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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】双眼ルーペ
(51)【国際特許分類】
   G02C 9/04 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
G02C9/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022016299
(22)【出願日】2022-02-04
【審査請求日】2022-03-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515182129
【氏名又は名称】米澤 きく子
(73)【特許権者】
【識別番号】515182130
【氏名又は名称】株式会社メディソレーユ
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】米澤 きく子
【審査官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002968(WO,A1)
【文献】特開2019-008273(JP,A)
【文献】国際公開第2007/057987(WO,A1)
【文献】特開2003-149606(JP,A)
【文献】特開2019-144297(JP,A)
【文献】特開2018-011433(JP,A)
【文献】特開平05-187705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手元の観察対象を拡大して観るための双眼ルーペであって、
光学系を内蔵する左右一対のルーペ本体と、
前記一対のルーペ本体を観察対象に向けた視野方向に支持するキャリアレンズを保持する眼鏡フレームと、
前記キャリアレンズに取り付けられ、前記一対のルーペ本体の接眼側から挿入し、前記ルーペ本体を着脱可能に受け入れる筒状のルーペホルダと、を備え、
前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの筒状内面に密接状態に接する接触面及び接眼端側面は、プラスチック素材に磁性粉末を混ぜて成形されたプラスティックマグネットにより形成され、
前記ルーペ本体は、前記筒状内面における接触面と前記接眼端側面における磁気吸引力により前記ルーペホルダの筒内面に密接状態に接して係止される、ことを特徴とする双眼ルーペ。
【請求項2】
前記ルーペ本体は、さらに、突起部を有する突起付きリングを介して前記ルーペホルダに装着され、前記ルーペホルダは、前記突起部に係合する鈎型溝の係合部を有し、
前記ルーペ本体が前記ルーペホルダから離脱しないように形成された、ことを特徴とする請求項1に記載の双眼ルーペ。
【請求項3】
前記突起付きリングは、プラスチック素材に磁性粉末を混ぜて成形されたプラスティックマグネットにより形成された、ことを特徴とする請求項2に記載の双眼ルーペ。
【請求項4】
少なくとも前記ルーペホルダ及び前記ルーペ本体の夫々は、前記磁性粉末の結晶分子配列が一定方向に配向された異方性着磁素材により形成され、前記ルーペ本体の夫々は、前記ルーペホルダに対して所定の回転方向に装着される、ことを特徴とする請求項1又は3に記載の双眼ルーペ。
【請求項5】
前記突起付きリングは、前記磁性粉末の結晶分子配列が一定方向に配向された異方性着磁素材により形成され、前記ルーペホルダにおける前記ルーペ本体の保持力をより強くする、ことを特徴とする請求項3に記載の双眼ルーペ。
【請求項6】
前記ルーペホルダは、挿入された前記ルーペ本体が観察対象へ向くように、前記ルーペホルダの面に対して所定の角度で固定されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかの項に記載の双眼ルーペ。
【請求項7】
前記ルーペ本体は、前記光学系による倍率及び/又は視力調整距離が異なる複数種類が予め準備され、その中の一つが選択されて前記ルーペホルダに取り付けられか、又は所定範囲の倍率及び/又は視力調整距離内において選択設定可能な前記ルーペ本体の一つが選択されて前記ルーペホルダに取り付けられる、ことを特徴とする請求項6に記載の双眼ルーペ。
