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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】塗装機
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20221102BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20221102BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20221102BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20221102BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221102BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20221102BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20221102BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05B12/00 A
B41J2/18
B41J2/01 307
B41J2/175 501
B41J2/01 401
B41J2/175 119
B41J2/21
B41J2/17 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021539717
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031695
(87)【国際公開番号】W WO2021028983
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホセ ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】多和田 孝達
(72)【発明者】
【氏名】山内 邦治
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-172379(JP,A)
【文献】特開2011-016283(JP,A)
【文献】特開2017-119391(JP,A)
【文献】特開2010-100011(JP,A)
【文献】特開2019-042696(JP,A)
【文献】特開2014-058141(JP,A)
【文献】特開2006-159811(JP,A)
【文献】特開2011-136469(JP,A)
【文献】国際公開第2012/060153(WO,A1)
【文献】特開平07-227556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
B41J 2/01-2/215
B41M 5/00
5/50-5/52
B05B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから塗料を吐出することで塗装を行うインクジェット方式の塗装機において、
先端部にチャック部を有するロボットアームと、
前記チャック部に着脱自在に装着されると共に、前記塗料を吐出するノズルを有するノズルヘッドと、前記ノズルの駆動を制御するノズル制御手段と、前記塗料が前記ノズルヘッド内を循環するヘッド側循環経路とを有すると共に、前記ノズルヘッド、前記ノズル制御手段、および前記ヘッド側循環経路が一体的に設けられていると共に、前記チャック部に対して着脱自在に取り付けられるノズルヘッドユニットと、
少なくとも1つの前記ノズルヘッドユニットを待機状態で保持している待機保持部と、
前記チャック部に装着されている前記ノズルヘッドユニットを前記待機保持部に保持されている前記ノズルヘッドユニットに交換するためのヘッド交換手段と、
を備え、
前記ノズルから吐出される前記塗料を蓄える塗料貯留部が前記ロボットアームに設けられていると共に、
前記ロボットアームには、前記塗料を流通させるアーム側循環経路が設けられていて、
前記アーム側循環経路には、前記塗料貯留部から供給される前記塗料を前記ヘッド側循環経路に向けて前記塗料を供給するアーム側供給経路と、前記ノズルから吐出されなかった前記塗料が前記ヘッド側循環経路から戻されると共に前記アーム側供給経路に向けて前記塗料を再び供給するアーム側戻り経路とが設けられていて、
前記ロボットアームには、前記アーム側供給経路と前記アーム側戻り流路とを接続して前記塗料を流通させるバイパス流路が設けられている、
ことを特徴とする塗装機。
【請求項2】
請求項1記載の塗装機であって、
前記ノズルヘッドユニットには、前記ノズルから吐出される前記塗料を蓄える塗料貯留部が設けられていて、
前記塗料貯留部は、前記ヘッド側循環経路に前記塗料を供給可能な状態で接続される、
ことを特徴とする塗装機。
【請求項3】
請求項2記載の塗装機であって、
前記塗料貯留部は、前記ノズルヘッドユニットに対して一体的な塗料供給タンクであると共に、
前記ヘッド側循環経路は、前記塗料供給タンクとの間で前記塗料を循環させる、
ことを特徴とする塗装機。
【請求項4】
ノズルから塗料を吐出することで塗装を行うインクジェット方式の塗装機において、
先端部にチャック部を有するロボットアームと、
前記チャック部に着脱自在に装着されると共に、前記塗料を吐出するノズルを有するノズルヘッドと、前記ノズルの駆動を制御するノズル制御手段と、前記塗料が前記ノズルヘッド内を循環するヘッド側循環経路とを有すると共に、前記ノズルヘッド、前記ノズル制御手段、および前記ヘッド側循環経路が一体的に設けられていると共に、前記チャック部に対して着脱自在に取り付けられるノズルヘッドユニットと、
少なくとも1つの前記ノズルヘッドユニットを待機状態で保持している待機保持部と、
前記チャック部に装着されている前記ノズルヘッドユニットを前記待機保持部に保持されている前記ノズルヘッドユニットに交換するためのヘッド交換手段と、
を備え、
前記ノズルヘッドユニットには、前記ノズルから吐出される前記塗料を蓄える塗料貯留部が設けられていて、
前記塗料貯留部は、前記ヘッド側循環経路に前記塗料を供給可能な状態で接続され、
前記塗料貯留部は、前記ノズルヘッドユニットに対して一体的な塗料供給タンクであると共に、
前記ヘッド側循環経路は、前記塗料供給タンクとの間で前記塗料を循環させ、
前記塗料供給タンクには、前記ヘッド側循環経路の端部が接続されることで、前記ノズルヘッドからの前記塗料が前記塗料供給タンク内に戻され、
前記塗料供給タンク内には、前記塗料を貯留するシリンダと、前記シリンダ内で摺動するピストンとが設けられていて、
前記シリンダ内の前記ピストンを押圧する押出用の押出装置が設けられ、
前記押出装置の作動を制御する供給量制御手段が設けられていて、
前記供給量制御手段は、前記塗料を前記ノズルヘッドに供給する供給量と、前記ノズルヘッドから戻る塗料の戻り量に基づいて、前記ピストンを押し出す押出装置の作動を制御する、
ことを特徴とする塗装機。
【請求項5】
請求項2記載の塗装機であって、
前記塗料貯留部は、前記塗料を蓄えるカートリッジであると共に、
前記ノズルヘッドには、前記カートリッジを着脱自在な状態で搭載するカートリッジ搭載部が設けられている、
ことを特徴とする塗装機。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の塗装機であって、
前記塗料貯留部は、前記塗料を蓄えるカートリッジであると共に、
前記ロボットアームには、前記カートリッジを着脱自在な状態で搭載するカートリッジ搭載部が設けられている、
ことを特徴とする塗装機。
【請求項7】
請求項5または記載の塗装機であって、
前記カートリッジを待機保持するカートリッジ待機保持部が設けられ、
前記カートリッジ搭載部に搭載されている前記カートリッジを、前記カートリッジ待機保持部に保持されている前記カートリッジに交換させるためのカートリッジ交換手段が設けられている、
ことを特徴とする塗装機。
【請求項8】
ノズルから塗料を吐出することで塗装を行うインクジェット方式の塗装機において、
先端部にチャック部を有するロボットアームと、
前記チャック部に着脱自在に装着されると共に、前記塗料を吐出するノズルを有するノズルヘッドと、前記ノズルの駆動を制御するノズル制御手段と、前記塗料が前記ノズルヘッド内を循環するヘッド側循環経路とを有すると共に、前記ノズルヘッド、前記ノズル制御手段、および前記ヘッド側循環経路が一体的に設けられていると共に、前記チャック部に対して着脱自在に取り付けられるノズルヘッドユニットと、
少なくとも1つの前記ノズルヘッドユニットを待機状態で保持している待機保持部と、
前記チャック部に装着されている前記ノズルヘッドユニットを前記待機保持部に保持されている前記ノズルヘッドユニットに交換するためのヘッド交換手段と、
を備え、
色毎の塗料を蓄える塗料貯留部を有すると共に、選択された前記塗料を前記ノズルヘッドに対して供給可能となるように色替えすることが可能な色替弁装置が前記ロボットアームに設けられていると共に、
前記ロボットアームには、前記塗料を流通させるアーム側循環経路が設けられていて、
前記アーム側循環経路には、前記色替弁装置から供給される前記塗料を前記ヘッド側循環経路に向けて前記塗料を供給するアーム側供給経路と、前記ノズルから吐出されなかった前記塗料が前記ヘッド側循環経路から戻されると共に前記アーム側供給経路に向けて前記塗料を再び供給するアーム側戻り経路とが設けられていて、
前記ロボットアームまたは前記ノズルヘッドユニットには、前記色替弁装置から前記アーム側供給経路を介して前記ヘッド側循環経路に向かう前記塗料の圧力を調整する圧力調整手段と、前記色替弁装置および前記圧力調整手段の作動を制御する本体制御手段と、が設けられていて、
前記本体制御手段での前記色替弁装置および前記圧力調整手段の作動制御に基づいて、前記アーム側供給経路および前記アーム側戻り経路を介して、前記ヘッド側循環経路と前記色替弁装置との間で前記塗料が循環させられる、
ことを特徴とする塗装機。
【請求項9】
請求項記載の塗装機であって、
前記色替弁装置には、前記ヘッド側循環経路、前記アーム側供給経路および前記アーム側戻り経路内の前記塗料を洗浄すると共に前記本体制御手段によって作動制御されるアーム側洗浄手段が設けられていて、
前記本体制御手段によって前記色替弁装置で現在選択されている種類の前記塗料から異なる種類の前記塗料を新たに選択変更した場合には、前記本体制御手段での制御に基づいて前記アーム側洗浄手段を作動させる、
ことを特徴とする塗装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の塗装ラインにおいては、たとえば特許文献1に示すようなロボットを用いたロボット塗装が主流となっている。このロボット塗装では、多関節ロボットの先端に回転霧化型の塗装ヘッドを取り付けた塗装機(回転霧化型の塗装機)が用いられている。
【0003】
このような回転霧化型の塗装機を用いるのに代えて、たとえば特許文献2に開示のように、インクジェット方式の塗装機を用いて、車両を塗装することが提案されている。特許文献1には、ノズル列の各ノズルからインク(塗料)を吐出することで、車両の塗装を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3648134号公報
