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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】治療的使用のための炭化水素油
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/01 20060101AFI20221102BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 17/12 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20221102BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61K31/01
A61K47/06
A61K9/06
A61K9/107
A61P39/06
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P17/00 101
A61P17/02
A61P17/04
A61P17/06
A61P17/08
A61P17/10
A61P17/12
A61P17/18
A61K8/31
A61Q19/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019551523
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2018056771
(87)【国際公開番号】W WO2018172227
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】17305306.7
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505036674
【氏名又は名称】トータルエナジーズ マーケティング サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スワボダ,ベンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】ルメール,フィリップ
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-544951(JP,A)
【文献】特開2000-128767(JP,A)
【文献】特開2002-316910(JP,A)
【文献】特表2002-524489(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02368967(EP,A1)
【文献】米国特許第05882663(US,A)
【文献】国際公開第2016/185046(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/185047(WO,A1)
【文献】特表2017-503855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素油の総重量に対して、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0重量%~10重量%の範囲の含有量のノルマルパラフィンとを含み、90%以上の含有量の生体由来の炭素を有する、抗酸化剤及び/又は抗ラジカル剤及び/又は抗炎症剤及び/又は抗アポトーシス剤としての使用のための医薬組成物の製造における炭化水素油の使用。
【請求項2】
皮膚疾患及び/又は創傷治癒障害の治療での使用のための医薬組成物の製造における、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
局所塗布用の請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
全身投与用の請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
前記炭化水素油が、前記炭化水素油の総重量に対して、95重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記炭化水素油が、14個~18個の炭素原子を含む非環状イソパラフィンの中から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記炭化水素油が、前記炭化水素油の総重量に対して、5重量%以下の含有量のノルマルパラフィンを含む、及び/又は、
前記炭化水素油が、前記炭化水素油の総重量に対して、1重量%以下の含有量のナフテン系化合物を含む、及び/又は、
前記炭化水素油が、前記炭化水素油の総重量に対して、500重量ppm以下の含有量の芳香族化合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記炭化水素油が、前記炭化水素油の総重量に対して、100重量ppm以下の芳香族化合物を含む、請求項に記載の使用。
【請求項9】
前記炭化水素油が、ASTM D86規準に従って230℃~340℃の範囲の沸点を有する、及び/又は、
前記炭化水素油が、EN ISO2719規準に従って110℃以上の引火点を有する、及び/又は、
前記炭化水素油が、20℃で0.01kPa以下の蒸気圧を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記炭化水素油が、請求項1からのいずれか1項に記載の少なくとも1種の炭化水素油を含む医薬組成物の形態である、請求項1からのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記炭化水素油が、前記医薬組成物の総重量に対して、0.5重量%~80重量%の範囲の量で存在する、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記医薬組成物が、植物油、請求項1~のいずれか1項に記載の炭化水素油以外の炭化水素油、植物性バター、脂肪族アルコール及びエーテル、油性エステル、アルカン並びにシリコーンオイル:の中から選択される少なくとも1種の脂肪性物質と、及び/又は少なくとも1種の添加剤とを含む、請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬組成物が、無水組成物、エマルジョン、ナノエマルジョン又は分散液若しくはゲルである、請求項10から12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記炭化水素油が、請求項1からのいずれか1項に記載の少なくとも1種の炭化水素油を含む医療食品の形態である、請求項1からのいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記炭化水素油が、前記医療食品の総重量に対して、0.5重量%~80重量%の範囲の量で存在する、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記炭化水素油が、第四級アンモニウム、芳香族アルコール、及びイソチアゾリノンの中から選択される化合物と組み合わされている、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記化合物が第四級アンモニウムの中から選択され、前記第四級アンモニウムが、単独で又は混合物で、塩化ベンザルコニウム及び塩化ジデシルジメチルアンモニウムの中から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記化合物が、前記炭化水素油と化合物の組み合わせの総重量の、前記医薬組成物の総重量の、又は前記医療食品の総重量の、0.1重量ppm~40重量%を占める、請求項16又は17に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物としての使用のための、生分解性として分類され、生体由来で且つ大部分がイソパラフィン系である炭化水素油に関する。
