IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘレウス メディカル ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許-医薬流体を適用するための髄内釘 図1
  • 特許-医薬流体を適用するための髄内釘 図2
  • 特許-医薬流体を適用するための髄内釘 図3
  • 特許-医薬流体を適用するための髄内釘 図4
  • 特許-医薬流体を適用するための髄内釘 図5
  • 特許-医薬流体を適用するための髄内釘 図6
  • 特許-医薬流体を適用するための髄内釘 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】医薬流体を適用するための髄内釘
(51)【国際特許分類】
   A61M 3/02 20060101AFI20221102BHJP
   A61B 17/72 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61M3/02 120
A61B17/72
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021003661
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2021159748
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】20167055.1
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ トーマス
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02399533(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0175232(US,A1)
【文献】米国特許第6019761(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/02
A61B 17/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬流体を適用するための髄内釘(100)であって、
前記髄内釘(100)内を軸方向に延び、前記医薬流体のための第1のリザーバに接続可能な流体伝導性の第1の導管手段(110)と、
前記第1の導管手段(110)を前記髄内釘(100)の外面(105)に流体伝導方式で接続する少なくとも1つの導出部(130)とを備え、
流体伝導性の第2の導管手段(120)は、前記第1のリザーバと第2のリザーバとの間で前記医薬流体を搬送するように前記外面(105)を第2のリザーバに接続することを特徴とする、髄内釘(100)。
【請求項2】
前記第1の導管手段(110)は、前記第1のリザーバへの流体伝導接続のための第1のコネクタ(111)を備え、
前記第2の導管手段(120)は、前記第2のリザーバへの流体伝導接続のための第2のコネクタ(121)を備え、
前記第1のコネクタ(111)及び前記第2のコネクタ(121)は、前記髄内釘(100)の第1の端部(101)に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の髄内釘(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの導出部(130)は、前記第1の端部(101)とは反対側の前記髄内釘(100)の第2の端部(102)に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の髄内釘(100)。
【請求項4】
前記第2の導管手段(120)は、少なくとも部分的に、前記外面(105)内に少なくとも1つの軸方向に延びる溝(125)として形成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の髄内釘(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの軸方向に延びる溝(125)は、前記少なくとも1つの導出部(130)に流体伝導方式で接続されることを特徴とする、請求項4に記載の髄内釘(100)。
【請求項6】
前記第2の導管手段(120)は、前記外面(105)に2~6本の軸方向に延びる溝(125)として形成され、
前記髄内釘(100)は、同数の導出部(130)を有し、1本の溝(125)は、それぞれ、流体伝導方式でそれぞれの導出部(130)に相互接続されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の髄内釘(100)。
【請求項7】
前記第1の導管手段(110)は、第1の逆止弁(140)を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の髄内釘(100)。
【請求項8】
前記第1の逆止弁(140)は、前記少なくとも1つの導出部(130)の方向に流体透過性となるように構成されることを特徴とする、請求項7に記載の髄内釘(100)。
【請求項9】
前記第1の逆止弁(140)は、第1の復元要素(141)を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載の髄内釘(100)。
【請求項10】
前記第2の導管手段(120)は、第2の逆止弁(145)を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の髄内釘(100)。
【請求項11】
前記第2の逆止弁(145)は、前記外面(105)の方向に流体不透過性となるように構成されることを特徴とする、請求項10に記載の髄内釘(100)。
【請求項12】
前記第2の逆止弁(145)は、第2の復元要素(146)を有することを特徴とする、請求項10又は11に記載の髄内釘(100)。
【請求項13】
前記髄内釘(100)は、骨管内に前記髄内釘(100)を固定するために、少なくとも1つの軸受(104)を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の髄内釘(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
