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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ホーム柵
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B61B1/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021182657
(22)【出願日】2021-11-09
(62)【分割の表示】P 2017162530の分割
【原出願日】2017-08-25
(65)【公開番号】P2022010179
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000143396
【氏名又は名称】株式会社高見沢サイバネティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 史明
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-1538(JP,A)
【文献】特開2016-120745(JP,A)
【文献】特表2015-502884(JP,A)
【文献】特開2015-217773(JP,A)
【文献】特開2014-91410(JP,A)
【文献】特開2012-106544(JP,A)
【文献】特開2011-201340(JP,A)
【文献】特開2004-322823(JP,A)
【文献】米国特許第9598090(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第105625931(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0039831(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E01F 1/00
E05F 15/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホーム上の空間を遮るように水平方向成分を有する方向に延びる線状部材と;
前記線状部材を支持する支柱とを備え;
前記支柱は、前記プラットホームに固定された固定支柱と、前記固定支柱に対して昇降可能に接続された可動支柱とを有し;
前記固定支柱は、前記可動支柱が昇降する方向に延びる案内レールと、前記可動支柱を昇降させる可動支柱駆動機構と、を含んで構成され;
前記可動支柱は、前記可動支柱駆動機構で生じた動力によって前記案内レールに沿って回転しながら移動する回転体と、前記回転体が前記案内レールに対して移動する際の回転に伴って動く伝動部材であって前記線状部材が取り付けられた伝動部材と、を含んで構成された;
ホーム柵。
【請求項2】
プラットホーム上の空間を遮るように水平方向成分を有する方向に延びる線状部材と;
前記線状部材を支持する支柱とを備え;
前記支柱は、前記プラットホームに固定された固定支柱と、前記固定支柱に対して昇降可能に接続された可動支柱とを有し;
前記固定支柱は、前記可動支柱が昇降する方向に延びる案内レールと、前記可動支柱を昇降させる可動支柱駆動機構と、を含んで構成され;
前記可動支柱は、前記案内レールに沿って回転しながら前記案内レール上を移動する回転体と、前記回転体が前記案内レールに対して移動する際の回転に伴って動く伝動部材であって前記線状部材が取り付けられた伝動部材と、を含んで構成された;
ホーム柵。
【請求項3】
前記線状部材は、第1の線状部材と、前記第1の線状部材に対して鉛直方向に異なる位置に配置された第2の線状部材とを含んで構成され;
前記可動支柱は、前記伝動部材として、前記第1の線状部材が取り付けられた第1の伝動部材と前記第2の線状部材が取り付けられた第2の伝動部材とを含んで構成された;
請求項1又は請求項2に記載のホーム柵。
【請求項4】
プラットホーム上の空間を遮るように水平方向成分を有する方向に延びる線状部材と;
前記線状部材を支持する支柱とを備え;
前記支柱は、前記プラットホームに固定された固定支柱と、前記固定支柱に対して昇降可能に接続された可動支柱とを有し;
前記固定支柱は、前記可動支柱が昇降する方向に延びる案内レールと、前記可動支柱を昇降させる可動支柱駆動機構と、を含んで構成され;
