(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】空調空気供給装置、材料試験機及び材料試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/18 20060101AFI20221102BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20221102BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20221102BHJP
F24F 13/075 20060101ALI20221102BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20221102BHJP
F24F 13/08 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G01N3/18
F24F13/02 B
F24F13/06 C
F24F13/075
F24F5/00 Z
F24F13/08 A
(21)【出願番号】P 2019034028
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】中西 隆
(72)【発明者】
【氏名】菊池 郁織
(72)【発明者】
【氏名】湊 遥
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-72140(JP,A)
【文献】実開平6-32948(JP,U)
【文献】特開平4-242143(JP,A)
【文献】特開2016-90482(JP,A)
【文献】特開2016-99034(JP,A)
【文献】特開2008-82667(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125748(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/55273(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
F24F 13/06
F24F 13/075
F24F 5/00
F24F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片を開放空間に配置して行う材料試験において、温調された空調空気を前記試験片に供給するための空調空気供給装置であって、
前記空調空気の温度を調整する空調ユニットと、
前記空調ユニットの吹出部に接続された可撓性を有するダクトであって、前記空調ユニットにより温調された前記空調空気を前記開放空間に吹き出すための吹出口が設けられた吹出ダクトと、
前記吹出口から前記開放空間に吹き出された前記空調空気を吸い込むための吸込口が設けられた可撓性を有する吸込ダクトと、を備えた、空調空気供給装置。
【請求項2】
前記吹出口の開口面積が前記吸込口の開口面積よりも小さい、請求項1に記載の空調空気供給装置。
【請求項3】
前記吸込ダクトには、単一の前記吸込口が設けられており、
前記吹出ダクトには、前記吸込口よりも開口面積が小さい単一の前記吹出口が設けられている、請求項2に記載の空調空気供給装置。
【請求項4】
前記吸込ダクトには、複数の前記吸込口が設けられており、
前記吹出口の開口面積が、複数の前記吸込口の各々の開口面積の合計よりも小さい、請求項2に記載の空調空気供給装置。
【請求項5】
前記吹出口の開口面積が前記吸込口の開口面積よりも大きい、請求項1に記載の空調空気供給装置。
【請求項6】
前記吸込ダクトには、単一の前記吸込口が設けられており、
前記吹出ダクトには、前記吸込口よりも開口面積が大きい単一の前記吹出口が設けられている、請求項5に記載の空調空気供給装置。
【請求項7】
前記吹出ダクトには、複数の前記吹出口が設けられており、
複数の前記吹出口の各々の開口面積の合計が、前記吸込口の開口面積よりも大きい、請求項5に記載の空調空気供給装置。
【請求項8】
前記吹出口の開口面積と前記吸込口の開口面積とが同じである、請求項1に記載の空調空気供給装置。
【請求項9】
前記空調空気が前記吹出口から直線状に吹き出されるように前記空調空気の吹出方向を規定する整流部材をさらに備えた、請求項1~8のいずれか1項に記載の空調空気供給装置。
【請求項10】
試験片を保持する保持部と、
温調された空調空気を前記試験片に向けて供給する請求項1~9のいずれか1項に記載の空調空気供給装置と、を備えた、材料試験機。
【請求項11】
試験片を開放空間に配置するステップと、
空調空気の温度を調整する空調ユニットと、前記空調ユニットの吹出部に接続されると共に前記空調空気の吹出口が設けられた吹出ダクトと、前記空調空気の吸込口が設けられた吸込ダクトと、を備えた空調空気供給装置を、前記吹出口と前記吸込口との間に前記開放空間が位置するように配置するステップと、
前記試験片について材料試験を実行するステップと、を備え、
前記空調ユニットにより前記空調空気の温度を調整し、温調された前記空調空気を前記吹出口から前記試験片に向けて前記開放空間に吹き出すと共に、前記開放空間に吹き出された前記空調空気を前記吸込口から吸い込んで回収する、材料試験方法。
【請求項12】
前記吹出口の開口面積が前記吸込口の開口面積よりも小さい前記空調空気供給装置を用いる、請求項11に記載の材料試験方法。
【請求項13】
