(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池の電極、非水電解質二次電池、及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20221102BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221102BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20221102BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2019021393
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】松山 浩
(72)【発明者】
【氏名】中井 晴也
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106207129(CN,A)
【文献】特開2009-289601(JP,A)
【文献】特開2012-119078(JP,A)
【文献】特開2017-224562(JP,A)
【文献】特開2009-252683(JP,A)
【文献】特開2007-165079(JP,A)
【文献】国際公開第2011/078112(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/62
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯体と、
前記芯体の少なくとも一方側の面に設けられた活物質層と、を備え、
前記活物質層は、活物質、結着剤、及び導電剤を含み、
前記活物質層は、前記導電剤として、複数の繊維状の炭素が集まって絡み合うことで紐状となったアグロメレートと、アグロメレートよりも小さい炭素材料の集合体からなるアグ
リゲートを含み、
前記アグロメレートの長さは、30μm以上であり、
前記芯体が、正極芯体であって、前記活物質層が、正極活物質層であり、
前記導電剤に、アセチレンブラックが含まれ、
前記アグロメレートが、前記活物質層の1mm
3あたり650~3000個存在する、
電極。
【請求項2】
前記アグロメレートの最小の外径は、40nm以上である請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記アグロメレートが、前記活物質層の1mm
2あたり20~90個存在する、請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
前記アグロメレートが、前記活物質層に2.8~4.2質量%含まれる、請求項1~3のいずれかに記載の電極。
【請求項5】
前記活物質層には、複数の前記アグロメレートが含まれ、
前記活物質層に含まれる全てのアグロメレートのうちの10質量%以上の前記アグロメレートが、前記芯体に接触している、請求項1~4のいずれかに記載の電極。
【請求項6】
前記活物質層には、複数の前記アグロメレートが含まれ、
前記活物質層に含まれる全てのアグロメレートのうちの30質量%以上の前記アグロメレートが枝分かれ構造を有する、請求項1~5のいずれかに記載の電極。
【請求項7】
前記活物質層には、複数の前記アグロメレートが含まれ、
前記活物質層に含まれる全てのアグロメレートのうちの10質量%以上の前記アグロメレートの長さが、前記活物質層の厚さよりも大きい、請求項1~6のいずれかに記載の電極。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の電極を備える非水電解質二次電池。
【請求項9】
活物質、
炭素材料を含む導電剤、結着剤、及び分散媒を混ぜ合わせて攪拌して暫定的な活物質スラリーを作製する第1攪拌工程と、
前記第1攪拌工程の後、前記暫定的な活物質スラリーに
炭素材料を含む導電剤を追加して攪拌する第2攪拌工程と、
を含み、
前記第2攪拌工程を、攪拌羽を有する混錬機を用いて行い、
前記攪拌羽の周速が、375~750m/minであり、
前記第2攪拌工程で投入される全ての前記導電剤の質量が、前記第1攪拌工程で投入される全ての前記導電剤の質量の0.8~1.2倍であり、
前記第2攪拌工程において、攪拌を15~50分間行う、電極の製造方法。
【請求項10】
前記活物質が正極活物質であり、
前記第1攪拌工程において、前記混錬機の前記攪拌羽の周速を、375~750m/minとして攪拌を行い、
前記第1攪拌工程において、攪拌を15~35分間行い、
前記第1攪拌工程において投入する
前記導電剤の量に関し、前記正極活物質の質量に対する前記導電剤の質量の比が4.0~8.0質量%である、請求項9に記載の電極の製造方法。
【請求項11】
前記第2攪拌工程で、前記暫定的な活物質スラリーに分散媒を追加して攪拌を行う、請求項9又は10に記載の電極の製造方法。
【請求項12】
前記第2攪拌工程で投入される全ての前記導電剤の質量が、前記第1攪拌工程で投入される全ての前記導電剤の質量の0.9~1.1倍である、9~11のいずれかに記載の電極の製造方法。
