(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】試験装置及び試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
G01N17/00
(21)【出願番号】P 2019046896
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】中西 隆
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-156120(JP,A)
【文献】特開2015-148350(JP,A)
【文献】実開昭61-006177(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験空間として開放空間及び閉空間の何れかを選択して試料の試験を行う試験装置であって、
前記試験空間に送られる空気の温度を調整する空調部と、
バイパス弁が配置され、前記空調部によって温度が調整された空気の一部を、前記試験空間を通過させることなく前記空調部に戻すバイパス路と、
前記試験空間が開放空間であるのか閉空間であるのかを表す情報を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた前記情報が、前記試験空間が閉空間であることを示す場合には、前記試験空間が開放空間であることを示す場合の前記バイパス弁の開度よりも大きな開度になるように、前記バイパス弁の開度を設定する弁制御部と、を備えている試験装置。
【請求項2】
前記試験空間の空気温度又は前記試料の温度を検出する温度検出器をさらに備え、
前記弁制御部は、前記受付部が受け付けた前記情報が閉空間を示すのか開放空間を示すのかに応じて設定された前記バイパス弁の開度を、前記温度検出器の温度検出結果に応じて調整する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記空調部内に配置され、前記温度が調整された空気を前記試験空間に向けて送り出す送風機と、
前記温度検出器の温度検出結果に応じて、前記送風機の回転数を調整する送風機制御部と、をさらに備えている、請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
空調部によって温度が調整された空気の一部を試験空間に導入する一方で、前記空気の他部が、バイパス弁が配置されたバイパス路を通して前記空調部に戻される状態で、前記試験空間において試料の試験を行う試験方法であって、
前記試験空間が開放空間であるのか閉空間であるのかについての情報を受付部にて受け付け、
前記受付部が受け付けた前記情報が、前記試験空間が閉空間であることを示す場合には、前記試験空間が開放空間であることを示す場合の前記バイパス弁の開度よりも大きな開度になるように、前記バイパス弁の開度を設定し、
前記空調部において前記温度が調整された空気の一部を前記試験空間に導くとともに、前記温度が調整された空気の他部を、前記バイパス路を通して、前記試験空間を通過させることなく前記空調部に戻す状態で、前記試料の試験を行う、試験方法。
【請求項5】
温度検出器よって、前記試験空間の空気温度又は前記試料の温度を検出し、
前記設定された前記バイパス弁の開度を、前記温度検出器の温度検出結果に応じて調整する、請求項4に記載の試験方法。
【請求項6】
前記温度が調整された空気を前記試験空間に向けて送り出すための送風機の回転数を、前記温度検出器の温度検出結果に応じて調整する、請求項5に記載の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験空間において試料を試験する試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されているように、試料の試験を行うことができる試験装置が従来知られている。下記特許文献1に開示された試験装置は、試験を行う試験空間を形成する恒温槽を有している。試験空間内は所定の温度に調整され、その上で試料の試験が行われる。試験空間は恒温槽によって区画された閉空間である。特許文献1には明示の記載はないが、恒温槽内の温度を所定の温度にするために、恒温槽内に温調空気を供給する空調部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示された試験装置では、閉空間を形成する恒温槽内で試料の試験を行うことができるに過ぎない。そのため、空調部は、恒温槽内の空調負荷に応じた空気流量の温調空気を恒温槽内に供給する。