(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】高ダイナミックレンジ画像の電子画像安定化を実施するための方法、デバイス、カメラ、およびソフトウェア
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20221102BHJP
H04N 5/235 20060101ALI20221102BHJP
G03B 7/093 20210101ALI20221102BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20221102BHJP
G06T 5/50 20060101ALI20221102BHJP
G06T 5/00 20060101ALI20221102BHJP
G06T 3/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H04N5/232 480
H04N5/235 500
H04N5/235 600
G03B7/093
G03B5/00 K
G06T5/50
G06T5/00 740
G06T3/00 750
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021042997
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2022-05-30
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502208205
【氏名又は名称】アクシス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ユアン, ソン
(72)【発明者】
【氏名】フェルベルク, ヨハン
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-005539(JP,A)
【文献】特開2001-346096(JP,A)
【文献】特開2014-030073(JP,A)
【文献】特開2008-109176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
H04N 5/235
G03B 7/093
G03B 5/00
G06T 5/50
G06T 5/00
G06T 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーンを描写する高ダイナミックレンジ(HDR)画像の電子画像安定化(EIS)を実施する方法であって、当該方法は、
前記シーンを描写する第1の画像および第2の画像を受信することであって、前記第1の画像および第2の画像は複数のピクセル領域を含むローリングシャッター画像センサによって取り込まれ、前記ローリングシャッター画像センサは、或る画像の取り込み中に、1つのピクセル領域からピクセルデータを1回読み出し、前記第1の画像および前記第2の画像は異なる露出時間で取り込まれる、第1の画像および第2の画像を受信すること、
第1の運動データおよび第2の運動データを受信することであって、前記第1の運動データおよび前記第2の運動データのそれぞれは、前記第1の画像および前記第2の画像を取り込むときに、前記ローリングシャッター画像センサの複数の姿勢をそれぞれ示し、各姿勢は、前記ローリングシャッター画像センサの或るピクセル領域に対応し、且つ前記ピクセル領域のピクセルデータの読み出し中に決定された前記ローリングシャッター画像センサの配向および/または位置を示す、第1の運動データおよび第2の運動データを受信すること、
前記第1の画像および前記第2の画像をマージすることによって前記HDR画像を作成すること、
前記HDR画像内のピクセルブロックの中の、前記ローリングシャッター画像センサの或るピクセル領域に空間的に対応する特定のピクセルブロックのそれぞれについて、
前記特定のピクセルブロックが、前記第1の画像のピクセルデータからコピーされるか、前記第2の画像のピクセルデータからコピーされるか、前記第1の画像と前記第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであるかどうかを判定すること
によって、前記HDR画像に対してEISを実施すること
を含み、
ここで、前記特定のピクセルブロックが前記第1の画像のピクセルデータからコピーされると判定すると、EISは、前記第1の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢を使用することによって前記特定のピクセルブロックに対して実施され、
前記特定のピクセルブロックが前記第2の画像のピクセルデータからコピーされると判定すると、EISは、前記第2の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢を使用することによって前記特定のピクセルブロックに対して実施され、
前記特定のピクセルブロックが前記第1の画像と前記第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであると判定すると、前記方法は更に、
前記特定のピクセルブロック内の前記第1の画像からのピクセルデータの比を示す第1のブレンディング値または前記第1の画像のピクセルデータからコピーされる前記特定のピクセルブロックに隣接するピクセルブロックの比を示す第2のブレンディング値を受信すること、
前記第1のブレンディング値に従って、前記第1の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢および前記第2の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢を重み付けすることによって前記特定のピクセルブロックについての姿勢を計算すること
を含み、
EISは、前記計算された姿勢を使用することによって前記特定のピクセルブロックに対して実施される、方法。
【請求項2】
前記第1の運動データ内の各姿勢は、前記第1の画像を取り込むときに前記対応するピクセル領域からピクセルデータを読み出すときの、前記ローリングシャッター画像センサのヨー、ピッチ、および任意選択でロールを示す角度配向データを含み、
前記第2の運動データ内の各姿勢は、前記第2の画像を取り込むときに前記対応するピクセル領域からピクセルデータを読み出すときの、前記ローリングシャッター画像センサのヨー、ピッチ、および任意選択でロールを示す角度配向データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の運動データ内の各姿勢は、前記第1の画像を取り込むときに前記対応するピクセル領域からピクセルデータを読み出すときの、前記ローリングシャッター画像センサの空間内の位置を示す位置データを含み、
前記第2の運動データ内の各姿勢は、前記第2の画像を取り込むときに前記対応するピクセル領域からピクセルデータを読み出すときの、前記ローリングシャッター画像センサの空間内の位置を示す位置データを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
命令を記憶した非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令は、処理能力を有するデバイス上で実行されると、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法を実施するためのものである、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項5】
シーンを描写する高ダイナミックレンジ(HDR)画像の電子画像安定化(EIS)を実施するように構成されるデバイスであって、当該デバイスは第1の回路を備え、前記第1の回路は、