【請求項13】
請求項9~12のいずれかに記載の非水電解質二次電池の電極の製造方法を用いた非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池の電極、及びその製造方法に関する。また、本開示は、非水電解質二次電池、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非水電解質二次電池の電極の製造方法としては、特許文献1に記載されているものがある。この電極の製造方法では、芯体に塗布する活物質スラリーを、活物質、結着剤、導電部材を混ぜ合わせて攪拌した後、結着剤を追加して再度攪拌することで作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電極の製造方法を用いて作製した非水電解質二次電池において、芯体上に形成された活物質層内部の電子伝導性が低くなって、電池出力が低くなることがある。
【0005】
そこで、本開示の目的は、活物質層内部の電子伝導性が高くなり易くて電池出力が高くなり易い非水電解質二次電池の電極、及びその製造方法を提供することにある。また、本開示の目的は、活物質層内部の電子伝導性が高くなり易くて電池出力が高くなり易い非水電解質二次電池、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る非水電解質二次電池の電極は、芯体と、芯体の少なくとも一方側の面に設けられた活物質層と、を備え、活物質層は、活物質、結着剤、及び導電剤を含み、活物質層は、導電剤として、複数の繊維状の炭素が集まって絡み合うことで紐状となったアグロメレートを含み、アグロメレートの長さは、30μm以上である。
【0007】
また、本開示に係る非水電解質二次電池の電極の製造方法は、活物質、導電剤、結着剤、及び分散媒を混ぜ合わせて攪拌して暫定的な活物質スラリーを作製する第1攪拌工程と、第1攪拌工程の後、暫定的な活物質スラリーに導電剤を追加して攪拌する第2攪拌工程と、を含む。
【0008】
炭素粒子が線状に繋がり繊維状の炭素を形成しており、この繊維状の炭素が複数集まって絡み合うことで紐状となって、アグロメレートが形成される。なお、紐状のアグロメレートは、枝分かれ部分を含んでもよい。本明細書では、紐状のアグロメレートの長さを、枝分かれ部分が存在しないとき、一端から他端までの長さとして定義し、1以上の枝分かれ部分が存在したとき、アグロメレートにおいて最も長い長さ部分の長さとして定義する。アグロメレートの最小の外径は、40nm以上であることが好ましい。また、アグロメレートは、内部に空洞を有してもよい。
【0009】
また、活物質層の断面を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で検査したときに、アグロメレートは、紐形状の炭素材料の集合体として観察されるが、走査型電子顕微鏡で観察した断面における紐状のアグロメレートの最小の幅を、アグロメレートの最小の外径として定義する。したがって、アグロメレートの最小の外径は、活物質層の断面を、走査型電子顕微鏡で観察することで特定できる。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る非水電解質二次電池の電極、非水電解質二次電池、及びそれらの製造方法によれば、活物質層内部の電子伝導性が高くなり易くて電池出力が高くなり易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の非水電解質二次電池の一実施形態に係る角形二次電池の平面図である。
【
図3】(a)は、
図1のA-A線部分断面図であり、(b)は、(a)のB-B線部分断面図であり、(c)は、(a)のC-C線断面図である。
【
図4】(a)は、上記角形二次電池が含む正極の平面図であり、(b)は、上記角形二次電池が含む負極の平面図である。
【
図5】上記角形二次電池が含む偏平状の巻回電極体の巻回終了端側を展開した斜視図である。
【
図6】比較例1の正極活物質層の断面を走査型電子顕微鏡で観察したときの像を示す図である。
【
図7】実施例1の正極活物質層の断面を走査型電子顕微鏡で観察したときの像を示す図である。
【
図8】(a)は導電性カーボンの構造を示す図であり、(b)はアグロメレートを示す図であり、(c)はアグリゲートを示す図である。
【
図9】比較例1の正極活物質層の構造の模式図である。
【
図10】実施例1の正極活物質層の構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下では、非水電解質二次電池が、巻回電極体14を有する角形二次電池10である場合を例に説明を行うが、非水電解質二次電池は、積層電極体を有する角形二次電池でもよく、又は円筒形二次電池でもよい。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0013】
図1~
図3、及び