【請求項8】
前記ルーペ本体は、前記光学系による倍率が異なる複数種類が予め準備され、その中の一つが選択されて前記ルーペホルダに取り付けられ、
前記ルーペ本体の前記接眼端側面には、予め複数準備された視力距離調整レンズの一つが着脱可能に嵌め込まれる、ことを特徴とする請求項6に記載の双眼ルーペ。
【請求項9】
前記視力距離調整レンズは、レンズの周囲を囲むリムにより保持され、当該リムはフェライト磁性体により形成されている、ことを特徴とする請求項8に記載の双眼ルーペ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療施術や精密工作作業の際に使用される双眼ルーペに関する。
【背景技術】
【0002】
双眼ルーペは、手元の局所的な観察対象を拡大して視認する手段として、従来から、医療分野、精密工作、宝石加工等の各分野において広く使用されている。これらの分野では、細かな手元作業の操作に高い精度が求められており、双眼ルーペは、優れた解像度、広い視野、焦点距離等に加えて、明るくクリアな高画質を備えていることが望まれている。
【0003】
これに加えて、医療分野において使用される双眼ルーペは、人の健康や命に関わることから、施術者の視力に合わせて双眼ルーペの適正な視力矯正と乱視矯正等の機能が求められている。
【0004】
しかしながら、従来の双眼ルーペにおいては、医療施術者の手作業に高い精度が要求されるにも関わらず、施術者の遠視又は近視の視力矯正やレンズの焦点距離の調整については、施術の種類又は施術中の変化する状況に適応して施術者の視力に施術中に合せることができないため、視野や視覚の精度にムラが生じるという問題点があった。
【0005】
さらに、人間の視力は、体調や疲労の程度によって常時変化し、同日であっても午前と午後とで変化するにも拘わらず、従来の双眼ルーペは、施術者の変動する視力に適合させることができず、不適正な視力の状態の双眼ルーペを適宜選択して使用して施術作業を行うことが多かった。
【0006】
そのため、従来から焦点距離が異なる複数種類の焦点調整部を予め準備しておき、その中の一つを選択して、その接眼部に着脱自在に装着可能にした双眼ルーペが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
図9は、特許文献1に記載されている類の双眼ルーペであって、ルーペ本体がキャリアレンズに固定的に装着される第1の従来技術の例を示す。
【0008】
図9において、ルーペ本体3は、観察対象の像を所定の倍率、例えば2倍又は3倍等の倍率で調整された拡大光学系を内蔵し、接眼側端に位置している接眼筒2aと、これより徐々に外径を大きくしていく傾斜部2bを経て大径部を設けた対物レンズが配置される筒2cと、で構成されている。そして、接眼筒2aの後端には、磁石に吸着する磁性体のリング6が装着されている。ここで、ルーペ本体3内に、レンズを前後方向に移動可能にする機構を内蔵していれば、焦点調整を可能とすることが可能となる。
【0009】
ルーペ本体3の接眼端側には、円形の焦点調整レンズ11が嵌め込まれるように磁性体のレンズ保持部12は焦点調整レンズ11の周囲を縁取る。この焦点調整レンズ11は、双眼ルーペの使用者が左右のルーペ本体3で対象を拡大して観察する際の視力を矯正するために、必要に応じてルーペ本体3に合せて用いられる遠距離又は近距離を補正するのみならず、乱視等を補正するレンズとすることもできる。
【0010】
そのために、焦点調整レンズ11の内側には焦点調整の高さを調整するための焦点調整リング(図示せず)を備えるようにしても良い。また、双眼ルーペの使用者が普段は視力の矯正を必要としていなくても、施術者の処置中の視力(近視又は遠視)の変動に際し焦点調整レンズ11を用いることで視力の調整が確保される。
【0011】
