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特許7169473デジタル無線送信装置及びデジタル無線通信システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】デジタル無線送信装置及びデジタル無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   G10L 25/84 20130101AFI20221102BHJP
   G10L 25/81 20130101ALI20221102BHJP
   H04W 4/90 20180101ALI20221102BHJP
   H04H 20/02 20080101ALI20221102BHJP
   H04H 20/59 20080101ALI20221102BHJP
   G10L 21/0264 20130101ALI20221102BHJP
【FI】
G10L25/84
G10L25/81
H04W4/90
H04H20/02
H04H20/59
G10L21/0264 B
G10L21/0264 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022023012
(22)【出願日】2022-02-17
【審査請求日】2022-02-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000101662
【氏名又は名称】アルインコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521471431
【氏名又は名称】アルインコ・エレクトロニクス・ベトナム・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALINCO ELECTRONICS VIETNAM CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】ヴォー・ミン・ニュット
(72)【発明者】
【氏名】グエン・ミン・ヴー
(72)【発明者】
【氏名】ダン・コン・ハウ
(72)【発明者】
【氏名】國分 二郎
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-207499(JP,A)
【文献】特開2007-017620(JP,A)
【文献】特開2009-210712(JP,A)
【文献】特開2013-171130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 21/00-25/93
H04H 20/02,20/59
H04W 4/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域防災無線システムの中継局に設けられるデジタル無線送信装置であって、音声信号及び非音声信号を含む低周波信号を、デジタル変調器により所定の音声圧縮方式を用いてデジタル変調して無線送信するデジタル無線送信装置において、
前記音声信号及び非音声信号を含む低周波信号から非音声信号をキャンセルするように音声信号処理を行って前記デジタル変調器に出力する非音声キャンセル部を備え、
前記非音声キャンセル部は、
前記低周波信号に基づいて、所定の閾値を用いて信号区間であるか否かを検出する信号区間検出部と、
前記検出された信号区間が、非音声信号の区間であるか否かを検出する非音声検出部と、
前記検出された信号区間が非音声信号の区間であると検出したときは、無音信号を出力する一方、前記検出された信号区間が音声信号の区間であると検出したときは、前記低周波信号を出力する切替スイッチとを備え、
前記非音声信号は、チャイム信号、音楽信号又はサイレン信号であり、
前記非音声検出部は、前記信号区間検出部により検出された信号区間の低周波信号に対して、
(A)振幅とZCR(Zero-Crossing Rate)を含む時間領域の特性と、
(B)周波数特性の最大ピーク周波数と継続成分の長さを含む周波数領域の特性と、
に基づいて、前記検出された信号区間が非音声信号の区間であるか否かを検出する、
デジタル無線送信装置。
【請求項2】
前記音声信号及び非音声信号を含む低周波信号は、第1のデジタル無線受信装置により受信されて復調されたものである、
請求項に記載のデジタル無線送信装置。
【請求項3】
前記音声信号及び非音声信号を含む低周波信号は、音源再生出力装置により出力されたものである、
請求項1又は2に記載のデジタル無線送信装置。
【請求項4】
請求項1~のうちのいずれか1つに記載のデジタル無線送信装置と、
地域防災無線システムの戸別局に設けられた第2のデジタル無線受信装置であって、前記デジタル無線送信装置により送信された無線信号を音声信号にデジタル復調して出力する前記第2のデジタル無線受信装置と、
を備えるデジタル無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地域防災無線システムなどに用いるデジタル無線送信装置及びデジタル無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震、津波などの地域防災のために、市町村庁舎内に設けられる統制局と、小高い丘や山などに設けられる複数の中継局と、各戸に設けられる複数の戸別局とから構成される地域防災無線システムが実用化されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
上記地域防災無線システムにおいては、一斉、グループ、個別など聴者選択呼出方式により通達を行う同報設備における放送は、音声音源(放送者の肉声や音声ガイダンスなどの疑似音声)と非音声音源(放送開始通知用チャイム音、放送終了通知用チャイム音、緊急通知用サイレン音、設備点検用音楽音源など)を組み合わせた内容で構成されており、非音声音源は放送開始、放送終了、緊急性など内容を確実に聴者へ伝えることを目的にチャイムの音階やサイレンパターンに意味付けがされている。
【0004】
