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特許7169289少なくとも1種の水溶性もしくは親水性物質を含むカプセルを製造する方法およびその方法から得られるカプセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】少なくとも1種の水溶性もしくは親水性物質を含むカプセルを製造する方法およびその方法から得られるカプセル
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/50 20060101AFI20221102BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20221102BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20221102BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61K9/50
A61K47/44
A61K47/34
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/36
A61K9/107
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019552515
(86)(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2018057028
(87)【国際公開番号】W WO2018172360
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】1752331
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519197778
【氏名又は名称】カリシア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン ドゥムーラン
(72)【発明者】
【氏名】リュディビーヌ ムーニエ
(72)【発明者】
【氏名】アリシア サダウィ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー ウォルターズ
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0144329(US,A1)
【文献】特表2005-503500(JP,A)
【文献】特表2010-506988(JP,A)
【文献】特表2007-528286(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046344(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/100196(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/02-13/22
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形マイクロカプセルを製造する方法であって、前記方法が、下記の工程、すなわち
a)疎水性相中に分散された少なくとも1種の水溶性物質または親水性物質を含む組成物C1を製造する工程と、
b)前記組成物C1をポリマー組成物C2中に攪拌しながら添加する工程であって、前記組成物C1およびC2は互いに非混和性であり、
前記組成物C2は少なくとも1種のモノマーもしくはポリマーと、少なくとも1種の架橋剤と、随意選択的に少なくとも1種の光開始剤、または架橋触媒とを含み、
前記組成物C2の粘度は25℃で500mPa.s~100,000mPa.sの範囲であり、
これにより、前記組成物C2中に分散された前記組成物C1の液滴を含むエマルジョン(E1)が得られる、
工程と、
c)前記エマルジョン(E1)を組成物C3中に攪拌しながら添加する工程であって、前記組成物C2およびC3は互いに非混和性であり、
前記組成物C3の粘度は25℃で500mPa.s~100,000mPa.sの範囲であり、
これにより、前記組成物C3中に分散された液滴を含む二重エマルジョン(E2)が得られる、
工程と、
d)前記エマルジョン(E2)に剪断を加え、
これにより、前記組成物C3中に分散されたサイズが制御された液滴を含む二重エマルジョン(E3)が得られる、
工程と、
e)前記組成物C2を重合し、これにより前記組成物C3中に分散された固形マイクロカプセルが得られる、
工程とを含む、
固形マイクロカプセルを製造する方法。
【請求項2】
前記水溶性物質または親水性物質が周囲温度および大気圧で固形形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物C1が、粉末の形態の少なくとも1種の水溶性または親水性の固形物質を前記疎水性相中に分散することにより、あるいは疎水性相中の水滴のナノエマルジョンを製造することによりのいずれかで製造される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物C1が、少なくとも1種の固形の水溶性または親水性物質を粉砕し、次いで前記粉砕された物質を前記疎水性相中に分散させることにより得られる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記疎水性相が少なくとも1種の油を含み、前記油の水との界面張力が25mN/m~50mN/mの範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記油が、植物油、動物油、または合成油から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物C2が、前記組成物の総質量に対して0.001質量%~70質量%の範囲の架橋剤を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程d)が、均質な制御された剪断を前記エマルジョン(E2)に加えることからなり、加えられる剪断速度が1000s-1~100,000s-1の範囲である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物C3の粘度が25℃で2000mPa.s超である場合に、前記工程d)が、1000s-1未満の剪断速度を前記エマルジョン(E2)に加えることからなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物C2が光開始剤を含む場合に、前記工程e)が、前記組成物C2の光重合を開始することができる光源に前記エマルジョン(E3)を暴露させることからなる光重合工程である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物C2が光開始剤を含まない場合に、前記工程e)は、光源に対する暴露のない重合工程である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物C3が、加えて、少なくとも1種の分枝ポリマー、および/または5000g.mol-1超の分子量を有する少なくとも1種のポリマー、および/または固形粒子を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
一組の固形マイクロカプセルであって、それぞれのマイクロカプセルが、
- 請求項1~6のいずれか1項で規定された組成物C1を含むコアと、
- その周囲で前記コアを完全にカプセルに包む固形封入シェルと
を含み、
前記マイクロカプセルの平均直径が1μm~30μmの範囲であり、前記剛性封入シェルの厚さが0.1μm~20μmの範囲であり、そして前記マイクロカプセル直径の分布の標準偏差が50%未満、または1μm未満である、
一組の固形マイクロカプセル。
【請求項14】
請求項13に記載の一組の固形マイクロカプセルを含む組成物。
【請求項15】
水溶性物質または親水性物質を放出する方法であって、前記方法が、請求項14に記載の一組の固形マイクロカプセルを含む組成物に機械的剪断応力を加える工程を含む、水溶性物質または親水性物質を放出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、少なくとも1種の水溶性物質または親水性物質を含むカプセルを製造する方法に関する。また、本発明はそのように得られたカプセル、ならびにそのカプセルを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
数多くの高度に水溶性物質または親水性物質が、配合製品に興味深い有益な適用性をもたらし、あるいは製品の性能を改善するために、しばしば配合製品に添加されている。ある特定の事例では、これらの物質は脆弱な分子であり、加水分解、熱変性、または酸化のようなメカニズムによって分子の環境との相互作用の結果として劣化を受け易く、このことは、配合製品の性能の低下をもたらす。
【0003】
他の場合には、これらの物質は配合製品のイオン強度を有意に変更し、その結果、製品の安定性に対する不都合な結果がもたらされ、製品は、例えば急速な相分離を受ける可能性がある。
【0004】
更に他の場合には、これらの物質は配合製品の他の成分と反応し、このことはまた、安定性への不都合な結果、ならびに性能レベルの低下をもたらす。
【0005】
水溶性物質または親水性物質のカプセル化は、これらを含有する配合製品の性能または安定性に関する制限を克服するための著しい有益な重要性を有する技術である。
【0006】
