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特許7169486非水系インク組成物、インクセット、それを用いた記録方法、記録物の製造方法、記録物、及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】非水系インク組成物、インクセット、それを用いた記録方法、記録物の製造方法、記録物、及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20221102BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20221102BHJP
【FI】
C09D11/037
C09D11/322
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022113897
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2022035864の分割
【原出願日】2022-03-09
【審査請求日】2022-07-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】山崎 史絵
(72)【発明者】
【氏名】吉森 圭士郎
(72)【発明者】
【氏名】折笠 由佳
(72)【発明者】
【氏名】田村 充功
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177597(JP,A)
【文献】特開2009-227812(JP,A)
【文献】特開2009-227813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、界面活性剤と、前記顔料分散剤及び前記界面活性剤とは異なる樹脂と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物であって、
前記顔料は、式(1)で示される顔料Aを含有し、
前記顔料分散剤の含有量は、前記顔料の含有量よりも小さく、
前記樹脂の含有量は、前記顔料分散剤の含有量よりも大きく、
前記樹脂の含有量は、前記顔料と前記顔料分散剤と前記界面活性剤との含有量の合計よりも大きい、
非水系インク組成物。
【化1】
(式(1)中、X1~X10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐してもよいアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【請求項2】
前記顔料に対する、前記顔料分散剤の含有量の比が0.6未満である、
請求項1に記載の非水系インク組成物。
【請求項3】
前記樹脂の含有量は、前記顔料の含有量よりも大きい、
請求項1又は2に記載の非水系インク組成物。
【請求項4】
前記顔料の含有量が1.0質量%以上である、
請求項1から3のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【請求項5】
(前記顔料分散剤の含有量)/(前記樹脂の含有量)が0.8未満である、
請求項1からのいずれかに記載の非水系インク組成物。
【請求項6】
前記樹脂の含有量は、前記顔料と前記顔料分散剤との含有量の合計よりも大きい、
請求項1からのいずれかに記載の非水系インク組成物。
【請求項7】
(前記顔料分散剤と前記界面活性剤との合計含有量)/(前記樹脂の含有量)が0.3以上1.0未満である、
請求項6に記載の非水系インク組成物。
【請求項8】
前記顔料Aの含有量は、
前記非水系インク組成物全量中0.1質量%以上8.0質量%以下である、
請求項1から7のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【請求項9】
前記インク組成物中の水の含有量が、0.5質量%以下である、
請求項1から8のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の非水系インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する、
記録方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の非水系インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する、
記録物の製造方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれかに記載の非水系インク組成物を少なくとも備える、
インクセット。
【請求項13】
請求項1から9のいずれかに記載の非水系インク組成物の印刷層が基材の表面に形成された、
記録物。
【請求項14】
請求項1から9のいずれかに記載の非水系インク組成物が充填された収容容器が搭載された、
インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系インク組成物、インクセット、それを用いた記録方法、記録物の製造方法、記録物、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク組成物として、水、又は水と有機溶剤との混合液に色材を溶解又は分散させた水性インク組成物や水を含有しない有機溶剤に色材を溶解又は分散させた非水系インク組成物が広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、顔料としてジケトピロロピロール系顔料を含有する顔料と有機溶剤と無機金属とを含む非水系インク組成物であって、所定量の金属元素を含む非水系インク組成物が開示されている。特許文献1によれば、この非水系インク組成物は、得られる記録物の彩度に優れ、かつ優れた保存安定性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-132891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ジケトピロロピロール系顔料は耐候性を有することから、ジケトピロロピロール系顔料を含有するインク組成物は、特に屋外で用いられる記録物の製造に適している。
【0006】
ところが、ジケトピロロピロール系顔料を含有する非水系インク組成物は、吐出性や保存安定性が悪くなりやすく、得られる印刷物の印字表面の光沢性や塗膜耐性が低下する等の、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たさなくなる場合があることが本発明者の研究により明らかとなった。
【0007】
本発明は、ジケトピロロピロール系顔料を含む非水系インク組成物であってもインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として好適に使用することのできる非水系インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、顔料及び顔料分散剤の含有量を所定の範囲にすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、樹脂と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物であって、
前記顔料は、式(1)で示される顔料Aを含有し、
前記顔料分散剤の含有量は、前記顔料の含有量よりも小さい、
非水系インク組成物。
【化1】
(式(1)中、X1~X10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐してもよいアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【0010】
(2) 前記樹脂の含有量は、前記顔料の含有量よりも大きい、
(1)に記載の非水系インク組成物。
【0011】
(3) 前記顔料の含有量が1.0質量%以上である、
(1)又は(2)に記載の非水系インク組成物。
【0012】
(4) 前記樹脂の含有量は、前記顔料分散剤の含有量よりも大きい、
(1)から(3)のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【0013】
(5) ((前記顔料分散剤の含有量)/(前記樹脂の含有量))が0.8未満である、
(1)から(4)のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【0014】
(6) 前記樹脂の含有量は、前記顔料と前記顔料分散剤との含有量の合計よりも大きい、
(1)から(5)のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【0015】
(7) 前記樹脂の含有量は、前記顔料と前記顔料分散剤と界面活性剤との含有量の合計よりも大きい、
(1)から(6)のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【0016】
(8) ((前記顔料分散剤と前記界面活性剤との合計含有量)/(前記樹脂の含有量))が0.3以上1.0未満である、
(1)から(7)のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【0017】
(9) 前記顔料Aの含有量は、
前記非水系インク組成物全量中0.1質量%以上8.0質量%以下である、
(1)から(8)のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【0018】
(10) 前記インク組成物中の水の含有量が、0.5質量%以下である、
(1)から(9)のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【0019】
(11) (1)から(10)のいずれかに記載の非水系インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する、記録方法。
【0020】
