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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法および太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0747 20120101AFI20221102BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H01L31/06 455
H01L31/04 420
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021515969
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2020015915
(87)【国際公開番号】W WO2020217999
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019082185
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】小西 克典
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 勇人
(72)【発明者】
【氏名】足立 大輔
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-072209(JP,A)
【文献】特開2017-157781(JP,A)
【文献】特開2014-056918(JP,A)
【文献】特開2014-075526(JP,A)
【文献】特開2016-127252(JP,A)
【文献】特開2013-191656(JP,A)
【文献】特開2010-129872(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076300(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/157525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0747、31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側に、第1真性半導体層の材料膜および前記第1導電型半導体層の材料膜を順に形成する第1半導体層材料膜形成工程と、
前記第1導電型半導体層の材料膜の上に、リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、
前記第2領域における前記リフトオフ層、前記第1導電型半導体層の材料膜、および前記第1真性半導体層の材料膜の膜厚方向の一部を除去することにより、前記第1領域に、前記第1真性半導体層、パターン化された前記第1導電型半導体層および前記リフトオフ層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記第1領域における前記リフトオフ層および前記第2領域における前記第1真性半導体層の上に、第2真性半導体層の材料膜および前記第2導電型半導体層の材料膜を順に形成する第2半導体層材料膜形成工程と、
前記リフトオフ層を除去することにより、前記第1領域における前記第2導電型半導体層の材料膜および前記第2真性半導体層の材料膜を除去し、前記第2領域に、前記第1真性半導体層、パターン化された前記第2真性半導体層および前記第2導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、
を含み、
前記第1半導体層形成工程において、
レジストをマスクとして用いて、前記第2領域における前記リフトオフ層を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記リフトオフ層を形成した後に、前記レジストを除去し、
パターン化された前記リフトオフ層をマスクとして、前記第2領域における前記第1導電型半導体層の材料膜、および前記第1真性半導体層の材料膜の膜厚方向の一部を除去することにより、前記第1領域に、前記第1真性半導体層、およびパターン化された前記第1導電型半導体層を形成する、
太陽電池の製造方法。
【請求項2】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側に、第1真性半導体層の材料膜および前記第1導電型半導体層の材料膜を順に形成する第1半導体層材料膜形成工程と、
前記第1導電型半導体層の材料膜の上に、リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、
前記第2領域における前記リフトオフ層、前記第1導電型半導体層の材料膜、および前記第1真性半導体層の材料膜の膜厚方向の一部を除去することにより、前記第1領域に、前記第1真性半導体層、パターン化された前記第1導電型半導体層および前記リフトオフ層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記第1領域における前記リフトオフ層および前記第2領域における前記第1真性半導体層の上に、第2真性半導体層の材料膜および前記第2導電型半導体層の材料膜を順に形成する第2半導体層材料膜形成工程と、
前記リフトオフ層を除去することにより、前記第1領域における前記第2導電型半導体層の材料膜および前記第2真性半導体層の材料膜を除去し、前記第2領域に、前記第1真性半導体層、パターン化された前記第2真性半導体層および前記第2導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、
を含み、
前記第1半導体層形成工程において、プラズマエッチング法を用いて、前記第2領域における前記リフトオフ層、前記第1導電型半導体層の材料膜、および前記第1真性半導体層の材料膜の膜厚方向の一部を除去する、
