(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】屈曲機構及び医療装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
A61B17/29
(21)【出願番号】P 2020558413
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2019045215
(87)【国際公開番号】W WO2020105616
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2018219532
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 陽平
(72)【発明者】
【氏名】尾立 圭巳
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-110745(JP,A)
【文献】特開2009-219795(JP,A)
【文献】特開2016-054967(JP,A)
【文献】特表2016-509882(JP,A)
【文献】特開2015-062533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/29
B25J 17/02
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト部と、
近位端が前記シャフト部の遠位端に連なり、前記シャフト部の軸線と直交する方向に屈曲可能である屈曲部と、
近位端が前記屈曲部に連なる先端部と、
前記シャフト部及び前記屈曲部の軸線方向に沿って設けられた溝又は孔に挿通され、遠位端が、前記屈曲部に固定された操作ロッド又は操作ワイヤと、
前記シャフト部の固定部分に前記操作ロッド又は前記操作ワイヤを押し付け可能に構成された押付部と、
を備え、
前記屈曲部は、前記操作ロッド又は前記操作ワイヤが前記操作ロッド又は前記操作ワイヤの延在方向に動作することによって屈曲可能に構成されるとともに、前記押付部によって、前記操作ロッド又は前記操作ワイヤが前記シャフト部の固定部分に押し付けられることにより摩擦力が発生し、押し付け位置において前記操作ロッド又は前記操作ワイヤが軸線方向において前記摩擦力によって固定さ
れ、
前記押付部は、前記シャフト部の溝又は孔において前記操作ロッド又は前記操作ワイヤに隣接して挿通され、流体圧力が供給されることにより膨張可能なチューブを有し、
前記チューブは、流体圧力が供給されることにより膨脹し、前記操作ロッド又は前記操作ワイヤを前記シャフト部の固定部分に押し付け可能に構成される、屈曲機構。
【請求項2】
前記屈曲部は、
前記シャフト部の軸線方向と直交する第1方向に屈曲可能である第1屈曲部と、
前記シャフト部の軸線方向と直交し、且つ、前記第1方向とは異なる第2方向に屈曲可能である第2屈曲部と、
を有する、請求項1に記載の屈曲機構。
【請求項3】
複数の前記操作ロッド又は前記操作ワイヤが、前記チューブの周囲に配置される、請求項
1又は2に記載の屈曲機構。
【請求項4】
前記押付部は、前記シャフト部の溝又は孔の軸線方向に挿通され、前記チューブと、前記シャフト部の固定部分、前記操作ロッド又は前記操作ワイヤの少なくとも一つとの間の隙間に配置されたスペーサロッドを更に有する、請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の屈曲機構。
【請求項5】
前記シャフト部の溝又は孔の軸線方向に垂直な断面形状が、所定形状であり、
前記チューブの断面形状の少なくとも一部が、前記溝又は孔の所定形状に応じた形状である、請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の屈曲機構。
【請求項6】
前記シャフト部の溝又は孔の軸線方向に垂直な断面形状が、矩形であり、
前記チューブの外側の断面形状が、前記溝又は孔の断面形状に応じて矩形であり、
前記チューブの内側の断面形状が、円形である、請求項
5に記載の屈曲機構。
【請求項7】
前記屈曲部は、その軸線方向に一列に連なった複数のコマ部材を有し、
前記操作ロッド又は前記操作ワイヤは、前記複数のコマ部材に亘って軸線方向に設けられた溝又は孔に挿通され、
前記操作ロッド又は前記操作ワイヤの遠位端が、前記屈曲部の遠位端に位置する前記コマ部材に固定されている、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の屈曲機構。
【請求項8】
前記複数のコマ部材に亘って軸線方向に設けられた溝又は孔に挿通され、遠位端が、前記屈曲部の遠位端に位置する前記コマ部材よりも近位端側に位置する前記コマ部材に固定されている抑制ロッド又は抑制ワイヤを更に備え、
前記抑制ロッド又は前記抑制ワイヤは、前記押付部によって前記シャフト部の固定部分に押し付けられる、請求項
7に記載の屈曲機構。
【請求項9】
前記シャフト部の前記固定部分は、前記シャフト部の前記溝又は孔の壁面である、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の屈曲機構。
【請求項10】
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の屈曲機構を備える、医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲機構及び医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
胆嚢摘出等のような腹腔内の手術は、以前は腹部を切開するいわゆる開腹手術により行われていた。近年、腹部に数cm程度の孔を幾つかあけて、そこから腹腔鏡や手術用の処置具等(以下「処置具等」)を挿入して処置をする腹腔鏡下手術が広く一般に行われている。
【0003】