前記吹出口の開口面積が前記吸込口の開口面積よりも大きい前記空調空気供給装置を用いる、請求項11に記載の材料試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調空気供給装置、材料試験機及び材料試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引張試験や圧縮試験等、各種材料に力を加えてその材料特性(機械的性質、熱的性質、電気的性質等)を測定する材料試験や、各種材料に力を加えずに前記材料特性を測定する材料試験について知られている。このような材料試験では、所定の温度環境下における材料特性を評価するために、試験片の温度を目標とする試験温度に調整することが必要になる場合がある。この種の技術が、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された材料試験機は、試験片に対して試験力を付与するための負荷機構を有する試験機本体と、当該試験片が収容される恒温槽と、により構成されている。この材料試験機では、恒温槽内が隔壁によって試験空間と機器配置空間(加熱ヒータ及びファンが配置された空間)とに仕切られており、加熱ヒータにより加熱された空気を、ファンの作用により、隔壁に形成された通風孔を介して試験空間に循環させるように構成されている。この材料試験機によれば、加熱ヒータを制御することにより、試験空間の温度を所定の雰囲気温度に維持しつつ、試験片について材料試験が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
材料試験に用いられる試験片や試験機本体としては、様々な種類や大きさのものが存在する。このため、所定の温度環境下で材料試験を行うに際し、特許文献1では、試験片や試験機本体に合った専用の恒温槽が、試験片や試験機本体ごとに必要になる。したがって、従来では、様々な試験片や試験機本体を用いた材料試験において柔軟に所定の温度環境を付与するのが困難という課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その一の目的は、材料試験において様々な試験片や試験機を用いた場合でも柔軟に所定の温度環境を付与することが可能な空調空気供給装置及び当該空調空気供給装置を備えた材料試験機を提供することである。また本発明の他の目的は、様々な試験片や試験機を用いた場合にも柔軟に所定の温度環境を付与することが可能な材料試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る空調空気供給装置は、試験片を開放空間に配置して行う材料試験において、温調された空調空気を前記試験片に供給するための装置である。前記空調空気供給装置は、前記空調空気の温度を調整する空調ユニットと、前記空調ユニットの吹出部に接続された可撓性を有するダクトであって、前記空調ユニットにより温調された前記空調空気を前記開放空間に吹き出すための吹出口が設けられた吹出ダクトと、前記吹出口から前記開放空間に吹き出された前記空調空気を吸い込むための吸込口が設けられた可撓性を有する吸込ダクトと、を備えている。
【0008】
この空調空気供給装置によれば、材料試験の条件に応じて空調ユニットにより温調された空調空気を、開放空間に配置された試験片に向けて吹出口から吹き出すことができる。このため、従来のように試験片や試験機に合った専用の恒温槽を用いる必要がなく、様々な試験片や試験機を用いた場合でも、所定の温度環境下で材料試験を行うことができる。しかも、可撓性を有する吹出ダクト及び吸込ダクトを取り回すことにより、吹出口及び吸込口の位置を調整することができる。そして、吹出口及び吸込口の相対位置により、空調空気が開放空間において流れる方向を特定の方向に定めることができる。これにより、温調された空調空気を試験片により確実に当てることができるため、試験片の温度を目標温度に効率良く調整することができる。
【0009】
上記空調空気供給装置において、前記吹出口の開口面積が前記吸込口の開口面積よりも小さくなっていてもよい。
【0010】
この構成によれば、吹出口から開放空間に吹き出されて試験片に当たった空調空気が、吸込口によって吸込可能な範囲の外まで拡散するのを防ぐことができるため、空調空気をより確実に回収することができる。
【0011】
上記空調空気供給装置において、前記吸込ダクトには、単一の前記吸込口が設けられていてもよい。前記吹出ダクトには、前記吸込口よりも開口面積が小さい単一の前記吹出口が設けられていてもよい。
【0012】
この構成によれば、吹出口及び吸込口を複数設ける場合に比べて、吹出ダクト及び吸込ダクトの構成をより簡素化することができる。
【0013】
上記空調空気供給装置において、前記吸込ダクトには、複数の前記吸込口が設けられており、前記吹出口の開口面積が、複数の前記吸込口の各々の開口面積の合計よりも小さくなっていてもよい。
【0014】
この構成によれば、試験片に当たった空調空気が多方向に拡散した場合でも、当該空調空気を吸込ダクト内に確実に回収することができる。
【0015】
上記空調空気供給装置において、前記吹出口の開口面積が前記吸込口の開口面積よりも大きくなっていてもよい。
【0016】
この構成によれば、吹出口の開口面積を大きくすることにより、空調空気を試験片により確実に当てることができる。また、吸込口から吸込ダクト内に取り込まれる外気の量をより少なくすることができる。これにより、空調空気を0℃以下に温調して再利用する場合であっても、水分を多く含む多量の外気が空調ユニット内に流入し、蒸発器の表面等において霜付きが発生して運転不能になる事態を抑制することができる。
【0017】
上記空調空気供給装置において、前記吸込ダクトには、単一の前記吸込口が設けられていてもよい。前記吹出ダクトには、前記吸込口よりも開口面積が大きい単一の前記吹出口が設けられていてもよい。
【0018】
この構成によれば、吹出口及び吸込口を複数設ける場合に比べて、吹出ダクト及び吸込ダクトの構成をより簡素化することができる。
【0019】
上記空調空気供給装置において、前記吹出ダクトには、複数の前記吹出口が設けられており、複数の前記吹出口の各々の開口面積の合計が、前記吸込口の開口面積よりも大きくなっていてもよい。
【0020】
この構成によれば、試験片の表(おもて)面及び裏面の両方に対して空調空気を吹き付けることができるため、試験片全体の温度を均一化することができる。
【0021】
上記空調空気供給装置において、前記吹出口の開口面積と前記吸込口の開口面積とが同じであってもよい。
