(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20221102BHJP
H01Q 9/28 20060101ALI20221102BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20221102BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20221102BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q9/28
H01Q1/22 C
B60J1/00 B
C03C27/12 M
(21)【出願番号】P 2021121082
(22)【出願日】2021-07-21
(62)【分割の表示】P 2017047943の分割
【原出願日】2017-03-13
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】森下 浩成
(72)【発明者】
【氏名】大島 英明
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-056688(JP,A)
【文献】特開2008-135944(JP,A)
【文献】特開2010-041256(JP,A)
【文献】特開2010-093781(JP,A)
【文献】特開昭58-070645(JP,A)
【文献】実開昭53-094024(JP,U)
【文献】国際公開第2014/142312(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 9/28
H01Q 1/22
B60J 1/00
C03C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板に配置され
、デジタルテレビ放送波を受信するアンテナであって、
第1給電部と、
第2給電部と、
前記第1給電部に接続され、少なくとも1つのアンテナ導体を有する第1アンテナエレメントと、
前記第2給電部に接続され、少なくとも1つのアンテナ導体を有する第2アンテナエレメントと、
前記第2給電部
に接続され、複数のループ状のアンテナ導体を有する第3アンテナエレメントと、
を備
え、
前記第3アンテナエレメントは、
前記第2給電部から下方に延びる連結部と、
前記連結部の下端に連結される垂直部位と、
前記垂直部位を共通にするように接し、水平方向に互いに反対側に延びるループ状の第1アンテナ導体及び第2アンテナ導体と、
を有し、
前記第1アンテナ導体及び前記第2アンテナ導体は、前記垂直部位を挟んで水平方向に線対称に配置されている、アンテナ。
【請求項2】
前記連結部は、下方に延びる部位を有し、
前記垂直
部位は、前記連結部の下方に延びる部位から連続して下方に延びている、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記第3アンテナエレメントの前記連結部は、前記第2アンテナエレメントよりも下方において前記第2給電部に連結されている、請求項1または2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記第3アンテナエレメントの連結部は、
前記第2給電部から前記第2アンテナエレメントと同じ方向に水平に延びる第1部位と、
前記第1部位から下方に延びる第2部位と、
を有している、請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記第1給電部及び前記第2給電部のうち、前記第2給電部が接地されている、請求項1
から4のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項6】
前記第1アンテナエレメントの前記複数のアンテナ導体が、水平方向に延びるように平行に配置されている、請求項1
から5のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項7】
前記各第3アンテナエレメントの前記各アンテナ導体は、矩形状に形成されている、請求項1から
6のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項8】
前記アンテナにおいて受信可能な放送波の波長がλ
1~λ
2、前記ガラス板の誘電率がα、L=λ
2/4×αであるとき、
前記第3アンテナエレメントの水平方向の長さは、L±30mmである、請求項1から
7のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項9】
前記第3アンテナエレメント
の前記第1アンテナ導体及び前記第2アンテナ導体のいずれかに接続される第4アンテナエレメントをさらに備え、
前記第4アンテナエレメントは、
前記いずれかのアンテナ導体における水平方向に延びる部位を水平方向に延長するように延びている、請求項1から
8のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項10】
前記第4アンテナエレメントの水平方向の長さは、30~50mmである、請求項
9に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記各給電部及び前記各アンテナエレメントと接続されておらず、水平方向に延びる第5アンテナエレメントをさらに備えている、請求項1から
10のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項12】
前記第5アンテナエレメントの長さは、100~150mmである、請求項
11に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記第5アンテナエレメントは、前記第2アンテナエレメントの先端部を基準に、上方に30mm以内、下方に30mm以内の範囲に配置されている、請求項
11に記載のアンテナ。
【請求項14】
200MHz以上の周波数域の放送波を受信するように構成されている、請求項1から
13のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項15】
前記第1アンテナエレメント及び第2アンテナエレメントは、水平方向に延びており、
デジタルテレビの放送波を受信するように構成されている、請求項
14に記載のアンテナ。
【請求項16】
前記第3アンテナエレメントの水平方向の長さは、70~130mmである、請求項
15に記載のアンテナ。
【請求項17】
請求項1から
16のいずれかに記載のアンテナと、
前記アンテナに接続され、当該アンテナによって受信された信号を増幅して出力し、50~100Ωの入力インピーダンスが設定されたアンプと、
を備えているアンテナモジュール。
【請求項18】
ガラス板と、
前記ガラス板上に配置される、請求項1から