図5に示すように、角形二次電池10は、角形外装体(角形外装缶)25(
図1~
図3参照)と、封口板23(
図1参照)と、偏平状の巻回電極体14(
図2(a)、
図5参照)とを備える。角形外装体25は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、高さ方向一方側に開口部を有する。
図2に示すように、角形外装体25は、底部40、一対の第1側面41、及び一対の第2側面42を有し、第2側面42は、第1側面41よりも大きくなっている。
図3(a)に示すように、封口板23は角形外装体25の開口部に嵌合される。封口板23と角形外装体25との嵌合部を接合することで、角形の電池ケース45が構成される。
【0014】
図5に示すように、巻回電極体14は、正極11と負極12とがセパレータ13を介して互いに絶縁された状態で巻回された構造を有する。巻回電極体14の最外面側はセパレータ13で被覆され、負極12は正極11よりも外周側に配置される。
図4(a)に示すように、正極11は、厚さが10~20μm程度のアルミニウム又はアルミニウム合金箔からなる帯状の正極芯体15の両面に正極活物質スラリーを塗布し、乾燥及び圧延した後、所定寸法に帯状に切断する。正極活物質スラリーは、正極活物質、導電剤、及び結着剤等を含む。このとき、幅方向の一方側の端部に、長手方向に沿って両面に正極活物質層11aが形成されていない正極芯体露出部15aが形成されるようにする。この正極芯体露出部15aの少なくとも一方側の表面には、例えば正極活物質層11aに隣接するように、正極芯体露出部15aの長さ方向に沿って正極保護層11bが形成されることが好ましい。正極保護層11bには、絶縁性無機粒子と結着剤とが含まれる。この正極保護層11bは、正極活物質層11aよりも導電性が低い。正極保護層11bを設けることにより、異物等により負極活物質層12aと正極芯体15との短絡を防止できる。また、正極保護層11bに導電性無機粒子を含有させることができる。なお、正極保護層11bは、設けられなくてもよい。
【0015】
一方、
図4(b)に示すように、負極12は、厚さが5~15μm程度の銅又は銅合金箔からなる帯状の負極芯体16の両面に負極活物質スラリーを塗布し、乾燥及び圧延した後、所定寸法に帯状に切断する。負極活物質スラリーは、負極活物質、及び結着剤等を含む。このとき、長手方向に沿って両面に負極活物質層12aが形成されていない負極芯体露出部16aが形成されるようにする。なお、正極芯体露出部15aないし負極芯体露出部16aは、それぞれ正極11ないし負極12の幅方向の両側の端部に沿って形成してもよい。
【0016】
図5に示すように、正極芯体露出部15aと負極活物質層12aが重ならないように、また、負極芯体露出部16aと正極活物質層11aが重ならないように、正極11及び負極12を巻回電極体14の幅方向(正極11及び負極12の幅方向)にずらして配置される。そして、セパレータ13を挟んで互いに絶縁した状態で巻回され、偏平状に成形されることで、偏平状の巻回電極体14が作製される。巻回電極体14は、巻回軸が延びる方向(帯状の正極11、帯状の負極12、及び帯状のセパレータ13を矩形状に展開したときの幅方向に一致)の一方側端部に複数枚積層された正極芯体露出部15aを備え、他方側端部に複数枚積層された負極芯体露出部16aを備える。セパレータ13としては、好ましくは、ポリオレフィン製の微多孔性膜を使用できる。セパレータ13の幅は、正極活物質層11a及び正極保護層11bを被覆できると共に負極活物質層12aの幅よりも大きいことが好ましい。
【0017】
後で詳述するが、複数枚積層された正極芯体露出部15aは、正極集電体17(
図3(a)参照)を介して正極端子18に電気的に接続され、複数枚積層された負極芯体露出部16aは、負極集電体19(
図3(a)参照)を介して負極端子20に電気的に接続される。また、詳述しないが、
図3(a)に示すように、正極集電体17と正極端子18との間には、電池ケース45の内部のガス圧が所定値以上となった時に作動する電流遮断機構27が設けられることが好ましい。
【0018】
図1、
図2及び
図3(a)に示すように、正極端子18及び負極端子20の夫々は、絶縁部材21、22を介して封口板23に固定される。封口板23は、電池ケース45内のガス圧が電流遮断機構27の作動圧よりも高くなったときに開放されるガス排出弁28を有する。正極集電体17、正極端子18及び封口板23は、それぞれアルミニウム又はアルミニウム合金で形成され、負極集電体19及び負極端子20は、それぞれ銅又は銅合金で形成される。
図3(c)に示すように、偏平状の巻回電極体14は、封口板23側を除く周囲に絶縁性の絶縁シート(樹脂シート)24を介在させた状態で一面が開放された角形外装体25内に挿入される。
【0019】
図3(b)及び
