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特許7169348分解ナフサストリームの選択的水素化脱硫のための触媒、その調製方法、及び分解ナフサの選択的水素化脱硫のためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】分解ナフサストリームの選択的水素化脱硫のための触媒、その調製方法、及び分解ナフサの選択的水素化脱硫のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/236 20060101AFI20221102BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 23/882 20060101ALI20221102BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B01J27/236 M
B01J35/10 301B
B01J37/02 101C
B01J35/02 C
B01J35/08 B
B01J23/882 M
C10G45/08 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020519367
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 GB2018052831
(87)【国際公開番号】W WO2019069080
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】102017021445-1
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】591005349
【氏名又は名称】ペトロレオ ブラジレイロ ソシエダ アノニマ - ペトロブラス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120684
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 三次
(72)【発明者】
【氏名】チャロ,サンドラ シャーリー シメノ
(72)【発明者】
【氏名】ゾーチン,ジョゼ ルイス
(72)【発明者】
【氏名】フォンセカ,デイズ ロバット
(72)【発明者】
【氏名】アルメイダ リラ コレア,アニルザ デ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05851382(US,A)
【文献】米国特許第05340466(US,A)
【文献】特表2008-504115(JP,A)
【文献】特開昭63-194732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C10G 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出物の形を有する分解ナフサストリームの選択的水素化脱硫のための触媒であって、
(i)ハイドロタルサイトに基づく担体と、
(ii)その中に分散された脱硫金属を含み、クラウンを形成する前記担体に結合する外層と、
を備え、
前記押出物の活性相を形成する前記脱硫金属は、コバルト及びモリブデンであって、
モリブデンは、前記押出物内に分散され、コバルトは、前記押出物の内部に存在せず、前記クラウンの内側部分で最多となる、触媒。
【請求項2】
前記ハイドロタルサイトに基づく担体は、マンガン、亜鉛、銅、コバルト、又はニッケルから選択される1以上のM+2元素及びアルミニウム又はランタンから選択されるM+3元素を、活性相を形成する前記脱硫金属以外の金属として、さらに含有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記ハイドロタルサイトに基づく担体は、マグネシウム、アルミニウム、ランタン、マンガン、銅、及び/又は亜鉛を含有する、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記触媒における、MoO及びCoOと表現されるコバルトの前記活性相の含有量は、前記触媒の重量に基づいて、3乃至20wt%であって、CoO/(CoO+MoO)の金属の比率を0.1乃至0.7を維持する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
前記活性相を含む前記外層の厚さは、500μm以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
