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特許7169252回転センサのパルス周期異常検出装置及び回転センサのパルス周期異常検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】回転センサのパルス周期異常検出装置及び回転センサのパルス周期異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 21/02 20060101AFI20221102BHJP
   G01P 3/489 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G01P21/02
G01P3/489 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019115348
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021001796
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫨本 昭高
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-25724(JP,A)
【文献】特開平6-308139(JP,A)
【文献】特開昭59-210375(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第4409846(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P21/00-21/02
G01P 3/00- 3/80
G01D 5/00- 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に設けられた検出部を検出してパルス信号を出力する回転センサのパルス周期異常検出装置であって、
連続する2つの前記パルス信号のパルス周期の変化割合を演算する演算部と、
前記演算部によって演算した第1パルス信号と前記第1パルス信号に連続する第2パルス信号との前記変化割合が、所定上限値から所定下限値までの範囲をいずれか一方側に外れた場合に1回目のカウントを行い、前記演算部によって演算した前記第2パルス信号と前記第2パルス信号に連続する第3パルス信号との前記変化割合が、前記範囲をいずれか他方側に外れた場合に2回目のカウントを行うカウンタ部と、
前記1回目のカウント及び前記2回目のカウントが成された場合に、前記パルス周期異常と判定する判定部と、
を備えることを特徴とする回転センサのパルス周期異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転センサのパルス周期異常検出装置であって、
前記カウンタ部は、前記2回目のカウントが成されない場合は、カウント数をリセットする、
ことを特徴とする回転センサのパルス周期異常検出装置。
【請求項3】
回転体に設けられた検出部を検出してパルス信号を出力する回転センサのパルス周期異常検出方法であって、
連続する2つの前記パルス信号のパルス周期の変化割合を演算し、
演算した第1パルス信号と前記第1パルス信号に連続する第2パルス信号との前記変化割合が、所定上限値から所定下限値までの範囲をいずれか一方側に外れた場合に1回目のカウントを行い、
演算した前記第2パルス信号と前記第2パルス信号に連続する第3パルス信号との前記変化割合が、前記範囲をいずれか他方側に外れた場合に2回目のカウントを行い、
前記1回目のカウント及び前記2回目のカウントが成された場合に、前記パルス周期異常と判定する、
ことを特徴とする回転センサのパルス周期異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転センサのパルス周期異常検出装置及び回転センサのパルス周期異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車輪速センサが出力した連続する3つのパルス信号のパルス周期を用いてパルス周期異常を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-165948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、車輪速が一定状態でない場合は異常検出を禁止することで、誤判定を防止している。言い換えると、車輪速が変動する状態では、パルス周期異常を検出することができない。