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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】照射硬化性ポリオレフィン配合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/00 20060101AFI20221102BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20221102BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20221102BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C08F255/00
C08J3/22 CES
C08J7/00 305
H01B7/02 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019569683
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 CN2018088965
(87)【国際公開番号】W WO2019001206
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/090770
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ヨンヨン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヤーピン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、カイナン
(72)【発明者】
【氏名】コーゲン、ジェフリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】パーソン、ティモシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】カロニア、ポール ジェイ.
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-196849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 255/00
C08J 3/22
C08J 7/00
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成成分(A)および(B)を含む(電子ビーム)硬化性(EBC)配合物であって、
(A)示差走査熱量測定法(DSC)を使用する結晶化度試験法で測定した0~50重量パーセント(重量%)未満の結晶化度を有し、かつ/またはASTM D792-13、方法Bで測定した0.930グラム/立方センチメートル(g/cm)以下の密度を有する、(電子ビーム)硬化性(EBC)ポリオレフィン化合物と、
(B)式(I):[R,RSiO2/2(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンであって、式中、下付き文字nは3以上の整数であり、各Rは独立して、(C-C)アルケニルまたはHC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、フェニル、またはRである、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンと、を含み
(A)は、構成成分(A)および(B)の合計重量の50.0~99.99重量%であり、(B)は50.0~0.01重量%であり、
ただし、前記EBC配合物は、ホスファゼン塩基、50重量%以上の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィン、および有機過酸化物の各々を含まない、EBC配合物であって、
前記(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの下付き文字nが3であり、前記EBC配合物が、下記制限(i)~(x):(i)各R は独立して、(C -C )アルケニルであり、各R は独立して、H、(C -C )アルキル、または(C -C )アルケニルである;(ii)各R はビニルであり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(iii)各R はビニルであり、各R はメチルである;(iv)各R はアリルであり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(v)各R はアリルであり、各R はメチルである;(vi)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各R は独立して、H、(C -C )アルキル、または(C -C )アルケニルである;(vii)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はHであり、下付き文字mは3であり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(viii)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はメチルであり、下付き文字mは3であり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(ix)前記EBC配合物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびこれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を24重量%以上含有しない;ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のいずれか1つとの組み合わせである、のいずれか1つによって説明されるか、
前記(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの下付き文字nが5または6であり、前記EBC配合物が、下記制限(i)~(x):(i)各R は独立して、(C -C )アルケニルであり、各R は独立して、H、(C -C )アルキル、または(C -C )アルケニルである;(ii)各R はビニルであり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(iii)各R はビニルであり、各R はメチルである;(iv)各R はアリルであり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(v)各R はアリルであり、各R はメチルである;(vi)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各R は独立して、H、(C -C )アルキル、または(C -C )アルケニルである;(vii)各R は独立してH C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はHであり、下付き文字mは3であり、各R は、独立して(C -C )アルキルである;(viii)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はメチルであり、下付き文字mは3であり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(ix)前記EBC配合物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を24重量%以上含有しない;ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のいずれか1つとの組み合わせである、のいずれか1つによって説明される、EBC配合物
【請求項2】
前記(A)EBCポリオレフィン化合物が、下記制限(i)~(xv):(i)示差走査熱量測定(DSC)を使用する結晶化度試験法で測定した>0~50.0重量%未満の結晶化度;(ii)ASTM D792-13、方法Bで測定した0.930g/cm以下の密度;(iii)(i)および(ii)の両方;(iv)メルトインデックス試験法に従って測定した、10分あたり0.1~20グラム(g/10分)のメルトインデックス(I、190℃/2.16kg荷重)、かつポリエチレンである;(v)メルトフローレート試験法に従って測定した、0.5~20g/10分のメルトフローレート(MFR)(230℃/2.16kg荷重)、かつポリプロピレンである;(vi)モノモーダルな分子量分布(MWD);(vii)マルチモーダルなMWD;(viii)構成成分(A)および(B)の合計重量が前記(電子ビーム)硬化性配合物の50~100重量%である;(ix)前記(A)EBCポリオレフィン化合物は、0.910~0.925g/cmの密度を有する低密度ポリエチレン(LDPE)である;(x)前記(A)EBCポリオレフィン化合物は、0.910~0.925g/cmの密度を有する線状低密度ポリエチレン(LLDPE)である;(xi)前記(A)EBCポリオレフィン化合物は、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-1-ブテンゴム(EBR)、およびエチレン-1-オクテンゴム(EOR)から選択されるポリエチレンエラストマーである;(xii)前記(A)EBCポリオレフィン化合物はエチレン/(C-C20)α-オレフィン)コポリマーである;(xiii)前記(A)EBCポリオレフィン化合物はエチレン-プロピレンコポリマー(EPP)である;(xiv)前記(A)EBCポリオレフィン化合物はエチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)コポリマーである;ならびに(xv)前記(A)EBCポリオレフィン化合物は、(i)~(xiv)のいずれか2つ以上の組み合わせである、のいずれか1つによって特徴付けられる、請求項1に記載の(電子ビーム)硬化性配合物。
【請求項3】
前記(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの下付き文字nが3であり、前記EBC配合物が、下記制限(i)~(x):(i)各Rは独立して、(C-C)アルケニルであり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである;(ii)各Rはビニルであり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(iii)各Rはビニルであり、各Rはメチルである;(iv)各Rはアリルであり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(v)各Rはアリルであり、各Rはメチルである;(vi)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである;(vii)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHであり、下付き文字mは3であり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(viii)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはメチルであり、下付き文字mは3であり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(ix)前記EBC配合物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびこれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を24重量%以上含有しない;ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のいずれか1つとの組み合わせである、のいずれか1つによって説明される、請求項1または2に記載の(電子ビーム)硬化性配合物。
【請求項4】
前記(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの下付き文字nが5または6であり、前記EBC配合物が、下記制限(i)~(x):(i)各Rは独立して、(C-C)アルケニルであり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである;(ii)各Rはビニルであり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(iii)各Rはビニルであり、各Rはメチルである;(iv)各Rはアリルであり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(v)各Rはアリルであり、各Rはメチルである;(vi)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである;(vii)各Rは独立してHC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHであり、下付き文字mは3であり、各Rは、独立して(C-C)アルキルである;(viii)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはメチルであり、下付き文字mは3であり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(ix)前記EBC配合物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を24重量%以上含有しない;ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のいずれか1つとの組み合わせである、のいずれか1つによって説明される、請求項1または2に記載の(電子ビーム)硬化性配合物。