処置具等は、挿入部先端の向きを変えるための屈曲機構を有することがある。屈曲機構を駆動するための駆動力は、ワイヤ又はロッドにより処置具等の基端側から屈曲機構まで伝達される。
【0004】
上記の屈曲機構はワイヤやロッドの断面形状や機械特性に応じた屈曲剛性を有するが、手術の内容によっては屈曲機構に高い屈曲剛性が求められる場合がある。従来、高剛性の屈曲機構が考案されている(例えば特許文献1参照)。この屈曲機構では、関節輪に配置されたワイヤガイド孔が、直列方向において隣に位置するワイヤガイド孔と軸線方向又は軸線位置が相違している。ワイヤガイド孔に挿通された形状保持用操作ワイヤに加わる張力が大きくなるのにしたがって、ワイヤガイド孔との接触部において形状保持用操作ワイヤに作用する摩擦抵抗が増大する。その結果、各形状保持用操作ワイヤが基端側から牽引されていない状態では屈曲形状保持可能管部が変化し易く、すなわち屈曲機構の剛性が低くなり、各形状保持用操作ワイヤが基端側から牽引された状態では屈曲形状保持可能管部が変形し難く、すなわち屈曲機構の剛性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の従来技術では、屈曲部に形状保持用操作ワイヤ及びワイヤガイド孔のスペースが必要となることに加え、複雑な形状のガイド孔が必要になる。また、形状保持用操作ワイヤとガイド孔との摺動耐久性も要求される。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、屈曲機構を、簡単な構成で高剛性化することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る屈曲機構は、シャフト部と、近位端が前記シャフト部の遠位端に連なり、前記シャフト部の軸線と直交する方向に屈曲可能である屈曲部と、近位端が前記屈曲部に連なる先端部と、前記シャフト部及び前記屈曲部の軸線方向に沿って設けられた溝又は孔に挿通され、遠位端が、前記屈曲部に固定された操作ロッド又は操作ワイヤと、前記シャフト部の固定部分に前記操作ロッド又は前記操作ワイヤを押し付け可能に構成された押付部と、を備え、前記屈曲部は、前記操作ロッド又は前記操作ワイヤが前記操作ロッド又は前記操作ワイヤの延在方向に動作することによって屈曲可能に構成されるとともに、前記押付部によって、前記操作ロッド又は前記操作ワイヤが前記シャフト部の固定部分に押し付けられることにより摩擦力が発生し、押し付け位置において前記操作ロッド又は前記操作ワイヤが軸線方向において前記摩擦力によって固定されるものである。
【0009】
上記構成によれば、シャフト部及び屈曲部の軸線方向に沿って設けられた溝又は孔に挿通された操作ロッド又は操作ワイヤを当該操作ロッド又は当該操作ワイヤの延在方向に動作することによって屈曲部の屈曲動作が行われる。押付部によって、操作ロッド又は操作ワイヤをシャフト部の固定部分(例えば溝又は孔の壁面)に押し付けることで、摩擦力が発生し、押し付け位置において操作ロッド又は操作ワイヤが軸線方向において固定される。これにより、屈曲機構を簡単な構成で高剛性化することができる。
【0010】
尚、前記屈曲部は、前記シャフト部の軸線方向と直交する第1方向に屈曲可能である第1屈曲部と、前記シャフト部の軸線方向と直交し、且つ、前記第1方向とは異なる第2方向に屈曲可能である第2屈曲部と、を有してもよい。
【0011】
上記構成によれば、第1屈曲部と第2屈曲部の屈曲方向が異なるので、屈曲機構をより自由な方向に回転(屈曲)させることができる。
【0012】
前記押付部は、前記シャフト部の溝又は孔において前記操作ロッド又は前記操作ワイヤに隣接して挿通され、流体圧力が供給されることにより膨張可能なチューブを有し、前記チューブは、流体圧力が供給されることにより膨脹し、前記操作ロッド又は前記操作ワイヤを前記シャフト部の固定部分に押し付け可能に構成されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、流体圧力により膨張可能なチューブを膨張させることにより、操作ロッド又は操作ワイヤをシャフト部の固定部分(例えば溝又は孔の壁面)に押し付けて、摩擦力を発生させることができる。シャフト部に設けられた溝又は孔に操作ロッド又は操作ワイヤとともにチューブを挿通するだけなので、屈曲機構を簡単な構成で高剛性化することができる。尚、複数の前記操作ロッド又は前記操作ワイヤが、前記チューブの周囲に配置されてもよい。
【0014】
尚、前記押付部が、前記シャフト部の溝又は孔の軸線方向に挿通され、前記チューブと、前記シャフト部の固定部分、前記操作ロッド又は前記操作ワイヤの少なくとも一つとの間の隙間に配置されたスペーサロッドを更に有してもよい。
【0015】
上記構成によれば、スペーサロッドが、シャフト部の溝又は孔におけるチューブの周囲に挿通されているので、チューブのスペースが減少する。これにより、チューブを膨張させる際にチューブに供給する流体圧力をより低くしても、十分な摩擦力が発生し、押し付け効果を得ることができる。また、チューブに供給する流体圧力をより低くしてもよいのでチューブが伸びきって裂けにくくなり、チューブの耐圧性能を向上させることができる。
【0016】
一方、前記シャフト部の溝又は孔の軸線方向に垂直な断面形状が、所定形状であり、前記チューブの断面形状の少なくとも一部が、前記溝又は孔の所定形状に応じた形状であってもよい。具体的に、前記シャフト部の溝又は孔の軸線方向に垂直な断面形状が矩形であり、前記チューブの外側の断面形状が前記溝又は孔の断面形状に応じて矩形であり、前記チューブの内側の断面形状が、円形であってもよい。
【0017】
前記屈曲部は、その軸線方向に一列に連なった複数のコマ部材を有し、前記操作ロッド又は前記操作ワイヤは、前記複数のコマ部材に亘って軸線方向に設けられた溝又は孔に挿通され、前記操作ロッド又は前記操作ワイヤの遠位端が、前記屈曲部の遠位端に位置する前記コマ部材に固定されていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、屈曲部が主にコマ部材から構成されるので、屈曲機構を簡単な構成とすることができる。