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、回転体の回転速度が変動する状態であっても、誤判定を防止しつつ回転センサのパルス周期異常を検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、回転体に設けられた検出部を検出してパルス信号を出力する回転センサのパルス周期異常検出装置であって、連続する2つの前記パルス信号のパルス周期の変化割合を演算する演算部と、前記演算部によって演算した第1パルス信号と前記第1パルス信号に連続する第2パルス信号との前記変化割合が、所定上限値から所定下限値までの範囲をいずれか一方側に外れた場合に1回目のカウントを行い、前記演算部によって演算した前記第2パルス信号と前記第2パルス信号に連続する第3パルス信号との前記変化割合が、前記範囲をいずれか他方側に外れた場合に2回目のカウントを行うカウンタ部と、前記1回目のカウント及び前記2回目のカウントが成された場合に、前記パルス周期異常と判定する判定部と、を備えることを特徴とする回転センサのパルス周期異常検出装置が提供される。
【0007】
また、これに対応する回転センサのパルス周期異常検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
これらの態様によれば、1回目のカウント及び2回目のカウントが成された場合に、パルス周期異常と判定される。例えば、実際にはパルス周期異常が発生していない状態で回転体の回転速度が変動した場合は、第1パルス信号と第2パルス信号との変化割合が所定上限値から所定下限値までの範囲を一方側に外れ得る。しかしながら、この場合は、第2パルス信号のパルス周期と第3パルス信号のパルス周期とに大きな差は生じないので、第2パルス信号と第3パルス信号との変化割合が当該範囲を他方側に外れることはない。よって、2回目のカウントが成されない。一方、パルス信号抜けや疑似パルス信号が発生した場合は、第1パルス信号と第2パルス信号との変化割合が所定範囲を上限値側に外れ、さらに、第3パルス信号は正常に出力されることから、第2パルス信号と第3パルス信号との変化割合が当該範囲を他方側に外れる。よって、1回目のカウント及び2回目のカウントが成されることになり、パルス周期異常と判定される。これにより、回転体の回転速度が変動する状態であっても、誤判定を防止しつつ回転センサのパルス周期異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る回転センサのパルス周期異常検出装置が適用される車両の概略構成図である。
図2】回転センサについて説明するための図である。
図3】パルス周期異常検出処理を示すフローチャートである。
図4】車両が一定速度で走行している場合のパルス信号の推移を示す図である。
図5】車両が急減速した場合のパルス信号の推移を示す図である。
図6】車両が急加速した場合のパルス信号の推移を示す図である。
図7】パルス信号抜けが発生した場合のパルス信号の推移を示す図である。
図8】疑似パルス信号が発生した場合のパルス信号の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態に係る回転センサのパルス周期異常検出装置が適用される車両100について説明する。
【0011】
図1は、車両100の概略構成図である。図1に示すように、車両100は、駆動源としてのエンジン5と、エンジン5の回転を変速して駆動輪50へ伝達する自動変速機1と、を備える。
【0012】
自動変速機1は、トルクコンバータ6と、無段変速機構20と、前後進切換え機構7と、を備える。
【0013】
トルクコンバータ6は、ロックアップクラッチ6cを有する。ロックアップクラッチ6cは、油圧制御回路11からロックアップ圧が供給されることで締結される。ロックアップクラッチ6cが締結されると、トルクコンバータ6の入力軸60と出力軸61とが直結し、入力軸60と出力軸61とが同速回転する。
【0014】
無段変速機構20は、V溝が整列するよう配設されたプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3と、プーリ2、3のV溝に掛け渡されたベルト4と、を有する。
【0015】
プライマリプーリ2と同軸にエンジン5が配置され、エンジン5とプライマリプーリ2の間に、エンジン5の側から順に、トルクコンバータ6、前後進切換え機構7が設けられている。
【0016】