前記シーンを描写する第1の画像および第2の画像を受信するように構成される画像受信機能であって、前記第1の画像および前記第2の画像は複数のピクセル領域を含むローリングシャッター画像センサによって取り込まれ、前記ローリングシャッター画像センサは、或る画像の取り込み中に、1つのピクセル領域からピクセルデータを1回読み出し、前記第1の画像および前記第2の画像は異なる露出時間で取り込まれる、画像受信機能、
第1の運動データおよび第2の運動データを受信するように構成される運動データ受信機能であって、前記第1の運動データおよび前記第2の運動データのそれぞれは、前記第1の画像および前記第2の画像を取り込むときに、前記ローリングシャッター画像センサの複数の姿勢をそれぞれ示し、各姿勢は、前記ローリングシャッター画像センサの或るピクセル領域に対応し、且つ前記ピクセル領域のピクセルデータの読み出し中に決定された前記ローリングシャッター画像センサの配向および/または位置を示す、運動データ受信機能、
前記第1の画像および前記第2の画像をマージすることによって前記HDR画像を作成するように構成されるHDR画像作成機能、
前記HDR画像内のピクセルブロックの中の、前記ローリングシャッター画像センサの或るピクセル領域に空間的に対応する特定のピクセルブロックのそれぞれについて、
前記特定のピクセルブロックが、前記第1の画像のピクセルデータからコピーされるか、前記第2の画像のピクセルデータからコピーされるか、前記第1の画像と前記第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであるかどうかを判定すること
によって、前記HDR画像に対してEISを実施するように構成されるEIS実施機能
を実行するように構成され、
ここで、前記特定のピクセルブロックが前記第1の画像のピクセルデータからコピーされると判定すると、EISは、前記第1の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢を使用することによって前記特定のピクセルブロックに対して実施され、
前記特定のピクセルブロックが前記第2の画像のピクセルデータからコピーされると判定すると、EISは、前記第2の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢を使用することによって前記特定のピクセルブロックに対して実施され、
前記特定のピクセルブロックが前記第1の画像と前記第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであると判定すると、ブレンド済み姿勢計算機能が、
前記特定のピクセルブロック内の前記第1の画像からのピクセルデータの比を示す第1のブレンディング値または前記第1の画像のピクセルデータからコピーされる前記特定のピクセルブロックに隣接するピクセルブロックの比を示す第2のブレンディング値を受信し、
前記第1のブレンディング値に従って、前記第1の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢および前記第2の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢を重み付けすることによって前記特定のピクセルブロックについての姿勢を計算する
ように構成され、
EISは、前記計算された姿勢を使用することによって前記特定のピクセルブロックに対して実施される、デバイス。
【請求項6】
カメラであって、
複数のピクセル領域を含むローリングシャッター画像センサであって、或る画像の取り込み中に、1つのピクセル領域からピクセルデータを1回読み出し、シーンを描写する第1の画像および第2の画像を異なる露出時間で取り込むように構成される、ローリングシャッター画像センサと、
高ダイナミックレンジ(HDR)画像の電子画像安定化(EIS)を実施するように構成されるデバイスに、前記第1の画像および前記第2の画像を送信するように構成される第2の回路と
を備え、
前記デバイスは第1の回路を備え、前記第1の回路は、
前記第1の画像および前記第2の画像を受信するように構成される画像受信機能、
第1の運動データおよび第2の運動データを受信するように構成される運動データ受信機能であって、前記第1の運動データおよび前記第2の運動データのそれぞれは、前記第1の画像および前記第2の画像を取り込むときに、前記ローリングシャッター画像センサの複数の姿勢をそれぞれ示し、各姿勢は、前記ローリングシャッター画像センサの或るピクセル領域に対応し、前記ピクセル領域のピクセルデータの読み出し中に決定された前記ローリングシャッター画像センサの配向および/または位置を示す、運動データ受信機能、
前記第1の画像および前記第2の画像をマージすることによって前記HDR画像を作成するように構成されるHDR画像作成機能、
前記HDR画像内のピクセルブロックの中の、前記ローリングシャッター画像センサの或るピクセル領域に空間的に対応する特定のピクセルブロックのそれぞれについて、
前記特定のピクセルブロックが、前記第1の画像のピクセルデータからコピーされるか、前記第2の画像のピクセルデータからコピーされるか、前記第1の画像と前記第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであるかどうかを判定すること
によって、前記HDR画像に対してEISを実施するように構成されるEIS実施機能
を実行するように構成され、
ここで、前記特定のピクセルブロックが前記第1の画像のピクセルデータからコピーされると判定すると、EISは、前記第1の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢を使用することによって前記特定のピクセルブロックに対して実施され、
前記特定のピクセルブロックが前記第2の画像のピクセルデータからコピーされると判定すると、EISは、前記第2の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢を使用することによって前記特定のピクセルブロックに対して実施され、
前記特定のピクセルブロックが前記第1の画像と前記第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであると判定すると、ブレンド済み姿勢計算機能が、
前記特定のピクセルブロック内の前記第1の画像からのピクセルデータの比を示す第1のブレンディング値または前記第1の画像のピクセルデータからコピーされる前記特定のピクセルブロックに隣接するピクセルブロックの比を示す第2のブレンディング値を受信し、
前記第1のブレンディング値に従って、前記第1の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢および前記第2の運動データの前記対応するピクセル領域の前記姿勢を重み付けすることによって前記特定のピクセルブロックについての姿勢を計算する
ように構成され、
EISは、前記計算された姿勢を使用することによって前記特定のピクセルブロックに対して実施される、カメラ。
【請求項7】
第1の運動データおよび第2の運動データ
を決定するように構成される運動セン
サをさらに備え、前記第1の運動データおよび前記第2の運動データのそれぞれは、前記第1の画像および前記第2の画像を取り込むときに、前記ローリングシャッター画像センサの複数の姿勢を
それぞれ示し、前記運動セン
サは、前記ローリングシャッター画像センサの前記複数のピクセル領域の内の或るピクセル領域のピクセルデータの読み出し中に前記ローリングシャッター画像センサの配向および/または位置を決定し、且つ前記姿勢を前記それぞれの運動データ内に記憶するように構成され、
前記第2の回路は、
前記第1の運動データおよび前記第2の運動データを前記デバイスに送信するように構成される運動データ送信機能
を実行するように構成される、請求項6に記載のカメラ。
【請求項8】
前記運動セン