【文献】特許第5976320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示のような、回転霧化型の塗装機では、噴霧した塗料ミストが、塗装対象の車両以外(たとえば塗装機自身)に付着する等により、塗装機自身が汚染されたり、塗装効率が低下してしまう問題がある。また、塗料自体にロスが生じる他、車両に付着しない塗料を回収するための設備が増大したり、その設備の管理や運転のために余分にコストがかかる等の問題がある。
【0006】
一方、特許文献2に開示のようなインクジェット方式の塗装機では、使用する塗料の種類によっては、塗料中の成分の中に沈降が生じてしまう場合がある、という問題がある。このような沈降は、ノズルの目詰まり等の原因となり、塗装不良の原因となってしまう。また、特許文献2に開示のようなインクジェット方式の塗装機では、ノズルヘッド内の構成が複雑であり、たとえば色替のような使用する塗料の種類を変更する際に、その洗浄に時間がかかる、という問題もある。
【0007】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、塗料の成分中に沈降が生じるのを抑制すると共に、塗料の種類を変更する際の時間短縮を図ることが可能なインクジェット式の塗装機を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、ノズルから塗料を吐出することで塗装を行うインクジェット方式の塗装機において、先端部にチャック部を有するロボットアームと、チャック部に着脱自在に装着されると共に、塗料を吐出するノズルを有するノズルヘッドと、ノズルの駆動を制御するノズル制御手段と、塗料がノズルヘッド内を循環するヘッド側循環経路とを有すると共に、ノズルヘッド、ノズル制御手段、およびヘッド側循環経路が一体的に設けられていると共に、チャック部に対して着脱自在に取り付けられるノズルヘッドヘッドユニットと、少なくとも1つのヘッドユニットを待機状態で保持しているヘッド待機保持部と、チャック部に装着されているノズルヘッドユニットをヘッド待機保持部に保持されているノズルヘッドユニットに交換するためのヘッド交換手段と、を備える、ことを特徴とするインクジェット方式の塗装機が提供される。
【0009】
また、上述の発明において、ノズルヘッドユニットには、ノズルから吐出される塗料を蓄える塗料貯留部が設けられていて、塗料貯留部は、ヘッド側循環経路に塗料を供給可能な状態で接続される、ことが好ましい。
【0010】
また、上述の発明において、塗料貯留部は、ノズルヘッドユニットに対して一体的な塗料供給タンクであると共に、ヘッド側循環経路は、塗料供給タンクとの間で塗料を循環させる、ことが好ましい。
【0011】
また、上述の発明において、塗料供給タンクには、ヘッド側循環経路の端部が接続されることで、ノズルヘッドからの塗料が塗料供給タンク内に戻され、塗料供給タンク内には、塗料を貯留するシリンダと、シリンダ内で摺動するピストンとが設けられていて、シリンダ内のピストンを押圧する押出用の押出装置が設けられ、押出装置の作動を制御する供給量制御手段が設けられていて、供給量制御手段は、塗料を前記ノズルヘッドに供給する供給量と、ノズルヘッドから戻る塗料の戻り量に基づいて、ピストンを押し出す押出装置の作動を制御する、ことが好ましい。
【0012】
また、上述の発明において、塗料貯留部は、塗料を蓄えるカートリッジであると共に、ノズルヘッドには、カートリッジを着脱自在な状態で搭載するカートリッジ搭載部が設けられている、ことが好ましい。
【0013】
また、上述の発明において、ノズルから吐出される塗料を蓄える塗料貯留部がロボットアームに設けられていると共に、ロボットアームには、塗料を流通させるアーム側循環経路が設けられていて、アーム側循環経路には、塗料貯留部から供給される塗料をヘッド側循環経路に向けて塗料を供給するアーム側供給経路と、ノズルから吐出されなかった塗料がヘッド側循環経路から戻されると共にアーム側供給経路に向けて塗料を再び供給するアーム側戻り経路とが設けられている、ことが好ましい。
【0014】
また、上述の発明において、塗料貯留部は、塗料を蓄えるカートリッジであると共に、ロボットアームには、カートリッジを着脱自在な状態で搭載するカートリッジ搭載部が設けられている、ことが好ましい。
【0015】
また、上述の発明において、カートリッジを待機保持するカートリッジ待機保持部が設けられ、カートリッジ搭載部に搭載されているカートリッジを、カートリッジ待機保持部に保持されているカートリッジに交換させるためのカートリッジ交換手段が設けられている、ことが好ましい。
【0016】
また、上述の発明において、色毎の塗料を蓄える塗料貯留部を有すると共に、選択された塗料をノズルヘッドに対して供給可能となるように色替えすることが可能な色替弁装置がロボットアームに設けられていると共に、ロボットアームには、塗料を流通させるアーム側循環経路が設けられていて、アーム側循環経路には、色替弁装置から供給される塗料をヘッド側循環経路に向けて塗料を供給するアーム側供給経路と、ノズルから吐出されなかった塗料がヘッド側循環経路から戻されると共にアーム側供給経路に向けて塗料を再び供給するアーム側戻り経路とが設けられていて、ロボットアームまたはノズルヘッドユニットには、色替弁装置からアーム側供給経路を介してヘッド側循環経路に向かう塗料の圧力を調整する圧力調整手段と、色替弁装置および圧力調整手段の作動を制御する本体制御手段と、が設けられていて、本体制御手段での色替弁装置および圧力調整手段の作動制御に基づいて、アーム側供給経路およびアーム側戻り経路を介して、ヘッド側循環経路と色替弁装置との間で前記塗料が循環させられる、ことが好ましい。
【0017】
また、上述の発明において、色替弁装置には、ヘッド側循環経路、アーム側供給経路およびアーム側戻り経路内の塗料を洗浄すると共に本体制御手段によって作動制御されるアーム側洗浄手段が設けられていて、本体制御手段によって色替弁装置で現在選択されている種類の塗料から異なる種類の塗料を新たに選択変更した場合には、本体制御手段での制御に基づいてアーム側洗浄手段を作動させる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、塗料の成分中に沈降が生じるのを抑制することが可能なインクジェット式の塗装機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機の全体構成を示す概略図である。
図2図1に示すインクジェット式の塗装機において、第2回動アームからノズルヘッドユニットまでの構成を示す側面図である。
図3図1に示すインクジェット式の塗装機において、ノズルヘッドユニットおよびチャック部の構成を示す斜視図である。
図4図1に示すインクジェット式の塗装機において、ノズルヘッドユニットとチャック部の分解斜視図である。
図5図1に示すインクジェット式の塗装機において、アーム側係止部とヘッド側係止部の構成の詳細を示すと共に、アーム側係止部とヘッド側係止部とがチャックされる前の状態を示す側断面図である。
図6図5に示す状態から、アーム側係止部とヘッド側係止部とがチャックされた状態を示す側断面図である。
図7図1に示すインクジェット式の塗装機において、ノズルヘッドユニットのうち、塗料を吐出させるノズル吐出面を正面視した状態を示す図である。
図8図1に示すインクジェット式の塗装機において、ノズルヘッドを千鳥状に配置した状態を示す図である。
図9図1に示すインクジェット式の塗装機において、各ノズルへ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。
図10図1に示すインクジェット式の塗装機において、列方向供給流路、ノズル加圧室および列方向排出流路付近の構成を示す断面図である。
図11図10に示す、列方向供給流路、ノズル加圧室および列方向排出流路付近の構成の変形例を示す断面図である。
図12図1に示すインクジェット式の塗装機において、ヘッド側循環経路付近の概略的な構成を示す図である。
図13】本発明の第2の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機において、第2回動アームからノズルヘッドユニットまでの構成を示す側面図である。
図14図13に示すインクジェット式の塗装機において、ヘッド側循環経路の概略的な構成を示す図である。
図15】本発明の第3の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機において、第2回動アームからノズルヘッドユニットまでの構成を示す側面図である。
図16図15に示すインクジェット式の塗装機において、ヘッド側循環経路、アーム側循環経路および色替弁装置の概略的な構成を示す図である。
図17】本発明の第4の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機において、第2回動アームからノズルヘッドユニットまでの構成を示す側面図である。
図18図17に示すインクジェット式の塗装機において、ヘッド側循環経路、アーム側循環経路および色替弁装置の概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施の形態に係るインクジェット式の塗装機および塗装方法について、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態のインクジェット式の塗装機および塗装方法は、車両または車両部品といった塗装対象物に対して、「塗装」を行うものであり、塗膜を塗装対象物の表面に形成して、その表面の保護や美観を与えることを目的としている。また、本実施の形態のインクジェット式の塗装機および塗装方法では、上述した塗膜を形成するのみならず、各種のデザインや画像を、車両や車両部品といった塗装対象物に対して形成することが可能である。
【0021】
[第1の実施の形態について]
(1-1.インクジェット式の塗装機の全体構成について)
最初に、本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、インクジェット式の塗装機10は、塗装装置本体20と、ノズルヘッドユニット50とを備えている。また、塗装システム1は、インクジェット式の塗装機10と、ステーション部200と、全体制御部120と、を主要な構成要素を備えている。ただし、塗装システム1を広義のインクジェット式の塗装機としても良い。この場合には、インクジェット式の塗装機10は、ステーション部200と、全体制御部120とを備える。しかしながら、上記のように塗装システム1からステーション部200と全体制御部120等を除いたものを狭義のインクジェット式の塗装機10としても良い。
【0022】
(1-2.塗装装置本体について)
塗装装置本体20は、基台21と、脚部22と、回転アーム23と、第1回動アーム24と、第2回動アーム25と、リスト部26と、チャック部30と、ノズルヘッドユニット50とを有している。これらのうち、基台21は床面等の設置部位に設置される部分であるが、この基台21が設置部位に対して走行可能であっても良い。また、脚部22は、基台21から上部に向かい立設された部分である。なお、脚部22と基台21の間に関節部を設けて、脚部22が基台21に対して回動可能としても良い。
【0023】