配合製品中の活性成分、および特には水溶性物質もしくは親水性物質を保護および/または隔離するために、極めて数多くのカプセルが開発されている。これらのカプセルは、数ある中でもスプレー乾燥、界面重合、界面析出、または溶媒蒸発などの製造方法から得られる結果である。これらの方法によって製造されたカプセルの封入シェルは、カプセルのコア内に溶解された水溶性物質または親水性物質と同程度に小さなサイズの分子、あるいは物質の劣化の原因となる二酸素または水のような化学種の拡散を効果的に防ぐのに十分に封止されたバリアを構成しはしない。従って、結果として、これらのカプセルは、その中に含まれる水溶性物質または親水性物質の比較的急速な漏れを引き起こし、このことは、カプセルがひとたび配合製品中に分散されると、これらの物質の急速な劣化を伴う。
【0007】
対象の水溶性物質または親水性物質と同程度に小さなサイズの分子、あるいは物質の劣化の原因となる化学種の拡散を防ぐという困難な問題は、今日まで、水溶性物質または親水性物質を申し分なしに保護し、そして保持するのに充分な保護および保持特性を有するカプセルが存在しないという事実を説明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、水溶性物質もしくは親水性物質、または更に非常に高度に水溶性もしくは親水性の物質をカプセル化し、一方で前述の汚染問題を防ぐ方法を提供するという目的を果たす。
【0009】
従って、本発明はまた、特には20μm未満、または更には5μm未満のサイズを有する、サイズが制御されたカプセルを得ることを可能にする、二重エマルジョンによるカプセル化方法を提供するという目的を果たす。
【0010】
また、本発明は、優れた保持能力を示す、少なくとも1種の水溶性物質もしくは親水性物質、または更には極めて高度に水溶性もしくは親水性の物質を含有するカプセルを提供するという目的を果たす。
【0011】
また、本発明は、複数の保護バリア、特には立体バリア、熱力学的バリア、および物理学的バリアを示し、少なくとも1種の水溶性物質または親水性物質、または更には極めて高度に水溶性または親水性の物質を含有するカプセルを提供するという目的を果たす。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このように、本発明は、以下の工程、すなわち
a)疎水性相中に分散された少なくとも1種の水溶性物質または親水性物質を含む組成物C1を製造する工程と、
b)攪拌しながら、前記組成物C1をポリマー組成物C2中に添加する工程であって、前記組成物C1およびC2は互いに非混和性であり、
前記組成物C2は少なくとも1種のモノマーまたはポリマーと、少なくとも1種の架橋剤と、そして随意選択的に少なくとも1種の光開始剤、または架橋触媒とを含み、
前記組成物C2の粘度は、25℃で500mPa.s~100,000mPa.sの範囲であり、そして好ましくは前記組成物C1の粘度よりも高く、
これにより、前記組成物C2中に分散された前記組成物C1の液滴を含むエマルジョン(E1)が得られる、
工程と、
c)前記エマルジョン(E1)を組成物C3中に攪拌しながら添加する工程であって、前記組成物C2およびC3は互いに非混和性であり、
前記組成物C3の粘度は25℃で500mPa.s~100,000mPa.sの範囲であり、そして好ましくは前記エマルジョン(E1)の粘度よりも高く、
これにより、前記組成物C3中に分散された液滴を含む二重エマルジョン(E2)が得られる、
工程と、
d)前記エマルジョン(E2)に剪断力を加え、
これにより、前記組成物C3中に分散されたサイズが制御された液滴を含む二重エマルジョン(E3)が得られる、
工程と、
e)前記組成物C2を重合し、これにより前記組成物C3中に分散された固形マイクロカプセルが得られる
工程とを含む、
固形マイクロカプセルを製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
従って、本発明の方法は、コアと、その周囲でコアを完全にカプセルに包む固形封入シェルとを含む固形マイクロカプセルであって、コアが疎水性相中に分散された少なくとも1種の水溶性物質または親水性物質を含む組成物C1である、固形マイクロカプセルを製造するのを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の方法に基づき得られるマイクロカプセルは、有利には、その中に含有される水溶性物質または親水性物質を、下記の3つの異なるメカニズムに基づいて、カプセルの外部環境に由来する劣化誘発性の化学種によって劣化させられることから保護する能力を提供する。すなわち、
- 水溶性物質または親水性物質の劣化を引き起こす化学種の、カプセル内部への拡散が、剛性の、高密度の架橋された封入シェルによって有利に制限される、
- コアの疎水性相が、水溶性物質または親水性物質への親水性の劣化性種の拡散を抑制する付加的なバリアを構成する、そして、
- 水溶性物質または親水性物質が固体状態にある(すなわち、例えば下記のような粒子または結晶の形態をなす)場合、この状態は、劣化性種と直接に接触する材料の量を制限する、すなわち、1つの外部層だけが、水溶性物質または親水性物質を含有する疎水性相と直接に接触することが判る。固形物内部への化学種の拡散が液体と比較して著しく遅くなることを考慮すると、粒子の中心に位置する水溶性物質または親水性物質の分子は、劣化性化学種から完全に隔離されることが判る。
【0015】
本発明のカプセルは、この性能レベルに達するために下記の複数の保持バリアを提供する点で特に有利である。
- 立体バリア:特には固形形態、特には粒子形態および/または結晶形態、特には塩の形態の、好ましくは1μm未満の平均サイズを有する、水溶性物質または親水性物質はこれらのサイズのために、剛性のポリマー封入シェルの細孔を通過することができない。
- 熱力学的バリア:カプセルのコアの疎水性相中の水溶性物質または親水性物質の溶解度が無視できるものであるので、従って水溶性物質または親水性物質の分子がコア内で溶解し、そして従って続いてカプセル外部へより急速に拡散する可能性を排除する。そして、
- 物理的バリア:固形封入シェルは、カプセルの外部への溶解された化学種の拡散を有利に制限する。
【0016】
本発明の方法は、架橋性液相中に包まれた水溶性物質または親水性物質を含有する疎水性相の液滴から構成された二重エマルジョンを製造することからなる。これらの二重液滴は、次いで架橋または重合によって剛性のカプセルに変換される前に、サイズを単分散にされる。調製は以下により詳細に説明するように5つの工程を含んでいる。
【0017】
工程a)
本発明による方法の工程a)は、少なくとも1種の水溶性物質または親水性物質を含む組成物C1を調製することからなる。
【0018】
組成物C1
組成物C1は分散体であり、疎水性相中に分散された少なくとも1種の水溶性物質または親水性物質を含む。
【0019】
本発明によれば、「水溶性物質または親水性物質」という用語は、周囲温度、例えばT=25℃±2℃、および周囲圧力、例えば1013mbarで測定して、1グラム/リットル(g/L)の、水中の溶解度を有する物質を意味するのに使用される(巨視的に等方性であり、且つ着色の有無にかかわらず透明な溶液を得る)。
【0020】
この水溶性は、好ましくは10g/L以上であり、特には50g/L以上であり、あるいは更には100g/L以上である。
【0021】
さらに、疎水性相中の水溶性物質または親水性物質の溶解度は、有利には20g/L未満であり、好ましくは10g/L未満であり、そして好ましくは1g/L未満である。
【0022】
1つの態様によれば、水溶性物質または親水性物質は、周囲温度、例えばT=25℃±2℃、および周囲圧力、例えば1013mbarで、水の不在において、固体の状態(または形態)にあり、そして特には粒子形態および/または結晶形態、特には塩の形態をなし、好ましくは1μm未満の平均サイズを有する。
【0023】
本発明の文脈において、「サイズ」という用語は粒子および/または結晶の直径、特には平均直径を意味するために使用される。
【0024】
1つの態様によれば、水溶性物質または親水性物質の中では、下記の化合物、すなわちアスコルビン酸、特にはL-アスコルビン酸、およびその生体適合性誘導体もしくは塩、例えばエチルビタミンC、酵素、抗生物質、テンソル効果成分、アルファ-ヒドロキシ酸およびその塩、ヒドロキシル化ポリ酸、スクロースおよびその誘導体、尿素、アミノ酸、オリゴペプチド、水溶性植物抽出物、および酵母、タンパク質加水分解物、ヒアルロン酸、ムコ多糖、ビタミンB1、B2、B3、B6、B12、H、PP、パンテノール、葉酸、アセチルサリチル酸、アラントイン、グリシルレチン酸、コウジ酸、ハイドロキノン、ジヒドロキシアセトン(またはDHA)、EUK134(化粧品原料国際命名法、International Nomenclature of Cosmetic Ingredients (INCI)による名称:エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリド)、白金、パラジウム、チタン、モリブデン、銅または亜鉛の有機金属または無機金属触媒、殺菌剤および抗菌剤、そして特には銀塩、増白剤またはホワイトニング剤/ライトニング剤、分散性改質剤、安定剤、染み抜き剤、特には米国特許第6335315号明細書および米国特許第587714号明細書に挙げられたもの、耐火剤または難燃剤として使用し得る化合物、例えばホウ素塩、アルミニウム水和物、または水酸化マグネシウム、相転移物質(Phase Change Materials)(PCM)として使用し得る化合物、例えば炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸セシウム、硫酸セシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、カルシウムサッカレート、硫酸カルシウム、リン酸セリウム、リン酸鉄、炭酸リチウム、硫酸リチウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、炭酸ルビジウム、硫酸ルビジウム、四ホウ酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、テルル酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ストロンチウムヒドロホスフェート、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、チオ硫酸ナトリウム、パラフィン系炭化水素ワックス、ポリエチレングリコールからなる群から選択されたものを挙げることができる。