16のいずれかに記載の、少なくとも1つのアンテナと、
を有する、窓ガラス。
【請求項19】
前記第1給電部と第2給電部とは水平方向に並ぶように配置されており、
前記第1アンテナエレメントは、前記第1給電部を挟んで、前記第2給電部とは反対方向に延びており、
前記第2アンテナエレメントは、前記第2給電部を挟んで、前記第1給電部とは反対方向に延びており、
ウインドシールドを構成する、請求項
18に記載の窓ガラス。
【請求項20】
前記ガラス板は、水平方向に長辺を有する矩形状に形成され、
前記第1給電部と第2給電部とを結ぶ仮想線と、前記ガラス板の長辺とが略平行である、請求項
19に記載の窓ガラス。
【請求項21】
前記アンテナは、前記ガラス板の最上部から下方に80mm以内の領域に配置されている、請求項
19または20に記載の窓ガラス。
【請求項22】
2つの前記アンテナが、前記ガラス板の水平方向の両端部に配置されている、請求項
18から21のいずれかに記載の窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ、アンテナモジュール、及び窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の窓ガラスに配置されるアンテナの受信性能を向上するため、種々の方法が提案されている。例えば、受信する放送波の周波数に適合するようなアンプを準備することが考えられる。その際、受信周波数域の1周波数毎に適合したアンプを準備することが望ましいが、このようなアンプの準備にはコストを要する。そこで、例えば、特許文献1のアンテナでは、インピーダンス調整エレメントとして、水平方向に延びる導体を設け、受信性能を向上させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示のアンテナでは、インピーダンスを調整するエレメントが水平方向に延びる導体のみであるため、受信性能の向上には十分に寄与していなかった。特に、デジタルテレビの放送波のように周波数帯域が広いメディアでは、さらなる受信性能の向上が要望される。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、受信性能の向上が可能なアンテナ、アンテナモジュール、及び窓ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.ガラス板に配置されるアンテナであって、第1給電部と、第2給電部と、前記第1給電部に接続され、少なくとも1つのアンテナ導体を有する第1アンテナエレメントと、前記第2給電部に接続され、少なくとも1つのアンテナ導体を有する第2アンテナエレメントと、前記第2給電部または前記第2アンテナエレメントに接続され、複数のループ状のアンテナ導体を有する第3アンテナエレメントと、を備えているアンテナ。
【0006】
項2.前記第1給電部及び前記第2給電部のうち、前記第2給電部が接地されている、項1に記載のアンテナ。
【0007】
項3.前記第1アンテナエレメントの前記複数のアンテナ導体が、水平方向に略平行に配置されている、項1または2に記載のアンテナ。
【0008】
項4.前記第3アンテナエレメントは、前記第2アンテナエレメントに接続されている、項1から3のいずれかに記載のアンテナ。
【0009】
項5.前記各第3アンテナエレメントの前記各アンテナ導体は、矩形状に形成されている、項1から4のいずれかに記載のアンテナ。
【0010】
項6.前記アンテナにおいて受信可能な放送波の波長がλ1~λ2、前記ガラス板の誘電率がα、L=λ2/4×αであるとき、前記第3アンテナエレメントの水平方向の長さは、L±30mmである、項1から5のいずれかに記載のアンテナ。
【0011】
項7.前記第3アンテナエレメントの1つの前記アンテナ導体に接続される第4アンテナエレメントをさらに備え、前記第3アンテナエレメントにおける複数のアンテナ導体の少なくとも1つは、水平方向に延びる少なくとも1つの部位を有しており、前記第4アンテナエレメントは、前記部位を水平方向に延長するように延びている、項1から6のいずれかに記載のアンテナ。
【0012】
項8.前記第4アンテナエレメントの水平方向の長さは、30~50mmである、項7に記載のアンテナ。
【0013】
項9.前記各給電部及び前記各アンテナエレメントと接続されておらず、水平方向に延びる第5アンテナエレメントをさらに備えている、項1から8のいずれかに記載のアンテナ。
【0014】
項10.前記第5アンテナエレメントの長さは、100~150mmである、項9に記載のアンテナ。
【0015】
項11.前記第5アンテナエレメントは、前記第2アンテナエレメントの先端部を基準に、上方に10mm以内、下方に30mm以内の範囲に配置されている、項9に記載のアンテナ。
【0016】
項12.200MHz以上の周波数域の放送波を受信するように構成されている、項1から11のいずれかに記載のアンテナ。
【0017】
項13.前記第1アンテナエレメント及び第2アンテナエレメントは、水平方向に延びており、デジタルテレビの放送波を受信するように構成されている、項12に記載のアンテナ。
【0018】
項14.前記第3アンテナエレメントの水平方向の長さは、70~130mmである、項13に記載のアンテナ。
【0019】
項15.項1から14のいずれかに記載のアンテナと、前記アンテナに接続され、当該アンテナによって受信された信号を増幅して出力し、50~100Ωの入力インピーダンスが設定されたアンプと、を備えているアンテナモジュール。
【0020】
項16.ガラス板と、前記ガラス板上に配置される、項1から14のいずれかに記載の、少なくとも1つのアンテナと、を有する、窓ガラス。
【0021】
項17.前記第1給電部と第2給電部とは水平方向に並ぶように配置されており、前記第1アンテナエレメントは、前記第1給電部を挟んで、前記第2給電部とは反対方向に延びており、前記第2アンテナエレメントは、前記第2給電部を挟んで、前記第1給電部とは反対方向に延びており、ウインドシールドを構成する、項16に記載の窓ガラス。
【0022】
項18.前記ガラス板は、水平方向に長辺を有する矩形状に形成され、前記第1給電部と第2給電部とを結ぶ仮想線と、前記ガラス板の長辺とが略平行である、項17に記載の窓ガラス。
【0023】
項19.前記アンテナは、前記ガラス板の最上部から下方に80mm以内の領域に配置されている、項17または18に記載の窓ガラス。
【0024】
項20.2つの前記アンテナが、前記ガラス板の水平方向の両端部に配置されている、項17から19のいずれかに記載の窓ガラス。
【0025】
上記各発明における「水平方向」とは厳密な水平方向のみを指すのではなく、例えば、自動車やガラス板の傾きに応じて、多少の傾きは許容される。この点は、以下の記載においても同様である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る窓ガラスによれば、受信性能をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る車両用窓ガラスの一実施形態が実装された自動車のウインドシールドの正面図である。