【請求項5】
下記任意選択的な構成成分(C)~(O):(C)炭素系架橋助剤(carbon-based coagent);(D)難燃剤;(E)酸化防止剤;(F)加工助剤;(G)着色剤;(H)金属不活性化剤;(I)(不飽和炭素-炭素結合)を含まない加水分解性シラン;(J)腐食防止剤;(K)ヒンダードアミン光安定剤;(L)構成成分(A)とは異なり、かつ50重量%以上の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィンとは異なるエチレン系コポリマーであって、(L)はエチレン/(C-C20)α-オレフィンコポリマー、エチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマー、またはプロピレン/エチレン系コポリマーである、エチレン系コポリマー;(M)充填剤;(N)核剤;および(O)トリーイング遅延剤、から独立して選択される少なくとも1つの添加剤も含む、請求項1~のいずれか1項に記載の(電子ビーム)硬化性配合物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の(電子ビーム)硬化性(EBC)配合物を製造する方法であって、分割された固体形態または溶融形態の前記(A)EBCポリオレフィン化合物と、前記(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンと、任意の任意選択的な構成成分(C)~(O)と、を一緒に混合して、構成成分(A)、(B)、および任意の任意選択的な構成成分(C)~(O)から本質的になる(電子ビーム)硬化性(EBC)配合物を得ることを含み、ただし、前記方法は、ホスファゼン塩基、結晶化度が50重量%以上の半結晶性ポリオレフィン、および有機過酸化物の各々を含まない、方法。
【請求項7】
それを必要とする配合物を電子ビームで硬化させる方法であって、請求項1~のいずれか1項に記載のEBC配合物、または請求項に記載の方法により製造された前記(電子ビーム)硬化性配合物に有効線量の電子ビーム照射を照射して、電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物を得ることを含む、方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法により製造された、電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物。
【請求項9】
請求項に記載の電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物と、それと機能的に接触する構成要素と、を含む、製品。
【請求項10】
導電性コアと、前記導電性コアを少なくとも部分的に囲むポリマー層とを含む被覆導体であって、前記ポリマー層の少なくとも一部分が、請求項に記載の電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物を含む、被覆導体。
【請求項11】
電気を伝導する方法であって、請求項10に記載の被覆導体の前記導電性コア全体に電圧を印加して、前記導電性コアを通る電気の流れを発生させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリオレフィン組成物、電子ビーム硬化、方法および物品。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月29日に出願されたPCT国際特許出願番号PCT/CN2017/090770からの優先権の利益を主張し、その内容全体を参照により組み入れる。
【背景技術】
【0003】
この分野の特許出願公開には、CN103865420A、CN104277182A、DE102006017346A1、EP1433811A2、EP2889323A1、US20020198335A1、およびUS20080176981A1が含まれる。この分野の特許には、US4005254、US5367030、US6187847B1、US6191230B1、US6936655B2、US8426519B2、US8449801B1、US8691984B2およびUS9147784B2が含まれる。
【0004】
電子ビーム照射は、ポリオレフィンの硬化(架橋)法に有用である。この方法は、(電子ビーム)硬化性(EBC)ポリオレフィン化合物に電子ビーム照射の線量を適用して、硬化ポリオレフィン生成物を得ることを含む。この方法は、EBCポリオレフィン化合物のポリオレフィン高分子間に直接共有結合を形成させる。電子ビーム硬化法は、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)を含むさまざまなタイプのポリオレフィンの硬化に使用できる。
【0005】
(a)電子ビーム硬化ポリエチレンのホットクリープ(ホットセット)性能を改善する方法の、(b)(電子ビーム)硬化性(EBC)ポリオレフィン化合物の電子ビーム照射硬化を高める方法の、および(c)電子ビーム硬化絶縁層を含む電力ケーブルの製造方法の、問題を紹介する。
【0006】
架橋低密度ポリエチレン(XLDPE)および架橋線状低密度ポリエチレン(XLLDPE)は、温水パイプや電力ケーブルの絶縁層など、高い動作温度にさらされるさまざまな産業用途で使用される。これらの用途では、架橋ポリエチレンは十分なホットクリープ(熱間硬化)性能を備えている(すなわち、動作温度で形状を保持する)必要がある。(電子ビーム)架橋高密度ポリエチレンのホットクリープ性能は、通常(電子ビーム)架橋線状低密度ポリエチレンよりも弱い。したがって、単に高密度ポリエチレンを線状低密度ポリエチレンにブレンドし、続いてブレンドの電子ビーム硬化を行うだけでは、線状低密度ポリエチレン単独の熱クリープ性能と比較してホットクリープ性能は改善されないと予想される。
【0007】
電子ビーム照射の線量が高すぎると、望ましくない副作用が発生する。これらには、過剰量の熱、電荷、および/またはHガスの生成が含まれる。過度の熱は、硬化ポリオレフィン生成物の酸化または劣化を引き起こす可能性がある。過剰なHガスは、硬化ポリオレフィン生成物に気泡を形成する可能性がある。過剰な電荷は、硬化ポリオレフィン生成物からの放電につながる可能性がある。適用される用量が低すぎる場合、化合物は十分に硬化しないか、十分な硬化状態(硬化または架橋密度の程度)に達さず、不完全に硬化したポリオレフィン生成物の性能は、ケーブルを保護するなどの使用目的に適さない可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
(a)電子ビーム硬化ポリエチレンのホットクリープ(ホットセット)性能を改善する方法、(b)(電子ビーム)硬化性(EBC)ポリオレフィン化合物の電子ビーム照射硬化を高める方法、および(c)電子ビーム硬化絶縁層を含む電力ケーブルの製造方法の、導入される問題のうちの1つ以上の技術的解決策を開示する。この技術的解決策には、0~50重量パーセント(重量%)未満の結晶化度を有しおよび/または0.930グラム/立方センチメートル(g/cm3)以下の密度を有する、EBCポリオレフィン化合物(「ホスト樹脂」)と、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサン(「ケイ素系架橋助剤(silicon-based coagent)」)と、を含む(電子ビーム)硬化性(EBC)配合物が含まれる。実施形態にはまた、EBC配合物に電子ビームを照射することにより調製された硬化ポリオレフィン生成物(電子ビーム硬化)、EBC配合物または硬化ポリオレフィン生成物の製造および使用方法、およびEBC配合物または硬化ポリオレフィン生成物を含む、またはそれらから製造された物品も含まれる。本発明の配合物および生成物は、コーティング、フィルム、シートおよび射出成形品を含む、架橋ポリオレフィンを含むポリオレフィンが利用されるあらゆる用途において有用である。
【0009】
照射線量が高すぎることによって引き起こされる問題の深刻度は、少量のケイ素系架橋助剤をEBCポリオレフィン化合物に混合してEBC配合物を生成することで軽減できる。EBC配合物は、有機過酸化物などの熱誘導フリーラジカル発生剤化合物の不在下で硬化させることができる。EBC配合物は、ケイ素系架橋助剤なしのEBCポリオレフィン化合物を硬化させるために使用される線量よりも低い電子ビーム照射線量で硬化させることができる。また、ケイ素系架橋助剤から誘導された多価架橋基の追加の架橋効果により、得られる硬化ポリオレフィン生成物は、同様の低いEB線量でケイ素系架橋助剤なしで調製された比較の硬化ポリオレフィン生成物と同等以上の硬化状態に達することができる。他のすべての条件が等しい場合、EBC配合物中のケイ素系架橋助剤の添加量が多いほど、特定の硬化状態(架橋または架橋密度の範囲)を達成するために使用できる電子ビーム照射の線量が低くなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
概要および要約は、参照により本明細書に援用される。実施形態の例は、以下の番号付きの態様を含む。
【0011】
態様1.構成成分(A)および(B)を含む(電子ビーム)硬化性(EBC)配合物であって、(A)示差走査熱量測定法(DSC)を使用する結晶化度試験法で測定した0~50重量パーセント(重量%)未満、あるいは10~50重量%未満の結晶化度を有し、かつ/またはASTM D792-13、方法Bで測定した0.930グラム/立方センチメートル(g/cm)以下、あるいは0.925g/cm以下の密度を有する、(電子ビーム)硬化(EBC)ポリオレフィン化合物(「ホスト樹脂」)と、(B)式(I):[R、RSiO2/2(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンであって、式中、下付き文字nは3以上の整数であり、各Rは独立して、(C-C)アルケニルまたはHC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、フェニル、またはRである、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサン(ケイ素系架橋助剤」)と、を含み、(A)は構成成分(A)および(B)の合計重量の50.0~99.99重量パーセント(重量%)、あるいは80.0~99.99重量%、あるいは90~99.9重量%、あるいは95.0~99.4重量%であり、(B)は50.0~0.01重量%、あるいは20.0~0.01重量%、あるいは10~0.1重量%、あるいは5.0~0.6重量%であり、ただし、EBC配合物は、ホスファゼン塩基、50重量%以上の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィン、および有機過酸化物の各々を含まない、EBC配合物。EBC配合物中の(B)の量は、(A)EBC配合物のEBCポリオレフィン化合物を(B)の非存在下よりも低い照射線量で電子ビーム硬化させるのに有効である。前述の除外物質(ホスファゼン塩基、50重量%以上の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィン、および有機過酸化物)以外に、EBC配合物の構成成分は特に限定されない。特定の実施形態は、1つ以上の追加の材料を任意に除外するものとして後述される。
【0012】
