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特許7169354変性Y型分子篩及び製造方法、水素化分解触媒及び製造方法、並びに、炭化水素油の水素化分解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】変性Y型分子篩及び製造方法、水素化分解触媒及び製造方法、並びに、炭化水素油の水素化分解方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/24 20060101AFI20221102BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 29/16 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20221102BHJP
   C10G 47/20 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C01B39/24
B01J37/00 D
B01J37/08
B01J37/02 101C
B01J29/16 M
B01J37/10
B01J37/04 102
B01J35/10 301A
C10G47/20
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020529328
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 CN2017113629
(87)【国際公開番号】W WO2019104543
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】518405289
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司大連石油化工研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】柳偉
(72)【発明者】
【氏名】關明華
(72)【発明者】
【氏名】杜艶澤
(72)【発明者】
【氏名】王鳳来
(72)【発明者】
【氏名】秦波
(72)【発明者】
【氏名】高杭
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0229700(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107304373(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1951814(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0083999(US,A1)
【文献】特開2010-163349(JP,A)
【文献】GOUNDER, R. et al.,Journal of Catalysis,2011年12月14日,Vol.28,pp.214-223,<DOI:10.1016/j.jcat.2011.11.002>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 - 39/54
B01J 21/00 - 38/74
C10G 47/00 - 47/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性Y型分子篩であって、
前記変性Y型分子篩の全量を基準として、前記変性Y型分子篩は、NaO 0.5~2重量%を含有し、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量と前記変性Y型分子篩のn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比が1~1.2であり、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量は0.1~1.2mmol/gである、ことを特徴とする変性Y型分子篩。
【請求項2】
前記変性Y型分子篩の全量を基準として、前記変性Y型分子篩は、NaO 0.8~1.8重量%を含有し、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量と前記変性Y型分子篩のn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比が1.02~1.15であり、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量は0.2~1mmol/gである、請求項1に記載の変性Y型分子篩。
【請求項3】
前記変性Y型分子篩の全量を基準として、前記変性Y型分子篩は、NaO 1~1.5重量%を含有し、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量と前記変性Y型分子篩のn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比が1.05~1.12であり、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量は0.3~0.8mmol/gである、請求項2に記載の変性Y型分子篩。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の変性Y型分子篩の製造方法であって、
NaY分子篩を前処理して、脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を得るステップ(1)と、
前記脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩をナトリウムイオン交換して、ナトリウム含有Y型分子篩を得るステップ(2)と、
前記ナトリウム含有Y型分子篩を大分子アンモニウム塩溶液で浸漬処理し、次に乾燥、焙焼をして、変性Y型分子篩を得るステップ(3)と、を含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
ステップ(2)では、前記ナトリウムイオン交換のプロセスは、前記脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を、40~80℃で、NaNOの質量百分率が0.1~3重量%であるNaNO水溶液と1~4h恒温反応させることである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(3)では、前記浸漬処理のプロセスは、40~80℃で、前記ナトリウム含有Y型分子篩を、前記大分子アンモニウム塩溶液において2~6h浸漬することであり、前記大分子アンモニウム塩がベンジル四級アンモニウム塩である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記ベンジル四級アンモニウム塩は、臭化ベンジルトリプロピルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリプロピルアンモニウム、及び塩化ベンジルトリブチルアンモニウムのうちの少なくとも1種である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(3)では、前記乾燥プロセスは、100~150℃で1~4h乾燥することであり、前記焙焼プロセスは、500~700℃で2~6h焙焼処理することである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(1)では、前記前処理プロセスは、アンモニウムイオン交換、水熱脱アルミニウム、アルミニウム塩による脱アルミニウム、フルオロケイ酸塩による脱アルミニウム、及び酸による脱アルミニウムのうちの1つ又は複数の組み合わせを含む、請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(1)では、前記前処理プロセスは、