前記担体は、N吸着により測定される比表面積の数値が100乃至300mgで、細孔容積が0.2乃至1cm/gで、平均孔径が4乃至12nmで、結晶子のサイズが25乃至55nmである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
a)ハイドロタルサイトの押出物を得る工程と、
b)前記モリブデンの溶液及び前記コバルトの溶液のpHを1乃至5の数値に酸で調整する工程と、
c)モリブデンの溶液で、湿潤点にて前記押出物を含浸する工程と、
d)コバルトの溶液で、湿潤点にて工程c)で得られた前記押出物を含浸する工程と
)工程d)で得られた前記触媒を1乃至6時間乾燥させる工程と、
f)工程e)で得られた前記触媒を、少なくとも1時間、350乃至600°Cの温度で「か焼」する工程と、
を備える初期湿潤含浸法であって、請求項1乃至6のいずれか1つに定義される触媒を調製する方法。
【請求項8】
前記モリブデンの溶液及び前記コバルトの溶液の温度は、5分間乃至1時間の期間、室温乃至最高100°Cに維持される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程c)及びd)の初期湿潤含浸法は同時に実施される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
(a)請求項1乃至6のいずれか1項に定義される前記水素化脱硫触媒を含有する水素化脱硫ゾーン内でオレフィンを含有する分解ナフサストリームを反応させる工程と、
(b)硫黄濃度が減少した前記ナフサストリームを回収する工程と、
を備え、オレフィンが過飽和せずに、オレフィンを含有する分解ナフサストリームを選択 的に水素化脱硫するプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解ナフサストリームの選択的水素化脱硫のための触媒、前述の触媒の調製方法、及びそれを採用した分解ナフサの選択的水素化脱硫のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染物質の放出規制を狙った環境関連法規は、石油由来のストリーム内の汚染物質の前駆体のレベルを下げるプロセスの継続的技術開発の動機となっている。石油及び石油派生物に通常存在する化合物の中でも、硫黄を含有するものは環境規制の主なターゲットの1つである。
【0003】
これに関連して、可能な限りディーゼル内の硫黄含有量を、10ppm、さらに国によっては5ppmに達するように段階的に減らす、主にディーゼル内の硫黄含有量を減らすことを担う、すでに確立済みの水素処理法の技術は特筆に値する。ガソリンの場合、許容値は50ppm乃至30ppmである。
【0004】
硫黄は、硫黄化合物の水素化脱硫(HDS)、すなわち水素及び触媒の存在下で発生し、水素化脱窒素反応(HDN)及びオレフィン及び芳香族の水素化反応(HYD)等の一連の並発反応を含む反応によって除去される。
【0005】
精製所で生成される一連のナフサストリームで構成されるガソリン特有の場合を考慮すると、各ストリームの硫黄含有物の寄与を考慮に入れなくてはならないが、例えば、オクタン価等の仕様にも準拠しなくてはならない他の品質パラメータも存在する。ガソリンのオクタン価は、オットーサイクルエンジン用の燃料としてその効率に直接的に関連する重要な仕様である。この場合、流動接触分解(FCC)により生成されたナフサストリーム内に典型的に存在するオレフィンが主に、ガソリンのオクタン価に寄与しており、オレフィン化合物の平均含有量は最大40%及び硫黄は約1500ppmである。
【0006】
そのため、FCCからのナフサのHDSのプロセスの間、HYDの並発反応は、この反応ではオレフィンが水素化され、ガソリンを構成するナフサストリームのオクタン価を下げるため、好ましくない。これを可能にするため、HDSによる硫黄化合物の高い変換度とHYDによるオレフィンの低い変換度とを組み合わせることが可能な選択性触媒が使用される。
【0007】
これらのプロセスで用いられる触媒は、好適には、硫化物及びコバルト(Co)によって促進されたモリブデン(Mo)の硫化物であり、初期湿潤含浸法により生成された、アルミナ、アルカリ金属でドープされたアルミナ、又は基本的特性を有する担体に担持されている。これらの触媒の狙いは、最小限のオレフィンの水素化反応(HYD)で硫黄化合物を除去し、処理製品のオクタン価の損失を制限することである。
【0008】
この方向で、先行技術は、水素化脱硫触媒及びナフサストリームの脱硫プロセスによってオレフィン化合物の飽和を最小限に抑える試みを述べている。
【0009】