一方、仮に恒温槽内でなく、開放された空間で試料の試験を行う場合には、恒温槽内での空調負荷と異なる空調負荷に対応する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開放空間及び閉空間の何れにおいて試料の試験を行う場合であっても、適切な流量の温調空気を供給しつつ試験を行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、試験空間として開放空間及び閉空間の何れかを選択して試料の試験を行う試験装置であって、前記試験空間に送られる空気の温度を調整する空調部と、バイパス弁が配置され、前記空調部によって温度が調整された空気の一部を、前記試験空間を通過させることなく前記空調部に戻すバイパス路と、前記試験空間が開放空間であるのか閉空間であるのかを表す情報を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた前記情報が、前記試験空間が閉空間であることを示す場合には、前記試験空間が開放空間であることを示す場合の前記バイパス弁の開度よりも大きな開度になるように、前記バイパス弁の開度を設定する弁制御部と、を備えている試験装置である。
【0007】
本発明では、試験空間が開放空間なのか閉空間なのかに応じてバイパス弁の開度を調整する。すなわち、開放空間及び閉空間の違いによって試験空間の空調負荷が変わるため、バイパス弁の開度が調整されることによって、試験空間に導入される空気の流量が調整される。受付部が受け付けた情報が、試験空間が閉空間である場合を示している場合には、弁制御部は、開放空間である場合に比べてバイパス弁の開度が大きくなるようにバイパス弁の開度を設定する。このため、空調部の空調能力を調整しなくても、開放空間である場合に比べて試験空間内の空調負荷が小さくなる閉空間での負荷に応じた適切な風量の空気を試験空間に流通させることができる。一方、試験空間が開放空間である場合には、試験空間に流れる風量が増大するため、試験空間の空調負荷が大きいとしても、試験空間の温度が設定温度(目標温度)に達するのに時間がかかってしまうのを抑制することができる。
【0008】
前記試験装置は、前記試験空間の空気温度又は前記試料の温度を検出する温度検出器をさらに備えてもよい。この場合、前記弁制御部は、前記受付部が受け付けた前記情報が閉空間を示すのか開放空間を示すのかに応じて設定された前記バイパス弁の開度を、前記温度検出器の温度検出結果に応じて調整してもよい。
【0009】
この態様では、弁制御部は、温度検出器の検出結果に応じてバイパス弁の開度をさらに調整するため、設定されたバイパス弁の開度を、試験空間の実際の温度負荷に応じて補正することができる。したがって、実際の空調負荷により適した風量の空気を試験空間に導入することができる。すなわち、試験空間が閉空間なのか開放空間なのかに応じて空調負荷がおよそ定められるものの、吹き出し路を構成する部材、閉空間を構成する部材、閉空間の大きさ等に応じて空調負荷が変わる場合もある。そのような場合においても、温度検出器の検出結果に応じてバイパス弁の開度を調整することにより、より適切な開度に調整することができる。
【0010】
前記試験装置は、前記空調部内に配置され、前記温度が調整された空気を前記試験空間に向けて送り出す送風機と、前記温度検出器の温度検出結果に応じて、前記送風機の回転数を調整する送風機制御部と、をさらに備えてもよい。
【0011】
この態様では、バイパス弁の開度の調整では対応できない試験空間の温度調整を送風機の回転数調整によって補うことができる。
【0012】
本発明は、空調部によって温度が調整された空気の一部を試験空間に導入する一方で、前記空気の他部が、バイパス弁が配置されたバイパス路を通して前記空調部に戻される状態で、前記試験空間において試料の試験を行う試験方法であって、前記試験空間が開放空間であるのか閉空間であるのかについての情報を受付部にて受け付け、前記受付部が受け付けた前記情報が、前記試験空間が閉空間であることを示す場合には、前記試験空間が開放空間であることを示す場合の前記バイパス弁の開度よりも大きな開度になるように、前記バイパス弁の開度を設定し、前記空調部において前記温度が調整された空気の一部を前記試験空間に導くとともに、前記温度が調整された空気の他部を、前記バイパス路を通して、前記試験空間を通過させることなく前記空調部に戻す状態で、前記試料の試験を行う、試験方法である。
【0013】
本発明では、受付部が受け付けた情報が、試験空間が閉空間である場合を示している場合には、開放空間である場合に比べてバイパス弁の開度が大きくなるようにバイパス弁の開度が設定される。このため、空調部の空調能力を調整しなくても、開放空間である場合に比べて試験空間内の空調負荷が小さくなる閉空間での負荷に応じた適切な風量の空気を試験空間に導入することができる。一方、試験空間が開放空間である場合には、試験空間に流れる風量が増大するため、試験空間の空調負荷が大きいとしても、試験空間の温度が設定温度(目標温度)に達するのに時間がかかってしまうのを抑制することができる。
【0014】