(12) (1)から(10)のいずれかに記載の非水系インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する、記録物の製造方法。
【0021】
(13) (1)から(10)のいずれかに記載の非水系インク組成物を少なくとも備える、インクセット。
【0022】
(14) (1)から(10)のいずれかに記載の非水系インク組成物の印刷層が基材の表面に形成された、記録物。
【0023】
(15) (1)から(10)のいずれかに記載の非水系インク組成物が充填された収容容器が搭載された、インクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明の非水系インク組成物は、顔料としてジケトピロロピロール系顔料を含む顔料を使用してもインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0026】
≪1.非水系インク組成物≫
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、樹脂と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物である。ここで、「非水系インク組成物」とは、水を主成分とする水性インク組成物とは異なり、水を意図的に含有させずに製造された有機溶剤を含むインク組成物であることを意味する。
【0027】
そしてこの非水系インク組成物に含有される顔料は、下記式(1)で示される顔料Aを含有し、非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の含有量は、非水系インク組成物に含まれる顔料の含有量よりも小さいことを特徴としている。
【0028】
【化2】
((式(1)中、X1~X10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐してもよいアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO-M+、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【0029】
そして、顔料分散剤の含有量は、顔料の含有量よりも小さい(顔料の含有量未満である)ことにより、得られる印刷物の印字表面の光沢性や塗膜耐性が向上する等のインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが可能となる。
【0030】
本実施の形態に係る非水系インク組成物における水分の含有量は、非水系インク組成物全量中0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量以下%であることがより好ましく、0.1質量%であることがさらに好ましい。顔料Aは疎水性が高いため、この顔料を含む非水系インクジェット組成物は、水との接触により比較的容易に顔料の分散性が悪化しやすく、保存安定性が悪化しやすい。非水系インク組成物中に水分の含有量を低減してできるだけ水分を含まないようにすること(水分を意図的に含まないようにすること)で、保存安定性、クリーニング回復性等を向上させることが可能となる。
【0031】
次に、本実施の形態に係る非水系インク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0032】
[顔料]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は顔料を含有する。そして、この顔料は、下記式(1)で示される顔料Aを含有することを特徴としている。
【0033】
【化3】
((式(1)中、X1~X10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐してもよいアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO-M+、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【0034】
このような顔料Aは、耐候性を有しているため、顔料Aを含有する非水系インク組成物により得られる印刷物についても耐候性を向上させることができる。しかも顔料分散剤の含有量が顔料の含有量よりも小さいことにより、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが可能となる。
【0035】
顔料Aにおける分子構造中のベンゼン環中の置換基(X1~X10)は適宜変更させてもよい。置換基(X1~X10)の種類を変更する方法は、顔料を有機溶剤中に分散させ、特定の置換基を導入可能な添加剤により所望の置換基を導入する方法が挙げられる。例えば、特許2993392号に記載された方法により調製することができ、ベンゼン環中の置換基(X1~X10)の種類を変更する場合、ベンゼン環の10個のいずれの置換位置であればよく特に限定されず、置換基の数も特に限定されない。
【0036】
顔料Aの平均粒子径は、特に限定されないが、体積基準累積90%粒子径D90の上限は、500nm以下であることが好ましく、450nm以下であることが好ましく、400nmであることがより好ましい。これにより、保存安定性が向上し、インクジェット吐出性が良好なものとなり、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物としてより好適に使用することができるものとなる。体積基準累積90%粒子径D90の下限は、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることが好ましい。顔料Aの体積基準累積90%粒子径D90がこのような範囲であることで、非水系インク組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0037】
なお、本明細書において「体積基準累積90%粒子径D90」とは、小径側から計算した累積体積が90%となる粒子径を意味する。「体積基準累積90%粒子径D90」の測定は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE、大塚電子(株)製粒径測定装置FPAR-1000、等が例示される)を用いることができる。
【0038】
顔料Aの含有量は、特に制限されないが、顔料Aの含有量の下限は、非水系インク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることが特に好ましく、3.0質量%以上であることが最も好ましい。顔料Aの含有量が非水系インク組成物全量中0.1質量%以上であることで、印字濃度を向上させることが可能となり、他の色の非水系インク組成物と組み合わせることで得られる記録物の色再現域を高くすることができる。また、顔料Aの含有量の上限は、8.0質量%以下であることが好ましく、6.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。顔料Aの含有量が非水系インク組成物全量中8.0質量%以下であることで、相対的に他の添加材の含有量を増やすことが可能となり、顔料Aの分散安定性が向上し、さらに顔料Aの含有量を増加することによる粘度の上昇を抑制できるのでインクジェットヘッドのノズル目詰まりを抑制することができる。
【0039】
式(1)で示される顔料Aとしては、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド283、C.I.ピグメントレッド291、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントオレンジ81等を挙げることができる。また、式(1)で示される顔料Aは、合成してもよく、例えば、市販品のジケトピロロピロール系顔料を溶液(酸溶液、アルカリ溶液、若しくは中性の溶液)で洗浄することにより、顔料の表面を処理するか、若しくは式(1)の構造中のベンゼン環中の置換基(X1~X10)の種類を変更するか、又はその両方の処理を施すことにより入手してもよい。市販品としては、BASF社製のIRGAPHOR RED BT-CF、CROMOPHTAL DPP Red BP(いずれもC.I.ピグメントレッド254)、大日精化工業社製のクロモファインレッド6156EC(いずれもC.I.ピグメントレッド254)、東京化成工業社製のPigmentRed254(C.I.ピグメントレッド254)、CINIC社製のCinilexDPP Red SR-2P(C.I.ピグメントレッド254)、BASF社製のCROMOPHTAL DPP ORANGE TR、IRAGIN ORANGE D2905、(C.I.ピグメントオレンジ71)、BASF社製のIrgazin Orange L 2990 HD(C.I.ピグメントオレンジ73)等が挙げられる。
【0040】
また、本実施の形態に係る非水系インク組成物は、上述の顔料A以外の色材(顔料・染料を含む)をさらに含有してもよい。そのような色材としては顔料Aと類似する色相(例えば、オレンジ、マゼンタ、イエロー、レッド)の顔料及び染料が挙げられる。この場合、顔料Aを含む全顔料の含有量が1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることが特に好ましく、3.0質量%以上であることが最も好ましい。
【0041】
上述の顔料A以外の有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214、C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57:1、97、112、122、123、146、149、150、168、177、180、184、192、202、206、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、269、291、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、71、73、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0042】