図3(c)に示すように、正極11側では、巻回されて積層された複数枚の正極芯体露出部15aは、厚み方向の中央部に収束されてさらに2分割され、正極芯体露出部15aが収束され、その間に正極用中間部材30が配置される。正極用中間部材30は樹脂材料からなり、正極用中間部材30には、導電性の正極用導電部材29が、1以上、例えば2個保持される。正極用導電部材29は、例えば円柱状のものが用いられ、積層された正極芯体露出部15aと対向する両端部にプロジェクションとして作用する円錐台状の突起が形成されている。
【0020】
負極12側でも、巻回されて積層された複数枚の負極芯体露出部16aは、厚み方向の中央側に収束されてさらに2分割され、負極芯体露出部16aが収束され、その間に負極用中間部材32が配置される。負極用中間部材32は、樹脂材料からなり、負極用中間部材32には、負極用導電部材31が、1以上、例えば2個保持される。負極用導電部材31は、例えば円柱状のものが用いられ、積層された負極芯体露出部16aと対向する両端部に、プロジェクションとして作用する円錐台状の突起が形成されている。
【0021】
正極用導電部材29と、その延在方向の両側に配置されている収束された正極芯体露出部15aは、例えば抵抗溶接されて電気的に接続され、収束された正極芯体露出部15aと、その電池ケース45の奥行方向外側に配置された正極集電体17も、例えば抵抗溶接されて電気的に接続される。また、同様に、負極用導電部材31と、その両側に配置されて収束されている負極芯体露出部16aは、例えば抵抗溶接されて電気的に接続され、収束された負極芯体露出部16aと、その電池ケース45の奥行方向外側に配置された負極集電体19も、例えば抵抗溶接されて電気的に接続される。正極集電体17の正極芯体露出部15a側とは反対側の端部は、正極端子18に電気的に接続され、負極集電体19の負極芯体露出部16a側とは反対側の端部は、負極端子20に電気的に接続される。その結果、正極芯体露出部15aが正極端子18に電気的に接続され、負極芯体露出部16aが負極端子20に電気的に接続される。
【0022】
巻回電極体14、正極及び負極用中間部材30,32、及び正極及び負極用導電部材29,31は、抵抗溶接により接合され、一体構造を構成する。正極用導電部材29は、正極芯体15と同じ材料であるアルミニウム又はアルミニウム合金製のものが好ましく、負極用導電部材31は、負極芯体16と同じ材料である銅又は銅合金製のものが好ましい。正極用導電部材29及び負極用導電部材31の形状は、同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
正極芯体露出部15aと正極集電体17の接続、及び負極芯体露出部16aと負極集電体19の接続を抵抗溶接により行う例を示したが、レーザ溶接又は超音波溶接を用いてもよい。また、正極用中間部材30及び負極用中間部材32を用いなくてもよい。
【0024】
図1に示すように、封口板23には電解液注液孔26が設けられる。正極集電体17、負極集電体19、及び封口板23等が取り付けられた巻回電極体14を、角形外装体25内に配置する。このとき、巻回電極体14を箱状ないし袋状に成形した絶縁シート24内に配置した状態で、巻回電極体14を角形外装体25内に挿入することが好ましい。その後、封口板23と角形外装体25との嵌合部をレーザ溶接し、その後、電解液注液孔26から非水電解液を注液する。その後、電解液注液孔26を密封することで角形二次電池10を作製する。電解液注液孔26の密封は、例えばブラインドリベットや溶接等で実行される。
【0025】
角形二次電池10は、単独であるいは複数個が直列、並列ないし直並列に接続されて各種用途で使用される。角形二次電池10を車載用途等において複数個直列ないし並列に接続して使用する際には、別途正極外部端子及び負極外部端子を設けてそれぞれの電池をバスバーで接続するとよい。また、巻回電極体14が、その巻回軸が角形外装体25の底部40と平行となる向きに配置される場合について説明したが、巻回電極体が、その巻回軸が角形外装体25の底部40と垂直となる向きに配置される構成でもよい。なお、電極体は、積層型の電極体であってもよい。
【0026】
また、正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能な化合物であれば適宜選択して使用できる。これらの正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。例えば、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLiMO2(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO2、LiNiO2、LiNiyCo1-yO2(y=0.01~0.99)、LiMnO2、LiCoxMnyNizO2(x+y+z=1)や、LiMn2O4又はLiFePO4などを一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。さらには、リチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムやマグネシウム、アルミニウム、タングステンなどの異種金属元素を添加したものも使用し得る。
