(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】セラミックヒータ及びその製法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/10 20060101AFI20221102BHJP
H05B 3/02 20060101ALI20221102BHJP
H05B 3/12 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H05B3/10 A
H05B3/02 B
H05B3/12 A
(21)【出願番号】P 2020568100
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2020001239
(87)【国際公開番号】W WO2020153218
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2019011299
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
(72)【発明者】
【氏名】本山 修一郎
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-077148(JP,A)
【文献】特開2006-228633(JP,A)
【文献】特開2017-147126(JP,A)
【文献】特開2011-086620(JP,A)
【文献】特開平04-087181(JP,A)
【文献】特開2003-288975(JP,A)
【文献】特開2012-069947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
H05B 3/02
H05B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項9】
前記前処理工程では、前記高融点金属製の抵抗発熱体の全体を炭化する、
請求項8に記載のセラミックヒータの製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックヒータ及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置においては、ウエハを加熱するためのセラミックヒータが採用されている。こうしたセラミックヒータとしては、いわゆる2ゾーンヒータが知られている。この種の2ゾーンヒータとしては、特許文献1に開示されているように、セラミック基体中に、内周側抵抗発熱体と外周側抵抗発熱体とを同一平面に埋設し、各抵抗発熱体にそれぞれ独立して電圧を印加することにより、各抵抗発熱体からの発熱を独立して制御するものが知られている。各抵抗発熱体は、タングステンなどの高融点金属からなるコイルで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、外周部に温度ムラが生じやすいという問題があった。この問題の発生原因を追究したところ、外周側抵抗発熱体が部分的に炭化していることが一因だということがわかった。すなわち、セラミックス焼成時に外周部は焼成炉の温度ムラの影響を大きく受けてセラミックヒータのうち外周部は高温になりやすいが、この外周部に埋設されたコイルがセラミック基体に含まれる炭素と反応して部分的に金属炭化物に変化していた。さらに、ホットプレス炉にてプレートを積み重ねて焼成する場合、プレートの外周にカーボン製の治具や金型が存在する。このカーボンがプレートの外周から侵入することにより、プレートの外周では炭素濃度が高くなる。このため、プレートの外周に存在するコイルが炭化されやすい。金属炭化物は、炭化前の金属と比べて体積抵抗率が異なる。そのため、外周側抵抗発熱体に通電したとき、金属炭化物になった部分とそうでない部分とで発熱量に差が生じ、その結果、外周部に温度ムラが生じていた。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、外周部に温度ムラが生じるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセラミックヒータは、
ウエハ載置面を有し、円形の内周側ゾーンと環状の外周側ゾーンとを備えたセラミックプレートと、
前記内周側ゾーンに設けられた高融点金属製の内周側抵抗発熱体と、
前記外周側ゾーンに設けられ、少なくとも表面が金属炭化物製の外周側抵抗発熱体と、
を備えたものである。
【0007】
このセラミックヒータでは、セラミックプレートは不純物として炭素成分を含んでいる。このセラミックヒータのうち外周部は高温になりやすく、さらに外周からの炭素の侵入に伴い、炭素濃度が高くなっている。そのため、外周側ゾーンに設けられた外周側抵抗発熱体はセラミックプレートに含まれる炭素成分と反応して炭化しやすいが、本発明では外周側抵抗発熱体は少なくとも表面が金属炭化物である(外周側抵抗発熱体の全体が金属炭化物でもよい)ため、それ以上炭化することがない。すなわち、外周側抵抗発熱体において発熱量の異なる部分が生じることがない。したがって、外周部に温度ムラが生じるのを抑制することができる。なお、内周側抵抗発熱体を金属炭化物ではなく高融点金属で作製したのは、金属炭化物(例えばMoやWの炭化物)は非常に硬くなり、内周側抵抗発熱体を埋設するときの配置作業や、素線から内周側抵抗発熱体の形状(例えばコイル形状)を作成する作業が困難になるからである。