このように、図9に示したルーペ本体がキャリアレンズに固定的に装着される従来技術の例では、焦点調整レンズ11についてはルーペ本体3の接眼部端側に対して着脱可能に構成されてはいるものの、ルーペ本体3は、キャリアレンズレンズ4に固定的に取り付けられていることから、倍率を変更する場合、メガネフレームを含む双眼ループそのものを別の双眼ルーペへの装着替えが必要であった。
【0012】
一方、双眼ルーペにおいては、施術する部位に応じて必要な倍率が異なるため、数種類の双眼ルーペを用意しておき、その都度、最適な倍率の双眼ルーペを選択して装着するタイプの双眼ルーペも知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0013】
図10は、例えば特許文献2に記載されている類の双眼ルーペであって、予め用意されている数種類の双眼ルーペ本体の中からその都度使用するルーペ本体を選択し、キャリアレンズに着脱可能に装着するタイプの第2の従来技術の例を示す。
【0014】
図10において、キャリアレンズ4にルーペ本体3を着脱可能に受け入れるためのルーペホルダ9が取り付けられた第2の従来技術の例である。図示すように、眼鏡フレーム10のキャリアレンズ4にルーペホルダ9が取り付けられ、予め用意された複数種類のルーペ本体の中から選択された一のルーペ本体3が、ルーペホルダ9に着脱可能に取り付けられるように構成されている。
【0015】
そして、図10に示した従来例においては、ルーペ本体3は、キャリアレンズ4に固定されたルーペホルダ9に、リング6、そのルーペ本体側面の周縁に複数の凹部8が施されたマグネットリング5を介して着脱可能に取り付けられる。そして、この例では、制作の容易性等の事情から、マグネットリング5は、磁性によって一つに結合する二個の半円リング5a、5bで構成され、リング6を介してルーペホルダ8に係合している。
【0016】
一方、ルーペ本体3の接眼側の周縁には、マグネットリング5に施されている凹部8に係合する凸状の磁性体突起7が設けられ、ルーペ本体3はマグネットリング5に引き付けられることにより、双方が係合するように形成されている。
【0017】
しかし、この第2の従来例では、ルーペ本体3の接眼端側に、マグネットリング5や磁気リング6が接続されるために、双眼ループの接眼端側のレンズ径が小径とならざるを得ないことから、その結果、双眼ルーペの視界(視野)が狭くなり、双眼ルーペの光学系を明るくすることを妨げていたのである。特に、ルーペ本体3をルーペホルダに磁力の吸引力によって確実に係止するためには、マグネットリング5と磁気リング6の体積(口径×厚み)を大きくせざるを得なかったからである。
【0018】
この第2の従来例においては、上述したように、焦点距離が異なる複数種類の焦点調整部を予め準備しておきその中の一つを選択して着脱自在に装着可能にし、また、倍率が調整可能な複数の双眼ルーペを用意してその中から適宜最適なものを選択する従来の双眼ルーペにおいては、双眼ルーペ本体とこれを支持するルーペホルダの取付部(接眼部)の構造が複雑になり着脱機構の部品が多いことから、その分接眼レンズのガラス径が小さくなり、その結果、施術者の視界(視野の広さ)を狭くしていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】特許第5032332号公報
【文献】特開2019-144297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、観察対象を拡大して視認する光学系を内蔵するルーペ本体と焦点調整部と所望の倍率に容易に差し替えることができる双眼ルーペにおいて、施術者の視界を広くすると共に、明るく且つクリアな高画質の双眼ルーペを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上記課題を解決するべく、手元の観察対象を拡大して観るための双眼ルーペであって、光学系を内蔵する左右一対のルーペ本体と、前記一対のルーペ本体を観察対象に向けた視野方向に支持するキャリアレンズを保持する眼鏡フレームと、前記キャリアレンズに取り付けられ、前記一対のルーペ本体の接眼側から挿入し、前記ルーペ本体を着脱可能に受け入れる筒状のルーペホルダと、を備え、前記筒状のルーペホルダと前記ルーペ本体における前記ルーペホルダの筒状内面に密接状態に接する接触面及び接眼端側面は、プラスチック素材に磁性粉末を混ぜて成形されたプラスティックマグネットにより形成され、前記ルーペ本体は、前記筒状内面における接触面と前記接眼端側面における磁気吸引力により前記ルーペホルダの筒内面に密接状態に接して係止される、ことを特徴とする。