態様2.(A)EBCポリオレフィン化合物が、下記制限(i)~(xv):(i)示差走査熱量測定(DSC)を使用する結晶化度試験法により測定した>0~50.0重量パーセント(重量%)未満、あるいは10~45重量%の、あるいは15~40重量%、あるいは20~35重量%の結晶化度;(ii)ASTM D792-13、方法Bで測定した0.930g/cm以下、あるいは0.860~0.929g/cm、あるいは0.880~0.929g/cm、あるいは0.900~0.929g/cm、あるいは0.910~0.929g/cmの密度;(iii)(i)および(ii)の両方;(iv)全てメルトインデックス試験法(後述)に従って測定した、10分あたり0.1~20グラム(g/10分)、あるいは0.2~20g/10分、あるいは0.5~10g/10分のメルトインデックス(I2、190℃/2.16kg荷重)、かつポリエチレンである;(v)メルトフローレート試験法(後述)に従って測定した0.5~20g/10分のメルトフローレート(MFR)(230℃/2.16kg荷重)、かつポリプロピレンである;(vi)モノモーダルな分子量分布(MWD);(vii)マルチモーダル、あるいはバイモーダルなMWD;(viii)構成成分(A)および(B)の合計重量は、EBC配合物の50~100重量%、あるいは70~100重量%、あるいは80~100重量%、あるいは90~100重量%、あるいは50~99.9重量%、あるいは70~99.9重量%、あるいは80~99.9重量%、あるいは90~99.9重量%である;(ix)(A)EBCポリオレフィン化合物は、0.910~0.925g/cmの密度を有する低密度ポリエチレン(LDPE)である;(x)(A)EBCポリオレフィン化合物は、0.910~0.925g/cmの密度を有する線状低密度ポリエチレン(LLDPE)である;(xi)(A)EBCポリオレフィンコンパウンドは、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレン-1-ブテンゴム(EBR)、およびエチレン-1-オクテンゴム(EOR)などのエチレンコポリマーに基づくエラストマーから選択されるポリエチレンエラストマーである;(xii)(A)EBCポリオレフィン化合物はエチレン/(C-C20)α-オレフィン)コポリマーである;(xiii)(A)EBCポリオレフィン化合物はエチレン-プロピレンコポリマー(EPP)である;(xiv)(A)EBCポリオレフィン化合物は、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)コポリマーである;ならびに(xv)(A)EBCポリオレフィン化合物は、(i)~(xiv)のいずれか2つ以上の組み合わせである、のいずれかに1つによって特徴付けられる、態様1に記載のEBC配合物。
【0013】
態様3.(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサン下付き文字nが3であり、EBC配合物が、下記制限(i)~(x):(i)各Rは独立して;(C-C)アルケニルであり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである;(ii)各Rはビニルであり、各Rは、独立して(C-C)アルキルである;(iii)各Rはビニルであり、そして、各Rはメチルである;(iv)各Rはアリルであり、各Rは、独立して(C-C)アルキルである;(v)各Rはアリルであり、各Rはメチルである;(vi)各Rは独立してHC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである;(vii)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHであり、下付き文字mは3であり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(viii)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはメチルであり、下付き文字mは3であり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(ix)EBC配合物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびこれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を24重量%以上含有しない、あるいは22重量%以上含有しない、あるいは20.0重量%以上含有しない、あるいは15重量%以上含有しない、あるいは10重量%以上含有しない、あるいはまったく含有しない;ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のいずれか1つとの組み合わせである、のいずれか1つによって説明される、態様1または2に記載のEBC配合物。
【0014】
態様4.(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの下付き文字nが4であり、EBC配合物が、下記制限(i)~(x):(i)各Rは独立して(C-C)アルケニルであり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである;(ii)各Rはビニルであり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(iii)各Rはビニルであり、そして、各Rはメチルである;(iv)各Rはアリルであり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(v)各Rはアリルであり、各Rはメチルである;(vi)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである;(vii)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHであり、下付き文字mは3であり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(viii)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはメチルであり、下付き文字mは3であり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(ix)EBC配合物は、無機充填剤を24重量%以上含有しない(すなわち、0~<24重量%含有する)、あるいは22重量%以上含有しない、あるいは20.0重量%以上含有しない、あるいは15重量%以上含有しない、あるいは10重量%以上含有しない、あるいは無機充填剤をまったく含有しない;ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のいずれか1つとの組み合わせである、のいずれか1つによって説明される、態様1または2に記載のEBC配合物。
【0015】
態様5.(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの下付き文字nが5または6であり、EBC配合物が、下記制限(i)~(x):(i)各Rは独立して、(C-C)アルケニルであり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである;(ii)各Rはビニルであり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(iii)各Rはビニルであり、各Rはメチルである;(iv)各Rはアリルであり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(v)各Rはアリルであり、各Rはメチルである;(vi)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各Rは独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである;(vii)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはHであり、下付き文字mは3であり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(viii)各Rは独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aはメチルであり、下付き文字mは3であり、各Rは独立して、(C-C)アルキルである;(ix)EBC配合物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびこれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、24重量%以上含有しない、あるいは22重量%以上含有しない、あるいは20.0重量%以上含有しない、あるいは15重量%以上含有しない、あるいは10重量%以上含有しない、あるいはまったく含有しない;ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のいずれか1つとの組み合わせである、のいずれか1つによって説明される、態様1または2に記載のEBC配合物。
【0016】
態様6.下記任意選択的な構成成分(添加剤)(C)~(O):(C)炭素系架橋助剤(carbon-based coagent);(D)難燃剤;(E)酸化防止剤;(F)加工助剤;(G)着色剤(例えば、カーボンブラック);(H)金属不活性化剤;(I)(不飽和炭素-炭素結合)を含まない加水分解性シラン;(J)腐食防止剤;(K)ヒンダードアミン光安定剤;(L)構成成分(A)とは異なり、かつ50重量%以上の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィンとは異なる、エチレン系コポリマーであって、(L)はエチレン/(C-C20)α-オレフィンコポリマー、エチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマー、またはプロピレン/エチレン系コポリマーである、エチレン系コポリマー;(M)充填剤;(N)核剤;および(O)水トリーイング遅延剤または電気トリーイング遅延剤(すなわち、電圧安定剤)などのトリーイング遅延剤、から独立して選択される少なくとも1つの添加剤も含む、態様1~5のいずれか1つに記載のEBC配合物。EBC配合物が1つ以上の任意の添加剤を含む場合、任意の添加剤の総量は、EBC配合物の>0~70重量%、あるいは>0~60重量%、あるいは>0~40重量%、あるいは>0~20重量%である。(M)充填剤には、省略された充填剤は含まれない。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、(C)~(O)のいずれか2つをさらに含む。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は(E)酸化防止剤、あるいは、(E)酸化防止剤と(H)ヒンダードアミン安定剤をさらに含む。
【0017】
態様7.態様1~6のいずれか1つに記載の(電子ビーム)硬化性(EBC)配合物を製造する方法であって、分割された固体形態または溶融形態の(A)EBCポリオレフィン化合物と、(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンと、任意の任意選択的な構成成分(C)~(O)、あるいは(D)~(O)と、を一緒に混合して、構成成分(A)と、(B)と、任意の任意選択的な構成成分(C)~(O)、あるいは(D)~(O)と、から本質的になる混合物を得ることを含み、ただし、この方法は、ホスファゼン塩基、50重量%以上の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィン、および有機過酸化物の各々を含まない、方法。混合は、溶融混合、浸漬、または(A)への(B)の直接注入を含んでもよい。溶融混合は、配合、押出、または混練を含んでもよく、ファレル連続ミキサー(Farrel Continuous Mixer)(FCM)、トゥイーン押出機(tween extruder)、バスニーダー(buss kneader,)などを使用して実施してもよい。あるいは、式(I)の(B)アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンは、単独で、または1つ以上の他の浸漬可能な液体添加剤とともに、(A)EBCポリオレフィン化合物(例えば、ペレット)に浸漬してEBC配合物を得ることができる。あるいは、(A)のプロファイル押し出しまたは成形中に、(B)を(A)に直接注入することもできる。得られたEBC配合物に電子ビーム照射を照射して、硬化ポリオレフィン生成物を得ることができる。押出されたEBC配合物をペレット化して、EBC配合物を固体ペレットとして得ることができる。あるいは、押出されたEBC配合物を冷却して、ケーブル上の絶縁層などの成形固体としてEBC配合物を得ることができる。
【0018】
態様8.それを必要とする配合物を電子ビームで硬化する方法であって、態様1~6のいずれか1つに記載のEBC配合物、または態様7に記載の方法によって製造された(電子ビーム)硬化性配合物に有効線量の電子ビーム照射を照射して、電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物を得ることを含む、方法。成形固体形態のEBC配合物は、本方法により硬化されて、電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物の成形された形態を得ることができる。あるいは、EBC配合物は、粉末、顆粒、ペレット、またはこれらの任意の2つ以上の組み合わせなどの分割された固体形態である場合に硬化され得る。
【0019】
態様9.態様8に記載の方法により製造された、電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物。生成物は、コーティング、フィルム、または成形または押し出し形状などの定義された形状を有していてもよい。
【0020】