前記可動支柱は、前記案内レールに沿って回転しながら移動する回転体と、前記回転体が前記案内レールに対して移動する際の回転に伴って動く伝動部材であって前記線状部材が取り付けられた伝動部材と、を含んで構成され;
前記線状部材は、第1の線状部材と、前記第1の線状部材に対して鉛直方向に異なる位置に配置された第2の線状部材とを含んで構成され;
前記可動支柱は、前記伝動部材として、前記第1の線状部材が取り付けられた第1の伝動部材と前記第2の線状部材が取り付けられた第2の伝動部材とを含んで構成された;
ホーム柵。
【請求項5】
前記固定支柱は、前記可動支柱の上昇を支援する錘を含んで構成され;
平面視において、前記可動支柱と前記可動支柱駆動機構とは軌条が延びる方向に直交する方向に隣接して配置され、前記可動支柱駆動機構と前記錘とは前記軌条が延びる方向に隣接して配置された;
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のホーム柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホーム柵に関し、特に線状部材を適切な高さに設けつつ全高を抑制したホーム柵に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラットホームには、乗降客と車両との接触防止やプラットホームからの乗降客の転落防止等の安全性を向上させる観点から、ホーム柵の設置駅を増やすことが検討されている。ホーム柵として、入出口の両側に立設した2本の固定支柱のそれぞれに、可動支柱を上下方向にスライド自在に取り付け、これら2本の可動支柱間に、制止バーを掛け渡して構成され、可動支柱内に、駆動プーリに張架された無端ベルトと、無端ベルトに制止バーを連結する連結部材と、駆動プーリに駆動力を与える制止バー駆動モータとを有するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-106544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制止バーの配置は、乗降客の安全確保の観点から適切な位置(高さ)が決められ、最下部の制止バーは乗降客が容易に通り抜けることができない高さに設定される。しかしながら、特許文献1に記載されたホーム柵は、制止バー駆動モータが可動支柱内の下部に内蔵されているため、最下部の制止バーを設置する位置が制止バー駆動モータの上方になってしまう。制止バーをより下部に設けるために制止バー駆動モータを可動支柱の上部に内蔵することとすると、ホーム柵全体の高さが高くなってしまい、乗務員等による視認可能な範囲が狭くなってしまう。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、線状部材を適切な高さに設けつつ全高を抑制したホーム柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るホーム柵は、例えば図1及び図2に示すように、プラットホームPH上の空間を遮るように水平方向成分を有する方向に延びる線状部材10と;線状部材10を支持する支柱50とを備え;支柱50は、プラットホームPHに固定された固定支柱20と、固定支柱20に対して昇降可能に接続された可動支柱30とを有し;固定支柱20は、可動支柱30が昇降する方向に延びる案内レール25と、可動支柱30を昇降させる可動支柱駆動機構21と、を含んで構成され;可動支柱30は、前記可動支柱駆動機構で生じた動力によって案内レール25に沿って回転しながら移動する又は案内レール25に沿って回転しながら案内レール25上を移動する回転体35と、回転体35が案内レール25に対して移動する際の回転に伴って動く伝動部材39であって線状部材10が取り付けられた伝動部材39と、を含んで構成されている。
【0007】
このように構成すると、案内レールに沿って回転移動する回転体によって可動支柱に対する線状部材の移動を行わせることができ、可動支柱内における線状部材移動用のモータの設置スペースを削減することができ、全高を抑制することができる。
【0008】
また、ホーム柵は、例えば図2を参照して示すように、上記態様に係るホーム柵1において、案内レール25がピンラックで構成され、回転体35がピンギヤで構成されていてもよい。