米国特許第4,132,632号(特許文献1)及び米国特許第4,140,626号(特許文献2)の文献は、酸化マグネシウムを少なくとも70%含有する酸化物に担持される選択性CoMo触媒を提案している。米国特許第5,340,466号(特許文献3)、米国特許第5,441,630号(特許文献4)、及び米国特許第5,459,118号(特許文献5)の文献は、高い比表面積及び細孔容積を持つ、Mg及びAlのハイドロタルサイトに基づいた担体を使用したCoMo触媒を有した初めての特許である。これらの触媒は、モデルフィードを使用した検査においてCoMo/アルミナ又は CoMo/マグネシア-アルミナよりも選択性があると証明された。米国特許第5,851,382号(特許文献6)では、活性相と担体を混合し、その後押出すことで、1つの工程でKOを含有するCoMo/ハイドロタルサイト触媒を調製する。これらの触媒は、それより前の特許のCoMoK/ハイドロタルサイト+アルミナ触媒よりも選択性があることがわかった。フィードは、約28%のオレフィン、1500ppmの総硫黄、及び20ppmの総窒素化合物を含有した。これら特許では、ハイドロタルサイトは、二価金属(Mg)と、Al等の三価金属とから構成される。例として、炭酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩を補償イオンとした、MgAl、CaAl、ZnCr、NiAl、MgFe、及びNiMgのハイドロタルサイトが挙げられた。続いて、1乃至9で変化するCo(Ni):Moの比率を持つNiMo及びCoMoの触媒が、米国特許第5,358,633号(特許文献7)の文献に提示され、第I族アルカリ金属又はランタノイド及び炭素質材料を含有するアルミナに担持されるCoMo触媒が、米国特許第5,423,976号(特許文献8)の文献に提示されている。米国特許第5,348,928号(特許文献9)は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びそれらの混合体に担持された押出CoMo触媒にマンガン及びアルカリ金属を組み込んでいる選択性触媒の生成をクレームしている。著者によると、活性相の組み込み後にアルカリ金属で含浸することは、より水素化している活性部位を中和するためにより効率的であるだろう。実際に、完成した触媒にアルカリ金属を追加することは、触媒部位を汚染する結果となる。言い換えると、追加された金属の部分はその機能を失う。完成した触媒は、1.3mmの円筒状押出物に対し、少なくとも225m/gの比表面積、4乃至8nmの平均孔径、2%の摩耗減量、及び少なくとも3.6daNの機械的強度を持たなくてはならない。
【0010】
米国特許第6,692,635号(特許文献10)は、低い硫黄含有量及び最小限のオレフィンの水素化反応を持つナフサを得る2段階プロセスを説明している。このプロセスでは、触媒は、25乃至350m/gの比表面積を持つアルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、チタニア、酸化マグネシウム、又は酸化亜鉛、及びそれらの混合体に担持されたCoMo硫化物であってもよい。
【0011】
米国特許第5,985,136号(特許文献11)及び米国特許第6,013,598号(特許文献12)は、6乃至20nmの平均細孔径、MoOのO/gの800乃至2800マイクロモルの値でOの化学吸着により測定される、部位の分布で0.5乃至3.10-4g MoO/mの分布を遵守しなくてはならないMoの制御された分散で定義される特性を持つアルミナ、シリカ、又はシリカ-アルミナに担持された選択的CoMoS触媒の生成をクレームしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第4,132,632号明細書
【文献】米国特許第4,140,626号明細書
【文献】米国特許第5,340,466号明細書
【文献】米国特許第5,441,630号明細書
【文献】米国特許第5,459,118号明細書
【文献】米国特許第5,851,382号明細書
【文献】米国特許第5,358,633号明細書
【文献】米国特許第5,423,976号明細書
【文献】米国特許第5,348,928号明細書
【文献】米国特許第6,692,635号明細書
【文献】米国特許第5,985,136号明細書
【文献】米国特許第6,013,598号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
分解ナフサを水素化脱硫するための触媒の使用は、オレフィンの水素化反応を犠牲にして硫黄の除去の反応に対する高い選択性を有する差別化された製法が必要になることが上述から推定できる。活性部位の量及びタイプ、並びにこれらの触媒のため担体の特性の制御は、このために極めて重要である。
【0014】
現在では、水素化脱硫用の商業的に成功した触媒が入手可能であるものの、未だに、高レベルの脱硫と最小限のオレフィンの飽和を組み合わせることができる改善された触媒が必要である。
【0015】
以下にさらに詳細に説明するように、本発明は、実用的で効率的な方法で、この先行技術の既存の要求に応える。