【0022】
このように、本発明に係る双眼ルーペにおいては、前記ルーペホルダと、少なくとも前記ルーペホルダと接触するルーペ本体の接触面が、プラスチック素材に磁性粉末を混ぜて成形されたプラスティックマグネットにより形成されるので、前記ルーペ本体の接眼端の接眼レンズの径を大きくすることができるので、施術者の視界を広くすると共に、明るく且つクリアな高画質の双眼ルーペの提供を可能としたのである。
【0023】
本発明に係る双眼ルーペは、さらに、前記ルーペホルダ内に前記ルーペ本体をより確実に係止するべく、前記ルーペ本体は、さらに、突起部を有する突起付きリングを介して前記ルーペホルダに装着され、前記ルーペホルダは、前記突起部に係合する鈎型溝の係合部を有し、前記ルーペ本体が前記ルーペホルダから離脱しないように形成される。これによって、円筒形状の前記ルーペホルダの厚さを、さらに薄くできので、その分、接眼レンズのガラス径を大きくすることができ、その結果、施術者の視界(視野の広さを広すると共に、明るく且つクリアな高画質の双眼ルーペの提供を可能としたのである。
【0024】
ここで、前記突起付きリングは、プラスチック素材に磁性粉末を混ぜて成形されたプラスティックマグネットにより形成され、ルーペ本体のルーペホルダとの引き付け装着力を強化している。
【0025】
また、少なくとも前記ルーペホルダ及び前記ルーペ本体の夫々は、前記磁性粉末の結晶分子配列が一定方向に配向された異方性着磁素材により形成され、前記ルーペ本体の夫々は、前記ルーペホルダに対して所定の回転方向に装着される、ことを特徴とする。
【0026】
ここで、前記突起付きリングは、前記磁性粉末の結晶分子配列が一定方向に配向された異方性着磁素材により形成され、前記ルーペホルダにおける前記ルーペ本体の保持力をより強くするようにしている。
【0027】
ところで、前記ルーペホルダは、挿入された前記ルーペ本体が観察対象へ向くように、前記ルーペホルダの面に対して所定の角度で固定される。これによって、施術者の乱視矯正の対応も可能となる。
【0028】
そして、本双眼ルーペにおけるルーペ本体は、前記光学系による倍率及び/又は視力調整距離が異なる複数種類が予め準備され、その中の一つが選択されて前記ルーペホルダに取り付けられるか、又は所定範囲の倍率及び/又は視力調整距離内において選択設定可能な前記ルーペ本体を選択して前記ルーペホルダに取り付けられるようにしても良い。
【0029】
ここで、前記ルーペ本体は、前記光学系による倍率が異なる複数種類が予め準備され、その中の一つが選択されて前記ルーペホルダに取り付けられ、前記ルーペ本体の前記接眼側端には、予め複数準備された視力距離調整レンズの一つが着脱可能に嵌め込むようにする。この場合、前記視力距離調整レンズは、レンズの周囲を囲むリムにより保持され、当該リムはフェライト磁性体により形成される。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る双眼ルーペによれば、観察対象を拡大して視認する光学系を内蔵するルーペ本体と焦点調整部と所望の倍率に容易に差し替えることができる双眼ルーペにおいて、従来技術の双眼ルーペと比較して、施術者の視界をより広くすると共に、より明るくクリアな画質を備えた双眼ルーペを実現したのである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本双眼ルーペの全体外観図の例を示す。
図2】本双眼ルーペを構成するルーペ本体の一つをキャリアレンズ側のルーペホルダに装着する際の説明図を示し、(a)は、ルーペ本体を直接ルーペホルダに装着する場合の説明図を示し、(b)は、ルーペ本体を突起付きリングを介してルーペホルダに装着する場合の説明図を示す。