また、脚部22の上端には、回転軸部22aが設けられている。この回転軸部22aには、回転アーム23が回転自在な状態で取り付けられている。また、回転アーム23は、モータの駆動により回転させられるが、そのようなモータとしては、電気モータやエアモータを用いることが可能である。なお、インクジェット式の塗装機10が防爆エリアに設置されると共に電気モータを用いる場合には、回転軸部22aのハウジング22a1内の内圧を高める等の防爆対策を講じることが好ましい。しかしながら、インクジェット式の塗装機10が防爆エリア以外の場所に設置される場合には、上記のような防爆対策を講じなくて良い。
【0024】
また、回転軸部22aには、第1回動アーム24の一端側が揺動自在な状態で取り付けられている。なお、第1回動アーム24を揺動させるモータは、回転アーム23のハウジング23a内に収納されている。
【0025】
図2は、本実施の形態のインクジェット式の塗装機10において、第2回動アーム25からノズルヘッドユニット50までの構成を示す側面図である。図1および図2に示すように、第1回動アーム24の他端側には、第2回動アーム25の一端側が揺動自在な状態で取り付けられている。なお、第2回動アーム25の一端側には、ハウジング25aが設けられていて、そのハウジング25aには第2回動アーム25を揺動させるモータが収納されている。
【0026】
この第2回動アーム25の他端側には、リスト部26が取り付けられている。リスト部26は、複数(たとえば3つ)の異なる向きの回転軸を中心に、回転運動を可能としている。それにより、ノズルヘッドユニット50の向きを精度良くコントロールすることが可能となっている。なお、回転軸の個数は、2つ以上であれば幾つでも良い。
【0027】
なお、回転軸部22a、回転アーム23、第1回動アーム24、第2回動アーム25、リスト部26は、ロボットアームに対応する。しかしながら、ロボットアームは、これら回転軸部22a、回転アーム23、第1回動アーム24、第2回動アーム25、リスト部26のうち少なくとも1つが存在しなくても良く、これら以外の別途の構成を付加しても良い。
【0028】
また、本実施の形態におけるインクジェット式の塗装機10では、ノズルヘッドユニット50には、塗料供給タンク73が一体的に固定されている。したがって、塗料供給タンク73には、後述するような供給路71および戻り経路72が連通している。なお、塗料供給タンク73は、塗料貯留部に対応する。
【0029】
なお、ノズルヘッドユニット50に1つの種類のみの塗料供給タンク73が固定されている場合においては、同じ種類の塗料供給タンク73が複数固定されるようにしても良い。また、ノズルヘッドユニット50には、1つの種類の塗料供給タンク73のみならず、複数の種類の塗料供給タンク73が固定されているようにしても良い。たとえば、特定の色の塗料を貯留している塗料供給タンク73と共に、メンテナンス用の液体を蓄えるタンクがノズルヘッドユニット50に固定された構成を採用しても良い。そのようなメンテナンス用の液体としては、塗料を吐出しない状態が長い場合に、塗料に混合させることで塗料の粘度を低下させる液体や、ヘッド側循環経路70内での異物の堆積を防止するための洗浄液等があげられる。なお、ヘッド側循環経路70付近の詳細については、後述する。
【0030】
(1-3.チャック部について)
図3は、ノズルヘッドユニット50およびチャック部30の構成を示す斜視図である。図4は、ノズルヘッドユニット50とチャック部30の分解斜視図である。上述したリスト部26とノズルヘッドユニット50の間には、チャック部30が配置されている。チャック部30は、アーム側係止部31と、ヘッド側係止部41とを備えている。アーム側係止部31は、リスト部26に固定されている。また、ヘッド側係止部41は、ノズルヘッドユニット50に固定されている。そして、アーム側係止部31とヘッド側係止部41とがチャックされることで、ノズルヘッドユニット50がリスト部26に取り付けられる。
【0031】
図5は、アーム側係止部31とヘッド側係止部41の構成の詳細を示すと共に、アーム側係止部31とヘッド側係止部41とがチャックされる前の状態を示す側断面図である。また、図6は、アーム側係止部31とヘッド側係止部41の構成の詳細を示すと共に、アーム側係止部31とヘッド側係止部41とがチャックされた状態を示す側断面図である。
【0032】
図5および図6に示すように、アーム側係止部31の係止本体部32(以下、下側とする。)からは、位置決めピン33が突出している。一方、ヘッド側係止部41の係止本体部42には、位置決めピン33が挿入される位置決め孔部43が設けられている。したがって、位置決め孔部43に位置決めピン33が挿入されることで、アーム側係止部31とヘッド側係止部41の位置決めがなされる。なお、位置決めピン33と位置決め孔部43のセットは、2つ以上設けられることが好ましい。
【0033】
また、係止本体部32には、孔状のピストン挿通部34が設けられていて、そのピストン挿通部34にはカム用ピストン体35が挿通されている。このカム用ピストン体35には、ピストン挿通部34の内壁面に摺動するピストン部35aが設けられていて、さらにピストン部35aには軸方向に延伸する作動ピン部35b設けられている。作動ピン部35bのうち、ピストン部35aから離間した下側からは、カム押圧部35cが径方向に突出していて、このカム押圧部35cが後述するロックカム37を押圧する。なお、カム用ピストン体35は、不図示の駆動源(モータやエアシリンダ)によって駆動させられる。
【0034】
また、係止本体部32の下側からは、支持突部36が突出している。支持突部36は、たとえば一対の板状部材が対向することで構成されている。この支持突部36には、軸部37aを介してロックカム37が回動自在に取り付けられている。
【0035】
ロックカム37は、作動ピン部35bを挟んで一対設けられている。このロックカム37のピストン部35a側には、干渉部37bが設けられている。干渉部37bは、後述する係止ピン45に衝突する部分であり、その衝突によってアーム側係止部31がヘッド側係止部41から離れないチャック状態となる。また、ロックカム37には、内径突出部37cも設けられている。内径突出部37cは、ロックカム37のヘッド側係止部41側において、内径側(作動ピン部35b側)に突出している部分である。なお、ロックカム37には、不図示のバネによって、干渉部37bが内径側(作動ピン部35b側)に向かうような付勢力が与えられている。
【0036】
このような構成のカム用ピストン体35、支持突部36およびロックカム37を備える構成では、カム用ピストン体35が下側に移動すると、カム押圧部35cが内径突出部37c側を押圧することで、図5に示すように作動ピン部35bが内径側に収納される。一方、カム用ピストン体35がヘッド側係止部41から離れる側(以下、上側とする。)に移動すると、カム押圧部35cが内径突出部37cを押圧する状態が解除される。したがって、不図示のバネの付勢力によって、干渉部37bが外径側に向かうようにロックカム37が回動する。
【0037】
また、ヘッド側係止部41には、上述した係止本体部42、位置決め孔部43以外に、支持突部36が挿入されるカム用孔部44が設けられている。また、カム用孔部44に面する部位には、係止ピン45が設けられている。係止ピン45は、ロックカム37の干渉部37bが外径側に向かうように回動した際に、干渉部37bと当接(干渉)する部分である。このため、図6に示すように、カム用ピストン体35が上側に移動すると、干渉部37bと係止ピン45とが干渉したチャック状態となる。一方、カム用ピストン体35が下側に移動すると、干渉部37bが内径側(作動ピン部35b側)に移動するため、干渉部37bと係止ピン45との干渉が解かれたチャック解除状態となる。
【0038】
(1-4.ノズルヘッドユニットについて)
次に、ノズルヘッドユニット50について説明する。リスト部26には、チャック部30を介してノズルヘッドユニット50が取り付けられる。図2から図4に示すように、ノズルヘッドユニット50は、ヘッドカバー51を備え、そのヘッドカバー51内に、種々の構成が内蔵されている。なお、ヘッドカバー51に内蔵される構成には、後述するヘッド側循環経路70や、ノズル制御部110等が挙げられる。
【0039】
図7は、ノズルヘッドユニット50のうち、塗料を吐出させるノズル吐出面52を正面視した状態を示す図である。図7に示すように、ノズル吐出面52には、単一のノズルヘッド53が存在している。しかしながら、ノズル吐出面52には、複数のノズルヘッド53から構成されるヘッド群が存在するようにしても良い。この場合、一例として、図8に示すように、複数のノズルヘッド53を位置合わせしつつ千鳥状に配置する構成が挙げられるが、ヘッド群におけるノズルヘッド53の配置は千鳥状でなくても良い。
【0040】
このノズルヘッド53には、多数のノズル54が設けられている。また、ノズルヘッド53には、上記のノズル54が所定の方向に連なるノズル列55が複数設けられている。以下、各ノズル54への塗料の供給流路について説明する。
【0041】
図9は、各ノズル54へ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。図10は、列方向供給流路58、ノズル加圧室59および列方向排出流路60付近の構成を示す断面図である。図9および図10に示すように、ノズルヘッド53は、供給側大流路57と、列方向供給流路58と、ノズル加圧室59と、列方向排出流路60と、排出側大流路61とを備えている。供給側大流路57は、後述するヘッド側循環経路70の供給路71から塗料が供給される流路である。また、列方向供給流路58は、供給側大流路57内の塗料が、分流される流路である。
【0042】
また、ノズル加圧室59は、列方向供給流路58とノズル供給流路59aを介して接続されている。それにより、ノズル加圧室59には、列方向供給流路58から塗料が供給される。このノズル加圧室59は、ノズル54の個数に対応して設けられていて、内部の塗料を後述する駆動素子を用いてノズル54から吐出させることができる。
【0043】
また、ノズル加圧室59は、ノズル排出流路59bを介して列方向排出流路60と接続されている。したがって、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59内からノズル排出流路59bを介して、列方向排出流路60へと排出される。また、列方向排出流路60は、排出側大流路61と接続されている。排出側大流路61は、それぞれの列方向排出流路60から、排出された塗料が合流する流路である。この排出側大流路61は、ヘッド側循環経路70の戻り経路72と接続されている。
【0044】
このような構成により、ヘッド側循環経路70の供給路71から供給された塗料は、供給側大流路57、列方向供給流路58、ノズル供給流路59aおよびノズル加圧室59を経て、ノズル54から吐出される。また、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59からノズル排出流路59b、列方向排出流路60および排出側大流路61を経て、ヘッド側循環経路70の戻り経路72へと戻される。
【0045】
なお、図9に示す構成では、1本の列方向供給流路58には、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されている。しかしながら、1本の列方向供給流路58に、複数本(たとえば2本)の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。また、複数本の列方向供給流路58に、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。