【0027】
また、非水電解質の溶媒としては、特に限定されるものではなく、非水電解質二次電池に従来から用いられてきた溶媒を使用することができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトンなどのエステルを含む化合物;プロパンスルトンなどのスルホン基を含む化合物;1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジオキサン、1,4-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテルを含む化合物;ブチロニトリル、バレロニトリル、n-ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリルなどのニトリルを含む化合物;ジメチルホルムアミドなどのアミドを含む化合物などを用いることができる。特に、これらのHの一部がFにより置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、特に環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組み合わせた溶媒や、さらにこれらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
【0028】
さらに、非水電解質に用いる溶質としても、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のリチウム塩を用いることができる。そして、このようなリチウム塩としては、P、B、F、O、S、N、Clの中の一種類以上の元素を含むリチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(C2F5SO2)3、LiAsF6、LiClO4、LiPF2O2などのリチウム塩及びこれらの混合物を用いることができる。特に、非水電解質二次電池における高率充放電特性や耐久性を高めるためには、LiPF6を用いることが好ましい。また、溶質としては、LiBOB(リチウム-ビスオキサレートボレート)等のオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩等を用いることもできる。
【0029】
なお、上記溶質は、単独で用いるのみならず、2種以上を混合して用いても良い。また、溶質の濃度は特に限定されないが、非水電解液1リットル当り0.8~1.7モルであることが望ましい。
【0030】
また、負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵・放出できるものであれば特に限定されず、例えば、炭素材料や、珪素材料、リチウム金属、リチウムと合金化する金属或いは合金材料や、金属酸化物などを用いることができる。なお、材料コストの観点からは、負極活物質に炭素系活物質を用いることが好ましく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス、ハードカーボンなどを用いることができる。特に、高率充放電特性を向上させる観点からは、負極活物質として、黒鉛材料を低結晶性炭素で被覆した炭素材料を用いることが好ましい。
【0031】
また、セパレータとしては、例えば、ポリオレフィンからなるセパレータを用いると好ましい。又は、セパレータとして、ポリエチレンからなるセパレータや、ポリエチレンの表面にポリプロピレンからなる層を形成したセパレータや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂を塗布したセパレータ等を使用してもよい。
【0032】
正極とセパレータとの界面ないし負極とセパレータとの界面には、従来から用いられてきた無機物のフィラーを含む層を形成することができる。フィラーは、従来から用いられてきたチタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウムなどを単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物などで処理されているものを用いることができる。また、このフィラー層の形成は、正極、負極、あるいはセパレータに、フィラー含有スラリーを直接塗布して形成する方法や、フィラーで形成したシートを、正極、負極、あるいはセパレータに貼り付ける方法などを用いることができる。
【0033】
次に、上記正極活物質層11aの構造、及びその構造を実現できる作製方法について詳細に説明する。
【0034】
正極活物質層11aには、正極活物質、結着剤、及び導電剤が含まれる。正極活物質としては、上述の材料を用いることができる。また、結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどが例示できる。これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。また、導電剤は、炭素材料を含み、炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等を例示できる。