太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記第2半導体層材料膜形成工程および前記第2半導体層形成工程において、前記第2真性半導体層の材料膜および前記第2真性半導体層は、前記第2導電型のドーパントを含む、請求項1または2に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面電極型(バックコンタクト型)の太陽電池の製造方法および太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を用いた太陽電池として、受光面側および裏面側の両面に電極が形成された両面電極型の太陽電池と、裏面側のみに電極が形成された裏面電極型の太陽電池とがある。両面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されるため、この電極により太陽光が遮蔽されてしまう。一方、裏面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されないため、両面電極型の太陽電池と比較して太陽光の受光率が高い。特許文献1には、裏面電極型の太陽電池が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の太陽電池は、光電変換層として機能する半導体基板と、半導体基板の裏面側の一部に順に積層された第1真性半導体層、第1導電型半導体層および第1電極層と、半導体基板の裏面側の他の一部に順に積層された第2真性半導体層、第2導電型半導体層および第2電極層とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-75526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、第1真性半導体層および第1導電型半導体層のパターニング(1回目のパターニング)と、第2真性半導体層および第2導電型半導体層のパターニング(2回目のパターニング)において、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法が用いられる。しかし、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法では、例えばスピンコート法によるフォトレジスト塗布、フォトレジスト乾燥、フォトレジスト露光、フォトレジスト現像、フォトレジストをマスクとして用いた半導体層のエッチング、およびフォトレジスト剥離のプロセスが必要であり、プロセスが複雑であった。
【0006】
この点に関し、特許文献1には、2回目のパターニングにおいて、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法により、パターニングのプロセスの簡略化を図る技術が知られている。リフトオフ層は、1回目のパターニングの前に形成され、1回目のパターニングにおいて半導体層とともにパターニングされる。この1回目のパターニングの際、半導体基板の裏面側の他の一部が露出するため、その後、露出した半導体基板の表面を洗浄する必要がある。
【0007】
この基板洗浄工程において、洗浄溶液(例えば、フッ酸)によりリフトオフ層がエッチングされ、リフトオフ層の膜厚が減少してしまうことがあった。リフトオフ層の膜厚が減少すると、2回目のパターニングにおいて、リフトオフ層によるリフトオフ性が低下してしまう(例えば、2回目のパターニングの前にリフトオフ層が剥離してしまい、2回目のパターニングにおいてリフトオフプロセスが正常に行われなくなってしまう)。
【0008】
本発明は、リフトオフ層によるリフトオフ性の低下を回避する太陽電池の製造方法、およびその製造方法によって製造された太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記他方主面側に、第1真性半導体層の材料膜および前記第1導電型半導体層の材料膜を順に形成する第1半導体層材料膜形成工程と、前記第1導電型半導体層の材料膜の上に、リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、前記第2領域における前記リフトオフ層、前記第1導電型半導体層の材料膜、および前記第1真性半導体層の材料膜の膜厚方向の一部を除去することにより、前記第1領域に、前記第1真性半導体層、パターン化された前記第1導電型半導体層および前記リフトオフ層を形成する第1半導体層形成工程と、前記第1領域における前記リフトオフ層および前記第2領域における前記第1真性半導体層の上に、第2真性半導体層の材料膜および前記第2導電型半導体層の材料膜を順に形成する第2半導体層材料膜形成工程と、前記リフトオフ層を除去することにより、前記第1領域における前記第2導電型半導体層の材料膜および前記第2真性半導体層の材料膜を除去し、前記第2領域に、前記第1真性半導体層、パターン化された前記第2真性半導体層および前記第2導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、を含む。
【0010】
本発明に係る太陽電池は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池であって、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域および前記第2領域に形成された第1真性半導体層と、前記第1領域における前記第1真性半導体層の上に形成された前記第1導電型半導体層と、前記第2領域における前記第1真性半導体層の上に形成された第2真性半導体層および前記第2導電型半導体層と、を備え、前記第2領域における前記第1真性半導体層の膜厚は、前記第1領域における前記第1真性半導体層の膜厚よりも薄く、前記第2領域における前記第1真性半導体層および前記第2真性半導体層の総膜厚は、前記第1領域における前記第1真性半導体層の膜厚よりも厚く、前記第2真性半導体層は、前記第2導電型のドーパントを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽電池の製造方法において、リフトオフ層によるリフトオフ性の低下を回避することができる。また、本発明によれば、その製造方法によって製造された太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図2図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。
図3A】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図である。