図3図2(a)及び(b)の夫々の構成に対応し、本双眼ルーペを構成するルーペ本体の一つをキャリアレンズ側のルーペホルダに装着した際の説明図を示し、(a)は、ルーペ本体を直接ルーペホルダに装着した場合の説明図を示し、(b)は、ルーペ本体を突起付きリングを介してルーペホルダに装着した場合の説明図を示し、(c)は、ルーペホルダにおいて、施術者が、キャリアレンズを通して手元を確認する場合に、施術者の視界を確保するための窓(切欠き)を設けた例を示す。
図4】本双眼ルーペと、本双眼ルーペのキャリアレンズに装着可能な複数の倍率及び/又は視力調整距離のルーペ本体の例を示す。
図5】本双眼ルーペにおけるルーペ本体3の一例を示し、 (a)は、ルーペ本体3の側面図を、 (b)は、ルーペ本体3の対物レンズ3d側から見た正面図を、 (c)は、断面図を、それぞれ示す。
図6】施術者が本双眼ルーペを着用して作業をする状態の説明図を示す。
図7】キャリアレンズにルーペを取り付ける際の下方装着角度の説明図を示す。
図8】ルーペ本体をキャリアレンズに取り付ける際の内側装着角度p,qについての説明図を示す。
図9】従来技術の説明図であって、ルーペ本体がキャリアレンズに固定的に装着される第1の従来技術の例を示す。
図10】従来技術の説明図であって、ルーペ本体がキャリアレンズ側のルーペホルダへ着脱可能に装着される第2の従来技術の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る双眼ルーペの実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る双眼ルーペ100の全体構成を示している。双眼ルーペ100は、眼鏡フレーム10と、作業対象の像を拡大するための左右両眼に対応するルーペ本体3と、ルーペ本体3を保持するルーペホルダ9と、ルーペホルダ9を眼鏡フレーム10に取り付けるためのルーペホルダであるキャリアレンズ4と、で構成されている。
【0034】
ここで、図4に示すように、ルーペ本体3は、光学系による倍率(例えば、3倍、4倍、5倍)及び/又は視力調整距離が異なる複数種類が予め準備され、その中の一つが選択されて、ルーペホルダ9に着脱可能に装着される。尚、後述するが、視力調整機能は、ルーペ本体3の接眼側端に、予め複数準備された視力距離調整レンズの一つが着脱可能に嵌め込まれるようにするようにしても良い。これによって、予め用意するルーペ本体3の種類(本数)を少なくすることができる。
【0035】
図1及び図4において、眼鏡フレーム10は、通常の眼鏡と略同じ構造を有するもので、キャリアレンズ4が嵌め込まれるリム10aと、観察者の耳に掛けられるテンプル10bとリム10aを繋ぐブリッジ10c、鼻あて部10dと、を有する。眼鏡フレーム10を構成する素材には、錆び難く可撓性を有するチタン等の金属や合成樹脂等が使用される。そして、テンプル10bには、着用者の顔の両側を保護する遮蔽部材10eや、双眼ルーペを着用した状態で保持するためのストラップ(図示せず)を、必要に応じて取り付けることができる。
【0036】
キャリアレンズ4は、ルーペ本体3をその両端で保持するルーペホルダ9を支持する開口が穿設されており、ルーペホルダ9はこの開口に嵌め込まれて、キャリアレンズ4の面に対して所定の角度を維持した状態で固定される。キャリアレンズ4を構成する素材は、必ずしも透明である必要はないが、観察者の手元方向の視野を広げるためには透明であることが好ましく、さらに視力の矯正を必要とする場合には矯正レンズを使用することがあるが、視力の矯正が不要の場合は単なる透明ガラスであっても良い。この場合のレンズの材質は、ガラス又はプラスチックである。したがって、キャリアレンズ4は、ルーペ本体を支持するルーペホルダの機能と共に、必要に応じて、視力の矯正機能をも備えている。
【0037】
ところで、図4に示した、ルーペ本体3の内、符号31で示したルーペ本体は、施術者が、施術中にレンズの倍率や視力調整を選択可能なルーペ本体31を示し、施術者は、施術中の必要に応じて、ルーペ本体3の対物レンズ側の筒を回転させることにより、その倍率を、3倍(3X)、4倍(4X)又は5倍(5X)に設定できる。