NaY分子篩とアンモニウム塩水溶液とをアンモニウムイオン交換反応して、脱ナトリウムY型分子篩を得るステップ(a)と、
前記脱ナトリウムY型分子篩を水熱脱アルミニウムして、水熱脱アルミニウムの生成物を得るステップ(b)と、
前記水熱脱アルミニウムの生成物を化学的脱アルミニウムして、前記脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を得るステップ(c)と、を含み、
前記化学的脱アルミニウムは、アルミニウム塩による脱アルミニウム、フルオロケイ酸塩による脱アルミニウム、又は酸による脱アルミニウムである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)では、前記アンモニウム塩イオン交換反応のプロセスは、NaY分子篩とアンモニウム塩水溶液とを、60~120℃で、1~4回、1~3h交換させ、NaO含有量が3重量%未満の前記脱ナトリウムY型分子篩を得ることであり、
NaY分子篩は、SiO/Alモル比(3~6):1、NaO含有量6~12重量%であり、アンモニウム塩は、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、及びシュウ酸アンモニウムから選ばれる1種又は複数種であり、前記アンモニウム塩水溶液のモル濃度は0.3~6mol/Lである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)では、前記水熱脱アルミニウムのプロセスは、前記脱ナトリウムY型分子篩と水蒸気とを、温度520~700℃、圧力0.01~0.5MPaの条件で1~6h接触させることである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(c)では、前記化学的脱アルミニウムのプロセスは、前記水熱脱アルミニウムの生成物を、アルミニウム塩溶液、フルオロケイ酸アンモニウム溶液又は硝酸溶液と、50~120℃の温度で0.5~3h恒温反応させることである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
水素化分解触媒の製造方法であって、
請求項1~のいずれか1項に記載の変性Y型分子篩、アモルファスシリカ-アルミナ及び/又は酸化アルミニウムを、(5~90):(0~50):(0.6~80)の重量比で混合して担体混合材料とし、次に、前記担体混合材料に質量百分率3~30重量%の硝酸水溶液を加えてスラリーとし、押出成形を行うステップ(I)と、
ステップ(I)で得た押出生成物を80~120℃で1~5h乾燥させ、次に400~500℃で1~5h焙焼し、シリカ-アルミナ担体を得るステップ(II)と、
前記シリカ-アルミナ担体を、水素化活性金属を含有する溶液において飽和浸漬して、得た生成物を乾燥させて焙焼し、水素化分解触媒を得るステップ(III)と、を含む水素化分解触媒の製造方法。
【請求項15】
水素化分解触媒が、シリカ-アルミナ担体と、水素化活性金属とを含み、前記水素化分解触媒の全量を基準として、前記シリカ-アルミナ担体の含有量は55~85重量%であり、前記水素化活性金属の含有量は金属酸化物で15~45重量%であり、前記シリカ-アルミナ担体は、請求項1~6のいずれか1項に記載の変性Y型分子篩を含有し、前記シリカ-アルミナ担体における前記変性Y型分子篩の含有量が5~90重量%である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記水素化活性金属は、第VIII族及び/又は第VI族から選ばれる金属であり、
前記第VIII族金属はNi及び/又はCoであり、第VI族金属はW及び/又はMoである、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記触媒の全量を基準として、前記水素化分解触媒は、金属酸化物で、前記第VIII族金属3~15重量%、前記第VI族金属10~40重量%を含む、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
炭化水素油の水素化分解方法であって、
請求項15~17のいずれか1項に記載の製造方法を行い、水素化分解触媒を製造するステップ、及び、
水素ガス存在下、炭化水素油を、前記ステップで製造された水素化分解触媒と接触させて水素化分解反応させるステップを含み、反応温度は340~420℃であり、反応圧力は8~20MPaであり、前記炭化水素油の供給時の体積空間速度は0.1~2h-1であり、水素ガスと前記炭化水素油との体積比は(200~2000):1である、炭化水素油の水素化分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化分解分野に関し、具体的には、変性Y型分子篩及び製造方法、水素化分解触媒及び製造方法、並びに、炭化水素油の水素化分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化分解技術は、原料の適応性が高く、製品のスキームが柔軟であり、対象製品の選択性が高く、製品の品質が高く、付加価値が高いなどの特徴があり、さまざまな重質、劣質の原料をクリーンな燃料油や高品質の化学産業用原料に直接変換でき、現代の石油精製や石油化学産業で最も重要な重油高度加工技術の1つとなり、中国国内外でますます広く使用されるようになった。中国の現在の水素化分解装置の加工能力は50.0Mt/aを超えているが、中国国内の原油の品質が年々悪化しているため、高硫黄含有量の原油の輸入量は大幅に増加しており、精製プロセス自体及び石油製品の品質に対する環境保護要件が厳しくなり、クリーンな燃料油や化学産業用原料に対する市場の需要は増え続けている。したがって、水素化分解技術はより広く使用されることが予測でき、それに伴い、水素化分解技術自体に対するより高い要件も求められる。
【0003】
水素化分解技術の中核は、水素化分解触媒であり、水素化分解触媒は、分解と水素化活性を持つ二重機能型の触媒であり、分解機能は、分子篩などの酸性担体材料によって提供され、水素化機能は、触媒に担持された元素周期の第VI族及び第VIII族の活性金属によって提供され、分解及び水素化の2つの機能サイトを調整することによりさまざまな反応のニーズを満たす。水素化分解触媒の分解成分としての分子篩は、その性能が触媒の反応性能に決定的な役割を果たす。現在、水素化分解触媒に使用される分子篩のタイプは主にY型とβ型などである。Y型分子篩は、3次元のスーパーケージと四面体のような12員環マクロ孔、開放した細孔構造を有し、大分子環状炭化水素に対して優れた開環選択性を有し、その重質ナフサ製品は、芳香族炭化水素の潜在含有量が高く、水素化によるテールオイルのBMCI値が低く、現在、水素化分解触媒で最も広く使用されている。
【0004】
水素化分解触媒の分解成分として、Y型分子篩は、通常、分子篩の水熱及び化学的安定性を向上させ、また、その酸性特性及び孔構造を改善して水素化分解反応に適切な酸性環境及び好ましい細孔構造を得るために、使用前に変性する必要がある。通常、Y型分子篩の変性技術には、水熱変性法;無機酸、有機酸、塩や錯化剤などによる化学的脱アルミニウム変性法;水熱と化学的脱アルミニウム変性法の組み合わせなどの方法がある。しかしながら、現在の変性方法で得られた変性Y型分子篩は、分子篩の異なる細孔(ミクロ孔と二次孔)に酸性中心が分布しており、この場合、一方では、ミクロ孔における酸性中心の利用可能性が低く、他方では、過剰な二次分解反応が起こりやすく、反応選択性や液体製品の収率が低下する。
【0005】