サは、前記ローリングシャッター画像センサの配向を決定するジャイロスコープを備える、請求項7に記載のカメラ。
【請求項9】
前記運動セン
サは、前記ローリングシャッター画像センサの空間内の位置を決定する加速度計を備える、請求項
7に記載のカメラ。
【請求項10】
前記ローリングシャッター画像センサは、前記第1の画像を取り込むための第1のローリングシャッター画像センサおよび前記第2の画像を取り込むための第2のローリングシャッター画像センサを備える、請求項6から9のいずれか一項に記載のカメラ。
【請求項11】
前記ローリングシャッター画像センサは単一ローリングシャッター画像センサを備え、前記単一ローリングシャッター画像センサは、前記第1の画像全体を最初に取り込み、その後、前記第2の画像全体を取り込む、請求項6から9のいずれか一項に記載のカメラ。
【請求項12】
前記ローリングシャッター画像センサは単一ローリングシャッター画像センサを備え、前記単一ローリングシャッター画像センサは、前記複数のピクセル領域のうちの第2の、異なるピクセル領域から、画像データを読み出し続ける前に、前記複数のピクセル領域のうちの第1のピクセル領域から、前記第1の画像と前記第2の画像の両方の画像について画像データを読み出す、請求項6から9のいずれか一項に記載のカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ローリングシャッター画像センサによって取り込まれる高ダイナミックレンジ、HDR、画像用の電子画像安定化、EISのためのアルゴリズムに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の種類の電子デバイス、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、またはデジタルカメラは、益々精巧な撮像機能を装備することができる。そのような撮像機能は、例えば、HDR静止画像またはビデオの取り込みを含む。ここで、用語「HDR」は、標準的なデジタル撮像または写真撮影技法によって可能になるものに比べて、明度(luminosity)の広いダイナミックレンジを再現するための多重露出技法を意味する。HDR画像は、ワイドダイナミックレンジ(WDR:wide dynamic range)画像とも呼ぶことができる。
【0003】
画像を取り込むとき、CMOS画像センサを使用することができる。CMOS画像センサは、低価格、感度の増加、より高い解像度等のような利点をもたらすことができる。多くのCMOS画像センサは、ローリングシャッター技術を使用する。ローリングシャッターは、画像センサが画像を走査する方法を指す技術用語である。ローリングシャッター画像センサは、センサの一方の側(通常、上部)から他の側までラインごとに画像を順次走査する。
【0004】
多重露出マージHDR撮像と組み合わせて電子画像安定化(EIS:electronic image stabilization)を実施することに関して言えば、2つの主要な可能性:
1.露出マージステップ前に各露出を個々に安定化させる
2.マージステップ後に、既にマージした露出を共に安定化させる
が存在する。
【0005】
これらの中で、方法(1)は、概して、より高い品質安定化をもたらすことになる。露出は時間的に離れているため、1つの露出中の画像センサ(例えば、ローリングシャッター画像センサ)の運動は、別の露出の画像センサの運動に一致しないことになる。方法(1)を使用して、各露出は、それらがHDR画像になるようにマージされる前に正しく安定化することができる。
【0006】
しかしながら、方法(1)は、帯域幅要件の増加という対価を伴う。少なくとも2つの露出は、それらをマージすることができる前に、長い時間の間(EISステップを通して)、離れたままである必要がある。これは、典型的には、撮像パイプラインの大部分が、マージ済みの画像に対して1回のみである代わりに、2回、1回の露出について1回、実行される必要があることを意味する。例えば、別個の露出は、両方の画像に対してEISが実施されるまで、アクセス可能なメモリに記憶される必要がある。さらに、HDR画像を達成するための要求される処理パワーは、EISが各露出に対して実施されるため増加する。
【0007】
代替の方法(2)は、帯域幅の点でより効率的であるが、EISが実施されるときに、露出が既にマージされているため、従来技術において完全に正しいEISを実施することは難しい。これは、HDR画像の画像品質の低下をもたらす。
【0008】
したがって、この文脈における改善についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
上記を考慮して、本発明の目的は、上記で論じた欠点のうちの1つまたは幾つかを解決するまたは少なくとも低減することである。概して、上記目的は、添付独立特許請求項によって達成される。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、シーンを描写する高ダイナミックレンジ、HDR、画像の電子画像安定化、EISを実施する方法が提供され、方法は、
シーンを描写する第1の画像および第2の画像を受信することであって、第1および第2の画像は複数のピクセル領域を含むローリングシャッター画像センサによって取り込まれ、ローリングシャッター画像センサは、或る画像の取り込み中に、1つのピクセル領域からピクセルデータを1回読み出し、第1および第2の画像は異なる露出時間で取り込まれる、受信すること、
第1および第2の運動データを受信することであって、第1および第2の運動データのそれぞれは、第1および第2の画像を取り込むときに、ローリングシャッター画像センサの複数の姿勢をそれぞれ示し、各姿勢は、ローリングシャッター画像センサの或るピクセル領域に対応し、且つピクセル領域のピクセルデータの読み出し中に決定されたローリングシャッター画像センサの配向および/または位置を示す、受信すること、
第1および第2の画像をマージすることによってHDR画像を作成すること、
HDR画像内のピクセルブロックの中の、ローリングシャッター画像センサの或るピクセル領域に空間的に対応する特定のピクセルブロックのそれぞれについて、
・ 特定のピクセルブロックが、第1の画像のピクセルデータからコピーされるか、第2の画像のピクセルデータからコピーされるか、第1の画像と第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであるかを判定すること
によって、前記HDR画像に対してEISを実施すること
を含み、ここで、
・ 特定のピクセルブロックが第1の画像のピクセルデータからコピーされると判定すると、EISは、第1の運動データの対応するピクセル領域の姿勢を使用することによって特定のピクセルブロックに対して実施され、
・ 特定のピクセルブロックが第2の画像のピクセルデータからコピーされると判定すると、EISは、第2の運動データの対応するピクセル領域の姿勢を使用することによって特定のピクセルブロックに対して実施される。
【0011】
ローリングシャッター画像センサは、時間的に単一の瞬間のシーンの画像を取り込むのではなく、代わりに、シーンにわたって、通常、垂直にまたは水平に走査し、したがって、異なる瞬間のピクセルデータを読み出すセンサである。換言すれば、シーンの画像の全ての部分が正確に同じ瞬間に記録されるわけではない。そのため、用語「ピクセル領域(pxel region)」によって、本明細書の文脈では、例えば、ローリングシャッター画像センサのピクセルの行またはピクセルの列が理解されるべきである。ピクセル領域は、ローリングシャッター画像センサの複数の行または列を含むこともできる。ピクセルデータのそのような読み出し中に、カメラのカメラ運動が連続して測定される。カメラ運動は、例えば、ローリングシャッター画像センサの各ピクセル領域について測定することができる、または、全ての他のピクセル領域等について測定することができる。しかしながら、カメラ運動は、複数のピクセル領域からのピクセルデータの読み出し中の少なくとも2つの場合に測定されることになり、それにより、1つのピクセル領域は、別のピクセル領域に関連する運動データと異なる(測定済みのカメラ運動レベルを示す)運動データに関連するとすることができる。これらの2つのピクセル領域の間のピクセル領域について、カメラ運動を、2つの尺度から補間することができる。