【0019】
上記屈曲機構は、前記複数のコマ部材に亘って軸線方向に設けられた溝又は孔に挿通され、遠位端が、前記屈曲部の遠位端に位置する前記コマ部材よりも近位端側に位置する前記コマ部材に固定されている抑制ロッド又は抑制ワイヤを更に備え、前記抑制ロッド又は前記抑制ワイヤは、前記押付部によって前記シャフト部の固定部分に押し付けられてもよい。
【0020】
上記構成によれば、屈曲部の先端に外力が加わった場合に、操作ロッドまたは操作ワイヤの伸び量とは無関係に屈曲部の先端が当該外力の方向に撓むモードにおける屈曲部の先端の撓みを抑制することができる。
【0021】
前記シャフト部の前記固定部分は、前記シャフト部の前記溝又は孔の壁面であってもよい。
【0022】
上記構成によれば、シャフト部の固定部分としてシャフト部の溝又は孔の壁面を利用できるので、屈曲機構を簡単な構成とすることができる。
【0023】
本発明の他の態様に係る医療装置は、上記屈曲機構を備えるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、屈曲機構を、簡単な構成で高剛性化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る屈曲機構の一例を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の屈曲機構の軸線方向に沿った各部の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の屈曲機構のA-A部及びB-B部の断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の屈曲機構の屈曲動作及びロック動作の説明図である。
【
図5】
図5は、
図1の屈曲機構を備えた医療装置の制御系を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図1の屈曲機構の屈曲時に発生する変形モードを示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係る屈曲機構の一部を模式的に示した図である。
【
図8】
図8は、
図7の屈曲機構のシャフト部の断面図の一例である。
【
図9】
図9は、屈曲機構の押付部の変形例を示す図である。
【
図10】
図10は、屈曲機構の屈曲部の変形例を示す側面図である。
【
図11】
図11は、屈曲機構の押付部のその他の変形例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、屈曲機構の押付部の別の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る屈曲機構の一例を示す側面図である。
図1に示すように、屈曲機構100は、中空のシャフト部1と、近位端2aがシャフト部1の遠位端1aに連なる中空の屈曲部2と、近位端3aが屈曲部2の遠位端2bに連なる先端部3と、シャフト部1及び屈曲部2の軸線方向に挿通され、遠位端が、屈曲部2の遠位部に固定された操作ロッド4と、シャフト部1に操作ロッド4を押し付け可能に構成された押付部5と、を備える。尚、「連なる」とは、2つのものが直接接続されている場合のみならず、2つのものの間に他のものが介在し、間接的に接続されている場合も含む。また、以下では、「軸線」とは、屈曲機構100の前後に延びる中心線を意味し、「軸線方向」とは、軸線に沿った方向(前後方向)を意味する。本実施形態ではシャフト部1、屈曲部2及び先端部3は、各軸線方向が屈曲機構100の軸線方向と一致するように連なっている。
【0028】
図2は、屈曲機構100の軸線方向に沿った各部の断面図である。
図2に示すように、シャフト部1は、筒状部材であるシャフト10と、シャフト10の外周を覆う外管11と、を備える。シャフト10には、操作ロッド4及び押付部5(
図1参照)を挿通するために、溝10aが設けられる。溝10aは、シャフト10の外側表面に、シャフト10の軸線方向に沿って設けられる。更にシャフト10には、中空の内管6を挿通するために内部空間10bが設けられる。内部空間10bは、シャフト10の軸線方向に沿って設けられる。
【0029】
屈曲部2は、その軸線方向に一列に連なった複数のコマ部材20を有する。本実施形態では12個のコマ部材20が屈曲部2の軸線方向に一列に連なっている。また、複数のコマ部材20には、操作ロッド4を挿通するために軸線方向に設けられた貫通孔20aと、中空の内管6を挿通するために軸線方向に設けられた内部空間20bが設けられる。隣り合うコマ部材20は、一対のピン21によって連結されている。シャフト部1の遠位端1aは、一対のピン21によって屈曲部2の近位端2aに位置するコマ部材20に連結されている。これによって、各コマ部材20は、隣接するコマ部材20に対して一対のピン21の軸線(揺動軸線)周りに揺動可能に連結される。コマ部材20の各揺動軸線は互いに平行となるように構成される。つまり、屈曲部2は、コマ部材20の軸線及び揺動軸線と直交する方向に屈曲可能に構成されている。
【0030】
先端部3はエンドエフェクタであり、本実施形態のエンドエフェクタは、医療用の鉗子である。先端部3の基部30は、シャフト部1及び屈曲部2の内部に挿通された内管6の遠位端に取り付けられ、内管6の中心を通る回転軸線L1周りに回動可能である(手首回転軸)。本実施形態の内管6は、ステンレスのテープ材をスプリング状に巻いた金属製のチューブであり、曲げを許容しつつトルクを伝達でき、且つ、内部空間6aに配線類を内包できる。内管6はシャフト10の内部空間10b、及び、複数のコマ部材20の内部空間20bに挿通される。
