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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】栄養調合物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/12 20160101AFI20221102BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 35/60 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 35/66 20150101ALI20221102BHJP
   A61K 35/20 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 9/113 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20221102BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221102BHJP
   A23C 9/152 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A23L33/12
A61P3/02
A61K31/20
A61K31/201
A61K31/202
A61K35/60
A61K35/66
A61K35/20
A61K9/113
A61K47/44
A61P25/00
A61P27/02
A23C9/152
A61K31/19
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019505094
(86)(22)【出願日】2017-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 AU2017050339
(87)【国際公開番号】W WO2017177283
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-03-23
(31)【優先権主張番号】2016901392
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518365581
【氏名又は名称】クローバー・コーポレイション・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Clover Corporation Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ボー・ワン
(72)【発明者】
【氏名】グレン・エリオット
(72)【発明者】
【氏名】メック・チュー・ティン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・ステュワート・パッチ
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダ・ルイーズ・モッセル
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-044843(JP,A)
【文献】特開平07-313055(JP,A)
【文献】特開平11-049638(JP,A)
【文献】国際公開第2008/044550(WO,A1)
【文献】米国特許第05332595(US,A)
【文献】特開平10-248510(JP,A)
【文献】日本化粧品技術者会誌,2011年,45(1),pp.3-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,A23C,A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)(a)少なくとも1種の乳化剤を含む外油相、に分散した少なくとも1種の乳化剤を含む水相、に分散した、1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を含んでなる内油相を特徴とする二重エマルション(O/W/Oエマルション)を調製し、前記二重エマルションを食用油ストリーム内に分散させるステップ;または
(b)少なくとも1種の乳化剤を含む水相、に分散した1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする水中油型エマルション(O/Wエマルション)を調製し、前記O/Wエマルションを少なくとも1種の乳化剤を含む食用油ストリーム内に分散させ、それによって前記二重エマルションを原位置で形成させるステップ、
によって、食用油ストリーム内の1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸の二重エマルションを提供するステップ、ここで、O/WエマルションおよびO/W/O二重エマルションの調製は、高剪断混合ステップを含む
(ii)前記食用油ストリーム内の前記1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸の前記二重エマルションを水相と混合するステップ;または
(iii)前記1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸の前記二重エマルションを水相内で混合するステップ;および
(iv)ステップ(ii)または(iii)の二重エマルション混合物を均質化し、栄養調合物を形成するステップ、
を含んでなる、1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸を含んでなる栄養調合物を製造する方法。
【請求項2】
前記O/W/Oエマルション中の油/水滴の平均サイズが≦10μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記O/Wエマルション中の油滴の平均サイズが≦5μmである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(i)少なくとも1種の乳化剤を含む外油相、に分散した少なくとも1種の乳化剤を含む水相、に分散した、1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする二重エマルション(O/W/Oエマルション)を調製し、前記二重エマルションを食用油ストリーム内に分散させることで、食用油ストリーム内の前記1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸の二重エマルションを提供するステップ、ここで、O/W/O二重エマルションの調製は、高剪断混合ステップを含む;
(ii)前記食用油ストリーム内の前記1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸の前記二重エマルションを水相と混合するステップ;または
(iii)ステップ(ii)の二重エマルション混合物を均質化し、栄養調合物を形成するステップ、
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記O/W/Oエマルション中の油/水滴の平均サイズが≦10μmである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(i)少なくとも1種の乳化剤を含む水相、に分散した1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする水中油型エマルション(O/Wエマルション)を調製し、前記O/Wエマルションを少なくとも1種の乳化剤を含む食用油ストリーム内に分散させることで、食用油ストリーム内の前記1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸の二重エマルションを提供し、それによって前記二重エマルションを原位置で形成させるステップ、ここで、O/WエマルションおよびO/W/O二重エマルションの調製は、高剪断混合ステップを含む;
