(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】センサーデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/04 20060101AFI20221102BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20221102BHJP
G01N 27/414 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G01N27/04 Z
G01N27/00 J
G01N27/414 301V
(21)【出願番号】P 2019534131
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(86)【国際出願番号】 IB2017058181
(87)【国際公開番号】W WO2018116186
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-15
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】517335721
【氏名又は名称】ザ・ニュージーランド・インスティチュート・フォー・プラント・アンド・フード・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】ムルガタス,タニハイチェルバン
(72)【発明者】
【氏名】カードカ・ロシャン
(72)【発明者】
【氏名】クラリセク,アンドリュー・ブラディミール
(72)【発明者】
【氏名】カーラハー,コルム
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ハン・ユエ
(72)【発明者】
【氏名】プランク,ナタリー・オリビア・ビクトリア
(72)【発明者】
【氏名】トラバッセジク,ジャドランカ
(72)【発明者】
【氏名】アイデミール,ニハン
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02848929(EP,A1)
【文献】特表平11-511564(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122338(WO,A1)
【文献】特開2001-91491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 - C12M 3/10
C12N 1/00 - C12N 15/90
C12Q 1/00 - C12Q 3/00
G01N 27/00 - G01N 27/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と電気的に連通する
精製された昆虫の匂い物質受容体
OrX
サブユニットを含むセンサーデバイスであって、該基板の電気的な特徴における変化を検出するように設計されている、上記センサーデバイス。
【請求項2】
前記電気的な特徴における変化が、前記
精製されたOrX
サブユニットへの分析物の結合に起因する、請求項1に記載のセンサーデバイス。
【請求項3】
前記基板の電気的な特徴における変化を検出することによって、前記
精製されたOrX
サブユニットへの
分析物の結合を検出することが可能である、請求項1または2に記載のセンサー
デバイス。
【請求項4】
前記
精製されたOrX
サブユニットが、
分析物の結合に応答してコンフォメーション変化を受けることが可能な形態で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載のセンサー
デバイス。
【請求項5】
前記
精製されたOrX
サブユニットが、膜模倣物に存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のセンサー
デバイス。
【請求項6】
膜模倣物が、リポソーム、アンフィポール、洗剤ミセル、ナノベシクル、脂質二重層、ナノディスク、および界面活性剤から選択される、請求項5に記載のセンサー
デバイス。
【請求項7】
前記分析物の存在を、1×10
-3M未満の濃度で検出することができる、請求項3に記載のセンサー
デバイス。
【請求項8】
前記基板が、電極、半導体材料、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、酸化物、ドープシリコン、導電性ポリマー、および共振器要素の少なくとも1つから選択されるか、またはそれで構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のセンサー
デバイス。
【請求項9】
前記電気的な特徴が、導電率、抵抗、複合抵抗、インピーダンス、電気化学インピーダンス、電流の流れ、および交流電場により誘導された振動の共振振動数の少なくとも1つから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のセンサー
デバイス。
【請求項10】
分析物を検出する方法であって、
a)請求項1~9のいずれか一項に記載のセンサー
デバイスにおいて、分析物を
精製された昆虫の匂い物質受容体
OrX
サブユニットに結合させる工程、
b)基板の電気的な特徴における変化を検出する工程
を含み、
該基板の電気的な特徴における変化は、該分析物の検出を示す、上記方法。
【請求項11】
環境における分析物の存在を検出する方法であって、
a)請求項1~9のいずれか一項に記載のセンサー
デバイスを、分析物を含有する環境に曝露する工程、
b)該センサー
デバイスにおいて、該分析物を
精製された昆虫の匂い物質受容体
OrX
サブユニットに結合させる工程
c)基板の電気的な特徴における変化を検出する工程
を含み、
該基板の電気的な特徴における変化は、該環境における該分析物の存在を示す、上記方法。
【請求項12】
センサーデバイスを製造する方法であって、
精製された昆虫の匂い物質受容体
OrX
サブユニットとセンサーデバイスの基板との間に電気的な連通を確立する工程を含み、該センサーデバイスは、該基板の電気的な特徴における変化を検出するように設計されている、上記方法。
【請求項13】
基板と電気的に連通する
精製された昆虫の匂い物質受容体
OrX
サブユニットを含むセンサーデバイスコンポネント。
【請求項14】
請求項13に記載の
センサーデバイスコンポネントを含むセンサーデバイスであって、基板の電気的な特徴における変化を検出するように設計されている、上記センサーデバイス。
【請求項15】
センサーデバイスのコンポネントを製造する方法であって、
精製された昆虫の匂い物質受容体
OrX
サブユニットと基板との間に電気的な連通を確立する工程を含む、上記方法。
【請求項16】
センサーデバイスを組み立てる方法であって、請求項13に記載のセンサーデバイスコンポネントを、該センサーデバイスに付与することを含み、組み立てられたセンサーデバイスは、基板の電気的な特徴における変化を検出するように設計されている上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析物を検出するためのセンサーおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性有機化合物(VOC)や可溶性有機化学物質などの分析物(analytes)のリアルタイム検出は、健康状態や環境のモニタリング、加えて食品安全性や水の品質にとって重要な問題であり、手ごろで迅速な分析物センサーを開発しようとうする強い動機になっている。
【0003】
便利な、高感度の、特異的な分析物センサーは、食物の品質/安全性(風味、熟成、汚染、および腐敗)、バイオセキュリティー(有害生物および疾患)、環境のモニタリング(有害汚染物質)、医療診断(例えば呼気診断)およびセキュリティー(違法な化合物および爆発物)に関連する分析物をモニターすることを含む多様な用途を有するであろう。
【0004】
昆虫嗅覚受容体(olfactory receptor, OR)は、様々な天然および合成化学物質のなかでも特に、VOCを区別することができる。昆虫ORは、ヘテロメリックなリガンド開口型カチオンチャネル(heteromeric ligand-gated cation channels)として機能し(
図1)、Orcoおよび匂い物質特異的調整受容体(odorant-specific tuning receptor)(OrX)として公知の必須のコレセプター(co-receptor)で構成される。
【0005】
昆虫ORは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)として機能する哺乳類やCaenorhabditis elegansのORとは構造的にも機能的にも大きく異なっている。
多くの著者が、アフリカツメガエル卵母細胞2、昆虫細胞株3、およびヒトHEK293細胞4を使用する昆虫ORの機能1に関する細胞ベースのアッセイを記載している。しかしながらそれらの用途は、主として昆虫ORの化合物の特異性を同定することに限定され、その一部は、害虫の行動制御のための活性化および阻害化合物を同定するのに使用される5。
【0006】
多数の公開された特許文書が、昆虫OR細胞アッセイを記載している6~11。いずれも、害虫の制御のための新規の活性化および阻害化合物に関するアッセイへのアプローチを網羅したものである。細胞ベースのセンサーに関して、2つの公報12、13は、細胞ベースのセンサー様式における昆虫ORを発現する細胞株の使用を記載している。一方の公報は、2つの電極電圧固定法を使用する、匂い物質を検出するための昆虫ORでトランスフェクトしたアフリカツメガエル卵母細胞の使用を実証し12、他方13は、フェロモン受容体を発現する細胞株を、ガラス製マイクロ流体チップ(glass microfluidic chip)上で成長させること、および蛍光顕微鏡を使用したカルシウムイメージングによりフェロモン結合を検出することを記載している。
【0007】
上述した昆虫ORベースのシステム/センサーは全て、昆虫OrXと、それに関連するOrcoとを共に含む。
市販されているポータブルの揮発物質感知技術は、電子鼻または化学電子鼻に限定されているが、その性能は、感度および特異性に関して実質的に昆虫の嗅覚器系に劣る。さらに、出願人が知る限り、上記で論じられた昆虫ORベースのシステムに基づく市販品はない。イオン移動度分光計や質量分析計などの他の技術は、電子鼻より改善された感度および特異性を提供するが、入手に非常に費用がかかり、使用者の広範な訓練を必要とし、可動性が極めて低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1つの昆虫受容体を利用する改善されたセンサーデバイスを提供すること、および/または公衆に有用な選択肢を少なくとも提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、センサーのディスプレイ表面/基板にカップリングされる昆虫OrXを含むセンサーデバイスを提供する。出願人が知る限り、これは、精製された昆虫OrXがセンサーディスプレイ表面/基板上に機能的に固定された最初のことである。
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、新規のセンサーは、これまでに使用されてきた昆虫ORベースのシステムに比べて極めて顕著な感度の増加を提供することを示した。さらに驚くべきことに、本発明者らは、新規のセンサーは、Orcoの非存在下で機能的であることを示した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
センサーデバイス
第1の形態において、本発明は、基板と電気的に連通する昆虫の匂い物質受容体(odorant receptor)(OrX)を含むセンサーデバイスであって、基板の電気的な特徴における変化を検出するように設計されている、上記センサーデバイスを提供する。
【0012】
一実施態様において、電気的な特徴における変化は、OrXと分析物との相互作用に起因する。
さらなる実施態様において、相互作用は、OrXへの分析物の結合である。
【0013】
さらなる実施態様において、分析物は、OrXに相補的(complementary to)である。
さらなる実施態様において、分析物とOrXとの相互作用は、特異的(specific)である。
【0014】
分析物の検出
したがって、一実施態様において、センサーは、基板の電気的な特徴における変化を検出することによって、OrXへの分析物の結合を検出することが可能である。
【0015】
さらなる実施態様において、センサーは、昆虫OrXに結合する分析物の環境中での存在を検出することが可能である。
好ましくは、検出は、分析物に特異的である。
【0016】
電気的な連通
一実施態様において、電気的な連通は、受容体が基板の電気的な特徴に影響を与えることができることを意味する。
【0017】
さらなる実施態様において、分析物とOrXとの相互作用は、OrXにおけるコンフォメーション変化をもたらす。
さらなる実施態様において、OrXにおけるコンフォメーション変化は、基板の電気的な特徴における変化をもたらす。
【0018】
基板へのOrXのカップリング
さらなる実施態様において、OrXは、基板にカップリングされる。
OrXの存在
さらなる実施態様において、OrXは、分析物との相互作用に応答してコンフォメーション変化を受けることが可能な形態で存在する。
【0019】
さらなる実施態様において、OrXは、膜模倣物(membrane mimic)に存在する。
膜模倣物は、リポソーム、アンフィポール(amphipole)、洗剤ミセル、ナノベシクル、脂質二重層、およびナノディスクから選択することができる。
【0020】
好ましくは、膜模倣物は、人工物である。
またOrXは、界面活性剤に存在していてもよく、界面活性剤は、イオン性であってもよいし、または非イオン性であってもよい。
【0021】
検出の感度
一実施態様において、センサーは、1×10-3M未満、好ましくは1×10-3M未満、より好ましくは1×10-4M未満、より好ましくは1×10-5M未満、より好ましくは1×10-6M未満、より好ましくは1×10-7M未満、より好ましくは1×10-8M未満、より好ましくは1×10-9M未満、より好ましくは1×10-10M未満、より好ましくは1×10-11M未満、より好ましくは1×10-12M未満、より好ましくは1×10-13M未満、より好ましくは1×10-14M未満、より好ましくは1×10-15M未満、より好ましくは1×10-16M未満、より好ましくは1×10-17M未満、より好ましくは1×10-18M未満の濃度で分析物の存在を検出することができる。
【0022】
センサーデバイスにおけるOrcoの欠如
さらなる実施態様において、センサーは、昆虫の匂い物質コレセプター(insect odorant co-receptor)(Orco)を含まない。
【0023】
基板
一実施態様において、基板は、電極、半導体材料、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、酸化物、ドープシリコン(doped silicon)、導電性ポリマー、共振器要素(resonator component)の少なくとも1つから選択されるか、またはそれで構成される。
【0024】
一実施態様において、共振器要素は、圧電材料、少なくとも1種の圧電性結晶、水晶(quartz crystal)であるかまたはそれで構成される。好ましい実施態様において、共振器要素は、水晶共振子(quartz crystal resonator)である。
【0025】
電気的な特徴
一実施態様において、電気的な特徴は、導電率(conductivity)、抵抗、複合抵抗(complex resistance)、インピーダンス、電気化学インピーダンス、電流の流れ、および交流電場により誘導された振動の共振振動数の少なくとも1つから選択される。
【0026】
検出器要素
さらなる実施態様において、センサーは、基板の電気的な特徴における変化を測定する検出器要素を含む。
【0027】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)センサーデバイス
センサーデバイスの一実施態様において、基板は、電気化学セルの作用電極である。
一実施態様において、電気化学セルは、作用電極に加えて、対電極をさらに含む。
【0028】
さらなる実施態様において、電気化学セルは、参照電極をさらに含む。
さらなる実施態様において、電気化学セルは、ポテンシオスタットをさらに含む。
さらなる実施態様において、電気的な特徴は、電気化学インピーダンスである。
【0029】
したがって、一実施態様において、センサーデバイスは、電気化学セルの作用電極と電気的に連通するOrXを含み、センサーデバイスは、作用電極の電気化学インピーダンスにおける変化を検出するように設計されている。
【0030】
EISセンサーデバイスの作用電極
一実施態様において、作用電極は、金で構成されるか、または金でコーティングされている。
【0031】
EISセンサーデバイスにおけるOrXの存在
OrXは、上述したような膜模倣物に存在していてもよい。
一実施態様において、OrXは、リポソームに存在する。
【0032】
さらなる実施態様において、OrXは、人工リポソームに存在する。
さらなる実施態様において、OrXは、脂質二重層に存在する。
さらなる実施態様において、OrXは、人工脂質二重層に存在する。
【0033】
さらなる実施態様において、OrXは、ナノディスクに存在する。
EISセンサーデバイスにおける電極への昆虫OrXのカップリング
一実施態様において、昆虫OrXは、作用電極にカップリングされる。
【0034】
さらなる実施態様において、昆虫OrXは、リンカー分子を介して作用電極にカップリングされる。
さらなる実施態様において、リンカー分子は、OrXと電極との電気的な連通が可能になる程度に短い。
【0035】
一実施態様において、リンカー分子は、電極が受容体から分離することを防ぐ程度に短い。
さらなる実施態様において、リンカー分子は、16-メルカプトヘキサデカン酸(16-MHDA)、6-メルカプトヘキサデカン酸(Mecaptohexadecanoic acid)(6-MHDA)および6-メルカプトヘキサン酸(MHA)から選択される。
【0036】
好ましい実施態様において、リンカー分子は、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)である。
さらなる実施態様において、リンカーは、自己組織化単分子(SAM)層の一部である。
【0037】
したがって、一実施態様において、昆虫OrXは、リンカー分子で構成されるSAM層を介して電極にカップリングされる。
好ましい実施態様において、昆虫OrXは、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)リンカー分子で構成されるSAM層を介して電極にカップリングされる。
【0038】
EISセンサーにおける分析物の検出
さらなる実施態様において、センサーは、昆虫OrXへの分析物の結合を検出することが可能である。
【0039】
さらなる実施態様において、センサーは、環境において、昆虫OrXに結合する分析物の存在を検出することが可能である。
好ましくは、検出は、分析物に特異的である。
【0040】
さらなる実施態様において、昆虫OrXへの分析物の結合は、作用電極の電気化学インピーダンスを変化させる。
好ましい実施態様において、作用電極の電気化学インピーダンスは、昆虫OrXに分析物が結合すると減少する。
【0041】
好ましい実施態様において、センサーによって検出された分析物の量または昆虫OrXへの結合が変化すると、作用電極の電気化学インピーダンスは、減少する。
検出器要素
さらなる実施態様において、センサーは、検出器要素を含む。さらなる実施態様において、検出器要素は、作用電極の電気化学インピーダンスにおける変化を検出するか、または測定する。
【0042】
半導体ベースのセンサーデバイス
センサーデバイスの一実施態様において、基板は、半導体材料である。あらゆる好適な半導体材料を使用することができる。
【0043】
センサーデバイスの一実施態様において、半導体材料は、グラフェン、酸化物、ドープシリコン、導電性ポリマー、およびカーボンナノチューブ(CNT)の少なくとも1つであるか、またはそれで構成される。
【0044】
カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT-FET)センサーデバイス
一実施態様において、基板は、カーボンナノチューブ(CNT)で構成される。カーボンナノチューブ(CNT)は、単壁、二重壁もしくは多重壁、またはそれらの組合せであってもよい。好ましい実施態様において、カーボンナノチューブ(CNT)は、単壁である。
【0045】
さらなる実施態様において、基板は、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT-FET)装置のチャネルを形成する。
一実施態様において、CNT-FET装置は、ソース電極およびドレイン電極を含む。
【0046】
