~約100,000のMwを有してもよい。
【0031】
1つ、2つ、またはそれ以上のトナー樹脂を使用してもよい。2つ以上のトナー樹脂が使用される場合、樹脂は、例えば、約1%(第1の樹脂)/99%(第2の樹脂)~約99%(第1の樹脂)/1%(第2の樹脂)、約10%(第1の樹脂)/90%(第2の樹脂)~約90%(第1の樹脂)/10%(第2の樹脂)などの任意の適切な割合(例えば、重量比)であってもよい。樹脂が非晶質および結晶性樹脂の組み合わせを含む場合、樹脂は、例えば約1%(結晶性樹脂)/99%(非晶質樹脂)~約99%(結晶性樹脂)/1%(非晶質樹脂)、または約10%(結晶性樹脂)/90%(非晶質樹脂)~約90%(結晶性樹脂)/10%(非晶質樹脂)の重量比であってもよい。いくつかの実施形態において、樹脂の重量比は、非晶質樹脂の約80%~約60%および結晶性樹脂の約20%~約40%である。このような実施形態では、非晶質樹脂は、非晶質樹脂の組み合わせ、例えば、2つの非晶質樹脂の組み合わせであってもよい。
【0032】
本トナー中の樹脂(複数可)は、樹脂の末端に存在し得る酸基を有していてもよい。存在し得る酸基には、カルボン酸基などが含まれる。カルボン酸基の数は、樹脂を形成するために利用される材料および反応条件を調節することによって制御されてもよい。実施形態において、樹脂は、約2mgのKOH/g樹脂~約200mgのKOH/g樹脂、約5mgのKOH/g樹脂~約50mgのKOH/g樹脂、または約5mgのKOH/g樹脂~約15mgのKOH/g樹脂の酸価を有するポリエステル樹脂である。酸含有樹脂は、テトラヒドロフラン溶液に溶解され得る。酸価は、フェノールフタレインを指標とするKOH/メタノール溶液による滴定によって検出されてもよい。次いで、滴定の終点として同定された樹脂上のすべての酸基を中和するのに必要なKOH/メタノールの当量に基づいて、酸価を計算してもよい。
【0033】
実施形態では、トナーの樹脂は、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、またはポリアニリン樹脂などの光学的に透明な樹脂ではない。そのような実施形態では、トナーはこれらの樹脂のいずれも含まない。実施形態において、トナーの樹脂は架橋樹脂ではなく、トナーはそのような樹脂を含まない。そのような実施形態において、トナーの成分は、熱、圧力、pHの変化、放射線への暴露などによって開始される反応によって架橋されていない。実施形態では、トナーの樹脂は、金属イオン、例えば、銀または金の金属イオンを含むスルホン化ポリエステル樹脂ではない。そのような実施形態では、トナーはそのような樹脂を含まない。いくつかの実施形態では、トナーは銀または金の金属イオンのナノ粒子のような金属イオンのナノ粒子を含まない。これらの実施形態の各々において、特定の樹脂を含まず、架橋を有さず、または金属イオンのナノ粒子を含まないことは、これらの特徴の完全な欠如を意味するか、またはこれらの特徴は、トナーの特性(以下にさらに説明する)に材料の影響を及ぼさないような少量で存在するということを意味する。
【0034】
トナー
本トナーを形成するために、上記した樹脂のいずれも、例えば溶剤系転相乳化法を用いてエマルション(複数可)として提供されてもよい。その後、エマルションは、例えば、エマルション凝集およびコアレッセンス(EA)プロセスを使用することによって、トナーを形成するための原材料として利用されてもよい。
【0035】
本トナーを形成するために、グラフェンは、溶媒または溶液、例えば水性界面活性剤溶液中の分散液として提供されてもよい。界面活性剤は、溶液中のグラフェンの均質な分散を容易にするように選択されてもよい。界面活性剤の例示としては、アニオン界面活性剤(例えば、ジフェニルオキシドジスルホネート、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルリン酸カリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ナフタレン硫酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド縮合物、およびそれらの混合物)、および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、およびそれらの混合物)が挙げられる。
【0036】
本トナーは、他の添加剤、例えばワックス、着色剤を含んでもよい。グラフェンと同様に、これらの他の添加剤は、トナーを形成する際に別々の分散液として添加することができる。
【0037】
ワックス
場合により、トナー粒子を形成する際に、ワックスをグラフェンおよび樹脂(複数可)と組み合わせてもよい。ワックスは、単一のタイプのワックスまたは2つ以上の異なるワックスの混合物を含み得るワックス分散液中に提供されてもよい。トナー粒子の形状、トナー粒子表面上のワックスの存在および量、帯電および/または定着特性、光沢、剥離、オフセット特性などのような特定のトナー特性を改善するために、単一のワックスを添加してもよい。あるいは、ワックスの組み合わせを添加して、トナー組成物に複数の特性を付与することができる。
【0038】
ワックスが含まれる場合、ワックスは、例えば、トナーの約1重量%~約25重量%、またはトナー粒子の約5重量%~約20重量%の量で存在してもよい。
【0039】