【0031】
本実施形態では、内管6の内部空間6aには鉗子を駆動するロッド7が挿通される。ロッド7の遠位端は、鉗子の開閉動作を駆動する機構(ここでは図示せず)に連結される。この機構は、ロッド7の遠位端に連結された部分が所定方向に動かされると、その移動量に応じて鉗子を所定量開閉するように構成されている。これにより、例えばロッド7を遠位端から近位端に向かう方向に牽引すると、鉗子は閉じ動作を行い、対象物の把持動作を行う。また、ロッド7を近位端から遠位端に向かう方向に送り出すと、鉗子は開く動作を行い、対象物の解放動作を行う。
【0032】
操作ロッド4(
図1参照)は、シャフト10に設けられた溝10a(
図2参照)及び複数のコマ部材20に亘って設けられた貫通孔20a(
図2参照)に挿通される。操作ロッド4の遠位端は、屈曲部2の遠位端2bに位置するコマ部材20、すなわち、屈曲部2の遠位部に固定される。操作ロッド4の遠位端が固定される屈曲部2の遠位部は、操作ロッド4によって屈曲部2を駆動できる範囲内において任意の位置とされ得る。本実施形態では、操作ロッド4は、棒状のニッケルチタン合金等の超弾性合金であるが、可撓性を有するステンレス製のワイヤでもよく、超弾性体のワイヤでもよい。操作ロッド4は、その基端側から押し引きされることにより、当該操作ロッド4の延在方向に動作可能に構成されている。これにより、屈曲部2は、コマ部材20の軸線及び揺動軸線と直交する方向に屈曲可能に構成されている。
【0033】
押付部5(
図1参照)は、シャフト部1の溝10a(
図2参照)に操作ロッド4に隣接して挿通される。押付部5は、ゴム、熱可塑性エラストマー、樹脂、金属又は超弾性体のチューブ5aと、チューブ5aに連なるステンレス製の中空のパイプ5bとを有する。チューブ5aの遠位端はシャフト部1の溝10aの遠位端で固定され、チューブ5aの近位端はパイプ5bの遠位端に接続されている。パイプ5bの近位端(基端)側からチューブ5aに液圧を供給するように構成されている。チューブ5aとパイプ5bとは、パイプ5bの遠位部の外周にチューブ5aの近位部を被せ、その周りに収縮部材を被せて収縮させることによって接続される。収縮部材としては、熱収縮樹脂の他、熱収縮エラストマーや形状記憶合金を用いることができる。
【0034】
図3(A)は、
図1の屈曲機構100のシャフト部1におけるA-A部の断面図である。
図3(A)に示すように、シャフト10の外側表面には4箇所の溝10aが設けられる。溝10aは1以上の任意の数設けられてもよい。各溝10aには、操作ロッド4及び操作ロッド4に隣接してチューブ5aが挿通される。シャフト10の外周は外管11で覆われている。チューブ5aの内部には作動液5cが満たされ、チューブ5aは、液体圧力が供給されることにより内部の作動液5cの圧力変化に応じて収縮・膨張可能に構成されている。本実施形態では、チューブ5aが、基端(
図1のパイプ5bの近位端)側から液体圧力が供給されることにより膨脹し、操作ロッド4をシャフト部1の溝10aの壁面に押し付け可能に構成される。尚、チューブ5aにおいて操作ロッド4と接触する表面の部材の材質がゴム又はプラスチックであってもよい。
【0035】
シャフト10の内部空間10bには内管6が挿通される。内管6の内部空間6aには、先端部3であるエンドエフェクタ(
図2参照)を駆動するロッド7が挿通される。ロッド7の遠位端は先端部3(エンドエフェクタ)である鉗子に取り付けられている。
【0036】
図3(B)は、
図1の屈曲機構100の屈曲部2におけるB-B部の断面図である。
図3(B)に示すように、コマ部材20には4カ所の貫通孔20aが設けられている。4箇所の貫通孔20aは、シャフト10の溝10aに対応する位置に形成されている。各貫通孔20aには操作ロッド4が挿通される。屈曲部2(コマ部材20)の内部空間20bには内管6が挿通される。内管6の内部空間6aには、
図3(A)同様、先端部3であるエンドエフェクタ(
図2参照)を駆動するロッド7が挿通される。
【0037】
次に、屈曲機構100の動作について
図4を用いて説明する。
図4に示すように、シャフト部1及び屈曲部2の軸線方向に沿って挿通されている操作ロッド4を当該操作ロッド4の延在方向に押し引きする。具体的には、4本の操作ロッド4(
図3参照)のうち屈曲側の2本の操作ロッド4(
図3の上側の2本)を基端側に引き、反対側の2本の操作ロッド4(
図3の下側の2本)を先端側に押す。一方、屈曲部2を構成する複数のコマ部材20は、隣接するコマ部材20に対して一対のピン21の軸線(揺動軸線)周りに揺動可能に連結され、コマ部材20の各揺動軸線が互いに平行となるように構成されている。本実施形態では、屈曲部2は、コマ部材20の軸線及び揺動軸線と直交する方向(紙面の上方向又は下方向)に±180度屈曲することができる。
【0038】
屈曲動作完了後、チューブ5a(押付部5)を膨張させることにより、操作ロッド4をシャフト部1に設けられた溝10aの壁面に押し付ける。これにより、操作ロッド4と溝10aの壁面の間で摩擦力を発生させ、押し付け位置において操作ロッド4が軸線方向において固定される。これにより、屈曲機構100の屈曲剛性に影響する操作ロッド4の長さが、操作ロッド4の遠位端から押し付け位置までの長さとなる。つまり、操作ロッド4をシャフト部1に設けられた溝10aの壁面に押し付けない場合に比べて屈曲機構100の屈曲剛性に影響する操作ロッド4の長さを短くできる。すると、屈曲機構100の屈曲剛性に影響する操作ロッド4の伸び量が少なくなり、屈曲機構100の屈曲剛性が高くなる。また、シャフト部1の軸線方向に沿って設けられた溝10aに操作ロッド4とチューブ5aを挿通するだけなので構成が簡単である。よって、屈曲機構100を簡単な構成で高剛性化することができる。
【0039】
尚、操作ロッド4の押付力はチューブ5aに供給する液圧やチューブ5aの長さで調節することができる。例えば液圧を大きくしたり、チューブ5aの長さを長くすると押付力は大きくなる。