さらなる実施態様において、チャネルは、ソース電極とドレイン電極との間に見出されるか、またはそこに形成される。
さらなる実施態様において、チャネルは、ソース電極およびドレイン電極と電気的に連通する。
【0047】
したがって、一形態において、本発明は、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT-FET)装置のチャネルにおいて、少なくとも1つのカーボンナノチューブと電気的に連通する昆虫の匂い物質受容体(OrX)を含むセンサーデバイスを提供する。
【0048】
さらなる実施態様において、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT-FET)装置はまた、ゲート電極で構成される。
CNT-FETセンサーデバイスにおけるOrXの存在
OrXは、上述したような膜模倣物に存在していてもよい。
【0049】
好ましい実施態様において、OrXは、ナノディスクに存在する。
カーボンナノチューブ(CNT)へのOrXのカップリング
一実施態様において、OrXは、チャネルにおいて、カーボンナノチューブにカップリングされる。
【0050】
さらなる実施態様において、カップリングにより、OrXがカーボンナノチューブと電気的に連通した状態になる。
昆虫OrXの機能化(官能基化、functionalisation)
一実施態様において、昆虫OrXは、CNTへのカップリングが容易になるように機能化される。
【0051】
一実施態様において、昆虫OrXは、his-タグで機能化される。
それゆえに、一実施態様において、OrXは、his-タグを含む。
好ましくは、his-タグは、OrXタンパク質のN末端にある。
【0052】
CNTの機能化
一実施態様において、CNTは、昆虫OrXへのカップリングが容易になるように機能化される。
【0053】
さらなる実施態様において、CNTは、ニッケル(Ni)-ニトリロ三酢酸(NTA)で機能化される。
カップリング
さらなる実施態様において、OrXは、his-タグとの親和性結合を介してCNTにカップリングされる。
【0054】
したがって、一実施態様において、his-タグを有するOrxは、Ni-NTAで機能化されたCNTに結合する。
CNT-FETセンサーにおける分析物の検出
さらなる実施態様において、センサーは、昆虫OrXへの分析物の結合を検出することが可能である。
【0055】
さらなる実施態様において、センサーは、環境において、昆虫OrXに結合する分析物の存在を検出することが可能である。
好ましくは、分析物の検出は、特異的である。
【0056】
さらなる実施態様において、昆虫OrXへの分析物の結合は、CNT-FET装置におけるソース-ゲイン電流を変化させる。
好ましい実施態様において、ソース-ゲイン電流は、昆虫OrXに分析物が結合すると減少する。
【0057】
好ましい実施態様において、センサーによって検出される分析物の量または昆虫OrXへの結合が増加するにつれて、ソース-ゲイン電流は、より減少する。
検出器要素
さらなる実施態様において、センサーは、検出器要素を含む。さらなる実施態様において、検出器要素は、ソース-ドレイン電流における変化を検出または測定する。
【0058】
水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーデバイス
センサーデバイスの一実施態様において、基板は、水晶振動子マイクロバランスにおける共振器要素である。
【0059】
一実施態様において、共振器要素は、圧電材料、少なくとも1種の圧電性結晶、および少なくとも1種の水晶振動子であるかまたはそれで構成される。好ましい実施態様において、共振器要素は、水晶共振子である。
【0060】
一実施態様において、水晶振動子は、金でコーティングされている。
電気的な特徴
一実施態様において、電気的な特徴は、共振器要素に適用された交流電場により誘導された振動の共振振動数である。
【0061】
QCMセンサーデバイスの電極
一実施態様において、共振器要素は、その対向する2つの側に電極が取り付けられている。
【0062】
一実施態様において、電極は、金で構成されるか、または金でコーティングされている。
QCMセンサーデバイスにおけるOrXの存在
OrXは、上述したような膜模倣物中に存在していてもよい。
【0063】
一実施態様において、OrXは、リポソームに存在する。
さらなる実施態様において、OrXは、人工リポソームに存在する。
さらなる実施態様において、OrXは、脂質二重層に存在する。
【0064】
さらなる実施態様において、OrXは、人工脂質二重層に存在する。
好ましい実施態様において、OrXは、リポソーム中に存在する。
QCMセンサーデバイスにおける共振器要素への昆虫OrXのカップリング
一実施態様において、昆虫OrXは、共振器要素にカップリングされる。
【0065】
さらなる実施態様において、昆虫OrXは、リンカー分子を介して共振器要素にカップリングされる。
さらなる実施態様において、リンカー分子は、OrXと共振器要素との電気的な連通が可能になる程度に短い。
【0066】
一実施態様において、リンカー分子は、共振器要素が受容体から分離することを防ぐ程度に短い。
さらなる実施態様において、リンカー分子は、16-メルカプトヘキサデカン酸(16-MHDA)、6-メルカプトヘキサデカン酸(6-MHDA)および6-メルカプトヘキサン酸(MHA)から選択される。
【0067】
好ましい実施態様において、リンカー分子は、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)である。
さらなる実施態様において、リンカーは、自己組織化単分子層(SAM)の一部である。
【0068】
したがって、一実施態様において、昆虫OrXは、リンカー分子で構成されるSAM層を介して共振器要素にカップリングされる。
好ましい実施態様において、昆虫OrXは、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)リンカー分子で構成されるSAM層を介して共振器要素にカップリングされる。
【0069】
QCMセンサーを用いた分析物の検出
さらなる実施態様において、センサーは、昆虫OrXへの分析物の結合を検出することが可能である。
【0070】
さらなる実施態様において、センサーは、環境において、昆虫OrXに結合する分析物の存在を検出することが可能である。
好ましくは、検出は、分析物に特異的である。
【0071】
さらなる実施態様において、昆虫OrXへの分析物の結合は、共振器要素に適用された交流電場により誘導された共振振動数を変化させる。
一実施態様において、共振振動数は、昆虫OrXに分析物が結合すると増加する。
【0072】
さらなる実施態様において、共振振動数は、昆虫OrXに分析物が結合すると減少する。
検出器要素
さらなる実施態様において、センサーは、検出器要素を含む。さらなる実施態様において、検出器要素は、共振器要素に適用された交流電場により誘導された共振器要素における共振振動数における変化を検出または測定する。
【0073】
一実施態様において、検出器要素は、周波数分析器である。
本発明のセンサーデバイスを使用して分析物の結合を検出する方法
さらなる形態において、本発明は、分析物を検出する方法であって、
a)本発明のセンサーにおいて、分析物を昆虫OrXに結合させる工程、
b)基板の電気的な特徴における変化を検出する工程
を含み、
基板の電気的な特徴における変化が分析物の検出を示す、上記方法を提供する。
【0074】
本発明のセンサーデバイスを使用して環境における分析物の存在を検出する方法
さらなる形態において、本発明は、環境における分析物の存在を検出する方法であって、
a)本発明のセンサーを、分析物を含有する環境に曝露する工程、
b)センサーにおいて、分析物を昆虫OrXに結合させる工程
c)基板の電気的な特徴における変化を検出する工程
を含み、
基板の電気的な特徴における変化が環境における分析物の存在を示す、上記方法を提供する。
【0075】
本発明のEISセンサーデバイスを使用して分析物の結合を検出する方法
さらなる形態において、本発明は、分析物を検出する方法であって、
a)本発明の電気化学セルにおいて、分析物を昆虫OrXに結合させる工程、
b)作用電極における電気化学インピーダンスにおける変化を測定する工程
を含み、電気化学インピーダンスにおける変化が分析物の検出を示す、上記方法を提供する。
【0076】
本発明のEISセンサーデバイスを使用して環境中の分析物の存在を検出する方法
さらなる形態において、本発明は、環境における分析物の存在を検出する方法であって、
a)本発明のセンサーを、分析物を含有する環境に曝露する工程、
b)本発明の電気化学セルにおいて、分析物を昆虫OrXに結合させる工程、
c)作用電極の電気化学インピーダンスにおける変化を測定すること
を含み、電気化学インピーダンスにおける変化が環境における分析物の存在を示す、上記方法を提供する。
【0077】
本発明のCNT-FETセンサーデバイスを使用して分析物の結合を検出する方法
さらなる形態において、本発明は、分析物を検出する方法であって、
a)本発明のセンサーにおいて、分析物を昆虫OrXに結合させる工程、
b)CNT-FET装置で、ソース-ゲイン電流における変化を測定する工程
を含み、ソース-ゲイン電流における変化が分析物の検出を示す、上記方法を提供する。
【0078】
本発明のCNT-FETセンサーデバイスを使用して環境中の分析物の存在を検出する方法
さらなる形態において、本発明は、環境における分析物の存在を検出する方法であって、
a)本発明のセンサーを、分析物を含有する環境に曝露する工程、
b)センサーにおいて、分析物を昆虫OrXに結合させる工程
c)CNT-FET装置で、ソース-ゲイン電流における変化を測定する工程
を含み、ソース-ゲイン電流における変化はが環境における分析物の存在を示す、上記方法を提供する。
【0079】
本発明のQCMセンサーデバイスを使用して分析物の結合を検出する方法
さらなる形態において、本発明は、分析物を検出する方法であって、
a)本発明のセンサーにおいて、分析物を昆虫OrXに結合させる工程、
b)QCM装置で、共振器要素に適用された交流電場により誘導された共振器要素における共振振動数における変化を測定する工程
を含み、共振振動数における変化が分析物の検出を示す、上記方法を提供する。
【0080】
本発明のQCMセンサーデバイスを使用して環境中の分析物の存在を検出する方法
さらなる形態において、本発明は、環境における分析物の存在を検出する方法であって、
d)本発明のセンサーを、分析物を含有する環境に曝露する工程、
e)センサーにおいて、分析物を昆虫OrXに結合させる工程
f)QCM装置で、共振器要素に適用された交流電場により誘導された共振器要素の共振振動数の変化を測定する工程
を含み、共振振動数における変化が環境における分析物の存在を示す、上記方法を提供する。
【0081】
本発明のセンサーデバイスの製造方法
さらなる形態において、本発明は、センサーデバイスを製造する方法であって、昆虫OrXとセンサーデバイスの基板との間に電気的な連通を確立する工程を含み、センサーデバイスは、基板の電気的な特徴における変化を検出するように設計されている、上記方法を提供する。
【0082】
一実施態様において、本方法は、基板に昆虫OrXをカップリングする工程を含む。
一実施態様において、OrXがカップリングされた基板がセンサーデバイスに組み立てられる前に、OrXは、基板にカップリングされる。
【0083】
好ましくは、センサーの要素、カップリングおよび機能化は、本明細書に記載される通りである。
本発明のEISセンサーデバイスの製造方法
実施態様において、基板は、本明細書に記載されるような電気化学セルの作用電極である。
【0084】
したがって、一実施態様において、方法は、昆虫OrXと電気化学セルの作用電極との電気的な連通を確立する工程を含み、電気化学セルは、作用電極の電気化学インピーダンスにおける変化を検出するように設計されており、このようにしてセンサーデバイスが形成される。
【0085】
一実施態様において、本方法は、作用電極に昆虫OrXをカップリングする工程を含む。
一実施態様において、OrXがカップリングされた作用電極がセンサーデバイスに組み立てられる前に、OrXは、作用電極にカップリングされる。
【0086】
好ましくは、センサーの要素、カップリングおよび機能化は、本明細書に記載される通りである。
電極への昆虫OrXのカップリング
さらなる実施態様において、昆虫OrXは、リンカーを介して電極にカップリングされる。
【0087】
一実施態様において、リンカー分子は、OrXと電極との電気的な連通が可能になる程度に短い。
さらなる実施態様において、リンカー分子は、電極が受容体から分離することを防ぐ程度に短い。
【0088】
さらなる実施態様において、リンカー分子は、16-メルカプトヘキサデカン酸(16-MHDA)、6-メルカプトヘキサデカン酸(6-MHDA)および6-メルカプトヘキサン酸(MHA)から選択される。
【0089】
好ましい実施態様において、リンカー分子は、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)である。
さらなる実施態様において、リンカーは、自己組織化単分子(SAM)層の一部である。
【0090】
したがって、一実施態様において、昆虫Orxは、リンカー分子で構成されるSAM層を介して電極にカップリングされる。
好ましい実施態様において、昆虫Orxは、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)リンカー分子で構成されるSAM層を介して電極にカップリングされる。
【0091】
さらなる実施態様において、リンカーまたはMHAのカルボキシル基の活性化は、昆虫OrXのカップリングの前に実行される。
好ましくは、リンカーまたはMHAのカルボキシル基の活性化は、電極に昆虫OrXをカップリングする前に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の溶液を使用して実行される。
【0092】
センサーデバイスにおけるOrcoの欠如
好ましい実施態様において、センサーは、昆虫の匂い物質コレセプター(Orco)を含まない。
【0093】
本発明のCNT-FETセンサーデバイスの製造方法
実施態様において、基板は、本明細書に記載されるようなCNT-FET装置のチャネルである。
【0094】
したがって、一実施態様において、方法は、昆虫OrXと、CNT-FET装置のチャネルとの間に電気的な連通を確立する工程を含み、CNT-FET装置は、CNT-FET装置のソース-ゲイン電流における変化を検出するように設計されており、このようにしてセンサーデバイスが形成される。
【0095】
一実施態様において、本方法は、チャネルに昆虫OrXをカップリングする工程を含む。
一実施態様において、OrXがカップリングされたチャネルがセンサーデバイスに組み立てられる前に、OrXは、チャネルにカップリングされる。
【0096】
好ましくは、センサーの要素、カップリングおよび機能化は、本明細書に記載される通りである。
カーボンナノチューブ(CNT)へのOrXのカップリング
一実施態様において、OrXは、チャネル中で、カーボンナノチューブにカップリングされる。
【0097】
昆虫OrXの機能化
一実施態様において、昆虫OrXは、CNTへのカップリングが容易になるように機能化される。
【0098】
一実施態様において、昆虫OrXは、his-タグで機能化される。
それゆえに、一実施態様において、OrXは、his-タグを含む。
好ましくは、his-タグは、OrXタンパク質のN末端にある。
【0099】
CNTの機能化
一実施態様において、CNTは、昆虫OrXへのカップリングが容易になるように機能化される。
【0100】
さらなる実施態様において、CNTは、ニッケル(Ni)-ニトリロ三酢酸(NTA)で機能化される。
カップリング
さらなる実施態様において、OrXは、his-タグとの親和性結合を介してCNTにカップリングされる。
【0101】
したがって、一実施態様において、his-タグを有するOrXは、Ni-NTAで機能化されたCNTに結合する。
センサーデバイスにおけるOrcoの欠如
好ましい実施態様において、センサーは、昆虫の匂い物質コレセプター(Orco)を含まない。
【0102】
本発明のQCMセンサーデバイスの製造方法
実施態様において、基板は、水晶振動子マイクロバランスの水晶共振子である。
したがって、一実施態様において、方法は、昆虫OrXと、水晶振動子マイクロバランスの共振器要素との間に電気的な連通を確立する工程を含み、水晶振動子マイクロバランスは、QCM装置で、共振器要素に適用された交流電場により誘導された共振器要素の共振振動数における変化を検出するように設計されており、このようにしてセンサーデバイスが形成される。
【0103】
一実施態様において、本方法は、共振器要素に昆虫OrXをカップリングする工程を含む。
一実施態様において、OrXがカップリングされた作用共振器要素がセンサーデバイスに組み立てられる前に、OrXは、共振器要素にカップリングされる。
【0104】
好ましくは、共振器要素は、水晶共振子である。
好ましくは、センサーの要素、カップリングおよび機能化は、本明細書に記載される通りである。
【0105】
共振器要素への昆虫OrXのカップリング
さらなる実施態様において、昆虫OrXは、リンカーを介して共振器要素にカップリングされる。
【0106】
一実施態様において、リンカー分子は、OrXと共振器要素との電気的な連通が可能になる程度に短い。
さらなる実施態様において、リンカー分子は、共振器要素が受容体から分離することを防ぐ程度に短い。
【0107】
さらなる実施態様において、リンカー分子は、16-メルカプトヘキサデカン酸(16-MHDA)、6-メルカプトヘキサデカン酸(6-MHDA)および6-メルカプトヘキサン酸(MHA)から選択される。
【0108】
好ましい実施態様において、リンカー分子は、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)である。
さらなる実施態様において、リンカーは、自己組織化単分子層(SAM)の一部である。
【0109】
したがって、一実施態様において、昆虫Orxは、リンカー分子で構成されるSAM層を介して共振器要素にカップリングされる。
好ましい実施態様において、昆虫Orxは、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)リンカー分子で構成されるSAM層を介して共振器要素にカップリングされる。
【0110】
さらなる実施態様において、リンカーまたはMHAのカルボキシル基の活性化は、昆虫OrXのカップリングの前に実行される。
好ましくは、リンカーまたはMHAのカルボキシル基の活性化は、共振器要素に昆虫OrXをカップリングする前に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の溶液を使用して実行される。
【0111】
センサーデバイスにおけるOrcoの欠如
好ましい実施態様において、センサーは、昆虫の匂い物質コレセプター(Orco)を含まない。
【0112】
発明の詳細な説明
本出願人の発明は初めて、昆虫の匂い物質受容体(OrX)の匂いを感知する力を便利なセンサー様式とうまく組み合わせている。
【0113】
改善された便利さに加えて、本発明のセンサーデバイスは、驚くべきことに、昆虫ORの使用に基づく以前のアッセイシステムと比べて、検出の感度における極めて顕著な改善を提供する。
【0114】
さらに本発明のセンサーは、驚くべきことに、匂い物質コレセプター(Orco)の非存在下で機能することができ、それに対して全ての以前の昆虫ORの使用に基づくアッセイシステムは、OrXとOrcoの両方を含むことに頼っている。
【0115】
昆虫の匂い物質受容体複合体
昆虫の匂い物質受容体(OR)は、リガンド開口型非選択的カチオンチャネルを形成する7回膜貫通タンパク質の新規のファミリーのメンバーである。
図1に提示されるように、高度に保存された昆虫の匂い物質コレセプター(Orco)は、インビボで活性なチャネルを形成すると考えられ、匂い物質の特異性は、リガンド結合サブユニット(OrX)の一群によって付与される。
【0116】
インビボにおいて、昆虫OrXタンパク質のN末端は、細胞質内であり、一方でC末端は、細胞外である。この形態は、哺乳類Gタンパク質共役受容体(GPCR)と逆の形態である。加えて、哺乳類GPCRとは異なり、昆虫ORは、リガンド開口型非選択的カチオンチャネルとして機能し、シグナルの大部分はGタンパク質と独立している15。
【0117】
Hopfら、201516はさらに、昆虫ORの予測された構造とそれが哺乳類GPCRと無関係なことを論じている。
昆虫OrXタンパク質は、OrXポリペプチドと記載される場合もあり、当業者周知である。本発明で使用するために好適なOrX配列としては、多様なVOC(44~46)を検出することができるキイロショウジョウバエOR遺伝子ファミリー(43)、多様なVOC(48、49)を検出することができるガンビアハマダラカ(Anopheles gambiae)OR遺伝子ファミリー(47)の配列;加えて、公知のORファミリーの近年のリストに記載された他の昆虫種からのOR遺伝子ファミリーの配列が挙げられる。Montagne 2015(1)の表Iを参照されたい。一実施態様において、昆虫OrXタンパク質は、このような参考文献1、43および47で開示された配列、またはそれらのバリアント(variant)もしくは機能的なフラグメントを含む。