態様10.態様9に記載の電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物と、それと機能的に接触する構成要素と、を含む、製品。この構成要素は、電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物またはEBC配合物以外の材料でできている。構成要素は、EBCポリオレフィン生成物を支持するための基材であってもよい。
【0021】
態様11.導電性コアと、導電性コアを少なくとも部分的に囲むポリマー層とを含む被覆導体であって、ポリマー層の少なくとも一部分が、態様9に記載の電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物を含む、被覆導体。被覆導体は、絶縁導電体(電力ケーブル)であってもよく、ポリマー層はその絶縁層であってもよい。絶縁導電体は、通常、絶縁層で覆われた導電性コアを備えている。導電性コアは、ソリッドまたはストランド(たとえば、ワイヤの束)であってもよい。いくつかの絶縁導電体は、半導体層および/または保護ジャケット(たとえば、巻線、テープ、またはシース)などの1つまたは複数の追加の要素も含む場合がある。実例は、低電圧(「LV」、>0~<5キロボルト(kV))、中電圧(「MV」、5~<69kV)、高電圧(「HV」、69~230kV、)および超高電圧(「EHV」、>230kV)データ伝送および送電/配電用途に使用するものを含む、被覆金属ワイヤおよび電力ケーブルを含む。電力ケーブルの評価には、AEIC/ICEA規格および/またはIECテスト方法を使用することができる。運用中の現場では、電力ケーブルは紫外線の悪影響(日光など)にさらされ、90℃以上に加熱される(例えばケーブル内で生じる)。
【0022】
態様12.電気を伝導する方法であって、態様11に記載の被覆導体の導電性コア全体に電圧を印加して、導電性コアを通る電気の流れを発生させることを含む、方法。
【0023】
本発明のEBC配合物は、(B)アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの開環なしに電子ビーム照射により硬化(架橋)され得る。硬化反応は、(B)アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンが重合シロキサン(シリコーンポリマー)またはシルセスキオキサンを与えないように行われる。(B)アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンは、EBC配合物の電子ビーム硬化中に架橋助剤(架橋剤)として機能し、そして得られる硬化ポリオレフィン生成物は、直接的なポリオレフィン-ポリオレフィン結合と(B)アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンから誘導された多価架橋基を介して架橋したポリオレフィンの両方を有すると考えている。理論に拘束されることなく、EBC配合物の構成成分は、EBC配合物の電子ビーム硬化中に(B)アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンが開環して、開環シラノール(S-OH)-官能性オルガノシロキサンオリゴマー(直鎖または分岐鎖)を生じないように選択されると考えられており、したがって重合シロキサン(シリコーンポリマー)またはシルセスキオキサンは、インサイチュでは形成されない。理論に拘束されることなく(B)アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンは、EBC配合物が(b)ホスファゼン塩基である開環触媒を含まないため、したがって硬化反応がその開環触媒の不在下で行われるため、少なくとも部分的に開環することができないと考えられている。ホスファゼン塩基が存在しない場合、EBC配合物は、フリーラジカル硬化を介してポリオレフィンポリマーへの(B)アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの架橋を受け、硬化ポリオレフィン生成物を形成する。架橋は、周囲の水分の存在下でさえ、(B)アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの開環なしで有益に起こる。
【0024】
添加剤:ホストポリマー、またはマスターバッチとホストポリマーを含む配合物、またはそれから調製される反応生成物に所望の特性を付与する固体または液体の化合物または物質。この特性は、化学的、電気的、機械的、光学的、物理的、および/または熱的特性であり得る。
【0025】
α-オレフィン:式(I)の化合物、HC=C(H)-R(I)、式中、Rは直鎖アルキル基である。
【0026】
半結晶性ポリオレフィン樹脂の結晶化度は、ASTM D3418-15または後述の結晶化度試験法に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって決定され得る。半結晶性ポリエチレン樹脂については、重量%結晶化度=(ΔH*100%)/292J/gである。半結晶性ポリプロピレン樹脂については、重量%結晶化度=(ΔH*100%)/165J/gである。それぞれの等式において、ΔHは、場合に応じて、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂についての第2の加熱曲線融解熱であり、*は数学的乗算を示し、/は数学的除算を示し、292J/gは、100%結晶性ポリエチレンについての融解熱(ΔH)の文献値であり、165J/gは、100%結晶性ポリプロピレンについての融解熱(ΔH)の文献値である。好ましくは、結晶化度は、後述する結晶化度試験法に従ってDSCによって決定される。
【0027】
硬化剤:活性化するとフリーラジカルを形成し、高分子の架橋を伴う反応を開始または強化するラジカル生成化合物(インサイチュで)。硬化剤の活性化は、硬化剤を熱または光にさらすことにより達成され得る。硬化剤の例は、過酸化物、ジアゾ官能性有機化合物、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンである。過酸化物の例は、式HOORの水素有機過酸化物および式ROORの有機過酸化物であり、各Rは独立してヒドロカルビル基である。いくつかの態様では、EBC配合物およびそれから調製された硬化ポリオレフィン生成物は、硬化剤、例えば、有機水素過酸化物または有機過酸化物などの過酸化物を含まない。
【0028】
硬化:架橋して架橋生成物(ネットワークポリマー)を形成する。
【0029】
日:任意の連続する24時間。
【0030】
分割された固体:比較的安定した形状と体積を特徴とする物質の状態にある粒子状物質。例としては、力、顆粒、およびペレットである。
【0031】
有効用量:必要なポリオレフィンの架橋とその量の吸収をもたらすのに十分な吸収量(吸収用量)。
【0032】
電子ビーム硬化性:高エネルギー電子ビーム加速器などからの高エネルギーベータ線の照射(処理)により硬化することができる。照射により、隣接する高分子間に共有結合(架橋)が誘導され、ネットワークポリマーが形成される。
【0033】
高密度ポリエチレン(HDPE):0.941~0.990g/cmの密度、0重量%を超えるα-オレフィンコモノマー単位含有量、および短鎖分岐を有する。
【0034】
線状低密度ポリエチレン(LLDPE):0.910~0.925g/cmの密度、0重量%を超えるα-オレフィンコモノマー単位の含有量、短鎖分岐を有する。LLDPEは、70~100重量パーセント未満のコモノマー分布幅指数(CDBI)を有し得る。
【0035】
低密度ポリエチレン(LDPE):0.910~0.925g/cmの密度を有するポリエチレンホモポリマー(0重量%コモノマー単位含有量、CDBI=100%、短鎖分岐なし)。LDPEは、触媒を含まない高圧重合プロセスでのフリーラジカル重合機構により製造することができる。
【0036】
中密度ポリエチレン(MDPE):0.926~0.940g/cmの密度を有する。
【0037】
製品:(手または機械による)人工物。
【0038】
融解物:固体材料をその最高融解温度以上に加熱することにより形成される液体。
【0039】
ポリオレフィン:重合性オレフィンから誘導される構成単位で構成される高分子または高分子の集合。
【0040】
半結晶:結晶質である第1の領域と非晶質である第2の領域を持つ固体材料。後述の結晶化度試験法で測定される、通常5%~90%のパーセント結晶化度を有する。
【0041】
成形固体:比較的一定の体積と外形の物質の状態で、(手または機械による)人工物である。例えば、流体を外部形状に押し出し、成形し、またはコーティングした後、外部形状を所定の位置に冷却して、成形固体を得る。
【0042】
保管:保持または維持。
【0043】
スウェットアウト:そこに添加剤を含む固体材料からの添加剤の徐放。
【0044】
構成成分(A)電子ビーム硬化性(EBC)ポリオレフィン化合物(「ホストポリマー」)。(A)EBCポリオレフィン化合物は、低密度ポリエチレン(LDPE、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリオレフィンエラストマー、エチレン/(C-C40)α-オレフィン)コポリマー、またはこれらの任意の2つ以上の組み合わせ(例えば、ブレンドまたは溶融混合物)であってよい。LDPEは、0.910~0.925g/cmの密度を有し得る。LLDPEは、0.910~0.925g/cmの密度を有し得る。エチレンコポリマーに基づくポリオレフィンエラストマーは、EPRおよびEBR、あるいはEPRおよびEOR、あるいはEBRおよびEOR、あるいはEPR、あるいはEBR、あるいはEORから選択することができる。そのようなエラストマーの例は、The Dow Chemical Companyから入手可能なENGAGE(商標)、AFFINITY (商標)、およびINFUSE(商標)ポリオレフィンエラストマーである。エチレン/(C-C20)α-オレフィン)コポリマーは、エチレン/プロピレンコポリマー、または本明細書に記載のエチレン/(C-C20)α-オレフィン)コポリマーであってもよい。エチレン-プロピレンコポリマー(EPP)は、バイポリマーまたはエチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)コポリマーであり得る。(A)EBCポリオレフィン化合物は、モノマー組成、コモノマー組成、密度、結晶化度、メルトインデックス、メルトフローレート、数平均分子量(M)、重量平均分子量(M)、分子量分布(M/M)、および多孔度から選択される少なくとも1つの特徴において、除外された半結晶性ポリオレフィンおよび(L)エチレン系ポリマー添加剤とは異なり得る。
【0045】
EBC配合物を調製するために使用される混合工程の前に、(A)EBCポリオレフィン化合物は、粉末、顆粒および/またはペレットなどの分割された固体形態であってもよい。
【0046】
構成成分(B)アルケニル官能性単環式オルガノシロキサン(ケイ素系架橋助剤)。ケイ素原子と酸素原子、およびそれらに結合した2つ以上のプロペニル、アクリレート、および/またはビニル基を含む骨格または環部分構造を含む分子、またはこのような分子の集合。
【0047】
構成成分(B)は先に定義されたとおりであり、架橋有効量でEBC配合物に使用される。(B)の架橋有効量は、EBC配合物の総重量に基づいて、0.01~50重量%、あるいは0.1~25重量%、あるいは0.5~10重量%、あるいは0.9~5重量%、あるいは1~4重量%であってよい。EBC配合物中の(B)の架橋有効量は、上記の状況に応じて変わり得る。例えば、(B)の架橋有効量は、(d)無機充填剤を含まないポリオレフィン組成物の実施形態よりも(d)無機充填剤を含むポリオレフィン組成物の実施形態の方が高くなり得る。
【0048】
構成成分(B)の架橋有効量の決定に関して、架橋の存在は、溶媒抽出の割合(Ext%)として検出され得る。Ext%=W1/Wo*100%。W1は抽出後の重量、Woは抽出前の元の重量、/は除算、*は乗算を示す。架橋ポリオレフィン生成物中の(B)の不飽和有機基(例えば、R)の炭素-炭素二重結合の不在または減少レベルは((A)EBCポリオレフィン化合物とのカップリングによる、炭素-13またはケイ素-29核磁気共鳴(13C-NMR分光法および/または29Si-NMR)分光法によって検出できる。
【0049】
