(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】塗装ロボット
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20221102BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20221102BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B05C11/10
B05B12/00 A
B05C5/00 Z
(21)【出願番号】P 2022052326
(22)【出願日】2022-03-28
【審査請求日】2022-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】多和田 孝達
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】飯田 輝澄
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/049718(WO,A1)
【文献】特開2020-124912(JP,A)
【文献】特開2021-003883(JP,A)
【文献】特開2016-175077(JP,A)
【文献】特開2017-035691(JP,A)
【文献】特開2017-035692(JP,A)
【文献】特開2017-035693(JP,A)
【文献】国際公開第2021/040034(WO,A1)
【文献】特開2000-126666(JP,A)
【文献】特開平06-134376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B05B 12/00
B05D 1/00-7/26
B41J 2/01
2/165-2/20
2/21-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の塗装を行う塗装ロボットであって、
塗料の液滴を吐出する複数のノズルを備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記ロボットアームと前記塗装ヘッドユニットの間に亘って設けられている塗料供給機構と、
前記ロボットアームおよび前記塗料供給機構の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記塗料供給機構は、
前記ロボットアームと前記塗装ヘッドユニットの間に亘って設けられ、前記塗料を前記塗装ヘッドに対して供給しつつ当該塗装ヘッドから吐出されなかった前記塗料を回収する塗料循環経路と、
前記塗料循環経路の中途に設けられると共に、前記塗料の貯留部位と前記塗装ヘッドの間での前記塗料の供給および回収を行う塗料移送手段と、
前記塗料循環経路の中途に設けられると共に、当該塗料循環経路の内部流路の開閉を調整可能な調整弁と、
を備えていて、
前記制御部は、
圧力設定値が記憶されている制御用メモリと、
前記制御用メモリから読み出された前記圧力設定値となるように前記塗料移送手段と前記調整弁の少なくとも一方の作動のフィードバック制御を実行するための圧力演算値を算出して前記塗料移送手段と前記調整弁の少なくとも一方の作動を制御するフィードバック制御部と、
前記塗装ヘッドからの前記塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号、または前記塗装ヘッドからの前記塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、前記圧力設定値に対して圧力の変動が予期される圧力変動とは逆方向の補償圧力値で前記圧力演算値を補正して前記塗料移送手段と前記調整弁の少なくとも一方の作動を制御するフィードフォワード制御部と、
を備えることを特徴とする塗装ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の塗装ロボットであって、
前記塗料循環経路は、
前記塗装ヘッドに向けて塗料を供給する塗料供給路と、
前記塗装ヘッドの塗料排出側に接続され、前記ノズルから吐出されなかった前記塗料を回収する戻り流路と、
を備え、
前記塗料移送手段は、
前記ロボットアームの所定位置に搭載され、前記塗料供給路の中途に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドに向けて前記塗料を供給するための圧力を印加する塗料供給手段と、
前記ロボットアームの所定位置に搭載され、前記戻り流路の中途に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドから吐出されなかった前記塗料を回収するための圧力を前記戻り流路の下流側に印加する塗料回収手段と、
を備え、
前記フィードフォワード制御部は、
前記塗装ヘッドからの前記塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、前記塗料供給手段を駆動増加させる側に補正する前記補償圧力値で前記圧力演算値を補正して、前記塗料供給手段を作動させる、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項3】
請求項2記載の塗装ロボットであって、
前記フィードフォワード制御部は、
前記塗装ヘッドからの前記塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、前記塗料回収手段を駆動減少側に補正する前記補償圧力値で前記圧力演算値を補正して、前記塗料回収手段を作動させる、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項4】
請求項2または3記載の塗装ロボットであって、
前記フィードフォワード制御部は、
前記塗装ヘッドからの前記塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、前記塗料供給手段を駆動停止させる側に補正する前記補償圧力値で前記圧力演算値を補正して、前記塗料供給手段を作動させる、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記フィードフォワード制御部は、
前記塗装ヘッドからの前記塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、前記塗料回収手段を駆動増加させる側に補正する前記補償圧力値で前記圧力演算値を補正して、前記塗料回収手段を作動させる、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記調整弁は、
前記塗料供給手段よりも前記塗料供給路の下流側に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドに向かう前記塗料の圧力を調整する第1調整弁と、
前記塗料回収手段よりも前記戻り流路の上流側に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドから回収される前記塗料の圧力を調整する第2調整弁と、
を備え、
前記フィードフォワード制御部は、
前記塗装ヘッドからの前記塗料の吐出停止状態からの吐出開始または前記塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、前記補償圧力値で前記圧力演算値を補正して、前記第1調整弁と前記第2調整弁の少なくとも一方の作動を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項7】
請求項6記載の塗装ロボットであって、
前記フィードフォワード制御部は、
前記塗装ヘッドからの前記塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、前記第1調整弁を開く側に補正する前記補償圧力値で前記圧力演算値を補正して、前記第1調整弁を作動させる、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項8】
請求項6または7記載の塗装ロボットであって、
前記フィードフォワード制御部は、前記塗装ヘッドからの前記塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、前記第2調整弁を閉じる側に補正する前記補償圧力値で前記圧力演算値を補正して、前記第2調整弁を作動させる、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記フィードフォワード制御部は、
前記塗装ヘッドからの前記塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、前記第1調整弁を閉じる側に補正する前記補償圧力値で前記圧力演算値を補正して、前記第1調整弁を作動させる、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記フィードフォワード制御部は、
前記塗装ヘッドからの前記塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、前記第2調整弁を開く側に補正する前記補償圧力値で前記圧力演算値を補正して、前記第2調整弁を作動させる、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記フィードフォワード制御部は、
前記塗装ヘッドの姿勢変化に関連するトリガ信号に基づいて、前記圧力設定値に対して圧力の変動が予期される圧力変動とは逆方向の前記補償圧力値で前記圧力演算値を補正して前記塗料移送手段と前記調整弁の少なくとも一方の作動を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の塗装ラインにおいては、ロボットを用いたロボット塗装が主流となっている。このロボット塗装に関する構成の一例として、たとえば特許文献1には、以下の構成が開示されている。すなわち、特許文献1に開示の塗装ロボットにおいては、ロボットアーム(100)の先端側に循環装置(200)が取り付けられている。この循環装置(200)内に第1比例制御弁(204)と、第2比例制御弁(205)が設けられていて、さらに複数の圧力センサ(208~211)が設けられ、さらに流量計(212)が設けられている。そして、循環装置(200)の姿勢が変化した場合に、流量一定とするのか、または差圧一定とするのかという制御モードに応じて、第1比例制御弁(204)および第2比例制御弁(205)の開度をコントロールすることで、供給圧力と回収圧力を調整し、それによって、上記の制御モードに応じた制御を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の特許文献1の構成においては、圧力センサや流量計における測定結果を、プロセッサに送信している。このため、たとえば塗料の吐出または吐出停止の際には、ポンプや比例制御弁(ペイントレギュレータ)の応答性に遅延が生じ、その応答性の遅延によって圧力変動が生じる。かかる圧力変動が生じると、塗料の圧力が基準圧力の範囲内に収まらない場合が生じることが多い。