【0046】
また、図10に示すように、ノズル加圧室59の天面(ノズル54とは反対側の面)には、圧電基板62が配置されている。この圧電基板62は、圧電体である2枚の圧電セラミック層63a,63bを備え、さらに共通電極64と、個別電極65とを備えている。圧電セラミック層63a,63bは、外部から電圧を印加することで、伸縮可能な部材である。このような圧電セラミック層63a,63bとしては、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系等のセラミックス材料を用いることができる。
【0047】
また、図10に示すように、共通電極64は、圧電セラミック層63aと圧電セラミック層63bの間に配置されている。また、圧電基板62の上面には、共通電極用の表面電極(不図示)が形成されている。これら共通電極64と共通電極用表面電極とは、圧電セラミック層63aに存在する不図示の貫通導体を通じて、電気的に接続されている。また、個別電極65は、上記のノズル加圧室59と対向する部位にそれぞれ配置されている。さらに、圧電セラミック層63aのうち、共通電極64と個別電極65とに挟まれた部分は、厚さ方向に分極している。したがって、個別電極65に電圧を印加すると、圧電効果によって圧電セラミック層63aが歪む。このため、所定の駆動信号を個別電極65に印加すると、ノズル加圧室59の体積を減少させるように圧電セラミック層63bが相対的に変動し、それによって塗料が吐出される。
【0048】
なお、図10に示す構成では、共通電極64は、ノズル加圧室59の天面に配置されているが、このような構成には限られない。たとえば、図11に示すように、共通電極64は、ノズル加圧室59の側面に配置される構成を採用しても良く、その他、塗料をノズル54から良好に吐出可能であれば、どのような構成を採用しても良い。
【0049】
(1-5.ヘッド側循環経路について)
次に、ノズルヘッドユニット50におけるヘッド側循環経路70付近の構成について説明する。図12は、ヘッド側循環経路70付近の概略的な構成を示す図である。図12に示すように、ノズルヘッドユニット50には、ヘッド側循環経路70が設けられている。このヘッド側循環経路70は、供給路71と戻り経路72とを備えている。これらのうち、供給路71は、塗料供給タンク73から供給される塗料を、ノズルヘッド53に供給する流路である。また、戻り経路72は、ノズルヘッド53から吐出されなかった塗料を、塗料供給タンク73に向けて戻すための流路である。このようなヘッド側循環経路70は、たとえば可撓性を有するチューブがノズルヘッドユニット50から露出する構成を採用することができる。
【0050】
ここで、供給路71および戻り経路72には、塗料供給タンク73が接続されている。この塗料供給タンク73のシリンダ73a内には、該シリンダ73aに対してピストン73bが摺動可能に設けられている。また、シリンダ73aには、液体供給管路74が接続されていて、図示を省略する押出装置からシリンダ73aに液体を供給可能としている。このため押出装置から液体が押し出されることで、ピストン73bが押圧される。それにより、ピストン73bは、シリンダ73aの内部に貯留されている塗料を供給路71へと供給することができる。この押出装置は、図示を省略する供給量制御手段によって、液体の供給量が制御される。なお、液体には、たとえばシンナー等のような溶剤が代表例として挙げられる。しかしながら、液体は溶剤には限られない。たとえば、塗料が水性塗料の場合には、水やアルコール等が液体に該当する。なお、押出装置は、液体を押し出すことで、ピストン73bを押圧するものには限られない。押出装置は、たとえば、モータの駆動によって、ピストン73bを押圧するものであっても良い。
【0051】
また、供給路71には、定量供給装置75が設けられている。定量供給装置75は、センサでの流量の検出に基づいて塗料を定量ずつ供給する装置であり、たとえばギヤポンプやロータリポンプを用いることができる。なお、定量供給装置75に代えて、たとえばダイヤフラムポンプのような、塗料を定圧で供給する定圧供給装置を用いるようにしても良い。
【0052】
また、供給路71のうち定量供給装置75の下流側には、ペイントレギュレータ78が設けられている。ペイントレギュレータ78は、定量供給装置75での脈動を緩和して、一定の圧力で塗料を供給するものである。このペイントレギュレータ78は、制御エア圧に応じて弁開度を調整することにより、カートリッジ73Bからノズルヘッド53に供給する塗料の圧力、吐出量を制御する。なお、ペイントレギュレータ78としては、たとえばエア作動式ペイントレギュレータ (air operated paint regulator;AOPR)を用いることができるが、それ以外のもの(たとえば電気式に制御する電気式レギュレータ)を用いても良い。
【0053】
なお、供給路71には、図示を省略する塗料フィルタが設けられている。この塗料フィルタにより、供給路71からノズルヘッド53に向かう塗料中の異物が除去される。また、供給路71には、ピストン73bから押し出された塗料の圧力を計測する不図示の圧力センサも配置されている。そして、圧力センサでの圧力の計測に基づいて、ピストン73bの作動を制御している。
【0054】
(1-7.制御手段について)
次に、本実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10の制御手段について説明する。制御手段は、本体制御部100と、ノズル制御部110と、洗浄制御部120とを有している。本体制御部100は、塗装装置本体20の各駆動部分の制御を司る。このような駆動部分としては、塗装装置本体20の回転アーム23、第1回動アーム24、第2回動アーム25およびリスト部26等といった各駆動部位を駆動させる各モータ等が挙げられる。なお、本体制御部100は、本体制御手段に対応する。また、ノズル制御部110は、本体制御部100の指令に基づいて、ノズルヘッド53の駆動を制御する部分である。なお、ノズル制御部110は、ノズル制御手段に対応する。このノズル制御部110の制御により、ノズルヘッド53の圧電基板62、シリンダ73aおよび定量供給装置75の駆動が制御される。
【0055】
また、洗浄制御部120は、ノズル制御部110の指令に基づいて、ステーション部200の各部位の作動を制御する部分である。この洗浄制御部120の制御により、後述する洗浄機構210およびハンドラー220等の部位の作動が制御される。
【0056】
また、本実施の形態の塗装システム1は、全体制御部130も備えている。全体制御部130は、本体制御部100、ノズル制御部110および洗浄制御部120に制御指令を送信して、塗装システム1の全体的な制御を司る。なお、本体制御部100、ノズル制御部110、洗浄制御部120および全体制御部130は、CPU、メモリ(ROM、RAM、不揮発メモリ等)、その他の要素から構成されている。
【0057】
(1-8.ステーション部について)
次に、ステーション部200について説明する。図1に示すように、インクジェット式の塗装機10を有する塗装システム1は、ステーション部200を備えている。このステーション部200は、交換対象のノズルヘッドユニット50を待機保持部230にストックしている。具体的には、ステーション部200を構成するフレーム201の天面プレート202には、単数または複数のノズルヘッドユニット50を待機保持させる待機保持部230が設けられている。なお、待機保持部230は、天面プレート202に凹部や凸部を設けることで、それぞれのノズルヘッドユニット50が位置決めされるようにするのが好ましい。また、待機保持部230は、ノズルヘッドユニット50を待機保持するヘッド待機保持部に対応するのみならず、後述する後のカートリッジ73Bを待機保持するカートリッジ待機保持部の機能も有している。しかしながら、待機保持部230とは別の部位に、カートリッジ待機保持部を設けるようにしても良い。
【0058】
また、ステーション部200には、洗浄機構210も設けられている。洗浄機構210は、既に塗料を吐出することで汚れているノズルヘッド53の洗浄を行う部分である。また、ステーション部200には、ハンドラー220も設けられている。ハンドラー220は、ノズルヘッド53を把持して搬送を行うための部分であり、ヘッド交換手段に対応する。また、ハンドラー220は、後述するカートリッジ73Bを交換するためのカートリッジ交換手段にも対応するが、ハンドラー220とは別途の装置を、カートリッジ交換手段に対応させても良い。
【0059】
なお、図1に示す構成では、ステーション部200は2つ設けられている。しかしながら、ステーション部200は、たとえば1つのみ設けられていても良く、3つ以上設けられていても良い。
【0060】
(1-9.塗装システムの動作について)
以上のような構成を有する塗装システム1の動作について、以下に説明する。
【0061】
本体制御部100は、全体制御部130からの塗装開始の制御信号を受信すると、本体制御部100は、最初に、回転アーム23、第1回動アーム24、第2回動アーム25およびリスト部26等の作動を制御して、ノズルヘッドユニット50を、準備用(空吹き用)の吐出部位へと移動させる。その後に、全体制御部130からの制御信号に基づいて、ノズル制御部110は、ノズル54から塗料を吐出させる。この塗料の吐出は、ノズル54内に塗料を充填させつつ、ノズル54内から異物を除去すると共に、ノズル54の端面からの塗料の乾燥を防止するためのものである。したがって、この段階では、塗装対象物である車両には塗料を吐出しない。
【0062】
なお、上記のノズル54からの塗料の吐出においては、ノズル制御部110は、押出装置を作動させてピストン73bを押し出すことで、供給路71に塗料を供給させる。そして、定量供給装置75を作動させてヘッド側循環経路70に塗料が循環する状態としつつ、圧電基板62を作動させることで、ノズル54から塗料を吐出させる。なお、上記のような、準備用(空吹き用)の吐出部位でノズル54から塗料を吐出させる場合、塗料を吐出させるように圧電基板62を駆動させても良い。また、図12に示すように、戻り経路72側に封止弁701を設け、その封止弁701を閉じ状態としつつ定量供給装置75を作動させて定量ずつ塗料をノズル54から強制的に吐出させるようにしても良い。なお、これらのノズル54からの塗料の吐出後に、ノズル吐出面52を清掃するのが好ましい。
【0063】
このようなノズル54への塗料の充填を経て、塗装の準備が完了した後に、上記の塗装装置本体20の作動状態で、不図示のセンサによって塗装対象である車両を検知し、その車両が所定の塗装開始位置に到達した場合には、ノズル制御部110は塗料が吐出されるように圧電基板62を作動させて、車両の塗装を開始する。この圧電基板62の作動と共に、本体制御部100は、回転アーム23、第1回動アーム24、第2回動アーム25およびリスト部26等の作動を制御する。それにより、車両の各部位の塗装が行われる。
【0064】
