IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ホイールローダ 図1
  • 特許-ホイールローダ 図2
  • 特許-ホイールローダ 図3
  • 特許-ホイールローダ 図4
  • 特許-ホイールローダ 図5
  • 特許-ホイールローダ 図6
  • 特許-ホイールローダ 図7
  • 特許-ホイールローダ 図8
  • 特許-ホイールローダ 図9
  • 特許-ホイールローダ 図10
  • 特許-ホイールローダ 図11
  • 特許-ホイールローダ 図12
  • 特許-ホイールローダ 図13
  • 特許-ホイールローダ 図14
  • 特許-ホイールローダ 図15
  • 特許-ホイールローダ 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ホイールローダ
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20221102BHJP
   F16H 61/42 20100101ALI20221102BHJP
【FI】
E02F9/22 H
F16H61/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020547792
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2018036237
(87)【国際公開番号】W WO2020065915
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 幸次
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正規
(72)【発明者】
【氏名】山下 将司
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲二
(72)【発明者】
【氏名】抜井 祐樹
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184886(JP,A)
【文献】特開2016-130030(JP,A)
【文献】特開2014-181804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
9/20
9/22
F16H 61/02
61/40
61/4008
B60W 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンにより駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、
前記走行用油圧ポンプと閉回路状に接続されて前記エンジンの駆動力を車輪に伝達する可変容量型の走行用油圧モータと、
車体の前部に設けられて上下方向に回動可能なリフトアームを有するフロント作業機と、
前記エンジンにより駆動されて前記フロント作業機に作動油を供給する作業機用油圧ポンプと、
前記車体の走行状態を検出する走行状態検出器と、
前記リフトアームの上げ操作量を検出する操作量検出器と、
記走行用油圧ポンプ又は前記走行用油圧モータを調整して前記車体の最大けん引力制御を行うコントローラと、
を備えたホイールローダにおいて、
前記車体の傾斜状態を検出する傾斜状態検出器を有し、
前記コントローラは、
前記走行状態検出器で検出された走行状態、前記操作量検出器で検出された前記リフトアームの上げ操作量、及び前記傾斜状態検出器で検出された傾斜状態に基づいて、前記車体が平地に設置された掘削状態にあるか、前記車体が登坂しながら掘削状態にあるか、を判定し、
前記車体が平地に設置された掘削状態にあると判定された場合に、前記車体の最大けん引力を制限し
前記車体が登坂しながら掘削状態にあると判定された場合には、前記車体の最大けん引力を、前記車体が平地に設置され掘削状態にあると判定された場合の制限された最大けん引力よりも大きい最大けん引力に制御す
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項2】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記作業機用油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧検出器と、
前記リフトアームの上げ操作量に応じた操作信号を検出する操作信号検出器と、を備え、
前記操作量検出器は、
前記吐出圧検出器及び前記操作信号検出器のうちの少なくともいずれかである
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項3】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記コントローラは、
前記傾斜状態検出器で検出された傾斜量が大きいほど、前記車体の最大けん引力の上昇率を大きくする
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項4】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記コントローラは、
前記傾斜状態検出器で検出された傾斜量が大きいほど、前記車体の最大けん引力の制限を開始する時の前記リフトアームの上げ操作量の値を大きくする
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項5】
請求項4に記載のホイールローダにおいて、
前記車体の最大けん引力の制限を開始する時の前記リフトアームの上げ操作量は、前記リフトアームが水平姿勢をとった時の前記リフトアームの上げ操作量以上とする
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項6】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記コントローラは、
前記傾斜状態検出器で検出された傾斜量が大きいほど、前記車体の最大けん引力の制限量に対する前記リフトアームの上げ操作量の増加率を大きくする
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項7】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記コントローラは、
前記走行用油圧モータの最大押しのけ容積を調整することにより前記車体の最大けん引力を制御する
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項8】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記傾斜状態検出器は、
前記車体の傾斜角度を検出する車体傾斜角度検出器、又は前記リフトアームの角度を検出するリフトアーム角度検出器である
ことを特徴とするホイールローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役作業を行うホイールローダに関する。
【背景技術】
【0002】
走行用の油圧回路と、掘削等を行うフロント作業機用の油圧回路と、を備えたホイールローダでは、けん引力(走行駆動力)とフロント作業機の掘り起し力とのバランスが重要になる。フロント作業機の掘り起し力に対してけん引力が大き過ぎる場合、バケットを掘削対象物に突っ込んだ後、リフトアームを動作させてバケットを上方向に持ち上げる際に、車輪がスリップしてしまい、かえってけん引力が小さくなって土砂等の荷がバケットに入りづらくなってしまう。また、この場合、掘削対象物にバケットを突っ込んだ際に、リフトアームに作用する反力が大きくなり、当該反力が抵抗となってバケットやリフトアームが上方向に持ち上がらないことがある。
【0003】