任意選択的な構成成分(C)炭素系架橋助剤。(C)炭素系架橋助剤は、2つ以上のオレフィン架橋基に結合した部分構造基を含み、ここで、部分構造基は、骨格または環炭素原子と、任意に、窒素および/または酸素原子を含むが、ケイ素原子は含まない骨格または環をそれぞれ含む非環式または環状多価基である。例としては、2-アリルフェニルアリルエーテル、4-イソプロペニル-2,6-ジメチルフェニルアリルエーテル、2,6-ジメチル-4-アリルフェニルアリルエーテル、2-メトキシ-4-アリルフェニルアリルエーテル、2,2´-ジアリルビスフェノールA、O、O´-ジアリルビスフェノールA、またはテトラメチルジアリルビスフェノールA、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、N,N,N´,N´,N´´,N´´-ヘキサアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、トリアリルオルトホルメート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリアリルシトレート、トリアリルアコニテート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、少なくとも50重量%の1,2-ビニル含有量を有するポリブタジエン、トリビニルシクロヘキサン、およびこれらの任意の2つ以上の混合物である。いくつかの態様では、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物には(C)は存在しない。いくつかの態様では、(C)は、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物中に、すべてその総重量に基づいて、0.1~10重量%、あるいは1~5重量%、あるいは、2~5重量%の濃度で存在する。
【0050】
任意選択的な構成成分(D)難燃剤。(D)難燃剤は、火炎中の化学反応を抑制することによって火の広がりを抑制または遅延させる化合物である。いくつかの態様では、(D)難燃剤は(D1)鉱物、(D2)有機ハロゲン化合物、(D3)(有機)リン化合物、(D4)ハロゲン化シリコーン、または(D5)(D1)~(D4)の任意の2つ以上の組み合わせである。いくつかの態様では、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物には(D)は存在しない。いくつかの態様では、(D)は、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物中に、すべてその総重量に基づいて、0.1~20重量%、あるいは1~10重量%、あるいは、5~20重量%の濃度で存在する。
【0051】
任意選択的な構成成分(E)酸化防止剤。ポリオレフィンの酸化を抑制するための化合物。適切な第2の酸化防止剤の例は、重合1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(AgeriteMA)、トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン(Cyanox1790)、ジステアリル-3,3-チオジプロピオネート(DSTDP)、テトラキスメチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)メタン(Irganox1010)、1,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン(Irganox1024)、ビス(4,6-ジメチルフェニル)イソブチリデン(Lowinox 22IB46)、4,4-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)(TBM6)である。一部の態様では、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物には(E)は存在しない。いくつかの態様において、(E)は、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物中に、その総重量に基づいて0.01~10重量%、あるいは0.05~5重量%、あるいは0.1~3重量%の濃度で存在する。
【0052】
任意選択的な構成成分(添加剤)(F)加工助剤。構成成分(F)は、架橋助剤マスターバッチ組成物の溶融物の機械を通る流れを改善し得る。(F)は、フルオロポリマー等の有機加工助剤、またはポリオルガノシロキサンもしくはフルオロ官能化ポリオルガノシロキサン等のシリコーン加工助剤であり得る。いくつかの態様では、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物には(F)は存在しない。いくつかの態様において、(F)は、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物中に、その総重量に基づいて1~20重量%、あるいは2~18重量%、あるいは3~15重量%の濃度で存在する。
【0053】
任意選択的な構成成分(添加剤)(G)着色剤。例えば、顔料または染料。例えば、カーボンブラックまたは二酸化チタン。カーボンブラックは、ポリ(1-ブテン-コ-エチレン)コポリマー(マスターバッチの総重量の≧95重量%~<100重量%)と、カーボンブラック(マスターバッチの総重量の>0重量%~≦5重量%との配合物であるカーボンブラックマスターバッチとして提供され得る。いくつかの態様では、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物には(G)は存在しない。いくつかの態様において、(G)着色剤は、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物中に、その総重量に基づいて0.1~35重量%、あるいは1~10重量%で存在する。
【0054】
任意選択的な構成成分(添加剤)(H)金属不活性化剤。例えば、オキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)(OABH)。いくつかの態様では、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物には(H)は存在しない。いくつかの態様では、(H)は、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物中に、すべてその総重量に基づいて0.001~0.2重量%、あるいは0.01~0.15重量%、あるいは0.01~0.10重量%で存在する。
【0055】
任意選択的な構成成分(添加剤)(I)(不飽和炭素-炭素結合)を含まない加水分解性シラン。湿気を除去するのに有用。構成成分(I)は、少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つ、あるいは4つの加水分解性基(例えば、上で定義したようなR)、およびアルキル基またはアリール基等の、最大3つ、あるいは最大2つ、あるいは最大1つ、あるいは0の非加水分解性(不飽和炭素-炭素結合)を含まない基を含有する任意のモノシランであり得る。(I)の例は、アセトキシトリメチルシラン、4-ベンジルフェニルスルホンオキシトリブチルシラン、ジメチルアミノ-メトキシ-ジオクチルシラン、オクチルトリメトキシシラン、およびテトラメトキシシランである。いくつかの態様では、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物には(I)は存在しない。いくつかの態様では、(I)は、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物中に、すべてその総重量に基づいて、0.1~2重量%、あるいは0.1~1.5重量%、あるいは0.1~1.0重量%で存在する。
【0056】
任意選択的な構成成分(添加剤)(J)腐食防止剤。例えば、硫酸スズ(II)。いくつかの態様では、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物には(J)は存在しない。いくつかの態様では、(J)は、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物中に、その総重量に基づいて0.00001~0.1重量%、あるいは0.0001~0.01重量%で存在する。
【0057】
任意選択的な構成成分(添加剤)(K)ヒンダードアミン光安定剤。(K)は、酸化分解を抑制する化合物である。適切な(K)の例は、ブタン二酸ジメチルエステル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-エタノールを有するポリマー(CAS番号65447-77-0、市販のLOWILITE62)、およびポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]])(CAS71878-19-8/70624-18-9、Chimassorb994LD、BASF)である。いくつかの態様では、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物には(K)は存在しない。いくつかの態様では、(K)は、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物中に、すべてその総重量に基づいて、0.001~0.4重量%、あるいは0.001~0.2重量%、あるいは0.01~0.15重量%、あるいは0.01~0.10重量%で存在する。
【0058】
任意選択的な構成成分(添加剤)(L)エチレン系コポリマー添加剤。構成成分(L)は、構成成分(A)および(C)とは異なる。(L)は、LDPE、エチレン/α-オレフィンコポリマー、エチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマー(エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン/アクリル酸エチル(EEA)コポリマー、またはエチレン/メタクリル酸エチル(EEMA)コポリマー)である。いくつかの態様では、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物には(L)は存在しない。いくつかの態様では、(L)は、本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物中に、すべてはその総重量に基づいて、0.1~20重量%、あるいは1~10重量%、あるいは、5~20重量%の濃度で存在する。
【0059】
任意選択的な構成成分(M)充填剤:ホスト材料の空間を占有し、任意選択的にホスト材料の機能に影響を与える、細かく分割された粒子状の固体またはゲル。(M)充填剤は、焼成粘土、有機粘土、またはCabot CorporationからCAB-O-SILの商品名で市販されているものなどの疎水化ヒュームドシリカであってもよい。(M)充填剤は、難燃効果を有し得る。いくつかの態様では、本発明の配合物および生成物は(M)を含まない。存在する場合、(M)充填剤は、本発明の配合物および生成物の1~40重量%、あるいは2~30重量%、あるいは5~20重量%であってもよい。
【0060】
(M)充填剤に関して、いくつかの態様では、本発明の配合物および生成物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびこれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、20重量%以上含有しない、あるいは15重量%以上含有しない、あるいは10重量%以上含有しない、あるいはまったく含有しない。本発明の配合物および生成物は、Alを含有する固体、Caを含有する固体、Mgを含有する固体、Siを含有する固体、Tiを含有する固体、およびこれらの混合物からなる群から選択されるいずれかの無機充填剤を、20重量%以上含有しなくてもよく、あるいは15重量%以上含有せず、あるいは10重量%以上含有せず、あるいはまったく含有しない。誤解を避けるために、「無機充填剤」という用語にはカーボンブラックは含まれていない。
【0061】
任意選択的な構成成分(N)核剤。ポリオレフィンポリマーの結晶化速度を高める有機または無機添加剤。(N)の例は、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、超高分子量ポリエチレン、フタル酸水素カリウム、安息香酸化合物、安息香酸ナトリウム化合物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸二ナトリウム、であり、亜鉛モノグリセロレート、および1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、カルシウム塩、ステアリン酸亜鉛である。いくつかの態様では、本発明の配合物および生成物は(N)を含まない。(N)は、存在する場合、本発明の配合物および生成物の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%の濃度であり得る。
【0062】
任意選択的な構成成分(O)トリーイング遅延剤。(O)トリーイング遅延剤は、水および/または電気トリーイングを抑制する分子、またはそのような分子の集まりである。トリーイング遅延剤は、水トリーイング遅延剤または電気トリーイング遅延剤であり得る。水トリーイング遅延剤は、電界と湿気または水分との複合効果にさらされるとポリオレフィンが劣化するプロセスである、水トリーイングを抑制する化合物である。電気トリーイング遅延剤は、部分的な放電による固体電気絶縁における電気的事前分解プロセスである、電気トリーイングを抑制する化合物である。電気トリーイングは、水がない場合に発生し得る。水トリーイングおよび電気トリーイングは、被覆がポリオレフィンを含有する、被覆導体を含有する電気ケーブルについての問題である。(O)トリーイング遅延剤は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)であってもよい。
【0063】