【0005】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、塗料の吐出または吐出停止の際における、圧力変動の影響を低減することが可能な塗装ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、車両の塗装を行う塗装ロボットであって、塗料の液滴を吐出する複数のノズルを備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドを所望の位置へ移動させるロボットアームと、ロボットアームと塗装ヘッドユニットの間に亘って設けられている塗料供給機構と、ロボットアームおよび塗料供給機構の駆動を制御する制御部と、を備え、塗料供給機構は、ロボットアームと塗装ヘッドユニットの間に亘って設けられ、塗料を塗装ヘッドに対して供給しつつ当該塗装ヘッドから吐出されなかった塗料を回収する塗料循環経路と、塗料循環経路の中途に設けられると共に、塗料の貯留部位と塗装ヘッドの間での塗料の供給および回収を行う塗料移送手段と、塗料循環経路の中途に設けられると共に、当該塗料循環経路の内部流路の開閉を調整可能な調整弁と、を備えていて、制御部は、圧力設定値が記憶されている制御用メモリと、制御用メモリから読み出された圧力設定値となるように塗料移送手段と前記調整弁の少なくとも一方の作動のフィードバック制御を実行するための圧力演算値を算出して塗料移送手段と調整弁の少なくとも一方の作動を制御するフィードバック制御部と、塗装ヘッドの状態変化に関連するトリガ信号に基づいて、圧力設定値に対して圧力の変動が予期される圧力変動とは逆方向の補償圧力値で圧力演算値を補正して塗料移送手段と調整弁の少なくとも一方の作動を制御するフィードフォワード制御部と、を備えることを特徴とする塗装ロボットが提供される。
【0007】
また、上述の発明において、塗料循環経路は、塗装ヘッドに向けて塗料を供給する塗料供給路と、塗装ヘッドの塗料排出側に接続され、ノズルから吐出されなかった塗料を回収する戻り流路と、を備え、塗料移送手段は、ロボットアームの所定位置に搭載され、塗料供給路の中途に設けられると共に、制御部での制御に基づいて塗装ヘッドに向けて塗料を供給するための圧力を印加する塗料供給手段と、ロボットアームの所定位置に搭載され、戻り流路の中途に設けられると共に、制御部での制御に基づいて塗装ヘッドから吐出されなかった塗料を回収するための圧力を戻り流路の下流側に印加する塗料回収手段と、を備え、フィードフォワード制御部は、塗装ヘッドからの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、塗料供給手段を駆動増加させる側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、塗料供給手段を作動させる、ことが好ましい。
【0008】
また、上述の発明において、フィードフォワード制御部は、塗装ヘッドからの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、塗料回収手段を駆動減少側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、塗料回収手段を作動させる、ことが好ましい。
【0009】
また、上述の発明において、フィードフォワード制御部は、塗装ヘッドからの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、塗料供給手段を駆動停止させる側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、塗料供給手段を作動させる、ことが好ましい。
【0010】
また、上述の発明において、フィードフォワード制御部は、塗装ヘッドからの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、塗料回収手段を駆動増加させる側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、塗料回収手段を作動させる、ことが好ましい。
【0011】
また、上述の発明において、調整弁は、塗料供給手段よりも塗料供給路の下流側に設けられると共に、制御部での制御に基づいて塗装ヘッドに向かう塗料の圧力を調整する第1調整弁と、塗料回収手段よりも戻り流路の上流側に設けられると共に、制御部での制御に基づいて塗装ヘッドから回収される塗料の圧力を調整する第2調整弁と、を備え、フィードフォワード制御部は、塗装ヘッドからの塗料の吐出停止状態からの吐出開始または塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、補償圧力値で圧力演算値を補正して、第1調整弁と第2調整弁の少なくとも一方の作動を制御する、ことが好ましい。
【0012】
また、上述の発明において、フィードフォワード制御部は、塗装ヘッドからの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、第1調整弁を開く側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、第1調整弁を作動させる、ことが好ましい。
【0013】
また、上述の発明において、フィードフォワード制御部は、塗装ヘッドからの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、第2調整弁を閉じる側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、第2調整弁を作動させる、ことが好ましい。
【0014】
また、上述の発明において、フィードフォワード制御部は、塗装ヘッドからの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、第1調整弁を閉じる側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、第1調整弁を作動させる、ことが好ましい。
【0015】
また、上述の発明において、フィードフォワード制御部は、塗装ヘッドからの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、第2調整弁を開く側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、第2調整弁を作動させる、ことが好ましい。
【0016】
また、上述の発明において、フィードフォワード制御部は、塗装ヘッドの姿勢変化に関連するトリガ信号に基づいて、圧力設定値に対して圧力の変動が予期される圧力変動とは逆方向の補償圧力値で圧力演算値を補正して塗料移送手段と調整弁の少なくとも一方の作動を制御する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、塗料の吐出または吐出停止の際における、圧力変動の影響を低減することが可能な塗装ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る塗装ロボットの全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す塗装ロボットのうち、塗料を吐出させるノズル形成面を正面視した状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す塗装ロボットにおいて、複数の塗装ヘッドを千鳥状に配置した状態を示す図である。
【
図4】
図1に示す塗装ロボットにおいて、各ノズルへ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。
【
図5】
図4に示す、列方向供給流路、ノズル加圧室および列方向排出流路付近の構成を示す断面図である。
【
図6】
図2に示す塗装ヘッドユニットとは異なる他の塗装ヘッドユニットにおけるノズル形成面の構成を示す平面図である。
【
図7】
図1に示す塗装ロボットが備える塗料供給機構等の概略的な構成を示す図である。
【
図8】
図1に示す塗装ロボットの制御部を中心とした制御的な概略構成を示す図である
【
図9】
図1に示す塗装ロボットにおいて、塗料供給制御部の概略的な構成を示す図である。
【
図10】
図1に示す塗装ロボットにおいて、制御対象に対して、フィードフォワード制御を行わなく、フィードバック制御のみで制御を行って、塗装ヘッドから塗料を吐出する際の、圧力変化の検証結果の一例を示すグラフである。
【
図11】
図1に示す塗装ロボットにおいて、制御対象に対して、フィードフォワード制御と共に、フィードバック制御を行って、塗装ヘッドから塗料を吐出する際の、圧力変化の検証結果の一例を示すグラフである。
【
図12】
図1に示す塗装ロボットにおいて、塗装ヘッドの移動経路上の所定位置への到達をトリガ信号とした場合のイメージを示す図である。
【
図13】
図1に示す塗装ロボットにおいて、塗装ヘッドが塗装経路の方向と直交する方向に対して傾斜している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施の形態に係る塗装ロボット10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じて、X方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の長手方向とし、X1側は
図2における右側、X2側は
図2における左側とする。また、Y方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の短手方向(幅方向)とし、Y1側は
図2における紙面上側、Y2側は
図2における紙面下側とする。
【0020】
本実施の形態の塗装ロボット10は、自動車製造の工場における塗装ラインに位置する車両または車両部品(以下、車両の一部となる車両部品も車両として説明する)といった塗装対象物に対して、「塗装」を行うものであり、塗膜を塗装対象物の表面に形成して、その表面の保護や美観を与えることを目的としている。したがって、所定時間毎に、塗装ラインに沿って移動してくる車両に対し、一定の時間内に所望の塗装品質にて、塗装を行う必要がある。