【
図2】
図1に係るウインドシールドを構成する合わせガラスの断面図である。
【
図4】第3アンテナエレメントの他の例を示す図である。
【
図5】フィルムアンテナの一例を示す断面図である。
【
図11】実施例1、2及び比較例1~3の受信性能を示すグラフである。
【
図13】実施例1,3の受信性能を示すグラフである。
【
図14】実施例3、4の受信性能を示すグラフである。
【
図15】実施例3,5~11の受信性能を示すグラフである。
【
図16】実施例3,12,13の受信性能を示すグラフである。
【
図17】実施例3,14,15の受信性能を示すグラフである。
【
図18】実施例3,16,17の受信性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る窓ガラスを自動車のウインドシールドに適用した場合の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る自動車のウインドシールドの正面図である。なお、以下では、説明の便宜のため、
図1の向きを基準に、
図1の上下方向を、上下方向または垂直方向、
図1の左右方向を、左右方向または水平方向と称することがあるが、この向きは、本発明を限定するものではない。
【0029】
<1.ウインドシールド>
図1に示すように、本実施形態に係る車両用窓ガラスは、合わせガラス1と、この合わせガラス1の車内側の面に積層される遮蔽層2と、同じく車内側の面に実装されるデジタルテレビアンテナ用のアンテナ3と、を備えている。以下、各部材について、順に説明する。
【0030】
<1-1.合わせガラスの概要>
図2は合わせガラスの断面図である。同図に示すように、この合わせガラス1は、外側ガラス板11及び内側ガラス板12を備え、これらガラス板11、12の間に樹脂製の中間膜13が配置されている。
<1-1-1.ガラス板>
各ガラス板11,12としては、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、これらのガラス板11、12は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板11により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板12により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの組成の一例を示す。
【0031】
(クリアガラス)
SiO2:70~73質量%
Al2O3:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
R2O:13~15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.08~0.14質量%
【0032】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3)の比率を0.4~1.3質量%とし、CeO2の比率を0~2質量%とし、TiO2の比率を0~0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl2O3)をT-Fe2O3、CeO2およびTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0033】
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO2:65~80質量%
Al2O3:0~5質量%
CaO:5~15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10~18質量%
K2O:0~5質量%
MgO+CaO:5~15質量%
Na2O+K2O:10~20質量%
SO3:0.05~0.3質量%
B2O3:0~5質量%
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.02~0.03質量%
【0034】
本実施形態に係る合わせガラスの厚みは特には限定されないが、軽量化の観点からは、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みの合計を、2.4~4.6mmとすることが好ましく、2.6~3.4mmとすることがさらに好ましく、2.7~3.2mmとすることが特に好ましい。このように、軽量化のためには、外側ガラス板11と内側ガラス板12との合計の厚みを小さくすることが必要であるので、各ガラス板のそれぞれの厚みは、特には限定されないが、例えば、以下のように、外側ガラス板11と内側ガラス板12の厚みを決定することができる。
【0035】
外側ガラス板11は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、例えば、この合わせガラスを自動車のウインドシールドとして用いる場合には、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。他方、厚みが大きいほど重量が増し好ましくない。この観点から、外側ガラス板1の厚みは1.0~3.0mmとすることが好ましく、1.6~2.3mmとすることがさらに好ましい。何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0036】
内側ガラス板12の厚みは、外側ガラス板11と同等にすることができるが、例えば、合わせガラスの軽量化のため、外側ガラス板11よりも厚みを小さくすることができる。具体的には、ガラスの強度を考慮すると、0.6~2.0mmであることが好ましく、0.8~1.8mmであることがさらに好ましく、0.8~1.6mmであることが特に好ましい。更には、0.8~1.3mmであることが好ましい。内側ガラス板2についても、何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る外側ガラス板11及び内側ガラス板12の形状は、湾曲形状であってもよい。但し、各ガラス板11、12が湾曲形状である場合には、ダブリ量が大きくなると遮音性能が低下するとされている。ダブリ量とは、ガラス板の曲げを示す量であり、ガラス板の上辺の中央と下辺の中央とを結ぶ直線Lを設定したとき、この直線Lとガラス板との距離のうち最も大きいものをダブリ量Dと定義する。
【0038】
