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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】燃料電池車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20221104BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20221104BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20221104BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20221104BHJP
   B60K 8/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/10 101
H01M8/00 Z
H01M8/0662
B60K8/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018248436
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020107585
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】川野 慎哉
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135075(JP,A)
【文献】特開2011-065903(JP,A)
【文献】特開2017-081322(JP,A)
【文献】特開2018-073620(JP,A)
【文献】特開2017-094915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00-6/12
7/00-8/00
16/00
B60L 1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスと空気中の酸素とを反応させて発電するFCスタックと、
前記FCスタックに冷却用空気を流通させる冷却ファンと、
前記冷却用空気を車長方向後方の排気口に導く排気ダクトと、
前記FCスタックから排出されるアノードオフガスを前記排気ダクト内に排出するアノードオフガス排出口と、
を備えた燃料電池車両において、
前記FCスタックから排出されるカソードオフガスを、前記アノードオフガス排出口より車長方向後側で前記排気ダクト内に吐出するカソードオフガス吐出口をさらに備え、
前記アノードオフガス排出口は、前記冷却用空気の流れ方向と交差方向に配向され、
前記カソードオフガス吐出口は、前記冷却用空気の流れ方向と交差方向に配向され、かつ、前記冷却用空気の流れの略中央における前記アノードオフガスの第1の希釈領域に合流する第1の流れと、前記冷却用空気の流れの両側部における前記アノードオフガスの第2の希釈領域に合流する第2の流れを形成すべく、複数の吐出口に分けて吐出されるかまたは分流手段が設けられていることを特徴とする燃料電池車両。
【請求項2】
前記第1の希釈領域に合流する前記第1の流れが、前記第2の希釈領域に合流する前記第2の流れに対し、前記冷却用空気の流れ方向の上流側に形成されるように、前記カソードオフガス吐出口の前記複数の吐出口または前記分流手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項3】
前記アノードオフガス排出口は、前記排気ダクト内の前記FCスタックに隣接した導入側の両側部に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両に関し、さらに詳しくは、燃料電池スタックから排出されるアノードオフガスを希釈して排気する構造を備えた燃料電池車両に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、例えば、固体高分子型燃料電池では、出力を維持するために、定期的にアノードセル内の不純物を含む水素を排出するパージ処理を行う。この際、空冷式燃料電池では、高濃度の水素を含むアノードオフガスは、排気ダクト内に画成された希釈室内に排出され、この希釈室内に導入される冷却風および外気と混合され、水素濃度を下げてから外気に排出される。
【0003】
一方、水冷式燃料電池では、アノードオフガスの希釈に冷却風を利用できないため、カソード側から排気されるカソードオフガスの排気経路に希釈ボックスを設け、この希釈ボックス内にアノードオフガスを排出し、カソードオフガスと混合希釈して排出するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-179894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アノードオフガスに対する希釈性能を確保するために、特許文献1のように、希釈ガスとの混合区間の流路にラビリンス構造(迷路構造、屈曲流路、蛇行流路)が採用される場合がある。しかし、アノードオフガスの希釈に冷却風を利用する場合、ラビリンス構造は流路抵抗を増加させ、冷却性能に影響するので、より簡素な構造が望まれていた。
【0006】
