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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】草刈兼用耕耘機
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/14 20060101AFI20221104BHJP
   A01B 33/10 20060101ALI20221104BHJP
   A01D 34/412 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A01B33/14 Z
A01B33/10 Z
A01D34/412
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019102666
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020195310
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】井手 宣弘
(72)【発明者】
【氏名】前野 亮平
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-122503(JP,A)
【文献】特開2001-57802(JP,A)
【文献】実公昭46-1522(JP,Y1)
【文献】実開昭53-112513(JP,U)
【文献】実開平1-98503(JP,U)
【文献】実開昭59-187906(JP,U)
【文献】国際公開第2008/156074(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/14
A01B 33/10
A01D 34/412
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローター軸(1)に溶着した爪ホルダ(2)に対して、作業爪(4)を取付具(3)によって、ローター軸(1)の回転方向へ揺動自在に取付け、作業爪(4)の身体部(19)を、この作業爪(4)が側面視ローター軸(1)の前方域に位置した状態で上方へ向けて湾曲した形状に形成し、該湾曲させた身体部(19)の外周縁部に、土壌面に打込介入して耕耘する耕耘縁(5)を形成し、又、湾曲させた身体部(19)の内周縁先端部に、草茎部を刈取る刈刃縁(6)を形成し、前記爪ホルダ(2)への取付基部(18)には、取付具(3)が挿通される穴(7)部からローター軸(1)の外周部に向けて張り出すと共にローター軸(1)の外周面に接当し、正回転(R)時に作業爪(4)の揺動範囲を規制する爪尻部(8)を形成し、この作業爪(4)の重心(G)位置を、該取付基部(18)の穴(7)位置を通る作業爪(4)の遠心力方向線gよりも、湾曲させた作業爪(4)の反湾曲方向側へ適宜偏倚した状態で回転する構成として、ローター軸(1)の正回転(R)による耕耘作業と、逆回転(Q)による草の刈取作業とを可能にしてなる草刈兼用耕耘機。
【請求項2】
ローター軸(1)の周りに配置の爪ホルダ(2)は、取付具(3)を挿通する穴(9)を形成した左右一対のホルダプレート(16)、(16)間に、作業爪(4)の取付基部(18)を挟着させるホルダ間隔部(17)を形成し、ホルダプレート(16)、(16)の穴(9)、(9)がローター軸(1)の真上に位置した状態で、左右片側のホルダプレート(16)の穴(9)部から後方向へ長く張り出すホルダエッジ(10)と、左右他側のホルダプレート(16)の穴(9)部から前方向へ長く張り出すホルダエッジ(11)とを形成して左右各々のホルダエッジ(10)、(11)をローター軸(1)周りの前、後方向に振分けた形態に構成し、このホルダエッジ(10)、(11)と対面する側のホルダプレート(16)、(16)には、ホルダエッジ(10)、(11)を形成しない開放部(12)、(13)を設けることを特徴とする請求項1に記載の草刈兼用耕耘機。