前記試験方法において、温度検出器よって、前記試験空間の空気温度又は前記試料の温度を検出し、前記設定された前記バイパス弁の開度を、前記温度検出器の温度検出結果に応じて調整してもよい。
【0015】
前記試験方法において、前記温度が調整された空気を前記試験空間に向けて送り出すための送風機の回転数を、前記温度検出器の温度検出結果に応じて調整してもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、開放空間及び閉空間の何れにおいて試料の試験を行う場合であっても、適切な流量の温調空気を供給しつつ試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る試験装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】前記試験装置で用いることができる試験槽を示す図である。
【
図3】前記試験装置による試験方法の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本実施形態に係る試験装置10は、試験空間TSが開放空間及び閉空間の何れの場合においても試料Wの試験を行うことができる試験装置10であり、
図1は、試験空間TSが開放空間である場合における試料Wの試験を行う場合の構成を示している。この試験装置10は、
図2に示すように、試験空間TSを閉空間とするための試験槽15を設置することが可能となっている。つまり、試験槽15を設置しないで、試験空間TSが開放空間となっている状態で試料Wの試験を行うこともでき、また、試験槽15を設置して、試験槽15によって形成される閉空間内で試料Wの試験を行うこともできる。試料Wの試験は、引張試験、圧縮試験、疲労試験等の試料Wの機械的特性を評価する試験でもよく、或いは、試料Wの線膨張係数等の熱的特性を評価する試験でもよく、或いは、試料Wの電気抵抗等の電気的特性を評価する試験であってもよい。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る試験装置10は、温度調整がなされた空気を生成するための空調部21と、空調部21によって温度調整がされた空気を空調部21から試験空間TSに導く吹き出し路22と、空気を試験空間TSから空調部21に戻す戻し路23と、試験空間TSにおいて試料Wを保持する保持部24と、を備えている。
【0021】
空調部21は、試験空間TSに送られる空気の温度を調整するための部位であり、空調ユニット26内に形成された空気流路28内に配置されている。空気流路28は、空調ユニット26に開口し吹き出し路22が接続される第1連通口28aと、空調ユニット26に開口し戻し路23が接続される第2連通口28bとを有する。空気流路28は、空調ユニット26内において、空気が一方向に流れることができるように管状に構成されている。
【0022】
空調部21には、空気流路28内に配置された冷却器30と、空気流路28内に配置された加熱器32と、空気流路28内の空気を送り出す送風機34と、が含まれている。
【0023】
冷却器30は、例えば、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う図略の冷凍機の蒸発器によって構成されていて、図略の冷媒回路を循環する冷媒によって空気流路28内の空気を冷却するように構成されている。
【0024】
加熱器32は、空気流路28内の空気を加熱するように構成されている。加熱器32は、例えば、ワイヤヒータにより構成されているがこれに限定されず、他の加熱方式を採用することも可能である。
【0025】
送風機34は、空気流路28内において空気の流れを発生させるためのファンであり、例えば、冷却器30及び加熱器32よりも下流側に配置されている。すなわち、送風機34は、冷却器30及び加熱器32において温度が調整された空気(空調空気)が空気流路28から吹き出されるように、空気を押し出すように構成されている。なお、送風機34の配置位置は冷却器30及び加熱器32よりも下流側に限られるものではなく、冷却器30及び加熱器32よりも上流側に配置されていてもよい。
【0026】
吹き出し路22の一端部は、空気流路28における第1連通口28aに接続されており、吹き出し路22の他端部(下流端22a)は、試験空間TSに開口している。すなわち、吹き出し路22は、空調部21で温度が調整された空気を試験空間TSすなわち試料Wの周囲に導くように構成されている。
【0027】
戻し路23の一端部(上流端23a)は、吹き出し路22の下流端22aに対向する向きに開口している。このため、吹き出し路22の下流端22aから吹き出された空気は試料Wの周囲を通過して戻し路23の上流端23aに流入する。試験空間TSは、吹き出し路22の下流端22aと戻し路23の上流端23aとの間の空間を含む空間であって、試料Wの周囲を含む空間である。戻し路23の他端部(下流端)は、空気流路28における第2連通口28bに接続されている。すなわち、戻し路23は、試験空間TS内の空気を空調部21まで戻すように構成されている。したがって、試料Wの試験中においては、空気が空調部21と試験空間TSとの間で循環する。