US4503023は、分子篩の変性方法を開示し、NaYゼオライトに対してフルオロケイ酸アンモニウムを用いて液相脱アルミニウム及びシリコン補充を行うことにより製造される分子篩は、結晶化度が高く、シリカ/アルミナ比が高く、有機窒素被毒に対して一定の抵抗能力を有するものの、構造が完全すぎるため、二次孔はほとんどなく、酸性中心は主にミクロ孔に位置しており、劣質な原料の大分子反応物が接近しにくい。
【0006】
CN1178193Aは、孔径が1.7×10 -10 メートルを超える細孔の容積が45%以上を占め、表面積750~900m /g、格子定数24.23×10 -10 メートル~25.45×10 -10 メートル、結晶化度95~110%、SiO /Al 比7~20である変性Yゼオライトを開示している。その方法は、原料としてNaYゼオライトを使用し、まずNa O含有量が2m%未満になるまでアンモニウム交換を行ってから、水蒸気処理を行うことであり、蒸気処理後のゼオライトを、NH 、H やその他の金属カチオンを含む緩衝液で処理することを特徴とする。水熱脱硫と緩衝液による処理との組み合わせによりY分子篩を変性して得た分子篩は、豊富な二次孔を有し、拡散性能が良好であるが、この変性方式により得られた変性Y分子篩は、ミクロ孔構造に存在する酸性サイトが多数あり、分子篩の酸性サイトの分散度が大きく、反応選択性が低い。
【0007】
CN1178721Aは、格子定数2.425~2.436nm、SiO /Al モル比15~200、比表面積700~780m /g、相対結晶化度100~125%を特徴とするシリカ/アルミナ比と結晶化度が高いY型分子篩を開示している。その製造方法は次のとおりである。NH NaY分子篩原料に対してヘキサフルオロケイ酸アンモニウムを使用して脱アルミ化・シリコン補充をした後、飽和蒸気で水熱処理し、最後にアルミニウム塩溶液で処理する。しかし、得られた変性Y型分子篩は、二次孔含有量が低く、またミクロ孔に多数の酸性中心が分布しているため、反応過程での過剰な分解反応や液体の収率低下を引き起こしてしまう。
【0008】
US4036739は、水素化分解法を開示しており、315~899℃の温度で少なくとも0.5psiの水蒸気と一定時間接触させて処理し、格子定数2.440~2.464nmの変性Y型分子篩を得て、処理されたY分子篩をアンモニウム交換して、ナトリウム含有量が1%未満の中間体を得て、次に、格子定数が2.440nm未満の変性Y分子篩を得るY型分子篩の変性方法を開示しており、ただし、この処理プロセスが厳しいことにより、得られた変性Y分子篩は、結晶化度が深刻に破壊され、結晶化度が低くなり、その使用性能に影響を与える。
【0009】
従来技術で提供されているY型分子篩は水素化分解反応に用いられる場合、過剰な分解の欠点があり、且つ反応選択性が悪い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、水素化分解反応に存在する過剰な分解や悪い反応選択性という従来技術の問題を解決するために、変性Y型分子篩及び製造方法、水素化分解触媒及び製造方法、並びに、炭化水素油の水素化分解方法を提供することである。この変性Y型分子篩の酸性中心サイトがマクロ孔の内部に集中して分布し、得た水素化分解触媒は、ワックスオイルの水素化分解反応に用いられると、触媒反応プロセスの選択性を向上させ、二次分解反応の発生を減少させ、水素化分解によるテールオイルの品質を改善し、反応の液体製品の収率を向上させることができる。
【0011】
本発明の発明者は、研究したところ、従来技術で製造される変性Y型分子篩では、大量の酸性中心がミクロ孔構造に存在しており、ピリジン赤外分光法による全酸量とn-ブチルピリジン赤外分光法による酸との比が一般的には1.5より大きいことを見出した。ただし、ミクロ孔に大量存在する酸性中心により過剰な分解反応が起こり、反応選択性が悪くなる。それに対して、発明者は、変性Y型分子篩の酸性中心の分布を限定し、ミクロ孔における酸性中心の数を制御することで、水素化分解反応に存在する過剰な分解や悪い反応選択性の問題を解決するために、本発明を提案している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来技術に存在する欠陥に対して、本発明の第1態様は、変性Y型分子篩を提供し、前記変性Y型分子篩の全量を基準として、前記変性Y型分子篩は、Na O 0.5~2重量%を含有し、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量と前記変性Y型分子篩のn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比が1~1.2であり、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量は0.1~1.2mmol/gである。
【0013】
好ましくは、前記変性Y型分子篩は、比表面積500~900m /g、細孔容積0.28~0.7ml/g、相対結晶化度50%~130%、格子定数2.425~2.45nm、シリカ/アルミナモル比(6~80):1である。
【0014】
本発明の第2態様は、本発明の変性Y型分子篩の製造方法を提供し、
NaY分子篩を前処理して、脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を得るステップ(1)と、
前記脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩をナトリウムイオン交換して、ナトリウム含有Y型分子篩を得るステップ(2)と、
前記ナトリウム含有Y型分子篩を大分子アンモニウム塩溶液で浸漬処理し、次に乾燥、焙焼をして、変性Y型分子篩を得るステップ(3)と、を含む。
【0015】
好ましくは、ステップ(1)では、前記前処理プロセスは、アンモニウムイオン交換、水熱脱アルミニウム、アルミニウム塩による脱アルミニウム、フルオロケイ酸塩による脱アルミニウム、及び酸による脱アルミニウムのうちの1つ又は複数の組み合わせを含む。
【0016】
好ましくは、ステップ(1)では、前記前処理プロセスは、
NaY分子篩とアンモニウム塩水溶液とをアンモニウムイオン交換反応して、脱ナトリウムY型分子篩を得るステップ(a)と、
前記脱ナトリウムY型分子篩を水熱脱アルミニウムして、水熱脱アルミニウムの生成物を得るステップ(b)と、
前記水熱脱アルミニウムの生成物を化学的脱アルミニウムして、前記脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を得るステップ(c)と、を含み、
前記化学的脱アルミニウムは、アルミニウム塩による脱アルミニウム、フルオロケイ酸塩による脱アルミニウム、又は酸による脱アルミニウムを含む。
【0017】
本発明の第3態様は、水素化分解触媒の製造方法を提供し、該方法は、
本発明の変性Y型分子篩、アモルファスシリカ-アルミナ及び/又は酸化アルミニウムを、(5~90):(0~50):(0.6~80)の重量比で混合して担体混合材料とし、次に、前記担体混合材料に質量百分率3~30重量%の硝酸水溶液を加えてスラリーとし、押出成形を行うステップ(I)と、
ステップ(I)で得た押出生成物を80~120℃で1~5h乾燥させ、次に400~500℃で1~5h焙焼し、シリカ-アルミナ担体を得るステップ(II)と、
前記シリカ/アルミナ担体を、水素化活性金属を含有する溶液において飽和浸漬して、得た生成物を乾燥させて焙焼し、水素化分解触媒を得るステップ(III)と、を含む。
【0018】
本発明の第4態様は、本発明の方法で製造される水素化分解触媒を提供し、前記水素化分解触媒は、シリカ-アルミナ担体と、水素化活性金属とを含み、前記水素化分解触媒の全量を基準として、前記シリカ-アルミナ担体の含有量は55~85重量%であり、前記水素化活性金属の含有量は金属酸化物で15~45重量%であり、前記シリカ-アルミナ担体は、本発明の変性Y型分子篩を含有し、前記シリカ-アルミナ担体における前記変性Y型分子篩の含有量が5~90重量%である。