【0002】
また、本発明は、薬物としての使用のための、生分解性として分類され、生体由来で且つ大部分がイソパラフィン系である炭化水素油と、少なくとも1種の第四級アンモニウムとを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚科学又は製薬の市場は、彼らの製品の処方により一層強く生体由来の原料を求めている。有効成分、乳化剤及びバイオソース植物油は過去数年で非常に多く開発され、現在は市場で広く入手可能であるが、バイオソース有効成分、特に100%生体由来の炭化水素の有効成分は、まだまれである。
【0004】
今までのところ、抗酸化、抗炎症の効果を有するか、又は細胞老化を抑制することを可能とする油は、トリグリセリド、エステル、アルコール等の天然又は合成の酸素添加油である。例えば、オリーブオイル、マンゴー油、シーバックソーン油又はカカオ油等の多くの植物油が存在する。
【0005】
しかしながら、これらの油はいずれも酸化に対してかなり敏感であり、それらは十分に安定ではなく、結果的に臭気及び特徴の変化を生じる。これらの植物油の不安定性は、特に、相当な量のヘテロ原子及び/又は不飽和を含む分子の存在に由来する。
【0006】
特許文献1の文献は、疼痛を和らげるためにC12~C18のイソパラフィンを含む組成物を開示する。この文献は本発明に定義される炭化水素油を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US5,882,663
【発明の概要】
【0008】
したがって、有効であり、特に安定性、揮発性、皮膚での伸び、臭気、柔らかな手触り及び光沢に関して、満足のいく物理化学的特性及び官能特性を有し、製剤での使用に非常に適合する、生体由来の新たな有効成分を得るニーズがなおも存在し続けている。
【0009】
本出願人は、驚いたことに、大部分がイソパラフィン系の生体由来の炭化水素油の使用によりこのニーズを満たすことができることを見出した。
【0010】
本発明は、抗酸化剤及び/又はフリーラジカル阻害剤及び/又は抗炎症剤及び/又は抗アポトーシス剤及び/又は抗菌剤及び/又は抗真菌剤として使用され得る薬物有効成分を提供する目的を有する。
【0011】
本発明は、皮膚の治療、特に炎症を軽減するための及び/又は創傷治癒障害の治療における医薬組成物を提供する目的を有する。
【0012】
また、本発明は、改善された抗アポトーシス効果を有する組成物を提供する目的を有する。
【0013】
これらの目的は、ヒト及び/又は動物の身体の治療のための炭化水素型の新たな有効成分により達成される。
【0014】
本発明は、薬物としての使用が意図される炭化水素油に関し、前記炭化水素油は、炭化水素油の総重量に対して、90重量%~100重量%の含有量のイソパラフィンと、0重量%~10重量%の範囲の含有量のノルマルパラフィンとを含み、90%以上の含有量の生体由来の炭素を有する。
【0015】
好ましくは、炭化水素油は、抗酸化剤及び/又は抗ラジカル剤(ラジカル阻害剤)及び/又は抗炎症剤及び/又は抗アポトーシス剤及び/又は抗菌剤及び/又は抗真菌剤としての使用が意図される。
【0016】
本発明の実施形態によれば、炭化水素油は、乾癬、魚の目及びいぼ、にきび、脂漏性障害、ヘルペス、真菌症、湿疹、帯状疱疹、並びに/又は創傷治癒障害等の皮膚疾患の治療における使用が意図される。
【0017】
本発明の実施形態によれば、炭化水素油は、局所塗布用の使用が意図される。
【0018】
本発明の別の実施の形態によれば、炭化水素油は、全身投与のための使用が意図される。
【0019】
一実施形態によれば、炭化水素油は、炭化水素油の総重量に対して、95重量%~100重量%、優先的には98重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンを含む。
【0020】
一実施形態によれば、炭化水素油は、14個~18個の炭素原子を含む非環状イソパラフィンの中から選択される。
【0021】
一実施形態によれば、炭化水素油は:
-炭化水素油の総重量に対して、5重量%以下、優先的には2重量%以下の含有量のノルマルパラフィン、及び/又は
-炭化水素油の総重量に対して、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、優先的には100重量ppm以下の含有量のナフテン系化合物、及び/又は
-炭化水素油の総重量に対して、500重量ppm以下、好ましくは300重量ppm以下、優先的には100重量ppm以下、より優先的には50重量ppm以下、有利には20重量ppm以下の含有量の芳香族化合物、を含む。
【0022】
一実施形態によれば、炭化水素油は:
-ASTM D86規準に従って230℃~340℃、好ましくは235℃~330℃、より優先的には240℃~325℃の範囲の沸点、及び/又は
-EN ISO2719規準に従って110℃以上の引火点、及び/又は
-20℃で0.01kPa以下の蒸気圧を有する。
【0023】
一実施形態によれば、炭化水素油は、温度80℃~180℃、及び50bar~160barの圧力において、脱酸素化及び/又は異性化された生体由来の供給原料の接触水素化の方法によって得られる。
【0024】
一実施形態によれば、炭化水素油は、組成物の総重量に対して、好ましくは0.5重量%~80重量%、優先的には1重量%~50重量%、有利には5重量%~30重量%の範囲の量の本発明に定義される少なくとも1種の炭化水素油を含む、医薬組成物の形態を有する。
【0025】
一実施形態によれば、医薬組成物は:
-植物油、請求項1~10に定義される炭化水素油以外の炭化水素油、植物性バター、脂肪族アルコール及びエーテル、油性エステル、アルカン、並びにシリコーンオイルの中から選択される少なくとも1種の脂肪性物質、及び/又は
-少なくとも1種の添加剤、を含む。
【0026】
一実施形態によれば、医薬組成物は、無水組成物、油中水型エマルジョン(W/O)、水中油型エマルジョン(O/W)若しくは多相エマルジョン(特にW/O/W又はO/W/O)、ナノエマルジョン等のエマルジョン、又は分散液若しくはゲルである。
【0027】
別の実施形態によれば、炭化水素油は、医療食品の総重量に対して、好ましくは0.5重量%~80重量%、優先的には1重量%~50重量%、有利には5重量%~30重量%の範囲の量で本発明に定義される少なくとも1種の炭化水素油を含む、医療食品の形態を有する。
【0028】
本発明の実施形態によれば、本発明による使用が意図される炭化水素油は、第四級アンモニウム、芳香族アルコール、及びイソチアゾリノンの中から選択される化合物と組み合わされる。
【0029】
好ましくは、化合物は、第四級アンモニウムの中から選択され、前記第四級アンモニウムは、より好ましくは塩化ベンザルコニウム及び塩化ジデシルジメチルアンモニウムの中から、単独で又は混合物で、選択される。
【0030】
一実施形態によれば、上記化合物は、炭化水素油と化合物の組み合わせの総重量の、又は医薬組成物の総重量の、又は医療食品の総重量の、0.1重量ppm~40重量%、好ましくは0.5重量ppm~30重量%、優先的には1重量ppm~20重量%、より一層優先的には3重量ppm~10重量%、理想的には5重量ppm~1重量%を占める。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、薬物として、好ましくは有効成分としての使用が意図される炭化水素油に関し、前記炭化水素油は、炭化水素油の総重量に対して、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0重量%~10重量%の範囲の含有量のノルマルパラフィンと、95%以上の含有量の生体由来の炭素とを含む。
【0032】
したがって、本発明に定義される炭化水素油は、ヒト及び/又は動物の身体の治療、特に治療的処置のため使用され得る。
【0033】