【0008】
本発明のセラミックヒ-タにおいて、前記内周側抵抗発熱体と前記外周側抵抗発熱体とは、それぞれ別の電源に繋がれていてもよい。こうすれば、セラミックヒータの内周側ゾーンと外周側ゾーンとを個別に温度制御することができる。
【0009】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記内周側抵抗発熱体と前記外周側抵抗発熱体とは、直列に接続されて一つの電源に繋がれていてもよい。こうすれば、セラミックヒータの内周側ゾーンと外周側ゾーンとを共通の電源で温度制御することができる。
【0010】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記高融点金属は、タングステン、モリブデン及びこれらの合金からなる群より選ばれた少なくとも1種であり、前記金属炭化物は、高融点金属の炭化物(例えば炭化タングステン又は炭化モリブデン)であることが好ましい。
【0011】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記外周側抵抗発熱体のうち少なくとも前記外周側ゾーンの最外周部に位置する部分が金属炭化物であってもよい。外周側ゾーンの最外周部は外周側ゾーンの中で最も高温になりやすい。そのため、外周側抵抗発熱体のうち最外周部に位置する部分を金属炭化物で作製する意義が高い。
【0012】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記外周側抵抗発熱体は、二次元形状であることが好ましい。二次元形状としては、例えばリボン(平らで細長い形状)やメッシュなどが挙げられる。金属炭化物は加工性がよくないことがあり、三次元形状(例えばコイル)に成形するのが困難なことがあるが、二次元形状であれば印刷により容易に作製することができる。
【0013】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記内周側抵抗発熱体は、表面に前記高融点金属の炭化物の薄膜を有していないものでもよいが、そうした薄膜を有するものでもよい。その薄膜の厚みは高融点金属製の抵抗発熱体の特性に影響を及ぼさない程度の厚み(例えば数μm)であることが好ましい。
【0014】
本発明のセラミックヒータの製法は、
内周側ゾーンに内周側抵抗発熱体が埋設され、外周側ゾーンに外周側抵抗発熱体が埋設された焼成前のセラミック前駆体を、不活性雰囲気中、焼成に使用する治具、金型及び焼成炉の少なくとも1つがカーボン製であるという条件下で焼成してセラミックプレートを製造する焼成工程を含む、セラミックヒータの製法であって、
前記外周側抵抗発熱体を前記セラミック前駆体に埋設する前に、高融点金属製の抵抗発熱体を用意し、前記高融点金属製の抵抗発熱体の少なくとも表面を炭化する処理を行うことにより、前記外周側抵抗発熱体を作製し、これを前記セラミック前駆体に埋設する前処理工程
を含むものである。
【0015】
このセラミックヒータの製法によれば、焼成工程において、雰囲気中に炭素が含まれているが、外周側抵抗発熱体は少なくとも表面が炭化されているため、外周側抵抗発熱体がそれ以上炭化することがない。
【0016】
本発明のセラミックヒータの製法において、前記前処理工程では、前記高融点金属製の抵抗発熱体の全体を炭化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】セラミックプレート20を抵抗発熱体22,24に沿って水平に切断して上方からみたときの断面図。
【
図5】セラミックプレート120を抵抗発熱体22,24に沿って水平に切断して上方からみたときの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1はセラミックヒータ10の斜視図、
図2はセラミックヒータ10の縦断面図(セラミックヒータ10を中心軸を含む面で切断したときの断面図)、
図3はセラミックプレート20
を抵抗発熱体22,24に沿って水平に切断して上方からみたときの断面図である。
図3は、実質的にセラミックプレート20をウエハ載置面20aからみたときの様子を表している。なお、
図3では、切断面を表すハッチングを省略した。
【0019】
セラミックヒータ10は、エッチングやCVDなどの処理が施されるウエハを加熱するために用いられるものであり、図示しない真空チャンバ内に設置される。このセラミックヒータ10は、ウエハ載置面20aを有する円盤状のセラミックプレート20と、セラミックプレート20のウエハ載置面20aとは反対側の面(裏面)20bにセラミックプレート20と同軸となるように接合された筒状シャフト40とを備えている。
