IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社スリーボンドの特許一覧

特許7169511一液性湿気硬化型樹脂組成物および硬化物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】一液性湿気硬化型樹脂組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/10 20060101AFI20221104BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20221104BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C08L101/10
C08L83/04
C08K5/5419
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018197660
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020063406
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 謙太郎
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-18695(JP,A)
【文献】特開2018-58967(JP,A)
【文献】特表2010-531383(JP,A)
【文献】特開2007-262140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)~(D)成分を含有する一液性湿気硬化型樹脂組成物。
(A)成分:加水分解性シリル基を2個以上含有する有機重合体
(B)成分:末端または側鎖に極性基および/または極性鎖を有するシリコーン化合物
(C)成分:硬化触媒
(D)成分:加水分解性官能基を有するシラン化合物としてヘキシルトリメトキシシラン
【請求項2】
前記(B)成分の極性基がアミノ基、シラノール基、カルビノール基、カルボニル基からなる群から少なくとも1つ選択され、および/または前記(B)成分の極性鎖がポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、ポリチオエーテル鎖からなる群から少なくとも1つ選択されることを特徴とする請求項1に記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分がポリウレタン主鎖構造以外の主鎖構造を有し、またはポリウレタン構造部分を有しない主鎖構造を有し、加水分解性シリル基を2個以上含有する有機重合体である請求項1または2に記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分がジオクチルスズ塩とシリケートの反応物である請求項1または2に記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の極性基がアミノ基もしくはカルビノール基であるか、あるいは極性鎖がポリエーテル鎖であることを特徴とする請求項1または2に記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)成分がポリエーテル主鎖構造、ポリエステル主鎖構造、ポリカーボネート主鎖構造、ポリアミド主鎖構造、ポリウレア主鎖構造、ポリイミド主鎖構造、重合性不飽和基を重合して得られるビニル系重合体主鎖構造からなる群から少なくとも1つ選択される構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項8】
アルミニウム上で硬化した請求項7に記載の硬化物。
【請求項9】
アルミニウムからの剥離性を有する請求項8に記載の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一液性湿気硬化型樹脂組成物および硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、湿気硬化型樹脂組成物はシーラント剤や接着剤等として建材、輸送、電気電子分野等の広い分野で用いられてきた。特許文献1には、硬化速度が速く接着性に優れた加水分解性シリル基を有する硬化性樹脂を用いた一液性湿気硬化型樹脂組成物について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-052296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建材、自動車部品、電気電子部品等の部分的修理・交換時やリサイクル時において、湿気硬化性樹脂の硬化物を容易に剥離させられることが求められているが、特許文献1で開示された湿気硬化性樹脂の硬化物は接着性は良いものの、離型性が劣るものであった。
【0005】
そこで、本発明は前記状況に鑑みてされたものであり、離型性に優れる一液湿気硬化型樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の要旨を有するものである。
[1]
(A)成分および(B)成分を含有する一液性湿気硬化型樹脂組成物。
(A)成分:加水分解性シリル基を2個以上含有する有機重合体
(B)成分:末端または側鎖に極性基および/または極性鎖を有するシリコーン化合物
[2]