非水系インク組成物に含まれる顔料全量中、上述の顔料Aの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0043】
[顔料分散剤]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は顔料分散剤を含有する。そして、顔料分散剤の含有量は、非水系インク組成物に含有される顔料の含有量よりも小さいことを特徴としている。これにより、非水系インク組成物に含まれるジケトピロロピロール系顔料の凝集を抑制することが可能となり、得られる印刷物の印字表面の光沢性が向上する等のインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが可能となる。
【0044】
顔料分散剤の含有量は、非水系インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。顔料分散剤の含有量は、非水系インク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましく、1.0質量%以上であることが最も好ましい。
【0045】
顔料分散剤としては、非水系インク組成物において用いられている任意の分散剤を用いることができる。顔料分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましい。高分子分散剤としては、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有するものである。これらの中でも、高分子分散剤としてポリカプロラクトン系高分子分散剤を含むものを使用することにより、非水系インク組成物に含まれるジケトピロロピロール系顔料の凝集をより効果的に抑制することが可能となる。
【0046】
ポリアクリル系分散剤では、例えば、Disperbyk-2000、2001、2008、2009、2010、2020、2020N、2022、2025、2050、2070、2095、2150、2151、2155、2163、2164、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151(ビック・ケミー社製)、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PA4401、4402、PA4403、4570、7411、7477、PX4700、PX4701(BASF社製)、TREPLUS D-1200、D-1410、D-1420、MD-1000(大塚化学社製)、フローレンDOPA-15BHFS、17HF、22、G-700、900、NC-500、GW-1500(共栄社化学(株)製)、などが用いられる。ポリカプロラクトン系分散剤では、例えば、アジスパーPB821、PB822、PB881(味の素ファインテクノ(株)製)、ヒノアクトKF-1000、T-6000、T-7000、T-8000、T-8000E、T-9050(川研ファインケミカル(株)製)、Solsperse20000、24000、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34000、35200、36000、37500、39000、71000、76400、76500、86000、88000、J180、J200(ルーブリゾール社製)、TEGO Dispers652、655、685、688、690(エボニック・ジャパン社製)などが用いられる。好ましい分散剤としては、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PX4700、PX4701、Solsperse20000、24000、32000、33000、33500、34000、35200、39000、71000、76500、86000、88000、J180、J200、TEGO Dispers655、685、688、690などが用いられる。これらの単独、又はそれらの混合物を用いることができる
【0047】
特に顔料Aにおける分子構造中のベンゼン環中の置換基(X1~X10)を酸性~弱塩基性を示すようになる置換基を導入した場合には、上記の中でも塩基性基を有する顔料分散剤を使用することが好ましい。塩基性基を有する顔料分散剤を使用することで非水系インク組成物中での顔料Aの凝集を抑制することができる。
【0048】
この中でもアミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲の顔料分散剤を使用することが好ましい。非水系インク組成物中での顔料Aの凝集をさらに効果的に抑制することができる。特に顔料AのpHが8以下である場合(好ましくはpHが7以下である場合)には、顔料Aの表面にアミン価が所定範囲の顔料分散剤がより付着されやすくなるので、非水系インク組成物中での顔料Aの凝集を効果的に抑制することが可能となる。
【0049】
また、これらの顔料分散剤は、重量平均分子量が1,000以上であることが好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。高分子量の顔料分散剤によって顔料Aの凝集を効果的に抑制することが可能となり、非水系インク組成物中での顔料Aの凝集を効果的に抑制することが可能となり、非水性インク組成物の保存安定性が良好なものとすることが可能となる。さらに印刷物の塗膜耐性も良好なものとすることが可能となる。
【0050】
[分散助剤]
本実施の形態に係る非水系インク組成物において必要に応じて分散助剤を用いてもよい。分散助剤は色材(顔料)の表面に吸着し、官能基が非水系インク組成物中の有機溶剤や分散剤との親和力を高め、分散安定性を向上させる。分散助剤としては、上記に記載された顔料の誘導体が好ましく、有機顔料残基に酸性基、塩基性基、中性基などの官能基を有する公知の顔料誘導体を用いることができる。
【0051】
[樹脂]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、樹脂を含有する。顔料分散剤の含有量が顔料の含有量未満であることに加え、樹脂を含有することにより、非水系インク組成物に含まれるジケトピロロピロール系顔料の凝集を抑制することが可能となり、得られる印刷物の印字表面の耐擦過性が向上する等のインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが可能となる。さらに、樹脂を含有することにより、非水系インク組成物により形成される記録層の定着性、耐水性並びに延伸性を向上させることができる。
【0052】
樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シリコーン(シリコン)系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂や混合物を用いることができる。この中でも、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂を含むものが好ましい。
【0053】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成するモノマーの主成分として含むものであれば特に限定されるものではない。アクリル系樹脂は、1種のラジカル重合性モノマーの単独重合体であってもよいし、ラジカル重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであってもよく、特に、本実施の形態に係る非水系インク組成物として好ましいアクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル単独の重合体、或いは、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エトキシエチル、及びメタクリル酸ベンジルよりなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物との共重合体である。又、市販の(メタ)アクリル樹脂としては、例えばロームアンドハース社の「パラロイドB99N」「パラロイドB60」「パラロイドB66」「パラロイドB82」等が例示される。
【0054】
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルモノマーからなる単独重合体であっても重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであってもよい。塩化ビニル系樹脂の共重合体としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂が挙げられる。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂は、塩化ビニル単量体及び酢酸ビニル単量体の重合物である。塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、例えば、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ヒドロキシアルキルアクリレート共重合体など、及びそれらの混合物が挙げられる。上記の塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、日信化学工業(株)社から「ソルバインC、CL、CNL、CLL、CLL2、C5R、TA2、TA3、A、AL、TA5R、M5」等の商品名で入手して使用することができる。
【0055】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂は塩化ビニル単量体及び酢酸ビニル単量体を重合することにより得ることができる。重合する方法は、従来公知の重合方法であればよい。重合する方法は、乳化重合または懸濁重合であることが好ましく、懸濁重合であることがより好ましい。
【0056】