【0040】
チューブ5a(押付部5)を膨張させることにより、操作ロッド4をシャフト部1に設けられた溝10aの壁面に押し付けることを、以下では、「屈曲部2をロックする」と表現する。
【0041】
本実施形態の屈曲機構100は医療装置200に使用されることができる。例えば医療装置200は、術者が手術台の上の患者の体内に挿入した屈曲機構100の遠位端に設けられた術具を外部から遠隔的に操作することによって、低侵襲手術を行うシステムである。
【0042】
図5は、屈曲機構100を備えた医療装置200の制御系を示すブロック図である。
図5に示すように、医療装置200は、手首回転駆動部40と、屈曲駆動部41と、液圧駆動部42と、エンドエフェクタ駆動部43と、制御部44と、表示装置45と、操作部46と、内視鏡47と、を備える。
【0043】
手首回転駆動部40は、遠位端に先端部3(エンドエフェクタ)が取り付けられた内管6を回転軸線L1周りに回動させ、鉗子の手首回転動作を行う。手首回転駆動部40は、例えばサーボモータを含む。
【0044】
屈曲駆動部41は、操作ロッド4と接続され、操作ロッド4を操作ロッド4の延在方向に移動(往復動)させる。これによって、屈曲部2の屈曲動作を行う。屈曲駆動部41は、例えばサーボモータを含む。
【0045】
液圧駆動部42は、チューブ5aに連なるパイプ5bと接続され、パイプ5bの基端側から液体圧力を供給する。これによって、屈曲部2をロックする。
【0046】
エンドエフェクタ駆動部43は、ロッド7と接続され、その駆動力により、ロッド7をロッド7の延在方向に移動(往復動)させる。これによって、エンドエフェクタである鉗子が開閉する。
【0047】
制御部44は、例えば、CPU等の演算器と、ROM及びRAM等のメモリとを備えている。制御部44は、集中制御する単独の制御器で構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御器で構成されてもよい。制御部44は、操作部46から受信したデータに基づいて駆動部(40~43)の動作を制御し、屈曲機構100の動作を制御する。また、制御部44は、内視鏡47から受信した画像データを処理し、表示装置45に送信する。制御部44のメモリには所定の制御プログラムが記憶されていて、制御部44がこれらの制御プログラムを読み出して実行することにより、屈曲機構100の動作が制御される。
【0048】
操作部46は、術者が操作して、屈曲機構100によって実行されるべき動作命令を入力するためのものである。操作部46は、制御部44と通信可能に構成されている。そして、操作部46は、術者によって入力された屈曲機構100によって実行されるべき動作命令をデータに変換し、制御部44に送信する。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る屈曲機構について図面を用いて説明する。
図6は、第1実施形態に係る屈曲部2の屈曲時に発生する撓みモードを示す図である。屈曲部2の先端に
図6における下向きの外力が加わった場合、屈曲部2は
図6(A)の形態(S字モード)となる。外力が加わる前と後とで、操作ロッド4の長さ、特に、屈曲部2に挿通されている操作ロッド4の長さは変化しない。つまり、屈曲部2が
図6(A)の形態(S字モード)となることは、操作ロッド4の駆動によって防ぐことはできない。
【0049】
図7(A)は、本発明の第2実施形態に係る屈曲機構100Aの一部を模式的に示した図である。
図7(A)に示すように、本実施形態に係る屈曲機構100Aは、操作ロッド4とともに屈曲部2に挿通された抑制ワイヤ8を備える点が第1実施形態(
図6参照)と異なる。抑制ワイヤ8は、シャフト部1ではその軸線方向に設けられた溝10aに操作ロッド4とともに挿通され、屈曲部2では複数のコマ部材20に亘ってその軸線方向に設けられた貫通孔20aに操作ロッド4とともに挿通される。
【0050】
また、抑制ワイヤ8の遠位端は、屈曲部2の遠位端に位置するコマ部材20よりも近位端側に位置するコマ部材20に固定されている。
図7(A)では抑制ワイヤ8の遠位端は、屈曲部2の近位端から6番目に位置するコマ部材20に固定されている。つまり、屈曲部2における抑制ワイヤ8の長さは、屈曲部2における操作ロッド4の長さの1/2である。
【0051】
抑制ワイヤ8が、押し付け位置において、チューブ5aによって操作ロッド4とともにシャフト部1の溝10aの壁面に押し付けられると、押し付け位置において、抑制ワイヤ8が操作ロッド4とともに軸方向において固定される。
【0052】
ここで、
図6(A)における屈曲部2の先端(右端部)に、屈曲部2の軸線方向と垂直な方向に荷重が加わったときの屈曲部2の先端の撓みσは次式(1)で表される。
σ=(P×L
3)/(12×E×I)・・・(1)
P(N):屈曲部2の先端に、屈曲部2の軸線方向と垂直な方向に加わる荷重
L(mm):屈曲部2の長さ
E(MPa):縦弾性係数
I(mm
4):断面二次モーメント
(I=π×d
4/64×N(d(mm)は単一の操作ロッド4の直径、Nはロッド本数))
【0053】
抑制ワイヤ8が押し付け位置において固定されると、押し付け位置から抑制ワイヤ8の遠位端固定位置までの長さが一定となる。すると、S字モードは、屈曲部2の近位部から抑制ワイヤ8の遠位端固定位置までの間と、抑制ワイヤ8の遠位端固定位置から屈曲部2の遠位部までの間の2段階で発生することになる。屈曲部2の先端の撓みσは屈曲部2の長さの3乗に比例するため、S字モードが2段階で発生した場合の屈曲部2の先端の撓みσは、S字モードが1段階のみで発生した場合の屈曲部2の先端の撓みσよりも小さくなる。つまり、S字モードによる屈曲部2の先端の撓みσを抑制することができる。
【0054】
実際には、屈曲部2の先端に
図6における下向きの外力が加わった場合、屈曲部2には
図6(B)の形態の撓みも発生する。つまり、