また、湾曲形状のガラス板は、ダブリ量が30~38mmの範囲では、音響透過損失(STL:Sound Transmission Loss)に大きな差はないが、平面形状のガラス板と比べると、4000Hz以下の周波数帯域で音響透過損失が低下していることが分かる。したがって、湾曲形状のガラス板を作製する場合、ダブリ量は小さい方が好ましい。具体的には、ダブリ量を30mm未満とすることが好ましく、25mm未満とすることがさらに好ましく、20mm未満とすることが特に好ましい。
【0039】
ここで、ガラス板が湾曲している場合の厚みの測定方法の一例について説明する。まず、測定位置については、ガラス板の左右方向の中央を上下方向に延びる中央線上の上下2箇所である。測定機器は、特には限定されないが、例えば、株式会社テクロック製のSM-112のようなシックネスゲージを用いることができる。測定時には、平らな面にガラス板の湾曲面が載るように配置し、上記シックネスゲージでガラス板の端部を挟持して測定する。
【0040】
<1-1-2.中間層>
続いて、中間膜13について説明する。中間膜13は、少なくとも一層で形成されており、一例として、
図2に示すように、軟質のコア層131を、これよりも硬質のアウター層132で挟持した3層で構成することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、コア層131と、外側ガラス板11側に配置される少なくとも1つのアウター層132とを有する複数層で形成されていればよい。例えば、コア層131と、外側ガラス板11側に配置される1つのアウター層132を含む2層の中間膜13、またはコア層131を中心に両側にそれぞれ2層以上の偶数のアウター層132を配置した中間膜13、あるいはコア層131を挟んで一方に奇数のアウター層132、他方の側に偶数のアウター層132を配置した中間膜13とすることもできる。なお、アウター層132を1つだけ設ける場合には、上記のように外側ガラス板11側に設けているが、これは、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能を向上するためである。また、アウター層132の数が多いと、遮音性能も高くなる。
【0041】
コア層131はアウター層132よりも軟質であるかぎり、その硬さは特には限定されないが、例えば、ヤング率を基準として材料を選択することができる。具体的には、周波数100Hz,温度20度において、1~20MPaであることが好ましく、1~18MPaであることがさらに好ましく、1~14MPaであることが特に好ましい。このような範囲にすると、概ね3500Hz以下の低周波数域で、音響透過損失が低下するのを防止することができる。
【0042】
一方、アウター層132のヤング率は、後述するように、高周波域における遮音性能の向上のために、大きいことが好ましく、周波数100Hz,温度20度において560MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、880MPa以上、または1300MPa以上とすることができる。一方、アウター層132のヤング率の上限は特には限定されないが、例えば、加工性の観点から設定することができる。例えば、1750MPa以上となると、加工性、特に切断が困難になることが経験的に知られている。また、外側ガラス板11側のアウター層のヤング率を、内側ガラス板12側のアウター層のヤング率よりも大きくすることが好ましい。これにより、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能が向上する。
【0043】
各層131,132を構成する材料は、特には限定されないが、少なくともヤング率が上記のような範囲とすることができる材料であることが必要である。例えば、これらの層131,132を樹脂材料で形成することができる。具体的には、アウター層132は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)によって構成することができる。ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性や耐貫通性に優れるので好ましい。一方、コア層131は、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、またはアウター層132を構成するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質なポリビニルアセタール樹脂によって構成することができる。軟質なコア層131を間に挟むことにより、単層の樹脂中間膜と同等の接着性や耐貫通性を保持しながら、遮音性能を大きく向上させることができる。
【0044】
一般に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。したがって、それらの条件から選ばれる少なくとも1つを適切に調整することにより、同じポリビニルブチラール樹脂であっても、アウター層132に用いる硬質なポリビニルブチラール樹脂と、コア層131に用いる軟質なポリビニルブチラール樹脂との作り分けが可能である。さらに、アセタール化に用いるアルデヒドの種類、複数種類のアルデヒドによる共アセタール化か単種のアルデヒドによる純アセタール化によっても、ポリビニルアセタール樹脂の硬度を制御することができる。一概には言えないが、炭素数の多いアルデヒドを用いて得られるポリビニルアセタール樹脂ほど、軟質となる傾向がある。したがって、例えば、アウター層132がポリビニルブチラール樹脂で構成されている場合、コア層131には、炭素数が5以上のアルデヒド(例えばn-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-へプチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド)、をポリビニルアルコールでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。なお、所定のヤング率が得られる場合は、上記樹脂等に限定されることはい。
【0045】
また、中間膜13の総厚は、特に規定されないが、0.3~6.0mmであることが好ましく、0.5~4.0mmであることがさらに好ましく、0.6~2.0mmであることが特に好ましい。また、コア層131の厚みは、0.1~2.0mmであることが好ましく、0.1~0.6mmであることがさらに好ましい。一方、各アウター層132の厚みは、コア層131の厚みよりも大きいことが好ましく、具体的には、0.1~2.0mmであることが好ましく、0.1~1.0mmであることがさらに好ましい。その他、中間膜13の総厚を一定とし、この中でコア層131の厚みを調整することもできる。
【0046】
