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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20221104BHJP
   F21S 41/36 20180101ALI20221104BHJP
   F21S 41/675 20180101ALI20221104BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20221104BHJP
   F21V 7/09 20060101ALI20221104BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20221104BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20221104BHJP
   F21V 13/00 20060101ALI20221104BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20221104BHJP
   F21S 41/63 20180101ALI20221104BHJP
   G02B 15/00 20060101ALI20221104BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20221104BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20221104BHJP
   F21W 102/10 20180101ALN20221104BHJP
【FI】
F21S2/00 355
F21S2/00 340
F21S41/36
F21S41/675
F21V7/00 570
F21V7/09 500
F21V9/40 300
F21S41/16
F21V13/00 100
F21S41/25
F21S41/63
G02B15/00
G02B5/00 C
G02B5/18
F21W102:10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021069155
(22)【出願日】2021-04-15
(62)【分割の表示】P 2017061720の分割
【原出願日】2017-03-27
(65)【公開番号】P2021120948
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】中津川 夏織
(72)【発明者】
【氏名】石田 一敏
(72)【発明者】
【氏名】西尾 俊平
(72)【発明者】
【氏名】久保田 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】倉重 牧夫
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特許第6094920(JP,B2)
【文献】特開2015-185207(JP,A)
【文献】特開2014-010273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21S 41/36
F21S 41/675
F21V 7/00
F21V 7/09
F21V 9/40
F21S 41/16
F21V 13/00
F21S 41/25
F21S 41/63
G02B 15/00
G02B 5/00
G02B 5/18
F21W 102/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を射出する光源と、
前記光源から射出した光を第1光源光と第2光源光とに分割する分割素子と、
前記第1光源光を回折する固定回折光学素子と、
前記第2光源光を回折する可変回折光学素子と、
前記第2光源光の光路を変化させ前記可変回折光学素子上での入射位置を変化させる走査装置と、を備え、
前記可変回折光学素子は、複数の要素回折光学素子を含み、
前記走査装置は、前記第1光源光の光路外に位置し
前記分割素子は、ハーフミラー、ダイクロイックミラー、バンドパスフィルタ、又は、波長板及び偏光ビームスプリッタの組み合わせである、照明装置。
【請求項2】
前記光源は、前記走査装置の動作に応じて光の射出を停止する、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記可変回折光学素子は、前記第2光源光の被照明領域への進行を規制するダミー部を含む、請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
光を射出する光源と、
前記光源から射出した光源光のうちの第1光源光の光路外であって前記光源光のうちの第2光源光の光路上に位置する可変マスクと、
前記第1光源光を回折する固定回折光学素子と、
前記第2光源光を回折する可変回折光学素子と、を備え、
前記可変マスクは、前記可変回折光学素子上における前記第2光源光の入射領域を変化させることができ、
前記可変回折光学素子は、複数の要素回折光学素子を含み
前記第1光源光および前記第2光源光のうちの前記第2光源光のみが前記可変マスクに入射する、照明装置。
【請求項5】
光を射出する光源と、
前記光源から射出した光を回折する回折光学素子と、
前記光源から射出した光の光路に沿って前記光源と前記回折光学素子との間に位置する可変整形光学系と、を備え、
前記可変整形光学系は、前記光源から射出した光を可変整形し、前記回折光学素子上での一定領域を含む入射領域の大きさを調整し、
前記可変整形光学系で整形された光は、常に、少なくとも前記一定領域に入射し、
前記回折光学素子は、前記一定領域に位置し且つ前記回折光学素子上での前記入射領域の大きさに依らず前記光源から射出した光が入射する固定回折光学素子と、前記回折光学素子上での入射領域が拡大した際に前記光源から射出した光が入射する可変回折光学素子と、を含む、照明装置。
【請求項6】