【0009】
このように構成すると、案内レール及び回転体を簡便に構成することができる。
【0010】
また、ホーム柵は、例えば図2に示すように、上記各態様に係るホーム柵1において、可動支柱駆動機構21は、可動支柱30が昇降する方向に延びる無端ベルト21bと、無端ベルト21bに固定された可動支柱接続具21jであって可動支柱30が接続された可動支柱接続具21jと、無端ベルト21bを駆動する無端ベルト駆動部21mと、を含んで構成されていてもよい。
【0011】
このように構成すると、簡便な構成で可動支柱を昇降させることができる。
【0012】
また、ホーム柵は、例えば図2及び図3に示すように、上記各態様に係るホーム柵1において、線状部材10は、第1の線状部材11と、第1の線状部材11に対して鉛直方向に異なる位置に配置された第2の線状部材12とを含んで構成され;可動支柱30は、伝動部材39として、第1の線状部材11が取り付けられた第1の伝動部材39bと第2の線状部材12が取り付けられた第2の伝動部材39sとを含んで構成されていてもよい。あるいは、本発明の別の態様に係るホーム柵は、例えば図1乃至図3に示すように、プラットホームPH上の空間を遮るように水平方向成分を有する方向に延びる線状部材10と;線状部材10を支持する支柱50とを備え;支柱50は、プラットホームPHに固定された固定支柱20と、固定支柱20に対して昇降可能に接続された可動支柱30とを有し;固定支柱20は、可動支柱30が昇降する方向に延びる案内レール25と、可動支柱30を昇降させる可動支柱駆動機構21と、を含んで構成され;可動支柱30は、案内レール25に沿って回転しながら移動する回転体35と、回転体35が案内レール25に対して移動する際の回転に伴って動く伝動部材39であって線状部材10が取り付けられた伝動部材39と、を含んで構成され;線状部材10は、第1の線状部材11と、第1の線状部材11に対して鉛直方向に異なる位置に配置された第2の線状部材12とを含んで構成され;可動支柱30は、伝動部材39として、第1の線状部材11が取り付けられた第1の伝動部材39bと第2の線状部材12が取り付けられた第2の伝動部材39sとを含んで構成されている。
【0013】
このように構成すると、可動支柱に対して移動可能な線状部材が複数設けられることになってより多くの空間を効果的に遮ることができると共に、第1の線状部材と第2の線状部材とを異なる速度で昇降させることが可能になってタイミングよくホーム柵の開閉を切り替えることができる。
【0014】
また、ホーム柵は、例えば図2及び図4に示すように、上記各態様に係るホーム柵1において、固定支柱20は、可動支柱30の上昇を支援する錘29を含んで構成され;平面視(図4参照)において、可動支柱30と可動支柱駆動機構21とは軌条Rが延びる方向Dpに直交する方向Dvに隣接して配置され、可動支柱駆動機構21と錘29とは軌条Rが延びる方向Dpに隣接して配置されている。
【0015】
このように構成すると、軌条が延びる方向に直交する方向の支柱の設置スペースを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、案内レールに沿って回転移動する回転体によって可動支柱に対する線状部材の移動を行わせることができ、可動支柱内における線状部材移動用のモータの設置スペースを削減することができ、全高を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るホーム柵の全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態に係るホーム柵の支柱まわりの概略構成を示す側面断面図である。