【0035】
また、正極活物質層11aには、複数の繊維状の炭素が集まって絡み合うことで紐状となった複数のアグロメレートが含まれる。ここで、アグロメレートを、複数の繊維状の炭素が集まって絡み合った紐形状を有し、長さが30μm以上である炭素集合体として定義する。アグロメレートの最小の外径は、如何なる値でもよくて、例えば、10nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上、100nm以上、又は150nm以上でもよいが、40nm以上であることが好ましい。アグロメレートは、複数の繊維状の炭素が集まって絡み合うことで紐状となっているので、内部に空洞が存在する。
【0036】
図6は、後述の比較例1の正極活物質層の断面を走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)で観察したときの像を示し、
図7(a),(b)は、後述の実施例1の正極活物質層の断面をSEMで観察したときの像を示す。
図6で示す像では、紐状の炭素集合体を確認できないのに対し、
図7(a)に示す像では、濃い黒色で示される紐状の炭素集合体を確認できる。なお、
図7(b)では、紐状の炭素集合体が分かり易いように、紐状の炭素集合体が延在している方向を線で示している。この紐状の炭素集合体が、アグロメレートである。
【0037】
図7(a),(b)に示すように、アグロメレートは、枝分かれ部分を有するものが多い。アグロメレートの外径及び長さは、SEMで観察したときの像で特定される。詳しくは、アグロメレートが、枝分かれ部分を有していない場合、アグロメレートの長さを、SEMで観察したときの像に基づいて特定できる一端から他端までの長さとして定義する。また、アグロメレートが、1以上の枝分かれ部分を有している場合、アグロメレートの長さを、SEMで観察したときの像に基づいて特定できるアグロメレートにおいて最も長い長さ部分の長さとして定義する。また、アグロメレートの最小の外径を、SEMで観察したときの像に基づいて特定される紐状のアグロメレートの最小の幅として定義する。
【0038】
アグロメレートは、1以上の如何なる数存在してもよいが、正極活物質層11aの1mm3あたり650~3000個存在すると好ましく、正極活物質層の1mm2あたり20~90個存在すると好ましい。また、アグロメレートは、正極活物質層11aに1.0~5.0質量%含まれることが好ましく、2.8~4.2質量%含まれるとより好ましい。また、正極活物質層11aに含まれる全てのアグロメレートのうちの10質量%以上のアグロメレートが、正極芯体15に接触していると好ましい。また、正極活物質層11aに含まれる全てのアグロメレートのうちの30質量%以上のアグロメレートが枝分かれ構造を有すると好ましい。また、正極活物質層11aに含まれる全てのアグロメレートのうちの10質量%以上のアグロメレートの長さが、正極活物質層11aの厚さよりも大きいと好ましい。なお、これらの構成から導かれる作用効果については後で説明する。10質量%以上のアグロメレートが、正極芯体15に接触しなくてもよく、30質量%以上のアグロメレートが枝分かれ構造を有さなくてもよく、10質量%以上のアグロメレートの長さが正極活物質層11aの厚さよりも大きくなくてもよい。
【0039】
次に、このようなアグロメレートを含む正極活物質層11aを実現できる正極活物質スラリーの作製方法について詳細に説明する。
【0040】
先ず、正極活物質、導電剤、結着剤、及び分散媒を混ぜ合わせて攪拌することで暫定的な正極活物質スラリーを作製する第1攪拌工程を実行する。正極活物質、導電剤、及び結着剤としては、上述の材料を使用できる。また、分散媒としては、正極活物質、導電剤、及び結着剤を分散できるものであれば如何なる分散媒でもよいが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を好適に使用できる。第1攪拌工程で、正極活物質、導電剤、結着剤、及び分散媒を混錬することで、正極活物質、導電剤、結着剤を分散媒中に分散させると共に、導電剤として導入された炭素材料の大きな集合体を多数の小さな集合体に分断する。なお、第1攪拌工程では、攪拌に用いる混錬機の攪拌羽の周速を、375~750m/minとしてもよく、攪拌を、例えば、15~35分間行ってもよい。また、投入する導電剤の量に関し、正極活物質の質量に対する導電剤の質量の比として、4.0~8.0質量%を好適に採用できる。また、投入する結着剤の量に関し、正極活物質の質量に対する結着剤の質量の比として、0.8~4.0を好適に採用できる。
【0041】
次に、第2攪拌工程を実行する。第2攪拌工程では、第1攪拌工程で作製した暫定的な正極活物質スラリーに、導電剤と、分散媒を追加して攪拌を行って、正極活物質スラリーを作製する。このように、投入する導電剤を分割して投入することで、後から投入された導電剤の炭素材料の大きな集合体が小さな集合体まで分断されるのを抑制できて分断を中くらいの集合体までとでき、その中くらいの集合体がアグロメレートとなる。そして、作製した正極活物質スラリーを用いて正極を作製することで、アグロメレートを含む正極活物質層を作製できる。