(ii)前記1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸の前記二重エマルションを水相内で混合するステップ;および
(iii)ステップ(ii)の二重エマルション混合物を均質化し、栄養調合物を形成するステップ、
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記O/Wエマルション中の油滴の平均サイズが≦5μmである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸が、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(AA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、α-リノレン酸(ALA)、ステアリドン酸(SDA)、リノール酸(LA)、γ-リノレン酸(GLA)、共役リノレン酸(CLA)またはそれらの混合物から選択されてもよい、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸が、DHA、AA、またはその混合物から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1種または複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸が、微生物油、植物油、魚油またはそれらの濃縮形態の構成要素として存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法によって製造された栄養調合物。
【請求項12】
前記O/W/Oエマルション中の油/水滴の平均サイズが≦10μmである、請求項11に記載の栄養調合物。
【請求項13】
栄養補給剤または乳児用調製乳である、請求項11または12に記載の栄養調合物。
【請求項14】
栄養補給剤または乳児用調製乳中で使用される、請求項11または12に記載の栄養調合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広義には、栄養調合物を製造する方法、および前記方法によって製造される栄養調合物に関する。
【背景技術】
【0002】
長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)などの多価不飽和脂肪酸(PUFA)が、乳児および小児発達において重要な役割を果たすことは十分に確立されている。ドコサヘキサエン酸(DHA)およびアラキドン酸(AA)は、健康な脳、視力、および完全に機能的な神経系の基礎的要素であると考えられている。膨大な量の研究は、どちらも人乳中に存在するDHAおよびAAが、脳および眼の急速な発達の期間中の出生前および出生後の生活において、生理学的に重要であることを実証している。DHAおよびAAは、妊娠の最後の3ヶ月間および出生後最初の2年間に、脳内に急速に蓄積することが示されている。
【0003】
特に幼児の発達におけるそれらの重要な役割のために、DHAおよびAAは、長年にわたって乳児用調製乳に配合されており、その他の栄養調合物にも組み込まれている。DHAおよびAAなどのLCPUFAは、典型的に、幼児用調製乳のような栄養調合物に、通常は乾式配合または直接注入によって、その他の配合成分と共に製造中に組み込まれる。PUFAは酸化分解および汚染の影響を受け易いので、乾式混合が、一般に優れた最終製品を提供すると考えられている。このような乾式混合法では、PUFAは粉末マイクロカプセル化形態で提供される。
【0004】
直接注入は、乾式混合よりも効率的である。直接注入は、無希釈の脂肪酸をその他の配合成分を含んでなる油ストリーム内に直接注入することで、栄養調合物に組み込むことを伴う。直接注入に続いて、油ストリームは水相と混合され、均質化されて噴霧乾燥される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、直接注入法を用いた際に得られる最終乳児用調製乳製品の品質は、乾式混合法によって得られる最終製品と比較した場合、特に風味およびPUFA安定性に関して劣っていると考えられている。この点において、PUFAの高温、酸素、および酸化剤への曝露などの直接注入中に使用されるパラメータが、PUFAの酸化を促進し、劣悪な製品をもたらすことが指摘されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、二重エマルションへの脂肪酸の組み込みによって、油ストリームへのPUFA、LCPUFA、中鎖脂肪酸(MCFA)、分枝鎖脂肪酸(BCFA)またはそれらの混合物などの脂肪酸の直接注入によって調製される栄養調合物、特に乳児用調製乳の品質が、(風味および味に関して)改善され得るという驚くべき発見の上で予見された。
【0007】
特に、本明細書に記載の二重エマルションベースの方法は、脂肪酸をより良好に安定化でき、特に、例えば高温を伴う処理中の脂肪酸の酸化を防止または最小化できることが見いだされた。
【0008】
一態様では、本発明は、
(i)(a)外油相に分散した水相に分散した、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする二重エマルション(O/W/Oエマルション)を調製し、前記二重エマルションを植物油などの食用油ストリーム内に分散させるステップ;または
(b)水相に分散した1種または複数種の脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする水中油型エマルション(O/Wエマルション)を調製し、前記水中油型エマルションを植物油などの食用油ストリーム内に分散させ、それによって前記二重エマルションを原位置(in situ)で形成させるステップ
によって、植物油などの食用油ストリーム内に、1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを提供するステップと;
(ii)植物油などの食用油ストリーム内の前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを水相と混合するステップ;または
(iii)前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを水相と混合するステップと;
(iv)ステップ(ii)または(iii)の二重エマルション混合物を均質化し、栄養調合物を形成するステップと
を含んでなる、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる栄養調合物を製造する方法を提供する。
【0009】
さらなる一態様では、本発明は、
(i)外油相に分散した水相に分散した、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする二重エマルション(O/W/Oエマルション)を調製し、前記二重エマルションを植物油などの食用油ストリーム内に分散させることで、植物油などの食用油ストリーム内の前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを提供するステップと;
(ii)植物油などの食用油ストリーム内の前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを水相と混合するステップ;または
(iii)前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを水相と混合するステップと;
(iv)ステップ(ii)または(iii)の二重エマルション混合物を均質化し、栄養調合物を形成するステップと
を含んでなる、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる栄養調合物を製造する方法を提供する。