図3B】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図3C】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図3D】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図3E】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図である。
図3F】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
図3G】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図4】本実施形態の変形例に係る太陽電池の断面図であって、図1のII-II線断面に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0014】
(太陽電池)
図1は、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。図1に示す太陽電池1は、裏面電極型の太陽電池である。太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。
【0015】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向(X方向)に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向(Y方向)に延在する。
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第1方向(X方向)に交互に設けられている。
なお、第1領域7および第2領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
【0016】
図2は、図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。図2に示すように、太陽電池1は、半導体基板11と、半導体基板11の主面のうちの受光する側の一方の主面である受光面側に順に積層された真性半導体層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の他方の主面である裏面側の一部(第1領域7)に順に積層された第1真性半導体層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(第2領域8)に順に積層された第1真性半導体層23、第2真性半導体層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37を備える。
【0017】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。
半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0018】
真性半導体層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。第1真性半導体層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7および第2領域8に形成されている。第2真性半導体層33は、半導体基板11の裏面側の第2領域8に、すなわち第2領域8における第1真性半導体層23上に形成されている。
第2領域8における第1真性半導体層23の膜厚は、第1領域7における第1真性半導体層23の膜厚よりも薄い。また、第2領域8における第1真性半導体層23および第2真性半導体層33の総膜厚は、第1領域7における第1真性半導体層23の膜厚よりも厚い。
【0019】
真性半導体層13、第1真性半導体層23および第2真性半導体層33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコンを主成分とする材料で形成される。
真性半導体層13、第1真性半導体層23および第2真性半導体層33は、いわゆるパッシベーション層として機能し、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0020】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側の真性半導体層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止する反射防止層として機能するとともに、半導体基板11の受光面側および真性半導体層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0021】
第1導電型半導体層25は、第1領域7における第1真性半導体層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体層である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。
【0022】
第2導電型半導体層35は、第2真性半導体層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型半導体層である。
【0023】
なお、第1導電型半導体層25がn型半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型半導体層であってもよい。
また、半導体基板11は、結晶シリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型半導体基板であってもよい。
【0024】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に形成されており、第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に形成されている。
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に積層された透明電極層28と金属電極層29とを有する。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に積層された透明電極層38と金属電極層39とを有する。
透明電極層28,38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)が挙げられる。金属電極層29,39は、銀等の金属粉末を含有する導電性ペースト材料で形成される。
【0025】
(太陽電池の製造方法)