例えば特許文献1には、走行用の油圧回路として、エンジンによって駆動される可変容量形の走行用油圧ポンプと、油圧ポンプからの圧油により駆動する可変容量形の走行用油圧モータと、を有し、走行用油圧ポンプと走行用油圧モータとを一対の主管路によって閉回路接続したHST回路を用いたホイールローダが開示されている。このホイールローダでは、掘削対象物である地山に向けて突進してバケット内に荷を取り込む際には、HSTモータの最大傾転を上限値に設定することにより、最大けん引力をその上限まで発揮させてバケット内に十分な荷を取り込むことを可能としている。
【0004】
そして、リフトアームを上げ操作してバケットを上方向に持ち上げる掘削動作を行う際には、HSTモータの最大傾転を上限値の50~70%程度に制限することにより、けん引力が大きくなり過ぎることを抑制してリフトアームの上げ操作力(フロント作業機の掘り起し力)とけん引力とのバランスを良好に維持し、荷が入ったバケットの持ち上げ動作を容易にしている。また、このホイールローダでは、オペレータが手動スイッチを切り替えることにより、地山の種類や路面状況等に応じて、掘削動作時のHSTモータの最大傾転の制限をLモード、Nモード、Pモードの3段階に調整することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5129493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホイールローダによる掘削作業は、車体が平地に設置された状態で行われる場合の他に、地山を登坂しながら行われる場合がある。具体的には、ホイールローダは、リフトアームを上方向に動作させながら急斜面を前進走行し、その斜面を掘削して荷を地山の頂上に放土する。ホイールローダが登坂中は、(車体の重量×sinθ)分の力が車体に対して斜面の後方に向かって作用する。そのため、斜面上で掘削動作を行う場合は、車体が平地に設置された状態で掘削動作を行う場合と比べて、けん引力が(車体の重量×sinθ)分だけ低下してしまう。
【0007】
特許文献1に記載のホイールローダは、車体が平地に設置された状態で掘削動作が行われる場合を前提としているため、このホイールローダが地山を登坂しながら掘削動作を行う場合にはけん引力が不足してしまい、リフトアームを上方向に動作させながら登坂することができない。なお、手動スイッチにより掘削動作時のHSTモータの最大傾転の制限値が最も大きいPモードに切り替えることでけん引力を上昇させることも考えられるが、オペレータは、登坂しながら掘削動作を行う度に手動スイッチをPモードに切り替える必要がある。さらに、登坂しながらの掘削動作が終了した後に平地で掘削動作を行う時には、オペレータは、掘削動作時のHSTモータの最大傾転の制限値が最も小さいLモードに手動スイッチを戻さなければならず、オペレータにとってはその操作が煩わしい。
【0008】
そこで、本発明の目的は、登坂しながら掘削動作を行う場合であっても作業効率を向上させることが可能なホイールローダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、前記走行用油圧ポンプと閉回路状に接続されて前記エンジンの駆動力を車輪に伝達する可変容量型の走行用油圧モータと、車体の前部に設けられて上下方向に回動可能なリフトアームを有するフロント作業機と、前記エンジンにより駆動されて前記フロント作業機に作動油を供給する作業機用油圧ポンプと、前記車体の走行状態を検出する走行状態検出器と、前記リフトアームの上げ操作量を検出する操作量検出器と、記走行用油圧ポンプ又は前記走行用油圧モータを調整して前記車体の最大けん引力制御を行うコントローラと、を備えたホイールローダにおいて、前記車体の傾斜状態を検出する傾斜状態検出器を有し、前記コントローラは、前記走行状態検出器で検出された走行状態、前記操作量検出器で検出された前記リフトアームの上げ操作量、及び前記傾斜状態検出器で検出された傾斜状態に基づいて、前記車体が平地に設置された掘削状態にあるか、前記車体が登坂しながら掘削状態にあるか、を判定し、前記車体が平地に設置された掘削状態にあると判定された場合に、前記車体の最大けん引力を制限し前記車体が登坂しながら掘削状態にあると判定された場合には、前記車体の最大けん引力を、前記車体が平地に設置され掘削状態にあると判定された場合の制限された最大けん引力よりも大きい最大けん引力に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、登坂しながら掘削動作を行う場合であっても作業効率を向上させることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の各実施形態に係るホイールローダの外観を示す側面図である。
図2】(a)はホイールローダのかき上げ作業について説明する説明図であり、(b)はかき上げ作業時のリフトアームの動作を説明する説明図である。
図3】(a)は車体傾斜検出角度と車体傾斜角度換算値との関係を示すグラフであり、(b)はリフトアーム検出角度と車体傾斜角度換算値との関係を示すグラフである。
図4】本発明の第1実施形態に係るホイールローダの走行駆動に係る油圧回路及び電気回路を示す図である。
図5】アクセルペダル踏込量と目標エンジン回転速度との関係を示すグラフである。
図6】(a)はエンジン回転速度とHSTポンプの押しのけ容積との関係を示すグラフ、(b)はエンジン回転速度とHSTポンプの入力トルクとの関係を示すグラフ、(c)はエンジン回転速度とHSTポンプの吐出流量との関係を示すグラフである。
図7】フロント作業機の駆動に係る油圧回路を示す図である。
図8】作業機用油圧ポンプの吐出圧とスプールの開口面積との関係を示すグラフである。
図9】第1実施形態に係るコントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
図10】第1実施形態に係るコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図11】第1実施形態における作業機用油圧ポンプの吐出圧とHSTモータの最大押しのけ容積との関係を示すグラフである。
図12】第2実施形態に係るホイールローダの走行駆動に係る油圧回路及び電気回路を示す図である。
図13】第2実施形態に係るコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図14】第2実施形態における作業機用油圧ポンプの吐出圧とHSTモータの最大押しのけ容積との関係を示すグラフである。
図15】第3実施形態に係るコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図16】第3実施形態における作業機用油圧ポンプの吐出圧とHSTモータの最大押しのけ容積との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明の各実施形態に係るホイールローダの全体構成及び動作について、図1~3を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の各実施形態に係るホイールローダ1の外観を示す側面図である。
【0014】
ホイールローダ1は、前フレーム1A及び後フレーム1Bで構成される車体と、車体の前部に設けられたフロント作業機2と、を備えている。ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵するアーティキュレート式の作業車両である。前フレーム1Aと後フレーム1Bとは、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。
【0015】
前フレーム1Aには左右一対の前輪11Aが、後フレーム1Bには左右一対の後輪11Bが、それぞれ設けられている。なお、図1では、左右一対の前輪11A及び後輪11Bのうち、左側の前輪11A及び後輪11Bのみを示している。また、以下の説明において、「前輪11A及び後輪11B」を単に「車輪11A,11B」とする場合がある。
【0016】
後フレーム1Bには、オペレータが搭乗する運転室12と、エンジンやコントローラ、油圧ポンプ等の各機器を内部に収容する機械室13と、車体が傾倒しないようにフロント作業機2とのバランスを保つためのカウンタウェイト14と、が設けられている。後フレーム1Bにおいて、運転室12は前部に、カウンタウェイト14は後部に、機械室13は運転室12とカウンタウェイト14との間に、それぞれ配置されている。