【0021】
また、本実施の形態の塗装ロボット10では、上述した塗膜を形成するのみならず、各種のデザインや画像を、車両や車両部品といった塗装対象物に対して形成することが可能である。なお、塗装対象物は、車両や車両部品には限られず、自動車以外の各種部品(一例としては、飛行機や鉄道の外装部品)等、塗装を行う必要があるものであれば良い。
【0022】
(1-1.インクジェット式の車両用塗装機の全体構成について)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗装ロボット10の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、塗装ロボット10は、ロボット本体20と、塗装ヘッドユニット50とを主要な構成要素としている。
図1に示す塗装ロボット10は、その一例として、6軸の垂直多関節ロボットを示しているが、当該塗装ロボット10は、6軸以外の垂直多関節型、水平多関節型、直交ロボット等、どのようなタイプのロボットでも良い。
【0023】
(1-2.塗装装置本体について)
図1に示すように、ロボット本体20は、基台21と、第1~第6回転軸22a~22fと、脚部23と、第1回動アーム24と、第2回動アーム25と、回転アーム26と、リスト部27と、これらを駆動させるための不図示のモータと、を主要な構成要素としている。なお、脚部23からリスト部27までの部分は、ロボットアームR1に対応するが、基台21等のようなそれ以外の部分も、ロボットアームR1に対応するものとしても良い。
【0024】
これらのうち、基台21は床面等の設置部位に設置される部分であるが、この基台21が設置部位に対して走行可能であっても良い。また、脚部23は、基台21から上部に向かい立設された部分であり、図示を省略するモータ(第1モータ)の駆動によって第1回転軸22aを介して基台21に対して回転可能に設けられている。なお、脚部23は、基台21に対して回転しないように構成しても良い。
【0025】
また、脚部23の上端には、図示を省略するモータ(第2モータ)の駆動によって第2回転軸22bを介して第1回動アーム24が回動可能に設けられている。さらに、第1回動アーム24の先端側には、図示を省略するモータ(第3モータ)の駆動によって第3回転軸22cを介して第2回動アーム25が回動可能に設けられている。
【0026】
また、第2回動アーム25の先端側には、回転アーム26が第2回動アーム25の中心軸周りに回転可能に設けられている。この回転アーム26は、図示を省略するモータ(第4モータ)の駆動によって、第4回転軸22dを介して回転可能となっている。また、回転アーム26の先端側には、リスト部27が設けられている。このリスト部27は、複数(たとえば2つ)の異なる向きの軸部を中心に、回転運動を可能としている。
図1においては、その回転運動が可能な回転軸を、それぞれ第5回転軸22eおよび第6回転軸22fとしている。それにより、塗装ヘッドユニット50の向きを精度良くコントロールすることが可能となっている。なお、軸部の個数は、2つ以上であれば幾つでも良い。
【0027】
また、リスト部27には、塗装ヘッドユニット50が取り付けられているが、この塗装ヘッドユニット50は、リスト部27に対して着脱自在に設けられていても良い。
【0028】
(1-3.塗装ヘッドユニットについて)
次に、塗装ヘッドユニット50について説明する。
図2は、塗装ヘッドユニット50のうち、塗料を吐出させるノズル形成面52を正面視した状態を示す図である。
図2に示すように、塗装ヘッドユニット50は、不図示のヘッドカバーを備え、そのヘッドカバー内に、種々の構成が内蔵されている。
図2に示すように、ノズル形成面52には、ノズル54が塗装ヘッドユニット50の長手方向に対して傾斜する方向に連なるノズル列55が複数設けられている。かかるノズル列55には、本実施の形態では、主走査方向(Y方向)の一方側(Y2側)に存在する第1ノズル列55Aと、主走査方向の他方側(Y1側)に存在する第2ノズル列55Bとが設けられている。
【0029】
なお、塗料を吐出する場合、第1ノズル列55Aにおける隣り合うノズル54から吐出される液滴の間に、第2ノズル列55Bにおけるノズル54から吐出される液滴が着弾されるように、各ノズル54の駆動タイミングが制御される。それにより、塗装の際にドット密度を向上させることができる。
【0030】
ところで、
図2に示すように、ノズル形成面52には、単一の塗装ヘッド53が存在している。しかしながら、ノズル形成面52には、複数の塗装ヘッド53から構成されるヘッド群が存在するようにしても良い。この場合、一例として、
図3に示すように、複数の塗装ヘッド53を位置合わせしつつ千鳥状に配置する構成が挙げられるが、ヘッド群における塗装ヘッド53の配置は千鳥状でなくても良い。
【0031】
図4は、各ノズル54へ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。
図5は、列方向供給流路58、ノズル加圧室59および列方向排出流路60付近の構成を示す断面図である。
図4および
図5に示すように、塗装ヘッド53は、供給側大流路57と、列方向供給流路58と、ノズル加圧室59と、列方向排出流路60と、排出側大流路61とを備えている。供給側大流路57は、後述する塗料供給機構70の塗料供給路72から塗料が供給される流路である。また、列方向供給流路58は、供給側大流路57内の塗料が、分流される流路である。
【0032】
また、ノズル加圧室59は、列方向供給流路58とノズル供給流路59aを介して接続されている。それにより、ノズル加圧室59には、列方向供給流路58から塗料が供給される。このノズル加圧室59は、ノズル54の個数に対応して設けられていて、内部の塗料を後述する圧電基板62を用いてノズル54から吐出させることができる。
【0033】
また、ノズル加圧室59は、ノズル排出流路59bを介して列方向排出流路60と接続されている。したがって、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59内からノズル排出流路59bを介して、列方向排出流路60へと排出される。また、列方向排出流路60は、排出側大流路61と接続されている。排出側大流路61は、それぞれの列方向排出流路60から、排出された塗料が合流する流路である。この排出側大流路61は、後述する塗料供給機構70の戻り流路73と接続されている。
【0034】
このような構成により、後述する塗料供給機構70の塗料供給路72から供給された塗料は、供給側大流路57、列方向供給流路58、ノズル供給流路59aおよびノズル加圧室59を経て、ノズル54から吐出される。また、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59からノズル排出流路59b、列方向排出流路60および排出側大流路61を経て、後述する塗料供給機構70の戻り流路73へと戻される。
【0035】
なお、
図4に示す構成では、1本の列方向供給流路58には、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されている。しかしながら、1本の列方向供給流路58に、複数本(たとえば2本)の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。また、複数本の列方向供給流路58に、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。
【0036】
また、
図5に示すように、ノズル加圧室59の天面(ノズル54とは反対側の面)には、圧電基板62が配置されている。この圧電基板62は、圧電体である2枚の圧電セラミック層63a,63bを備え、さらに共通電極64と、個別電極65とを備えている。圧電セラミック層63a,63bは、外部から電圧を印加することで、伸縮可能な部材である。このような圧電セラミック層63a,63bとしては、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系等のセラミックス材料を用いることができる。
【0037】
また、
図5に示すように、共通電極64は、圧電セラミック層63aと圧電セラミック層63bの間に配置されている。また、圧電基板62の上面には、共通電極用の表面電極(不図示)が形成されている。これら共通電極64と共通電極用の表面電極とは、圧電セラミック層63aに存在する不図示の貫通導体を通じて、電気的に接続されている。また、個別電極65は、上記のノズル加圧室59と対向する部位にそれぞれ配置されている。さらに、圧電セラミック層63aのうち、共通電極64と個別電極65とに挟まれた部分は、厚さ方向に分極している。したがって、個別電極65に電圧を印加すると、圧電効果によって圧電セラミック層63aが歪む。このため、所定の駆動信号を個別電極65に印加すると、ノズル加圧室59の体積を減少させるように圧電セラミック層63bが相対的に変動し、それによって塗料が吐出される。
【0038】
なお、
図5において、共通電極64がノズル加圧室59の天面に配置されているが、共通電極64は、
図5に示すような、ノズル加圧室59の天面に配置されている構成には限られない。たとえば、共通電極64は、ノズル加圧室59の側面(上記の天面と直交または概ね直交する面)に配置される構成を採用しても良く、その他、塗料をノズル54から良好に吐出可能であれば、どのような構成を採用しても良い。
【0039】
(1-4.塗装ヘッドユニットの他の構成について)
次に、塗装ヘッドユニット50の他の構成について説明する。
図6は、他の塗装ヘッドユニット50のノズル形成面52の構成を示す平面図である。
図6に示すように、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;Y方向)に沿って並ぶことでノズル列55を構成するようにしても良い。なお、
図6に示す構成では、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に並んでノズル列55を構成しているが、1つの(単一の)ノズル54のみが塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に配置される構成としても良い。すなわち、ノズル列55が1つのノズル54から構成されていても良い。
【0040】
また、