【0025】
本発明による組成物C1は、有利には、前記組成物C1の総質量に対して0.1質量%~40質量%、好ましくは0.5質量%~35質量%、特には1質量%~30質量%、更により好ましくは5質量%~25質量%、そして更により好ましくは10質量%~20質量%の水溶性物質または親水性物質を含むことができる。
【0026】
1つの態様によれば、最適な保護のために、組成物C1の疎水性相は、水との低い界面張力において中度の極性を有する油を含む。
【0027】
1つの好ましい態様によれば、組成物C1の疎水性相は、水との界面張力が25mN/m~50mN/mの範囲である少なくとも1種の油を含む。界面張力(または表面張力(surface tension)または表面張力(superficial tension))は慣用の方法に基づいて、特にはペンダントドロップ法またはデュヌイ(Du Nouy)リング法に基づいて測定される。デュヌイ(Du Nouy)リング技術は、その表面張力を測定しようとする液体中に白金リングを浸し、そして次いで周囲温度で、液体/空気界面へ向かって、リングに引張力を加えることからなる。張力計は、この界面における最大力を探索し、これを測定する(仏国特許出願第3004641号明細書の図K)。この力はPmと記され、そしてその値は直接には得られず、これはリングの外形に基づいて補正される。
【0028】
装置は先ず、測定された表面張力を意味するgsを計算する。これはgs=Pm/[2p(Ri+Ro)]という関係によって得られ、式中、RiおよびRoは、それぞれリングの内側半径および外側半径である。
【0029】
次いで、gs=gs・Fという関係に基づいて、そこからgsが推定され、式中、Fは、液体密度、ならびにリングの直径比に依存する補正因子である。関連する操作はKruess K12 張力計によって行われ、液体は充分に清浄化された晶析装置(46mm直径のref GL5 Krussの晶析装置)内に容れられ、そしてリングは白金イリジウム(ref Kruss R101)製である。この装置は表面張力をmN/mで直接与える。
【0030】
好ましくは、油は植物油、動物油、または合成油の中から選択される。
【0031】
これらの油は一般には化学的特性、例えばエステル、エーテル、アルカン、アルコール、アルケン、植物油、天然もしくは合成由来の油、炭化水素またはシリコーン、直鎖状または分枝状、重合されているか否かに関して異なっていてよい。
【0032】
これらの油の中で、例として、パラフィン油またはポリアルファオレフィンを挙げることができる。
【0033】
水溶性物質または親水性物質が固形形態、具体的には粒子形態および/または結晶形態であり、特には1μm未満の平均サイズを有する場合には、組成物C1はいくつかの方法で調製することができる。
【0034】
第1の技術は、溶解された形態の水溶性物質または親水性物質を含有する水滴を形成し、そして次いで水を蒸発させることからなる。
【0035】
従って、第1の態様によれば、組成物C1は、特には噴霧化によって得られる、粉末の形態の少なくとも1種の水溶性または親水性の固形物質を疎水性相中に分散させることにより調製される。
【0036】
別の態様によれば、噴霧化(スプレー乾燥)は、粉末形態の粒子を得るのを可能にし、この粒子は次いで疎水性相中に分散され、それが時間と共に最終的には本発明によるマイクロカプセルのコアを形成する。
【0037】
別の態様によれば、組成物C1は、疎水性相中の水滴のナノエマルジョンを調製することにより得られる。ナノエマルジョンは、一般に1μm以下、より好ましくは800nm以下の平均液滴サイズを有するエマルジョンの分類である。
【0038】
こうして得られたナノエマルジョンは、カプセルのコアを形成する。
【0039】
こうして得られたナノエマルジョンは次いで、減圧下で攪拌および/または加熱することによって、あるいは凍結乾燥(フリーズドライ)することによって乾燥させることができる。減圧下での攪拌によって乾燥させる場合、プロペラ撹拌機、または磁気スターラによって動かされる棒磁石によってかき混ぜられたナノエマルジョンを閉鎖容器内に容れ、その圧力は真空ポンプによって100mbar未満、好ましくは50mbar未満、より好ましくは10mbar未満とされ、それによって水が液滴から蒸発するのを可能にさせる。本方法の1つの態様によれば、閉鎖容器/チャンバは、水の蒸気圧を、飽和蒸気圧を十分に下回った状態に維持するために凝縮カラムを備えていることができる。加熱による乾燥の場合、プロペラ撹拌機、または磁気スターラによって動かされる棒磁石によってかき混ぜられたナノエマルジョンを30℃~70℃の範囲の温度まで加熱し、それによって液滴から水を蒸発させることを可能にする。本方法の1つの態様によれば、減圧下での乾燥プロセスと加熱による乾燥プロセスとを必要に応じて組み合わせることができる。凍結乾燥による乾燥の場合には、ナノエマルジョンは凍結乾燥機内へ導入される。この方法は、組成物C1の疎水性相の凝固温度よりも好ましくは高い温度でナノエマルジョンを凍結させ、そして次いで昇華によって水を取り除くことからなる。
【0040】
第2の技術は、所望のサイズの粒子を得るために少なくとも1種の固形の水溶性物質または親水性物質の粗粉末を粉砕し、そして次いで、カプセルのコアを最終的に形成する疎水性相中にこれらを分散させることからなる。
【0041】
従って、さらに別の態様によれば、組成物C1は、少なくとも1種の固形の水溶性物質または親水性物質を粉砕し、そして次いで前記粉砕された物質を疎水性相中に分散させることによって得られる。
【0042】
工程b)
本発明による方法の工程b)は、第1のエマルジョン(E1)を調製することにある。
【0043】
第1のエマルジョンは、C1とは非混和性であるポリマー組成物C2中の組成物C1の液滴の分散体からなっており、攪拌しながらC1をC2に液滴状に添加することによって形成される。
【0044】
工程b)中、組成物C1の温度は0℃~100℃の範囲、好ましくは10℃~80℃の範囲、そして好ましくは15℃~60℃の範囲である。工程b)の間に、組成物C2の温度は0℃~100℃の範囲、好ましくは10℃~80℃の範囲、そして好ましくは15℃~60℃の範囲である。
【0045】
工程b)における添加条件下で、組成物C1およびC2は互いに混和することができず、このことは、組成物C2中に可溶化することができる組成物C1の量(質量)が組成物C2の総質量に対して、5%以下、好ましくは1%未満、そしてより好ましくは0.5%未満であること、そして組成物C1中に可溶化することができる組成物C2の量(質量)が組成物C1の総質量に対して、5%以下、好ましくは1%未満、そしてより好ましくは0.5%未満であることを意味する。
【0046】
このように、組成物C1が攪拌下で組成物C2と接触した場合には、それは、シングル液滴と呼ばれる液滴の形態で分散される。
【0047】
組成物C2は、組成物C2中に分散された組成物C1の液滴を含むエマルジョンを形成するように攪拌される。このエマルジョンは「単独エマルジョン」またはC2中C1(C1-in-C2)エマルジョンとも称される。
【0048】
工程b)を実施するために、エマルジョンを形成するために通常使用されるいずれかの種類の攪拌器、例えばパドルを備えた機械的攪拌器、静的乳化器、超音波ホモジナイザ、メンブレンホモジナイザ、高圧ホモジナイザ、コロイドミル、高剪断分散器、または高速ホモジナイザを利用することができる。
【0049】
組成物C1は上記で規定された通りである。
【0050】
組成物2
組成物C2は、マイクロカプセルの将来の固形封入シェルを形成する際に使用するように意図されている。
【0051】
本方法の最後に得られるカプセルの封入シェルの厚さを制御するために、C2中のC1の体積分率は0.1~0.7であることができる。
【0052】
1つの態様に基づき、組成物C1の体積と組成物C2の体積との比は1:10~10:1の範囲である。好ましくは、この比は1:3~5:1の範囲、好ましくは1:3~3:1の範囲である。
【0053】
好ましくは、組成物C2の粘度は、25℃で1000mPa.s~50,000mPa.sの範囲、好ましくは2000mPa.s~25,000mPa.sの範囲、そして例えば3000mPa.s~15,000mPa.sの範囲である。
【0054】
好ましくは、組成物C2の粘度は組成物C1の粘度よりも高い。
【0055】
粘度は、直径60mmおよび円錐角2度を有する円錐と、25℃で設定された温度制御セルとを備えたモデルHaake Rheostress(商標)600のレオメータ-によって測定される。粘度の値は、10秒-1に等しい剪断速度に対して読み取られる。
【0056】
本態様によれば、エマルジョン(E1)の液滴の不安定化の速度は有意に低く、このことが、マイクロカプセルの封入シェルが、エマルジョンが不安定される前に、工程e)の間に重合されることを可能にする。重合は、一旦完了すると、次いで熱力学的安定化をもたらす。従って、組成物C2の比較的に高い粘度は、工程b)の最後に得られるエマルジョン(E1)の安定性を確実にする。
【0057】
