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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】エンジンのケース部材
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20221102BHJP
   F02F 1/00 20060101ALI20221102BHJP
   F01M 1/02 20060101ALI20221102BHJP
   F04C 14/26 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
F02F7/00 J
F02F1/00 S
F02F7/00 K
F01M1/02 Z
F04C14/26 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021514800
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2020004263
(87)【国際公開番号】W WO2020213229
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019076749
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 豊和
(72)【発明者】
【氏名】西村 年克
(72)【発明者】
【氏名】中村 忠男
(72)【発明者】
【氏名】渡井 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】小杉 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 壮大郎
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-127443(JP,A)
【文献】特開2004-027867(JP,A)
【文献】特開平09-280070(JP,A)
【文献】特開2016-156286(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038302(WO,A1)
【文献】中国実用新案第206176005(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 7/00
F02F 1/00
F01M 1/02
F04C 14/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの側面に取り付けられ、内部にクランクシャフトからの回転力をカムシャフトへ伝達する無端伝達体が配置されるエンジンのケース部材であって、
前記エンジンの側面に当接する当接部と、
前記当接部の内側において前記エンジンの側面との間に形成される空間内に前記無端伝達体を配置可能な収容部と、
前記エンジンに設けられたピストンの作動方向においてオイルパンに近い側に配置され、前記エンジンの潤滑用オイルを吐出するオイルポンプの吐出特性を電気的に変更可能な制御機器と、
前記ピストンの作動方向においてカムシャフトに近い側に配置され、前記収容部の内部と外部とを連通する開口部と、
前記開口部から前記収容部の外部に臨むコネクタと、
前記制御機器と前記コネクタとを電気的に接続し、前記収容部において前記当接部の内側に沿って配置されたハーネスと、
を備えたエンジンのケース部材。
【請求項2】
前記収容部には、前記オイルポンプと連通するオイル通路が、前記制御機器から前記コネクタ側へ向かって延び、かつ前記エンジン側に向かって突出するように一体に形成され、
前記ハーネスは、前記当接部の内側と前記オイル通路との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのケース部材。
【請求項3】
前記収容部は、前記オイル通路と対向するように膨出するセンサ取付部を有し、
前記ハーネスは、前記センサ取付部と前記オイル通路との間に形成された凹部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のエンジンのケース部材。
【請求項4】
前記オイル通路のうち前記センサ取付部と対向する部位に、前記オイル通路に沿って延びるリブが形成されており、
前記ハーネスは、前記センサ取付部と前記リブとの間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のエンジンのケース部材。
【請求項5】
前記オイルポンプは、前記収容部内に設けられ、
前記ハーネスは、前記当接部の内側と前記オイルポンプとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのケース部材。
【請求項6】
前記オイルポンプには、オイルを吐出する吐出ポートが前記エンジンの側面側へ突出するように設けられており、
前記ハーネスは、前記当接部の内側と前記吐出ポートの外周との間に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のエンジンのケース部材。
【請求項7】
前記吐出ポートの外周は、円弧状をなす円弧状面を有し、
前記ハーネスは、前記当接部の内側と協働して、前記円弧状面に追従して湾曲した状態で保持されることを特徴とする請求項6に記載のエンジンのケース部材。
【請求項8】
前記吐出ポートの外周には、この外周に沿って延びる保持部が前記当接部側へ突出して形成されており、
前記ハーネスは、前記保持部と、前記収容部のうち前記エンジンの側面と対向する面である底面とによって保持されていることを特徴とする請求項7に記載のエンジンのケース部材。
【請求項9】
前記制御機器は、前記オイルパン側の端部に設けられた制御機器取付部に取り付けられており、
前記制御機器取付部における前記制御機器の取り付け箇所よりも前記収容部の前記底面側に、前記当接部へ向かって開口する第1開口と、前記オイルパンへ向かって開口する第2開口とを連通する連通溝を形成し、前記連通溝内に前記ハーネスが配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのケース部材。
【請求項10】
前記底面のうち前記第2開口と対向する部位には、前記収容部側へ突出する突起部が形成されており、前記突起部は、前記収容部側へ前記ハーネスを方向付けることを特徴とする請求項9に記載のエンジンのケース部材。
【請求項11】
