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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】総形削り加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23C 3/28 20060101AFI20221102BHJP
   B23C 3/12 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B23C3/28
B23C3/12 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019030622
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020131390
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】竹本 伸治
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-279548(JP,A)
【文献】特公昭54-007995(JP,B2)
【文献】特開2013-059818(JP,A)
【文献】特開昭62-218012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 3/28
B23C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一切刃を有する第一の総形切削工具を軸線周りの第一方向に回転させつつ、前記軸線と直交する工具送り方向に移動させて、加工対象物に、前記第一の総形切削工具の輪郭形状を有し、前記工具送り方向に連続する総形溝を形成する第一切削工程と、
前記第一の総形切削工具と反対向きの第二切刃を有する第二の総形切削工具を、前記第一方向と逆方向である前記軸線周りの第二方向に回転させつつ、前記工具送り方向に移動させて、前記総形溝の内周面を仕上げる第二切削工程と、を有する総形削り加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総形削り加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の装置を構成する金属製の部品等を加工する際に、総形削りが用いられることがある。総形削りは、所定の輪郭をした工具で、加工対象物を、工具の輪郭と同じ形状に切削するものである。このような総形削りで加工を行うには、まず、所定の輪郭形状を有した中仕上げ用の工具を、工具の軸線回りに回転させながら、軸線に直交する工具送り方向に移動させ、金属製の加工対象物を削る。これにより、加工対象物に、工具の輪郭形状と同じ形状で、工具送り方向に連続する総形溝が形成される。次に、仕上げ用の工具を用い、仕上げ加工を行う。この仕上げ加工では、仕上げ用の工具を軸線周りに回転させながら、軸線に直交する方向に移動させ、総形溝の内周面を僅かに削る。これにより、仕上げ加工では、総形溝が所定の寸法精度に仕上げられる。
【0003】
上記のように、中仕上げ用の工具や仕上げ用の工具を用いて加工を行うと、加工対象物における工具送り方向の下流側の端面には、総形溝の内周縁部から突出するバリが発生する。このバリの除去を、ヤスリ等を用いて手作業で行うには、多大な手間とコストが掛かる。
【0004】
これに対し、例えば特許文献1には、加工対象物の端面におけるバリを除去する面取り加工を行う構成が開示されている。具体的には、所定の輪郭形状を有した工具で総形溝を形成した後に、面取り用総形回転切削工具を用いて面取り加工がおこなわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/073374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたような構成では、仕上げ加工を行った後に、バリを除去するためだけに、工具を用いて面取り加工を行う工程を追加する必要がある。その結果、工数が増加し、総形溝を形成するための加工時間の増大を招いてしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、総形溝を形成するための加工時間の増大を抑えることが可能な総形削り加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の第一態様に係る総形削り加工方法は、第一切刃を有する第一の総形切削工具を軸線周りの第一方向に回転させつつ、前記軸線と直交する工具送り方向に移動させて、加工対象物に、前記第一の総形切削工具の輪郭形状を有し、前記工具送り方向に連続する総形溝を形成する第一切削工程と、前記第一の総形切削工具と反対向きの第二切刃を有する第二の総形切削工具を、前記第一方向と逆方向である前記軸線周りの第二方向に回転させつつ、前記工具送り方向に移動させて、前記総形溝の内周面を仕上げる第二切削工程と、を有する。