【0020】
セラミックプレート20は、窒化アルミニウムやアルミナなどに代表されるセラミック材料からなる円盤状のプレートである。セラミックプレート20の直径は、例えば300mm程度である。セラミックプレート20は、不純物として炭素成分を含んでいる。セラミックプレート20に炭素成分が含まれる理由は、セラミックプレート20を焼成する際にカーボン製の治具や金型を用いたりカーボン製の焼成炉を用いたりするためである。セラミックプレート20のウエハ載置面20aには、図示しないが細かな凹凸がエンボス加工により設けられている。セラミックプレート20は、セラミックプレート20と同心円の仮想境界20c(
図3参照)によって小円形の内周側ゾーンZ1と円環状の外周側ゾーンZ2とに分けられている。仮想境界20cの直径は、例えば200mm程度である。セラミックプレート20の内周側ゾーンZ1には内周側抵抗発熱体22が埋設され、外周側ゾーンZ2には外周側抵抗発熱体24が埋設されている。両抵抗発熱体22,24は、ウエハ載置面20aに平行な同一平面上に設けられている。
【0021】
セラミックプレート20は、
図3に示すように、複数のガス穴26を備えている。ガス穴26は、セラミックプレート20の裏面20bからウエハ載置面20aまで貫通しており、ウエハ載置面20aに設けられた凹凸とウエハ載置面20aに載置されるウエハWとの間に生じる隙間にガスを供給する。この隙間に供給されたガスは、ウエハ載置面20aとウエハWとの熱伝導を良好にする役割を果たす。また、セラミックプレート20は、複数のリフトピン穴28を備えている。リフトピン穴28は、セラミックプレート20の裏面20bからウエハ載置面20aまで貫通しており、図示しないリフトピンが挿通される。リフトピンは、ウエハ載置面20aに載置されたウエハWを持ち上げる役割を果たす。本実施形態では、リフトピン穴28は、同一円周上に等間隔となるように3つ設けられている。
【0022】
内周側抵抗発熱体22は、
図3に示すように、セラミックプレート20の中央部(セラミックプレート20の裏面20bのうち筒状シャフト40で囲まれた領域)に配設された一対の端子22a,22bの一方から端を発し、一筆書きの要領で複数の折り返し部で折り返されつつ内周側ゾーンZ1のほぼ全域に配線されたあと、一対の端子22a,22bの他方に至るように形成されている。内周側抵抗発熱体22は、表面に炭化物の薄膜を有さない高融点金属製のコイルである。高融点金属としては、例えば、タングステン、モリブデン及びこれらの合金が挙げられる。20℃における体積抵抗率の一例を挙げると、タングステンが5.5×10
6[Ω・m]、モリブデンが5.2×10
8[Ω・m]である。
【0023】
外周側抵抗発熱体24は、
図3に示すように、セラミックプレート20の中央部に配設された一対の端子24a,24bの一方から端を発し、一筆書きの要領で複数の折り返し部で折り返されつつ外周側ゾーンZ2のほぼ全域に配線されたあと一対の端子24a,24bの他方に至るように形成されている。外周側抵抗発熱体24は、金属炭化物のリボン(平らで細長い形状)である。外周側抵抗発熱体24は、例えば金属炭化物のペーストを印刷することにより作製することができる。金属炭化物としては、例えば、炭化タングステンや炭化モリブデンなどが挙げられる。20℃における体積抵抗率は、炭化タングステン(WC)が53×10
6[Ω・m]、炭化モリブデン(Mo
2C)が1.4×10
6[Ω・m]である。例えば、外周側ゾーンZ2の発熱量を多くしたい場合には外周側抵抗発熱体24を高抵抗の炭化タングステンで作製し、外周側ゾーンZ2の発熱量を少なくしたい場合には外周側抵抗発熱体24を低抵抗の炭化モリブデンで作製してもよい。
【0024】
内周側抵抗発熱体22に用いる高融点金属や外周側抵抗発熱体24に用いる金属炭化物は、セラミックプレート20の熱膨張係数に近いものを選択するのが好ましい。例えば、セラミックプレート20が窒化アルミニウム製の場合には、高融点金属はモリブデン又はタングステンが好ましく、金属炭化物は、炭化モリブデン又は炭化タングステンが好ましい。セラミックプレート20がアルミナ製の場合には、高融点金属はモリブデン合金が好ましく、金属炭化物は、炭化モリブデン合金が好ましい。各抵抗発熱体22,24は、ガス穴26やリフトピン穴28を迂回するように設けられている。内周側抵抗発熱体22を金属炭化物ではなく高融点金属で作製したのは、金属炭化物(例えばMoやWの炭化物)は非常に硬くなり、コイル状のヒータを埋設するときの配置作業が困難になるからである。
【0025】
筒状シャフト40は、セラミックプレート20と同じく窒化アルミニウム、アルミナなどのセラミックで形成されている。筒状シャフト40の内径は、例えば40mm程度、外径は例えば60mm程度である。この筒状シャフト40は、上端がセラミックプレート20に拡散接合されている。筒状シャフト40の内部には、内周側抵抗発熱体22の一対の端子22a,22bのそれぞれに接続される給電棒42a,42bや外周側抵抗発熱体24の一対の端子24a,24bのそれぞれに接続される給電棒44a,44bが配置されている。給電棒42a,42bは第1電源32に接続され、給電棒44a,44bは第2電源34に接続されている。そのため、内周側抵抗発熱体22によって加熱される内周側ゾーンZ1と外周側抵抗発熱体24によって加熱される外周側ゾーンZ2とを個別に温度制御することができる。なお、図示しないが、ガス穴26にガスを供給するガス供給管やリフトピン穴28に挿通されるリフトピンも筒状シャフト40の内部に配置される。