図6に示すような塗装ヘッド53を用いて車両に塗装を行う場合、塗装ヘッド53の長手方向が、塗装ヘッド53の主走査方向に対して若干傾斜させた状態で塗装を実行するようにしても良い。たとえば、
図2に示す塗装ヘッド53の構成では、ノズル列55は主走査方向に対して角度αだけ傾斜しているとすると、塗装ヘッド53の長手方向を、塗装ヘッド53の主走査方向に対して角度αだけ傾斜させるようにすればよい。このように傾斜させる場合には、各ノズル54からの塗料の吐出タイミングを調整するだけで、
図2に示す塗装ヘッド53と同等の塗装を実現することができる。
【0041】
(1-5.塗料供給機構について)
次に、塗料供給機構70およびその塗料供給機構70が備える気泡除去部材および流量計について説明する。
【0042】
図7は、塗料供給機構70等の概略的な構成を示す図である。この塗料供給機構70は、塗料循環経路71と、外部供給路75と、気泡除去部材76と、供給ポンプ90と、吸引ポンプ91と、第1ペイントレギュレータ92と、第2ペイントレギュレータ93と、脱気モジュール94と、除去フィルタ95と、圧力センサS1~S8と、第1流量計FM1と、第2流量計FM2とを主要な構成要素としている。
【0043】
塗料循環経路71は、塗料を循環させるための流路であり、塗料供給路72と、戻り流路73と、バイパス流路74とを有している。塗料供給路72は、外部供給路75から供給された、または戻り流路73から戻ってきた塗料を、塗装ヘッド53に向けて供給するための流路であり、上述した供給側大流路57と接続されている。
【0044】
戻り流路73は、塗装ヘッド53の排出側大流路61と接続されていて、塗装ヘッド53で吐出されなかった塗料を、気泡除去部材76へと戻すための流路である。
【0045】
バイパス流路74は、塗料供給路72と戻り流路73とを接続する流路である。すなわち、バイパス流路74は、塗装ヘッド53と並列状態で設けられていて、塗装ヘッド53から塗料が不吐出となる場合には、後述する三方弁77の作動を切り替えることで、このバイパス流路74に塗料が流される。
【0046】
外部供給路75は、サーキュレーションタンクのような塗料の貯留部位側から供給される塗料を、気泡除去部材76のタンク本体の内部に供給するための管路である。
【0047】
気泡除去部材76は、塗料に含まれる気泡を除去するための部材である。この気泡除去部材76は、ロボットアームR1外の姿勢が変化しない安定部位に設けられている。また、気泡除去部材76は、塗料供給路72に対して塗料を供給可能に接続されていると共に、戻り流路73から塗料を供給されるように当該戻り流路73に接続されている。この気泡除去部材76は、外部から密閉可能なタンク本体を備えていて、そのタンク本体には、内部に溜まった気泡による気体を排出する排出口が設けられている。
【0048】
また、塗料供給路72は、後述する第1ペイントレギュレータ92よりも下流側で三方弁77に接続されている。この三方弁77は、塗料供給路72の中途部に接続されると共に、バイパス流路74にも接続されている。したがって、塗装時には塗料供給路72の三方弁77よりも上流側と下流側とが開状態となって、塗装ヘッド53へ塗料が供給される。一方、塗装を行わない場合には、塗料供給路72からバイパス流路74へと塗料が流れるが、塗料供給路72の下流側(塗装ヘッド53側)には塗料が供給されないように切り替えられる。
【0049】
また、上述したバイパス流路74の中途部分には、開閉弁78が設けられている。この開閉弁78を開くように作動させることで、塗料はバイパス流路74を流れることが可能となっている。
【0050】
さらに、開閉弁78よりもバイパス流路74の下流側には、三方弁79が接続されていて、さらにこの三方弁79には戻り流路73の上流側(すなわち戻り流路73の塗装ヘッド53側)と下流側(すなわち戻り流路73の後述する吸引ポンプ91側)とが接続されている。このため、塗装を行う場合には、戻り流路73の三方弁79よりも上流側と下流側とが開状態となり、塗装ヘッド53から吐出されなかった塗料が戻り流路73の下流側へと流れる。一方、塗装を行わない場合には、三方弁79は、バイパス流路74を流れる塗料が、戻り流路73の下流側(吸引ポンプ91側)に塗料が流れるように切り替えられる。
【0051】
また、戻り流路73のうち、後述する供給ポンプ90よりも下流側には、切替弁80が配置されている。この切替弁80も三方弁であり、戻り流路73の上流側および下流側以外に、排出路81にも接続されている。この切替弁80は、通常の状態では、戻り流路73の上流側と下流側とで、塗料が流れる状態となっている。しかしながら、たとえば洗浄用の液体が塗料供給路72から塗装ヘッド53またはバイパス流路74を介して戻り流路73まで流れた場合に、切替弁80の作動が切り替えられて、上記の洗浄用の液体(廃液)が排出路81を介して排出される。
【0052】
なお、戻り流路73は、切替弁80よりも下流側で、上述した気泡除去部材76に接続されている。
【0053】
また、塗料供給路72の中途部には、供給ポンプ90が接続されている。なお、供給ポンプ90は、塗料移送手段および塗料供給手段に対応する。供給ポンプ90は、塗料供給路72を流れる塗料に対し、当該供給ポンプ90よりも下流側に向かって正圧を加えるための手段である。なお、供給ポンプ90としては、回転数を制御することで、塗料の供給量を制御することが可能なギヤポンプを用いることが好ましい。しかしながら、供給ポンプ90は、ギヤポンプ以外のポンプを用いるようにしても良い。この供給ポンプ90は、後述する制御部100で作動が制御させられる。それによって、供給ポンプ90の作動は、所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0054】
また、戻り流路73の中途部には、吸引ポンプ91が接続されている。なお、吸引ポンプ91は、塗料移送手段および塗料回収手段に対応する。吸引ポンプ91は、戻り流路73を流れる塗料に対し、当該供給ポンプ90よりも上流側に負圧を加える手段である。なお、吸引ポンプ91としては、上記の供給ポンプ90と同様に、回転数を制御することで、塗料の供給量を制御することが可能なギヤポンプを用いることが好ましい。しかしながら、吸引ポンプ91は、ギヤポンプ以外のポンプを用いるようにしても良い。この吸引ポンプ91も、後述する制御部100で作動が制御させられる。それによって、吸引ポンプ91の作動は、その下流側が所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0055】
また、塗料供給路72において、供給ポンプ90よりも下流側には、第1ペイントレギュレータ92が配置されている。第1ペイントレギュレータ92は、供給ポンプ90での脈動を緩和して、一定の圧力で塗料を供給するものである。なお、第1ペイントレギュレータ92は、調整弁および第1調整弁に対応する。この第1ペイントレギュレータ92は、後述する制御部100での制御により、制御エア圧や電気信号に応じて開度を調整可能となっている。それにより、当該第1ペイントレギュレータ92の上流側の圧力に対応して、第1ペイントレギュレータ92の下流側の圧力を、所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0056】
また、戻り流路73において、吸引ポンプ91よりも上流側には、第2ペイントレギュレータ93が配置されている。第2ペイントレギュレータ93は、吸引ポンプ91での脈動を緩和して、一定の圧力(負圧)で塗料を吸引するものである。なお、第2ペイントレギュレータ93は、調整弁および第2調整弁に対応する。この第2ペイントレギュレータ93も、後述する制御部100での制御により、制御エア圧や電気信号に応じて開度を調整可能となっている。それにより、当該第2ペイントレギュレータ93の下流側の圧力に対応して、第2ペイントレギュレータ93の上流側の圧力を、所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0057】
また、塗料供給路72において、供給ポンプ90よりも下流側かつ第1ペイントレギュレータ92よりも上流側には、脱気モジュール94が配置されている。脱気モジュール94は、後述する除去フィルタ95よりも塗料供給路72の下流側に配置されていて、塗料に溶存している溶存気体を除去(脱気)するための部材である。
【0058】
また、塗料供給路72において、脱気モジュール94よりも上流側であって供給ポンプ90よりも下流側には、除去フィルタ95が配置されている。除去フィルタ95は、塗料供給路72を流れる塗料に含まれている異物を除去するものである。除去フィルタ95は、たとえば顔料が含まれる塗料中から、粗大異物や顔料凝集物を確実に除去することで、塗装ヘッド53が正常に作動し続けるのを保つものである。
【0059】
次に、圧力センサS1~S8および流量計FM1,FM2について説明する。塗料供給路72において、供給ポンプ90の上流側には圧力センサS1が配置されている。加えて、塗料供給路72において、供給ポンプ90よりも下流側であって除去フィルタ95よりも上流側には圧力センサS2が配置されている。圧力センサS1は供給ポンプ90への塗料の供給圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。また、圧力センサS2は供給ポンプ90から吐出される塗料の圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0060】
このように、圧力センサS1,S2によって、供給ポンプ90の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、供給ポンプ90の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、供給ポンプ90の推定圧力は、圧力センサS1の圧力値と圧力センサS2の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。また、上記の推定圧力は、後述する水頭圧および水頭圧差の算出に用いられる。
【0061】
また、上述した脱気モジュール94には、吸引管路96を介して真空ポンプ97が接続されている。真空ポンプ97は、上述したように、脱気モジュール94の筐体内部(中空糸膜の内部)を減圧するための装置である。この減圧により、筐体内部に供給されている塗料に溶存している溶存気体を除去(脱気)される。
【0062】
また、圧力センサS3は、上記の真空ポンプ97と脱気モジュール94の間の吸引管路96の圧力を測定している。
【0063】