前記(B)成分の極性基がアミノ基、シラノール基、カルビノール基、カルボニル基からなる群から少なくとも1つ選択され、および/または前記(B)成分の極性鎖がポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、ポリチオエーテル鎖からなる群から少なくとも1つ選択されることを特徴とする[1]に記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
[3]
前記(A)成分がポリウレタン主鎖構造以外の主鎖構造を有し、またはポリウレタン構造部分を有しない主鎖構造を有し、加水分解性シリル基を2個以上含有する有機重合体である[1]~[2]のいずれかに記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
[4]
更に(C)成分として硬化触媒を含むことを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
[5]
前記(B)成分の極性基がアミノ基もしくはカルビノール基であるか、あるいは極性鎖がポリエーテル鎖であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
[6]
前記(A)成分がポリエーテル主鎖構造、ポリエステル主鎖構造、ポリカーボネート主鎖構造、ポリアミド主鎖構造、ポリウレア主鎖構造、ポリイミド主鎖構造、重合性不飽和基を重合して得られるビニル系重合体主鎖構造からなる群から少なくとも1つ選択される構造であることを特徴とする[1]~[5]のいずれか1項に記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
[7]
更に(D)成分として加水分解性官能基を有するシラン化合物を含むことを特徴とする[1]~[6]のいずれか1項に記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
[8]
離型性を有する前記[1]~[7]に記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物。
[9]
前記[1]~[8]のいずれか1項に記載の一液性湿気硬化型樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、離型性に優れる一液湿気硬化型樹脂を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<(A)成分>
本発明で用いられる(A)成分の有機重合体は、架橋可能な加水分解性シリル基を1分子中に2個以上有するものであれば特に制限されるものではない。(A)成分は前記加水分解性シリル基が加水分解してシロキサン結合を形成することにより有機重合体が架橋し硬化物となる。
【0009】
前記加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合したものであり、前記加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシド基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、アルケニルオキシド基などが好ましい例として挙げられ、反応の際に有害な副生成物を生成しないアルコキシ基が特に好ましい。
【0010】
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等を挙げることができ、中でもメトキシ基、エトキシ基が好ましい。これらアルコキシ基は同じ種類であってもよいし異なった種類が組み合わされていてもよい。
【0011】
アルコキシ基が珪素原子に結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基;ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基等のモノアルコキシシリル基を挙げることができる。中でもジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が好ましい。これらを複数個組み合わせて用いてもよい。
【0012】
前記(A)成分の主鎖構造は特に限定されないが、例えば、ポリエーテル主鎖構造、ポリエステル主鎖構造、ポリカーボネート主鎖構造、ポリウレタン主鎖構造、ポリアミド主鎖構造、ポリウレア主鎖構造、ポリイミド主鎖構造、重合性不飽和基を重合して得られるビニル系重合体主鎖構造などが挙げられる。(A)成分はこれらの主鎖構造を1分子中に単独で有しても、複数組み合わせて得られた主鎖構造を有してもよい。また、これら構造を持つ化合物2種以上の混合物であってもよい。前述の主鎖構造の中でも特にポリウレタン主鎖構造以外の主鎖構造を有するもの、またはポリウレタン構造部分を有しない主鎖構造を有するものが好ましい。ポリウレタン主鎖構造またはポリウレタン構造部分を有する主鎖構造を有する加水分解性シリル基を2個以上含有する有機重合体を用いた場合、その硬化物に関する離型性について、界面剥離になるものの、剥離をする際により重い負荷が必要になることがあるからである。尚、ポリウレタン主鎖構造以外の主鎖構造およびポリウレタン構造部分を有しない主鎖構造を有するものの中では、ビニル系重合体主鎖構造及びポリエーテル主鎖構造の少なくとも一方を有するあものでることが好適である。すなわち、主鎖構造が、ビニル系重合体主鎖構造であっても、ポリエーテル主鎖構造であっても、ポリエーテル主鎖構造部分及びビニル系重合体主鎖構造部分の双方を有していてもよい。