【0118】
一実施態様において、OrXは、組換え技術によって発現されたタンパク質である。
好ましい実施態様において、OrXは、組換え発現の後に精製されている。
一実施態様において、OrXは、昆虫嗅覚細胞から直接的に精製されていない。
【0119】
さらなる実施態様において、OrXは、センサーデバイスにおいて、昆虫嗅覚細胞中に存在しない。
本発明のセンサーデバイスで使用するための基板
本発明のセンサーデバイスで使用するための基板は、電気的な特徴における変化を測定できるあらゆる基板であってもよい。好ましくは、電気的な特徴における変化は、OrXと分析物との相互作用の結果としての変化である。
【0120】
基板は、OrXがカップリングできる表面も提供する。
好適な基板は、電極、半導体材料、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、酸化物、ドープシリコン、導電性ポリマー、共振器要素の少なくとも1つを含むか、またはそれで構成される。
【0121】
一実施態様において、共振器要素は、圧電材料、少なくとも1種の圧電性結晶、および水晶振動子であるかまたはそれで構成される。好ましい実施態様において、共振器要素は、水晶共振子である。
【0122】
本発明のセンサーデバイスで測定するための電気的な特徴
一実施態様において、電気的な特徴は、導電率、抵抗、複合的な抵抗、インピーダンス、電気化学インピーダンス、電流の流れ、および交流電場により誘導された振動の共振振動数の少なくとも1つから選択される。
【0123】
EISデバイス
一実施態様において、本発明のセンサーデバイスは、化学的セルの作用電極における電気化学インピーダンスにおける変化を検出するように設計されている。したがって、この実施態様におけるセンサーデバイスは、電気化学インピーダンス分光法(EIS)に合わせて設計される。
【0124】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)
電気化学インピーダンス分光法は当業者周知であり、電気化学システムの研究に長く採用されてきた。インピーダンスを測定する場合、小さい正弦波AC電圧プローブ(典型的には2~10mV)が適用され、電流応答が決定される。同位相(in-phase)の電流応答は、インピーダンスの実際の(抵抗性の)要素を決定するが、一方で位相が異なる(out-of-phase)電流応答は、仮想の(容量性の)要素を決定する。ACプローブ電圧は、システム応答が線形であり単純な等価回路分析が可能になる程度に十分小さくあるべきである。インピーダンス方法は、それらが、広範に異なる時間定数の物理化学的プロセスを特徴付けること、高い周波数で電子移動をサンプリングすること、および低い周波数で物質移動をサンプリングすることが可能であるという点でかなり強力である。
【0125】
インピーダンスの結果は、抵抗器およびキャパシタの等価回路、例えば単純な電気化学システムを説明するのにしばしば使用されるランドルス回路に通常フィッティングされる。
図3に、定位相エレメント(CPE)と直列であり、電荷移動抵抗(Rct)およびワールブルグ拡散エレメント(W)と並列の溶液抵抗(Rs)を含むランドルス回路の概略図[Rs+CPE/(Rct+W)]を示す。
【0126】
分析物がこれらの等価回路パラメーターの1つまたはそれより多くに影響を与え、これらのパラメーターが干渉種(interfering species)の影響を受けない場合、インピーダンス方法は、分析物検出に使用することができる。
【0127】
ワールブルグインピーダンスは、有効な拡散係数を測定するのに使用できるが、分析用途に有用であることはめったにない。ほとんどの場合に分析物検出に有用な等価回路エレメントは、RctおよびCPEである。測定されたキャパシタンスは通常、金(Au)電極上の感知層に結合する分析物などのいくつかの要素の一連の組合せに起因する。
【0128】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)デバイス
EISデバイスは、典型的には、
・作用電極(WE)
・対電極(CE)
・参照電極(RE)
・ポテンシオスタット/ガルバノスタット(PGSTAT)
を有する電気化学セルを含む。
【0129】
用途に応じて、電気化学セルへの機器の接続は、異なる方法で構築することができる(または構築されていなければならない)。
ポテンシオスタットモードでは、ポテンシオスタット/ガルバノスタット(PGSTAT)は、作用電極(WE)と参照電極(RE)との間の電位差が明確であり、使用者によって特定された値に相当するように、作用電極(WE)に対する対電極(CE)の電位を正確に制御するだろう。ガルバノスタットモードでは、WEとCEとの間の電流の流れが制御される。REとWEとの間の電位差およびCEとWEとの間に流れる電流は、連続的にモニターされる。PGSTATを使用することによって、使用者によって特定された値(すなわち適用された電位または電流)は、負のフィードバックメカニズムを使用することによって、測定中いつも正確に制御される。
【0130】
対電極(CE)、は、電気化学セル中の電流回路を閉じるのに使用される電極である。これは通常、不活性材料(例えばPt、Au、グラファイト、グラッシーカーボン)で作製され、通常、電気化学反応に参加しない。電流はWEとCEとの間に流れるため、CE(電子のソース/シンク)の合計表面積は、調査中の電気化学的プロセスの速度論においてそれが限定要因にならないように、WEの面積より大きくなければならない。
【0131】
参照電極(RE)は、安定な周知の電極電位を有する電極であり、これは、電位の制御および測定に関する電気化学セルにおける基準点として使用される。参照電極電位の高い安定性は通常、酸化還元反応の各参加物質が一定(緩衝化または飽和)濃度を有する酸化還元系を採用することによって達成される。さらに、参照電極を通る電流の流れは、ゼロ近くに(理想的にはゼロに)維持され、これは、電位計での極めて高い入力インピーダンス(>100GOhm)と共に、CEを用いてセルの電流回路を閉じることによって達成される。
【0132】
作用電極(WE)は、目的の反応が起こる電気化学システム中の電極である。一般的な作用電極は、Au、Ag、Pt、グラッシーカーボン(GC)およびHgのドロップおよびフィルム(Hg drop and film)などの不活性材料で作製することができる。
【0133】
EISデバイスはまた、作用電極の電気特性における変化を測定するための要素を含んでいてもよい。例えば、この要素は、周波数分析器であり得る。周波数分析器は、ポテンシオスタット/ガルバノスタットに連結されていてもよい。
【0134】
CNT-FETデバイス
一実施態様において、本発明のセンサーデバイスは、CNT-FET装置のソース-ゲイン電流における変化を検出するように設計されている。
【0135】
カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT-FET)
カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT-FET)は、従来の金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOS-FET)構造におけるバルクシリコンの代わりに、チャネル材料として単一のカーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブのアレイを利用する電界効果トランジスタである。
【0136】
CNT-FETデバイス
CNT-FETデバイスは、典型的には、
a)ソース電極(SE)
b)ドレイン電極(DE)
c)ゲート電極(GE)、および
d)カーボンナノチューブ(CNT)で構成される少なくとも1つのチャネル
を含む。
【0137】
ゲート電極は、ソースおよびドレイン電極にわたり電流を制御するのに使用される。ゲート電極がオンのとき、電流の流れは、チャネルを通じてソースおよびドレイン電極にわたりモジュレートすることができる。
【0138】
電極は、典型的には少なくとも1種の金属で構成される。好ましい金属としては、これらに限定されないが、白金、金、クロム、銅、アルミニウム、ニッケル(tickle)、パラジウムおよびチタンが挙げられる。
【0139】
好ましい実施態様において、チャネルは、カーボンナノチューブで構成される。
CNT-FETデバイスはまた、ソース-ドレイン電流における変化を測定するための要素を含んでいてもよい。
【0140】
QCMデバイス
一実施態様において、本発明のセンサーデバイスは、水晶振動子マイクロバランス(QCM)における共振器要素の共振振動周波数における変化を検出するように設計されている。
【0141】
一実施態様において、共振器要素は、圧電材料、少なくとも1種の圧電性結晶、および少なくとも1種の水晶振動子であるかまたはそれで構成される。好ましい実施態様において、共振器要素は、水晶共振子である。
【0142】
一実施態様において、水晶振動子は、金でコーティングされている。
水晶振動子マイクロバランス(QCM)
水晶振動子マイクロバランス(QCM)技術は当業者周知であり、水晶共振子の周波数における変化を測定することによって単位面積当たりの質量変動を測定する。共振(resonance)は、音響共振器表面における酸化物の成長/減衰またはフィルム堆積による小さい質量の付与または除去によって乱される。QCMは、真空、気相および液体環境中で使用することができる。これは、認識部位で機能化された表面への分子(特にタンパク質)の親和性を測定するのに極めて有効である。QCMはまた、生体分子間の相互作用を調査するのにも使用されてきた。周波数測定は、容易に高精度になるため、1μg/cm2未満もの低いレベルまで質量密度を簡単に測定することができる。周波数を測定することに加えて、誘電正接(dissipation factor)(共振帯域幅と同等である)が、分析を補助するためにしばしば測定される。誘電正接は、共振のQ値(quality factor)の逆数、Q-1=w/frであり、これは、系中の減衰を定量し、サンプルの粘弾性と関連する。
【0143】
水晶は、圧電性作用を受ける結晶のファミリーの一種である。適用された電圧と機械的な歪みとの関係は周知であり、これは、電気的な手段によって音響共振をプロービングすることを可能にする。水晶振動子に交流を適用することは、振動を誘導するだろう。適切にカットされた結晶の電極間の交流により、持続的な剪断波が生じる。Q値は、周波数と帯域幅との比率であり、106もの高さになり得る。このような狭い共振により高度に安定なオシレーターが生じ、共振振動数決定において高い精度がもたらされる。QCMは、この容易さと精度を感知に活用する。一般的な器具によって、4~6MHzの範囲の基本的な共振周波数を有する結晶において分解能を1Hzまで下げることができる。
【0144】
水晶振動子の振動の周波数は、結晶の厚さに一部依存する。通常操作中、他の影響のある変数は一定のままであることから、厚さにおける変化は、周波数における変化に直接相関する。結晶表面上に物質が堆積するにつれて厚さは増加し、その結果として振動の周波数は、最初の値から減少する。一部の簡易化した仮定によれば、この周波数の変化は、定量して、Sauerbreyの方程式を使用して正確に質量変化に相関させることができる。
【0145】
水晶振動子マイクロバランス(QCM)デバイス
典型的なQCMのための装置は、水冷チューブ、保持ユニット、マイクロドットフィードスルーを介した周波数感知器具、加振源、ならびに測定および記録デバイスを含有する。
【0146】
QCMは、電極を両方の側に蒸着させた共振器要素(典型的には、薄い圧電性プレート)からなる。圧電効果により、電極にわたるAC電圧は剪断変形を誘導し、逆もまた同様である。電気機械的なカップリングは、電気的な手段によって音響共振を検出する単純な方法を提供する。それ以外の状況において、それはあまり重要ではない。
【0147】
本発明のセンサーデバイス
第1の形態において、本発明は、基板と電気的に連通する昆虫の匂い物質受容体(OrX)を含むセンサーデバイスであって、基板の電気的な特徴における変化を検出するように設計されている、上記センサーデバイスを提供する。
【0148】
センサーの要素
さらなる形態において、本発明は、本明細書で定義されるように基板と電気的に連通するOrXを含む、センサーデバイスのための要素を提供する。この要素は、本発明に係るセンサーデバイスに付与するのに有用である。
【0149】
一形態において、本発明は、基板と電気的に連通する昆虫の匂い物質受容体(OrX)を含むセンサーデバイスの要素を提供する。
一形態において、本発明は、基板の電気的な特徴における変化を検出するように設計されている、本発明のセンサーデバイスの要素を含むセンサーデバイスを提供する。
【0150】
さらなる形態において、本発明は、センサーデバイスの要素を製造する方法であって、昆虫OrXと基板との間に電気的な連通を確立する工程を含む、上記方法を提供する。
さらなる形態において、本発明は、センサーデバイスを組み立てる方法であって、本発明のセンサーデバイスの要素を、センサーデバイスに付与することを含み、組み立てられたセンサーデバイスは、基板の電気的な特徴における変化を検出するように設計されている、上記方法を提供する。
【0151】
センサーデバイスの要素およびセンサーデバイスのある特定の実施態様において、昆虫の匂い物質受容体(OrX)、電気的な連通、基板、立体配置、および検出は、本明細書に記載した通りである。
【0152】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)装置
一実施態様において、センサーデバイスは、電気化学セルを含む。
一実施態様において、電気化学セルは、少なくとも2つの電極を含む。
【0153】
さらなる実施態様において、電気化学セルは、少なくとも:
a)作用電極(WE)、および
b)対電極(CE)
を含む。
【0154】
好ましい実施態様において、電気化学セルはまた、参照電極(RE)も含む。
さらなる実施態様において、電気化学セルは、ポテンシオスタット/ガルバノスタット(PGSTAT)を含む。
【0155】
好ましい実施態様において、電気化学セルは、
a)作用電極(WE)、
b)対電極(CE)、
c)参照電極(RE)、および
d)ポテンシオスタット/ガルバノスタット(PGSTAT)
の全てを含む。
【0156】
対電極
一実施態様において、対電極は、白金(Pt)、金(Au)、グラファイトまたはグラッシーカーボン(GC)から選択される材料で構成されるか、またはそれでコーティングされている。
【0157】
好ましくは、対電極は、白金(Pt)で構成される。
好ましくは、対電極は、白金(Pt)線である。
参照電極
好ましくは、参照電極は、銀/塩化銀(Ag/AgCl)参照電極である。
【0158】
作用電極
一実施態様において、電気化学インピーダンス分光法(EIS)装置は、少なくとも1つの作用電極を含む。
【0159】
電極は、あらゆる好適な材料で構成されていてもよいし、またはそれでコーティングされていてもよい。電極は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラッシーカーボン(GC)から選択される材料で構成されていてもよいし、またはそれでコーティングされていてもよい。
【0160】
好ましい実施態様において、電極は、金で構成されるか、または金でコーティングされている。
ポテンシオスタット/ガルバノスタット(PGSTAT)
好ましくは、ポテンシオスタット/ガルバノスタット(PGSTAT)は、ポテンシオスタットモードで使用される。
【0161】
検出器要素
さらなる実施態様において、センサーは、検出器要素を含む。検出器要素は、基板の電気的な特徴における変化を検出または測定する。
【0162】
一実施態様において、検出器要素は、周波数分析器である。さらなる実施態様において、周波数分析器は、ポテンシオスタット/ガルバノスタット(PGSTAT)に連結されている。
【0163】
昆虫OrXの調製
昆虫OrXを組換え技術で発現させ、精製するための方法は、当業者公知である14。
昆虫OrXの存在
さらなる実施態様において、OrXは、分析物との相互作用に応答してコンフォメーション変化を受けることが可能な形態で存在する。
【0164】
一実施態様において、昆虫OrXは、膜模倣物に存在する。
膜模倣物は、名前が示唆する通り、天然膜を模倣するものであり、インビボで見出されるのと同じかまたは類似したコンフォメーションで受容体を支持することができる。
【0165】
膜模倣物は、リポソーム、アンフィポール、洗剤ミセル、ナノベシクル、脂質二重層、およびナノディスクから選択することができる。
好ましくは、膜模倣物は、人工物である。
【0166】
一実施態様において、膜模倣物は、リポソームである。
一実施態様において、膜模倣物は、人工リポソームである。
さらなる実施態様において、膜模倣物は、脂質二重層である。
【0167】
さらなる実施態様において、膜模倣物は、人工脂質二重層である。
リポソームにおいて昆虫受容体を再構成するための方法は、当業界において公知である14。
【0168】
作用電極上での昆虫OrXを含む脂質二重層の形成
理論に制限されることは望まないが、出願人は、一部の実施態様において、リポソーム中の昆虫OrXが作用電極に適用されると、リポソームが構造を変化させて電極上に脂質二重層を形成すると仮定している。出願人は、受容体のリガンド/分析物結合ドメインがリガンド/分析物に接近可能になるように、昆虫OrXは、インビボで細胞膜に見出されるものと類似のまたは同じコンフォメーションで脂質二重層中に埋め込まれると仮定している。
【0169】
理論に制限されることは望まないが、出願人は、他の実施態様において、リポソームは、作用電極に結合したとき、リポソームのままであることを仮定している。これは
図21に例示される。
【0170】
基板へのOrXのカップリング
さらなる実施態様において、OrXは、基板にカップリングされる。
基板にタンパク質をカップリングするための多数の方法が当業者公知である。このような方法としては、共有結合による化学的カップリング、光化学的な架橋、表面のコーティング/修飾、金の表面化学、タンパク質親和性タグ、ビオチン-ストレプトアビジン連結、抗体固定、および操作された表面結合ペプチド配列の使用が挙げられる。
【0171】
また本発明のデバイスで使用するためのOrXタンパク質は、アミン基、ヒスチジンタグ、または基板にタンパク質をカップリングするのに使用される一部の他の官能基を含んでいてもよい。アミン基を有するタンパク質の場合、使用者は、基板にカップリングされた脱離基をアミン基を用いて置換し、基板にタンパク質を結合させてもよい。カップリングは、必ずしも求核脱離基反応によって達成されなくてもよく、カップリングは、共有結合(例えばアミド結合)、イオン結合、水素結合、または金属配位によって行われてもよい。配位の一例として、OrXタンパク質は、ヒスチジンタグとニッケルとの配位によって、基板にカップリングされてもよい。またOrXタンパク質は、システイン残基によって基板にカップリングされてもよい。一部の実施態様において、天然に結合されるOrXタンパク質は、システイン残基を含む。これは、天然に存在するものでもよいし、またはこのような残基は、天然または組換えタンパク質に意図的に取り込まれていてもよい。さらなる情報は、WO2012/050646に見出すことができる。
【0172】
一部の実施態様において、基板の表面は、膜貫通タンパク質に基板を連結する官能基を含む。1つの非限定的な例において、材料の表面は、カルボキシル化されたジアゾニウム塩で機能化(官能化、fanctionalized)されていてもよく、これは、自発的にカーボンナノチューブなどの基板への共有結合を形成する。アミンおよびアミド官能基は、好適であるとみなされ、フェノール基/芳香族官能基も同様である。
【0173】
EISのためのリンカー
さらなる実施態様において、昆虫OrXは、リンカーを介して電極にカップリングされる。
【0174】
一実施態様において、リンカー分子は、OrXと電極との電気的な連通が可能になる程度に短い。
さらなる実施態様において、リンカー分子は、電極が受容体から分離することを防ぐ程度に短い。
【0175】
さらなる実施態様において、リンカー分子は、16-メルカプトヘキサデカン酸(16-MHDA)、6-メルカプトヘキサデカン酸(6-MHDA)および6-メルカプトヘキサン酸(MHA)から選択される。
【0176】
好ましい実施態様において、リンカーは、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)である。
さらなる実施態様において、リンカーは、自己組織化単分子(SAM)層の一部である。
【0177】
したがって、一実施態様において、SAM層は、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)で構成される。
さらなる実施態様において、MHAのカルボキシル基の活性化は、昆虫OrXのカップリングの前に実行される。
【0178】