前記開口部における前記収容部の内部側には、前記当接部の内側に沿って延びる前記ハーネスの延出方向を前記コネクタ側へ変更するガイド部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのケース部材。
【請求項12】
エンジンの側面に取り付けられ、内部にクランクシャフトからの回転力をカムシャフトへ伝達する無端伝達体が配置されるエンジンのケース部材であって、
前記エンジンの側面に当接する当接部と、
前記当接部の内側において前記エンジンの側面との間に形成される空間内に前記無端伝達体を配置可能であり、前記エンジンの側面に対向する凸部または凹部が形成された収容部と、
前記エンジンに設けられたピストンの作動方向においてオイルパンに近い側に配置され、前記エンジンの潤滑用オイルを吐出するオイルポンプの吐出特性を電気的に変更可能な制御機器と、
前記ピストンの作動方向においてカムシャフトに近い側に配置され、前記収容部の内部と外部とを連通する開口部と、
前記開口部から前記収容部の外部に臨むコネクタと、
前記制御機器と前記コネクタとを電気的に接続し、前記凸部または前記凹部によって前記収容部内での位置が規制されたハーネスと、
を備えたエンジンのケース部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのケース部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オイルポンプを電気的に制御することによって吐出特性を変更可能な可変容量形オイルポンプが採用されている。このオイルポンプは、オイルパン内に貯留されているオイルを吸入するため、一般に、オイルパンの近傍に配置されており、クランクシャフトによって駆動されるようになっている。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の可変容量形オイルポンプをオイルパンの近傍に配置すると、オイルポンプの吐出特性を電気的に制御するための電磁弁等の制御機器もオイルパンの近傍に配置されることになる。
【0004】
一方、この制御機器は、ハーネスを介してエンジンの外側にあるコントロールユニットやバッテリ等に接続する必要があるが、これらコントロールユニットやバッテリ等は、オイルパンから離れたカムシャフト側の位置に配置されるのが通常である。この可変容量形オイルポンプの制御機器と接続するには、コネクタがカムシャフト側に位置している方が接続し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-140670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、制御機器から延びるハーネスをオイルパンの近傍からエンジンの外側に引き出すと、カムシャフト側にハーネスを導く際に、クランクシャフトによって駆動される補機等の周辺機器にハーネスが干渉する虞があった。
【0007】
本発明は、従来の実情に鑑みて案出されたもので、エンジンの外側に設けられた周辺機器と干渉せずに、オイルパンから離れたカムシャフト側の位置にハーネスを導くことが可能なエンジンのケース部材を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい態様の一つとして、ハーネスが収容部において当接部の内側に沿って配置される。
【0009】
また、他の好ましい態様の一つとして、凸部または凹部によって収容部内でのハーネスの位置が規制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、エンジンの外側に設けられた周辺機器と干渉せずに、オイルパンから離れたカムシャフト側の位置にハーネスを導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】エンジンの外観の一部を示す概略図である。
図2図1の矢印Z方向から見たときのエンジンの外観を示す矢視図である。
図3】ハーネス、コネクタ、ポンプカバーおよび電磁弁を取り付けた状態のチェーンケースの内側を示すチェーンケースの背面図である。
図4】ロータ等を収容した状態のチェーンケースの内側を示すチェーンケースの背面図である。
図5】(a)は、電磁弁が通電状態のときのオイルポンプの内部状態を示す平面図、(b)は、電磁弁が非通電状態のときのオイルポンプの内部状態を示す平面図である。
図6】オイルポンプ内のオイルの流れを示すオイルポンプの平面図である。
図7】電磁弁側から見たときのチェーンケース等の斜視図である。
図8図3の破線の円X1で囲む部分を示したチェーンケース等の正面図である。
図9図3の破線の円X2で囲む部分を示したチェーンケース等の斜視図である。
図10図3の線A-Aに沿って切断したチェーンケース等の断面図である。
図11】(a)は、ガイド部材を取り付けた状態の第1コネクタの近傍を示す正面図、(b)は、(a)の矢印Cの方向から見たときの第1コネクタ近傍を示す矢視図である。
図12】(a)は、ガイド部材を外した状態の第1コネクタの近傍を示す正面図、(b)は、(a)の矢印Dの方向から見たときの第1コネクタ近傍を示す矢視図である。
図13図3の線B-Bに沿って切断したチェーンケース等の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のエンジンのケース部材の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0013】
[エンジンの構成]
図1は、エンジン1の外観の一部を示す概略図である。図2は、図1の矢印Z方向から見たときのエンジン1の外観を示す矢視図である。なお、図1および図2では、エンジン1の内部の種々の構成要素を破線で示してある。
【0014】
エンジン1は、例えば直列4気筒のエンジンとして構成されており、ピストン2を摺動可能に収容するシリンダ84が形成されたシリンダブロック3を備えている。ピストン2は、コネクティングロッド85を介してクランクシャフト4に連結されている。クランクシャフト4は、シリンダブロック3に設けられた複数の軸受部によって回転可能に支持されている。クランクシャフト4の一端部の外周には、クランクシャフト4と一体に回転する駆動回転体であるクランクスプロケット5が固定されている。
【0015】