その他の任意選択的な構成成分。いくつかの態様では、本発明の配合物および生成物は、任意選択的な構成成分を含まない。いくつかの態様では、本発明の配合物および生成物は、構成成分(C)~(O)以外のいずれかの任意選択的な構成成分を含まない。いくつかの態様では、本発明の配合物および/または生成物は、潤滑剤、鉱油、または粘着防止剤である少なくとも1つの任意選択的な構成成分(添加剤)をさらに含む。本発明の配合物および生成物は、電子ビーム硬化性配合物などの有機過酸化物を含まない硬化性配合物において有益ではない、スコーチ防止剤を含まなくてもよい。
【0064】
任意選択的な構成成分は、それを必要とする本発明のマスターバッチ、配合物、および/または生成物に少なくとも1つの特徴または特性を付与するのに有用であり得る。特徴または特性は、本発明の配合物および/または生成物が高い動作温度にさらされる操作または用途における本発明の配合物および/または生成物の性能を改善するのに有用であり得る。そのような操作または用途には、溶融混合、押出、成形、温水パイプ、および電力ケーブルの絶縁層が含まれる。
【0065】
電子ビーム硬化性配合物。本発明の配合物および生成物中のすべての構成成分および添加剤の総重量は、独立して100.00重量%である。電子ビーム硬化性配合物は、一部分配合物、あるいは二部分配合物であってもよい。二部分配合物は、第1および第2の部分を含むことができ、第1の部分は本質的に構成成分(A)および(B)からなり、第2の部分は本質的に1つ以上の任意選択的な構成成分(C)~(O)からなる。
【0066】
EBC配合物およびそれから製造された硬化ポリオレフィン生成物は、ホスファゼン塩基を含まない。ホスファゼン塩基は、開環触媒の一種である。除外されたホスファゼン塩基はコア構造P=Nを持ち、遊離N原子価は水素、ヒドロカルビル、-P=Nまたは=PNに連結され、遊離P原子価は=Nまたは-Nに連結される。ホスファゼン塩基の例は、US8,426,519 B2、9欄、29行目~10欄、31行目にある。除外されたホスファゼン塩基には、それらの2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0067】
除外されたホスファゼン塩基に加えて、特定の実施形態のEBC配合物およびそれから製造された硬化ポリオレフィン生成物はまた、他の開環触媒を含まなくてもよい。他の開環触媒の例は、F.O.Stark et al.,Silicones,Comprehensive Organometallic Chemistry,volume 2,305,Pergamon Press(1982)に記載されている。それらには、トリフルオロメタンスルホン酸およびその金属塩、硫酸、過塩素酸、塩酸などの強酸、金属ハロゲン化物などのカチオン開環触媒、有機リチウム、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物などのアニオン開環触媒、およびそれらの任意の2つ以上の混合物が含まれる。EBC配合物およびそれから製造された硬化ポリオレフィン生成物は、酸性縮合触媒であって、(i)有機スルホン酸、有機ホスホン酸、またはハロゲン化水素、(ii)有機スルホン酸、(iii)アルキル置換アリールスルホン酸、(iv)1つもしくは2つの(C-C20)アルキル置換基(複数可)とフェニルもしくはナフチルである1つのアリール基とが存在する、アルキル置換アリールスルホン酸、(v)(C-C)アルキルホスホン酸であって、(C-C)アルキルが非置換であるかもしくは1つの-NH基で置換されている、(C-C)アルキルホスホン酸、(vi)HF、HCl、もしくはHBr、(vii)ルイス酸、または(viii)(i)~(vii)のうちのいずれか2つ以上の組み合わせ、である、酸性縮合触媒を含まなくてよい。除外される他の開環触媒には、これらの2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0068】
EBC配合物およびそれから製造された硬化ポリオレフィン生成物は、50重量%以上の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィンを含まない。除外される半結晶性ポリオレフィンは、少なくとも55重量%、あるいは少なくとも58重量%、あるいは少なくとも59重量%の結晶化度を有し得る。直前の態様のいずれか1つでは、結晶化度は、最大90重量%、あるいは最大80重量%、あるいは最大78重量%であり得る。いくつかの態様では、結晶化度は、55~80重量%、あるいは58~78重量%、あるいは58~76重量%、あるいは62~78重量%、あるいは59±1重量%、62±1重量%、76±1重量%、および77±1重量%のうちのいずれか1つである。50重量%以上の結晶化度を有する除外された半結晶性ポリオレフィンは、それらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0069】
除外される半結晶性ポリオレフィンは、50重量%以上の結晶化度を有する半結晶性ポリエチレンであってもよい。例は、半結晶性中密度ポリエチレン(MDPE)、半結晶性高密度ポリエチレン(HDPE)、またはそれらの組み合わせであり、すべて結晶化度が50重量%以上である。半結晶性HDPEは、0.970g/cm、あるいは最大で0.960g/cm、あるいは最大で0.950g/cmの最大密度を有し得る。半結晶性HDPEは、>0.935~0.970g/cm、あるいは0.935~0.965g/cmの密度を有し得る。密度は、ASTM D-1505、密度勾配法によるプラスチック密度試験法によって測定され得る。除外される半結晶性ポリオレフィンは、10~20g/10分の、あるいは0.1~10g/10分の、あるいは0.20~9g/10分の、メルトインデックス(I2、190℃/2.16kg荷重)を有することができる。Iは、後述するように、ASTM D1238によって決定され得る。除外された半結晶性ポリオレフィンは、モノモーダルな、あるいはマルチモーダルな、例えばバイモーダルな分子量分布(MWD)によって特徴付けられてもよい。除外された半結晶性ポリオレフィンは、バイモーダルであり、0.950~0.958g/cmの密度および0.20~0.40g/10分のメルトインデックスを有する半結晶性HDPEであってもよい。除外された半結晶性ポリオレフィンは、モノモーダルであり、0.930~0.970g/cmの密度および0.65~9g/10分のメルトインデックス、あるいは0.935~0.965g/cmの密度および0.7~8.5g/10分のメルトインデックスを有する半結晶性HDPEであってもよい。
【0070】
EBC配合物およびそれから製造された硬化ポリオレフィン生成物は、有機過酸化物を含まない。除外される有機過酸化物は、炭素原子、水素原子、および2つ以上の酸素原子を含み、少なくとも1つの-OO-基を持つ分子であり、ただし、1つ以上の-OO-基がある場合は、それぞれ-OO-基は、1つ以上の炭素原子またはそのような分子の集合を介して、別の-OO-基に間接的に結合する。除外される有機過酸化物は、式R-O-O-Rのモノペルオキシドを含んでよく、式中、各Rは独立して、(C-C20)アルキル基または(C-C20)アリール基である。Rの各(C-C20)アルキル基は独立して、非置換であるか、または1もしくは2個の(C-C12)アリール基で置換されている。Rの各(C-C20)アリール基は独立して、非置換であるかまたは1~4個の(C-C10)アルキル基で置換されている。除外される有機過酸化物はまた、Rは、(C-C10)アルキレン、(C-C10)シクロアルキレン、またはフェニレンRなどの二価の炭化水素基である式R-OOROORのジペルオキシドを含み、各Rは上で定義したとおりである。除外される有機過酸化物には、ビス(1,1-ジメチルエチル)ペルオキシド、ビス(1,1-ジメチルプロピル)ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキシン、4,4-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)吉草酸、ブチルエステル、1,1-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、過酸化ベンゾイル、過安息香酸tert-ブチル、ジ-tert-アミルペルオキシド(「DTAP」)、ビス(α-t-ブチル-ペルオキシイソプロピル)ベンゼン(「BIPB」)、イソプロピルクミルt-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルクミルクミルペルオキシド、4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)吉草酸ブチル、または過酸化ジ(イソプロピルクミル)、または過酸化ジクミルが含まれる。除外された有機過酸化物には、2つ以上のこのような有機過酸化物の組み合わせが含まれる。
【0071】
EBC配合物およびそれから製造される硬化ポリオレフィン生成物のいくつかの実施形態は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびこれらの2つ以上の混合物から選択される無機充填剤を含まなくてもよい。
【0072】
EBC配合物およびそれから製造された硬化ポリオレフィン生成物のいくつかの実施形態は、ホスファゼン塩基、50重量%以上の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィン、有機過酸化物、ホスファゼン塩基以外の開環触媒、そして無機充填剤のそれぞれを含まない。いくつかのそのような実施形態では、EBC配合物およびそれから製造された硬化ポリオレフィン生成物は、(C)炭素系架橋助剤、TiO、または(C)炭素系架橋助剤とTiO2の両方も含まない。本発明の配合物および生成物は、シルセスキオキサン、あるいは構成成分(B)および(B)の電子ビーム硬化(架橋)反応生成物を除く任意のシロキサンを含まなくてもよい。
【0073】
(C-C20)α-オレフィンおよび(C-C20)α-オレフィン。式(I):HC=C(H)-R(I)、式中、Rは、それぞれ直鎖(C-C18)アルキル基または直鎖(C-C18)アルキル基のいずれかである。(C)α-オレフィンは1-プロペンであり、式(I)のR基はメチルである。(C-C18)アルキル基は、2~18個の炭素原子を有する一価の非置換の飽和炭化水素である。(C-C18)アルキルの例は、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、およびオクタデシルである。いくつかの実施形態において(C-C20)α-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテンであり、あるいは、1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテンであり、あるいは、1-ブテンまたは1-ヘキセンであり、あるいは、1-ブテンまたは1-オクテンであり、あるいは、1-ヘキセンまたは1-オクテンであり、あるいは1-ブテンであり、あるいは1-ヘキセンであり、あるいは、1-オクテンであり、あるいは、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンの任意の2つの組み合わせである。
【0074】
本明細書中の任意の化合物は、天然存在形態および/または同位体濃縮形態を含むそのすべての同位体形態の全てを含み、医療用途や偽造防止用途など、追加の用途を有してもよい。
【0075】
電子ビーム照射硬化の方法。この方法は、有効線量の電子ビーム照射でEBC配合物に電子ビームを照射することを含んでもよい。電子ビーム照射の有効線量または吸収線量は、EBC配合物1キログラムあたり49~201キロジュールのエネルギー(kJ/kg)、あるいは49~160kJ/kg、あるいは80~201kJ/kg、あるいは80~160kJ/kg、あるいは50~80kJ/kg、あるいは100~140kJ/kg、あるいは160~201kJ/kgであってよい。100kJ/kgは、10メガラド(Mrad)/kgに等しく100,000グレイに等しい。1グレー=1キログラムあたり1ジュール(J/kg)=100ラド電子ビーム照射は、中華人民共和国のWuxi Aibang Radiation Technology Company, Limitedから入手可能なAibang AB5.0マシンなどのEビームアクセラレータマシンを使用して生成できる。電子ビーム照射ステップは、10℃~50℃などの任意の適切な温度で(例えば、23℃±1℃)、空気または分子窒素ガスなどの任意の適切な雰囲気下で、0.1~20分、あるいは0.1~10分、あるいは0.1~5分などの適切な時間、実施することができる。照射は、連続的または断続的に、あるいは連続的に投与されてもよい。
【0076】