図3】ピンギヤ及び伝動部材まわりの概略構成を示す正面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るホーム柵の支柱まわりの概略平面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るホーム柵の支柱の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係るホーム柵1を説明する。図1は、ホーム柵1の全体構成を示す概略図である。ホーム柵1は、プラットホームPH上の乗降客が、軌道に転落するのを防ぎ、入ってきた車両に接触するのを防ぐため、プラットホームPHの軌道側の端に設けられている。ホーム柵1は、停止位置に停止した車両の車両扉に対応する位置に配置されている。車両扉は、通常、1つの車両に複数が設けられているので、ホーム柵1も車両扉に対応して複数が配置されている。1つのホーム柵1は、1つの車両扉に対応する大きさ(典型的には横幅寸法)でもよく、複数の車両扉に対応する大きさでもよい。プラットホームPHに設置された複数のホーム柵1の、隣接するホーム柵1の間に隙間が存在する場合、典型的には、プラットホームPH上の乗降客の軌道への転落や車両への接触を防ぐため、隙間を塞ぐ固定柵Fが設けられる。典型的には、軌道側のプラットホームPHの側縁全体にわたって、ホーム柵1又は固定柵Fが設けられている。
【0020】
ホーム柵1は、制止バー10と、支柱50とを備えている。制止バー10は、プラットホームPHの側縁部の上方の空間を遮る細長い直線状の部材であり、線状部材に相当する。支柱50は、制止バー10端部を支持するものである。典型的には、1つのホーム柵1に一対の支柱50が設けられており、各支柱50で制止バー10の両端を支持することができるように構成されている。一対の支柱50の間隔は、車両の扉位置及び停止精度に則り、乗降客の乗降のしやすさ及びホーム柵1の強度等の構造の適正化観点から、例えば4mとすることができる。ホーム柵1は、図1(A)に示す閉状態のときは乗降客の身長よりも低い位置に制止バー10が存在し、図1(B)に示す開状態のときは乗降客の身長よりも高い位置に制止バー10が存在するように、制止バー10が上下に移動することができるように構成されている。支柱50は、プラットホームPHに固定された固定支柱20と、制止バー10を上下に移動させる可動支柱30とを有している。以下、ホーム柵1を構成する各部材の詳細を説明する。
【0021】
制止バー10は、軽量化と耐食性とのバランスを考慮して典型的には強化プラスチック等の樹脂で形成されているが、耐食性や強度等の観点からステンレス鋼や他の金属で形成されていてもよい。また、制止バー10は、軽量化を図る観点から、中空棒状に形成されている。制止バー10は、本実施の形態では、直径が概ね50mm程度の中空丸棒状に形成されている。また、本実施の形態では、下部制止バー11、中間制止バー12、上部制止バー13の、同様に構成された3本が設けられており、制止バー10はこれらの総称である。下部制止バー11、中間制止バー12、上部制止バー13は、この順に、下から上に向けて配置されている。下部制止バー11、中間制止バー12、上部制止バー13の相互の間隔は、図1(A)に示す閉状態のときは乗降客が容易に通過できない程度の隙間が空き、図1(B)に示す開状態のときは隙間が空かずに近接した状態になっている。本実施の形態では、下部制止バー11の下端とプラットホームPHの表面との距離が、図1(A)に示す閉状態のときは約500mm、図1(B)に示す開状態のときは約2000mmとなっている。
【0022】
図2を参照して支柱50の構成を説明する。図2は支柱50まわりの概略構成を示す側面断面図であり、図2(A)は閉状態を、図2(B)は開状態を、それぞれ示している。固定支柱20は、縦長の固定枠20fと、可動支柱駆動部21と、ピンラック25と、錘29とを有している。固定枠20fは、可動支柱駆動部21や錘29等を収容すると共に、ピンラック25が固定される箱状の外被である。固定枠20fは、本実施の形態では鋼板で形成されており、内部を点検することができるように一部が開閉可能に構成されている。
【0023】
可動支柱駆動部21は、可動支柱30を上下に移動させるための機構であり、無端ベルト21bと、モータ21mと、プーリ21pと、可動支柱接続具(以下、単に「接続具」という。)21jとを有している。無端ベルト21bは、環状に形成されたベルトであり、上下に離れて設けられたモータ21mの回転軸及びプーリ21pが環状の内部に配置されることによって、上下に長くなるように配置されている。本実施の形態では、モータ21mが下部に配置され、プーリ21pが上部に配置されている。モータ21mとプーリ21pとは、無端ベルト21bに適切な張力が生じるように、上下に離れて設けられている。無端ベルト21bの適切な張力は、モータ21mで無端ベルト21bを動かしたときに過度のすべりが生じずに、無端ベルト21bが短期間で破断に至るような過度の応力が生じない程度の張力である。