シリンダブロック3の上面には、シリンダヘッド6が固定されており、該シリンダヘッド6には、一対の吸気ポート86および一対の排気ポート87が形成されている。シリンダヘッド6の上部には、吸気ポート86の開閉作動に供する吸気弁88を駆動する第1カムシャフト7と、排気ポート87の開閉作動に供する排気弁89を駆動する第2カムシャフト8とが設けられている。吸気弁88および排気弁89の開閉は、第1、第2カムシャフト7,8の外周部に設けられた第1カム88a,89aによって第1、第2スプリング96,97を介して吸気弁88および排気弁89を駆動することにより行われる。第1、第2カムシャフト7,8の一端部の外周には、駆動回転体である第1、第2カムスプロケット9,10がそれぞれ固定されている。クランクスプロケット5および第1、第2カムスプロケット9,10には、無端伝達体であるタイミングチェーン11が巻き回されている。タイミングチェーン11は、クランクシャフト4からの回転力をクランクスプロケット5および第1、第2カムスプロケット9,10を介して第1、第2カムシャフト7,8へ伝達する。なお、タイミングチェーン11の代わりに、無端伝達体としてタイミングベルトを用いるようにしても良い。この場合、第1、第2カムスプロケット9,10およびクランクスプロケット5ではなく、第1、第2カムプーリおよびクランクプーリに、タイミングベルトが巻き回される。タイミングチェーン11およびスプロケット5,9,10は、シリンダブロック3およびシリンダヘッド6の側面と、この側面を閉塞するケース部材であるチェーンケース12との間の空間に収容されている。
【0016】
シリンダヘッド6およびチェーンケース12の上面は、ヘッドカバー13によって閉塞されている。
【0017】
一方、シリンダブロック3およびチェーンケース12の下面には、エンジン1における摺動部分を潤滑したり、バルブタイミング制御装置等の機器の駆動源となる潤滑用オイルを貯留するオイルパン14が取付固定されている。
【0018】
チェーンケース12の下部に、クランクシャフト4の回転によって駆動されることで上記摺動部や種々の機器類にオイルを供給するオイルポンプ15が設けられている。つまり、チェーンケース12の2つの端部12a,12bのうちピストン2の作動方向(図1の上下方向)においてオイルパン14に近い側の端部12aには、エンジン1における摺動部やバルブタイミング制御装置等の機器類にオイルを供給する可変容量形オイルポンプであるオイルポンプ15が設けられている。
【0019】
オイルポンプ15の下部には、該オイルポンプ15の吐出特性を電気的に変更可能な制御機器である電磁弁16が取り付けられている。この電磁弁16の一部は、オイルパン14内に配置されており、オイルパン14内からチェーンケース12の内側を通ってチェーンケース12の上部に引き回されたハーネス17を介して、第1コネクタ18に接続されている。この第1コネクタ18は、チェーンケース12の後述する第1側壁部21のうちピストン2の作動方向において第1、第2カムシャフト7,8に近い側に形成された貫通穴である開口部19内に一部が保持された状態で残部がチェーンケース12の外部に臨むように設けられている。第1コネクタ18は、図示せぬケーブルを介して、図外のコントロールユニットやバッテリ等に接続される。
【0020】
[チェーンケースの構成]
図3は、ハーネス17、第1コネクタ18、ポンプカバー29および電磁弁16を取り付けた状態のチェーンケース12の内側を示すチェーンケース12の背面図である。図4は、ロータ25等を収容した状態のチェーンケース12の内側を示すチェーンケース12の背面図である。
【0021】
チェーンケース12は、金属材料、例えばアルミニウム合金材料によってアルミダイカストで形成されている。チェーンケース12は、概ね長方形の板状をなす底壁部20と、底壁部20の両側縁から立ち上がる第1、第2側壁部21,22と、を備えている。チェーンケース12は、第1、第2側壁部21,22の内側においてシリンダブロック3およびシリンダヘッド6の側面と底壁部20との間の空間内に上述したタイミングチェーン11等を配置可能な収容部34を有している。第1、第2側壁部21,22は、チェーンケース12の電磁弁16側の端部12aから第1コネクタ18側の端部12bにかけて比較的長く連続して延びており、シリンダブロック3およびシリンダヘッド6の側面に接合される。第1、第2側壁部21,22は、シリンダブロック3およびシリンダヘッド6の側面への取付の際に該側面と当接する当接面である第1、第2当接部21a,22aを有している。第1当接部21aの所定の位置には、シリンダブロック3等への取付時に図示せぬ固定部材、例えばボルトが挿入される複数(本実施形態では6つ)のボルト貫通穴23が貫通形成されている。同様に、第2当接部22aの所定の位置には、シリンダブロック3等への取付時に図示せぬボルトが挿入される複数(本実施形態では8つ)のボルト貫通穴24が貫通形成されている。
【0022】
底壁部20の下部のほぼ中央の部位には、オイルポンプ15のポンプ構成体であるクランクシャフト4、ロータ25、複数(本実施形態では9つ)のベーン26およびカムリング27等を収容するポンプ収容部20aが形成されている。このポンプ収容部20a内にロータ25等を収容したうえで、チェーンケース12に、複数(本実施形態では8つ)の固定部材、例えばボルト28を介して、金属材料、例えばアルミニウム合金材料からなるポンプカバー29が取付固定される。
【0023】
ポンプカバー29のうち第2当接部22a寄りの部位には、オイルパン14へ向かって開口し、オイルパン14からオイルを吸入する吸入ポート30が開口形成されている。さらに、ポンプカバー29のうちクランクシャフト4と第1当接部21aとの間の第1当接部21a寄りの部位に、オイルポンプ15内のオイルを図示せぬメインオイルギャラリーへ吐出する吐出ポート31が形成されている。また、ポンプカバー29のうち吐出ポート31よりも第2当接部22a側にずれた部位には、メインオイルギャラリーからのオイルが供給され、電磁弁16、後述する第1制御油室54および第1オイル通路35aへオイルを導く中継ポート32が形成されている。さらに、ポンプカバー29のうち中継ポート32よりもチェーンケース12の端部12a側にずれた位置には、電磁弁16が取り付けられる制御機器取付部33が形成されている。
【0024】
底壁部20のうちオイルポンプ15よりも第1コネクタ18側の部位には、第1当接部21a寄りの位置に、底壁部20の内側の面、つまり収容部34の底面34aからシリンダブロック3およびシリンダヘッド6の側面へ向かって円弧状に突出する第1突出部35が形成されている。第1突出部35は、ポンプカバー29の上部から第1コネクタ18側へ直線的に連続している。第1突出部35の内部には、該第1突出部35に沿って直線的に延びる第1オイル通路35a(図3および図4に破線で示す)が形成されている。第1オイル通路35aは、オイルポンプ15の中継ポート32と連通しており、該中継ポート32を介してメインオイルギャラリーからのオイルが導かれるようになっている。
【0025】