セルロース系樹脂とは、セルロースを原料として生物的または化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する樹脂である。例えば、セルロース系樹脂としては、例えばセルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂などのセルロースアセテートアルキレート樹脂、セルロースアセテート樹脂、ニトロセルロース樹脂及びそれらの混合物が挙げられる。上記セルロース樹脂としてはEASTMAN社の「CAB551-0.01」「CAB551-0.2」、「CAB553-0.4」、「CAB531-1」、「CAB381-0.1」、「CAB381-0.5」、「CAB381-2」、「CAB381-20」「CAP504」、「CAP482-0.5」等の商品名で入手して使用することができる。
【0057】
ポリエステル系樹脂とは、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる構成単位を少なくとも含むものである。ポリエステル系樹脂は、変性されたポリエステル系樹脂を含んでもよい。ポリエステル系樹脂としては、東洋紡社の「VYLON226」、「VYLON270」、「VYLON560」、「VYLON600」、「VYLON630、「VYLON660」、「VYLON885」、「VYLONGK250」、「VYLONGK810」、「VYLON GK890」等やユニチカ社の「elitleUE-3200」「elitleUE-3285」、「elitleUE-3320」、「elitleUE-9800」、「elitleUE-9885」等の商品名で入手して使用することができる。
【0058】
ポリウレタン系樹脂とは、アルコール成分とイソシアネート成分を共重合させて得られる構成単位を少なくとも含むものである。ポリウレタン系樹脂は、ポリエステルやポリエーテルやカプロラクトンにより変性されたポリウレタン系樹脂を含んでもよい。上記のポリウレタン系樹脂としては、荒川化学工業社の「ユリアーノKL-424」、「ユリアーノKL-564」、「ユリアーノKL-593」、「ユリアーノ3262」等やDIC社の「パンデックス372E」、「パンデックス390E」、「パンデックス394E」、「パンデックス304」、「パンデックス305E」、「パンデックスP-870」、「パンデックスP-910」、「パンデックスP-895」、「パンデックス4030」、「パンデックス4110」等の商品名で入手して使用することができる。
【0059】
また、これらのアクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂は、単独で使用してもよいが、2種を混合して使用することが好ましく、アクリル系樹脂と塩化ビニル系樹脂と、を混合した樹脂を使用することがより好ましい。アクリル系樹脂と塩化ビニル系樹脂との含有比率により、非水系インク組成物に要求される発色、乾燥性、塗膜物性、印字適性などの要求を満たすように制御することができる。アクリル系樹脂と塩化ビニル系樹脂と、を混合する場合、混合比は特に制限されるものではなく、適宜変更することができる。
【0060】
また、これらの樹脂は、重量平均分子量が10,000以上であることが好ましく、15,000以上がより好ましく、20,000以上がさらに好ましく、25,000以上がさらにより好ましい。得られる印刷物の印字表面の耐擦性を良好なものにすることが可能となる。樹脂分子量を絶対分子量|Mw|で表す場合には、20,000以上が好ましく、25,000以上がさらに好ましく30,000以上がさらにより好ましい。得られる印刷物の塗膜耐性が、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが可能となる。
【0061】
本実施の形態に係る非水系インク組成物における樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、非水系インク組成物全量中0.05質量%以上の範囲で含有することが好ましく、0.1質量%以上の範囲で含有することがより好ましく、0.5質量%以上の範囲で含有することがさらに好ましい。これにより、得られる記録物の表面乾燥性をさらに向上させることができる。非水系インク組成物に含有される樹脂は、非水系インク組成物全量中20.0質量%以下の範囲で含有することが好ましく、15.0質量%以下の範囲で含有することがより好ましく、10.0質量%以下の範囲で含有することがさらに好ましい。これにより、インクジェットヘッドのノズル内での詰まりをより効果的に解消し、非水系インク組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0062】
顔料分散剤の含有量は、全顔料の含有量よりも小さいことが好ましい。また、顔料分散剤の含有量は、顔料Aの含有量よりも小さいことが好ましい。これにより、得られる印刷物の印字表面の光沢性がさらに向上するとともに、発色性や耐擦過性や耐溶剤性が優れたものとなり、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性をさらに満たすものとなる。非水系インク組成物中の、全顔料または顔料Aの含有量に対する、顔料分散剤の含有量の比(顔料分散剤/全顔料、顔料分散剤/顔料A)は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.7未満が更に好ましく、0.6未満が特に好ましい。下限値は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい。
【0063】
樹脂の含有量は、全顔料の含有量よりも大きいことが好ましい。また、樹脂の含有量は、顔料Aの含有量よりも大きいことが好ましい。非水系インク組成物中の、全顔料または顔料Aの含有量に対する、顔料分散剤の含有量の比(顔料分散剤/全顔料、顔料分散剤/顔料A)は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.7未満が更に好ましく、0.6未満が特に好ましい。下限値は0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。
【0064】
また、樹脂の含有量は、非水系インク組成物に含有される顔料分散剤の含有量より大きいことが好ましい。これにより、得られる印刷物の印字表面の光沢性がさらに向上するとともに、発色性や耐擦過性や耐溶剤性が優れたものとなり、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性をさらに満たすものとなる。
【0065】
具体的には、非水系インク組成物中の、樹脂の含有量に対する、顔料分散剤の含有量の比(顔料分散剤/樹脂)は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.7未満が更に好ましく、0.6未満が特に好ましく、0.4未満が最も好ましい。下限値は0.1以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.2以上が更に好ましい。
【0066】
本発明においては、樹脂の含有量は、顔料(または顔料A)と顔料分散剤との含有量の合計よりも大きいことが好ましい。これにより、得られる印刷物の印字表面の光沢性がさらに向上するとともに、発色性や耐擦過性や耐溶剤性が優れたものとなり、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性をさらに満たすものとなる。非水系インク組成物中の、樹脂の含有量に対する、顔料(または顔料A)と顔料分散剤との含有量の合計の比((顔料(または顔料A)+顔料分散剤)/樹脂)は、1.0未満が好ましく、0.97未満がより好ましく、0.95未満が更に好ましく、0.9未満が特に好ましい。下限値は0.1以上であることが好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、0.6以上が特に好ましい。
【0067】
本発明においては、樹脂の含有量は、顔料(または顔料A)と顔料分散剤と界面活性剤との含有量の合計よりも大きいことが好ましい。非水系インク組成物中の、樹脂の含有量に対する、顔料(または顔料A)と顔料分散剤と界面活性剤との含有量の合計の比、((顔料(または顔料A)+顔料分散剤+界面活性剤)/樹脂)は、1.4未満が好ましく、1.2未満がより好ましく、1.0未満が更に好ましい。下限値は0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。
【0068】
本発明においては、樹脂の含有量は、顔料分散剤と界面活性剤との含有量の合計よりも大きいことが好ましい。非水系インク組成物中の、樹脂の含有量に対する、顔料分散剤と界面活性剤との含有量の合計の比、((顔料分散剤+界面活性剤)/樹脂)は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.6未満が更に好ましい。下限値は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が特に好ましい。
【0069】
本発明においては、顔料(または顔料A)の含有量は、顔料分散剤と界面活性剤との含有量の合計よりも大きいことが好ましい。非水系インク組成物中の、顔料(または顔料A)の含有量に対する、顔料分散剤と界面活性剤との含有量の合計の比、((顔料分散剤+界面活性剤)/顔料樹脂(または顔料A))は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.6未満が更に好ましい。下限値は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい。
【0070】