【請求項3】
爪ホルダ(2)に嵌合して取付具(3)の挿通によって取付られ、爪尻部(8)をローター軸(1)外周面に接当させた状態の作業爪(4)の取付部において、この作業爪(4)の取付基部(18)と爪尻部(8)との外周縁(14)を、爪ホルダ(2)の穴(9)周りのホルダプレート(16)の外周縁(15)、及びホルダエッジ(10)の外周縁(15)よりも外周側へ突出させて形成したことを特徴とする請求項1、又は2に記載の草刈兼用耕耘機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業爪を取付けたローター軸を正回転、又は、逆回転に切替えて耕耘作業、又は、草刈作業を行うもので、耕耘と草刈を可能とする作業爪の構成、作動を簡単、円滑化し、安全で安定した作業爪の取付形態を維持させる草刈兼用耕耘機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
正逆回転するローター軸の周りに草刈耕耘爪を取付けて、このローター軸の正回転によって耕耘を行い、逆回転によって草刈を行う形態の技術が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001―57802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
草刈機の刈取ローターは、刈刃ローター軸に対して回動揺動自在にして取付けて、ハンマーナイフ形態の構成とすることが多いが、この形態をそのまま耕耘機の耕耘ローターとすると、ローター軸に対して回転揺動する耕耘爪の揺動をストッパ等で係止する必要があり、衝突音や打撃音を発生したり、耕耘ローターの耐久性を損い易い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ローター軸1に溶着した爪ホルダ2に対して、作業爪4を取付具3によって、ローター軸1の回転方向へ揺動自在に取付け、作業爪4の身体部19を、この作業爪4がローター軸1の前方域に位置した状態で上方へ向けて湾曲した形状に形成し、該湾曲させた身体部19の外周縁部に、土壌面に打込介入して耕耘する耕耘縁5を形成し、又、湾曲させた身体部19の内周縁先端部に、草茎部を刈取る刈刃縁6を形成し、前記爪ホルダ2への取付基部18には、取付具3の挿通される穴7部からローター軸1の外周部に向けて張り出すと共にローター軸1の外周面に接当し、正回転R時に作業爪4の揺動範囲を規制する爪尻部8を形成し、この作業爪4の重心G位置を、該取付基部18の穴7位置を通る作業爪4の遠心力方向線gよりも、湾曲させた作業爪4の反湾曲方向側へ適宜偏倚した状態で回転する構成として、ローター軸1の正回転Rによる耕耘作業と、逆回転Qによる草の刈取作業とを可能にしてなる草刈兼用耕耘機の構成とする。
【0006】
ローター軸1に溶着した爪ホルダ2に作業爪4を取付具3で取付けた状態で、耕耘も草刈作業も行わない無負荷運転状態において、ローター軸1を正回転R駆動すると、作業爪4は爪ホルダ2の取付具3周りに回動されて、各作業爪4における重心G位置を遠心力方向線gに向けるように回動して、爪尻部8をローター軸1の外周面の押し付け、又は接近するように作用している。このようなローター軸1の回転による作業爪4の揺動作用は、比較的低速回転(略250回転/60秒)の耕耘作業時においても、又、高速回転(略2800回転/60秒)の草刈作業時においても同様に働いている。
【0007】
草刈兼用耕耘機を前進F走行運転しながら耕耘作業を行うときは、本機20の前側に装着した作業爪ローター21のローター軸1を正回転R(耕耘回転)させて、ローター軸1に配設の作業爪4は、ローター軸1の前方域で下向回転となる形態(ダウン回転)に回転駆動されて、このローター軸1の爪ホルダ2に対して、取付具3によって取付けられた作業爪4は、正回転R方向の側に形成される耕耘縁5を土壌面に打込介入して、土壌を耕耘する。このとき作業爪4は耕耘抵抗によって、爪ホルダ2の取付具3周りに正回転R方向とは逆向きの力が作用し、作業爪4の爪尻部8が、ローター軸1の外周面に接当されている。このため作業爪4は、爪尻部8がローター軸1の外周面で受止められた状態で正回転Rされて耕耘することができる。