【0010】
さらなる一態様では、本発明は、
(i)水相に分散した1種または複数種の脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする水中油型エマルション(O/Wエマルション)を調製し、前記水中油型エマルションを植物油などの食用油ストリーム内に分散させることで、植物油などの食用油ストリーム内の前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを提供し、それによって前記二重エマルションを原位置で形成させるステップと;
(ii)植物油ストリーム内の前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを水相と混合するステップ;または
(iii)前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを水相と混合するステップと;
(iv)ステップ(ii)または(iii)の二重エマルション混合物を均質化し、栄養調合物を形成するステップと
を含んでなる、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる栄養調合物を製造する方法を提供する。
【0011】
さらなる一態様では、本発明は、
(i)(a)外油相に分散した水相に分散した、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする二重エマルション(O/W/Oエマルション)を調製し、前記二重エマルションを植物油ストリーム内に分散させるステップ;または
(b)水相に分散した1種または複数種の脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする水中油型エマルション(O/Wエマルション)を調製し、前記水中油型エマルションを植物油ストリーム内に分散させ、それによって前記二重エマルションを原位置で形成させるステップ
によって、植物油ストリーム内の前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを提供するステップと:
(ii)植物油ストリーム内の前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを水相と混合するステップと;
(iii)ステップ(ii)の二重エマルション混合物を均質化し、栄養調合物を形成するステップと
を含んでなる、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる栄養調合物を製造する方法を提供する。
【0012】
さらなる一態様では、本発明は、
(i)外油相に分散した水相に分散した、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする二重エマルション(O/W/Oエマルション)を調製し、植物油ストリーム内に前記二重エマルションを分散させることで、植物油ストリーム内の前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを提供するステップと;
(ii)植物油ストリーム内の前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを水相と混合するステップと;
(iii)ステップ(ii)の二重エマルション混合物を均質化し、栄養調合物を形成するステップと
を含んでなる、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる栄養調合物を製造する方法を提供する。
【0013】
さらなる一態様では、本発明は、
(i)水相に分散した1種または複数種の脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする水中油型エマルション(O/Wエマルション)を調製し、前記水中油型エマルションを植物油ストリーム内に分散させることで、植物油ストリーム内の前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを提供し、それによって前記二重エマルションを原位置で形成させるステップと;
(ii)植物油ストリーム内の前記1種または複数種の脂肪酸の二重エマルションを水相と混合するステップと;
(iii)ステップ(ii)の二重エマルション混合物を均質化し、栄養調合物を形成するステップと
を含んでなる、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる栄養調合物を製造する方法を提供する。
【0014】
一実施形態では、上記の態様の1つによる方法は、ステップ(iv)の均質二重エマルションの混合物を噴霧乾燥するステップをさらに含んでなる。
【0015】
上記の態様の特定の実施形態では、脂肪酸は、PUFA、MCFA、BCFA、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、PUFAはLCPUFAである。LCPUFAは、DHA、AA、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、α-リノレン酸(ALA)、ステアリドン酸(SDA)、リノール酸(LA)、γ-リノレン酸(GLA)、共役リノレン酸(CLA)またはそれらの混合物から選択されてもよい。
【0016】
1種または複数種の脂肪酸は、微生物油、植物油または魚油の構成要素として存在してもよい。魚油は、例えば、マグロ油であってもよい。
【0017】
本発明のさらなる態様は、本発明の方法によって製造された場合の栄養調合物を提供する。
【0018】
一実施形態では、栄養調合物は、栄養補給剤として使用するためのものである。例えば、調合物は、乳児用調製乳として、または乳児用調製乳中で使用されてもよい。
【0019】
定義
以下は、本発明の説明を理解するのに役立ってもよい、いくつかの定義である。これらは一般的な定義として意図されており、本発明の範囲をこれらの用語のみに限定するものではなく、以下の説明をより良く理解するために提示される。
【0020】
本明細書全体および続く特許請求の範囲を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含んでなる(comprise)」という語、および「含んでなる(comprised)」、「含んでなる(comprises)」または「含んでなる(comprising)」などのバリエーションは、記載された整数またはステップまたは整数群またはステップ群の包含を暗示するが、任意のその他の整数またはステップまたは整数群またはステップ群の除外は暗示しないものと理解される。
【0021】
本明細書の文脈で、「約」という用語は、当業者が、同一機能または結果を達成する文脈で、列挙された値と同等と見なす、一連の数値を指すものと理解される。
【0022】
本明細書の文脈で、「乳児用調製乳」という用語は、母乳代替物または補給剤、およびミルク強化剤として意図される組成物を含む。
【0023】
本明細書の文脈で、「食用」という用語は、ヒトによる消費に安全であると考えられる無毒物質を意味する。
【0024】
本明細書の文脈で、「長鎖」という用語は、13個以上の炭素原子を有する飽和または不飽和炭化水素鎖を指すものと理解される。
【0025】
本明細書の文脈で、「中鎖」という用語は、6~12個の炭素原子を有する飽和または不飽和炭化水素鎖を指すものと理解される。
【0026】
本明細書の文脈で、「不飽和」および「多価不飽和」という用語は、脂肪酸鎖中に1つまたは複数の二重結合を有する脂肪酸を指すものと理解される。
【0027】
本明細書の文脈で、「低分子量乳化剤」という用語は、1000g/mol以下の分子量を有する乳化剤を意味するものと理解される。
【0028】
本明細書の文脈で、「高分子量乳化剤」という用語は、1000g/molを超える分子量を有する乳化剤を意味するものと理解される。