そして、車両の塗装が終了した際に、全体制御部130が、たとえば色の変更等のような塗料の種類の変更を指示した場合には、本体制御部100は、回転アーム23、第1回動アーム24、第2回動アーム25およびリスト部26等の作動を制御して、ノズルヘッドユニット50をステーション部200の所定の位置に移動させる。すると、ハンドラー220は、今まで塗装を行っていたノズルヘッドユニット50を把持する。このとき、本体制御部100およびノズル制御部110の制御によって駆動源が作動され、その作動によってカム用ピストン体35が図6において下側に移動すると、干渉部37bと係止ピン45との干渉が解かれたチャック解除状態となる。
【0065】
そのため、ハンドラー220によってノズルヘッドユニット50をチャック部30から外すことができる。その取り外し後、ハンドラー220は、ノズルヘッドユニット50を洗浄機構210へと搬送する。そして、洗浄機構210では、ノズルヘッド53の表面およびノズルヘッドユニット50の内部(ヘッド側循環経路70等)の洗浄を行う。
【0066】
そして、この洗浄の終了後に、ハンドラー220は、塗料の充填を行う充填箇所へとノズルヘッドユニット50を搬送する。そして、不図示の塗料充填装置を用いて、塗料供給タンク73に塗料を充填する。なお、ハンドラー220によってノズルヘッドユニット50を移動させずに、洗浄を行う部位にて塗料充填を行うようにしても良い。この充填の終了後に、ハンドラー220は、ノズルヘッドユニット50を天面プレート202の所定の待機位置へと搬送する。
【0067】
なお、塗料供給タンク73の内部が容易に洗浄可能な場合には、上述の洗浄において、塗料供給タンク73の内部の洗浄も併せて行うようにしても良い。この場合には、塗料供給タンク73の内部の洗浄が終了した後に、塗料供給タンク73に塗料が充填されることになる。しかしながら、ノズルヘッドユニット50が1つの種類の塗料に対応している場合(専用色タイプの場合)には、塗料供給タンク73の内部を洗浄せずに、塗料供給タンク73に塗料を充填するようにしても良い。
【0068】
一方、ハンドラー220がノズルヘッドユニット50を洗浄機構210へと搬送した後に、ハンドラー220は、待機保持部230に載置されている、待機中のノズルヘッドユニット50を保持する。このノズルヘッドユニット50に取り付けられている塗料供給タンク73には、交換前に使用されていたノズルヘッドユニット50が備える塗料供給タンク73とは異なる種類の塗料が蓄えられている。したがって、新たなノズルヘッドユニット50を用いることで、異なる種類の塗料を吐出させることができる。
【0069】
上記の新たなノズルヘッドユニット50を、ハンドラー220がチャック部30へと搬送し、アーム側係止部31とヘッド側係止部41との位置合わせを行う。すると、本体制御部100およびノズル制御部110の制御によって駆動源が作動され、その作動によってカム用ピストン体35が図6において上側に移動すると、干渉部37bと係止ピン45とが干渉するチャック状態となる。
【0070】
以後は、上述した動作のように、新たな車両の塗装を行うが、新たなノズルヘッドユニット50を用いた塗装では、たとえば色替のように、異なる種類の塗料を吐出させることができる。しかしながら、交換前のノズルヘッドユニット50で用いていたのと同じ種類の塗料を吐出させるようにしても良い。
【0071】
以上のような構成の塗装システム1およびインクジェット式の塗装機10は、先端部にチャック部30を有するロボットアーム(回転軸部22a、回転アーム23、第1回動アーム24、第2回動アーム25およびリスト部26)を備える。また、インクジェット式の塗装機10は、ノズルヘッドユニット50を備えるが、このノズルヘッドユニット50は、チャック部30に着脱自在に装着されると共に、塗料を吐出するノズルを有するノズルヘッド53と、ノズルヘッド53の駆動を制御するノズル制御手段(ノズル制御部110)と、塗料がノズルヘッド53内を循環するヘッド側循環経路70とを有すると共に、ノズルヘッド53、ノズル制御手段(ノズル制御部110)、およびヘッド側循環経路70が一体的に設けられ、チャック部30に対して着脱自在に取り付けられる。さらに、インクジェット式の塗装機10は、少なくとも1つのノズルヘッドユニット50を待機状態で保持しているヘッド待機保持部(待機保持部230)と、チャック部30に装着されているノズルヘッドユニット50をヘッド待機保持部(待機保持部230)に保持されているノズルヘッドユニット50に交換するためのヘッド交換手段(ハンドラー220)と、を備える。
【0072】
このため、ヘッド側循環経路70で塗料を循環させることができるので、塗料の成分中に沈降が生じるのを防止することができる。そのため、沈降によってノズル54の成分に目詰まりが生じるのを防止することができる。
【0073】
また、現状の塗装機において色替弁装置を設ける構成と比較して、色を変更する等のような塗料の種類を変更する場合の廃棄塗料および洗浄液を低減することが可能となる。また、本実施の形態では、ノズルヘッドユニット50を交換することで、別途の部位で洗浄することができる。したがって、現状の塗装機において色替弁装置を設け、その色替弁装置よりも下流側を洗浄する構成と比較して、洗浄に要する時間よりも短い時間で、新たなノズルヘッドユニット50に交換することができるので、塗装の準備段階の時間の短縮を図ることができる。
【0074】
また、チャック部30を介してノズルヘッドユニット50を着脱させることができる。このため、たとえば色の変更等のような塗料の種類を変更する場合には、それまで使用していたノズルヘッドユニット50をチャック部30から容易に外すことができると共に、新たなノズルヘッドユニット50をチャック部30に容易に装着させることができる。このため、それまで使用されていたノズルヘッドユニット50の洗浄を別途の部位で行うことができる。
【0075】
ここで、ノズルヘッドユニット50は、その内部が複雑な構成であるので、チャック部30を介してノズルヘッドユニット50を外さない場合には、ノズルヘッドユニット50の内部の洗浄に大幅な時間を要する。しかも、その間、インクジェット式の塗装機10を用いた塗装が中断されてしまう。しかしながら、チャック部30を介してノズルヘッドユニット50を外し、別途の部位で洗浄を行うことで、塗装を中断してまでノズルヘッドユニット50の内部の洗浄を行う必要がなくなる。そのため、インクジェット式の塗装機10を用いた塗装における時間的な効率を向上させることができる。また、新たなノズルヘッドユニット50を装着させることで、塗装を継続させることができる。
【0076】
また、本実施の形態のインクジェット式の塗装機10では、ノズルヘッドユニット50には、ノズル54から吐出される塗料を蓄える塗料貯留部(塗料供給タンク73)が設けられていて、塗料貯留部(塗料供給タンク73)は、ヘッド側循環経路70に塗料を供給可能な状態で接続される。
【0077】
このため、たとえば塗料を供給するための経路(アーム側の経路)を、第2回動アーム25側からノズルヘッドユニット50に向かって設ける必要がなくなる。したがって、たとえば色の変更等のような塗料の種類を変更する場合には、アーム側の経路を洗浄する必要がなくなるので、その分だけ、塗料の廃棄および洗浄液を低減することができる。また、現状の塗装機において色替弁装置を用いる構成よりも、洗浄に要する時間を短縮することが可能となる。
【0078】
また、本実施の形態のインクジェット式の塗装機10では、塗料貯留部は、ノズルヘッドユニット50に対して一体的な塗料供給タンク73であると共に、ヘッド側循環経路70は、塗料供給タンク73との間で塗料を循環させる。
【0079】
このため、たとえば色の変更等のような塗料の種類を変更する場合には、チャック部30からの一度の取り外し動作で、ノズルヘッドユニット50および塗料供給タンク73(塗料貯留部)を交換することが可能となる。また、チャック部30に対する一度の取り付け動作で、新たなノズルヘッドユニット50および塗料貯留部(塗料供給タンク73)を取り付けて、塗装を実行することができる。また、チャック部30に新たなノズルヘッドユニット50を装着しても、塗料貯留部(塗料供給タンク73)に貯留されている塗料を、ヘッド側循環経路70を介してノズル54から確実に吐出させることができる。
【0080】
また、本実施の形態のインクジェット式の塗装機10では、塗料供給タンク73には、ヘッド側循環経路70の端部が接続されることで、ノズルヘッド53からの塗料が塗料供給タンク73内に戻される。また、塗料供給タンク73内には、塗料を貯留するシリンダ73aと、シリンダ73a内で摺動するピストン73bとが設けられていて、シリンダ73a内のピストン73bを押圧する押出用の押出装置が設けられている。また、押出装置の作動を制御する供給量制御手段が設けられていて、供給量制御手段は、塗料をノズルヘッド53に供給する供給量と、ノズルヘッド53から戻る塗料の戻り量に基づいて、ピストン73bを押し出す押出装置の作動を制御する。
【0081】
このため、押出装置を作動させてピストン73bを押圧することで、シリンダ73a内に貯留されている塗料を、必要な量だけ供給路71側に供給させることができる。
【0082】
[第2の実施の形態について]
(2-1.第2の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機の構成について)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機の全体構成について説明する。なお、第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態におけるものと同一の構成については、同じ符号を用いると共に、その説明を省略するが、必要に応じて、アルファベット「B」を付して説明する。
【0083】
上述した第1の実施の形態におけるインクジェット式の塗装機10では、ノズルヘッドユニット50に対して塗料供給タンク73が一体的に固定されている構成となっている。これに対して、本実施の形態におけるインクジェット式の塗装機10Bでは、ノズルヘッドユニット50に対して、カートリッジ73Bが着脱可能に設けられている。かかる構成について、図13および図14に示す。図13は、本発明の第2の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Bにおいて、第2回動アーム25からノズルヘッドユニット50Bまでの構成を示す側面図である。また、図14は、ヘッド側循環経路70の概略的な構成を示す図である。
【0084】
図13および図14に示すように、第2の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Bのノズルヘッドユニット50Bには、塗料を貯留するカートリッジ73Bを搭載するカートリッジ搭載部500Bが設けられている。このカートリッジ搭載部500Bは、基本的に、塗料として単一の種類のカートリッジ73Bのみを装着するように設けられている。したがって、塗料の種類を変更する場合には、ノズルヘッドユニット50Bを交換する必要がある。
【0085】
なお、カートリッジ搭載部500Bが1つの種類のみのカートリッジ73Bを装着する場合においては、同じ種類のカートリッジ73Bを複数搭載可能としても良い。また、カートリッジ搭載部500Bは、1つの種類のカートリッジ73Bのみならず、複数の種類のカートリッジ73Bを搭載可能としても良い。たとえば、特定の色の塗料を貯留しているカートリッジ73Bと、洗浄の際に用いられる洗浄液を貯留しているカートリッジ73Bを搭載可能としても良い。
【0086】