【0024】
モータ21mは、無端ベルト21bを駆動するものであり、無端ベルト駆動部に相当する。モータ21mは、可動支柱30の移動速度に適した速度で無端ベルト21bを駆動するように構成されている。可動支柱30の移動速度とモータ21mの回転軸の角速度とを調節するため、複数枚の歯車を介してモータ21mから無端ベルト21bに動力を伝達することとしてもよい。無端ベルト21bを両方向に動かすことができるように、モータ21mは、その回転軸が正逆両方向に回転できるように構成されている。あるいは、回転軸の回転方向が異なる2つのモータ21mを用意しておき、無端ベルト21bを動かす方向に応じて無端ベルト21bに動力を伝達するモータ21mを切り換える構成にしてもよい。プーリ21pは、位置を調節可能に固定枠20fに取り付けることとして、無端ベルト21bの張力を調節することができるようにしてもよい。
【0025】
接続具21jは、固定支柱20と可動支柱30とを接続する部材である。接続具21jは、無端ベルト21bに固定されている。この構成により、接続具21jは、無端ベルト21bの移動に伴って移動するようになっている。接続具21jには、錘ロープ28を介して錘29が接続されている。錘ロープ28は、接続具21jと錘29との間で錘プーリ27に掛けられている。錘29は、概ね可動支柱30の重量に等しい重さになっている。接続具21jが錘ロープ28を介して錘29に接続されていることにより、無端ベルト21bを駆動する際のモータ21mの負荷を軽減することができる。
【0026】
ピンラック25は、可動支柱30の昇降を案内する部材であり、案内レールに相当する。ピンラック25は、後述する可動支柱30のピンギヤ35と噛み合う部材であり、直線状に形成されている。ピンラック25は、可動支柱30が隣接する固定枠20fの表面に、上下に延びるように(可動支柱30が昇降する方向に延びるように)設けられている。ピンラック25は、その長手方向に直交する方向に延びるピンが、長手方向に等間隔で複数が配置されており、隣接するピンの間にピンギヤ35の歯先が嵌まり込むようになっている。
【0027】
可動支柱30は、制止バー10を上下に移動させるために、プラットホームPHに固定された固定支柱20に対して上下に移動するものである。可動支柱30は、縦長の可動枠30fと、上述のピンギヤ35と、可動ベルト39とを有している。可動枠30fは、ピンギヤ35の大部分や可動ベルト39等を収容する箱状の外被である。可動枠30fは、本実施の形態では鋼板で形成されている。可動枠30fの下部には、固定支柱20の接続具21jが接続されている。可動枠30fの上部には、上部制止バー13の一端が固定されている。
【0028】
ピンギヤ35は、概ね円板状に形成され、円周上に形成された多数の歯先が固定支柱20のピンラック25に順次噛み合うように構成された部材である。ピンギヤ35は、スプロケットに類似している。ピンギヤ35は、可動枠30fに対して回転可能に取り付けられている。ピンギヤ35は、ピンラック25に沿って回転しながらピンラック25上を移動するように構成されており、回転体に相当する。可動ベルト39は、下部制止バー11及び中間制止バー12が取り付けられていると共に、ピンギヤ35の回転に伴って移動するようになっており、伝動部材を構成する。
【0029】
ここで図3図2と併せて参照して、ピンギヤ35及び可動ベルト39まわりの構成を説明する。図3は、ピンギヤ35及び可動ベルト39まわりの概略構成を示す正面図である。ピンギヤ35は、中心に挿通された棒状の元軸36aに固定されている。元軸36aには、ピンギヤ35から離れた位置で、元プーリ36pの中心部が固定されている。元軸36aの両端は、可動枠30f(図2参照)の下部に回転可能に支持されている。ピンギヤ35及び元プーリ36pとは別に、伝動プーリ38p、下部第1プーリ38b、下部第2プーリ38sが、それぞれの中心を貫く棒状の共通軸38aに固定されて設けられている。本実施の形態では、共通軸38aが延びる方向に対し、伝動プーリ38pを中央にして、その一方の側に下部第1プーリ38bが配置され、他方の側に下部第2プーリ38sが配置されている。伝動プーリ38p、下部第1プーリ38b、下部第2プーリ38s、共通軸38aで、仲介部38を構成している。