【0008】
このように耕耘作業中、ローター軸1が耕耘回転しているときは、作業爪4の遠心力による回動によって、爪尻部8が常にローター軸1の外周面に押し付けられた状態にあって、ローター軸1の外周面と爪尻部8との間に大きい間隔を生ずることは少いから、これらの間の衝撃現象も少い。
【0009】
又、作業爪4を有するローター軸1を耕耘時の正回転Rとは逆回転Q(草刈回転)させて、ローター軸1に配設の作業爪4を、ローター軸1の前方域で上向回転となる形態(アッパー回転)に回転駆動させることによって、土壌面の芝草を作業爪4の刈刃縁6で刈取ることができる。この草刈作用時のローター軸1の逆回転Qは、前記耕耘作業時の正回転Rよりもはるかに高回転に設定されているため、作業爪4の遠心力も大きく、この遠心力によって、作業爪4の爪尻部8をローター軸1の外周面に強く押付けて、草茎の刈取抵抗を受けても、刈取作用を円滑に行わせることができる。しかも、刈取時に刈刃縁6が地面に当たったり、石礫等の異物が当たって過負荷状態となると、草茎を刈取する作業爪4が、取付具3周りに、回転方向とは逆の方向へ逃げるように退避回動して、爪尻部8をローター軸1の外周面から離間させて作業爪4の破損を防止する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、ローター軸1の周りに配置の爪ホルダ2は、取付具3を挿通する穴9を形成した左右一対のホルダプレート16、16間に、作業爪4の取付基部18を挟着させるホルダ間隔部17を形成し、ホルダプレート16、16の穴9、9がローター軸1の真上に位置した状態で、左右片側のホルダプレート16の穴9部から後方向へ長く張り出すホルダエッジ10と、左右他側のホルダプレート16の穴9部から前方向へ長く張り出すホルダエッジ11とを形成して左右各々のホルダエッジ10、11をローター軸1周りの前、後方向に振分けた形態に構成し、このホルダエッジ10、11と対面する側のホルダプレート16、16には、ホルダエッジ10、11を形成しない開放部12、13を設けた構成とする。
【0011】
作業爪4を取付けるローター軸1上の爪ホルダ2は、左右一対のホルダプレート16、16間の間隔部17に作業爪4の取付基部18を挟着するように差込んで、これらホルダプレート16、16部に形成する穴9から、作業爪4の取付基部18に形成する穴7に亘って取付具3を挿通して、取付具3周りに揺動自在にして作業爪4を取付ける。
【0012】
前記爪ホルダ2のホルダプレート16、16は、このホルダプレート16、16の穴9、9がローター軸1の真上に位置した状態で、左右片側のホルダプレート16の穴9部から後方向へ長く張り出すホルダエッジ10と、左右他側のホルダプレート16の穴9部から前方向へ長く張り出すホルダエッジ11とを形成して、ローター軸1の外周面に一体に固定している。即ち、ホルダプレート16と対向する側のホルダプレート16には、このホルダエッジ10とは前後反対方向にホルダエッジ11を張り出すように形成している。又、これらホルダエッジ10、11と対向する側のホルダプレート16の前、後端縁は張り出し形成しないで、ホルダエッジ10、11を形成しない開放部12、13を設けている。従って、爪ホルダ2の左右一対のホルダプレート16、16間の間隔部17に嵌合して挟着された作業爪4の取付基部18の一側面部は、このホルダエッジ10、又は11によって重合するような形態で側面支持するが、ホルダエッジ10、又は11と反対側の側面は、開放部12、13によって開放されて、この開放部12、13に浸入した耕耘土壌や、刈取草等の排出が行われ易くしている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、爪ホルダ2に嵌合して取付具3の挿通によって取付られ、爪尻部8をローター軸1外周面に接当させた状態の作業爪4の取付部において、この作業爪4の取付基部18と爪尻部8との外周縁14を、爪ホルダ2の穴9周りのホルダプレート16の外周縁15、及びホルダエッジ10の外周縁15よりも外周側へ突出させて形成した構成とする。