【0019】
本発明の第5態様は、炭化水素油の水素化分解方法を提供し、該方法は、水素ガス存在下、炭化水素油を本発明の水素化分解触媒と接触させて水素化分解反応させるステップを含み、反応温度は340~420℃であり、反応圧力は8~20MPaであり、前記炭化水素油の供給時の体積空間速度は0.1~2h -1 であり、水素ガスと前記炭化水素油との体積比は(200~2000):1である。
【発明の効果】
【0020】
上記技術案によれば、本発明は、酸性中心サイトがマクロ孔(即ち二次孔)に集中して分布している変性Y型分子篩を提供する。変性Y型分子篩のミクロ孔における酸性中心サイトのほとんどがナトリウムイオンで占められ、マクロ孔内部の酸性中心だけが残り、それにより、炭化水素類分子がミクロ孔に入って二次分解反応を行うことの発生が減少する。分子サイズの異なるアルカリ性有機物たとえばピリジンとn-ブチルピリジンを用いて赤外法による変性Y型分子篩の酸含有量を測定したところ、両方の酸含有量の値が等しい場合、変性Y型分子篩に分布している酸性中心がマクロ孔に集中していることを示す。
【0021】
本発明は、変性Y型分子篩の製造方法を提供し、まず、変性処理したY型分子篩の酸性中心をナトリウムイオン交換して、Y型分子篩が有する各種細孔における酸性中心サイトをナトリウムイオンで占めてから、分子サイズの大きいベンジル四級アンモニウム塩を用いてアンモニウムイオン交換処理し、ベンジル四級アンモニウム塩が大きな分子サイズを有するので、マクロ孔に分布しているナトリウムイオンが選択的にベンジル四級アンモニウムカチオンに交換され、さらに乾燥及び焙焼をした後、ベンジル四級アンモニウムカチオンだけが除去され、Y型分子篩のマクロ孔における酸性中心サイトが露出し、ミクロ孔における酸性中心サイトがナトリウムイオンで占められたままで酸性を発現させず、それにより、本発明による分子篩は、酸性中心サイトがマクロ孔に集中して分布するという特徴を有し、この特徴については、分子サイズの異なるピリジンとn-ブチルピリジンを用いて赤外法による酸性測定を行うことで判断することができ、それにより、上記特徴を有する変性Y型分子篩が得られる。
【0022】
さらに、本発明の変性Y型分子篩を使用して水素化分解触媒を製造し、ワックスオイルの水素化分解反応プロセスに用いると、ワックスオイル中の大分子環状炭化水素類物質の反応選択性を向上させ、二次分解反応の発生を減少させ、水素化分解によるテールオイルの品質を改善し、反応の液体製品の収率を提高させることに寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に開示されている範囲の端点及び任意の値は、この正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点間、各範囲の端点値と個々の点の値の間、及び個々の点の値の間を互いに組み合わせて、1つ以上の新しい数値範囲を取得でき、これらの値の範囲は、本明細書で具体的に開示されていると見なされるべきである。
【0024】
本発明の第1態様は、変性Y型分子篩を提供し、前記変性Y型分子篩の全量を基準として、前記変性Y型分子篩は、Na O 0.5~2重量%を含有し、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量と前記変性Y型分子篩のn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比が1~1.2であり、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量が0.1~1.2mmol/gである、ことを特徴とする。
【0025】
本発明において、前記変性Y型分子篩とは、Y型分子篩原粉を化学的処理(たとえば、本発明に記載の後述する方法)して得た分子篩である。
【0026】
本発明による変性Y型分子篩は、酸性中心が主にマクロ孔に分布しており、ミクロ孔には酸性中心が少量であるか又は酸性中心がなく、それにより、炭化水素油分子がミクロ孔に入って酸性中心で二次分解反応を行うことを減少できる。
【0027】
本発明による変性Y型分子篩が有する上記細孔における酸性中心の分布特徴は、ピリジンとn-ブチルピリジンを2種のプローブ分子として、変性Y型分子篩の酸性をそれぞれ測定した結果により表せる。n-ブチルピリジンの分子径が約0.8nmであり、本発明による変性Y型分子篩のマクロ孔にしか入られず、それにより、マクロ孔中の酸性中心の全量が反映され得る。ピリジンの分子径が約0.6nmであり、変性Y型分子篩のミクロ孔とマクロ孔の両方に入って、変性Y型分子篩のすべての細孔中の酸性中心の全量を反映できる。テストプロセスとしては、具体的には、ピリジン、n-ブチルピリジン吸着赤外分光法によって、米国NICOLET社製のNicolet 6700フーリエ赤外分光計を用いることができる、
細く粉砕された(粒度200メッシュ未満)サンプル20mgを直径20mmのシートにプレスし、吸収セルのサンプルホルダーにセットし、サンプル(シート状)200mgを石英バネの下端にあるカップ(サンプルを添加する前にバネの長さを記録、x 、mm)に投入し、吸収セルと吸着管を接続して、真空吸引して浄化し、真空度が4×10 -2 Paとなると、500℃に昇温して1h保温し、それによりサンプルの表面の吸着物を除去する(このとき、サンプル浄化後のバネ長さ、x 、mm)。次に室温に降温し、ピリジン(又はn-ブチルピリジン)を飽和まで吸着させ、次に160℃に昇温して、1時間平衡化し、物理的に吸着させたピリジンを脱着させ(このとき、ピリジン吸着後のバネ長さ、x 、mm)、ピリジン(又はn-ブチルピリジン)重量吸着法によって全酸量を求めた。
全酸量は、ピリジン重量吸着法により計算され、具体的には、以下のとおりである。
【0028】
【数1】
【0029】
注:79.1、136.1はそれぞれピリジン、n-ブチルピリジンのモル質量であり、単位はg/molである。
【0030】
本発明において、Y型分子篩のミクロ孔とマクロ孔における酸性中心サイトの集中分布を調整することによって、炭化水素油分子の分子篩での反応が制御される。酸性中心サイトの分布は、ピリジンとn-ブチルピリジン赤外測定による酸性全量により示される。細孔中の酸性中心サイトを調整していない一般的なY型分子篩では、一般に、ピリジン赤外分光法による全酸量とn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比は1.2より大きい。それにより、Y型分子篩のミクロ孔中の酸性中心サイトが制御されたか否かを判断できる。
【0031】
変性Y型分子篩についてn-ブチルピリジン、ピリジンを用いてそれぞれ測定した全酸量は等しいか、又はn-ブチルピリジンによる全酸量はわずかに小さい場合、即ち、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量と前記変性Y型分子篩のn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比が1~1.2に制限される場合、前記変性Y型分子篩に含まれる酸性中心が主にマクロ孔に集中していることを示す。
【0032】
本発明によれば、好ましくは、前記変性Y型分子篩の全量を基準として、前記変性Y型分子篩は、Na O 0.8~1.8重量%を含有し、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量と前記変性Y型分子篩のn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比が1.02~1.15である。
【0033】
より好ましくは、前記変性Y型分子篩の全量を基準として、前記変性Y型分子篩は、Na O 1~1.5重量%を含有し、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量と前記変性Y型分子篩のn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比が1.05~1.12である。