本発明に定義される炭化水素油は、特に、抗酸化剤、フリーラジカル阻害剤、及び/又は抗炎症剤、及び/又は抗アポトーシス剤として使用され得る。
【0034】
本発明によって使用される炭化水素油は、非刺激性で生分解性であり、無臭と分類される医薬組成物を取得することを可能とする。
【0035】
本発明によって使用される炭化水素油は、特に、不飽和化合物及び/又はヘテロ原子を含む化合物の割合が低い、更にはそれらを実質的に又は完全に含まない、本発明に定義される炭化水素油のおかげで、特に安定な医薬組成物を得ることを可能とする。
【0036】
予備的に、本明細書及び以下の特許請求の範囲において、「の間」の表現は言及される限界値を含むと理解されなければならないことに留意されたい。
【0037】
炭化水素油:
本発明により使用される炭化水素油は、炭化水素油の総重量に対し、好ましくは90重量%以上、優先的には95重量%以上、有利には98重量%以上の含有量のイソパラフィン系化合物を含む。
【0038】
一実施形態によれば、本発明により使用される炭化水素油に存在するイソパラフィン系化合物は、12個~30個の炭素原子、好ましくは13個~19個の炭素原子、より好ましくは14個~18個の炭素原子を含む。
【0039】
本発明により使用される炭化水素油は、好ましくは10重量%以下、優先的には5重量%以下、有利に2重量%以下の含有量のノルマルパラフィンを含む。
【0040】
本発明により使用される炭化水素油は、有利には、大部分のイソパラフィンと、小部分のノルマルパラフィンとを含む。このイソパラフィンは、有利には、非環状イソパラフィンである。好ましくは、炭化水素油は、イソパラフィンとノルマルパラフィンとの質量比が、少なくとも12:1、優先的には15:1、より優先的には20:1である。さらにより有利には、本発明により使用される炭化水素油は、ノルマルパラフィンを含まない。
【0041】
一実施形態によれば、本発明により使用される炭化水素油は、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィン、及び0重量%~10重量%の範囲の含有量のノルマルパラフィンを含み、優先的には95重量%~100重量%のイソパラフィン及び0重量%~5重量%のノルマルパラフィンを含み、より優先的には98重量%~100重量%のイソパラフィン及び0重量%~2重量%のノルマルパラフィンを含む。
【0042】
一実施形態によれば、本発明により使用される炭化水素油は、好ましくは、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィン及び0重量%~10重量%の範囲の含有量のノルマルパラフィンを含み、優先的には、12個~30個の炭素原子、より好ましくは14個~18個の炭素原子、より好ましくは14個~17個の炭素原子を含むアルカンの中から選択されるイソパラフィンを95重量%~100重量%含む。
【0043】
一実施形態によれば、本発明により使用される炭化水素油は:
-炭化水素油の総重量に対して、15個の炭素原子を有するイソパラフィン及び16個の炭素原子を有するイソパラフィンを合計で80重量%~98重量%の範囲の量で、又は
-炭化水素油の総重量に対して、16個の炭素原子を有するイソパラフィン、17個の炭素原子を有するイソパラフィン、及び18個の炭素原子を有するイソパラフィンを合計で80重量%~98重量%の範囲の量で、又は
-炭化水素油の総重量に対して、17個の炭素原子を有するイソパラフィン、及び18個の炭素原子を有するイソパラフィンを合計で80重量%~98重量%の範囲の量で含む。
【0044】
本発明により使用される炭化水素油は、好ましくは1重量%以下、優先的には0.5重量%以下、より優先的には100重量ppm以下の含有量のナフテン系化合物を含む。
【0045】
別の好ましい実施形態によれば、本発明により使用される炭化水素油は、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0重量%~10重量%の範囲の含有量のノルマルパラフィンと、1重量%以下の含有量のナフテンとを含む。優先的には、炭化水素油は、95重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0重量%~5重量%のノルマルパラフィンと、0.5重量%以下の含有量のナフテンとを含む。より優先的には、炭化水素油は、98重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0重量%~2重量%のノルマルパラフィンと、100重量ppm以下の含有量のナフテンとを含む。
【0046】
本発明により使用される炭化水素油は、有利には芳香族化合物を含まない。例えば、芳香族化合物の含有量は、例えばUV分光法によって測定される、500重量ppm以下、好ましくは300重量ppm以下、優先的に100重量ppm以下、より優先的に50重量ppm以下、有利には20重量ppm以下と理解される。
【0047】
イソパラフィン、n-パラフィン、ナフテン及び/又は芳香族の炭化水素油の重量含有量は、当業者によく知られている方法に従って決定され得る。非限定的な例として、ガスクロマトグラフィーによる方法が挙げられる。
【0048】
別の好ましい実施形態によれば、本発明により使用される炭化水素油は、90重量%~100重量%の含有量のイソパラフィンと、0重量%~10重量%の含有量のノルマルパラフィンと、1重量%以下の含有量のナフテンと、500重量ppm以下の含有量の芳香族化合物とを含む。優先的には、炭化水素油は、95重量%~100重量%の含有量のイソパラフィンと、0重量%~5重量%のノルマルパラフィンと、0.5重量%以下の含有量のナフテンと、300重量ppm以下、好ましくは100重量ppm未満、優先的には50重量ppm未満、より優先的には20重量ppm未満の含有量の芳香族化合物とを含む。また、優先的には、炭化水素油は、95重量%~100重量%の含有量のイソパラフィンと、0重量%~5重量%のノルマルパラフィンと、100重量ppm以下の含有量の芳香族化合物とを含む。より優先的には、炭化水素油は、98重量%~100重量%の含有量のイソパラフィンと、0重量%~2重量%のノルマルパラフィンと、100重量ppm以下の含有量のナフテンと、100重量ppm以下の含有量の芳香族化合物とを含む。
【0049】
本発明の実施形態によれば、炭化水素油は、95%以上、好ましくは98%以上、優先的には100%の含有量の生体由来の炭素を含む。
【0050】
また、本発明により使用される炭化水素油は、好ましくは非常に低い含有量の硫黄化合物を有し、典型的には5重量ppm以下、優先的には3重量ppm以下、より優先的には0.5重量ppm以下であって、従来の低含有量硫黄分析器を使用して検出することができないほど低いレベルである。
【0051】
また、本発明により使用される炭化水素油は、より好ましくは、EN ISO 2719規準に従って、110℃以上、優先的には120℃以上、より優先的には140℃以上の引火点を有する。典型的には110℃超の高い引火点は、炭化水素油の過敏な引火性を回避することにより、特に、一方で、貯蔵及び輸送の間の安全性の問題を克服することを可能とする。
【0052】
また、炭化水素油は、より好ましくは20℃で0.01kPa以下の蒸気圧を有する。
【0053】
また、一実施形態によれば、本発明により使用される炭化水素油は、EN ISO 2719規準に従って110℃以上の引火点、及び20℃で0.01kPa以下の蒸気圧を有する。優先的には、炭化水素油は、120℃以上の引火点、及び20℃で0.01kPa以下の蒸気圧を有する。より優先的には、炭化水素油は、130℃以上の引火点、20℃で0.01kPa以下の蒸気圧を有する。
【0054】
本発明により使用される炭化水素油は、可燃性、臭気及び揮発性の問題を克服することを可能とする沸点、引火点及び蒸気圧を有する。
【0055】
本発明による炭化水素油は、さらに、EN ISO 3104規準に従い、40℃で5cSt以下、優先的には4cSt以下、より優先的には3cSt以下の動粘度を有する。