【0009】
このような構成とすることで、第一の総形切削工具を第一方向に回転させて総形溝を形成したときに、総形溝の内周面から工具の移動方向に突出するバリが生じる。その後、第二の総形切削工具を第一方向と反対向きの第二方向に回転させて総形溝の内周面を仕上げると、第二の総形切削工具の第二切刃(例えば、外周切刃)によって、バリが突出する方向と逆方向からバリが削り取られる。このように、総形溝の内周面を仕上げる第二の総形切削工具でバリを同時に除去することができる。一方、第一切削工程とは反対側にバリが発生するが、仕上げ代に応じた微小なものである。そのため、総形溝の内周面を仕上げた後に、バリを除去する時間を大幅に低減もしくは省略することが可能となる。したがって、加工時間の増大を抑えつつ、バリの発生を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、総形溝を形成するための加工時間の増大を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る総形削り加工方法を用いて形成された翼溝を有する加工対象物を示す平面図である。
図2】実施形態に係る総形削り加工方法の中仕上げ工程で用いる中仕上げ工具を示す平面図である。
図3】実施形態に係る総形削り加工方法の中仕上げ工程で用いる中仕上げ工具を示す図であり、図2のA-A矢視断面図である。
図4】実施形態に係る総形削り加工方法の最終仕上げ工程で用いる最終仕上げ工具を示す平面図である。
図5】実施形態に係る総形削り加工方法の最終仕上げ工程で用いる最終仕上げ工具を示す図であり、図4のB-B矢視断面図である。
図6】実施形態に係る総形削り加工方法の流れを示すフローチャートである。
図7】実施形態に係る総形削り加工方法において、中仕上げ工程で、中仕上げ工具を用いて加工対象物を切削している状態を示す断面図である。
図8】実施形態に係る総形削り加工方法において、最終仕上げ工程で、最終仕上げ工具を用いて加工対象物を切削している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明による総形削り加工方法を実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る総形削り加工方法を用いて形成される翼溝を有する加工対象物を示す平面図である。図1に示すように、本実施形態の総形削り加工方法により、加工対象物100に翼溝(総形溝)120が形成される。
【0016】
加工対象物100は、蒸気タービンやガスタービンの動翼等を支持するロータのディスク部を形成する部材である。加工対象物100は、金属製で、一定の厚みを有した円板状の部材である。加工対象物100は、第一端面100aと、第一端面100aの反対側を向く第二端面100b(図7参照)と、第一端面100aと第二端面100bとを繋ぐ外周面100fとを有している。
【0017】
翼溝120は、蒸気タービンやガスタービンの動翼等の基部に設けられる翼根(図示無し)が嵌め込まれる溝である。翼溝120は、加工対象物100の外周面100fから、加工対象物100の内側に向かって窪んで形成される。
【0018】
以下の説明において、加工対象物100の第一端面100a及び第二端面100bに直交する方向(図1の紙面に直交する方向)を、加工対象物100の厚さ方向D1(図7参照)と称する。また、厚さ方向D1に直交し、加工対象物100の外周面100fに対して直交する方向であって、外周面100fから翼溝120が窪む方向を翼溝120の深さ方向D2と称する。また、厚さ方向D1及び深さ方向D2に直交する方向を翼溝120の溝幅方向D3と称する。
【0019】
翼溝120は、翼根(図示無し)の外周形状に対応したクリスマスツリー状をなしている。具体的には、翼溝120は、深さ方向D2に間隔を空けて、第一係合凹部121A、第二係合凹部121B、及び第三係合凹部121Cを有している。第一係合凹部121A、第二係合凹部121B、及び第三係合凹部121Cは、それぞれ、溝幅方向D3の両側に向かって窪む湾曲形状を有している。ここで、第一係合凹部121A、第二係合凹部121B、及び第三係合凹部121Cの溝幅方向D3への窪み寸法は、加工対象物100の外周面100fに最も近い第一係合凹部121Aから、加工対象物100の内側の第二係合凹部121B、第三係合凹部121Cの順に深さ方向D2に進むにしたがって大きくなっている。
【0020】