前記可変回折光学素子は、複数の要素回折光学素子を含む、請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記可変整形光学系は、レンズを含み、
前記レンズは、当該レンズの光軸と平行な方向に移動可能に支持されている、請求項5又は6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記可変整形光学系は、前記光源から射出した光を発散させるビームエクスパンダーを含み、
前記ビームエクスパンダーは、移動可能に支持されている、請求項5~7のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項9】
前記可変整形光学系は、可変絞りを含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記光源から光が射出されている間、前記光源から射出した光の少なくとも一部は、常に、前記固定回折光学素子に入射する、請求項1~9のいずれか一項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、光源および回折光学素子を含んだ照明装置が知られている。特許文献1に開示された照明装置は、光源、走査装置、及び、回折光学素子を有している。走査装置は、光源から射出した光の進行方向を経時的に変化させる。これにより、光源から射出した光は、回折光学素子上を走査するようにして当該回折光学素子上へ入射する。回折光学素子は、互いに異なる回折特性を有した複数の要素ホログラムを含んでいる。光源は、走査装置の動作に応じて、つまり回折光学素子への入射位置に応じて、光の射出及び光の射出停止を切り替える。この照明装置によれば、照明光が照射される領域を所望のパターンに切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-110813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、照明装置を用いて照明を行う多くの場合、常に照明を行いたい領域が存在する。例えば車のヘッドランプでは、前方領域を常に照明しながら、必要に応じて、この前方領域に加え、前方領域の左右に位置する左右領域や前方領域の更に前方となる遠方領域を照明することが望まれる。従来の照明装置では、常に照明を行いたい領域へ光を回折する要素ホログラム上を光が走査するタイミングで、光源は光を射出する。しかしながら、固定的に光が向けられ続ける要素ホログラムまでも走査対象とすることは、走査装置の動作にともなう振動、騒音、発熱等をより顕著とし、走査装置の故障リスクを負うことを意味する。
【0005】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、照明装置への走査装置の適用に伴う負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による第1の照明装置は、
光を射出する光源と、
前記光源から射出した光を第1光源光と第2光源光とに分割する分割素子と、
前記第1光源光を回折する固定回折光学素子と、
前記第2光源光を回折する可変回折光学素子と、
前記第2光源光の光路を変化させ前記可変回折光学素子上での入射位置を変化させる走査装置と、を備え、
前記可変回折光学素子は、複数の要素回折光学素子を含む。
【0007】
本発明による第1の照明装置において、前記光源は、前記走査装置の動作に応じて光の射出を停止するようにしてもよい。
【0008】
本発明による第1の照明装置において、前記可変回折光学素子は、前記第2光源光の被照明領域への進行を規制するダミー部を含むようにしてもよい。
【0009】
本発明による第2の照明装置は、
光を射出する光源と、
前記光源から射出した光源光のうちの第1光源光の光路外であって前記光源光のうちの第2光源光の光路上に位置する可変マスクと、
前記第1光源光を回折する固定回折光学素子と、
前記第2光源光を回折する可変回折光学素子と、を備え、
前記可変マスクは、前記可変回折光学素子上における前記第2光源光の入射領域を変化させることができ、
前記可変回折光学素子は、複数の要素回折光学素子を含む。
【0010】
本発明による第3の照明装置は、
光を射出する光源と、
前記光源から射出した光を回折する回折光学素子と、
前記光源から射出した光の光路に沿って前記光源と前記回折光学素子との間に位置する可変整形光学系と、を備え、
前記可変整形光学系は、前記光源から射出した光を可変整形し、前記回折光学素子上での入射領域の大きさを調整し、
前記回折光学素子は、前記回折光学素子上での入射領域の大きさに依らず前記光源から射出した光が入射する固定回折光学素子と、前記回折光学素子上での入射領域が拡大した際に前記光源から射出した光が入射する可変回折光学素子と、を含む。
【0011】
本発明による第3の照明装置において、前記可変回折光学素子は、複数の要素回折光学素子を含むようにしてもよい。
【0012】
本発明による第3の照明装置において、
前記可変整形光学系は、レンズを含み、
前記レンズは、当該レンズの光軸と平行な方向に移動可能に支持されていてもよい。
【0013】
本発明による第3の照明装置において、前記可変整形光学系は、前記光源から射出した光を発散させるビームエクスパンダーを含み、
本発明による第3の照明装置において、前記ビームエクスパンダーは、移動可能に支持されていてもよい。
【0014】
本発明による第3の照明装置において、前記可変整形光学系は、可変絞りを含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、照明装置への走査装置の適用に伴う負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の第1の実施の形態を説明するための図であって、照明装置を示す概略図である。
図2図2は、図1の照明装置の回折光学素子を示す平面図である。
図3図3は、図1の照明装置によって照明される被照明領域の例を示す図である。