【0013】
前記ポリエーテル主鎖構造としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の主鎖構造や、これらの共重合体構造、置換基を有するこれら誘導体を挙げることができる。加水分解性シリル基を有するポリエーテル主鎖構造の市販の重合体として、株式会社カネカ製の商品名MSポリマーとしてS-203、S-303、S-903等、サイリルポリマーとしてSAT-200、SAT-350,MA-403、MA-447等、旭硝子株式会社製エクセスターESS-2410、ESS-2420、ESS-3630等を挙げることができる。
【0014】
前記ポリエステル主鎖構造としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールと、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸とを縮合させて得られるポリエステル主鎖構造が挙げられる。
【0015】
前記ポリウレタン主鎖構造としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒマシ油系ポリオール、水素添加ヒマシ油系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等のポリオールと、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート等のジイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン主鎖構造等が挙げられる。
【0016】
前記ポリアミド主鎖構造としては、ジアミンとジカルボン酸を縮合、あるいはカプロラクタムを開環重合させて得られるポリアミド主鎖構造が挙げられる。前記ポリウレア主鎖構造としては、ジアミンとジイソシアネートを重付加させて得られるポリウレア主鎖構造が挙げられる。ポリイミド主鎖構造としては、ジアミンと一分子中に2個の環状酸無水物構造を有する化合物のイミド化によって得られるポリイミド主鎖構造が挙げられる。
【0017】
また、前記重合性不飽和基を重合して得られるビニル系重合体としては、ビニルモノマーを重合して得られる重合体であればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル等を挙げることができる。また、これらビニル重合体部分を有する共重合体であってもよい。
【0018】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は末端または側鎖に極性基および/または極性鎖を有するシリコーン化合物であれば特に限定されない。本発明のその他成分の(A)成分と組み合わせることで、その組成物の硬化物の離型性が優れるという顕著な効果を有するものである。前記(B)成分の極性基としてはアミノ基、カルビノール基、カルボニル基、シラノール基などが挙げられ、中でもアミノ基、カルビノール基が好ましい。また、前記(B)成分の極性鎖としてはポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、ポリチオエーテル鎖などが挙げられるが、中でもポリエーテル鎖が好ましい。なお、(B)成分が末端または側鎖に極性鎖を有するシリコーン化合物である場合、末端基は特に制限されることはないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルビノール基、直鎖状または分枝状の炭素数1~20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、アミド基、シアノ基、スルホン基、ニトロ基、チオール基、イソシアネート基などが挙げられる。中でも、アミノ基、カルビノール基、カルボニル基が好ましく、カルビノール基が特に好ましい。
【0019】
本発明の(B)成分の市販品としては、特に限定されないが例えば、側鎖にポリエーテルが変性されたシリコーン化合物としては東レ・ダウコーニング株式会社製のDow Corning TorayシリーズのBY16-036、SH28PA、SF-8428、L-7001、FZ-2104、L-7002、末端にカルビノール基を有するシリコーン化合物としては、同社製の同シリーズのSF8427、BY16-201、側鎖にアミノ基を有するシリコーン化合物としては、同社製の同シリーズのBY16-849、FZ-3785、BY16-872、末端にアミノ基を有するシリコーン化合物としては、同社製の同シリーズのBY16-853U、BY16-871などが挙げられる。
【0020】
前記(B)成分の添加量が、前記(A)成分100質量部に対して1~50質量部含むこ
とが好ましく、更に好ましくは2~45質量部であり、特に好ましくは3~35質量部の
範囲である。前記(B)成分の添加量が前記の範囲内であることで、離型性を有する一液性湿気硬化型樹脂組成物が得られることから好ましい。
【0021】
<(C)成分>