医薬流体を適用するための髄内釘に関し、髄内釘内を軸方向に延び、医薬流体のための第1のリザーバに接続可能な流体伝導性の第1の導管手段と、第1の導管手段を流体伝導方式で髄内釘の外面に接続する少なくとも1つの導出部とを含む。さらに、骨折を治療するため、及び髄内釘による骨管の領域に医薬流体を適用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
髄内釘の使用は、特に大きな長骨の骨折を治療するために、開放骨折及び閉鎖骨折の外科的治療のために、数十年にわたって証明されている。このために、少なくとも骨折が治癒するまで骨管内に留まる髄内釘を骨管内に挿入して固定し、骨折した骨を再配置して安定させる。
【0003】
骨折、特に開放骨折は、微生物による骨組織の汚染をもたらす可能性がある。このようにして引き起こされる感染、例えば骨炎、特に骨髄炎は、極めて重篤な疾患である。微生物感染の治療には、感染した骨組織を創面切除した後、抗生物質を局所投与するのが一般的である。
【0004】
髄内釘は、1つ又はいくつかの抗生物質を含有するPMMA骨セメントで覆われており、米国特許第8,609,003B2号及び米国特許第5,618,286A号に記載されている。PMMA骨セメントに組み込まれた抗生物質が髄内釘の移植後の最初の数日以内にのみ十分に高濃度の抗生物質を放出することができるが、この期間は、感染と最後までたたかうには短すぎるという欠点があることが判明している。さらに、抗生物質の組成は移植が行われた後に変化させることができず、このことは、特にPMMA骨セメントに含まれる抗生物質が有効でない場合に、欠点である。
【0005】
穿孔した髄内釘本体を含む髄内釘は、例えば消毒活性物質溶液などの異なる医薬流体により、外部からの補給を介して感染した骨組織に局所的に適用することができるので、さらなる発展を示している。このタイプの髄内釘は、例えば、米国特許第5,681,289A号、中国登録実用新案第2857862号及び中国登録実用新案第201370624号に記載されている。これにより、消毒活性物質溶液は、対応する髄内釘内の導出部を通って抜け出すことができ、感染した骨組織に到達することができる。
【0006】
記載された髄内釘の1つの欠点は患者の体内の医薬流体に含まれる活性物質の望ましくない蓄積であり、これは、流体を骨管に押し込むときに必要とされる高い適用圧力によって引き起こされる。多数の抗生物質、例えばアミノグリコシド系抗生物質の場合、高い全身の抗生物質濃度は、患者に損傷、例えば腎臓の損傷及び聴覚神経の損傷を引き起こす。適用によって引き起こされる圧力上昇は、塞栓の危険性をさらに増大させる。加えて、導入のために以前に使用されたアクセスを通る医薬流体の制御されない逆流が発生し、したがって、洗浄システム、特に髄内釘の汚染が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術から生じる欠点の1つ又はいくつかを少なくとも部分的に克服することである。
【0008】
特に、本発明は、骨、特に長骨の内部空間を、任意の組成の医薬流体、特に消毒活性物質溶液、例えば抗生物質を含有する活性物質溶液で洗浄することができる髄内釘を提供するという目的に基づく。これにより、医薬流体は、患者の体外に配置されたリザーバから髄内釘に供給され、例えば供給された活性物質が患者の体内に蓄積され、塞栓、特に脂肪塞栓が形成されるなどの副反応を回避することができる。さらに、骨の内部空間上に活性物質溶液を確実に分配し、同時に髄内釘の高い機械的安定性、及び骨内の確実な固定を保証することが目的である。加えて、特に骨組織が髄内釘に侵入することによる髄内釘の汚染又は詰まりをもたらすことなく、髄内釘は、骨の内部空間の安全かつ制御可能な洗浄を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
独立請求項の特徴によって、上述の目的の少なくとも1つを少なくとも部分的に満たすことへの貢献がなされる。従属請求項は、目的の少なくとも1つを少なくとも部分的に満たすことに貢献する好ましい実施形態を提供する。
【0010】
|1|医薬流体を適用するための髄内釘であって、
前記髄内釘内を軸方向に延び、前記医薬流体のための第1のリザーバに接続可能な流体伝導性の第1の導管手段と、
前記第1の導管手段を前記髄内釘の外面に流体伝導方式で接続する少なくとも1つの導出部とを備え、
流体伝導性の第2の導管手段は、前記第1のリザーバと前記第2のリザーバとの間で前記医薬流体を搬送するように前記外面を第2のリザーバに接続することを特徴とする、髄内釘に関する。
【0011】
|2|前記第1の導管手段は、前記第1のリザーバへの前記流体伝導接続のための第1のコネクタを備え、
前記第2の導管手段は、前記第2のリザーバへの前記流体伝導接続のための第2のコネクタを備え、
前記第1のコネクタ及び前記第2のコネクタは、前記髄内釘の第1の端部に配置されることを特徴とする、実施形態1に記載の髄内釘に関する。
【0012】
|3|前記少なくとも1つの導出部は、前記第1の端部とは反対側の前記髄内釘の第2の端部に配置されることを特徴とする、実施形態2に記載の髄内釘に関する。
【0013】
|4|前記第2の導管手段は、少なくとも部分的に、前記外面内に少なくとも1つの軸方向に延びる溝として形成されることを特徴とする、実施形態1~3のいずれかに記載の髄内釘に関する。
【0014】
|5|前記少なくとも1つの軸方向に延びる溝は、前記少なくとも1つの導出部に流体伝導方式で接続されることを特徴とする、実施形態4に記載の髄内釘に関する。
【0015】
|6|前記第2の導管手段は、前記外面に2~6本、特に4本の軸方向に延びる溝として形成され、
前記髄内釘は、同数の導出部を有し、1本の溝は、それぞれ、流体伝導方式でそれぞれの導出部に相互接続されることを特徴とする、実施形態4又は5に記載の髄内釘に関する。
【0016】
|7|前記第1の導管手段は、第1の逆止弁を有することを特徴とする、実施形態1~6のいずれかに記載の髄内釘に関する。
【0017】
|8|前記第1の逆止弁は、前記少なくとも1つの導出部の方向に流体透過性となるように構成されることを特徴とする、実施形態7に記載の髄内釘に関する。
【0018】
|9|前記第1の逆止弁は、第1の復元要素、特に第1のバネを有することを特徴とする、実施形態7又は8に記載の髄内釘に関する。
【0019】
|10|前記第2の導管手段は、第2の逆止弁を有することを特徴とする、実施形態1~9のいずれかに記載の髄内釘に関する。
【0020】