図4図4は、可変回折光学素子に含まれる要素回折光学素子の照射パターンの一例を示す図である。
図5図5は、図4の照射パターンで可変回折光学素子に光源光を照射した場合における被照明領域の照明パターンの例を示す図である。
図6図6は、可変回折光学素子に含まれる要素回折光学素子の照射パターンの他の例を示す図である。
図7図7は、図6の照射パターンで可変回折光学素子に光源光を照射した場合における被照明領域の照明パターンの例を示す図である。
図8図8は、図1の照明装置によって照明される被照明領域の他の例を示す図である。
図9図9は、本開示の第2の実施の形態を説明するための図であって、照明装置を示す概略図である。
図10図10は、図9の照明装置の回折光学素子を示す平面図である。
図11図11は、本開示の第3の実施の形態を説明するための図であって、照明装置を示す概略図である。
図12図12は、図11の照明装置の回折光学素子を示す平面図である。
図13図13は、図11の照明装置によって照明される被照明領域の一例を示す図である。
図14図14は、図11に対応する図であって、照明装置の一変形例を示す概略図である。
図15図15は、図11に対応する図であって、照明装置の他の変形例を示す概略図である。
図16図16は、図1に対応する図であって、照明装置の変形例を示す概略図である。
図17図17は、図9に対応する図であって、照明装置の変形例を示す概略図である。
図18図18は、図11に対応する図であって、照明装置の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0018】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や、長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0019】
以下に説明する照明装置10は、光源から射出された光、以下においては光源光とも呼ばれる光を、回折光学素子40で拡散させて被照明領域Zに向けることにより、被照明領域Zを照明する。とりわけ以下に説明する照明装置10の被照明領域Zには、固定被照明領域Zfと可変被照明領域Zvとが含まれている。固定被照明領域Zfは、照明装置10の稼働中、常に、照明装置10から射出する照明光によって照明されるようになる領域である。一方、可変被照明領域Zvは、必要に応じて、固定被照明領域Zfに加えて照明光を照射される領域である。更にいくつかの例では、可変被照明領域Zvの照明パターンを変化させることが可能となっている。ここで、被照明領域Zは、回折光学素子40によって照明される実際の被照射面積(照明範囲)として表すことができるし、一定の座標軸を設定した上で角度空間における角度範囲によっても表現することができる。
【0020】
このような照明装置10は、種々の分野、例えば車や船等の移動体の照明装置として、使用され得る。そして、以下に説明する複数の実施の形態では、従来存在した不具合を対処するための工夫、具体的には、走査装置の動作にともなう振動、騒音、発熱等を効果的に抑制し、且つ、走査装置の故障リスクを軽減するための工夫がなされている。
【0021】
<第1の実施の形態>
まず、図1図8を参照して、第1の実施の形態について説明する。
【0022】
図1は、第1の実施の形態に係る照明装置10の一例を示す模式図である。図1に示すように、第1の実施の形態において、照明装置10は、光を射出する光源15と、光源15から射出した光、すなわち光源光SLを回折する回折光学素子40と、を含んでいる。図1に示された照明装置10は、光源光SLを第1光源光SL1と第2光源光SL2とに分割する分割素子20と、第1光源光SL1を整形する整形光学系25と、第2光源光SL2の光路を調整する走査装置30と、を更に含んでいる。回折光学素子40は、第1光源光SL1を回折する固定回折光学素子45と、第2光源光SL2を回折する可変回折光学素子50と、を含んでいる。固定回折光学素子45で回折された回折光は固定被照明領域Zfに向かい、可変回折光学素子50で回折された回折光は可変被照明領域Zvに向かう。以下、各構成要素について順に説明していく。
【0023】
光源15は、種々の型式の光源を用いることができる。一例として、コヒーレント光を射出する光源、例えばレーザー光源を、光源15として用いることができる。レーザー光源から投射されるレーザー光は、直進性に優れ、被照明領域Zを高精度に照明するための光として好適である。
【0024】
図示された光源15は、単一のレーザー光源を含んでいる。したがって、図示された例では、レーザー光源から発振されるレーザー光の波長域に対応した色で、被照明領域Zが照明される。ただし、被照明領域Zを所望の色に照明することができるよう、光源15が複数のレーザー光源を含み、各レーザー光源から射出した光が重ね合わされた後、分割素子20、整形光学系25、走査装置30及び回折光学素子40に向かうようにしてもよいし、各レーザー光源から射出した光が当該レーザー光源に対応して設けられた分割素子20、整形光学系25、走査装置30及び回折光学素子40を経て、その後に被照明領域Z上で重ね合わされてもよい。このような例において、光源15に含まれる複数のレーザー光源は、異なる波長域の光を射出するだけでなく、同一の波長域の光を射出するようにしてもよい。光源15が同一の波長域の光を射出するレーザー光源を含むことで、被照明領域Zを明るく照明することが可能となる。
【0025】
分割素子20は、光源15から射出した光源光SLを、第1光源光SL1及び第2光源光SL2に分割する。このような分割素子20として、ハーフミラーを用いることができる。図1に示された照明装置10では、ハーフミラーからなる分割素子20で反射された光源光SLが、第1光源光SL1となり、ハーフミラーからなる分割素子20を透過した光源光SLが第2光源光SL2となる。第1光源光SL1は、固定回折光学素子45で回折されて、固定被照明領域Zfを照明する。第2光源光SL2は、可変回折光学素子50で回折されて、可変被照明領域Zvを照明する。ハーフミラーからなる分割素子20の反射率を調節しておくことで、固定被照明領域Zf及び可変被照明領域Zvの照明光量を調節することができる。また、分割素子20としては、ダイクロイックミラーやバンドパスフィルタ、波長板及び偏光ビームスプリッタの組み合わせ等を用いることができる。