ワックスが使用される場合、ワックスは、乳化凝集トナーにおいて従来使用されている種々のワックスのいずれかを含んでもよい。選択され得るワックスとしては、例えば、約500~約20,000または約1,000~約10,000の平均分子量を有するワックスが挙げられる。使用され得るワックスとしては、線状ポリエチレンワックスおよび分枝ポリエチレンワックスを含むポリエチレン、線状ポリプロピレンワックスおよび分枝ポリプロピレンワックスを含むポリプロピレン、ポリメチレンワックス、ポリエチレン/アミド、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン/アミド、およびポリブテンワックスなどのポリオレフィンが挙げられる。そのようなものとして、Allied Chemical and Petrolite Corporationから市販されているもの、Baker Petroliteから市販されているPOLYWAX(商標)ポリエチレンワックス、Michaelman、IncおよびDaniels Products Companyから市販されているワックスエマルション、Eastman Chemical Productsから市販されているEPOLENE N-15(商標)、および三洋化成株式会社から市販されている低重量平均分子量ポリプロピレンであるVISCOL 550-P(商標)が挙げられる。また、植物系ワックス(カルナウバワックス、ライスワックス、カンデリラワックス、スマックワックス、ホホバ油など)、動物系ワックス(ミツロウなど)、鉱物系ワックスおよび石油系ワックス(モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、原油の蒸留から抽出されるワックスのようなマイクロクリスタリンワックス、シリコーンワックス、メルカプトワックス、ポリエステルワックス、ウレタンワックスなど)、変性ポリオレフィンワックス(カルボン酸末端ポリエチレンワックスまたはカルボン酸末端ポリプロピレンワックスなど)、フィッシャートロプシュワックス(Fischer-Tropsch wax)、高級脂肪酸と高級アルコールから得られるエステルワックス(ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニルなど)、高級脂肪酸および一価または多価低級アルコールから得られるエステルワックス(ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、モノステアリン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、ベヘン酸ペンタエリスリトールなど)、高級脂肪酸および多価アルコール多量体から得られるエステルワックス(ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジグリセリルジステアレート、トリグリセリルテトラステアレートなど)、ソルビタン高級脂肪酸エステルワックス(モノステアリン酸ソルビタンなど)、コレステロール高級脂肪酸エステルワックス(コレステリルステアレートなど)、が挙げられる。使用され得る官能化ワックスの例として、例えば、アミンやアミド(例えば、Micro Powder Inc.から入手可能なAQUA SUPERSLIP 6550(商標)やSUPERSLIP 6530(商標))、フッ素化ワックス(例えば、Micro Powder Inc.から入手可能なPOLYFLUO 190(登録商標)、POLYFLUO 200(商標)、POLYSILK 19(商標)、POLYSILK 14(商標))、混合フッ素化アミドワックス(脂肪族極性アミド官能化ワックス)、ヒドロキシル化不飽和脂肪酸のエステルからなる脂肪族ワックス脂肪族ワックス(これもまたMicro Powder Inc.から入手可能なMICROSPERSION 19(商標))、イミド、エステル、第四級アミン、カルボン酸、またはアクリルポリマーエマルション(例えば、SC Johnson Waxから入手可能なJONCRYL 74(商標)、89(商標)、130(商標)、537(商標)および538(商標)、およびAllied Chemical and Petrolite CorporationおよびSC Johnson Waxから入手可能な塩素化ポリプロピレンおよびポリエチレン)が挙げられる。前述のワックスの混合物および組み合わせも、実施形態において使用されてもよい。ワックスは、例えば、定着ロール離型剤として含まれてもよい。実施形態において、ワックスは、結晶性または非結晶性であってもよい。
【0040】
実施形態において、ワックスは、固形ワックスの粒径が約100~約300nmの範囲内にあり得る、水中の固体ワックスの1つまたは複数の水性分散液の形態でトナーに組み込まれてもよい。
【0041】
着色剤
本トナーには、種々の公知の着色剤が含まれていてもよい。用語「着色剤」は、例えば、顔料、染料、それらの混合物(染料の混合物、顔料の混合物、染料と顔料の混合物など)を意味する。着色剤は、トナー中に、例えば、トナーの約0.1重量%~約35重量%、トナーの約1重量%~約20重量%、またはトナーの約5重量%~約15重量%の量で存在してもよい。
【0042】
着色剤は、例として、カーボンブラック(REGAL 330(登録商標)(Cabot)、Carbon Black 5250および5750(Columbian Chemicals)、Sunsperse Carbon Black LHD 9303(Sun Chemicals)など)から作成したり、マグネタイト(Mobayマグネタイト:MO8029(商標)、MO8060(商標)、Pfizerマグネタイト:CB4799(商標)、CB5300(商標)、CB5600(商標)、MCX6369(商標)、Bayerマグネタイト:BAYFERROX 8600(商標)、8610(商標)、Northern Pigmentsマグネタイト:NP-604(商標)、NP-608(商標)、Magnoxマグネタイト:TMB-100(商標)、TMB-104(商標)など)から作成したりしてもよい。着色顔料としては、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブラウン、ブルーまたはそれらの混合物を選択することができる。一般には、シアン、マゼンタ、またはイエローの顔料または染料、またはそれらの混合物が使用される。顔料または複数の顔料は、水系顔料分散液として一般に使用される。
【0043】