好ましくは、MHAのカルボキシル基の活性化は、電極に昆虫OrXをカップリングする前に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の溶液を使用して実行される。
【0179】
分析物の検出
さらなる実施態様において、センサーは、昆虫OrXへの分析物の結合を検出することが可能である。
【0180】
さらなる実施態様において、センサーは、環境において、昆虫OrXに結合する分析物の存在を検出することが可能である。
好ましくは、分析物の検出は、特異的である。
【0181】
さらなる実施態様において、昆虫ORへの分析物の結合は、作用電極における電気化学インピーダンスを変化させる。
カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT-FET)装置
好ましくは、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT-FET)装置は、少なくとも2つの端部を含む。さらなる実施態様において、CNT-FET装置は、少なくともソース電極およびドレイン電極を含む。
【0182】
一実施態様において、CNT-FET装置は、
a)ソース電極
b)ドレイン電極
c)ゲート電極
d)カーボンナノチューブ(CNT)で構成される少なくとも1つのチャネル
を含む。
【0183】
好ましくは、ゲート電極は、銀/塩化銀(Ag/AgCl)線である。
検出器要素
さらなる実施態様において、センサーは、検出器要素を含む。検出器要素は、ソース-ドレイン電流における変化を検出または測定する。
【0184】
電気的な特徴における変化は、手動で、またはコンピューター制御下で操作される従来の電子機器を使用して測定することができる。例えば、コンピューター化された実験設定は、バイアス電圧および様々な値のゲート電圧を適用するための、ナショナルインスツルメンツ(National Instrument)のPCI-6722DAQボードを含んでいてもよい。次いでケースレー(Keithley)の6485ピコ電流計を、電流を測定するのに使用でき、それにより全I-Vg曲線を提供することができる。単一の基板上に配置された多くのデバイスを測定したいというケースにおいて、切り換えマトリックス(ケースレー7001)または他のマルチプレクサーを使用してもよい。
【0185】
アジレント(Agilent)の4156Cパラメーター分析器も、全ての電気的な測定に使用することができる20。パラメーター分析器は、優れた感度を有し、フェムトアンペアスケールで電流を正確に測定することができる。
【0186】
昆虫OrXの存在
さらなる実施態様において、OrXは、分析物との相互作用に応答してコンフォメーション変化を受けることが可能な形態で存在する。
【0187】
一実施態様において、昆虫OrXは、膜模倣物に存在する。
膜模倣物は、名前が示唆する通り、天然膜を模倣するものであり、インビボで見出されるのと同じかまたは類似したコンフォメーションで受容体を支持することができる。
【0188】
膜模倣物は、リポソーム、アンフィポール、洗剤ミセル、ナノベシクル、脂質二重層、およびナノディスクから選択することができる。
好ましくは、膜模倣物は、人工物である。
【0189】
好ましい実施態様において、膜模倣物は、ナノディスクである。
本発明のCNT-FETデバイス中のチャネルへのOrXのカップリング
一実施態様において、OrXは、チャネル中で、カーボンナノチューブにカップリングされる。
【0190】
昆虫OrXの機能化(官能化、fanctionalization)
一実施態様において、昆虫OrXは、CNTへのカップリングが容易になるように機能化される。
【0191】
一実施態様において、昆虫OrXは、his-タグで機能化される。
それゆえに、一実施態様において、OrXは、his-タグを含む。
好ましくは、his-タグは、OrXタンパク質のN末端にある。
【0192】
CNTの機能化
一実施態様において、CNTは、昆虫OrXへのカップリングが容易になるように機能化される。
【0193】
さらなる実施態様において、CNTは、ニッケル(Ni)-ニトリロ三酢酸(NTA)で機能化される。
カップリング
さらなる実施態様において、OrXは、his-タグとの親和性結合を介してCNTにカップリングされる。
【0194】
したがって、一実施態様において、his-タグを有するOrxは、Ni-NTAで機能化されたCNTに結合する。
分析物の検出
さらなる実施態様において、センサーは、昆虫OrXへの分析物の結合を検出することが可能である。
【0195】
さらなる実施態様において、センサーは、環境において、昆虫OrXに結合する分析物の存在を検出することが可能である。
好ましくは、分析物の検出は、特異的である。
【0196】
さらなる実施態様において、分析物が昆虫ORに結合することは、本発明のCNT-FET装置のチャネル中の電気的なソース-ゲイン電流を変化させる。
水晶振動子マイクロバランス(QCM)装置
好ましくは、水晶振動子マイクロバランス(QCM)装置は、
a)共振器要素
b)加振源要素
c)周波数を感知する要素
を含む。
【0197】
共振器要素
一実施態様において、共振器要素は、圧電材料、少なくとも1種の圧電性結晶、および少なくとも1種の水晶振動子であるかまたはそれで構成される。好ましい実施態様において、共振器要素は、水晶共振子である。
【0198】
一実施態様において、水晶振動子は、金でコーティングされている。
一実施態様において、共振器要素は、その対向する2つの側に電極が取り付けられている。
【0199】
一実施態様において、電極は、金で構成されるか、または金でコーティングされている。
好ましい実施態様において、共振器要素は、少なくとも1つの昆虫OrXと電気的に連通している。
【0200】
加振源要素
一実施態様において、加振源要素は、共振器要素に交流電場を適用するように設計されている。
【0201】
一実施態様において、交流電場は、共振器要素の対向する側に取り付けられた電極を介して適用される。
周波数を感知する要素
一実施態様において、周波数を感知する要素は、共振器要素の振動周波数を測定するように設計されている。一実施態様において、周波数を感知する要素は、共振器要素の振動周波数における変化を測定するように設計されている。
【0202】
昆虫OrXの存在
さらなる実施態様において、OrXは、分析物との相互作用に応答してコンフォメーション変化を受けることが可能な形態で存在する。
【0203】
一実施態様において、昆虫OrXは、膜模倣物に存在する。
膜模倣物は、名前が示唆する通り、天然膜を模倣するものであり、インビボで見出されるのと同じかまたは類似したコンフォメーションで受容体を支持することができる。
【0204】
膜模倣物は、リポソーム、アンフィポール、洗剤ミセル、ナノベシクル、脂質二重層、およびナノディスクから選択することができる。
好ましくは、膜模倣物は、人工である。
【0205】
好ましい実施態様において、膜模倣物は、リポソームである。
さらなる実施態様において、膜模倣物は、脂質二重層である。
さらなる実施態様において、膜模倣物は、人工脂質二重層である。
【0206】
リポソームにおいて昆虫受容体を再構成するための方法は、当業界において公知である14。
共振器要素上での昆虫OrXを含む脂質二重層の形成
理論に制限されることは望まないが、出願人は、一部の実施態様において、リポソーム中の昆虫OrXが作用電極に適用されると、リポソームが構造を変化させて共振器要素上に脂質二重層を形成すると仮定している。出願人は、受容体のリガンド/分析物結合ドメインがリガンド/分析物に接近可能になるように、昆虫OrXは、インビボで細胞膜に見出されるものと類似のまたは同じコンフォメーションで脂質二重層中に埋め込まれると仮定している。
【0207】
理論に制限されることは望まないが、出願人は、他の実施態様において、リポソームは、作用電極に結合したとき、リポソームのままであることを仮定している。これは
図21に例示される。
【0208】
QCMのためのリンカー
さらなる実施態様において、昆虫OrXは、リンカーを介して共振器要素にカップリングされる。
【0209】
一実施態様において、リンカー分子は、OrXと共振器要素との電気的な連通が可能になる程度に短い。
さらなる実施態様において、リンカー分子は、共振器要素が受容体から分離することを防ぐ程度に短い。
【0210】
さらなる実施態様において、リンカー分子は、16-メルカプトヘキサデカン酸(16-MHDA)、6-メルカプトヘキサデカン酸(6-MHDA)および6-メルカプトヘキサン酸(MHA)から選択される。
【0211】
好ましい実施態様において、リンカーは、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)である。
さらなる実施態様において、リンカーは、自己組織化単分子層(SAM)の一部である。
【0212】
したがって、一実施態様において、SAM層は、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)で構成される。
さらなる実施態様において、MHAのカルボキシル基の活性化は、昆虫OrXのカップリングの前に実行される。
【0213】
好ましくは、MHAのカルボキシル基の活性化は、電極に昆虫OrXをカップリングする前に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の溶液を使用して実行される。
【0214】
分析物の検出
さらなる実施態様において、センサーは、昆虫OrXへの分析物の結合を検出することが可能である。
【0215】
さらなる実施態様において、センサーは、環境において、昆虫OrXに結合する分析物の存在を検出することが可能である。
好ましくは、分析物の検出は、特異的である。
【0216】
さらなる実施態様において、昆虫OrXへの分析物の結合は、共振器要素に適用された交流電場により誘導された共振器要素の共振振動数を変化させる。
検出の感度
上記で論じられたように、本発明のセンサーは驚くほどよく作用する。出願人は、本発明のセンサーデバイスが、昆虫ORの使用を含む公知のアッセイのどれよりも顕著に高い感度を有することを示した。
【0217】
一実施態様において、センサーは、1×10-3M未満、好ましくは1×10-3M未満、より好ましくは1×10-4M未満、より好ましくは1×10-5M未満、より好ましくは1×10-6M未満、より好ましくは1×10-7M未満、より好ましくは1×10-8M未満、より好ましくは1×10-9M未満、より好ましくは1×10-10M未満、より好ましくは1×10-11M未満、より好ましくは1×10-12M未満、より好ましくは1×10-13M未満、より好ましくは1×10-14M未満、より好ましくは1×10-15M未満、より好ましくは1×10-16M未満、より好ましくは1×10-17M未満、より好ましくは1×10-18M未満の濃度で分析物の存在を検出することができる。
【0218】
ダイナミックレンジ
一実施態様において、センサーにおいて、分析物の検出に関するダイナミックレンジは、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも6、より好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも9、より好ましくは少なくとも10桁の分析物濃度である。
【0219】
センサーデバイスにおけるOrcoの欠如
これまでに公知の昆虫の匂い物質受容体を使用する全てのシステム/アッセイは、昆虫OrXおよび匂い物質コレセプター(Orco)の組合せを利用する。これは、コグネイトリガンド(cognate ligand)に特異的に結合してリガンドの結合に対する応答を変換することが可能な適切な組合せで、OrX/Orcoを有する昆虫匂い物質受容体(OR)複合体を生産するために、従来技術ではOrXとOrco要素の両方を要求したことについての非常に強いバイアスを意味する。
【0220】
これまでに論じられた通り、昆虫OR複合体(OrcoおよびOrX)は、リガンド開口型イオンチャネルを形成し、これが、インビボで、またおそらくは従来技術のセンサーシステム/アッセイにおいて、シグナルを変換するイオンチャネルを通るイオンの輸送手段である。
【0221】
したがって、さらなる、そして非常に驚くべき本発明の特徴は、本発明のセンサーが、Orcoコレセプターの非存在下でリガンド/分析物結合を検出することができることである。
【0222】
一実施態様において、センサーは、10:1より低い、好ましくは1:1より低い、好ましくは0.1:1より低い、好ましくは0.01:1より低い、好ましくは0.001:1より低い、好ましくは0.0001:1より低い、好ましくは0.00001:1より低い比率のOrX:Orcoを含む。
【0223】
好ましい実施態様において、センサーは、昆虫の匂い物質コレセプター(Orco)を含まない。
本発明のセンサーの他の利点
本発明のセンサーは、便利さ、携帯できること、安定性、迅速な検出、感度、および測定の容易さに関して、これまでに公知の昆虫ORベースのシステム/アッセイを上回る多数のさらなる潜在的な利点を提供する。
【0224】
分析物の媒体
分析物は、ガス状または液状媒体中にあってもよい。
任意の捕獲要素
センサーデバイスは、加えて、分析物を捕獲し、受容体に分析物を提示するための要素を含んでいてもよい。一部の実施態様において、この要素は、OrXへ提示するために揮発性分析物を捕獲することに関して有用であり得る。これは、液相または気相のいずれかにおいて標的VOCを取り扱うためのマイクロチャネルの使用を含んでいてもよい(50)。マイクロ流体システムは、液相中(51、52)および気相中(53、52、54)でセンサー表面に標的分子を送達するように設計されている。
【0225】
多重化(multiplexing)
本発明は、複数の異なるOrXタンパク質を使用する多重アプローチを予期する。この方法で、使用者は、複数の分析物に対して高感度を有する多重デバイスを構築することができる。このような多重デバイスは、本明細書で記載される通り、数十、数百、またはさらには数千ものセンサーを含んでいてもよい。また多重デバイスは、ダブルチェックをデバイスに導入するように、同じOrXにカップリングされる2つまたはそれより多くのセンサーを含んでいてもよい。
【0226】
本発明はまた、それぞれ異なるまたは同じ受容体を含む複数のセンサー基板を有するチップの使用も予期する。本発明のセンサーデバイスの要素は、このようなチップであってもよい。
【0227】
本発明のセンサーデバイスを使用する方法
本発明は、上述したような分析物および/または環境における分析物の存在を検出するための本発明のセンサーデバイスの使用方法を提供する。
【0228】
対照および較正
使用者は、デバイスの電気的な特徴を、対照、公知の分析物、またはその両方にデバイスを曝露したときに測定された対応する電気的な特徴と比較することができる。使用者はまた、サンプル中の1種またはそれより多くの分析物の存在を見積もることもできる。これは、サンプルで観察された電気的な特徴を、目的の分析物の公知の量を有する対照または標準から集められたデータポイントに対応するその電気的な特徴の検量線と比較することによって達成することができる。この方法で、使用者は、デバイスが接触したサンプル中に存在する分析物の濃度を見積もることができる。
【0229】
使用者は、1つまたはそれより多くの公知の分析物へのデバイスの曝露に対応する、デバイスの1つまたはそれより多くの電気的な特徴のライブラリーを構築することができる。例えば、使用者は、デバイスを様々な濃度の分析物に曝露したときに観察される電気的な特徴を表す結果のライブラリーを構築することができる。
【0230】
本発明のセンサーデバイスの製造方法
センサーデバイス
さらなる形態において、本発明は、センサーデバイスを製造する方法であって、昆虫OrXとセンサーデバイスの基板との間に電気的な連通を確立する工程を含み、センサーデバイスは、基板の電気的な特徴における変化を検出するように設計されている、上記方法を提供する。
【0231】
一実施態様において、本方法は、基板に昆虫OrXをカップリングする工程を含む。
一実施態様において、OrXは、OrXがカップリングされた基板がセンサーデバイスに組み立てられる前に、基板にカップリングされる。
【0232】
好ましくは、センサーの要素、カップリングおよび機能化は、本明細書に記載される通りである。
センサーの要素
さらなる形態において、本発明は、センサーデバイスのための要素を生産するための方法であって、要素は、本明細書で定義されるように基板と電気的に連通するOrXを含む、上記方法を提供する。本方法は、本明細書に記載されるように、OrXと基板との間に電気的な連通を確立する工程を含む。この要素は、本発明に係るセンサーデバイスに付与するのに有用である。
【0233】
さらなる実施態様において、本発明は、センサーデバイスを生産するための方法であって、本明細書で記載されるように、要素を他の要素に付与して、本発明に係るセンサーデバイスを生産することを含む、上記方法を提供する。
【0234】
本発明のEISセンサーデバイスの製造方法
実施態様において、基板は、本明細書に記載されるような電気化学セルの作用電極である。
【0235】
したがって、一実施態様において、方法は、昆虫OrXと電気化学セルの作用電極との電気的な連通を確立する工程を含み、電気化学セルは、作用電極の電気化学インピーダンスにおける変化を検出するように設計されており、このようにしてセンサーデバイスが形成される。
【0236】
一例として、本発明のEISデバイスの製造のための好適な方法は、実施例のセクションに記載される。この実施例は、本発明の範囲を限定することを意図していない。
本発明のCNT-FETセンサーデバイスの製造方法
実施態様において、基板は、本明細書に記載されるようなCNT-FET装置のチャネルである。
【0237】
したがって、一実施態様において、方法は、昆虫OrXとCNT-FET装置のチャネルとの電気的な連通を確立する工程を含み、CNT-FET装置のチャネルは、CNT-FET装置のソース-ゲイン電流における変化を検出するように設計されており、このようにしてセンサーデバイスが形成される。
【0238】
一例として、本発明のCNT-FETデバイスの製造のための好適な方法は、実施例のセクションに記載される。この実施例は、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0239】
本発明のQCMセンサーデバイスの製造方法
実施態様において、基板は、本明細書に記載されるような水晶振動子マイクロバランス(QCM)の共振器要素である。
【0240】
したがって、一実施態様において、方法は、昆虫OrXと、水晶振動子マイクロバランス(QCM)との共振器要素との間に電気的な連通を確立する工程を含み、QCMは、共振器要素に適用された交流電場により誘導された振動の共振振動数における変化を検出するように設計されており、このようにしてセンサーデバイスが形成される。
【0241】
一例として、本発明のQCMデバイスの製造のための好適な方法は、実施例のセクションに記載される。この実施例は、本発明の範囲を限定することを意図していない。
一般的な定義および方法
OrXタンパク質/ポリペプチドおよびフラグメント
用語「ポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸残基が共有結合によるペプチド結合によって連結された、あらゆる長さを有する、ただし好ましくは全長タンパク質を含み、少なくとも5個のアミノ酸のアミノ酸鎖を含む。本発明で使用するためのポリペプチドは、好ましくは、組換えまたは合成技術を使用して部分的または全体的に生産される。
【0242】
ポリペプチドの「フラグメント」は、好ましくはポリペプチドの機能を発揮する、および/またはポリペプチドの3次元構造を提供するポリペプチドの部分配列である。
OrXポリペプチドの「機能的なフラグメント」は、分析物と結合し、分析物の結合のときにコンフォメーション変化を受ける機能を発揮することができるOrXの部分配列であり、ここでコンフォメーション変化は、機能的なフラグメントを結合させた基板の電気特性における変化をもたらす。
【0243】
用語「組換え」は、その天然のコンテクスト中でその周りにある配列から除去され、および/またはその天然のコンテクストに存在しない配列と組み換えられるポリヌクレオチド配列を指す。
【0244】
「組換え」ポリペプチド配列は、「組換え」ポリヌクレオチド配列からの翻訳によって生産される。
バリアント
OrXポリペプチドのバリアントは、1つまたはそれより多くのアミノ酸残基が欠失、置換または付加された、具体的に同定された配列と異なるポリペプチド配列を指す。バリアントは、天然に存在する対立遺伝子バリアント(allelic variant)であってもよいし、または天然に存在しないバリアントであってもよい。バリアントは、同じ種由来であってもよいし、または他の種由来であってもよく、ホモログ、パラログおよびオルソログを含んでいてもよい。ある特定の実施態様において、同定されたポリペプチドのバリアントは、本発明のポリペプチドまたはポリペプチドの生物活性と同じまたは類似の生物活性を有する。好ましくは、OrXポリペプチドバリアントは、分析物と結合し、分析物の結合のときにコンフォメーション変化を受ける機能を発揮することができ、ここでコンフォメーション変化は、機能的なフラグメントが結合した基板の電気特性における変化をもたらす。
