(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】電解質組成物、電解質膜及び電解質膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20221102BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221102BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20221102BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
C08F299/00
H01B1/06 A
(21)【出願番号】P 2020534132
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2019026822
(87)【国際公開番号】W WO2020026702
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018144258
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019089011
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 慎弥
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505514(JP,A)
【文献】国際公開第2013/042503(WO,A1)
【文献】特表2015-537352(JP,A)
【文献】特開2015-168754(JP,A)
【文献】特開2019-009043(JP,A)
【文献】ECHEVERRI, M et al.,Highly conductive, completely amorphous polymer electrolyte membranes fabricated through photo-polymerization of poly(ethylene glycol diacrylate) in mixtures of solid plasticizer and lithium salt,Solid State Ionics,2013年12月10日,Vol.254,p.92-100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0565
H01M 10/052
C08F 299/00
H01M 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属塩としてビスフルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩を含む電解質組成物であって、
該組成物は、更に光及び/又は熱硬化性モノマーと塩解離剤とを含み、アルカリ金属塩の含有割合が、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤との総量100質量%に対して50質量%以上であり、
前記塩解離剤が、カーボネート化合物、スルホニル化合物及びニトリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記光及び/又は熱硬化性モノマーが、アルキレンオキシド由来の構造単位を有する
モノマーを含有し、
前記光及び/又は熱硬化性モノマーの含有量は、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤との総量100質量%に対して10~45質量%であり、
前記アルキレンオキシド由来の構造単位を有するモノマーの含有量は、光及び/又は熱硬化性モノマーの総量100質量%に対して30~100質量%であることを特徴とする電解質組成物。
【請求項2】
前記光及び/又は熱硬化性モノマーは、多官能性モノマーを含むことを特徴とする請求項
1に記載の電解質組成物。
【請求項3】
前記電解質組成物が、重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の電解質組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載の電解質組成物を硬化して得られる電解質膜であり、
該電解質膜は、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマー由来の構造単位を有する重合体と、塩解離剤とを含むことを特徴とする電解質膜。
【請求項5】
前記電解質膜は、前記塩解離剤よりも低い沸点を有する有機溶媒を含んでいてもよく、該有機溶媒の含有量が、アルカリ金属塩、光及び/又は熱硬化性モノマー由来の構造単位を有する重合体、並びに塩解離剤の含有量の合計100質量%に対して20質量%以下であることを特徴とする請求項
4に記載の電解質膜。
【請求項6】
電解質膜を製造する方法であって、
該製造方法は、請求項1~
3のいずれかに記載の電解質組成物を硬化する工程を含み、該硬化工程における塩解離剤よりも低い沸点を有する有機溶媒の使用量が、該組成物中のアルカリ金属塩、光及び/又は熱硬化性モノマー並びに塩解離剤の含有量の合計100質量%に対して20質量%以下であることを特徴とする電解質膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質組成物、電解質膜及び電解質膜の製造方法に関する。より詳しくは、リチウムイオン電池等の電池用材料として好適に用いることができる電解質組成物、これを含有する電解質膜、及び、電解質膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりを背景に、石油や石炭等の化石燃料からのエネルギー資源の転換が進んでおり、それとともに電池の重要性が高まり、需要増大が見込まれるところである。中でも、繰り返し充放電を行うことができる二次電池は、携帯電話やノートパソコン等の電子機器だけでなく、自動車や航空機等、様々な分野においても使用がすすんでおり、各種二次電池や二次電池に用いられる材料について、研究、開発が行われている。特に、容量が大きく、軽量のリチウムイオン電池については、今後の利用の拡大が最も期待される二次電池であり、最も研究、開発が活発に行われている電池である。
【0003】
このような電池の研究、開発において、全固体電池に用いられる電解質のイオン伝導度を向上させる技術が開発されている。例えば、特許文献1には、架橋性基を有するポリエーテル重合体と、電解質塩化合物と、光重合開始剤として所定の構造で表される化合物と、を含有する固体電解質組成物が開示されている。また、特許文献2には、所定の構造で表され、分子量が300以下であるカーボネート基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合体と、電解質塩とを含む高分子固体電解質が開示されている。特許文献3には、エーテル結合を側鎖に有する重合体及び電解質塩を必須成分とする電解質材料であって、該重合体は、所定の構造で表される単量体を含む単量体成分から得られる重合体を含み、該電解質塩は、R3SO2N-SO2R4(R3及びR4は、同一又は異なって、F、CF3、C2F5のいずれかを表す。)、PF6-、BF4-、CF3SO3-、テトラシアノボレートからなる群より選択される少なくとも1種のアニオンと、アルカリ金属カチオンとからなるイオン性化合物を含むことを特徴とする電解質材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/119460号
【文献】特開2008-218237号公報
【文献】特開2011-142073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、種々の電解質組成物等が開発されている。しかし、従来の電解質組成物を用いた電解質膜は、電池性能の点で充分ではなかった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、得られる電解質膜が従来の電解質膜よりも電池性能に優れる電解質組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、このような電解質組成物を用いた電解質膜、及び、電解質膜の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、電解質組成物について種々検討したところ、所定量のアルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤とを含む組成物を用いて得られた電解質膜が、従来の電解質膜よりも優れた電池性能を発揮することを見いだした。具体的には、上記成分を含む組成物を用いて得られた電解質膜が、アルカリ金属イオン輸率に優れ、かつ、通電試験において印加する電流値を上げて膜に負荷をかけた際にもイオン伝導性に優れ、これにより、このような電解質膜を組み込んだ電池が放電電圧、放電容量に優れることを見いだした。更に本発明者は、上記成分を含む組成物は、溶媒を用いなくても電解質膜を形成することができることも見出した。このように上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、アルカリ金属塩を含む電解質組成物であって、上記組成物は、更に光及び/又は熱硬化性モノマーと塩解離剤とを含み、アルカリ金属塩の含有割合が、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤との総量100質量%に対して50質量%以上である電解質組成物である。
【0009】
上記アルカリ金属塩は、下記式(1);
MN(SO2R1)(SO2R2) (1)
(式中、Mはアルカリ金属イオンを表す。R1、R2は、同一又は異なって、フッ素原子又は炭素数1~3のフルオロアルキル基を表す。)で表されることが好ましい。