【0026】
次に、整形光学系25について説明する。分割素子20で第2光源光SL2から分離された第1光源光SL1は、整形光学系25に向かう。整形光学系25は、第1光源光SL1を整形する。言い換えると、整形光学系25は、第1光源光SL1の光軸に直交する断面での形状や、第1光源光SL1の光束の立体的な形状を整形する。図示された例において、整形光学系25は、第1光源光SL1を拡幅した平行光束に整形する。図1に示すように、整形光学系25は、第1光源光SL1の光路に沿った順で、ビームエクスパンダー26及びレンズ27を有している。ビームエクスパンダー26は、光源15から射出したレーザー光を発散光束に整形する。レンズ27は、ビームエクスパンダー26で生成された発散光束を、平行光束に整形し直す。なお、整形光学系25は、固定回折光学素子45上での第1光源光SL1の入射領域が、円形状となるように通常のレンズを用いてもよいし、当該入射領域が矩形状となるようにシリンドリカルレンズを用いてもよいし、また、当該入射領域が矩形状等の所望形状となるようにマスクを用いてもよい。
【0027】
次に、走査装置30について説明する。走査装置30は、第2光源光SL2の進行方向を経時的に変化させ、第2光源光SL2の進行方向が一定にならないようにする。この結果、走査装置30を出射した第2光源光SL2は、回折光学素子40の可変回折光学素子50の入射面上を走査するようになる。
【0028】
走査装置30は、互いに交差する方向とそれぞれ平行な二つの回転軸周りに回転可能な反射鏡31を有する。この反射鏡31に入射した第2光源光SL2は、反射鏡31の傾斜角度に応じた角度で反射されて、固定回折光学素子45に向かう。反射鏡31を二つの回転軸周りに回転させることで、第2光源光SL2は可変回折光学素子50の入射面上を二次元的に走査することが可能となる。反射鏡31は、例えば一定の周期で二つの回転軸周りに回転する一定の動作を繰り返す。そして、回折光学素子40上での第2光源光SL2の入射位置は、周期性を持って変化し、例えば図3に示された走査経路spを繰り返し移動する。このような走査装置30として、例えばMEMSミラーを使用することができる。
【0029】
次に、回折光学素子40について説明する。回折光学素子40は、光源15から射出した光源光SLに対して回折作用を及ぼす素子である。回折光学素子40は、光源光SLを回折して、被照明領域Zに向ける。したがって、被照明領域Zは、回折光学素子40での回折光によって、照明されることになる。
【0030】
図示された回折光学素子40は、固定回折光学素子45及び可変回折光学素子50を有している。固定回折光学素子45は、光源光SLのうちの第1光源光SL1を回折して、固定被照明領域Zfに向ける。一方、可変回折光学素子50は、光源光SLのうちの第2光源光SL2を回折して、可変被照明領域Zvに向ける。また、可変回折光学素子50は、複数の要素回折光学素子51を含んでいる。各要素回折光学素子51は、第2光源光SL2を回折し、図示された例では当該回折光を互いに異なる要素被照明領域Zveに向ける。
【0031】
図2は、回折光学素子40を示す平面図である。図示された回折光学素子40において、固定回折光学素子45及び可変回折光学素子50は、隣接して配置されている。すなわち、固定回折光学素子45及び可変回折光学素子50は、一つの光学素子を平面分割するようにして、配置されている。可変回折光学素子50は、第1~第5要素回折光学素子51a~51eを含んでいる。第1~第5要素回折光学素子51a~51eは、一直線上に隣接して配列されている。
【0032】
図3は、回折光学素子40によって照明される被照明領域Zの一例を示している。図3に示された例において、固定回折光学素子45からの回折光によって照明される固定被照明領域Zfは、照明装置10の前方に広がる広い領域となっている。可変回折光学素子50からの回折光によって照明される可変被照明領域Zvは、固定被照明領域Zfの両側方に位置する領域および固定被照明領域Zfの更に前方となる領域を含んでいる。そして、可変被照明領域Zvは、各要素回折光学素子51に対応して五つに区分けされ、第1~第5要素被照明領域Zve1~Zve5を含んでいる。第1要素回折光学素子51aからの回折光によって照明される第1要素被照明領域Zve1は、固定被照明領域Zfの左側方に位置している。第2要素回折光学素子51bからの回折光によって照明される第2要素被照明領域Zve2は、固定被照明領域Zfの前方領域のうちの左方に位置している。第3要素回折光学素子51cからの回折光によって照明される第3要素被照明領域Zve3は、固定被照明領域Zfの前方領域のうちの中央に位置している。第4要素回折光学素子51dからの回折光によって照明される第4要素被照明領域Zve4は、固定被照明領域Zfの前方領域のうちの右方に位置している。第5要素回折光学素子51eからの回折光によって照明される第5要素被照明領域Zve5は、固定被照明領域Zfの右側方に位置している。
【0033】
すなわち、図3に示された例において、固定回折光学素子45及び可変回折光学素子50は、異なる回折特性を有し、少なくとも部分的に異なる領域を照明する。また、可変回折光学素子50に含まれる複数の要素被照明領域Zveは、異なる回折特性を有し、少なくとも部分的に異なる領域を照明する。
【0034】
ただし、図3に示された被照明領域Zは一例に過ぎない。図3に示された例では、固定被照明領域Zf及び可変被照明領域Zvが重複していない例を示したが、少なくとも一部分において重複していてもよいし、いずれか一方が他方に包含されるようにしてもよいし、更には同一であってもよい。また、固定被照明領域Zf及び可変被照明領域Zvは、接している必要はなく、互いから離間していてもよい。同様に、複数の要素被照明領域Zveは、図示された例において重複していないが、少なくとも一部分において重複していてもよいし、いずれか一つが他の一つに包含されるようにしてもよいし、更にはいずれか一つが他の一つと同一であってもよい。また、複数の要素被照明領域Zveは、互いに接している必要はなく、互いから離間していてもよい。