【0012】
以下で、ローリングシャッター画像センサは、簡単にするために、画像センサと呼ぶことができる。
【0013】
或るピクセル領域についてのカメラ運動は、或るピクセル領域からピクセルデータが読み出されるときの画像センサの姿勢を規定するデータによって示される。ここで、画像センサの姿勢は、配向(例えば、ピッチ、ヨー、および/またはロール)および/または位置(例えば、画像センサのx、y、および/またはz位置)を示す。そのため、姿勢は、1自由度(DOF:degree of freedom)~6DOFで示すことができる。
【0014】
そのため、第1および第2の運動データは、第1および第2の画像の取り込み中の画像センサの少なくとも2つの測定済み姿勢を含む。各測定済み姿勢は、上記で規定したピクセル領域に対応する。運動データ内に明示的に存在しない任意の残りの姿勢は、依然として示され、知られている任意の補間方策を通して計算することができる。
【0015】
第1および第2の画像は、有利には、時間的に接近して、例えば、2つの引き続く期間内に取り込まれる、または、例えば、DOL-HDR技術を使用して、時間的にインターリーブされる。いずれにしても、第1の画像、すなわち、第1の画像の全ての画像データは、例えば、短い露出時間で取り込まれ、第2の画像、すなわち、第2の画像の全ての画像データは、例えば、長い露出時間で取り込まれる、または、その逆も同様である。
【0016】
3つ以上(>2)の画像を、HDR画像を作成するために(異なる露出時間で)取り込むことができることが理解されるべきである。簡単にするために、本開示は、2つの画像の場合を述べるだけである。
【0017】
第1および第2の画像をマージすることによって、HDR画像が作成される。HDR画像を作成するための多くの知られている多重露出技法が存在し、それらは技量のある読者に知られている。典型的には、マージングは、過剰に露出される(over-exposed)(すなわち、画像センサのフルウェルキャパシティ(full-well capacity))HDR画像内のピクセルの数を低減するために、閾値に基づく。複数の露出をマージするとき、線形重み付け(linear weighting)を使用することができる。マージャーの結果のトーンマッピング(tone-mapping)を、使用事例に応じて使用することもできる。
【0018】
マージングステップの後に、EISが、HDR画像に対して実施される。
【0019】
EIS用の補正テーブルを計算するときに、複数の露出のうちの1つの露出(例えば、より長い露出時間を有する露出)について単に最適化することによってEISを実施すると、長い露出に由来する最終的なHDR画像(安定化されたHDR画像)のいずれの部分も、正しく見えることになるが、(短い露出に由来する)ハイライト部が、まるで基礎となるシーンから切り離されたようにちらつくことになることを本発明者等は認識した。これを軽減するために、ブロックがどの画像からコピーされるかを決定し、そのブロックについて、対応する第1または第2の運動データを使用することによって空間的補正を計算して、最終的なHDR画像においてそのブロックについての空間的補正を決定することによって、ピクセルのブロック(例えば、マクロブロック)ベースでEISが実施される。有利には、その後、そのピクセルのブロックを取り込むときに、ローリングシャッター画像センサの対応する姿勢に基づいて、ブロックベースで最終的なHDRを安定化することが可能である。これは、次に、最終的なHDR画像の知覚品質(perceived quality)を改善することができる。
【0020】
幾つかの実施形態によれば、特定のピクセルのブロックが第1の画像と第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであると判定すると、方法は、
特定のピクセルのブロック内の第1の画像からのピクセルデータの比を示す第1のブレンディング値を受信すること、
第1のブレンディング値に従って、第1の運動データの対応するピクセル領域の姿勢および第2の運動データの対応するピクセル領域の姿勢を重み付けすることによって特定のピクセルのブロックについての姿勢を計算することをさらに含み、
EISは、計算済み姿勢を使用することによって特定のピクセルのブロックに対して実施される。
【0021】
換言すれば、第1の運動データの対応するピクセル領域の姿勢および第2の運動データの対応するピクセル領域の姿勢は、和が1になる重みを用いる線形結合として混合され、重みは、第1のブレンディング値に依存する。混合された計算済み姿勢は、その後、EISのために使用される。
【0022】
第1および第2の画像からのピクセルデータ間のブレンディング(したがって、比)は、使用されるHDRアルゴリズムに従って決定することができる。典型的には、ブレンディングは、より長い露出による画像のピクセルのブロックが過剰露出にどれほど近いかに基づいて決定される。代替的にまたは付加的に、ブレンディングは、より短い露出による画像の対応するピクセルのブロックが過少露出にどれほど近いかに基づいて決定される。
【0023】
この実施形態において、ブレンドされるピクセルのブロックについて、長い露出と短い露出の両方について収集される運動データからの重み付け結果が使用される。その結果、これらのピクセルのブロックについてのEISは、正しく実施された、すなわち、第1または第2の画像から取得されるピクセルのブロックについてのEISと整合する、と認識することができる。
【0024】
幾つかの実施形態によれば、方法は、特定のピクセルのブロックが第1の画像と第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであると判定すると、
第1の画像のピクセルデータからコピーされる特定のピクセルのブロックに隣接するピクセルのブロックの比を示す第2のブレンディング値を受信すること、
第2のブレンディング値に従って、第1の運動データの対応するピクセル領域の姿勢および第2の運動データの対応するピクセル領域の姿勢を重み付けすることによってピクセルのブロックについての姿勢を計算することをさらに含み、
EISは、計算済み姿勢を使用することによって特定のピクセルのブロックに対して実施される。
【0025】
換言すれば、第1の運動データの対応するピクセル領域の姿勢および第2の運動データの対応するピクセル領域の姿勢は、和が1になる重みを用いる線形結合として混合され、重みは、第1の画像のピクセルデータからコピーされる特定のピクセルのブロックに隣接するピクセルのブロックの比に依存する。混合された計算済み姿勢は、その後、EISのために使用される。
【0026】
この実施形態において、第2の画像からコピーされる周囲のピクセルのブロックの数と比較した、第1の画像からコピーされる周囲のピクセルのブロックの数の比が、第1および第2の運動データからのデータに重み付けするために使用される。その結果、これらのピクセルのブロックについてのEISは、正しく実施された、すなわち、(第1または第2の画像から取得される)周囲のピクセルのブロックについてのEISと整合する、と認識することができる。
【0027】
幾つかの実施形態によれば、第1の運動データ内の各姿勢は、第1の画像を取り込むときに、対応するピクセル領域からピクセルデータを読み出すときの、ローリングシャッター画像センサのヨー、ピッチ、および任意選択でロールを示す角度配向データを含み、