【0010】
上記アルカリ金属塩が、ビスフルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩であることが好ましい。
【0011】
上記光及び/又は熱硬化性モノマーは、ヘテロ元素を有することが好ましい。
【0012】
上記光及び/又は熱硬化性モノマーは、1種または複数用いても良く、多官能性モノマーを含むことが好ましい。
【0013】
上記塩解離剤がスルホニル化合物であることが好ましい。
【0014】
上記塩解離剤がカーボネート化合物であることが好ましい。
【0015】
上記塩解離剤がニトリル化合物であることが好ましい。
【0016】
上記電解質組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。
【0017】
本発明はまた、上記電解質組成物を硬化して得られる電解質膜であり、上記電解質膜は、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマー由来の構造単位を有する重合体と、塩解離剤とを含む電解質膜でもある。
【0018】
上記電解質膜は、上記塩解離剤よりも低い沸点を有する有機溶媒を含んでいてもよく、上記有機溶媒の含有量は、アルカリ金属塩、光及び/又は熱硬化性モノマー由来の構造単位を有する重合体、並びに塩解離剤の含有量の合計100質量%に対して20質量%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明は更に、電解質膜を製造する方法であって、上記製造方法は、上記電解質組成物を硬化する工程を含み、上記硬化工程における塩解離剤よりも低い沸点を有する有機溶媒の使用量が、上記組成物中のアルカリ金属塩、光及び/又は熱硬化性モノマー並びに塩解離剤の含有量の合計100質量%に対して20質量%以下である電解質膜の製造方法でもある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電解質組成物は、上述の構成よりなり、得られる電解質膜が従来の電解質膜よりも電池性能に優れるため、リチウムイオン電池等の電池用材料等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例2-1、2-2及び比較例2-1で製造したコイン型リチウムイオン2次電池について、充放電試験を行った結果、得られた放電曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0023】
[電解質組成物]
本発明の電解質組成物は、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤とを含み、アルカリ金属塩の含有割合が、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤との総量100質量%に対して50質量%以上である。上記組成物がこのような成分を含むことにより、得られる電解質膜が電池性能に優れる。それに加えて更に上記組成物を用いることにより、無溶媒で成膜することができる。また、上記組成物は光及び/又は熱硬化性モノマーを含むことにより、該組成物を硬化して電解質膜を得る際に上記モノマーが重合するため、得られる電解質膜は機械強度に優れ、自立膜性にも優れる。
【0024】
上記組成物中のアルカリ金属塩の含有割合は、特に制限されないが、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤との総量100質量%に対して50質量%以上であることが好ましい。これにより得られる電解質膜のイオン伝導性がより向上することとなる。従来の電解質組成物では、製膜性の観点からアルカリ金属塩濃度を高めることは困難であったが、本発明ではアルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤とを含む組成物とすることにより、アルカリ金属塩を高濃度で含む場合にも、製膜性の低下を充分に抑制しつつ、イオン伝導性をより向上させることができる。また、アルカリ金属塩濃度が高い場合には、アニオンが形成する伝導パスがアルカリ金属イオンの伝導性に大きく関与すると考えられるため、組成物が塩解離剤を含み、組成物中でアルカリ金属イオンとアニオンとを解離させることに、特に技術的意義を有する。アルカリ金属塩の含有割合としてより好ましくは52質量%以上であり、更に好ましくは54質量%以上であり、一層好ましくは56質量%以上であり、特に好ましくは58質量%以上である。また、上記アルカリ金属塩の含有割合は、98質量%以下であることが好ましく、より好ましくは95質量%以下であり、更に好ましくは90質量%以下であり、特に好ましくは88質量%以下である。
【0025】
上記電解質組成物における光及び/又は熱硬化性モノマーの含有量は、特に制限されないが、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤との総量100質量%に対して、10~45質量%であることが好ましい。これによりアルカリ金属塩濃度が高濃度であっても、重合反応が充分に進行し、機械強度により優れる電解質膜が得られる。光及び/又は熱硬化性モノマーの含有量としてより好ましくは13~43質量%であり、特に好ましくは15~40質量%である。アルカリ金属塩、塩解離剤、重合開始剤やその他の成分の含有量によっては、光及び/又は熱硬化性モノマーの含有量が18~38質量%であってもよい。なお、上記電解質組成物が2種以上の光及び/又は熱硬化性モノマーを含む場合、該モノマーの含有量は、2種以上のモノマーの合計の含有量を表す。
【0026】
上記電解質組成物における塩解離剤の含有量は、特に制限されないが、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤との総量100質量%に対して、0.5~30質量%であることが好ましい。これによりアルカリ金属塩濃度が高濃度であっても、より充分にイオンが解離し、イオン伝導性がより向上する。より好ましくは1~28質量%であり、更に好ましくは2~26質量%であり、一層好ましくは5~25質量%であり、更に一層に好ましくは8~20質量%であり、特に好ましくは10~20質量%である。アルカリ金属塩、光及び/又は熱硬化性モノマー、重合開始剤やその他の成分の含有量によっては、塩解離剤の含有量が15質量%以下であっても、12質量%以下であっても、10質量%以下であってもよい。
【0027】
上記電解質組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。これにより電解質組成物を用いて電解質膜を得る際に、より充分に硬化することができる。上記電解質組成物における重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、光及び/又は熱硬化性モノマー100質量%に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上である。また、重合開始剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは9質量%以下であり、更に好ましくは8質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。重合開始剤の含有量が0.1~10質量%であれば、電解質膜の特性を失うことを充分に抑制しつつ、膜の強度をより充分に高めることができる。
【0028】
上記電解質組成物は、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤、重合開始剤以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分の含有量は、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤との総量100質量%に対して、0~30質量%であることが好ましい。より好ましくは0~25質量%であり、更に好ましくは0~15質量%である。
【0029】
以下では、本発明の電解質組成物に含まれる必須成分及び任意成分について更に説明する。
<アルカリ金属塩>
上記アルカリ金属塩は、特に制限されず、アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられる。好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウムであり、より好ましくはリチウムである。
上記アルカリ金属塩としては、例えば、LiFSO3等のフルオロスルホン酸のアルカリ金属塩;LiCF3SO3等のトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩;LiN(FSO2)2等のイミド系アルカリ金属塩;LiC(CF3SO2)3等のパーフルオロアルカンスルホニルメチドのアルカリ金属塩;LiPFa(CmF2m+1)6-a(0≦a≦6、1≦m≦2)等のフルオロリン酸塩;LiClO4等の過塩素酸アルカリ金属塩;LiBFb(CnF2n+1)4-b(0≦b≦4、1≦n≦2)等のフルオロホウ酸塩;LiBOB等のオキサラトボレートのアルカリ金属塩;リチウムテトラシアノボレート等のシアノホウ酸塩;LiAsF6、LiI、LiSbF6等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0030】
中でも好ましくはLiN(FSO2)2等のイミド系アルカリ金属塩であり、より好ましくは下記式(1);
MN(SO2R1)(SO2R2) (1)
(式中、Mはアルカリ金属イオンを表す。R1、R2は、同一又は異なって、フッ素原子又は炭素数1~3のフルオロアルキル基を表す。)で表される化合物である。
上記Mにおけるアルカリ金属は上述のとおりである。