【0035】
また、図3に示された被照明領域Zは、回折光学素子40によって重ねて照明されるニアフィールドの被照明領域として表されている。そして、回折光学素子40で光路を調整された光は、被照明領域Zを通過した後、実際の照明範囲である、例えば地面上の所定範囲を照明する。ファーフィールドの照明範囲は、実際の被照明領域の寸法よりも、角度空間における拡散角度分布として表現されることが多い。本明細書における「被照明領域」「固定被照明領域」「可変被照明領域」「要素被照明領域」という用語は、実際の被照射面積(照明範囲)に加え角度空間における拡散角度範囲も包含するものとする。
【0036】
一例として、回折光学素子40をなす固定回折光学素子45、可変回折光学素子50及び要素回折光学素子51は、干渉縞パターンを記録されたホログラム記録媒体として構成され得る。干渉縞パターンを種々に調整することで、各素子40,45,50,51で回折される光の進行方向、言い換えると、各素子40,45,50,51で拡散される光の進行方向を、制御することができる。
【0037】
各素子40,45,50,51は、例えば実物の散乱板からの散乱光を物体光として用いて作製することができる。より具体的には、素子40,45,50,51の母体であるホログラム感光材料に、互いに干渉性を有するコヒーレント光からなる参照光と物体光とを照射すると、これらの光の干渉による干渉縞がホログラム感光材料に形成されて、素子40,45,50,51が作製される。参照光としては、コヒーレント光であるレーザー光が用いられ、物体光としては、例えば安価に入手可能な等方散乱板からの散乱光が用いられる。
【0038】
素子40,45,50,51を作製する際に用いた参照光の光路を逆向きに進むよう素子40,45,50,51に向けてレーザー光を照射することで、素子40,45,50,51を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板の配置位置に、散乱板の再生像が生成される。素子40,45,50,51を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板が均一な面散乱をしていれば、素子40,45,50,51により得られる散乱板の再生像も、均一な面照明となり、この散乱板の再生像が生成される領域を照明されるべき領域Z,Zf,Zv,Zveとすることができる。
【0039】
また、各素子40,45,50,51に形成される複雑な干渉縞のパターンは、現実の物体光と参照光を用いて形成する代わりに、予定した再生照明光の波長や入射方向、並びに、再生されるべき像の形状や位置等に基づき計算機を用いて設計することが可能である。このようにして得られた素子40,45,50,51は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)とも呼ばれる。例えば、照明装置10が地面上や水面上の一定の大きさを有した被照明領域Zを照明することに用いられる場合、物体光を生成することが困難であり、計算機合成ホログラムを素子40,45,50,51として用いることが好適である。
【0040】
また、各素子40,45,50,51上の各点における拡散角度特性が同じであるフーリエ変換ホログラムを計算機合成により形成してもよい。さらに、素子40,45,50,51の下流側にレンズなどの光学部材を設けて、照明されるべき領域Z,Zf,Zv,Zveの全域に入射するように調整してもよい。
【0041】
素子40,45,50,51の具体的な形態としては、フォトポリマーを用いた体積型ホログラム記録媒体でもよいし、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプの体積型ホログラム記録媒体でもよいし、レリーフ型(エンボス型)のホログラム記録媒体でもよい。また、素子40,45,50,51は、透過型であってもよいし、反射型であってもよい。
【0042】
図2に戻って、可変回折光学素子50は、五つの要素回折光学素子51に加えて、ダミー部52を含んでいる。ダミー部52は、第2光源光SL2の被照明領域Zへの進行を阻止する光学部材である。ダミー部52として、典型的には、光吸収性を有した部材を用いることができる。他の例として、ダミー部52は、被照明領域Z以外の回収領域に光を誘導する部材、例えば反射面や回折光学素子を用いることができる。
【0043】
ダミー部52は、後述するように、可変被照明領域Zv内の照明パターンによらず、固定被照明領域Zfの明るさを一定に保つことを目的として設けられている。上述したように、可変回折光学素子50に入射する第2光源光SL2の光路は、走査装置30によって経時的に変化する。図2には、可変回折光学素子50へ入射する第2光源光SL2の入射位置の走査経路spが、示されている。ダミー部52は、ダミー部52上での走査経路spの合計長さと要素回折光学素子51上での走査経路spの合計長さが同一となるように、設けられていることが好ましい。図2に示された例において、五つの要素回折光学素子51は同一の平面視形状を有している。ダミー部52は、要素回折光学素子51と同一の平面視形状を有する要素ダミー部を、要素回折光学素子51の数と同一の五つ含んでいる。図2に示された例において、可変回折光学素子50の上段となる領域に第1~第5要素回折光学素子51a~51eが並べられ、可変回折光学素子50の下段となる領域に第1~第5要素ダミー部52a~52eが並べられている。しかしながら、図2に示された例に限られず、例えば、走査経路spに沿って、ダミー部52と要素回折光学素子51が交互に配置されるようにしてもよい。
【0044】