【0028】
空気流路28には、バイパス路36が接続されている。バイパス路36の一端部は、空気流路28における冷却器30、加熱器32及び送風機34の配置位置よりも上流側に接続されている。バイパス路36の他端部は、空気流路28における加熱器32及び送風機34の配置位置よりも下流側に接続されている。したがって、バイパス路36は、空調部21で温度が調整された空気の一部を、試験空間TSを通過させることなく空調部21に戻すように構成されている。なお、バイパス路36は、空調ユニット26内に配置される構成に限られるものではなく、空調ユニット26の外側に設けられていてもよい。例えば、バイパス路36は、試験空間TSを迂回するように、吹き出し路22と戻し路23とを接続する構成であってもよい。
【0029】
バイパス路36には、バイパス弁38が配置されている。バイパス弁38は、開度調整可能な弁によって構成されている。
【0030】
保持部24は、試料Wの一端部を保持する第1保持部材24aと、試料Wの他端部を保持する第2保持部材24bとを有する。試験装置10が例えば試料Wの引張試験を行う構成であれば、上側に配置された第1保持部材24aが上下動可能で、かつ第2保持部材24bが位置固定された状態となる。ただし、保持部24の構成はこの構成に限られるものではない。試験装置10が例えば試料Wの電気的特性を試験する装置である場合には、第1保持部材24a及び第2保持部材24bの双方が位置固定された状態となっていてもよい。保持部24は、第1保持部材24aと第2保持部材24bとを備えた構成に限られるものではなく、試験の種類によっては1つの保持部材によって構成されていてもよい。保持部24は、要は、試料Wを試験空間TS内で保持することができればよい。
【0031】
図1においては、試験槽15が用いられていない。このため、試料Wが配置されて試料Wの試験が行われる試験空間TSが開放空間となっている。ここで開放空間とは、試料Wが配置される場所が断熱壁等の部材によって囲まれていない状態にある空間を意味している。そして、試験空間TSに配置される保持部24も、開放空間内に位置している。この場合、吹き出し路22を流れた温調空気は、吹き出し路22の下流端22aから試料Wに向けて開放空間に吹き出される。戻し路23は、吹き出し路22から吹き出されて試料Wの周囲を通過した空気だけでなく、吹き出し路22から吹き出された空気以外の空気をも含め、戻し路23の上流端23aの周囲に存在している空気を吸い込んで空調部21に戻す。このため、試験空間TSが閉空間となっている場合すなわち、後述の試験槽15内で試料Wの試験が行われる場合に比べ、試験空間TSを所定の温度に維持するための空調負荷が大きくなる。
【0032】
これに対し、
図2に示すように、試験槽15が用いられる場合には、試験空間TSが閉空間となるため、保持部24も閉空間内に配置されることになる。すなわち、試験槽15が用いられる場合には、試料Wの試験は試験槽15内で行われることになる。
【0033】
試験槽15は、例えば、複数の断熱壁を組み合わせて中空状に構成したものであり、試料W及び保持部24(第1保持部材24a及び第2保持部材24b)を包囲する大きさの内部空間を形成している。この試験槽15内の空間が、閉空間である試験空間TSとなる。
【0034】
試験槽15の断熱壁には、試料Wを出し入れするための扉部(図示省略)と、第1保持部材24a又はその駆動ロッドを挿通させるための開口部(図示省略)と、第2保持部材24b又はその支持部を挿通させるための開口部(図示省略)と、が設けられている。
【0035】
断熱壁には、吹き出し路22の下流端22aが接続又は挿入される第1開口15aと、戻し路23の上流端23aが接続又は挿入される第2開口15bとが形成されている。したがって、空気流路28から流出した温調空気は、吹き出し路22を通じて試験槽15内の試験空間TSに導入され、試験空間TS内の空気は、戻し路23を通じて空調ユニット26の空気流路28に導入される。このため、試験槽15内すなわち試験空間TSの温度は、空調部21によって温調されて吹き出し路22を通じて導入された空気によって、次第に設定温度(目標温度)に近づく。試験槽15が用いられて試験空間TSが閉空間となっている場合には、試験空間TSが開放空間となっている場合に比べ、試験空間TSの温度(試料W周囲の空気の温度)を所定の温度に維持するための空調負荷が小さい。
【0036】
試験装置10には、温度検出器41とコントローラ43とが設けられている。温度検出器41は、試験空間TSの空気温度を検出するように配置されている。試験空間TSが開放空間となっている場合においては、温度検出器41は試料Wの周囲の温度を検出するように配置されていればよい。また、試験空間TSが閉空間となっている場合においては、温度検出器41は試験槽15内の空気の温度を検出するように配置されていればよい。なお、温度検出器41はこれに限られるものではなく、例えば試料Wの温度を検出するように配置されていてもよい。