【0017】
フロント作業機2は、前フレーム1Aに取り付けられたリフトアーム21と、伸縮することによりリフトアーム21を前フレーム1Aに対して上下方向に回動させる一対のリフトアームシリンダ22と、リフトアーム21の先端部に取り付けられたバケット23と、伸縮することによりバケット23をリフトアーム21に対して上下方向に回動させるバケットシリンダ24と、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット23とバケットシリンダ24とのリンク機構を構成するベルクランク25と、一対のリフトアームシリンダ22やバケットシリンダ24へ圧油を導く複数の配管(不図示)と、を有している。なお、図1では、一対のリフトアームシリンダ22のうち、左側に配置されたリフトアームシリンダ22のみを破線で示している。
【0018】
リフトアーム21は、各リフトアームシリンダ22のロッド220が伸びることにより上方向に回動し、各ロッド220が縮むことにより下方向に回動する。バケット23は、バケットシリンダ24のロッド240が伸びることによりチルト(リフトアーム21に対して上方向に回動)し、ロッド240が縮むことによりダンプ(リフトアーム21に対して下方向に回動)する。
【0019】
ホイールローダ1は、例えば露天掘り鉱山等において、土砂や鉱物等を掘削してダンプトラック等へ積み込む荷役作業を行うための荷役作業車両である。掘削作業には、車体が平地に設置された状態でバケット23を掘削対象物に突入させて土砂や鉱物等を掘削する場合の他に、ホイールローダ1が掘削対象物の斜面上を前進走行しながらバケット23で当該斜面を掘削する場合がある。以下、ホイールローダ1が登坂しながら掘削動作を行う場合を「かき上げ作業」という。次に、この「かき上げ作業」について、図2及び図3を参照して具体的に説明する。
【0020】
図2(a)は、ホイールローダ1のかき上げ作業について説明する説明図であり、図2(b)は、かき上げ作業時のリフトアーム21の動作を説明する説明図である。図3(a)は、車体傾斜検出角度と車体傾斜角度換算値との関係を示すグラフであり、図3(b)はリフトアーム検出角度と車体傾斜角度換算値との関係を示すグラフである。
【0021】
図2(a)に示すように、ホイールローダ1は、掘削対象物である地山100に向かって平地を前進走行し、そのまま地山100を登坂しながらフロント作業機2を操作して斜面を掘削する。そして、掘削されてバケット23内に積まれた土砂や鉱物等は地山100の頂上で放土され、その後、ホイールローダ1は後進しながら斜面を下って元の場所に戻る。かき上げ作業時において、オペレータは、図2(b)に示すように、斜面を登って行くにつれてリフトアーム21を上方向に上昇させるように操作する。
【0022】
ホイールローダ1が平地を走行しているとき(図2(a)に示す状態(X))は、リフトアーム21は上下方向の可動範囲のうちの最も低い位置(図2(b)に示す位置(X))にあり、ホイールローダ1が地山100を登坂し始めたとき(図2(a)に示す状態(Y))は、リフトアーム21は水平姿勢(図2(b)に示す位置(Y))をとり、ホイールローダ1がバケット23内の荷を地山100の頂上に放土する直前(図2(a)に示す状態(Z))では、リフトアーム21は上方向に上がりきった位置、すなわち上下方向の可動範囲のうちの最も高い位置(図2(b)に示す位置(Z))にある。
【0023】
なお、「ホイールローダ1が地山100を登坂し始めたとき」とは、図2(a)の状態(Y)に示すように、前輪11Aのみならず後輪11Bも地山100の斜面上に位置している状態とする。また、このとき、リフトアーム21の位置は正確に水平位置である必要はなく、図2(b)の位置(Y)に示すように、正確な水平位置からやや低い位置であってもよい。すなわち、リフトアーム21の「水平姿勢」とは、正確な水平位置から上下方向への誤差分をそれぞれ含めたものとする。
【0024】
ホイールローダ1が登坂中であるか否かについては、車体の走行状態を検出する走行状態検出器、及び車体の傾きを検出する傾斜状態検出器を用いることにより判定することが可能である。傾斜状態検出器の一態様として、例えば、車体の傾斜角度θを検出する車体傾斜角度検出器としての車体傾斜角度センサ130や、リフトアーム21の角度βを検出するリフトアーム角度検出器としてのリフトアーム角度センサ211が用いられる。車体傾斜角度センサ130は、図2(a)に示すように、後フレーム1Bに取り付けられ、リフトアーム角度センサ211は、図2(b)に示すように、リフトアーム21の基部に取り付けられている。
【0025】
車体が平地に設置された状態で掘削を行う際には、バケット23をチルトさせるだけであるが、かき上げ作業を行う際には、前述したように、バケット23のチルト操作に加えてリフトアーム21を上方向に上昇させるため、リフトアーム21の角度βを検出することによっても車体の傾斜状態を検出することができる。なお、ホイールローダ1のような作業車両では、車体傾斜角度センサ130には耐震性強度の強いものを用いる必要があり、比較的に高価となってしまうが、リフトアーム角度センサ211はホイールローダ1に標準で搭載されているため、リフトアーム角度センサ211を利用する場合にはコストアップ無しで対応することが可能である。
【0026】
車体傾斜角度センサ130を用いた場合、図3(a)に示すように、車体傾斜角度センサ130で検出された車体傾斜検出角度θが0以上であって所定の角度閾値θs未満では(0≦θ<θs)車体傾斜角度換算値は0とし、車体傾斜検出角度θが所定の角度閾値θs以上になると(θ≧θs)車体傾斜角度換算値は0から正の方向に増加していく。
【0027】
リフトアーム角度センサ211を用いた場合、図3(b)に示すように、リフトアーム角度センサ211で検出されたリフトアーム検出角度βが0以上であって所定の角度閾値βs未満では(0≦β<βs)車体傾斜角度換算値は0とし、リフトアーム検出角度βが所定の角度閾値βs以上になると(β≧βs)車体傾斜角度換算値は0から正の方向に増加していく。
【0028】
ここで、「所定の角度閾値θs,βs」とはそれぞれ、地山100の斜面に前輪11Aが差し掛かったときに対応する角度である。したがって、車体傾斜検出角度θが0以上であって所定の角度閾値θs未満のとき(0≦θ<θs)、及びリフトアーム検出角度βが0以上であって所定の角度閾値βs未満のとき(0≦β<βs)は、図2(a)及び図2(b)にそれぞれ示した(X)の状態である。
【0029】
また、車体傾斜検出角度θが第1角度閾値θ1のとき(θ=θ1)、及びリフトアーム検出角度βが第1角度閾値β1のとき(β=β1)は、図2(a)及び図2(b)にそれぞれ示した(Y)の状態である。したがって、「第1角度閾値θ1,β1」とは、ホイールローダ1が地山100を登坂し始めたとき、すなわちリフトアーム21が水平姿勢をとったときに対応する角度である。
【0030】
そして、車体傾斜検出角度θが第2角度閾値θ2のとき(θ=θ2)、及びリフトアーム検出角度βが第2角度閾値β2のとき(β=β2)は、図2(a)及び図2(b)にそれぞれ示した(Z)の状態である。したがって、「第2角度閾値θ2,β2」とは、ホイールローダ1がバケット23内の荷を地山100の頂上に放土する直前、すなわちリフトアーム21が上方向に上がりきったときに対応する角度である。
【0031】
なお、車体傾斜角度センサ130を用いた場合には、図3(a)に示すように、ホイールローダ1が後進しながら斜面を下っているときの車体の傾斜角度についても検出することが可能である。
【0032】
ホイールローダ1がかき上げ作業を行う場合、図2(a)に示すように、地山100において平地に対する斜面の角度をαとすると、車体の重量Wに対しそのsinα成分の力(=Wsinα)が斜面の後方に向かって作用する。なお、地山100の傾斜角度αは例えば15°~25°であり、地山100の斜面は比較的に急である。車体が平地に設置された状態で掘削動作を行う場合に必要となるけん引力(走行駆動力)をFとすると、かき上げ作業のように斜面上で掘削動作を行う場合のけん引力は(F-Wsinα)となり、車体が平地に設置された状態で掘削動作を行う場合と比べてWsinα分だけけん引力が低下する。