【0056】
取得方法:
炭化水素油の係る組成物を以下の方法で得ることができる。本発明により使用される炭化水素油は、バイオマスの変換に由来する炭化水素留分である。
【0057】
バイオマスの変換に由来するという用語は、生体由来の原料から生産された炭化水素留分を意味する。
【0058】
好ましくは、生体由来の炭化水素留分は、水素化脱酸素(HDO:hydrodeoxygenation)、及び異性化(ISO:isomerisation)の工程を含む方法によって得られる。水素化脱酸素(HDO)の工程は、生物学的なエステル又はトリグリセリドの構成要素の構造の分解、酸素化されたリン及び硫黄の化合物の排除、及びオレフィン性結合の水素化をもたらす。次いで、水素化脱酸素反応からの生成物を異性化する。分留の工程は、好ましくは水素化脱酸素、及び異性化の工程に続いて行われ得る。有利には、次いで、本発明による望ましい炭化水素油の仕様を得るため、目的の留分を水素化処理工程、その後、蒸留工程に供する。
【0059】
植物油、動物脂肪、魚油及びそれらの混合物からなる群から選択される、バイオマス又は生体由来の原料とも称される生物学的供給原料に対して、このHDO/ISO法を実施する。好適な生体由来の原料は、例えば、菜種油、キャノーラ油、トーロール(tallol)すなわちトール油(tall oil)、ヒマワリ油、ダイズ油、麻実油、オリーブ油、アマニ油、カラシ油、ヤシ油、落花生油、ヒマシ油、ヤシ油、獣脂等の動物脂肪、再利用された食用脂肪(dietary fat)、遺伝子操作された原料、並びに藻類及び細菌等の微生物によって生産された生物学的原料である。生物学的原料から得られた縮合生成物、エステル又は他の誘導体も原料として使用され得る。
【0060】
好ましくは、生体由来の原料は、エステル又はトリグリセリド誘導体である。構成成分のエステル又はトリグリセリドの構造を分解し、酸素化されたリン及び硫黄の化合物を排除するため、この材料を最初に水素化脱酸素(HDO)の工程、また同時にオレフィン性結合の水素化に供する。生体由来の原料の水素化脱酸素(HDO)のこの工程の後、そのようにして得られた生成物の異性化を行って、炭化水素鎖の分岐をもたらし、低温でのパラフィンの特性が改善される。
【0061】
HDO工程の間、水素及び生体由来の原材料を、同時に同じ方向又は向流で接触水素化脱酸素床を通過させる。HDO工程の間、圧力及び温度は、それぞれ20barから150barの間、及び200℃から500℃の間である。従来知られている水素化脱酸素触媒をこの工程の間に使用する。HDO工程の前に二重結合の二次反応を防止するため、オプションで、生体由来の原料を穏やかな条件下で予備水素化に供してもよい。水素化脱酸素の工程の後、上記反応からの生成物を、水素及び生成物、並びにオプションでn-パラフィンの混合物を同時に同じ方向又は向流で接触水素化脱酸素床を通過させる、異性化(ISO)の工程に供する。ISO工程の間、圧力及び温度は、それぞれ20barから150barの間、及び200℃から500℃の間である。従来知られている異性化触媒をこの工程の間に使用する。
【0062】
また、追加の二次的方法を実施してもよい(中間混合物、トラッピング、又はそのようなその他の方法等)。
【0063】
目的の留分を得るために、オプションでHDO/ISO工程からの生成物を分留してもよい。
【0064】
様々なHDO/ISO方法が文献に記載されている。WO2014/033762の出願は、向流で行われる予備水素化の工程、水素化脱酸素(HDO)の工程及び異性化の工程を含む方法を記載する。EP1728844は、植物及び動物を起源とする化合物の混合物から炭化水素化合物を製造する方法を記載する。この方法は、例えば、アルカリ金属塩等の汚染物質を除去することを可能とする混合物を予備処理する工程の後、水素化脱酸素(HDO)の工程及び異性化の工程を含む。EP2084245は、例えば、ヒマワリ油、菜種油、キャノーラ油、ヤシ油又はパイン油等の植物油といった遊離脂肪酸を含む混合物中にオプションで脂肪酸エステルを含有する生体由来の混合物の水素化脱酸素の後の、特定の触媒上での水素異性化による、ディーゼルとして又はディーゼル組成物において使用され得る炭化水素混合物を製造する方法を記載する。EP2368967は、かかる方法、及びこの方法によって得られる生成物を記載する。WO2016/185046の出願は、本発明により使用される炭化水素油を得る方法を記載し、該炭化水素油は、温度80℃~180℃、及び圧力50bar~160barにおいて、脱酸素化及び異性化された生体由来の供給原料の接触水素化の方法によって得られる。
【0065】
有利には、生体由来の原料は、EN ISO 20846規準に従って、15重量ppm未満、好ましくは8重量ppm未満、優先的には5重量ppm未満、より優先的には1重量ppm未満の硫黄を含む。理想的には、供給原料は、バイオソース起源(生体由来)の原料としていかなる硫黄も含まない。
【0066】
水素化処理の工程の前に、予備分留の工程を行ってもよい。水素化ユニットの投入量(input)におけるより狭い留分は、そのユニット排出量(output)において狭い留分を得ることを可能にする。実際、予備分留された留分の沸点は220℃から330℃の間であるのに対し、予備分留されていない留分は、典型的には150℃から360℃の間の沸点を有する。
【0067】
次いで、HDO/ISO法からの脱酸素化及び異性化された供給原料を水素化する。水素化ユニットで使用される水素は、典型的には高純度水素である。高純度という用語は、例えば99%超の純度の水素を意味するが、他のグレードを使用することもできる。
【0068】
水素化の工程は、触媒によって実施される。典型的な水素化触媒は塊又は担持状のいずれによるものであってもよく、以下の金属:ニッケル、白金、パラジウム、レニウム、ロジウム、タングステン酸ニッケル、ニッケル-モリブデン、モリブデン、コバルト-モリブデンを含んでもよい。担体は、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ又はゼオライトであってもよい。
【0069】
好ましい触媒は、その比表面積が、ニッケルベースの触媒又は塊状の触媒1g当たり100mから200mの間である、アルミナ担体上のニッケルベースを含む触媒である。水素化条件は、典型的には以下の通りである:
-圧力:50bar~160bar、好ましくは80bar~150bar、より優先的には90bar~120bar;
-温度:80℃~180℃、好ましくは120℃~160℃、より優先的には150℃~160℃;
-液空間速度(LHSV:Liquid Hourly Space velocity):0.2時間-1~5時間-1、好ましくは0.4時間-1~3時間-1、より優先的には0.5時間-1~0.8時間-1
-水素による処理速度:上に言及される条件に適合され、処理される供給原料1トン当たり最大200Nmの範囲まで可能である。
【0070】
リアクターの温度は、典型的には、約100barの圧力で150℃から160℃の間であり、一方、空間速度は、処理される供給原料の量及び第1の水素化リアクターのパラメーターに従って適合された処理速度で約0.6時間-1である。
【0071】
水素化は、1台又は直列の数台のリアクターにおいて行われ得る。リアクターは、1又は複数の触媒床を備えてもよい。触媒床は、一般的には固定触媒床である。
【0072】
水素化の方法は、好ましくは2台又は3台のリアクター、好ましくは3台のリアクターを含み、より優先的には直列の3台のリアクターにおいて行われる。
【0073】
第1のリアクターは、硫黄化合物のトラップ、並びに実質的に全ての不飽和化合物及び最大約90%の芳香族化合物の水素化を可能とする。第1のリアクターからの生成物は、実質的に硫黄化合物を含んでいない。第2の段階、すなわち第2のリアクターにおいて、芳香族の水素化が継続するため、最大99%の芳香族が水素化される。