【0029】
乳化中に、乳化剤は、油-水界面に層を形成してもよい。低分子量乳化剤は、界面に単層を形成してもよく、界面を実質的に覆ってもよい。高分子量乳化剤は、界面に単層または多層を形成してもよい。界面に形成された層の厚さは、使用される乳化剤の分子量に左右されてもよい。低分子量乳化剤は、厚さが約0.5~1.0nmの層を提供してもよい。高分子量乳化剤は、厚さが約1.0~15nmの層を提供してもよい。
【0030】
本明細書の文脈では、親水性親油性バランス(HLB)数は、界面活性剤上の親水性基と親油性基の比率の尺度として使用される。>10のHLB数を有する界面活性剤は水親和性(親水性)を有し、<10のHLB数を有する界面活性剤は油親和性(親油性)を有する。本明細書の文脈では、「界面活性剤」および「乳化剤」という用語は、同義的に使用される。本発明の特定の実施形態では、「低HLB」値乳化剤への言及は、10未満のHLB値を有する乳化剤または界面活性剤を指す。さらに、特定のその他の実施形態では、「高HLB」値乳化剤への言及は、10を超えるHLB値を有する乳化剤または界面活性剤を指す。
【0031】
>10のHLB数を有する乳化剤は、水中油型エマルションを安定化させるために使用されてもよく、高分子量または低分子量を有してもよい。高分子量を有する高HLB値乳化剤の例は、カゼイン、ホエータンパク質中グロブリン、またはアラビアガムなどの多糖類であってもよい。低分子量を有する低HLB乳化剤の例としては、Span、いくつかのレシチン、遊離脂肪酸、モノまたはジグリセリド、スクロースエステル、およびモノまたはジアシルグリセロールの酢酸エステルが挙げられる。<10のHLB数を有する乳化剤は、油中水型エマルションを安定化させるために使用されてもよく、高または低分子量を有してもよい。低分子量を有する低HLB値乳化剤の例としては、Span、いくつかのレシチン、およびポリリシノール酸ポリグリセロールが挙げられる。
【0032】
本明細書の文脈では、本明細書に開示された数字の範囲(例えば、1~10)への言及は、その範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、および10)、およびその範囲内の任意の範囲の有理数(例えば、2~8、1.5~5.5、および3.1~4.7)への言及も含むことが意図され、したがって、本明細書において明示的に開示される全ての範囲の全ての部分的な範囲が、明示的に開示される。これらは、具体的に意図されるものの例に過ぎず、列挙された最低値と最高値との間の全ての可能な数値の組み合わせは、本出願において類似様式で同様に明示的に記述されていると見なされるべきである。
【0033】
本明細書の文脈では、名詞に続く「(s)」は、名詞の複数形および/または単数形を意味する。
【0034】
本明細書の文脈では、「および/または」という用語は、「および」または「または」またはその双方を意味する。
【0035】
本発明は広義には上記で定義した通りであるが、当業者は、本発明がこれに限定されるものではなく、また本発明が、以下の記載が実施例を与える実施形態もまた含むことを理解するであろう。
【0036】
本明細書に記載された本発明の実施形態は、単に例示的であることが意図され、当業者は、日常的実験のみを用いて、特定の物質、化合物、および手順の多くの均等物を認識し、または確認できるであろう。そのような均等物は全て、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内にあると見なされる。
【0037】
ここで本発明の実施形態を、単なる例として以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態による、栄養調合物を調製するためのプロセスの概略図である。
図2】本発明の製剤の酸化安定性を判定するための酸素吸収の反応時間(時間)に対する圧力(バール)のグラフである。
図3】本発明の実施例2の実施形態による、栄養調合物を調製するためのプロセスの概略図である。
図4】実施例2によるO/W/Oエマルション調製物を示す。(A)内部水中油型エマルション;(B)外部油中内部水中油型エマルション;および(C)O/W/Oエマルション液滴の形態。棒目盛は、示された通りであった。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施形態は、1種または複数種の脂肪酸、特にPUFA、LCPUFA、MCFA、BCFAまたはそれらの混合物を含有する二重エマルションを含んでなる、栄養調合物を調製する方法を提供する。本明細書に記載の二重エマルションは、外油相に分散した水相に分散した、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする。したがって、二重エマルションは、油中水中油型(O/W/O)エマルションと称されてもよい。
【0040】
理論による拘束は望まないが、本発明者らは、本発明の実施形態に従って、本明細書に記載されるような二重エマルション(1種または複数種の脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする)が効率的に均質化でき、その結果、その中に含有される脂肪酸が、栄養調合物の均質化プロセスおよび以降の調製プロセスにおいて、高い処理温度、酸素および酸化剤への曝露などの分解を加速する条件に曝露されないと考える。それによって、脂肪酸の安定性を高め得る。味の改善は、調合物中の脂肪酸分解および酸化生成物の最小化に起因するものと思われる。具体的には、本発明者らは、処理中に、形成されたO/W/Oエマルションが、直接注入中に典型的に使用される高い処理温度、酸素、および酸化剤に曝露されながら、脂肪酸を有利に保護することを認識した。これは、最小の脂肪酸分解を有する調合物を提供し、それは乾式混合によってマイクロカプセル化粉末として添加された脂肪酸を含んでなる配合に匹敵する、官能特性を有する。
【0041】
第1のプロセスでは、本発明の実施形態による方法は、外油相に分散した水相に分散した、1種または複数種の脂肪酸を含んでなる内油相を特徴とする、二重エマルションを提供することを検討する。
【0042】
1種または複数種の脂肪酸は、PUFA、LCPUFA、MCFA、BCFAまたはそれらの混合物から選択されてもよい。1種または複数種の脂肪酸は、微生物油、植物油または魚油の構成要素として存在してもよい。
【0043】
特定の実施形態では、脂肪酸は、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸またはそれらの混合物などのPUFAである。さらに特定の実施形態では、PUFAは、例えば、DHA、AA、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、α-リノレン酸(ALA)、ステアリドン酸(SDA)またはそれらの混合物から選択されるLCPUFAである。
【0044】
1種または複数種のLCPUFAは、微生物油、植物油または例えばマグロ油などの魚油の構成要素として存在してもよい。一実施形態では、LCPUFAはAAまたはDHAである。別の実施形態では、LCPUFAはDHAとAAとの混合物である。
【0045】
その他の実施形態では、脂肪酸はMCFAまたはBCFAであってもよい。例示的MCFAとしては、例えば、ヘキサン酸(カプロン酸)、カプリル酸、カプリン酸またはラウリン酸、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
簡潔さのために、本明細書の以下の開示は、例示的な脂肪酸としてのPUFAを指す。しかし、当業者は、本発明の範囲がこの単一の例示に限定されないことを理解するであろう。
【0047】
一実施形態では、O/W/Oエマルションを形成するプロセスは、外油相(油相A)に分散した水相に分散した、1種または複数種のPUFAを含んでなる内油相(油相B)を含んでなる二重エマルションを形成するのに十分な時間と条件下で、