【0022】
この構成によれば、吹出ダクト及び吸込ダクトとして同じ部材を用いることが可能となり、またダクト内を流れる空調空気の圧力損失を小さくすることができる。
【0023】
上記空調空気供給装置は、前記空調空気が前記吹出口から直線状に吹き出されるように前記空調空気の吹出方向を規定する整流部材をさらに備えていてもよい。
【0024】
この構成によれば、空調空気が吹出口から拡散するのを抑制し、試験片に空調空気をより確実に当てることができる。また空調空気が吹出口から拡散する場合に比べて、吸込口からの空調空気の回収効率を上げることができる。
【0025】
本発明の他の局面に係る材料試験機は、試験片を保持する保持部と、温調された空調空気を前記試験片に向けて供給する上記空調空気供給装置と、を備えている。
【0026】
この材料試験機は、上記空調空気供給装置を備えるものであるため、様々な種類や大きさの試験片が用いられる場合でも、従来のように専用の恒温槽に都度変える必要はなく、柔軟に所定の温度環境を付与することが可能である。また、可撓性を有する吹出ダクト及び吸込ダクトを取り回して吹出口及び吸込口の位置を調整し、当該吹出口及び吸込口の相対位置によって、空調空気が開放空間において流れる方向を特定の方向に定めることができる。これにより、温調された空調空気を試験片により確実に当てることができるため、試験片の温度を目標温度に効率良く調整することができる。
【0027】
本発明のさらに他の局面に係る材料試験方法は、試験片を開放空間に配置するステップと、空調空気の温度を調整する空調ユニットと、前記空調ユニットの吹出部に接続されると共に前記空調空気の吹出口が設けられた吹出ダクトと、前記空調空気の吸込口が設けられた吸込ダクトと、を備えた空調空気供給装置を、前記吹出口と前記吸込口との間に前記開放空間が位置するように配置するステップと、前記試験片について材料試験を実行するステップと、を備えている。この方法では、前記空調ユニットにより前記空調空気の温度を調整し、温調された前記空調空気を前記吹出口から前記試験片に向けて前記開放空間に吹き出すと共に、前記開放空間に吹き出された前記空調空気を前記吸込口から吸い込んで回収する。
【0028】
この材料試験方法によれば、試験条件に応じて空調ユニットにより温調された空調空気を、開放空間に配置された試験片に向けて吹出口から吹き出すことができる。このため、様々な試験片や試験機が用いられる場合でも、その都度専用の恒温槽を用いる必要がなく、柔軟に所定の温度環境を付与することができる。しかも、空調空気が開放空間において流れる方向を、吹出口及び吸込口の相対位置により特定の方向に定めることができる。これにより、空調空気を試験片により確実に当てることができるため、試験片の温度を目標温度に効率良く調整することができる。
【0029】
上記材料試験方法において、前記吹出口の開口面積が前記吸込口の開口面積よりも小さい前記空調空気供給装置を用いてもよい。
【0030】
これにより、吹出口から開放空間に吹き出された空調空気を、吸込口からより確実に回収することができる。
【0031】
上記材料試験方法において、前記吹出口の開口面積が前記吸込口の開口面積よりも大きい前記空調空気供給装置を用いてもよい。
【0032】
これにより、開放空間から吸込ダクト内に取り込まれる外気の量をより少なくすることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、材料試験において様々な試験片や試験機を用いた場合でも柔軟に所定の温度環境を付与することが可能な空調空気供給装置及び当該空調空気供給装置を備えた材料試験機を提供することができる。また本発明によれば、様々な試験片や試験機を用いた場合にも柔軟に所定の温度環境を付与することが可能な材料試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態1に係る材料試験機及び空調空気供給装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る空調空気供給装置における空調空気の吹出口及び吸込口の近傍の構成を拡大して示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る空調空気供給装置における整流部材の構成を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1の変形例に係る空調空気供給装置における空調空気の吹出口及び吸込口の近傍の構成を拡大して示す模式図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る空調空気供給装置における空調空気の吹出口及び吸込口の近傍の構成を拡大して示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態3に係る空調空気供給装置における空調空気の吹出口及び吸込口の近傍の構成を拡大して示す模式図である。
【
図7】本発明の実施形態4に係る空調空気供給装置における空調空気の吹出口及び吸込口の近傍の構成を拡大して示す模式図である。
【
図8】本発明の実施形態5に係る空調空気供給装置における空調空気の吹出口及び吸込口の近傍の構成を拡大して示す模式図である。
【
図9】本発明の実施形態6に係る材料試験機及び空調空気供給装置の構成を模式的に示す図である。
【
図10】参考例の空調空気供給装置及び空調空気供給方法を説明するための模式図である。
【
図11】他の参考例の空調空気供給装置及び空調空気供給方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る空調空気供給装置、材料試験機及び材料試験方法について詳細に説明する。
【0036】
(実施形態1)
<材料試験機、空調空気供給装置>
まず、本発明の実施形態1に係る材料試験機1及び空調空気供給装置2の構成について、
図1~
図3を参照して説明する。なお、