[有機溶剤]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は有機溶剤を含有する。有機溶剤は、本実施の形態に係る非水系インク組成物に含有される各成分を分散又は溶解することができるものである。有機溶剤は、特に限定されないが、顔料Aを含有する顔料を分散させて、本発明の効果をより効果的に奏する観点から、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤、環状アミド系溶剤、及び環状エステル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有することが好ましい。また、非水系インク組成物の吐出性を良好なものにして、本発明の効果をより効果的に奏する観点から、有機溶剤C(グリコールエーテルジアルキル系溶剤)を含有することが好ましい。
【0071】
以下、有機溶剤Bに含有されるアルキルアミド系溶剤、環状アミド系溶剤、及び環状エステル系溶剤についてそれぞれ説明する。
【0072】
[有機溶剤B]
(1)アルキルアミド系溶剤
アルキルアミド系溶剤とは、アルキル基(C2n+1-)と-C(=O)-N-基(アミド結合)を有する化合物であって、水素若しくはアルキル基と-C(=O)-N-基から構成された化合物からなる溶剤である。アルキルアミド系溶剤は、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0073】
【化4】
(式(3)中、Rは、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R、Rは、それぞれ独立して水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。
【0074】
なお、式(3)中のR及びRは、炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数2以上4以下のアルキル基であることがより好ましい。
【0075】
アルキルアミド系溶剤としては、具体的には、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、N,N-ジプロピルプロパンアミド、N-エチルホルムアミド、N-エチルアセトアミド等が挙げられる。この中でも、本発明の効果を特に奏するという観点から、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド及びN,N-ジエチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0076】
アルキルアミド系溶剤の含有量は、特に限定されないが、アルキルアミド系溶剤の含有量の下限は、非水系インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、8質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0077】
アルキルアミド系溶剤の含有量の上限は、非水系インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
【0078】
(2)環状アミド系溶剤
環状アミド系溶剤とは、環状構造を有し、その環状構造に-C(=O)-N-基を有する溶剤である。環状アミド系溶剤は、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0079】
【化5】
(式(4)中、Rは、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、Rは、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)
【0080】
環状アミド系溶剤としては、具体的には、N-メチルカプロラクタム、N-アセチルカプロラクタム、ε-カプロラクタム、N-ビニルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-エチル-ε-カプロラクタム、N-プロピル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム等が挙げられる。この中でも、ε-カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、及びN-ビニルカプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0081】
環状アミド系溶剤の含有量は、特に限定されないが、環状アミド系溶剤の含有量の下限は、非水系インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、8質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0082】
環状アミド系溶剤の含有量の上限は、非水系インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
【0083】
(3)環状エステル系溶剤
環状エステル構造を有する溶剤としては、環状炭酸エステル系溶剤、ラクトン系溶剤等が挙げられる。ラクトン系溶剤としては、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0084】
【化6】
(式(5)中、Rは、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、Rは、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)なおRは、炭素数4以上5以下のアルキレン基がより好ましく、炭素数5のアルキレン基がより好ましい。
【0085】
ラクトン系溶剤としては、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン等が挙げられる。これらのなかでも、γーブチロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンがより好ましく、ε-カプロラクトンがより好ましい。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0086】
環状エステル系溶剤の含有量は、特に限定されないが、環状エステル系溶剤の含有量の下限は、非水系インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、8質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0087】
環状エステル系溶剤の含有量の上限は、非水系インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下あることがさらに好ましい。
【0088】
有機溶剤Bを含有することにより、顔料Aを含有する顔料をより効果的に分散させることが可能となり、非水系インク組成物の保存安定性やクリーニング回復性を向上させることができる。さらに、基材上での表面乾燥性の高い非水系インク組成物となって印字の滲みが少なくなり印字が鮮明となる。
【0089】
有機溶剤Bは、アルキルアミド系溶剤、環状アミド系溶剤、環状エステル系溶剤、のうち少なくとも1種類を含むと十分効果を発揮するものであるが、有機溶剤Bの溶剤の中から2種類以上を混合してもよい。2種類以上混合することによって、保存安定性、部材適正、表面乾燥性、クリーニング回復性のバランスを任意のものとすることができる。2種類以上を混合する場合は、有機溶剤Bの合計含有量の下限は、非水系インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、10質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。有機溶剤Bの合計含有量の上限は、非水系インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましい。
【0090】
[有機溶剤C]
有機溶剤Cは、グリコールの両末端のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルジアルキル系溶剤であり、下記一般式で表される。
【0091】
-(-O-R-)-O-R・・・(2)
(式(2)中、Rは炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基であり、Rは炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキレン基であり、Rは、炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基である。nは1以上4以下の整数を表す。)
【0092】
なお、R1は、炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキル基であることが好ましい。R2は、炭素数1以上3以下の分岐してもよいアルキレン基であることが好ましい。R3は、水素又は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキル基であることが好ましい。
【0093】
式(2)で表される有機溶剤は、例えば、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類を挙げることができる。
【0094】
非水系インク組成物が吐出された基材への浸透性、基材表面でのレベリング性、乾燥性、の観点からは、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等が、好ましいものとして挙げられる。
【0095】
また、これらのグリコールエーテル系溶剤のうち引火点が異なる2種類以上のグリコールエーテル系溶剤を組み合わせることが好ましい。引火点の高い(例えば引火点が70℃以上)のグリコールエーテル系溶剤を含有させることにより、高いクリーニング回復性を有する非水系インク組成物となる。引火点の低い(例えば引火点が70℃未満)のグリコールエーテル系溶剤を含有させることにより、基材上での表面乾燥性の高い非水系インク組成物となる。引火点が70℃以上のグリコールエーテル系溶剤と引火点が70℃未満のグリコールエーテル系溶剤を含有することにより、高いクリーニング回復性と基材上での表面乾燥性とを両立させることが可能となり、本発明の効果を特に効果的に奏する非水系インク組成物となる。