【0033】
次に、ホイールローダ1の駆動システムについて、実施形態ごとに説明する。
【0034】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るホイールローダ1の駆動システムについて、図4~11を参照して説明する。
【0035】
(走行駆動システムについて)
まず、第1実施形態に係るホイールローダ1の走行駆動システムについて、図4~6を参照して説明する。
【0036】
図4は、第1実施形態に係るホイールローダ1の油圧回路及び電気回路を示す図である。図5は、アクセルペダル踏込量と目標エンジン回転速度との関係を示すグラフである。図6(a)はエンジン回転速度とHSTポンプ41の押しのけ容積との関係を示すグラフ、図6(b)はエンジン回転速度とHSTポンプ41の入力トルクとの関係を示すグラフ、図6(c)はエンジン回転速度とHSTポンプ41の吐出流量との関係を示すグラフである。
【0037】
本実施形態に係るホイールローダ1は、閉回路の油圧回路を有したHST式走行駆動装置を備え、このHST式走行駆動装置は、図4に示すように、エンジン3と、作動油を貯蔵する作動油タンク40と、エンジン3により駆動される走行用油圧ポンプとしてのHSTポンプ41と、HSTポンプ41を制御するための圧油を補給するHSTチャージポンプ41Aと、HSTポンプ41と一対の管路400L,400Rを介してHSTポンプ41と閉回路状に接続された走行用油圧モータとしてのHSTモータ42と、車体の前後進を切り換える前後進切換弁43と、HSTポンプ41やHSTモータ42等の各機器を制御するコントローラ5と、有して構成されている。
【0038】
HSTポンプ41は、傾転角に応じて押しのけ容積が制御される斜板式あるいは斜軸式の可変容量型の油圧ポンプである。傾転角は、HSTチャージポンプ41Aから吐出された圧油が作用することで駆動される傾転シリンダ44により調整される。
【0039】
HSTモータ42は、傾転角に応じて押しのけ容積が制御される斜板式あるいは斜軸式の可変容量型の油圧モータであり、エンジン3の駆動力を車輪11A,11Bに伝達する。傾転角は、コントローラ5から出力された指令信号にしたがってレギュレータ420により調整される。
【0040】
HST式走行駆動装置では、まず、運転室12内に設けられたアクセルペダル61をオペレータが踏み込むとエンジン3が回転し、エンジン3の駆動力によりHSTポンプ41が駆動する。また、エンジン3の駆動力によりHSTチャージポンプ41Aも駆動されて、HSTチャージポンプ41Aから吐出された圧油が前後進切換弁43を介して傾転シリンダ44に導かれる。
【0041】
前後進切換弁43は、HSTチャージポンプ41Aと傾転シリンダ44との間に設けられている。前後進切換弁43は、一対の主管路800A,800BによりHSTチャージポンプ41Aの吐出側に接続された吐出管路800と接続されている。さらに、前後進切換弁43は、一対のパイロット管路800L,800Rにより傾転シリンダ44の左右の油室44L,44Rと接続されている。
【0042】
前後進切換弁43は、車体を前進させる前進位置43Aと、車体を後進させる後進位置43Bと、車体を停止させる中立位置43Nと、を有し、運転室12内に設けられた前後進切換レバー62により操作される。
【0043】
図4に示すように、前後進切換弁43が中立位置43Nのとき、HSTチャージポンプ41Aから吐出された圧油は、一方の主管路800B上に設けられた絞り401を介して傾転シリンダ44の左右の油室44L,44Rにそれぞれ等しく作用する。これにより、傾転シリンダ44のロッドは中立に位置するため、HSTポンプ41の押しのけ容積は0となり、HSTポンプ41の吐出量は0となる。したがって、車体は停止状態となる。
【0044】
一方、前後進切換弁43が前進位置43Aに切り換わると、傾転シリンダ44の左側の油室44Lには絞り401の上流側圧力が作用し、右側の油室44Rには絞り401の下流側圧力が作用する。そして、左右の油室44L,44Rの間に生じた圧力差により、傾転シリンダ44のロッドが図4における右方向に作動する。これにより、HSTポンプ41の傾転角が大きくなり、HSTポンプ41からの作動油が管路400Lを通ってHSTモータ42に導かれ、HSTモータ42が正転して車体が前進する。
【0045】
他方、前後進切換弁43が後進位置43Bに切り換わると、傾転シリンダ44の左側の油室44Lには絞り401の下流側圧力が作用し、右側の油室44Rには絞り401の上流側圧力が作用する。そして、左右の油室44L,44Rの間に生じた圧力差により、傾転シリンダ44のロッドが図4における左方向に作動する。これにより、HSTポンプ41の傾転角が大きくなり、HSTポンプ41からの作動油が管路400Rを通ってHSTモータ42に導かれ、HSTモータ42が反転して車体が後進する。
【0046】
このように、HSTポンプ41から導かれた作動油でHSTモータ42が回転することにより、HSTモータ42からの出力トルクがアクスル15を介して前輪11A及び後輪11Bに伝達されてホイールローダ1が走行する。したがって、HSTモータ42の出力トルクは、ホイールローダ1の走行駆動力、すなわち車体のけん引力となる。
【0047】
HSTモータ42の出力トルクは、HSTモータ42の押しのけ容積(傾転角)と走行負荷圧力(=管路400Lの圧力-管路400Rの圧力)との積で表されることから、HSTモータ42の押しのけ容積を制御することで車体のけん引力を制御することができる。
【0048】
エンジン3の回転数はアクセルペダル61の踏込量により調整され、エンジン3に接続されたHSTチャージポンプ41Aの吐出量はエンジン3の回転数に比例する。したがって、絞り401の前後差圧はエンジン3の回転数に比例し、HSTポンプ41の傾転角もエンジン3の回転数に比例する。
【0049】
アクセルペダル61の踏込量は、アクセルペダル61に取り付けられた踏込量センサ610で検出される。エンジン3は、踏込量センサ610で検出された踏込量に応じた目標エンジン回転速度にしたがって、回転数が制御される。
【0050】
図5に示すように、アクセルペダル61の踏込量と目標エンジン回転速度とは比例関係にあり、アクセルペダル61の踏込量が大きくなると目標エンジン回転速度は速くなる。そして、アクセルペダル61の踏込量がS2になった時に目標エンジン回転速度が最高回転速度Nmax1となる。
【0051】
図5において、アクセルペダル61の踏込量0~S1の範囲(例えば0%~20あるいは30%の範囲)は、アクセルペダル61の踏込量にかかわらず目標エンジン回転速度が所定の最低回転速度Nminで一定となる不感帯として設定されている。また、アクセルペダル61の踏込量S2~100の範囲(例えば70あるいは80%~100%の範囲)は、目標エンジン回転速度がアクセルペダル61の踏込量にかかわらず最高目標エンジン回転速度Nmaxに維持されるように設定されている。なお、これらの範囲は、任意に設定変更可能である。
【0052】
次に、エンジン3とHSTポンプ41との関係は、図6(a)~(c)に示す通りである。
【0053】
図6(a)に示すように、エンジン回転速度がN1からN2までの間では、エンジン3の回転速度NとHSTポンプ41の押し退け容積qとは比例関係にあり、エンジン3の回転速度がN1からN2になるまで速くなるにつれて(N1<N2)、押しのけ容積は0から所定の値qcまで大きくなる。エンジン回転速度がN2以上では、HSTポンプ41の押しのけ容積は、エンジン回転速度にかかわらず所定の値qcで一定となる。
【0054】
HSTポンプ41の入力トルクは、押しのけ容積に吐出圧力を積算したもの(入力トルク=押しのけ容積×吐出圧力)である。図6(b)に示すように、エンジン回転速度がN1からN2までの間では、エンジン3の回転速度NとHSTポンプ41の入力トルクTとは比例関係にあり、エンジン3の回転速度がN1からN2になるまで速くなるにつれて、入力トルクは0から所定の値Tcまで大きくなる。エンジン回転速度がN2以上では、HSTポンプ41の入力トルクは、エンジン回転速度にかかわらず所定の値Tcで一定となる。