前後進切換え機構7は、ダブルピニオン遊星歯車組7aを主たる構成要素とし、そのサンギヤはトルクコンバータ6を介してエンジン5に結合され、キャリアはプライマリプーリ2に結合される。前後進切換え機構7は、さらに、ダブルピニオン遊星歯車組7aのサンギヤおよびキャリア間を直結する前進クラッチ7b、及びリングギヤを固定する後進ブレーキ7cを備える。そして、前進クラッチ7bの締結時には、エンジン5からトルクコンバータ6を経由した入力回転がそのままプライマリプーリ2に伝達され、後進ブレーキ7cの締結時には、エンジン5からトルクコンバータ6を経由した入力回転が逆転されてプライマリプーリ2へと伝達される。
【0017】
前進クラッチ7bは、自動変速機1の動作モードを選択するセレクトスイッチ(図示せず)により前進走行モードが選択された場合に油圧制御回路11からクラッチ圧が供給されることで締結される。後進ブレーキ7cは、セレクトスイッチにより後進走行モードが選択された場合に油圧制御回路11からブレーキ圧が供給されることで締結される。
【0018】
プライマリプーリ2の回転はベルト4を介してセカンダリプーリ3に伝達され、セカンダリプーリ3の回転は、出力軸8、歯車組9及びディファレンシャルギヤ装置10を経て駆動輪50へと伝達される。
【0019】
上記の動力伝達中にプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3間の変速比を変更可能にするために、プライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3のV溝を形成する円錐板のうち一方を固定円錐板2a、3aとし、他方を軸線方向へ変位可能な可動円錐板2b、3bとしている。
【0020】
これら可動円錐板2b、3bは、プライマリプーリ圧及びセカンダリプーリ圧をプライマリプーリ室2c及びセカンダリプーリ室3cに供給することにより固定円錐板2a、3aに向けて付勢され、これによりベルト4を円錐板に摩擦係合させてプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3間での動力伝達を行う。
【0021】
変速に際しては、目標変速比に対応させて発生させたプライマリプーリ圧及びセカンダリプーリ圧間の差圧により両プーリ2、3のV溝の幅を変化させ、プーリ2、3に対するベルト4の巻き掛け円弧径を連続的に変化させることで目標変速比を実現する。
【0022】
ロックアップ圧、プライマリプーリ圧、セカンダリプーリ圧、クラッチ圧、及びブレーキ圧は、コントローラ12からの制御信号に基づき油圧制御回路11によって制御される。
【0023】
油圧制御回路11は、複数の油路、複数のソレノイド弁を備える。油圧制御回路11は、コントローラ12からの制御信号に基づいて油圧の供給経路を切り換えるとともに、オイルポンプ21から供給された作動油の圧力を調圧して必要な油圧を生成し、これを自動変速機1の各部位に供給する。
【0024】
本実施形態のオイルポンプ21は、エンジン5の動力の一部を利用して駆動される。なお、オイルポンプ21は、電動オイルポンプであってもよい。
【0025】
コントローラ12は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出インターフェース、これらを接続するバス等を含んで構成される。コントローラ12は、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで車両100の各部の制御を行う。
【0026】
コントローラ12は、車両100の各部位の状態を検出する各種センサからの信号に基づきエンジン5の回転速度及びトルク、ロックアップクラッチ6cの締結状態、無段変速機構20の変速比、前進クラッチ7b及び後進ブレーキ7cの締結状態等を統合的に制御する。
【0027】
コントローラ12には、セレクトスイッチからの選択モード信号、アクセルペダル(図示せず)の操作状態を検出するアクセル開度センサ(図示せず)からの信号、ブレーキペダル(図示せず)の操作状態を検出するブレーキスイッチ(図示せず)からの信号、回転体としての出力軸61の回転を検出する回転センサ14からの信号、回転体としてのプライマリプーリ2の回転を検出する回転センサ15からの信号、回転体としてのセカンダリプーリ3の回転を検出する回転センサ16からの信号、プライマリプーリ圧を検出する圧力センサ17からの信号、セカンダリプーリ圧を検出する圧力センサ18からの信号、等が入力される。
【0028】
また、コントローラ12は、上記各センサからの信号に基づいて各種異常診断を行い、異常を検出した場合にはその内容に応じた制御を実行する。
【0029】
例えば、コントローラ12は、回転センサ14~16が出力するパルス信号のパルス周期異常を検出するパルス周期異常検出装置(演算部、カウンタ部、判定部)としての機能を有する。