上記地域防災無線システムでは、統制局から中継局へは16値QAM方式を用いて音声及び非音声をデジタル変調して無線送信し、中継局から戸別局へはAMBE音声圧縮方式及び4値FSK方式を用いて音声及び非音声を狭帯域デジタル変調して無線送信している(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
【0005】
図12は、特許文献1又は2に開示された地域防災無線システムの構成例及びその動作を示すブロック図である。図12において、従来例に係る地域防災無線システムは、統制局1と、中継局2と、戸別局3とを備えて構成される。ここで、統制局1は、アンテナ12Aを有するデジタル無線送信装置12を含む。中継局2は、アンテナ21Aを有するデジタル無線受信装置21と、アンテナ22Aを有するデジタル無線送信装置22とを含む。戸別局3は、アンテナ31Aを有するデジタル無線受信装置31と、スピーカ32とを含む。
【0006】
しかしながら、上記地域防災無線システムでは、中継局2から戸別局3へはAMBE音声圧縮方式及び4値FSK方式を用いて音声及び非音声を狭帯域デジタル変調して無線送信しているために、音声については戸別局3において正しく復調できるが、非音声については正しく復調できず異音として出力されて戸別局3の住民は放送内容を理解することができないという問題点があった。
【0007】
前記問題点を解決するために、上記地域防災無線システムなどのデジタル無線通信システムにおいて、戸別局3で非音声についても正しく出力できるデジタル無線送信装置等が特許文献3に開示されている。
【0008】
特許文献3において開示された従来例に係るデジタル無線送信装置において、音源解析回路は低周波信号のデジタルデータを所定の信号解析処理の演算を行うことにより時系列信号解析パターンを演算し、スペクトルパターンと格納した複数の種類の非音声コード信号の時系列信号解析パターンとを比較して非音声信号の種類を判別して判別した非音声信号の種類を示す非音声コード信号を発生する。信号処理回路は低周波信号を所定の遅延時間だけ遅延させた後、デジタルデータにAD変換して音声圧縮方式を用いて符号化して音声信号のデジタルデータを出力する。スイッチは非音声コード信号が発生されていないとき音声信号のデジタルデータを選択し、非音声コード信号が発生されているとき非音声コードに対応するデジタルデータを選択しこれらが無線送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-224058号公報
【文献】特開2002-135849号公報
【文献】特許第5980713号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】一般社団法人電波産業会、「デジタル簡易無線局の無線設備-標準規格」,ARIB STD-T98,1.4版,平成26年12月26日改定,[令和3年10月27日検索],インターネット<URL:http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/1-STD-T98v1_3.pdf>
【文献】DVSI社、「AMBE方式ボコーダ・チップ」,INTERNIX NEWSLETTER,No.93,p.26,[平成25年4月5日検索],インターネット<URL:http://www.internix.co.jp/products/dvsi/pdf/nl93_dvsi.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
すなわち、中継局2のデジタル無線送信装置22では予め記録した非音声データとA/D変換による非音声信号の音源パターン解析処理を行ってから非音声コードを生成し、音声信号と非音声コードを狭帯域デジタル変調して伝送する。次いで、戸別局3のデジタル無線受信装置31では、音声信号はそのまま鳴動させ、予め記録した非音声信号データから非音声コードに該当する非音声信号を選択して鳴動させることで、前記問題点を解決できる。
【0012】
しかし、非音声信号の種類は行政、自治体によって異なるため、導入先ごとの対応音源を個別に格納しなければならない。そして手続き上、音源のデータを入手すること自体も容易でないため、この対策方法を搭載した機器は導入も容易でない。
【0013】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来例のように、「予め記録した非音声データとAD変換による非音声信号の音源パターン解析処理を行ってから非音声コードを生成」などの複雑な信号処理を行う必要がなく、戸別局において異音となったチャイム音を除去して、音声信号のみを出力することができるデジタル無線送信装置及びデジタル無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様に係るデジタル無線送信装置は、地域防災無線システムの中継局に設けられるデジタル無線送信装置であって、音声信号及び非音声信号を含む低周波信号を、デジタル変調器により所定の音声圧縮方式を用いてデジタル変調して無線送信するデジタル無線送信装置において、
前記音声信号及び非音声信号を含む低周波信号から非音声信号をキャンセルするように音声信号処理を行って前記デジタル変調器に出力する非音声キャンセル部を備え、
前記非音声キャンセル部は、
前記低周波信号に基づいて、所定の閾値を用いて信号区間であるか否かを検出する信号区間検出部と、
前記検出された信号区間が、非音声信号の区間であるか否かを検出する非音声検出部と、
前記検出された信号区間が非音声信号の区間であると検出したときは、無音信号を出力する一方、前記検出された信号区間が音声信号の区間であると検出したときは、前記低周波信号を出力する切替スイッチと、
を備える。
【発明の効果】
【0015】