好ましくは、組成物C1およびC2間の界面張力は低い。典型的には、これらの界面張力は0mN/m~50mN/mの範囲、好ましくは0mN/m~20mN/mの範囲で変化する。
【0058】
また、組成物C1およびC2間の低い界面張力は、有利には、工程b)の最後に得られるエマルジョン(E1)の安定性を確実にするのを可能にする。
【0059】
組成物C2は少なくとも1種のモノマーまたはポリマーと、少なくとも1種の架橋剤と、随意選択液に少なくとも1種の光開始剤、または架橋触媒とを含み、これによりこれを架橋可能にする。
【0060】
1つの態様によれば、組成物C2は、組成物C2の総質量に対して50質量%~99質量%のモノマーもしくはポリマー、またはモノマーもしくはポリマーの混合物を含む。
【0061】
1つの態様によれば、組成物C2は、組成物C2の総質量に対して1質量%~20質量%の架橋剤または架橋剤の混合物を含む。
【0062】
1つの態様によれば、組成物C2は、組成物C2の総質量に対して0.1質量%~5質量%の光開始剤または光開始剤の混合物を含む。
【0063】
1つの態様によれば、組成物C2は、前記組成物C2の質量に対して0.001質量%~70質量%の架橋剤を含む。
【0064】
本発明によれば、「モノマー」または「ポリマー」という用語は、単独で、または他のモノマーもしくはポリマーとの組み合わせで、重合によって固形材料を形成するのに適したいずれかの基本単位を意味する。
【0065】
これらのモノマーは、官能基、例えば、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート、およびペルオキシドから構成される群の中から選択された少なくとも1種の反応性官能基を含むモノマーの中から選択されることができる。
【0066】
特には、モノマーは、上述の反応性官能基のうちの少なくとも1種を含有する、そしてこれに加えて第一級、第二級、および第三級アルキルアミン官能基、第四級アミン官能基、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、カルボキシレート、ヒドロキシル、ハロゲン官能基、およびこれらの混合物から構成された群の中から選択された少なくとも1種の官能基を含有する、モノマーの中から選択されることができる。
【0067】
組成物C2中に使用されるポリマーは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリスルフィド、およびポリジメチルシロキサンから選択されてよい。これに加えて少なくとも1つの反応性官能基を含有する前記ポリマーは、次の官能基、すなわちアクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート、およびペルオキシドから成る群の中から選択される。
【0068】
このようなポリマーの例としては、下記ポリマー、すなわちポリ(2-(1-ナフチルオキシ)エチルアクリレート)、ポリ(2-(2-ナフチルオキシ)エチルアクリレート)、ポリ(2-(2-ナフチルオキシ)エチルメタクリレート)、ポリソルビトールジメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ((2-(1-ナフチルオキシ)エタノール)、ポリ(2-(2-ナフチルオキシ)エタノール)、ポリ(1-クロロ-2,3-エポキシプロパン)、ポリ(n-ブチルイソシアネート)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(p-ベンズアミド)、ポリ(p-クロロスチレン)、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(p-フェニレンオキシド)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリ(N-(メタクリルオキシエチル)スクシンイミド)、ポリベンズイミダゾール、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリクロラール、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリヒドリドシルセスキオキサン、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(メチル2-アクリルアミド-2-メトキシアセテート)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリ-モノ-ブチルマレエート、ポリブチルメタクリレート、ポリ(N-tert-ブチルメタクリルアミド)、ポリ(N-n-ブチルメタクリルアミド)、ポリシクロヘキシルメタクリルアミド、ポリ(m-キシレンビスアクリルアミド 2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、N,N-ジメチルメタクリルアミド)、ポリ(n-ブチルメタクリレート)、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリイソブチルメタクリレート、ポリ(4-シクロヘキシルスチレン)、ポリシクロールアクリレート、ポリシクロールメタクリレート、ポリジエチルエトキシメチレンマロネート、ポリ(2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート)、ポリ(1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレート)、ポリメタクリレート、ポリ(N,N-ジメチルアニリンジヒドラジド)、ポリ(イソフタル酸ジヒドラジン)、イソフタルポリ酸、ポリジメチルベンジルケタル、エピクロロヒドリン、ポリ(エチル-3,3-ジエトキシアクリレート)、ポリ(エチル-3,3-ジメチルアクリレート)、ポリ(エチルビニルケトン)、ポリ(ビニルエチルケトン)、ポリ(ペンテン-3-オン)、ポリホルムアルデヒド、ポリ(ジアリルアセタール)、ポリフマロニトリル、ポリグリセリルプロポキシトリアクリレート、ポリグリセリルトリメタクリレート、ポリグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ポリグリシジルアクリレート、ポリ(n-ヘプチルアクリレート)、ポリ(アクリル酸n-ヘプチルエステル)、ポリ(n-ヘプチルタクリレート)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオニトリル)、ポリ(2-ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(N-(メタクリルオキシエチル)フタルイミド、ポリ(1,9-ノナンジオールジアクリレート)、ポリ(1,9-ノナンジオールジメタクリレート)、ポリ(N-(n-プロピル)アクリルアミド)、ポリ(オルト-フタル酸)、ポリ(イソフタル酸)、ポリ(1,4-ベンゼンジカルボン酸)、ポリ(1,3-ベンゼンジカルボン酸)、ポリ(フタル酸)、ポリ(モノ-2-アクリルオキシエチルエステル)、テレフタルポリ酸、フタル酸ポリ無水物、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリソルビトールペンタアクリレート、ポリビニルブロモアセテート、ポリクロロプレン、ポリ(ジ-n-ヘキシルシリレン)、ポリ(ジ-n-プロピルシロキサン)、ポリジメチルシリレン、ポリジフェニルシロキサン、ポリビニルプロピオネート、ポリビニルトリアセトキシシラン、ポリビニルトリス-tert-ブトキシシラン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレンコ-ビニルアセテート、ポリ(ビスフェノール-Aポリスルホン)、ポリ(1,3-ジオキセパン)、ポリ(1,3-ジオキソラン)、ポリ(1,4-フェニレンビニレン)、ポリ(2,6-ジメチル-1A-フェニレンオキシド)、ポリ(4-ヒドロキシ安息香酸)、ポリ(4-メチルペンテン-1)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリメチルアクリロニトリル、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルシルメチレン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリ(フェニルシルセスキオキサン)、ポリ(ピロメリトイミド-1,4-ジフェニルエーテル)、ポリテトラヒドロフラン、ポリチオフェン、ポリ(トリメチレンオキシド)、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン-コ-ビニルアセテート、ポリ(ペルフルオロエチレンプロピレン)、ポリ(ペルフルオロアルコキシルアルカン)、またはポリ(スチレン)アクリロニトリル)が挙げられるが、それらには限定されない。
【0069】
「架橋剤」という用語は、モノマーまたはポリマー、あるいはモノマーまたはポリマーの混合物を、その重合中に架橋することができる少なくとも2つの反応性官能基を有する化合物を意味するために使用される。
【0070】
架橋剤は、以下の官能基、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート、およびペルオキシドから構成される群の中から選択された少なくとも2つの官能基を含有する分子の中から選択されることができる。
【0071】
架橋剤の例として、具体的には以下のものが挙げられる。