ところで、図1に示すように、照明装置10は、更に、制御部11を有している。制御部11は、光源15及び走査装置30に電気的に接続している。制御部11は、光源15及び走査装置30の動作を制御する。制御部11は、走査装置30の動作に同期して、光源15からの光源光SLの射出を制御する。制御部11による光源光SLの射出の有無の制御は、走査装置30による走査タイミングに基づいて、言い換えると、可変回折光学素子50上における第2光源光SL2の入射位置に基づいて、実施される。すなわち、制御部11は、可変被照明領域Zv内における所望する照明パターンに応じた各要素回折光学素子51への第2光源光SL2の照射の有無を、光源15からの光源光SLの射出および射出停止を切り替えることによって制御する。
【0045】
次に、以上に説明した構成からなる照明装置10の作用について説明する。
【0046】
光源15から射出した光源光SLは、まず、分割素子20に入射する。分割素子20によって、光源光SLは、第1光源光SL1及び第2光源光SL2に分割される。
【0047】
第1光源光SL1は、整形光学系25に入射する。整形光学系25では、第1光源光SL1の光路幅を拡大する。すなわち、光軸に直交する断面において光が占める領域が広がるよう、整形光学系25は第1光源光SL1を整形する。整形光学系25は、ビームエクスパンダー26及びレンズ27を有している。図1に示すように、整形光学系25のビームエクスパンダー26は、光源15から射出した光を発散させて発散光束に変換する。そして、整形光学系25のレンズ27は、発散光束を平行光束へとコリメートする。整形光学系25で整形された第1光源光SL1は、次に、回折光学素子40の固定回折光学素子45に入射する。固定回折光学素子45は、第1光源光SL1を回折して、固定被照明領域Zfに向ける。これにより、固定回折光学素子45で回折された回折光によって、固定被照明領域Zfが照明される。
【0048】
第2光源光SL2は、走査装置30に入射する。走査装置30は、第2光源光SL2の光路を経時的に変化させる。第2光源光SL2の光路の変化は周期的となる。第2光源光SL2は、その後、回折光学素子40の可変回折光学素子50へ入射する。可変回折光学素子50上での第2光源光SL2の入射位置は、走査経路spに沿って移動する。すなわち、第2光源光SL2は、可変回折光学素子50上を走査するようにして、可変回折光学素子50に入射する。可変回折光学素子50は、複数の要素回折光学素子51および複数のダミー部52を含んでいる。図2に示すように、第2光源光SL2の走査経路spは、複数の要素回折光学素子51および複数のダミー部52上を延びている。このとき、制御部11は、可変被照明領域Zv内での所望とする照明パターンに応じて、光源15からの光源光SLの射出の有無を切り替える。
【0049】
図4に示された例では、第2要素回折光学素子51b、第3要素回折光学素子51c及び第4要素回折光学素子51dに、第2光源光SL2が入射し、第1要素回折光学素子51a及び第5要素回折光学素子51eには、第2光源光SL2が入射していない。このとき、図5に示すように、固定被照明領域Zfが第1光源光SL1によって照明されるとともに、可変被照明領域Zv内の第2要素被照明領域Zve2、第3要素被照明領域Zve3及び第4要素被照明領域Zve4が第2光源光SL2によって照明される。
【0050】
また、図6に示された例では、第1要素回折光学素子51aに第2光源光SL2が入射し、第2~第5要素回折光学素子51b~51eには第2光源光SL2が入射していない。このとき、図7に示すように、固定被照明領域Zfが第1光源光SL1によって照明されるとともに、可変被照明領域Zv内は第1要素被照明領域Zve1だけが第2光源光SL2によって照明される。
【0051】
以上のようにして、照明装置10は、固定回折光学素子45を照明し続けながら、可変回折光学素子50内を所望するパターンで照明する、或いは、可変回折光学素子50を照明しない。固定回折光学素子45で回折されて固定被照明領域Zfの照明に用いられる第1光源光SL1は、走査装置30に入射しない。すなわち、走査装置30による回折光学素子40上での光源光SLの走査経路spに、固定回折光学素子45が含まれていない。このように、常に照明される固定被照明領域Zfに向けて光を回折する固定回折光学素子45を、回折光学素子40上での光源光SLの走査経路spから省くことにより、走査経路spを短くすることができる。これにより、走査装置30の動作にともなった振動、騒音、発熱等を効果的に抑制することができ、且つ、走査装置30の故障リスクを効果的に軽減することができる。
【0052】
ところで、可変被照明領域Zv内での所望する照明パターンに応じて、第2光源光SL2の各要素回折光学素子51内への入射が制御される。図示された例では、光源15からの光源光SLの射出および射出停止を切り替えることで、各要素回折光学素子51内への第2光源光SL2の入射が制御される。しかしながら、光源15からの光源光SLの射出が停止すると、第2光源光SL2が可変回折光学素子50に入射しないタイミングで、第1光源光SL1も固定回折光学素子45に入射しなくなる。走査装置30の動作は極めて速く、各領域への照明光の入射の有無は、人間の目で判別することはできない。しかしながら、走査装置30の一周期分の期間に対する光源15が光源光SLを射出している期間の割合が変動すると、固定被照明領域Zfにおいて人間の目で明るさの変動が視認される可能性がある。さらに、可変被照明領域Zv内のいずれの要素被照明領域Zveも照明しない場合、光源15から光源光SLが射出されず、固定回折光学素子45を照明することができなくなる。このような不具合に対処するため、可変回折光学素子50は、要素回折光学素子51に加えて、被照明領域Zの照明に寄与しないダミー部52を有している。
【0053】
図5の照明パターンを実現するための図4に示された例では、第1要素ダミー部52a及び第5要素ダミー部52eに第2光源光SL2が入射し、第2要素ダミー部52b、第3要素ダミー部52c及び第4要素ダミー部52dには、第2光源光SL2が入射していない。結果として、光源15は、可変回折光学素子50を平面分割した10個の領域のうちの半分となる五個の領域を走査する間、光源光SLを射出し、10個の領域のうちの半分となる残りの五個の領域を走査する間、光源光SLの射出を停止している。すなわち、第2光源光SL2の入射位置が走査経路spを一周する間、すなわち、走査装置30の一周期分の動作の間、光源15は、半分の期間に亘って光源光SLを射出し、残り半分の期間に亘って光源光SLの射出を停止している。