特に示されない限り、以下を適用する。代替的に、異なる実施形態に先行する。ASTMとは、標準化機構である、ASTM International,West Conshohocken, Pennsylvania, USAを意味する。IECは、スイスジュネーブの国際電気標準会議の標準化機構を意味する。いずれの比較実施例も説明目的でのみ使用されており、先行技術ではない。含まないまたは欠いているは、完全に存在しないこと、代替として検出不可能であることを意味する。IUPACは、国際純正応用化学連合(IUPAC Secretariat,Research Triangle Park,North Carolina,USA)である。必須ではなく、選択の許容を与えることができる。作動とは、機能的に可能または有効なことを意味する。任意選択の手段は存在しない(または除外される)、代替的に存在する(または含まれる)ことを意味する。PPMは、重量ベースである。特性は、標準試験方法および測定条件(例えば、粘度:23℃および101.3kPa)を用いて測定される。範囲は、端点、部分範囲、およびその中に包含される整数値および/または小数値を含むが、整数の範囲が小数値を含まない場合を除く。室温は23℃±1℃である。化合物に関連するとき置換されているとは、水素の代わりに、置換ごとに1個までおよびそれを含んで、1個以上の置換基を有することを意味する。
【0077】
結晶化度試験法。(A)半結晶性ポリオレフィンキャリア樹脂等の半結晶性ポリオレフィン樹脂の結晶化度を重量%で決定するため。以下のようにDSC機器DSC Q1000(TA Instruments)を使用して溶融ピークおよび重量パーセント(重量%)結晶化度を決定する。手順(A)ベースライン較正機器。ソフトウェア較正ウィザードを使用する。まず、アルミニウムDSCパン中に試料を全く含まずにセルを-80℃~280℃に加熱することによってベースラインを得る。次いで、較正ウィザードの指示に従ってサファイア標準を使用する。標準試料を180℃に加熱し、10℃/分の冷却速度で120℃に冷却し、次いで標準試料を等温で120℃に1分間保持し、続いて標準試料を10℃/分の加熱速度で120℃~180℃まで加熱することによって、1~2ミリグラム(mg)の新鮮なインジウム試料を分析する。インジウム標準試料が、融解熱(H)=28.71±0.50ジュール/グラム(J/g)、および溶融開始=156.6±0.5℃を有することを決定する。同じDSC機器を使用して、試験試料のDSC測定を実行する。ポリエチレン試験試料については、以下の手順(B)を参照する。ポリプロピレン試験試料については、以下の手順(C)を参照する。DSCを使用して決定された結晶化度の重量パーセント値は、密度に基づく方法に従って決定された結晶化度の重量パーセント値よりも約3重量%低くなる。
【0078】
手順(B)ポリエチレン試験試料のDSC。ポリマーの試験試料を160℃の温度で薄膜にプレスする。DSC皿に5~8mgの試験試料フィルムを秤量する。パンを蓋で閉じてクリンプし、密閉雰囲気を確保する。密閉したパンをDSCセル内に配置し、30℃でセルを平衡化し、約100℃/分の速度で140℃に加熱し、試料を140℃で1分間保持し、試料を10℃/分の速度で0℃以下(例えば-40℃)に冷却して、冷却曲線融解熱(Hf)を得て、等温で0℃以下(例えば-40℃)に3分間保持する。次いで、試料を10℃/分の速度で180℃に再度加熱して、第2の加熱曲線融解熱(ΔHf)を得る。得られた曲線を使用して、結晶化の開始から10℃まで積分することにより、冷却曲線融解熱(J/g)を計算する。第2の加熱曲線溶融熱(J/g)は、10℃から溶融終了までを積分することによって計算される。試験試料の第2の加熱曲線融解熱(ΔH)および100%結晶性ポリエチレンの融解熱に対するその正規化から、ポリマーの重量パーセント結晶化度(重量%結晶化度)を測定したところ、重量%結晶化度=(ΔH*100%)/292J/gであり、式中、ΔHが、上で定義した通りであり、*が数学的乗算を示し、/が数学的除算を示し、292J/gが、100%結晶性ポリエチレンについての融解熱(ΔH)の文献値である。
【0079】
手順(C)ポリプロピレン試験試料のDSC。半結晶性エチレン系ポリマーの試験試料を210℃の温度で薄膜にプレスする。DSC皿に5~8mgの試験試料フィルムを秤量する。パンを蓋で閉じてクリンプし、密閉雰囲気を確保する。密閉したパンをDSCセル内に配置し、約100℃/分の速度で230℃に加熱する。試料を230℃で5分間保持し、試料を10℃/分の速度で-20℃に冷却して、冷却曲線融解熱を得て、等温で-20℃に5分間保持する。次いで、溶融が完了するまで試料を10℃/分の速度で再度加熱して、第2の加熱曲線融解熱((ΔH))を得る。得られた曲線を使用して、結晶化の開始から10℃まで積分することにより、冷却曲線融解熱(J/g)を計算する。第2の加熱曲線溶融熱(J/g)は、10℃から溶融終了までを積分することによって計算される。試験試料の第2の加熱曲線融解熱(ΔH)および100%結晶性ポリプロピレンの融解熱に対するその正規化から、ポリマーの重量パーセント結晶化度(重量%結晶化度)を測定したところ、重量%結晶化度=(ΔH*100%)/165J/gであり、式中、ΔHが、上で定義した通りであり、*が数学的乗算を示し、/が数学的除算を示し、165J/gが、100%結晶性ポリプロピレンについての融解熱(ΔH)の文献値である。
【0080】
密度試験方法:ASTM D792-13、変位によるプラスチックの密度と比重(相対密度)の標準試験法の方法Bに従って測定した(水以外の液体中、例えば液体2-プロパノール中で固体プラスチックを試験するため)。結果は1立方センチメートル当たりのグラム数(g/cm)の単位で報告する。
【0081】
ゲル含有量試験方法:ASTM D2765-01(2006)、架橋エチレンプラスチックのゲル含有量と膨潤率の測定のための標準試験方法、試験方法Aにより測定した。
【0082】
ホットクリープ(ホットセット)試験方法:試験試料 (ASTM 638-34に規定された寸法のドッグボーン型、厚さ<2ミリメートル(mm)、マーカーラインの間隔20mm)を200℃のオーブンに入れ、試験試料には20ニュートン/平方センチメートル(N/cm)の力に等しい重りを取り付けた。次いで、これらの条件下で試験試料の伸び(マーカーライン間の距離)を測定して、最初の20mmの距離に対する百分率として表す。マーカーライン間の距離が40mmに広がった場合、ホットクリープは100%(100*(40-20)/20)=100%)であり、100mmに広がった場合ホットクリープは400%である。ホットクリープ試験方法において、他の全ての条件が等しい場合、試験試料中の架橋レベルが低くなるほど、その伸び度合いは大きくなる。逆に、試験試料中の架橋レベルが高くなるほど、その伸び度合いは小さくなる。試験試料中の架橋レベルが十分に低い場合、試験試料は、試験の開始から数分または数秒以内に発生する可能性がある破損により不合格になるおそれがある。電力ケーブルは200℃もの高い動作温度にならないかもしれないが、この試験は、業界がその絶縁層に使用するための材料を評価するための信頼できる方法である。ホットクリープ率が低いほど、材料の性能は向上する。電力ケーブル業界では、試験試料を200℃で15分間保持した後に175%未満のホットクリープが、ホットクリープ試験に合格する。200℃で15分後に100%未満のホットクリープが特に望ましい。試験試料が15分後に無傷である場合、重りを取り除き、試験試料をオーブンから取り出して室温に放冷した。冷却後の試験試料の残留伸びを測定した。また、室温下での残留伸びは、200℃で測定したホットクリープ値の15%未満であるべきである。
【0083】
メルトフローレート(230℃、2.16キログラム(kg)、「MFR」)試験法:プロピレンベース(コ)ポリマーの場合、230℃/2.16kgの条件を使用して、ASTM D1238-13に従って測定され、以前は「条件E」として知られ、MFRとしても知られていた。結果を、10分当たりの溶出したグラム単位(g/10分)または1.0分当たりのデシグラム(dg/1分)で報告する。10.0dg=1.00g。
【0084】
メルトインデックス(190℃、2.16キログラム(kg)、「I」)試験法:エチレン系(コ)ポリマーの場合、190℃/2.16kgの条件を使用して、ASTM D1238-13に従って測定され、以前は「条件E」として知られ、Iとしても知られていた。結果を、10分当たりの溶出したグラム単位(g/10分)または1.0分当たりのデシグラム(dg/1分)で報告する。10.0dg=1.00g。
【0085】
スウェットアウト試験法(定性的):ポリエチレンペレットの試料を、架橋助剤と一緒に、別の未使用のプレスシールポリエチレンプラスチックバッグ(ジップロックまたはクリックシールバッグとして知られる)に追加する。バッグをシールする。バッグ中のペレットをプレスする。バッグと内容物を室温で14日間保管する。14日目に、光の下でバッグの表面に残ったオイルの跡をバッグで観察する。オイルトレースは、表面の移行と低い溶解性を示している。バッグの表面のオイルトレースが多くなるほど、架橋助剤のスウェットアウトが多くなる。オイルトレースを、なし、非常に少ない、少し、または明らか(少し以上)として特徴付けることにより、スウェットアウトの進行量をランク付けする。
【実施例
【0086】
EBCポリオレフィン化合物(A1):45重量%の結晶化度、0.92g/cmの密度および2g/10分のメルトインデックス(I)を有する低密度ポリエチレン(LDPE)製品番号DXM-446で、The Dow Chemical Companyから入手する。
【0087】
EBCポリオレフィン化合物(A2):12重量%の結晶化度、0.88グラム/cmの密度およびASTM D1646により決定した125℃での25ムーニー粘度ML1+4を有するエチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)コポリマー製品番号NORDEL 4725で、The Dow Chemical Companyから入手する。
【0088】
EBCポリオレフィン化合物(A3):16重量%の結晶化度、0.868g/cmの密度、および0.5g/10分のメルトインデックス(I)を有するエチレン-オクテン(POE)コポリマー製品番号ENGAGE8150で、The Dow Chemical Companyから入手する。
【0089】
アルキレン官能性単環式オルガノシロキサン(B1):テトラメチル-テトラビニル-シクロテトラシロキサン(ViD4)を、The Dow Chemical Companyから入手する。
【0090】
化合物(A1)~(A3)には、酸化防止剤と安定剤は含まれていない。
【0091】
炭素系架橋助剤(C1):トリメチロールプロパントリメチルアクリレート(TMPTMA)。
【0092】
炭素系架橋助剤(C2):トリアリルイソシアヌレート(TAIC)。
【0093】
比較例1~9(CE1~CE9):比較EBC配合物CE1~CE9:事例が表に後述され得るように、155℃の配合温度、毎分60~65回転(rpm)のローター速度を使用するバンバリー配合機でLDPE(A1)、EPDM(A2)、またはPOE(A3)と、炭素系架橋助剤なしで、または炭素系架橋助剤(C1)または(C2)とを溶融混合し、その後、空冷で架橋助剤マスターバッチの溶融物を押し出して、押し出された架橋助剤マスターバッチを生成し、押し出された架橋助剤マスターバッチをペレット化して、それぞれペレットとしてCE1~CE9の比較EBC配合物を生成する。組成データについては、表1を参照されたい。
【0094】
比較例AおよびI(CE(A)~CE(I)):比較硬化ポリオレフィン生成物は、比較配合物CE1~CE9の異なるものを120℃で別々にホットプレスし、配合物を厚さ1mmのシートとして成形し、その後、キログラムあたり100キロジュール(kJ/kg)の電子ビームの照射線量でシートを硬化させて、それぞれCE(A)~CE(I)の比較硬化生成物を得ることにより調製した。特性データについては、表1を参照されたい。
【0095】
本発明の実施例1~5(IE1~IE5):本発明のEBC配合物1~4。事例が表に後述され得るように、155℃の配合温度、60~65回転(rpm)毎分のローター速度を使用するバンバリー配合機でLDPE(A1)、EPDM(A2)、またはPOE(A3)と、ケイ素系架橋助剤(B1)を溶融混合し、その後、空冷でEBC配合物の溶融物を押し出し、押し出されたEBC配合物を得て、押出されたEBC配合物をペレット化して、それぞれペレットとしてIE1~IE5のEBC配合物を得る。組成データについては、表2を参照されたい。
【0096】
本発明の実施例A~E:本発明の硬化ポリオレフィン生成物IE(A)~IE(E)は、IE1~IE5のEBC配合物をキログラムあたり100キロジュール(kJ/kg)の電子ビームを照射してそれぞれ硬化し、それぞれ硬化ポリオレフィン生成物IE(A)~IE(E)を得ることによって調製した。特性データについては、表2を参照されたい。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
表1および2のホットクリープデータは、本発明のEBC配合物が、200℃で改善された(減少した)ホットクリープを有する本発明の硬化ポリオレフィン生成物を与える硬化において、比較EBC配合物から調製された比較硬化ポリオレフィン生成物よりも、著しく良好であることを示す。本発明のEBC配合物はまた、比較のEBC配合物が有するTAIC(C1)またはTMPTMA(C2)のスウェットアウトよりもViD4(B1)のより少量のスウェットアウトを有し、比較EBC配合物の同じLDPE、EPDM、またはPOEにおける(C)炭素系架橋助剤の装填よりも、本発明のEBC配合物において、LDPE、EPDM、またはPOEのようなEBCポリオレフィン化合物への(B)のより高い装填を可能にする利点がある。本発明のEBC配合物における(B)のより高い装填は、その電子ビーム硬化の効率を改善(増加)し、より低い線量の吸収電子ビーム照射を使用して所定の硬化状態を達成するか、より大きな硬化状態(より多くの架橋量)を与える同じ線量の吸収電子ビーム照射を可能にする。