なお、中間膜13のコア層131、アウター層132の厚みは全面に亘って一定である必要はなく、例えば、ヘッドアップディスプレイに用いられる合わせガラス用に楔形にすることもできる。この場合、中間膜13のコア層131やアウター層132の厚みは、最も厚みの小さい箇所、つまり合わせガラスの最下辺部を測定する。中間膜13が楔形の場合、外側ガラス板及び内側ガラス板は、平行に配置されないが、このような配置も本発明におけるガラス板に含まれるものとする。すなわち、本発明においては、例えば、1m当たり3mm以下の変化率で厚みが大きくなるコア層131やアウター層132を用いた中間膜13を使用した時の外側ガラス板11と内側ガラス板12の配置を含む。
【0047】
中間膜13の製造方法は特には限定されないが、例えば、上述したポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分、可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、均一に混練りした後、各層を一括で押出し成型する方法、この方法により作成した2つ以上の樹脂膜をプレス法、ラミネート法等により積層する方法が挙げられる。プレス法、ラミネート法等により積層する方法に用いる積層前の樹脂膜は単層構造でも多層構造でもよい。また、中間膜13は、上記のような複数の層で形成する以外に、1層で形成することもできる。
【0048】
<1-2.遮蔽層>
図1に示すように、この合わせガラス1の周縁には、黒などの濃色のセラミックで形成された遮蔽層2が積層されている。この遮蔽層2は、車内また車外からの視野を遮蔽するものであり、合わせガラスの4つの辺に沿って積層されている。すなわち、遮蔽層2は、合わせガラス1の4つ辺にそれぞれ沿う、上辺部21、左辺部22、右辺部23、及び下辺部24により構成されている。上辺部21と左辺部22、及び上辺部21と右辺部23の連結部分の内縁は、円弧状に形成されている。そして、合わせガラス1の内面には、上辺部21と左辺部22との連結部分の内縁に沿って、円形の車検証5が貼付けられている。
【0049】
また、上辺部21は帯状に形成され、合わせガラス1の中央から両側付近に至る第1領域211と、第1領域211の両側から延び、左辺部22または右辺部23に連結される第2領域212と、を備えている。そして、第2領域212の上下方向の幅が、第1領域よりもやや大きくなっている。これにより、第1領域211から第2領域212に至る、上辺部21の内縁には斜めに延びる段が形成されている。
【0050】
遮蔽層2は、例えば、外側ガラス板11の内面のみ、内側ガラス板12の内面のみ、あるいは外側ガラス板11の内面と内側ガラス板12の内面、など種々の態様が可能である。また、セラミック、種々の材料で形成することができるが、例えば、以下の組成とすることができる。
【表1】
*1,主成分:酸化銅、酸化クロム、酸化鉄及び酸化マンガン
*2,主成分:ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛
【0051】
セラミックは、スクリーン印刷法により形成することができるが、これ以外に、焼成用転写フィルムをガラス板に転写し焼成することにより作製することも可能である。スクリーン印刷を採用する場合、例えば、ポリエステルスクリーン:355メッシュ,コート厚み:20μm,テンション:20Nm,スキージ硬度:80度,取り付け角度:75°,印刷速度:300mm/sとすることができ、乾燥炉にて150℃、10分の乾燥により、セラミックを形成することができる。
【0052】
また、遮蔽層2は、セラミックを積層するほか、濃色の樹脂製の遮蔽フィルムを貼り付けることで形成することもできる。
【0053】
<1-3.アンテナ>
次に、アンテナ3について、
図3も参照しつつ説明する。
図3は、アンテナを示す
図1の拡大図である。
図1に示すように、本実施形態に係るウインドシールドには、一対のデジタルテレビ用のアンテナが実装されている。これらのアンテナは、左右対称で基本的に同一であるため、以下では、
図3を参照しつつ左側に配置されているアンテナについて説明する。
【0054】
図3に示すように、このアンテナ3は、矩形状に形成された第1給電部31及び第2給電部32を備えている。第1給電部31と第2給電部32は、ともに遮蔽層2の上辺部21の左側の第2領域212において、水平方向に並んで配置されており、第1給電部31が左側に配置され、第2給電部32が右側に配置されている。したがって、第1給電部31の中心と第2給電部32の中心とを結ぶ仮想線と、合わせガラス1の上縁とは概ね平行となっている。
【0055】
また、自動車には、デジタルテレビ用の受信機(図示省略)とこれに接続されたアンプ(図示省略)が設けられており、このアンプが同軸ケーブルを介して、第1給電部31及び第2給電部32に接続されている。そして、第1給電部31が同軸ケーブルの信号線(芯線)に接続され、第2給電部32が同軸ケーブルの接地線(外部導体)に接続される。なお、アンプの入力インピーダンスは、例えば、50~100Ωとすることができる。
【0056】
そして、第1給電部31には、左側に向かって水平に延びる第1アンテナエレメント33が連結されている。この第1アンテナエレメント33は、上辺部21に沿って延びる2つの線状のアンテナ導体331で構成されており、これらアンテナ導体331は、上下方向に並び、互いに平行に延びている。また、第2給電部32には、右側に向かって水平に延びる第2アンテナエレメント34が連結されている。この第2アンテナエレメント34は、上辺部21の第2領域212と第1領域211の境界付近まで水平に延びる第1部位341と、この第1部位341から上方にやや延びる第2部位342と、第2部位342の上端から右側に水平に延びる第3部位343と、を備えている。第1部位341は、上下方向の位置が、第1領域211の下縁と概ね同じであり、第3部位343は、第1領域211内で延びている。
【0057】
また、第2給電部32には、第3アンテナエレメント35が接続されている。この第3アンテナエレメント35は、水平に右側に延びる部位と、この部位から下方に延びる部位とを有するL字状の連結部351と、この連結部351の下端に連結される2つのループ状の第1アンテナ導体352及び第2アンテナ導体353と、を備えている。これらアンテナ導体352,353は、ともに水平方向に長辺を有する矩形状に形成されており、第1アンテナ導体352が左側に配置され、第2アンテナ導体353が右側に配置されている。そして、第1アンテナ導体352の右辺と第2アンテナ導体353の左辺とが共通するように、両アンテナ導体352,353は接している。以下、共通する辺を垂直部位354と称することとする。
【0058】
そして、上述した連結部351の下端は、垂直部位354の上端に連結されている。また、第1アンテナ導体352の上辺を含む上部領域と、第2アンテナ導体353の左上の角部付近は、遮蔽層2の第2領域212上にあり、第3アンテナエレメント35のその他の部分は、遮蔽層2の上辺部21から下方へはみ出している。
【0059】