【0096】
また、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤、環状アミド系溶剤、及び環状エステル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1つ)と有機溶剤Cとを含有することがより好ましい。非水系インク組成物の保存安定性、高いクリーニング回復性と基材上での表面乾燥性とを両立させることが可能となり、特に本発明の効果を奏する非水系インク組成物となる。
【0097】
[その他の有機溶剤]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、上記の有機溶剤以外の有機溶剤を含有していてもよい。具体的には、グリコールの片方のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルモノアルキルなどが挙げられる。グリコールエーテルモノアルキル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-イソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-イソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)エーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーエル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)、等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類が挙げられる。
【0098】
また、グリコールエーテル系溶剤以外のその他の溶剤を含有してもよい。具体的には、3-メチル-2-オキサゾリジノン、3-エチル-2-オキサゾリジノン、N-ビニルメチルオキサゾリジノン等の上記式(4)の環状アミド系溶剤とは異なるオキサゾリジノン系溶剤やトリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテ-ト等のアセテート系溶剤や3-メトキシプロパンアミド、3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-ブトキシプロパンアミド等の上記式(3)のアルキルアミド系溶剤や上記式(4)の環状アミド系溶剤とは異なるアミド系溶剤やメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンタノール等の炭素数1~5のアルキルアルコール類;3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-n-ブタノール等の1価のアルコール系溶剤やアセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、イソブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール類:メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。組み合わせる樹脂や分散剤などに応じて、適切なHLB値の溶剤を選択することが好ましい。
【0099】
その他の有機溶剤の含有量は、特に制限はされないが、その他の有機溶剤の含有量の下限は、10質量%以上の範囲であることが好ましく、20質量%以上の範囲であることがより好ましく、30質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。その他の有機溶剤の含有量の上限は、85質量%以下の範囲であることが好ましく、80質量%以下の範囲であることがより好ましく、75質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0100】
[界面活性剤]
本実施の形態に係る非水系インク組成物においては、ノズル部やチューブ内等の機器内での非水系インク組成物の揮発抑制、固化防止、又、固化した際の再溶解性を目的として、又、表面張力を低下させ記録媒体(基材)との濡れ性を向上させる目的で、また、インク組成物の基材上でのにじみ抑制を目的として、また、塗膜の耐擦性向上を目的として、また、記録物の更なる光沢性の向上を目的として、界面活性剤を添加してもよい。なお、界面活性剤には、表面調整剤、レベリング剤、消泡剤等と呼ばれるものも含まれる。
【0101】
この中でも界面活性剤は、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有することが好ましい。顔料Aは非水系インク組成物中において凝集しやすく、体積平均粒子径が大きくなる傾向がある。すると、得られる記録物の光沢性が低下することがある。本実施の形態に係る非水系インク組成物においてシロキサン骨格を有する界面活性剤を含有することで、顔料Aを含有していても得られる記録物の光沢性を向上させることができる。さらに、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有した非水系インクであれば、印字の滲みが少なくなり、耐擦性が向上した記録物が得られる。
【0102】
シロキサン骨格を有する界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-313、315N、322、326、331、347、348、BYK-UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)等を使用することができる。
【0103】
また、本実施の形態に係る非水系インク組成物には、シロキサン骨格を有する界面活性剤とは異なる界面活性剤を含有してもよい。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるノニオンP-208、P-210、P-213、E-202S、E-205S、E-215、K-204、K-220、S-207、S-215、A-10R、A-13P、NC-203、NC-207(日本油脂(株)製)、エマルゲン106、108、707、709、A-90、A-60(花王(株)製)、フローレンG-70、D-90、TG-740W(共栄社化学(株)製)、ポエムJ-0081HV(理研ビタミン(株)製)、アデカトールNP-620、NP-650、NP-660、NP-675、NP-683、NP-686、アデカコールCS-141E、TS-230E((株)アデカ製)等、ソルゲン30V、40、TW-20、TW-80、ノイゲンCX-100(第一工業製薬(株)製)等、フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-340(ビックケミー・ジャパン社製)等、アセチレングリコール系界面活性剤としては、具体例として、サーフィノール(登録商標)82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィン(登録商標)STG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)等が例示される。界面活性剤としては、上記に限られずアニオン系、カチオン系、両性又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができる。
【0104】
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、シロキサン骨格を有する界面活性剤とともにこれらの界面活性剤を含有してもよく、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有せずに、これらの界面活性剤を含有してもよい。
【0105】
本実施の形態に係る非水系インク組成物において、界面活性剤の含有量としては、特に限定されないが、界面活性剤の含有量の下限としては、0.01質量%以上の範囲であることが好ましく、0.05質量%以上の範囲であることがより好ましく、0.1質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。界面活性剤の含有量の下限としては、5.0質量%以下の範囲であることが好ましく、4.0質量%以下の範囲であることがより好ましく、3.0質量%以下の範囲であることがさらに好ましく、1.5%以下であることが更により好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲であると、印刷物のインク塗膜の耐擦性や耐溶剤性、耐水性等の、塗膜物性が優れたものとすることが可能となる。
【0106】
[その他の成分]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、エポキシ化物等、多価カルボン酸、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤等の公知の添加剤を任意成分として含んでもよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられる。具体的には、BHA(2,3-ブチル-4-オキシアニソール)、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)等が例示される。また、紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系化合物、又はベンゾトリアゾール系化合物を用いることができる。また、エポキシ化物の具体例としては、エポキシグリセリド、エポキシ脂肪酸モノエステル、およびエポキシヘキサヒドロフタレートなどが例示され、具体的にはアデカサイザーO-130P、アデカサイザーO-180A(ADEKA社製)等が例示される。多価カルボン酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸などが例示される。
【0107】
≪2.非水系インク組成物の製造方法≫
本実施の形態に係る非水系インク組成物の製造方法は、有機溶剤と、顔料Aを含有する顔料と他成分(例えば樹脂等)をペイントシェイカーを用いて混合することにより製造することができる。この際、ジルコニアビーズにて各成分を分散させてもよい。また、得られた非水系インク組成物は、必要に応じて脱気処理するなどして所望の溶存酸素量や溶存窒素量に調整してもよい。
【0108】
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、水を意図的に含有させない非水系インク組成物であるが、原料由来および製造過程で水分が混入する場合がある。非水系インク組成物中における水分含有量は、できるだけ少ない方が望ましい。水分を過剰に含むと、保存安定性や吐出性が悪く、さらに固形成分等が発生するリスクが高くなる。非水系インク組成物中の水分含有量の上限は非水系インク組成物全量中1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0109】
この際、有機溶剤を予め乾燥させておくことが好ましい。有機溶剤を予め乾燥させておくことで、非水系組成物に含まれる水分量を軽減することができる。有機溶剤を乾燥させる方法としては、例えば窒素等の不活性ガス雰囲気下で乾燥させた不活性ガス(例えば、窒素ガス)を所定時間吹き付ける方法や、有機溶剤を蒸留精製する方法や、水を選択的に透過する半透過膜に有機溶剤を透過させる方法や、水を吸着する水吸着剤に有機溶剤に混入した水を選択的に吸着させる方法等を挙げることができる。
【0110】
≪3.インク組成物を用いた記録方法≫
本実施の形態に係る記録方法は、上記の非水系インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する記録方法である。本発明の非水系インク組成物は、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物に要求される特性を満たすものであり、本実施の形態に係る記録方法においても、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物に要求される特性を満たすものである。インクジェット法により吐出する方式は、圧電素子を用いたピエゾ方式であっても、発熱体を用いたサーマル方式であってもよく、特に限定されない。
【0111】
≪4.記録物の製造方法≫
上記のインク組成物を用いた記録方法は、記録物の製造方法と定義することもできる。本実施の形態に係る記録物の製造方法においてもインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物に要求される特性を満たすものである。
【0112】
≪5.記録物≫
上述した実施形態の記録物の製造方法により製造された記録物を構成する各層について説明する。
【0113】
[媒体(記録媒体)]
本実施の形態に係る記録方法に使用することのできる基材(記録媒体)としては、特に限定はされず、樹脂基材、金属、板ガラスなどの非吸収性基材であっても、紙や布帛などの吸収性基材であっても、受容層を備える基材のような表面塗工が施された基材であってもよく、種々の基材を使用することができる。
【0114】
これらの中でも、上記非水系インク組成物は、水を含有しない非水系インク組成物であるため、表面が主として樹脂からなるものが好ましい。特に、上記の非水系インク組成物がアルキルアミド系溶剤を含んでいる場合には、表面が樹脂からなる媒体(記録媒体)での印字の滲みが少なくなり印字が鮮明となる。樹脂としては、ポリ塩化ビニル系重合体やアクリル、PET、ポリカーボネート、PE、PP等が挙げられる。また、記録物の記録表面に対してフィルムを張り合わせことを前提とするような樹脂基材(いわゆるラミネート用の樹脂基材)に用いられてもよい。特に、表面が硬質又は軟質ポリ塩化ビニル系重合体からなる基材(記録媒体)が好ましい。表面がポリ塩化ビニル重合体からなる基材(記録媒体)としては、ポリ塩化ビニル基材(フィルム又はシート)等が例示できる。
【0115】
[記録層]
記録層とは、上記の非水系インク組成物に含まれる溶媒が揮発することにより形成される層であり、所望の画像を形成する層である。上記の非水系インク組成物を吐出することでインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物に要求される特性を満たすものとなる。
【0116】
[その他の層]
本実施の形態に係る記録物は、さらに記録層の上表面に所望の機能を有する層を備えてもよい。例えば、記録物に耐擦性や光沢性をさらに付与する目的で、樹脂、ワックスの少なくとも1つを含有するオーバーコート層が形成されていてもよい。また、フィラーを含有させ、又は膜厚をピクセル単位で変化させること等により、表面に凹凸感(マット面)を表現された層が形成されていてもよい。また、記録物に耐候性を付与するために、紫外線吸収剤や光安定化剤等を含む耐候層や光輝性顔料を含む光輝性層等が形成されていてもよい。
【0117】
≪6.インクセット≫
本実施の形態に係るインクセットは、上記の非水系インク組成物を少なくとも備えるインクセットである。例えば、上記の非水系インク組成物がオレンジインクである場合には、従来公知のイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクと、を組み合わせることで、本発明の効果を奏することに加えて、色再現性を拡げることが可能となる。
【0118】
また、上記の非水系インク組成物と、白インクや、メタリックインク、パールインクなどの光輝性インクを含むインクセットとしてもよい。また、上記の非水性インク組成物と、クリアインク、プレコーティングインク、オーバープリントインクなどを含むインクセットとしてもよい。
【0119】
≪7.インクジェット記録装置≫
上記の非水系インク組成物は、顔料としてジケトピロロピロール系顔料を含む顔料を使用してもインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすものであるので、この非水系インク組成物が充填されたインクカートリッジ(収容容器に相当)が搭載されたインクジェット記録装置によりインクジェット方式にて基材の表面に吐出することで、得られる印刷物の印字表面の光沢性が向上する等のる非水系インク組成物として要求される特性を満たすことができるようになる。
【0120】
このインクジェット記録装置は、従来公知のものを使用することができる。例えば、VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製のようなインクジェットプリンターなどを使用することができる。
【0121】
インクジェット記録装置の構成の一例として、オンキャリッジタイプであってシリアルプリンタータイプのインクジェット記録装置を説明するが、本実施の形態に係る記録方法を実施することのできるインクジェット記録装置は、インクカートリッジが外部に固定されたオフキャリッジタイプのインクジェット記録装置であってもよく、インクジェットヘッドヘッドが移動せずに記録媒体(基材)上にインク組成物を吐出するラインプリンタータイプのインクジェット記録装置であってもよい。
【0122】
また、インクジェット記録装置は、加温機構と、基材を固定する固定機構と、を備えていることが好ましい。インクジェット記録装置に備えられる加温機構によって基材表面温度を制御して、基材(記録媒体)に着弾した非水系インク組成物を乾燥させることで、非水系インク組成物に含有される有機溶剤を揮発させることが可能となる。
【0123】
さらに、基材を固定する固定機構によって、基材(記録媒体)を固定した状態で非水系インク組成物を乾燥させることが可能となり、加温により基材がたわむことにより熱のかかり方が不均一になることを抑制できる。これにより、基材(記録媒体)に着弾した非水系インク組成物を効果的に乾燥させることが可能となる。
【0124】
インクジェット記録装置に備えられる加温機構は、プレヒーター、プラテンヒーター、アフターヒーター等であってもよく、記録物に温風を送風する機構であってもよい。また、これらの加温機構を複数組み合わせるものであってもよい。
【0125】
加温機構により加温される基材の表面温度としては、非水系インク組成物に含まれる有機溶剤を揮発させることができれば特に制限はされず、基材の表面温度の下限は、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることがさらに好ましい。基材の表面温度の上限は、70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることがさらに好ましい。
【0126】
基材を固定する固定機構としては、基材を所定の治具により固定する固定機構であっても、負圧により基材を吸引して吸着する固定機構であってもよく特に制限されない。
【0127】
上記の非水系インク組成物を吐出するインクジェットヘッドは、圧電素子を用いたピエゾ方式のインクジェットヘッドであっても、発熱体を用いたサーマル方式のインクジェットヘッドであってもよく、特に制限はされない。
【0128】
また、インクジェット記録装置は、上記の非水系インク組成物を貯蔵する容器(インクカートリッジやボトル等)と上記の非水系インク組成物を吐出するインクジェット吐出口とを接続するプラスティックチューブを備え、上記の非水系インク組成物がこのプラスティックチューブを通じてインクジェットヘッドに供給され、インクジェット法によって吐出されるように構成されていてもよい。
【0129】
また、貯蔵機構とインクジェット吐出口とに接続されたチューブには、非水系インク組成物の流路を調整する弁機構を備えていることが好ましい。貯蔵機構から弁機構を介してインクジェット吐出口に上記の非水系インク組成物を供給することにより、ノズル詰まりを解消できる機構が備えられ、非水系インク組成物の吐出安定性をさらに向上させることができる。
【0130】