一般に、適切な着色剤としては、Paliogen Violet 5100および5890(BASF)、Normandy Magenta RD-2400(Paul Uhlrich)、Permanent Violet VT2645(Paul Uhlrich)、Heliogen Green L8730(BASF)、Argyle Green XP-111-S(Paul Uhlrich)、Brilliant Green Toner GR 0991(Paul Uhlrich)、Lithol Scarlet D3700(BASF)、Toluidine Red(Aldrich)、Scarlet for Thermoplast NSD PS PA(Ugine Kuhlmann of Canada)、Lithol Rubine Toner(Paul Uhlrich)、Lithol Scarlet 4440(BASF)、NBD 3700(BASF)、Bon Red C(Dominion Color)、Royal Brilliant Red RD-8192(Paul Uhlrich)、Oracet Pink RF(Ciba Geigy)、Paliogen Red 3340および3871 K(BASF)、Lithol Fast Scarlet FF4012(BASF)、PV Fast Blue B2G01(American Hoechst)、Irgalite Blue BCA(Ciba Geigy)、Paliogen Blue 6470(BASF)、Sudan II,III,およびIV(Matheson,Coleman,Bell)、Sudan Orange(Aldrich)、Sudan Orange 220(BASF)、Paliogen Orange 3040(BASF)、Ortho Orange OR 2673(Paul Uhlrich)、Paliogen Yellow 152および1560(BASF)、Lithol Fast Yellow 0991 K(BASF)、Paliotol Yellow 1840(BASF)、Novaperm Yellow FGL(Hoechst)、Permanerit Yellow YE 0305(Paul Uhlrich)、Lumogen Yellow D0790(BASF)、Sunsperse Yellow YHD 6001(Sun Chemicals)、Suco-Gelb 1250(BASF)、Suco-Yellow D1355(BASF)、Suco Fast Yellow D1165,D1355,およびD1351(BASF)、Hostaperm Pink E(商標)(Hoechst)、Fanal Pink D4830(BASF)、Cinquasia Magenta(商標)(DuPont)、Paliogen Black L9984(BASF)、Pigment Black K801(BASF)、Levanyl Black A-SF(Miles,Bayer)、およびこれらの組み合わせなどを挙げることができる。
【0044】
他の好適な水系の着色剤分散物は、Clariantから市販されているもの、例えばHostafine Yellow GR、Hostafine Black TおよびBlack TS、Hostafine Blue B2G、Hostafine Rubine F6Bおよびマゼンタ乾式顔料(Toner Magenta 6BVP2213やToner Magenta EO2など)が挙げられる。それらは使用前に水および/または界面活性剤中に分散され得る。
【0045】
顔料の特定な例としては、Sun Chemicalsによる水系顔料分散剤としての、Sunsperse BHD 6011X(Blue 15 Type)、Sunsperse BHD 9312X(Pigment Blue 15 74160)、Sunsperse BHD 6000X(Pigment Blue 15:3 74160)、Sunsperse GHD 9600XおよびGHD 6004X(Pigment Green 7 74260)、Sunsperse QHD 6040X(Pigment Red 122 73915)、Sunsperse RHD 9668X(Pigment Red 185 12516)、Sunsperse RHD 9365Xおよび9504X(Pigment Red 57 15850-1)、Sunsperse YHD 6005X(Pigment Yellow 83 21108)、Flexiverse YFD 4249(Pigment Yellow 17 21105)、Sunsperse YHD 6020Xおよび6045X(Pigment Yellow 74 11741)、Sunsperse YHD 600Xおよび9604X(Pigment Yellow 14 21095)、Flexiverse LFD 4343およびLFD 9736(Pigment Black 7 77226)、Aquatone、それらの組み合わせなど、および、Paul Uhlrich & Company,Inc.から入手可能なHeliogen Blue L6900(商標)、D6840(商標)、D7080(商標)、D7020(商標)、Pylam Oil BIue(商標)、Pylam Oil Yellow(商標)、Pigment Blue 1(商標)、Dominion Color Corporation,Ltd.,Toronto、Ontarioから入手可能なPigment Violet 1(商標)、Pigment Red 48(商標)、Lemon Chrome Yellow DCC 1026(商標)、E.D.Toluidine Red(商標)およびBon Red C(商標)、およびNovaperm Yellow FGL(商標)などが挙げられる。一般に、選択可能な着色剤は、ブラック、シアン、マゼンタ、またはイエロー、およびそれらの混合物である。マゼンタの例は、カラーインデックスにおいてCI60710、CI Dispersed Red 15として識別される2,9-ジメチル置換キナクリドンおよびアントラキノン染料、カラーインデックスにおいてCI26050、CI Solvent 19として識別されるジアゾ染料などである。シアンの例示として、カラーインデックスにおいてCI74160、CI Pigment Blue、CI Pigment Blue 15:3として列挙される銅テトラ(オクタデシルスルホンアミド)フタロシアニン、x-銅フタロシアニン顔料、カラーインデックスにおいてCI69810、Special Blue X-2137として識別されるAnthrathrene Blueなどが挙げられる。イエローの例示として、ジアリーライドイエロー3,3-ジクロロベンジデンアセトアセトアニリド、カラーインデックスにおいてCI12700、CI Solvent Yellow 16として識別されるモノアゾ顔料、カラーインデックスにおいてForon Yellow SE/GLN、CI Dispersed Yellow 33として識別されるニトロフェニルアミンスルホンアミド、2,5-ジメトキシ-4-スルホンアニリドフェニルアゾ-4’-クロロ-2,5-ジメトキシアセトアセトアニリド、およびPermanent YellowFGLがある。