【0014】
作業爪4は、爪ホルダ2に対して、取付具3によって揺動自在に取付けられるが、耕耘作業時や草刈作業時は、土壌や草切れ等の異物が、爪ホルダ2の間隔部17に侵入すると、作業爪の揺動抵抗となり易いが、前記作業爪4の取付基部18と爪尻部8との外周縁14が、この取付基部18と爪尻部8とに対向して設けられるホルダプレート16の外周縁15、及びホルダエッジ10の外周縁15よりも外方へ突出して形成されるため、ホルダプレート16,16間の間隔部17への異物の侵入を防止して、作業爪4の揺動を円滑に行わせ、作業爪4の爪ホルダ2に対する取付を安定維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明は、湾曲形態の作業爪4の外側縁部に耕耘縁5を形成し、内周縁先端部に刈刃縁6を形成して、ローター軸1を正回転R、又は、逆回転Qさせて耕耘と刈取の両作業を可能とする作業爪4の形態と、この作業爪4の重心G位置の設定によって、ローター軸1が回転している時には作業爪4を遠心力により湾曲方向へ回動するように符勢している状態となるため、耕耘回転時でも、草刈回転時でも、作業爪4を遠心力方向線gに沿うように回動して、作業爪4の爪尻部8をローター軸1の外周面に強く押し付けるように接当作用させて、作業爪4の耕耘回転姿勢、及び草刈回転姿勢を安定保持できる。このようなローター軸1の回転による作業爪4の取付具3周りの揺動は、比較的低速の正回転Rの耕耘作業時であっても、又、高速逆回転Qの草刈作業時であっても、同様にして、爪尻部8を作業爪4の遠心力で確実にローター軸1の外周面に接当させて揺動を停止し、規制することができるので、爪尻部8とローター軸1との接当状態が長く保持されて、接当したり離れたりを繰返すことによる接当部の摩耗や打音の発生を抑制することができるという効果がある。
【0016】
前記耕耘作業時の耕耘作用の反力は、作業爪4の穴7部から長く張り出し形成した爪尻部8を強固なローター軸1の外周に接当させて、広範囲に受けるものであるから、衝撃力を緩和することができ、ローター軸1や、作業爪4の損傷、摩耗を軽減することができる。又、このような形態では、作業爪4を着脱するための取付具3や、これを抜止めするナット等を除いては、他に補助部品を要しないため、構成が簡単で安価に生産することができ、耕耘作業や草刈作業中に脱落した部品の飛散や、紛失、損傷等も少なくすることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、取付具3の周りに前後揺動自在に取付支持される作業爪4は、この取付基部18を間隔部17に位置させて、左右一対のホルダプレート16、16間に挟着されて取付具3周りに嵌合支持するもので、ホルダプレート16、16の穴9、9がローター軸1の真上に位置した状態で左右一側のホルダプレート16は、後側へ向けホルダエッジ10を長く張り出させてローター軸1の外周面に固着し、左右他側のホルダプレート16の前側にはホルダエッジ11を長く張り出させてローター軸1の外周面に固着して、これら左右のホルダプレート16、16は、左右各々のホルダエッジ10、11をローター軸1周りの前、後方向に振分けた形態に構成して、ホルダエッジ10、11とは反対側のホルダプレート16の前、後端部には、ホルダエッジを形成しないで、開放部12、13を設けることによって、ローター軸1に対するホルダプレート16、16の取付を堅固にすることができると共に、作業爪4に対して横方向の負荷抵抗が強く働いても、これを前後のホルダエッジ10、11で作業爪4の横揺動や、歪み変化を受けて、安定した耕耘、及び草刈作動を行わせることができる。
【0018】