上記R1、R2における炭素数1~3のフルオロアルキル基は、炭素数1~3の炭化水素基が有する水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されたものであればよい。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。R1、R2として好ましくは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基であり、より好ましくは、フッ素原子、トリフルオロメチル基であり、最も好ましくはフッ素原子である。
【0031】
上記式(1)で表される化合物の中でも好ましくはビスフルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩であり、より好ましくはLiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2であり、更に好ましくはLiN(FSO2)2である。
【0032】
上記電解質組成物がLiN(FSO2)2及び/又はLiN(CF3SO2)2を含む場合、LiN(FSO2)2及びLiN(CF3SO2)2の合計の含有量は、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤との総量100質量%に対して、50~98質量%であることが好ましい。より好ましくは52~95質量%であり、更に好ましくは55~90質量%である。
【0033】
<光及び/又は熱硬化性モノマー>
光及び/又は熱硬化性モノマーは、光及び/又は熱により重合可能な官能基を有するものであれば特に制限されない。上記官能基としては、重合性不飽和基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。
光及び/又は熱硬化性モノマーはまた、ヘテロ元素を有するものであることが好ましい。
ヘテロ元素としては、窒素、酸素、硫黄、リン、塩素、ヨウ素、臭素等の元素が挙げられるが、好ましくは酸素、窒素であり、より好ましくは酸素である。
光及び/又は熱硬化性モノマーは、重合可能な官能基を1つ有していても、2つ以上有していてもよく、単官能性モノマーとしては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の置換基を有していてもよいアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート類;2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;ブチルグリシジルエーテル、tert-ブチルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシル-グリシジルエーテル等の単官能エポキシ化合物;エチレングリコールモノアリルエーテル等の単官能アリルエーテル化合物等が挙げられる。
【0034】
重合可能な官能基を2以上有する多官能性モノマーとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸α-メチルグリシジル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、エポキシブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエン、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロへキセン、1,2-エポキシ-5-シクロオクテン、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、4-ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α-テルペニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、4-ビニルベンジルグリシジルエーテル、4-アリルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールアリルグリシジルエーテル、エチレングリコールビニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールビニルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールビニルグリシジルエーテル、オリゴエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、オリゴエチレングリコールビニルグリシジルエーテル等の多官能エポキシ化合物;ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の多官能ビニル化合物;2-(メタ)アクロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクロイルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,αジメチルベンジルイソシアネート等のシアネート基含有化合物、ウレタン結合とアクリレート基を有するウレタンアクリレート等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても良い。
上記光及び/又は熱硬化性モノマーとして多官能性モノマーを含むことが好ましい。
【0035】
上記光及び/又は熱硬化性モノマーとしてはまた、エーテル基を有するものが好ましい。より好ましくはアルキレンオキシド由来の構造単位を有するものを有するものである。
アルキレンオキシド由来の構造単位を有する光及び/又は熱硬化性モノマーとしては、上述の(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート類、多官能(メタ)アクリレート類、多官能エポキシ化合物等が挙げられる。
また、アルキレンオキシド由来の構造単位を有する光及び/又は熱硬化性モノマーとこれ以外の多官能性モノマーとを併用することも好ましい。併用する多官能性モノマーとして好ましくはウレタンアクリレートである。
アルキレンオキシド由来の構造単位を有する単官能性モノマーとウレタンアクリレートとを併用する形態は本発明の好適な実施形態の1つである。
アルキレンオキシド由来の構造単位を有する単官能性モノマーとしては、下記式(2);
【0036】
【0037】
(式中、R3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。R4は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。A1Oは、同一又は異なって、オキシアルキレン基を表す。n1は、1~50の数を表す。)で表される化合物が好ましい。
また、アルキレンオキシド由来の構造単位を有する多官能性モノマーとしては、下記式(3);
【0038】
【0039】
(式中、R4は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。A2Oは、同一又は異なって、オキシアルキレン基を表す。n2は、1~50の数を表す。)で表される化合物が好ましい。
【0040】
上記式(2)におけるR3は、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基である。
炭素数1~30の炭化水素基としては、炭素数1~30の脂肪族アルキル基、炭素数3~30の脂環式アルキル基、炭素数6~30のアリール基等が挙げられる。
【0041】
上記脂肪族又は脂環式アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基(アミル基)、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコサニル基、i-プロピル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、i-アミル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、t-アミル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-エチル-2-メチルプロピル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、t-オクチル基、分岐したノニル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基、イコシル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基(C7)、アダマンチル基(C10)、シクロペンチルエチル基等が挙げられる。
上記炭素数1~30のアルキル基の炭素数として、好ましくは1~22であり、より好ましくは1~18であり、更に好ましくは1~12であり、一層好ましくは1~8であり、特に好ましくは1~4である。
【0042】
炭素数6~30のアリール基としては、例えば、フェニル基;ナフチル基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、スチリル基(Ph-CH=C-基)、シンナミル基(Ph-CH=CHCH2-基)、1-ベンゾシクロブテニル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
上記炭素数6~30のアリール基の炭素数としては、好ましくは6~20であり、より好ましくは6~10である。
【0043】
上記式(2)におけるA1O、上記式(3)におけるA2Oは、「同一又は異なって、」オキシアルキレン基を表すが、これは、ポリアルキレングリコール中にn1個又はn2個存在するオキシアルキレン基が全て同一であってもよく、異なっていてもよいことを意味する。