|11|前記第2の逆止弁は、前記外面の方向に流体不透過性となるように構成されることを特徴とする、実施形態10に記載の髄内釘に関する。
【0021】
|12|前記第2の逆止弁は、第2の復元要素、特に第2のバネを有することを特徴とする、実施形態10又は11に記載の髄内釘に関する。
【0022】
|13|前記髄内釘は、骨管内に前記髄内釘を固定するために、少なくとも1つの軸受を有することを特徴とする、実施形態1~12のいずれかに記載の髄内釘に関する。
【0023】
|14|髄内釘による骨折を治療するため、及び骨管の領域に医薬流体を適用するための方法であって、
髄内釘は、前記髄内釘内を軸方向に延び、前記医薬流体のための第1のリザーバに接続可能な流体伝導性の第1の導管手段と、
前記第1の導管手段を前記髄内釘の外面に流体伝導方式で接続する少なくとも1つの導出部とを備え、
前記外面は、流体伝導性の第2の導管手段を介して、前記医薬流体のための第2のリザーバに接続可能であり、
方法は、少なくとも、
a)髄内釘を前記骨管に移植するステップ、
b)前記第1の導管手段を前記第1のリザーバに、前記第2の導管手段を前記第2のリザーバに流体伝導接続するステップ、
c1)前記第1の導管手段、前記少なくとも1つの導出部、前記外面、及び前記第2の導管手段を介して、前記医薬流体を第1のリザーバから前記第2のリザーバに少なくとも部分的に搬送するステップ、及び/又は
c2)第2の導管手段、外面、前記少なくとも1つの導出部、及び前記第1の導管手段を介して、前記医薬流体を前記第2のリザーバから前記第1のリザーバに少なくとも部分的に搬送するステップ、
を含む方法に関する。
【0024】
|15|a)、b)及びc1)のステップを含むことを特徴とする実施形態14に記載の方法に関する。
【0025】
一般事項
本明細書では、範囲指定には、限界値として言及されている値も含まれる。したがって、変数Aに関して「XからYまでの範囲」というタイプの指定は、AがX、Y、及びXとYの間の値をとることができることを意味する。変数Aについて、片側で制限される「Yまで」というタイプの範囲は、したがって、値としてY及びY未満を意味する。
【0026】
記載されているいくつかの特徴は、「本質的に」という用語と関連する。「本質的に」という用語は、実際の条件下及び製造技術の下では、「重畳」、「垂直」、「直径」又は「平行」などの概念の数学的に正確な解釈を正確に指定することはできず、特定の製造関連の許容誤差内でのみ指定できるように理解されるべきである。例えば、「本質的に平行な軸」は、互いに対して85°~95°の角度を描き、「本質的に同一の体積」は、5体積%までの偏差を含む。「本質的にプラスチックからなる装置」は、例えばプラスチック含有量を>95重量%から<100重量%含む。「体積Bの完全な充填」は例えば、Bの総体積の>95体積%から<100体積%の充填を意味する。
【0027】
詳細な説明
本発明の第1の主題は、医薬流体を適用するための髄内釘であって、
髄内釘内を軸方向に延び、医薬流体のための第1のリザーバに接続可能な流体伝導性の第1の導管手段と、
第1の導管手段を髄内釘の外面に流体伝導方式で接続する少なくとも1つの導出部とを備え、
流体伝導性の第2の導管手段は、第1のリザーバと第2のリザーバとの間で医薬流体を搬送するように外面を第2のリザーバに接続することを特徴とする、髄内釘に関する。
【0028】
髄内釘は、骨折、特に長骨の骨折を治療する際に、骨折が治癒するまで骨を安定させる髄内副子である。ドリルアウトした(drilled-out)及びドリルアウトしていない(non-drilled-out)髄内釘は、主に実際に使用される。「ドリルアウトした」及び「ドリルアウトしていない」という用語は髄内釘の移植方法を参照する。ドリルアウトした髄内釘の場合、長骨の髄腔全体をドリルアウトし、続いて髄内釘をドリルアウトした骨管に打ち込む。骨管内に髄内釘を固定するための機械的な固定は必須ではない。ドリルアウトしていない髄内釘は、より大型であるが、ドリルアウトした髄内釘よりも薄いので、固定ネジによる固定が一般に必要とされる。
【0029】
本発明による髄内釘はドリルアウトした髄内釘として使用することができるが、ドリルアウトしていない髄内釘としても使用することができ、ドリルアウトした髄内釘としての使用が好ましい。本発明による髄内釘は、数日~数週間の期間にわたって感染した骨組織の治療の医薬流体の適用、特に骨の骨管内での適用に役立つ。医薬流体は、少なくとも1つの医薬活性物質を含有する。医薬流体は例えば、医薬活性物質の水性又は非水性溶液又は懸濁液である。一実施形態において、医薬流体が少なくとも1つの抗生物質、少なくとも1つの化学療法剤、及び/又は少なくとも1つの抗真菌剤を含有する溶液である。さらなる実施形態において、医薬流体が少なくとも1つの消毒剤成分を含有する。医薬流体はさらに、ガス、ガス混合物、及び例えば水などの液体中のガスの溶解も含む。
【0030】
髄内釘は、第1の導管手段と第2の導管手段とを有する。導管手段は、2つの構造を流体伝導方式で互いに接続可能なすべての要素であると理解される。パイプ状、ホース状、又は導出部状の接続が、そのような要素の例である。
【0031】
医薬流体の適用のために十分に速い流速を確保するために、第1の導管手段及び/又は第2の導管手段は例えば、0.5mm~5mm、好ましくは1mm~4mmの内部断面を有することができる。固体状の搬送を防止し、したがって第1の導管手段及び/又は第2の導管手段が詰まるリスクを防止するために、第1の導管手段及び/又は第2の導管手段は、それぞれふるい(screen)を有するか、又はふるいからなることができる。
【0032】
第1の導管手段は、髄内釘の内側で少なくとも部分的に軸方向に延びる。髄内釘の内側の第1の導管手段の軸方向の経路は、異なる方法で構成することができる。簡単な製造法のために、第1の導管手段は、好ましくは髄内釘の縦軸に少なくとも部分的に並行に延びる。
【0033】
第1の導管手段が髄内釘の内側を軸方向に延びる間隔は、異なる長さに構成できる。例えば、第1の導管手段は、髄内釘の全長の1~100%にわたって軸方向に延びることができる。第1の導管手段は例えば、髄内釘の全長の少なくとも1%、10%、70%、80%を軸方向に通過することができる。上限として、第1の導管手段は、髄内釘の全長の最大100%、95%、90%、又は85%を軸方向に通過することができる。
【0034】