また、カートリッジ73Bを搭載するカートリッジ搭載部500Bには、ヘッド側循環経路70Bに接続するための接続流路76Bが接続されている。この接続流路76Bには、三方弁77Bに接続されている。三方弁77Bは、塗装時には、接続流路76Bを介してカートリッジ73Bから塗料を供給させるように、その作動が切り替えられる。一方、ノズルヘッド53から塗料が吐出されない場合には、塗料をヘッド側循環経路70B内で循環させるべく、ノズルヘッド53から吐出されずに戻り経路72Bに戻ってきた塗料を、供給路71Bに供給する(流す)ように弁を切り替える。このように、ノズルヘッド53から塗料が吐出されない場合でも、塗料を循環させることにより、塗料中の成分に沈降が生じるのを防止することができる。また、塗料の種類によっては、塗料が流動している場合に粘度が低下させることができる場合もある。
【0087】
ところで、カートリッジ73Bには、上記のピストン73bに対応するような、塗料を押し出すための機構は設けられていない。しかしながら、ヘッド側循環経路70Bの供給路71Bには、ペイントレギュレータ78と同様のペイントレギュレータ78Bが設けられている。また、ヘッド側循環経路70Bの供給路71Bには、上述した定量供給装置75と同様の定量供給装置75Bが設けられている。なお、図14に示すように、戻り経路72Bにも、定量供給装置75Bと同様の定量供給装置75B2を設けることが好ましいが、戻り経路72Bに定量供給装置75B2を設けない構成を採用することもできる。また、戻り経路72Bには、封止弁701と同様の封止弁701Bを設けることが好ましいが、封止弁701Bを設けない構成を採用することもできる。
【0088】
また、三方弁77Bとペイントレギュレータ78Bの間には、塗料を蓄えるサブタンク79Bが配置されている。サブタンク79Bは、ヘッド側循環経路70Bにおいて塗料を円滑に循環させるためのバッファとして設けられている部分である。すなわち、カートリッジ73Bから供給された塗料は、三方弁77Bを過ぎた後には、カートリッジ73B側に戻ることができない。そのため、仮にペイントレギュレータ78Bで、吐出量よりも多くの塗料が供給されると、塗料の循環停止等の不良の原因となってしまう虞がある。そこで、供給路71に、塗料を蓄えるバッファとしてのサブタンク79Bを配置している。それにより、サブタンク79Bの内部で塗料の貯留量が変動しても、ヘッド側循環経路70B内での塗料の循環に支障を生じさせることがない状態で、ノズルヘッド53から塗料を吐出させることができる。
【0089】
(2-2.塗装システムの動作について)
以上のような、第2の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Bを用いた塗装も、上述した第1の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10と同様に行うことができる。
【0090】
また、車両の塗装が終了した後に、たとえば色の変更等のような塗料の種類の変更を行う場合、上述した第1の実施の形態で説明したのと同様に、チャック部30からノズルヘッドユニット50Bを取り外す。その取り外し後に、新たなノズルヘッドユニット50Bを、ハンドラー220によってチャック部30へと装着させる。そして、新たなノズルヘッドユニット50Bを用いて、新たな車両の塗装を行う。
【0091】
一方、チャック部30から取り外されたノズルヘッドユニット50Bから、さらにカートリッジ73Bも取り外す。そのカートリッジ73Bの取り外し後に、ノズルヘッドユニット50Bは、ハンドラー220によって洗浄機構210へと搬送される。そして、洗浄機構210では、ノズルヘッド53の表面およびノズルヘッドユニット50Bの内部(ヘッド側循環経路70等)の洗浄を行う。この洗浄の終了後に、ノズルヘッドユニット50Bのカートリッジ搭載部500Bに対し、新たなカートリッジ73Bを装着させる。その後に、ノズルヘッドユニット50Bは、ハンドラー220によって待機保持部230へと搬送される。
【0092】
また、ハンドラー220は、使用済みの(ノズルヘッドユニット50Bから取り外した)カートリッジ73Bも、洗浄機構210に搬送する。そして、洗浄機構210では、使用済みのカートリッジ73Bの洗浄を行う。その後に、ハンドラー220は、洗浄後のカートリッジ73Bを、塗料の充填を行う充填箇所へと搬送する。そして、不図示の塗料充填装置を用いて、カートリッジ73Bに塗料を充填する。なお、洗浄を行う部位にて、カートリッジ73Bに塗料充填を行うようにしても良い。この充填の終了後に、ハンドラー220は、塗料を充填した後のカートリッジ73Bを、待機保持部230へと搬送する。
【0093】
以上のような構成の塗装システム1およびインクジェット式の塗装機10Bにおいては、塗料貯留部は、塗料を蓄えるカートリッジ73Bであると共に、ノズルヘッド53には、カートリッジ73Bを着脱自在な状態で搭載するカートリッジ搭載部500Bが設けられている。
【0094】
このため、ノズルヘッドユニット50Bに対して、カートリッジ73Bを差し替えるだけで、たとえば色の変更等のような塗装の種類の変更を行うことができる。そのため、たとえば塗装色毎に、ノズルヘッドユニット50Bを準備する必要がなくなるので、ノズルヘッドユニット50Bの個数を低減することが可能となる。
【0095】
また、本実施の形態におけるインクジェット式の塗装機10Bでは、カートリッジ73Bを待機保持するカートリッジ待機保持部(待機保持部230)が設けられている。そして、カートリッジ搭載部500Bに搭載されているカートリッジ73Bを、カートリッジ待機保持部(待機保持部230)に保持されているカートリッジ73Bに交換させるためのカートリッジ交換手段(ハンドラー220)も設けられている。
【0096】
このため、カートリッジ交換手段(ハンドラー220)を用いて、カートリッジ73Bの交換を人手によらずに容易に行うことが可能となる。
【0097】
[第3の実施の形態について]
(3-1.第3の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機の構成について)
次に、本発明の第3の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機の全体構成について説明する。なお、第3の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態および第2の実施の形態におけるものと同一の構成については、同じ符号を用いると共に、その説明を省略するが、必要に応じて、アルファベット「C」を付して説明する。
【0098】
本実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Cでは、ノズルヘッドユニット50Cにカートリッジは設置されていない。しかしながら、第2回動アーム25にカートリッジ73Cが設置されている。図15は、本発明の第3の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Cにおいて、第2回動アーム25からノズルヘッドユニット50Cまでの構成を示す側面図である。また、図16は、ヘッド側循環経路70C、アーム側循環経路80Cの概略的な構成を示す図である。
【0099】
図15および図16に示すように、第3の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Cのノズルヘッドユニット50Cには、ヘッド側循環経路70Cが設けられている。このヘッド側循環経路70Cは、上述したヘッド側循環経路70,70Bと同様に、供給路71Cと戻り経路72Cとを備えている。しかしながら、ヘッド側循環経路70Cは、ノズルヘッドユニット50C内のみでは循環経路を構成していない。すなわち、供給路71Cは、後述するアーム側循環経路80Cの供給路81Cに接続されている。また、戻り経路72Cも、後述するアーム側循環経路80Cの戻り経路82Cに接続されている。なお、戻り経路72Cには、封止弁701と同様の封止弁701Cを設けることが好ましいが、封止弁701Cを設けない構成を採用することもできる。
【0100】
また、第2回動アーム25には、アーム側循環経路80Cが設けられている。アーム側循環経路80Cは、上述した供給路71Cに接続される供給路81Cと、上述した戻り経路72Cに接続される戻り経路82Cとを備えている。ここで、供給路81Cと戻り経路82Cとは、上述した三方弁77Bと同様の三方弁87Cに接続されている。なお、供給路81Cはアーム側供給路に対応すると共に、戻り経路82Cはアーム側戻り経路に対応する。
【0101】
また、第2回動アーム25には、上述したカートリッジ搭載部500Bと同様のカートリッジ搭載部500Cが設けられている。このカートリッジ搭載部500Cには、アーム側循環経路80Cに接続するための、上述した接続流路76Bと同様の接続流路86Cが接続されていて、該接続流路86Cは三方弁87Cに接続されている。このため、塗装時には、接続流路86Cを介してカートリッジ83Cから塗料を供給させるように、三方弁87Cを切り替える。しかしながら、ノズルヘッド53から塗料が吐出されない場合には、ヘッド側循環経路70Cとアーム側循環経路80Cとで塗料を循環させるように、三方弁87Cを切り替える。
【0102】
したがって、上述した第2の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Bと同様に、ノズルヘッド53から塗料が吐出されない場合でも、塗料を循環させることにより、塗料中の成分に沈降が生じるのを防止することができる。また、塗料の種類によっては、塗料が流動している場合に粘度が低下させることができる場合もある。
【0103】
なお、塗料貯留部(カートリッジ83C)は、ロボットアーム(第2回動アーム25)側に設けられる以外に、塗装装置本体20の近隣に配置する構成を採用することもできる。
【0104】
なお、供給路81Cには、上述した供給路71Bに設けられている定量供給装置75Bと同様の定量供給装置85Cが設けられている。また、供給路81Cには、上述した供給路71Bに設けられているペイントレギュレータ78Bと同様のペイントレギュレータ88Cも設けられ、さらにサブタンク79Bと同様のサブタンク89Cも設けられている。このため、仮にサブタンク89C内で塗料の貯留量が変動しても、アーム側循環経路80Cおよびヘッド側循環経路70C内での塗料の循環に支障をきたせることがない。したがって、循環されている塗料をノズルヘッド53から良好に吐出させることができる。
【0105】
なお、図16に示す構成では、定量供給装置85C、ペイントレギュレータ88Cおよびサブタンク89Cの少なくとも1つが、ヘッド側循環経路70Cの供給路71Cに設けられている構成を採用しても良い。
【0106】
また、供給路81Cのうちペイントレギュレータ88Cよりも下流側には、切替弁801Cが設けられていると共に、戻り経路82Cにも切替弁802Cが接続されている。これら切替弁801C,802Cの間は、バイパス流路803Cで接続されている。そして、ノズルヘッドユニット50Cを取り外した際には、バイパス流路803Cに、図示を省略する洗浄機構から供給される洗浄用の液体が流れるよう、切替弁801Cと切替弁802Cとを切り替えることができる。このように、バイパス流路803Cの存在により、ノズルヘッドユニット50Cを取り外した後に、アーム側循環経路80Cのみの洗浄を行うことができる。なお、戻り経路82Cには、切替弁804Cも設けられている。この切替弁804Cは、洗浄後に、洗浄用の液体(廃液)を排出する排出路805Cに接続されている。したがって、洗浄後に、排出路805Cから廃液を排出させることができる。