a)少なくとも1種の乳化剤の存在下の食用油と水を含んでなる水中油相(外油相A)と;
b)少なくとも1種の乳化剤の存在下の少なくとも1種または複数種のPUFAと水を含んでなる水中油相(内油相B)と
を別々に共に混合することを伴う。
【0048】
本発明による二重エマルションを形成するのに適した時間および条件は、当業者に知られているか、あるいは当業者によって日常的な実験を通じて容易に解明され得る。
【0049】
別の実施形態では、水相に分散した1種または複数種のPUFAを含んでなる内油相を特徴とする、水中油型エマルション(O/Wエマルション)を調製し、前記O/Wエマルションを植物油などの食用油ストリーム内に分散させ、それによって前記二重エマルションを形成させることで、植物油などの食用油ストリーム内のO/W/Oエマルションが原位置で形成される。
【0050】
本明細書に記載のO/Wエマルションは、1種または複数種の乳化剤を含んでなってもよい。乳化剤は、O/Wエマルションを安定化させるように機能する。例えば、一実施形態では、O/W/Oエマルションが植物油などの食用油ストリーム内の原位置で形成され、O/Wエマルションは、O/W/Oエマルションの原位置での形成を容易にする、1種または複数種の乳化剤を含んでなる。乳化剤は、高分子量乳化剤、低分子量乳化剤、またはその混合物であってもよい。使用に適した乳化剤としては、あらゆる全ての食用または食品等級の乳化剤が挙げられる。非限定的例としては、以下が挙げられる:ツイーン乳化剤、いくつかのレシチン、モノおよびジアシルグリセロールなどの高HLB値を有する低分子量乳化剤;カゼイネート、ホエータンパク質、乳化基を有する多糖類などの高HLB値を有する高分子量乳化剤;およびSpan乳化剤、ポリリシノール酸ポリグリセロール、およびいくつかのレシチンなどの低HLB値を有する低分子量乳化剤。本発明の実施形態では、O/Wエマルションは、高分子量乳化剤および低分子量乳化剤を含んでなる。一実施形態では、O/Wエマルションは、カゼイネートおよびレシチンを含んでなる。
【0051】
上記の油相AおよびBのための乳化剤は、同一であってもまたは異なっていてもよく、乳化剤の混合物を含んでなってもよい。乳化剤は、様々なHLB(「親水性親油性バランス」)値を有してもよい。したがって、一連のHLB値を有する2種以上の乳化剤の使用は、いくつかの実施形態では、より効果的な乳化の利点を与えてもよい。
【0052】
本発明のO/W/Oエマルションは、相反転によって調製されてもよい。一実施形態では、相反転によるO/W/Oエマルションの調製における第1のステップは、第1の油相の調製を含んでなる。一実施形態では、相反転によるO/W/Oエマルションの調製における第2のステップは、第1の油相と異なる第2の油相の調製を含んでなる。一実施形態では、第1の油相は脂肪酸を含んでなってもよい。一実施形態では、第1または第2の油相の調製は、高HLB値の乳化剤を水相に添加する第1のステップを含んでなる。一実施形態では、高HLB値乳化剤は10を超えるHLB値を有する。一実施形態では、第1または第2の油相の調製は、低HLB値乳化剤を油相に添加する第2のステップを含んでなる。一実施形態では、低HLB値乳化剤は10未満のHLB値を有する。一実施形態では、第1または第2の油相の調製は、水相-高HLB値乳化剤混合物を油相-低HLB値乳化剤混合物と組み合わせる第3のステップを含んでなる。一実施形態では、相反転によるO/W/Oエマルション調製における第3のステップは、前述の実施形態による第1の油相と第2の油相との組み合わせを含んでなる。
【0053】
本発明のO/W/Oエマルションは、複数の均質化によって調製されてもよい。一実施形態では、複数の均質化による本発明のO/W/Oエマルションの調製における第1のステップは、水中油型エマルションを調製する第1のステップを含んでなる。一実施形態では、水中油型エマルションを調製するステップは、水相と油相との均質化を含んでなる。一実施形態では、水中油型エマルションを調製する第1のステップの水相は、高HLB値乳化剤を水相に添加するステップを含んでなる。一実施形態では、高HLB値乳化剤は10を超えるHLB値を有する。一実施形態では、第1のステップの油相は、低HLB値乳化剤および内部油を含んでなる。一実施形態では、内部油は単一の油である。別の実施形態では、内部油は油の混合物である。一実施形態では、O/W/Oエマルションの内部油は、脂肪酸である。一実施形態では、O/W/Oエマルションの内部油は、少なくとも1種の脂肪酸を含んでなる。一実施形態では、低HLB値乳化剤は10未満のHLB値を有する。
【0054】
一実施形態では、複数の均質化による本発明のO/W/Oエマルションの調製における第2のステップは、水中油型エマルションからO/W/Oエマルションを調製する第2のステップを含んでなる。一実施形態では、O/W/Oエマルションを調製するステップは、水中油型エマルションと外油相とを均質化するステップを含んでなる。一実施形態では、水中油型エマルションの均質化によってO/W/Oエマルションを調製するステップは、外油相を調製する第1のステップを含んでなる。一実施形態では、外油相は、外部油および低HLB値乳化剤を含んでなる。一実施形態では、外部油は単一の油である。別の実施形態では、外部油は油の混合物である。一実施形態では、水中油型エマルションの均質化によってO/W/Oエマルションを調製するステップは、水中油型エマルションを外油相と混合する第2のステップを含んでなる。一実施形態では、O/W/Oエマルションは、水中油型エマルションと外油相との均質化によって調製される。
【0055】
一実施形態では、1種または複数の乳化剤が高HLB値を有してもよい。一実施形態では、高HLB値は約10を超えるHLB値である。一実施形態では、1種または複数種の乳化剤が低HLB値を有してもよい。一実施形態では、低HLB値は約10未満のHLB値である。1種または複数の乳化剤が、リン脂質ベースの乳化剤であってもよい。一実施形態では、O/W/Oエマルションの調製で使用される乳化剤は、中度ホスファチジルコリン(PC)含有量を有するリン脂質ベースの乳化剤である。別の実施形態では、O/W/Oエマルションの調製で使用される乳化剤は、高いホスファチジルコリン(PC)含有量を有するリン脂質である。一実施形態では、高いホスファチジルコリン(PC)含有量を有するリン脂質は、20%を超えるホスファチジルコリン(PC)含有量を有する。別の実施形態では、中度ホスファチジルコリン(OC)含有量を有するリン脂質は、20%未満のホスファチジルコリン(PC)含有量を有する。別の実施形態では、O/W/Oエマルションの調製で使用される乳化剤は、20%を超えるホスファチジルコリン含有量を有するリン脂質である。
【0056】
乳化剤は、二重エマルションの全質量の約0.01%~5%、または約0.1%~5%、または約0.1%~5%の量で存在してもよい。その他の実施形態では、乳化剤は、O/Wエマルションの全質量の約0.01%~5%、または約0.1%~5%、または約0.1%~5%の量で存在してもよい。
【0057】
O/Wエマルションは、O/Wエマルションの全質量を基準にして、約30%~約90%の油および約10%~約70%の水を含んでなってもよい。
【0058】
外油相は、二重エマルションの全質量を基準にして、例えば、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、または約84%などの約35%~約85%の量で存在してもよい。
【0059】
内油相は、二重エマルションの総量を基準にして、例えば、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、または約64%などの約10%~約65%の量で存在してもよい。
【0060】
一実施形態では、内油相中の全PUFAの量は、内相中のO/Wエマルションの全質量を基準にして、例えば、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、または約89%などの約30~90%である。一実施形態では、内油相中の全PUFAの量は、内相のO/Wエマルションの全質量を基準にして、65%を超え、70%を超え、75%を超え、80%を超え、または90%を超える。一実施形態では、内油相中の全PUFAの量は、内相の二重エマルションの総量の例えば約80%~約85%など、約80%~約90%である。