【0037】
温度検出器41は、検出温度を示す信号を出力する。温度検出器41から出力された信号はコントローラ43に入力される。コントローラ43は、記憶部(メモリーデバイス)、演算部(CPU等)を備えた構成であって、記憶部に記録されたプログラムを実行することにより、所定の機能を発揮する。コントローラ43が発揮する機能には、受付部43aと温度制御部43bと弁制御部43cと送風機制御部43dと判断部43eが含まれている。
【0038】
受付部43aは、試験空間TSが開放空間であるのか閉空間であるのかについての情報を受け付ける。すなわち、試験装置10には、タッチパネル、キーボード等の試験者が操作する操作部44が設けられており、受付部43aは、操作部44によって入力された情報を受け付ける。操作部44によって入力された情報には、試験空間TSが開放空間であるのか、閉空間であるのかを表す情報が含まれる。試験槽15が用いられない場合には、試験空間TSが開放空間であることを表す情報が、試験者の操作によって操作部44から出力される。試験槽15が用いられる場合には、試験空間TSが閉空間であることを表す情報が、試験者の操作によって操作部44から出力される。これらの場合における操作部44の操作は、タッチパネル、表示部等に表示された選択肢(試験槽15を用いる・用いない等を示す選択肢)を選択する操作であってもよい。
【0039】
温度制御部43bは、温度検出器41の検出結果に応じて、加熱器32及び冷却器30を制御するように構成されている。すなわち、温度制御部43bは、温度検出器41の検出温度が所定の試験温度範囲内になるように、加熱器32及び冷却器30を制御するように構成されている。なお、検出温度によっては、加熱器32及び冷却器30の一方のみが作動する場合もある。
【0040】
弁制御部43cは、受付部43aが受け付けた情報が、試験空間TSが開放空間であることを示すか閉空間であることを示すかに応じて、試験初期におけるバイパス弁38の開度(初期開度)を異なる開度に設定するように構成されている。例えば、試験空間TSが開放空間である場合には、弁制御部43cは、受付部43aからの情報に基づいて、バイパス弁38の開度を第1開度に設定する。一方、試験空間TSが閉空間である場合には、弁制御部43cは、受付部43aからの情報に基づいて、バイパス弁38の開度を第1開度よりも大きな開度である第2開度に設定する。つまり、試験空間TSが閉空間である場合には、試験空間TSが開放空間の場合のバイパス弁38の開度よりも大きな開度になるように、バイパス弁38の開度を設定する。これにより、試験空間TSが閉空間の場合には、開放空間の場合に比べて、試験空間TSに導入される空気の流量が低減される。閉空間である場合、第2開度は、バイパス路36を全開する開度であってもよく、或いは全開よりも開度の小さな開度であってもよい。なお、試料Wの試験は、試料W周囲の温度が予め決められた試験温度範囲になってから開始されるため、初期開度は、試料W周囲の温度が所定の試験温度範囲に収まって試験を開始するときのバイパス弁38の開度である。
【0041】
判断部43eは、温度検出器41の検出温度が、所定の試験温度(設定温度・目標温度)の範囲内にあるのか、範囲外にあるかの判断を行う。そして、検出温度が試験温度の範囲外にある場合には、判断部43eは、空調能力が過大なのか不足しているのかを判断する。そして、判断部43eは、空調能力が過大になっている場合にはその旨を示す過大信号を出力し、空調能力が不足している場合には、その旨を示す不足信号を出力する。空調能力が不足又は過大であるかどうかの判断は、例えば、温度変化速度、所定時間後における到達温度、所定時間内に試験温度に到達しない事等に基づいて、行うことができる。
【0042】
弁制御部43cは、判断部43eから過大信号又は不足信号を受信した場合には、設定されたバイパス弁38の初期開度を、温度検出器41の検出温度に応じて調整するように構成されている。すなわち、試験中においては、試験槽15の断熱壁に形成された開口等を通した入熱・放熱、吹き出し路22での入熱・放熱等により、試験空間TSの温度が所定の試験温度から外れることも起こり得る。この場合、空調部21の空調能力が一定の状態に設定された状態で試験が行われるため、弁制御部43cは、バイパス路36を流れる空調空気の流量を変更すべく、バイパス弁38の初期開度を補正するように構成されている。
【0043】