(C)成分の硬化触媒としては、前記重合体(A)を架橋させる触媒であれば特に限定されない。具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ラウレートオキサイド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチルスズ塩とシリケートの反応物等の錫化合物;テトラ-n-ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物;カルボン酸金属塩;金属アセチルアセトナート錯体;アミン塩;有機燐酸化合物等も挙げられる。中でも、硬化性の観点から錫化合物が好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0022】
前記(C)成分の添加量としては、特に限定されないが例えば、前記(A)成分100質量部に対して0.1~80質量部であり、更に好ましくは1~50質量部であり、特に好ましくは2~30質量部である。前記の範囲内であることで、室温での硬化性が良好な一液性湿気型樹脂組成物が得られることから好ましい。
【0023】
<(D)成分>
本発明の(D)成分の加水分解性シリル基を有するシラン化合物としては特に限定されないが、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケートに代表されるシリケート化合物;ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン,ヘキシルトリメトキシシランなどのアルキル基を有するシランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのフェニル基を有するシランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシシリルトリエトキシシランなどのグリシジル基を有するシランカップリング剤;3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤が挙げられる。これらの中では、湿気硬化性と貯蔵安定性を両立できるという観点から、シリケート化合物、アルキル基を有するシランカップリング剤、ビニル基含有シランカップリング剤が好ましく、へキシルトリメトキシシランが特に好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
前記(D)成分の添加量としては、特に限定されないが例えば、前記(A)成分100質量部に対して0.1~90質量部であり、更に好ましくは1~70質量部であり、特に好ましくは2~50質量部である。前記の範囲内であることで、保存性が良好な一液性湿気硬化型樹脂組成物を得られることから好ましい。
【0025】
<任意成分>
また本発明においては、一液性湿気硬化型樹脂組成物の特性を損なわない範囲において任意の添加成分をさらに含ませることができる。前記任意成分としては例えば、安定剤、可塑剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、湿潤剤、消泡剤等の界面活性剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、防錆剤、防腐剤、粘弾性調整剤、レオロジー調整剤、着色剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤、充填剤、光硬化性樹脂、ラジカル開始剤等を挙げることができる。
【0026】
さらに本発明には、一液性湿気硬化型樹脂組成物へ粘弾性の調整等を目的として、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニル樹脂等の加水分解性シリル基を有さない高分子材料を含有させてもよい。
【0027】
充填剤としては、各種形状の有機又は無機のものが挙げられるが、タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、シラスバルーン、ガラスバルーン、マイカ、アルミナ粉末等の無機物が好ましく、このような無機物を添加した場合、一液性湿気硬化型樹脂組成物の硬化物からのブリードアウトが軽減されるといった効果がある。
【0028】
充填剤の添加量としては、特に限定されないが例えば、前記(A)成分100質量部に対して5~1000質量部であり、更に好ましくは10~800質量部であり、特に好ましくは50~500質量部である。
【0029】
本発明の一液性湿気硬化型樹脂組成物は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、(A)成分~(D)成分の所定量を配合して、ミキサー等の混合手段を使用して、好ましくは10~70℃の温度で好ましくは0.1~5時間混合することにより製造することができる。
【0030】
<用途>
本発明の一液性湿気硬化型樹脂組成物は、離型性に優れることから、建材、自動車部品、電気電子部品等の部分的修理・交換が必要となる箇所の接着剤やシール剤として使用可能である。また、シールしたい面の片側にのみ本発明の一液性湿気硬化型樹脂組成物を塗布し、硬化後にもう片側の面を載せ、シール材として使用することも可能である。
【0031】
以下に実施例によって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制約されるものではない。
【実施例
【0032】
<一液性湿気硬化型樹脂組成物の調製>
各成分を表1に示す質量部で採取し、常温にてプラネタリーミキサーで60分混合し、一液性湿気硬化型樹脂組成物を調製し、各種物性に関して次のようにして測定した。尚、組成物が未硬化または硬化物内部に発泡が有る場合は、測定ができないため表1には「-」と表記した。