髄内釘は、第1の導管手段を介して第1のリザーバに、第2の導管手段を介して医薬流体のための第2のリザーバに、流体伝導方式で接続される。リザーバは、医薬流体を提供及び/又は収容するのに適したすべての容器であると理解される。リザーバの例には、バッグ、シリンジ、プランジャー、バルーン、キャニスター、及びアンプルが含まれ、ここで、バッグ、バルーン、及びシリンジが好ましい。医薬流体を収容するためのリザーバは、さらに、袋、容器、又は異なる種類の収容容器とすることができ、これらは、第1の導管手段又は第2の導管手段に構造的に接続される必要はないが、第1の導管手段又は第2の導管手段から抜け出す医薬流体を集めるのに適している。一実施形態において、医薬流体を収容するリザーバは、部屋(room)又は部屋の床(floor)であってもよく、そこには、第1の導管手段又は第2の導管手段から抜け出す医薬流体が排出され、又は、その上に流体(このケースでは液体)が流れ又は滴下する。
【0035】
第1の導管手段は、少なくとも1つの導出部を介して髄内釘の外面に流体伝導方式で接続され、外面は、患者の骨組織と物理的に接する髄内釘の表面領域を表す。一実施形態において、少なくとも1つの導出部は、第1の導管手段を流体伝導方式で外面に接続する髄内釘内の少なくとも1つの穿孔として構成される。医薬流体の適用のために、少なくとも1つの導出部を通して十分に速い流速を確保するために、導出部は、0.5mm~5mm、好ましくは1mm~4mmの内部断面を有することができる。固体状の搬送を防止し、したがって導出部の詰まりの危険を防止するために、少なくとも1つの導出部は、ふるいを有することができ、ふるいから構成することができ、又は例えばフラップなどの閉鎖部を有することができ、閉鎖部は少なくとも1つの導出部を通る医薬流体の搬送に応答してのみ開くが、閉鎖されたままであり、組織の侵入を防止し、したがって、少なくとも1つの導出部の詰まりを防止する。
【0036】
第1のリザーバは、第1の導管手段、少なくとも1つの導出部、髄内釘の外面、及び第2の導管手段を介して第2のリザーバに流体伝導方式で接続され、これにより、医薬流体を第1のリザーバと第2のリザーバとの間で搬送し、髄内釘を取り囲む感染した骨組織に医薬流体を適用できる。
【0037】
一実施形態において、医薬流体は、第1の導管手段、少なくとも1つの導出部、髄内釘の外面、及び第2の導管手段を介して、第1のリザーバから第2のリザーバに運ばれる。さらなる実施形態において、医薬流体は、第2の導管手段、髄内釘の外面、少なくとも1つの導出部、及び第1の導管手段を介して、第2のリザーバから第1のリザーバに運ばれる。
【0038】
両方の実施形態において、医薬流体は、髄内釘の外面を介して患者の骨組織と接触するようになり、したがって、医薬流体に含まれる活性物質の適用により、骨折の領域で感染とたたかうことができる。同時に、医薬流体は、感染した骨組織の領域に残らず、第1のリザーバ又は第2のリザーバに排出される。したがって、医薬流体の継続的な供給は、骨管内に残る流体による圧力上昇を引き起こさず、それによって、患者の血流内への活性物質の望ましくない増加した導入が防止される。これは、患者における活性物質の蓄積を防止し、さらに塞栓の危険性を減少させる。
【0039】
髄内釘の一実施形態は、第1の導管手段は、第1のリザーバへの流体伝導接続のための第1のコネクタを備え、第2の導管手段は、第2のリザーバへの流体伝導接続のための第2のコネクタを備え、第1のコネクタ及び第2のコネクタは、髄内釘の第1の端部に配置されることを特徴とする。
【0040】
コネクタは、導管手段とリザーバの流体伝導接続を可能にする構造単位であると理解される。一実施形態において、コネクタは、グロメット(grommet)として形成され、それを介して、導管手段は、ホースによって、流体伝導方式でリザーバに接続される。さらなる実施形態において、コネクタが対応するカウンタピースを介して流体伝導方式でリザーバに接続可能なネジ山として形成される。さらなる実施形態において、コネクタがリザーバとフランジ接続を形成する。さらなる実施形態において、コネクタがホース結合部を介してリザーバと流体伝導接続を形成し、コネクタはホース結合部の結合部又はニップルを有することができる。
【0041】
第1のコネクタ及び第2のコネクタは、髄内釘の第1の端部に一緒に配置され、その結果、医薬流体の骨管への供給及び骨管からの排出はそれぞれ、骨の同じ端部で行われる。第1のコネクタ及び第2のコネクタは、髄内釘の移植のために指定された骨の開口部に面する髄内釘の端部に配置されることが好ましい。好ましい実施形態において、第1のコネクタ及び第2のコネクタは、例えば共通のグロメットのような共通の構造要素を形成し、これは、髄内釘に、又は髄内釘から、それぞれ医薬流体を供給し、及びを排出するためのツインホースシステムの使用を可能にする。
【0042】
髄内釘の一実施形態は、少なくとも1つの導出部が第1の端部とは反対側の髄内釘の第2の端部に配置されることを特徴とする。したがって、第1の導管手段は、第1のコネクタが位置する髄内釘の第1の端部から、導出部が流体伝導方式で第1の導管手段を髄内釘の外面に接続する髄内釘の第2の端部まで延在する。第1の導管手段は、好ましくは髄内釘の全長の70~100%、より好ましくは80~100%、さらにより好ましくは85~95%にわたって軸方向に延在する。
【0043】
好ましい実施形態において、第2の導管手段は、例えば髄内釘内への少なくとも1つの管として、髄内釘の第1の端部で髄内釘の外面から医薬流体の排出が行われるように構成される。医薬流体は、第2の導管手段の排出設計により外面から運ばれる前に、少なくとも1つの導出部から始まり、外面に沿った髄内釘の全長に対して、好ましくは少なくとも60~100%、好ましくは70~100%、より好ましくは80~95%誘導される。これにより、第1のリザーバと第2のリザーバとの間で搬送が行われている間に、医薬流体が髄内釘の全長の大部分にわたって外面に沿って誘導されることが保証される。このように髄内釘は、広範囲にわたって感染した骨組織の治療を可能にする。
【0044】
医薬流体は、異なる方法で髄内釘の外面に沿って誘導することができる。
【0045】
髄内釘の一実施形態は、第2の導管手段が外面に少なくとも1つの軸方向に延びる溝として少なくとも部分的に形成されることを特徴とする。少なくとも1つの溝のために、医薬流体は、より大量に、かつ詰まりの危険なしに安全に運ぶことができ、溝に沿った外面の湿潤は、感染を効果的に抑制することを保証する。したがって、第1のリザーバと第2のリザーバとの間の医薬流体の連続的な搬送による圧力上昇は生じず、これは、医薬流体に含まれる活性物質の望ましくない蓄積を防止し、塞栓の危険性を低減する。第2の導管手段は、好ましくは髄内釘の外面にわたって半径方向に分布する、いくつかの、例えば2~10の軸方向に延びる溝として形成される。