【0038】
尚、ルーペホルダ9をキャリアレンズ4の面に対して所定の角度を維持した状態で固定する詳細については後述する。
【0039】
図2は、図1で示した本発明に係る双眼ルーペ100において、ルーペ本体3が、キャリアレンズ4の面に対して所定の角度を維持した状態で固定されているルーペホルダ9に装着される前の状態を示す。
【0040】
図2(a)は、ルーペ本体3が、ルーペホルダ9に直接装着される場合、そして、図2(b)は、ルーペ本体3が、ルーペホルダ9に直接装着される場合、突起付きリング12を挟んでルーペホルダ9に装着される場合を示す。
【0041】
図2(a)に示すように、ルーペホルダ9は、キャリアレンズ4に所定の角度で固定されており、このルーペホルダ9にルーペ本体3が挿入される。ルーペ本体3は、複数の光学レンズが収納された筒体に、円筒状のルーペホルダ9の内面に密接状態に接する接触面3bと、ルーペホルダ9の円筒先端面に行き当たって当接する当接面3aと、ルーペ本体3の接眼端側面3cが形成されている。
【0042】
図2(b)は、ルーペ本体3が、ルーペ本体に密着する突起付きリング12を挟んでルーペホルダ9に装着される場合を示す。この場合、ルーペホルダ9には、突起付きリング12に設けられた突起部12aに係合する鈎型溝の係合部9b(図3を参照)を有し、これによって、ルーペ本体3が例えば、施術者の指や施術室の照明器具等がルーペ本体3に触れた場合に、ルーペ本体3がルーペホルダ9から容易に離脱しないようにすることができる。
【0043】
尚、図2(b)に示す例では突起付きリング12に設けられる突起部12aは一つの場合の例を示しているが、突起部12aを複数(例えば、二つ又は三つ)設けることにより、ルーペ本体3のルーペホルダ9からの離脱防止をより強化するようにすることの可能である。
【0044】
また、図2(a)に示す例では、図2(b)に示す例とは異なって、ルーペ本体3は、突起付きリング12を介さずに直接ルーペホルダ9に着脱可能に装着されるようにしているが、突起部12aを有さないリング(図示せず)を介して、ルーペホルダ9に着脱可能に装着するようにしても良い。
【0045】
図3(a)は、図2(a)に示すルーペ本体3が、直接ルーペホルダ9に挿入された状態を示し、図3(b)は、図2(b)に示すルーペ本体3が、突起付きリング12を挟んでルーペホルダ9に挿入された状態を示す。図3(b)に示すように、突起付きリング12の突起部12aは、ルーペホルダ9側に設けられた鈎型溝の係合部9bに係合することにより、ルーペ本体3がルーペホルダ9から容易に離脱しないことになる。
【0046】
ここで、ルーペホルダ9と、ルーペ本体3の接眼端側における円筒状のルーペホルダ9の内接触面3b、ルーペホルダ9の円筒先端面に行き当たって当接する当接面3a及びルーペ本体3の接眼端側面3cは、プラスチック素材に磁性粉末を混ぜて成形されたプラスティックマグネットにより形成されている。これによって、ルーペ本体3はルーペホルダ9から離脱することがない。
【0047】
ところで、ルーペホルダ9においては、図3(c)に示すように、施術者が、ルーペ本体3を通してではなく、キャリアレンズ4を通して手元を観る際に、ルーペホルダ9の厚みがキャリアレンズ4の視野を妨げないようにするために、例えば、視野方向の左右2か所及び/又は視野方向の下側に、視界を確保するための窓(切欠き)を設けるようにしても良い。
【0048】
また、ルーペ本体3が、突起部を有する突起付きリング12を介してルーペホルダ9に装着するようにすれば、この突起付きリング12もプラスチック素材に磁性粉末を混ぜて成形されたプラスティックマグネットにより形成されていることにより、ルーペ本体3はルーペホルダ9により強い磁気力により装着の維持が図れる。
【0049】
ここで、少なくともルーペホルダ9及びルーペ本体3におけるルーペホルダ9との接触部3a、3b、3cは、磁性粉末の結晶分子配列が一定方向に配向された異方性着磁素材により形成され、ルーペ本体3は、ルーペホルダ9に対して所定の回転方向に装着されるようにすると良い。
【0050】