【0074】
第3のリアクーにおける第3の段階は、例えば300℃超の高い沸点を有する生成物の場合であっても、500ppm以下、好ましくは300ppm以下、優先的には100ppm以下、より優先的には50ppm以下、理想的には20ppm以下の芳香族の含有量を得ることを可能とする、最終段階である。
【0075】
2つ又は3つ又はそれ以上の触媒床を有するリアクターを使用することもできる。触媒は、各リアクター中に変化する量で又は本質的に等しい量で存在してもよく、3台のリアクターに対して、重量による量は、例えば、0.05~0.5/0.10~0.70/0.25~0.85、好ましくは0.07~0.25/0.15~0.35/0.4~0.78、より優先的には0.10~0.20/0.20~0.32/0.48~0.70であってもよい。
【0076】
また、3台のリアクターに代えて1台又は2台の水素化リアクターを使用することもできる。
【0077】
また、一対のリアクターで構成される第1のリアクターで交互に実施してもよい。この方法の操作性は、特に、第1のリアクターが最初に飽和された触媒を含む(実質的に全ての硫黄が触媒上に及び/又は触媒中にトラップされる)場合に頻繁に変化させなければならない、触媒の容易な充填及び非充填を可能とする。
【0078】
2つ、3つ又はそれ以上の触媒床が設置される単一のリアクターを使用することもできる。
【0079】
各反応の温度及び熱水バランスを制御するため、あるリアクターから別のリアクター又はある触媒床から別の触媒床まで溶出物を冷却する目的で、再利用システムに又はリアクター間にクエンチボックスを挿入することが必要な場合がある。好ましい実施形態によれば、冷却又はクエンチの仲介は存在しない。
【0080】
一実施形態によれば、上記方法からの生成物及び/又は分離された気体は、少なくとも部分的には水素化リアクターの供給システムにおいて再利用される。この希釈は、制御される限度で、特に第1の段階で上記反応の発熱性を維持するのに寄与する。さらに、再利用することは反応前の熱交換、またより良好な温度制御を可能とする。
【0081】
水素化ユニットの溶出物は、主に水素化生成物及び水素を含む。フラッシュ分離器を使用して、溶出物を気相、主に残留水素、及び液相、主に水素化炭化水素留分へと分離する。上記方法を、高圧、中間の圧力、そして大気圧に非常に近い低い圧力で、3台のフラッシュ分離器を使用して行うことができる。
【0082】
フラッシュ分離器の上部で収集される気体水素を、水素化ユニットの供給システム、又はリアクター間の水素化ユニットにおいて異なるレベルで再利用することができる。
【0083】
一実施形態によれば、最終生成物は、大気圧で分離される。次いで、最終生成物を真空分留ユニットに直接供給する。好ましくは、分留は、10mbarから50mbarsの間、より優先的には約30mbarsの圧力で行われる。
【0084】
分留は、分留カラムから様々な炭化水素流体を同時に除去することが可能な方法で行われ、その方法でそれらの炭化水素の沸点があらかじめ特定され得る。
【0085】
したがって、その初留点及び終点によって供給原料を適合させることにより、水素化リアクター、分離器及び分留ユニットを、中間タンクを使用することを必要とせずに、直接に接続させ得る。この水素化と分留の統合は、装置数の削減及び省エネルギーと組み合わされた最適化された熱統合を可能とする。
【0086】
有利には、本発明で使用される炭化水素油は、より好ましくは、ASTM D86規準に従って測定される、230℃~340℃、好ましくは235℃~330℃、より優先的には240℃~325℃、更に優先的には240℃~290℃、又は240℃~270℃の範囲の蒸留範囲DR(℃単位)を有する炭化水素留分である。好ましくは、初留点と終点との差は、80℃以下、優先的には70℃以下、より優先的には60℃以下、有利には40℃から50℃の間である。炭化水素油は、上記に記載される範囲に含まれる蒸留範囲の1つ又は複数の留分を含み得る。
【0087】
有利には、本発明で使用される炭化水素油は完全に飽和されている。好ましくは、炭化水素油の構成成分は、12個~30個の炭素原子、優先的には13個~19個の炭素原子、より優先的には14個~18個の炭素原子を含むイソパラフィンの中から選択される。
【0088】
本発明により使用される炭化水素油は、有利には、50%以下の含有量のイソヘキサデカンを含む。
【0089】
本発明により使用される炭化水素油は、理想的には、生体由来の原料が処理されたものである。「バイオ炭素」という用語は、以下に指定されるように、炭素が天然起源であって、生体材料に由来することを示す。バイオ炭素の含有量及び生体材料の含有量は、同じ値を示す表現である。再生可能な起源の材料又は生体材料は、炭素が大気から光合成によって(ヒューマンスケールで)最近固定されたCOに由来する有機物である。生体材料(100%天然起源の炭素)は、10-12超、典型的には1.2×10-1214C/12Cの同位体比を有するのに対し、化石原料は比が0である。実際、同位体14Cは大気中で形成され、そして、長くても20年~30年の時間の尺度で光合成を介して吸収される。14Cの半減期は5730年である。したがって、主に一般的には植物の光合成に由来する材料は、必然的に最大含有量の同位体14Cを有する。
【0090】
生体材料又はバイオ炭素の含有量の決定は、ASTM D 6866-12規準、方法B(ASTM D 6866-06)及びASTM D 7026(ASTM D 7026-04)に従ってなされる。本発明により使用される炭化水素油は、少なくとも90%の含有量の生体材料を有する。この含有量は有利にはより高く、特に95%以上、好ましくは98%以上、有利には100%である。
【0091】
特に高含有量の生体材料に加えて、本発明により使用される炭化水素油は、特に良好な生分解性を有する。有機化学製品の生物分解は、微生物の代謝活性による化学物質の複雑性の減少を指す。好気条件では、微生物は有機物質を二酸化炭素、水及びバイオマスに変化させる。OECD 306法は海水中の個々の物質の生分解性の評価に使用される。この方法によれば、炭化水素油は、28日間で少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、有利には少なくとも80%の生物分解性を有する。
【0092】
炭化水素油の使用
本発明者らは、上に定義される炭化水素油が、抗酸化剤及び/又は抗ラジカル剤として使用され得ることを発見した。実際に、驚いたことに、本発明に定義される炭化水素油は、フリーラジカルの阻害を可能としたことが発見された。
【0093】
さらに、上記炭化水素油を、薬物の有効成分としてヒト又は動物の身体の治療に使用することができる。
【0094】
上記炭化水素油は、特に抗酸化、抗ラジカル、抗炎症、細胞変性防止若しくは抗アポトーシス、抗菌、及び/又は抗真菌の作用を有する。
【0095】
炭化水素油は、特にP2X7受容体の活性化を減少させることを可能にする。
【0096】
また、本発明により使用される炭化水素油は、塩化ベンザルコニウム等の分子のアポトーシス効果を阻害することを可能にする。
【0097】
したがって、本発明で定義される炭化水素油は、有利には、皮膚及び/又は頭皮の疾患及び/又は創傷治癒障害の治療に使用され得る。
【0098】
一実施形態によれば、皮膚及び/又は頭皮の疾患は、乾癬、魚の目及びいぼ、にきび、脂漏性障害、ヘルペス、真菌症、湿疹、帯状疱疹の中から選択される。
【0099】
本発明による薬物として使用される炭化水素油は、経口投与、経腸投与、又は皮膚、頭皮、毛髪及び粘膜に対する局所塗布として、若しくは例えば皮下の注射により、非経口投与若しくは局所投与され得る。
【0100】
炭化水素油は、単独で、又は組成物の総重量に対して、好ましくは0.5重量%~80重量%、優先的には1重量%~50重量%、有利には5重量%~30重量%の範囲の量で該炭化水素油を含む医薬組成物の形態で使用され得る。
【0101】