本発明は従来技術の上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アノードオフガスに対する希釈性能を確保しつつ、簡素な構造で冷却性能への影響も少ない燃料電池車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討したところ、従来、空冷式燃料電池では、アノードオフガスの希釈に冷却風を利用できるため、カソードオフガスを希釈に利用する要請は無かったが、冷却風とカソードオフガスを組合せてアノードオフガスの希釈に利用することで、ラビリンス構造による流路抵抗増加を回避しつつ、アノードオフガスに対する十分な希釈性能を確保できるという知見を得て本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明は、
水素ガスと空気中の酸素とを反応させて発電するFCスタックと、
前記FCスタックに冷却用空気を流通させる冷却ファンと、
前記冷却用空気を車長方向後方の排気口に導く排気ダクトと、
前記FCスタックから排出されるアノードオフガスを前記排気ダクト内に排出するアノードオフガス排出口と、
を備えた燃料電池車両において、
前記FCスタックから排出されるカソードオフガスを、前記アノードオフガス排出口より車長方向後側で前記排気ダクト内に吐出するカソードオフガス吐出口をさらに備え、
前記アノードオフガス排出口は、前記冷却用空気の流れ方向と交差方向に配向され、
前記カソードオフガス吐出口は、前記冷却用空気の流れ方向と交差方向に配向され、かつ、前記冷却用空気の流れの略中央における前記アノードオフガスの第1の希釈領域に合流する第1の流れと、前記冷却用空気の流れの両側部における前記アノードオフガスの第2の希釈領域に合流する第2の流れを形成すべく、複数の吐出口に分けて吐出されるかまたは分流手段が設けられていることを特徴とする
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る燃料電池車両は、上記のように、主たる希釈ガスとなる冷却用空気の流れ方向と交差方向にアノードオフガスを排出するとともに、冷却用空気の流れの略中央におけるアノードオフガスの第1の希釈領域と、冷却用空気の流れの両側部におけるアノードオフガスの第2の希釈領域のそれぞれに合流するように、混合撹拌手段を兼ねた第2の希釈ガスであるカソードオフガスを吐出する構成により、簡素な構造で流路抵抗増加や冷却性能への影響を回避しつつ、アノードオフガスに対する良好な希釈性能を確保できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明第1実施形態の燃料電池ユニットを示す側断面図(a)、およびそのZ-Z断面図(b)、X-X断面図(c)である。
図2】本発明第2実施形態の燃料電池ユニットを示す側断面図(a)、およびそのZ-Z断面図(b)、X-X断面図(c)である。
図3】本発明第3実施形態の燃料電池ユニットを示す側断面図(a)、およびそのZ-Z断面図(b)、X-X断面図(c)である。
図4】本発明第4実施形態の燃料電池ユニットを示す側断面図である。
図5】燃料電池車両の燃料電池ユニット搭載部を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る燃料電池車両は、四輪車、それ以上の車輪を有する大型車両、二輪車(オートバイ、スクーター)、三輪車(トライク)など、電力で走行する各種車両に実施可能であるが、小型簡素化に有利であることが一つの特徴であることから、図5に示すように、二輪車としての実施に適している。
【0012】
図5において、燃料電池ユニット50は、燃料電池車両51の車長方向に沿って、特に限定されるものではないが、約30度前傾させて搭載されており、FCスタック1、その車長方向後方に配置された冷却ファン3、FCスタック1を通過した冷却用空気を車長方向後方の排気口4に導く排気ダクト2とその延長部分5などを備えている。
【0013】
既に述べたように、固体高分子型燃料電池は、その出力を維持するために、定期的にアノードセル内の不純物を含む水素ガスを排出するパージ処理が行われる。本発明に係る燃料電池車両では、排気ダクト2(および延長部分5)にアノードオフガスの希釈装置を構成する。以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1において、本発明第1実施形態の燃料電池ユニット100は、FCスタック1の車長方向後方に冷却ファン3を介して排気ダクト2が接続され、排気ダクト2の後面22に排気口4が開口されている。排気ダクト2は、冷却ファン3に隣接した前端開口21、天井面23、底面24、両側面25,25を備えた四角筒状の基本形状をなしている。
【0015】
排気ダクト2には、FCスタック1を通過した冷却用空気が、冷却ファン3に隣接した前端開口21から導入され、排気ダクト2の内部空間20を通解して排気口4から後方に排気される。排気ダクト2の前端開口21に隣接した底面24の幅方向両側部には、FCスタック1のアノードセルから排出されるアノードオフガスの排出口10が配設されている。
【0016】
アノードオフガスの排出口10は、アノードオフガスの主たる希釈ガスとなる冷却用空気の流れ方向と交差する上方向に配向されており、アノードオフガスと冷却用空気の確実な接触および混合がなされるようにしている。冷却用空気の流速は、図示のように中央部が周辺部に比較して相対的に高速であるが、冷却用空気の流路としてのFCスタック1の開口率は、排気ダクト2の流路断面積の25~50%程度であり、高圧で噴射されるアノードオフガスの流速に比べると低速であり、かつ、アノードオフガスは冷却用空気よりも比重が小さいため、天井面23近くに滞留する傾向がある。