深さ方向D2において互いに隣り合う第一係合凹部121Aと第二係合凹部121Bとの間には、第一係合凸部122Aが形成されている。また、深さ方向D2において互いに隣り合う第二係合凹部121Bと第三係合凹部121Cとの間には、第二係合凸部122Bが形成されている。第一係合凸部122A及び第二係合凸部122Bは、翼溝120において、溝幅方向D3の内側に向かって湾曲してそれぞれ突出している。
【0021】
図2は、上記総形削り加工方法の中仕上げ工程で用いる中仕上げ工具を示す平面図である。図3は、上記総形削り加工方法の中仕上げ工程で用いる中仕上げ工具を示す図であり、図2のA-A矢視断面図である。
【0022】
図2及び図3に示すように、中仕上げ工具(第一の総形切削工具)10は、総形削りを行うために用いられる総形フライス工具である。中仕上げ工具10は、第一シャンク部11と、第一工具本体部12と、を備えている。中仕上げ工具10は、工具用の高速度鋼もしくは超硬合金から形成されている。
【0023】
第一シャンク部11は、第一軸線(軸線)O1を中心として第一軸線O1の延びる第一軸線O1方向に延在する円柱状もしくは円錐台状をなしている。第一シャンク部11は、フライス加工を行う工作機械の主軸(図示無し)に保持される。中仕上げ工具10は、第一シャンク部11が工作機械の主軸に保持された状態で、第一軸線O1周りの周方向Dcの第一方向R1に回転駆動される。本実施形態の中仕上げ工具10は、第一軸線O1方向における第一シャンク部11側から見た際に、第一工具本体部12が時計回り(右回り)に回転駆動される。つまり、本実施形態では、中仕上げ工具10の工具回転方向である第一方向R1は、時計回り方向である。
【0024】
第一工具本体部12は、第一シャンク部11から第一軸線O1方向に連続して設けられている。第一工具本体部12は、第一シャンク部11に近い側の第一基端部12aから、第一シャンク部11から離れた側の第一先端部12bに向けて、第一軸線O1方向に延びている。第一工具本体部12は、形成する翼溝120に対応したクリスマスツリー形状をなしている。第一工具本体部12は、第一切屑排出溝13と、第一外周切刃部14と、第一先端切刃部15と、を有している。
【0025】
第一切屑排出溝13は、第一工具本体部12の外周部に、第一軸線O1周りの周方向Dcに間隔をあけて複数形成されている。本実施形態では、例えば4本の第一切屑排出溝13が、周方向Dcで等間隔に設けられている。各第一切屑排出溝13は、第一基端部12aから第一先端部12bに向けて連続して延びている。各第一切屑排出溝13は、第一工具本体部12の径方向Drの中心側に向かって窪んでいる。
【0026】
第一外周切刃部14は、第一切屑排出溝13に対し、周方向Dcで隣接して形成されている。第一外周切刃部14は、第一工具本体部12の外周部に、第一軸線O1周りの周方向Dcに間隔をあけて複数設けられている。各第一外周切刃部14は、第一軸線O1方向に沿って、第一基端部12aから第一先端部12bに向けて連続して延びている。時計回りの第一方向R1に回転駆動される中仕上げ工具10において、各第一外周切刃部14の回転方向である第一方向R1の前方に、第一切刃(例えば、外周切刃)14sが形成されている。第一切刃14sは、第一方向R1の前方に向かって突出している。各第一切屑排出溝13において、第一方向R1の後方に位置し、回転方向前方を向く面が、第一切刃14sで切削された切屑の第一すくい面13fを形成する。これにより、中仕上げ工具10は、第一方向R1に回転したときに、第一方向R1の前方を向く第一切刃14sにより、加工対象物100を切削する。つまり、第一切刃14sは、第一方向R1に回転したときに加工対象物100を切削する右刃とされている。
【0027】
中仕上げ工具10では、第一外周切刃部14及び第一先端切刃部15が、加工対象物100に形成すべき翼溝120と同輪郭をなしている。具体的には、図2に示すように、各第一外周切刃部14は、第一基端部12aから第一先端部12bに向かって、第一大径部16A、第二大径部16B、及び第三大径部16Cを有している。第一大径部16A、第二大径部16B、及び第三大径部16Cは、それぞれ、第一軸線O1から径方向Drに突出するよう形成されている。第一大径部16Aは、翼溝120の第一係合凹部121A(図1参照)を形成する。第二大径部16Bは、第二係合凹部121Bを形成する。第三大径部16Cは、第三係合凹部121Cを形成する。各第一外周切刃部14は、第一軸線O1方向における第一大径部16Aと第二大径部16Bとの間に第一小径部17Aを有している。各第一外周切刃部14は、第一軸線O1方向における第二大径部16Bと第三大径部16Cとの間に、第二小径部17Bを有している。第一小径部17A及び第二小径部17Bは、それぞれ、径方向Drに向かって湾曲して窪んでいる。
【0028】
第一先端切刃部15は、第一先端部12bに形成されている。第一先端切刃部15は、第一外周切刃部14と連続するように形成されている。第一先端切刃部15は、第一軸線O1方向に直交している。