第2の運動データ内の各姿勢は、第2の画像を取り込むときに、対応するピクセル領域からピクセルデータを読み出すときの、ローリングシャッター画像センサのヨー、ピッチ、および任意選択でロールを示す角度配向データを含む。
【0028】
例えば、壁に搭載されるカメラの場合、この実施形態は、HDR画像の知覚される高品質EISを達成するのに十分であるとすることができる。ほとんどのカメラは、角度配向を測定するためのセンサを既に備え、本実施形態は、したがって、任意のさらなるハードウェアコストを招かないとすることができる。
【0029】
付加的にまたは代替的に、幾つかの実施形態によれば、第1の運動データ内の各姿勢は、第1の画像を取り込むときに、対応するピクセル領域からピクセルデータを読み出すときの、ローリングシャッター画像センサの空間内の位置を示す位置データを含み、
第2の運動データ内の各姿勢は、第2の画像を取り込むときに、対応するピクセル領域からピクセルデータを読み出すときの、ローリングシャッター画像センサの空間内の位置を示す位置データを含む。
【0030】
身体装着式カメラ(BWC:body worn camera)、オンダッシュ搭載式カメラ(On-Dash Mounted Camera)等のような可動カメラの場合、有利には、カメラ(したがって、ローリングシャッター画像センサ)の位置は、EISを実施するときに考慮される。位置は、カメラのx値、y値、およびz値のうちの少なくとも1つによって示すことができる。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供され、非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体上に記憶された命令を有し、命令は、処理能力を有するデバイス上で実行されると、第1の態様による方法を実施するためのものである。
【0032】
第2の態様は、概して、第1の態様と同じ特徴および利点を有することができる。
【0033】
本発明の第3の態様によれば、シーンを描写する高ダイナミックレンジ、HDR、画像の電子画像安定化、EISを実施するように構成されるデバイスが提供され、デバイスは、第1の回路を備え、第1の回路は、
シーンを描写する第1の画像および第2の画像を受信するように構成される画像受信機能であって、第1および第2の画像は複数のピクセル領域を含むローリングシャッター画像センサによって取り込まれ、ローリングシャッター画像センサは、或る画像の取り込み中に、1つのピクセル領域からピクセルデータを1回読み出し、第1および第2の画像は異なる露出時間で取り込まれる、画像受信機能、
第1および第2の運動データを受信するように構成される運動データ受信機能であって、第1および第2の運動データのそれぞれは、第1および第2の画像を取り込むときに、ローリングシャッター画像センサの複数の姿勢をそれぞれ示し、各姿勢は、ローリングシャッター画像センサの或るピクセル領域に対応し、ピクセル領域のピクセルデータの読み出し中に決定されたローリングシャッター画像センサの配向および/または位置を示す、運動データ受信機能、
第1および第2の画像をマージすることによってHDR画像を作成するように構成されるHDR画像作成機能、
HDR画像内のピクセルブロックの中の、ローリングシャッター画像センサの或るピクセル領域に空間的に対応する特定のピクセルブロックのそれぞれについて、
特定のピクセルブロックが、第1の画像のピクセルデータからコピーされるか、第2の画像のピクセルデータからコピーされるか、第1の画像と第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであるかを判定すること
によって、HDR画像に対してEISを実施するように構成されるEIS実施機能
を実行するように構成され、
ここで、特定のピクセルブロックが第1の画像のピクセルデータからコピーされると判定すると、EISは、第1の運動データの対応するピクセル領域の姿勢を使用することによって特定のピクセルブロックに対して実施され、
特定のピクセルブロックが第2の画像のピクセルデータからコピーされると判定すると、EISは、第2の運動データの対応するピクセル領域の姿勢を使用することによって特定のピクセルブロックに対して実施される。
【0034】
第3の態様は、概して、第1の態様と同じ特徴および利点を有することができる。
【0035】
本発明の第4の態様によれば、カメラが提供され、カメラは、
第3の態様によるデバイスと、
複数のピクセル領域を含むローリングシャッター画像センサであって、或る画像の取り込み中に、1つのピクセル領域からピクセルデータを1回読み出し、第1および第2の画像を異なる露出時間で取り込むように構成される、ローリングシャッター画像センサと、
第2の回路とを備え、第2の回路は、
第1および第2の画像をデバイスに送信するように構成される画像送信機能
を実行するように構成される。
【0036】
幾つかの実施形態によれば、カメラは、第1および第2の運動データを決定するように構成される運動センサ回路をさらに備え、第1および第2の運動データのそれぞれは、第1および第2の画像を取り込むときに、ローリングシャッター画像センサの複数の姿勢をそれぞれ示し、運動センサ回路は、ローリングシャッター画像センサの複数のピクセル領域の或るピクセル領域のピクセルデータの読み出し中にローリングシャッター画像センサの配向および/または位置を決定し、姿勢をそれぞれの運動データ内に記憶するように構成され、
第2の回路は、
上記第1および第2の運動データをデバイスに送信するように構成される運動データ送信関数
を実行するように構成される。
【0037】
幾つかの実施形態によれば、運動センサ回路は、ローリングシャッター画像センサの配向を決定するジャイロスコープを備える。
【0038】
幾つかの実施形態によれば、運動センサ回路は、ローリングシャッター画像センサの空間内の位置を決定する加速度計を備える。
【0039】
幾つかの実施形態によれば、ローリングシャッター画像センサは、第1の画像を取り込むための第1のローリングシャッター画像センサおよび第2の画像を取り込むための第2のローリングシャッター画像センサを備える。
【0040】
幾つかの実施形態によれば、ローリングシャッター画像センサは単一ローリングシャッター画像センサを備え、上記単一ローリングシャッター画像センサは、第1の画像全体を最初に取り込み、その後、第2の画像全体を取り込む。
【0041】
幾つかの実施形態によれば、ローリングシャッター画像センサは単一ローリングシャッター画像センサを備え、上記単一ローリングシャッター画像センサは、複数のピクセル領域のうちの第2の、異なるピクセル領域から、画像データを読み出し続ける前に、複数のピクセル領域のうちの第1のピクセル領域から、第1と第2の両方の画像について画像データを読み出す。
【0042】
第4の態様は、概して、第1の態様と同じ特徴および利点を有することができる。
【0043】
本発明の上記のならびにさらなる目的、特徴、および利点は、添付図面を参照して、本発明の実施形態の例証的かつ非制限的な以下の詳細な説明を通してよりよく理解されることになり、図面では、同じ参照符号が、同様の要素のために使用されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】或る実施形態によるHDR画像のEISを実施するために使用されるデータを概略的に示す図である。
【
図2】別の実施形態によるHDR画像のEISを実施するために使用されるデータを概略的に示す図である。
【
図3】HDR画像のEISを実施するための方法のフローチャートである。
【
図4】HDR画像のEISを実施するための回路を備えるカメラを概略的に示す図である。
【
図5】第1の画像からコピーされる周囲の画像データの比が、ピクセルのブロックについての重みを決定するために使用される実施形態における運動データについての重みを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