【0030】
以下、回転センサ14~16のパルス周期異常検出処理について詳しく説明する。なお、各回転センサ14~16の構成及び異常検出処理の内容は同様であるので、以下では、回転センサ14のパルス周期異常検出処理を例として説明し、回転センサ15及び回転センサ16のパルス周期異常検出処理については説明を省略する。
【0031】
まず、図2を参照して、回転センサ14について説明する。回転センサ14は、ホール素子を用いて構成される近接センサであって、出力軸61に設けられた検出部61aを検出し、パルス信号を出力する。なお、出力軸61と検出部61aとは、一体であってもよいし、複数の部品を組み合わせて構成してもよい。
【0032】
本実施形態では、出力軸61には、検出部61aが周方向等分8か所に設けられている。よって、出力軸61が1回転すると、回転センサ14からパルス信号が8回出力される。なお、検出部61aの数は、適宜変更可能である。
【0033】
コントローラ12は、所定期間内に回転センサ14から入力されたパルス信号の数に基づいて、出力軸61の回転速度を演算する。
【0034】
続いて、図3のフローチャートを参照しながら、コントローラ12が実行するパルス周期異常検出処理について説明する。パルス周期異常検出処理は、車両100の走行中に行われる。
【0035】
ステップS11では、コントローラ12は、回転センサ14から入力された連続する2つのパルス信号(第1パルス信号としてのN-1番目のパルス信号、第2パルス信号としてのN番目のパルス信号)のパルス周期Tの変化割合を演算する。
【0036】
本実施形態では、パルス信号のパルス周期Tは、パルス信号の立下り時点を基準として計測される。
【0037】
例えば、図4は、車両100が一定速度で走行している場合のパルス信号の推移を示している。この場合は、N-1番目のパルス信号のパルス周期T1とN番目のパルス信号のパルス周期T2とが等しくなる。変化割合はT2/T1で求められるので、図4では、N-1番目のパルス信号とN番目のパルス信号との変化割合が「1」となる。
【0038】
また、図5は、車両100が時刻t1から急減速した場合のパルス信号の推移を示している。この場合は、急減速によって出力軸61の回転速度が急低下するので、時刻t1後の最初のパルス信号をN番目のパルス信号として考えると、N番目のパルス信号のパルス周期T2が、N-1番目のパルス信号のパルス周期T1に対して大きく変化することになる。これにより、図5では、N-1番目のパルス信号とN番目のパルス信号との変化割合が「2」よりも大きくなっている。
【0039】
また、図6は、車両100が時刻t1から急加速した場合のパルス信号の推移を示している。この場合は、急加速によって出力軸61の回転速度が急上昇するので、時刻t1後の最初のパルス信号をN番目のパルス信号として考えると、N番目のパルス信号のパルス周期T2が、N-1番目のパルス信号のパルス周期T1に対して大きく変化することになる。これにより、図6では、N-1番目のパルス信号とN番目のパルス信号との変化割合が「1/2」よりも小さくなっている。
【0040】
また、図7は、検出部61aの欠け等によりパルス信号抜けが発生した場合のパルス信号の推移を示している。この場合は、パルス信号抜け後の最初のパルス信号をN番目のパルス信号として考えると、N番目のパルス信号のパルス周期T2が、N-1番目のパルス信号のパルス周期T1に対して大きく変化することになる。これにより、図7では、N-1番目のパルス信号とN番目のパルス信号との変化割合が「2」となる。
【0041】
また、図8は、出力軸61への異物の付着等による疑似パルス信号が発生した場合のパルス信号の推移を示している。疑似パルス信号をN番目のパルス信号として考えると、N番目のパルス信号のパルス周期T2が、N-1番目のパルス信号のパルス周期T1に対して大きく変化することになる。これにより、図8では、N-1番目のパルス信号とN番目のパルス信号との変化割合が「1/2」よりも小さくなっている。
【0042】
ステップS12では、コントローラ12は、ステップS11で演算した変化割合が、所定上限値から所定下限値までの範囲(所定範囲)を外れているか判定する。
【0043】
本実施形態では、所定上限値は変化割合「2」よりもわずかに小さい値である。また、所定下限値は変化割合「1/2」よりもわずかに大きい値である。
【0044】
コントローラ12は、変化割合が所定範囲を外れていないと判定すると、処理を終了する。なお、処理を終了した場合は、次に入力されるパルス信号をN番目のパルス信号として新たに処理が開始される。
【0045】