- ジアクリレート、例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)プロパン、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ビス(2-メタクリルオキシエチル)N,N’-1,9-ノニレンビスカルバメート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、1,4-フェニレンジアクリレート、アリルメタクリレート、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、N,N-ジアリルアクリルアミド、2,2-ビス[4-(2-アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、グリシジルメタクリレート;
- 多官能性アクリレート、例えばジペンタエリトリトールペンタアクリレート、1,1,1-トリメチロールプロパントリアクリレート、1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンジアミンテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート;
- 他の反応性官能基をも有するアクリレート、例えばプロパルギルメタクリレート、2-シアノエチルアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、N-アクリルオキシスクシンイミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N-(3アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、N-(t-BOC-アミノプロピル)メタクリルアミド、2-アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、モノアクリルオキシエチルホスフェート、o-ニトロベンジルメタクリレート、アクリル酸無水物、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N-ジアリルアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-(2-アクリルオキシエトキシ(acryloxyaehoxy))-2-ヒドロキシベンゾフェノン、N-(フタルイミドメチル)アクリルアミド、シナミルメタクリレート。
【0072】
「光開始剤」という用語は、光輻射線の作用を受けて断片化することのできる化合物を意味するように使用される。
【0073】
本発明に基づいて使用し得る光開始剤は、従来技術において知られており、例えば、"Les photoinitiateurs dans la reticulation des revetements [Photoinitiators in the crosslinking of coatings]", G. Li Bassi, Double Liaison - Chimie des Peintures [Double Bond - Chemistry of Paints], no 361, November 1985, p. 34-41、"Applications industrielles de la polymerisation photoinduite [Industrial applications of photoinduced polymerisation]", Henri Strub, L'Actualite Chimique [Chemical News], February 2000, p. 5-13、および"Photopolymeres: considerations theoriques et reaction de prise [Photopolymers: theoretical considerations and setting reaction", Marc, JM Abadie, Double Liaison - Chimie des Peintures [Double Bond - Chemistry of Paints], no 435-436, 1992, p. 28-34に記載されている。
【0074】
これらの光開始剤は、次のものを含む。
- α-ヒドロキシケトン、例えばBASF社のDAROCUR(商標)1173および4265, IRGACURE(商標)184, 2959および500、ならびにCYTEC社のADDITOL(商標)CPKの商品名で市販されている2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン。
- α-アミノケトン、特には、例えばBASF社のIRGACURE(商標)907および369の商品名で市販されている2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1。
- 例えば、LAMBERTIのESACURE(商標)TZTの商品名で市販されている芳香族ケトン、または更にはLAMBERTIのESACURE(商標)ITXの商品名で市販されているチオキサントン、およびキノン。これらの芳香族ケトンはほとんどの場合、水素供与体化合物、例えば第三級アミン、そして特にはアルカノールアミンを必要とする。特には、LAMBERTI社によって市販されている第三級アミンESACURE(商標)EDBを挙げることができる。
- α-ジカルボニル誘導体、これらのうち最も一般的なものの代表は、BASF社のIRGACURE(商標)651の商品名で市販されているベンジルジメチルケタルである。他の商業的に入手可能な製品がLAMBERTI社によってESACURE(商標)KB1の商品名で市販されている。そして、
- アシルホスフィンオキシド、例えばBASF社のIRGACURE(商標)819、1700および1800、DAROCUR(商標)4265、LUCIRIN(商標)TPO、およびLUCIRIN(商標)TPO-Lの商品名で市販されているビス-アシルホスフィンオキシド(BAPO)。
【0075】
光開始剤の中ではまた、芳香族ケトン、例えばベンゾフェノン、フェニルグリオキシレート、例えば、フェニルグリオキシル酸のメチルエステル、オキシムエステル、例えば[1-(4-フェニルスルファニルベンゾイル)ヘプチリデンアミノ]ベンゾエート、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、およびオキシムスルホネートを挙げることができる。
【0076】
1つの態様によれば、組成物C2は、マイクロカプセルの封入シェルの特性を改善することができ、および/またはマイクロカプセルの封入シェルに新しい特性を提供することができる付加的なモノマーまたはポリマーを更に含むこともできる。
【0077】
これらの付加的なモノマーまたはポリマーの中では、pH、温度、UVまたはIRに対して感受性を有する基を含有するモノマーまたはポリマーを挙げることができる。
【0078】
これらの付加的なモノマーまたはポリマーの中では、pH、温度、UVまたはIRに対して感受性を有する基を有するモノマーまたはポリマーを挙げることができる。
【0079】
これらの付加的なモノマーまたはポリマーは、次の官能基、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート、およびペルオキシドから構成される群の中から選択された少なくとも1種の反応性官能基、ならびに更に以下の基、
- 疎水性基、例えばフッ素化基、例えばトリフルオロエチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ペンタフルオロプロピルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、またはフルオロフェニルイソシアネート、
- pH感受性基、例えば第一級、第二級、または第三級アミン、カルボン酸、ホスフェート基、スルフェート基、ニトレート基、またはカーボネート基、
- UV感受性またはUV開裂性基(またはフォトクロミック基)、例えばアゾベンゼン、スピロピラン、2-ジアゾ-1,2-ナフトキノン、o-ニトロベンジル、チオール、または6-ニトロ-ベラトロイルオキシカルボニル、例えばポリ(エチレンオキシド)-ブロック-ポリ(2-ニトロベンジルメタクリレート)、および、特にはLiu et al., Polymer Chemistry 2013, 4, 3431-3443に記載されているような他のブロックコポリマー、
- IR感受性またはIR開裂性基、例えばo-ニトロベンジルまたは2-ジアゾ-1,2-ナフトキノン、例えばLiu et al., Polymer Chemistry 2013, 4, 3431-3443に記載されているポリマー、ならびに、
- 温度感受性基、例えばポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、
のうちの1つ、
を有するモノマーまたはポリマーの中から選択されることができる。
【0080】
工程c)
本発明による方法の工程c)は、第2エマルジョン(E2)を調製することからなる。
【0081】
第2エマルジョンは、C3中に攪拌しながらエマルジョン(E1)を液滴状に添加することにより形成された、C2と非混和性である組成物C3中の第1エマルジョンの液滴の分散体からなる。
【0082】
工程c)の間に、エマルジョン(E1)は15℃~60℃の範囲の温度である。工程c)の間に、組成物C3は15℃~60℃の範囲の温度である。
【0083】
工程c)の添加条件下では、組成物C2およびC3は互いに混和することができず、このことは、組成物C3中に可溶化することができる組成物C2の量(質量)が組成物C3の総質量に対して、5%以下、好ましくは1%未満、そしてより好ましくは0.5%未満であること、そして組成物C2中に可溶化することができる組成物C3の量(質量)が組成物C2の総質量に対して、5%以下、好ましくは1%未満、そしてより好ましくは0.5%未満であることを意味する。