又、耕耘作業中や草刈作業中は、土壌や刈草等が、爪ホルダ2の間隔部17や、これらのホルダプレート16、16と作業爪4の取付基部18との間に浸入することが多いが、この左右のホルダプレート16、16の穴9、9周り部の前後方向の重合幅は比較的狭く設定し、前後に張り出すホルダエッジ10、11を長く形成してローター軸1に対する爪ホルダ2の取付構成を堅固にしている。しかも、ホルダエッジ10、11の横側対向面には、ホルダエッジ10、11の形成されない開方部12、13を設けて、この取付基部18は開放状態を維持するもので、土壌や刈草等の異物が浸入しても外部へ排出され易く、爪ホルダ2の内部や取付基部18との間への土壌や刈草等の停滞や滞積を少くすることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、爪尻部8をローター軸1外周面に接当させた状態の作業爪4の取付基部18と爪尻部8との外周縁14を、この取付基部18の左右側面を挟むようにして受けるホルダプレート16の穴9周りの外周縁15、及びホルダエッジ10の外周縁15よりも、外周へ突出するように形成することによって、作業時に作業爪4や爪ホルダ2が土壌面や芝草等に接触したり、異物の圧着を受けても、作業爪4の取付基部18や爪尻部8周辺に受けた異物は、この取付基部18を介入支持するホルダプレート16、16間の間隔部17や爪尻部8に対向するホルダエッジ10と爪尻部8との隙間には浸入し難く、ホルダプレート16の外周縁15の外側へ排出案内される。この作用効果は、作業爪4の爪尻部9がローター軸1に押し付けられて、作業爪4が揺動することのない耕耘作業時の土の侵入、滞積に対して特に有効である。このように作業爪4の取付基部18と爪尻部8の形状と、この作業爪4を取付保持するホルダプレート16の形状とによって、きわめて簡単な構成で、作業爪4を安定した作動状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】草刈兼用耕耘機の側面図。
図2】草刈兼用耕耘機の平面図。
図3】培土器を装着した草刈兼用耕耘機の側面図。
図4】草刈時と耕耘時の作業爪の状態を示す側面図。
図5】作業爪の取付形態を示す一部平面図(イ)、及び側面図(ロ)。
図6】作業爪の取付状態を示す一部平面図(イ)、及び側面図(ロ)。
図7】作業爪の一部の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面に基づいて本機20の前側に、作業爪4を有した作業爪ローター21を装着し、主伝動ケース23の下側には、軸25の左右両端部に車輪24を軸装した走行伝動ケース26を設け、後側にはエンジン27を搭載するエンジンベース28を設け、上側部には、上下方向のハンドル回動軸38の周りに左右方向へ旋回してハンドルグリップ29の突出方向を切替可能とするハンドル30を設ける。
【0022】
この主伝動ケース23の前側には、左右両側に突出する伝動軸31、32から伝動回転されるチェーン伝動機構を内装のチェーン伝動ケース33と、ベルト伝動機構を内装のベルト伝動ケース34とを設けて、このチェーン伝動ケース33とベルト伝動ケース34との前端部間に亘って、左右横方向のローター軸1の側端部を軸受けして、ローター軸1を、チェーン伝動ケース33のチェーン機構を介し伝動回転して耕耘することができ、又、ベルト伝動ケース34のベルト伝動機構を介し伝動回転して草刈作業を行うことができる形態に構成している。作業爪ローター21の上周面はローターカバー35で覆っている。36は草の刈高さや耕耘深さを調整できるゲージホイルで、37は培土器22の高さを調整するゲージホイルである。
【0023】
作業爪ローター21による耕耘作業時は、前進F走行させながら耕耘作業を行ったり、後進K走行させながら仕上げ耕耘したり、更には培土器22を装着して後進K走行させることによって、耕耘土壌面を同時に培土することができる。又、草刈作業時は、作業爪ローター21の前側の培土器22を取外した形態として、この作業爪ローター21を前側に位置させた状態で、前進F走行操作しながら草刈作業を行うことができる。
【0024】