【0061】
内油相は、任意の食用油を含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、内油相は、1種または複数種のPUFAの供給源である油、任意選択的に魚油、微生物油、植物油またはそれらの濃縮形態を含んでなり、それからなり、またはそれから本質的になる。例示的実施形態では,本発明で使用するための魚油またはその濃縮形態は、例えば、マグロ、サケ、マス、スズキ、メンハーデン、ピルチャーズ、サバ、イワシ、ニシン、キッパー、うなぎ、シラスまたは任意のその他の「脂肪性の魚」の1種または複数の魚から得られてもよい。本発明で使用するための微生物油またはその濃縮形態は、例えば、藻類(微細藻類など)または真菌から得られてもよい。微細藻類は、例えば、クリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)またはスキゾキトリウム属(Schizochytrium)の種であってもよい。真菌は、例えば、モルティエラ・アルピン(Mortierella alpine)であってもよい。本発明で使用するための植物油またはそれらの濃縮形態は、例えば、米糠油、コーンオイル、大豆油、キャノーラ油、パーム油、ナタネ油、ヒマワリ油、落花生油、ココナツ油、オリーブ油、紅花油、亜麻仁油、グレープシードオイル、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、綿実油などから得られてもよい。
【0062】
内油相は、エマルション組成物に含まれるPUFAに応じて選択されてもよい。例えば、LCPUFAとしてDHAを含めることが所望される場合、マグロ油などのDHAを含んでなる油が、内油相として選択される。内油相は、エマルション組成物に含まれるLCPUFAに富んだ油を含んでなり、それからなり、またはそれから本質的になってもよい。内油相中のまたは内油相としての、特定の用途がある1種または複数種のLCPUFAの供給源である油としては、DSM,Heerlen,NetherlandsによるDHASCO(登録商標)およびARASCO(登録商標)およびNu-Mega Ingredients,Altona North,VictoriaによるHiDHA(登録商標)の商品名の下に販売されるものが挙げられる。本発明の実施形態では、内油相は、魚油を含んでなり、それからなり、またはそれから本質的になる。いくつかの実施形態では、魚油は、非脱ろうまたは脱ろうマグロ油であってもよい。
【0063】
本発明の別の実施形態では、LCPUFAは、O/Wエマルションの調製前の単純な混合によって、内油相として使用される油に添加されてもよい。
【0064】
外油相は、植物油などの任意の食用油を含んでなり、それからなり、またはそれから本質的になってもよい。適切な食用油の例としては、米糠油、コーンオイル、大豆油、キャノーラ油、パーム油、ナタネ油、ヒマワリ油、落花生油、ココナツ油、オリーブ油、紅花油、亜麻仁油、グレープシードオイル、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、綿実油、およびそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。当業者は、外油相としてその他の食用油もまた選択されてもよいことを理解するであろう。
【0065】
二重エマルションは、例えば、欧州特許第0970741B1号明細書(Shiseido Co.Ltdに付与された)に記載されるものなどの当業者に知られている方法によって調合されてもよい。しかし、欧州特許第0970741号明細書は、化粧品に関するものであることが認識され得る。
【0066】
O/Wエマルションは、内油相として選択された油(1種または複数種のLCPUFAを含む)、水、および乳化剤を合わせ、O/Wエマルションが形成するまで混合することによって調製されてもよい。混合は、高剪断ミキサーを用いて達成されてもよい。いくつかの実施形態では、乳化剤が熱水(例えば、約50°C~90°C、または約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、または約85℃の温度)に添加され、得られた混合物は高剪断混合を施される。一実施形態では、図3に描写されるように、形成されたO/Wエマルション(O/W)(O)中の油滴は、≦0.5μm、≦0.6μm、≦0.7μm、≦0.8μm、≦0.9μm、≦1.0μm、≦1.1μm、≦1.2μm、≦1.3μm、≦1.4μm、≦1.5μm、≦1.6μm、≦1.7μm、≦1.8μm、≦1.9μm、≦2.0μm、≦2.1μm、≦2.2μm、≦2.3μm、≦2.4μm、≦2.5μm、≦2.6μm、≦2.7μm、≦2.8μm、≦2.9μm、≦3.0μm、≦3.1μm、≦3.2μm、≦3.3μm、≦3.4μm、≦3.5μm、≦3.6μm、≦3.7μm、≦3.8μm、≦3.9μm、≦4.0μm、≦4.1μm、≦4.2μm、≦4.3μm、≦4.4μm、≦4.5μm、≦4.6μm、≦4.7μm、≦4.8μm、または≦4.9μmなどの≦5μmの平均サイズを有する。したがって、油滴(O-)の選択されたサイズによって提供される利点は、得られるO/Wエマルションの安定性が維持されることである。選択されたサイズの油滴(O)の引き続く利点は、得られるO/W/Oエマルションの安定性が提供されることである。選択されたサイズの油滴(O)の別の利点は、O/W/Oエマルションの調製を促進するのに必要であるO/Wエマルションが形成されることである。
【0067】
内油相として選択された油は、次に水/乳化剤混合物と混合され、得られた混合物は、O/Wエマルションが形成するように高剪断混合を施される。その他の実施形態では、乳化剤が、熱水(例えば、上で定義されるような温度の)および内油相油として選択された油に添加され、得られた混合物は高度剪断混合を施される。油/乳化剤および水/乳化剤混合物は、次に組み合わせられて、O/Wエマルションを形成するように高剪断混合を施される。
【0068】
O/W/Oエマルションの形成は、O/Wエマルションを外油相として選択された油に分散させ、十分な時間混合することによって達成され得る。一実施形態では、図3に示されるように、得られたO/W/Oエマルション(O/水/O)中の油/水滴は、≦5.0μm、≦5.5μm、≦6.0μm、≦6.5μm、≦7.0μm、≦7.5μm、≦8.0μm、≦8.5μm、≦9.0μm、または≦9.5μmなどの約≦10μmの平均サイズを有する。したがって、本発明者らの手によって、得られたO/W/Oエマルション中の選択されたサイズの水中油型液滴、特にエマルション中の水中油型(O/W)液滴のカプセル化によって、利点が提供されていることが示されている。選択されたサイズの水中油型液滴によって提供されてもよい別の利点は、最終的O/W/Oエマルションの物理化学的安定性もまた確実になることである。一実施形態では、O/W/Oエマルション中の油/水滴のサイズは、水中油型液滴のカプセル化を確実にするように選択され、その結果、最終的O/W/Oエマルションの物理化学的安定性は損なわれない。
【0069】
必要な混合時間は、光学顕微鏡を用いて定期的にエマルションを観察することによって、またはエマルションの粘度をモニターすることによって判定されてもよい。当業者は、O/W/Oエマルションを水中油型液滴が外油相に分散したエマルションとして認識できる。混合は、パドルミキサーおよび同心円状リング型ミキサーなどであるが、これに限定されるものではない、機械的ミキサーを用いて、例えば約700rpmなどの、約100rpm~10000rpmの速度で行われてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、O/W/Oエマルションは、O/Wエマルションと、外油相として選択された油とを等量混合(質量基準)し、高温(例えば約50℃)で高速ミキサー(例えば約6000rpm)によって混合することで、相反転によって形成される。ひとたび粗エマルションが形成したら、撹拌を遅くし、エマルションを冷却する(例えば約-5℃の温度)。エマルションの粘度は、相転移の指標となる、例えば1000cpsの低下などの急激な低下についてモニタリングされる。