【0026】
次に、セラミックヒータ10の製造例について説明する。
図4はセラミックヒータ10の製造工程図である。まず、焼成前のセラミック前駆体70を作製する。セラミック前駆体70は、セラミック材料からなる円盤状の成形体である。セラミック前駆体70の円形の内周側ゾーンZaには内周側抵抗発熱体72が埋設され、円環状の外周側ゾーンZbには外周側抵抗発熱体74が埋設されている。内周側抵抗発熱体72は、高融点金属製の抵抗発熱体を用いてもよい。外周側抵抗発熱体74は、金属炭化物のペーストを印刷することにより作製してもよい。次に、このセラミック前駆体70を、不活性雰囲気(例えばAr雰囲気や窒素雰囲気)中、焼成に使用する治具、金型及び焼成炉の少なくとも1つがカーボン製であるという条件下で焼成することにより、セラミックプレート20を製造する。焼成温度は例えば約1800℃である。焼成工程において、炉内の雰囲気には炭素が存在しているが、外周側抵抗発熱体74は金属炭化物製のためそれ以上炭化することがない。その後、セラミックプレート20にガス穴26やリフトピン
穴28を形成し、筒状シャフト40をセラミックプレート20の裏面に接合することにより、セラミックヒータ10を得る。
【0027】
次に、セラミックヒータ10の使用例について説明する。まず、図示しない真空チャンバ内にセラミックヒータ10を設置し、そのセラミックヒータ10のウエハ載置面20aにウエハWを載置する。そして、図示しない内周側熱電対によって検出された内周側ゾーンZ1の温度が予め定められた内周側目標温度となるように内周側抵抗発熱体22に供給する電力を第1電源32によって調整すると共に、図示しない外周側熱電対によって検出された外周側ゾーンZ2の温度が予め定められた外周側目標温度となるように外周側抵抗発熱体24に供給する電力を第2電源34によって調整する。これにより、ウエハWの温度が所望の温度になるように制御される。そして、真空チャンバ内を真空雰囲気もしくは減圧雰囲気になるように設定し、真空チャンバ内にプラズマを発生させ、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。
【0028】
以上説明した本実施形態のセラミックヒータ10では、セラミックプレート20は不純物として炭素成分を含んでいる。このセラミックヒータ10のうち外周部(例えばセラミックプレート20の外周縁から約30mmまでの範囲)は高温になりやすく、さらに外周からの炭素の侵入に伴い、炭素濃度が高くなっている。そのため、外周側ゾーンZ2に設けられた外周側抵抗発熱体24はセラミックプレート20に含まれる炭素成分と反応して炭化しやすいが、本実施形態では外周側抵抗発熱体24は金属炭化物製であるため、それ以上炭化することがない。すなわち、外周側抵抗発熱体24において発熱量の異なる部分が生じることがない。したがって、外周部に温度ムラが生じるのを抑制することができる。
【0029】
また、内周側抵抗発熱体22と外周側抵抗発熱体24とは、それぞれ別の電源(第1及び第2電源32,34)に繋がれている。そのため、セラミックヒータ10の内周側ゾーンZ1と外周側ゾーンZ2とを個別に温度制御することができる。
【0030】
更に、外周側抵抗発熱体24は金属炭化物製としたが、金属炭化物は加工性がよくないことがあり、三次元形状(例えばコイル)に成形するのが困難なことがある。本実施形態では、外周側抵抗発熱体24を二次元形状としたため、印刷により容易に作製することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、内周側抵抗発熱体22と外周側抵抗発熱体24とを第1及び第2電源32,34に別々に繋いだが、
図5に示すように、内周側抵抗発熱体22と外周側抵抗発熱体24とを仮想境界20c上の接続点23で直列に接続し、両端子22a,22bを1つの電源36に繋いでもよい。
図5では上述した実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付した。こうすれば、セラミックヒータ10の内周側ゾーンZ1と外周側ゾーンZ2とを共通の電源36で温度制御することができる。
【0033】
上述した実施形態では、外周側抵抗発熱体24の全体を金属炭化物で作製したが、表面のみ金属炭化物で作製し、内部は金属(例えば高融点金属)で作製してもよい。
【0034】
上述した実施形態では、内周側抵抗発熱体22は、表面に炭化物の薄膜を有さない高融点金属製の抵抗発熱体としたが、表面に高融点金属の炭化物の薄膜を有する高融点金属製の抵抗発熱体としてもよい。その場合、炭化物の薄膜の厚さは高融点金属製の抵抗発熱体の特性に影響を及ぼさない程度の厚み(例えば数μm)であることが好ましい。