【0017】
そこで、排気ダクト2には、FCスタック1のカソードセルから排出されるカソードオフガス(空気、酸素)を、混合撹拌手段を兼ねた第2の希釈ガスとして吐出するカソードオフガス吐出口11が配設されている。カソードオフガス吐出口11は、排気ダクト2の後面22隣接した底面24の幅方向中央に、冷却用空気の流れ方向と交差する上方向に向けて設けられるとともに、カソードオフガス吐出口11の上方に、吐出されたカソードオフガスを中央前方および両側方に分流させる分流板5が、後面22から延設されている。
【0018】
分流板5は、図1(b)(c)に示されるように、排気ダクト2の幅方向中央に延設され、幅方向の両側部は、両側面25,25から離間されている。この構成により、吐出口11から吐出されたカソードオフガスは、矢印11a冷却用空気の流れの略中央における第1希釈領域20aと、冷却用空気の流れの両側部における第2希釈領域20bに送達される。
【0019】
以上のように構成された燃料電池ユニット100において、定期的に実施されるパージ処理に際しては、アノードセルから排出口10に至る配管のバルブ(不図示)を開閉することにより、排出口10から排気ダクト2の内部空間20にアノードオフガス(水素ガス)を排出する。これと同期して、カソードセルから吐出口11に至る配管のバルブ(不図示)を開閉することにより、吐出口11から排気ダクト2の内部空間20に希釈ガスとしてカソードオフガス(空気、酸素)を吐出する。
【0020】
この処理に伴い、排出口10から排出されたアノードオフガスは、矢印10aに示されるように、排気ダクト2内を上昇しつつ冷却用空気によって希釈されながら排気ダクト2内の略中央の第1希釈領域20aに向かう。一方、吐出口11から吐出されたカソードオフガスは、分流板5で分流され、その大部分は、排気ダクト2内の略中央の第1希釈領域20aに合流する流れ(11a)を形成し、この第1希釈領域20aにおいてアノードオフガスと撹拌混合されることで、アノードオフガスがさらに希釈され、水素濃度が安全なレベル(4%以下)に低下された状態で、冷却用空気とともに排気口4から外気に排出される。
【0021】
また、排出口10から排出されたアノードオフガスの一部は、矢印10bに示されるように、冷却用空気の流速が比較的遅い排気ダクト2の両側面25,25に沿って希釈されながら後方に向うが、吐出口11から吐出されたカソードオフガスの一部が、排気ダクト2内の両側部に沿って上昇し第2希釈領域20bに合流する流れ(11b)を形成しており、これら第2希釈領域20bにおいてアノードオフガスと撹拌混合されることで、これらの領域においても、アノードオフガスが安全なレベルに希釈され、冷却用空気とともに排気口4から外気に排出される。
【0022】
上記のように、分流板5によって形成される第1および第2の希釈領域20a,20bは、冷却用空気とそれにより希釈されたアノードオフガスが排気口4に至る流路をブロックするように分布しており、これらの領域20a,20bで、冷却用空気により希釈されたアノードオフガスを、第2の希釈ガスとしてのカソードオフガスで撹拌混合してさらに希釈することで、排気口4に至る冷却用空気の流れを構造的にブロックせずに十分な希釈が可能となり、排気ダクト2の流路抵抗の増加とそれにともなう冷却効率の低下を防止するうえで有利である。
【0023】
なお、上記実施形態において、カソードオフガスは、常時、排気ダクト2内に吐出されても良いが、パージ処理の際にバルブ開閉を行うことにより、カソードオフガスの吐出圧を瞬間的に上昇させて目標地点への到達能力や撹拌効率を高めることができる。また、パージ処理以外ではカソードオフガスを外気に排出し、パージ処理時のみ排気ダクト2内への吐出に切替えるように構成してもよい。
【0024】
本発明に係る燃料電池ユニットには排気ダクト2の形状やカソードオフガス吐出口の配置によりいくつかの実施形態が存在する。以下、代表的な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、基本構成は上述した第1実施形態と同様であるため、同様の構成には同じ符号を付してその説明を省略するものとし、変更点について説明する。
【0025】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態の燃料電池ユニット200を示している。
この燃料電池ユニット200では、排気ダクト2の後面22の下部に排気口4が開口されるとともに、分流板5を設ける代わりに、排気ダクト2の後面22の略中央(やや排気口4寄り)に第1のカソードオフガス吐出口11が配設され、かつ、排気口4手前の底面24の両側部に第2のカソードオフガス吐出口12が配設されている。
【0026】
何れのカソードオフガス吐出口11,12も冷却用空気の流れ方向と交差するように上方向に配向されている点は第1実施形態と同様である。第1および第2の吐出口11,12に配分されるカソードオフガスの吐出量は同量でも構わないが、第1の吐出口11に第2の吐出口12よりも多くの吐出量が配分されることが好ましい。
【0027】
例えば、1つの第1の吐出口11からの吐出量が、2つの第2の吐出口12の合計の吐出量と同等かまたはそれ以上であっても良いし、第1の吐出口11からの吐出量が、第2の吐出口12のそれぞれの吐出量より多く、それらの合計の吐出量より少ないような配分であっても良い。