共通軸38aの両端は、元プーリ36pよりも上方で可動枠30f(図2参照)の下部に回転可能に支持されている。元プーリ36p及び伝動プーリ38pには環状の仲介ベルト37が掛け渡されており、元プーリ36pの回転に伴って伝動プーリ38pが回転するように構成されている。元プーリ36pが回転すると、共通軸38aを介して伝動プーリ38pに連結されている下部第1プーリ38b及び下部第2プーリ38sも回転する。可動枠30f(図2参照)の上部には、上部第1プーリ41b及び上部第2プーリ41sの中心を貫いた上部軸41aが、回転可能に支持されている。上部第1プーリ41b及び上部第2プーリ41sは、上部軸41aに固定されている。
【0030】
下部第1プーリ38b及び上部第1プーリ41bには、環状の第1ベルト39bが掛けられている。第1ベルト39bには、下部制止バー11(図2参照)の一端が固定されている。第1ベルト39bは第1の伝動部材に相当し、下部制止バー11は第1の線状部材に相当する。下部第2プーリ38s及び上部第2プーリ41sには、環状の第2ベルト39sが掛けられている。第2ベルト39sには、中間制止バー12(図2参照)の一端が固定されている。第2ベルト39sは第2の伝動部材に相当し、中間制止バー12は第2の線状部材に相当する。第1ベルト39b及び下部制止バー11並びに第2ベルト39s及び中間制止バー12は、下部第1プーリ38b及び下部第2プーリ38sの回転に伴って上下に移動する。第1ベルト39b及び第2ベルト39sの移動に関し、下部制止バー11及び中間制止バー12を下から上に移動させる方向を正方向といい、上から下に移動させる方向を逆方向ということとする。下部第1プーリ38bの直径は、下部第2プーリ38sの直径よりも大きくなっている。下部第1プーリ38bの直径(円周長)は、可動支柱30(図2参照)が下限位置から上限位置まで上昇したときに、ピンギヤ35の回転に伴って移動する第1ベルト39bに、閉状態のときの下部制止バー11の位置から開状態のときの下部制止バー11の位置までの移動距離を与える長さである。下部第2プーリ38sの直径(円周長)は、可動支柱30(図2参照)が下限位置から上限位置まで上昇したときに、ピンギヤ35の回転に伴って移動する第2ベルト39sに、閉状態のときの中間制止バー12の位置から開状態のときの中間制止バー12の位置までの移動距離を与える長さである。このように、ピンラック25に噛み合うピンギヤ35の回転によって、可動ベルト39を介して下部制止バー11及び中間制止バー12を上下に移動させることができ、下部制止バー11及び中間制止バー12を移動させるためのモータ等の電装部品を省略することができると共に可動支柱30を小型化することができて、ホーム柵1の全高を抑制することができる。
【0031】
次に図4を参照して、本実施の形態に係るホーム柵1の支柱50の平面的な位置関係について説明する。図4は、支柱50部分の平面図である。図4中、紙面の下方が軌道T側であり、紙面の軌道Tよりも上方にプラットホームPHがあり、プラットホームPH上に支柱50が設けられている。平面視において、固定支柱20は、概ね矩形の形状から、軌条Rが延びる方向(以下、「平行方向Dp」という。)で概ね2等分したうちの制止バー10が存在する側、かつ、平行方向Dpに直交する方向(以下、「直交方向Dv」という。)で概ね2等分したうちの軌道T側の部分が切り欠かれた外観形状を呈している。ここで、説明の便宜上、固定支柱20に関し、切り欠かれた部分に対して直交方向Dvに隣接する部分(紙面上方の部分)を奥部分20Bといい、切り欠かれた部分及び奥部分20Bに対して平行方向Dpに隣接する部分(紙面左側の部分)を横部分20Sということとする。なお、平行方向Dpは、プラットホームPHの側縁に沿った方向となる。
【0032】
固定支柱20は、可動支柱駆動部21と錘29とが横部分20Sに配置されている。横部分20Sに配置された可動支柱駆動部21と錘29とは、典型的には平行方向Dpに隣り合って配置されている。ピンラック25は、奥部分20Bにおける軌道Tの側の固定枠20fに固定されている。平面視において、固定支柱20の切り欠かれた部分には、可動支柱30が配置されている。したがって、本実施の形態では、平面視において、可動支柱30及びピンラック25と、可動支柱駆動部21と、錘29とは、平行方向Dpに隣り合って配置されることとなる。このように、本実施の形態では、可動支柱30及びピンラック25と可動支柱駆動部21と錘29とがプラットホームPHの側縁に沿って配置されているので、奥行き寸法(直交方向Dvの寸法)を小さくすることができる。ホーム柵の設置にあたり、プラットホームPHの側縁に対して直交方向Dvの寸法が所定の寸法を超えないように建築限界が決められているが、本実施の形態では支柱50の奥行き寸法が抑えられているので、直交方向Dvの出っ張りを抑制することができる。