なお、塗料供給路72において、脱気モジュール94よりも下流側であって、第1ペイントレギュレータ92よりも上流側には、第1流量計FM1が配置されている。第1流量計FM1は、第1ペイントレギュレータ92へ送り込まれる塗料の流量を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。この第1流量計FM1は、たとえば超音波方式、光学式、電磁式、熱式等のような、可動部分が存在しない非接触型の流量計であるので、塗料供給路72の外部に第1流量計FM1が設置されている。なお、第1流量計FM1は、可動部分の存在する流量計を用いるようにしても良い。
【0064】
ここで、第1流量計FM1が光学式である場合には、塗料供給路72のうち少なくとも第1流量計FM1で流量を測定する部分は、透明に設けられる。しかしながら、第1流量計FM1が光学式以外の超音波方式である場合には、塗料供給路72のうち少なくとも第1流量計FM1で流量を測定する部分は、透明に設ける必要がない。
【0065】
また、塗料供給路72において、第1流量計FM1よりも下流側であって第1ペイントレギュレータ92よりも上流側には、圧力センサS4が配置されている。また、塗料供給路72において、第1ペイントレギュレータ92よりも下流側であって三方弁77よりも上流側には、圧力センサS5が配置されている。圧力センサS4は第1ペイントレギュレータ92への塗料の供給圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。また、圧力センサS5は第1ペイントレギュレータ92から吐出される塗料の圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0066】
このように、圧力センサS4,S5によって、第1ペイントレギュレータ92の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、第1ペイントレギュレータ92の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、第1ペイントレギュレータ92の推定圧力は、圧力センサS4の圧力値と圧力センサS5の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。
【0067】
なお、塗料供給機構70には、上記の圧力センサS4が設けられることが好ましいが、この圧力センサS4を省略する構成を採用しても良い。また、圧力センサS4は、塗装ヘッドユニット50側に設けても良いが、第2回動アーム25側(ロボットアームR1側)に設けても良い。また、圧力センサS4は、第1流量計FM1よりも上流側に設けるようにしても良い。
【0068】
また、戻り流路73において、三方弁79よりも下流側であって第2ペイントレギュレータ93よりも上流側には、圧力センサS6が配置されている。また、戻り流路73において、第2ペイントレギュレータ93よりも下流側の流量計FM2(後述)のさらに下流側には、圧力センサS7が配置されている。圧力センサS6は第2ペイントレギュレータ93への塗料の供給圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。また、圧力センサS7は第2ペイントレギュレータ93から吐出される塗料の圧力(すなわち、吸引ポンプ91への塗料の供給圧力)を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0069】
このように、圧力センサS6,S7によって、第2ペイントレギュレータ93の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、第2ペイントレギュレータ93の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、第2ペイントレギュレータ93の推定圧力は、圧力センサS6の圧力値と圧力センサS7の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。
【0070】
なお、戻り流路73において、第2ペイントレギュレータ93よりも下流側であって流量計FM2の上流側に、圧力センサを配置するようにしても良い。
【0071】
また、戻り流路73において、第2ペイントレギュレータ93よりも下流側には、第2流量計FM2が配置されている。第2流量計FM2は、吸引ポンプ91へ送り込まれる塗料の流量を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。この第2流量計FM2も、上記の第1流量計FM1と同様に、たとえば超音波方式、光学式、電磁式、熱式等のような、可動部分が存在しない非接触型の流量計であるので、その詳細についての説明は省略する。なお、第2流量計FM2も、可動部分の存在する流量計を用いるようにしても良い。
【0072】
また、戻り流路73において、吸引ポンプ91よりも下流側であって、上述した切替弁80よりも上流側には圧力センサS8が配置されている。圧力センサS8は吸引ポンプ91から吐出される塗料の圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0073】
このように、圧力センサS7,S8によって、吸引ポンプ91の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、吸引ポンプ91の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、吸引ポンプ91の推定圧力は、圧力センサS7の圧力値と圧力センサS8の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。
【0074】
(1-8.制御部の概略的な構成について)
【0075】
次に、塗装ロボット10の作動を制御するための制御部100の概略的な構成について説明する。
図8は、塗装ロボット10の制御部100を中心とした制御的な概略構成を示す図である。
図8に示すように、制御部100は、主制御部110と、アーム制御部120と、ヘッド制御部130と、塗料供給制御部140と、制御用メモリ150と、位置センサ300と、傾きセンサ310とを主要な構成要素としている。また、塗装ロボット10は、画像処理装置200に接続されることで、塗装ロボットシステム(符号省略)を構成している。
【0076】
なお、主制御部110、アーム制御部120、ヘッド制御部130、塗料供給制御部140および後述する画像処理部210は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)、その他の要素から構成されている。なお、画像処理部210は、画像処理性能に優れたCPUと共に、またはCPUに代えて、GPU(Graphics Processing Unit)を用いるようにしても良い。
【0077】
上記の制御的な構成のうち、主制御部110は、ロボットアームR1の各モータ(第1~第6モータ)、塗料供給機構70の各作動部、および圧電基板62が協働して塗装対象物に対して塗装が実行されるように、上述したアーム制御部120、ヘッド制御部130および塗料供給制御部140に所定の制御信号を送信する部分である。
【0078】
また、アーム制御部120は、上述したロボットアームR1の各モータ(第1~第6モータ)の駆動を制御する部分である。このアーム制御部120は、アーム用メモリ(図示省略)を備えていて、アーム用メモリには、塗装ヘッド53における塗装可能な塗装幅を勘案したロボットティーチングによって作成された、塗装ヘッド53の軌跡に関するデータ(軌跡データ)、および塗装ヘッド53の傾き等の姿勢に関する姿勢データが記憶されている。
【0079】
そして、アーム制御部120では、アーム用メモリに記憶された軌跡データ、姿勢データおよび後述する画像処理部210での画像処理に基づいて、上述したロボットアームR1の各モータ(第1~第6モータ)の駆動を制御する。その制御により、塗装ヘッド53は、塗装を実行するための所望の位置を、所望の速度で通過したり、所定の位置で停止することができる。なお、アーム用メモリは、塗装ロボット10が備えていても良いが、塗装ロボット10の外部にアーム用メモリ(たとえば、
図8に示すメモリ220)が存在し、そのアーム用メモリに対して、有線または無線の通信手段を介して、情報の送受信を可能としても良い。
【0080】
また、ヘッド制御部130は、画像処理装置200での画像処理に基づいて、塗装ヘッドユニット50内の圧電基板62の作動を制御する部分である。このヘッド制御部130は、後述する位置センサ300、傾きセンサ310等の位置を検出する手段によって軌跡データにおける所定の位置に到達したときに、その位置に対応した分割塗装データに基づいて、塗料の吐出を制御する。なお、この場合、車両の膜厚が均一となるように、圧電基板62の駆動周波数を制御してノズル54から吐出されるドット数(液滴の数)を制御したり、圧電基板62に印加する電圧を制御して、ノズル54から吐出される液滴のサイズを制御する。
【0081】
また、塗料供給制御部140は、塗装ヘッド53への塗料の供給を制御する部分であり、具体的には塗料供給機構70における、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92、第2ペイントレギュレータ93、真空ポンプ97、三方弁77,79、開閉弁78、切替弁80等の各作動部位の作動を制御する。このとき、塗料供給制御部140は、塗装ヘッド53に対して一定の圧力にて塗料が供給されるように、上記のポンプや弁等の作動部位の作動を制御することが好ましい。しかしながら、塗料供給制御部140は、塗装ヘッド53に対して一定の流量にて塗料が供給されるように、上記のポンプや弁等の作動部位の作動を制御可能であっても良い。
【0082】
ここで、塗料供給制御部140は、制御用メモリ150に対してアクセス可能となっており、かかるアクセスによって、この制御用メモリ150に記憶されている、後述するような圧力設定値を読み出すことが可能となっている。
【0083】
また、位置センサ300は、塗装ヘッド53の現在の位置を検出するセンサである。かかる位置センサ300としては、ロータリエンコーダ、レゾルバ、レーザセンサ、その他、種々のセンサを用いることが可能である。また、傾きセンサ310は、塗装ヘッド53の傾斜角度を検出するセンサであり、角度検出手段に対応する。かかる傾きセンサ310としては、たとえば、ジャイロセンサ、加速度センサ、傾斜センサ、その他、種々のセンサを用いることが可能である。
【0084】