【0245】
バリアントポリペプチド配列は、好ましくは、本発明の配列に、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性を呈示する。同一性は、好ましくは同定されたポリペプチドの全長にわたり計算される。
【0246】
ポリペプチド配列の同一性は、以下の方式で決定することができる。ワールドワイドウェブ上のNCBIウェブサイトftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/から公的に入手可能なbl2seqで、BLASTP(プログラムのBLASTスイート、バージョン2.2.5[2002年11月]より)を使用して、対象のポリペプチド配列を候補ポリペプチド配列と比較する。
【0247】
ポリペプチド配列の同一性はまた、グローバル配列アライメントプログラムを使用して、候補ポリヌクレオチド配列と対象ポリヌクレオチド配列との間のオーバーラップの全長にわたり計算することもできる。上記で論じられたように、EMBOSS-ニードル(http:/www.ebi.ac.uk/emboss/align/で入手可能)およびギャップ(Huang, X. (1994)On Global Sequence Alignment. Computer Applications in the Biosciences 10、227~235)も、ポリペプチド配列の同一性を計算するための好適なグローバル配列アライメントプログラムである。
【0248】
ポリペプチドの%配列同一性を計算するための好ましい方法は、Clustal X(Jeanmouginら、1998、Trends Biochem. Sci.23、403~405)を使用して比較するために配列を並べることに基づく。
【0249】
その生物活性を有意に変更しない記載されたポリペプチド配列の1つまたは数種のアミノ酸の保存的置換も本発明に含まれる。当業者は、表現型的にはサイレントのアミノ酸置換をなす方法を認識しているだろう(例えば、Bowieら、1990、Science 247、1306を参照)。
【0250】
ポリペプチドを生産するための方法
本発明で使用されるポリペプチドは、バリアントポリペプチドを含め、当業界において周知のペプチド合成方法、例えば固相技術を使用する直接のペプチド合成(例えばStewartら、1969、Solid-Phase Peptide Synthesis、WH Freeman Co、カリフォルニア州サンフランシスコ)、または例えばアプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)の431Aペプチドシンセサイザー(カリフォルニア州フォスターシティー)を使用する自動合成を使用して調製することができる。ポリペプチドの突然変異した形態も、このような合成中に生産することができる。
【0251】
好ましくは、ポリペプチドおよびバリアントポリペプチドは、以下で論じられるように好適な宿主細胞中で組換え発現され、細胞から分離される。ポリヌクレオチドは、ポリペプチドを発現するために、当業者周知の方法によって都合のよい形態で合成することができる。ポリヌクレオチド配列は、天然に存在するものであってもよいし、または例えば配列が組換え発現された細胞にとって好ましいコドン出現頻度(codon usage)の使用を介して、天然に存在する配列から適合させてもよい。
【0252】
コンストラクト(construct)およびベクターを生産するための方法
本発明で使用するための遺伝学的コンストラクトは、本発明で使用するためのOrXポリペプチドをコードする1つまたはそれより多くのポリヌクレオチド配列を含み、例えば細菌、真菌、昆虫、哺乳類または植物などの生物を形質転換するのに有用であり得る。
【0253】
遺伝学的コンストラクトおよびベクターを生産および使用するための方法は当業界において周知であり、一般的に、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、1987;Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing、1987)に記載されている。
【0254】
ポリヌクレオチド、コンストラクトまたはベクターを含む宿主細胞を生産するための方法
ポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、本発明で使用するためのポリペプチドの組換え生産に関して、当業界において周知の方法(例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、1987;Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing、1987)において有用である。このような方法は、本発明のポリペプチドの発現に好適な、またはそれを助長する条件下で、適切な培地で宿主細胞を培養することを含んでいてもよい。発現された組換えポリペプチドは、任意に培養物に分泌させてもよく、次いで、当業界において周知の方法(例えばDeutscher編、1990、Methods in Enzymology、182巻、Guide to Protein Purification)によって培地、宿主細胞または培養培地から分離してもよい。
【0255】
用語「含む」は、本明細書で使用される場合、「から少なくとも部分的になる」を意味する。本明細書における用語「含む」を含む各記述を解釈するとき、この用語の後に記載される1つまたは複数の特徴以外の特徴も存在し得る。「含むk(comprise)」および「含む(comprises)」などの関連用語は、同じように解釈されることとする。
【0256】
本明細書で開示された数値範囲への言及(例えば1~10)はまた、その範囲内の全ての合理的な数値への言及(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9および10)、さらに、その範囲内の合理的な数値のあらゆる範囲(例えば、2~8、1.5~5.5および3.1~4.k7)への言及も含むことが意図され、それゆえに、本明細書で明示的に開示された全ての範囲の全ての部分範囲がそれにより明示的に開示される。これらは具体的に意図されるものの単なる例であり、列挙された下限値から上限値の間の数値のあらゆる可能な組合せが、本出願において類似の方式で明示的に述べられているとみなされるものとする。
【0257】
代替の実施態様または構成は、本明細書において例示された、記載された、または言及されたパーツ、エレメントまたは機構の2つまたはそれより多くの、いずれかのまたは全ての組合せを含んでいてもよいことが理解されるものとする。
【0258】
本発明はまた、本願明細書で個々にまたは集合的に言及または示されたパーツ、エレメントおよび機構、ならびに前記パーツ、エレメントまたは機構のいずれか2つまたはそれより多くのいずれかのまたは全ての組合せで構成されるように幅広く述べることができる。
【0259】
本発明が関する分野の当業者であれば、添付の特許請求の範囲で定義した通りの本発明の範囲から逸脱することなく、構造における多くの変化および本発明の広範に様々な実施態様および適用に想到するであろう。本明細書における開示および記載は単に例示的なものであり、決して限定を意図していない。本明細書で、本発明が属する分野において公知の等価値がある具体的な整数が述べられる場合、このような公知の等価値は、個々に明示されたのと同様にして本明細書に含まれるとみなされる。
【0260】
本発明は、添付の非限定的な図面を参照してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【
図1】
図1は、リガンド開口型非選択的カチオンチャネルを生産するための、匂い物質が結合したOrXサブユニットおよびOrcoサブユニットで構成される昆虫OR膜複合体の概略図である。オレンジ色の丸は、結合した匂い物質を表す。
【
図2】
図2は、電極のクリーニングから始まり、続いてSAMを形成し、SAM層上にリポソームを共有結合させることで終わるセンサー製造の概略図である。電気化学的な読み出しは、3つの末端の電気化学的な構成で行われたEIS測定から得られる。扇形部分が切り抜かれた丸は、リポソームと一体化した昆虫OrXを表し、小さい三角形は、VOCリガンドを表す。
【
図3】
図3は、640pM~10μΜの濃度範囲を有するE2-ヘキセナールに対するor35aで機能化された電極のインピーダンスエボリューションである。実験データは、記号として提示し、等価回路フィッティング曲線は実線として提示する。
【
図4】
図4は、128pM~2μΜの濃度範囲で、A)サリチル酸メチル中でインキュベートしたOr10a、B)E2-ヘキセナール中でインキュベートしたOr35a、およびC)ヘキサン酸メチル中でインキュベートしたOr22aの用量応答曲線である。ネガティブコントロールは、それぞれOr10aヘキサン酸メチル、Or35a VUAA1、Or22aサリチル酸メチルである。
【
図5】
図5は、CNT堆積プロセスの概略図である。(a)SiO
2/Siを、ポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンピング方法により2-チオール-ピリジンで機能化し、(b)2-チオール-ピリジンで機能化したCNT FETを、予め作製されたCNT DCB懸濁液に浸す。
【
図6】電極は、標準的なミクロ電子工学製造の後にCNTフィルムコート基板上に製作される。(a)基板にマスクを載せ、その後、紫外線に曝露する;(b)AZ326現像液中で現像した後;(c)熱蒸発による金属堆積;(d)アセトン中でのリフトオフ後。
【
図7】
図7は、絶縁ウェルとしてのフォトレジストにより電極を封止した後のCNT FET構造の略図である。
【
図8】
図8は、AZ1518を封止したCNT FETデバイスの最上部における手作りのPDMSウェルの写真画像である。
【
図9】
図9は、電気的な測定のためのセンサーの構成であり、Ag/AgCl電極が、ゲート電極としてPBS液体に挿入されている。CNT FET上の電極と接触する2つのプローブは、ソースおよびドレイン電極である。
【
図10】
図10は、元のCNT FETおよびOr35aナノディスクの固定後の同じデバイスの変換特性である。V
ds=200mV、PBS緩衝液中。
【
図11】
図11は、OR35aナノディスクで機能化されたCNT FET(1:10希釈)からのPBSおよび標的リガンドであるE-2-ヘキセナールに対するリアルタイム応答である。(a)リアルタイムの電流応答および(b)対数目盛でのE-2-ヘキセナール濃度に対して正規化した値(ΔΙ/Ι
0)。
【
図12】
図12は、Or35aナノディスクで機能化されたCNT FET(1:10)、元のCNT FETおよび空のナノディスクで機能化されたCNT FETからのE-2-ヘキセナール応答に関するリアルタイムの測定である。全てのデバイスは、V
lg=0、V
ds=100mVおよびt=1秒を有する。
【
図13】
図13は、V
lg=0、V
ds=100mV、t=1秒における、対照リガンドであるヘキサン酸メチルに対するOR35aナノディスク(1:10)で機能化したCNT FET応答である。(a)電流応答;(b)正規化した電流。ここでI
0は、分析物の付与を開始する前の電流である。
【
図14A】
図14は、クーマシー染色されたSDS-PAGEゲル(A)空の1E3D1ナノディスク、ならびにOr10a、Or35a、Or71aおよびOr22a受容体を含有するナノディスク;および(B)元のCNTおよびOr22aナノディスクで機能化されたCNTの実施例の原子間力顕微鏡画像であり、黄色のドットは、Or22aと会合したナノディスクである。
【
図14B】
図14は、クーマシー染色されたSDS-PAGEゲル(A)空の1E3D1ナノディスク、ならびにOr10a、Or35a、Or71aおよびOr22a受容体を含有するナノディスク;および(B)元のCNTおよびOr22aナノディスクで機能化されたCNTの実施例の原子間力顕微鏡画像であり、黄色のドットは、Or22aと会合したナノディスクである。
【
図15A】(A)元のCNT FETおよびOr10aナノディスクの固定後の同じデバイスの変換特性:V
ds=100mV、PBS緩衝液中。
【
図15B】(B)OR10aナノディスクで共有結合により機能化したCNT FET(1:100希釈)からの、PBSおよび標的リガンドであるサリチル酸メチル(MeSal)に対するリアルタイムの電流応答。
【
図15C】(C)空のナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、PBSおよび標的リガンドであるサリチル酸メチル(MeSal)に対するリアルタイムの電流応答。
【
図15D】(D)OR10aナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、対数目盛でのサリチル酸メチル濃度および陰性対照リガンドであるE2-ヘキセナール(E2Hex)に対して正規化した値(ΔΙ/Ι
0)。
【
図15E】(E)空のナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、対数目盛でのサリチル酸メチル濃度に対して正規化した値(ΔΙ/Ι
0)。
【
図16】(A)元のCNT FETおよびOr22aナノディスクの固定後の同じデバイスの変換特性:V
ds=100mV、PBS緩衝液中。
【
図16B】(B)OR22aナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、PBSおよび標的リガンドであるヘキサン酸メチル(MeHex)に対するリアルタイムの電流応答。
【
図16C】(C)空のナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、PBSおよび標的リガンドであるヘキサン酸メチル(MeHex)に対するリアルタイムの電流応答。
【
図16D】(D)OR22aナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、対数目盛でのヘキサン酸メチル濃度および陰性対照リガンドであるE2-ヘキセナール(E2Hex)に対して正規化した値(ΔΙ/Ι
0)。
【
図16E】(E)空のナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、対数目盛でのヘキサン酸メチル濃度に対して正規化した値(ΔΙ/Ι
0)。
【
図17A】(A)元のCNT FETおよびOr35aナノディスクの固定後の同じデバイスの変換特性:V
ds=100mV、PBS緩衝液中。
【
図17B】(B)OR35aナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、PBSおよび標的リガンドであるE2-ヘキセナール(E2Hex)に対するリアルタイムの電流応答。
【
図17C】(C)空のナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、PBSおよび標的リガンドであるE2-ヘキセナール(E2Hex)に対するリアルタイムの電流応答。
【
図17D】(D)OR35aナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、対数目盛でのE2-ヘキセナール(E2Hex)濃度および陰性対照リガンドであるヘキサン酸メチル(MeHex)に対して正規化した値(ΔΙ/Ι
0)。
【
図17E】(E)空のナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、対数目盛でのE2-ヘキセナール(E2Hex)濃度に対して正規化した値(ΔΙ/Ι
0)。
【
図18A】(A)元のCNT FETおよびOr71aナノディスクの固定後の同じデバイスの変換特性を示す:V
ds=100mV、PBS緩衝液中。
【
図18B】(B)OR71aナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、PBSおよび標的リガンドである4-エチルグアヤコール(4EG)に対するリアルタイムの電流応答。
【
図18C】(C)空のナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、PBSおよび標的リガンドである4-エチルグアヤコール(4EG)に対するリアルタイムの電流応答。
【
図18D】(D)OR71aナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、さらに、空のナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの、対数目盛での4-エチルグアヤコール(4EG)濃度に対して正規化した値(ΔΙ/Ι
0)。
【
図19A】A)標的リガンドであるサリチル酸メチルおよび対照リガンドであるE2-ヘキセナールへの応答における、Or10aナノディスクで機能化した金電極に関する用量応答曲線。
【
図19B】B)標的リガンドであるヘキサン酸メチルおよび対照リガンドであるE2-ヘキセナールへの応答における、Or22aナノディスクで機能化した金電極に関する用量応答曲線。
【
図19C】C)標的リガンドであるE2-ヘキセナールおよび対照リガンドであるサリチル酸メチルへの応答における、Or35aナノディスクで機能化した金電極に関する用量応答曲線。全ての3つの例において、標的および対照リガンドの結合測定も、空のナノディスクで機能化された金電極を用いて実行される。
【
図20】
図20は、Or22aが会合したリポソーム調製物のSDS-PAGEの抗FLAGウェスタンブロットを示す。レーンは、1:分子量標準、2:His-FLAG-CFPウェスタンブロット標準、3:FC14洗浄剤中で精製されたHis-FLAG-OR22a、4:リポソームに再構成されたHis-FLAG-OR22a、5~12:下(レーン5)から上(レーン12)にかけてのアキュデンツ(Accudenz)の浮遊勾配分画である。His-FLAG-OR22aのバンドが上の2つの分画にのみ存在しており、これは、リポソームに再構成されたことを示すことに留意されたい。
【
図21-1】
図21は、それぞれ、そのままの、SAMで改変された、NHS-EDCとカップリングされた、およびOr22a/リポソームが固定された金表面の、AFMの高さの画像(a~d)、高さの画像上にマークされたラインによって示された粗さのプロファイル(e~h)、および3D画像(i~l)を示す。
【
図21-2】
図21は、それぞれ、そのままの、SAMで改変された、NHS-EDCとカップリングされた、およびOr22a/リポソームが固定された金表面の、AFMの高さの画像(a~d)、高さの画像上にマークされたラインによって示された粗さのプロファイル(e~h)、および3D画像(i~l)を示す。
【
図21-3】
図21は、それぞれ、そのままの、SAMで改変された、NHS-EDCとカップリングされた、およびOr22a/リポソームが固定された金表面の、AFMの高さの画像(a~d)、高さの画像上にマークされたラインによって示された粗さのプロファイル(e~h)、および3D画像(i~l)を示す。
【
図21-4】
図21は、それぞれ、そのままの、SAMで改変された、NHS-EDCとカップリングされた、およびOr22a/リポソームが固定された金表面の、AFMの高さの画像(a~d)、高さの画像上にマークされたラインによって示された粗さのプロファイル(e~h)、および3D画像(i~l)を示す。
【
図22A】A)標的リガンドであるサリチル酸メチル、および対照リガンドであるヘキサン酸メチルへの応答における、Or10aリポソームで機能化した金電極に関する用量応答曲線を示す。C)標的リガンドであるヘキサン酸メチルおよび対照リガンドであるサリチル酸メチルへの応答における、Or22aリポソームで機能化した金電極に関する用量応答曲線を示す。
【
図22B】D)標的リガンドである4-エチルグアヤコールおよび対照リガンドであるE2ヘキセナールへの応答における、Or71aリポソームで機能化した金電極に関する用量応答曲線を示す。各実施例において、標的および対照リガンドの結合測定も、空のリポソームで機能化された金電極を用いて実行される。
【
図23A】(A)SAMおよびNHS/EDCでの改変、Or22aリポソーム固定、それに続く標的リガンドであるヘキサン酸メチルの結合に伴う、散逸(dissipation)モニタリング機能付き水晶振動子マイクロバランス(QCM-D)における周波数および散逸(dissipation)における変化を示す。
【
図23B】(B)Or22aリポソーム固定QCM-Dセンサーの場合の、濃度を増加させたヘキサン酸メチル(緩衝液のみ、1.6、8、40および200μΜ)に伴う周波数および散逸における変化の拡大図を示す。
【
図23C】(C)SAMおよびNHS/EDCでの改変、空のリポソーム固定、それに続く標的リガンドであるヘキサン酸メチルの結合に伴う、QCM-Dセンサーにおける周波数および散逸における変化を示す。
【
図23D】(D)空のリポソーム固定QCM-Dセンサーの場合の、濃度を増加させたヘキサン酸メチル(緩衝液のみ、1.6、8、40および200μΜ)に伴う周波数および散逸における変化の拡大図を示す。