【0046】
これは、髄内釘の全領域のうち広い領域に医薬流体の適用を可能にし、同時に、搬送中の望ましくない圧力上昇の危険性を低減する。
【0047】
少なくとも1つの軸方向に延びる溝は、異なる形で具現化することができる。一実施形態において、少なくとも1つの軸方向に延びる溝は、外面に沿って波のような偏向して延びる。さらなる実施形態において、少なくとも1つの溝が外面に沿って螺旋状に延びる。より単純な製造のために、少なくとも1つの軸方向に延びる溝は本質的に、髄内釘の縦軸に平行に走る。
【0048】
少なくとも1つの溝は、髄内釘の長手軸に沿って異なる長さで延在することができる。少なくとも1つの溝は、外面に沿って、例えば全長の5~100%、好ましくは50~100%、より好ましくは70~95%にわたって延在することができる。
【0049】
少なくとも1つの導出部及び第2の導管手段は、異なる方法の流体伝導方式で互いに接続できる。一実施形態において、少なくとも1つの導出部及び第2の導管手段は、特に外面において軸方向に延びる少なくとも1つの溝の形態であり、流体伝導方式では互いに直接接続されないが、髄内釘の外面を介してのみ接続される。
【0050】
髄内釘の一実施形態は、少なくとも1つの軸方向に延びる溝が流体伝導方式で少なくとも1つの導出部に直接接続されることを特徴とする。これにより、医薬流体を髄内釘の外面上に運ぶ必要がない。したがって、第1のリザーバと第2のリザーバとの間で医薬流体を搬送する際の不要な圧力上昇の危険性がさらに低下する。
【0051】
髄内釘の一実施形態は、第2の導管手段は、外面に2~6本、特に4本の軸方向に延びる溝として形成され、髄内釘は、同数の導出部を有し、1本の溝は、それぞれ、流体伝導方式でそれぞれの導出部に直接的に相互接続されることを特徴とする。
【0052】
一実施形態において、髄内釘は、第1のリザーバから第2のリザーバに、及び第2のリザーバから第1のリザーバに医薬流体を運ぶことを可能にする。
【0053】
医薬流体を一方向のみに、したがって第1のリザーバから第2のリザーバに、又は第2のリザーバから第1のリザーバに運ぶことを可能にするために、髄内釘の一実施形態は、第1の導管手段が第1の逆止弁を有することを特徴とする。このようにして、髄内釘のどの部分が、既に骨組織と接触している医薬流体で汚染されているかを制御することができる。さらに、これは髄内釘を通る医薬流体の流れの方向を選択することを可能にし、このことが詰まりのより低いリスクと関連する。
【0054】
髄内釘の一実施形態は、第1の逆止弁は、少なくとも1つの導出部の方向に流体透過性となるように、第1のコネクタの方向に流体不透過性となるように構成されることを特徴とする。したがって、髄内釘は、第1のリザーバから第2のリザーバへの医薬流体の搬送のみを可能にする。この実施形態の1つの長所は髄内釘内を少なくとも部分的に軸方向に延びる第1の導管手段を通して未使用の医薬流体のみを運ぶことができ、骨組織との当接後に医薬流体内に蓄積する可能性がある第1の導管手段の骨組織との汚染及び/又は詰まりが防止されることである。
【0055】
髄内釘の好ましい実施形態において、医薬流体は、第1の端部で第1のコネクタを通って髄内釘に供給され、第2の端部で少なくとも1つの導出部を通って再び残り、第2の導管手段は同時に、第1の端部で髄内釘の外面から医薬流体を排出し、第1の端部で第2のコネクタを通って髄内釘を残すため、髄内釘内部でより長く延びる2つのうち一方の導管手段は、第1の逆止弁によって、骨組織、特に骨髄による汚染及び/又は詰まりから保護される。
【0056】
第1の逆止弁は、異なる設計を有することができる。一実施形態において、第1の逆止弁が逆止弁(flap)を備え、逆止弁は、第1の導管手段を通る医薬流体の一方向の流れのみの搬送を可能にし、反対方向の流れに対し、流体伝導方式で導管手段を閉じる。
【0057】
髄内釘の一実施形態は、第1の逆止弁が第1の復元要素を有し、これが第1の逆止弁を流体伝導方式で一方向に閉じ、第1の逆止弁を介して反対方向に医薬流体を運ぶことを可能にすることを特徴とする。簡単な構造及び安全な使用性のために、復元要素は、好ましくはバネを有し、特に螺旋バネを有し、例えばプラスチック又は金属で作られる。又は、第1の復元要素は、バネで構成され、特に螺旋バネで構成され、例えばプラスチック又は金属で作られる。
【0058】
一実施形態において、第1の逆止弁が逆止ボール弁(ball valve)として形成される。高い構造的な強さために、第1の逆止弁は、さらなる好ましい実施形態において、逆止ポペット弁(poppet valve)として形成される。
【0059】
第1の復元要素は医薬流体を一方向の流れのみに運ぶことを可能にするために、第1の導管手段の内側の異なる点に配置することができる。
【0060】
第1の導管手段の汚染及び/又は詰まりをできるだけ効果的に防止するために、髄内釘の好ましい実施形態は、第1の復元要素が髄内釘の第2の端部に配置されることを特徴とする。より好ましくは、第1の復元要素は、髄内釘の第1の端部から軸方向に最も離れた第1の導管手段の位置に、特に第1の導管手段から少なくとも1つの導出部への移行部に配置される。
【0061】
医薬流体を一方向にのみ、したがって第1のリザーバから第2のリザーバに、又は第2のリザーバから第1のリザーバに運ぶことを可能にするために、髄内釘の一実施形態は、第2の導管手段が第2の逆止弁を有することを特徴とする。
【0062】
髄内釘の一実施形態は、第2の逆止弁が外面の方向に流体不透過性であり、第2のコネクタの方向に流体透過性となるように構成されることを特徴とする。したがって、髄内釘は、第1のリザーバから第2のリザーバへの医薬流体の搬送のみを可能にする。この実施形態の長所は、骨組織に触れなかった医薬流体のみを、少なくとも部分的に髄内釘内に延びる第1の導管手段を通じて、依然として運ぶことができ、骨管の洗浄後に医薬流体内に蓄積することがある骨組織内の第1の導管手段の汚染及び/又は詰まりが不可能になることである。
【0063】
第2の逆止弁は、異なる設計を有することができる。一実施形態において、第2の逆止弁が逆止弁を備え、逆止弁は、第2の導管手段を通る医薬流体の一方向の流れのみの搬送を可能にし、反対方向の流れに対し、流体伝導方式で第2の導管手段を閉じる。
【0064】