上記オキシアルキレン基は、アルキレンオキシド付加物であり、このようなアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド等の炭素数2~8のアルキレンオキシドが挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
また、上記ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物である場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。更に、ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン基として、オキシエチレン基を必須成分として有することが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、80モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましい。
【0044】
上記式(2)におけるn1は、1~50であり、好ましくは2~45であり、より好ましくは5~40である。
上記式(3)におけるn2は、1~50であり、好ましくは2~45であり、より好ましくは5~40である。
上記式(2)及び(3)におけるR4は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0045】
アルキレンオキシド由来の構造単位を有する単官能性モノマーとしては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートがより好ましい。更に好ましくはメトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートである。
【0046】
アルキレンオキシド由来の構造単位を有する多官能性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましい。更に好ましくは、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0047】
光及び/又は熱硬化性モノマーは、上述のとおり多官能性モノマーを含むことが好ましく、その含有量は、光及び/又は熱硬化性モノマーの総量100質量%に対して30~100質量%であることが好ましい。より好ましくは40~100質量%であり、更に好ましくは50~100質量%である。
また、光及び/又は熱硬化性モノマーは、上述のとおりアルキレンオキシド由来の構造単位を有するモノマーを含むことが好ましく、その含有量は、光及び/又は熱硬化性モノマーの総量100質量%に対して30~100質量%であることが好ましい。より好ましくは40~100質量%であり、更に好ましくは50~100質量%である。
また、アルカリ金属塩の溶解性の観点からは、アルキレンオキシド由来の構造単位を有するモノマーの含有量は、光及び/又は熱硬化性モノマーの総量100質量%に対して60~100質量%であっても、80~100質量%であってもよい。
【0048】
光及び/又は熱硬化性モノマーの分子量は特に制限されないが、4000以下であることが好ましい。より好ましくは3800以下であり、更に好ましくは3500以下である。
【0049】
<塩解離剤>
上記塩解離剤は、アルカリ金属塩のイオンへの解離を促進するものであれば特に制限されないが、ヘテロ元素を有する化合物が好ましい。
上記ヘテロ元素を有する化合物としては、カーボネート化合物、スルホニル化合物、ニトリル化合物、カルボン酸無水物、硫酸エステル化合物、チオエーテル化合物、亜硫酸エステル化合物、含窒素鎖状化合物、含窒素環状化合物等が挙げられる。
これらの中でもカーボネート化合物、スルホニル化合物及び/又はニトリル化合物が好ましい。上記塩解離剤がカーボネート化合物、スルホニル化合物及び/又はニトリル化合物を含むことにより、アルカリ金属塩のイオンへの解離がより促進され、組成物のイオン伝導性がより向上する。
【0050】
カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、メチルビニレンカーボネート(MVC)、エチルビニレンカーボネート(EVC)等の環状カーボネート;フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等のフッ素化環状カーボネートが挙げられる。これらの中でもエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートが好ましく、より好ましくはエチレンカーボネートである。
【0051】
スルホニル化合物としては、例えば、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、tert-ブチルメチルスルホン等のスルホン類;スルホラン(テトラメチレンスルホン)、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン等のスルホラン類;1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン等のスルトン類;ブスルファン、3-スルホレン等が挙げられる。
スルホニル化合物としては、ジメチルスルホン、3-スルホレン及びスルホランが好ましい。
【0052】
ニトリル化合物としては、例えば、モノニトリル化合物やジニトリル化合物が挙げられる。
モノニトリル化合物としては、例えば、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、ペラルゴノニトリル、デカンニトリル、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、クロトノニトリル、3-メチルクロトノニトリル、2-メチル-2-ブテン二トリル、2-ペンテンニトリル、2-メチル-2-ペンテンニトリル、3-メチル-2-ペンテンニトリル及び2-ヘキセンニトリル等が挙げられる。
【0053】
ジニトリル化合物としては、例えば、マロノニトリル、スクシノニトリル(サクシノニトリル)、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert-ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2-ジメチルスクシノニトリル、2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,3,3-トリメチルスクシノニトリル、2,2,3,3-テトラメチルスクシノニトリル、2,3-ジエチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,2-ジエチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル、ビシクロヘキシル-1,1-ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル-2,2-ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル-3,3-ジカルボニトリル、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジカルボニトリル、2,3-ジイソブチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,2-ジイソブチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2,3-ジメチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタロニトリル、2,2,3,3-テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4-テトラメチルグルタロニトリル、2,2,3,4-テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4-テトラメチルグルタロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、1,4-ジシアノペンタン、2,6-ジシアノヘプタン、2,7-ジシアノオクタン、2,8-ジシアノノナン、1,6-ジシアノデカン、1,2-ジシアノベンゼン、1,3-ジシアノベンゼン、1,4-ジシアノベンゼン、3,3’-(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’-(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル及び3,9-ビス(2-シアノエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0054】
ニトリル化合物として好ましくは、ジニトリル化合物であり、より好ましくは下記式(4);
【0055】
【0056】
(式中、R5は、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基を表す。)で表される化合物である。
上記R5としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル等が挙げられる。
ジニトリル化合物として好ましくは、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリルであり、より好ましくはマロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリルである。
【0057】
カルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0058】