【0055】
図6(c)に示すように、エンジン回転速度がN1からN2までの間では、HSTポンプ41の吐出流量Qとエンジン3の回転速度Nとは二次の比例関係にあり、エンジン3の回転速度がN1からN2になるまで速くなるにつれて、HSTポンプ41の吐出流量は0からQ1まで増加する。エンジン回転速度がN2以上では、エンジン3の回転速度NとHSTポンプ41の吐出流量Qとは一次の比例関係にある。
【0056】
したがって、エンジン3の回転速度Nが速くなるとHSTポンプ41の吐出流量Qが増え、HSTポンプ41からHSTモータ42に流入する圧油の流量が増えるため、HSTモータ42の回転数が増大し、車速が速くなる。なお、車速は、HSTモータ42の回転速度としてモータ回転速度センサ72で検出する(図4参照)。
【0057】
このように、HST式走行駆動システムでは、HSTポンプ41の吐出流量を連続的に増減させることにより車速を制御(変速)するため、ホイールローダ1は滑らかな発進、及び衝撃の少ない停止が可能となる。
【0058】
なお、図4に示すように、HSTチャージポンプ41Aから吐出された圧油は、絞り401及びチェック弁402A,402Bを通って管路400L,400Rにも導かれる。絞り401の下流側圧力は、前後進切換弁43と作動油タンク40とを接続する管路上に設けられたチャージリリーフ弁403により制限され、管路400L,400Rの最高圧力はリリーフ弁404により制限される。
【0059】
本実施形態におけるHST式走行駆動装置には、HSTポンプ41からの作動油をHSTモータ42に導く管路400L,400Rの管路圧力のうち高い方の圧力を選択する高圧選択弁405が備えられており、高圧選択弁405で選択された圧力がコントローラ5に入力される。また、本実施形態では、車体の傾斜状態を検出する傾斜状態検出器に車体傾斜角度センサ130を用いており、車体傾斜角度センサ130で検出された車体傾斜検出角度θはコントローラ5に入力される。
【0060】
(フロント作業機2の駆動システムについて)
次に、フロント作業機2の駆動システムについて、図4図7、及び図8を参照して説明する。
【0061】
図7は、フロント作業機2の駆動に係る油圧回路を示す図である。図8は、作業機用油圧ポンプ45の吐出圧とスプールの開口面積との関係を示すグラフである。
【0062】
図4及び図7に示すように、ホイールローダ1は、エンジン3により駆動されてフロント作業機2に作動油を供給する作業機用油圧ポンプ45と、リフトアームシリンダ22及びバケットシリンダ24のそれぞれと作業機用油圧ポンプ45との間に設けられて作業機用油圧ポンプ45からリフトアームシリンダ22及びバケットシリンダ24にそれぞれ供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブ46と、リフトアーム21を操作するためのリフトアーム操作レバー210と、バケット23を操作するためのバケット操作レバー230と、を備える。
【0063】
作業機用油圧ポンプ45は、本実施形態では、固定式の油圧ポンプが用いられ、図7に示すように、第1管路801によりコントロールバルブ46に接続されている。作業機用油圧ポンプ45からの吐出圧は第1管路801上に設けられた吐出圧センサ75で検出され、検出された吐出圧に係る信号がコントローラ5に入力される。吐出圧センサ75は、作業機用油圧ポンプ45の吐出圧を検出する吐出圧検出器の一態様である。
【0064】
リフトアーム操作レバー210及びバケット操作レバー230はいずれも、フロント作業機2を操作するための操作装置の一態様であり、運転室12(図1参照)内に設けられている。例えば、オペレータがリフトアーム操作レバー210を操作すると、その操作量に比例したパイロット圧が操作信号として生成される。
【0065】
図7に示すように、生成されたパイロット圧は、コントロールバルブ46の一対の受圧室に接続された一対のパイロット管路64L,64Rに導かれて、コントロールバルブ46に作用する。これにより、コントロールバルブ46内のスプールが当該パイロット圧に応じてストロークし、作動油が流れる方向及び流量が決まる。コントロールバルブ46は、第2管路802によりリフトアームシリンダ22のボトム室に接続され、第3管路803によりリフトアームシリンダ22のロッド室に接続されている。
【0066】
作業機用油圧ポンプ45から吐出された作動油は、第1管路801に導かれ、コントロールバルブ46を介して第2管路802又は第3管路803に導かれる。作動油が第2管路802に導かれると、リフトアームシリンダ22のボトム室に流入し、これによりリフトアームシリンダ22のロッド220が伸長してリフトアーム21が上昇する。一方、作動油が第3管路803に導かれると、リフトアームシリンダ22のロッド室に流入し、リフトアームシリンダ22のロッド220が縮んでリフトアーム21が下降する。
【0067】
なお、本実施形態では、リフトアーム操作レバー210及びバケット操作レバー230はそれぞれ油圧式レバーであるが、電気式レバーを用いてもよく、この場合には、操作量に応じた電流値が操作信号として生成される。
【0068】
パイロット圧は、リフトアーム21の上げ操作量に応じた操作信号を検出する操作信号センサとしてのパイロット圧センサ76により検出される。パイロット圧センサ76は、リフトアーム21の上げ操作に対応したパイロット管路(図7てではパイロット管路64R)上に設けられている。パイロット圧センサ76は、操作装置であるリフトアーム操作レバー210からの操作信号を検出する操作信号検出器の一態様である。
【0069】
図8に示すように、リフトアーム操作レバー210の上げ操作量とコントロールバルブ46のスプールの開口面積とは比例関係にあり、リフトアーム操作レバー210の上げ操作量が増えるとスプールの開口面積も大きくなる。したがって、リフトアーム21を上げる方向にリフトアーム操作レバー210を大きく操作すると、リフトアームシリンダ22へ流入する作動油量が多くなり、ロッド220が速く伸長する。すなわち、リフトアーム操作レバー210の操作量が増大するにつれて、リフトアーム21の動作速度が速くなる。
【0070】
図8において、リフトアーム操作レバー210の上げ操作量0~10%の範囲は、リフトアーム操作レバー210を操作してもスプールは開口せず開口面積が0%となる不感帯として設定されている。また、リフトアーム操作レバー210の上げ操作量85~100%の範囲では、スプールの開口面積は100%で一定となっており、フルレバー操作状態が維持されている。なお、これらの設定範囲は、任意に変更可能である。
【0071】
なお、作業機用油圧ポンプ45の吐出圧、及び操作信号であるパイロット圧はそれぞれリフトアーム21の上げ操作量に対応していることから、吐出圧センサ75及びパイロット圧センサ76はいずれも、リフトアーム操作レバー210によるリフトアーム21の上げ操作量を検出する操作量検出器の一態様である。
【0072】
リフトアーム21の上げ操作量を精度よく検出するためには、吐出圧センサ75及びパイロット圧センサ76のそれぞれで検出された値の両方を用いることが望ましいが、操作量センサとしては、吐出圧センサ75及びパイロット圧センサ76のうちの少なくともいずれかを用いればよい。本実施形態では、コントローラ5は、吐出圧センサ75で検出された吐出圧Paを用いてリフトアーム21の上げ操作について判定している。
【0073】
バケット23の操作についても、リフトアーム21の操作と同様に、バケット操作レバー230の操作量に応じて生成されたパイロット圧がコントロールバルブ46に作用することによってコントロールバルブ46のスプールの開口面積が制御され、バケットシリンダ24へ流出入する作動油量が調整される。なお、図7では図示を省略しているが、バケット23の動作を検出するためのセンサ等についても、油圧回路の各管路上に設けられている。
【0074】
(コントローラ5の構成)
次に、コントローラ5の構成について、図9を参照して説明する。
【0075】