【0046】
着色剤は、所望の色をトナーに付与するのに十分な量の、顔料、染料、それらの組み合わせ、カーボンブラック、マグネタイト、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルー、ブラウン、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。他の有用な着色剤は本明細書に基づいて容易に明らかになるということを理解されたい。
【0047】
トナーの調製
実施形態では、本発明のトナーは、EAプロセスによって、例えば、各エマルションが樹脂、グラフェン、および任意にワックスを含んだ1つまたは複数のエマルションの混合物を凝集させることと、その後混合物を合一させることと、を含むプロセスなどによって、調製される。上述したように、グラフェンおよびワックスは別個の水性分散液として利用されてもよい。混合物は、約600~約6,000回転/分で混合することによって実現され得るように均質化されてもよい。均質化は、例えば、IKA ULTRA TURRAX T50プローブホモジナイザーを含む任意の適切な手段によって実現されてもよい。
【0048】
上記混合物の調製後、凝集剤を混合物に添加してもよい。任意の適切な凝集剤を利用してもよい。適切な凝集剤としては、例えば、二価カチオンまたは多価カチオン材料の水溶液が挙げられる。凝集剤は、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)のようなポリアルミニウムハライドなどの、または対応する臭化物、フッ化物、またはヨウ化物などの無機カチオン凝集剤、または、ポリアルミニウムスルホシリケート(PASS)のようなポリアルミニウムシリケート、または、塩化アルミニウム、亜硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、オキシ塩化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、臭化マグネシウム、塩化銅、および硫酸銅;などまたはそれらの組み合わせを含んだ水溶性金属塩であってもよい。凝集剤は、樹脂(複数可)のガラス転移温度(Tg)未満の温度で混合物に添加してもよい。凝集剤は、均質化の下で混合物に添加することができる。
【0049】
凝集剤は、例えば、樹脂の約0重量%~約10重量%、樹脂の約0.2重量%~約8重量%、または樹脂の約0.5重量%~約5重量%の量で混合物に添加してもよい。
【0050】
混合物の粒子は、所定の所望の粒子サイズが得られるまで凝集されてもよい。所定の所望のサイズは、形成前に決定されるように得られる所望の粒子サイズを指し、粒子サイズはそのような粒子サイズに達するまで成長プロセス中に監視される。試料は、成長プロセスの間に採取され、例えばコールターカウンター(Coulter Counter)を用いて、体積平均粒径について分析され得る。したがって、凝集は、高温を維持することによって、または、例えばある実施形態では約30℃~約100℃まで、ある実施の形態では約30℃~約80℃まで、ある実施形態では約30℃~約50℃まで、ゆっくりと温度を上昇させることによって、進行させてもよい。攪拌しながら温度を約0.5時間~約6時間、またはある実施形態では約1時間~約5時間保持して凝集粒子を提供してもよい。所定の所望の粒子サイズに達したら、シェルを加えてもよい。シェルを適用する前の粒子の体積平均粒径は、例えば、約3μm~約10μm、ある実施形態では約4μm~約9μm、または約6μm~約8μmであってもよい。
【0051】
シェル樹脂
凝集後、合一前に、樹脂コーティングを凝集粒子に適用して、その上にシェルを形成してもよい。上述した樹脂のいずれかをシェルに利用してもよい。実施形態では、非晶質ポリエステル樹脂がシェル内で利用される。実施形態では、2つの非晶質ポリエステル樹脂が、シェル内で、例えば、実質的に等しい量で利用される。実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂および2種類の異なる非晶質ポリエステル樹脂をコアに使用し、同じ2種類の非晶質ポリエステル樹脂をシェルに使用する。
【0052】
シェルは、上述したようなエマルション(複数可)の形態のシェル樹脂を使用することによって、凝集粒子に適用されてもよい。このようなエマルションは、凝集粒子上にコーティングを形成するのに十分な条件下で、凝集粒子と組み合わせてもよい。例えば、約30℃~約80℃、または約35℃~約70℃の温度に加熱しながら、凝集した粒子上へのシェルの形成をなしてもよい。シェルの形成は、約5分~約10時間または約10分~約5時間の期間行われてよい。
【0053】
いったん所望のサイズのトナー粒子が得られたら、混合物のpHをpH制御剤、例えば塩基で約3~約10、またはある実施形態では約5~約9の値に調整してもよい。pHの調整は、トナーの成長を凍結させる、すなわち停止させるために利用してもよい。トナーの成長を停止させるために利用される塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、それらの組み合わせなどのアルカリ金属水酸化物などの任意の適切な塩基を含んでよい。実施形態では、pHを上記した所望の値に調整するのを助けるために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤を添加してもよい。他のキレート剤を使用してもよい。