髄内釘の一実施形態は、第2の逆止弁が第2の復元要素を有し、これが第2の逆止弁を流体伝導方式で流れの一方向に閉じ、第2の逆止弁を介して反対方向に医薬流体を運ぶことを可能にすることを特徴とする。簡単な構造及び安全な使用性のために、第2の復元要素は、好ましくはバネを有し、特に螺旋バネを有し、例えばプラスチック又は金属で作られる。又は、第2の復元要素は、バネで構成され、特に螺旋バネで構成され、例えばプラスチック又は金属で作られる。
【0065】
一実施形態において、第2の逆止弁が逆止ボール弁として形成される。高い構造的な強さために、第2の逆止弁は、さらなる好ましい実施形態において、逆止ポペット弁として形成される。
【0066】
髄内釘の一実施形態は、髄内釘を骨管内に固定するために、髄内釘が少なくとも1つの軸受を有することを特徴とする。このために、例えばネジのような締結手段は、それぞれの場合において、少なくとも1つの軸受を通り、髄内釘を取り囲む骨組織を通って駆動され、ここで、骨管の内側の髄内釘の変位及び/又は回転が防止される。髄内釘は、好ましくは髄内釘の第1の端部又は第2の端部に少なくとも1つの軸受を有する。より好ましくは、髄内釘は、第1の端部に少なくとも1つの軸受を有し、第2の端部に少なくとも1つの軸受を有する。
【0067】
髄内釘の一実施形態は、髄内釘が少なくとも1つのシールリング(sealing ring)を有することを特徴とする。少なくとも1つのシールリングは、流体不透過方式で髄内釘の外面を取り囲み、髄内釘の移植後に、医薬流体(特に液体の医薬流体)がシールリングと骨組織との間で運ばれないように、髄内釘を取り囲む骨組織と協働する。シールリングの例としては、発泡プラスチック製の発泡リング、又は塊状の非発泡弾性プラスチックリング、特にエラストマー製のシールリングが挙げられる。一実施形態において、髄内釘が第1の端部に少なくとも1つのシールリングを有する。さらなる実施形態において、髄内釘は、第2の端部に少なくとも1つのシールリングを有する。さらなる好ましい実施形態において、髄内釘は、第1の端部に少なくとも1つのシールリングを有し、第2の端部に少なくとも1つのシーリング(sealing)を有する。第1の端部における少なくとも1つのシールリング及び第2の端部における少なくとも1つのシールリングは、医薬流体を一方のリザーバから他方のリザーバに制御された方法で搬送できるように外面に延びる少なくとも第2の導管手段を取り囲むが、同時に、髄内釘の2つの軸方向端部の向き及びそれを越える方向への医薬流体の望ましくない分配を防止する。これは、患者の医薬流体に含まれる活性物質の望ましくない蓄積を防止する。
【0068】
本発明のさらなる目的は、特に前述の実施形態のいずれか1つによる髄内釘による骨折を治療するため、及び骨管の領域に医薬流体を適用するための方法に関する。方法は、少なくとも、
a)髄内釘を骨管に移植するステップ、
b)第1の導管手段を第1のリザーバに、第2の導管手段を第2のリザーバに流体伝導接続するステップ、
c1)第1の導管手段、少なくとも1つの導出部、外面、及び第2の導管手段を介して、医薬流体を第1のリザーバから第2のリザーバに少なくとも部分的に搬送するステップ、及び/又は
c2)第2の導管手段、外面、少なくとも1つの導出部、及び第1の導管手段を介して、医薬流体を第2のリザーバから第1のリザーバに少なくとも部分的に搬送するステップ、
を含む。
【0069】
本方法の一実施形態において、ステップc1)だけでなくc2)は、医薬流体が第1のリザーバと第2のリザーバとの間で少なくとも部分的に交互に移動されるように実行される。
【0070】
本方法のさらなる好ましい実施形態において、ステップc1)又はステップc2)のいずれかは、医薬流体が髄内釘を通る流れの方向に1回だけ運ばれるように実行される。これにより、骨組織、特に骨髄による髄内釘の汚染及び/又は詰まりが防止される。
【0071】
本方法がステップc1)又はステップc2)のみを含む場合、したがって、医薬流体は、髄内釘を通って1回だけ運ばれる場合、医薬流体を収容する第1のリザーバ又は第2のリザーバは、ステップb)において、それぞれ異なる方法で、第1の導管手段又は第2の導管手段に流体伝導方式で接続される。一実施形態において、医薬流体を収容するリザーバは、例えばホースを介して、対応する導管手段に直接物理的に接続される。さらなる実施形態において、医薬流体を収容するリザーバ、例えばボウル又は容器は、対応する導管手段に直接物理的に接続されていないが、対応するリザーバは、対応する導管手段から、例えば滴となって抜ける医薬流体を捕捉するだけである。
【0072】
本方法の好ましい実施形態において、本方法がステップc1)を含み、ステップc2)を含まない。第2の導管手段と比較して、髄内釘の内側に長距離にわたって延在する第1の導管手段は、好ましい実施形態において、汚染及び詰まりから保護される。
【0073】
医薬流体の適用は、異なる方法で行うことができる。一実施形態において、医薬流体は、髄内釘を介して骨管内に適用され、ここで、医薬流体は数分から数日の期間、例えば最大で10日間、骨管の領域に留まる。さらなる実施形態において、医薬流体は、骨管は、医薬流体で1回又は複数回洗浄されるように、時間の遅れなしに、髄内釘を通して連続的に1回又は複数回運ばれる。
【0074】
髄内釘について開示された特徴は、この方法についても開示されており、その逆も同様である。
【0075】
実施例
以下、実施例を手段しながら例示的に説明する。本発明は、実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】髄内釘の模式的な断面図である。
図2】髄内釘の模式的な外面図である。
図3】閉鎖位置にある第1の逆止め弁を含む髄内釘の模式的な断面図である。
図4】開放位置にある第1の逆止め弁を含む髄内釘の模式的な断面図である。
図5】閉鎖位置にある第2の逆止め弁を含む髄内釘の模式的な断面図である。
図6】開放位置にある第2の逆止め弁を含む髄内釘の模式的な断面図である。
図7】髄内釘による治療法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図面の詳細な説明