【0054】
また、図7の照明パターンを実現するための図6に示された例では、第1要素ダミー部52a~第4要素ダミー部52dに第2光源光SL2が入射し、第5要素ダミー部52eには第2光源光SL2が入射していない。図7の例でも、光源15は、可変回折光学素子50を平面分割した10個の領域のうちの半分となる五個の領域を走査する間、光源光SLを射出し、10個の領域のうちの半分となる残りの五個の領域を走査する間、光源光SLの射出を停止している。すなわち、第2光源光SL2の入射位置が走査経路spを一周する間、すなわち、走査装置30の一周期分の動作の間、光源15は、半分の期間に亘って光源光SLを射出し、残り半分の期間に亘って光源光SLの射出を停止している。
【0055】
つまり、図示された例では、可変回折光学素子50に、可変回折光学素子50の照明に寄与しないダミー部52を設けることで、光源15からの光源光SLの射出を発停させることに起因した、照明時における固定被照明領域Zf内の明るさ変動を効果的に抑制することができる。とりわけ、図示された例では、可変回折光学素子50が、要素回折光学素子51と同数のダミー部52を含んでいるので、さらに正確に表現すると、複数のダミー部52上での走査経路spの合計長さが、複数の要素回折光学素子51上での走査経路spの合計長さと同一となっているので、照明時における固定被照明領域Zf内の明るさを均一化することができる。
【0056】
以上に説明してきた第1の実施の形態において、照明装置10は、光を射出する光源15と、光源15から射出した光源光SLを第1光源光SL1と第2光源光SL2とに分割する分割素子20と、第1光源光SL1を回折する固定回折光学素子45と、第2光源光SL2を回折する可変回折光学素子50と、第2光源光SL2の光路を変化させ可変回折光学素子50上における第2光源光SL2の入射位置を変化させる走査装置30と、を有している。可変回折光学素子50は、複数の要素回折光学素子51を含んでいる。このような第1の実施の形態では、走査装置30の動作に応じて、すなわち複数のダミー部52上の走査位置に応じて、光源15からの光源光SLの射出および光源光SLの射出停止を切り替えることで、固定回折光学素子45での回折光を用いて固定被照明領域Zfを照明しながら、併せて、可変回折光学素子50での回折光を用いて所望の要素被照明領域Zveを照明することができる。そして、固定回折光学素子45は、走査装置30による光源光SLの走査経路spに含まれていない。したがって、走査装置30による走査経路spを短縮することができ、走査装置30の動作にともなう振動、騒音、発熱等を効果的に抑制することができ、且つ、走査装置30の故障リスクを効果的に軽減することができる。
【0057】
また、第1の実施の形態において、可変回折光学素子50は、第2光源光SL2の被照明領域Zへの進行を阻止するダミー部52を含んでいる。このような照明装置10においては、第2光源光SL2が照射される要素回折光学素子51の数に応じて、ダミー部52への第2光源光SL2の照射期間を調整することができる。これにより、走査装置30が走査経路spに沿って一回の周期的動作を行う間に、光源15が光を射出している期間を調整とすることができる。この結果、可変被照明領域Zvの照明パターンに依らず、固定被照明領域Zfを一定の明るさで照明することが可能となる。
【0058】
なお、上述してきた第1の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第1の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の第1の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0059】
上述した第1の実施の形態において、照明装置10が所定の被照明領域Zを明るく照明する例を示したが、これに限られない。例えば図8に示すように、照明装置10が、所定の輪郭を有した領域を照明し、したがって、所定の輪郭を表示する装置として機能するようにしてもよい。図8に示された一例では、第1要素被照明領域Zve1が左に向く矢印の外輪郭を有した領域となっており、第5要素被照明領域Zve5が右に向く矢印の外輪郭を有した領域となっている。
【0060】
また、上述した第1の実施の形態において、光源15が光源光SLの射出及び光源光SLの射出停止を切り替えることで、各要素回折光学素子51への第2光源光SL2の入射を制御し、可変被照明領域Zvを所望の照明パターンで照明するようにしたが、この例に限られない。例えば、図1に二点鎖線で示すように、第2光源光SL2の光路に沿った分割素子20と走査装置30との間に、シャッター35を設けるようにしてもよい。このシャッター35が、制御部11からの制御信号で動作し、走査装置30の動作に応じて走査装置30に向かう第2光源光SL2を遮光するようにしてもよい。この例によれば、可変回折光学素子50のダミー部52を不要とすることができ、走査装置30による走査経路spをさらに短縮して、走査装置30の負担を軽減することができる。
【0061】
さらに上述した第1の実施の形態において、光源15から射出した光源光SLが分割素子20に直接入射する例を示したが、この例に限られない。図16に示すように、光源15から射出した光源光SLが光ファイバ16で搬送されるようにしてもよい。図16に示された例において、光ファイバ16の端部16aから射出した光源光SLは、整形素子17で整形された後、分割素子20に入射する。整形素子17として、例えばコリメータレンズを用いることができる。図16に示すように、光ファイバ16の端部16aから射出した光源光SLは、発散光束をなす。そして、コリメータレンズからなる整形素子17は、発散光束を平行光束に変換する。図16に示された例では、分割素子20は、入射する平行光束を、平行光束としての第1光源光SL1と平行光束としての第2光源光SL2とに分割する。