【0054】
実施形態では、コアシェル型トナー粒子のサイズ(合一前)は、約3μm~約10μm、約4μm~約10μm、または約6μm~約9μmであってもよい。
【0055】
合一化
所望の粒子サイズへの凝集およびシェルの適用に続いて、粒子を所望の最終形状に合一させてもよく、合一は、例えば、混合物を、トナー粒子を形成するのに利用される樹脂のガラス転移温度以上であり得る、約45℃~約150℃、約55℃~約99℃、または約60℃~約90℃の温度に加熱することによって実現され得る。加熱を続けるか、または混合物のpHを所望の円形度に達するようにある時間にわたって調整(例えば、低下)させてもよい。その時間は、約1時間~約5時間または約2時間~約4時間としてよい。様々な緩衝液を合一中に使用してもよい。合一の総時間は、約1~約9時間、約1~約8時間、または約1~約5時間としてよい。攪拌は、例えば約20rpm~約1000rpmまたは約30rpm~約800rpmの合一の間に利用されてもよい。
【0056】
凝集および/または合一の後、混合物を室温に冷却してもよい。所望するように、冷却は急速でも遅くてもよい。適切な冷却プロセスは、冷水を反応器の周りのジャケットに導入することを含んでもよい。冷却後、所望のサイズのふるいでトナー粒子をふるいにかけ、ろ過し、洗浄し、次いで乾燥させてもよい。乾燥は、例えば、凍結乾燥を含む、乾燥のための任意の適切なプロセスによって実現され得る。
【0057】
その他の添加剤
実施形態において、本トナーは、他の任意の添加剤を含有してもよい。例えば、トナーは、正または負の荷電制御剤を含んでもよい。表面添加剤を使用してもよい。表面添加剤の例として、金属酸化物(酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スズ、これらの混合物など)、コロイド状および非晶質シリカ(AEROSIL(登録商標)や、金属塩、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸マグネシウムのような脂肪酸の金属塩、およびこれらの混合物など)、UNILIN 700のような長鎖アルコール、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0058】
これらの表面添加剤の各々は、トナーの約0.1重量%~約5重量%またはトナーの約0.25重量%~約3重量%の量で存在してもよい。実施形態では、トナーは、例えば、トナーの約0.1重量%~約5重量%のチタニア、トナーの約0.1重量%~約8重量%のシリカ、トナーの約0.1重量%~約5重量%のシリカ、トナーの約0.05重量%~約4重量%のステアリン酸亜鉛、トナーの約0.1重量%~約4重量%の酸化セリウムなどを含んでもよい。
【0059】
トナーの特性
実施形態では、外面添加剤を除いた乾式トナー粒子は、以下の特性のうちの1つまたは複数を示す。
【0060】
(1)約5.0μm~約10.0μm、約6.0μm~約10.0μm、または約7.0μm~約9.0μmの体積平均粒径
【0061】
(2)約1.05~約1.55、約1.10~約1.40、または約1.10~約1.35の数平均幾何学的サイズ分布(GSDn)および/または体積平均幾何学的サイズ分布(GSDv)
【0062】
(3)約0.90~約1.00、約0.92~約0.99、または約0.95~約0.98の円形度
【0063】
これらの特性は、以下の実施例に記載の技術に従って測定され得る。
【0064】
本トナーは、例えば、21.1℃/10%RHの低湿度ゾーン(Jゾーン)および約28℃/85%RHの高湿度ゾーン(Aゾーン)のような様々な相対湿度(RH)の条件下で優れた電荷特性を有し得る。同様に、本トナーは、優れた流動特性およびブロッキング特性を有し得る。実施形態では、外面添加剤を除いたトナー粒子は、以下の特徴の1つまたは複数を示す。
【0065】
(4)約-0.10fC/μm~約2.0fC/μm、約0.11fC/μm~約0.19fC/μm、または約0.13fC/μm~約0.17fC/μmのAゾーン電荷対直径比(Q/D)
【0066】
(5)約1μC/g~約20μC/g、約5μC/g~約15μC/g、または約5μC/g~約10μC/gのAゾーン電荷対質量比(Q/M)
【0067】
(6)約0.90fC/μm~約2.0fC/μm、約0.92fC/μm~約1.0fC/μm、または約0.94fC/μm~約0.99fC/μmのJゾーン電荷対直径比(Q/D)
【0068】
(7)約20μC/g~約60μC/g、約25μC/g~約50μC/g、または約30μC/g~約50μC/gのJゾーン電荷対質量比(Q/M)
【0069】
これらの特性は、以下の実施例に記載の技術に従って測定され得る。
【0070】
実施形態では、外面添加剤を含むトナー粒子は、以下の特徴の1つまたは複数を示す。
【0071】
(8)約70%~約80%、約72%~約80%、または約74%~約80%の範囲の24時間後のAゾーンにおける電荷保持
【0072】
(9)約50%~約60%、約52%~約58%、または約53%~約58%の範囲の7日後のAゾーンにおける電荷保持
【0073】
(10)約5%~約15%、約6%~約12%、または約7%~約10%の範囲の凝集
【0074】
(11)約55℃を超える、約56℃を超える、約57℃を超える、または約56℃~約58℃の範囲のブロッキング温度の開始
【0075】
(12)約20~約40、約22~約38、または約23~約35の範囲の誘電損失(×1000)
【0076】
これらの特性は、以下の実施例に記載された技術に従って、および以下の実施例に記載の表面添加剤を用いて測定され得る。
【0077】