【0084】
このように、組成物(E1)が攪拌下で組成物C3と接触した場合には、それは、二重の液滴と称される液滴の形態をなして分散され、連続相C3中のエマルジョン(E1)のこれらの液滴の分散体はエマルジョン(E2)と称される。
【0085】
典型的には、工程c)の間に形成された二重の液滴は、組成物C2の封入シェルによって包まれた、上記の組成物C1の単独の液滴に対応し、組成物C2は、前記単独の液滴を完全にカプセルに包んでいる。
【0086】
工程c)の間に形成された二重の液滴は、組成物C1の少なくとも2つの単独の液滴を含んでもよく、前記単独の液滴は、前記単独の液滴を完全にカプセルに包む組成物C2の封入シェルによって包まれている。
【0087】
このように、前記二重の液滴は、組成物C1の1つまたは2つ以上の単独の液滴から構成されたコアを含み、そして組成物C2の層が前記コアを包んでいる。
【0088】
結果として得られるエマルジョン(E2)は、通常は多分散の二重エマルジョン(C3中C2中C1(C1-in-C2-in-C3)エマルジョン、またはC1/C2/C3エマルジョン)であり、このことは、二重の液滴が、エマルジョン(E2)中で、明確なサイズ分布を有していないことを意味している。
【0089】
組成物C2およびC3間の非混和性は、組成物C2の層と組成物C3との間の混合を防止する能力を与え、そして従ってエマルジョン(E2)の安定性を確実にする。
【0090】
組成物C2およびC3間の非混和性はまた、液滴のコアからの、組成物C1の水溶性物質または親水性物質の組成物C3への移動を防止する能力を与える。
【0091】
工程c)を実施するために、エマルジョンを形成するために通常使用されるいずれかの種類の攪拌器、例えばパドルを備えた機械的攪拌器、静的乳化器、超音波ホモジナイザ、メンブレンホモジナイザ、高圧ホモジナイザ、コロイドミル、高剪断分散器、または高速ホモジナイザを利用することができる。
【0092】
組成物C3
1つの態様によれば、組成物C3の25℃における粘度は、エマルジョン(E1)の25℃における粘度よりも高い。
【0093】
本発明によれば、組成物C3の25℃における粘度は、500mPa.s~100,000mPa.sの範囲である。
【0094】
好ましくは、組成物C3の25℃における粘度は、3,000mPa.s~100,000mPa.sの範囲、より好ましくは5,000mPa.s~80,000mPa.sお範囲、例えば7,000mPa.s~70,000mPa.sの範囲である。
【0095】
この態様によれば、組成物C3によって形成された連続相の極めて高い粘度を考慮すると、エマルジョン(E2)の二重の液滴の不安定化速度は、本発明の方法の継続時間に対して著しく遅く、このことは従って、カプセルの封入シェルの重合が完了するまで、エマルジョン(E2)の、そして次いでエマルジョン(E3)の動力学的安定化をもたらす。このカプセルは、一旦重合されると、熱力学的に安定である。
【0096】
従って、組成物C3の極めて高い粘度は、工程b)の最後に得られるエマルジョン(E2)の安定性を確実にする。
【0097】
組成物C3の高い粘度は、二重エマルジョン(E2)の動力学的安定性を有利に確実にすることを可能にし、それによって、本製造方法の継続時間にわたって相分離(脱相)を受けることを防止する。
【0098】
好ましくは、組成物C2およびC3間の界面張力は低い。組成物C2およびC3間の低い界面張力はまた、有利には、工程b)の最後に得られるエマルジョン(E2)の安定性を確実にすることを可能にする。
【0099】
一方では生産収率を向上させ、そして他方では、カプセルの平均直径を変化させために、C3中の第1エマルジョン(E1)の体積分率を0.05から0.5まで変化させることができる。この工程の最後では、第2のエマルジョンのサイズ分布は比較的に広い。
【0100】
1つの態様によれば、エマルジョン(E1)の体積と組成物C3の体積と間の比は1:10~10:1の範囲である。好ましくは、この比は1:9~3:1の範囲、より好ましくは1:9~1:1の範囲である。
【0101】
1つの態様によれば、組成物C3は加えて、好ましくは5000g.mol-1超の分子量を有する、少なくとも1種の分枝ポリマー、および/または5000g.mol-1超の分子量を有する少なくとも1種のポリマー、および/または固形粒子例えばシリケートを含む。
【0102】
1つの態様によれば、組成物C3は加えて、好ましくは5000g.mol-1超の分子量を有する、少なくとも1種の分枝ポリマー、および/または5000g.mol-1超の分子量を有する少なくとも1種のポリマー、および/または固形粒子例えばシリケートを含む。
【0103】
「分枝ポリマー」という用語は、2つの末端基間に少なくとも1つの分枝点を有するポリマーを意味するために使用され、分枝点は、分枝鎖またはペンダント鎖とも称される側鎖が結合された鎖の点である。
【0104】
分枝ポリマーの中では、例えばグラフトポリマー、櫛形ポリマー、あるいは更には星形ポリマーまたはデンドリマーを挙げることができる。
【0105】
1つの態様によれば、組成物C3は、5000g.mol-1超の、好ましくは10,000g.mol-1~500,000g.mol-1の範囲の、例えば50,000g.mol-1~300,000g.mol-1の範囲の分子量を有する少なくとも1種のポリマーを含む。
【0106】
組成物C3中に使用することができるポリマーの例としては、以下の化合物を挙げることができ、単独でまたは更には互いに混合して使用することができる。
- セルロース誘導体、例えばセルロースエーテル類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはメチルヒドロキシプロピルセルロース;
- ポリアクリレート(カルボマーとしても知られる)、例えばポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)、ポリ(N-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)(pHPMA);
- ポリアクリルアミド、例えばポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM);
- ポリビニルピロリドン(PVP)およびその誘導体;
- ポリビニルアルコール(PVA)およびその誘導体;
- ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)およびその誘導体、例えばポリ(エチレングリコール)アクリレート/メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート/ジメタクリレート、ポリプロピレンカーボネート;
- 多糖類、例えばカラギナン、カロブガムまたはタラガム、デキストラン、キサンタンガム、キトサン、アガロース、ヒアルロン酸、ジェランガム、グアールガム、アラビアガム、トラガカントガム、ダイユータンガム、オーツガム、カラヤガム、ガティガム、カードランガム、ペクチン、コンニャクガム、デンプン;
- タンパク質誘導体、例えばゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ポリリシン、アルブミン、カゼイン;
- シリコーン誘導体、例えばポリジメチルシロキサン(ジメチコーンとしても知られる)、アルキルシリコーン、アリールシリコーン、アルキルアリールシリコーン、ポリエチレングリコールジメチコーン、ポリプロピレングリコールジメチコーン;
- ワックス、例えばジエステルワックス(アルカンジオールジエステル、ヒドロキシル酸ジエステル)、トリエステルワックス(トリアシルグリセロール、アルカン-1,2-ジオール、ω-ヒドロキシ酸および脂肪酸のトリエステル、ヒドロキシマロン酸、脂肪酸、およびアルコールのエステル、ヒドロキシル酸、脂肪酸、および脂肪アルコールのトリエステル、脂肪酸、ヒドロキシル酸、およびジオールのトリエステル)、ならびにポリエステルワックス(脂肪酸のポリエステル)。本発明の文脈においてワックスとして使用できる脂肪酸エステルは、例えばセチルパルミテート、セチルオクタノエート、セチルラウレート、セチルラクテート、セチルイソノナノエート、およびセチルステアレート、ステアリルステアレート、ミリスチルステアレート、セチルミリステート、イソセチルステアレート、グリセリルトリミリステート、グリセリルトリパルミテート、グリセリルモノステアレート、またはグリセリルパルミテート、およびセチルパルミテートである;
- ワックスとして使用することができる脂肪酸、例えばセロチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、アラキジン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ペンタデシル酸、マルガリン酸、ノナデシル酸、ヘンイコシル酸、トリコシル酸、ペンタコシル酸、ヘプタコシル酸、モンタン酸、またはノナコシル酸;
- 脂肪酸塩、特には脂肪酸アルミニウム塩、例えばアルミニウムステアレート、ヒドロキシルアルミニウムビス(2-エチルヘキサノエート);
- 異性化ホホバ油;
- 水素化ヒマワリ油;
- 水素化ヤシ油;
- 水素化ラノリン油;
- ヒマシ油およびその誘導体、特には変性水素化ヒマシ油、またはヒマシ油と脂肪アルコールとのエステル化によって得られる化合物;
- ポリウレタンおよびその誘導体;
- スチレン系ポリマー、例えばスチレンブタジエン;
- ポリオレフィン、例えばポリイソブテン。
【0107】
1つの態様によれば、組成物C3は、固形粒子、例えばクレイ、シリカ、およびシリケートを含む。
【0108】