また、底壁部20のうち第1突出部35のオイルポンプ15とは反対側の端部35bの外周と第2側壁部22との間の部位には、収容部34の底面34aからシリンダヘッド6の側面へ向かって円弧状に突出する第2突出部36が形成されている。第2突出部36は、第1突出部35と直交するように第1突出部35の端部35bから第2側壁部22まで直線的に連続している。第2突出部36の内部には、第1オイル通路35aと連通し、第1オイル通路35aと直交する第2オイル通路36a(図3および図4に破線で示す)が形成されている。また、第2突出部36の中央部には、第2オイル通路36aと連通し、第1、第2オイル通路35a,36aを介して導かれたオイルを図示せぬバルブタイミング制御装置へ供給する分岐部37が形成されている。
【0026】
第1側壁部21の収容部34側の面である内面21bには、チェーンケース12の幅方向(図3および図4の左右方向)において第2突出部36とオーバーラップする位置に、第1オイル通路35aを有する第1突出部35へ向かってブロック状に膨出するセンサ取付部38が膨出形成されている。このセンサ取付部38には、第1オイル通路35a内の油圧を検出する図示省略した油圧センサが取り付けられる。
【0027】
第1突出部35の外周には、センサ取付部38と対向する位置に、該センサ取付部38との間でチェーンケース12に対するハーネス17の移動を規制するリブ(凸部)39が、第1突出部35の外周からシリンダヘッド6の側面に向かって突出形成されている。リブ39は、第1突出部35に沿って直線的に延びている。
【0028】
底壁部20のうち第2突出部36よりもポンプカバー29側の部位には、チェーンケース12を補強する補強リブ40が、収容部34の底面34aからシリンダヘッド6の側面へ向かって突出形成されている。補強リブ40は、第2側壁部22から第1突出部35を越えて第1側壁部21まで直線的に連続している。補強リブ40の第1側壁部21寄りの部位には、補強リブ40からシリンダヘッド6の側面へ向かって突出する第1突起部(凸部)40aが形成されている。
【0029】
また、第1側壁部21の内面21bのうちセンサ取付部38と端部12b側に隣接する部位には、第1コネクタ18が取り付けられるコネクタ取付部41が第2側壁部22へ向かって膨出形成されている。チェーンケース12の幅方向に沿ったコネクタ取付部41の膨出長さは、チェーンケース12の幅方向に沿ったセンサ取付部38の膨出長さよりも短くなっている。コネクタ取付部41の収容部34側の面である内端面には、収容部34の内部と外部とを連通する連通穴、つまりチェーンケース12の内部と外部とを連通する貫通穴であり、かつ第1コネクタ18が挿入される開口部19が形成されている。開口部19は、貫通方向から見たときに円形状をなしている。また、コネクタ取付部41の内端面のうち開口部19と端部12b側に隣接する部位には、第1コネクタ18を支持するパススルーコネクタ42を介してボルト43がねじ留めされる雌ねじ穴41aが設けられている。
【0030】
ハーネス17は、電磁弁16と第1コネクタ18とを電気的に接続するものであり、2本の電線44a,44bの大部分をチューブ45によって被覆することにより構成されている。ハーネス17は、電磁弁16に接続されたハーネス用コネクタ46から吐出ポート31と第1当接部21aの間を通って第1当接部21aの内側の縁部に概ね沿って第1コネクタ18側へ延び、そして、ガイド部材47内を通ってパススルーコネクタ42に接続されている。このとき、ハーネス17は、第1突起部40aに当接し、センサ取付部38とリブ39との間を通ってパススルーコネクタ42に接続されている。また、ハーネス17は、吐出ポート31の付近に設けられたねじ48と、オイルポンプ15の上方に設けられたねじ49とによって収容部34の底面34aに取付固定されている。ねじ48,49は、合成樹脂材料から形成されており、頭部に、ハーネス17が挿入される円環状の挿入部48a,49aをそれぞれ有している。
【0031】
[オイルポンプの構成]
図5(a)は、電磁弁16が通電状態のときのオイルポンプ15の内部状態を示す平面図、図5(b)は、電磁弁16が非通電状態のときのオイルポンプ15の内部状態を示す平面図である。図6は、オイルポンプ15内のオイルの流れを示すオイルポンプ15の平面図である。
【0032】
図5(a)および図5(b)に示すように、ポンプ収容部20a内には、回転軸であるクランクシャフト4と、該クランクシャフト4の外周部に組み付けされたロータ25と、ベーン26、カムリング27、第1コイルばね50等とが収容されている。
【0033】
カムリング27の外周域には、ピボットピン51と、第1、第2シール部材52,53とが設けられており、これらピボットピン51および第1、第2シール部材52,53によって一対の第1、第2制御油室54,55が画定されている。
【0034】
また、吐出ポート31から吐出された油圧は、図6に矢印Eで示すようにメインオイルギャラリー(M/G)へ供給される。さらに、メインオイルギャラリーへ供給された油圧は、図6に矢印Fで示すように中継ポート32に供給される。中継ポート32に供給された油圧は、図6に破線の矢印Gで示すように第1制御油室54に導かれるとともに、図6に破線の矢印Hで示すように電磁弁16に導かれる。
【0035】
電磁弁16は、後述するスプール弁59の移動方向における軸方向位置に応じてオイルの給排に供する弁部56と、通電によってスプール弁59の軸方向位置を制御するソレノイド部57と、を備えている。
【0036】
弁部56は、概ね円筒状をなすバルブボディ58と、該バルブボディ58内に摺動可能に配置されたスプール弁59と、バルブボディ58の内周部に固定されたストッパ60と、ストッパ60に当接するリテーナ61と、該リテーナ61とスプール弁59との間に所定のセット荷重が付与された状態で配置された第2コイルばね62と、を備えている。
【0037】
ソレノイド部57は、ハーネス17の一端部に設けられたハーネス用コネクタ46に接続される第2コネクタ63を有している。ソレノイド部57は、第2コネクタ63を介して図示せぬコイルに通電したときに発生する電磁力によって図示せぬ可動鉄心が図示せぬ固定鉄心に吸着されることに伴い、可動鉄心と一体に移動可能なロッド57aが、第2コイルばね62の付勢力に抗してスプール弁59をリテーナ61側に押圧するようになっている。
【0038】
第1制御油室54には、図6に破線の矢印Gで示すように、油圧が、メインオイルギャラリーから中継ポート32を介して供給される。これにより、第1制御油室54に面するカムリング27の外周面によって構成された第1受圧面27aが、中継ポート32から導入される油圧を受けて、第1コイルばね50の付勢力に抗してカムリング27の偏心量を減少させる方向(図5(a)、図5(b)、図6中の時計方向)へ揺動力(移動力)を付与する。