本トナーは、光沢度40やピーク光沢に達する光沢温度、コールドオフセット温度、ホットオフセット温度、および最低定着温度(MFT)のうちの1つまたは複数によって反映されるような優れた定着特性を有し得る。これらの特性は、以下の実施例に記載された技術に従って、および以下の実施例に記載の表面添加剤を用いて測定され得る。注目すべきことに、少なくともいくつかの実施形態では、本トナーは、グラフェンを含まない他の従来の対照トナーと比較して、MFTを著しく抑制することができる。実施形態では、外面添加剤を含むトナー粒子は、約130℃以下、約128℃以下、約127℃以下のMFT、または約120℃~約130℃の範囲のMFTを示す。
【0078】
実施形態では、外面添加剤を含むグラフェン含有トナーは、比較トナーのMFTよりも少なくとも5℃低いMFTを示す。「比較トナー」は、比較トナーがグラフェンを含有しないことを除いて、グラフェン含有トナーと同じトナー成分およびプロセスを用いて調製されたトナーを意味する。代わりに、比較トナーは、グラフェンの代わりにシアン顔料を含有してもよい。好適な比較トナーは、以下の実施例で使用されるXEROX(登録商標)700トナーである。これは、外面添加剤を含むグラフェン含有トナーが、比較トナーよりも少なくとも10℃低いまたは少なくとも15℃低いMFTを示す実施形態を含む。
【0079】
現像剤とキャリア
本トナーは、現像剤組成物に配合してもよい。現像剤組成物は、本開示のトナーを、スチール、フェライトなどのコーティングされたキャリアを含む既知のキャリア粒子と混合することによって調製することができる。そのようなキャリアとして、米国特許第4,937,166号および同第4,935,326号に開示されているものが含まれ、各開示の全体は参照によりここに組み込まれる。トナーは、約1重量%~約15重量%、約2重量%~約8重量%、または約4重量%~約6重量%の量でキャリア中に存在してもよい。キャリア粒子は、導電性カーボンブラックのような導電性成分をそこに分散させた、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなポリマーコーティングがその上になされたコアを含むこともできる。キャリアコーティングとして、メチルシルセスキオキサンのようなシリコーン樹脂、ポリビニリデンフルオライドのようなフルオロポリマー、ポリビニルジフルオライドおよびアクリルのような帯電列に近接していない樹脂の混合物、アクリルのような熱硬化性樹脂、これらの混合物、および他の公知の成分などが挙げられる。
【0080】
用途
本トナーは、様々な電子写真プロセスおよび様々な電子写真プリンタに使用され得る。電子写真画像形成プロセスは、例えば、帯電部、画像形成部、光導電性部、現像部、転写部、および定着部を備えた電子写真プリンタで画像を作成することを含む。実施形態では、現像成分は、キャリアを、ここで説明されているトナーのいずれかと混合することによって調製された現像剤を含んでよい。電子写真プリンタは、高速プリンタ、白黒高速プリンタ、カラープリンタなどであってもよい。画像がトナー/現像剤で形成されると、画像は次に紙などの受像媒体に転写され得る。定着ロール部材を使用して、トナーを熱および圧力を用いて受像媒体に定着させてもよい。電子写真印刷プロセスでの本トナーの使用は、導電性印刷画像ならびに金属カラー印刷画像を提供することができる。
【0081】
本トナーは、本トナーのいずれかを含有する粉末スプレーガン(例えば、トライボガン)を使用してトナーを基材に渡す粉末コーティング用途のような他の用途に使用される。
【0082】
以下の実施例は、本開示の様々な実施形態を説明するために提示されている。実施例は、例示に過ぎないことを意図し、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。また、各部およびパーセンテージは、特に指示がない限り重量に関するものである。この特許明細書全体を通して使用されているように、「室温」は約20℃~約25℃の温度を指す。
【0083】
グラフェントナーの調製グラフェン含有トナーを以下のように調製した。使用したグラフェンは、Strem Chemical Inc.から入手したグラフェンナノプレートレットであった。この実施例全体を通して、「グラフェン」はこれらのグラフェンナノプレートレットを指す。グラフェンを超音波処理によって界面活性剤水溶液に分散させた。界面活性剤は、分枝したナトリウムジフェニルオキシドジスルホネート(Pilot Chemical CompanyのCalfax DB-45)であった。グラフェン比3.0pphの界面活性剤を使用した。グラフェン分散液は、あるタイプの非晶質ポリエステル樹脂を含むエマルション、別のタイプの非晶質ポリエステル樹脂を含む別のエマルション、結晶性ポリエステル樹脂を含む別のエマルション、およびワックス分散液と混合された。混合物を酸性化した後、均質にしながら硫酸アルミニウム(ALS)溶液をゆっくり添加した。高粘性混合物を2Lの反応器に移し、温度を約45℃に上昇させることによって凝集を開始させた。粒径が約7.0μmに達したとき、2つの非晶質ポリエステル樹脂を含むエマルションを添加して粒子上にシェルを形成し、粒子を約8.0μmまで成長させ続けた。EDTAおよび塩基を添加することによって粒子を凍結させた。反応器温度を上昇させ、約84℃で合一化を開始した。粒子の円形度が0.974±0.002に達した時点で加熱を停止した。温度を40℃未満に下げることによって粒子スラリーを急冷し、次いで20μmのふるいでふるい分けし、次いで真空下でろ過した。得られたトナー粒子を脱イオン水で洗浄し、凍結乾燥させた。この手順を使用して、0.5重量%のグラフェン、1重量%のグラフェン、および2重量%のグラフェン(トナーの総重量に基づく)を含む、異なる量のグラフェン充填を有する3つのトナー組成物を調製した。使用した対照トナー(比較トナー)は、XEROX(登録商標)700対照トナーであった。この対照トナーは、対照トナーがグラフェンの代わりに対照トナーの5.5重量%のシアン顔料を含むこと以外は、グラフェン含有トナーと同じ組成を有し、同じプロセスで作成される。
【0084】