さらに、この場合、突起付きリング12についても、磁性粉末の結晶分子配列が一定方向に配向された異方性着磁素材により形成することにより、前記ルーペホルダにおける前記ルーペ本体の保持力をより強くするが可能である。上述したように、上記したプラスティックマグネット素材により形成される突起付きリング12の突起部12aは、一箇所のみでなく、2箇所又は3箇所とすることも可能である。
【0051】
ここで、プラスティックマグネットとは、プラスチックに磁性粉末を混ぜて成形するものであって、金型焼結成形、プレス成型、射出成型、押出成形等によって所望の形状の磁性プラスチック部材を作ることが可能である。また、ゴム素材を少量加えることにより弾性を有する部材を作ることも可能となる。
【0052】
磁性の強さは、混合する磁性素材によって種々の数値の磁性材を作ることができる。例えば、ネオジウムボンド素材(Nd-Fe-B)は、ネオジウム、鉄、ボロンを含有し、これに樹脂で複合結合させて作るプラスティックマグネットであり、薄い形状のプレス加工や、複雑な形状の加工も可能であり、通常は、等方性であるが、径方向にも高さ方向にも、多極にも着磁できる。
【0053】
このように、プラスティックマグネットは、磁界の方向、磁力の強さを所望に合わせて着磁可能なことから、本発明の双眼ルーペ100におけるルーペホルダ9と、ルーペ本体3におけるルーペホルダ9との接触部3a、3b、3cを、所望の磁性(N極、S極)と磁力の強さに着磁することできるのである。
【0054】
このことから、本発明の双眼ルーペ100におけるルーペホルダ9とルーペ本体3の何れか一方を、例えば、上述したネオジウムボンド素材のプラスティックマグネットとし、他方を一般的なフェライト素材又はフェライト系プラスティックマグネット素材とすることも可能である。
【0055】
プラスティックマグネットの異方性着磁とは、磁力の特性や方向を変える技術の一つであって、異方性の磁化容易軸をそろえる方法としては、アキシャル異方性、ラジアル異方性、反発ラジアル異方性、極異方性等があり、成形時に射出成型機や金型内のマグネットの磁界により磁界を所望の方向、例えば縦軸方向や横軸方向に配向させて制作される。
【0056】
図5は、ルーペ本体3の例を示す。図5(a)は、ルーペ本体3の側面図、図5(b)は、ルーペ本体3の対物レンズ3d側から見た正面図、図5(c)は、断面図を示す。
【0057】
図5(c)に示すように、ルーペ本体は、円筒状体の中に、対物レンズ3dから接眼レンズ3e間の光軸線に沿って、複数枚の光学レンズ、複数の機構部品により構成されている。図4に示したルーペ本体3の対物レンズ側の筒を回転させることにより、その倍率を変更可能なルーペについても、それぞれの光学レンズと内部機構については、当業者にとって公知であることから、その各構成部品の説明は省略する。
【0058】
尚、ルーペ本体3の接眼側端には、予め複数準備された視力距離調整レンズ3fを着脱可能に嵌め込むようにしても良い。この場合、視力距離調整レンズ3fは、レンズの周囲を囲むフェライト磁性体の薄いリムに支持されるようにすると良い。
【0059】
次に、図6図7及び図8に基づいて、ルーペホルダ9のキャリアレンズ4の面への取り付けについて説明する。
【0060】
ルーペホルダ9は、キャリアレンズ4に穿設した開口に嵌め込み、ルーペ本体3が観察対象方向の焦点に向くように、キャリアレンズ4の面に対して、所定の角度で固定される。具体的には、ルーペホルダ9のキャリアレンズ4の面への取り付けは、ルーペホルダ9にルーペ本体3を装着したときのルーペ本体3のキャリアレンズ4の平面を基準にしての下方装着角度r及び内側装着角度p,qと、双眼ルーペの使用者の瞳孔間距離PDにより決定される。
【0061】
双眼ルーペ100は、図6に示すような前傾姿勢を執って作業を行うときに、その手元の作業操作箇所Wの観察対象を拡大して観察するのに使用される。このとき、使用者は、左右のルーペ本体3を通して両眼の視線を手先の位置にある観察対象に集中させている。ここで、図7を用いてこの場合の下方装着角度について説明すると、下方装着角度rは、キャリアレンズ4にルーペホルダ9を介してルーペ本体3を取り付けるときに、キャリアレンズ4の面からの垂直線に対する下向きの取り付け角度であり、作業操作箇所Wからキャリアレンズ4までの距離Mとキャリアレンズ4の中心を通る鉛直線に直交する水平方向距離Nとで決まる角度βと、着用者が手術を行うときのキャリアレンズ4の前傾角度αとで求めることができる。