【0033】
なお、奥部分20Bの内部には、図示を省略するが、電源部、制御部、個別操作部、告知部が収容されている。電源部は、可動支柱駆動部21に電力を供給するものである。制御部は、外部からの指令を受信して可動支柱30の駆動を制御するものである。個別操作部は、単独で制止バー10の開閉動作及びリセット動作が行えるように開・閉・リセットボタン等を有するものである。告知部は、音声案内部、異常表示部及び誘導表示部からなり、音声案内部は可動支柱30の操作に連動して動作状況等のアナウンスを行うものであり、異常表示部は機器に異常が発生したときに表示ランプの点灯により係員へ知らせるものであり、誘導表示部は異なる2色の発光(典型的にはLEDによる発光)と上下方向へ流れる発光・点灯・点滅によって装置の各種動作状況を示すものである。
【0034】
さらに、図5の側面図に示すように、奥部分20Bには支障物検知部23が設けられている。図5は、制止バー10側から見た支柱50の側面図である。支障物検知部23は、制止バー10によって遮断される空間及びその周囲の状態を検知するものであり、典型的には、閉状態のときに制止バー10付近への乗降客の接近を検知し、制止バー10の開閉動作時に乗降客の制止バー10への接触を検知し、開状態から閉状態に移行するときに軌道T側での乗降客の居残りなどを検知するように構成されている。本実施の形態では、支障物検知部23によって上述の状態が検知された場合、音声案内部によって注意を促すアナウンスが行われるようになっている。
【0035】
引き続き図1乃至図3を参照して、ホーム柵1の作用を説明する。以下の説明では、特に言及した場合を除き、支障物検知部23(図5参照)による異常状態の検知がないものとする。なお、以下の説明におけるホーム柵1の作動及び車両扉の開閉の詳細な順番は、鉄道事業者によって異なる場合があるので、一例を示すものである。プラットホームPHに車両が入っていないとき、ホーム柵1は閉状態(図1(A)参照)となっている。閉状態になっているホーム柵1と固定柵Fとが協働して、プラットホームPHから軌道Tへの乗降客の転落を防いでいる。車両がプラットホームPHに停車すると、車両の乗務員の操作により、あるいは車両がプラットホームPHの適切な停止位置に停止した旨を検知する位置検知装置(不図示)により、ホーム柵1を開にする旨の信号が、固定支柱20に収容されている制御部に送信される。
【0036】
ホーム柵1は、開にする旨の信号を制御部が受信すると、制御部は、モータ21mを正回転で駆動する。モータ21mが正回転で駆動すると、無端ベルト21bが正方向に動き、無端ベルト21bに対して接続具21jを介して固定されている可動支柱30が上方に移動する。可動支柱30が上方に移動する際、固定支柱20に取り付けられているピンラック25に対し、可動支柱30に回転可能に取り付けられているピンギヤ35が噛み合っているので、可動支柱30が上方に移動するのに伴ってピンギヤ35が回転する。すると、ピンギヤ35に対して間接的に接続されている下部第1プーリ38b及び下部第2プーリ38sが回転し、下部第1プーリ38bに掛けられている第1ベルト39b及び下部第2プーリ38sに掛けられている第2ベルト39sが正方向に動く。そして、第1ベルト39bに取り付けられている下部制止バー11及び第2ベルト39sに取り付けられている中間制止バー12が上方に移動する。このとき、下部第1プーリ38bは下部第2プーリ38sよりも直径が大きいので、下部制止バー11は中間制止バー12よりも速い速度で上方に移動する。また、中間制止バー12は、可動支柱30に固定された上部制止バー13よりも速い速度で上方に移動する。したがって、下部制止バー11、中間制止バー12、上部制止バー13は、この順で鉛直方向への移動速度が速いことになる。可動支柱30が上限位置に到達すると、制御部は、モータ21mの駆動を停止する。このとき、下部制止バー11、中間制止バー12、上部制止バー13は、上部に集まって上下に隣接して静止することとなる。このようにして、ホーム柵1が開状態(図1(B)参照)になる。