硫酸エステル化合物としては、例えば、メタンスルホン酸メチル、トリメチレングリコール硫酸エステル等が挙げられる。
チオエーテル化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド等が挙げられる。
亜硫酸エステル化合物としては、例えば、エチレンサルファイト等が挙げられる。
【0059】
含窒素化合物としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の含窒素鎖状化合物、1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルスクシンイミド等の含窒素環状化合物等が挙げられる。
【0060】
塩解離剤としては、より好ましくはマロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、スルホラン、ジメチルアセトアミドであり、更に好ましくはマロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルアセトアミドであり、最も好ましくはスクシノニトリル、エチレンカーボネートである。
【0061】
<重合開始剤>
本発明の電解質組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては光ラジカル重合開始剤や、熱ラジカル開始剤、アニオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤、エポキシ樹脂硬化剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により重合開始ラジカルを発生させ、熱ラジカル重合開始剤は加熱により重合開始ラジカルを発生させることができる。光アニオン重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により重合開始アニオン種を発生させ、重合反応を開始することができる。エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させる際の硬化剤として用いられるもので、エポキシ基の開環重合反応を開始することができる。なお、ここでいうアニオン重合開始剤とは、重合開始アニオン種を発生する重合反応を開始する成分であって、光アニオン重合開始剤に該当しないものを意味する。
【0062】
上記光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリル)フェニル]-1-ブタノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドなどのベンゾフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリドなどのチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムなどのチタノセン類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)などのオキシムエステル類;オキシフェニル酢酸,2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、オキシフェニル酢酸,2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルなどのオキシフェニル酢酸エステル類;等が挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光ラジカル重合開始剤のうち、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルホスフィンオキシド類が好適であり、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが特に好適である。
【0063】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;
【0064】
2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン)]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン)]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン)]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5、6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤;
【0065】
ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジルー2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;等が挙げられる。これらの熱ラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの熱ラジカル重合開始剤のうち、有機過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤が好ましい。
【0066】
上記アニオン重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばナトリウムナフタレン、n-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルカリ金属と炭素アニオンとを有するアルカリ金属化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の、トリアルキルアルミニウム類;クロロジアルキルアルミニウム、クロロジエチルアルミニウム、クロロジプロピルアルミニウム、クロロジイソプロピルアルミニウム、クロロジブチルアルミニウム、クロロジイソブチルアルミニウム、ビスペンタメチルシクロペンタジエニルサマリウム、メチル-ビスペンタメチルシクロペンタジエニルサマリウム等が挙げられる。
【0067】
上記光アニオン重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアルコキシチタン、p-クロロフェニル-o-ニトロベンジルエーテル等が挙げられる。
これらのアニオン重合開始剤および/または光アニオン重合開始剤はそれぞれ単独で、あるいは2種以上併用して使用しても良い。
【0068】
上記エポキシ樹脂硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレンジアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン類;N-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン等の環状脂肪族ポリアミン類;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族アミン類;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類;1-シアノエチル-2-エチル-4メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;エチレングリコールビストリメリテート、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、クロレンド酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、4-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物等の酸無水物類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオリホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等の光カチオン重合開始剤;ジシアンジアミド、トリフェニルフォスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0069】
<その他の成分>
本発明の電解質組成物は、アルカリ金属塩、光及び/又は熱硬化性モノマー、塩解離剤、重合開始剤以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としてはポリエーテル系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ニトリル系重合体、フッ素系重合体等の重合体;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ペンタンニトリル、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、スルトン等の有機溶媒;等が挙げられる。
上記その他の成分の含有量としては、アルカリ金属塩、光及び/又は熱硬化性モノマー並びに塩解離剤の含有量の合計100質量%に対して30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
【0070】
[電解質膜]
本発明はまた、上記電解質組成物を硬化して得られる電解質膜でもある。
本発明は更に、電解質組成物を電解質膜の原料として使用する方法でもある。
本発明の電解質組成物は製膜性に優れるため、支持体(セパレーター)を用いずに電解質膜を形成することができる、すなわち自立膜を形成することができる。
本発明の電解質膜は、支持体を含まない自立膜であることが好ましいが、支持体を含んでいてもよい。
【0071】
上記支持体(セパレーター)としては、特に制限されないが、織布、不織布、(微)多孔質膜及びガラス成形体等が挙げられる。