ローター軸1の周りに取付けられる作業爪4は、取付基部18から先端部に亘って適宜の厚さと、回転方向に沿う幅を形成して、爪先端部を正回転R方向(耕耘回転方向)とは反対の逆回転Q方向(刈取回転方向)へ向けて湾曲した湾曲爪身体部19の形態とし、即ちローター軸1の前方域で、作業爪4の身体部19を上方へ向けて湾曲形成した形態としている。この湾曲爪身体部19の正回転R方向の前側端縁となる外周縁部に沿って耕耘縁5を形成して、更に耕耘縁5の爪身体部19は、左、右一側の横方向に向けて湾曲の湾曲面部40を形成して、耕耘土壌の反転案内を行い易く形成し、又、作業爪4の身体部19の湾曲内周縁先端部に刈刃縁6を形成している。この湾曲爪身体部19の先端部の刈刃縁6における刃縁線Aは、作業爪4を取付けたローター軸1の横方向軸心線Bと平面視で交差Cする形態に形成している。(図6参照)刈刃縁6は回転によって草茎部を引き切るようにして切断しながら刈取るものであるから、刈取性能を高く維持し刈刃縁6の異物衝撃による損傷も少くすることができる。作業爪4の爪尻部8は、ローター軸1の外周面部に沿って長く張り出す形態として、取付具3周りに回動して、ローター軸1の外周面に係止された状態から、適宜角度域に揺動Dしうる構成としている。
【0025】
ローター軸1に溶着した爪ホルダ2に作業爪4を取付具3で取付けた状態で、耕耘作業も草刈作業も行わない無負荷運転状態において、ローター軸1を正回転R駆動すると、作業爪4は爪ホルダ2の取付具3周りに回動されて、各作業爪4における重心G位置を遠心力方向線gに向けるように回動して、爪尻部8をローター軸1の外周面に押し付け、又は接近するように作用している。このようなローター軸1の回転による作業爪4の揺動作用は、比較的低速回転(略250回転/60秒)の耕耘作業時においても、又、高速回転(略2800回転/60秒)の草刈作業時においても同様に働いている。
【0026】
草刈兼用耕耘機を前進F走行運転しながら耕耘作業を行うときは、本機20の前側に装着した作業爪ローター21のローター軸1を正回転R(耕耘回転)させて、ローター軸1に配設の作業爪4は、ローター軸1の前方域で下向回転となる形態(ダウン回転)に回転駆動されて、このローター軸1の爪ホルダ2に対して、取付具3によって取付けられた作業爪4は、この正回転R方向の側に形成される耕耘縁5を土壌面に打込介入して、土壌を耕耘する。このとき、作業爪4は耕耘抵抗によって、爪ホルダ2の取付具3周りに正回転R方向とは逆向きの力が作用し、作業爪4の爪尻部8が、ローター軸1の周面に接当されている。このため作業爪4は、爪尻部8がローター軸1の周面で受止められた状態で正回転Rされて耕耘することができる。
【0027】
このように耕耘作業中、ローター軸1が耕耘回転しているときは、作業爪4の遠心力による回動によって、爪尻部8が常にローター軸1の外周面に押し付けられた状態にあって、ローター軸1の外周面と爪尻部8との間に大きい間隔を生ずることは少いから、これらの間の衝撃現象も少い。
【0028】
又、作業爪4を有するローター軸1を耕耘時の正回転Rとは逆回転Q(草刈回転)させて、ローター軸1に配設の作業爪4を、ローター軸1の前方域で上向回転となる形態(アッパー回転)に回転駆動させることによって、土壌面の芝草を作業爪4の刈刃縁6で刈取ることができる。この草刈作用時のローター軸1の逆回転Qは、前記耕耘作業時の正回転Rよりもはるかに高回転に設定されているため、作業爪4の遠心力も大きく、この遠心力によって、作業爪4の爪尻部8をローター軸1の外周面に強く押付けて、草茎の刈取抵抗を受けても刈取作用を円滑に行わせることができる。しかも、刈取時に、刈刃縁6が地面に当たったり、石礫等の異物が当たって過負荷状態となると、草茎を刈取する作業爪4が、取付具3周りに、草刈作業時の回転方向とは逆の方向へ逃げるように退避回動して、爪尻部8をローター軸1の外周面から離間させて作業爪4の破損を防止する。
【0029】