【0071】
代案としては、O/W/Oエマルションは、等量(質量基準)のO/Wエマルションと、外油相として選択された油および1種または複数種の乳化剤を含んでなる均質混合物とを混合することによって形成されてもよい。成分は、高温(例えば約50℃)で高速ミキサー(例えば約6000rpm)を用いて混合される。ひとたび粗エマルションが形成したら、撹拌を遅くし、エマルションを冷却する(例えば約-5℃の温度)。エマルションは、相転移の指標となる粘度の急激な低下についてモニタリングされる。
【0072】
一実施形態では、相反転または複数の均質化によって調製されたO/W/Oエマルションは、複数の均質化ステップを経て形成されてもよい。各均質化ステップは、剪断速度、均質化圧力またはその双方において変動されてもよい。各均質化ステップで、剪断速度および/または均質化圧力が変動されてもよく、その変動は、均質化が実施されるエネルギーの変動をもたらす。一実施形態では、均質化はエネルギーの高投入によって実施され得る。別の実施形態では、均質化はエネルギーの低投入によって実施され得る。一実施形態では、O/W/Oエマルションは、剪断速度が変動する複数の均質化ステップを経て形成される。別の実施形態では、O/W/Oエマルションは、均質化圧力が変動する複数の均質化ステップを経て形成される。
【0073】
別の実施形態では、O/W/Oエマルションは、剪断速度および均質化圧力が変動する複数の均質化ステップを経て形成される。一実施形態では、水中油型エマルションは、水相中の内油相の均質化によって形成される。別の実施形態では、水中油型エマルションは、高HLB乳化剤の存在下における、水相中の内油相の均質化によって形成される。別の実施形態では、水中油型エマルションは、エネルギーの高投入によって、高HLB値乳化剤の存在下における、内油相と水相との均質化によって形成される。一実施形態では、エネルギーの高投入は、約200~約600バールの均質化圧力を意味する。
【0074】
O/W/Oエマルションが水中油型エマルションから形成されてもよい一実施形態では、水中油型エマルションは高圧で均質化される。O/W/Oエマルションが水中油型エマルションから形成されてもよい一実施形態では、水中油型エマルションが均質化され≦2μmの平均サイズを有する油滴が生成する。一実施形態では、水中油型エマルションは、逐次均質化ステップによって製造されてもよい。一実施形態では、水中油型エマルションは、第1の均質化ステップによって製造されてもよく、高HLB値乳化剤を含んでなる水相と、低HLB値乳化剤を含んでなる油相とが合わされて粗エマルションが製造されてもよい。一実施形態では、水中油型エマルションは、第2の均質化ステップによって製造されてもよく、第1の均質化ステップの結果として製造された粗エマルションがさらに均質化されてもよい。一実施形態では、水中油型エマルションが製造される第2の均質化ステップは、高圧で実施されてもよい。一実施形態では、高圧で実施される第2の均質化ステップが、水中油型エマルションを生じてもよい。一実施形態では、高圧で実施される第2の均質化ステップは、≦5μmの平均油滴サイズの水中油型エマルションを生じてもよい。
【0075】
これらの実施形態に関して、均質化には、高HLB値乳化剤を含んでなる構成要素が関与してもよい。一実施形態では、高HLB値乳化剤は、10を超えるHLB値を有する。これらの実施形態に関して、均質化には、低HLB値乳化剤を含んでなる構成要素が関与してもよい。一実施形態では、低HLB値乳化剤は10未満のHLB値を有する。
【0076】
一実施形態では、O/W/Oエマルションは、低HLB値乳化剤の存在下で、外油相中の内部水中油型エマルションの分散を経て形成されてもよい。別の実施形態では、O/W/Oエマルションは、エネルギーの低投入によって、低HLB値乳化剤の存在下で、外油相中の内部水中油型エマルションの分散を経て形成されてもよい。一実施形態では、エネルギーの低投入は、約700rpmの剪断速度を意味する。
【0077】
一実施形態では、O/W/Oエマルションは、外油相を有する水中油型エマルションの均質化を経て形成されてもよい。一実施形態では、O/W/Oエマルションは、低HLB値乳化剤の存在下で、外油相中の水中油型エマルションの均質化を経て形成されてもよい。一実施形態では、O/W/Oエマルションは、高圧または高速における、水中油型エマルションと外油相との均質化を経て形成されてもよい。一実施形態では、高圧における水中油型エマルションと外油相との均質化が、粗二重エマルションを生じてもよい。一実施形態では、O/W/Oエマルションは、粗二重エマルションの均質化を経て形成されてもよい。一実施形態では、O/W/Oエマルションは、水中油型エマルションと外油相との均質化を経て得られた、粗二重エマルションの均質化を経て形成されてもよい。一実施形態では、O/W/Oエマルションは、粗二重エマルションの均質化を経て形成されてもよい。一実施形態では、O/W/Oエマルションは、高圧における粗二重エマルションの均質化を経て形成されてもよい。一実施形態では、高圧における粗二重エマルションの均質化は、≦10μmの平均液滴サイズを有するO/W/Oエマルションを生じてもよい。一実施形態では、高圧における粗二重エマルションの均質化は、≦10μmの平均水中油型液滴サイズを有するO/W/Oエマルションを生じてもよい。二重エマルションと混合される油は、典型的に、1種または複数種の食用油を含んでなり、それからなり、またはそれから本質的になる。適切な食用油の例としては、米糠油、コーンオイル、大豆油、キャノーラ油、パーム油、ナタネ油、ヒマワリ油、落花生油、ココナツ油、オリーブ油、紅花油、亜麻仁油、グレープシードオイル、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、綿実油、およびそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0078】
二重エマルションと混合される油は、脂溶性ビタミンなどの乳児用調製乳に一般に含まれる、追加的成分をさらに含んでなってもよい。
【0079】
方法は、LCPUFA含有油混合物を水相と混合してO/Wエマルションを与え、引き続いてO/Wエマルションを噴霧乾燥するステップをさらに含んでなってもよい。
【0080】
図1は、本発明による方法の一例を示す。二重エマルション(O/W/O)は、例えば実施例1で詳述されるようにして、タンク(1)内で調製される。タンクは、バルク食用油相への注入の前に、相反転を維持するための温度、および任意に約50℃~80℃の温度に保持されてもよい。O/W/Oエマルションは、バルク油タンク(2)に収容されているバルク担体油(すなわち、食用油)に添加される。担体油へのO/W/Oエマルションの流速は、約10kg/時間~40kg/時間の範囲であってもよい。混合エマルション/バルク担体油の混合タンク(3)への流速は、エマルション中で必要な担体食用油に対するO/W/Oエマルションの濃度次第で、約300~700kg/時間の速度に増加させてもよい。ビタミンおよび糖類などのさらなる成分(甘味料またはエネルギー源として使用されてもよい)が、混合タンク(3)に添加されてもよい。また、ミキサー(3)には、O/W/Oエマルションとの混合前に、追加的な処理が必要な成分が添加されてもよい。これは、ミキサー(3)に入れる前の混合(4)、低温殺菌(5)、直接蒸気注入(6)、および蒸発(7)によって処理され得る、その他の原材料を含んでもよい。次に(3)の混合物は、(8)、(9)、および(10)を含む二重均質化システムを通じて処理され、次に噴霧乾燥機(11)に移し得る。その他のプロセスパラメータとしては、流動床手段(12)を通じた粒子分離、湿潤剤の噴霧またはその他の成分の添加、および得られた調合物粉末(13)の貯蔵が挙げられる。