図9は、第1実施形態に係るコントローラ5が有する機能を示す機能ブロック図である。
【0076】
コントローラ5は、CPU、RAM、ROM、HDD、入力I/F、及び出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、前後進切換レバー62等の各種の操作装置、及び吐出圧センサ75や踏込量センサ610、車体傾斜角度センサ130等の各種のセンサが入力I/Fに接続され、HSTモータ42のレギュレータ420等が出力I/Fに接続されている。
【0077】
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD若しくは光学ディスク等の記録媒体に格納された演算プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された演算プログラムを実行することにより、演算プログラムとハードウェアとが協働して、コントローラ5の機能を実現する。
【0078】
なお、本実施形態では、コントローラ5の構成をソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより説明しているが、これに限らず、ホイールローダ1の側で実行される演算プログラムの機能を実現する集積回路を用いて構成してもよい。
【0079】
図9に示すように、コントローラ5は、データ取得部51と、特定条件判定部52と、モータ制御部53と、記憶部54と、を含む。
【0080】
データ取得部51は、前後進切換レバー62から出力された前進又は後進の前後進切換信号、踏込量センサ610で検出されたアクセルペダル61の踏込量、吐出圧センサ75で検出された作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Pa、及び車体傾斜角度センサ130で検出された車体傾斜検出角度θ(傾斜量)に関するデータをそれぞれ取得する。
【0081】
特定条件判定部52は、データ取得部51で取得された信号や各データに基づいて、ホイールローダ1が登坂しながら掘削状態にあることを特定する特定条件を満たすか否かを判定する。
【0082】
具体的には、特定条件判定部52は、前後進切換信号及びアクセルペダル61の踏込量に基づいたホイールローダ1の前進走行についての判定、作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Paに基づいたフロント作業機2の掘削動作についての判定、及び車体傾斜検出角度θに基づいた車体の傾斜状態についての判定を行う。特定条件判定部52は、これら3つの条件についての判定を行うことにより、特定条件を満たすか否かを判定する。
【0083】
ここで、前後進切換レバー62及び踏込量センサ610はそれぞれ、ホイールローダ1の車体の走行状態を検出する走行状態検出器の一態様である。なお、本実施形態では、前後進切換レバー62から出力された前進を示す前後進切換信号、及び踏込量センサ610で検出されたアクセルペダル61の踏込量によって車体の前進走行を判定しているが、これに限らず、例えば、プロペラシャフトの回転方向から車体の進行方向が前進または後進のいずれかであるかを検出する等、車体に搭載された他の走行状態検出器で検出された走行状態を踏まえて総合的に車体の前進走行を判定してもよい。
【0084】
モータ制御部53は、特定条件判定部52にて特定条件を満たすと判定された場合、車体が平地に設置された状態でフロント作業機2により掘削動作を行う場合の最大押し退け容積qs(以下、「平地掘削動作時の最大押しのけ容積qs」とする)よりも大きい最大押しのけ容積に基づく指令信号をHSTモータ42のレギュレータ420に出力し、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを平地掘削動作時の最大押しのけ容積qsよりも上昇させる。
【0085】
なお、モータ制御部53は、特定条件判定部52にて特定条件を満たさず、車体が平地に設置され掘削状態にある場合には、平地掘削動作時の最大押しのけ容積qsに基づく指令信号をHSTモータ42のレギュレータ420に出力し、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを平地掘削動作時の最大押しのけ容積qsに制限する。
【0086】
記憶部54は、掘削動作に必要な作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Ps(リフトアームシリンダ22を伸長させる油圧源の吐出圧)、車体傾斜角度に関する閾値である第1角度閾値θ1及び第2角度閾値θ2、ならびに平地掘削動作時の最大押しのけ容積qsをそれぞれ記憶している。
【0087】
(コントローラ5内での処理及びホイールローダ1の動作)
次に、コントローラ5内で実行される具体的な処理の流れ、及びコントローラ5の制御に伴うホイールローダ1の動作について、図10及び図11を参照して説明する。
【0088】
図10は、第1実施形態に係るコントローラ5で実行される処理の流れを示すフローチャートである。図11は、第1実施形態における作業機用油圧ポンプ45の吐出圧PaとHSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxとの関係を示すグラフである。
【0089】
まず、データ取得部51は、踏込量センサ610から出力されたアクセルペダル61の踏込量、及び前後進切換レバー62から出力された前後進切換信号を取得する(ステップS501)。次に、特定条件判定部52は、ステップS501で取得された踏込量及び前後進切換信号に基づいて、ホイールローダ1が前進走行をしているか否かを判定する(ステップS502)。
【0090】
ステップS502においてホイールローダ1が前進走行をしていると判定された場合(ステップS502/YES)、データ取得部51は、吐出圧センサ75から出力された作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Paを取得する(ステップS503)。
【0091】
次に、特定条件判定部52は、ステップS503で取得された吐出圧Paに基づいて、吐出圧Paが掘削動作に必要な作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Ps以上であるか否かを判定する(ステップS504)。
【0092】
ステップS504において吐出圧Paが掘削動作に必要な作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Ps以上である(Pa≧Ps)と判定された場合(ステップS504/YES)、データ取得部51は、車体傾斜角度センサ130から出力された車体傾斜検出角度θを取得する(ステップS505)。
【0093】
続いて、特定条件判定部52は、ステップS505で取得された車体傾斜検出角度θに基づいて、車体傾斜検出角度θが0以上であって第1角度閾値θ1未満であるか否かを判定する(ステップS506)。
【0094】
ステップS506において車体傾斜検出角度θが0以上であって第1角度閾値θ1未満である(0≦θ<θ1)と判定された場合(ステップS506/YES)、車体は登坂中ではないことから、モータ制御部53は、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを平地掘削動作時の最大押しのけ容積qsに制限する(ステップS507)。
【0095】
ステップS506において車体傾斜検出角度θが0以上であって第1角度閾値θ1未満でないと判定された場合(ステップS506/NO)、続いて、特定条件判定部52は、車体傾斜検出角度θが第1角度閾値θ1以上であって第2角度閾値θ2未満であるか否かを判定する(ステップS508)。
【0096】