従って、本発明に係るデジタル無線送信装置等によれば、前記非音声キャンセル部を用いてチャイム音などの非音声信号を除去し、防災無線再送信での音声信号のみの再送信をすることができる。従って、従来例のように、「予め記録した非音声データとAD変換による非音声信号の音源パターン解析処理を行ってから非音声コードを生成」などの複雑な信号処理を行う必要がないので、極めて簡単な構成となるとともに、戸別局において異音となったチャイム音を除去して、音声信号のみを出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態1に係る地域防災無線システムの構成例を示すブロック図である。
図2図1の非音声キャンセル部23の詳細構成例を示すブロック図である。
図3図2の非音声検出部74の詳細構成例を示すブロック図である。
図4図1の中継局2Bのデジタル無線送信装置22Bの構成を示すブロック図である。
図5図1の戸別局3Bのデジタル無線受信装置31Bの構成を示すブロック図である。
図6】比較例に係る地域防災無線システムの構成を示すブロック図である。
図7図6の中継局2のデジタル無線送信装置22の構成を示すブロック図である。
図8図7の音源解析回路41の構成を示すブロック図である。
図9図6の戸別局3のデジタル無線受信装置31の構成を示すブロック図である。
図10図6の地域防災無線システムの防災放送の内容に対する信号処理を示すタイミングチャートである。
図11】本発明の実施形態2に係る地域防災無線システムの構成例を示すブロック図である。
図12】従来例に係る地域防災無線システムの構成例及びその動作を示すブロック図である。
図13】実施形態1に係る地域防災無線システムの構成例及びその動作を示すブロック図である。
図14】実施形態2に係る地域防災無線システムの構成例及びその動作を示すブロック図である。
図15図1の地域防災無線システムにおいて用いる音声信号、チャイム信号、音楽信号及びサイレン信号(以下、これらの信号を「伝送信号」という。)の一例を示す波形図である。
図16図15の各伝送信号の波形から算出した時間領域特性(振幅及びZCR(Zero-Crossing Rate))及び周波数領域特性(周波数成分、継続成分及び最大ピーク)のテーブルを示す図である。
図17図2の信号区間検出部72により判定された信号区間検出の一例を示す、入力信号及び判定結果を示す波形図である。
図18図3の振幅検出部81により検出されたサイレン信号180の振幅カーブ181の一例を示す波形図である。
図19図3のZCR検出部82により検出されたZCRの一例を示す波形図である。
図20図3の周波数解析部83により解析された、正規化周波数に対する周波数解析回数のテーブルの一例を示す図であって、当該テーブルにおいて連続成分の一例を示す図である。
図21図3の非音声検出部74の判定処理部87により実行される判定処理の一例のテーブルを示す図である。
図22A図2の非音声検出部74の動作例であって、「通常放送の音源」を入力したときの入力信号及び出力信号を示す波形図である。
図22B図2の非音声検出部74の動作例であって、「緊急放送の音源(緊急地震速報の訓練放送)」を入力したときの入力信号及び出力信号を示す波形図である。
図22C図2の非音声検出部74の動作例であって、「緊急放送の音源(消防の訓練放送(サイレン鳴動))」を入力したときの入力信号及び出力信号を示す波形図である。
図22D図2の非音声検出部74の動作例であって、「定時音楽放送の音楽(音楽のみ)」を入力したときの入力信号及び出力信号を示す波形図である。
図22E図2の非音声検出部74の動作例であって、「非対応音源のイメージ信号であって、ラジオ体操のように音楽と音声が合成された音源)」を入力したときの出力信号を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態及び変形例について図面を参照して説明する。なお、同一又は同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0018】
(比較例)
まず、図6図10を参照して、特許文献3において開示された比較例に係る地域防災無線システムの構成について以下に説明する。
【0019】
図6は比較例に係る地域防災無線システムの構成を示すブロック図である。図6において、地域防災無線システムは、市町村庁舎内に設けられる統制局1と、小高い丘や山などに設けられる複数の中継局2と、各戸に設けられる複数の戸別局3とから構成される。統制局1は、統制操作装置11と、デジタル無線送信装置12と、マイクロホン13と、複数のスイッチ14とを備えて構成される。ここで、マイクロホン13から入力される音声はマイクロホン13により音声信号に変換された後、統制操作装置11内の音声増幅器15により増幅されて加算器16に出力される。14は例えば上記音声信号を放送する内容の前後において発生させるための非音声信号を選択するための複数のスイッチであり、表1に示すように、例えば9種類の非音声信号のうちのいずれか1つを選択して1つのスイッチ14を押下することにより非音声信号発生器17は対応する非音声信号を発生して加算器16に出力する。
【0020】
【表1】
【0021】
加算器16は入力される2つの低周波信号を加算してデジタル無線送信装置12に出力する。デジタル無線送信装置12は入力される低周波信号を例えば16値QAM方式でデジタル変調しかつ電力増幅して、無線信号をアンテナ12Aから中継局2に向けて送信する。
【0022】
中継局2は、アンテナ21Aを有するデジタル無線受信装置21と、アンテナ22Aを有するデジタル無線送信装置22とを備えて構成される。デジタル無線受信装置21はアンテナ21Aにより統制局1から受信した無線信号を受信してデジタル復調して低周波信号に変換した後、デジタル無線送信装置22に出力する。デジタル無線送信装置22は、入力される低周波信号を例えばAMBE音声圧縮方式及び4値FSK方式を用いて狭帯域デジタル変調しかつ電力増幅して無線信号をアンテナ22Aから戸別局3に送信する。ただし、受信した無線信号の低周波信号のうち非音声については、図7及び図8を参照して詳細後述するように対応する非音声コードに変換して送信することを特徴としている。
【0023】