次に、塗料供給制御部140の詳細について説明する。
図9は、塗料供給制御部140の概略的な構成を示す図である。
図9に示すように、塗料供給制御部140は、加算器141と、フィードバック制御部142と、フィードフォワード制御部143と、加算器144とを備えている。なお、
図9においては、制御される対象である、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93を、制御対象CT1としている。また、圧力センサS1,S2,S4~S8を、センサ群SG1としている。
【0085】
これらのうち、加算器141は、制御用メモリ150から読み出された圧力設定値と、センサ群SG1からの測定圧力とに基づいて、その差分を算出する部分である。この加算器141では、センサ群SG1からの測定圧力が、上記の圧力設定値と等しい場合には、差分がゼロとなる。
【0086】
また、フィードバック制御部142は、制御用メモリ150から読み出された圧力設定値となるように(すなわち、加算器141における差分がゼロとなって圧力設定値に追従するように)、制御対象CT1のフィードバック制御を実行するための圧力演算値を算出する部分である。なお、フィードバック制御部142は、制御対象CT1毎に設定された圧力設定値に基づいて、個別にフィードバック制御を行う部分である。このフィードバック制御部142では、たとえばPID制御を行うことで、各制御対象CT1が圧力設定値に対して差(偏差)をなくすように、良好に追従可能となっている。
【0087】
なお、フィードバック制御部142が、たとえばPID制御を行う場合においては、所定の比例ゲインKp、所定の微分ゲインKd、所定の積分ゲインKiを適切な値に設定することで、良好な制御が可能となっている。特に、微分ゲインKdは、オーバーシュートやダウンシュートの抑制に効果的であるので、適切な値に設定することが好ましい。
【0088】
また、フィードフォワード制御部143は、主制御部110から送信されるトリガ信号に基づいて、制御対象CT1のフィードフォワード制御を行う部分であり、上記の圧力設定値に対して圧力の変動が予期される圧力変動とは逆方向の補償圧力値で圧力演算を行う部分である。なお、このフィードフォワード制御部143では、上述した補償圧力値に関する信号を加算器144に送信する。また、上述したトリガ信号については、後述する。また、トリガ信号は、主制御部110以外の部分(たとえば、アーム制御部120、ヘッド制御部130等)から送信されても良い。
【0089】
また、加算器144は、フィードバック制御部142からのフィードバック制御に関する信号と、フィードフォワード制御部143からのフィードフォワード制御に関する信号(フィードフォワード補償)とを加算し、制御対象CT1へと送信する。
【0090】
<圧力制御に関して>
以下に、塗料供給制御部140における、圧力制御について説明する。
図10は、制御対象CT1に対して、フィードフォワード制御を行わなく、フィードバック制御のみで制御を行って、塗装ヘッド53(ノズル54)から塗料を吐出する際の、圧力変化の検証結果の一例を示すグラフである。なお、
図10では、圧電基板62を所定の周波数で駆動させた状態を示しており、縦軸は圧力(bar)、横軸は時間(s)を示している。なお、
図10で示す圧力値は、圧力センサS6で測定された圧力値となっている。
【0091】
図10から明らかなように、塗装ヘッド53から塗料の吐出を開始した直後には、ダウンシュートが発生して、ノズル54内の圧力が大幅に低下している。ここでは、たとえば、吐出前の圧力が安定した状態(吐出せずに、塗料がバイパス流路74を介して塗料循環経路71を安定的に循環している状態)と比較して、ダウンシュート量は、約2kPaとなっている。
【0092】
一方、塗装ヘッド53から塗料の吐出を停止させた直後には、オーバーシュートが発生して、吐出前の圧力が安定した状態と比較して、圧力が大幅に上昇している。ここでは、たとえば、吐出前の圧力が安定した状態と比較して、オーバーシュート量は、約1.5kPaとなっている。
【0093】
このような、フィードバック制御のみを行った場合に対して、フィードフォワード制御部143を設けて、このフィードフォワード制御部143によってフィードフォワード制御を行った場合の一例を、
図11に示す。
図11は、制御対象CT1に対して、フィードフォワード制御と共に、フィードバック制御を行って、塗装ヘッド53(ノズル54)から塗料を吐出する際の、圧力変化の検証結果の一例を示すグラフである。なお、
図11においては、圧電基板62を
図10の場合と同様に所定の周波数で駆動させた状態を示しており、縦軸は圧力(bar)、横軸は時間(s)を示している。また、
図11における圧力値も、
図10と同様に圧力センサS6で測定された圧力値となっている。
【0094】
また、
図11に示す検証結果においては、ダウンシュート量およびオーバーシュート量の双方を抑制することを狙っている。このため、ダウンシュート量の抑制を図るために、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止状態からの吐出開始時の(吐出開始に関連する)トリガ信号に基づいて、補償圧力値をフィードフォワード制御部143で算出し、その補償圧力値を、フィードフォワード制御部143からの圧力演算値と、加算器144で加算することで、制御対象CT1の制御を行っている。また、オーバーシュート量の抑制を図るために、塗装ヘッド53からの塗料の吐出状態からの吐出停止時の(吐出停止に関連する)トリガ信号に基づいて、補償圧力値をフィードフォワード制御部143で算出し、その補償圧力値を、フィードフォワード制御部143からの圧力演算値と、加算器144で加算することで、制御対象CT1の制御を行っている。
【0095】
すなわち、ダウンシュート量およびオーバーシュート量の双方を抑制するために、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせて、制御対象CT1の制御を行っている。しかしながら、
図11においては、ダウンシュート量のみの抑制を図るべく、塗装ヘッド53からの塗料の吐出開始時のトリガ信号に基づいて、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を行うようにしても良い。また、オーバーシュート量のみの抑制を図るべく、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止時のトリガ信号に基づいて、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を行うようにしても良い。
【0096】
図11においては、たとえば、吐出前の圧力が安定した状態(吐出せずに、塗料がバイパス流路74を介して塗料循環経路71を安定的に循環している状態)と比較して、ダウンシュート量は、約1kPa以下と、効果的に抑制されている。すなわち、フィードバック制御部142の他に、フィードフォワード制御部143を設け、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせて、制御対象CT1を制御することで、
図10に示す場合と比較して、ダウンシュート量を激減させている。また、
図11においては、たとえば、吐出前の圧力が安定した状態(吐出せずに、塗料がバイパス流路74を介して塗料循環経路71を安定的に循環している状態)と比較して、オーバーシュート量は、約1kPa以下と、効果的に抑制されている。すなわち、フィードバック制御部142の他に、フィードフォワード制御部143を設け、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせて、制御対象CT1を制御することで、
図10に示す場合と比較して、オーバーシュート量を激減させている。
【0097】
以上のような、
図10に示す検証結果と
図11に示す検証結果からすると、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせて、制御対象CT1を制御することで、ダウンシュート量および/またはオーバーシュート量を抑制可能となっている。
【0098】
また、
図11においては、各制御対象CT1をフィードバック制御部142およびフィードフォワード制御部143で制御する際の各ゲインの調整を図ることで、ダウンシュート量および/またはオーバーシュート量を、一層良好に抑制することが可能である。
【0099】
ここで、主制御部110からフィードフォワード制御部143に送信されるトリガ信号としては、ダウンシュート量および/またはオーバーシュート量の抑制を図る場合には、たとえば、塗装ヘッド53からの吐出開始に関する信号が挙げられる。しかしながら、トリガ信号はこれには限られず、たとえば、ロボットティーチングに基づいてロボットアームR1が作動した際の、塗装ヘッド53の移動経路上の所定位置をトリガ信号としても良い。
図12は、塗装ヘッド53の移動経路上の所定位置への到達をトリガ信号とした場合のイメージを示す図である。
【0100】
図12においては、たとえば位置センサ300での位置情報が検出されると、ロボットティーチングに基づく塗装ヘッド53の軌跡から、塗装ヘッド53の空間的な位置座標が判別可能である。したがって、塗装ヘッド53の空間的な所定の位置座標への到達に対応する位置センサ300の位置情報をトリガ信号としても良い。たとえば、塗装ヘッド53が空間的な所定の位置座標への到達から所定のタイミング後に、塗装ヘッド53からの塗料の吐出を開始する場合に、その空間的な所定の位置座標への到達を、吐出開始のトリガ信号としても良い。また、塗装ヘッド53が空間的な所定の位置座標への到達から所定のタイミング後に、塗装ヘッド53からの塗料の吐出を停止する場合においても、その空間的な所定の位置座標への到達を、吐出停止のトリガ信号としても良い。
【0101】
なお、
図12においては、車両FRのハッチング部分への塗装を行う場合について、各塗装パスにおけるトリガ信号の位置を示している。位置P11から塗装ヘッド53が位置P14に向けて移動を開始する塗装パスにおいて、位置P12に到達したときの位置センサ300の位置情報をトリガ信号として、ダウンシュートの抑制を図るようにし、さらに塗装が終了する直前である位置P13に到達したときの位置センサ300の位置情報をトリガ信号として、オーバーシュートの抑制を図るようにしている。
【0102】