【0042】
なお、第2攪拌工程で投入される導電剤は、第1攪拌工程で投入される導電剤と異なる材料でもよいが、同一の材料であると好ましい。また、第2攪拌工程を行う際に分散媒を追加しなくてもよい。また、第2攪拌工程では、攪拌に用いる混錬機の攪拌羽の周速を、375~750m/minとしてもよく、攪拌を、例えば、15~50分間行ってもよい。また、投入する導電剤の量に関し、第2攪拌工程で投入される全ての導電剤の質量が、第1攪拌工程で投入される全ての導電剤の質量の0.8~1.2倍であることが好ましく、0.9~1.1倍であることがより好ましい。
【0043】
次に、本開示の活物質層により導出される作用効果について説明する。本発明者は、導電剤を一括投入して作製した正極活物質スラリーを用いた正極に対して、次の問題が存在することを発見した。
【0044】
詳しくは、投入される導電性カーボン、例えば、アセチレンブラックやファーネスブラックは、
図8(a)に示す構造を有し、混錬における機械的なせん断によって、凝縮塊、
図8(b)に示すアグロメレート50、
図8(c)に示すアグリゲート(アグロメレートよりも小さい炭素材料の集合体)51に、炭素材料の小さな集合体に順次分断されていく。したがって、正極活物質スラリーを作製する際、導電性カーボンを一括投入して長時間混錬すると、正極活物質スラリー内で導電性カーボンは炭素材料の小さな集合体であるアグリゲートまで分断される。よって、その正極活物質スラリーを用いて正極を作製した場合、
図9に示すように、アグリゲートで正極活物質同士の隙間を埋めることはできても、アグリゲート間に隙間が生じ、正極活物質層内の電子伝導性が悪化し易く、ひいては、電池出力の低下を招き易い。
【0045】
これに対し、本開示の正極活物質層11aには、多数のアグロメレートが残存しているので、
図10に示すように、多数の正極活物質55間に亘って延びる紐状のアグロメレート50を介して電子を集電し易い。よって、正極活物質層11a内の電子伝導性を良好なものにでき、電池出力を高くできる。
【0046】
なお、アグロメレートは、正極活物質層11aの1mm3あたり650~3000個存在すると良好な電子伝導性を獲得し易く、正極活物質層の1mm2あたり20~90個存在しても良好な電子伝導性を獲得し易い。また、アグロメレートが、正極活物質層11aに1.0~5.0質量%含まれることが好ましく、2.8~4.2質量%含まれても、良好な電子伝導性を獲得し易い。また、正極活物質層11aに含まれる全てのアグロメレートのうちの10質量%以上のアグロメレートが正極芯体15に接触していると、電子が正極活物質層11aと正極芯体15との間を円滑に移動し易くなって電子の集電等を更に効率的に実行できる。また、正極活物質層11aに含まれる全てのアグロメレートのうちの30質量%以上のアグロメレートが枝分かれ構造を有すると、枝と枝の間にアグリゲートや活物質を抱えやすくなって保持し易くなり電子伝導性を更に良好なものにできる。また、正極活物質層11aに含まれる全てのアグロメレートのうちの10質量%以上のアグロメレートの長さが、正極活物質層11aの厚さよりも大きいと、正極活物質層11a内に、正極芯体15から正極活物質層11aの表面まで広範囲なアグロメレート網を構築でき、正極芯体15から正極活物質層11aの表面まで途切れなく炭素粒子のネットワークを構築できる。よって、電子伝導性を更に良好なものにできる。
【0047】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
[正極の作製]
<比較例の正極活物質スラリーの作製>
正極活物質として、LiNi0.35Co0.35Mn0.3O2で表されるリチウム含有金属複合酸化物を用いた。正極活物質と、導電剤としてのカーボンブラックと、結着剤としてのPVdFとを、混合し、分散媒としてのNMPを適量加えた後、これを混練して正極活物質スラリーを調製した。なお、正極活物質、導電剤、結着剤の混合割合は質量比で、正極活物質:導電剤:結着剤=91:6:3とした。正極活物質、カーボンブラック、及びPVdFは、全ての量を一度に投入し、NMPと共に混錬することで、正極活物質スラリーを作製した。なお、混錬時間は35分間とし、混錬機の攪拌羽の周速は750m/minとした。比較例1と、比較例2で、正極活物質、カーボンブラック、及びPVdFの質量比を変えて、比較例1と、比較例2で異なる正極活物質スラリーを作製した。
【0049】
<実施例の正極活物質スラリーの作製>