【0039】
一方、第2制御油室55も、中継ポート32を介して油圧が供給される電磁弁16のオン、オフ作動により変更されるスプール弁59の軸方向位置に応じて適宜導入される(図6の破線の矢印I)。これにより、第2制御油室55に面するカムリング27の外周面によって構成される第2受圧面27bが、電磁弁16を介して導入される油圧を受けて、カムリング27の偏心量を増大させる方向(図5(a)、図5(b)、図6中の反時計方向)へ揺動力(移動力)が付与される。
【0040】
かかるオイルポンプ15において、図5(a)に示すように、電磁弁16のコイルの通電時には、メインオイルギャラリーからの油圧が第1制御油室54に導かれ、一方、第2制御油室55からの油圧が電磁弁16を介して外部に排出される。
【0041】
また、図5(b)に示すように、電磁弁16のコイルの非通電時には、メインオイルギャラリーからの油圧が第1制御油室54に導かれるとともに、電磁弁16を介して第2制御油室55に導かれる。
【0042】
図7は、電磁弁16側から見たときのチェーンケース12等の斜視図である。
【0043】
チェーンケース12の電磁弁16側の端部12aには、第1当接部21aと直交し、オイルパン14のフランジ部が取り付けられる取付面64が形成されている。この取付面64には、複数(本実施形態では2つ)の雌ねじ穴65が形成されており、各雌ねじ穴65には、オイルパン14のフランジ部を取り付ける際に用いられる図示せぬボルトがねじ留めされる。
【0044】
また、ポンプカバー29のうち第1当接部21a寄りの部位には、電磁弁16が取り付けられる制御機器取付部33が一体に形成されている。制御機器取付部33は、電磁弁16のバルブボディ58が挿入保持される有底円筒状のバルブボディ保持部66を有している。バルブボディ保持部66は、大部分がチェーンケース12の内側の収容部34内に収容されており、一部が取付面64よりもオイルパン14側(図7の手前側)に位置するように設けられている。バルブボディ保持部66の外周面には、収容部34の底面34aへ向かって突出する突条部66aが突出形成されている。突条部66aには、バルブボディ保持部66側から収容部34側に向かって斜め下方(取付面64側)に延び、突条部66aと底面34aとの間にハーネス17を配置する連通溝67が形成されている。連通溝67は、制御機器取付部33における電磁弁16の取り付け箇所、すなわちバルブボディ保持部66よりも収容部34の底面34a側に位置し、かつ第1当接部21aへ向かって開口する第1開口68と、同じくバルブボディ保持部66よりも収容部34の底面34a側に位置し、かつオイルパン14へ向かって開口する第2開口69とを連通する。連通溝67の溝幅は、ハーネス17のチューブ45の外径に対応する幅となるように設定されている。また、チューブ45の外径よりも僅かに狭くなるように連通溝67の溝幅を設定することで、ハーネス17に対する保持力を大きくするようにしても良い。
【0045】
連通溝67の側壁67aの内側の面は、バルブボディ保持部66の外周から離れるにつれて収容部34の内部側(図7の奧行き側)へ向かって傾斜し、バルブボディ保持部66側へハーネス17を持ち上げる傾斜面67bとなっている。
【0046】
また、連通溝67の側壁67aと収容部34の底面34aとの間の隙間90の大きさは、ハーネス17のチューブ45の外径よりも小さくなるように設定されている。
【0047】
底面34aのうち第2開口69と対向する部位には、ハーネス17がオイルパン14の側壁に向かわないように取付面64よりも収容部34側へハーネス17を方向付ける第2突起部(凸部)70が形成されている。第2突起部70は、図7に示すように、突条部66aに対して互い違いとなるように突出形成されている。第2突起部70は、第1当接部21a側へ向かうにつれて突出高さが増加する円錐テーパ面70aを有している。第2突起部70と連通溝67の側壁67aとの間の隙間91の大きさは、ハーネス17のチューブ45の外径よりも小さくなるように設定されている。
【0048】
ハーネス17は、2本の電線44a,44bがチューブ45によって被覆され、図7に示すように、ハーネス17の一端部で、電線44a,44bがチューブ45から露出するように構成されている。この露出した電線44a,44bがハーネス用コネクタ46に接続されている。このハーネス用コネクタ46は、オイルパン14内に配置されるソレノイド部57の端部に設けられた第2コネクタ63に取り付けられている。露出した電線44a,44bに近いハーネス17の部分(チューブ45で被覆された部分)は、ハーネス17が挿入される円環状の挿入部71aを頭部に有する合成樹脂製のねじ71を介して、バルブボディ保持部66から張り出したフランジ部66bにねじ留めされている。ねじ71は、取付面64よりもオイルパン14側(図7の手前側)に位置している(図3参照)。このため、ねじ71の挿入部71aによって保持されるハーネス17の部分も、取付面64よりもオイルパン14側に位置している。そして、ハーネス17は、連通溝67内を通ってチェーンケース12の第1当接部21a側へ引き回される。ハーネス17が連通溝67内に配置された状態では、ハーネス17は、側壁67aの内側の面である傾斜面67bによって、バルブボディ保持部66側へ持ち上げられている。さらに、第2開口部19から取付面64側へ延びようとするハーネス17は、第2突起部70の円錐テーパ面70aによって、取付面64よりも収容部34側へ方向付けられている。
【0049】
図8は、図3の破線の円X1で囲む部分を示したチェーンケース12等の正面図である。
【0050】
図8に示すように、第1側壁部21の内面21bには、該内面21bからチェーンケース12の外部側へ窪んだ窪み部21cが設けられている。この窪み部21cと対向するポンプカバー29の部位には、該ポンプカバー29からシリンダブロック3の側面へ向かって円筒状に突出する吐出ポート31が形成されている。吐出ポート31の筒状の外壁部(凸部)31aの外周縁部には、収容部34の底面34aとの間でハーネス17の外周部を保持する保持部31bが、第1側壁部21の窪み部21cへ向かって突出形成されている。また、保持部31bは、吐出ポート31の外周縁部に沿って円弧状に延びている。保持部31bと窪み部21cとの間の隙間92の大きさは、ハーネス17の外径(チューブ45の外径)と同等か、またはハーネス17の外径よりも小さくなるように形成されている。保持部31bは、収容部34の底面34aと対向する図示せぬ対向面を有している。保持部31bの対向面と底面34aとの間には、ハーネス17の外周部が嵌め込まれる保持溝93が設けられている。保持溝93の溝幅は、ハーネス17の外径に対応する大きさに設定されている。また、ハーネス17の外径よりも僅かに狭くなるように保持溝93の溝幅を設定することで、ハーネス17に対する保持力を大きくするようにしても良い。