【実施例】
【0262】
ここで本発明を以下の非限定的な例を参照しながら例示する。
上述の例のみに本発明の範囲を限定することは意図されない。当業者は理解しているであろうように、本発明の範囲から逸脱することなく多くのバリエーションが可能である。
【0263】
実施例1-電気インピーダンス分光法(EIS)を用いた本発明のセンサーの例証
1.0 実験方法
1.1 材料
N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)ペレット、6-メルカプトヘキサン酸(MHA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)をシグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)から購入した。別段の指定がない限り、全ての水溶液を蒸留水(ミリQ(Milli-Q)18.2ΜΩ)を用いて調製し、マイクロサイエンス(Microscience)のヒドラフロン(Hydraflon)フィルター(0.22μm)に通過させてろ過し、N2で10分間フラッシングした。1.6mmの金(Au)ディスク電極、白金(Pt)らせん形補助電極およびAg/AgCl参照電極を、BASIから購入した。
【0264】
1.2 リポソームが会合したORサブユニットの調製
N2ガス流下で、小さいガラスチューブ中で、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、およびコレステロール(CH)を5:3:3:1のモル比で含有する溶液を蒸発させ、次いで真空中で1時間乾燥させることによって生産されたリン脂質溶液を使用して、リポソームを調製した。
【0265】
これらの脂質を、5分間ボルテックスで混合することによって1mLの再水和緩衝液(10mMのHEPES、pH7.5、300mMのNaCl)中に再懸濁し、続いてマイクロソン(Microson)超音波細胞破砕装置(メディソニック(Medisonic)、米国)で、20%の出力、10~20秒で5回音波破砕し、各超音波破砕工程間に1分間サンプルを氷上に置いた。リポソームの形成を促進するために、10回の凍結/融解工程を、液体窒素から40℃の水浴にチューブを移動させることによって実行した。
【0266】
次いで、アベスティン(Avestin)のLiposoFAST押出ユニット(アベスティン、ドイツ)を使用して、脂質溶液を100nmのポリカーボネート膜に11回通してリポソームを所定サイズに分類した。最終容量の10%の量でグリセロールを添加し、液体窒素中で10mg/mLのアリコートを急速冷凍し、-80℃で貯蔵した。
【0267】
精製されたORサブユニット43を、Geertsmaら、(2008)34のプロトコールに類似した方式で合成リポソームに再構成した。
それらの使用の前に、リポソームを氷上で解凍し、次いで0.2%のCHAPSと共に室温で15分インキュベートすることによって不安定化した。次いで200μgの精製した匂い物質受容体14を1mgのリポソームに添加し、10rpmで1時間回転した。25mgのバイオビーズ(Bio-Beads)SM-2(バイオラッド(Bio-Rad)、米国)を4回添加し、それぞれ4℃で30分、2時間、一晩およびさらに2時間インキュベートすることによって、過量の洗浄剤を除去した。各インキュベーション期間後にバイオビーズを除去した。ORが一体化したリポソームを、100,000gで1時間の遠心分離によってペレット化し、500μlの再水和緩衝液中に再懸濁した。アキュデンツ(アキュレートケミカル&サイエンティフィック(Accurate Chemical & Scientific)社、米国)を使用した密度勾配超遠心分離(DGU)によって、リポソームへのOrXの一体化を評価した。等しい体積の80%アキュデンツ溶液の添加によって、一体化されたリポソームを40%アキュデンツにし、超遠心分離管の底部に入れ、30%アキュデンツ溶液、およびDGU緩衝液(25mMのHEPES、pH7.5、100mMのNaCl、10%グリセロール)を上に載せた。次いでサンプルを、100,000g、4℃で4時間遠心分離した。リポソームは、それらの低密度のために、アキュデンツDGUの後の勾配の最上部に浮遊するであろう。
【0268】
1.3 電極のクリーニング
金ディスク(2mm)電極をアルミナペーストで2分磨くことによってクリーニングし、純粋なエタノール中で、次いでミリQ水中でそれぞれ5分、超音波破砕した。次いでチオール脱離の場合、3つの末端電気化学セルにおいて、それぞれ0.1MのNaOH中で-1.4Vを30秒間適用した。電極を再度アルミナペーストで2分間磨き、純粋なエタノール中で、次いでミリQ水中でそれぞれ5分間、超音波破砕した。50mV/秒のスキャン速度で-0.2から1.6Vの間で5サイクルにわたり0.5MのH2SO4中に循環させることによって、残存する全ての有機分子をクリーニングした。
【0269】
1.4 自己組織化単分子層(SAM)の調製および活性化
クリーニングされた電極を6-メルカプトヘキサン酸(MHA)の2mMのエタノール溶液に一晩浸した。その後、電極を無水エタノールおよびミリQ水で処理した。
【0270】
MHAのカルボキシル基の活性化を、100mMの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および50mMのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の混合物を含有するPBS(pH6.5)溶液中で、28℃で60分間電極をインキュベートすることによって実行した。
【0271】
1.5 リポソームのインキュベーション
-COOH活性化の後、PBS(pH7.4)でのリポソームの1:100希釈液100μl中で、室温で20分間、電極をインキュベートした。次いでそれらを過量のPBS(pH7.4)で穏やかに濯いだ。
【0272】
1.6 標的匂い物質溶液の調製およびインキュベーション
標的溶液を1%DMSOを含有するPBS(pH7.4)で希釈し、128pM、640pM、3.2nM、16nM、80nM、400nMおよび2μΜの濃度にした。電極を関連する匂い物質溶液中でそれぞれ5分間インキュベートし、PBS(pH7.4)で穏やかに洗浄した。
【0273】
【0274】
1.7 電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定
続いて、対電極(CE)として白金(Pt)線、Ag/AgCl(3MのKCl、SHEに対して+0.197V)参照電極(RE)、および作用電極(WE)としてリポソームを含む1.6mmの金ディスク電極を含む3つの末端の電気化学セルにおいて、100kHz~0.2Hzの間で、参照に対して-0.7Vを適用して、EIS測定を実行した。表面の電荷移動抵抗は、各匂い物質のインキュベーション後、減少し、2μΜの匂い物質の添加後、不変のままであった。
【0275】
2.0 結果
きれいな金表面をMHAと共に一晩インキュベートして、-COOH基で表面機能化した。次いでリポソームを有する受容体(Or35a、Or22aまたはOr10aのいずれか)を、NHS-EDC化学を介してMHAに共有結合させた(
図2)。濃度を増加させた標的(リガンド)のインキュベーションの前および後にEIS測定を実行した。表1に、この研究で使用された受容体およびリガンドを示す。
【0276】
受容体-リガンド相互作用は、全体的な表面電荷を変更し、このような変化はEISで観察できると予測される。
図3は、インピーダンススペクトルエボリューションが、Or35aで機能化された電極上でのそれに続くリガンド(E2-ヘキサナール)のインキュベーションによってもたらされたことを表す。この論文で研究された全てのタイプの受容体にとって、電極のインピーダンスは、相互作用するリガンドの量が増加するにつれ減少した。
【0277】
電極の電荷移動抵抗(R
ct)を、定位相エレメント(CPE)と直列であり、電荷移動抵抗(R
ct)およびワールブルグ拡散エレメントと並列の溶液抵抗(R
s)を含むランドルスの等価回路[R
s+CPE/(R
ct+W)]に、得られたデータをフィッティングすることによって計算した。次いで得られたR
ct値をR
0
ct(ΔR
ct)に正規化した。ここでR
0
ctは、リガンドとのインキュベーションの前の電極を表す。センサー応答をΔR
ct/R
0
ct対log[C(リガンド)]と定義することによって検量線を得た(
図4)。
【0278】
図4は、感知実験の3回の反復(or10aおよびor35a)および2回の反復(or22a)から得られた相対的に小さいエラーバーによって強調される検出の再現性を解明する。得られたセンサーは、3~4桁のダイナミックレンジ以内の極めて低い検出限界を有する。シグナル/バックグラウンドの変動(ノイズ)が>3とみなされる場合
35~38、匂い物質の最も低い検出可能な濃度を、Or10aの場合、3.3×10
-10Mのサリチル酸メチル、Or35aの場合、3.6×10
-11MのE2-ヘキセナール、およびOr22aの場合、2.8×10
-10Mのヘキサン酸メチルと計算した。これらの検出限界は、リポソームを使用せずに匂い物質結合タンパク質をセンサー表面上に直接固定させた以前の研究より顕著に低い。例えば、匂い物質結合タンパク質(BdorOBP2)を金基板上に直接固定させた場合、センサーは、クイーンフェロモン(p-ヒドロキシ安息香酸メチル)、警報フェロモン(酢酸イソアミル)、リナロール、ゲラニオール、β-イオノン、4-アリルベラトロール、フェニルアセトアルデヒド、フタル酸ジブチルについて、マイクロモル(10
-6M)前後の検出限界を与えた
39。別の研究において、ショウジョウバエのOBP LUSHの配列を含有するペプチド溶液を再度金表面上に直接固定したところ、1-ヘキサノールの場合、4.9 10
-5M、3-メチルブタノールの場合、5.6 10
-5Mの検出限界が達成された
40。近年の研究において、金の代わりに、感知エレメントとしてカーボンナノチューブを採用し、再度OBPタンパク質をいかなる媒体なしに直接固定した
41。著者が報告するところによれば、1.8×10
-2Mの2-ヘプタノンおよび0.52×10
-10MのTNTを検出することができた。
【0279】
得られたセンサーの感度を、各センサーの直線の範囲(最も低い3つの濃度)の傾きを使用することによって計算したところ36、42、38、Or10aの場合、0.313単位/[log(濃度/M)]、Or35aの場合、0.116単位/[log(濃度/M)]、およびOr22aの場合、0.156単位/[log(濃度/M)]であることが見出された。
【0280】
3.0 考察
出願人は、最初に様々な自己組織化単分子層(SAM層)を試験して、リポソームを金電極表面上に結合させるのに最適な長さのリンカーとして6-メルカプトヘキサン酸(MHA)を同定した。事前に、16-メルカプトヘキサデカン酸(16-MHDA)酸を使用して、金表面を機能化し、リポソームを金電極上に結合させた。この実験が高い感度を示さなかったという結果は、検出可能なシグナルを生じるにはリポソームが電極表面から極端に離れていたことを示唆している。この障害を克服するために、出願人はその代わりに、より短い6-メルカプトヘキサン酸を使用した。出願人は、リンカーがより短ければ、金とリポソームとの間のより速い電子移動が提供されると予想され、したがってその表面上で起こるあらゆる事象をより高い感度でモニターできると仮定した。未加工の細胞膜中に哺乳類匂い物質受容体を固定した2つの論文のケースでは、著者らは、16-メルカプトヘキサデカン酸(16-MHDA)34または6-メルカプトヘキサデカン酸(6-MHDA)14のいずれかをSAM形成に使用した。
【0281】
比較データから、本明細書で開示される昆虫OR-EISバイオセンサー様式は、昆虫の匂い物質受容体と共に使用されてきた他のセンサー様式より高い感度を有することが示される。
【0282】
表2に、匂い物質受容体ベースのデバイスに関する公開データをまとめる。本発明のデバイスは、細胞ベースのセンサーより100~10,000倍高い感度を提供する。
【0283】
【0284】
表3に、細胞アッセイから得られたデータをまとめる。本発明の昆虫OrX-EISセンサーデータは、HEK293細胞およびアフリカツメガエル卵母細胞で発現されたOrX/Orcoより高い感度を有する。これらのシステムにおいて、一部のフェロモン受容体(PR)は、正常な匂い物質受容体よりかなり低い感度を呈示するが、これは、これらの受容体がそれらのフェロモン標的分子に精密に調整されているためと予測されることに留意されたい。
【0285】
【0286】
実施例2-カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT-FET)を用いた本発明のセンサーの例証
1.要約
出願人は、昆虫OrX配列を使用する便利な高感度のセンサーデバイスを生産した。ナノディスク55、56中に埋め込まれたキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のOR35a43昆虫OrX受容体を、1-ピレンブタン酸スクシンイミジルエステル(PBASE)およびポリヒスチジン機能化によりCNT FET上で機能化した。CNT FETは、1fM濃度から開始したリアルタイムの電流測定モードで、標的リガンドであるE-2-ヘキセナールに対して明確な電子応答を示した。結合の特異性は、対照材料、PBSおよびヘキサン酸メチルに対するOR35aで機能化したCNT FET応答を試験することによって検証される。特異性をさらに確認するために、元のCNT FET(pristine CNT FET)および空のナノディスクで機能化したCNT FET(empty nanodisc functionalized CNT FET)のE-2-ヘキセナールに対する応答も、試験される。
【0287】
2.実験方法
2.1 カーボンナノチューブトランジスタデバイスの製作
カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT FET)を製作するために、まず、センサープラットフォームであるCNTを、界面活性剤を含まない溶液堆積方法(a solution deposition route with no surfactants)を使用してSiO
2/Si基板(SiO
2=100nm)上に堆積させる
58、59。鋭いピンセットの先端の量のCNTバッキーペーパー(99.9%のナノインテグリス(Nano Integris)製のイソナノチューブ-S(IsoNanotube-S))を、1時間超音波破砕することによりジクロロベンゼン(DCB)中に分散する。
図5(a)で示されるようにして、SiO
2基板を、ポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンピング方法により2-チオール-ピリジンの薄層(シグマアルドリッチ)で機能化する
58、59。次いで、
図5(b)
58、59で示されるように、2-チオール-ピリジンで機能化したSiO
2/Si基板を、30分から6時間までの範囲の時間にわたりCNT DCB懸濁液中に浸す。本発明者らは、浸す時間によってCNT薄膜ネットワーク構造の制御を可能にする。CNT懸濁液から基板を取り出し、エタノール中でクリーニングし、きれいなN
2中で乾燥させる。その結果、基板表面全体をカバーする一様の薄膜CNTネットワークを得る。
【0288】
基板の全体がCNTでコーティングされているため、FETデバイスの活性なチャネルを形成するであろうCNTの配置を制御することが必須である。そのようにするために、CNTフィルムをフォトレジストでコーティングし、その後、光学リソグラフィーを使用して制御された配置にパターン化する。フォトレジストでコーティングされたCNTは、保護されたCNT FETチャネル領域を形成する。次いで反応性イオンエッチング(オックスフォード・インストゥルメンツ(Oxford Instruments)のプラズマラボ80(Plasmalab 80))を使用して、露出したCNTをエッチングで削る。エッチング条件は、600mTorr、200ワット、40sccmのO
2フロー、および3分のエッチング時間である。これにより、100μm(長さ)×100μm(幅)のCNT薄膜面積が制御された配置に残存する。次いでソースおよびドレイン電極を、第2のフォトリソグラフィー工程によって画定し、続いてCr/Au(5nm/50nm)電極を蒸着し、リフトオフする。
図6に、このプロセスを模式的に提示する。
【0289】
最後に、フォトリソグラフィーによって電極をAZ1518フォトレジストで封止して、感知実験中の電気的な漏洩電流と電極の損傷を防ぐ電気絶縁ウェルとして機能させる(
図7)。
【0290】
電極封止の後、露出したCNT面積は100μm(幅)×10μm(長さ)になり、これが最終的にデバイス20の活性な感知領域になる。次いでフォトレジストで封止したCNT FETデバイスを、200℃のホットプレート上で10分ベークし、室温まで徐々に冷却する。次いで手作りのポリジメチルシロキサン(PDMS)ウェルを、
図8で示されるようにして、CNT FETの機能化および電気的試験のために基板に永続的に取り付ける。
【0291】
2.2 嗅覚受容体の固定
2.2.1 カーボンナノチューブの非共有結合による機能化
CNTの電子特性を損なうことなく嗅覚受容体をCNT表面上に固定するために、非共有結合による機能化方法を選ぶ。OrX機能化は、his-タグ化学反応を介してなされ、ここでCNT表面は、最初に1-ピレンブタン酸スクシンイミジルエステル(PBASE)(95%純度、シグマアルドリッチ)で機能化される。PBASE溶液を、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒中10mMの濃度で作製し、DMSO中にPBASEが完全に溶解するまで1600rpmで30秒撹拌する。PDMS試験ウェルに、120μlのPBASE溶液を室温で1時間かけて添加する。PBASEで機能化した後、過量のPBASEを洗浄して取り除くために、CNT FETを純粋なDMSO溶媒中で3回クリーニングする。デバイス基板から残留したDMSOを除去するために、サンプルをリン酸緩衝塩類溶液(PBS、pH=7.4)中で3回洗浄する。
【0292】
2.2.2 ニトリロ三酢酸の機能化
次いでPBASEで機能化したCNT FETを、11.3mM濃度のニトリロ三酢酸溶液に2時間浸すことによって、ニトリロ三酢酸(NTA、Mw約191.14g/mol)で機能化する。PBS中11.3mMのNTAを、100mMのNTAストック溶液(ストック溶液は、通常、使用しないときは4℃の冷蔵庫に保管される)から希釈し、120μlのNTA溶液を、室温での機能化のためにPDMSウェルに添加する。PBS中で3回洗浄し、続いて脱イオン水(脱イオン水、18.2Ω・cm)中に少なくとも1時間浸漬することによって、過量のNTAをクリーニングする。
【0293】
2.2.3 硫酸ニッケルでの機能化
NTAで機能化したCNTを、11.3mMの硫酸ニッケル(NiSO4、Mw約154.76g/mol)溶液中で30分インキュベートする。PBS中11.3mMのNiSO4を、100mMのNiSO4ストック溶液(ストック溶液は、使用しないときは4℃の冷蔵庫で維持される)から希釈する。120μlのNiSO4溶液を、室温での機能化のためにPDMSウェルに添加する。PBS中で3回洗浄することによって過量のNiSO4を除去する。
【0294】
2.2.4 嗅覚受容体の機能化
OR/ナノディスク55、56は、his-タグとの親和性結合を介して、Ni-NTAで機能化したCNT FET上に固定される。ナノディスク溶液を調製するために、バルクのOrX/ナノディスク溶液を、PBS緩衝液で1:10または1:100希釈のいずれかに希釈する。1:10希釈液を作製するために、10μlのストックナノディスク溶液を、100μlのPBSに添加する。1:100希釈液を作製するために、1μlのストックナノディスク溶液を、100μlのPBSに添加する。OrX/ナノディスクストック溶液は通常、使用しないときは-80℃の冷凍庫で貯蔵されるか、または1週間まで-20℃の冷凍庫中で貯蔵される。希釈したナノディスクをPDMSウェルに添加し、次いでCNT表面の全体を、機能化のためにナノディスク中に室温で30分浸漬する。機能化プロセスの後、過量のナノディスクを、PBS中で3回洗浄することによってクリーニングする。
【0295】
2.3 電気的な測定
電気的な測定を行うために、
図9で示されるようにして、マイクロマニピュレーターおよびルッカー・アンド・コールス(Rucker and Kolls)のプローブステーションにより、PDMSウェルならびにソース、ドレインおよびゲート電極を用いてデバイスを組み立てる。電気的な測定を開始する前に、100μlのPBS緩衝液(1%DMSO含有)を試験ウェルに添加した。ゲート電極は、プラスチックで覆ったAg/AgCl線(インビボでの測定基準)である。ここで、ゲート電極の活性領域を変化させるときに生じることが知られている電気的な産物を回避するために、Ag/AgCl端部の露出した領域は完全にPBS緩衝液に挿入された。アジレントの4156Cパラメーター分析器は、全ての電気的な測定に使用することができる