【0029】
図4は、上記総形削り加工方法の最終仕上げ工程で用いる最終仕上げ工具を示す平面図である。図5は、上記総形削り加工方法の最終仕上げ工程で用いる最終仕上げ工具を示す図であり、図4のB-B矢視断面図である。
【0030】
図4及び図5に示すように、最終仕上げ工具(第二の総形切削工具)20は、総形削りを行うために用いられる総形フライス工具である。最終仕上げ工具20は、第二シャンク部21と、第二工具本体部22と、を備えている。最終仕上げ工具20は、工具用の高速度鋼もしくは超硬合金から形成される。
【0031】
第二シャンク部21は、第二軸線(軸線)O2を中心として第二軸線O2の延びる第二軸線O2方向に延びる円柱状もしくは円錐台状に形成されている。第二シャンク部21は、フライス加工を行う工作機械の主軸(図示無し)に保持される。最終仕上げ工具20は、第二シャンク部21が工作機械の主軸に保持された状態で、第二軸線O2周りの周方向Dcの第二方向R2に回転駆動される。本実施形態の最終仕上げ工具20は、第二軸線O2方向の第二シャンク部21側から見た際に、第二工具本体部22が第一方向R1とは逆方向の反時計回り(左回り)に回転駆動される。つまり、本実施形態では、最終仕上げ工具20の工具回転方向である第二方向R2は、反時計回り方向である。
【0032】
第二工具本体部22は、第二シャンク部21から第二軸線O2方向に連続して設けられている。第二工具本体部22は、第二シャンク部21に近い側の第二基端部22aから、第二シャンク部21から離れた側の第二先端部22bに向けて、第二軸線O2方向に延びている。第二工具本体部22は、第一工具本体部12と同様に、形成する翼溝120に対応したクリスマスツリー形状をなしている。第二工具本体部22は、第二切屑排出溝23と、第二外周切刃部24と、第二先端切刃部25と、を有している。
【0033】
第二切屑排出溝23は、第二工具本体部22の外周部に、第二軸線O2周りの周方向Dcに間隔をあけて複数形成されている。本実施形態では、例えば4本の第二切屑排出溝23が、周方向Dcで等間隔に設けられている。各第二切屑排出溝23は、第二基端部22aから第二先端部22bに向けて連続して延びている。各第二切屑排出溝23は、第二工具本体部22の径方向Drの中心側に向かって窪んでいる。
【0034】
第二外周切刃部24は、第二工具本体部22の外周部に、第二軸線O2周りの周方向Dcに間隔をあけて複数形成されている。第二外周切刃部24は、第二切屑排出溝23に対し、周方向Dcで隣接して設けられている。各第二外周切刃部24は、第二軸線O2方向に沿って、第二基端部22aから第二先端部22bに向けて連続して延びている。反時計回りの第二方向R2に回転駆動される最終仕上げ工具20において、第二外周切刃部24の回転方向である第二方向R2の前方に、第二切刃(例えば、外周切刃)24sが形成されている。第二切刃24sは、第二方向R2の前方に突出している。各第二切屑排出溝23において、第二方向R2の後方に位置し、回転方向前方を向く面が、第二切刃24sで切削された切屑の第二すくい面23fを形成する。これにより、最終仕上げ工具20は、第二方向R2に回転したときに、第二方向R2の前方を向く第二切刃24sにより、加工対象物100を切削する。つまり、第二切刃24sは、中仕上げ工具10の第一切刃14sとは反対向きの左刃とされている。
【0035】
図4に示すように、各第二外周切刃部24は、第二基端部22aから第二先端部22bに向かって、仕上げ用第一大径部26A、仕上げ用第二大径部26B、及び仕上げ用第三大径部26Cを有している。仕上げ用第一大径部26A、仕上げ用第二大径部26B、及び仕上げ用第三大径部26Cは、それぞれ、第二軸線O2から径方向Drに突出するよう形成されている。仕上げ用第一大径部26Aは、翼溝120の第一係合凹部121A(図1参照)を仕上げ加工する。仕上げ用第二大径部26Bは、第二係合凹部121Bを仕上げ加工する。仕上げ用第三大径部26Cは、第三係合凹部121Cを仕上げ加工する。各第二外周切刃部24は、第二軸線O2方向における仕上げ用第一大径部26Aと仕上げ用第二大径部26Bとの間に仕上げ用第一小径部27Aを有している。各第二外周切刃部24は、第二軸線O2方向における仕上げ用第二大径部26Bと仕上げ用第三大径部26Cとの間に、仕上げ用第二小径部27Bを有している。仕上げ用第一小径部27A及び仕上げ用第二小径部27Bは、それぞれ、径方向Drに湾曲して窪んでいる。
【0036】
第二先端切刃部25は、第二先端部22bに形成されている。第二先端切刃部25は、第二外周切刃部24と連続するように形成されている。第二先端切刃部25は、第二軸線O2方向に直交している。
【0037】