【0107】
(3-2.塗装システムの動作について)
以上のような、第3の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Cを用いた塗装も、上述した第2の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Bと同様に行うことができる。
【0108】
また、車両の塗装が終了した後に、たとえば色の変更等のような塗料の種類の変更を行う場合、上述した第1の実施の形態で説明したのと同様に、チャック部30からノズルヘッドユニット50Cを外す。さらに、第2回動アーム25からは、カートリッジ83Cも取り外す。それらの取り外し後に、新たなノズルヘッドユニット50Cを、ハンドラー220によってチャック部30へと装着させる。さらに、新たなカートリッジ83Cを、ハンドラー220によってカートリッジ搭載部500Cへと装着させる。それらの装着後に新たなノズルヘッドユニット50Cを用いて、新たな車両の塗装を行う。
【0109】
また、取り外されたノズルヘッドユニット50Cは、ノズルヘッドユニット50Bと同様に、ハンドラー220によって洗浄機構210へと搬送される。そして、洗浄機構210では、ノズルヘッド53の表面およびノズルヘッドユニット50Cの内部(ヘッド側循環経路70等)の洗浄を行う。その後に、ノズルヘッドユニット50Cは、ハンドラー220によって待機保持部230へと搬送される。なお、ノズルヘッドユニット50Cをチャック部30から取り外した場合、バイパス流路803Cに洗浄用の液体が流れるように、切替弁801C,802Cの作動を切り替える。そして、洗浄が終了した後に、切替弁804Cを切り替えて、排出路805Cから廃液を排出させる。
【0110】
また、ハンドラー220は、使用済みの(第2回動アーム25のカートリッジ搭載部500Cから取り外した)カートリッジ83Cも、洗浄機構210に搬送する。そして、洗浄機構210では、使用済みのカートリッジ83Cの洗浄を行う。その後に、ハンドラー220は、洗浄後のカートリッジ83Cを、塗料の充填を行う充填箇所へと搬送する。そして、不図示の塗料充填装置を用いて、カートリッジ83Cに塗料を充填する。なお、洗浄を行う部位にて、カートリッジ83Cに塗料充填を行うようにしても良い。この充填の終了後に、ハンドラー220は、塗料を充填した後のカートリッジ83Cを、待機保持部230へと搬送する。
【0111】
以上のような構成の塗装システム1およびインクジェット式の塗装機10Cによると、ノズル54から吐出される塗料を蓄える塗料貯留部(カートリッジ83C)がロボットアーム(第2回動アーム25)に設けられている。加えて、ロボットアーム(第2回動アーム25)には、塗料を流通させるアーム側循環経路80Cが設けられていて、アーム側循環経路80Cには、塗料貯留部(カートリッジ83C)から供給される塗料をヘッド側循環経路70Cに向けて塗料を供給するアーム側供給経路(供給路81C)と、ノズル54から吐出されなかった塗料がヘッド側循環経路70Cから戻されると共にアーム側循環経路80Cに向けて塗料を再び供給するアーム側戻り経路(戻り経路82C)とが設けられている。
【0112】
このように、塗料貯留部(カートリッジ83C)は、ロボットアーム(第2回動アーム25)側に設けられているので、ノズルヘッドユニット50の重量を低減することができる。したがって、ノズルヘッドユニット50の作用するモーメントを低減することができるので、運動性能が向上する。また、たとえばチャック部30等のような特定部位に作用するモーメントを低減することができるので、大きなモーメントに対応した剛性の高い構造とせずに済み、コスト面で有利となる。また、ノズルヘッドユニット50の重量を低減することより、小型の塗装装置本体20(ロボット)を用いることができる。それにより、インクジェット式の塗装機10のコストを低減することも可能となる。
【0113】
また、ロボットアーム(第2回動アーム25)側には、アーム側循環経路80Cが設けられ、このアーム側循環経路80Cとヘッド側循環経路70Cとの間で、塗料が循環する循環経路を形成することができる。このため、上述した第1の実施の形態のヘッド側循環経路70および第2の実施の形態のヘッド側循環経路70Bと同様に、塗料の循環によって、塗料の成分中に沈降が生じるのを防止することができる。そのため、沈降によってノズル54の成分に目詰まりが生じるのを防止することができる。
【0114】
また、本実施の形態のインクジェット式の塗装機10Cでは、塗料貯留部は、塗料を蓄えるカートリッジ83Cであると共に、ロボットアーム(第2回動アーム25)には、カートリッジ83Cを着脱自在な状態で搭載するカートリッジ搭載部500Cが設けられている。
【0115】
このため、ノズルヘッドユニット50Cに対して、カートリッジ83Cを差し替えるだけで、たとえば色の変更等のような塗装の種類の変更を行うことができる。そのため、たとえば塗装色毎に、ノズルヘッドユニット50Cを準備する必要がなくなるので、ノズルヘッドユニット50Cの個数を低減することが可能となる。加えて、ノズルヘッドユニット50Cから離れたロボットアーム(第2回動アーム25)にカートリッジ搭載部500Cが存在しているので、チャック部30に対するノズルヘッドユニット50Cの着脱動作と、カートリッジ搭載部500Cに対するカートリッジ83Cの着脱動作とを、別個独立して行うことができる。このため、上記の2つの着脱動作を同時に行うことも可能となり、着脱動作に要する時間の短縮を図ることが可能となる。
【0116】
[第4の実施の形態について]
(4-1.第4の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機の構成について)
次に、本発明の第4の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機の全体構成について説明する。なお、第4の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態~第3の実施の形態におけるものと同一の構成については、同じ符号を用いると共に、その説明を省略するが、必要に応じて、アルファベット「D」を付して説明する。
【0117】
本実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Dでは、色替弁を用いて、たとえば色替のように、異なる種類の塗料を吐出させるようにしている。以下、この構成の詳細について、図17および図18に基づいて説明する。図17は、本発明の第4の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Dにおいて、第2回動アーム25からノズルヘッドユニット50Dまでの構成を示す側面図である。また、図18は、ヘッド側循環経路70D、アーム側循環経路80Dおよび色替弁装置90Dの概略的な構成を示す図である。
【0118】
図17および図18に示すように、ヘッド側循環経路70Dは、上述した供給路71Cと同様の供給路71Dと、上述した戻り経路72Cと同様の戻り経路72Dとを備えている。また、戻り経路72Dには、封止弁701Cと同様の封止弁701Dを設けることが好ましいが、封止弁701Dを設けない構成を採用することもできる。
【0119】
また、第2回動アーム25には、アーム側循環経路80Cが設けられている。アーム側循環経路80Cは、上述した供給路71Dに接続されると共に上述した供給路81Cと同様の供給路81Dと、上述した戻り経路72Dに接続されると共に上述した戻り経路82Cと同様の戻り経路82Dとを備えている。ここで、供給路81Dと戻り経路82Dとは、上述した三方弁77Bと同様の三方弁87Dに接続されている。
【0120】
また、第2回動アーム25には、上述したアーム側循環経路80Cと同様のアーム側循環経路80Dが設けられていて、該アーム側循環経路80Dは、上述した供給路71Dに接続される供給路81Dと、上述した戻り経路72Dに接続される戻り経路82Dとを備えている。また、これら供給路81Dと戻り経路82Dとは、上述した三方弁87Cと同様の三方弁87Dに接続されている。
【0121】
また、供給路81Dには、上述した定量供給装置85Cと同様の定量供給装置85Dが設けられている。また、供給路81Dには、上述したペイントレギュレータ88Cと同様のペイントレギュレータ88Dも設けられ、さらにサブタンク89Cと同様のサブタンク89Dも設けられている。このため、仮にサブタンク89D内で塗料の貯留量が変動しても、アーム側循環経路80Dおよびヘッド側循環経路70D内での塗料の循環に支障をきたせることがない。したがって、循環されている塗料をノズルヘッド53から良好に吐出させることができる。
【0122】
なお、定量供給装置85D、ペイントレギュレータ88Dおよびサブタンク89Dの少なくとも1つが、ヘッド側循環経路70Dの供給路71Dに設けられている構成を採用しても良い。また、ペイントレギュレータ88Dは、圧力調整手段に対応する。
【0123】
なお、供給路81Dには、上述した切替弁801Cと同様の切替弁801Dが設けられていて、その切替弁801Dは、上述したバイパス流路803Cと同様のバイパス流路803Dに接続され、さらにバイパス流路803Dは、上述した切替弁802Cと同様の切替弁802Dに接続されている。また、戻り経路82Dには、上述した切替弁804Cと同様に切替弁804Dも設けられていて、さらに切替弁804Cは、上述した排出路805Cと同様の排出路805Dに接続されている。
【0124】
また、三方弁87Dは、色替弁装置90Dの共通流路96Dに接続されている。ここで、色替弁装置90Dは、選択されたインクをノズルヘッドユニット50Dに向けて選択的に供給する装置である。この色替弁装置90Dは、図18に示すように、塗料供給源92Dと、接続流路93Dと、切替弁94Dと、貯留部側循環経路95Dと、共通流路96Dと、洗浄液貯留部97Dと、切替弁98Dと、洗浄液供給路99Dとを備えている。
【0125】
これらのうち、塗料供給源92Dは、塗装を行う部位である塗装ブースから離れた部位に設けられている。具体的には、塗装ブース壁PW1で囲まれた内側には、インクジェット式の塗装機10Dが設置されているが、その塗装ブース壁PW1で囲まれた部位の外側に、塗料供給源92Dが設けられている。この塗料供給源92Dは、塗料の種類分だけ設けられている。たとえば、塗料の種類が6種である場合には、6つの塗料供給源92Dが存在しているが、特定の種類の塗料の消費量が多い場合には、当該塗料に対応した塗料貯留部92の個数を多く設けるようにしても良い。
【0126】
また、接続流路93Dは、その一端側が共通流路96Dに接続されると共に、その他端側が切替弁94Dに接続されている。この切替弁94Dは、上述した三方弁87Dと同様の三方弁であり、貯留部側循環経路95Dにも接続されている。したがって、切替弁94Dは、塗料が必要な塗装時(ノズルヘッド53から塗料を吐出させる際)には、貯留部側循環経路95Dから接続流路93Dに塗料が向かうように、その作動が切り替えられる。一方、ノズルヘッド53から塗料が吐出されない場合には、塗料を貯留部側循環経路95D内で循環させるように弁を切り替える。このように、貯留部側循環経路95D内で、塗料を循環させることにより、塗料中の成分に沈降が生じるのを防止することができる。また、塗料の種類によっては、塗料が流動している場合に粘度が低下させることができる場合もある。