【0034】
本発明によれば、好ましくは、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量は0.2~1mmol/gである。
【0035】
より好ましくは、前記変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量は0.3~0.8mmol/gである。
【0036】
本発明によれば、前記変性Y型分子篩は、ワックスオイルの水素化分解反応プロセスに用いると、水素化分解によるテールオイルの品質を改善し、反応の液体製品の収率を向上させることに寄与するなど他の特徴も有する。好ましい場合、前記変性Y型分子篩の比表面積は、500~900m /g、好ましくは550~850m /g、より好ましくは600~750m /gである。
【0037】
好ましくは、前記変性Y型分子篩の細孔容積は、0.28~0.7ml/g、好ましくは0.3~0.65ml/g、より好ましくは0.35~0.6ml/gである。
【0038】
好ましくは、前記変性Y型分子篩の相対結晶化度は、50%~130%、60%~110%、より好ましくは70%~100%である。
【0039】
好ましくは、前記変性Y型分子篩の格子定数は、2.425~2.45nm、好ましくは2.428~2.448nm、より好ましくは2.43~2.445nmである。
【0040】
好ましくは、前記変性Y型分子篩のシリカ/アルミナモル比は、(6~80):1、好ましくは(8~60):1、より好ましくは(10~50):1である。
【0041】
本発明の第2態様は、本発明の変性Y型分子篩の製造方法を提供し、
NaY分子篩を前処理して、脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を得るステップ(1)と、
前記脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩をナトリウムイオン交換して、ナトリウム含有Y型分子篩を得るステップ(2)と、
前記ナトリウム含有Y型分子篩を大分子アンモニウム塩溶液で浸漬処理し、次に乾燥、焙焼をして、変性Y型分子篩を得るステップ(3)と、を含む。
【0042】
本発明によれば、ステップ(1)は、NaY分子篩にマクロ孔を形成し、それは、マクロ孔とミクロ孔のそれぞれの後続の修飾に有利である。好ましい場合、ステップ(1)では、前記前処理のプロセスは、アンモニウムイオン交換、水熱脱アルミニウム、アルミニウム塩による脱アルミニウム、フルオロケイ酸塩による脱アルミニウム、及び酸による脱アルミニウムのうちの1つ又は複数の組み合わせを含む。本発明において、NaY分子篩の前記前処理は、NaY分子篩をアンモニウムイオン交換、水熱脱アルミニウム、アルミニウム塩による脱アルミニウム、フルオロケイ酸塩による脱アルミニウム、及び酸による脱アルミニウムのうちの1つ又は複数のステップにより処理してもよく、ステップの間の順番について制限がなく、前記脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を提供できればよく、たとえば、前記脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩は、Na O含有量が3重量%未満であり、SiO /Al モル比(6~80):1、格子定数2.425~2.450である。一般には、まず、NaY分子篩をアンモニウムイオン交換することで脱ナトリウムし、次に、水熱脱アルミニウム、アルミニウム塩による脱アルミニウム、フルオロケイ酸塩による脱アルミニウム、及び酸による脱アルミニウムのうちの1つ又は複数の組み合わせにより脱ナトリウム生成物を脱アルミニウムする。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、ステップ(1)の前記前処理のプロセスは、
NaY分子篩とアンモニウム塩水溶液とをアンモニウムイオン交換反応して、脱ナトリウムY型分子篩を得るステップ(a)と、
前記脱ナトリウムY型分子篩を水熱脱アルミニウムして、水熱脱アルミニウムの生成物を得るステップ(b)と、
前記水熱脱アルミニウムの生成物を化学的脱アルミニウムして、前記脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を得るステップ(c)と、を含み、
前記化学的脱アルミニウムは、アルミニウム塩による脱アルミニウム、フルオロケイ酸塩による脱アルミニウム、又は酸による脱アルミニウムである。
【0044】
本発明によれば、ステップ(a)は、後続の脱アルミニウムプロセスを順調に実施するように、NaY分子篩におけるNaイオンを除去する。好ましい場合、ステップ(a)では、前記アンモニウム塩によるイオン交換反応のプロセスは、NaY分子篩とアンモニウム塩水溶液とを、60~120℃、好ましくは60~90℃で、1~4回、1~3h交換して、前記脱ナトリウムY型分子篩を得ることである。
【0045】
好ましくは、前記脱ナトリウムY型分子篩のNa O含有量は3重量%未満である。
【0046】
好ましくは、NaY分子篩のSiO /Al モル比は(3~6):1であり、Na O含有量は6~12重量%である。
【0047】
好ましくは、アンモニウム塩は、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びシュウ酸アンモニウムから選ばれる1種又は複数種であり、前記アンモニウム塩水溶液のモル濃度は0.3~6mol/L、好ましくは1~3mol/Lである。
【0048】
本発明によれば、ステップ(b)は、前記脱ナトリウムY型分子篩を脱アルミニウムして、マクロ孔を形成する。好ましくは、ステップ(b)では、前記水熱脱アルミニウムのプロセスは、前記脱ナトリウムY型分子篩と水蒸気とを、温度520~700℃、圧力0.01~0.5MPaの条件で、1~6h接触させることである。
【0049】
好ましくは、前記水熱脱アルミニウムの回数は1~3回である。
【0050】
本発明によれば、ステップ(c)は、分子篩を化学的に脱アルミニウムして、マクロ孔を形成する。好ましくは、ステップ(c)では、前記化学的脱アルミニウムのプロセスは、前記水熱脱アルミニウムの生成物を、アルミニウム塩溶液、フルオロケイ酸アンモニウム溶液又は硝酸溶液と、50~120℃の温度で、0.5~3h恒温反応させることである。
【0051】
好ましくは、前記アルミニウム塩溶液は、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び硝酸アルミニウムのうちの少なくとも1種の水溶液である。
【0052】
好ましくは、前記アルミニウム塩溶液、フルオロケイ酸アンモニウム溶液又は硝酸溶液のモル濃度は0.05~2mol/Lである。前記水熱脱アルミニウムの生成物と前記アルミニウム塩溶液が前記恒温反応を行うことは、前記アルミニウム塩による脱アルミニウムである。前記水熱脱アルミニウムの生成物と前記フルオロケイ酸アンモニウム溶液が前記恒温反応を行うことは、前記フルオロケイ酸塩による脱アルミニウムである。前記水熱脱アルミニウムの生成物と前記硝酸溶液が前記恒温反応を行うことは、前記酸による脱アルミニウムである。
【0053】
本発明によれば、ステップ(2)は、前記脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩におけるマクロ孔、ミクロ孔の空いた酸性中心をナトリウムイオンで中和する。ステップ(2)では、前記ナトリウムイオン交換のプロセスは、前記脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩と、NaNO の質量百分率が0.1~3重量%であるNaNO 水溶液とを、40~80℃で1~4h恒温反応させることである。