【0016】
本発明は、無機酸化物に基づく担体と、その中に分散された脱硫金属を含み、クラウンを形成する前記担体に結合する外層とを備える押出物の形を有する分解ナフサストリームの選択的水素化脱硫のための触媒に関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そのため、本発明は、
押出物の形を有する分解ナフサストリームの選択的水素化脱硫のための触媒であって、
ハイドロタルサイトに基づく担体と、
その中に分散された脱硫金属を含み、クラウンを形成する前記担体に結合する外層と、
を備え、
前記押出物の活性相を形成する前記脱硫金属は、コバルト及びモリブデンであって、
モリブデンは、前記押出物内にほぼ均一に分散し、コバルトは、前記押出物の内部に存在せず、前記クラウンの内側部分で最多となる、触媒を提供する。
【0018】
本発明はまた、初期湿潤含浸法による前記触媒の調製及びそれを採用した分解ナフサを選択的に水素化脱硫するためのプロセスに関する。
【0019】
そのため、本発明は、
ハイドロタルサイトの押出物を得る工程と、
モリブデンの溶液で、湿潤点にて前記押出物を含浸する工程と、
コバルトの溶液で、湿潤点にて工程b)で得られた前記押出物を含浸する工程と、
前記含浸溶液のpHを1乃至10、好適には1乃至5、より好適には3の数値に酸で調整する工程と、
工程d)で得られた前記触媒を1乃至6時間、好適には2時間、乾燥させる工程と、
工程e)で得られた前記触媒を、少なくとも1時間、350乃至600°C、好適には450°Cの温度で「か焼」する工程と、
を備える初期湿潤含浸法であって、本発明による触媒を調製する方法を提供する。
【0020】
本発明は、さらに、
本発明による前記水素化脱硫触媒を含有する水素化脱硫ゾーン内でオレフィンを含有する分解ナフサストリームを反応させる工程と、
硫黄濃度が減少した前記ナフサストリームを回収する工程と、
を備える、オレフィンが過飽和せずに、オレフィンを含有する分解ナフサストリームを選択的に水素化脱硫するプロセスを提供する。
【0021】
下記に提供される詳細な説明は、本発明の実施形態を表す添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】Znを含有するCoMo/ハイドロタルサイト押出物(A及びC)及びCoMo/ハイドロタルサイト触媒(B)のサンプルの上面図を60倍で示す。
図2】実施例1で使用された押出物粒子内の金属(Mo及びCo)の分布を放射状に示す。
図3】実施例3の押出物粒子内の金属(Mo及びCo)の分布を放射状に提示する。
図4】実施例1及び2で使用される触媒の選択性のカーブを市販の触媒KF-742及びKF-752と比較して提示する。
図5】実施例3及び4で使用される触媒の選択性のカーブを市販の触媒KF-742及びKF-752と比較して提示する。
図6】実施例5及び6で使用される触媒の選択性のカーブを市販の触媒KF-742及びKF-752と比較して提示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
先行技術には様々な水素化脱硫触媒が存在するが、これらは、ナフサで典型的に見られるものよりも高い沸点の炭化水素を脱硫するための能力に加え、存在し得るいかなるオレフィンをも水素化する。ナフサは、環境的な理由から脱硫しなくてはならないが、オレフィンは、ガソリンのオクタン価に貢献するため、飽和されてはならない。そのため、脱硫されたナフサ中に可能な限り最大限のオレフィン濃度を留めることが非常に望ましい。ナフサの脱硫に対する多くのアプローチは、穏やかな作業条件と、選択的に硫黄を除去するがオレフィンの大部分は保護する触媒とを使用した従来の水素化精製プロセスを修正することに着目している。
【0024】
本発明に関連して、金属電荷が触媒の外層に制限される水素化精製触媒は、オレフィンの水素化反応と比較して水素化脱硫に対して、触媒内に金属が均一に分散している触媒よりも、より選択性があることが観察された。
【0025】
有利には、金属が押出物の外層に圧倒的に分散されている、前述の分散を有する触媒の使用は、硫黄化合物と活性相との間のより迅速な接触を促し、オレフィンの過度の水素化反応(HYD)の好ましくない反応を最小限に抑え、水素化脱硫(HDS)の反応を実行する。
【0026】
このように、第1実施形態では、本発明は、無機酸化物に基づく担体と、前述の担体に結合する外層とを備える、押出物の形を有する分解ナフサストリームの選択的水素化脱硫のための触媒を提供し、外層は、その中に分散された脱硫金属を含み、クラウンを形成する。
【0027】
「クラウン」という用語は、脱硫金属の大部分が分散されている触媒の領域を説明するために使用される。脱硫金属は、押出物の外層内に集中しているので、脱硫金属の「クラウン」は触媒の外側部に位置している。