作業爪4は、ローター軸1の前方域で上方へ向け湾曲させた上に、先端部を左右横方向へも湾曲して湾曲面部40を形成している。この湾曲面部40に耕耘土壌面に打込介入する耕耘縁5と、草茎部を刈取る刈刃縁6とを形成している。耕耘作用時や、刈取作用時には、湾曲面部40には内側から外側へ向けて作用力Pが働くため、前記ホルダプレート16のホルダエッジ10、11は、この作業爪4の作用力Pを広範囲に受け易い形態に配置構成している。即ち、作業爪4の取付穴7部周りの取付基部18は、左右横方向の湾曲側とは反対側に位置するホルダプレート16で作用力Pを受けるように構成し、この取付基部18の取付穴7部から爪尻部8に亘る部分は、作業爪4の湾曲する内側面側に設けるホルダプレート16のホルダエッジ10で作用力Pを受けるよう構成しているので、作業爪4の横方向への曲げ力の支持効果を高めることができる。
【0030】
前記各作業爪4は、爪ホルダ2を形成するホルダプレート16、16間の間隔部17に作業爪4の取付基部18を嵌合させて、この間隔部17で取付具3周りに揺動自在に支持させる。各ホルダプレート16、16は、ローター軸1の外周部に溶着等によって取付固定されていて、ローター軸1の軸心線Bと平行方向の穴9を形成し、間隔部17に嵌合する作業爪4の取付基部18に形成した穴7とに亘って、取付具3を挿通して、ナット39を螺合して抜け止めする。
【0031】
前記爪ホルダ2を構成する左右一対のホルダプレート16、16には、取付具3を挿通する穴9、9を形成するが、ホルダプレート16、16の穴9、9がローター軸1の真上に位置した状態で、この左右一側のホルダプレート16の後側端部は、ローター軸1の外周面に沿って長く張り出すホルダエッジ10を形成し、左右他側のホルダプレート16の前側端部にも、同様形態のホルダエッジ11を形成して、これら長く張り出したホルダエッジ10、11の内端縁をローター軸1の外周面に溶着固定している。このように前後のホルダエッジ10、11は、ホルダプレート16、16の穴9、9がローター軸1の真上に位置した状態で、前後に齟齬し、振り分けられて構成してあるため、ホルダエッジ10、11の形成されない側の取付基部18の外側面は、開放部12、13として形成されて、この開放部12、13を設けたホルダプレート16、16の間隔部17に嵌合して取付けられる作業爪4の左右一側面は、ホイルプレート16、16の穴9、9周辺部を除いて、広く開放され、このホルダプレート16部や、ホルダエッジ10、11部と、取付基部18との間に異物が浸入しても、開放部12、13への排出が行われ易く、異物の詰りが長期に及び停滞や滞積をするような現象を少くする。
【0032】
前記爪ホルダ2に対して取付けられる作業爪4は、取付基部18の穴7周りや爪尻部8の外周縁14を広く形成して、この外周縁14を、これに対向する爪ホルダ2のホルダプレート16、16や、ホルダエッジ10、11の外周縁15よりも外方へ突出する形態に構成している。この構成によって、作業時に作業爪4や爪ホルダ2が土壌面や芝草等に接触したり、異物の圧着を受けても、作業爪4の取付基部18や爪尻部8周辺に受けた異物は、この取付基部18を介入支持するホルダプレート16、16間の間隔部17や爪尻部8に対向するホルダエッジ10と爪尻部8との隙間には侵入し難く、ホルダプレート16の外周縁15の外側への押出、又は排出される。この作用効果は作業爪4の爪尻部8がローター軸1に押し付けられて、作業爪4が揺動Dすることのない耕耘作業時の土の侵入、滞積に対して特に有効であり、きわめて簡単な構成で、作業爪4を安定した作動状態に維持することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ローター軸
2 爪ホルダ
3 取付具
4 作業爪
5 耕耘縁
6 刈刃縁
7 穴
8 爪尻部
9 穴
10 ホルダエッジ
11 ホルダエッジ
12 開放部
13 開放部
14 外周縁
15 外周縁
16 ホルダプレート
17 間隔部
18 取付基部
19 身体部
G 重心
Q 逆回転
R 正回転
g 遠心力方向線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7