戸別局3は、アンテナ31Aを有するデジタル無線受信装置31と、スピーカ32とを備えて構成される。デジタル無線受信装置31はアンテナ31Aにより中継局2から受信した無線信号を受信して復調してスピーカ32に出力する。ただし、受信した無線信号の低周波信号のうち非音声信号については、図9を参照して詳細後述するように対応する非音声コードを非音声信号に変換して出力することを特徴としている。
【0024】
図7図6の中継局2のデジタル無線送信装置22の構成を示すブロック図であり、図8図7の音源解析回路41の構成を示すブロック図である。図7において、デジタル無線送信装置22は、音源解析回路41と、遅延回路42と、AD変換器43と、音声エンコーダ44と、非音声コード発生器45と、スイッチ46と、狭帯域デジタル変調器47と、電力増幅器48と、アンテナ22Aとを備えて構成される。ここで、遅延回路42と、AD変換器43と、音声エンコーダ44とにより音声信号の信号処理回路49を構成する。
【0025】
図7において、デジタル無線受信装置21から出力される低周波信号は音源解析回路41及び遅延回路42に入力される。音源解析回路41は入力される低周波信号が音声信号であるか所定の非音声信号であるかを判別して所定の非音声コード信号を出力する。
【0026】
ここで、音源解析回路41は、図8に示すように、AD変換器51と、FFT演算器52と、非音声比較判別器53と、非音声コードスペクトルパターンメモリ54とを備えて構成される。図8において、低周波信号はAD変換器51によりデジタルデータにAD変換された後、FFT演算器52により高速フーリエ変換(FFT)処理が行われて上記デジタルデータはスペクトルパターン(時間経過に対するスペクトルパターン、すなわち時系列スペクトルパターンをいう。)に変換されて非音声比較判別器53に出力される。非音声コードスペクトルパターンメモリ54には、例えば表1に示す9種類の非音声コードに係る非音声信号のスペクトルパターンが格納され、非音声比較判別器53は入力される受信したスペクトルパターンを、上記格納したスペクトルパターンとパターンマッチングにより比較することにより、受信した非音声信号が例えば9種類のうちのどの非音声コードに対応するかを判別し、判別結果の非音声コードを示す非音声コード信号を出力する。なお、受信したデジタルデータが音声信号である場合は、非音声コード信号を出力しない。
【0027】
図7に戻り説明すると、音源解析回路41からの非音声コード信号は非音声コード発生器45及びスイッチ46に出力される。スイッチ46は、非音声コード信号が入力されるときは接点b側に切り替わる一方、入力されないときは接点a側に切り替わる。また、非音声コード発生器45は入力される非音声コード信号に応答して当該非音声コード信号により示される非音声コードを発生して出力する。
【0028】
図7において、遅延回路42は入力される低周波信号を、上記音源解析回路41の信号処理でかかる時間からAD変換器43及び音声エンコーダ44での処理時間を減算した所定の遅延時間(例えば3秒)だけ遅延した後、AD変換器43に出力する。AD変換器43は入力される遅延された低周波信号を音声のデジタルデータに変換した後、音声エンコーダ44に出力する。音声エンコーダ44は入力される音声のデジタルデータを例えばAMBE音声圧縮方式で符号化して符号化後のデジタルデータをスイッチ46の接点a側を介して狭帯域デジタル変調器47に出力する。従って、スイッチ46からは、非音声コード信号がスイッチ46に入力されていないときは、音声エンコーダ44からの音声のデジタルデータが出力される一方、非音声コード信号がスイッチ46に入力されているときは、非音声コード発生器45からの非音声コード(デジタルデータ)が出力される。狭帯域デジタル変調器47は、入力されるデジタルデータに従って所定の搬送波を、例えば4値FSK方式で狭帯域デジタル変調して、変調後の変調信号を所定の無線信号に高域周波数変換した後、電力増幅器48で電力増幅し、当該無線信号をアンテナ22Aから送信する。
【0029】
図9図6の戸別局3のデジタル無線受信装置31の構成を示すブロック図である。図9において、デジタル無線受信装置31は、アンテナ31Aと、高周波低雑音増幅器61と、狭帯域デジタル復調器62と、非音声コード判別器63と、音声デコーダ64と、非音声信号発生器65と、スイッチ66と、低周波増幅器67と、スピーカ32とを備えて構成される。
【0030】
図9において、アンテナ31Aにより受信された無線信号は高周波低雑音増幅器61により低雑音増幅された後、狭帯域デジタル復調器62によりデジタルデータに復調され、非音声コード判別器63と音声デコーダ64に出力される。非音声コード判別器63はデジタルデータから非音声コードを抽出して取り出して非音声コードを示す非音声コード信号を発生してスイッチ66及び非音声信号発生器65に出力する。音声デコーダ64は入力される音声のデジタルデータを信号処理する信号処理回路であって、例えばAMBE音声圧縮方式に対応するAMBE音声伸張方式で復号化して復号化後の音声の低周波信号、すなわち音声信号をスイッチ66の接点a側を介して低周波増幅器67に出力する。一方、非音声信号発生器65は、入力される非音声コード信号に応答して当該非音声コード信号により示される非音声コードに対応する非音声の低周波信号、すなわち非音声信号を発生してスイッチ66の接点b側を介して低周波増幅器67に出力する。従って、スイッチ66からは、非音声コード信号がスイッチ66に入力されていないときは、音声デコーダ64からの音声信号が出力される一方、非音声コード信号がスイッチ66に入力されているときは、非音声信号発生器65からの非音声コードに対応する非音声信号が出力される。低周波増幅器67は入力される低周波信号を増幅してスピーカ32から出力する。
【0031】
図10図6の地域防災無線システムの防災放送の内容に対する信号処理を示すタイミングチャートである。以上のように構成された地域防災無線システムの動作について図10を参照して以下に説明する。なお、本比較例においては、音声信号と非音声信号とは時間的に重ならないように放送されるものとし、音声信号と非音声信号とは順次放送されて送信されかつ受信される。
【0032】