なお、本発明は、以下の実施形態を包含するものとする。
[1]構成成分(A)および(B)を含む(電子ビーム)硬化性(EBC)配合物であって、
(A)示差走査熱量測定法(DSC)を使用する結晶化度試験法で測定した0~50重量パーセント(重量%)未満の結晶化度を有し、かつ/またはASTM D792-13、方法Bで測定した0.930グラム/立方センチメートル(g/cm )以下の密度を有する、(電子ビーム)硬化性(EBC)ポリオレフィン化合物と、
(B)式(I):[R ,R SiO 2/2 (I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンであって、式中、下付き文字nは3以上の整数であり、各R は独立して、(C -C )アルケニルまたはH C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各R は独立して、H、(C -C )アルキル、フェニル、またはR である、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンと、を含み
(A)は、構成成分(A)および(B)の合計重量の50.0~99.99重量%であり、(B)は50.0~0.01重量%であり、
ただし、前記EBC配合物は、ホスファゼン塩基、50重量%以上の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィン、および有機過酸化物の各々を含まない、EBC配合物。
[2]前記(A)EBCポリオレフィン化合物が、下記制限(i)~(xv):(i)示差走査熱量測定(DSC)を使用する結晶化度試験法で測定した>0~50.0重量%未満の結晶化度;(ii)ASTM D792-13、方法Bで測定した0.930g/cm 以下の密度;(iii)(i)および(ii)の両方;(iv)メルトインデックス試験法に従って測定した、10分あたり0.1~20グラム(g/10分)のメルトインデックス(I 、190℃/2.16kg荷重)、かつポリエチレンである;(v)メルトフローレート試験法に従って測定した、0.5~20g/10分のメルトフローレート(MFR)(230℃/2.16kg荷重)、かつポリプロピレンである;(vi)モノモーダルな分子量分布(MWD);(vii)マルチモーダルなMWD;(viii)構成成分(A)および(B)の合計重量が前記(電子ビーム)硬化性配合物の50~100重量%である;(ix)前記(A)EBCポリオレフィン化合物は、0.910~0.925g/cm の密度を有する低密度ポリエチレン(LDPE)である;(x)前記(A)EBCポリオレフィン化合物は、0.910~0.925g/cm の密度を有する線状低密度ポリエチレン(LLDPE)である;(xi)前記(A)EBCポリオレフィン化合物は、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-1-ブテンゴム(EBR)、およびエチレン-1-オクテンゴム(EOR)から選択されるポリエチレンエラストマーである;(xii)前記(A)EBCポリオレフィン化合物はエチレン/(C -C 20 )α-オレフィン)コポリマーである;(xiii)前記(A)EBCポリオレフィン化合物はエチレン-プロピレンコポリマー(EPP)である;(xiv)前記(A)EBCポリオレフィン化合物はエチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)コポリマーである;ならびに(xv)前記(A)EBCポリオレフィン化合物は、(i)~(xiv)のいずれか2つ以上の組み合わせである、のいずれか1つによって特徴付けられる、前記[1]に記載の(電子ビーム)硬化性配合物。
[3]前記(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの下付き文字nが3であり、前記EBC配合物が、下記制限(i)~(x):(i)各R は独立して、(C -C )アルケニルであり、各R は独立して、H、(C -C )アルキル、または(C -C )アルケニルである;(ii)各R はビニルであり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(iii)各R はビニルであり、各R はメチルである;(iv)各R はアリルであり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(v)各R はアリルであり、各R はメチルである;(vi)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各R は独立して、H、(C -C )アルキル、または(C -C )アルケニルである;(vii)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はHであり、下付き文字mは3であり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(viii)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はメチルであり、下付き文字mは3であり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(ix)前記EBC配合物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびこれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を24重量%以上含有しない;ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のいずれか1つとの組み合わせである、のいずれか1つによって説明される、前記[1]または[2]に記載の(電子ビーム)硬化性配合物。
[4]前記(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの下付き文字nが4であり、前記EBC配合物が、下記制限(i)~(x):(i)各R は独立して、(C -C )アルケニルであり、各R は独立して、H、(C -C )アルキル、または(C -C )アルケニルである;(ii)各R はビニルであり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(iii)各R はビニルであり、各R はメチルである;(iv)各R はアリルであり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(v)各R はアリルであり、各R はメチルである;(vi)各R は独立してH C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各R は独立して、H、(C -C )アルキル、または(C -C )アルケニルである;(vii)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はHであり、下付き文字mは3であり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(viii)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はメチルであり、下付き文字mは3であり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(ix)前記EBC配合物は無機充填剤を24重量%以上含有しない;ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のいずれか1つとの組み合わせである、のいずれか1つによって説明される、前記[1]または[2]に記載の(電子ビーム)硬化性配合物。
[5]前記(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの下付き文字nが5または6であり、前記EBC配合物が、下記制限(i)~(x):(i)各R は独立して、(C -C )アルケニルであり、各R は独立して、H、(C -C )アルキル、または(C -C )アルケニルである;(ii)各R はビニルであり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(iii)各R はビニルであり、各R はメチルである;(iv)各R はアリルであり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(v)各R はアリルであり、各R はメチルである;(vi)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はHまたはメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各R は独立して、H、(C -C )アルキル、または(C -C )アルケニルである;(vii)各R は独立してH C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はHであり、下付き文字mは3であり、各R は、独立して(C -C )アルキルである;(viii)各R は独立して、H C=C(R 1a )-C(=O)-O-(CH -であり、式中、R 1a はメチルであり、下付き文字mは3であり、各R は独立して、(C -C )アルキルである;(ix)前記EBC配合物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を24重量%以上含有しない;ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のいずれか1つとの組み合わせである、のいずれか1つによって説明される、前記[1]または[2]に記載の(電子ビーム)硬化性配合物。
[6]下記任意選択的な構成成分(C)~(O):(C)炭素系架橋助剤(carbon-based coagent);(D)難燃剤;(E)酸化防止剤;(F)加工助剤;(G)着色剤(例えば、カーボンブラック);(H)金属不活性化剤;(I)(不飽和炭素-炭素結合)を含まない加水分解性シラン;(J)腐食防止剤;(K)ヒンダードアミン光安定剤;(L)構成成分(A)とは異なり、かつ50重量%以上の結晶化度を有する半結晶性ポリオレフィンとは異なるエチレン系コポリマーであって、(L)はエチレン/(C -C 20 )α-オレフィンコポリマー、エチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマー、またはプロピレン/エチレン系コポリマーである、エチレン系コポリマー;(M)充填剤;(N)核剤;および(O)トリーイング遅延剤、から独立して選択される少なくとも1つの添加剤も含む、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載の(電子ビーム)硬化性配合物。
[7]前記[1]~[6]のいずれか1項に記載の(電子ビーム)硬化性(EBC)配合物を製造する方法であって、分割された固体形態または溶融形態の前記(A)EBCポリオレフィン化合物と、前記(B)式(I)のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンと、任意の任意選択的な構成成分(C)~(O)と、を一緒に混合して、構成成分(A)、(B)、および任意の任意選択的な構成成分(C)~(O)から本質的になる(電子ビーム)硬化性(EBC)配合物を得ることを含み、ただし、前記方法は、ホスファゼン塩基、結晶化度が50重量%以上の半結晶性ポリオレフィン、および有機過酸化物の各々を含まない、方法。
[8]それを必要とする配合物を電子ビームで硬化させる方法であって、前記[1]~[6]のいずれか1項に記載のEBC配合物、または前記[7]に記載の方法により製造された前記(電子ビーム)硬化性配合物に有効線量の電子ビーム照射を照射して、電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物を得ることを含む、方法。
[9]前記[8]に記載の方法により製造された、電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物。
[10]前記[9]に記載の電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物と、それと機能的に接触する構成要素と、を含む、製品。
[11]導電性コアと、前記導電性コアを少なくとも部分的に囲むポリマー層とを含む被覆導体であって、前記ポリマー層の少なくとも一部分が、前記[9]に記載の電子ビーム硬化ポリオレフィン生成物を含む、被覆導体。
[12]電気を伝導する方法であって、前記[11]に記載の被覆導体の前記導電性コア全体に電圧を印加して、前記導電性コアを通る電気の流れを発生させることを含む、方法。