【0028】
さらに具体的に言うと、本発明の水素化脱硫触媒は、ハイドロタルサイトに基づく担体を備える。特に、このような担体は、マンガン、亜鉛、銅、コバルト、又はニッケル等、さらに好適にはマンガン、亜鉛、銅、又はコバルトの1以上のM+2元素及びアルミニウム、ランタン等、さらに好適にはアルミニウムのM+3元素から構成されるアニオン性粘土タイプの層状化合物から出発して得られる。ハイドロタルサイトに基づく無機酸化物担体内の元素のモル比は、変化してもよい。
【0029】
さらにいっそう好適には、マグネシウム及びアルミニウムが担体内に使用され、マグネシウム対アルミニウムの比率が、これらの化合物の塩基性特性を決定し、この比率における増加はHDS/HYD選択性を増加させる。
【0030】
ハイドロタルサイトに基づいた担体に結合する外層は、その中に分散された脱硫金属を含み、クラウンを形成する。前述の金属は、好適にはコバルト及びモリブデンであり、個別に押出物内に分散している。
【0031】
さらに具体的に言うと、クラウンに向かってわずかに分散が増加しているが、モリブデンは押出物内にほぼ均一に分散する一方、コバルトは押出物の内部には存在せず、クラウンの内側部で最多となる。
【0032】
コバルトは、例えば、硝酸コバルトの形態で通常使用される一方で、モリブデンは、例えば、ヘプタモリブデン酸アンモニウム又はMoOの形態で用いられる。
【0033】
触媒の活性相の含有物は、約3乃至20wt%のMoO、好適には8乃至12%と、金属CoO/(CoO+MoO)の比率が0.1乃至0.7、好適には0.2のCoOと表されるコバルトである。
【0034】
言い換えると、触媒は、コアシェル型の押出物(金属の集中が押出物の体積の外層にある)内での金属の分布を有し、層の厚さは、金属前駆体との接触時間の関数として、500μmの外層の厚さの最大値まで変化してもよい。
【0035】
このように、硫黄化合物は、最初の100乃至200μmの押出物内で迅速に拡散して反応し、残りの粒子、ほとんどがコバルトの存在しないところに存在するモリブデンは、所望の通りに、水素化活性がほとんどない。
【0036】
触媒は、X線回折で調べると、活性相の特徴的なピークが存在しないことに基づいて、金属相の良好な分布を示す。担体のテクスチャ特性は、活性相の分散を決定し、N吸着によって測定された比表面積の数値は100乃至300m/g、とりわけ、220m/gで、細孔容積が0.2乃至1cm/gで、平均孔径が4乃至12nmで、結晶子のサイズが25乃至55nmで変化する。触媒はまた、固定床反応器でのプロセスに適した良好な機械的強度を有する。
【0037】
押出物内における金属のこの分布は、特定の特性を付与し、EDSプローブ(エネルギー分散X線分光法)と組み合わされた走査電子顕微鏡(SEM)によって観測されてもよく、触媒の外観は添付の図1で見ることができる。
【0038】
第2実施形態では、本発明は、a)ハイドロタルサイトの押出物を得る工程と、b)含浸溶液のpHを酸で調整する工程と、c)モリブデンの溶液で、前述の押出物を初期湿潤含浸する工程と、d)コバルトの溶液で、工程c)で得られた押出物を初期湿潤含浸する工程と、e)工程d)で得られた触媒を乾燥させる工程と、f)前述の触媒を「か焼」する工程と、を備える前述の触媒の調製方法に関する。
【0039】
特に、本発明の触媒は、円筒状、三葉形状、又は四葉形状であってもよい押出物に担持され、好適には、硝酸コバルトが添加された、アンモニア性溶液内のヘプタモリブデン酸アンモニウム又はMoOの溶液から出発する。含浸溶液のpHは、酸、好適には濃縮HNOによって調整され、1乃至10、好適には1乃至5で変化してよく、さらに好適には3であってもよい。
【0040】
含浸溶液の温度は、室温乃至100°Cに適切に維持され、好適には60°Cに加熱される。
【0041】
含浸溶液の濃度は、完成した触媒が、前述の活性相の含有量を有するようになっている。さらに具体的に言うと、押出物は、5分乃至1時間、好適には10分間である、決まった時間、60°Cでコンクリートミキサタイプのミキサで金属の溶液と接触させられる。得られた触媒は、1乃至6時間、好適には2時間、120°Cで適切に乾燥させられ、さらに1時間、350乃至600°C、好適には450°Cで適切に「か焼」される。
【0042】
前述の本発明の方法は、分離した工程で実施されてもよいが、好適には、b)とc)の工程を組み合わせて、同時の初期湿潤含浸により実施される。
【0043】
このように得られた触媒は、コアシェル型の押出物内の金属の分布によって促進される、純粋な又は不活性物質によって希釈されたHとのランで分解ナフサの水素化脱硫の反応において高い選択性を示す。金属の分布は、HTC押出物の含浸の工程の条件を適切に調整することにより制御され、こうして、無孔不活性担体にアルミナの連続層を調製することに伴う困難を回避する。