このような最終仕上げ工具20は、第二外周切刃部24及び第二先端切刃部25が、加工対象物100に形成すべき翼溝120と同輪郭(同寸法)に形成されている。つまり、最終仕上げ工具20は、中仕上げ工具10と同じ形状を有する。なお、最終仕上げ工具20は、中仕上げ工具10と比べて僅かに大きい(例えば0.1~0.2mm程度)外形寸法を有するように形成されていてもよい。
【0038】
次に、本実施形態における総形削り加工方法について説明する。図6は、上記総形削り加工方法の流れを示すフローチャートである。図7は、上記総形削り加工方法において、中仕上げ工程で、中仕上げ工具を用いて加工対象物を切削している状態を示す断面図である。図8は、上記総形削り加工方法において、最終仕上げ工程で、最終仕上げ工具を用いて加工対象物を切削している状態を示す断面図である。
【0039】
図6に示すように、本実施形態における総形削り加工方法は、中仕上げ工程(第一切削工程)S1と、最終仕上げ工程(第二切削工程)S2と、を有している。
【0040】
図7に示すように、中仕上げ工程S1では、工作機械の主軸(図示無し)に対して主軸の軸線と第一軸線O1とを一致させた状態で中仕上げ工具10が装着される。主軸が第一方向R1に回転することで、中仕上げ工具10は、第一軸線O1周りの第一方向R1に回転されつつ、第一軸線O1と直交する工具送り方向Dtに移動される。これにより、翼溝120の形成されていない加工対象物100にクリスマスツリー状の翼溝120が切削される。ここで、工具送り方向Dtとは、加工対象物100の厚さ方向D1であって、第二端面100bから第一端面100aに向かう方向である。つまり、工具送り方向Dtは、形成される翼溝(総形溝)120と平行な方向である。これにより、加工対象物100には、中仕上げ工具10の輪郭形状を有した翼溝120が、工具送り方向Dtに連続して形成される。なお、中仕上げ工程S1で形成された翼溝120における溝内周面120x及び溝内周面120yは、表面粗さは非常に大きく(粗い状態)なっている。
【0041】
加工対象物100において、第一方向R1に回転する中仕上げ工具10の第一切刃14sは、溝幅方向D3の一方の側の溝内周面(内周面)120xに対しては、第一端面100aから第二端面100bに向かって切削加工を施す。一方、第一切刃14sは、溝幅方向D3の他方の側の溝内周面(内周面)120yに対しては、第二端面100bから第一端面100aに向かって切削加工を施す。中仕上げ工具10は、厚さ方向D1に沿って第二端面100bから第一端面100aに向かって移動される。そのため、加工対象物100の第一端面100aには、溝幅方向D3の他方の側の溝内周面120yから厚さ方向D1(工具送り方向Dt)の外側に向かってバリ200が突出する。
【0042】
最終仕上げ工程S2は、中仕上げ工程S1の後に実施される。図8に示すように、最終仕上げ工程S2では、工作機械の主軸(図示無し)に対して主軸の軸線と第二軸線O2とを一致させた状態で最終仕上げ工具20が装着される。主軸が第二方向R2に回転することで、最終仕上げ工具20は、第二軸線O2回りの第二方向R2に回転されつつ、工具送り方向Dtに移動される。その結果、最終仕上げ工具20によって、加工対象物100に形成された溝内周面120x及び溝内周面120yが、表面が整えられるようにさらに切削される。これにより、加工対象物100には、溝内周面120x及び溝内周面120yの表面粗さが小さい最終的な形状を有する翼溝120が、工具送り方向Dtに連続して形成される。
【0043】
第二方向R2に回転する最終仕上げ工具20の第二切刃24sは、溝幅方向D3の一方の側の溝内周面120xに対しては、第二端面100bから第一端面100aに向かって切削加工を施す。一方、第二切刃24sは、溝幅方向D3の他方の側の溝内周面120yに対しては、第一端面100aから第二端面100bに向かって切削加工を施す。最終仕上げ工具20は、工具送り方向Dtに沿って第二端面100bから第一端面100aに移動される。これにより、中仕上げ工具10により形成された溝内周面120x及び溝内周面120yは、例えば0.1~0,2mm程度切削される。そして、最終仕上げ工具20が工具送り方向Dtにおける第一端面100aの外側に抜ける際に、最終仕上げ工具20は、第一端面100aに形成されたバリ200も削り取る。一方、加工対象物100の第一端面100aには、溝幅方向D3の他方の側の溝内周面120xから厚さ方向D1(工具送り方向Dt)の外側に向かって微小バリ300が突出する。ただし、微小バリ300は、バリ200に比べて非常に小さなものであり、手入れ(工具を使用せずに手作業)により簡単に除去できるか除去を省略できる程度の微小なモノである。
【0044】