図6(A)の形態の撓みと
図6(B)の形態の撓みが重なって発生する。
図6(B)の形態の撓みは、
図6における上側の操作ロッド4が伸び、下側の操作ロッド4が縮むことで発生する。
【0055】
図7(B)は、本発明の第2実施形態に係る他の屈曲機構100Bの一部を模式的に示した図である。
図7(A)の屈曲機構100Aは、1本の操作ロッド4に対して1本の抑制ワイヤ8を備えていたが、
図7(B)では、屈曲機構100Bは、1本の操作ロッド4に対して2本の抑制ワイヤ8を備える。
【0056】
図7(B)では、一方の抑制ワイヤ8の遠位端は、屈曲部2の近位端から9番目に位置するコマ部材20に固定されており、他方の抑制ワイヤ8の遠位端は、屈曲部2の近位端から5番目に位置するコマ部材20に固定されている。つまり、屈曲部2における一方の抑制ワイヤ8の長さは、屈曲部2における操作ロッド4の長さの3/4であり、屈曲部2における他方の抑制ワイヤ8の長さは、屈曲部2における操作ロッド4の長さの5/12である。このように、屈曲部2における一方の抑制ワイヤ8の長さを、屈曲部2における操作ロッド4の長さの2/3より大きくし、屈曲部2における他方の抑制ワイヤ8の長さを、屈曲部2における操作ロッド4の長さの1/3より大きくすることで、屈曲部2の先端の撓みを更に抑制することができる。
【0057】
この場合、
図7(A)における説明と同様の理由により、S字モードが3段階で発生することになり、屈曲部2の先端の撓みσを更に抑制することができる。
【0058】
図8は、
図7(B)の屈曲機構100Bのシャフト部1の断面図の一例である。
図8に示すように、シャフト10Aの外側表面には6箇所の溝10aが設けられる。溝10aの断面形状は略矩形である。各溝10aには、2本の操作ロッド4又は2本の抑制ワイヤ8の間に1本のチューブ5aが挿通される。本実施形態では、シャフト10の溝10aには4本の操作ロッド4と、8本の抑制ワイヤ8と、6本のチューブ5aが挿通される。これにより、各チューブ5a(押付部5)を膨張させることにより、2本の操作ロッド4又は2本の抑制ワイヤ8をシャフト部1の溝10aの壁面に押し付けることができる。尚、チューブ5aにおいて操作ロッド4又は抑制ワイヤ8と接触する表面の部材の材質がゴム又はプラスチックであってもよい。
【0059】
尚、本実施形態では、抑制ワイヤ8は、屈曲部2において操作ロッド4の1/2、3/4又は5/12の長さとしたが、操作ロッド4よりも短ければこれらの長さに限られない。
【0060】
また、抑制ワイヤ8は、サーボモータ(例えば
図5の屈曲駆動部41)によって、当該抑制ワイヤ8の延在方向に動作するように構成されていてもよい。
【0061】
(変形例)
上記実施形態では、押付部5がチューブ5aを有し、チューブ5aが液体圧力により膨脹し、操作ロッド4をシャフト部1に押し付けるように構成されたが、この構成に限られない。
図9は、押付部5の変形例を示している。
図9は、シャフト10の外側表面の一部を拡大して示した平面図である。
図9(A)に示すように、第1の変形例に係る押付部5は、シャフト10の溝10aにおいて操作ロッド4に隣接して挿通される。押付部5は、ロッド部5dと、シャフト部1の基端側からシャフト部1の先端側に近づくにつれて拡大する拡大部5eとを備える。ロッド部5dと拡大部5eは例えば操作ロッド4と同じ材質である。シャフト10の溝10aはシャフト部1の基端側からシャフト部1の先端側に近づくにつれて拡大している。これにより、基端側の方向(図の矢印方向)に押付部5のロッド部5dを引くことにより、拡大部5eが溝10aの一方の壁面に面接触し、隣接する操作ロッド4が溝10aの他方の壁面に押し付けられる。つまり、押付部5と溝10aにおけるくさび効果を利用して押しつけを行う。尚、ロッド部5dと拡大部5eにおいて操作ロッド4と接触する側の表面の材質はゴム又はプラスチックであってもよい。
【0062】
図9(B)は、第2の変形例に係る押付部5を示している。
図9(B)に示すように、第2の変形例に係る押付部5は、シャフト10の溝10aにおいて2本の操作ロッド4の間に隣接して挿通される。基端側の方向(図の矢印方向)に押付部5のロッド部5dを引くことにより、拡大部5eが隣接する2本の操作ロッド4に面接触し、隣接する操作ロッド4が溝10aの壁面に押し付けられる。尚、押付部5(ロッド部5dと拡大部5e)において操作ロッド4と接触する両側の表面の材質はゴム又はプラスチックであってもよい。
【0063】
尚、上記実施形態の屈曲機構100(
図4参照)では、屈曲部2は、シャフト部1の軸線方向と直交する第1方向(紙面の上方向又は下方向)に±180度屈曲可能に構成されたが、これに限られない。屈曲部2は、第1方向だけでなく、シャフト部の軸線方向と直交し、且つ、第1方向とは異なる第2方向に屈曲可能に構成されてもよい。
【0064】
図10は、屈曲部2の変形例を示す側面図である。
図10に示すように、本変形例の屈曲部2Aは、屈曲機構100Cにおいて、近位端がシャフト部1の遠位端に連なる第1屈曲部201と、近位端が第1屈曲部201の遠位端に連なる第2屈曲部202と、を有する。
【0065】
第1屈曲部201は、その軸線方向に一列に連なった複数のコマ部材を有する。各コマ部材は、隣接するコマ部材に対して一対のピンの軸線周りに揺動可能に連結される。これにより、第1屈曲部201は、シャフト部1の軸線方向と直交する第1方向(
図10では、紙面の上方向又は下方向)に屈曲可能に構成されている。
【0066】
第2屈曲部202は、その軸線方向に一列に連なった複数のコマ部材を有する。各コマ部材は、隣接するコマ部材に対して一対のピンの軸線周りに揺動可能に連結される。ここで第2屈曲部202における各コマ部材のピンの軸線は、第1屈曲部201における各コマ部材のピンの軸線と直交する。第2屈曲部202は、シャフト部1の軸線方向及び第1方向と直交する第2方向(