【0044】
第3実施形態では、本発明は、本明細書中に説明されている方法により得られる触媒を採用した、オレフィンの過飽和なしにオレフィンを含有する分解ナフサストリームの選択的水素化脱硫のためのプロセスに関する。前述のプロセスは、
(a)本発明の水素化脱硫触媒を含有する水素化脱硫ゾーン内でオレフィンを含有する分解ナフサストリームを反応させる工程と、
(b)硫黄濃度が減少したナフサストリームを回収する工程と、を備える。
【0045】
結果的に、高レベルの脱硫と、最小限のオレフィンの飽和とを有する分解ナフサストリームを得ることができる。
【0046】
本発明の選択性触媒は、約1000乃至1500mg/kgの総硫黄、約26%の総オレフィン、及び総窒素として200mg/kg程度の高含有量の窒素化化合物を含有する重質ナフサフィードに特に適している。
【0047】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を示す。
【実施例
【0048】
触媒には、マイクロ反応器装置及びパイロットプラントでの触媒評価が行われた。実験条件は、圧力が15kgf/cm乃至30kgf/cm、温度が250乃至320°C、H/フィード比率が200NL/L乃至450NL/L、LHSVが1.1乃至4h-1であった。作業条件、温度、及び圧力は、フィードが反応器内で100%蒸発するように選択された。触媒は、1.6mm径を有する円筒状押出物の形で使用された。
【0049】
表1に提示されているような一般的な特性を持つ、分解ナフサ100%で構成されるフィードは、平均700乃至1000mg/kgの総硫黄に含有され、主にアルキルチオフェン及びアルキルベンゾチオフェンタイプの化合物からなり、オレフィン含有量は25乃至45%で変化し、100乃至220mg/kgの総窒素として表される窒素化合物、20°/4での密度は0.798乃至0.805、初期沸点は15乃至70°C、最終沸点は250乃至262°Cである。触媒は、水素化ナフサで希釈されたジメチルジスルフィド(DMDS)で、または直接蒸留により、1%の硫黄濃度で硫化された。硫化工程後、触媒には、300時間の期間、検査フィード、分解ナフサでの安定化工程が行われた。
【表1】
【実施例1】
【0050】
MoOの最終濃度が8%及びCoO/(CoO+MoO)比率が0.13とするために、Mo及びCoの塩の溶液が、初期湿潤含浸法により、Mg:Al:Zn(1:1.1:0.1モル)の押出物に添加された。ロータリーエバポレータ内で、溶液と触媒とが10分間、60°Cで接触させられ、その後、2時間、120°Cで乾燥させられ、1時間、450°Cで「か焼」された。表2にテクスチャ特性が示されている。触媒の活性相は、コアシェル形態で、走査電子顕微鏡(SEM)でEDSにより観測された金属の分布は図2に示されている。アルミニウム、マグネシウム、及び亜鉛は、粒子内に均一に分散されたままである。図2からわかるように、モリブデンは、縁に向かって分布がわずかに増加する傾向がある一方で、Coは粒子内部に存在せず、クラウンの内側リングで最多となっている。このように得られた触媒は、重質分解ナフサをフィードとして、触媒評価に提出された。得られた結果は、表3に示されている。図4は、市販の触媒KF-742及びKF-752と比較した、得られた触媒(触媒A)の選択性のカーブを示す。分解ナフサでの検査は、19kgf/cmで、LHSVは2h-1で、H/フィード比率は200NL/Lで実施された。
【表2】
【表3】
【実施例2】
【0051】
MoOの最終濃度が9%及びCoO/(CoO+MoO)比率が0.25とするために、Mo及びCoの塩の溶液が、初期湿潤含浸法により、Mg:Al:Zn(1:1.1:0.1モル)の押出物に添加された。ロータリーエバポレータ内で、溶液と触媒とが10分間、60°Cで接触させられ、その後、2時間、120°Cで乾燥させられ、1時間、450°Cで「か焼」された。前述の表2にテクスチャ特性が示されている。このように得られた触媒は、重質分解ナフサをフィードとして、触媒評価に供された。得られた結果は、表4に示されている。図4は、市販の触媒KF-742及びKF-752と比較した、得られた触媒(触媒B)の選択性のカーブを示す。分解ナフサでの検査は、19kgf/cmで、LHSVは2h-1で、H/フィード比率は200NL/Lで実施された。
【表4】
【実施例3】
【0052】