炭化水素油は、例えば、顔又は身体の皮膚、頭皮又は毛髪に局所的塗布され得る。より詳しくは、本発明に定義される炭化水素油は、治癒を加速及び/又は改善するため、皮膚又は頭皮の創傷又は炎症に塗布されてもよい。
【0102】
本発明により使用される炭化水素油は、薬学的分野で従来使用されるその他の脂肪性物質と非常に良好な混和性を有する。特に、本発明により使用される炭化水素油は、以下:植物油、炭化水素油(本発明により使用され、上に定義される炭化水素油以外)、植物性バター、脂肪族アルコール及びエーテル、油性エステル及びアルカン並びにシリコーンオイルの中から選択される少なくとも1種の脂肪性物質と、及び/又は少なくとも1種の添加剤とを更に含んでもよい。
【0103】
炭化水素油は、一般的には石油化学の方法に由来する脂肪性物質である。例として、鉱物油、イソパラフィン、ワックス、パラフィン、ポリイソブテン、又はポリデセンが挙げられ得る。
【0104】
植物油の例は、特に、麦芽、ヒマワリ、ブドウ種子、ゴマ、トウモロコシ、アプリコット、トウゴマ、シア、アボカド、オリーブ、ダイズ油、スイートアーモンド、ヤシ、菜種、綿、ヘーゼルナッツ、マカダミア、ホホバ、アルファルファ、ポピー、スクアッシュ、ゴマ、カボチャ、菜種、クロフサスグリ、マツヨイグサ、キビ、オオムギ、キノア、ライムギ、ベニバナ種子、ククイ、トケイソウ、ローズヒップ、又はツバキ油である。
【0105】
植物性バターは、植物油と同じ特性を有する脂肪体である。この2つの違いは、バターは周囲温度で固体形態であるという事実にある。また、植物油とは対照的に、バターが抽出される原料(果肉、種子又はアーモンド)は、脂肪の抽出のため細かく挽いた後、加熱される。植物油として、より良好な保存を提供するため、臭気を中和するため、色及び粘度を改善するため、バターを精製してもよい。抗酸化物質及び栄養が豊富であることから、植物性バターは、皮膚の弾力を改善し、表皮に保護膜を残し脱水を軽減すことによって外部攻撃から保護し、皮膚の天然の皮脂膜(hydrolipidic film)を再生することによって修復及び鎮静する、美容特性を有する。植物性バターの例は、特にシアバター、カカオバター、マンゴーバター、ショレア(shorea)バター、又はオリーブバターである。
【0106】
脂肪族アルコール及びエステルは、顕著な特性、特に成膜、軟化剤(エモリエント)、保湿、軟化及び保護の特性を有する脂肪性ワックス状長鎖物質である。それらは、保湿油及び乳化剤として作用する。脂肪族アルコール又はエーテルの例は、以下:セチルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコール、ジカプリリルエーテル、ステアリルエーテル、又はオクチルドデカノール(それらのINCI名によって識別される)である。
【0107】
油性エステル又はエステル化油は、脂肪酸(より長鎖の酸、例えばステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等)とアルコール(脂肪族アルコール又はグリセロール等の多価アルコール)との間の反応の生成物である。これらの油は、イソプロピルパルミテートのような石油化学製品に由来する物質を含む。油性エステルの例は、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、カプリル酸カプリン酸ヤシアルキル、エルカ酸オレイル、リノール酸オレイル、オレイン酸デシル、又はPPG-3ベンジルエーテルミリステート(それらのINCI名によって識別される)である。
【0108】
シリコーンオイル又はポリシロキサンという用語は、少なくとも1つのシリコン原子を含む油、特に少なくとも1つのSi-O基を含む油を意味する。シリコーンオイルとして、特にフェニルプロピルジメチルシロキシシリケート、ジメチコーン又はシクロペンタシロキサン(それらのINCI名によって識別される)が挙げられる。
【0109】
また、本発明により使用される炭化水素油を、医薬の分野で通常使用される任意のアジュバント(補助剤)又は添加剤と混合してもよい。もちろん、当業者は、付加される有利な特性が検討される添加によって変更されない又は実質的に変更されないような方法で、上記組成物の任意の添加剤(複数の場合もある)を選択する。(これらのアジュバントの水溶性又は脂溶性の性質に従って)含有され得る従来の添加剤のうち、特に、アニオン性発泡界面活性剤(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、トリデセス硫酸ナトリウム等)、両性界面活性剤(アルキルベタイン、ココアンホジ酢酸二ナトリウム等)又は10超のHLBを有する非イオン性界面活性剤(POE/PPG/POE、アルキルポリグルコシド、ポリグルセリル-3ヒドロキシラウリルエーテル等);防腐剤;金属イオン封鎖剤(EDTA);抗酸化剤;香料;可溶性染料、色素及び真珠層等の色素;テカリ防止、テンソル(tensor)、美白又は角質除去のフィラー;日焼け止めフィルタ;化粧用又は皮膚用の有効成分、及び親水性又は親油性の皮膚の美容特性を改善する効果を有する薬剤;電解質;親水性若しくは親油性、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性の、増粘性、ゲル化又は分散性のポリマーが挙げられ得る。これらの様々なアジュバントの量は、検討される分野で従来使用されている量であり、例えば、組成物の総重量の0.01%~20%である。炭化水素油と併用され得る有効成分として、ビタミンA(レチノール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB5(パンテノール)、ビタミンB3(ナイアシンアミド)等の水溶性又は脂溶性のビタミン、これらのビタミンの誘導体(特にエステル)、及びそれらの混合物;グルタチオン;防腐剤;2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(すなわち、トリクロサン)、3,4,4’-トリクロロカルバニリド(すなわち、トリクロカルバン)等の抗菌性有効成分;抗脂漏薬;過酸化ベンゾイル、ナイアシン(vit.PP)等の抗菌剤;カフェイン等の痩身剤;蛍光増白剤、及び組成物の最終目的のための任意の有効成分、並びにそれらの混合物が挙げられ得る。
【0110】
したがって、医薬組成物は、薬物の有効成分として上に記載される炭化水素油と、植物油、植物性バター、脂肪族アルコール及びエーテル、油性エステル、アルカン並びにシリコーンオイル:の中から選択される少なくとも1種の脂肪性物質と、前述の添加剤のなかから選択される少なくとも1種の添加剤と、を含む。
【0111】
この医薬組成物は、生理学的に許容可能な媒体、すなわち、何ら有害な副次的作用も有さず、特に、許容できない発赤、再発(flare-ups)、緊張又は刺すような痛みをユーザーに対してもたらさない媒体を含む。この媒体は、オプションで、水及び/又は前述の炭化水素油に加えて脂肪性物質として少なくとも1種の油を含む。
【0112】
一実施形態によれば、医薬組成物は、該組成物の総重量に対して、0.5重量%~80重量%、好ましくは1重量%~50重量%、有利には5重量%~30重量%の範囲の上記の炭化水素油の含有量を有する。
【0113】
したがって、本発明により使用される医薬組成物は、無水組成物、油中水型エマルジョン(W/O)、水中油型エマルジョン(O/W)若しくは多相エマルジョン(特にW/O/W又はO/W/O)、ナノエマルジョン等のエマルジョン、又は分散液であってもよい。本発明に従って使用される医薬組成物は、多かれ少なかれフレキシブルなクリーム又は揮発性エマルジョンの形態を有し得る。本発明の実施形態によれば、医薬組成物は、油中水型エマルジョン(W/O)又は多相エマルジョン(特にW/O/W又はO/W/O)又は分散液の形態を有する。
【0114】
好ましくは、本発明は、その質量の100%に対して:
-50重量%~90重量%の化粧品として許容可能な水相(A)、
-その質量100%に対して10重量%~50重量%の脂肪相(F):