図1は、本実施形態に係る材料試験機1及び空調空気供給装置2における主要な構成要素のみを示しており、材料試験機1及び空調空気供給装置2は、同図に現れていない他の構成要素も備え得るものである。
【0037】
材料試験機1は、各種材料からなる試験片100の材料特性を評価する材料試験に用いられる装置である。材料試験の種類としては、例えば、引張試験、圧縮試験、曲げ試験又は衝撃試験などが挙げられる。また材料特性としては、例えば、様々な機械的性質(材料の強さ、弾性又は硬さ等)、熱的性質(線膨張係数等)又は電気的性質(電気抵抗等)などが挙げられる。本実施形態では、引張試験により試験片100の機械的性質を評価する例について説明する。
【0038】
図1に示すように、材料試験機1は、試験片100を保持する保持部3と、温調された空調空気A1を試験片100に向けて供給する空調空気供給装置2と、を主に備えている。保持部3は、試験片100の上端を挟持する上チャック3Aと、試験片100の下端を挟持する下チャック3Bと、を有している。試験片100のサイズは、引張試験の規格により定められている。また保持部3は、上チャック3A及び下チャック3Bからなる場合に限定されず、材料試験の種類に応じた種々のものを用いることができる。
【0039】
空調空気供給装置2は、試験片100を開放空間S0に配置して行う引張試験(材料試験)において、温調された空調空気A1を試験片100に対して局部的に供給するための装置である。空調空気供給装置2を用いることにより、所定の温度条件下における引張試験が可能になる。
図1に示すように、空調空気供給装置2は、空調ユニット10と、吹出ダクト20と、吸込ダクト30と、を主に備えている。以下、これらの構成要素についてそれぞれ説明する。
【0040】
空調ユニット10は、空調空気A1の温度を調整する装置である。空調ユニット10は、ユニット筐体11と、冷凍機13と、加熱器14と、送風機15と、コントローラ18と、を主に有している。冷凍機13は、蒸気圧縮冷凍サイクルを行う装置であり、冷媒が循環する冷媒回路(図示しない)と、当該冷媒回路に配置された冷却器13A(蒸発器)、圧縮機13B、凝縮器(図示しない)及び膨張機構と、を主に有している。
【0041】
ユニット筐体11は、空調ユニット10の各機器(冷凍機13、加熱器14及び送風機15)を収容する直方体形状の筐体である。ユニット筐体11の下面には、空調ユニット10を床面F1上で支持する支持脚16が設けられていると共に、空調ユニット10を床面F1上において移動させるためのキャスター17が設けられている。
図1に示すように、ユニット筐体11には、冷却器13A、加熱器14及び送風機15が収容される空調室10Aと、当該空調室10Aの下方に位置すると共に圧縮機13Bが収容される機械室10Bと、がそれぞれ設けられている。
【0042】
ユニット筐体11(空調室10A)における1つの側面には、温調された空調空気A1をユニット筐体11の外へ吹き出すための吹出部11Aと、空調空気A1をユニット筐体11内に吸い込むための吸込部11Bと、がそれぞれ設けられている。そして、ユニット筐体11(空調室10A)内には、吸込部11Bから吹出部11Aまで至る通風空間S1(
図1中の破線で示す空間)が設けられている。
図1に示すように、当該通風空間S1において、冷却器13A、加熱器14及び送風機15が、風上側から風下側に向かってこの順で配置されている。
【0043】
冷凍機13は、通風空間S1を流れる空調空気A1を冷却するための装置である。具体的には、冷却器13A(蒸発器)を通過する空調空気A1と当該冷却器13A内を流れる冷媒とを熱交換させて冷媒を蒸発させることにより、空調空気A1が冷却される。
【0044】
加熱器14は、通風空間S1を流れる空調空気A1を加熱するためのものである。加熱器14は、例えば、ワイヤヒータにより構成されているがこれに限定されず、他の加熱方式を採用することも可能である。
【0045】
送風機15は、空調空気A1の流れを発生させるファンであり、冷却器13Aや加熱器14により温調された空調空気A1を吹出部11Aに向かって吹き出す。コントローラ18は、空調ユニット10の各動作(冷凍機13、加熱器14及び送風機15の各動作)を制御するものである。具体的に、コントローラ18は、温度センサーT1による測定値と温度設定値とを比較し、これに基づいて冷凍機13及び加熱器14の出力を制御する。
【0046】
図1に示すように、温度センサーT1は、本実施形態では試験片100に取り付けられており、試験片100の温度を測定するために使用される。しかしこれに限定されず、温度センサーT1は、例えば、試験片100の近傍を流れる空調空気A1の温度を測定するために使用されてもよい。また温度センサーT1は、試験片100に取り付けられるものに限定されず、試験片100の温度を非接触で測定するものであってもよい。
【0047】
吹出ダクト20は、空調ユニット10の吹出部11Aに接続された可撓性を有するダクトである。具体的には、吹出ダクト20は、空調空気A1が流れる流路が内部に形成された円筒形状のダクトであり、空調ユニット10の吹出部11Aに接続された一端部を有すると共に、当該一端部から反対側の他端部まで延びている。そして当該他端部には、空調ユニット10により温調された空調空気A1を開放空間S0に吹き出すための吹出口21が設けられている。
図1に示すように、本実施形態では、単一の吹出口21が吹出ダクト20に設けられている。
【0048】
なお、吹出ダクト20は、1本のダクトにより構成されていてもよいし、互いに接続された複数本のダクトにより構成されていてもよい。また吹出ダクト20の形状は円筒形状に限定されず、例えば角筒形状などの他の形状であってもよい。
【0049】
吸込ダクト30は、空調ユニット10の吸込部11Bに接続された可撓性を有するダクトである。具体的に、吸込ダクト30は、空調空気A1が流れる流路が内部に形成された円筒形状のダクトであり、空調ユニット10の吸込部11Bに接続される一端部32を有すると共に、当該一端部32から反対側の他端部まで延びている。そして当該他端部には、吹出口21から開放空間S0に吹き出された空調空気A1を吸い込むための吸込口31が設けられている。吸込口31において空調空気A1を吸込ダクト30内に吸い込むための負圧が生じるように、送風機15の吸引静圧、吸込ダクト30の長さ及び吸込ダクト30の内径等が定められている。