上記織布及び不織布としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等のアラミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂(セルロース系繊維)等;アルミナ繊維、セラミックス繊維、ガラス繊維等からなるものが挙げられる。
上記(微)多孔質膜としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド系樹脂、ポリイミド等からなるものが挙げられる。
上記ガラス成形体としては、例えば、ガラスクロス等が挙げられる。
これらのセパレーターとしては、更に親水性を向上させるために、界面活性剤を付与する方法、発煙硫酸、クロルスルホン酸等の化学薬品によるスルホン化、フッ素化、グラフト化処理等の方法、又は、コロナ放電やプラズマ放電等による方法によって親水化処理したものを用いても良い。
上記セパレーターとしては、セルロース不織布、PET不織布、ガラス不織布、ポリオレフィン不織布、ポリオレフィン微多孔膜及びポリイミド多孔膜からなる群より選択される少なくとも1種からなるものが好ましい。より好ましくはセルロース不織布、ポリオレフィン微多孔膜である。
【0072】
上記電解質膜の膜厚は、5~300μmであることが好ましい。より好ましくは、10~250μmであり、更に好ましくは、15~200μmである。
【0073】
[電解質膜の製造方法]
本発明の電解質組成物を硬化して電解質膜を得る際に、塩解離剤よりも低い沸点を有する有機溶媒を使用してもよいが、上記電解質組成物中のアルカリ金属塩と塩解離剤を光及び/又は熱硬化性モノマーに溶解させることができる場合やアルカリ金属塩と光及び/又は熱硬化性モノマーとを塩解離剤に溶解させることができる場合には、上記有機溶媒を使用せずに電解質膜を得ることもでき安全性、環境の観点から好ましい。
本発明はまた、電解質膜を製造する方法であって、上記製造方法は、上記電解質組成物を硬化する工程を含み、上記硬化工程における、塩解離剤よりも低い沸点を有する有機溶媒の使用量が、上記組成物中のアルカリ金属塩、光及び/又は熱硬化性モノマー並びに塩解離剤の含有量の合計100質量%に対して20質量%以下である電解質膜の製造方法でもある。
本発明はまた、上記電解質組成物を硬化して得られ、上記電解質組成物中の、塩解離剤よりも低い沸点を有する有機溶媒の含有量が、アルカリ金属塩、光及び/又は熱硬化性モノマー由来の構造単位を有する重合体並びに塩解離剤の含有量の合計100質量%に対して20質量%以下である電解質膜でもある。
上記硬化工程における塩解離剤よりも低い沸点を有する有機溶媒の使用量、及び上記電解質組成物中の含有量は、好ましくは18質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、更に好ましくは12質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
【0074】
上記有機溶媒としては、塩解離剤よりも低い沸点を有するものであれば特に制限されないが、アルカリ金属塩と、光及び/又は熱硬化性モノマーと、塩解離剤とを均一に溶解するものであることが好ましい。
有機溶媒の具体例としては、好ましくはアセトニトリル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
また、有機溶媒と塩解離剤の沸点差は、好ましくは摂氏50℃以上であり、より好ましくは摂氏80℃以上であり、最も好ましくは摂氏100℃以上である。沸点差が上記好ましい範囲であれば、有機溶媒の乾燥時に塩解離剤が減少することを充分に抑制し、本発明の作用効果をより充分に発揮させることができる。
上記有機溶媒の沸点として好ましくは摂氏150℃以下であり、より好ましくは摂氏120℃以下である。
【0075】
[電池用材料]
本発明の電解質組成物は、電解質膜、電極等の各種電池用材料として好適に用いることができる。
このように、本発明の電解質組成物を用いる電池用材料もまた、本発明の1つである。
【0076】
<電極>
本発明の電解質組成物は、電池用の電極の材料として好適に用いることができる。
本発明の電解質組成物を含む電極もまた本発明の1つである。本発明の電解質組成物は、正極、負極のいずれに用いてもよい。
【0077】
正極は、正極活物質、導電助剤、結着剤および分散用溶媒等を含む正極活物質組成物が正極集電体に担持されているものであり、通常、シート状に成形されている。
【0078】
正極の製造方法としては、例えば、正極集電体に正極活物質組成物をドクターブレード法等で塗工したり、正極集電体を正極活物質組成物に浸漬した後に、乾燥する方法;正極活物質組成物を混練成形し乾燥して得たシートを正極集電体に導電性接着剤を介して接合し、プレス、乾燥する方法;液状潤滑剤を添加した正極活物質組成物を正極集電体上に塗布または流延して、所望の形状に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、一軸または多軸方向に延伸する方法;等が挙げられる。
【0079】
正極集電体の材料としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS(ステンレス鋼)、チタン等の導電性金属が使用できる。中でも、薄膜に加工し易く、安価であるという観点からは、アルミニウムが好ましい。
【0080】
正極活物質としては、イオンを吸蔵・放出可能であれば良く、従来公知の正極活物質が用いられる。具体的には、MCoO2、MNiO2、MMnO2、MNi1-x-yCoxMnyO2やMNi1-x-yCoxAlyO2(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される三元系酸化物等の遷移金属酸化物、MxNiyMn(2-y)O4(0.9≦x≦1.1、0<y<1)で表されるニッケルマンガン酸、MAPO4(A=Fe、Mn、Ni、Co)等のオリビン構造を有する化合物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料(電気化学的に不活性な層状のM2MnO3と、電気化学的に活性な層状のMM”O([M”=Co、Ni等の遷移金属]との固溶体)(Mはアルカリ金属イオンを表す)等が正極活物質として例示できる。これらの正極活物質は、1種を単独で使用してもよく、または、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、金属粉末材料、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維等が挙げられる。
【0082】
結着剤としては、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム等の合成ゴム;ポリアミドイミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリアクリル酸;カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂;等が挙げられる。これらの結着剤は単独で使用してもよく、複数種を混合して使用してもよい。また、これらの結着剤は、使用の際に溶媒に溶けた状態であっても、溶媒に分散した状態であっても構わない。
【0083】
導電助剤および結着剤の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性等を考慮して適宜調整することができる。
【0084】
正極を製造するに際して、正極活物質組成物に用いられる溶媒としては、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、エタノール、酢酸エチル、水等が挙げられる。これらの溶媒は組み合わせて使用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されず、製造方法や、使用する材料に応じて適宜決定すればよい。
【0085】
負極活物質としては、電池で使用される従来公知の負極活物質を用いることができ、イオンを吸蔵・放出可能なものであればよい。具体的には、アルカリ金属、アルカリ金属-アルミニウム合金等の金属合金、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料、石炭,石油ピッチから作られるメソフェーズ焼成体、難黒鉛化性炭素等の炭素材料、Si、Si合金、SiO等のSi系負極材料、Sn合金等のSn系負極材料を用いることができる。
【0086】
負極の製造方法としては、正極の製造方法と同様の方法を採用することができる。また、負極の製造時に使用する導電助剤、結着剤、材料分散用の溶媒も、正極で用いられるものと同様のものが用いられる。
【0087】
本発明の電解質組成物は、バインダーとして正極又は負極材料スラリーに混合したうえで基板上に塗布しても、正極又は負極材料スラリーを基板上に塗布し、乾燥させたうえで、本発明の電解質組成物を含む電解質溶液をさらに塗布して乾燥させてもよい。
【0088】
上記電解質としては、本発明の電解質組成物の他、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等を併用することができる。これらの中でも、本発明の電解質組成物を用いることが好ましい。
【0089】
<電池>
本発明は、本発明の電解質膜及び/又は電極を用いて構成される電池でもある。
本発明の電池は、セパレーターとして、上記本発明の電解質膜を備えることが好ましい。より詳細には、正極と負極とを備えた二次電池であり、正極と負極との間には電解質膜が設けられ、正極、負極等と共に外装ケースに収容されていることが好ましい。
【0090】