以下、図3A図3Gを参照して、図1および図2に示す本実施形態の太陽電池1の製造方法について説明する。図3Aは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図であり、図3B図3Dは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。また、図3Eは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図であり、図3Fは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。また、図3Gは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
【0026】
まず、図3Aに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、第1真性半導体層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zを順に積層(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程)。
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、真性半導体層13および光学調整層15を順に積層(製膜)する。
【0027】
次に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、具体的には第1導電型半導体層材料膜25Z上の全面に、リフトオフ層(犠牲層)40を積層(製膜)する(リフトオフ層形成工程)。
リフトオフ層40は、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の材料で形成される。これにより、リフトオフ層40は、フッ酸処理(フッ酸、またはフッ酸と他の種類の酸との混合物での処理)で容易に除去される。
【0028】
次に、図3B図3Dに示すように、例えばフォトリソグラフィ技術を用いて、半導体基板11の裏面側において、第2領域8におけるリフトオフ層40、第1導電型半導体層材料膜25Z、および第1真性半導体層材料膜23Zの膜厚方向の一部を除去することにより、第1領域7に、第1真性半導体層23、パターン化された第1導電型半導体層25およびリフトオフ層40を形成する(第1半導体層形成工程)。
【0029】
具体的には、図3Bに示すように、半導体基板11の裏面側の第1領域7に、フォトリソグラフィ―技術を用いてレジスト90を形成する。その後、レジスト90をマスクとして、第2領域8におけるリフトオフ層40をエッチングすることにより、第1領域7に、パターン化されたリフトオフ層40を形成する。リフトオフ層40に対するエッチング溶液としては、例えばフッ酸、またはフッ酸と他の種類の酸との混合物が用いられる。
【0030】
次に、図3Cに示すように、レジスト90、およびパターン化されたリフトオフ層40をマスクとして、第2領域8における第1導電型半導体層材料膜25Z、および第1真性半導体層材料膜23Zの膜厚方向の一部をエッチングすることにより、第1領域7に、第1真性半導体層23、およびパターン化された第1導電型半導体層25を形成する。第1導電型半導体層材料膜25Zおよび第1真性半導体層材料膜23Zに対するエッチング溶液としては、オゾンをフッ酸に溶解させた混合液、またはフッ酸と硝酸との混合液等の酸性溶液が用いられる。
その後、図3Dに示すように、レジスト90を除去する。レジスト90に対するエッチング溶液としては、アセトンなどの有機溶剤が用いられる。
【0031】
ここで、第2領域8における第1真性半導体層材料膜23Zを全て除去し、半導体基板11の表面を露出させると、露出した半導体基板11の表面を洗浄する必要がある。基板洗浄工程では、例えばオゾン処理を行った後、フッ酸処理が行われる。フッ酸処理とは、フッ酸のみならず、フッ酸に他の種類の酸を含めた混合物での処理も含む。この際、リフトオフ層40がエッチングされ、リフトオフ層40の膜厚が減少してしまう。リフトオフ層40の膜厚が減少すると、第2導電型半導体層35のパターニングにおいて、リフトオフ層40によるリフトオフ性が低下してしまう(例えば、第2導電型半導体層35のパターニングの前にリフトオフ層が剥離してしまい、第2導電型半導体層35のパターニングにおいてリフトオフプロセスが正常に行われなくなってしまう)。
【0032】
これに対して、本実施形態では、第2領域8における第1真性半導体層材料膜23Zの一部が残るので、半導体基板11の表面が露出せず、その後、基板洗浄工程が不要である。そのため、基板洗浄工程における洗浄溶液(例えば、フッ酸)によりリフトオフ層40がエッチングされず、リフトオフ層40の膜厚が減少しない。これにより、リフトオフ層40によるリフトオフ性の低下を回避することができる。
【0033】
ここで、リフトオフ層40を用いない場合、レジストを用いて、第2領域における第1導電型半導体層材料膜、および第1真性半導体層材料膜の膜厚方向の一部をエッチングすることにより、第1領域に、第1真性半導体層、パターン化された第1導電型半導体層を形成した後に、レジストを除去することとなる。この場合、レジストを除去するためのエッチング溶液が第2領域における第1真性半導体層の表面に触れ、ライフタイムが低下したり、第1真性半導体層の表面の接触抵抗が増加したりしてしまう。
【0034】
これに対して、本実施形態では、リフトオフ層40を有効利用して、この問題を解決してもよい。例えば、レジスト90を用いて、第2領域8におけるリフトオフ層40をエッチングすることにより、第1領域7に、パターン化されたリフトオフ層40を形成した後に、レジスト90を除去してもよい。この場合、パターン化されたリフトオフ層40をマスクとして、第2領域8における第1導電型半導体層材料膜25Z、および第1真性半導体層材料膜23Zの膜厚方向の一部をエッチングすることにより、第1領域7に、第1真性半導体層23、およびパターン化された第1導電型半導体層25を形成する。これにより、レジスト90を除去するためのエッチング溶液が触れるのは、除去される部分の第1導電型半導体層材料膜25Zであり、このエッチング液が第1真性半導体層23に触れることがない。そのため、ライフタイムの低下および第1真性半導体層の表面の接触抵抗の増加を回避することができる。
【0035】