図10において、まず、防災放送では、チャイム音又はサイレン音などの非音声が放送される。このとき、本システムでは、中継局2から戸別局3に対して非音声信号に代えて非音声コードを送信し、戸別局3では非音声コードを対応する非音声の低周波信号に変換してスピーカ32から出力する。次いで、上記非音声に続いて音声で放送される。この場合は、従来と同様に中継局2から戸別局3に対して音声信号で狭帯域デジタル変調された無線信号を送信し、戸別局3では無線信号を復調して音声の低周波信号に変換してスピーカ32から出力する。さらに、チャイム音又はサイレン音などの非音声信号が放送される。このとき、中継局2から戸別局3に対して非音声信号に代えて非音声コードを送信し、戸別局3では非音声コードを対応する非音声信号に変換してスピーカ32から出力する。
【0033】
以上説明したように、比較例によれば、中継局2から戸別局3に対して、非音声信号に代えて非音声コードを送信し、戸別局3では非音声コードを対応する非音声信号に変換してスピーカ32から出力するので、例えばAMBE音声圧縮方式を用いた狭帯域デジタル変調方式であっても、異音ではない正しい非音声の音がスピーカ32から出力され、戸別局3の住民は放送内容を理解することができる。
【0034】
以上のように構成された比較例に係る防災無線システムでは、従来技術において説明したように、以下の問題点があった。
(1)非音声信号の種類は行政、自治体によって異なるため、導入先ごとの対応音源を個別に格納しなければならない。
(2)そして手続き上、音源のデータを入手すること自体も容易でないため、この対策方法を搭載した機器は導入も容易でない。
【0035】
これらの問題点を解決するために、本発明者らは、以下の実施形態1及び2に係る防災無線システムを発明したものである。
【0036】
特に、AMBE(Advanced Multi-Band Excitation)又はRALCWI(Robust Advanced Low-complexity Waveform Interpolation )音声コーデックを用いる防災用デジタル放送システムにおいて、チャイム、サイレン及び音楽等の非音声信号は受信機側にこれらの信号が元の状態に再現できず視聴者に迷惑をかける音になってしまう。このため、防災用デジタル放送システムを通す前に音声だけを残し、チャイム、サイレンおよび音楽等の非音声信号を除去しておく必要がある。例えば音源解析ボードを用いて、実施形態1に係る非音声キャンセル部23(図1)を構成して中継局2Bを構成した。以下、これらの詳細について以下に説明する。
【0037】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る地域防災無線システムの構成例を示すブロック図である。図1の地域防災無線システムは、図6の地域防災無線システムに比較して以下の点が異なる。
(1)中継局2に代えて中継局2Bを備える。中継局2Bでは、デジタル無線送信装置22に代えてデジタル無線送信装置22Bを備えるとともに、デジタル無線受信装置21とデジタル無線送信装置22Bとの間において非音声キャンセル部23をさらに備える。
(2)戸別局3に代えて戸別局3Bを備える。戸別局3Bでは、デジタル無線受信装置31に代えて、デジタル無線受信装置31Bを備える。
以下、相違点について説明する。
【0038】
図1において、デジタル無線受信装置21から出力される音声信号及び非音声信号は非音声キャンセル部23に入力される。非音声キャンセル部23は、後述する非音声検出部74(図2及び図3)を用いて音声期間と、ノイズを含む非音声期間とを区別して、非音声信号をキャンセルするように音声信号処理を行って、音声以外の非音声を除去する処理を行った後、処理後の音声信号をデジタル無線送信装置22Bに出力する。
【0039】
デジタル無線送信装置22Bは、入力される音声信号(低周波信号)を例えばAMBE音声圧縮方式及び4値FSK方式を用いて狭帯域デジタル変調しかつ電力増幅して無線信号をアンテナ22Aから戸別局3Bに送信する。ただし、受信した無線信号の低周波信号のうち非音声信号については、図2及び図3を参照して詳細後述するように、非音声キャンセル部23により除去されて送信することを特徴としている。
【0040】
戸別局3Bは、アンテナ31Aを有するデジタル無線受信装置31Bと、スピーカ32とを備えて構成される。デジタル無線受信装置31Bはアンテナ31Aにより中継局2Bから送信した無線信号を受信して復調してスピーカ32に出力する。ただし、受信した無線信号の低周波信号のうち非信号区間については、図2及び図3を参照して詳細後述するように、非音声キャンセル部23により除去されて送信されるので、スピーカ32から出力されないことを特徴としている。
【0041】
図2図1の非音声キャンセル部23の詳細構成例を示すブロック図である。図2において、非音声キャンセル部23は、デジタル無線受信装置21からの低周波信号(音声信号及び、チャイム信号、音楽信号及びサイレン信号などの非音声信号を含む)を入力し、入力された低周波信号において音声区間であるか、非音声区間であるかを検出し、音声区間であるときは入力した信号を遅延再生してそのままデジタル無線送信装置22Bに出力する一方、非音声期間であるときは無音信号をデジタル無線送信装置22Bに出力する。ここで、非音声キャンセル部23は、AD変換器71と、信号区間検出部72と、可変利得増幅器73と、非音声検出部74と、録音部75と、遅延再生部76と、無音再生部77と、切替スイッチ78とを備えて構成される。
【0042】
図2において、AD変換器71は入力される低周波信号をデジタル信号のAD変換して信号区間検出部72及び録音部75に出力する。録音部75は低周波信号のデジタル信号のバッファメモリを含み、入力されるデジタル信号を一時的に格納した後、遅延再生部76により所定の遅延時間(信号区間検出部72、可変利得増幅器73及び非音声検出部74の信号処理時間に対応する)だけ遅延させた後、切替スイッチ78の接点a及び共通端子cを介してデジタル無線送信装置22Bに出力する。
【0043】