【0050】
また本実施形態では、単一の吸込口31が吸込ダクト30に設けられている。なお、吹出ダクト20と同様に、吸込ダクト30は、1本のダクトにより構成されていてもよいし、互いに接続された複数本のダクトにより構成されていてもよい。また吸込ダクト30の形状は円筒形状に限定されず、例えば角筒形状などの他の形状であってもよい。
【0051】
図1に示すように、吹出口21及び吸込口31は、それぞれ開放空間S0に臨むように位置しており、且つ試験片100を間に挟んで互いに対向している。すなわち、吸込口31は、空調空気A1の流れ方向において、吹出口21の風下側に位置している。これにより、吹出口21から開放空間S0に吹き出されて試験片100に当たった空調空気A1を吸込口31から吸い込み、吸込ダクト30を通じて空調ユニット10に戻すことができる。なお、吹出口21及び吸込口31は、試験片100を間に挟むように位置すればよく、対向していなくてもよい。また、吹出口21から試験片100の両表面に沿って空調空気A1を流し、試験片100の両表面に沿って流れた空調空気A1を吸込口31から吸い込む構成としてもよい。
【0052】
吹出ダクト20及び吸込ダクト30の「可撓性」とは、吹出口21及び吸込口31の各位置を自在に可変とするダクトの撓み易さを意味する。これにより、吹出口21と吸込口31との相対位置によって空調空気A1が開放空間S0において流れる方向を特定の方向に定めることができ、試験片100の交換を行い易いように吹出口21及び吸込口31の位置を変えることができ、試験片100の種類に応じて吹出口21と吸込口31との間の距離を変えることができる。また異なる材料試験を行う場合、例えば、引張試験から衝撃試験に切り替える場合においても、容易に対応することができる。
【0053】
図2は、空調空気供給装置2における吹出口21及び吸込口31の近傍を拡大して示している。本実施形態では、吹出口21の開口面積が吸込口31の開口面積と異なっており、吸込口31の開口面積よりも小さくなっている。より具体的には、吸込ダクト30は、一定の内径を有する円筒形状のダクトである一方、吹出ダクト20は、一定の内径を有する円筒形状のダクト本体部20Aと、当該ダクト本体部20Aの端部から吹出口21に向かって縮径するテーパ部20Bと、を有している。そして、
図2に示すように、吹出口21におけるダクト径D1が、吸込口31におけるダクト径D2よりも小さくなっている。
【0054】
図3は、
図2中の領域IIIにおいて、吹出ダクト20(テーパ部20B)の内部を空調空気A1の流れ方向から見た時の構成を模式的に示している。空調空気供給装置2は、空調空気A1が吹出口21から直線状に吹き出されるように空調空気A1の吹出方向を規定する整流部材40を備えている。
図3に示すように、整流部材40は、第1方向に互いに間隔を空けて配置されると共に第2方向(第1方向に直交する方向)に延びる複数の第1格子板41と、第2方向に互いに間隔を空けて配置されると共に第1方向に延びる複数の第2格子板42と、により構成されている。これにより、空調空気A1が通過する通風穴S2が、吹出ダクト20(テーパ部20B)内において多数設けられている。各通風穴S2は、第1方向に互いに対向する一対の第1格子板41と、第2方向に互いに対向する一対の第2格子板42と、により規定されており、空調空気A1の流れ方向から見て四角形状を有している。空調空気A1が通風穴S2を通過することにより、空調空気A1に対して整流作用が働く。
【0055】
なお、通風穴S2の形状は四角形状に限定されず、他の多角形状(例えば、六角形状の通風穴S2が多数形成されたハニカム構造)であってもよいし、円形状などであってもよい。また整流部材40は、テーパ部20Bに設けられる場合に限定されず、当該テーパ部20Bよりも風上側に位置するダクト本体部20A内に設けられていてもよい。
【0056】
<材料試験方法>
次に、上記材料試験機1を用いて行われる、本実施形態に係る材料試験方法について説明する。本実施形態では、試験片100を用いた引張試験を、本発明の材料試験方法の一例として説明する。
【0057】
まず、試験片100を開放空間S0に配置するステップが行われる。このステップでは、
図1に示すように、試験片100の上端を上チャック3Aによって挟持し且つ試験片100の下端を下チャック3Bによって挟持することにより、試験片100を固定する。
【0058】
次に、上記空調空気供給装置2を準備し、当該空調空気供給装置2を配置するステップが行われる。このステップでは、
図1に示すように、吹出口21と吸込口31とが開放空間S0を挟んで位置するように、空調空気供給装置2が配置される。より具体的には、吹出口21と吸込口31とが互いに対向すると共に試験片100が吹出口21と吸込口31との間に位置するように、吹出ダクト20及び吸込ダクト30をそれぞれ取り回して吹出口21及び吸込口31の位置をそれぞれ調整する。
【0059】
次に、試験片100について材料試験を実行するステップが行われる。このステップでは、試験片100に引張力(試験力)を付与し、試験片100の機械的性質を測定する。具体的には、上チャック3Aを上方向に移動させて試験片100を上方向に引っ張り、試験片100が破断するまで引張力を増加させる。そして、応力と歪との関係等に基づいて、試験片100の引張強度や降伏点などの種々の機械的性質を測定する。
【0060】
このステップでは、空調ユニット10により空調空気A1の温度を調整し、温調された空調空気A1を吹出口21から試験片100に向けて開放空間S0に吹き出すと共に、開放空間S0に吹き出された空調空気A1を吸込口31から吸い込んで回収し、回収した空調空気A1を吸込ダクト30を通じて空調ユニット10に戻すことにより、空調空気A1を循環させる。具体的には、以下の通りである。