図1は、髄内釘100の模式的な断面図である。髄内釘100は、軸方向に延びる第1の第1の導管手段110を有する。第1の導管手段110は、髄内釘100の第1の端部101から第2の端部102まで軸方向に延びている。第1の端部101において、第1の導管手段110は、第1のコネクタ111を有し、髄内釘100(特に第1の導管手段110)を介して、医薬流体のための第1のリザーバに流体伝導方式で接続される。第1の導管手段110は、髄内釘100の内側で軸方向に延びる管として部分的に形成され、それを通って医薬流体、特に液体の医薬流体を運ぶことができる。第2の端部102において、髄内釘100は、導出部130を有し、導出部130は、第1の導管手段110を流体伝導方式で第2の導管手段120に接続し、第2の導管手段120を介して髄内釘100の外面105にも接続する。図示された髄内釘100は、4つの導出部(1つの導出部130は、図示された平面から外に向けられ、さらなる導出部130は、図示された平面の後方に向けられ、したがって、見えない)を有し、これらは、髄内釘100に、それぞれ90°の角度で互いに半径方向にオフセットして配置されている。さらに、図示されていない髄内釘100の実施形態において、導出部130の数だけでなく配置を変えることができる。
【0078】
図示された実施形態において、第2の導管手段120は、外面105内で軸方向に延びる4つの溝125(ここで、再び軸方向の溝125の1つは図示された平面の前方に延び、1つのさらなる溝125は導出部130と同様に図示された平面の後方に延びる)を備え、溝125は、4つの導出部130と、半径方向に周回する窪み(radially circumferential depression)126と、それだけでなく髄内釘100の第1の端部101における管状の第2のコネクタ121とに直接接続され、それによって、管状の窪み126は、第2のコネクタ121と溝125とを流体伝導方式で接続する。
【0079】
髄内釘100の図示された実施形態において、第1のコネクタ111及び第2のコネクタ121が第1のリザーバ及び第2のリザーバをツインホースシステムにより髄内釘100に接続できるように、一体に形成される。さらに、図示されていない実施形態において、第1のコネクタ111及び第2のコネクタ121は、第1のリザーバ及び第2のリザーバがそれぞれ、例えばホースなどの個別接続手段によって、第1のコネクタ111及び第2のコネクタ121に接続されるように、互いに別個に構成される。図示された実施形態において、第1の端部101は、ネジ接続部107により髄内釘100の残りの部分に固定される。さらに、図示されていない実施形態において、第1の端部101及び髄内釘100の残りの部分が一体に構成される。
【0080】
髄内釘100は、医薬流体を2つの流れ方向に運ぶことを可能にする。第1の実施形態において、医薬流体は、第1のコネクタ111を介して髄内釘100内に導管手段110内に導入され、第1の導管手段110を通って第2の端部102に向かって運ばれ、第2の端部102に到達すると、導出部130を通って髄内釘100から溝125内に誘導される。溝125は、医薬流体を再び第1の端部101の向きに戻すように誘導し、半径方向に周回する窪み126により集められ、第2のコネクタ121により第2のリザーバに誘導される。さらなる実施形態において、医薬流体は、第2のコネクタ121を介して第2のリザーバから髄内釘100に導入され、第2の導管手段120に運ばれ、第2の端部102の向きに運ばれ、先ず半径方向に周回する窪み126を通って誘導され、続いて溝125を介して誘導される。第2の端部102に到達すると、医薬流体は、導出部130を通って溝125から第1の導管手段110内に導入される。第1の導管手段110は、医薬流体を再び第1の端部101の方向に戻すように誘導し、第1の端部101に到達すると、第1のコネクタ111により、髄内釘100から第1のリザーバに移される。
【0081】
いずれの実施形態においても、医薬流体は、溝125を介して髄内釘100の外面105と流体伝導接触しており、これにより、医薬流体に含まれる活性物質を、移植された髄内釘100の周囲の骨組織に適用することが可能になる。
【0082】
軸受104は、各々がネジの形態の締結手段103を備えており、第1の端部101及び第2の端部102に取り付けられている。締結手段103は、髄内釘100を骨管内に空間的に固定する役割を果たす。
【0083】
図2は、図1の髄内釘100の模式的な外面図である。上面図では、髄内釘100の内部からの導出部130の1つが、第2の端部102で溝125の1つに開口している。対応する溝125は、第2の端部102から髄内釘100の外面105における第1の端部101まで軸方向に延び、ここで、半径方向に周回する窪み126に流体伝導方式で接続される。したがって、髄内釘100の全長の大部分は、溝125の外面105への流体伝導接続によって、医薬流体に含まれる活性物質を、髄内釘100の周囲領域の大面積にわたって適用するために利用可能である。
【0084】
図3は、図1及び図2の髄内釘100の模式的な断面の断面を示し、第1の導管手段110は、第1の復元要素140をさらに有する。第1の逆止弁は、髄内釘100の第2の端部102に面する第1の導管手段110の端部112に、導出部130への移行部に直接的に、配置されており、閉鎖位置にある。このために、バネの形態の第1の復元要素141は、第1の復元要素142を、後部が第1の導管手段110及び導出部130の移行部を流体伝導方式で閉じるように付勢する。閉鎖位置では、髄内釘100の外部から導出部130を通って第1の導管手段110内に医薬流体を運べないので、第1の導管手段110の汚染及び/又は詰まりの危険が防止される。
【0085】
図示された実施形態において、髄内釘100は、第2の端部102で髄内釘100を半径方向に取り囲む第2のシールリング155を有する。髄内釘100の移植後、第2のシールリング155は、髄内釘100を通って運ばれ導出部130から抜け出す医薬流体が第2の端部102の締結手段103の方向ではなく、第1の端部101の方向に誘導されるように、髄内釘100を取り囲む骨組織と協働する。したがって、患者の体内の医薬流体に含まれる活性物質の制御されない蓄積が防止される。図示されていないさらなる実施形態において、髄内釘100が第2のシールリング155を有するが、第1の逆止弁110を有さない。
【0086】