【0127】
また、共通流路96Dは、上述したそれぞれの接続流路93Dに接続されている流路であり、その一端側が三方弁87Dに接続されている。また、共通流路96Dには、後述する洗浄液供給路99Dにも接続されている。
【0128】
また、洗浄液貯留部97Dは、塗料の種類を切り替える場合に用いられる、洗浄液を貯留する部分である。また、切替弁98Dは、洗浄液供給路99Dの中途部分に設けられている。この切替弁98Dは、三方弁ではなく開閉を切り替える二方弁となっている。また、洗浄液供給路99Dは、洗浄液貯留部97Dと共通流路96Dとを連結する流路である。そのため、色替等のように、用いる塗料を変更するのに先立って、切替弁98Dを開とすることで、洗浄液貯留部97Dに貯留されている洗浄液が洗浄液供給路99Dに向かって流れる。それにより、共通流路96Dや、アーム側循環経路80D、ヘッド側循環経路70Dの洗浄が行われ、先に用いていた塗料の洗浄を実施することができる。
【0129】
なお、洗浄液貯留部97D、切替弁98Dおよび洗浄液供給路99Dは、アーム側洗浄手段に対応する。
【0130】
(4-2.塗装システムの動作について)
以上のような、第4の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10Dを用いた塗装も、上述した第1の実施の形態に係るインクジェット式の塗装機10等と同様に行うことができる。
【0131】
また、車両の塗装が終了した後に、たとえば色の変更等のような塗料の種類の変更を行う場合、上述した第1の実施の形態で説明したのと同様に、チャック部30からノズルヘッドユニット50Dを外す。その取り外し後に、新たなノズルヘッドユニット50Dを、ハンドラー220によってチャック部30へと装着させる。そして、新たなノズルヘッドユニット50Dを用いて、新たな車両の塗装を行う。
【0132】
ここで、ノズルヘッドユニット50Dを取り外した場合、洗浄制御部120は、切替弁98Dを開へと切り替えて、洗浄液貯留部97Dから共通流路96Dに洗浄液を流す。そして、バイパス流路803Dに洗浄用の液体が流れるように、切替弁801D,802Dの作動を切り替える。そして、洗浄が終了した後に、切替弁804Dを切り替えて、排出路805Dから廃液を排出させる。それにより、ノズルヘッドユニット50Dを取り外した状態で、アーム側循環経路80Dの洗浄が行われる。なお、ノズルヘッドユニット50Dをチャック部30に取り付けた状態で、ヘッド側循環経路70Dとアーム側循環経路80Dの洗浄を行うようにしても良い。
【0133】
一方、チャック部30から取り外されたノズルヘッドユニット50Dは、ハンドラー220によって洗浄機構210へと搬送される。そして、洗浄機構210では、ノズルヘッド53の表面およびノズルヘッドユニット50Dの内部(ヘッド側循環経路70D等)の洗浄を行う。この洗浄の終了後に、ノズルヘッドユニット50Dは、ハンドラー220によって待機保持部230へと搬送される。
【0134】
以上のような構成の塗装システム1およびインクジェット式の塗装機10Dによると、色毎の塗料を蓄える塗料貯留部92Dを有すると共に、選択された塗料をノズルヘッド53に対して供給可能となるように色替えすることが可能な色替弁装置90Dがロボットアーム(第2回動アーム25)に設けられている。また、ロボットアーム(第2回動アーム25)には、塗料を流通させるアーム側循環経路80Dが設けられていて、アーム側循環経路80Dには、色替弁装置90Dから供給される塗料をヘッド側循環経路70Dに向けて塗料を供給するアーム側供給経路(供給路81D)と、ノズル54から吐出されなかった塗料がヘッド側循環経路70Dから戻されると共にアーム側循環経路80Dに向けて塗料を再び供給するアーム側戻り経路(戻り経路82D)とが設けられている。また、ロボットアーム(第2回動アーム25)またはノズルヘッドユニット50Dには、色替弁装置90Dからアーム側供給経路(供給路81D)を介してヘッド側循環経路(供給路71D)に向かう塗料の圧力を調整する圧力調整手段(ペイントレギュレータ88D)と、色替弁装置90Dおよび圧力調整手段(ペイントレギュレータ88D)の作動を制御する本体制御手段(本体制御部100)と、が設けられている。また、本体制御手段(本体制御部100)での色替弁装置90Dおよび圧力調整手段(ペイントレギュレータ88D)の作動制御に基づいて、アーム側供給経路(供給路81D)およびアーム側戻り経路(戻り経路82D)を介して、ヘッド側循環経路70Dと色替弁装置90Dとの間で塗料が循環させられる。
【0135】
このため、色替弁装置90Dを用いたインクジェット式の塗装機10Dにおいても、ヘッド側循環経路70Dおよびアーム側循環経路80D内で塗料を循環させることができ、それによって塗料の成分中に沈降が生じるのを防止することが可能となる。
【0136】
また、本実施の形態のインクジェット式の塗装機10Dでは、色替弁装置90Dには、ヘッド側循環経路70D、アーム側供給経路(供給路81D)およびアーム側戻り経路(戻り経路82D)内の塗料を洗浄すると共に本体制御手段(本体制御部100)によって作動制御されるアーム側洗浄手段(洗浄液貯留部97D、切替弁98Dおよび洗浄液供給路99D)が設けられている。また、本体制御手段(本体制御部100)によって色替弁装置90Dで現在選択されている種類の塗料から異なる種類の塗料を新たに選択変更した場合には、本体制御手段(本体制御部100)での制御に基づいてアーム側洗浄手段(洗浄液貯留部97D、切替弁98Dおよび洗浄液供給路99D)を作動させる。
【0137】
このため、アーム側洗浄手段(洗浄液貯留部97D、切替弁98Dおよび洗浄液供給路99D)を用いて、共通流路96D、アーム側循環経路80Dおよびヘッド側循環経路70Dの洗浄を行うことができる。そのため、先に用いていた塗料の洗浄を実施することができ、新たな塗料を用いた塗装品質を確保することができる。
【0138】
[変形例について]
以上、本発明の第1から第4の実施の形態について説明したが、本発明は、これら以外に、種々変形可能である。以下に、その一例について説明する。
【0139】
上述の各実施の形態では、ノズル吐出面52の表面を洗浄する手段(ノズル吐出面洗浄手段)を、備えるようにしても良い。このようなノズル吐出面洗浄手段としては、たとえば、ノズル吐出面52に対して相対的に摺動させることが可能なワイピング装置があげられる。ワイピング装置は、ゴム等のような柔軟性を有する材質から構成されるワイパー部材を備え、そのワイパー部材によって、ノズル吐出面52に付着している塗料等をこすり取ることができる。なお、ノズル吐出面洗浄手段としては、ワイピング装置には限られない。たとえば、布やスポンジ等のような塗料を吸収する多孔質の部材をノズル吐出面52に押し付けつつ拭き取る手段(拭き取り手段)を用いて、ノズル吐出面52の洗浄を行うようにしても良い。
【0140】
また、上述の第2の実施の形態では、ノズルヘッドユニット50Bをチャック部30から取り外した後に、ノズルヘッドユニット50Bからカートリッジ73Bを取り外すようにしている。しかしながら、カートリッジ73B内の塗料がなくなった場合であっても、同じ種類の塗料による塗装を継続する場合には、ノズルヘッドユニット50Bを取り外しての洗浄を行わずに、カートリッジ73Bのみを新たなものへと、交換するようにしても良い。この場合、ノズル54からの塗料の吐出が正常となるまで、塗料を別途の部位で吐出させる(いわゆる空吹きをする)ようにすることが好ましい。
【0141】
なお、上述のように、ノズルヘッドユニット50Bを新たなものに交換せずに、カートリッジ73Bのみを交換する場合、たとえば数個分のカートリッジ73Bを継続して使用すると、ノズル吐出面52への汚れが蓄積され、またノズル54の内部の異物が徐々に蓄積される。そのため、所定個数のカートリッジ73Bを使用した場合には、ノズルヘッドユニット50Bを交換するようにしても良い。
【0142】
また、上述の第3の実施の形態では、第2回動アーム25にカートリッジ搭載部500Cが設けられると共に、そのカートリッジ搭載部500Cにカートリッジ83Cが装着される構成について説明している。しかしながら、たとえば第1回動アーム24やその他の部位に、カートリッジ搭載部を設け、そのカートリッジ搭載部にカートリッジを着脱させるようにしても良い。
【0143】
また、上述の第4の実施の形態では、第2回動アーム25に色替弁装置90Dが設けられている。しかしながら、たとえば第1回動アーム24やその他の部位に、色替弁装置を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0144】
1…塗装システム、10,10B,10C,10D…インクジェット式の塗装機、20…塗装装置本体、21…基台、22…脚部、22a…回転軸部(ロボットアームの一部に対応)、22a1…ハウジング、23…回転アーム(ロボットアームの一部に対応)、23a…ハウジング、24…第1回動アーム(ロボットアームの一部に対応)、25…第2回動アーム(ロボットアームの一部に対応)、25a…ハウジング、26…リスト部(ロボットアームの一部に対応)、30…チャック部、31…アーム側係止部、32…係止本体部、33…位置決めピン、34…ピストン挿通部、35…カム用ピストン体、35a…ピストン部、35b…作動ピン部、35c…カム押圧部、36…支持突部、37…ロックカム、37a…軸部、37b…干渉部、41…ヘッド側係止部、42…係止本体部、43…位置決め孔部、44…カム用孔部、45…係止ピン、50,50B,50C,50D…ノズルヘッドユニット、51…ノズルヘッド、52…戻り経路、53…ノズルヘッド、54…ノズル、55…ノズル列、60…列方向排出流路、61…排出側大流路、62…圧電基板、63a,63b…圧電セラミック層、64…共通電極、65…個別電極、70,70B,70C,70D…ヘッド側循環経路、71,71B,71C,71D…供給路、72,72B,72C,72D…戻り経路、73…塗料供給タンク(塗料貯留部に対応)、73a…シリンダ、73b…ピストン、74…供給管路、75,75B,85C,85D…定量供給装置、76B,86C…接続流路、77B,87C,87D…三方弁、78B,88C,88D…ペイントレギュレータ、79B,89C,89D…サブタンク、80C,80D…アーム側循環経路、81C,81D…供給路(アーム側供給路に対応)、82C,82D…戻り経路(アーム側戻り経路に対応)、83C…カートリッジ、90D…色替弁装置、92D…塗料供給源、93D…接続流路、94D…切替弁、95D…貯留部側循環経路、96D…共通流路、97D…洗浄液貯留部、98D…切替弁、99D…洗浄液供給路、100…本体制御部(本体制御手段に対応)、110…ノズル制御部(ノズル制御手段に対応)、120…洗浄制御部、130…全体制御部、200…ステーション部、201…フレーム、202…天面プレート、210…洗浄機構、220…ハンドラー(ヘッド交換手段に対応)、230…待機保持部(ヘッド待機保持部およびカートリッジ待機保持部に対応)、500B,500C…カートリッジ搭載部、701,701B,701C,701D…封止弁、801C,802C,804C…切替弁、803C…バイパス流路、805C…排出路
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