ローリングシャッター画像センサを有するカメラにおいて、ピクセルのライン(行または列)がわずかに異なる時間で読み取られるため、読み出しの一部は、振動(例えば、ジャイロスコープまたは加速度計が感じる)によって影響を受け、一部は影響を受けない場合がある。さらに、振動の大きさは、読み出しの間に異なる場合がある。同様に、ローリングシャッター画像は、画像の取り込み中に振動以外の理由で運動する場合がある。
【0046】
したがって、ローリングシャッター画像センサの姿勢は、画像を取り込む間に変化し、ピクセルのラインの読み出しの間で異なる場合がある。
【0047】
さらに、HDR画像を作成するために、異なる露出時間による少なくとも2つの画像が必要とされる。これらの画像は、異なるタイムスパン、すなわち、引き続くタイムスパンまたはオーバーラップするタイムスパンの間に取り込まれることになる。いずれにしても、第1の画像(例えば、短い露出時間によって取り込まれる画像)内のピクセルのラインは、第2の画像(例えば、より長い露出時間によって取り込まれる画像)内の対応するピクセルのラインと異なる振動によって影響を受ける場合がある。同様に、ローリングシャッター画像は、第1および第2の画像の取り込み中の振動以外の理由で異なるように運動する場合がある。
【0048】
したがって、ローリングシャッター画像センサの姿勢は、複数の画像を取り込む間に変化し、第1および第2の画像内のピクセルのラインの読み出しの間で異なる場合がある。
【0049】
これは、HDR画像のEISが実施されるとき、特に、少なくとも第1および第2の画像をマージすることによってHDR画像が作成された後に、EISが実施されるときに問題を引き起こす場合がある。本開示は、そのような場合に、改善されたEISを容易にすることができる。
【0050】
本明細書で述べるように、HDR画像は、任意の知られているアルゴリズムを使用して作成することができる。非常に暗いエリアと非常に明るいエリアの両方を含むシーンは、カメラにとって難題である。セキュリティにおけるそのようなワイドダイナミックレンジ(WDR)シーンの典型的な例は、出入口、駐車場、およびトンネルを含み、外部からの光とより暗い内部との間に大きいコントラストが存在する。直接の太陽光および暗い影を有する室外シーンもまた問題となる。カメラが全シーンコンテンツをよりよく再現することができるために、幾つかの方法が開発されてきた。どの単一の技法も、全てのシーンおよび状況にとって最適でなく、全ての方法が、アーチファクトと呼ぶ種々の視覚的異常の導入を含む、その欠点を有する。多重露出法と単一露出法が共に存在する。局所コントラスト強調法をさらに使用することができる。本開示において、HDR画像は多重露出法を使用して作成される。
【0051】
以下の詳細な例において、HDR画像は、異なる露出時間で取り込まれる第1および第2の画像から作成される。上記で説明したように、HDR画像を作成するために、さらなる画像(さらに他の露出時間を有する)を使用することもできる。簡単にするために、本開示は、2画像の場合に的を絞り、第1の画像は、第2の画像と比較して長い露出時間で取り込まれる。しかしながら、本開示は、X(X>2)画像の場合に適応することができる。
【0052】
概して、HDR画像が、短時間露出(short exposure image)画像に由来する少ないデータ量と共に、長時間露出(long exposure image)画像からほとんど作成される場合が好ましい。HDR画像において、長時間露出画像からのデータは、概してノイズが少ない。長時間露出画像は0.01秒の露出時間によって取り込まれ、短時間露出画像は0.001秒の露出時間によって取り込まれるとします。これは、長時間露出画像のピクセルが、短時間露出画像のピクセルより約10倍明るいことを意味する。その結果、短時間露出画像からのピクセルデータは、HDR画像に付加されるときに10倍、増倍(強調、乗算等)される必要がある。これは、次に、短時間露出画像からのデータにおけるノイズの増加にもつながる。
【0053】
有利には、長時間露出画像の露出時間は、そのため、取り込まれるシーンの輝度に基づいて適応される。短時間露出画像の露出時間は、取り込まれるシーンの輝度に基づいて適応されるかまたは長い露出時間の予め規定された割合であるとすることができる。他の実施形態において、短時間および長時間露出画像の露出時間は予め規定される。
【0054】
シーンを描写する高ダイナミックレンジ、HDR、画像のEISを実施する方法は、
図1および
図3と共にここで述べられる。
【0055】
図1の上側部分は、直接の太陽光および暗い影を有する室外シーンを概略的に示す、シーンの3つの画像100、110、120を示す。最も左の第1の画像100は、中央の第2の画像110と比較して、より長い露出範囲で取り込まれた画像を示す。第2の画像において概略的に示すように、エリア114は、過小露出され、一方、エリア116は、第1の画像100において過剰露出されるため、第2の画像110においてのみ取り込まれる。第1の画像100および第2の画像110は、高ダイナミックレンジ、HDR、画像の電子画像安定化、EISを実施するように構成されるデバイス(
図4と共に以下でさらに述べる)によって受信されるS302。
【0056】
最も右の画像120は、第1の画像100および第2の画像110から(マージャーによって)作成されたS306、HDR画像を示す。HDR画像120において、エリア116は第2の画像110からコピーされ、残りのエリア102、104は第1の画像100からコピーされる。
【0057】
第1の画像100および第2の画像110は、以下でさらに規定されるように、ローリングシャッター画像センサによって取り込まれる。
【0058】
図1の下側部分は、第1の運動データ130および第2の運動データ140を示し、それぞれは、第1の画像100および第2の画像110を取り込むときにローリングシャッター画像センサの複数の姿勢を示す。この簡略化した例において、ローリングシャッター画像は、運動データが2つの姿勢を含むように2つのピクセル領域を含み、1つの姿勢は画像の上側部分のためのものであり、1つの姿勢は画像の下側部分のためのものである。その結果、運動データ130は2つの姿勢132、134を示す。姿勢132はローリングシャッター画像センサの上側ピクセル領域に対応し、第1の画像100について上側ピクセル領域のピクセルデータの読み出し中に決定されるローリングシャッター画像センサの配向および/または位置を示す。相応して、姿勢134は、第1の画像100の下側ピクセル領域についてピクセルデータを読み出すときのローリングシャッター画像センサの配向および/または位置を示す。同じことが、第2の運動データ140に当てはまり、第2の運動データ140は、第2の画像110の上側および下側ピクセル領域に対応する2つの姿勢142、144を示す。
【0059】
第1の運動データ130および第2の運動データ140の姿勢は、第1の/第2の画像100、110を取り込むときに、対応するピクセル領域からピクセルデータを読み出すときのローリングシャッター画像センサのヨー、ピッチ、および任意選択でロールを示す角度配向データを含むことができる。代替的にまたは付加的に、第1の運動データ130および第2の運動データ140の姿勢は、第1の/第2の画像100、110を取り込むときに、対応するピクセル領域からピクセルデータを読み出すときのローリングシャッター画像センサの空間内の位置を示す位置データを含むことができる。位置は、ローリングシャッター画像センサのx値、y値、およびz値の少なくとも1つによって示すことができる。
【0060】
第1の運動データ130および第2の運動データ140もまた、受信されS304、ここで述べるようにHDR画像120に対してEISを実施するために使用される。
【0061】
EISを実施するために、HDR画像120内の各ピクセルのブロックについて、第1の運動データ130および/または第2の運動データ140からのどの姿勢が使用されるべきかが決定される。