一方、信号区間検出部72に入力されるデジタル信号は、音声信号の区間と、非音声信号(チャイム信号、サイレン信号、又は音楽信号等)の区間と、雑音の区間とを含む。信号区間検出部72は、デジタル信号から音声区間及び非音声区間を含む信号区間であるか、雑音区間であるかを検出して判定し、判定結果信号(例えば、信号区間ではHレベルであり、雑音区間ではLレベルである)付きのデジタル信号を、所定の出力レベルとなるように増幅利得を自動的に調整する可変利得増幅器73を介して非音声検出部74に出力する。ここで、信号区間検出部72は、具体的には、音声又は非音声の信号区間と、雑音区間とを検出するために、入力される低周波信号のレベル(RMS(二乗平均平方根)値)を利用する。ここで、入力される低周波信号の電圧のRMS値VRMSは次式で表される。
【0044】
【数1】
【0045】
ここで、Vpiは入力される低周波信号のデータ値(サンプリング値)であり、N=256である
【0046】
図17図2の信号区間検出部72により判定された信号区間検出の一例を示す、入力信号及び判定結果を示す波形図である。信号区間検出部72は、図17に示すように、算出した電圧のRMS値VRMSに対して設定した所定の閾値Vth(0値近傍の値)を用いて、VRMS≧Vthのときに信号区間であると判定してHレベルの判定結果信号を出力する一方、VRMS<Vthのときに雑音区間であると判定してLレベルの判定結果信号を出力する。
【0047】
無音再生部77は、無音のデジタル信号を発生して切替スイッチ78の接点b及び共通端子cを介してデジタル無線送信装置22Bに出力する。切替スイッチ78は、非音声検出部74からHレベルの判定結果信号に基づいて接点a側に切り換えられて遅延再生部76からのデジタル信号が出力される一方、Lレベルの判定結果信号に基づいて接点b側に切り換えられて無音再生部77からの無音のデジタル信号が出力される。
【0048】
図3図2の非音声検出部74の詳細構成例を示すブロック図である。図3において、非音声検出部74は、振幅検出部81と、ZCR検出部82と、周波数解析部83と、周波数成分検出部84と、継続成分検出部85と、最大ピーク検出部86と、判定処理部87とを備えて構成される。
【0049】
非音声検出部74は入力されるデジタル信号の次の特性を使用して非音声区間であるか否かを検出する。
(A)時間領域の特性:振幅(RMS)とZCR(Zero-Crossing Rate)を使用する。
(B)周波数領域の特性:ピーク周波数、周波数成分の特性等を使用する。
【0050】
非音声検出部74は、入力デジタル信号を検出すると、非音声検出処理を開始し、例えば32ミリ秒間隔で入力デジタル信号に対して、
(A)振幅フィルタを含む振幅検出部81による振幅検出処理と、
(B)ZCR検出部82によるZCR検出処理と、
(C)周波数解析部83による周波数解析(FFT)処理と、
を実行する。上記の処理を100回(合計3秒)行ってから各処理の算出結果で判定処理を行う。ここで、判定処理とは判定音源に基づいて予め設定された閾値を用いて、入力信号が音声信号又は非音声信号である確率を計算し、さらに、当該確率と非音声区間の長さとに基づいて、非音声区間であるか否かについて判定する(詳細後述)。
【0051】
図15は、図1の地域防災無線システムにおいて用いる音声信号、チャイム信号、音楽信号及びサイレン信号である各伝送信号の一例を示す波形図である。図15に示すように、音声区間又は非音声区間を判定するために必要となる時間として、例えば3秒の検出窓を用いて、信号の判定を行う。
【0052】
図16図15の各伝送信号の波形から算出した時間領域特性(振幅及びZCR(Zero-Crossing Rate))及び周波数領域特性(周波数成分、継続成分及び最大ピーク)のテーブルを示す図である。図16において、各パラメータ(縦軸)の値は所定の基準値に対する相対値(単位無し)であり、時間領域特性の横軸は時間(秒)であり、周波数領域特性の横軸は正規化周波数(単位無し)である。
【0053】
なお、非音声検出部74の検出処理では、以下の手順で判定の閾値を決定して判定処理のテーブル(詳細後述)を決定した。
(1)過去の音源データを検出材料として上記の特性を確認して閾値を予め決める。
(2)閾値を決定した後は、すべての音源データで動作確認を行う。検出不可な音源があれば検出できるまで上記(1)の処理から繰り返す。
【0054】
次いで、図16のテーブルの各パラメータについて以下に説明する。
【0055】
図18図3の振幅検出部81により検出されたサイレン信号180の振幅カーブ181の一例を示す波形図である。「振幅」とは入力されるデジタル信号の振幅カーブを取り出した値であって、図18の符号181である。振幅検出部81は検出した振幅カーブの振幅値を示す信号を判定処理部87に出力する。
【0056】
図19図3のZCR検出部82により検出されたZCRの一例を示す波形図である。ZCRとは図19に示すように、入力デジタル信号(例えばサイレン信号190)の中点と比べて正値と負値が切り替わる点191の回数の計数値である。ZCR検出部82は検出したZCRを示す信号を判定処理部87に出力する。
【0057】
周波数解析部83は入力されるデジタル信号に対して高速フーリエ変換(FFT)処理を実行して、処理後のデータを周波数成分検出部84、継続成分検出部85及び最大ピーク検出部86に出力する。周波数成分検出部84は、例えば32ミリ秒に1回行われる周波数解析(FFT)の100回分連続の集計データである周波数成分を検出して一時的に格納して判定処理部87に出力する。継続成分検出部85は、入力デジタル信号に比較的長く継続する周波数成分である継続成分の長さを検出して判定処理部87に出力する。具体的には、入力デジタル信号を例えば32ミリ秒の長さの等しいセグメントに分割して周波数解析を行い、ここで、前回の解析結果と比較し同じ周波数が検出すれば継続成分として計数する。
【0058】
図20は、図3の周波数解析部83により解析された、正規化周波数に対する周波数解析回数のテーブルの一例を示す図であって、当該テーブルにおいて連続成分の一例を示す図である。
【0059】