【0061】
まず、引張試験における設定温度を、コントローラ18に入力する。そして、送風機15を作動させることにより、冷凍機13や加熱器14により温調された空調空気A1が吹出部11Aから空調ユニット10の外へ吹き出され、吹出ダクト20内を流れた後、吹出口21から試験片100の一方の表面に向かって開放空間S0に吹き出される。この時、空調空気A1が吹出口21から直線状に吹き出されるように、空調空気A1の吹出方向を整流部材40(
図3)により規定する。そして、試験片100に当たった空調空気A1が吸込口31から吸込ダクト30内に吸い込まれることにより回収され、吸込ダクト30を通じて空調ユニット10まで流れる。その後、吸込ダクト30から空調ユニット10内に戻った空調空気A1が、冷却器13Aや加熱器14により再度温調される。この空調空気A1は、一旦温調されて試験片100に吹き付けられた後のものを再利用したものであるため、冷凍機13や加熱器14の消費電力を低減することができる。
【0062】
このように、本実施形態に係る材料試験方法では、空調ユニット10による温調後に開放空間S0に吹き出された空調空気A1を、吸込ダクト30を通じて再び空調ユニット10に戻す。また試験片100に引張力を加えている間は、温度センサーT1により試験片100の温度を監視し、温度センサーT1により測定される温度が設定温度に近づくように、コントローラ18により冷凍機13及び加熱器14をフィードバック制御する。以上のようにして、本実施形態に係る材料試験方法が実施される。
【0063】
なお、本実施形態では、試験片100を固定した後、空調空気供給装置2を配置する場合について説明したが、この順序に限定されない。すなわち、吹出口21と吸込口31とが互いに対向するように空調空気供給装置2が予め配置されており、その後に試験片100を固定してもよい。
【0064】
また吹出ダクト20の先端形状は、
図2に示す形状に限定されない。
図4は、本実施形態の変形例に係る空調空気供給装置における吹出口21及び吸込口31の近傍を拡大して示している。吹出ダクト20は、上述したテーパ部20B(
図2)を有する場合に限定されず、全体が一定の内径を有する円筒形状のダクトにより構成されていてもよい。
図4の変形例においても、吹出口21のダクト径D1が吸込口31のダクト径D2よりも小さく、吹出口21の開口面積が吸込口31の開口面積よりも小さくなっている。
【0065】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る空調空気供給装置2A及び材料試験方法について、
図5を参照して説明する。実施形態2に係る空調空気供給装置2A及び材料試験方法は、基本的に実施形態1と同様であるが、吸込ダクト30に複数の吸込口が設けられている点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0066】
図5は、実施形態2に係る空調空気供給装置2Aにおける吹出口21及び吸込口31の近傍を拡大して示している。実施形態2では、吸込ダクト30には、複数の吸込口31が設けられている。具体的には、
図5に示すように、吸込ダクト30は、任意の箇所において複数本(例えば、2本)のダクト管に分岐している(第1吸込ダクト管33及び第2吸込ダクト管34)。そして、第1吸込ダクト管33及び第2吸込ダクト管34のそれぞれの先端に吸込口31が設けられている。
【0067】
第1吸込ダクト管33及び第2吸込ダクト管34は、各吸込口31が吹出口21に対して対向せず、吹出ダクト20に対して傾いた姿勢で配置されている。そして、吹出口21の開口面積は、複数の吸込口31の各々の開口面積の合計よりも小さくなっている。本実施形態に係る材料試験方法は、上記構成を有する空調空気供給装置2Aを用いて、上記実施形態1と同様の手順で行われる。
【0068】
なお、吸込口31の数は2つに限定されず、3つ以上の吸込口31が設けられていてもよい。また実施形態2において、
図2に示したテーパ部20Bを有する吹出ダクト20が採用されてもよい。吸込ダクト30は、任意の箇所において複数本のダクト管に分岐した構成に限定されず、独立した複数のダクトから構成されていてもよい。各吸込口31は、吹出口21に対して対向した姿勢で配置されていてもよい。また吹出口21の開口面積は、複数の吸込口31の各々の開口面積の合計より小さい場合に限定されず、当該開口面積の合計と同じでもよいし、当該開口面積の合計より大きくてもよい。
【0069】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る空調空気供給装置2B及び材料試験方法について、
図6を参照して説明する。実施形態3に係る空調空気供給装置2B及び材料試験方法は、基本的に実施形態1と同様であるが、吹出口21の開口面積が吸込口31の開口面積よりも大きい点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0070】
図6は、実施形態3に係る空調空気供給装置2Bにおける吹出口21及び吸込口31の近傍を拡大して示している。実施形態3では、吹出口21の開口面積が、吸込口31の開口面積よりも大きくなっている。具体的には、
図6に示すように、吸込ダクト30には、単一の吸込口31が設けられており、吹出ダクト20には、吸込口31よりも開口面積が大きい単一の吹出口21が設けられている。
【0071】
吹出ダクト20及び吸込ダクト30は、それぞれ一定の内径を有するダクトにより構成されており、吹出口21のダクト径D1が吸込口31のダクト径D2よりも大きくなっている。本実施形態に係る材料試験方法は、上記構成を有する空調空気供給装置2Bを用いて、上記実施形態1と同様の手順で行われる。
【0072】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4に係る空調空気供給装置2C及び材料試験方法について、