【0051】
ポンプカバー29のうち吐出ポート31とバルブボディ保持部66との間の部位には、ボルト28が挿入される図示せぬ貫通穴を有し、三角形の板状をなす第1固定部材設置部(凸部)72が、台座状に底面34aに対して突出形成されている。第1固定部材設置部72は、1つの角部が丸められて形成された第1円弧部72aを有している。
【0052】
また、第1側壁部21の内面21bのうち第1固定部材設置部72と対向する部位には、内面21bから第1固定部材設置部72の第1円弧部72aへ向かって突出する突部(凸部)73が突出形成されている。突部73は、ボルト貫通穴23の貫通方向から見たときの形状が概ね円形をなしており、突部73の外周に沿って円弧状に湾曲した第2円弧部73aを有している。突部73の第2円弧部73aと第1固定部材設置部72の第1円弧部72aとの間には、ハーネス17の外周部が嵌め込まれる保持溝94が設けられている。保持溝94の溝幅は、ハーネス17の外径(チューブ45の外径)に対応する大きさに設定されている。また、ハーネス17の外径よりも僅かに狭くなるように保持溝94の溝幅を設定することで、ハーネス17に対する保持力を大きくするようにしても良い。
【0053】
同様に、オイルポンプ15のうち吐出ポート31を挟んで第1固定部材設置部72と反対側の部位には、ボルト28が挿入される図示せぬ貫通穴を有する第2固定部材設置部(凸部)74が、台座状に底面34aに対して突出形成されている。第2固定部材設置部74は、ボルト貫通穴23が形成されたボス部75の内側の面であるボス部内面75aと対向する位置に、ハーネス17と接触する接触部74aを有している。ボス部75のボス部内面75aと第2固定部材設置部74の接触部74aとの間には、ハーネス17の外周部が嵌め込まれる保持溝95が設けられている。保持溝95の溝幅は、ハーネス17の外径(チューブ45の外径)に対応する大きさに設定されている。また、ハーネス17の外径よりも僅かに狭くなるように保持溝95の溝幅を設定することで、ハーネス17に対する保持力を大きくするようにしても良い。
【0054】
ハーネス17は、保持溝94,93,95を通って第1コネクタ18側へ引き回されている。このとき、ハーネス17は、第1当接部21aの内面21bと協働して、吐出ポート31の外周に設けられた円弧状面31cに追従して湾曲した状態で保持されるとともに、底面34aと保持部31bの対向面とによって保持されている。さらに、ハーネス17は、第2円弧部73aと第1円弧部72aとによって形成される保持溝94に嵌入して保持されるとともに、ボス部内面75aと接触部74aとによって形成される保持溝95に嵌入して保持されている。このように保持されたハーネス17は、第1当接部21aの内側の縁部に概ね沿って第1コネクタ18側へ延びている。
【0055】
図9は、図3の破線の円X2で囲む部分を示したチェーンケース12等の斜視図である。図10は、図3の線A-Aに沿って切断したチェーンケース12等の断面図である。
【0056】
第1側壁部21の内面21bには、第1突出部35の端部35bと対向するボックス状のセンサ取付部38が膨出形成されている。センサ取付部38は、第1当接部21aよりも底面34a側にオフセットした位置に形成されている。
【0057】
第1突出部35は、該第1突出部35の外周面からシリンダヘッド6の側面へ向かって突出するリブ39を有している。リブ39は、センサ取付部38と対向する位置に設けられており、第1突出部35に沿って上下方向へ直線状に延びている。リブ39および第1突出部35とセンサ取付部38との間には、ハーネス17が配置される凹部76が形成されている。凹部76は、第1当接部21aと概ね平行であるセンサ取付部38の面38aに対して第1当接部21aとは反対側に円弧状に窪むように形成されている。凹部76の溝幅および深さは、ハーネス17の外径よりも大きくなるように設定されている。なお、凹部76の溝幅は、ハーネス17の外径(チューブ45の外径)に対応した幅や、ハーネス17の外径よりも僅かに小さい幅に設定されても良い。
【0058】
第1突出部35よりもオイルポンプ15側に設けられた補強リブ40には、補強リブ40からシリンダヘッド6の側面へ向かって突出する第1突起部40aが形成されている。第1突起部40aは、補強リブ40のうちリブ39とチェーンケース12の長手方向(図9の上下方向)にオーバーラップする位置に形成されている。第1突起部40aは、ハーネス17の外周部と当接することでハーネス17の第2突出部36側への移動を規制する規制部40bを有している。
【0059】
ハーネス17の第1コネクタ18側の端部には、第1当接部21aの内側の縁部に概ね沿って延びるハーネス17の延出方向をパススルーコネクタ42側へ変更するガイド部材47が、合成樹脂製の結束バンド77によって取り付けられている。ガイド部材47は、パススルーコネクタ42に設けられた端子収容部78に取り付けられている。
【0060】
図11(a)は、ガイド部材47を取り付けた状態の第1コネクタ18の近傍を示す正面図、図11(b)は、図11(a)の矢印Cの方向から見たときの第1コネクタ18近傍を示す矢視図である。図12(a)は、ガイド部材47を外した状態の第1コネクタ18の近傍を示す正面図、図12(b)は、図12(a)の矢印Dの方向から見たときの第1コネクタ18近傍を示す矢視図である。
【0061】
第1コネクタ18は、合成樹脂材料によって有底円筒状に形成されている。第1コネクタ18の軸方向一端部の外周面には、環状に連続するゴム製の2つのシール部材79が嵌め込まれる2つの環状溝80がそれぞれ設けられている。
【0062】
また、第1コネクタ18の軸方向一端面18aには、合成樹脂材料からなる板状のパススルーコネクタ42が取り付けられている。パススルーコネクタ42には、合成樹脂製の端子収容部78が取り付けられる。端子収容部78は、上部が開口したボックス状に形成されており、端子収容部78と一体に設けられた板状の仕切り壁78aによって仕切られた2つの端子挿入部78b,78bを有している。端子挿入部78b,78bには、ハーネス17のチューブ45から露出する2本の電線44a,44bの先端に設けられた端子81a,81bが挿入される。端子81a,81bは、端子収容部78およびパススルーコネクタ42を介して第1コネクタ18に電気的に接続されている。また、パススルーコネクタ42には、ボルト挿入孔42aがパススルーコネクタ42の厚み方向に沿って貫通形成されている。ボルト挿入孔42aには、パススルーコネクタ42をコネクタ取付部41の雌ねじ穴41a(図4参照)に取り付ける図示省略したボルトが挿入される。