【0054】
本発明によれば、ステップ(3)の前記浸漬処理は、Y型分子篩のマクロ孔において酸性中心を占めるナトリウムイオンを大分子アンモニウム塩で交換することで、マクロ孔における酸性中心を露出させる。大分子アンモニウム塩がY型分子篩のミクロ孔に入られず、ミクロ孔には依然としてナトリウムイオンは酸性中心を占めている。最終的に得られた本発明の変性Y型分子篩は、マクロ孔には酸性中心があり、ミクロ孔には酸性中心が極めて小さいか、酸性中心がないようになり、水素化分解反応に用いられると、炭化水素油の二次分解反応の発生を減少させる。好ましい場合、ステップ(3)の前記浸漬処理のプロセスは、40~80℃で、前記ナトリウム含有Y型分子篩を前記大分子アンモニウム塩溶液において2~6h浸漬することである。
【0055】
本発明において、好ましくは、大分子アンモニウム塩は、ベンジル四級アンモニウム塩である。
【0056】
好ましくは、前記ベンジル四級アンモニウム塩は、臭化ベンジルトリプロピルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリプロピルアンモニウム、及び塩化ベンジルトリブチルアンモニウムのうちの少なくとも1種である。
【0057】
好ましくは、前記大分子アンモニウム塩溶液中、臭素又は塩素元素の濃度で、大分子アンモニウム塩溶液のモル濃度は0.2~2mol/Lである。
【0058】
本発明において、製造された変性Y型分子篩中の酸性中心の分布は、ピリジン赤外吸着及びn-ブチルピリジン赤外吸着方法によって測定することができる。具体的な方法及びテスト結果は前記と同じであり、ここで詳しく説明しない。
【0059】
本発明によれば、好ましい場合、ステップ(3)では、前記乾燥プロセスは、100~150℃で1~4h乾燥させることであり、前記焙焼プロセスは、500~700℃で2~6h焙焼処理することである。
【0060】
本発明の第3態様は、水素化分解触媒の製造方法を提供し、該方法は、
本発明の変性Y型分子篩、アモルファスシリカ-アルミナ及び/又は酸化アルミニウムを、(5~90):(0~50):(0.6~80)の重量比で混合して担体混合材料とし、次に、前記担体混合材料に質量百分率3~30重量%の硝酸水溶液を加えてスラリーとし、押出成形を行うステップ(I)と、
ステップ(I)で得た押出生成物を80~120℃で1~5h乾燥させ、次に400~500℃で1~5h焙焼し、シリカ-アルミナ担体を得るステップ(II)と、
前記シリカ/アルミナ担体を、水素化活性金属を含有する溶液において飽和浸漬して、得た生成物を乾燥させて焙焼し、水素化分解触媒を得るステップ(III)と、を含む。
【0061】
本発明による触媒製造方法のステップ(I)では、前記スラリーの固形分は長いストランド押出生成物の押出成形に適していればよい。好ましくは、前記スラリーの固形分は30~60重量%である。
【0062】
本発明において、ステップ(III)では、水素化活性金属を含有する溶液の添加量は、得た水素化分解触媒には、金属酸化物で水素化活性金属を15~45重量%含有するようにする。前記水素化活性金属を含有する溶液中、水素化活性金属は、金属酸化物で、濃度が20~70mol/Lであってもよい。
【0063】
本発明において、前記水素化活性金属を含有する溶液は、第VIII族及び/又は第VI族の金属元素を含有する化合物の溶液であってもよい。好ましくは、Ni及び/又はCoを含有する化合物の溶液、W及び/又はMoを含有する化合物の溶液であってもよい。より好ましくは、前記水素化活性金属を含有する溶液は、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、メタタングステン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、酸化モリブデンを含有する溶液であってもよい。
【0064】
本発明において、ステップ(III)の乾燥は、90~150℃で2~20h実施され得る。焙焼は400~600℃で2~10h実施され得る。それにより、前記水素化活性金属は酸化物の形態に変換されて前記水素化分解触媒に存在する。
【0065】
本発明の第4態様は、本発明の方法で製造される水素化分解触媒を提供し、前記水素化分解触媒は、シリカ-アルミナ担体と、水素化活性金属とを含み、前記水素化分解触媒の全量を基準として、前記シリカ-アルミナ担体の含有量は55~85重量%であり、前記水素化活性金属の含有量は金属酸化物で15~45重量%であり、前記シリカ-アルミナ担体は、本発明の変性Y型分子篩を含有し、前記シリカ-アルミナ担体における前記変性Y型分子篩の含有量が5~90重量%である。
【0066】
本発明によれば、好ましい場合、前記水素化活性金属は、第VIII族及び/又は第VI族の金属から選ばれる。
【0067】
好ましくは、前記第VIII族金属はNi及び/又はCoであり、第VI族金属はW及び/又はMoである。
【0068】
好ましくは、前記触媒の全量を基準として、金属酸化物で、前記水素化分解触媒は、前記第VIII族金属3~15重量%、前記第VI族金属10~40重量%を含有する。
【0069】
本発明において、水素化分解触媒の使用、輸送及び貯蔵を容易にするために、前記水素化分解触媒中の前記水素化活性金属は酸化状態で存在し、水素化分解反応の前に硫黄含有化合物と接触して加硫反応によって硫化状態に変換された後、炭化水素油の水素化分解に関与できる。
【0070】
本発明において、前記水素化分解触媒は、本発明による変性Y型分子篩成分を含有し、より良好な水素化分解の反応選択性を有し、炭化水素油分子の二次分解反応の発生を減少させ、水素化分解反応生成物の選択性により優れている。前記水素化分解触媒の反応性能は、具体的な反応性能の評価実験により測定できる。実験では、小型マイクロ反応装置で1段直列式ワンパスプロセスを使用でき、装置には、直列に接続された2つの反応器があり、実施手順に従って、第1反応器には従来の精製触媒が充填され、第2反応器には水素化分解触媒が充填される。
【0071】
本発明において、第2反応器には、一回で本発明の水素化分解触媒を、別途従来のY型分子篩を用いて製造した従来の水素化分解触媒を充填し、反応評価を別々に行って、精製油の窒素含有量及び変換深度を同じに制御しながら、2回の反応でそれぞれ得られた分解テールオイル製品のBMCI値及び装置の液体製品の収率をそれぞれ比較することができる。その中でも、テールオイル製品のBMCI値が低く、製品の液体収率が高いほど、対応する触媒は水素化分解反応の過程において大分子環状炭化水素の反応をさらに促進し、二次分解反応の発生を減少させることを示す。2回の反応の違いは、触媒に使用されている分子篩のみであり、上記の結果は、分子篩の酸性がマクロ孔により集中して分布するためと考えられる。
【0072】
本発明の第5態様は、炭化水素油の水素化分解方法を提供し、該方法は、水素ガス存在下、炭化水素油を本発明の水素化分解触媒と接触させて水素化分解反応させるステップを含み、反応温度は340~420℃であり、反応圧力は8~20MPaであり、前記炭化水素油の供給時の体積空間速度は0.1~2h -1 であり、水素ガスと前記炭化水素油との体積比は(200~2000):1である。
【0073】
本発明において、前記炭化水素油は、石油ベースの減圧ワックスオイル原料としてもよく、その蒸留範囲が300~600℃、密度が0.86~0.94g/cm である。
【0074】