図7を参照して説明する。実施形態4に係る空調空気供給装置2C及び材料試験方法は、基本的に実施形態3と同様であるが、吹出ダクト20に複数の吹出口21が設けられている点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0073】
図7は、実施形態4に係る空調空気供給装置2Cにおける吹出口21及び吸込口31の近傍を拡大して示している。実施形態4では、吹出ダクト20には、複数の吹出口21が設けられている。具体的には、
図7に示すように、吹出ダクト20は、任意の箇所において複数本(例えば、2本)のダクト管に分岐している(第1吹出ダクト管23及び第2吹出ダクト管24)。そして、第1吹出ダクト管23及び第2吹出ダクト管24のそれぞれの先端に吹出口21が設けられている。
【0074】
第1吹出ダクト管23は、吹出口21が試験片100の表(おもて)面100Aに向くように、吸込ダクト30に対して傾いた姿勢で配置されている。一方、第2吹出ダクト管24は、吹出口21が試験片100の裏面100Bに向くように、吸込ダクト30に対して傾いた姿勢で配置されている。そして、複数の吹出口21の各々の開口面積の合計は、吸込口31の開口面積よりも大きくなっている。本実施形態に係る材料試験方法は、上記構成を有する空調空気供給装置2Cを用いて、上記実施形態1と同様の手順で行われる。
【0075】
なお、吹出口21の数は2つに限定されず、3つ以上の吹出口21が設けられていてもよい。また第1吹出ダクト管23及び第2吹出ダクト管24のうち一方又は両方において、
図2に示したテーパ部20Bが採用されてもよい。吹出ダクト20は、任意の箇所において複数本のダクト管に分岐した構成に限定されず、独立した複数のダクトから構成されていてもよい。吹出口21は、吸込ダクト30(吸込口31)に対して対向した姿勢で配置されていてもよい。また複数の吹出口21の各々の開口面積の合計は、吸込口31の開口面積よりも大きい場合に限定されず、吸込口31の開口面積と同じでもよいし、吸込口31の開口面積よりも小さくてもよい。さらに、第1吹出ダクト管23及び第2吹出ダクト管24の双方を、試験片100の表(おもて)面100Aに向くように配置し、また双方を試験片100の裏面100Bに向くように配置してもよい。
【0076】
(実施形態5)
次に、本発明の実施形態5に係る空調空気供給装置2D及び材料試験方法について、
図8を参照して説明する。実施形態5に係る空調空気供給装置2D及び材料試験方法は、基本的に実施形態1と同様であるが、吹出口21の開口面積と吸込口31の開口面積とが同じである点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0077】
図8は、実施形態5に係る空調空気供給装置2Dにおける吹出口21及び吸込口31の近傍を拡大して示している。実施形態5では、吹出口21の開口面積が、吸込口31の開口面積と同じになっている。具体的には、
図8に示すように、吹出ダクト20及び吸込ダクト30が、それぞれ一定の内径を有する円筒形状のダクトにより構成されており、吹出口21のダクト径D1が吸込口31のダクト径D2と同じになっている。本実施形態に係る材料試験方法は、上記構成を有する空調空気供給装置2Dを用いて、上記実施形態1と同様の手順で行われる。
【0078】
(実施形態6)
次に、本発明の実施形態6に係る空調空気供給装置2E、材料試験機1E及び材料試験方法について、
図9を参照して説明する。実施形態6に係る空調空気供給装置2E、材料試験機1E及び材料試験方法は、基本的に実施形態1と同様であるが、吸込ダクト30が空調ユニット10の吸込部に接続されていない点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0079】
図9に示すように、実施形態6では、吸込ダクト30における吸込口31と反対側に排気口32Aが設けられている。排気口32Aは、空調ユニット10に接続されておらず、自由端となっており、材料試験が行われる開放空間に対して開放されている。このため、吸込口31から吸込ダクト30内に回収された空調空気A1は、空調ユニット10に戻されず、排気口32Aを通じて吸込ダクト30の外に排出される。本実施形態に係る材料試験方法は、上記構成を有する空調空気供給装置2Eを用いて、上記実施形態1と同様の手順で行われる。
【0080】
吸込口31、排気口32A及び吸込ダクト30における吸込口31と排気口32Aとの間の部位のうち少なくともいずれかに、送風機が配置されていてもよい。また排気口32Aは、材料試験が行われる開放空間に対して開放されている場合に限定されず、材料試験が行われる部屋の排気口に接続されていてもよい。
【0081】
なお、排気口32Aから排出した空調空気A1を、加熱又は冷却により温調してもよい。これにより、排出された空調空気A1の温度を、材料試験が行われる開放空間の温度に影響を与えないように調整し、また当該開放空間において結露が生じないように調整することができる。この場合、排出された空調空気A1の加熱又は冷却を行う機構が設けられる。この加熱冷却機構は、排気口32Aから排出される空調空気A1の温調専用のものであってもよいし、試験片100に吹き付けられる空調空気A1の加熱又は冷却を行う機構と兼用のものであってもよい。
【0082】
(その他実施形態)
ここで、本発明のその他実施形態について説明する。
【0083】
実施形態1では、空調ユニット10が空調空気A1の温調機能のみを有している場合について説明したが、これに限定されない。空調ユニットは、温調機能に加えて、空調空気A1の加湿機能をさらに有していてもよい。この場合、例えばユニット筐体11の通風空間S1(
図1)に加湿器が配置され、また空調空気A1の湿度を測定する湿度センサーが別途設けられる。なお、当該加湿器は、通風空間S1に配置される場合に限定されず、ユニット筐体11の外に配置されており、通風空間S1に加湿空気を導入する構成であってもよい。
【0084】