ここで、第3アンテナエレメント35の水平方向の長さについて説明する。例えば、このアンテナ3において受信可能な放送波の波長がλ1~λ2、ガラス板の誘電率がα、L=λ2/4×αとすると、第3アンテナエレメント35の水平方向の長さは、L±30mmとすることができる。
【0060】
具体的には、デジタルテレビの放送波の周波数は、約500~720MHzであるため、ガラス板の誘電率αを0.65とすると、波長λ1/4~λ2/4は約68~100mmとなる。すなわち、λ2/4=100mmであるで、上記の計算式からすると、第3アンテナエレメント35の水平方向の長さは、70~130mmが適切である。
【0061】
第3アンテナエレメント35の水平方向の長さを、上記Lを基準とすることで、インピーダンスのミスマッチが解消するので、広帯域化が期待でき、その結果、受信性能が向上する。なお、上記Lはλ2を用いて規定しているが、これは、低周波側を考慮して長さLを定めることが一般的であることによる。
【0062】
また、第2アンテナ導体353の上辺3531の右端部には、線状に延びる第4アンテナエレメント36が接続されている。すなわち、この第4アンテナエレメント36は、第2アンテナ導体353の上辺3531を延長するように延びており、遮蔽層2の上辺部21の下方に配置されている。第4アンテナエレメント35の長さL1は特には限定されないが、例えば、10~50mmとすることができる。
【0063】
さらに、第2アンテナエレメント34の右側には、水平方向に隙間を空けて線状に延びる第5アンテナエレメント37が設けられている。すなわち、この第5アンテナエレメント34は、いずれのアンテナエレメント33~36及び給電部31,32に接続されていないため、給電されていないが、主として指向性を向上するために設けられている。この第5アンテナエレメント37は、第2アンテナエレメント34の第3部位343と、上下方向の位置が概ね同じであり、遮蔽層2の上辺部21に配置されている。第5アンテナエレメント37の長さL2は、特には限定されないが、例えば、120~140mmとすることができる。また、第5アンテナエレメント37の上下方向の位置も特には限定されないが、例えば、第2アンテナエレメント34の第3部位343の先端部を基準として、上方に30mm以内(L3)、下方に30mm以内(L4)の位置に配置することができる。
【0064】
<1-4.材料>
上記のようなアンテナ3は、導電性を有する導電性材料をガラス板1の表面に所定の線状のパターンを有するように積層することで形成することができる。そのような材料としては、導電性を有していればよく、実施の形態に適宜選択可能であり、一例として、銀、金、白金等を挙げることができる。この上記各部材は、例えば、銀粉末、ガラスフリット等を含む導電性の銀ペーストをガラス板1の表面に印刷し焼成することによって形成することができる。
【0065】
<2.ウインドシールドの製造方法>
次に、ウインドシールドの製造方法の一例について説明する。まず、平板状に形成された内側ガラス板12に、スクリーン印刷などで上記遮蔽層2を形成した後、アンテナ3をスクリーン印刷などで形成する。その後、外側ガラス板11及び内側ガラス板12を加熱炉内に搬入し、軟化点付近まで加熱する。その後、プレス成形によって、これらを曲面状に成形する。あるいは、各ガラス板11,12を自重で曲げる自重曲げ工法等によって曲面状に成形することができる。
【0066】
こうして、外側ガラス板11及び内側ガラス板12が成形されると、これに続いて、中間膜13を外側ガラス板11及び内側ガラス板12の間に挟み、これをゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70~110℃で予備接着する。予備接着の方法は、これ以外でも可能である。例えば、中間膜13を外側ガラス板11及び内側ガラス板12の間に挟み、オーブンにより45~65℃で加熱する。続いて、この合わせガラスを0.45~0.55MPaでロールにより押圧する。次に、この合わせガラスを、再度オーブンにより80~105℃で加熱した後、0.45~0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
【0067】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた合わせガラスを、オートクレーブにより、例えば、8~15気圧で、100~150℃によって、本接着を行う。具体的には、例えば、14気圧で145℃の条件で本接着を行うことができる。こうして、本実施形態に係る合わせガラスが製造される。
【0068】
<3.特徴>
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)第3アンテナエレメント35がループ状の複数のアンテナ導体352,353を有しているため、インピーダンスの調整が可能となり、受信性能を向上することができる。特に、ループ状のアンテナ導体352,353が複数設けられているため、デジタルテレビの放送波のような周波数帯域が広いメディアにおいても、広帯域での受信性能の向上が可能となる。
【0069】
(2)第3アンテナエレメント35のアンテナ導体352,353が矩形状に形成されている。すなわち、水平方向に延びる線材と垂直方向に延びる線材を有しているため、水平偏波であっても、垂直偏波であっても受信可能となり、受信性能の向上に寄与する。特に、2つの矩形状のアンテナ導体352,353は、水平方向が長手方向となるように形成されており、且つ、水平方向に並んで配置されているため、水平偏波の受信性能の向上に大きく寄与する。
【0070】
(3)アンテナ3が全体的に水平方向に延びるように配置されているため、ウインドシールドの視野を妨げるのを防止することができる。また、アンテナ3の大部分を遮蔽層2上に配置することができるため、これによって車外から視認し難くできるため、見栄えをよくすることができる。
【0071】
(4)アンテナ3が、車検証5を避けるように配置されているため、受信性能の低下を防止することができる。これは、車検証には金属が含まれることが多いため、この金属によって受信性能に影響を及ぼすからである。
【0072】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0073】
<4-1>
上記実施形態では、第1アンテナエレメント33が2本のアンテナ導体331を備えているが、アンテナ導体331の数は特には限定されず、1本または3本以上でもよい。但し、第1アンテナエレメント33のアンテナ導体331は、数が多いほど受信性能を向上することができる。また、各アンテナ導体331は、全体として水平に延びていればよく、例えば、途中で折れ曲がっていてもよい。
【0074】
<4-2>
上記実施形態では、第2アンテナエレメント34が1本のアンテナ導体により構成されているが、複数のアンテナ導体で構成されていてもよい。また、第2アンテナエレメント34は、全体として水平に延びていればよく、例えば、途中で折れ曲がっていたり、湾曲してもよい。