トナーの特性製造業者の指示に従って操作したBeckman Coulter Multisizer 3を用いて、外面添加剤を除いた乾式トナー粒子からトナー粒子サイズを分析した。代表的なサンプリングは次のようにして行った。少量のトナー試料、約1グラムを得て、25μmのスクリーンを通してろ過し、次いで試料を約10%の濃度になるように等張液に入れ、次にマルチサイザーにかけた。3つのグラフェン含有トナーの体積平均粒径は、約7.5μm~約8.0μmの範囲にあった。0.5重量%のグラフェントナーについて、GSDnは約1.215であり、GSDvは約1.19であった。
【0085】
製造業者の指示に従って操作したSysmex 3000を使用して、外面添加剤を除いた乾式トナー粒子から円形度を分析した。3つのグラフェン含有トナーの円形度は、約0.974から約0.976の範囲にあった。
【0086】
透過型電子顕微鏡(TEM)および走査型電子顕微鏡(SEM)により、外面添加剤を除いた乾式トナー粒子からトナー粒子形態を分析した。1重量%のグラフェントナーのSEM画像を
図1に示す。SEM画像は、ジャガイモ形状の形態を有する高品質のトナー粒子を示している。TEM画像(データは示されていない)は、完全なグラフェンカプセル化(粒子の表面でまたは表面上にグラフェンが存在しないか、またはシェル内に存在しない)を有するコア-シェル構造をはっきりと示した。
【0087】
トナー添加剤の混合シリカ、チタニアおよびステアリン酸亜鉛を含む添加剤パッケージとともに約50gのトナーをSKMミルに添加し、次いで約12500rpmで約30秒間混ぜ合わせて試料を調製した。表面添加剤は、トナーの総重量に対し、1.29%RY50Lシリカ、0.86%RX50シリカ、0.88%STT100Hチタニア、1.73%X24ゾル-ゲルコロイダルシリカ、および0.18%ステアリン酸亜鉛、0.5%PMMAおよび0.28%酸化セリウムの粒子であった。
【0088】
トナーの帯電親トナー粒子(表面添加剤を含まない)および混合トナー粒子(表面添加剤を含む)の両方について、トナーの帯電量を集めた。親トナー粒子については、キャリア中の8pphのトナーを、60mLのガラス瓶内で、1.5gのトナーと30gのXEROX(登録商標)700キャリアとを用いて調製した。混合されたトナーについては、キャリア中の5pphのトナーを、60mLのガラス瓶内で、1.8gのトナーと30gのXEROX(登録商標)700キャリアとを用いて調製した。試料を相対湿度21.1℃/10%の低湿度ゾーン(Jゾーン)で、および別の試料では、相対湿度約28℃/85%の高湿度ゾーン(Aゾーン)で、3日間調湿した。親トナー粒子を有する現像剤をTurbula混合器内で10分間帯電させ、添加混合トナーを有する現像剤をTurbula混合器内で60分間帯電させた。
【0089】
トナーの電荷を電荷対直径比Q/Dの形で測定した。Q/Dは、100V/cmの電界を有する電荷スペクトログラフを用いて測定され、トナー帯電分布の中間点として視覚的に測定された。電荷はゼロラインからの変位のミリメートルで報告された(mm変位は0.092を掛けることによってフェムトクーロン/ミクロン(fC/μm)に変換することができる)。
【0090】
トナーの帯電量は、全ブローオフ帯電法により決定される電荷対質量比(Q/M)として測定し、空気流のブローオフによってトナーを除去した後に現像剤を含むファラデーケージの電荷を測定した。ケージ内に集められた総電荷は、ブローオフ前後においてケージを秤量することによって、ブローオフにより除去されたトナーの質量で除算されてQ/M比を得る。
【0091】
トナー帯電の保持。洗浄した60mLガラス瓶内において、30gのキャリア上への1.8gの添加混合トナーを秤量することによって現像剤試料を調製した。現像剤を28℃/85%RHのAゾーン環境で3日間調湿し、完全に平衡化させた。現像剤を、Turbula混合器内で2分間試料を撹拌することによって帯電させた。試料の単位質量あたりの電荷は、上述の摩擦帯電ブローオフ法を用いて測定した。次いで、試料をアイドル位置にあるAゾーンチャンバーに戻した。24時間および7日後に単位質量当りの電荷の測定を再度繰り返した。帯電保持は、24時間および7日間の帯電から初期帯電に対するパーセンテージとして計算された。
【0092】
トナーのブロッキングトナーのブロッキングは、室温より高い温度でトナー凝集力を測定することによって決定した。トナーのブロッキング測定は以下のようにして完了した。2gの添加混合トナーを開放皿に秤量し、指定された高温および相対湿度50%で環境チャンバー内で調湿した。約17時間後、試料を取り出し、周囲条件で約30分間順応させた。それぞれの再順応した試料は、上部1000μmおよび下部106μmのように積み重ねた予め計量された2つのメッシュふるいの積み重ねを用いてふるいにかけることによって測定した。Hosokawaフローテスターで約1mmの振幅で約90秒間ふるいを振動させる。振動が完了した後、ふるいを再度秤量し、両方のふるい上に残っているトナーの総量から開始重量に対するパーセンテージとしてトナーのブロッキングを計算した。これにより、2グラムのトナー試料について、Aを上部1000μmスクリーン上に残っているトナーの重量とし、Bを下部106μmスクリーン上に残っているトナーの重量とした場合、トナーのブロッキングパーセンテージは、%ブロッキング=50(A+B)で計算される。また、測定されたトナー凝集力が温度とともに急速に上昇し始める温度として定義される開始ブロッキング温度も測定した。
【0093】
誘電損失また、シールドされた1メートルのBNCケーブルを介してHP4263B LCRメーターに接続されたカスタムメイドの固定具での誘電損失も測定した。再現性と一貫性を確実にするために、1グラムのトナー(Cゾーン24時間で調湿された)を直径2インチの型に入れ、精密グラウンドプランジャで約2000psiで2分間プレスした。プランジャ(一方の電極として機能する)との接触を維持しながら、ペレットを型から外に、ペレットを圧力下に保つとともに対向電極としても機能するバネ荷重支持体上に押し出した。このセットアップでは、追加の接触材料(スズ箔やグリースなど)を使用する必要がなく、ペレット厚さの現場測定も可能であった。誘電率および誘電損失を、周波数100kHzおよび1VACでの静電容量(Cp)および損失係数(D)を測定することによって決定した。測定は周囲条件下で行った。誘電率は以下のように計算した。