また、本実施の形態に係るインクジェット記録装置は、上述したようにイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの各色のインクや、ライトマゼンタ、ライトシアン、ライトブラック、オレンジ、グリーン、レッド、ホワイト、メタリック、パール、クリア、プレコーティング、オーバープリントなどの各種のインクなどにも使用することができ、印刷する色の順序やヘッドの位置や構成は特に制限されない。また、本実施の形態に係るインクジェット記録装置は、記録媒体(基材)の巻き取り機構や基材表面を乾燥させる乾燥機構、インクの循環機構を備えていても備えていなくともよい。
【実施例
【0131】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0132】
1.非水系インク組成物の調製
それぞれの有機溶剤、樹脂、分散剤、顔料(色材)下記表の割合になるように各成分のように実施例及び比較例の非水性インク組成物を作製した。具体的には、ペイントシェイカーを用いてジルコニアビーズにて体積基準累積90%粒子径D90が450nm以下になるまで分散させて非水性インク組成物を調製した。単位は質量%である。
【0133】
非水性インク組成物に含まれる顔料の体積基準累積90%粒子径D90は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いて測定した。
【0134】
2.評価
(吐出安定性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について吐出安定性を評価した。具体的には、インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)に非水性インク組成物を充填して、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に双方向の高速印刷モード(360x720dpi)で、基材表面温度40℃にて連続印刷でベタ及び細線を印刷し、ドット抜け、飛行曲がり、インクの飛び散りの有無を目視により観察し、評価した(表中、「吐出安定性」と表記)。
評価基準
A:細線が正しく再現できている。
B:着弾位置のずれがわずかに見られるが細線がおおむね正しく再現できている。
C:着弾位置のずれによって細線を再現できない。
A、Bは使用可能範囲内である。
(保存安定性)
実施例及び比較例の非水性インク組成物について保存安定性を評価した。具体的には、非水性インク組成物をガラス瓶に密封して60℃で1ヶ月間保管し、保管前の粘度からの変化率を求めた。なお、インクの粘度は、落球式粘度計(アントンパール社製AMVn)を用いて、20℃の条件下で測定した。
A:変化率が10%未満である。
B:変化率が10%以上20%未満である。
C:変化率が20%以上である。
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0135】
(発色性)
実施例及び比較例の非水性インク組成物について発色性を評価した。具体的には、上記インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)にて、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)でベタ画像を印字した。彩度は、JIS Z 8721に基づき、X-Rite eXact(エックスライト社製)を用い、視野角2°、測定範囲 4mmφ、D65光源の条件で測定を行うことにより求めた。(表中、「発色性」と表記)。
評価基準
A:彩度が90以上である。
B:彩度が70以上、90未満である。
C:彩度が70未満である。
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0136】
(光沢性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について光沢性を評価した。具体的には、上記発色性評価と同様にして印刷物を作製し、ハンディタイプの光沢度計PhopointIQ-S(コニカミノルタ社製)により、当該印刷物の20°光沢度を測定した。(表中、「光沢性」と表記)。
評価基準
A:20°光沢が60以上
B:20°光沢が55以上60未満
C:20°光沢が55未満
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0137】
(耐擦過性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について耐擦過性を評価した。具体的には、上記発色性評価および光沢性評価と同様にして印刷物を作製し、当該印刷物の印刷面を、荷重200g、50往復、乾いた綿布によって擦り、目視で耐擦過性を評価した。
評価基準
A:印刷面に擦り後がみられなかった。
B:印刷面にわずかに擦り後がみられたが、実質上許容範囲内であった。
C:印刷面に明らかな剥がれがみられた。
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0138】
(耐溶剤性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について耐溶剤性を評価した。具体的には、上記耐擦過性評価と同様にして、当該印刷物の印刷面を、荷重200g、50往復、50質量%アルコール水溶液を浸透させた綿布によって擦り、目視で耐擦過性を評価した。
評価基準
A:印刷面に擦り後がみられなかった。
B:印刷面にわずかに擦り後がみられたが、実質上許容範囲内であった。
C:印刷面に明らかな剥がれがみられた。
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
表中、「PR254-a」とは、:大日精化工業(株)製「クロモファインレッド615EC」(式(1)で示される顔料Aであって、ジケトピロロピロール系顔料)である。
【0143】
表中、「PR254-b」とは、BASF社製「IRGAPHOR RED BT-CF」(式(1)で示される顔料Aであって、ジケトピロロピロール系顔料)である。
【0144】
表中、「PR254-c」とは、BASF社製「ROMOPHTAL DPP Red BP」(式(1)で示される顔料Aであって、ジケトピロロピロール系顔料)である。
【0145】
表中、「PB15:4」とは、C.I.ピグメントブルー15:4である。
【0146】
表中、「PR122」とは、C.I.ピグメントレッド122である。
【0147】
表中、「PY150」とは、C.I.ピグメントイエロー150である。
【0148】
表中、「CB」とは、カーボンブラックである。
【0149】
表中、「分散剤-a」とは、ルーブリゾール社製「Solsperse32000」(ポリカプロラクトン系高分子分散剤 アミン価:35mgKOH/g)である。
【0150】
表中、「分散剤-b」とは、ルーブリゾール社製「Solsperse33000」(ポリカプロラクトン系高分子分散剤 アミン価:43mgKOH/g)である。
【0151】
表中、「分散剤-c」とは、ルーブリゾール社製「Solsperse36000」(ポリカプロラクトン系高分子分散剤)である。
【0152】
表中、「樹脂-a」とは、ロームアンドハース社製「パラロイドB60」(アクリル系樹脂)である。
【0153】
表中、「樹脂-b」とは、日信化学工業(株)社製「ソルバインCL」(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂)である。
【0154】
表中、「樹脂-c」とは、EASTMAN社製「CAB551-0.01」(セルロース系樹脂)である。
【0155】
表中、「界面活性剤-a」とは、ビックケミー・ジャパン社製「BYK-331」(ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコン)である。
【0156】
表中、界面活性剤-b」とは、ビックケミー・ジャパン社製「BYK-3500」(ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコン)である。
【0157】
上記表から分かるように、式(1)で示される顔料A(ジケトピロロピロール系顔料)を含有し、顔料分散剤の含有量が顔料の含有量未満である実施例の非水系インク組成物であれば、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが分かる。
【0158】
一方、式(1)で示される顔料A(ジケトピロロピロール系顔料)を含有し、顔料分散剤の含有量が顔料の含有量以上である比較例の非水系インク組成物は、得られる印刷物の印字表面の光沢性が低下し、さらに耐擦過性や耐溶剤性が低下しており、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たしていない。
【0159】
なお、式(1)で示される顔料A(ジケトピロロピロール系顔料)を含有しない参考例1~4の非水系インク組成物は、顔料分散剤の含有量が顔料の含有量以上であってもインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たしていた。このことから、顔料は非水系インク組成物中において凝集するという本願発明の課題が、式(1)で示される顔料A(ジケトピロロピロール系顔料)を含有する非水系インク組成物独自のものであることが確認された。
【要約】      (修正有)
【課題】ジケトピロロピロール系顔料を含む非水系インク組成物であってもインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として好適に使用することのできる非水系インク組成物を提供する。
【解決手段】顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、樹脂と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物であって、前記顔料は、下記式(1)で示される顔料Aを含有し、前記顔料分散剤の含有量は、前記顔料の含有量よりも小さい、非水系インク組成物。

【選択図】なし