【0028】
この第2実施形態の燃料電池ユニット200では、第1および第2の吐出口11,12から吐出されるそれぞれのカソードオフガスによって直接的にアノードオフガスの第1の希釈領域20aに合流する第1の流れ(11a)と、第2の希釈領域20bに合流する第2の流れ(12b)が形成される。
【0029】
第1および第2の吐出口11,12が排気口4をガードするように分布する点は第1実施形態と同様であるが、本実施形態では、後面22下部に排気口4が開口され、後面22上部が閉鎖されているので、比重の小さい水素ガスの天井付近への滞留に備えて、第2の吐出口12から吐出されるカソードオフガスが直接的に送達されるようにしている。
【0030】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態の燃料電池ユニット300を示している。
この燃料電池ユニット300は、FCスタック1および冷却ファン3が、排気ダクト2の前面の略上半部のみに開口された前端開口21に接続されており、前面の略下半分は閉鎖されている。換言すれば、排気ダクト2の流路断面がFCスタック1および冷却ファン3に対して下方に拡大されている。
【0031】
一方、排気口4は、前端開口21に対向しないように、排気ダクト2の後面22の略下半分に開口されている。そのため、FCスタック1の実質的な開口率よりも大きい開口面積となっているが、前端開口21と排気口4の間に屈曲した流路が形成されており、排気ダクト2の形状自体においてもアノードオフガスの流出が抑制される構成となっている。
【0032】
アノードオフガス排出口10の配置は第1および第2実施形態と同様である。第1および第2のカソードオフガス吐出口11,12の配置は第2実施形態に近いが、第3実施形態の燃料電池ユニット300では、冷却用空気の流れ方向の上流側に位置した第1のカソードオフガス吐出口11が、排気ダクト2の略中央に2つ並べて配設されており、4つのカソードオフガス吐出口11,12が、冷却用空気の流れ方向の上流側に向かい、排気口4をガードするように台形状に配置されている。
【0033】
この第3実施形態の燃料電池ユニット300では、第1および第2実施形態に比べて、排気ダクト2の流路断面積に対する排気口4の開口面積およびFCスタック1に対する排気口4の開口率が大きいため、排気ダクト2内の冷却用空気の流速および排気口4からの排気速度が相対的に速く、流路抵抗は小さい。後面22上部が閉鎖されている構成は第2実施形態と同様であるが、本実施形態では、比重の小さい水素ガスが天井付近に滞留しやすい性質を積極的に利用して、この部分に第1および第2の希釈領域20a,20bが分布するようにしている。
【0034】
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態の燃料電池ユニット400を示している。この燃料電池ユニット400は、図5に示した燃料電池車両51と同様に前傾して搭載されかつ排気ダクト2の後方に、排気ダクト2に対して屈曲して水平に延びる延長部分5が設けられている。排気口4が後面52の下部に開口され、後面52の上部が閉鎖されている構成は、前述した第2および第3実施形態と同様であるが、この燃料電池ユニット400では、第1のカソードオフガス吐出口11が、排気ダクト2の天井面23に配設され、冷却用空気の流れ方向と交差する斜下方向に配向されている。
【0035】
この燃料電池ユニット400も、前述の第3実施形態と同様に、比重の小さい水素ガスが天井付近に滞留しやすい性質を積極的に利用して、この部分に第1および第2の希釈領域20a,20bが分布する構成であるが、第1および第2のカソードオフガス吐出口11,12がやや食い違いながら対向する配置により、吐出されたカソードオフガスによる良好な撹拌混合効果が期待できる。
【0036】
以上、本発明のいくつかの実施形態について述べたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能である。
【0037】
例えば、上記各実施形態では、カソードオフガス吐出口11,12が排気ダクト2の底面24または天井面23に配設される場合を示したが、カソードオフガス吐出口は両側面25に配設されても良い。また、アノードオフガスの排出口11は幅方向の中央寄りに配設されても良い。
【0038】
さらに、上記各実施形態では、カソードオフガス吐出口11,12が底面24または天井面23に対して垂直上方または下方に配向される場合を示したが、底面24や天井面23に対して、冷却用空気の流れ方向上流側に向かう傾斜角を有して配向されても良い。
【0039】
また、上記実施形態では、分流板5が水平な平板状の場合を成す場合を示したが、分流板はこれ以外の形状、例えば、両側方に向う緩い傾斜角を有する浅いV字状等であっても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 FCスタック
2 排気ダクト
3 冷却ファン
4 排気口
5 延長部分
10 アノードオフガスの排出口
11 カソードオフガス吐出口(第1のカソードオフガス吐出口)
12 カソードオフガス吐出口(第2のカソードオフガス吐出口)
20 内部空間
20a 第1の希釈領域
20b 第2の希釈領域
21 前端開口
22,52 後面
23,53 天井面
24,54 底面
25 両側面
図1
図2
図3
図4
図5