本発明に係る電池の形状は特に限定されず、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等、電池の形状として従来公知の形状はいずれも使用することができる。また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載するための高電圧電源(数10V~数100V)として使用する場合には、個々の電池を直列に接続して構成される電池モジュールとすることもできる。
【0091】
上記電池としては、アルカリ金属電池であることが好ましく、本発明の電解質膜及び/又は電極を用いて構成されるアルカリ金属電池もまた、本発明の1つである。また、上述の本発明の電解質組成物を含む電解質膜又は電極が、アルカリ金属電池用電解質膜又は電極であることは、本発明の好ましい実施形態の1つである。
上記電池としては、二次電池であることがより好ましく、上記電池が、リチウムイオン二次電池である形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を、「Mw」は「重量平均分子量」を意味するものとする。また、「リットル」を単に「L」、「モル/リットル」を「M」と記すことがある。
【0093】
<合成例1>架橋基含有ポリアルキレンオキシド共重合体の合成
攪拌機、添加口および温度センサーを備えた1Lオートクレーブ反応器を窒素により置換後、モレキュラーシーブで脱水処理を施したトルエン286.5部と、t-ブトキシカリウム(1.0Mテトラヒドロフラン溶液)0.85部とを順次投入し、反応器内の圧力がゲージ圧で0.3MPaになるまで窒素で加圧した。
オイルバスで反応器の内温を90℃まで昇温した後、エチレンオキシドの供給を0.85部/分の供給速度で開始し、エチレンオキシドの供給開始から30分経過してから、単量体混合物(重量比:ブチレンオキシド/アリルグリシジルエーテル=8/3)を0.131部/分の供給速度で供給を開始した。更にエチレンオキシドの供給開始2.5時間経過後、供給速度をそれぞれ0.43部/分、0.053部/分に低下させ更に5時間定量的に供給した(エチレンオキシドの供給量:計255部、単量体混合物の供給量:計31.5部)。供給中、重合熱による内温上昇および内圧上昇を監視・制御しながら100℃±5℃で反応を行った。供給終了後、さらに100℃±5℃で2時間保持して熟成させた。熟成終了後、減圧脱揮によって反応混合物から溶媒を留去し、Mw10.4万の架橋基含有ポリアルキレンオキシド共重合体(A)を得た。
【0094】
<合成例2>ポリエチレンオキシド重合体(B)の合成
攪拌機、添加口および温度センサーを備えた1Lオートクレーブ反応器を窒素により置換後、モレキュラーシーブで脱水処理を施したトルエン335.3部と、t-ブトキシカリウム(1.0Mテトラヒドロフラン溶液)1.61部とを順次投入し、反応器内の圧力がゲージ圧で0.3MPaになるまで窒素で加圧した。
オイルバスで反応器の内温を95℃まで昇温した後、エチレンオキシドの供給を1.12部/分の供給速度で開始し、重合熱による内温上昇および内圧上昇を監視・制御しながら適宜供給速度を調整し、エチレンオキシド223.6部を100℃±5℃で350分かけて連続供給した。供給終了後、さらに100℃±5℃で2時間保持して熟成させた。熟成終了後、減圧脱揮によって反応混合物から溶媒を留去し、Mw11万のポリエチレンオキシド重合体(B)を得た。
【0095】
<実施例1-1>電解質膜(1)の製造
電解質塩として、1.4gのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、LiFSIと記す)(株式会社日本触媒製)と、0.46gの硬化性モノマー(A)(新中村化学株式会社製、化学名(ポリエチレングリコール#600ジアクリレート))と、0.12gのエチレンカーボネート(LBGグレード、キシダ化学株式会社製)と、0.02gの重合開始剤(ESACURE KTO46(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、α-ヒドロキシケトン及びベンゾフェノン誘導体の混合物)、DKSHジャパン株式会社製)をPPバイアル(10mL)に計量し、恒温槽を用いて75℃で60分間加熱溶解させて、所望の溶液(電解質溶液)を得た。作製した電解質溶液を、テフロン(登録商標)シートに塗布した後、50μmのPETフィルムをスペーサーに用いて、上面にテフロン(登録商標)シートを被せ、平行平板プレス機で平坦化させた。テフロン(登録商標)シートを介して、超高圧水銀ランプ(4.2mW/cm2(365nm)テフロン(登録商標)シート透過後)を用いて、両面から各々60秒間UV光を照射して光重合反応を行い、膜厚48μmの電解質膜を得た。
【0096】
<実施例1-2>電解質膜(2)の製造
配合比を1.3gのLiFSIと、0.5gの硬化性モノマー(A)と、0.18gのエチレンカーボネートと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚44μmの電解質膜を得た。
【0097】
<実施例1-3>電解質膜(3)の製造
配合比を1.3gのLiFSIと、0.54gの硬化性モノマー(C)(新中村化学株式会社製、化学名(ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート))と、0.14gのエチレンカーボネートと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚50μmの電解質膜を得た。
【0098】
<実施例1-4>電解質膜(4)の製造
配合比を1.3gのLiFSIと、0.38gの硬化性モノマー(A)と、0.12gの硬化性モノマー(B)(新中村化学株式会社製、化学名(メトキシポリエチレングリコール#600アクリレート))と、0.18gのエチレンカーボネートと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚42μmの電解質膜を得た。
【0099】
<実施例1-5>電解質膜(5)の製造
配合比を1.3gのLiFSIと、0.5gの硬化性モノマー(A)と、0.18gのスクシノニトリルとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚45μmの電解質膜を得た。
【0100】
<実施例1-6>電解質膜(6)の製造
配合比を1.2gのLiFSIと、0.6gの硬化性モノマー(A)と、0.18gのエチレンカーボネートと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚51μmの電解質膜を得た。
【0101】
<実施例1-7>電解質膜(7)の製造
配合比を1.2gのLiFSIと、0.5gの硬化性モノマー(A)と、0.28gのエチレンカーボネートと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚45μmの電解質膜を得た。
【0102】
<実施例1-8>電解質膜(8)の製造
配合比を1.1gのLiFSIと、0.6gの硬化性モノマー(A)と、0.28gのエチレンカーボネートと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚49μmの電解質膜を得た。
【0103】
<実施例1-9>電解質膜(9)の製造
配合比を1.0gのLiFSIと、0.7gの硬化性モノマー(A)と、0.28gのエチレンカーボネートと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚56μmの電解質膜を得た。
【0104】
<実施例1-10>電解質膜(10)の製造
配合比を1.3gのLiFSIと、0.5gの硬化性モノマー(C)(新中村化学株式会社製、化学名(ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート))と、0.18gのエチレンカーボネートと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚32μmの電解質膜を得た。
【0105】
<実施例1-11>電解質膜(11)の製造
配合比を1.3gのLiFSIと、0.44gの硬化性モノマー(C)(新中村化学株式会社製、化学名(ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート))と、0.24gのエチレンカーボネートと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚37μmの電解質膜を得た。
【0106】
<実施例1-12>電解質膜(12)の製造
配合比を1.2gのLiFSIと、0.12gのアセトニトリル(LBGグレード、キシダ化学株式会社製)(溶媒A)と、0.44gの硬化性モノマー(A)と、0.22gのエチレンカーボネートと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚58μmの電解質膜を得た。
【0107】
<実施例1-13>電解質膜(13)の製造
配合比を1.3gのLiFSIと、0.12gのアセトニトリル(LBGグレード、キシダ化学株式会社製)(溶媒A)と、0.32gの硬化性モノマー(A)と、0.24gのエチレンカーボネートと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚56μmの電解質膜を得た。
【0108】
<実施例1-14>電解質膜(14)の製造
配合比を1.3gのLiFSIと、0.4gの硬化性モノマー(B)と、0.28gのジメチルスルホン(試薬特級、富士フイルム和光純薬株式会社製)と、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚52μmの電解質膜を得た。
【0109】
<実施例1-15>電解質膜(15)の製造
配合比を1.3gのLiFSIと、0.4gの硬化性モノマー(B)と、0.4gの硬化性モノマー(D)(新中村化学株式会社製、商品名(UA-7100、ウレタンアクリレート)と0.14gのジメチルスルホンと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚52μmの電解質膜を得た。