また、コントローラ12は、変化割合が所定範囲を外れていると判定すると、処理をステップS13に移行する。
【0046】
図4図8に示す場合について検討すると、図4では、変化割合が「1」となるので、変化割合が所定範囲を外れていないと判定される。
【0047】
図5では、変化割合が「2」よりも大きいので、所定範囲を上限値側に外れていると判定される。
【0048】
図6では、変化割合が「1/2」よりも小さいので、所定範囲を下限値側に外れていると判定される。
【0049】
図7では、変化割合が「2」となるので、所定範囲を上限値側に外れていると判定される。
【0050】
図8では、変化割合が「1/2」よりも小さいので、所定範囲を下限値側に外れていると判定される。
【0051】
ステップS13では、コントローラ12は、カウンタをインクリメントする(カウント数=1)。
【0052】
ステップS14では、コントローラ12は、回転センサ14から入力された連続する2つのパルス信号(第2パルス信号としてのN番目のパルス信号、第3パルス信号としてのN+1番目のパルス信号)のパルス周期Tの変化割合を演算する。
【0053】
図4図8に示す場合について検討すると、図4では、N番目のパルス信号のパルス周期T2とN+1番目のパルス信号のパルス周期T3とが等しくなる。よって、図4では、N番目のパルス信号とN+1番目のパルス信号との変化割合が「1」となる。
【0054】
図5では、車両100の急減速によってパルス周期T2がパルス周期T1に対して大きく変化する。しかしながら、N+1番目のパルス信号のパルス周期T3については、パルス周期T2に対する変化が小さく、変化割合は略「1」となる。
【0055】
図6では、車両100の急加速によってパルス周期T2がパルス周期T1に対して大きく変化する。しかしながら、N+1番目のパルス信号のパルス周期T3については、パルス周期T2に対する変化が小さく、変化割合は略「1」となる。
【0056】
図7では、パルス信号抜けによってパルス周期T2がパルス周期T1に対して大きく変化する。しかしながら、N+1番目のパルス信号は正常に出力されるので、N+1番目のパルス信号のパルス周期T3はパルス周期T1と等しくなる。これにより、図7では、N番目のパルス信号とN+1番目のパルス信号との変化割合が「1/2」となる。
【0057】
図8では、疑似パルス信号が発生したことによってパルス周期T2がパルス周期T1に対して大きく変化する。しかしながら、N+1番目のパルス信号は正常に出力されるので、パルス周期T3がパルス周期T2に対して大きく変化する。これにより、図8では、N番目のパルス信号とN+1番目のパルス信号との変化割合が「2」よりも大きくなっている。
【0058】
ステップS15では、コントローラ12は、ステップS14で演算した変化割合が、所定範囲をステップS12とは異なる側(他方側)に外れているか判定する。
【0059】
例えば、ステップS12において、ステップS11で演算した変化割合が所定範囲を上限値側(一方側)に外れていると判定された場合は、ステップS15では、ステップS14で演算した変化割合が所定範囲を下限値側(他方側)に外れているか判定する。反対に、ステップS12において、ステップS11で演算した変化割合が所定範囲を下限値側(一方側)に外れていると判定された場合は、ステップS15では、ステップS14で演算した変化割合が所定範囲を上限値側(他方側)に外れているか判定する。
【0060】
コントローラ12は、変化割合が所定範囲を他方側に外れていないと判定すると、パルス周期が正常であると判定する(ステップS18)。そして、カウンタをリセット(カウント数=0)して(ステップS19)、処理を終了する。
【0061】
また、コントローラ12は、変化割合が所定範囲を他方側に外れていると判定すると、処理をステップS16に移行する。
【0062】
図4図8に示す場合について検討すると、図4では、変化割合が「1」となるので、変化割合が所定範囲を外れていないと判定される。
【0063】
図5では、変化割合が略「1」となるので、変化割合が所定範囲を外れていないと判定される。
【0064】
図6では、変化割合が略「1」となるので、変化割合が所定範囲を外れていないと判定される。
【0065】
図7では、変化割合が「1/2」となるので、所定範囲を下限値側に外れている。よって、変化割合が他方側に外れていると判定される。
【0066】
図8では、変化割合が「2」よりも大きいので、所定範囲を上限値側に外れている。よって、変化割合が他方側に外れていると判定される。
【0067】
ステップS16では、コントローラ12は、カウンタをインクリメントする(カウント数=2)。