【0063】
端子収容部78およびハーネス17には、第1当接部21aの内側の縁部に概ね沿って延びるハーネス17の延出方向を第1コネクタ18側へ向かう方向に変更するガイド部材47が取り付けられる。ガイド部材47は、端子収容部78の端子挿入部78b,78bと、チューブ45から露出した電線44a,44bと、該電線44a,44bの近傍に設けられたチューブ45の圧着部45aとを覆う合成樹脂製のカバーとして形成されている。ガイド部材47は、図11(a)に示すようにL字状に形成されており、端子収容部78に取り付けられる本体部47aと、該本体部47aからチューブ45の圧着部45aへ拡張された拡張部47bとを有している。本体部47aは、端子収容部78の両側縁から外方へ張り出した長方形の板状の張出部78cが嵌め込まれる嵌合部82と、端子収容部78に設けられた爪部78dがスナップフィットにより弾性的に当接する切り欠き部83と、を有している。拡張部47bは、チューブ45の圧着部45aに嵌め込まれる溝凹部47cを有している。この溝凹部47cに合成樹脂製の結束バンド77が巻かれることにより、溝凹部47cがチューブ45の圧着部45aに固定される。このように構成されたガイド部材47の拡張部47bおよび本体部47aの内部に電線44a,44bが収容されることにより、第1当接部21aの内側の縁部に概ね沿って延びるハーネス17の延出方向が第1コネクタ18側へ変更されるようになっている。
【0064】
図13は、図3の線B-Bに沿って切断したチェーンケース12等の断面図である。なお、図13では、第1コネクタ18や、これに付随するパススルーコネクタ42等については、断面図として示していない。
【0065】
図13に示すように、貫通穴である開口部19は、第1側壁部21に対して傾斜するように第1側壁部21に形成されている。つまり、開口部19は、チェーンケース12の外部から内部へ、つまり収容部34の外部から内部へ向かうにつれて制御機器取付部33側に傾斜するように第1側壁部21に形成されている。第1コネクタ18が開口部19に挿入された状態では、第1コネクタ18は、開口部19から収容部34の外部に臨んでおり、第1コネクタ18の2つの環状溝80に嵌め込まれた環状のシール部材79によって収容部34が液密にシールされている。
【0066】
[本実施形態の効果]
従来技術では、ハーネスがオイルパン近傍からチェーンケースの外部へ導出されて第1、第2カムシャフト側へ引き回されていたため、ハーネスは、クランクシャフトによって駆動される種々の機器類と干渉する虞があった。
【0067】
これに対し、本実施形態では、ハーネス17が、チェーンケース12の内側に設けられた収容部34において、オイルパン14側から第1当接部21aの内側の縁部に概ね沿って第1、第2カムシャフト7,8側へ延びている。これにより、ハーネス17と上記機器類との干渉を抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、ハーネス17は、センサ取付部38と、第1オイル通路35aを有する第1突出部35との間に形成された凹部76に配置されている。これにより、収容部34内におけるハーネス17の位置を規制し、ハーネス17とタイミングチェーン11との干渉を抑制することができる。
【0069】
なお、当然のことながら、凹部76の溝幅をハーネス17の外径と対応させるか、もしくはハーネス17の外径よりも僅かに小さくして、凹部76の側壁によってハーネス17の外周部を両側から保持すれば、収容部34内におけるハーネス17の位置をさらに規制し、ハーネス17とタイミングチェーン11との干渉をさらに抑制することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、第1オイル通路35aを有する第1突出部35のうちセンサ取付部38と対向する部位に、第1突出部35に沿って延びるリブ39が形成されている。このリブ39により、センサ取付部38と第1突出部35との間の凹部76の深さが大きく確保される。従って、ハーネス17がリブ39を越えて凹部76から離脱し、収容部34の中央に配置されたタイミングチェーン11側へ移動することを抑制することができる。よって、ハーネス17とタイミングチェーン11との干渉をさらに抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、ハーネス17は、第1側壁部21の内面21bと協働して、吐出ポート31の外周に設けられた円弧状面31cに追従して湾曲した状態で保持される。このため、ハーネス17は、該ハーネス17の可撓性によって突っ張った状態で、円弧状面31cと内面21bとに接触しながら保持される。これにより、ハーネス17が第2当接部22a側へ移動し難くなり、ハーネス17とタイミングチェーン11との干渉を効率的に抑制することができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、吐出ポート31の外壁部31aの外周縁部に、保持部31bが、第1側壁部21の窪み部21cへ向かって突出形成されている。さらに、保持部31bの対向面と底面34aとの間には、ハーネス17の外周部が嵌め込まれる保持溝93が設けられている。従って、ハーネス17が、チェーンケース12に対してさらに強固に保持され、シリンダブロック3側へ脱落し難くなる。よって、ハーネス17とタイミングチェーン11との干渉をさらに抑制することができる。しかも、保持部31bと窪み部21cとの間の隙間92の大きさがハーネス17の外径と同等か、またはハーネス17の外径よりも小さくなるように形成されていることから、シリンダブロック3側へのハーネス17の脱落をさらに抑制し、ハーネス17とタイミングチェーン11との干渉を効率的に抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、ハーネス17は、第1当接部21aへ向かって開口する第1開口68とオイルパン14へ向かって開口する第2開口69とを連通する連通溝67内に配置される。連通溝67の側壁67aは、バルブボディ保持部66側へハーネス17を持ち上げる傾斜面67bを有している。これにより、第1側壁部21とポンプカバー29との間の空間を通って第1コネクタ18側へハーネス17を導出し易くすることができる。
【0074】