具体的に、検出温度が所定の試験温度から外れているときには、弁制御部43cには、判断部43eからの信号が入力される。弁制御部43cは、判断部43eからの過大信号を受信したときには、バイパス弁38の開度を、検出温度と試験温度閾値との差分に応じた開度だけ大きくする。この結果、試験空間TSに導入される温調空気の流量が低減する。一方、弁制御部43cは、判断部43eからの不足信号を受信したときには、バイパス弁38の開度を、検出温度と試験温度閾値との差分に応じた開度だけ小さくする。この結果、試験空間TSに導入される温調空気の流量が増大する。
【0044】
例えば、冷却器30によって空気を冷却して吹き出し路22から温調空気を吹き出している場合において、温度検出器41によって検出された温度が所定の試験温度よりも低くなったときには、弁制御部43cは、その差分に応じて、バイパス弁38の開度を大きくする。一方、加熱器32によって空気を加熱して吹き出し路22から温調空気を吹き出している場合において、温度検出器41によって検出された温度が所定の試験温度よりも低くなったときには、弁制御部43cは、その差分に応じて、バイパス弁38の開度を小さくする。
【0045】
送風機制御部43dは、バイパス弁38の開度調整ができないと判断される場合には、温度検出器41の温度検出結果に応じて、送風機34の回転数を調整する。バイパス弁38の開度調整が必要であるにも拘わらず、バイパス弁38の開度が小さくて、それ以上開度を小さくできない場合や、バイパス弁38の開度が大きくて、それ以上開度を大きくできない場合には、送風機制御部43dは、送風機34の回転数を調整するように構成されている。すなわち、送風機制御部43dは、判断部43eから不足信号又は過大信号を受信するとともに、弁制御部43cからバイパス弁38の調整ができないことを示す信号を受信すると、これら信号に基づいて送風機34の回転数を調整するように構成されている。
【0046】
ここで、試験装置10を用いた試料Wの試験方法について、
図3を参照しつつ説明する。この試験方法は、試験槽15が用いられないで行われるものとする。
【0047】
試料Wが第1保持部材24a及び第2保持部材24bに固定される。そして、試験者は、操作部44を操作する。これにより、試験空間TSが開放空間であることを示す情報が受付部43aに入力される(ステップST1)。受付部43aは、受け付けた情報が、試験空間TSが開放空間であることを示す情報であるのか、試験空間TSが閉空間であることを示す情報であるのか判断する(ステップST2)。今回の試験方法では、試験空間TSが開放空間であるため、受付部43aは、試験空間TSが開放空間であることを示す信号を出力する。受付部43aから出力された信号を受け取った弁制御部43cは、バイパス弁38の開度を第1開度に設定する(ステップST3)。
【0048】
続いて、試験者は、空調制御を開始するための指令を入力する(ステップST5)。試験開始の指令により、空調部21が作動する。これにより、空調部21によって温度が調整された空気が吹き出し路22を通して試料Wに向けて吹き出されるとともに、試料W周囲の空気は戻し路23を通して空調部21に戻される。すなわち、空調部21と試験空間TSとの間で空気が循環する。なお、空調制御の開始は、バイパス弁38の開度を第1開度に設定する前に開始してもよい。例えば、試験空間TSが開放空間であることを示す操作を操作部44を通して入力するときに、空調制御の開始指令を入力してもよい。
【0049】
空調制御が開始されると、温度検出器41により、試料W周囲又は試料Wの温度が検出される(ステップST6)。検出温度が決められた試験温度範囲に収まると、試験者は試験開始の指令を操作部44を通して入力する。試験開始指令により、試験装置10は試料Wの試験を開始する(ステップST7)。このときのバイパス弁38の開度は第1開度に設定されている。したがって、空調部21によって温度調整された空気の一部は、試験空間TSに導入されるが、残りの空気は、試験空間TSに導入されることなく、バイパス路36を通して空調部21に戻される。
【0050】
試験中においても、温度検出器41によって試料W周囲又は試料Wの温度が検出されている(ステップST8)。判断部43eが、検出温度が試験温度を外れたかどうかを判断しており、検出温度が試験温度を外れたと判断した場合には、バイパス弁38の開度を調整可能かどうか判定し(ステップST9)、開度調整可能な場合には、どの程度試験温度から外れているかに応じてバイパス弁38の開度を調整する(ステップST10)。すなわち、空調部21による空調能力が空調負荷に対して過大になっている結果、検出温度が所定の試験温度を外れる場合には、弁制御部43cは、バイパス弁38の開度をその差分に応じた開度だけ大きくする。これにより、試験空間TSに供給される温調空気の流量を低減することができる。一方、空調部21による空調能力が空調負荷に対して不足している結果、検出温度が所定の試験温度を外れる場合には、弁制御部43cは、バイパス弁38の開度をその差分に応じた開度だけ小さくする。これにより、試験空間TSに供給される温調空気の流量を増大することができる。