実施例1は、比較例1のとの比較で、カーボンブラックを半分に分割して分割投入する点と、後半のカーボンブラックの投入時にNMPを加えて混錬を2段階に分けて行う点のみを異ならせて正極活物質スラリーを作製した。混錬時間と、混錬機の攪拌羽の周速は、比較例1と同一にした。つまり、実施例1では、比較例1との比較で、半分の量のカーボンブラックの混錬時間を全混錬時間の半分の時間とした。また、実施例2も、比較例2のとの比較で、カーボンブラックを半分に分割して分割投入する点と、後半のカーボンブラックの投入時にNMPを加えて混錬を2段階に分けて行う点のみを異ならせて正極活物質スラリーを作製した。混錬時間と、混錬機の攪拌羽の周速は、実施例2と比較例2は、同一であり、その結果、実施例2でも、比較例2との比較で、半分の量のカーボンブラックの混錬時間を全混錬時間の半分の時間とした。
【0050】
[正極活物質スラリーの導通性の評価]
<電気抵抗>
実施例1、2、比較例1、2の各正極活物質スラリーを用いて作製された正極活物質層に関して、四短針法を用いて電気抵抗率を測定した。より詳しくは、各正極活物質スラリーをPETフィルム上に塗布し、乾燥を行った上で、四短針法を用いて電気抵抗率を測定し、下記の表1の結果を得た。
【0051】
【0052】
<電池出力>
作製した実施例1と比較例1の正極活物質スラリーに関し、各正極活物質スラリーを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた後、ローラーを用いて塗膜を圧延した。その後、正極芯体の両面に正極活物質層が形成された長尺体を所定の電極サイズに切断して正極を作製した。また、その正極を用いて、角形二次電池を作製した。そして、作製した角形二次電池の出力値を検出し、下記の表2の結果を得た。
【0053】
【0054】
<比較例に対する実施例の優位性>
比較例1、2に対する実施例1、2の電気抵抗の低減率、及び比較例1に対する実施例1の電気出力の増加率は、次のようになった。
≪電気抵抗の低減率≫
比較例1の電気抵抗に対する実施例1の電気抵抗の低減率は、表1のデータから次のように算出され、40%となった。
[100-(実施例1の電気抵抗率/比較例1の電気抵抗率)×100]%
=[100-(1.879/3.147)×100]%=40%
また、比較例2の電気抵抗に対する実施例2の電気抵抗の低減率は、表1のデータから次のように算出され、66%となった。
[100-(実施例2の電気抵抗率/比較例2の電気抵抗率)×100]%
=[100-(5.1/15)×100]%=66%
≪出力の増加率≫
比較例1の出力に対する実施例1の出力の増大率は、表2のデータから次のように算出され、27%となった。
[(実施例1の出力/比較例1の出力)×100-100]%
=[(1190/934)×100-100]%=27%
【0055】
上記算出結果に示すように、基本的に導電剤を分割投入した点のみが、比較例と異なる実施例において、正極活物質層における抵抗を40%以上も大幅に低減できた。特に、実施例2と比較例2との抵抗の比較では、正極活物質層における抵抗を66%も急激に低減することができた。また、電池出力も、27%程度大幅に増大することを確認できた。実施例1及び実施例2の正極活物質スラリーを用いて作製された正極活物質層においては、複数の繊維状の炭素が集まって絡み合うことで紐状となったアグロメレートが含まれる。したがって、電子が正極活物質層内を円滑に移動し易くなって、正極活物質層が高い導電率を有しているものと考えられる。よって、本開示の正極活物質層を用いて正極や角形二次電池を作製すれば、電子伝導性を高くでき、電池出力を高くできる。
【0056】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、正極活物質スラリーの形成時に導電剤を分割投入することで、アグロメレートを含む正極活物質層を作製する場合について説明した。しかし、別の混錬機で作製した混錬度合が異なる2つの正極活物質スラリー(炭素材料の集合体の規模が異なる2つの正極活物質スラリー)を1つに合わせて短時間混錬することでアグロメレートを含む正極活物質層を作製してもよい。
【0058】
また、正極活物質層内にアグロメレートを形成することで、角形二次電池の出力を大幅に増大させることができることを説明した。しかし、アグロメレートを形成する活物質層は、負極活物質層でもよい。なお、この場合において、負極活物質スラリーを作製する際においても、正極活物質スラリーと同様に、導電剤を分割して投入するとアグロメレートを有する負極活物質層を容易に作製できる。なお、負極活物質スラリーを作製する際、導電剤として、カーボンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、又は黒鉛等を用いることができる。また、結着剤として、フッ素樹脂、PAN、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等を用いてもよいが、好ましくはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)又はその変性体を用いることができる。また、分散媒として、例えば、NMPを好適に使用できる。
【符号の説明】
【0059】
10 角形二次電池、 11 正極、 11a 正極活物質層、 15 正極芯体、 50 アグロメレート、 55 正極活物質。