組成物C3中に使用することができる固形粒子としては、クレイ、および特にはフィロシリケート(層状シリケートとしても知られる)のカテゴリに属するシリケートを挙げることができる。本発明の文脈において使用し得るシリケートの例としては、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルガイト、セピオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ノントロナイト、カオリナイト、タルク、セピオライト、チョークを挙げることができる。ヒュームド合成シリカを使用してもよい。前記のクレイ、シリケート、およびシリカは、有機分子、例えばポリエーテル、エトキシル化アミド、第四級アンモニウム塩、長鎖ジアミン、長鎖エステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールによって有利に改質することができる。
【0109】
これらの粒子は単独でまたは互いに混合して使用することができる。
【0110】
1つの態様によれば、組成物C3は、5000g.mol-1超の分子量を有する少なくとも1種のポリマー、および固形粒子を含む。前述の化合物のいずれかの混合物を使用することができる。
【0111】
工程d)
本発明による方法の工程d)は、第2エマルジョン(E2)の液滴のサイズを精緻化することからなる。
【0112】
この工程は、均質な制御された剪断力を前記エマルジョン(E2)に加えることからなることができ、加えられる前記剪断速度は10s-1~100,000s-1の範囲である。
【0113】
1つの態様によれば、工程c)において得られた多分散の二重の液滴は、サイズ精緻化プロセスに付され、このプロセスは、液滴を分裂させることによって均質であり且つ制御された直径を有する新しい二重の液滴にすることができる剪断に液滴を付させることからなる。好ましくは、分裂工程は、高剪断セル、例えば欧州特許出願第15306428.2号明細書に記載された方法に基づくクエット型セル、を使用することによって実施される。
【0114】
1つの態様によれば、工程d)において、ステップc)の最後に得られた、連続相中に分散された多分散の二重の液滴からなる第2エマルジョン(E2)は、ミキサ内で剪断に付され、このミキサは均質な制御された剪断を加える。
【0115】
このように、この態様によれば、工程d)は、均質な制御された剪断を前記エマルジョン(E2)に加えることからなり、加えられる前記剪断速度は1000s-1~100,000s-1の範囲である。
【0116】
この態様によれば、ミキサ内で、付加の継続時間とは関係なしに、エマルジョンの1つの地点から他の点へと変化する可能性がある所定の時点で、剪断速度がエマルジョンの全ての部分に対して同一である最大値になる場合に、剪断速度は制御され且つ均質であると言われる。本発明によれば、ミキサの正確な構成は、このデバイスから出たときに、エマルジョン全体が同じ最大の剪断に付されている限り、重要ではない。工程d)を実施するのに適したミキサは、特には米国特許第5938581号明細書に記載されている。
【0117】
第2エマルジョンは、これが以下の、
- (クエット型ミキサとも称される)2つの同心的な回転シリンダ、
- 2つの平行な回転ディスク、または
- 2つの平行な振動プレート、
で形成されたセルを通して循環する場合に、均質な制御された剪断を受けることができる。
【0118】
この態様によれば、第2エマルジョンに加えられる剪断速度は、1,000s-1~100,000s-1の範囲、好ましくは1,000s-1~50,000s-1の範囲、そしてより好ましくは2,000s-1~20,000s-1の範囲である。
【0119】
本態様によれば、工程d)の間に、第2エマルジョンはミキサ内に導入され、そして次いでこれに剪断が加えられ、それによって第3エマルジョンの形成がもたらされる。第3エマルジョン(E3)は第2エマルジョン(E2)に対して化学的に同一ではあるものの、単分散の二重の液滴からなっており、一方でエマルジョン(E2)は、多分散の二重の液滴からなっている。第3エマルジョン(E3)は、典型的には、組成物C1の1つまたは2つ以上の液滴から構成されたコアと、前記コアを封入する組成物C2の層とを含む二重の液滴の分散体からなっており、前記二重の液滴は組成物C3中に分散されている。
【0120】
第2エマルジョンと第3エマルジョンとの相違点は、二重の液滴のサイズの違いであり、第2エマルジョンの液滴はサイズが多分散であり、一方で第3エマルジョンの液滴は、上記の分裂のメカニズムによって、単分散である。
【0121】
好ましくは、この態様によれば、第2エマルジョンは連続的にミキサ内へ導入され、このことは、ミキサの入口で導入される二重エマルジョン(E2)の量が、ミキサの出口の第3エマルジョン(E3)の量と同じであることを意味する。
【0122】
エマルジョン(E3)の液滴のサイズが重合後の固形マイクロカプセルの液滴のサイズに基本的に相当することを考慮すれば、工程d)中に剪断速度を調節することにより、マイクロカプセルのサイズ、および封入シェルの厚さを調節することが可能であり、液滴サイズの減少と剪断速度の増大との間には強い相関関係がある。このことにより、工程d)の間に加えられる剪断速度を変えることによって、マイクロカプセルの結果として生じる寸法を調節することができる。
【0123】
1つの好ましい態様によれば、工程d)の間に実行されるミキサはクエット型ミキサであり、2つの同心的なシリンダ、内側半径Roを有する1つの外側シリンダと、外側半径Riを有する内側シリンダとを含み、外側シリンダは固定されており、そして内側シリンダは角速度ωで回転している。
【0124】
本発明の方法に適したクエット型ミキサは、TSR France社によって提供されることができる。
【0125】
1つの態様によれば、クエット型ミキサの内側回転シリンダの角速度ωは、30rad.s-1以上である。
【0126】
例えば、クエット型ミキサの内側回転シリンダの角速度ωは、約70rad.s-1である。
【0127】
クエット型ミキサの固定された外側シリンダの寸法は、回転する内側シリンダと固定された外側シリンダとの間の空間(d=Ro-Ri)を調整するように選択されることができる。
【0128】
1つの態様によれば、クエット型ミキサの2つの同心的なシリンダ間の空間(d=Ro-Ri)は、50μm~1000μmの範囲、好ましくは100μm~500μmの範囲、例えば200μm~400μmの範囲である。
【0129】
例えば、2つの同心的なシリンダ間の距離dは100μmに等しい。
【0130】
この態様によれば、工程d)の間に、第2エマルジョンは、典型的にはポンプによって、ミキサの入口で導入され、そして2つの同心的なシリンダ間の空間に向かって導かれ、外側シリンダは固定されており0そして、内側シリンダは角速度ωで回転している。
【0131】
二重エマルジョンが2つのシリンダ間の空間内にあるときに、前記エマルジョンに加えられる剪断速度は以下の数式:
【数1】
によって与えられる。
上記式中、
- ωは、回転する内側シリンダの角速度であり、
- Rは、固定された外側シリンダの内側半径であり、そして
- Rは、回転する内側シリンダの外側半径である。
【0132】
別の態様によれば、組成物C3の粘度が25℃で2000mPa.s超である場合には、工程d)は、1000s-1未満の剪断速度をエマルジョン(E2)に加えることからなる。
【0133】
この態様によれば、分裂工程d)は、エマルジョンを形成するために通常使用されるいずれかの種類のミキサを利用することにより、1000s-1未満の剪断速度で実施することができ、この場合には、組成物C3の粘度は2000mPa.s超であり、すなわち、フランス国特許出願第1661787号明細書に記載されたもののような条件下である。
【0134】
この工程の最後に形成された二重の液滴の幾何学的特徴は、将来のカプセルの幾何学的特徴を決定する。
【0135】
この態様によれば、工程d)において、連続相中に分散された多分散の液滴から構成されるエマルジョン(E2)は、例えばミキサ内で、低い剪断速度、すなわち1000s-1未満で剪断を加えられる。
【0136】
この態様によれば、工程d)で加えられる剪断速度は、例えば10s-1~1000s-1の範囲である。
【0137】
好ましくは、工程d)に加えられる剪断速度は、厳密に1000s-1未満である。
【0138】
この態様によれば、エマルジョン(E2)の液滴は、これに高い剪断応力が加えられる場合にのみ、エマルジョン(E3)の微細な、そして単分散の液滴に効率的に分裂されることができる。
【0139】
エマルジョン(E2)の液滴に加えられる剪断応力σは、工程d)の間に攪拌中にエマルジョンに加えられる巨視的剪断から生じる液滴の単位表面積当たりの接線力として規定される。
【0140】
剪断応力σ(Paで表される)、組成物C3の粘度η(Pa.sで表される)、および工程d)の経過中にその攪拌の間にエマルジョン(E2)に加えられる剪断速度γ(s-1で表される)は、下記の数式によって関連付けられる。
【数2】
【0141】
こうして、この態様によれば、組成物C3の高い粘度により、たとえ剪断速度が低く、且つ剪断が不均質であるとしても、エマルジョン(E2)の液滴に極めて高い剪断応力をミキサ内で加えることができる。
【0142】
この態様に基づく工程d)を実施するのに際して、エマルジョンを形成するために通常使用されるいずれかの種類の攪拌器、例えばパドルを備えた機械的攪拌器、静的乳化器、超音波ホモジナイザ、メンブレンホモジナイザ、高圧ホモジナイザ、コロイドミル、高剪断分散器、または高速ホモジナイザを利用することができる。
【0143】
1つの好ましい態様によれば、工程d)を実施するために、単純な乳化器、例えば機械的パドル攪拌器、または静的乳化器が使用される。実際には、この態様では、制御された剪断も1000s-1超の剪断力も必要とされないので、このことが可能である。