【0051】
バイパス弁38の開度を調整できないと判定された場合(ステップST9においてNOと判定された場合)には、送風機制御部43dは、送風機34の回転数を調整する(ステップST11)。これにより、試験空間TSに供給される温調空気の流量が変更される。
【0052】
前記試験方法は、試験槽15が用いられないで行われる方法であるため、ステップST3において、バイパス弁38の開度が第1開度に設定される。一方、試験槽15を用いて試験を行う場合には、試験者は、試験空間TSが閉空間であることを示す操作を操作部44によって行う。このため、弁制御部43cは、バイパス弁38の開度を第2開度に設定する(ステップST4)。したがって、試験開始時のバイパス弁38の開度は、試験槽15が用いられない場合に比べて、大きな開度に設定される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、試験空間TSが開放空間なのか閉空間なのかに応じてバイパス弁38の開度が調整される。すなわち、開放空間及び閉空間の違いによって試験空間TSの空調負荷が変わるため、バイパス弁38の開度を調整することによって、試験空間TSに導入される空気の流量を調整する。このため、空調部21自体の制御の手間を減らすことができる。しかも、受付部43aが受け付けた情報が、試験空間TSが閉空間である場合を示している場合には、弁制御部43cは、開放空間である場合に比べてバイパス弁38の開度が大きくなるようにバイパス弁38の開度を設定する。このため、開放空間である場合に比べて試験空間TS内の空調負荷が小さくなる閉空間での負荷に応じた適切な風量の空気を試験空間TSに流通させることができるとともに、試験空間TSを通過しないで空調部21に戻される空気風量を増大させることができる。このため、試験空間TSの温調に利用されずに戻る空気の量が増えるため、空調部21での加熱量や冷却量を減らすことができる。あるいは、空調部21の空調能力を調整しなくても、バイパス弁38の開度を調整することによって試験空間TSが閉空間である場合の空調負荷に対応することができる。一方、試験空間TSが開放空間である場合には、試験空間TSに流れる風量が増大するため、試験空間TSの空調負荷が大きいとしても、試験空間TSの温度が設定温度(目標温度)に達するのに時間がかかってしまうのを抑制することができる。よって、試験空間TSが開放空間である場合においても、閉空間である場合においても、適切な空調能力で温調を行うことができる。
【0054】
また本実施形態では、弁制御部43cは、温度検出器41の検出結果に応じてバイパス弁38の初期開度をさらに調整するため、設定されたバイパス弁38の初期開度を、試験空間TSの実際の温度負荷に応じて補正することができる。したがって、実際の空調負荷により適した風量の温調空気を試験空間TSに導入することができる。すなわち、試験空間TSが閉空間なのか開放空間なのか応じて空調負荷がおよそ定められるものの、吹き出し路22を構成する部材、閉空間を構成する部材、閉空間の大きさ等に応じて空調負荷が変わる場合もある。そのような場合においても、温度検出器41の検出結果に応じてバイパス弁38の開度を調整することにより、より適切な温度に調整することができる。
【0055】
また本実施形態では、バイパス弁38の開度の調整では対応できない場合に送風機34の回転数を調整するため、バイパス弁38の開度の調整では対応できない試験空間TSの温度調整を送風機34の回転数調整によって補うことができる。
【0056】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、コントローラ43の機能に送風機制御部43dが含まれる構成としたが、バイパス弁38の開度制御のみで対応できるのであれば、送風機制御部43dが省略されていてもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、試験中に検出温度が所定の試験温度から外れた場合に、弁制御部43cが、バイパス弁38の開度を補正するように構成されているが、これに限られない。例えば、試験時間が短い等、環境条件が変動しにくい場合には、弁開度を補正する構成を省略することができる。この場合、温度検出器41も省略することができる。また判断部43eも省略することができる。
【0058】
前記実施形態では、保持部24(第1保持部材24a及び第2保持部材24b)が、試料Wをチャックする構成としたが、この構成に限られない。例えば、保持部24は、試料Wを固定状態で載置する載置台であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
TS 試験空間
W 試料
10 試験装置
21 空調部
34 送風機
36 バイパス路
38 バイパス弁
41 温度検出器
43 コントローラ
43a 受付部
43c 弁制御部
43d 送風機制御部