そして、位置P14から位置P21へ移動し、その後、位置P21から塗装ヘッド53が位置P14に向けて移動を開始する塗装パスにおいて、位置P22に到達したときの位置センサ300の位置情報をトリガ信号として、ダウンシュートの抑制を図るようにし、さらに塗装が終了する直前である位置P23に到達したときの位置センサ300の位置情報をトリガ信号として、オーバーシュートの抑制を図るようにしている。
【0103】
同様に、位置P24、位置P34、位置P44、位置P54、および位置P64から、それぞれ位置P21、位置P31、位置P41、位置P51、位置P61および位置P71へ移動し、その後、位置P31、位置P41、位置P51、位置P61および位置P71から塗装ヘッド53がそれぞれ位置P34、位置P44、位置P54、位置P64および位置P74に向けて移動を開始する塗装パスにおいて、位置P32、位置P42、位置P52、位置P62および位置P72に到達したときの位置センサ300の位置情報をトリガ信号として、ダウンシュートの抑制を図るようにし、さらに塗装が終了する直前である位置P33、位置P43、位置P53、位置P63および位置P73に到達したときの位置センサ300の位置情報をトリガ信号として、オーバーシュートの抑制を図るようにしている。
【0104】
なお、実際の塗装においては、塗装ヘッド53から塗料の液滴の吐出を停止して、オーバーシュートが生じても、以後、所定の間は塗料の液滴を吐出しないので、ダウンシュートの抑制が効果的である。したがって、
図12においては、位置P13、位置P23、位置P33、位置P43、位置P53、位置P63および位置P73に到達したときの位置センサ300の位置情報をトリガ信号として、オーバーシュートの抑制を図るようにしなくても良い。
【0105】
また、
図13に示すように、ロボットアームR1が角度θ1傾くような姿勢が変化して、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93の高低差が急激に変化すると、上記のようなダウンシュートやオーバーシュートの発生の原因となる。そこで、たとえば、ロボットティーチングに基づいて、ロボットアームR1の姿勢が所定のタイミング後に変化することを、塗装ヘッド53の空間的な所定の位置座標への到達に対応する位置センサ300の位置情報から予測できる場合、位置センサ300での所定位置への到達の検出を、トリガ信号としても良い。また、たとえば、ロボットティーチングに基づいて、ロボットアームR1の姿勢が所定のタイミング後に変化することを、傾きセンサ310での傾斜角度の情報から予測できる場合、傾きセンサ310での所定の傾斜角度への到達の検出を、トリガ信号としても良い。
【0106】
なお、
図13では、ロボットアームR1の姿勢変化によって、塗装ヘッド53が傾斜した場合を示しているが、塗装ヘッド53が傾斜しないもののロボットアームR1の姿勢変化が生じた場合においても、上記と同様にトリガ信号を設定することが可能である。
【0107】
(2.効果について)
以上のように、車両FRの塗装を行う塗装ロボット10は、塗料の液滴を吐出する複数のノズル54と、駆動することでノズル54から液滴を押し出すための圧電基板62を備える塗装ヘッド53を備える塗装ヘッドユニット50と、塗装ヘッドユニット50を先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニット50を所望の位置へ移動させるロボットアームR1と、ロボットアームR1と塗装ヘッドユニット50の間に亘って設けられている塗料供給機構70と、ロボットアームR1および塗料供給機構70の駆動を制御する制御部100と、を備える。
【0108】
そして、塗料供給機構70は、ロボットアームR1と塗装ヘッドユニット50の間に亘って設けられ、塗料を塗装ヘッド53に対して供給しつつ当該塗装ヘッド53から吐出されなかった塗料を回収する塗料循環経路71と、この塗料循環経路71の中途に設けられると共に、塗料の貯留部位と塗装ヘッド53の間での塗料の供給および回収を行う供給ポンプ90および/または吸引ポンプ91(塗料移送手段)と、塗料循環経路71の中途に設けられると共に、当該塗料循環経路71の内部流路の開閉を調整可能な第1ペイントレギュレータ92および/または第2ペイントレギュレータ93(調整弁)と、を備えていて、制御部100は、圧力設定値が記憶されている制御用メモリ150と、制御用メモリ150から読み出された圧力設定値となるように供給ポンプ90および/または吸引ポンプ91(塗料移送手段)の作動のフィードバック制御を実行するための圧力演算値を算出して供給ポンプ90および/または吸引ポンプ91(塗料移送手段)と第1ペイントレギュレータ92および/または第2ペイントレギュレータ93(調整弁)の少なくとも一方の作動を制御するフィードバック制御部142と、塗装ヘッド53の状態変化に関連するトリガ信号に基づいて、圧力設定値に対して圧力の変動が予期される圧力変動とは逆方向の補償圧力値で圧力演算値を補正して供給ポンプ90および/または吸引ポンプ91(塗料移送手段)と第1ペイントレギュレータ92および/または第2ペイントレギュレータ93(調整弁)の少なくとも一方の作動を制御するフィードフォワード制御部143と、を備えている。
【0109】
このように、制御部100は、フィードバック制御部142と、フィードフォワード制御部143を備えている。このため、供給ポンプ90および/または吸引ポンプ91(塗料移送手段)と、第1ペイントレギュレータ92および/または第2ペイントレギュレータ93(調整弁)の少なくとも一方を、圧力設定値となるようにフィードバック制御する際に、ダウンシュートやオーバーシュートといった、圧力変動が予想される場合には、フィードフォワード制御部143で圧力変動とは逆方向の補償圧力値の演算を行い、この補償圧力値で圧力演算値を補正することで、圧力変動を抑制することが可能となる。
【0110】
このため、ダウンシュートやオーバーシュートといった、圧力変動の影響を低減することが可能となる。それにより、たとえば塗料を塗装ヘッド53から吐出する際の吐出圧力を安定化させることができ、連続的に塗料吐出を行うことも可能となる。すなわち、塗装ヘッド53内の圧力の低下による、塗料の不吐出を含む不安定な塗料の吐出状態となったり、塗装ヘッド53内の圧力の上昇によって、塗料がノズル54から溢れる等の不具合が生じるのを防止することが可能となる。それにより、塗装ヘッド53のノズル形成面52が汚れたり、次の車両等の塗装を行えない等の不具合を防止することが可能となる。
【0111】
また、本実施の形態では、塗料循環経路71は、塗装ヘッド53に向けて塗料を供給する塗料供給路72と、塗装ヘッド53の塗料排出側に接続され、ノズル54から吐出されなかった塗料を回収する戻り流路73と、を備える。そして、塗料移送手段は、ロボットアームR1の所定位置に搭載され、塗料供給路72の中途に設けられると共に、制御部100での制御に基づいて塗装ヘッド53に向けて塗料を供給するための圧力を印加する供給ポンプ90(塗料供給手段)と、ロボットアームR1の所定位置に搭載され、戻り流路73の中途に設けられると共に、制御部100での制御に基づいて塗装ヘッド53から吐出されなかった塗料を回収するための圧力を戻り流路73の下流側に印加する吸引ポンプ91(塗料回収手段)と、を備え、フィードフォワード制御部143は、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、供給ポンプ90(塗料供給手段)を駆動増加させる側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、供給ポンプ90(塗料供給手段)を作動させることができる。
【0112】
このように、供給ポンプ90(塗料供給手段)に対して、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、フィードフォワード制御部143で補償圧力値の演算を行い、その補償圧力値で圧力演算値を補正するといった、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせ制御を行うことで、塗料の吐出開始時の圧力低下の影響を低減することが可能となる。
【0113】
また、本実施の形態では、フィードフォワード制御部143は、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、吸引ポンプ91(塗料回収手段)を駆動減少側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、吸引ポンプ91(塗料回収手段)を作動させることができる。
【0114】
このように、吸引ポンプ91(塗料回収手段)に対して、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、フィードフォワード制御部143で補償圧力値の演算を行い、その補償圧力値で圧力演算値を補正するといった、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を行うことで、塗料の吐出開始時の圧力低下の影響を低減することが可能となる。
【0115】
また、本実施の形態では、フィードフォワード制御部143は、塗装ヘッド53からの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、供給ポンプ90(塗料供給手段)を駆動停止させる側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、供給ポンプ90(塗料供給手段)を作動させることができる。
【0116】
このように、供給ポンプ90(塗料供給手段)に対して、塗装ヘッド53からの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、フィードフォワード制御部143で補償圧力値の演算を行い、その補償圧力値で圧力演算値を補正するといった、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を行うことで、塗料の吐出停止時の圧力低下の影響を低減することが可能となる。
【0117】
また、本実施の形態では、フィードフォワード制御部143は、塗装ヘッド53からの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、吸引ポンプ91(塗料回収手段)を駆動増加させる側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、吸引ポンプ91(塗料回収手段)を作動させることができる。
【0118】