【0037】
ホーム柵1が開状態になったら、車両の乗務員は、車両扉を開け、乗降客の乗降が可能な状態にする。乗降客の乗降が完了したら、車両の乗務員は、車両扉を閉じる。車両の乗務員は、車両扉を閉じた後、プラットホームPH上の安全を確認する。このとき、プラットホームPH上に配置されている駅係員も共同でプラットホームPH上の安全を確認することとしてもよい。車両の乗務員は、プラットホームPH上の安全を確認したら、ホーム柵1を閉にする旨の指令を発する。ホーム柵1は、閉にする旨の信号を制御部が受信すると、制御部は、モータ21mを逆回転で駆動する。モータ21mが逆回転で駆動すると、無端ベルト21bが逆方向に動き、可動支柱30が下方に移動する。そして、可動支柱30が下方に移動するのに伴ってピンギヤ35が回転し、下部第1プーリ38b及び下部第2プーリ38s並びに第1ベルト39b及び第2ベルト39sを介して、下部制止バー11及び中間制止バー12が下方に移動する。このとき、上部制止バー13は可動支柱30と同じ移動速度で下方に移動し、中間制止バー12は上部制止バー13よりも速い速度で下方に移動し、下部制止バー11は中間制止バー12よりも速い速度で下方に移動する。可動支柱30が下限位置に到達すると、制御部は、モータ21mの駆動を停止する。このとき、下部制止バー11はプラットホームPHの表面から概ね500mmの位置にあり、上部制止バー13は概ね固定支柱20の上端と同じ位置にあり、中間制止バー12は下部制止バー11と上部制止バー13との概ね中間にある。このようにして、ホーム柵1が閉状態(図1(A)参照)になる。
【0038】
ホーム柵1が閉状態になったら、車両の乗務員は再度プラットホームPH上の安全を確認する。プラットホームPH上に配置されている駅係員も共同でプラットホームPH上の安全を確認することとしてもよい。このとき、支柱50の全高が比較的低く抑えられているので、車両の乗務員あるいはプラットホームPH上の駅係員にとって、プラットホームPH上の視認可能な範囲が広くなり、安全確認の確実性を高めることができる。プラットホームPH上の安全確認が完了したら、車両の乗務員は、車両を発車させる。
【0039】
以上で説明したように、本実施の形態に係るホーム柵1によれば、可動支柱30の上下の移動に伴って回転するピンギヤ35によって下部制止バー11及び中間制止バー12を上下に移動させる構造なので、下部制止バー11及び中間制止バー12を上下に移動させるためのモータ等の電装部品を設けなくて済み、支柱50の高さを抑制することができると共に装置の軽量化を図ることができる。また、ピンギヤ35の回転から第1ベルト39b及び第2ベルト39sを介して下部制止バー11及び中間制止バー12を異なる速度で移動させることができ、可動支柱30が下限位置にあるときは下部制止バー11、中間制止バー12、上部制止バー13を適宜の間隔で配置しながら、可動支柱30が上限位置に到達したときに下部制止バー11、中間制止バー12、上部制止バー13を近接させて上方に集めることができる。
【0040】
以上の説明では、下部制止バー11、中間制止バー12、上部制止バー13が、それぞれ水平に延びるように配置されていることとしたが、一部又は全部が斜めに配置されていてもよく、これらが相互に平行でなくてもよい。なお、水平あるいは斜めに配置された制止バー10は、水平方向成分を有する方向に延びていることとなる。
【0041】
以上の説明では、仲介ベルト37及び仲介部38を介して可動ベルト39を駆動することとしたが、ピンギヤ35の側面に可動ベルト39を掛ける構造を設けることとして、あるいは元軸36aに可動ベルト39を掛ける構造(典型的にはプーリ)を設けることとして、仲介ベルト37及び仲介部38を省略してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ホーム柵
10 制止バー
11 下部制止バー
12 中間制止バー
20 固定支柱
21 可動支柱駆動部
21b 無端ベルト
21j 接続具
21m モータ
25 ピンラック
29 錘
30 可動支柱
35 ピンギヤ
39 ベルト
39b 第1ベルト
39s 第2ベルト
50 支柱
PH プラットホーム
図1
図2
図3
図4
図5