【0068】
ステップS17では、コントローラ12は、パルス周期が異常であると判定する。
【0069】
以上述べたように、本実施形態では、コントローラ12は、連続する2つのパルス信号のパルス周期Tの変化割合を演算し、演算したN-1番目のパルス信号とN-1番目のパルス信号に連続するN番目のパルス信号との変化割合が、所定範囲をいずれか一方側に外れた場合に1回目のカウントを行い、演算したN番目のパルス信号とN番目のパルス信号に連続するN+1番目のパルス信号との変化割合が、所定範囲をいずれか他方側に外れた場合に2回目のカウントを行い、1回目のカウント及び2回目のカウントが成された場合に、パルス周期異常と判定する。
【0070】
また、コントローラ12は、2回目のカウントが成されない場合は、カウント数をリセットする。
【0071】
例えば、実際にはパルス周期異常が発生していない状態で出力軸61の回転速度が急低下した場合(図5参照)は、N-1番目のパルス信号とN番目のパルス信号との変化割合が所定範囲を上限値側に外れ得る。しかしながら、この場合は、N番目のパルス信号のパルス周期T2とN+1番目のパルス信号のパルス周期T3とに大きな差は生じないので、N番目のパルス信号とN+1番目のパルス信号との変化割合が所定範囲を下限値側に外れることはない。よって、2回目のカウントが成されない。また、実際にはパルス周期異常が発生していない状態で出力軸61の回転速度が急上昇した場合(図6参照)も同様に、2回目のカウントが成されない。よって、実際にはパルス周期異常が発生していない状態では、出力軸61の回転速度が変動してもパルス周期異常が発生したと判定されることがなく、誤判定を防止できる。また、例えば、パルス信号抜けが発生した場合(図7参照)は、N-1番目のパルス信号とN番目のパルス信号との変化割合が所定範囲を上限値側に外れ、さらに、N+1番目のパルス信号は正常に出力されることから、N番目のパルス信号とN+1番目のパルス信号との変化割合が所定範囲を下限値側に外れる。よって、1回目のカウント及び2回目のカウントが成されることになり、パルス周期異常と判定される。また、疑似パルス信号が発生した場合(図8参照)は、N-1番目のパルス信号とN番目のパルス信号との変化割合が所定範囲を下限値側に外れ、さらに、N+1番目のパルス信号は正常に出力されることから、N番目のパルス信号とN+1番目のパルス信号との変化割合が所定範囲を上限値側に外れる。よって、1回目のカウント及び2回目のカウントが成されることになり、パルス周期異常と判定される。よって、本実施形態によれば、出力軸61の回転速度が変動する状態であっても、誤判定を防止しつつ回転センサのパルス周期異常を検出することができる。(請求項1~3に対応する効果)
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0073】
例えば、上記実施形態では、エンジン5、自動変速機1等をコントローラ12が統合的に制御している。しかしながら、コントローラ12は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。また、例えば、自動変速機1の制御装置としてのコントローラと、エンジン5の制御装置としてのコントローラと、をそれぞれ設けてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、車両100に設けられた回転センサ14~16に対して本発明を適用している。しかしながら、本発明は、回転体に設けられた検出部を検出してパルス信号を出力する回転センサであれば、車両に限らず、様々な機器に設けられた回転センサに対して適用可能である。
【0075】
また、上記実施形態では、所定上限値を「2」よりもわずかに小さい値とし、所定下限値を「1/2」よりもわずかに大きい値としている。これは、図7に示すように、パルス信号抜けが発生した場合は、パルス周期T1に対するパルス周期T2の変化割合が「2」となり、パルス周期T2に対するパルス周期T3の変化割合が「1/2」となることから、これをパルス周期異常と判定できるようにすることを考慮したものである。しかしながら、所定上限値及び所定下限値は、実験結果や種々の誤差等を考慮して任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0076】
12 コントローラ(パルス周期異常検出装置、演算部、カウンタ部、判定部)
14 回転センサ
15 回転センサ
16 回転センサ
61 出力軸(回転体)
61a 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8