【0144】
工程e)
本発明の方法の工程e)は、本発明による固形マイクロカプセルの封入シェルの架橋、およびそれによる形成からなっている。
【0145】
この工程は、カプセルの期待される保護および保持性能を達成すること、およびその熱力学的安定性を確実にすることの両方を可能にし、これによって、融合または硬化のようないずれかの不安定化メカニズムをも決定的に防止する。
【0146】
1つの態様によれば、組成物C2が光開始剤を含む場合には、工程e)は、エマルジョン(E3)を、組成物C2の光重合を開始することができる光源、特には、好ましくは100nm~400nmの範囲の波長範囲で発光する、UV光源に暴露することからなる光重合工程であり、そしてこのことは、15分間未満の時間に亘る。
【0147】
この態様によれば、工程e)は、エマルジョン(E3)に光重合を施すことからなり、従って、このことは組成物C2の光重合を可能にする。この工程は、上記の水溶性物質をカプセルで包むマイクロカプセルを得ることを可能にする。
【0148】
1つの態様によれば、工程e)は、エマルジョン(E3)を、組成物C2の光重合を開始することができる光源に暴露することからなる。
【0149】
好ましくは、この光源はUV光源である。
【0150】
1つの態様によれば、UV光源は、100nm~400nmの範囲の波長で発光する。
【0151】
1つの態様によれば、エマルジョン(E3)は、15分間未満、そして好ましくは5~10分間の時間に亘って光源に暴露される。
【0152】
工程e)の間に、光架橋性組成物C2から構成された前述の二重の液滴の封入シェルは、架橋され、そして従って粘弾性ポリマーの封入シェルに変換され、それが水溶性物質を、カプセルで包み、そして機械的に誘発されるメカニズムが存在しない状態で放出されることから保護する。
【0153】
1つの他の態様によれば、組成物C2が光開始剤を含まない場合には、工程e)は、光源への暴露のない重合工程であり、この重合工程e)の継続時間は、好ましくは8時間~100時間の範囲であり、および/またはこの工程e)は、20℃~80℃の範囲の温度で実施される。
【0154】
この態様によれば、重合は、例えば熱への暴露によって開始される(熱開始)か、あるいは単にモノマー、ポリマーおよび架橋剤を互いに、または触媒と接触させることによって開始される。重合時間はこの場合、通常は数時間よりも長い。
【0155】
好ましくは、組成物C2の重合の工程e)は8時間~100時間の範囲の時間に亘って、20℃~80℃の範囲の温度で実施される。
【0156】
組成物C3中に分散された固形マイクロカプセルを含む、工程e)の最後に得られた組成物は、使用できる状態にあり、そしてカプセルの後処理のいずれかの付加的な工程をも必要とすることなしに使用することができる。
【0157】
こうして得られたマイクロカプセルの封入シェルの厚さは、典型的には0.1μm~20μmの範囲、好ましくは0.2μm~10μmの範囲、好ましくは0.2μm~8μmの範囲である。
【0158】
1つの態様によれば、工程e)の最後に得られた固形マイクロカプセルは、特には、固形封入シェルと、組成物C3によって形成される外部媒体(または連続相)との間の界面のレベルで、いずれの界面活性剤も含まない。
【0159】
本発明の方法は、固形マイクロカプセルの封入シェルの形成工程b)~e)のうちのいずれにおいても、界面活性剤を必要としないという利点をもたらす。本発明の方法は、こうして、水溶性物質の放出後に得られる最終的な製品の特性を変える可能性がある添加物の存在を低減することを可能にする。
【0160】
本発明はまた、上記で規定された方法に基づいて得ることができる一連の(一組の)固形マイクロカプセルであって、それぞれのマイクロカプセルが
- 上記で規定された組成物C1を含むコアと、
- その周囲でコアを完全にカプセルに包む固形封入シェルと
を含み、
前記マイクロカプセルの平均直径が1μm~30μmの範囲であり、剛性の封入シェルの厚さが0.1μm~20μmの範囲であり、マイクロカプセル直径の分布の標準偏差が50%未満、特には25%未満、または1μm未満である、
一連の(一組の)固形マイクロカプセルに関する。
【0161】
上記のように、本発明の方法は、単分散の粒子を得ることを可能にする。また、上述の一連の固形マイクロカプセルは、サイズが単分散である粒子の集団から形成される。従って、マイクロカプセルの直径の分布の標準偏差は50%未満、特には25%未満、または1μm未満である。
【0162】
固形マイクロカプセルのサイズ分布は、Hydro SV測定セルを備えたMastersizer 3000 (Malvern Instruments)を使用した光散乱技術によって測定することができる。
【0163】
1つの態様によれば、前述の固形マイクロカプセルは、架橋されたポリマー(組成物C2から得られる)から全体的に構成された固形封入シェルを含む。
【0164】
上記のように、本発明の方法は、固形マイクロカプセルを得るのを可能にする。従って本発明はまた、コアと、その周囲でコアを完全にカプセルに包む固形封入シェルとを含む固形マイクロカプセルであって、コアが上記組成物C1であり、疎水性相中に分散されており、そして前記剛性の封入シェルは架橋されたポリマーから構成されており、前記マイクロカプセルの直径は1μm~30μmの範囲であり、剛性封入シェルの厚さは0.1μm~20μmの範囲である。
【0165】
本発明はまた、上記で規定された一連の固形マイクロカプセルを含む組成物に関する。
【0166】
本発明のカプセルは、有利には、ポリマー、エラストマー、ゴム、塗料、接着剤、シーラント、モルタル、紙、ワニス、またはコーティングの配合、合成化学製品、クリーニング/洗浄製品、洗剤製品、洗濯製品、およびホームケア製品、農薬製品、例えば、肥料、除草剤、殺虫剤、防かび剤、または駆除剤、テキスタイル、石油化学製品、例えば潤滑剤、燃料、ビチューメン、掘削流体、および坑井刺激流体に使用される活性成分を保護するために使用されることができる。
【0167】
本発明はまた、特には周囲温度および大気圧で固形形態の、特には粒子形態および/または結晶形態、特には塩の形態であり、好ましくは1μm未満の平均サイズを有する、水溶性物質または親水性物質を放出する方法であって、上記で規定された一連の固形マイクロカプセルを含む組成物に機械的剪断応力を加える工程を含む、水溶性物質または親水性物質を放出する方法に関する。
【0168】
「...~...である」および「...~...の範囲の」および「...から...まで」という表現は、特に断りのない限り、限界値を含むものとして理解されなければならない。
【0169】
以下の例は、本発明の範囲を限定することなしに、本発明を説明するために提供される。
【実施例
【0170】
例1:本発明による固形カプセルの製造
凝集防止型のプロペラ撹拌機を備えた機械的攪拌器(Ika Eurostar 20)が、全てのかき混ぜ/攪拌工程を実施するのに用いられる。
【0171】
工程a):ナノエマルジョンによる粒子(組成物C1)の分散体の形成

【表1】
【0172】
組成物Aが、完全な均質化が得られるまで、分当たりの1000回(rpm)の攪拌下に置かれる。
【0173】
組成物Bが、完全な均質化が得られるまで、分当たりの1000回(rpm)の攪拌下に置かれる。
【0174】
組成物Bが、続いて組成物Aに、2000rpmで攪拌しながら液滴状に添加される。攪拌が、添加後5分間に亘って維持され、そしてその後この混合物に、30%の振幅で3分間に亘って、3分間(パルス5s/2s)に亘る超音波処理(Vibra-cell 75042, Sonics)が加えられる。
【0175】
次いで、得られたナノエマルジョンが減圧下に置かれ、そして水が完全に蒸発するまで加熱される(25mbar、40℃)。組成物C1がこうして得られる。
【0176】
工程b):第1のエマルジョン(E1)の調製

【表2】

組成物C1が、組成物C2に、3:7の比で、2000rpmで攪拌しながら液滴状に添加される。この結果、第1のエマルジョン(E1)が得られる。
【0177】
工程c):第2のエマルジョン(E2)の調製
【表3】

完全な均質化が得られるまで、組成物C3が、分当たりの1000回(rpm)の攪拌下に置かれ、次いで周囲温度で1時間に亘って静止させて置かれる。次いで1000rpmの攪拌下で、第1のエマルジョン(E1)が、組成物C3に液滴状に添加される。こうして第2のエマルジョン(E2)が得られる。
【0178】
工程d):第2のエマルジョンのサイズ精緻化
前工程で得られた第2の多分散エマルジョン(E2)が、10分間に亘って1000rpmで攪拌される。単分散エマルジョン(E3)がこうして得られる。
【0179】
工程e):カプセルの封入シェルの架橋
前工程において得られた第2の単分散エマルジョン(E3)が、10分間に亘って、波長365nmで0.1W/cm2の最大光度を有するUV光源(Dymax LightBox ECE 2000)を使用することによって照射される。
【0180】
得られたマイクロカプセルは、良好なサイズ分布、すなわち平均サイズ8.7μmを示し、そしてそのサイズ分布は2.1μmの標準偏差を有しており、これは24%である。
【0181】
さらに、例1に基づくマイクロカプセルによる塩化カルシウムのカプセル封入の品質を、周囲温度で20日間にわたってカプセルの懸濁液の粘度を監視することによって調べた。その粘度はいずれの有意な増大も受けないことが見出され、このことは、アルギネートのゲル化を招くであろう、カプセル外部への塩化カルシウムの漏れが存在しないことを示している。従って、例1において論じられたマイクロカプセルは、粒子の形態で水溶性物質を効果的にカプセルに包むのに特に好適であることが立証される。