前記水素化分解反応が行われる際に、前記水素化分解触媒中の活性金属が硫化状態で関与する。しかしながら、硫化状態の水素化活性金属を含有する触媒が直接製造される場合、触媒は輸送及び貯蔵中に容易に酸化され、水素化分解反応に本格的に関与する前に硫化される必要がある。したがって、本分野では、一般に、水素化活性金属を酸化状態で含有する触媒を製造し、炭化水素油の水素化分解反応を行う前に触媒を硫化反応させて、硫化状態の水素化活性金属を含有する触媒を得るか、又は炭化水素油中の硫黄含有化合物を利用して、炭化水素油と触媒との接触中に水素化活性金属の硫化及び炭化水素油の水素化分解を行う。本発明による炭化水素油の水素化分解方法において、前記水素化分解反応中に、本発明の水素化分解触媒は、炭化水素油中の硫黄含有化合物の存在下で、水素化活性金属を硫化状態に変換するとともに、炭化水素油の水素化分解を実現する。
【0075】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
以下の実施例及び比較例では、ピリジン、n-ブチルピリジン赤外分光法による酸量は、ピリジン、n-ブチルピリジン吸着赤外分光法により、米国NICOLET社製のNicolet 6700フーリエ赤外分光計方法を用いて測定され、そのプロセスは、以下のとおりである。
【0076】
細く粉砕された(粒度200メッシュ未満)サンプル20mgを直径20mmのシートにプレスし、吸収セルのサンプルホルダーにセットし、サンプル(シート状)200mgを石英バネの下端にあるカップ(サンプルを添加する前にバネの長さを記録、x 、mm)に投入し、吸収セルと吸着管を接続して、真空吸引して浄化し、真空度が4×10 -2 Paとなると、500℃に昇温して1h保温し、それによりサンプルの表面の吸着物を除去する(このとき、サンプル浄化後のバネ長さ、x 、mm)。次に室温に降温し、ピリジン(又はn-ブチルピリジン)を飽和まで吸着させ、次に160℃に昇温して、1時間平衡化し、物理的に吸着させたピリジンを脱着させ(このとき、ピリジン吸着後のバネ長さ、x 、mm)、ピリジン(又はn-ブチルピリジン)重量吸着法によって全酸量を求めた。
【0077】
全酸量は、ピリジン重量吸着法により計算され、具体的には、以下のとおりである。
【0078】
【数2】
【0079】
注:79.1、136.1はそれぞれピリジン、n-ブチルピリジンのモル質量であり、単位はg/molである。
【0080】
表面積及び細孔体積は、低温窒素吸着(BET法)により測定され、
分子篩中のNa O含有量、分子篩SiO /Al モル比は蛍光法により測定され、
分子篩の格子定数、相対結晶化度は、XRD方法により測定され、機器としてRigaku Dmax-2500 X線回折計を用い、Cukα放射、グラファイト単結晶フィルター、操作チューブの電圧35KV、チューブ電流40mA、走査速度(2θ)2°/min、走査範囲4°~35°を用いる。標準試料は本発明の実施例1で使用されるY型分子篩原粉である。
【0081】
テールオイルの収率は、製品実際沸点のカットデータから算出される。
【0082】
BMCI測定方法:BMCI=48640/T+473.7d-456.8
d:密度(15.6℃)
T:絶対温度Kで表される平均沸点。
【0083】
実施例1
(1)NaY型分子篩原粉(Na O含有量 10重量%、SiO /Al モル比 5.0)を、濃度1.0mol/Lの硝酸アンモニウムと、3:1の液固比で混合し、70℃でアンモニウムイオン交換を3h行い、このプロセスを3回繰り返し、得た脱ナトリウムY型分子篩には、Na O含有量は2.5重量%であった。
【0084】
(2)脱ナトリウムY型分子篩と水蒸気を、550℃、0.1MPaで接触させて、水熱脱アルミニウムを2h行い、このプロセスを1回繰り返し、水熱脱アルミニウムの生成物を得た。
【0085】
(3)水熱脱アルミニウムの生成物を5:1の液固比で0.5mol/Lの硫酸アルミニウム溶液と混合し、次に、80℃で恒温反応を2h行って、脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を得た。
【0086】
(4)脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を0.8mol/LのNaNO 水溶液に加えて、60℃でナトリウムイオン交換を2h行って、ナトリウム含有Y型分子篩を得た。
【0087】
(5)ナトリウム含有Y型分子篩を、濃度0.5mol/Lの臭化ベンジルトリブチルアンモニウム水溶液に加え、70℃で3h浸漬処理した。
【0088】
(6)ステップ(5)で得た生成物を、120℃で4h乾燥させ、550℃で4h焙焼し、変性Y型分子篩を得て、番号Y-1とした。
【0089】
実施例2
(1)NaY分子篩原粉を、濃度2.0mol/Lの塩化アンモニウムと3:1の液固比で混合し、80℃でアンモニウムイオン交換を2h行い、このプロセスを1回繰り返し、得た脱ナトリウムY型分子篩には、Na O含有量は2.7重量%であった。
【0090】
(2)脱ナトリウムY型分子篩と水蒸気を、600℃、0.1MPaで接触させて、水熱脱アルミニウムを2h行い、このプロセスを1回繰り返し、水熱脱アルミニウムの生成物を得た。
【0091】
(3)水熱脱アルミニウムの生成物を5:1の液固比で濃度0.4mol/Lのフルオロケイ酸アンモニウム溶液と混合し、次に90℃で恒温反応を2h行い、脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を得た。
【0092】
(4)脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を2.0mol/LのNaNO 水溶液に加えて、80℃でナトリウムイオン交換を2h行って、ナトリウム含有Y型分子篩を得た。
【0093】
(5)ナトリウム含有Y型分子篩を濃度1.5mol/Lの塩化ベンジルトリブチルアンモニウム水溶液に加え、70℃で3h浸漬処理した。
【0094】
(6)ステップ(5)で得た生成物を、120℃で4h乾燥させ、550℃で4h焙焼し、変性Y型分子篩を得て、番号Y-2とした。
【0095】
実施例3
(1)NaY分子篩原粉を濃度3.0mol/Lの硫酸アンモニウムと3:1の液固比で混合し、80℃でアンモニウムイオン交換を2h行い、このプロセスを1回繰り返し、得た脱ナトリウムY型分子篩には、Na O含有量は2.3重量%であった。
【0096】
(2)脱ナトリウムY型分子篩と水蒸気を、630℃、0.1MPaで接触させて、水熱処理を2h行い、このプロセスを1回繰り返し、水熱脱アルミニウムの生成物を得た。
【0097】
(3)水熱脱アルミニウムの生成物を5:1の液固比で濃度0.6mol/Lの希硝酸溶液と混合し、次に、95℃で恒温反応を2h行って、脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を得た。
【0098】
(4)脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を1.5mol/LのNaNO 水溶液に加えて、70℃でナトリウムイオン交換を2h行って、ナトリウム含有Y型分子篩を得た。
【0099】
(5)ナトリウム含有Y型分子篩を、濃度1.2mol/Lの臭化ベンジルトリプロピルアンモニウム水溶液に加え、80℃で2h浸漬処理した。
【0100】
(6)ステップ(5)で得た生成物を、120℃で4h乾燥させ、550℃で4h焙焼し、変性Y型分子篩を得て、番号Y-3とした。
【0101】
実施例4
(1)NaY型分子篩原粉を濃度0.5mol/Lの硝酸アンモニウムと3:1の液固比で混合し、70℃でアンモニウムイオン交換を3h行い、このプロセスを3回繰り返し、得た脱ナトリウムY型分子篩には、Na O含有量は2.5重量%であった。
【0102】
(2)脱ナトリウムY型分子篩を6:1の液固比で0.2mol/Lフルオロケイ酸アンモニウム処理溶液と混合し、次に、80℃で恒温反応を2h行った。
【0103】
(3)ステップ(2)で得た生成物と水蒸気を0.2MPa、520℃接触させて、水熱処理を2h行い、このプロセスを1回繰り返した。
【0104】
(4)ステップ(3)で得た生成物を5:1の液固比で0.6mol/Lの硫酸アルミニウム溶液と混合して撹拌し、次に、75℃で恒温反応を2h行って、脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を得た。