【0062】
本明細書で述べるピクセルのブロックはHDR画像のマクロブロックに対応することができる。EISを実施するためにHDR画像120のピクセルをピクセルのブロックに分割する任意の他の適切な方法を使用することができる。典型的には、ピクセルのブロックは、8×8、16×16、32×32、または64×64ピクセルを有する。ピクセルのブロックのサイズは、HDR画像120全体にわたって同じであるかまたはHDR画像120にわたって変動するとすることができる。
【0063】
説明を容易にするために、
図1の例では、HDR画像120は、4つのピクセルのブロックに分割され、それぞれは、ローリングシャター画像センサの或るピクセル領域に空間的に対応する(すなわち、2つのブロックは上側領域用であり、2つのブロックは下側領域用である)。これらのピクセルのブロックは、表150によって
図1に示され、各ピクセルのブロックのために使用される姿勢は、第1の運動データ130及び第2の運動データ140から取得される参照番号を使用してマーク付けされる。
【0064】
各ピクセルのブロックについて、ピクセルのブロックが、第1の画像のピクセルデータからコピーされるか、第2の画像のピクセルデータからコピーされるか、第1の画像と第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであるかが判定されるS310。
図1の例において、HDR画像120は、ブレンドされる領域を含まない(この実施形態は、以下の
図2と共に述べられる)。
【0065】
HDR画像120内の左上のピクセルのブロックについて、ピクセルのブロックが第2の画像110のピクセルデータからコピーされると判定される。その結果、そのピクセルのブロックについて、第2の運動データ140の対応するピクセル領域の姿勢142を使用することによってEISが実施されるS312。
【0066】
HDR画像120内の残りのピクセルのブロックについて、これらのピクセルのブロックが第1の画像100のピクセルデータからコピーされると判定される。その結果、これらのピクセルのブロックについて、第1の運動データ140の対応するピクセル領域の姿勢132、134を使用することによってEISが実施されるS312。
【0067】
図2は、
図1と同じでかつ同じ運動データ130、140を有する2つの画像100、110を示す。しかしながら、結果として得られるHDR画像120は、ブレンド済みエリア202を含み、第1の画像100内のエリア102からの画像データおよび第2の画像110内のエリア112からの画像データがブレンドされて、HDR画像120内のブレンド済みエリア202の画像データを形成する。ブレンディングがどのように実施されるかは、使用されるHDRアルゴリズムに依存する。典型的には、長時間露出画像からの画像データの或るパーセンテージが、短時間露出画像からの画像データの或るパーセンテージと混合され、使用されるパーセンテージは、より長い露出による画像のピクセルのブロックが過剰露出にどれだけ近いか、および/または、より短い露出による画像の対応するピクセルのブロックが過少露出にどれだけ近いかに依存する。
【0068】
この実施形態において、特定のピクセルのブロックが、第1の画像と第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドであると判定すると、使用される姿勢152は、第1の運動データ130の対応するピクセル領域の姿勢134および第2の運動データ140の対応するピクセル領域の姿勢144を重み付けすることによって計算することができるS316。重み付けは複数の方法で実施することができる。1つの実施形態において、重み付けは、ブレンドされる領域内の画像データのうちのどれだけが第1の画像100に由来するかに依存する(または、その逆も同様である)。この実施形態において、ブレンドされるピクセルのブロックにおける第1の画像100からのピクセルデータの比を示す第1のブレンディング値が受信される。例えば、値は、ピクセルデータの60%が第1の画像100からのものであることを示す。その結果、この実施形態において、ブレンド済み姿勢152は、X*134+(1-X)*144として計算されることになる。ここで、X=0.6である。ブレンド済み姿勢152は、その後、HDR画像120内のブレンド済みピクセルエリア202に対してEISを実施するために使用されるS318。
【0069】
別の実施形態は
図5に示される。
図5において、HDR画像は表500で示される。表500内の各セルはHDR画像内のピクセルのブロックを示す。セル値T
0は、このピクセルのブロックが第1の画像からコピーされることを示す。セル値T
1は、このピクセルのブロックが第2の画像からコピーされることを示す。
図5に見ることができるように、2つのピクセルのブロックは第2の画像からコピーされ、9つのピクセルのブロックは第1の画像からコピーされる。残りのブロックは、第1の画像と第2の画像の両方からのピクセルデータのブレンドを含む。この実施形態において、ブレンドされるピクセルのブロックのそれぞれについて、第1の画像のピクセルデータからコピーされる特定のピクセルのブロックに隣接するピクセルのブロックの比を示す第2のブレンディング値は、第1の運動データの対応するピクセル領域の姿勢および第2の運動データの対応するピクセル領域の姿勢がどのように重み付けられるかを決定するために使用される。
図5の概略的な例において、第2列の中央の2つのピクセルのブロックについて、第2のブレンディング値は、セル値T0.3で示す70%になるように計算される。その結果、この実施形態において、そのピクセルのブロックについてのブレンド済み姿勢は、X
*(第1の運動データの値)+(1-X)
*(第2の運動データの値)として計算されることになる。ここで、X=0.7である。ブレンド済み姿勢は、その後、HDR画像内のブレンド済みピクセルエリアに対してEISを実施するために使用されるS318。
【0070】
他のブレンドされるピクセルのブロックについて、他のブレンディング値は、セル値T0.5およびT0.7によって計算され、示される。
【0071】
図4は、シーンを描写する高ダイナミックレンジ、HDR、画像の電子画像安定化、EISを実施するように構成されるデバイス401を例として示す。この例において、デバイス401は、1つまたは複数の画像センサ402および1つまたは複数の運動センサ404を同様に備えるカメラ400内に含まれる。他の実施形態において、デバイス401は、カメラ400と別個であり、HDR画像のEISを実施するための必要とされるデータを(有線または無線通信を通して)受信する。
【0072】
デバイス401は、
図1~3および
図5と共に上記で例示した方法を実行するように構成される回路を備える。
【0073】
回路は、1つまたは複数のプロセッサによってまたは特定用途向け集積回路として具現化することができる。上記で開示した方法を、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはその組み合わせとして実装することができることが留意されるべきである。
【0074】
例えば、上記で述べた方法は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体上に記憶されたソフトウェア、すなわち、非一時的コンピュータ可読記憶媒体上に記憶された命令で実施することができ、命令は、処理能力を有するデバイス上で(例えば、デバイス401の回路によって)実行されると、上記による方法を実施するためのものである。
【0075】
ここで、
図4を参照すると、デバイス401の回路は、第1の画像100および第2の画像110を受信するように構成される画像受信
機能を実行するように構成することができる。回路は、第1および第2の画像100、110をマージすることによってHDR画像を作成するように構成されるHDR画像作成