-10重量%~50重量%、より詳しくは15重量%~40重量%の直鎖又は分岐鎖、環状又は非環状の飽和炭化水の混合物(M1)であって、そのうち少なくとも95重量%は15個~19個の炭素原子を含む混合物(M1):
-0.5重量%~15重量%の少なくとも1種の水中油型の界面活性剤、
-5重量%~30重量%の太陽からの紫外線に対する少なくとも1種の保護剤、
-0重量%~80重量%の少なくとも1種の油及び/又は1種のワックスであって、混合物(M1)の定義を満たさないと理解される油及び/又はワックス、
を含み、太陽の紫外線照射への曝露と関連するヒトの皮膚疾患、より詳しくは火傷、日焼け、発疹、皮膚癌の予防及び/又は治療が意図される治療的処置の方法におけるその使用に対する、水中油型(E)タイプの局所使用のためのエマルジョンに関するものではない。
【0115】
また、より好ましくは、本発明は、その質量の100%に対して:
-40重量%~90重量%の化粧品として許容される水相(A)であって、その質量100%に対して、1重量%~30重量%のグリセロールを含む水相(A)、及び
-10重量%~60重量%の脂肪相(F)であって、その質量100%に対して、直鎖又は分岐鎖、環状又は非環状の飽和炭化水素の混合物(M1)を1重量%~25重量%含み、そのうち少なくとも95重量%が、15個~19個の炭素原子、及び0.5%~15%の少なくとも1種の水中油型の界面活性剤を含む脂肪相(F)、を含む、ヒト皮膚用のケア製品としての水中油型(E)型の局所使用のためのエマルジョンに関しない。
【0116】
また、炭化水素油又は医薬組成物は、錠剤、コーティング錠、フィルムコート錠、顆粒、カプセル剤、軟カプセル剤、溶液、シロップ剤、エマルジョン、懸濁液又はエアロゾル混合物の形態を有してもよく、好ましくはカプセル剤及び軟カプセル剤の形態であってもよい。したがって、炭化水素油は、全身経路によって、好ましくは経口で投与され得る。したがって、炭化水素油は、医療食品における有効成分として使用されることが意図され得る。当業者は、彼らの一般的な知識によれば、かかる医療食品をどのように製剤化するかについてわかるであろう。例えば、オプションで被覆された、及び硬ゼラチンカプセルの錠剤の製造のため、ラクトース、コーンスターチ又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩を使用することができ、軟ゼラチンカプセルの製造のため、脂質、ワックス、半固形又は液体のポリオールを担体として使用することができる。
【0117】
本発明に定義される炭化水素及びそれを含む医薬組成物は、有利には、4週間以上、有利には6週間以上の持続期間の安定性を有するという事実を特徴とし、その安定性は、周囲温度で、40℃で及び50℃で撹拌せずに貯蔵した後に評価され、色の目視評価、嗅覚評価及び/又は粘度の測定の態様に対応している。
【0118】
本発明の一実施形態によれば、局所医薬組成物であろうと医療食品であろうと、炭化水素油がその薬品の唯一の有効成分である。もちろん、かかる場合には、医薬組成物又は食物は一般に薬学的に許容可能な担体を含む。
【0119】
したがって、本発明に定義される炭化水素油は、抗酸化及び/又は抗ラジカル及び/又は抗アポトーシス及び/又は抗炎症及び/又は抗菌及び/又は抗真菌の効果を有する。そのため、炭化水素油は、治癒を改善及び/又は加速することを可能とする。
【0120】
また、本発明により使用される炭化水素油は、第四級アンモニウム、芳香族アルコール、及びイソチアゾリノンの中から選択される化合物と組み合わせられてもよい。
【0121】
好ましくは、上記化合物は、第四級アンモニウム及びイソチアゾリノンの中から、好ましくは第四級アンモニウムの中から選択される。
【0122】
第四級アンモニウムの中でも、塩化ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、好ましくは、第四級アンモニウムは塩化ベンザルコニウムの例が挙げられ得る。
【0123】
芳香族アルコールの中でも、フェノキシエタノールの例が挙げられ得る。
【0124】
イソチアゾリノンの中でも、メチルイソチアゾリノンの例が挙げられ得る。
【0125】
好ましくは、上記化合物は、炭化水素油と化合物の組み合わせの総重量の、又は該炭化水素油と化合物の組み合わせを含む医薬組成物の総重量の、又は該炭化水素油と化合物の組み合わせを含む医療食品の総重量の、0.1重量ppm~40重量%、好ましくは0.5重量ppm~30重量%、優先的には1重量ppm~20重量%、より一層優先的には3重量ppm~10重量%、理想的には5重量ppm~1重量%を占める。
【0126】
好ましくは、上記化合物は第四級アンモニウムであり、炭化水素油と第四級アンモニウムの組み合わせの総重量の、又は該炭化水素油と第四級アンモニウムの組み合わせを含む医薬組成物の総重量の、又は該炭化水素油と第四級アンモニウムの組み合わせを含む医療食品の総重量の、0.1重量ppm~40重量%、好ましくは0.5重量ppm~30重量%、優先的には1重量ppm~20重量%、より一層優先的には3重量ppm~10重量%、理想的には5重量ppm~1重量%を占める。
【0127】
また、本発明は、上に定義される炭化水素油と、第四級アンモニウム及びイソチアゾリノンの中から選択される化合物との組み合わせを含む組成物を記載する。係る組成物は:
-炭化水素油の総重量に対して、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0重量%~10重量%の範囲の含有量のノルマルパラフィンとを含み、90%以上の含有量の生体由来の炭素を有する炭化水素油を該組成物の総重量に対して少なくとも50重量%と、
-少なくとも第四級アンモニウム及びイソチアゾリノンの中から選択され少なくとも1種の化合物と、を含んでもよい。
【0128】
また、本発明は、上に定義される炭化水素油と、上に定義される第四級アンモニウムの組み合わせを含む組成物を記載する。係る組成物は:
-炭化水素油の総重量に対して、90重量%~100重量%の範囲の含有量のイソパラフィンと、0重量%~10重量%の範囲の含有量のノルマルパラフィンとを含み、90%以上の含有量の生体由来の炭素を有する炭化水素油を、該組成物の総重量に対して少なくとも50重量%と、
-第四級アンモニウム型の少なくとも1種の化合物と、を含んでもよい。
【0129】
第四級アンモニウム又はイソチアゾリノン型の化合物は、化粧用、皮膚用又は医薬の組成物における防腐剤として一般に使用されている。
【0130】
一実施形態によれば、上記組成物において使用される化合物、特に第四級アンモニウムは、上記組成物の総重量の0.1重量ppm~40重量%、好ましくは0.5重量ppm~30重量%、優先的には1重量ppm~20重量%、より一層優先的には3重量ppm~10重量%、理想的には5重量ppm~1重量%を占める。
【0131】
一実施形態によれば、上記組成物において使用される炭化水素油は、上記組成物の総重量の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、優先的には少なくとも80重量%、更に優先的には少なくとも90重量%、理想的には少なくとも99重量%を占める。
【0132】
一実施形態によれば、上記組成物は、本発明で定義される、大部分の炭化水素油と、小部分の化合物、特に小部分の第四級アンモニウムとを含む。
【0133】
「大部分」という用語は、上記組成物の総重量に対して、少なくとも50重量%の量を意味する。
【0134】
「小部分」という用語は、上記組成物の総重量に対して、厳密には50重量%未満の量を意味する。
【0135】
一実施形態によれば、上記組成物は、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、優先的には少なくとも80重量%、更に優先的には少なくとも90重量%、理想的には少なくとも99重量%の炭化水素油と、40重量%未満、好ましくは30重量%未満、優先的には20重量%未満、更に優先的には10重量%未満、理想的には1重量%未満の第四級アンモニウム及びイソチアゾリノンの中から選択される化合物とを含み、該化合物は、好ましくは塩化ベンザルコニウム(BAC)及びメチルイソチアゾリノンの中から選択され、重量%は該組成物の総重量に対して表される。