ところで、エッチング溶液を用いたエッチング法では、第1真性半導体層材料膜のエッチングを途中で止めることが難しい。
【0036】
この点に関し、本実施形態では、第1半導体層形成工程において、エッチングガスを主体としたドライエッチング法、例えば水素を主体とするガスによるプラズマエッチング法を用いて、第2領域8におけるリフトオフ層40、第1導電型半導体層材料膜25Z、および第1真性半導体層材料膜23Zの膜厚方向の一部をエッチングすることにより、第1領域7に、第1真性半導体層23、パターン化された第1導電型半導体層25およびリフトオフ層40を形成してもよい。この場合、レジストに代えて例えば金属マスクが用いられる。
これにより、第1真性半導体層材料膜23Zの膜厚方向の途中でエッチングを止める制御が容易となる。
【0037】
なお、プラズマエッチング法でも、上述したように、金属マスクを用いて、第2領域8におけるリフトオフ層40をエッチングすることにより、第1領域7に、パターン化されたリフトオフ層40を形成した後に、金属マスクを除去し、パターン化されたリフトオフ層40をマスクとして、第2領域8における第1導電型半導体層材料膜25Z、および第1真性半導体層材料膜23Zの膜厚方向の一部をエッチングすることにより、第1領域7に、第1真性半導体層23、およびパターン化された第1導電型半導体層25を形成してもよい。
【0038】
フッ酸またはフッ酸を含む混合物によるエッチングと比較して、プラズマエッチングはリフトオフ層と第1導電型半導体層とのエッチングレートの選択性が小さく、共に数nmのエッチングで済む。そのため、リフトオフ層40をマスクとしてプラズマエッチングを行ってもよい。
【0039】
次に、図3Eに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、具体的には第1領域7におけるリフトオフ層40上および第2領域8における第1真性半導体層23上に、第2真性半導体層材料膜33Zおよび第2導電型半導体層材料膜35Zを順に積層(製膜)する(第2半導体層材料膜形成工程)。
【0040】
次に、図3Fに示すように、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法を利用して、半導体基板11の裏面側において、第1領域7における第2真性半導体層材料膜33Zおよび第2導電型半導体層材料膜35Zを除去し、第2領域8に、第1真性半導体層23、パターン化された第2真性半導体層33および第2導電型半導体層35を形成する(第2半導体層形成工程)。
【0041】
具体的には、リフトオフ層40を除去することにより、リフトオフ層40上の第2真性半導体層材料膜33Zおよび第2導電型半導体層材料膜35Zを除去し、第2真性半導体層33および第2導電型半導体層35を形成する。リフトオフ層40の除去溶液としては、例えばフッ酸等の酸性溶液が用いられる。
【0042】
次に、図3Gに示すように、半導体基板11の裏面側に、第1電極層27および第2電極層37を形成する(電極層形成工程)。
具体的には、例えばスパッタリング法等のPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、透明電極層材料膜を積層(製膜)する。その後、例えばエッチングペーストを用いたエッチング法を用いて、透明電極層材料膜の一部を除去することにより、透明電極層28,38のパターニングを行う。透明電極層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば塩酸または塩化第二鉄水溶液が用いられる。
その後、例えばパターン印刷法または塗布法を用いて、透明電極層28上に金属電極層29を形成し、透明電極層38の上に金属電極層39を形成することにより、第1電極層27および第2電極層37を形成する。
【0043】
以上の工程により、図1および図2に示す本実施形態の裏面電極型の太陽電池1が得られる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第2半導体層形成工程において、リフトオフ層(犠牲層)40を用いたリフトオフ法を利用して第2導電型半導体層35のパターニングを行うので、太陽電池の製造プロセスの簡略化、低コスト化が可能となる。
【0045】
また、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1半導体層形成工程において、第1真性半導体層23の一部を残すので、半導体基板11の表面が露出せず、その後、基板洗浄工程が不要である。そのため、基板洗浄工程における洗浄溶液(例えば、フッ酸)によりリフトオフ層40がエッチングされず、リフトオフ層40の膜厚が減少しない。これにより、リフトオフ層40によるリフトオフ性の低下を回避することができ、太陽電池の歩留りの低下を回避することができる。
【0046】
ここで、リフトオフ層を用いたリフトオフ法を利用しない場合、第1半導体層形成工程において、レジストを用いて、第2領域における第1導電型半導体層の材料膜、および第1真性半導体層の材料膜の膜厚方向の一部を除去することにより、第1領域に、第1真性半導体層、パターン化された第1導電型半導体層を形成した後に、レジストを除去することとなる。この場合、レジスト除去溶液が第2領域における第1真性半導体層に触れ、ライフタイムが低下したり、第1真性半導体層の表面の接触抵抗が増加したりしてしまう。
【0047】
この点に関し、本実施形態の太陽電池の製造方法では、第1半導体層形成工程において、レジスト90を用いて、第2領域8におけるリフトオフ層40を除去することにより、第1領域7に、パターン化されたリフトオフ層40を形成した後に、レジスト90を除去し、パターン化されたリフトオフ層40をマスクとして、第2領域8における第1導電型半導体層材料膜25Z、および第1真性半導体層材料膜23Zの膜厚方向の一部を除去することにより、第1領域7に、第1真性半導体層23、およびパターン化された第1導電型半導体層25を形成する。これにより、レジスト除去溶液が触れるのは、除去される部分の第1導電型半導体層材料膜25Zであり、レジスト除去溶液が第1真性半導体層23に触れることがない。そのため、ライフタイムの低下および第1真性半導体層の表面の接触抵抗の増加を回避することができる。
【0048】
ここで、第1半導体層形成工程において、エッチング溶液を用いたエッチング法では、第1真性半導体層のエッチングを途中で止めることが難しい。
【0049】