【0035】
上述した実施形態では、内周側抵抗発熱体22をコイルとし、外周側抵抗発熱体24をリボンとしたが、特にこれに限定されるものではなく、どのような形状を採用してもよい。例えば、内周側抵抗発熱体22をリボンやメッシュなどの二次元形状としてもよい。外周側抵抗発熱体24をコイルのような三次元形状としてもよい。但し、金属炭化物の中には例えば炭化タングステンのように加工性が困難なものがある。その場合には、三次元形状ではなく、リボンやメッシュなどの二次元形状にするのが好ましい。二次元形状であれば、金属炭化物のペーストを印刷することにより作製できるため、金属炭化物の加工性は問題にならないからである。
【0036】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に静電電極を内蔵してもよい。その場合、ウエハ載置面20aにウエハWを載置したあと静電電極に電圧を印加することによりウエハWをウエハ載置面20aに静電吸着することができる。あるいは、セラミックプレート20にRF電極を内蔵してもよい。その場合、ウエハ載置面20aの上方にスペースをあけて図示しないシャワーヘッドを配置し、シャワーヘッドとRF電極とからなる平行平板電極間に高周波電力を供給する。こうすることによりプラズマを発生させ、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりすることができる。なお、静電電極をRF電極と兼用してもよい。
【0037】
上述した実施形態では、外周側ゾーンZ2は1つのゾーンとして説明したが、複数の小ゾーンに分割されていてもよい。その場合、抵抗発熱体は小ゾーンごとに独立して配線される。小ゾーンは、セラミックプレート20と同心円の境界線で外周側ゾーンZ2を分割することにより環状に形成してもよいし、セラミックプレート20の中心から放射状に延びる線分で外周側ゾーンZ2を分割することにより扇形(円錐台の側面を展開した形状)に形成してもよい。すべての小ゾーンに配線される抵抗発熱体を金属炭化物で作製してもよいが、少なくとも最外周の小ゾーン(最も高温になるゾーン、例えばセラミックプレートの外周縁から30mmまでの範囲内)に配線される抵抗発熱体を金属炭化物で作製すればよい。
【0038】
上述した実施形態では、内周側ゾーンZ1は1つのゾーンとして説明したが、複数の小ゾーンに分割されていてもよい。その場合、抵抗発熱体は小ゾーンごとに独立して配線される。小ゾーンは、セラミックプレート20と同心円の境界線で内周側ゾーンZ1を分割することにより環状と円形状に形成してもよいし、セラミックプレート20の中心から放射状に延びる線分で内周側ゾーンZ1を分割することにより扇形(円錐の側面を展開した形状)に形成してもよい。
【0039】
上述した実施形態のセラミックヒータ10の製造例では、外周側抵抗発熱体74は、金属炭化物のペーストを印刷することにより作製したが、少なくとも表面が金属炭化物製の抵抗発熱体をセラミック前駆体70に埋設してもよい。その場合、外周側抵抗発熱体74をセラミック前駆体70に埋設する前に、高融点金属製の抵抗発熱体を用意し、その抵抗発熱体の少なくとも表面(抵抗発熱体の全体でもよい)を炭化する処理を行うことにより外周側抵抗発熱体74を作製し、これをセラミック前駆体70に埋設する。この場合も、焼成工程において、炉内には炭素が存在しているが、外周側抵抗発熱体74は表面が炭化されているため、外周側抵抗発熱体74がそれ以上炭化することがない。
【0040】
上述した実施形態のセラミックヒータ10の製造例において、セラミック前駆体70に埋設される内周側抵抗発熱体72は、炭化膜を有さない高融点金属製の抵抗発熱体を用いてもよい。その場合、セラミック前駆体70の内周側ゾーンZaは外周側ゾーンZbに比べて高温になりにくいし炭素濃度も高くなりにくい。そのため、焼成工程で内周側抵抗発熱体72の表面に炭化膜が形成されることがあるとしても、その炭化膜の厚さは高融点金属製の内周側抵抗発熱体72の特性に影響を及ぼさない程度の厚み(例えば数μm)になる。
【0041】
本出願は、2019年1月25日に出願された日本国特許出願第2019-11299号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、半導体製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 セラミックヒータ、20 セラミックプレート、20a ウエハ載置面、20b 裏面、20c 仮想境界、22,72 内周側抵抗発熱体、22a,22b 端子、23
接続点、24,74 外周側抵抗発熱体、24a,24b 端子、26 ガス穴、28
リフトピン穴、32 第1電源、34 第2電源、36 電源、40 筒状シャフト、42a,42b 給電棒、44a,44b 給電棒、70 セラミック前駆体、120 セラミックプレート、W ウエハ、Z1,Za 内周側ゾーン、Z2,Zb 外周側ゾーン。