【0075】
<4-3>
上記実施形態では、第3アンテナエレメント35が2つのループ状のアンテナ導体352,353を有しているが、これに限定されない。すなわち、ループ状のアンテナ導体352,353の数は3以上であってもよい。また、アンテナ導体352,353の並ぶ方向は限定されない。また、連結部351は、垂直部位354に接続しなくてもよく、いずれかのアンテナ導体352、353に直接接続することもできる。
【0076】
また、必ずしも、2つのアンテナ導体352,353が接触している必要はなく、例えば、
図4に示すように、これらのアンテナ導体352、353を隙間を空けて配置し、線状の導体357で接続してもよい。このとき、連結部351は、この導体357に接続してもよいし、アンテナ導体352,353のいずれかに接続してもよい。さらに、各アンテナ導体352,353はループ状であればよく、矩形状以外に、円形状、楕円形状、または多角形状等であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、第3アンテナエレメント35は、連結部351を介して第2給電部32に接続されているが、例えば、第2アンテナエレメント34に接続するともできる。すなわち、アンテナが実装される領域に応じて、接続位置を適宜変更することができる。したがって、アンテナの設計の自由度を大きくすることができ、また、見栄えもよくすることができる。
【0078】
<4-4>
第4アンテナエレメント36は、第3アンテナエレメント35から延びているが、第3アンテナエレメント35のいずれの位置から延びていてもよい。また、全体として水平方向に延びていればよく、例えば、途中で折れ曲がっていたり、湾曲してもよい。さらに、必ずしも第4アンテナエレメント36を設けなくてもよい。
【0079】
<4-5>
第5アンテナエレメント37は、全体として水平方向に延びていればよく、例えば、途中で折れ曲がっていたり、湾曲してもよい。また、第5アンテナエレメント37の位置も特には限定されず、両給電部31、32、及び第1~第4アンテナエレメント33~36に連結されていなければよい。さらに、必ずしも第5アンテナエレメント37を設けなくてもよい。
【0080】
<4-6>
上記実施形態では、アンテナ3の一部が遮蔽層2上に配置されているが、アンテナ3のすべてを遮蔽層2上に配置したり、すべてを遮蔽層2に配置しないようにすることもできる。但し、遮蔽層2上に配置すれば、車外から見えなくなり、見栄えがよくなる。また、具体的な位置としては、合わせガラス1の最上部から下方に80mm以内の領域に、アンテナ3を配置することができる。
【0081】
<4-7>
2つの給電部31,32のうち、第2給電部32を接地しているが、第1給電部31を接地することもできる。また、2つの給電部31,32の位置は特には限定されず、上下方向にずれて配置されていてもよい。
【0082】
<4-8>
上記実施形態では、アンテナがデジタルテレビを受信するように構成されているが、デジタルテレビ以外のメディア、例えば、周波数が200MHz以上の広帯域のメディアであれば、適用可能である。
【0083】
<4-9>
また、本発明の窓ガラスを自動車のウインドシールド以外のリアガラスやサイドガラスに適用することもできる。
【0084】
<4-10>
上記実施形態では、アンテナ3をガラス板1に実装しているが、例えば、フィルムアンテナとすることもできる。すなわち、フィルム上に上記アンテナを配置し、これをウインドシールドなどのガラス板に貼り付けることもできる。
【0085】
フィルムアンテナは、種々の構成にすることができるが、例えば、
図5に示すように構成することができる。この例では、フィルムアンテナ50は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等の樹脂製の基材フィルム51と、この基材フィルム51の第1面に印刷などで形成されたアンテナ3と、このアンテナ3を覆うように基材フィルム51の第1面に形成された保護層52と、基材フィルム51の第2面に塗布された粘着層53と、を備えている。アンテナ3は上記実施形態で示したものである。また、粘着層53には剥離紙(図示省略)が貼付けられている。
【0086】
そして、このようなフィルムアンテナ50は、次のように、合わせガラス1に貼付けられる。まず、剥離紙を粘着層53から取り外す。次に、露出した粘着層53を合わせガラス1の所定の箇所に貼付ける。このとき、合わせガラス1の端縁を基準とし、ここからの所定の距離だけ離れた位置に、フィルムアンテナ50を貼付ることができる。しかし、合わせガラス1が自動車に取りつけられている状態では、合わせガラス1の端縁からの距離を測定するのが困難である。このような場合には、遮蔽層2の端縁などを基準としてフィルムアンテナ50を貼付けることができる。
【0087】
ここで、上記実施形態で示した合わせガラスに直接設けられるアンテナ(ガラスアンテナ)と、フィルムアンテナの相違について、説明する。まず、線幅について、ガラスアンテナは、例えば、0.8mm程度にすることができる。これは、上述したスクリーン印刷では、0.8mm以下にすることが困難であることによる。一方、フィルムアンテナは、見栄えなどの観点から0.25mm程度にすることができる。
【0088】
線幅が大きいと、アンテナの受信性能において広帯域化が可能となる。一方、線幅が細いと断線しやすい。この点、ガラスアンテナは交換が困難であるため、断線防止の観点から線幅を大きくしている。
【0089】
<4-11>
上記実施形態では、車内にアンプを設置しているが、例えば、給電部31,32に直接アンプを取り付けることもできる。すなわち、各給電部31,32とアンプとを一体化したものを用いることができ、ここから車内の受信機に接続する。この場合、アンプの入力インピーダンスは、上記と同様に50~100Ωとすることができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0091】
図6は、実施例1に係る窓ガラスであり、上記実施形態の
図1と同様の構成を有している。
図6中の寸法の単位はmmである。なお、他の図面において記載のない寸法は、それ以前の図面で記載したものと同じであるとする。そして、この実施例1を含むすべての実施例及び比較例に係る窓ガラスについて、デジタルテレビ(450~750MHz)における受信性能を以下の条件により実測することで評価した。
【0092】
すなわち、電波暗室内でデジタルテレビの電波を各実施例及び比較例に係る窓ガラスが取り付けられた車両に対して放射し、各窓ガラスのアンテナによって、当該放送波を受信することで、各アンテナの感度を測定した。各アンテナの感度の測定にはネットワークアナライザー(キーサイト・テクノロジー合同会社 E5071C)を利用した。測定に当たっての具体的な条件は以下のとおりである。
【0093】