このように、吸引ポンプ91(塗料回収手段)に対して、塗装ヘッド53からの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、フィードフォワード制御部143で補償圧力値の演算を行い、その補償圧力値で圧力演算値を補正するといった、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を行うことで、塗料の吐出停止時の圧力低下の影響を低減することが可能となる。
【0119】
また、本実施の形態では、調整弁は、供給ポンプ90(塗料供給手段)よりも塗料供給路72の下流側に設けられると共に、制御部100での制御に基づいて塗装ヘッド53に向かう塗料の圧力を調整する第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)と、吸引ポンプ91(塗料回収手段)よりも戻り流路73の上流側に設けられると共に、制御部100での制御に基づいて塗装ヘッド53から回収される塗料の圧力を調整する第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)と、を備える。そして、フィードフォワード制御部143は、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止状態からの吐出開始または塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、補償圧力値で圧力演算値を補正して、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)と第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の少なくとも一方の作動を制御することができる。
【0120】
このように、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、または塗装ヘッド53からの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、フィードフォワード制御部143で補償圧力値の演算を行い、その補償圧力値で圧力演算値を補正するといった、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)と第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の少なくとも一方に対して行うことで、塗料の吐出開始時の圧力低下の影響を低減することが可能となる。
【0121】
また、本実施の形態では、フィードフォワード制御部143は、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)を開く側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)を作動させることができる。
【0122】
このように、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)に対して、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、フィードフォワード制御部143で補償圧力値の演算を行い、その補償圧力値で圧力演算値を補正するといった、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を行うことで、塗料の吐出開始時の圧力低下の影響を低減することが可能となる。
【0123】
また、本実施の形態では、フィードフォワード制御部143は、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)を閉じる側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、第2調整弁を作動させることができる。
【0124】
このように、第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)に対して、塗装ヘッド53からの塗料の吐出停止状態からの吐出開始に関連するトリガ信号に基づいて、フィードフォワード制御部143で補償圧力値の演算を行い、その補償圧力値で圧力演算値を補正するといった、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を行うことで、塗料の吐出開始時の圧力低下の影響を低減することが可能となる。
【0125】
また、本実施の形態では、フィードフォワード制御部143は、塗装ヘッド53からの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)を閉じる側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)を作動させることができる。
【0126】
このように、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)に対して、塗装ヘッド53からの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、フィードフォワード制御部143で補償圧力値の演算を行い、その補償圧力値で圧力演算値を補正するといった、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を行うことで、塗料の吐出停止時の圧力上昇の影響を低減することが可能となる。
【0127】
また、本実施の形態では、フィードフォワード制御部143は、塗装ヘッド53からの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)を開く側に補正する補償圧力値で圧力演算値を補正して、第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)を作動させることができる。
【0128】
このように、第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)に対して、塗装ヘッド53からの塗料の吐出状態からの吐出停止に関連するトリガ信号に基づいて、フィードフォワード制御部143で補償圧力値の演算を行い、その補償圧力値で圧力演算値を補正するといった、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を行うことで、塗料の吐出停止時の圧力上昇の影響を低減することが可能となる。
【0129】
また、本実施の形態では、フィードフォワード制御部143は、塗装ヘッド53の姿勢変化に関連するトリガ信号に基づいて、圧力設定値に対して圧力の変動が予期される圧力変動とは逆方向の補償圧力値で圧力演算値を補正して塗料移送手段と調整弁の少なくとも一方の作動を制御することができる。
【0130】
このように、塗装ヘッド53の姿勢変化に関連するトリガ信号に基づいて、フィードフォワード制御部143で補償圧力値の演算を行い、その補償圧力値で圧力演算値を補正するといった、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を行うことで、塗装ヘッド53の姿勢変化が生じた際の圧力変動の影響を低減することが可能となる。
【0131】
(3.変形例について)
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態以外に、種々変形可能である。以下に、変形例について説明する。
【0132】
上述した実施の形態では、圧力センサS1~S8と、第1流量計FM1、第2流量計FM2を備える構成を採用している。しかしながら、第1流量計FM1および第2流量計FM2を備える場合には、圧力センサS1~S8のうち少なくとも1つを省略しても良く、圧力センサS1~S8を備える場合には、第1流量計FM1と第2流量計FM2のうち少なくとも1つを省略しても良い。
【符号の説明】
【0133】
10…塗装ロボット、11…塗装ロボットシステム、20…ロボット本体、21…基台、22a…第1回転軸、22b…第2回転軸、22c…第3回転軸、22d…第4回転軸、22e…第5回転軸、22f…第6回転軸、24…第1回動アーム、25…第2回動アーム、26…回転アーム、27…リスト部、50…塗装ヘッドユニット、52…ノズル形成面、53…塗装ヘッド、54…ノズル、55…ノズル列、55A…第1ノズル列、55B…第2ノズル列、57…供給側大流路、58…列方向供給流路、59…ノズル加圧室、59a…ノズル供給流路、59b…ノズル排出流路、60…列方向排出流路、61…排出側大流路、62…圧電基板、63a…圧電セラミック層、63b…圧電セラミック層、64…共通電極、65…個別電極、70…塗料供給機構、71…塗料循環経路、72…塗料供給路、73…戻り流路、74…バイパス流路、75…外部供給路、76…気泡除去部材、77…三方弁、78…開閉弁、79…三方弁、80…切替弁、81…排出路、90…供給ポンプ(塗料供給手段に対応)、91…吸引ポンプ(塗料回収手段に対応)、92…第1ペイントレギュレータ(第1調整弁に対応)、93…第2ペイントレギュレータ(第2調整弁に対応)、94…脱気モジュール、95…除去フィルタ、96…吸引管路、97…真空ポンプ、100…制御部、110…主制御部、120…アーム制御部、130…ヘッド制御部、140…塗料供給制御部、141,144…加算器、142…フィードバック制御部、143…フィードフォワード制御部、150…制御用メモリ、200…画像処理装置、210…画像処理部、220…メモリ、300…位置センサ、310…傾きセンサ(角度検出手段に対応)、FM1…第1流量計、FM2…第2流量計、FR…車両、PS…塗装パス、R1…ロボットアーム、S1~S8…圧力センサ
【要約】
【課題】塗料の吐出または吐出停止の際における、圧力変動の影響を低減することが可能な塗装ロボットを提供する。
【解決手段】塗装ロボット10は、塗装ヘッドユニット50を先端に装着するロボットアームR1と、ロボットアームR1と塗装ヘッドユニット50の間に亘って設けられる塗料供給機構70と、制御部100とを備え、塗料供給機構70は、塗料循環経路71と、塗料循環経路71の中途に設けられる塗料移送手段90,91(制御対象)および調整弁92,93(制御対象)と、を備え、制御部100は、制御対象の作動のフィードバック制御を実行するための圧力演算値を算出して制御対象の作動を制御するフィードバック制御部142と、塗装ヘッド53の状態変化に関連するトリガ信号に基づき、圧力設定値に対して圧力変動の予想とは逆方向の補償圧力値で圧力演算値を補正して制御対象の作動を制御するフィードフォワード制御部143とを備える。
【選択図】
図8