最大ピーク検出部86は、継続成分の中に一番長く継続する周波数である最大ピークを検出して判定処理部87に出力する。チャイム信号や音楽信号のほとんどは音符とリズムがあり、サイレン信号は音符とリズムがありませんが、狭い周波数帯域に存在する。すなわち、連続成分と最大ピークはチャイム信号、音楽信号とサイレン信号のような非音声信号を検出するための有効な検出データ項目である。
【0060】
判定処理部87で用いる閾値の一例について以下に説明する。入力デジタル信号の最大ピーク値が50以上になると非音声区間として検出される一方、最大ピーク値が49以下になれば、継続成分、ZCR等も用いて判定を行う。判定処理部87は具体的には、以下の図21の判定テーブルを用いることが好ましい。
【0061】
図21図3の非音声検出部74の判定処理部87により実行される判定処理の一例のテーブルを示す図である。図21に示すように、判定処理部87は、最大ピーク、継続成分、ZCRを利用して判定を行う。非音声区間の確率が51%以上99%以下なる場合は振幅で非音声区間の長さが1.5秒以上になっているか確認し、1.5秒以上になれば非音声区間として判定してHレベルの判定結果信号を出力する一方、1.5秒より短い場合は音声区間として判定してLレベルの判定結果信号を出力する。
【実施例
【0062】
図22A図22Eに、発明者らが試作した非音声キャンセル部23の動作例(評価結果)を示す。
【0063】
(A)図22A図2の非音声検出部74の動作例であって、「通常放送の音源」を入力したときの入力信号及び出力信号を示す波形図である。
(B)図22B図2の非音声検出部74の動作例であって、「緊急放送の音源(緊急地震速報の訓練放送)」を入力したときの入力信号及び出力信号を示す波形図である。
(C)図22C図2の非音声検出部74の動作例であって、「緊急放送の音源(消防の訓練放送(サイレン鳴動))」を入力したときの入力信号及び出力信号を示す波形図である。
(D)図22D図2の非音声検出部74の動作例であって、「定時音楽放送の音楽(音楽のみ)」を入力したときの入力信号及び出力信号を示す波形図である。
(E)図22E図2の非音声検出部74の動作例であって、「非対応音源のイメージ信号であって、ラジオ体操のように音楽と音声が合成された音源)」を入力したときの出力信号を示す波形図である。
【0064】
図22A図22Dに示すように、予め音源が既知の非音声信号については、非音声区間を正確に検出していることがわかる。しかし、図22Eに示すように、ラジオ体操のように音楽と音声が合成された音源については、音声区間と非音声区間とが同時に存在しているので、検出することが難しいことがわかる。
【0065】
図4図1の中継局2Bのデジタル無線送信装置22Bの構成を示すブロック図である。図4のデジタル無線送信装置22Bは、図7のデジタル無線送信装置22に比較して、以下の点が異なる。
(1)音源解析回路41、遅延回路42、非音声コード発生器45、及びスイッチ46が削除される。すなわち、デジタル無線送信装置22Bは、AD変換器43と、音声エンコーダ44と、狭帯域デジタル変調器47と、電力増幅器と、アンテナ22Aとを備えて構成される。
以下、相違点について説明する。
【0066】
図4において、デジタル無線受信装置21から非音声キャンセル部23を介して出力される低周波信号はAD変換器43に入力される。AD変換器43は入力される低周波信号を音声のデジタルデータに変換した後、音声エンコーダ44に出力する。音声エンコーダ44は入力される音声のデジタルデータを例えばAMBE音声圧縮方式で符号化して符号化後のデジタルデータを狭帯域デジタル変調器47に出力する。狭帯域デジタル変調器47は、入力されるデジタルデータに従って所定の搬送波を、例えば4値FSK方式で狭帯域デジタル変調して、変調後の変調信号を所定の無線信号に高域周波数変換した後、電力増幅器48で電力増幅し、当該無線信号をアンテナ22Aから送信する。
【0067】
図5図1の戸別局3Bのデジタル無線受信装置31Bの構成を示すブロック図である。図5のデジタル無線受信装置31Bは、図9のデジタル無線受信装置31に比較して以下の点が異なる。
(1)非音声コード判別器63、非音声信号発生器65,及びスイッチ66が削除される。すなわち、デジタル無線受信装置31Bは、アンテナ31Aと、高周波低雑音増幅器61と、狭帯域デジタル復調器62と、音声デコーダ64と、低周波増幅器67と、スピーカ32とを備えて構成される。
【0068】
図5において、アンテナ31Aにより受信された無線信号は高周波低雑音増幅器61により低雑音増幅された後、狭帯域デジタル復調器62によりデジタルデータに復調され、音声デコーダ64に出力される。音声デコーダ64は入力される音声のデジタルデータを信号処理する信号処理回路であって、例えばAMBE音声圧縮方式に対応するAMBE音声伸張方式で復号化して復号化後の音声の低周波信号を低周波増幅器67に出力する。そして、低周波増幅器67は入力される低周波信号を増幅してスピーカ32から出力する。
【0069】
図13は実施形態1に係る地域防災無線システムの構成例及びその動作を示すブロック図である。
【0070】
図13に示すように、中継局2Bのデジタル無線受信装置21からの音声信号と非音声信号を、非音声キャンセル部23を通すことにより、異音の原因となるチャイム音などの非音声信号をフィルタリングした後、デジタル無線送信装置22Bにより狭帯域デジタル変調して送信し、戸別局3Bのデジタル無線受信装置31Bではこれを受信することで非音声は鳴動されず、音声のみが鳴動される。これにより非音声の伝送はできなくなるが、異音の発生を防ぐことや本来重要である正常な音声の認識も容易となる。さらに、行政、自治体ごとの音声データ入手、音声データ格納、非音声信号の音源解析回路41(図7)及び非音声コード発生器45(図7)なども必要無くなるため、導入までのハードルは大幅に下がる、という特有の効果を有する。
【0071】