・ガラス板の取付角度:水平方向に対して、上下方向の下辺の点で62度傾斜、上下方向
の中央の点で54度傾斜、上下方向の上辺の点で45度傾斜
・角度分解能:角度3度毎に車両を360度回転させて測定
・周波数分解能:450MHz~750MHzの範囲で3MHz毎に測定
・電波の発信位置とアンテナとの仰角:1.7度(地面と水平方向を0度、天頂方向を90度とする)
なお、各アンテナの感度は、半波長ダイポールアンテナを基準とする相対利得(dBd)で定義した。受信機と各アンテナとの間にはアンプを設けず、スルーケーブルを利用した。
【0094】
なお、後述する他の実施例及び比較例においては、特に断りのない限り、アンテナの寸法は実施例1と同じである。すなわち、後述するが、記載のないものについては、既出の寸法と同じである。また、特に断りのない限り、第1給電部は同軸ケーブルの芯線に接続され、第2給電部は同軸ケーブルの接地線に接続されているものとする。
【0095】
<1.第3アンテナエレメントの形状に関する評価>
以下、実施例1,2,及び比較例1~3の受信性能について検討する。
図6に示すように、実施例1は上記実施形態と同様の構成である。
図7は、実施例2を示している。実施例2は、第3アンテナエレメントとして、ループ状のアンテナ導体を4個組み合わせたものである。すなわち、長辺及び短辺が共通するように、上下方向及び左右方向に2個ずつループ状のアンテナ導体を連結している。
【0096】
図8は比較例1、
図9は比較例2,
図10は比較例3を示している。
図8に示すように、比較例1が実施例1と相違するのは、比較例1では、第3アンテナエレメントを設けていない点である。また、
図9に示すように、比較例2は、第3アンテナエレメントとして、L字状の連結部は有しているが、ループ状のアンテナ導体は設けられていない。その代わり、直線状のアンテナ導体が設けられている。また、
図10に示すように、比較例3では、ループ状のアンテナ導体が1つのみ設けられている。すなわち、実施例1の2つのアンテナ導体を一体化し、垂直部位がない1つのループ状のアンテナ導体が設けられている。
【0097】
上記実施例1,2,比較例1~3におけるデジタルテレビの周波数域における受信性能を
図11の通り算出した。
図11に示すように、実施例1、2は、比較例1~3に比べ、概ね全ての周波数域で高い受信性能を示している。比較例については、第3アンテナエレメントが設けられていない比較例1が最も受信性能が低かった。また、第3アンテナエレメントについては、直線状である比較例2よりもループ状である比較例3の方が受信性能が高かった。但し、ループ状のアンテナ導体が2以上である実施例1、2は、上記のように比較例3よりも受信性能が高いことが分かった。
【0098】
<2.第5アンテナエレメントの有無に関する評価>
図12に示すように、実施例3を準備した。実施例3が実施例1と相違するのは、実施例3では、第5アンテナエレメントが設けられている点であり、その他の構成は、実施例1と同じである。
【0099】
結果は、
図13に示すとおりである。同図に示すように、第5アンテナエレメントを有する実施例3の方が、実施例1よりも概ね受信性能が高かった。
【0100】
<3.第1アンテナエレメントの本数に関する評価>
以下では、第1アンテナエレメントの本数について評価した。実施例4として、第1アンテナエレメントのアンテナ導体が1本のものを準備した。すなわち、実施例4では、実施例3の第1アンテナエレメントと比較して、上側のアンテナ導体のみを有している。但し、実施例4の第1アンテナエレメントは、実施例3の第1アンテナエレメントよりも10mm長い。
【0101】
受信性能の結果は、
図14に示すとおりである。同図に示すように、周波数が約500~700MHzの範囲では、アンテナ導体が2本の実施例3のほうが、アンテナ導体が1本の実施例4よりも受信性能が高かった。但し、それ以外の周波数域、つまり約500MHz以下、及び約700MHz以上では、実施例4の方が受信性能が高かった。
【0102】
<4.第4アンテナエレメントの長さに関する評価>
第4アンテナエレメントの長さに関する評価を行った。以下の通り、第4アテナエレメントの長さを変化させた実施例1,実施例5~10を準備した。
【表2】
【0103】
結果は、
図15に示す通りである。すなわち、周波数が約450~600MHzの範囲では、第4アンテナエレメントの長さが長いほど、受信性能が高いことが分かった。一方、周波数が約600~750MHzの範囲では、第4アンテナエレメントの長さが短いほど、受信性能が高いことが分かった。
【0104】
<5.第5アンテナエレメントの長さに関する評価>
第5アンテナエレメントの長さに関する評価を行った。以下の通り、第5アテナエレメントの長さを変化させた実施例3,実施例12、13を準備した。第5アンテナエレメントと第2アンテナエレメントの距離は実施例3と同じである。
【表3】
【0105】
結果は、
図16に示す通りである。すなわち、周波数が約450~630MHzの範囲では、第5アンテナエレメントの長さが長いほど、受信性能が高いことが分かった。一方、周波数が約630~750MHzの範囲では、第5アンテナエレメントの長さが短いほど、受信性能が高いことが分かった。
【0106】
<6.第5アンテナエレメントの上下方向の位置に関する評価>
第5アンテナエレメントの上下方向の位置に関する評価を行った。実施例3における第5アンテナエレメントの上下方向の位置を基準とし、以下の通り、それよりも第5アンテナエレメントが低い位置にある実施例14,15を準備した。
【表4】
【0107】
結果は、
図17に示す通りである。すなわち、周波数が約450~630MHzの範囲では、実施例15の受信性能が最も高く、実施例3と実施例14の受信性能は概ね同じであった。一方、周波数が約630~750MHzの範囲では、第5アンテナエレメントが最も低い位置にある実施例15の受信性能が最も悪く、実施例3,実施例14の順で受信性能が高いことが分かった。
【0108】
<7.アンテナの数に関する評価>
実施例3と左右対称で同一構成のアンテナをガラス板の右側に配置した実施例16を準備した。さらに、実施例3と実施例16を組み合わせたもの、つまり、ガラス板の左右の端部の両方にアンテナを配置した実施例17を準備した。但し、実施例3については、アンテナの近傍に車検証を配置した。結果は、
図18に示すとおりである。
図18に示すように、2つのアンテナを有する実施例17の受信性能が最も高かった。実施例3と実施例16を比較すると、アンテナをガラス板の左側に配置した実施例16の方が受信性能が高かった。これは、車検証が影響していると考えられる。
【符号の説明】
【0109】
1 :ガラス板
2 :遮蔽層
3 :アンテナ
31 :第1給電部
32 :第2給電部
33 :第1アンテナエレメント
34 :第2アンテナエレメント
35 :第3アンテナエレメント
36 :第4アンテナエレメント
37 :第5アンテナエレメント