ステップS508において車体傾斜検出角度θが第1角度閾値θ1以上であって第2角度閾値θ2未満である(θ1≦θ<θ2)と判定された場合(ステップS508/YES)、特定条件を満たすことから、モータ制御部53は、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを、平地掘削動作時の最大押しのけ容積qsよりも大きい第1最大押しのけ容積q1(>qs)に制限する(ステップS509)。すなわち、ステップS509において、モータ制御部53は、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを平地掘削動作時の最大押しのけ容積qsよりも上昇させる。
【0097】
ステップS508において車体傾斜検出角度θが第1角度閾値θ1以上であって第2角度閾値θ2未満でないと判定された場合(ステップS508/NO)、続いて、特定条件判定部52は、車体傾斜検出角度θが第2角度閾値θ2であるか否かを判定する(ステップS510)。
【0098】
ステップS510において車体傾斜検出角度θが第2角度閾値θ2である(θ=θ2)と判定された場合(ステップS510/YES)、特定条件を満たすことから、モータ制御部53は、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを、第1最大押しのけ容積q1よりもさらに大きい第2最大押しのけ容積q2(>q1)に制限する(ステップS511)。すなわち、ステップS511において、モータ制御部53は、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを平地掘削動作時の最大押しのけ容積qs及び第1最大押しのけ容積q1よりもさらに上昇させる。
【0099】
ステップS507、ステップS509、及びステップS511のそれぞれの処理が実行されると、コントローラ5はステップS503に戻る。また、ステップS502において前進走行中でないと判定された場合(ステップS502/NO)、ステップS504において吐出圧Paが掘削動作に必要な作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Ps未満である(Pa<Ps)と判定された場合(ステップS504/NO)、及びステップS510において車体傾斜検出角度θが第2角度閾値θ2でない(θ≠θ2)と判定された場合(ステップS510/NO)は、いずれも特定条件を満たさないため、コントローラ5における処理が終了する。
【0100】
このように、特定条件が満たされた場合、すなわちホイールローダ1のかき上げ作業時において、図11に示すように、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを自動で平地掘削動作時の最大押しのけ容積qsよりも上昇させることにより、車体の最大けん引力が平地掘削動作時の最大けん引力よりも上昇するため、平地掘削時と比べて低下していたWsinα分のけん引力を補うことができる。これにより、車体が平地に設置された状態で掘削動作を行う場合に限らず、車体が急斜面を前進走行(登坂)しながら掘削動作を行うかき上げ作業の場合であっても作業効率の向上を図れる。
【0101】
また、本実施形態では、コントローラ5は、車体傾斜検出角度θが第1角度閾値θ1以上であって第2角度閾値θ2未満である場合(θ1≦θ<θ2)には、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを平地掘削動作時の最大押しのけ容積qsから第1最大押しのけ容積q1に上昇させるのに対し(図11に示す二点鎖線から一点鎖線への上昇)、車体傾斜検出角度θが第2角度閾値θ2である場合(θ=θ2)には、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを平地掘削動作時の最大押しのけ容積qsから第2最大押しのけ容積q2(>q1)に上昇させる(図11に示す二点鎖線から実線への上昇)。すなわち、車体傾斜検出角度θが大きいほど、HSTモータ42の最大押しのけ容積の上昇率を大きくしている。このため、地山100の斜面の角度に応じて、より精度よく車体の最大けん引力を制御することができる。
【0102】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るホイールローダ1について図12~14を参照して説明する。なお、図12~14において、第1実施形態に係るホイールローダ1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0103】
図12は、第2実施形態に係るホイールローダ1の走行駆動に係る油圧回路及び電気回路を示す図である。図13は、第2実施形態に係るコントローラ5Aで実行される処理の流れを示すフローチャートである。図14は、第2実施形態における作業機用油圧ポンプ45の吐出圧PaとHSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxとの関係を示すグラフである。
【0104】
図12に示すように、本実施形態に係るホイールローダ1は、地山100を形成している土砂や鉱物等の硬さや比重、作業現場の路面の状態等に応じて、掘削動作時における車体の最大けん引力をPモード、Nモード、及びLモードの3段階に切り替えるモード切替スイッチ60を備えている。このモード切替スイッチ60は手動スイッチであり、運転室12(図1参照)に設けられている。モード切替スイッチ60から出力されたモード切替信号はコントローラ5Aに入力される。
【0105】
Pモードは最大けん引力を最も小さくした場合のモードであり、Nモードは最大けん引力をPモードの場合よりも大きくした場合であり、Lモードは最大けん引力をNモードの場合よりもさらに大きくした場合である。オペレータは、モード切替スイッチ60を切り替えて最適なモードを選択することにより、現場の環境に合わせて効率的に掘削作業を行うことができる。
【0106】
また、本実施形態では、第1実施形態と異なり、車体の傾斜状態を検出する傾斜状態検出器にリフトアーム21の角度を検出するリフトアーム角度センサ211(リフトアーム角度検出器)を用いている。したがって、コントローラ5Aでは、特定条件判定部52は、リフトアーム角度センサ211から出力されたリフトアーム検出角度βに基づいて車体の傾斜状態を判定している。
【0107】
さらに、コントローラ5Aでは、特定条件を満たす場合における最大けん引力の上昇のさせ方が第1実施形態に係るコントローラ5と異なる。具体的には、コントローラ5Aは、リフトアーム角度センサ211で検出されたリフトアーム検出角度βが大きいほど、車体の最大けん引力の制限を開始する時の作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Pa(リフトアーム21の上げ操作量)の値を大きくしている。
【0108】
図13に示すように、ステップS504において吐出圧Paが掘削動作に必要な作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Ps以上である(Pa≧Ps)と判定された場合(ステップS504/YES)、データ取得部51は、リフトアーム検出角度βを取得する(ステップS505A)。
【0109】
続いて、特定条件判定部52は、ステップS505Aで取得したリフトアーム検出角度βに基づいて、リフトアーム検出角度βが0以上であって第1角度閾値β1未満であるか否かを判定する(ステップS506A)。
【0110】
ステップS506Aにおいてリフトアーム検出角度βが0以上であって第1角度閾値β1未満である(0≦β<β1)と判定された場合(ステップS506A/YES)、モータ制御部53は、ステップS503で取得した吐出圧Paが掘削動作に必要な吐出圧Psのときに(Pa=Ps)、最大押しのけ容積qmaxをqP,qN,qLのいずれかに制限する(ステップS507A)。
【0111】
ステップS506Aにおいてリフトアーム検出角度βが0以上であって第1角度閾値β1未満でないと判定された場合(ステップS506A/NO)、続いて、特定条件判定部52は、リフトアーム検出角度βが第1角度閾値β1以上であって第2角度閾値β2未満であるか否かを判定する(ステップS508A)。
【0112】