20。パラメーター分析器は、優れた感度を有し、フェムトアンペアスケールで電流を正確に測定することができる。
【0296】
移動(Vlg-Ids)測定中、ゲート電圧(Vlg)を-500mVから+1Vの間でスイープし、ソースドレイン電圧(Vds)を固定値(50mV、100mVまたは200mV)として設定する。本発明者らのリアルタイム感知測定のために、Vlgを0に設定し、Vdsを固定値(50mV、100mVまたは200mV)、1秒の工程時間として設定する。
【0297】
2.4 リガンドの希釈
E-2-ヘキセナールリガンド溶液を、本発明者らの100mMのストック溶液から、感知実験に必要な濃度範囲に希釈する。DMSO中100mMのストックE-2-ヘキセナールを調製するために、本発明者らは、5μl体積の8.4MのE-2-ヘキセナール(シグマアルドリッチから購入)を取り、415μlのDMSO中で混合し、使用しないときは冷蔵庫中4℃で貯蔵する。この溶液を試験範囲までさらに希釈するために、PBS緩衝液を使用する。PBS(1%DMSO含有)中のE-2-ヘキセナールの測定範囲は、1fM~1nM(10倍の増加)または64pM~200nM(5倍の増加)である。リアルタイムの測定中、PBS溶液(1%DMSO含有)を最初に対照として添加し、加えて分析物を濃度を増加させて添加する。
【0298】
3.結果および考察
3.1 OR35a/ナノディスクの機能化後のCNT FETの変換特性
感知測定を行う前に、CNT FET変換特性を測定して、機能化プロセスの成功を決定する。
図10は、OR35aナノディスクで機能化したCNT FET(丸)と、元のCNT FET(四角)との比較であり、それによれば、閾値電圧は、OR35aナノディスクの機能化後に負電圧方向にシフトしたことは明らかである。フォワードI-Vスキャンにおける閾値電圧は、0.6V(元)から0.42V(OR35aナノディスクを含む)にシフトした。これは、Ni
+(NiSO
4)の正電荷からの静電ゲーティング(electrostatic gating)作用に加えて、担体がCNTの側壁に取り付けられたナノディスクによって散乱することに起因する可能性がある
60。CNTに係留されたアプタマーの負電荷が閾値電圧で正のシフトを引き起こすとき、これは、本発明者らの以前の調査と同様に、OrX/ナノディスクの固定が成功したことを示す証拠である
58、61。ORでうまく機能化されたCNT FETの場合、閾値電圧は常に、負電圧方向にシフトする。
【0299】
3.2. OR35aナノディスクおよびリガンド結合
3.2.1.OR35aナノディスクで機能化されたCNT FET(1:10希釈)
CNT FETを、上述したようにして、OR35aナノディスクで、1:10希釈で機能化した。PBS緩衝液を試験ウェルに添加し、次いで、デバイスのソース-ドレイン電流を絶えずモニターしながら、E-2-ヘキセナールを、64pM、320pM、1.6nM、8nM、40nMおよび200nMの順番で3分毎に添加する。
図11(a)において、PBS緩衝液の添加による電流のわずかな増加がみられ、それに対して電流は、64pMのE-2-ヘキセナールへの曝露の後に即時の大きい減少を示す。この電流における減少は、OR35aとE-2-ヘキセナールとの結合がCNT FETへの有効なゲーティングを変化させることに起因する
58、60、62。320pM、1.6nM、8nMおよび40nMのE-2-ヘキセナールへの曝露それぞれにおいて、さらなる電流の減少が観察される。
【0300】
図11(b)は、E-2-ヘキセナールの濃度への正規化した電流応答の電流の依存性を示す。電流における変化ΔΙは、
図11(a)でのリアルタイムの測定に基づき、ΔΙ=I-I
0(式中Iは、E-2-ヘキセナールへの曝露の後に安定化した電流であり、I
0は、64pMのE-2-ヘキセナールを試験ウェルに添加する前の初期電流である)によって計算される。64pMで、ΔΙ/Ι
0は、10%変化する。S字状のラングミュア吸着曲線を達成するためには、本発明者らの最初の測定を64pM濃度のE-2-ヘキセナールを用いて行ったように、より低い濃度とより多くの測定が必要である。ここでΔΙ/Ι
0は、より高い濃度のE-2-ヘキセナールをデバイスウェルに添加するにつれて増加し続ける。
【0301】
3.3 対照実験
電流応答が本当にOR35aとE-2-ヘキセナールとの結合によるものであることを確認するために、対照実験を行った。これらの測定は、元のCNT FETおよび空のナノディスクで機能化されたCNT FETによるE-2-ヘキセナール応答である。
図12では、リアルタイムの電流測定をプロットして比較を示す。
【0302】
3.3.3 OR35ナノディスクは対照リガンドに応答しないことの検証
非特異的なリガンド、このケースではヘキサン酸メチルに対するOR35aナノディスクの電気的な応答も測定される(
図13)。
図13において測定された濃度範囲は、70nMから500μΜであり、これは、
図12におけるE-2-ヘキセナール濃度の測定範囲より高い。E-2-ヘキセナールが添加される時間に明確な段階的応答が観察され、3分後に電流が安定状態に到達する
図11に示した結果とは異なり、
図13におけるヘキサン酸メチルリガンドに関するリアルタイムの測定は、経時的なバックグラウンドのドリフト電流を示すが、明確な応答を示さない。
【0303】
4.結論
この研究は、電子デバイスプラットフォームをベースとしたOR35aおよび有望な嗅覚バイオセンサー用途の認識能力を実証した。CNTをNi-NTAで機能化した後、ナノディスク中に埋め込まれたOR35aを、ポリヒスチジンタグを介してCNT FET上で機能化する。Ni-NTAを、PBASEで機能化したCNT FETのN-ヒドロキシスクシンイミド基上に連結する。この方法を使用することによって、OR35aナノディスクで機能化したCNT FETは、リアルタイムで64pMのE-2-ヘキセナールリガンドに対する応答を実証し、PBS緩衝液に対する応答はなかった。元のCNT FETにおける結果、加えて空のナノディスクで機能化したCNT FETと比較して、E-2-ヘキセナールに対する明確な電流応答は観察されない。OR35aの特異的な結合も、OR35aで機能化したCNT FETからの、PBSおよび対照リガンドであるヘキサン酸メチルに対する応答を試験することによって検証した。OR35aナノディスクで機能化したCNT FETは、経時的なE-2-ヘキセナールの特異的で高感度な検出を実証した。
【0304】
比較データは、ここで開示された昆虫OrX-CNT-FETバイオセンサー様式が、昆虫の匂い物質受容体と共に使用されてきた他のセンサー様式より高い感度を有することを示す。
【0305】
表4に、匂い物質受容体ベースのデバイスの公開されたデータをまとめる。本発明者らは、本発明のデバイスが、細胞ベースのセンサーより100~10,000倍大きい感度を提供すると推測する。
【0306】
【0307】
表3に、細胞アッセイから得られたデータをまとめる。本発明の昆虫OrX-CNT-FETセンサーデータは、HEK293細胞およびアフリカツメガエル卵母細胞で発現されたOrX/Orcoより高い感度を有する。これらのシステムにおいて、一部のフェロモン受容体(PR)は、正常な匂い物質受容体よりかなり低い感度を呈示するが、これは、これらの受容体がそれらのフェロモン標的分子に対して精密に調整されているためと予測されることに留意されたい。
【0308】
実施例3-カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT-FET)を用いた本発明のさらなるセンサーの例証
1.要約
出願人はさらに、昆虫OrX配列を使用する便利な高感度のセンサーデバイスを例示した。4種のキイロショウジョウバエOrX受容体(Or10a、Or22a、OR35aおよびOr71a)43、63をそれぞれ、ナノディスク55、56中に埋め込み、さらに最適化された条件下で1-ピレンブタン酸スクシンイミジルエステル(PBASE)およびアミン基反応(OrXおよび膜足場タンパク質上に存在する)によりCNT FET上で機能化した。OrXで機能化したCNT FETのそれぞれは、1fM濃度から開始したリアルタイムの電流測定モードで、それらの標的リガンドに対して(Or10aはサリチル酸メチル、Or22aはヘキサン酸メチル、Or35aはE-2-ヘキセナール、Or71aは4-エチルグアヤコールに対して)明確な電子応答を示した。結合の特異性は、対照材料、PBSおよび非応答性リガンドに対する各OrXで機能化したCNT FET応答を試験することによって検証される。特異性をさらに確認するために、元のCNT FETおよび空のナノディスクで機能化したCNT FETの標的リガンドに対する応答も、試験される。
【0309】
2.実験方法
2.1 材料
膜足場タンパク質MSP1E3D1を、キューブバイオテック(Cube Biotech)(番号26152)から購入し、5mg/mLに水中に再懸濁した。1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)を、アバンティポーラーリピッド(Avanti polar lipids)(番号850457)から購入し、必要になるまでクロロホルム中100mg/mLのストック溶液として-20℃で貯蔵した。
【0310】
2.2 カーボンナノチューブトランジスタデバイスの製作
この実験設定において、ランダムチャネルCNT FETセンサープラットフォームを、簡単な溶液堆積方法および標準的なフォトリソグラフィー技術を使用して、SiO
2/Si基板(SiO
2=100nm)上に製作した
20、21。まず第一に、SWNT懸濁液を、超音波破砕を使用して無水1,2-ジクロロベンゼン(DCB)中で調製した。99%の半導体グレードのSWNTバッキーペーパー(ナノインテグリス)の重さを量り、DCB中に分散して、5μg/ml懸濁液を得た。透明な溶液が得られるまで分散液を超音波破砕した。温度を超音波破砕プロセス中ずっと25℃に維持した。次いで、
図5(a)で示されるようにして、SiO
2/Si基板を、簡単なスタンピング方法によって、チオールピリジン分子で機能化した。1mlのメタノール中に10mgの2-メルカプトピリジン(99%、シグマアルドリッチ)を溶解させることによってチオールピリジン溶液を調製した。この溶液を、ポリジメチルシロキサン(PDMS)表面上に、2000rpmで1分間スピンコーティングした。スピンコーティングプロセスの前に、PDMS表面を、湿潤性を改善するために1分にわたり50Wの酸素プラズマによってクリーニングした。クリーニングされた基板を、PDMS表面上にひっくり返して3分置き、エタノール中で洗浄して、過量のチオールピリジン分子を除去した。次いで基板をCNT懸濁液に移し、懸濁液に10分間浸した。懸濁液からサンプルを取り出し、エタノールにさらに10分間浸して、SWNTネットワーク中のチオールピリジン分子を除去した。フォトリソグラフィーおよび5nmのクロムおよび50nmの金の熱蒸着によりマーカーを画定することによって、アライメントマーカーを堆積させる。15分のアセトン浸漬とそれに続くイソプロピルアルコール(IPA)での洗浄およびN
2でのブロー乾燥によって、金属のリフトオフを行った。その結果、基板表面全体をカバーする均一な薄膜CNTネットワークが得られる。
【0311】
フォトレジストでのCNTフィルムのコーティングとそれに続くパターン形成、およびフォトレジストでの電極の封止は、実施例2のセクション2.1に記載した通りである。
2.2 嗅覚受容体の固定
2.2.1 精製されたORサブユニットの調製
精製手順は、Carraherら、201314で詳述されたものの改変法である。バキュロウイルスに感染したSf9細胞からタンパク質をhis-タグ親和性により精製するために、500mlの2×106/mlを0.1のMOIでバキュロウイルスに感染させ、27℃で72時間インキュベートした。3800gで室温で10分の遠心分離によって細胞ペレットを収集し、次いで25U/mLベンゾナーゼ(Benzonase)を含む40mlの再懸濁緩衝液A(20mMのトリス/HCl、pH7.5、100mMのNaCl、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(ロシュ・ダイアグノスティックス社(Roche Diagnostics GmbH)、ドイツ))に再懸濁し、次いでエマルシフレックスC5(Emulsiflex C5)乳化装置(アベスティン、ドイツ)を10,000~15,000psiで2回通過させることによって溶解させた。次いでサンプルを1000gで5分遠心分離して、細胞全体および核を除去した。上清を除去し、4℃、100,000gで1時間スピンした。膜ペレットを、1%w/v洗浄剤(ツヴィッタージェント(Zwittergent)3-16)を含む40mlの緩衝液Aに再懸濁し、室温で1時間、10rpmで回転させた。次いでサンプルを、18℃、100,000gで1時間遠心分離した。上清を除去し、1mlのNiNTAカラム(GEヘルスケア(GE Healthcare))にローディングし、そこでツヴィッタージェント3-16洗浄剤をフォス-コリン14(Fos-Choline 14)(FC-14)に交換した。カラム体積の10倍の300mMのNaClおよび20mMのイミダゾールを含む緩衝液B(20mMのトリス/HCl、pH7.5、3.6mMのFC-14)中で、さらにカラム体積の10倍の100mMのNaClおよび50mMのイミダゾールを含む緩衝液B中でカラムを洗浄した。タンパク質を、100mMのNaClおよび500mMのイミダゾールを含むカラム体積の4倍の緩衝液Bで溶出した。クーマシー染色されたSDS-PAGEゲルおよびウェスタンブロッティングで純度を評価した。
【0312】
最終的なサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)工程を用いて精製を完了した。NiNTA精製からの溶出画分をプールし、20,000gで5分遠心分離して、集合体(aggregate)と汚染物質を除去した。次いでAkta-Pureクロマトグラフィーシステム(GEヘルスケア)に取り付けられたスーパーデックス200(Superdex 200)16/60カラム(GEヘルスケア)に5mLのサンプルを注入した。100mMのNaClを含む緩衝液B中、1mL/分でサンプルを流し、2mL分画を収集し、100kDaのMWCOのビバスピン2(Vivaspin2)フィルターユニット(ザルトリウス(Sartorius)、ゲッティンゲン、ドイツ)を使用して濃縮し、-80℃で貯蔵した。
【0313】
2.2.2 ナノディスクが会合したORサブユニット(nanodisc associated OR subunits)の調製
Bayburtら、2010および200355、56から改変したプロトコールを使用して、ナノディスクを調製した。1:0.2:150のMSP:タンパク質:脂質の比率でナノディスクを形成した。100mg/mLストックから必要な量の脂質を取り出し、窒素ガスの一定流下で乾燥させ、次いで真空中で一晩さらに乾燥させた。脂質を必要な体積の緩衝液(20mMのトリス/HCl、pH7.5、100mMのNaCl、50mMのコール酸ナトリウム)中に再懸濁し、超音波破砕し、透明な脂質ストックを20mg/mL濃度で得た。洗浄剤緩衝液中の精製した匂い物質受容体タンパク質を、MSP1E3D1およびPOPC脂質と必要な比率で混合し、氷上で1時間インキュベートした。系から洗浄剤を除去することによって再構成を開始させるために、バイオビーズSM2(バイオラッド番号1523920)を、1:1の重量:体積比でサンプルに添加し、混合物を一定して回転させながら4℃で一晩インキュベートした。次いでバイオビーズを除去し、取り込まれたナノディスクを、必要になるまで-80℃で凍結した。
【0314】
取り込みを、クーマシー染色されたSDS-PAGEゲルによって確認した。バイオビーズ添加前の再構成混合物のサンプルを、バイオビーズインキュベーション工程後のサンプルとクーマシー染色されたSDS-PAGEゲルによって比較したところ、MSP1E3D1およびORのバンドが明確に確認された。ORタンパク質がナノディスクに取り込まれていなかったならば、バイオビーズによる洗浄剤の除去は、ORタンパク質の沈殿を引き起こしていたであろうことから、バイオビーズインキュベーション後のサンプル中にORが存在しなかったことになる。
【0315】
2.2.3 カーボンナノチューブの共有結合による機能化
嗅覚受容体ナノディスクをCNT表面上に固定するために、共有結合による機能化方法を選ぶ。OR機能化を、アミン/エステル反応を介して達成し、ここでCNT表面は、最初に1-ピレンブタン酸スクシンイミジルエステル(PBASE)(95%純度、シグマアルドリッチ)で機能化された。これを行うために、体積120μlのPBASE溶液を、室温で1時間かけてCNTチャネルに添加する。PBASE溶液を、1分間の超音波破砕によって、メタノール中10mMの濃度で作製する。PBASEで機能化した後、過量のPBASEを洗浄して取り除くために、CNT FETをメタノール中で3回クリーニングする。残留したメタノールを除去するために、デバイスをリン酸緩衝塩類溶液(PBS、pH=7.4)中で3回洗浄する。
【0316】
OR-ナノディスクは、膜足場タンパク質(MSP)上に存在するアミン基に特異的なアミン/エステル反応およびORが会合したナノディスクを構成するORサブユニットを介して、PBASEで機能化したCNT FET上に固定される。ナノディスク溶液を調製するために、バルクのOR-ナノディスク溶液を、1:100希釈にPBS緩衝液で希釈する。OR-ナノディスクストック溶液は通常、使用しないときは-80℃の冷凍庫で貯蔵される。希釈したナノディスクをPDMSウェルに添加し、次いでCNT表面の全体を、機能化のためにナノディスク中に室温で30分浸漬する。機能化プロセスの後、過量のナノディスクを、PBS中で3回洗浄することによって除去する。
【0317】
2.2.4 フィルムの特性評価(characterization)
CNTフィルム構造を評価するために、原子間力顕微鏡法を使用した。ナノサーフ(Nano surfe)(NaioAFM)を使用し、タッピングモードで画像を取った。ナノディスクの機能化の前および後にフィルムを評価した。
【0318】
2.2.5 電気的な測定
電気的な測定を、実施例2のセクション2.3で説明したようにして、以下の点を変更して実行した。ゲート電極は、Ag/AgCl線(BASi、MF2052)である。移動(Vlg-Ids)測定中、ゲート電圧(Vlg)を-500mVから+1Vの間でスイープし、ソースドレイン電圧(Vds)は、100mVとして設定する。本発明者らのリアルタイム感知測定のために、Vlgを0に設定し、Vdsを、100mV、1秒の工程時間として設定する。
【0319】
リガンド溶液を、100mMのストック溶液から感知実験に必要な濃度範囲に希釈する。リガンドのストック溶液を、DMSO中の100mM濃度まで作製し、使用しないときは4℃で貯蔵した。この溶液を試験範囲までさらに希釈するために、PBS緩衝液を使用する。PBS(1%DMSO含有)中のリガンドの測定範囲は、1fM~10pM(10倍の増加)である。リアルタイムの測定中、PBS溶液(1%DMSO含有)を最初に対照として添加し、加えて分析物を濃度を増加させて添加する。
【0320】
2.2.6 リガンドの希釈
リガンド溶液を、100mMのストック溶液から感知実験に必要な濃度範囲に希釈する。リガンドのストック溶液を、DMSO中で100mMの濃度まで作製し、使用しないときは4℃で貯蔵した。この溶液を試験範囲までさらに希釈するために、PBS緩衝液を使用する。PBS(1%DMSO含有)中のリガンドの測定範囲は、1fM~10pM(10倍の増加)である。リアルタイムの測定中、PBS溶液(1%DMSO含有)を最初に対照として添加し、加えて分析物を濃度を増加させて添加する。
【0321】
3.0 結果
3.1 OrX-ナノディスクの共有結合による機能化後のCNT FETの変換特性
図14aは、OrXが会合したナノディスクのそれぞれのクーマシー染色されたSDS-PAGEゲル分析を示し、元のおよびOrXナノディスクで機能化されたCNTのAFM画像の例から、CNTへのOrXナノディスクの固定が確認される(
図14b)。ここでCNT上の白色のドットに留意されたい。
図15aは、OR10aナノディスクで機能化したCNT FET(青色の線)と、元のCNT FET(黒線)との比較であり、それによれば、閾値電圧が、OR10aナノディスクの機能化後に負電圧方向にシフトしたことは明らかである。実施例2のセクション3.1で説明したように、これは、OrX-ナノディスク固定の成功の証拠である。
図16a、17a、および18aの、それぞれOr22a、Or35aおよびOr71aでうまく機能化されたCNT FETで示されるように、閾値電圧は常に、負電圧方向にシフトした。
【0322】
3.2 OrXが会合したナノディスクおよびそれぞれのリガンド結合
3.2.1.OrXナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)
図15(b)は、PBS緩衝液の添加により、OR10aナノディスクによって共有結合で機能化したCNT FET(1:100希釈)からの電流の小さい増加がみられるが、それに対して電流は、増加させたサリチル酸メチル添加への曝露の後に一貫して大きい減少を示すことを示す。この電流における減少は、OR10aとサリチル酸メチルとの結合が、CNT FETへの有効なゲーティングを変化させることに起因する