上述したような総形削り加工方法によれば、まず、第一切刃14sを有する中仕上げ工具10を第一方向R1に回転させることで加工対象物100に翼溝120を形成している。その後、第一切刃14sとは反対向きの第二切刃24sを有する最終仕上げ工具20を、中仕上げ工具10とは逆方向の第二方向R2に回転させ、翼溝120を形成する溝内周面120x及び溝内周面120yをさらに切削している。これにより、翼溝120が仕上げられている。その際、中仕上げ工具10で翼溝120を形成したときに生成されるバリ200は、最終仕上げ工具20が通過することで、第二方向R2に回転する第二切刃24sによって巻き込まれるように削り取られる。したがって、翼溝120の溝内周面120x及び溝内周面120yを仕上げる最終仕上げ工具20でバリ200を同時に除去することができる。つまり、翼溝120の最終仕上げ加工と、バリ除去加工とを最終仕上げ工具20によって同時に行うことができる。これにより、翼溝120を仕上げた後に、別途、面取り加工用の工具等でバリ200を除去する必要がない。そのため、新たにバリ取り用の工具を準備したり、バリ取りのための加工工程を別途準備したりする必要がない。したがって、工具のコスト及び加工時間の増大を抑えつつ、バリを除去することが可能となる。
【0045】
また、中仕上げ工具10は、第一方向R1に回転させたときに加工対象物100を切削する右刃の第一切刃14sを有している。一方、最終仕上げ工具20は、第二方向R2に回転させたときに加工対象物100を切削する左刃の第二切刃24sを有している。このような構成とすることで、中仕上げ工具10と、最終仕上げ工具20との2種類の工具で、バリ除去加工までを含めた翼溝120の加工を行うことができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0047】
例えば、上記実施形態では、中仕上げ工具10が時計回りの第一方向R1に回転され、最終仕上げ工具20が反時計回りの第二方向R2に回転されるようにしたが、これに限られるものではない。中仕上げ工具10が反時計回りに回転され、最終仕上げ工具20が時計回りに回転されるようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、中仕上げ工具10及び最終仕上げ工具20の工具送り方向Dtを、加工対象物100の第二端面100bから第一端面100aに向かう方向としたが、これに限られるものではない。工具送り方向Dtは、加工対象物100の第一端面100aから第二端面100bに向かう方向であってもよい。
【0049】
また、翼溝120を形成するのに用いる中仕上げ工具10及び最終仕上げ工具20の形状や構成は、総形フライス工具であれば、上記した以外のいかなる形状や構成としてもよい。
【0050】
また、形成する翼溝120の形状が複雑な場合には、中仕上げ工具10を用いた中仕上げ工程S1に先立ち、荒加工用の工具等を用いた翼溝120の荒加工工程を、1以上実施するようにしてもよい。この際、荒加工用のフライス工具として、中仕上げ工具10が使用されもよい。この際、荒加工工程では、例えば、切削条件のみが中仕上げ工程S1と異なるようにされる。
【0051】
さらに、上記実施形態では、加工対象物100に翼溝120を形成するようにしたが、形成する総形溝の形状や用途は、何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
10 中仕上げ工具(第一の総形切削工具)
11 第一シャンク部
12 第一工具本体部
12a 第一基端部
12b 第一先端部
13 第一切屑排出溝
13f 第一すくい面
14 第一外周切刃部
14s 第一切刃
15 第一先端切刃部
16A 第一大径部
16B 第二大径部
16C 第三大径部
17A 第一小径部
17B 第二小径部
20 最終仕上げ工具(第二の総形切削工具)
21 第二シャンク部
22 第二工具本体部
22a 第二基端部
22b 第二先端部
23 第二切屑排出溝
23f 第二すくい面
24 第二外周切刃部
24s 第二切刃
25 第二先端切刃部
26A 仕上げ用第一大径部
26B 仕上げ用第二大径部
26C 仕上げ用第三大径部
27A 仕上げ用第一小径部
27B 仕上げ用第二小径部
100 加工対象物
100f 外周面
100a 第一端面
100b 第二端面
120 翼溝(総形溝)
120x 溝内周面
120y 溝内周面
121A 第一係合凹部
121B 第二係合凹部
121C 第三係合凹部
122A 第一係合凸部
122B 第二係合凸部
200 バリ
D1 厚さ方向
D2 深さ方向
D3 溝幅方向
Dc 周方向
Dr 径方向
Dt 工具送り方向
O1 第一軸線
O2 第二軸線
R1 第一方向
R2 第二方向
S1 中仕上げ工程(第一切削工程)
S2 最終仕上げ工程(第二切削工程)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8