図4は、図1、2、及び3からの髄内釘100の模式的な断面の一部を示し、図3からの追加の第1の逆止弁140が開位置で示されている。図4は、矢印106により示されるように、第1の導管手段110を通って、導出部130の方向に向かい、溝125に沿って、再び髄内釘100の第1の端部101に戻る医薬流体の搬送を示す。第2の端部102の方向における第1の導管手段110を通る医薬流体の搬送圧力によってトリガされ、第1の逆止弁140は、開位置にあり、医薬流体は、第1の逆止弁140の第1のピストン142を第2の端部102における軸受104の方向における第1の復元要素141のクランプ力に対して変位させる。したがって、第1の逆止弁は、矢印106により示される流れの方向に沿ってのみ医薬流体を運ぶことを可能にし、それによって、第1の導管手段110の汚染及び/又は詰まりの危険性が低減される。
【0087】
図5は、前述の図からの髄内釘100の模式的な断面の一部を示し、第2の導管手段120、特に第2のコネクタ121は、さらに第2の逆止弁145を有する。図5は、閉位置にある第2の逆止弁145を示す。このために、バネの形態の第2の復元要素146が、第2のピストン147を、第2の導管手段120、特に第2のコネクタ121を半径方向の窪みの流れの向きに流体伝導方式で閉じるように付勢する。第2の逆止弁145の閉位置では、第2のコネクタ121を介して髄内釘100の第2の端部102の方向に医薬流体を運ぶことは不可能である。
【0088】
第1の実施形態において、髄内釘100は、第2の逆止弁145のみを有する。さらなる好ましい実施形態において、髄内釘100は、第1の逆止弁140(図3及び図4を参照)と、第2の逆止弁145とを有する。第2の逆止弁145は、特に半径方向の窪み126に面する第2のコネクタ121の端部において、管状の第2のコネクタ121内に配置される。
【0089】
図示された実施形態において、髄内釘100は、第1の端部101で髄内釘100を半径方向に取り囲む第1のシールリング150を有する。髄内釘100の移植後、第1のシールリング150は、髄内釘100を通って運ばれ、溝125を通って第1の端部101の方向に運ばれる医薬流体が第1の端部101の締結手段103の方向ではなく、第2のコネクタ121に排出されるように、髄内釘100を取り囲む骨組織と協働する。したがって、患者の体内の医薬流体に含まれる活性物質の制御された蓄積が防止される。図示されていないさらなる実施形態において、髄内釘100は、第2のシールリング155を有するが、第1の逆止弁110は有していない。さらなる実施形態において、髄内釘は、第1のシールリング150及び第2のシールリング155を有する。したがって、医薬流体に含まれる活性物質の望ましくない蓄積をもたらすことなく、あるリザーバから別のリザーバへの、好ましくは第1のリザーバから第2のリザーバへの医薬流体の制御されない搬送が可能である。
【0090】
図6は、前述の図からの髄内釘100の模式的な断面の一部を示し、図5からの追加の第2の逆止弁145が開位置で示されている。図6は、矢印106により示されるように、第1の導管手段110を通って第2の端部102の方向に、そして第2の導管手段120を通って再び髄内釘の第1の端部101の方向に戻る医薬流体の搬送を示す。髄内釘100を通る医薬流体の搬送によって引き起こされる搬送圧力によってトリガされ、第2の第2の逆止弁145は、開位置にあり、医薬流体は、第1の端部101において、第2の復元要素146のクランプ力に対して第2の逆止弁145の第2のピストン147を軸受104の方向に変位させる。したがって、第2の逆止弁は、矢印106により示される流れ方向に沿ってのみ医薬流体を運ぶことを可能にし、それによって、第1の導管手段110の汚染及び/又は詰まりの危険性が低減される。
【0091】
図7は、ステップ210、220、230、及び/又は240、ならびに任意のステップ250を含む、骨折を治療するため、及び髄内釘によって骨管の領域に医薬流体を適用するための方法200のフローチャートを示す。ステップ210では、髄内釘は、骨管に移植され、髄内釘の第1の導管手段は、医薬流体のための第1のリザーバに接続されるとともに、髄内釘の第2の導管手段は、例えばステップ220で1つ又は複数のホースを介して、医薬流体のための第2のリザーバに流体伝導方式で接続される。方法200は、その後、3つの異なる方法で実行することができる。第1の実施形態の方法200において、医薬流体は、ステップ230において、例えばポンピングを介して、第1のリザーバから第2のリザーバに少なくとも部分的に運ばれる。第2のリザーバから第1のリザーバへの医薬流体の搬送は、行われない。第2の実施形態の方法200において、医薬流体は、ステップ240において、ポンピングを介して第2のリザーバから第1のリザーバに少なくとも部分的に運ばれる。第1のリザーバから第2のリザーバへの医薬流体の搬送は行われない。第3の実施形態の方法200におけるステップ250において、第1のリザーバから第2のリザーバへの医薬流体の少なくとも部分的な搬送、及び第2のリザーバから第1のリザーバへの少なくとも部分的な搬送が行われる。それによって、第1のリザーバ及び第2のリザーバは、第1の搬送の前に、それぞれの場合において同じ医薬流体を、又はそれぞれの場合において異なる医薬流体を貯蔵することができ、第1のリザーバのみ又は第2のリザーバのみが、第1の搬送の前に医薬流体を貯蔵する。ステップ230、240、又は250の終了後、第1のリザーバは、第1の導管手段から分離され、第2のリザーバは、任意のステップ260において、流体伝導方式で第2の導管手段から分離される。
【0092】
特許請求の範囲、明細書、及び図面に開示される特徴は、それぞれ別々に、及び互いに任意に組み合わせて特許請求される本発明の様々な実施形態に必須でありる。髄内釘について開示された特徴は、この方法についても開示されており、その逆も同様である。
【符号の説明】
【0093】
100 髄内釘
101 第1の端部
102 第2の端部
103 締結手段
104 軸受
105 外面
106 矢印
107 ネジ接続部
110 第1の導管手段
111 第1のコネクタ
120 第2の導管手段
121 第2のコネクタ
125 溝
126 半径方向の窪み
130 導出部
140 第1の逆止弁
141 第1の復元要素
142 第1のピストン
145 第2の逆止弁
146 第2の復元要素
147 第2のピストン
150 第1のシールリング
155 第2のシールリング
200 骨折治療法
210 移植
220 流体伝導接続部
230 第1のリザーバから第2のリザーバへ搬送
240 第2のリザーバから第1のリザーバへ搬送
250 第1のリザーバから第2のリザーバへ搬送、及び第2のリザーバから第1のリザーバへ搬送
260 任意の流体伝導分離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7