【0033】
<(A)成分>
a1:株式会社カネカ製カネカサイリルSAT350(ポリエーテル主鎖構造を有し、メチルジメトキシシリル基を両末端に有する化合物)
a2:モメンティブ社製SPUR+1050MM(ポリエーテル構造部分とポリウレタン構造部分を有する主鎖構造で、トリメトキシシリル基を両末端に有する化合物)
<(B)成分>
b1:東レ・ダウコーニング株式会社製SH28(側鎖にポリエーテルが変成されたシリコーン化合物)
b2:東レ・ダウコーニング株式会社製SF-8427(両末端にカルビノール基を変性したシリコーン化合物)
b3:東レ・ダウコーニング株式会社製BY16-849(側鎖にアミノ基を変成したシリコーン化合物)
<(B)の比較成分>
b’1:東レ・ダウコーニング株式会社製BY16-846(側鎖にメチル基およびメチル基以外のアルキル基を有するシリコーン化合物)
b’2:東レ・ダウコーニング株式会社製SH200(無変成シリコーン化合物)
<(C)成分>
・日東化成株式会社製ネオスタンS-1(ジオクチルスズ゛塩とシリケートの反応物)
<(D)成分>
・信越化学工業株式会社製KBM-3063(ヘキシルトリメトキシシラン)
<その他成分>
・炭酸カルシウム(平均粒子径:1.25μm、比表面積:18,000cm/g)
【0034】
実施例及び比較例において使用した試験法は下記の通りである。
【0035】
<離型性試験>
表1の実施例及び比較例の一液性湿気硬化型樹脂組成物を幅25mm×長さ100mm×厚さ1mmのアルミニウム製テストピース上に5g塗布し、23℃50%RH条件下で7日間放置し、試験片を得た。次に試験片を用いて剥離作業を行ない、一液性湿気硬化型樹脂組成物の硬化物が剥離できるものかどうか、および接着界面では凝集破壊と界面剥離のどちらであるかを目視で観察した。剥離作業とは、前記試験片のアルミニウム製テストピースと一液性湿気硬化型樹脂組成物の硬化物との間の界面に、爪楊枝の先を挿入し、荷重を加え、アルミニウム製テストピースから一液性湿気硬化型樹脂組成物の硬化物を剥離するものである。以下の基準で評価した。結果は表1に示す。
評価基準
○:剥離し、接着界面で界面剥離を起こしていたもの。
×:剥離はしたが、接着界面で凝集破壊を起こしていた。もしくは、剥離作業を行った際に、一液性湿気硬化型樹脂組成物の硬化物が剥離できず破損してしまったもの。
【0036】
<硬さ>
各種組成物をシート状フッ素樹脂製型に注入し23℃、50%RH雰囲気かにて7日間養生し、硬化させた。得られた厚さ2mmのシート状硬化物をA型硬度デュロメーターを用いて「硬度」(単位無し)を測定した。詳細についてはJIS K 6253-3(2012年)に従う。硬さはA30~A60であることが好ましく、A33~A58であることが更に好ましく、A35~A55であることが特に好ましい。
【0037】
<引張せん断接着強さ>
アルミ試験片(アルミ板、25mm×100mm×2mm)同士を以下の手順で接着した。組成物を一方の試験片端部に塗布して均一に延ばした後、幅方向に25mm、長さ方向に10mmの接着面になるようにもう一方の試験片端部を貼り合わせる。治具で固定した状態で23℃、50%RHの環境下で7日間養生し硬化させた。その後、準備した試験片を引張り試験機により引張速度10mm/minにて測定し、「引張せん断接着強さ」(MPa)とした。試験の詳細についてはJIS K 6850(1999年)に従う。離型性の観点から、0.1MPa以上1.5MPa未満であることが好ましく、0.1MPa以上0.6MPa未満であることが更に好ましい。
【0038】
<引張強さ測定、伸び率測定>
組成物を厚さ2mmの板状に塗布して、25℃で50%RH雰囲気下にて7日間養生し、硬化させた。板状の硬化物からダンベル3号の形状のテストピースを切り出した。テストピースに基線間距離を25mmとして、引張試験機により500mm/minで引っ張り、ダンベル形状のテストピースが破断するまでの基線間距離を測定して、(破断時基線間距離-初期基線間距離)/初期基線間距離×100から計算して、「伸び率(%)」を測定すると共に、ダンベルの最大強度から「引張強さ(MPa)」を計算した。詳細は、JIS K 6249(2003年)に準ずる。引張強さは1.0MPa以上であることが好ましい。伸び率は300%以上であることが好ましく、330%以上であることがより好ましい。これらの条件を満たす場合に弾性が良好であると判断ができる。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の実施例1~4の結果より、本発明の一液性湿気硬化型樹脂組成物は離型性に優れることを確認した。実施例1~4の中でも、実施例1~3は少ない荷重でアルミニウム製テストピースから一液性湿気硬化型樹脂組成物の硬化物を剥離でき、良好な離型性を有することを確認した。また、実施例1と実施例2はその伸び率の良好さから更に良好な弾性と離型性を有することを確認した。一方で、本発明の(B)成分を含まない比較例1は離型性が劣る結果であった。本発明の(B)成分ではないb’1あるいはb’2を含む比較例2~3は離型性が劣る結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の一液性湿気硬化型樹脂組成物は、離型性に優れることから、部品交換を要する機器や機材の用途など広い分野に適用可能であることから産業上有用である。