この点に関し、本実施形態の太陽電池の製造方法では、第1半導体層形成工程において、エッチングガスを主体としたドライエッチング法、例えば水素を主体とするガスによるプラズマエッチング法を用いて、第2領域8におけるリフトオフ層40、第1導電型半導体層材料膜25Z、および第1真性半導体層材料膜23Zの膜厚方向の一部をエッチングすることにより、第1領域7に、第1真性半導体層23、パターン化された第1導電型半導体層25およびリフトオフ層40を形成してもよい。
これにより、第1真性半導体層材料膜23Zの膜厚方向の途中でエッチングを止める制御が容易となる。
【0050】
ここで、第1真性半導体層のエッチングを膜厚方向の途中で止めると、エッチングにより第1真性半導体層にダメージが生じる。
この点に関し、本実施形態の太陽電池1によれば、第1真性半導体層23上に第2真性半導体層33を形成することにより、第1真性半導体層23のエッチングにより生じたダメージを回復させることができ、太陽電池1の性能低下を抑制することができる。
【0051】
ところで、リフトオフ層を用いたリフトオフ法を利用しない場合、図4を用いて後述するように、太陽電池1では、第1領域7と第2領域8との境界において、第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35とが重なり合う。これにより、第2導電型半導体層35のパターニングの際に、第1真性半導体層23が露出することがなく、第2導電型半導体層35のエッチング溶液による第1真性半導体層23のダメージを低減することができる。
しかし、重なり領域おいて第1導電型半導体層25から第2導電型半導体層35へのリークを低減するため、重なり領域上には電極を形成しないようにする必要がある。そのため、電極間距離Wが大きくなり、その結果、電極面積が小さくなり、抵抗が大きくなる。
【0052】
これに対して、本実施形態の太陽電池1によれば、リフトオフ層40を用いたリフトオフ法を利用するので、図2に示すように、第1領域7と第2領域8との境界に、第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35とが重なり合う領域がない。そのため、電極間距離Wを小さくでき、その結果、電極面積を大きくでき、抵抗を小さくできる。
【0053】
(変形例)
上述した実施形態の太陽電池1では、第1真性半導体層23および第2真性半導体層33の材料としてアモルファスシリコン材料を例示した。しかし、上述した実施形態の太陽電池1では、第2真性半導体層33は、微結晶材料を含み、更に第2導電型のドーパント(例えば、N型のリン)を微量含んでもよい。
【0054】
この変形例の太陽電池1によれば、第2真性半導体層33の抵抗を低減することができる。そのため、第2領域8における第1真性半導体層23および第2真性半導体層33の総膜厚が厚くても、第1真性半導体層23および第2真性半導体層33の総抵抗の増加を低減することができる。
更に、この変形例の太陽電池1によれば、第1真性半導体層23と第2真性半導体層33とのエッチングレートに差をつけることができるため、エッチングによる第1真性半導体層23のダメージを低減することができる。
【0055】
この変形例の太陽電池の製造方法としては、第2半導体層材料膜形成工程および第2半導体層形成工程において、第2真性半導体層材料膜33Zおよび第2真性半導体層33に、第2導電型のドーパントが含まれればよい。
【0056】
なお、変形例の太陽電池の製造方法はこれに限定されない。例えば変形例の太陽電池1は、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法を利用しない製造方法で製造されてもよい。
例えば、上述した実施形態の太陽電池の製造方法において、リフトオフ層形成工程を含まない。この場合、第1半導体層形成工程では、第2領域8における第1導電型半導体層材料膜25Z、および第1真性半導体層材料膜23Zの膜厚方向の一部を除去することにより、第1領域7に、第1真性半導体層23、およびパターン化された第1導電型半導体層25を形成する。
その後、第2半導体層材料膜形成工程では、第1領域7における第1導電型半導体層25上および第2領域8における第1真性半導体層23上に、第2真性半導体層材料膜33Zおよび第2導電型半導体層材料膜35Zを形成する。
その後、第2半導体層形成工程では、第1領域7における第2導電型半導体層材料膜35Zおよび第2真性半導体層33を除去することにより、第2領域8に、パターン化された第2真性半導体層33および第2導電型半導体層35を形成する。
【0057】
このようにして製造された変形例の太陽電池1を図4に示す。図4に示す太陽電池1では、第1領域7と第2領域8との境界において、第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35とが重なり合う。
これにより、第2導電型半導体層35のパターニングの際に、第1真性半導体層23が露出することがなく、第2導電型半導体層35のエッチング溶液による第1真性半導体層23のダメージを低減することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、図2および図4に示すようにヘテロ接合型の太陽電池1の製造方法を例示したが、本発明の特徴は、ヘテロ接合型の太陽電池に限らず、ホモ接合型の太陽電池等の種々の太陽電池の製造方法に適用可能である。
【0059】
また、上述した実施形態では、結晶シリコン基板を有する太陽電池を例示したが、これに限定されない。例えば、太陽電池は、ガリウムヒ素(GaAs)基板を有していてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 太陽電池
7 第1領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
8 第2領域
11 半導体基板
13 真性半導体層
15 光学調整層
23 第1真性半導体層
23Z 第1真性半導体層材料膜
25 第1導電型半導体層
25Z 第1導電型半導体層材料膜
27 第1電極層
28,38 透明電極層
29,39 金属電極層
33 第2真性半導体層
33Z 第2真性半導体層材料膜
35 第2導電型半導体層
35Z 第2導電型半導体層材料膜
37 第2電極層
40 リフトオフ層(犠牲層)
90 レジスト
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4