【0110】
<実施例1-16>電解質膜(16)の製造
配合比を1.2gのLiTFSI(LBGグレード、キシダ化学株式会社製)と、0.46gの硬化性モノマー(B)と、0.32gのジメチルスルホンと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚55μmの電解質膜を得た。
【0111】
<実施例1-17>電解質膜(17)の製造
配合比を1.3gのLiTFSIと、0.2gの硬化性モノマー(B)と、0.2gの硬化性モノマー(D)と、0.28gのジメチルスルホンと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚55μmの電解質膜を得た。
【0112】
<実施例1-18>電解質膜(18)の製造
配合比を1.1gのLiFSIと、0.2gのLiTFSIと、0.2gの硬化性モノマー(B)と、0.2gの硬化性モノマー(D)と、0.28gのジメチルスルホンと、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚60μmの電解質膜を得た。
【0113】
<比較例1-1>比較電解質膜(1)の製造
0.2gのLiTFSIと、0.79gの重合体(A)と、0.01gの重合開始剤をPPバイアル(10mL)に計量し、1.6mLのアセトニトリル(LBGグレード、キシダ化学株式会社製)を混合溶解して電解質溶液を得た。作製した電解質溶液を、テフロン(登録商標)シート上に塗布した後、熱風乾燥機を用いて、40℃で30分間の加熱乾燥後、減圧乾燥機を用いて、絶対圧で真空度-0.1MPa、40℃で24時間の減圧乾燥を行うことで、溶媒を除去した。乾燥後の膜上面にテフロン(登録商標)シートを被せた後、超高圧水銀ランプ(4.2mW/cm2(365nm)テフロン(登録商標)シート透過後)を用いて、両面から各々60秒間UV光を照射して光重合反応を行い、膜厚28μmの電解質膜を得た。
【0114】
<比較例1-2>比較電解質膜(2)の製造
配合比を0.12gのLiFSIと、0.87gの重合体(A)と、0.01gの重合開始剤を用いた以外は、比較例1-1と同様にして、膜厚30μmの電解質膜を得た。
【0115】
<比較例1-3>比較電解質膜(3)の製造
配合比を1.3gのLiFSIと、0.68gの硬化性モノマー(A)と、0.02gの重合開始剤としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、膜厚50μmの電解質膜を得た。
【0116】
実施例1-1~1-11及び比較例1-1~1-3で用いた各成分の配合量を表1に、実施例1-12~1-18で用いた各成分の配合量を表2に示した。
【0117】
【0118】
【0119】
<イオン伝導度とリチウム輸率測定>
イオン伝導度とリチウム輸率の測定にはポテンショガルバノスタット(VSP-300、Biologic社製)を用いた。実施例1-1~1-11及び比較例1-1~1-3で作製した電解質膜をφ12mmのポンチで打ち抜き、φ10mmのリチウム箔(0.2mm厚、本城金属株式会社製)2枚で挟んだものを、SUS316L製スペーサー(0.5mm厚、φ15.5mm、宝泉株式会社製)2枚で挟み込んで、測定装置の治具に固定した。温度40℃の環境下、電流値IS=+0.0785mA(0.1mA/cm2)で1分、IS=-0.0785mAで1分の通電処理を5回繰り返した。同一装置を用いて、1MHz~10mHz、振幅10mVの条件下でインピーダンス解析を実施し、Cole-coleプロットから得られたバルク抵抗成分をRbとし、リチウム箔と電解質膜との界面抵抗成分をRSi(Ω)とした。次いで、20mVの印加試験を5分間実施したときの、電圧印加直後の電流値と5分後の電流値をそれぞれIi(A)、Ic(A)とした。20mV印加状態のまま、1MHz~10mHz、振幅10mVの条件下でインピーダンス解析を実施し、Cole-coleプロットから得られたリチウム箔と電解質膜との界面抵抗成分をRSc(Ω)とした。測定検体の厚さをT(cm)、電解質膜がリチウム箔と接触する面積を測定検体の面積A(cm2)とし、下記式(α)に従いイオン伝導度σ(S/cm)が算出される。
σ=T/A/Rb (α)
リチウム輸率は、印加電圧をE(V)とした場合に、下記式(β)に従い算出される。
tLi=Ic(E-RSiIi)/Ii(E-RScIc) (β)
結果を表3に示す。
【0120】
<リチウムイオン伝導性評価(通電負荷試験)>
次いで、I=±0.157mA(±0.2mA/cm2)で各3分間、I=±0.236mA(±0.3mA/cm2)で各3分間、I=±0.314mA(±0.4mA/cm2)で各3分間、I=±0.393mA(±0.5mA/cm2)で各3分間、I=±0.471mA(±0.6mA/cm2)で各3分間の通電試験を実施し、以降は印加する電流値を0.2mA/cm2刻みで上げ続けた。電流値の上昇に伴い、電解質膜に掛かる負荷が上昇することから、ある電流値以上では、リチウムイオンは伝導できず、通電時に起電力が1.5Vに達する。3分間の連続通電時に1.5Vに到達したときの電流値から、リチウムイオンの流れ易さを判定した。結果を表3に示す。
【0121】
【0122】
表3の結果から、本発明で得られた実施例1-1~1-18の電解質膜は、イオン伝導度は比較例1-1~1-2と比べて低い値を示したものの、高いリチウム輸率を有しており、結果として通電負荷試験においては優れたイオン伝導性を有することが示された。また、比較例1-3と比べると、塩解離剤を添加することで、優れたイオン伝導性を実現できることが示された。
【0123】
<実施例2-1>リチウムイオン2次電池(1)の作製
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(Umicore社製)100部と、導電助剤としてアセチレンブラック(粉状品、電気化学工業株式会社製)3部と、黒鉛粉末(J-SP、日本黒鉛工業株式会社製)3部、及び結着剤としてポリフッ化ビニリデン(#7200、株式会社クレハ製)3部を、N-メチルピロリドン(LBGグレード、キシダ化学株式会社製)に分散させて正極合剤スラリーを得た。正極集電体として、アルミニウム箔(グレード1085材)を用い、上記正極スラリーを均一に塗工したのち、熱風乾燥機を用いて70℃で30分間の加熱乾燥と、減圧乾燥機を用いて、絶対圧で真空度-0.1MPa、110℃で2時間の減圧乾燥をして溶媒を除去し、正極重量9.8mg/cm2、膜厚35μm(アルミニウム箔除く)の正極シートを得た。
【0124】
上記正極シート上に、実施例1-3で作製した電解質溶液を塗布した後、50μmのPETフィルムをスペーサーに用いて、上面にテフロン(登録商標)シートを被せ、平行平板プレス機で平坦化させた。テフロン(登録商標)シートを介して、超高圧水銀ランプ(4.2mW/cm2(365nm)テフロン(登録商標)シート透過後)を用いて、60秒間UV光を照射して光重合反応を行い、63μm厚(正極活物質層の厚みを除く)の電解質層が塗布された電解質膜一体型正極を作製した。
得られた電解質膜一体型正極をφ14mmで打ち抜いたものを電池の正極とし、φ15mmで打ち抜いた0.5mm厚のリチウム箔を負極として、リチウム箔と電解質面が対向するように重ね合わせた。CR2032型コインセル部材(宝泉株式会社製)の正極ケース、負極キャップ、1.0mm厚のSUS製スペーサー、ウェーブワッシャー、ガスケットを用い、自動コインカシメ機(宝泉株式会社製)でかしめることでコイン型リチウムイオン2次電池を作製した。
【0125】
<実施例2-2>リチウムイオン2次電池(2)の作製
上記正極シート上に、実施例1-4で作製した電解質溶液を塗布した以外は、実施例2-1と同様にして、71μm厚(正極活物質層の厚みを除く)の一体型正極を作製し、その一体型正極を用いたリチウムイオン2次電池を作製した。
【0126】
<比較例2-1>比較リチウムイオン2次電池(1)の作製
0.2gのLiTFSIと、0.8gの重合体(B)と、1.6mLのアセトニトリルを混合溶解して電解質溶液を得た。実施例2-1と同様にして作製した正極シート上に、電解質溶液を均一に塗布した後、熱風乾燥機を用いて40℃で30分間の加熱乾燥と、減圧乾燥機を用いて、絶対圧で真空度-0.1MPa、70℃で2時間の減圧乾燥をして溶媒を除去し、リチウム塩と重合体を含浸させた複合正極シートを得た。
【0127】
得られた複合正極シートをφ14mmで打ち抜いたものを電池の正極とし、比較例1-1で作製した電解質膜をφ16mmで打ち抜いたシートを電解質膜とし、φ15mmで打ち抜いた0.5mm厚のリチウム箔を負極として、リチウム箔と正極の電解質塗布面が対向するように、リチウム箔、電解質膜、正極の順に重ね合わせた。CR2032型コインセル部材(宝泉株式会社製)の正極ケース、負極キャップ、1.0mm厚のSUS製スペーサー、ウェーブワッシャー、ガスケットを用い、自動コインカシメ機(宝泉株式会社製)でかしめることでコイン型リチウムイオン2次電池を作製した。
【0128】
<リチウムイオン二次電池評価>
実施例2-1、2-2及び比較例2-1で得られたコイン型リチウムイオン2次電池について、充放電試験装置(ACD-01、アスカ電子株式会社製)を用いて充放電試験を行った。温度40℃の環境下、充電条件C/24(正極容量150mAh/gとした場合に、1時間で満充電される電流値を1Cとする)で4.2Vまで充電したのち、15分間休止し、放電条件C/24で2.5Vまで放電を行った。次いで、充電条件C/24で4.2Vまで充電した後、15分間休止し、放電条件C/6で2.5Vまで放電したときの放電曲線と、放電容量を得た。得られた放電曲線を
図1に示す。
図1より、本発明の電解質組成物から得られた電解質膜を用いたリチウムイオン2次電池(実施例2-1、2-2)は、比較例2-1と比較して、高い放電電圧と、高い放電容量が得られることが示された。