【0136】
一実施形態によれば、上記組成物は、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、優先的には少なくとも80重量%、更に優先的には少なくとも90重量%、理想的には少なくとも99重量%の炭化水素油と、40重量%未満、好ましくは30重量%未満、優先的には20重量%未満、更に優先的には10重量%未満、理想的には1重量%未満の第四級アンモニウムとを含み、該第四級アンモニウムはより好ましくは塩化ベンザルコニウム(BAC)であり、重量%は該組成物の総重量に対して表される。
【0137】
治療的処置の方法:
また、本発明は、治療的処置の方法を記載し、該方法は、上に薬物として定義される炭化水素油の投与の工程含む。
【0138】
炭化水素油は、上に定義される医薬組成物、又は上に定義される医療食品により適用され得る。
【0139】
炭化水素油は、皮膚、頭皮、毛髪又は粘膜に局所投与されてもよく、又は経口投与されてもよい。局所経路による塗布の場合、炭化水素油は、例えば創傷又は炎症に塗布されてもよい。
【0140】
治療的処置は、特に、皮膚の炎症等の炎症を軽減する、又は治癒を改善及び/又は加速することを可能とする。
【0141】
したがって、上記方法は、抗酸化及び/又は抗ラジカル及び/又は抗アポトーシス及び/又は抗炎症及び/又は抗菌及び/又は抗真菌の効果を特徴とし得る。
【0142】
実施例
本明細書の残りの部分では、本発明の情報のため実施例を挙げるが、いかなる場合も本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。
【0143】
試験した炭化水素油:
表1は、評価した様々な炭化水素油の物理化学的特性を分類する。油A及び油Bは、本発明により使用される炭化水素油である。
【0144】
【0145】
以下の規準及び方法を使用して、上記の特性を測定した:
-引火点:EN ISO 2719
-15°Cの密度:EN ISO 1185
-40℃での粘度:EN ISO 3104
-アニリン点:EN ISO 2977
-沸点:ASTM D86
-生分解性:OECD法306
-20°Cの屈折率:ASTM D 1218
-蒸気圧:当業者によく知られている方法に従って計算した。
【0146】
細胞効果に関する試験
試験品の作製:
-マイクロプレートの作製:油A及び油Bとのインキュベーションの24時間前、HaCaT細胞を96ウェルマイクロプレート(コーニング(Corning))に100,000 cells/mlの細胞密度で接種した。次いで、マイクロプレートを37℃のインキュベータに入れる。マイクロプレートにおいて、各条件を少なくとも3回試験した。結果の再現性を検証するため、及び統計分析を行うために、各実験を独立して少なくとも3回行った。
【0147】
-油A又は油Bとの細胞のインキュベーション:純粋に試験される生成物について、2つのインキュベーション持続期間:15分間のインキュベーション及び1時間のインキュベーションを選択した。これらのインキュベーション時間の後、マイクロプレートを空にし、細胞を濯いで、細胞を、グルタミン1重量%及び抗生物質0.5重量%を含む10%FBS(ウシ胎児血清)で強化した培養培地DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)と共に24時間インキュベートした。
【0148】
分析
細胞効果を細胞蛍光測定マイクロタイター法(MiFALC試験-Microtitration Fluorimetric Assays on Live Cells)により、接着生細胞を直接評価する。本研究で使用したマイクロプレートリーダはSafire cytometer(Tecan)である。
【0149】
酸化ストレスの評価:
酸化ストレスは、酸化種(主に活性酸素種)と抗酸化防御機構の間の不均衡に対応する。この不均衡は、炎症、細胞変性等のタイプの有害作用に結びつく。
【0150】
活性酸素種の産生を評価するため、試験H2DCF-DA(2’,7’-ジヒドロジクロロフルオレセインジアセテート)を使用する。この蛍光発生分子は受動拡散を介して細胞へ進入し、細胞質基質に蓄積し、そこで細胞エステラーゼによって加水分解される。活性酸素種の存在下で、形成された生成物は蛍光誘導体へと酸化され得る。したがって、蛍光強度の増加は活性酸素種(ROS)の産生の増加、及び調査される細胞の酸化ストレスの増加と外挿によって組み合わされる。
【0151】
培養培地(CM)に対するパーセンテージとして表される活性酸素種(ROS)の産生を下記表2に示す。
【0152】
【0153】
表2に示されるように、本発明で定義される炭化水素油は、15分間後又は1時間後に活性酸素種の生産過剰を全く誘導しない。油A及びBは、対照培養培地と比べて、活性酸素種の産生を減少させる。
【0154】
したがって、本発明で定義される炭化水素油を、抗酸化剤として使用することができる。
【0155】
医薬組成物で添加剤として使用される防腐剤を評価した。評価した防腐剤はフェノキシエタノール(POE)及びメチルイソチアゾリノン(MIT)である。
【0156】
この試験のため、HaCat細胞を油A又は油Bと共にインキュベートし(例えばPOEを用いる試験については15分間)、次いで、防腐剤であるPOE又はMITと共に(例えば250μg/mLのフェノキシエタノール溶液を用いて30分間)インキュベートする。
【0157】
ROSの産生を下記表2-2に示す。
【0158】
【0159】
表2-2に示されるように、本発明に従って使用される油A及び油Bは、ROSの産生を増加させる傾向がある防腐剤の存在下で活性酸素種の産生を減少させる。
【0160】
細胞変性防止の評価
クロマチンの縮合の評価:
この試験のため、HaCat細胞を油A若しくは油B、又はオリーブオイルと共に1時間インキュベートし、次いで、8重量ppmの含有量で存在する塩化ベンザルコニウム(BAC)と共に20分間インキュベートした。クロマチンの縮合を評価するためHOECHST 33342試験を行う。
【0161】
塩化ベンザルコニウムは、アポトーシス(プログラム細胞死)の現象を生じる。オリーブオイル(OO)は塩化ベンザルコニウムから細胞を保護することが知られている油である。
【0162】
培養培地(CM)に対するパーセンテージとして表されるクロマチン縮合の測定を下記表3に示す。
【0163】
【0164】
表3に示されるように、油A及び油Bは抗アポトーシス効果を有する。さらに、A又はBの炭化水素油の存在下で塩化ベンザルコニウムのアポトーシス効果が大幅に減少され、この減少はオリーブオイルで得られたものよりはるかに大きいことが注目され得る。
【0165】
受容体P2X7の活性化の評価:
皮膚を含む多くの組織に存在するP2X7受容体は、炎症及び特にアポトーシスによる細胞死の現象に関与する。
【0166】
試験品YO-PRO-1は、P2X7受容体の活性化を評価することを可能にする。膜透過性がP2X7受容体(膜細孔の開口部)の活性化によって修飾された場合にのみ、この蛍光センサーは細胞へと進入する。次いで、使用されるセンサーはDNA上に固定され、蛍光を発光する。P2X7の活性化が大きいほど、蛍光の強度は高くなる。
【0167】
培養培地(CM)に対するパーセンテージとして表されるP2X7の活性化を表4に示す。
【0168】
【0169】
表4に示されるように、本発明による炭化水素油BはP2X7受容体の活性化を減少させることを可能にする。
【0170】
したがって、本発明で定義される炭化水素油は抗アポトーシス効果を有し、細胞死の現象を阻害する。
【0171】
したがって、本発明で定義される炭化水素油は、例えば、抗アポトーシス及び抗炎症の薬剤として使用され得る。