以上のように構成された、実施形態1に係る防災無線システムによれば、前記問題点を解決するため、非音声キャンセル部23を用いてチャイム音などの非音声信号を除去し、防災無線再送信での音声信号のみの再送信することができる。従って、従来例のように、「予め記録した非音声データとAD変換による非音声信号の音源パターン解析処理を行ってから非音声コードを生成」などの複雑な信号処理を行う必要がないので、極めて簡単な構成となるとともに、戸別局において異音となったチャイム音を除去して、音声信号のみを出力することができる。
【0072】
(実施形態2)
図11は本発明の実施形態2に係る地域防災無線システムの構成例を示すブロック図である。図11の地域防災無線システムは、図1の実施形態1に係る地域防災無線システムに比較して以下の点が異なる。
(1)統制局又は中継局において、デジタル無線受信装置21を備えず、音源再生出力装置24及びデジタル無線再送信装置2Cが設けられる。
(2)デジタル無線再送信装置2Cは、音源入力部21Cと、非音声キャンセル部23と、デジタル無線送信装置22Bとを備える。
以下、相違点について説明する。
【0073】
図11において、音源再生出力装置24は音源再生出力部25を備え、音源再生出力部25は例えば音源データを予め記憶するメモリ25mを有し、例えば非音声信号(チャイム音など)及び音声信号を含む防災放送の音源を再生してその信号を音源入力部21Cに出力する。音源入力部21Cは音源再生出力部25とのインターフェース回路であって、入力される信号を所定の信号変換を実行した後、非音声キャンセル部23に出力する。以下の動作は、実施形態1と同様である。
【0074】
図14図11の実施形態2に係る地域防災無線システムの構成例及びその動作を示すブロック図である。
【0075】
実施形態1では防災無線の受信された音声信号及び非音声信号を非音声キャンセル部23に通して狭帯域デジタル変調して送信していた。これに対して、実施形態2では、デジタル無線受信装置21を備えず、音源入力部21Cを備えたデジタル無線再送信装置2Cに置き換えたことを特徴としている。すなわち、音源入力部21Cから入力された音声信号と非音声信号を含む低周波信号を、非音声キャンセル部23を通すことにより、異音の原因となる非音声信号をフィルタリングしてデジタル無線送信装置22Bで狭帯域デジタル変調して送信し、戸別局3Bのデジタル無線受信装置31Bではこれを受信することで非音声は鳴動されず、音声のみが出力される。
【0076】
これにより、防災無線に限らず音源再生出力装置24(例えばチャイム音とアナウンス音声が鳴動する放送システムによる音源再生出力装置など)から出力される非音声信号の伝送はできなくなるが、異音の発生を防ぐことや本来重要である正常な音声の認識も容易となる。さらにシステムを導入する際もすでに導入済みの音源再生出力装置24の仕様及び設定の変更や改造することなく、戸別局3Bのデジタル無線受信装置31Bで音声受信することができ、導入までのハードルは大幅に下がる。
【0077】
(変形例)
以上の実施形態1及び2においては、地域防災無線システムについて説明しているが、本発明はこれに限らず、種々の無線システムに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上詳述したように、本発明に係るデジタル無線送信装置等によれば、前記非音声キャンセル部を用いてチャイム音などの非音声信号を除去し、防災無線再送信での音声信号のみの再送信をすることができる。従って、従来例のように、「予め記録した非音声データとAD変換による非音声信号の音源パターン解析処理を行ってから非音声コードを生成」などの複雑な信号処理を行う必要がないので、極めて簡単な構成となるとともに、戸別局において異音となったチャイム音を除去して、音声信号のみを出力することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 統制局
2,2B 中継局
2C デジタル無線再送信装置
3,3B 戸別局
11 統制操作装置
12 デジタル無線送信装置
12A アンテナ
13 マイクロホン
14 スイッチ
15 音声増幅器
16 加算器
17 非音声信号発生器
21 デジタル無線受信装置
21A アンテナ
21C 音源入力部
22,22B デジタル無線送信装置
22A アンテナ
23 非音声キャンセル部
24 音源再生出力装置
25 音源再生出力部
25m メモリ
31,31B デジタル無線受信装置
31A アンテナ
32 スピーカ
41 音源解析回路
42 遅延回路
43 AD変換器
44 音声エンコーダ
45 非音声コード発生器
46 スイッチ
47 狭帯域デジタル変調器
48 電力増幅器
49 信号処理回路
51 AD変換器
52 FFT演算器
53 非音声比較判別器
54 非音声コードスペクトルパターンメモリ
61 高周波低雑音増幅器
62 狭帯域デジタル復調器
63 非音声コード判別器
64 音声デコーダ
65 非音声信号発生器
66 スイッチ
67 低周波増幅器
71 AD変換器
72 信号区間検出部
73 可変利得増幅器
74 非音声検出部
75 録音部
76 遅延再生部
77 無音再生部
78 切替スイッチ
81 振幅検出部
82 ZCR検出部
83 周波数解析部
84 周波数成分検出部
85 継続成分検出部
86 最大ピーク検出部
87 判定処理部
【要約】
【課題】地域防災無線システムにおいて、複雑な信号処理を行う必要がなく、戸別局において異音となったチャイム音を除去して音声信号のみを出力する。
【解決手段】デジタル無線送信装置は中継局に設けられ、音声信号及び非音声信号を含む低周波信号を、デジタル変調器により所定の音声圧縮方式を用いてデジタル変調して無線送信するデジタル無線送信装置において、音声信号及び非音声信号を含む低周波信号から非音声信号をキャンセルするように音声信号処理を行ってデジタル変調器に出力する非音声キャンセル部を備える。非音声キャンセル部は、低周波信号に基づき閾値を用いて信号区間であるか否かを検出する信号区間検出部と、検出された信号区間が非音声信号の区間であるか否かを検出する非音声検出部と、非音声信号の区間であるとき無音信号を出力し、音声信号の区間であるとき低周波信号を出力する切替スイッチとを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E