実施形態1では、整流部材40が吹出ダクト20内にのみ配置されている場合について説明したが、これに限定されない。吹出ダクト20内における吹出口21の近傍及び吸込ダクト30内における吸込口31の近傍の両方において、整流部材40が配置されていてもよいし、吸込口31の近傍のみに整流部材が配置されていてもよい。また各ダクト内において、1つの整流部材40のみが配置されていてもよいし、複数の整流部材40が配置されていてもよい。また整流部材40は本発明において必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0085】
上述の実施形態では、試験片100に試験力を付与して当該試験片100の機械的性質を評価する材料試験を行う場合について説明したが、他の材料試験において本発明が適用されてもよい。すなわち、試験片100に試験力を付与して機械的性質以外の材料特性(例えば、熱的性質や電気的性質等)を評価する材料試験に本発明が適用されてもよいし、試験片100に試験力を付与せずに各種の材料特性(例えば、熱的性質や電気的性質等)を評価する材料試験に本発明が適用されてもよい。
【0086】
上述の実施形態では、吹出口21及び吸込口31の各々が1つずつ設けられる形態、及び吹出口21及び吸込口31のうち一方のみが複数設けられる形態について説明したが、これらに限定されない。すなわち、吹出口21及び吸込口31のうち少なくとも一方が複数設けられていてもよく、したがって吹出口21及び吸込口31の双方が複数設けられる構成であってもよい。
【0087】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0088】
(参考例)
なお、本明細書は、参考例として、以下の構成要件を備えた空調空気供給装置及び空調空気供給方法を開示する。この空調空気供給装置及び空調空気供給方法によれば、空調ユニットにより温調された空調空気を、開放空間に配置された対象物(被温調物)に向けて吹出口から吹き出すことができる。このため、対象物を所定の温度条件に調整するのに際して、対象物の種類や大きさ等に応じて専用の恒温槽を用いる必要がなく、様々な対象物の温調制御に適用することができる。しかも、吹出口から開放空間(被温調空間)に吹き出された空調空気を吸込口から吸い込んで回収することにより、空調空気が開放空間において流れる方向を、吹出口と吸込口の相対位置に応じて特定の方向に定めることができる。これにより、温調対象物に対して空調空気をより確実に当てることができるため、当該対象物の温度を目標温度に効率良く調整することができる。したがって、以下の構成要件を有する空調空気供給装置及び空調空気供給方法によれば、上記特許文献1において、温調の対象物(試験片)の種類や大きさ等に応じて専用の恒温槽を個別に用いる必要があり、様々な種類や大きさの対象物の温調において柔軟に対応するのが難しい、という課題が解決される。
【0089】
<空調空気供給装置>
温調された空調空気を、開放空間に供給する空調空気供給装置であって、
前記空調空気の温度を調整する空調ユニットと、
前記空調ユニットの吹出部に接続された可撓性を有するダクトであって、前記空調ユニットにより温調された前記空調空気を前記開放空間に吹き出すための吹出口が設けられた吹出ダクトと、
前記吹出口から前記開放空間に吹き出された前記空調空気を吸い込むための吸込口が設けられた可撓性を有する吸込ダクトと、を備えた、空調空気供給装置。
【0090】
<空調空気供給方法>
空調空気の温度を調整する空調ユニットと、前記空調ユニットの吹出部に接続されると共に前記空調空気の吹出口が設けられた吹出ダクトと、前記空調空気の吸込口が設けられた吸込ダクトと、を備えた空調空気供給装置を、前記吹出口と前記吸込口との間に開放空間が位置するように配置することと、
前記空調ユニットにより前記空調空気の温度を調整し、温調された前記空調空気を前記吹出口から前記開放空間に吹き出すと共に、前記開放空間に吹き出された前記空調空気を前記吸込口から吸い込んで回収すること、とを含む、空調空気供給方法。
【0091】
上記空調空気供給装置及び空調空気供給方法が適用される具体例としては、上記実施形態において説明した材料試験機1及び材料試験方法の他、例えば、
図10に示す製造ラインにおける温度制御、
図11に示す他の試験装置や試験方法における温度制御、などが挙げられる。具体的には、
図10に示すように、ワークWを搬送するコンベアCの側方に吹出口21が位置するように吹出ダクト20を配置すると共に、当該吹出口21が位置する側と逆の当該コンベアCの側方に吸込口31が位置するように吸込ダクト30を配置する。そして、空調ユニット10により温調された空調空気A1をコンベアC上のワークWに向かって開放空間S0に吹き出すと共に、開放空間S0に吹き出された空調空気A1を吸込口31から吸い込んで回収し、吸込ダクト30を通じて空調ユニット10に戻すことにより、空調空気A1を循環させる。この時、吸込口31から回収した空調空気A1を、空調ユニット10に戻さずに吸込ダクト30の外に排出してもよい。
【0092】
また
図11では、
図10中のコンベアCに代えて載置台120が設けられており、当該載置台120上に設置された試料110に向けて温調された空調空気A1を開放空間S0に吹き出すと共に、当該空調空気A1を吸込口31から吸い込んで回収する場合を例示している。この場合も、吸込口31から回収した空調空気A1が、空調ユニット10に戻されてもよいし、空調ユニット10に戻されずに吸込ダクト30の外に排出されてもよい。なお、
図10及び
図11中において、上記実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【符号の説明】
【0093】
1 材料試験機
2,2A,2B,2C,2D 空調空気供給装置
3 保持部
10 空調ユニット
11A 吹出部
11B 吸込部
20 吹出ダクト
21 吹出口
30 吸込ダクト
31 吸込口
40 整流部材
100 試験片
A1 空調空気
S0 開放空間