さらに、本実施形態では、連通溝67の側壁67aと収容部34の底面34aとの間の隙間90の大きさが、ハーネス17の外径よりも小さくなるように設定されている。これにより、ハーネス17が連通溝67から脱落し、タイミングチェーン11と干渉することを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、底面34aのうち第2開口69と対向する部位には、収容部34側へ突出する第2突起部70が形成されている。この第2突起部70は、円錐テーパ面70aを有しており、該円錐テーパ面70aは、第2開口69からオイルパン14の側壁に向かって延びようとするハーネス17を取付面64よりも収容部34側へ方向付ける。さらに、第2突起部70と連通溝67の側壁67aとの間の隙間91の大きさが、ハーネス17の外径よりも小さくなるように設定されているので、連通溝67からのハーネス17の脱落が抑制される。従って、ハーネス17とオイルパン14の側壁との干渉を抑制するとともに、チェーンケース12へのオイルパン14の取付時に両者の間へのハーネス17の噛み込みを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、シリンダヘッド6の側面に向かって突出する第1突起部40aがチェーンケース12に突出形成されている。第1突起部40aは、ハーネス17の外周部と当接することでハーネス17の第2突出部36側への移動を規制する規制部40bを有している。この規制部40bにより、第2当接部22a側へのハーネス17の移動を規制することで、ハーネス17とタイミングチェーン11との干渉を抑制することができる。
【0077】
以上説明した実施形態に基づくエンジンのケース部材としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
【0078】
エンジンの側面に取り付けられ、内部にクランクシャフトからの回転力をカムシャフトへ伝達する無端伝達体が配置されるエンジンのケース部材は、その一態様として、前記エンジンの側面に当接する当接部と、前記当接部の内側において前記エンジンの側面との間に形成される空間内に前記無端伝達体を配置可能な収容部と、前記エンジンに設けられたピストンの作動方向においてオイルパンに近い側に配置され、前記エンジンの潤滑用オイルを吐出するオイルポンプの吐出特性を電気的に変更可能な制御機器と、前記ピストンの作動方向においてカムシャフトに近い側に配置され、前記収容部の内部と外部とを連通する開口部と、前記開口部から前記収容部の外部に臨むコネクタと、前記制御機器と前記コネクタとを電気的に接続し、前記収容部において前記当接部の内側に沿って配置されたハーネスと、を備える。
【0079】
前記エンジンのケース部材の好ましい態様において、前記収容部には、前記オイルポンプと連通するオイル通路が、前記制御機器から前記コネクタ側へ向かって延び、かつ前記エンジン側に向かって突出するように一体に形成され、前記ハーネスは、前記当接部の内側と前記オイル通路との間に配置されている。
【0080】
別の好ましい態様では、前記エンジンのケース部材の態様のいずれかにおいて、前記収容部は、前記オイル通路と対向するように膨出するセンサ取付部を有し、前記ハーネスは、前記センサ取付部と前記オイル通路との間に形成された凹部に配置されている。
【0081】
別の好ましい態様では、前記オイル通路のうち前記センサ取付部と対向する部位に、前記オイル通路に沿って延びるリブが形成されており、前記ハーネスは、前記センサ取付部と前記リブとの間に配置されている。
【0082】
別の好ましい態様では、前記エンジンのケース部材の態様のいずれかにおいて、前記オイルポンプは、前記収容部内に設けられ、前記ハーネスは、前記当接部の内側と前記オイルポンプとの間に配置されている。
【0083】
別の好ましい態様では、前記エンジンのケース部材の態様のいずれかにおいて、前記オイルポンプには、オイルを吐出する吐出ポートが前記エンジンの側面側へ突出するように設けられており、前記ハーネスは、前記当接部の内側と前記吐出ポートの外周との間に配置されている。
【0084】
別の好ましい態様では、前記エンジンのケース部材の態様のいずれかにおいて、前記吐出ポートの外周は、円弧状をなす円弧状面を有し、前記ハーネスは、前記当接部の内側と協働して、前記円弧状面に追従して湾曲した状態で保持される。
【0085】
別の好ましい態様では、前記エンジンのケース部材の態様のいずれかにおいて、前記吐出ポートの外周には、この外周に沿って延びる保持部が前記当接部側へ突出して形成されており、前記ハーネスは、前記保持部と、前記収容部のうち前記エンジンの側面と対向する面である底面とによって保持されている。
【0086】
別の好ましい態様では、前記エンジンのケース部材の態様のいずれかにおいて、前記制御機器は、前記オイルパン側の端部に設けられた制御機器取付部に取り付けられており、前記制御機器取付部における前記制御機器の取り付け箇所よりも前記収容部の前記底面側に、前記当接部へ向かって開口する第1開口と、前記オイルパンへ向かって開口する第2開口とを連通する連通溝を形成し、前記連通溝内に前記ハーネスが配置されている。
【0087】
別の好ましい態様では、前記エンジンのケース部材の態様のいずれかにおいて、前記底面のうち前記第2開口と対向する部位には、前記収容部側へ突出する突起部が形成されており、前記突起部は、前記収容部側へ前記ハーネスを方向付ける。
【0088】
別の好ましい態様では、前記エンジンのケース部材の態様のいずれかにおいて、前記開口部における前記収容部の内部側には、前記当接部の内側に沿って延びる前記ハーネスの延出方向を前記コネクタ側へ変更するガイド部材が取り付けられている。
【0089】
以上説明した実施形態に基づくエンジンの他のケース部材としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
【0090】
エンジンの側面に取り付けられ、内部にクランクシャフトからの回転力をカムシャフトへ伝達する無端伝達体が配置されるエンジンのケース部材は、その一態様として、前記エンジンの側面に当接する当接部と、前記当接部の内側において前記エンジンの側面との間に形成される空間内に前記無端伝達体を配置可能であり、前記エンジンの側面に対向する凸部または凹部が形成された収容部と、前記エンジンに設けられたピストンの作動方向においてオイルパンに近い側に配置され、前記エンジンの潤滑用オイルを吐出するオイルポンプの吐出特性を電気的に変更可能な制御機器と、前記ピストンの作動方向においてカムシャフトに近い側に配置され、前記収容部の内部と外部とを連通する開口部と、前記開口部から前記収容部の外部に臨むコネクタと、前記制御機器と前記コネクタとを電気的に接続し、前記凸部または前記凹部によって前記収容部内での位置が規制されたハーネスと、を備える。
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