ステップS508Aにおいてリフトアーム検出角度βが第1角度閾値β1以上であって第2角度閾値β2未満である(β1≦β<β2)と判定された場合(ステップS508A/YES)、特定条件を満たすことから、モータ制御部53は、ステップS503で取得した吐出圧Paが掘削動作に必要な吐出圧Psよりも大きい第1圧力閾値P1(>Ps)のときに(Pa=P1)、最大押しのけ容積qmaxをqP,qN,qLのいずれかに制限する(ステップS509A)。
【0113】
なお、制限値qPは、モード切替スイッチ60においてPモードが選択されている場合、制限値qNは、モード切替スイッチ60においてNモードが選択されている場合、制限値qLは、モード切替スイッチ60においてLモードが選択されている場合におけるHSTモータ42の最大押し退け容積qmaxに関する制限値である。
【0114】
ステップS508Aにおいてリフトアーム検出角度βが第1角度閾値β1以上であって第2角度閾値β2未満でないと判定された場合(ステップS508A/NO)、続いて、特定条件判定部52は、リフトアーム検出角度βが第2角度閾値β2であるか否かを判定する(ステップS510A)。
【0115】
ステップS510Aにおいてリフトアーム検出角度βが第2角度閾値β2である(β=β2)と判定された場合(ステップS510A/YES)、特定条件を満たすことから、モータ制御部53は、ステップS503で取得した吐出圧Paが第1圧力閾値P1よりもさらに大きい第2圧力閾値P2(>P1)のときに(Pa=P2)、最大押しのけ容積qmaxをqP,qN,qLのいずれかに制限する(ステップS511A)。
【0116】
図14に示すように、リフトアーム検出角度βが第1角度閾値β1以上であって第2角度閾値β2未満である場合(β1≦β<β2)には、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxの制限を開始する時の吐出圧Paを掘削動作に必要な吐出圧Psよりも大きい第1圧力閾値P1(>Ps)とし、リフトアーム検出角度βが第2角度閾値β2である場合(β=β2)には、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxの制限を開始する時の吐出圧Paを掘削動作に必要な吐出圧Ps及び第1圧力閾値P1よりも大きい第2圧力閾値P2としている。
【0117】
なお、車体の最大けん引力の制限を開始する時の吐出圧Paは、リフトアーム21が水平姿勢をとった時の吐出圧以上であることが望ましい。本実施形態では、リフトアーム検出角度βが第1角度閾値β1に到達した場合における車体の最大けん引力の制限を開始する時の吐出圧である第1圧力閾値P1に相当する。
【0118】
本実施形態においても、第1実施形態と同様にして、地山100の斜面の角度に応じて、より精度よく車体の最大けん引力を制御することができるため、かき上げ作業時における作業効率の向上が図れる。
【0119】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るホイールローダ1について図15及び図16を参照して説明する。なお、図15及び図16において、第1実施形態及び第2実施形態のそれぞれに係るホイールローダ1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0120】
図15は、第3実施形態に係るコントローラ5Bで実行される処理の流れを示すフローチャートである。図16は、第3実施形態における作業機用油圧ポンプ45の吐出圧PaとHSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxとの関係を示すグラフである。
【0121】
本実施形態に係るコントローラ5Bでは、特定条件を満たす場合における最大けん引力の上昇のさせ方が第1実施形態に係るコントローラ5及び第2実施形態に係るコントローラ5Aと異なる。具体的には、コントローラ5Bは、リフトアーム角度センサ211で検出されたリフトアーム検出角度βが大きいほど、車体の最大けん引力の制限量に対する作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Paの増加率を大きくしている。
【0122】
図15に示すように、ステップS506Aにおいてリフトアーム検出角度βが0以上であって第1角度閾値β1未満である(0≦β<β1)と判定された場合(ステップS506A/YES)、モータ制御部53は、図16に示すように、作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Paが、掘削動作に必要な吐出圧Psから当該吐出圧Psよりも大きい第4圧力閾値P4(>Ps)まで増加するにつれて、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを100%からqP,qN,qLのいずれかまで徐々に制限する(ステップS507B)。
【0123】
また、図15に示すように、ステップS508Aにおいてリフトアーム検出角度βが第1角度閾値β1以上であって第2角度閾値β2未満である(β1≦β<β2)と判定された場合(ステップS508A/YES)、モータ制御部53は、図16に示すように、作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Paが、掘削動作に必要な吐出圧Psから第4圧力閾値P4よりも大きい第5圧力閾値P5(>P4)まで増加するにつれて、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを100%からqP,qN,qLのいずれかまで徐々に制限する(ステップS509B)。
【0124】
そして、図15に示すように、ステップS510Aにおいてリフトアーム検出角度βが第2角度閾値β2である(β=β2)と判定された場合(ステップS510A/YES)、モータ制御部53は、図16に示すように、作業機用油圧ポンプ45の吐出圧Paが、掘削動作に必要な吐出圧Psから第5圧力閾値P5よりも大きい第6圧力閾値P6(>P5)まで増加するにつれて、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを100%からqP,qN,qLのいずれかまで徐々に制限する(ステップS511B)。
【0125】
このように、本実施形態においても、第1実施形態及び第2実施形態と同様にして、地山100の斜面の角度に応じて、より精度よく車体の最大けん引力を制御することができるため、かき上げ作業時における作業効率の向上が図れる。
【0126】
以上、本発明の各実施形態について説明した。なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な他の変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、各実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0127】
例えば、上記各実施形態では、作業機用油圧ポンプ45は固定容量型の油圧ポンプを用いたが、これに限らず、可変容量型の油圧ポンプを用いても良い。
【0128】
また、上記各実施形態では、HSTモータ42の最大押しのけ容積qmaxを調整することによりホイールローダ1の最大けん引力を制御していたが、これに限らず、例えばHSTポンプ41の押しのけ容積を調整することによりホイールローダ1の最大けん引力を制御してもよい。
【符号の説明】
【0129】
1:ホイールローダ
2:フロント作業機
3:エンジン
5,5A,5B:コントローラ
11A:前輪(車輪)
11B:後輪(車輪)
21:リフトアーム
41:HSTポンプ(走行用油圧ポンプ)
42:HSTモータ(走行用油圧モータ)
45:作業機用油圧ポンプ
62:前後進切換レバー(走行状態検出器)
75:吐出圧センサ(操作量検出器)
76:パイロット圧センサ(操作信号検出器,操作量検出器)
130:車体傾斜角度センサ(車体傾斜角度検出器、車体傾斜状態検出器)
211:リフトアーム角度センサ(リフトアーム角度検出器、車体傾斜状態検出器)
610:踏込量センサ(走行状態検出器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16