E’=[Cp(pF)×厚さ(mm)]/[8.854×Aeffective(m2)]
【0094】
上式中の定数「8.854」は、Cpをピコファラッド(ファラッドではない)とし厚さをmm(メートルではない)とした場合の単位で真空の電気誘電率ε0である。Aeffectiveとは、試料の有効面積である。誘電損失=E*消散係数は、試料の電気的消散を計測する(すなわち、容量がどのくらい漏電したか)。本明細書の簡略化のために、値E’に1000を掛ける。従って、報告された誘電損失値70は、70×10-3、または0.070の誘電損失を示した。
【0095】
トナー特性を下記の表1~3にまとめる。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
表1~3の結果は以下のようにまとめることができる。グラフェンを0.5%充填で添加すると、Jゾーンの親電荷および添加電荷(Q/DおよびQ/M)はわずかに減少した。しかしながら、グラフェンを追加しても大きな影響はなかった。グラフェンを0.5%充填で添加すると、Aゾーンの親Q/Dおよび添加混合Q/Dはわずかに減少した。しかしながら、グラフェンを追加しても大きな影響はなかった。Aゾーン親Q/Mおよび添加混合Q/Dは、大きな影響を受けなかった。全体的に、グラフェン含有トナーの帯電特性は、対照トナーと比較して大きくは影響されない。対照トナーと比較して、グラフェン含有トナーの24時間および7日間の両方で電荷保持が同じか、または改善された。ブロッキング性能およびトナーフローは、グラフェン含有トナーにとって優れており、グラフェンの添加によって影響を受けなかった。誘電損失は、グラフェン充填とともに増加したが、対照トナー(典型的には30~35の誘電損失を有する)の機能的限界内に十分にあった。
【0100】
トナーの定着トナーの定着特性を、しわ領域、最低定着温度、および光沢によって決定した。すべての未定着画像は、改良されたXeroxコピー機を使用して生成された。CXS紙(Color Xpressions Select、90gsm、コートなし、P/N 3R11540)上に置かれたトナーの量のために、および光沢、しわおよびホットオフセット測定値のために、1.00mg/cm2のTMA(単位面積当たりのトナー質量)を使用した。光沢/折り目のターゲットは、ページの中央に配置された正方形の画像であった。
【0101】
試料は、外部モータと温度制御装置と用紙搬送装置とを取り付けたXerox(登録商標)700製品定着機CRUで構成されたオイルレス定着装置で定着された。試料上の光沢および折り目測定のために、定着機の処理速度は220mm/s(~34msのニップ滞留)に設定され、定着ロール温度をコールドオフセットからホットオフセットまたは210℃まで変化させた。定着ロールの設定温度を変更した後、ベルトおよび圧力アセンブリの温度が安定するまで10分間経過させる。
【0102】
コールドオフセットとは、トナーが定着機に付着するがまだ用紙に定着していない温度である。コールドオフセット温度より上では、トナーはホットオフセット温度に達するまで定着機にオフセットされない。
【0103】
しわ領域トナー画像は、その上にトナー画像を有する紙のような基材のある区画にしわをつけ、しわ内のトナーが紙から分離する程度を定量化することによって決定される、しわのような機械的特性を示す。良好なしわの抵抗は、1mm未満の値と見なすことができ、しわの付いた画像の平均幅は、画像を紙に印刷し、続いて(a)画像の印刷領域を内側に折り畳み、(b)折り畳んだ画像の上に約860グラムの重さの標準的なテフロン(登録商標)でコーティングされた銅ロールを通過させ、(c)紙を広げて、しわを付けて画像化された表面から綿棒で未固定のインクを拭き取り、(d)イメージアナライザを使ってそのインクのないしわ領域の平均幅を測定することによって測定された。しわ値は、特にしわ付け時に画像が不均一にくずれにくい場合には、面積に関しても報告することができ、面積、約1mmの幅に相当する折り目値100に関して測定できる。
【0104】
最低定着温度最低定着温度(MFT)の測定には、特定の温度で定着した紙に画像を折りたたみ、折り目を横切って標準重量を転がすことが含まれる。Duplo D-590用紙フォルダなどの市販のフォルダを使用して印刷することもできる。次いで、折り畳んだ画像を広げ、顕微鏡下で分析し、折り畳みに現れるしわの量に基づいて数値等級を評価する。この手順は、(最低限のしめを示す)最低定着温度が得られるまで、様々な温度で繰り返される。
【0105】
光沢約120℃~約210℃の定着ロール温度範囲で定着されたトナー画像について、75°BYKガードナー光沢計を使用して、印刷光沢(ガードナー光沢単位または「ggu」)を測定した。
【0106】
ホットオフセットホットオフセット温度(HOT)は、定着ロールを汚染したトナーが紙に転写されることがわかる温度である。それを観察するために、定着した画像を印刷した直後に、定着機を通って空の用紙、すなわち追跡シート(chase sheet)を送る。画像オフセットが特定の定着温度で空の追跡シートに認められた場合、これがホットオフセット温度である。
【0107】
トナー定着特性を以下の表4にまとめる。
【0108】
【0109】
表4の結果は以下のようにまとめることができる。グラフェンの充填量が増加するにつれて、光沢40およびピーク光沢に達する光沢温度は、たとえ最大のグラフェン含有量でさえも影響を受けなかった。コールドオフセット温度はグラフェン充填量によってわずかに影響を受けたが、いずれの場合もCOT温度は折り目MFTよりも非常に低く、これは問題にはならない。すべてのグラフェン含有トナーのしわMFTは非常に低く、グラフェン充填量の増加による影響を受けなかった。対照と比較して、すべての試料は、ガラス40に達する光沢温度がより低く、しわMFTがより低くかった。