58、60、62。
図15(c)は、量を増加させたサリチル酸メチルの添加による、空のナノディスクで共有結合により機能化されたCNT FET(1:100希釈)からの電流の増加がないことを示しており、サリチル酸メチルとの結合におけるOr10aの役割が確認される。
図15(d)は、サリチル酸メチルの濃度に対する正規化した電流応答電流の依存性を示し、対照リガンドであるE2-ヘキセナールへの応答は、観察されない。
図15(e)は、空のナノディスクで共有結合により機能化されたCNT-FET(1:100希釈)において正規化した電流応答における変化がないことを示す。
図15(dおよびe)は、Or10aナノディスクによって呈示されるサリチル酸メチルの検出限界が、1fM未満であることを示す。
【0323】
図16、17および18は、それぞれOr22aで共有結合により機能化されたCNT FET(標的リガンド-ヘキサン酸メチル、対照リガンド-E2-ヘキセナール)、Or35a(標的リガンド-E2-ヘキセナール、対照リガンド-ヘキサン酸メチル)およびOr71a(標的リガンド-4-エチルグアヤコール)に関する類似の結果を示しており、各OrXナノディスクおよびそれらそれぞれの標的リガンドの検出限界は、全ての1fM未満であることが示される。
【0324】
4.結論
この研究はさらに、電子デバイスプラットフォームをベースとしたOrXおよび有望な嗅覚バイオセンサー用途の認識能力を実証した。ナノディスク中に埋め込まれたOrXは、共有結合でCNT FET上で機能化され、経時的な1fMの標的リガンドに対する電流応答を示すが、PBS緩衝液に対する応答を示さない。これは、実施例2に記載のCNT-FETセンサーより5倍高い感度であり、少なくとも4桁のダイナミックレンジを有する。空のナノディスクで機能化したCNT FETにおける結果と比較して、標的リガンドに対する明確な電流応答は観察されない。各OrXの特異的な結合も、OrXで機能化したCNT FETからのPBSおよび対照リガンドに対する応答を試験することによって検証した。OrX-ナノディスクで機能化したCNT FETは、経時的に、それらの標的リガンドの特異的で高感度な検出を実証した。
【0325】
実施例4-電気インピーダンス分光法(EIS)を用いた本発明のセンサーのさらなる例証
1.要約
出願人はさらに、昆虫OrX配列を使用する便利な高感度のセンサーデバイスを例示した。3つのOrX受容体(Or10aおよびOr22a、ならびにOR35a)43、63をそれぞれナノディスク55、56中に埋め込み、EIS測定のために金電極上で機能化した。OrXで機能化した金電極のそれぞれは、fMレベルの濃度から開始して、それらの標的リガンドに対して(Or10aはサリチル酸メチル、Or22aはヘキサン酸メチル、およびOr35aはE-2-ヘキセナールに対して)明確な電子応答をリアルタイムで示した。結合の特異性を、非応答性リガンドに対する各OrXナノディスクで機能化した電極の応答を試験することによって検証した。特異性をさらに確認するために、標的リガンドに対する空のナノディスクで機能化した金電極の応答も試験した。
【0326】
2.実験方法
2.1 材料
6-メルカプトヘキサン酸(MHA)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド)(EDC)、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)タブレット、サリチル酸メチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、E2-ヘキセナールおよび4-エチルグアヤコールを、シグマアルドリッチから得た。電気化学的な測定のために、直径1.6mmの金(Au)ディスク電極、コイル状の白金(Pt)線電極および漏れのない銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極を、BASiから購入した。
【0327】
2.2 ナノディスクが会合したORサブユニットの調製
2.2.1 精製されたORサブユニットの調製
ORサブユニットを、実施例3セクション2.3.1に記載した通りに調製した。
【0328】
2.2.2 ナノディスクが会合したORサブユニットの調製
ナノディスクを、実施例3セクション2.3.2に記載した通りに調製した。
2.3 電極の調製
金ディスク電極(直径1.6mm)を、各電極につき1分間、アルミナポリッシングパッド上でポリッシングアルミナスラリーを用いて磨いた。磨いた電極を脱イオン水(ミリQ、18.2ΜΩ・cm)で濯ぎ、続いて、残留したアルミナスラリーが電極から完全に除去されるまでエタノール(LRグレード)および脱イオン水中で超音波処理した。-1.2Vでのクロノアンペロメトリーを超音波処理した電極の全てに適用し、3つの末端の電気化学セル中の0.1Mの水酸化ナトリウム(NaOH)電解質溶液、Ag/AgCl(3MのNaCl、SHEに対して0.209V)参照電極、対電極としてコイル状の白金線、および作用電極として金ディスクを使用して、PalmSens3ポテンシオスタットを使用して、30秒にわたり、電極表面上に存在するチオールのSAMを脱着させた。次いで電極を再度脱イオン水で濯ぎ、エタノールと脱イオン水中で連続的に超音波処理した。最終的に、0.5M硫酸(H2SO4)溶液中、-0.2から1.6Vの間で、100mV/秒のスキャン速度でサイクリックボルタンメトリーを10サイクル実行して、他のあらゆる不純物を除去した(3つの電極セル、Ag/AgCl(3MのNaCl中、SHEに対して0.209V)参照電極、対電極としてコイル状の白金線、および作用電極として金ディスク)。
【0329】
2.4 自己組織化単分子層(SAM)の調製およびEDCNHS活性化
5mlエタノール(ARグレード)中に1.36μlのMHAを溶解させることによって、2mMのMHAを調製した。クリーニングされた電極をMHA溶液に浸し、一晩インキュベートした。次の日、未反応の酸を除去するために、全ての電極をエタノールと脱イオン水で徹底的に洗浄した。2:1のmol:mol比のEDC:NHS(100mMのEDC、50mMのNHS)を2mlのPBS(pH=6.5)溶液中で調製した。次いでこの溶液中で電極を28℃で1時間インキュベートして、MHAのカルボン酸(COOH)基を活性化した。
【0330】
2.5 ORが会合したナノディスクの電極への固定
PBS溶液を、PBSの1つのタブレットを200mlのミリQ水中に浸漬すること(製造元の説明書に従って)によって調製し、0.2μmのシリンジフィルターを使用してろ過した。調製された緩衝溶液のpHをpHメーターで測定した。ORをPBS緩衝溶液(pH=7.4)で100倍希釈し、その緩衝溶液中でCOOH活性化電極を室温で1時間インキュベートした。次いで電極をPBS緩衝溶液で徹底的に洗浄して、全ての未結合のナノディスクを洗い落とした。
【0331】
2.5 標的匂い物質溶液の調製およびインキュベーション
PBS溶液(pH=7.4)を、電気化学的な測定;EISおよびCVを実行するための電解質として使用した。電気化学的な測定の前に、PBS緩衝液を15分脱気した。リガンド溶液を、100mMのストック溶液から感知実験に必要な濃度範囲に希釈した。リガンドのストック溶液を、DMSO中で100mMの濃度まで作製し、使用しないときは4℃で貯蔵した。この溶液を試験範囲までさらに希釈するために、PBS緩衝液を使用した。PBS(1%DMSO含有)中のリガンドの測定範囲は、Or10aナノディスクの場合、1fM~100nM(10倍の増加)、Or22aナノディスクの場合、100fM~100pM(10倍の増加)、およびOr35aナノディスクの場合、10aM~1pM(10倍の増加)であった。
【0332】
2.6 電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定
ORが固定された電極を、関連する匂い物質溶液中でそれぞれ約30分間インキュベートし、EIS測定の前にPBSで穏やかに洗浄した。続いて、対電極(CE)として白金(Pt)線、Ag/AgCl(3MのKCl、SHEに対して+0.197V)参照電極(RE)、および作用電極(WE)としてナノディスクを含む1.6mmの金ディスク電極を含む3つの末端の電気化学セルにおいて、100mHzから100kHzの間で、参照に対して-0.7Vを適用して、EIS測定を実行した。
【0333】
3.0 結果
実施例1のセクション2.0で説明したようにして、EIS測定を実行し、分析した。濃度を増加させた標的リガンドまたは対照リガンドとのインキュベーションの前および後に、EIS測定を、OrX(Or10a、Or22aまたはOr35aのいずれか)または空のナノディスクで機能化された金電極で実行した。センサー応答をΔR
ct/R
0
ct対log[C(リガンド)]と定義することによって検量線を得た(
図19)。
図19(a)は、Or10aナノディスクが、サリチル酸メチルに高感度で(10fMのLOD)選択的に応答するが、予想通りに対照リガンドであるE2-ヘキセナールに応答しないことを示す。
図19(b)は、Or22aナノディスクが、ヘキサン酸メチルに高感度で(<100pMのLOD)選択的に応答するが、予想通りに対照リガンドであるE2-ヘキセナールに応答しないことを示す。
図19(c)は、Or35aナノディスクが、E2-ヘキセナールに高感度で(<1fMのLOD)選択的に応答するが、予想通りに対照リガンドであるサリチル酸メチルに応答しないことを示す。図面のそれぞれにおいて、空のナノディスクは、試験された標的リガンドのいずれに対しても応答しないことから、各OrXの存在が各標的リガンドの検出にとって重要であることが実証される。
【0334】
4.結論
この研究はさらに、電子デバイスプラットフォームをベースとしたOrXおよび有望な嗅覚バイオセンサー用途の認識能力を実証した。金電極に機能化されたナノディスク中に埋め込まれたOrXは、fMの標的リガンドに対して電気化学インピーダンス応答を示し、4桁のダイナミックレンジを示す。空のナノディスクで機能化した電極からの標的リガンドに対するインピーダンス応答は、観察されない。
【0335】
各OrXの特異的な結合も、OrXナノディスクで機能化した電極からの対照リガンドに対する応答を試験することによって検証した。OrXナノディスクで機能化した電極は、特異的かつ高感度でそれらの標的リガンドを検出するための高い将来性を示した。
【0336】
実施例5-電気インピーダンス分光法(EIS)を用いた本発明のセンサーのさらなる例証
要約
出願人はさらに、昆虫OrX配列を使用する便利な高感度のセンサーデバイスを例示した。3つのOrX受容体(Or10a、Or22a、OR71a)43、63をそれぞれリポソーム55、56中に埋め込み、EIS測定のために、さらなる最適化された実験条件下で金電極上で機能化した。OrXで機能化した金電極のそれぞれは、fM濃度から開始して、その標的リガンドに対する(Or10aはサリチル酸メチル、Or22aはヘキサン酸メチル、Or71aは4-エチル-グアヤコールに対する)明確な電子応答を示した。結合の特異性は、非応答性リガンドに対する各OrXリポソームで機能化した電極応答を試験することによって検証される。特異性をさらに確認するために、標的リガンドに対する空のナノディスクで機能化した金電極の応答も試験した。
【0337】
1.実験方法
2.1 材料
実施例4のセクション2.1で説明した通りである。
【0338】
2.2 リポソームが会合したORサブユニットの調製
2.2.1 精製されたORサブユニットの調製
ORサブユニットを、実施例3のセクション2.3.1で説明したようにして調製した。
【0339】
2.2.2 リポソームが会合したORサブユニットの調製
ORおよびOR/Orcoが会合したリポソームを、実施例1のセクション1.2に記載した通りに調製した。
【0340】
2.3 電極の調製
実施例4のセクション2.3で説明した通りである。
2.4 自己組織化単分子層(SAM)の調製およびEDCNHS活性化
実施例4のセクション2.4で説明した通りである。
【0341】
2.5 ORが会合したナノディスクの電極への固定
実施例4のセクション2.5で説明した通りである。
2.6 標的匂い物質溶液の調製およびインキュベーション
実施例4のセクション2.6で説明した通りである。
【0342】
2.7 電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定
実施例4のセクション2.7で説明した通りである。
3.0 結果
図20は、Or22aについてのORが会合したリポソーム調製物の実施例のSDS-PAGEゲル分析からのウェスタンブロットを示す。レーン4は、Or22aが会合したリポソームの最終的な調製物を示し、この調製物にアキュデンツ勾配超遠心分離(レーン5~12)が適用されると、Or22aが会合したリポソームは、勾配の最上部に浮遊し、上2つの勾配画分(レーン11および12)に見出される
14。
【0343】
著者は、原子間力顕微鏡法(AFM)を用いて、リポソームを金表面上に固定できることを検証した。
図21は、そのままの金表面からORが会合したリポソームが固定された表面への表面構造および粗さのプロファイルにおいて変化がみられることを示す。そのままの金表面(
図21(a))は、約2nmの表面粗さ値を有する様々なサイズの高密度に圧縮された平坦な金ナノ結晶を示す。SAM改変の後(
図21(b))およびSAMで改変された金表面のNHS/EDCの活性化の後(
図21(c))、表面構造においてごくわずかな変化が観察された。ORが会合したリポソームをEDC/NHS活性化されたSAMで改変された金表面に導入したところ(
図21(d))、表面上に固定された円形のリポソームを示す表面構造における変化は、顕著であった。それらの天然型において(in their native form)、表面全体にわたり様々なサイズの丸型のリポソームがみられ、すなわち破裂または二分子層形成は観察されなかった。これも、リポソーム膜中でORがよく保持されていることを示す。また表面粗さ値の大幅な増加(>30nm)も、リポソームを含有するORが、NHS/EDC活性化されたSAMで改変された金表面にうまく取り付けられたことを実証する。
【0344】
実施例1のセクション2.0で説明したようにしてEIS測定を実行し、分析した。EIS測定を、標的リガンドまたは対照リガンドを濃度を増加させてインキュベートする前およびインキュベートした後に、OrXが会合したリポソーム(Or10a、Or22aまたはOr71aのいずれか)、または空のリポソームで機能化された金電極上で実行した。センサー応答をΔR
ct/R
0
ct対log[C(リガンド)]と定義することによって検量線を得た(
図22(a)~(c))。
図22(a)は、Or10aリポソームが、サリチル酸メチルに高感度で(1pMのLOD)選択的に応答するが、予想通りに対照リガンドであるヘキサン酸メチルに応答しないことを示す。
図22(b)は、Or22aリポソームが、ヘキサン酸メチルに高感度で(10fMのLOD)選択的に応答するが、予想通りに対照リガンドであるサリチル酸メチルに応答しないことを示す。
図22(c)は、Or71aリポソームが、4-エチルグアヤコールに高感度で(0.1fMのLOD)選択的に応答するが、対照リガンドであるサリチル酸メチルに応答しないことを示す。図面のそれぞれにおいて、空のナノディスクは、標的リガンドのいずれに対しても応答しないことから、各OrXの存在が各標的リガンドの検出にとって重要であることが実証される。
【0345】
4.結論
この研究はさらに、電子デバイスプラットフォームをベースとしたOrXおよび有望な嗅覚バイオセンサー用途の認識能力を実証した。金電極上で機能化されるリポソーム中に埋め込まれたOrXは、fMレベルまで低い濃度の標的リガンドに対して極めて高感度の電気化学インピーダンス応答を示し、8桁を超えるダイナミックレンジを示す。空のナノディスクで機能化した電極における結果と比較して、標的リガンドに対する透明なインピーダンス応答は、観察されていない。各OrXの特異的な結合も、OrXリポソームで機能化した電極からの対照リガンドに対する応答を試験することによって検証した。OrXリポソームで機能化した電極は、特異的かつ高感度でそれらの標的リガンドを検出するための高い将来性を示した。
【0346】
実施例6-水晶振動子マイクロバランス(QCM)圧電性トランスデューサーを用いた本発明のセンサーの例証
要約
出願人は、リポソーム中に埋め込まれたキイロショウジョウバエOr22a43、63配列を使用して、便利な圧電性センサーデバイスを生産した。散逸(dissipation)モニタリング機能付き水晶振動子マイクロバランス(QCM-D)は、結晶への質量負荷に伴い振動周波数が変化する質量検出型圧電性トランスデューサーである。QCM-Dセンサーの振動周波数変化とそれにカップリングされたOr22aリポソームをモニターすることによって、Or22aと標的リガンドであるヘキサン酸メチルとの相互作用を検出した。結合の特異性を、QCM-Dセンサーにカップリングされた空のリポソームの、試験した標的リガンドに対するに対する応答を試験することによって検証した。
【0347】
1.実験方法
2.1 材料
6-メルカプトヘキサン酸(MHA)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド)(EDC)、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)タブレット、およびヘキサン酸メチルを、シグマアルドリッチから得た。金(100nm)センサー結晶(QSX301)を、ATAサイエンティフィックインスツルメンツ(ATA Scientific Instruments)から得た。
【0348】
2.2 ORが会合したリポソームの調製
2.2.1 精製されたORサブユニットの調製
ORサブユニットを、実施例3のセクション2.2.1に記載した通りに調製した。
【0349】
2.2.2 ORが会合したリポソームの調製
OR22aリポソームを、実施例1のセクション1.2に記載した通りに調製した。
2.3 水晶振動子マイクロバランス(QCM)の調製およびデータ収集
金(100nm)センサー結晶をそれぞれエタノールおよびミリQ水中で15分間超音波破砕した。5:1:1体積比のミリQ水、アンモニア(25%)、および過酸化水素(30%)を5分で75℃に加熱し、超音波破砕した結晶を加熱した溶液中に5分間入れた。次いで結晶を溶液から取り出し、ミリQ水で濯ぎ、その後、窒素ガスで乾燥させた。過量のまたは緩く結合した分子を除去するために、それらをMHAの2mMエタノール溶液に一晩曝露し、続いてエタノール溶液で洗浄することによって、きれいな金結晶をチオールで機能化した。次いでSAMで機能化した結晶をQ-センス分析装置(ビオリンサイエンティフィック(Biolin Scientific))のチャンバーに入れ、PBS緩衝溶液中のNHS/EDC、OR22a/リポソームおよび様々な濃度のヘキサン酸メチル(1.6μM、8μM、40μM、200μMおよび1mM)と共に流動させて、周波数(Δf)および散逸(ΔD)値の変化を測定した。
【0350】
3.0 結果
図23(a)は、SAMおよびNHS/EDCでの改変とそれに続く水晶振動子へのOr22aリポソーム固定、次いで標的リガンドであるヘキサン酸メチルの結合のときの周波数および散逸(dissipation)における変化を示す。結合事象が結晶上で起こる場合、これは、振動周波数を低下させる質量における増加をもたらす
64。したがってセンサーの質量は、SAM、NHS/EDC、およびOr22aリポソーム固定に伴い増加する。しかしながらヘキサン酸メチル結合のケースでは、周波数における増加が観察されている(
図23(b))。理論に制限されることは望まないが、本発明者らは、このセンサー上の質量の損失は、ヘキサン酸メチルがOr22a受容体に結合して、Or22aリポソームの内部からの水およびイオンの放出を引き起こす、すなわちOr22aが機能的なイオンチャネルを形成することに起因することを示唆している。この周波数の増加は、ヘキサン酸メチルの濃度を1.6から200μMの間に増加させると起こり、ヘキサン酸メチルがOr22a受容体に特異的に結合していることが示されるが、この周波数の増加は、QCM上に固定された空のリポソームでは観察されなかった(
図23(c)および(d))。一兆分率(ppt)濃度と同等なμMレベルでのリガンド結合の検出は、C.エレガンスのODR-10でみられるものと同等であった
65。
【0351】
4.結論
この研究はさらに、電子デバイスプラットフォームをベースとしたOrXおよび有望な嗅覚バイオセンサー用途の認識能力を実証した。水晶振動子マイクロバランス(QCM)圧電性センサー上で機能化されるリポソーム中のOrXは、標的リガンドに対する明確な圧電性応答が観察されなかったQCM上で機能化した空のリポソームにおける結果と比較して、それらの標的リガンドを特異的に検出することができる。OrXリポソームで機能化したQCMは、特異的かつ高感度でそれらの標的リガンドを検出するための高い将来性を示す。
【0352】
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