【0062】
内側装着角度p,qは、図8に示すように、ルーペホルダ9に装着した左右のルーペ本体3の先端を作業操作箇所Wに向けたときの視線が、眼鏡フレーム1の中心Oと作業操作箇所Wとを結ぶ線Lと作業操作箇所Wで交わるときの角度である。そして、中心Oは、使用者の鼻の中心線と左右の瞳孔を結ぶ線との交点であり、この中心Oから左右両眼の瞳孔中心までのそれぞれ距離PD1,PD2と、中心Oから作業操作箇所Wまでの線L上での距離とによって、左右のルーペ本体3の内側装着角度p,qをそれぞれ求めることができる。
【0063】
ルーペ本体3の下方装着角度r及び内側装着角度p,qが決まると、左右のキャリアレンズ4において両眼の瞳孔に対応する位置にルーペホルダ9を挿入する開口を設けて、ルーペホルダ9が下方装着角度r及び内側装着角度p、左のルーペホルダ9が下方装着角度r及び内側装着角度qでキャリアレンズ4の面から突出するよう接着剤等で固定させて取り付けられる。そして、双眼ルーペ100は、ルーペホルダ9の第1及び第2取付部のそれぞれにルーペ本体3と、必要に応じて焦点調整部(図9及び図10の符号11に相当)が取り付けられて使用される。
【0064】
以上、詳しく説明したように、本発明に係る双眼ルーペ100は、光学系を内蔵する左右一対のルーペ本体3と、この一対のルーペ本体3を観察対象に向けた視野方向に支持するキャリアレンズ4を保持する眼鏡フレーム10と、キャリアレンズ4に取り付けられ、一対のルーペ本体3の接眼側端を挿入状態で着脱可能に受け入れる筒状のルーペホルダ9と、を備え、ルーペホルダ9及び一対のルーペ本体3の接眼側部材は、プラスチック素材に磁性粉末を混ぜて成形されたプラスティックマグネットにより形成された、ことを特徴とする。
【0065】
ここで、ルーペ本体3は、突起部12aを有する突起付きリング12を介してルーペホルダ9に装着され、ルーペホルダ9は、突起部12aに係合する鈎型溝の係合部9bを有し、ルーペ本体3がルーペホルダ9から離脱しないように形成される。
【0066】
ここで、突起付きリング12は、プラスチック素材に磁性粉末を混ぜて成形されたプラスティックマグネットにより形成される。
【0067】
また、少なくともルーペホルダ9及びルーペ本体3の夫々は、磁性粉末の結晶分子配列が一定方向に配向された異方性着磁素材により形成され、ルーペ本体3の夫々は、ルーペホルダ9に対して所定の回転方向に装着されることを特徴とする。
【0068】
このように、本発明に係る双眼ルーペにおいては、ルーペホルダ9と、ルーペホルダ9と接触するルーペ本体3の接触面が、プラスチック素材に磁性粉末を混ぜて成形されたプラスティックマグネットにより形成されるので、ルーペ本体3の接眼端の接眼レンズの径を大きくすることができので、施術者の視界を広くすると共に、明るく且つクリアな高画質の双眼ルーペの提供を可能としたのである。
【符号の説明】
【0069】
3 ルーペ本体
4 キャリアレンズ
9 ルーペホルダ
9b ルーペホルダの係合部
10 眼鏡フレーム
12 突起付きリング
12a 突起部
100 双眼ルーペ
【要約】
【課題】所望の焦点調整部と倍率を有するルーペ本体の差替え可能な双眼ルーペであった、施術者の視界をより広くし明るくクリアな画質の双眼ルーペを提供する。
【解決手段】光学系を内蔵する左右一対のルーペ本体3と、この一対のルーペ本体3を観察対象に向けた視野方向に支持するキャリアレンズ4を保持する眼鏡フレーム10と、キャリアレンズ4に取り付けられ、一対のルーペ本体3の接眼側端を挿入状態で着脱可能に受け入れる筒状のルーペホルダ9と、を備え、ルーペホルダ9及び一対のルーペ本体3の接眼側部材は、プラスチック素材に磁性粉末を混ぜて成形されたプラスティックマグネットにより形成される。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10