図10では、紙面の手前方向又は奥行方向)に屈曲可能に構成されている。このように、各屈曲部(201,202)の屈曲方向が異なるように接続されているので、屈曲機構100Cをより自由な方向に回転(屈曲)させることができる。
【0067】
その他、屈曲部2において、各コマ部材のピンの軸線が交互に直交するように各コマ部材が連結されていてもよい。
【0068】
図11(A)~
図11(C)は、上記実施形態の屈曲機構の押付部5のその他の変形例を示す断面図である。ここではシャフト部1の軸線方向に垂直な断面の一部を模式的に示している。
図11(A)に示すように、本変形例の押付部5は、第1実施形態(
図4)と比べると、シャフト部1の溝10aの軸線方向に挿通され、チューブ5aの周囲に配置された4本のスペーサロッド5fを更に有している点が異なる。スペーサロッド5fの材質は例えばステンレスであるが他の金属としてもよく、プラスチックを含む樹脂やゴムとしてもよい。溝10aの断面形状は略矩形である。チューブ5a、スペーサロッド5f及び操作ロッド4の断面形状は円形である。チューブ5aの円形断面の直径は操作ロッド4の円形断面の直径と同程度である。スペーサロッド5fの円形断面の直径は操作ロッド4の円形断面の直径よりも小さい。
【0069】
2本のスペーサロッド5fは、チューブ5aと、溝10aの2つの角との間の隙間に配置されている。他の2本のスペーサロッド5fは、チューブ5aと、溝10aの壁面及び操作ロッド4との間の隙間に配置されている。
【0070】
本変形例では、スペーサロッド5fが、シャフト部1の溝10aにおいて、チューブ5aの周囲に挿通されているので、第1実施形態と比べて、チューブ5aのスペースが減少している。これにより、チューブ5aを膨張させる際にチューブ5aに供給する流体圧力をより低くしても、十分な摩擦力が発生し、押し付け効果を得ることができる。また、チューブ5aに供給する流体圧力をより低くしてもよいのでチューブ5aが伸びきって裂けにくくなり、チューブ5aの耐圧性能を向上させることができる。また、本変形例では、スペーサロッド5fが溝10aの2つの角を占有しているので、チューブ5aの形状の局所的な変形が無くなり、チューブ5aが裂けにくくなる。
【0071】
尚、スペーサロッド5fは、チューブ5aと、シャフト部1の固定部分及び操作ロッド4の少なくとも一つとの間の隙間に配置されていればよい。ここで固定部分とは、操作ロッド4のような可動部分以外の部分(溝10aの壁面又は角)を意味する。従って、スペーサロッド5fは、チューブ5aと、操作ロッド4との間の隙間に配置されていてもよい。
【0072】
一方で、チューブ5aの断面形状は、溝10aの断面形状に応じた形状であってもよい。
図11(B)では、溝10aの断面形状が略長方形であるのに対し、チューブ5aの断面形状は略正方形である。ここでは溝10aの断面形状とチューブ5aの断面形状の一部が一致しているので、チューブ5aを膨張させる際にチューブ5aに供給する流体圧力をより低くしても、上記変形例(
図11(A))と同様な効果を得ることができる。
図11(C)では、チューブ5aの断面形状の一部が直線であり、溝10aの断面形状のうち、チューブ5aの断面形状が直線である部分と接触する部分も直線である。このように、チューブ5aの断面形状の少なくとも一部が、溝10aの形状に応じた形状であればよい。
【0073】
尚、
図11(A)~
図11(C)の左側の図は、チューブ5aの収縮時にチューブ5aの周囲に隙間がある場合を示しているが、チューブ5aの収縮時にチューブ5aと溝10aの壁面(シャフト部1の固定部分)の一部又は全部が接触していてもよい。また、チューブ収縮時にチューブ5aと操作ロッド4が接触していてもよい。尚、チューブ5aにおいて操作ロッド4と接触する表面の部材の材質がゴム又はプラスチックであってもよい。
【0074】
尚、チューブ5a断面の外側の形状と内側の形状が異なっていてもよい。例えばチューブ断面の外側の形状を
図11(B)、
図11(C)のように矩形や略矩形としつつ、チューブ断面の内側の形状を
図11(A)のように円形としてもよい。
【0075】
図12(A)は、屈曲機構の押付部5の別の変形例を示す断面図である。ここでもシャフト部1の軸線方向に垂直な断面の一部を模式的に示している。
図12(B)は、その比較例である。
図12(A)に示すように、本変形例の押付部5は、第2実施形態の押付部5(
図8参照)と比べると、溝10aの断面形状が略矩形である点、および、2本の操作ロッド4がチューブ5aの両側に配置される点が共通するが、チューブ5aの外側の断面形状が、溝10aの断面形状に応じて矩形であり、チューブ5aの内側の断面形状が円形である点が異なる。
【0076】
一方、
図12(B)に示すように、比較例の押付部5は、本変形例の押付部5(
図12(A)参照)と比べると、チューブ5aの外側の断面形状と内側の断面形状が円形であり、チューブ5aの周囲に4本のスペーサロッド5fが配置されている点が異なる。ここでチューブ5aの周囲に示された部材は熱収縮チューブ5gである。チューブ5aの基端部分はステンレス製(SUS)のパイプ5bに接続されているが(
図1等参照)、熱収縮チューブ5gは、チューブ5aとパイプ5bとの接続部分付近を部分的に覆う。これにより、チューブ5aがパイプ5bとの接続部分において急激(局所的)に膨張することが抑制される。
【0077】
図12(A)の本変形例では、チューブ5aの内側の断面形状が円形であるので、チューブ5aの内側の円形中心からチューブ5aの外側の矩形の四隅までの厚さが他の部分と比べて厚くなる。これにより、膨張時にチューブ5aの四隅が急激(局所的)に膨張することが抑制され、チューブ5aが破れにくくなる。その結果、
図12(B)の比較例で使用した熱収縮チューブ5gが不要になる。
【0078】
尚、第2実施形態の押付部5(
図8参照)や本変形例(