MoOの最終濃度が12%及びCoO/(CoO+MoO)比率が0.23とするために、Mo及びCoの塩の溶液が、初期湿潤含浸法により、Mg:Al(1.1モル)の押出物に添加された。ロータリーエバポレータ内で、溶液と触媒とが10分間、60°Cで接触させられ、その後、120°Cで乾燥させられ、45°Cで「か焼」された。前述の表2にテクスチャ特性が示されている。触媒の活性相は、コアシェル形態で、金属の分布は走査電子顕微鏡(SEM)でEDSにより観測された。アルミニウム及びマグネシウムは、粒子内に均一に分散されたままである。図3からわかるように、モリブデンは、縁に向かって分布がわずかに増加する傾向がある一方で、Coは粒子内に非常に低い含有量しか存在せず、内側リングで最多となっている。このように得られた触媒は、重質分解ナフサをフィードとして、触媒評価に提出された。得られた結果は、表4に示されている。
【0053】
図5は、市販の触媒KF-742及びKF-752と比較した、得られた触媒(触媒C)の選択性のカーブを示す。分解ナフサでの検査は、19kgf/cmで、LHSVは2h-1で、H/フィード比率は200NL/Lで実施された。
【表5】
【実施例4】
【0054】
MoOの最終濃度が12%及びCoO/(CoO+MoO)比率が0.23とするために、Mo及びCoの塩の溶液が、初期湿潤含浸法により、Mg:Al(0.45モル)の押出物に添加された。ロータリーエバポレータ内で、溶液と触媒とが10分間、60°Cで接触させられ、その後、120°Cで乾燥させられ、450°Cで「か焼」された。前述の表2にテクスチャ特性が示されている。このように得られた触媒は、重質分解ナフサをフィードとして、触媒評価に提出された。得られた結果は、エラー!参照元不明に示されている。図5は、市販の触媒KF-742及びKF-752と比較した、得られた触媒(触媒D)の選択性のカーブを示す。分解ナフサでの検査は、19kgf/cmで、LHSVは2h-1で、H/フィード比率は200NL/Lで実施された。
【表6】
【実施例5】
【0055】
MoOの最終濃度が12%及びCoO/(CoO+MoO)比率が0.23とするために、Mo及びCoの塩の溶液が、初期湿潤含浸法により、アルミナの押出物に添加された。ロータリーエバポレータ内で、溶液と触媒とが10分間、60°Cで接触させられ、その後、120°Cで乾燥させられ、450°Cで「か焼」された。前述の表2にテクスチャ特性が示されている。このように得られた触媒は、重質分解ナフサをフィードとして、触媒評価に供された。得られた結果は、表に示されている。図6は、市販の触媒KF-742及びKF-752と比較した、得られた触媒(触媒E)の選択性のカーブを示す。分解ナフサでの検査は、19kgf/cmで、LHSVは2h-1で、H/フィード比率は200NL/Lで実施された。
【表7】
【実施例6】
【0056】
MoOの最終濃度が8%及びCoO/(CoO+MoO)比率が0.3とするために、Mo及びCoの塩の溶液が、初期湿潤含浸法により、アルミナの押出物に添加された。ロータリーエバポレータ内で、溶液と触媒とが10分間、60°Cで接触させられ、その後、120°Cで乾燥させられ、450°Cで「か焼」された。表2にテクスチャ特性が示されている。このように得られた触媒は、重質分解ナフサをフィードとして、触媒評価に供された。得られた結果は、表に示されている。図6は、市販の触媒KF-742及びKF-752と比較した、得られた触媒(触媒F)の選択性のカーブを示す。分解ナフサでの検査は、19kgf/cmで、LHSVは2h-1で、H/フィード比率は200NL/Lで実施された。
【表8】
【実施例7】
【0057】
市販のCoMo触媒、KF-742も、比較のために評価された。得られた結果は、表に示されている。図4乃至6は、本発明による触媒と比較して、この市販の触媒の選択性のカーブを示している。
【表9】
【実施例8】
【0058】
市販のCoMo触媒、KF-752も、比較のために評価された。得られた結果は、表9に示されている。図4乃至6は、本発明による触媒と比較して、この市販の触媒の選択性のカーブを示している。
【表10】
【0059】
前述の例から推定し得るように、本発明のコアシェル型の押出物内に金属の分布を有するハイドロタルサイトに担持されたCoMo触媒は、市販の参考用触媒よりも高い活性及び選択性を有する。結果的に、分解ナフサストリームの水素化脱硫のプロセスでこれらを使用することは、高レベルの分解ナフサの脱硫を最小限のオレフィンの飽和と共にもたらす。
【0060】
このように、分解ナフサストリーム内の硫黄濃度を減らし、それによって、有機硫黄化合物に富んだ自動車用燃料の使用によって生じる二酸化硫黄(SO)の放出を減らす。しかし、燃料内に存在するオレフィンの水素化反応が最小限であるため、製品のオクタン価にそれほど影響を与えない。
【0061】
本願の保護範囲に収まる様々なバリエーションが可能である。このことは、本発明が前述の特定の構成/実施形態に限定されない事実を強調する。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6