【0081】
本発明の方法によって形成されたO/W/Oエマルションは、当該技術分野で公知の従来の手段によって分析されて、二重エマルションの形成が確認されてもよい。構造解析をはじめとする適切な分析手段は当業者に知られており、分析は日常的な実験のみを用いて行われてもよい。適切な分析手段としては、例えば、その内容が本明細書に参照により援用される、”Characterisation of a double emulsion system(oil-in-water-in oil emulsion)with low solid fats:microstructure”F.Jahaniaval et al.JOACS,Vol.80,No.1(2003),pages 25 to 31に記載されるような、低温SEM(走査型電子顕微鏡検査)、TEM(透過型電子顕微鏡検査)および共焦点走査レーザー顕微鏡検査が挙げられる。
【0082】
本発明の態様は、本発明の方法によって製造される場合、栄養調合物を提供する。栄養調合物は、例えば、栄養補給剤または乳児用調製乳であってもよく、または栄養補給剤または乳児用調製乳として使用されまたはその中で使用されてもよい。
【0083】
栄養調合物は、1種または複数種の抗酸化剤または保存料をさらに含んでなってもよい。適切な抗酸化剤は、当業者に良く知られており、その塩および誘導体を含む、緑茶抽出物、トコフェロール、トコトリエノール、およびアスコルビン酸が挙げられるが、これに限定されるものではない。栄養調合物は、水溶性抗酸化剤および/または脂質可溶性抗酸化剤を含んでなってもよい。一実施形態では、栄養調合物は、アスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルビン酸塩、および脂質可溶性アスコルビン酸誘導体、任意選択的にアスコルビン酸の脂肪酸エステル、任意選択的にパルミチン酸アスコルビルを含んでなってもよい。
【0084】
本発明の栄養調合物は、1種または複数種の固結防止剤をさらに含んでなってもよい。本発明の栄養調合物と適合性の固結防止剤は、当業者に良く知られており、リン酸三カルシウムなどのリン酸カルシウム、そして炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、および二酸化ケイ素を含んでなってもよい。
【0085】
本発明の組成物は、例えば、着香剤、着色剤、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、キレート化剤などの追加的成分をさらに含んでなってもよい。例えばDHAおよびAAを含んでなる本発明の栄養調合物が、乳児用調製乳に組み込まれる場合、得られる配合は、現在のCODEX標準規格を満たし(またはそれより優れ)ながら、有益なレベルのDHAおよび/またはAAを提供できる。
【実施例
【0086】
本発明を、ここで単なる例証として、以下の実施例に関してより詳細に説明する。実施例は、本発明を例証するのに役立つことが意図され、本明細書全体を通じた記載の普遍性を限定するものと決して解釈されるべきでない。
【0087】
実施例1.相反転によるO/W/Oエマルションの調製
【0088】
【表1】
【0089】
方法:
油相A
1.水を50~60℃に加熱し、高HLB値乳化剤Aを5分間にわたり完全に溶解するまで添加する(ステップ1)
2.その完全性を確実にするために油を65℃まで温める。低HLB値乳化剤Bを油に添加し、高剪断ミキサーを用いて混合し、乳化剤Bを分解する。油を80℃に加熱し、乳化剤Bを熱融解する。
3.50℃に冷却する。
4.油相を緩慢にスラリーに注ぎ(ステップ1)、15000rpmの高剪断で5分間混合する。
5.油相Bを調製する間、温度を50℃で一定に保つ。
【0090】
油相B
1.水を50~60℃に加熱し、高HLB値乳化剤Aを5分間にわたり完全に溶解するまで添加する(ステップ1)
2.その完全性を確実にするために油を65℃まで温める。低HLB値乳化剤Bを油に添加し、高剪断ミキサーを用いて混合し、乳化剤Bを分解する。油を80℃に加熱し、乳化剤Bを熱融解する。
3.50℃に冷却する。
4.油相を緩慢にスラリーに注ぎ(ステップ1)、15000rpmの高剪断で5分間混合する。
5.油相Aを調製する間、温度を50℃で一定に保つ。
【0091】
O/W/Oエマルション
1.等量の油相Aと油相Bを取って、45~50℃で保持する。
2.パドルミキサー(600rpm)を用いて5分間混合し、粗エマルションを形成する。
3.低剪断速度(パドルミキサー、300rpm)下で連続的に混合しながら、粗エマルションを-5℃の水浴(塩氷浴)中に入れる。
4.ベースラインおよび5分間隔で1時間にわたり、エマルション粘度をモニターする。粘度の急激な低下は、相転移を示す。
【0092】
実施例2.複数の均質化によるO/W/Oエマルションの調製
【0093】
【表2】
【0094】
方法
/Wエマルション
1.水相を50~60℃に加熱し、高HLB値乳化剤を5分間にわたり完全に溶解するまで添加する。
2.その完全性を確実にするために65℃まで内油相(O相)を温め、低HLB値乳化剤Bを油に添加し、油を80℃に加熱して乳化剤Bを熱融解する。
3.50℃に冷却する。
4.混合しながら内油相を緩慢に水相に注ぎ、粗エマルションを調製する。
5.≦5μmの懸濁油滴の平均サイズを有する微細なO/Wエマルションのために、高圧ホモジナイザーを用いて粗エマルションをさらに均質化する。
6.温度を50℃で一定に保つ。
【0095】
/W/Oエマルション
1.その完全性を確実にするために65℃まで外油相(O相)を温め、低HLB値乳化剤を油に添加し、油を80℃に加熱して乳化剤Bを熱融解する。
2.50°Cに冷却する。
3.混合しながらO/Wエマルションを緩慢に滴下して外油相(O相)に添加し、粗二重エマルションを調製する。
4.高圧ホモジナイザーを用いて粗エマルションをさらに均質化し、≦10μmの懸濁O/W液滴の平均サイズを有する微細二重エマルション(O/W/Oエマルション)を得る。
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
【表7】
【0101】
【表8】
【0102】
【表9】
【0103】
誘導期間および勾配を用いた酸化安定性の判定
ML Oxipresは、油および脂肪を含有する不均一製品に対する抗酸化剤の効率を試験するために伝統的に用いられる、酸素ボンベ法の修正である。ML Oxipresは、不均一製品中の油および脂肪の酸化をモニターし、油および脂肪の酸化安定性を監視するためにも用いられ得る。この装置は、時間経過と共に酸素吸収のグラフを示し、誘導期間の終了はかなり明瞭で鋭い変曲点である(図2を参照されたい)。誘導期間は、ブロックヒーター内に圧力容器を置いてから、所定の温度/圧力の組み合わせにおける破壊点までの経過時間(時間単位)である。「破壊点」までの時間が長くなればなるほど、油、または油を含む異質の不均一製品(例えば、マイクロカプセル化サンプル)は、より安定している。
【0104】
本発明の調合物は、ML Oxipres(Mikrolab Aarhus A/S Denmark)によって分析され、その他の方法によって調製された調合物と酸化安定性が比較されてもよい。
【0105】
エマルション形態
実施例2に従って調製したO/W/Oエマルションの液滴の形態は、図4に示される。最初の均質化中に、HLB値がより高い乳化剤を用いて内油相(O)を水相に封入し、図4Aに示される最初の水中油型エマルションを調製した。引き続いて、HLB値がより低い乳化剤の存在下で、分散相として、O/Wエマルションが外部油連続相(O)内で再度均質化させ、図4Bに示されるO/W/Oエマルションを製造した。得られたO/W/Oエマルション液滴の形態は、顕微鏡を用いて明確に可視化され得る(図4C)。
図1
図2
図3
図4