図12参照)では、チューブ5aの周囲に2本の操作ロッド4を配置したが、3本以上の操作ロッド4を配置してもよい。これにより、1本のチューブ5aで複数の操作ロッド4を固定することができる。
【0079】
(その他の実施の形態)
上記実施形態のエンドエフェクタは医療用の鉗子であるが、これに限定されない。エンドエフェクタは、把持器、鋏、ステープラ、針保持器、及び電気メスなどの外科ツールであってもよい。また、電子外科電極、トランスデューサ、センサなどの電気的に駆動される機器であってもよい。また、エンドエフェクタは、例えば、吸入、ガス注入、洗浄、処理流体、アクセサリ導入、生検摘出などのための流体を供給するノズルであってもよい。或いは、エンドエフェクタは、カメラなどの撮像装置が搭載されたものであってもよい。また、エンドエフェクタは、医療用に限らず、例えば配管内部の検査等の産業用に用いられてもよい。
【0080】
上記実施形態では、シャフト部1には溝10aが設けられ、外管により覆われていたが、シャフト部1に貫通孔を設けてもよい。屈曲部2には貫通孔20aが設けられたが、溝を設け、外管により覆われていてもよい。
【0081】
押し付け位置はシャフト部1の遠位端に位置したが、シャフト部1の任意の場所に位置してもよい。
【0082】
上記実施形態では、屈曲部2を屈曲させるための駆動力を伝達する駆動力伝達部材を操作ロッド4としたが、ワイヤとしてもよい。駆動力伝達部材として、長手方向に引っ張り力または押し力を伝達できる長尺部材を用いることができる。ワイヤは引っ張り力を伝達し、ロッドは引っ張り力及び押し力を伝達する。また、抑制ワイヤ8の代わりにロッドを用いてもよい。
【0083】
上記実施形態では、チューブ5aの内部には作動液5cが満たされるとしたが、作動流体として作動液5cの代わりに作動気体が満たされてもよい。この場合、チューブ5aには液体圧力の代わりに気体圧力が供給される。
【0084】
上記実施形態では、屈曲部2はその軸線方向に一列に連なった複数のコマ部材20を有するとしたが、一連のコマ部材20の代わりにバネやゴムを用いることもできる。例えばコイルバネを用いる場合には、複数のコマ部材20の代わりにコイルバネを用い、コイルバネの芯材に貫通孔20aを軸線方向に設けることができる。また、例えばゴムを用いる場合には、複数のコマ部材20の代わりに円筒状のゴムを用い、円筒状のゴムに貫通孔20aを軸線方向に設けることができる。
【0085】
上記実施形態では、コマ部材20の各揺動軸線は互いに平行としたが、これに限られない。例えばコマ部材20の揺動軸線がある方向に平行であるグループと、該方向以外の方向(例えば該方向に直交する方向)であるグループに分け、それぞれのグループに操作ロッド4を設けることにより、屈曲部2が2つの方向に屈曲可能となる。同様に、屈曲部2を3つ以上の複数の方向に屈曲可能とすることもできる。
【0086】
上記実施形態では、チューブ5a(押付部5)を膨張させて操作ロッド4や抑制ワイヤ8をシャフト部1の溝10aの壁面に押し付けるとしたが、操作ロッド4や抑制ワイヤ8はシャフト部1の外管11に押し付けられてもよい。要するに操作ロッド4や抑制ワイヤ8がシャフト部1の固定部分に押し付けられればよい。ここで固定部分とは、操作ロッド4のような可動部分以外の部分を意味する。
【0087】
上記実施形態では、先端部3(エンドエフェクタ)である鉗子をロッド7で駆動することとしたが、鉗子等のエンドエフェクタは液圧や電力によって駆動されてもよい。このとき、液圧や電力を基端部から先端部3に伝えるための配管や電気配線をシャフト部1、屈曲部2又は内管6の中空部に挿通してもよい。先端部3(エンドエフェクタ)である鉗子をロッドで駆動する場合には、ロッドをシャフト部1、屈曲部2又は内管6の中空部に挿通してもよい。シャフト部1、屈曲部2及び内管6は中実でもよい。また、鉗子は1本のロッド7で駆動されたが、少なくとも2本のワイヤで駆動されてもよい。
【0088】
操作ロッド4とチューブ5aの間の摩耗対策として、操作ロッド4とチューブ5aとの間に耐摩耗性や摺動性が高い部材を設けてもよい。
【0089】
上記実施形態では、隣接するコマ部材20は、一対のピン21によって連結されていたが、ピン21を用いることなく連結されていてもよい。例えば隣接するコマ部材20の軸線方向に対向する2つの主面にそれぞれ溝と突条が設けられ、突条の断面形状の部分円の曲率と溝の断面形状の部分円の曲率とが等しく構成されていてもよい(図示せず)。この構成では、隣接するコマ部材20の2つの主面が面接触しながら摺動することにより、隣接するコマ部材20が相対的に回動する。
【0090】
上記実施形態では、チューブ5aとパイプ5bとは、収縮部材を収縮させることによって接続されたが、接着その他の方法で接続されてもよい。
【0091】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び機能の双方又は一方の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、屈曲機構を備えた装置に有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 シャフト部
2,2A 屈曲部
2a 近位端(屈曲部)
2b 遠位端(屈曲部)
3 先端部(エンドエフェクタ)
3a 近位端(先端部)
4 操作ロッド
5 押付部
5a チューブ
5b パイプ
5c 作動液
5d ロッド部
5e 拡大部
5f スペーサロッド
5g 熱収縮チューブ
6 内管
6a 内部空間
7 ロッド
8 抑制ワイヤ
10,10A シャフト
10a 溝
10b 内部空間
11 外管
20 コマ部材
20a 貫通孔
20b 内部空間
21 揺動ピン
40 手首回転駆動部
41 屈曲駆動部
42 先端駆動部
43 エンドエフェクタ駆動部
44 制御部
45 表示装置
46 操作部
47 内視鏡
100,100A,100B,100C 屈曲機構
200 医療装置
201 第1屈曲部
202 第2屈曲部