【0105】
(5)脱ナトリウム・脱アルミニウムY型分子篩を0.6mol/LのNaNO 水溶液に加えて、50℃でナトリウムイオン交換を2h行って、ナトリウム含有Y型分子篩を得た。
【0106】
(6)ナトリウム含有Y型分子篩を、濃度0.5mol/Lの臭化ベンジルトリブチルアンモニウム水溶液に加え、60℃で5h浸漬処理した。
【0107】
(7)ステップ(6)で得た生成物を、120℃で4h乾燥させ、550℃で4h焙焼し、変性Y分子篩を得て、番号Y-4とした。
【0108】
比較例1
(1)NaY型分子篩原粉を濃度0.5mol/Lの硝酸アンモニウムと3:1の液固比で混合し、70℃でアンモニウムイオン交換を3h行い、このプロセスを3回繰り返し、得た脱ナトリウムY型分子篩には、Na O含有量は2.5重量%であった。
【0109】
(2)アンモニウム交換Y分子篩と水蒸気を550℃、0.1MPaで接触させて、水熱処理を2h行い、このプロセスを1回繰り返し、水熱脱アルミニウムの生成物を得た。
【0110】
(3)水熱脱アルミニウムの生成物を5:1の液固比で0.5mol/Lの硫酸アルミニウム溶液と混合し、次に、80℃で恒温反応を2h行った。
【0111】
(4)ステップ(3)で得た生成物を、120℃で4h乾燥させ、550℃で4h焙焼し、変性Y型分子篩を得て、番号B-1とした。
【0112】
比較例2
(1)NaY型分子篩原粉を濃度0.5mol/Lの硝酸アンモニウムと3:1の液固比で混合し、70℃でアンモニウムイオン交換を3h行い、このプロセスを3回繰り返し、得た脱ナトリウムY型分子篩には、Na O含有量は2.5重量%であった。
【0113】
(2)ステップ(1)で得た生成物を6:1の液固比で0.2mol/Lフルオロケイ酸アンモニウム処理溶液と混合し、次に、80℃で恒温反応を2h行った。
【0114】
(3)ステップ(2)で得た生成物と水蒸気を0.2MPa、520℃で接触させて、水熱処理を2h行い、このプロセスを1回繰り返した。
【0115】
(4)ステップ(3)で得た分子篩を5:1の液固比で0.6mol/Lの硫酸アルミニウム溶液と混合して撹拌し、次に、75℃で恒温反応を2h行った。
【0116】
(5)ステップ(4)で得た生成物を、120℃で4h乾燥させ、550℃で4h焙焼し、変性Y型分子篩を得て、番号B-2とした。
【0117】
比較例3
(1)NaY型分子篩原粉200gを濃度0.5mol/Lの硝酸アンモニウムと3:1の液固比で混合し、70℃でアンモニウムイオン交換を3h行い、このプロセスを3回繰り返し、得た脱ナトリウムY型分子篩には、Na O含有量は2.5重量%であった。
【0118】
(2)脱ナトリウムY型分子篩を560℃、0.1MPaで、水熱処理を2h行った。
【0119】
(3)ステップ(2)で得た分子篩を5:1の液固比で蒸留水と混合して撹拌し、次に80℃に昇温し、撹拌しながら0.5mol/Lの硫酸アルミニウム溶液400mlを加え、恒温反応を2h行った。
【0120】
(4)ステップ(3)で得た分子篩を140℃で8min乾燥させた。
【0121】
(5)ステップ(4)で得た分子篩を、ブタジエン雰囲気で満たされた密閉容器に投入し、圧力を0.3MPaに制御しながら20min十分に接触させ、次に、空気雰囲気下、200℃で15h加熱した。
【0122】
(6)ステップ(5)で得た分子篩を、5:1の液固比で蒸留水と混合し、次に、濃度0.6mol/Lのフルオロケイ酸アンモニウム溶液100mlを加えて、80℃で2h処理した。
【0123】
(7)ステップ(6)のフルオロケイ酸アンモニウム処理を経たY分子篩を、120℃で2h乾燥させ、550℃で4h焙焼し、変性Y分子篩を得て、番号B-3とした。
【0124】
上記実施例及び比較例で製造した分子篩の特性を表1に示した。
【0125】
【表1】
【0126】
表1のデータから明らかなように、本発明による技術案の実施例により製造した変性Y型分子篩は、ピリジン赤外分光法による全酸量とn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比が、1~1.2、好ましくは1.02~1.15、より好ましくは1.05~1.12、特に好ましくは1.03~1.09であった。一方、比較例で得た変性Y型分子篩のピリジン赤外分光法による全酸量とn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比は、1.2よりも大きく、1.4~1.7であった。
【0127】
実施例5
実施例1~4及び比較例1~3で製造した変性Y型分子篩を用いて水素化分解触媒を製造し、触媒の成分組成を表2に示した。
【0128】
(1)変性Y型分子篩と酸化アルミニウムを混合して担体混合材料とし、次に、担体混合材料に質量百分率20重量%の硝酸水溶液を加えてスラリーとし、押出成形を行った。
【0129】
(2)ステップ(1)で得た押出生成物を100℃で3h乾燥させ、次に450℃で3h焙焼し、シリカ-アルミナ担体を得た。
【0130】
(3)水素化活性金属を含有する溶液においてシリカ-アルミナ担体を飽和浸漬して、得た生成物を乾燥させて焙焼し、水素化分解触媒を得た。
【0131】
得た触媒に対応する番号は、実施例1~4の変性Y型分子篩Y-1~Y-4に対応する触媒はC-1~C-4であえり、比較例1~3の変性Y型分子篩B-1~B-3に対応する触媒はBC-1~BC-3である。表2に示した。
【0132】
【表2】
【0133】
評価例1
触媒C-1~C-4及びBC-1~BC-3を小型マイクロ反応装置(米国xytel社製の100ml小型評価装置)において評価試験を行い、評価装置には、1段直列式ワンパスプロセスが使用され、第1反応器には従来の精製触媒が充填され、第2反応器には表2の水素化分解触媒が充填され、反応原料油の特性を表3、評価結果を表4~表5に示した。
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
【表5】
【0137】
表5の結果から明らかなように、実施例1~4の本発明による変性Y型分子篩を用いて製造した水素化分解触媒C-1~C-4では、分子篩に最適化された酸性中心の分布を有し、ミクロ孔における酸性中心の量が減少し、水素化分解反応を行う場合、得た水素化分解によるテールオイル製品のBMCI値は、比較例1~3の変性Y型分子篩(ピリジン赤外分光法による全酸量とn-ブチルピリジン赤外分光法による全酸量との比は1.2より大きい)を用いて製造された水素化分解触媒による反応結果よりも有意に低く、また、C 液体収率は比較例の触媒による反応結果よりも大きかった。
【0138】
また、比較例3は、従来技術による変性Y型分子篩を提供し、変性Y型分子篩粒子の体相と表面でのシリカ/アルミナ比が使用されている。この変性方法は、分子篩の局所のシリカ/アルミナ比を変えることで分子篩の酸量へ影響を及ぼすが、この方法は、Y型分子篩のマクロ孔とミクロ孔における酸性中心サイトの分布を変えることができず、ミクロ孔における酸中心サイトを露出させたままであり、ピリジン酸量とn-ブチルピリジン酸量との比が1.2より大きいため、ミクロ孔に入った炭化水素が酸中心サイトで二次分解反応を行う可能性を減少させることができず、水素化分解に用いられる場合は、水素化分解によるテールオイルの品質を改善し、反応の液体製品の収率を向上させることもできなかった。
【0139】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の技術的構想の範囲内で、本発明の技術案に対して、他の適切な方式による様々な技術的特徴の組み合わせを含む様々な簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形及び組み合わせも、本発明の開示と見なされるべきであり、すべて本発明の特許範囲に属する。