機能を実行するようにさらに構成することができる。
図4において、画像受信
機能およびHDR画像作成
機能は、HDR作成ユニット416によって具現化される。本開示で参照される
機能ユニットの間でのタスクの分割が、必ずしも物理的ユニットへの分割に対応するするわけではなく;逆に、1つの物理的コンポーネントが複数の機能を有することができ、1つのタスクが、幾つかの物理的コンポーネントによって協調して実施することができることが留意されるべきである。
【0076】
デバイス401の回路は、第1の運動データ130および第2の運動データ140を受信するように構成される運動データ受信
機能を実行するようにさらに構成することができる。
図4において、そのような運動データ受信
機能は、少なくともEIS実施ユニット420で実装される。EIS実施ユニット420は、HDR作成ユニット416から受信されるHDR画像120に対してEISを実施するように構成されるEIS実施
機能をさらに実装する。EIS実施
機能は、上述したように、HDR画像120に対してEISを実施するように構成される。
【0077】
EIS HDR画像422は、その後、デバイス401から出力することができる、例えば、カメラ400から遠隔のデバイスに転送されるかまたはカメラのメモリ424(または、カメラの外部のメモリ)に記憶することができる。
【0078】
幾つかの実施形態において、例えば、
図2に述べるように、同様に、HDR画像120内の第1および第2の画像100、110からのブレンド済みの画像データが可能である。そのため、デバイス401は、ブレンド済み画像データを含むHDR画像120内のピクセルのブロックのEISのために使用されるブレンド済み姿勢を計算するための機能を含むことができる。
図4において、そのような機能は、ブレンド済み姿勢計算ユニット418で実装される。ブレンド済み姿勢計算ユニット418は、どのピクセルのブロックがブレンド済み画像データを含むか、および、そのようなブレンド済みピクセルデータが、第1および第2の画像100、110からどのようにブレンドされるかという情報408をHDR作成ユニット416から受信する。ブレンド済み姿勢計算ユニット418は、第1および第2の運動データ130、140をさらに受信し、例えば、上述したように、ブレンド済み姿勢152を計算する。ブレンド済み姿勢152は、相応して利用されるEIS実施ユニット420に送信される。
【0079】
カメラ400は、複数のピクセル領域を備える少なくとも1つのローリングシャッター画像センサ402をさらに備える。各ローリングシャッター画像センサ402は、或る画像の取り込み中に1つのピクセル領域からピクセルデータを1回読み出す。少なくとも1つのローリングシャッター画像センサ402は、異なる露出時間で第1の画像100および第2の画像110を取り込むように構成される。
【0080】
1つの実施形態において、第1のローリングシャッター画像センサ402は第1の画像100を取り込むために使用され、第2のローリングシャッター画像センサ402は第2の画像110を取り込むために使用される。この場合、第1および第2のセンサ402は、それぞれの画像100、110を、互いに引き続いて、または、オーバーラップする時間間隔中に取り込むことができる。HDR画像のために画像100、110を取り込むためのより柔軟性の或る解決策を、こうして達成することができる。
【0081】
別の実施形態において、ローリングシャッター画像センサ402は単一ローリングシャッター画像センサ402を備え、上記単一ローリングシャッター画像センサは、第1の画像100全体を最初に取り込み、その後、第2の画像110全体を取り込む。その結果、HDR画像のために画像100、110を取り込むための複雑さの低い解決策を、こうして達成することができる。さらに、カメラ400のコストを下げることができる。
【0082】
さらの別の実施形態において、DOL-HDR技術が使用される。この実施形態において、ローリングシャッター画像センサ402は単一ローリングシャッター画像センサ402を備え、上記単一ローリングシャッター画像センサ402は、複数のピクセル領域のうちの第2の、異なるピクセル領域から、画像データを読み出し続ける前に、複数のピクセル領域のうちの第1のピクセル領域から、第1の画像100と第2の画像110の両方について画像データを読み出す。この実施形態は、複数の画像セット出力を使用する従来のWDR/HDR技術と比較して、低照度環境における特性の改善等の利点を提供することができる。
【0083】
取り込まれる画像100、110は、上記第1及び第2の画像をデバイス401に送信するように構成される画像送信
機能を実行するように構成される第2の回路を使用して、デバイス401に送信される。第1および第2の回路は、別個の回路または同じ回路である、それらは、例えば、1つまたは複数のプロセッサあるいは同様なものによって具現化することができる。
図4の実施形態において、第1及び第2の画像100、110は、デバイス401のHDR作成ユニット416によって受信される。
【0084】
第1及び第2の画像100、110の取り込み中に少なくとも1つのローリングシャッター画像センサ402の姿勢を測定するために、カメラ400は、第1の運動データ130および第2の運動データ140を決定するように構成される少なくとも1つの運動センサ404を備えることができる。上述したように、各運動データ130、140は、第1及び第2の画像を取り込むときのローリングシャッター画像センサ402の複数の姿勢をそれぞれ示し、運動センサ404は、ローリングシャッター画像センサの複数のピクセル領域の或るピクセル領域のピクセルデータの読み出し中にローリングシャッター画像センサの配向および/または位置を決定するように構成される。決定された姿勢はそれぞれの運動データ130、140内に記憶される。
【0085】
少なくとも1つの運動センサ404は、ローリングシャッター画像センサの空間内の位置を決定する加速度計を備えることができる。加速度計は、加速度計から重力加速度についてのベクトルを推定し、このベクトルを、加速度計がその「通常配向(normal orientation)」に(例えば、予め規定された配向に)あった場合にベクトルがなるであろうものと比較することによって、ローリングシャッター画像センサの配向を決定するために使用することもできる。代替的にまたは付加的に、少なくとも1つの運動センサ404は、ローリングシャッター画像センサの配向を決定するジャイロスコープを備える。ローリングシャッター画像センサ402の姿勢を測定するための他の適切な運動センサを使用することができる。
【0086】
運動データ130、140を決定するためにセンサを使用することに対する代替法として、画像解析アルゴリズムが使用されて、第1および第2の画像100、110の取り込み中にローリングシャッター画像センサの運動を決定することができる。
【0087】
そのため、各姿勢は、ローリングシャッター画像センサ402の位置および/または回転を示すことができ、位置および/または回転は、空間内の1自由度~6自由度で示すことができる。
【0088】
運動データ130、140は、上記第1および第2の運動データをデバイスに送信するように構成される運動データ送信
機能を実行するように構成される第2の回路を使用して、デバイスに送信される。
図4の実施形態において、第1および第2の運動データ130、140は、デバイス401のEIS実施ユニット420によって受信される。任意選択で、第1および第2の運動データ130、140はまた、デバイス401のブレンド済み姿勢計算ユニット418によって受信される。
【0089】
図4に示すカメラ400およびデバイス401のアーキテクチャが、単に例としてのものであること、および、本明細書で述べるHDR画像のEISを実施する方法を実施するように構成されるデバイスについての任意の適切なアーキテクチャを使用することができることが留意されるべきである。