【0062】
<第2の実施の形態>
次に、図9及び図10を参照して、第2の実施の形態について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第1の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の第1の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0063】
図9は、第2の実施の形態に係る照明装置10の一例を示す模式図である。図9に示すように、第2の実施の形態において、照明装置10は、光を射出する光源15と、光源15から射出した光、すなわち光源光SLを回折する回折光学素子40と、を含んでいる。図9に示された照明装置10は、光源光SLの光路に沿った光源15と回折光学素子40との間に、整形光学系25及び可変マスク60をこの順で更に有している。以下、照明装置10の各構成要素について説明する。
【0064】
光源15は、第1の実施の形態と同様に構成され得る。整形光学系25は、光源光SLの光路上に設けられて光源光SLを整形する点において、第1光源光SL1の光路上に設けられ第1光源光SL1を整形する第1の実施の形態の整形光学系と異なるが、光を整形する手段として第1の実施の形態と同様に構成され得る。図9に示された例において、整形光学系25は、ビームエクスパンダー26及びレンズ27を有している。
【0065】
可変マスク60は、光源から射出した光源光SLのうちの一部の光の光路上に設けられている。図9に示す例において、可変マスク60は、整形光学系25で拡幅された光源光SLの光路の一部を塞ぐように配置されている。回折光学素子40は、固定回折光学素子45及び可変回折光学素子50を含んでいる。光源光SLのうちの可変マスク60によって光路を遮られない光が、第1光源光SL1として、回折光学素子40の固定回折光学素子45に入射する。一方、光源光SLのうちの可変マスク60に入射した光は、パターンを変更し、第2光源光SL2として、回折光学素子40の可変回折光学素子50に入射する。
【0066】
図10は、図9の照明装置10に適用され得る回折光学素子40の一例を、平面図として、示している。回折光学素子40は、下方となる領域に幅広の固定回折光学素子45を有している。また、回折光学素子40は、固定回折光学素子45の上方となる領域に、可変回折光学素子50を有している。可変回折光学素子50は、幅方向に平面分割されることで、複数の要素回折光学素子51を有している。図10に示す例において、可変回折光学素子50は、五つの要素回折光学素子51を含んでいる。可変回折光学素子50に含まれた第1~第5要素回折光学素子51a~51eは、異なる回折特性を有している。回折光学素子40の各領域45,50,51で回折された回折光が、被照明領域Zに向けられて被照明領域Zを照明する。
【0067】
一例として、固定回折光学素子45で回折された第1光源光SL1が、図3の固定被照明領域Zfを照明し、可変回折光学素子50で回折された第2光源光SL2が、図3の可変被照明領域Zvを照明するようにしてもよい。また、第1要素回折光学素子51aで回折された第2光源光SL2が、図3の第1要素被照明領域Zve1を照明し、第2要素回折光学素子51bで回折された第2光源光SL2が、図3の第2要素被照明領域Zve2を照明し、第3要素回折光学素子51cで回折された第2光源光SL2が、図3の第3要素被照明領域Zve3を照明し、第4要素回折光学素子51dで回折された第2光源光SL2が、図3の第4要素被照明領域Zve4を照明し、第5要素回折光学素子51eで回折された第2光源光SL2が、図3の第5要素被照明領域Zve5を照明するようにしてもよい。
【0068】
なお、第1の実施の形態と同様に第2の実施の形態においても、固定被照明領域Zf及び可変被照明領域Zvは、重複しないようにしてもよいし、少なくとも一部分において重複していてもよいし、いずれか一方が他方に包含されるようにしてもよいし、更には同一であってもよい。また、固定被照明領域Zf及び可変被照明領域Zvは、接している必要はなく、互いから離間していてもよい。同様に、複数の要素被照明領域Zveは、重複しないようにしてもよいし、少なくとも一部分において重複していてもよいし、いずれか一つが他の一つに包含されるようにしてもよいし、更にはいずれか一つが他の一つと同一であってもよい。また、複数の要素被照明領域Zveは、互いに接している必要はなく、互いから離間していてもよい。
【0069】
可変マスク60は、可変回折光学素子50上における第2光源光SL2の入射領域iaを制御する(図9参照)。可変マスク60は、可変回折光学素子50上における第2光源光SL2の入射領域iaを調整し得る種々の装置を採用することができる。典型的には、可変マスク60として、空間光変調器61を用いることができる。空間光変調器61には、透過型液晶表示装置、反射型の液晶表示装置、マイクロミラーデバイス等が用いられ得る。すなわち、可変マスク60は、所望パターンで第2光源光SL2を透過させる装置であってもよいし、所望パターンで第2光源光SL2を反射させる装置であってもよい。また、可変マスク60は、不要な第2光源光SL2を吸収するようにしてもよいし、不要な第2光源光SL2を回折光学素子40以外に向けるようにしてもよい。
【0070】
図9に示された照明装置10においては、光源15から射出した光源光SLが、整形光学系25によって整形される。図示された例において、光源光SLは、整形光学系25によって拡幅される。次に、拡幅された光源光SLは、可変マスク60に入射するか否かで、第1光源光SL1及び第2光源光SL2に区分けされる。第1光源光SL1は、可変マスク60から作用を及ぼされることなく回折光学素子40の固定回折光学素子45に入射する。第2光源光SL2は、可変マスク60によって所望パターンに整形されて、回折光学素子40の可変回折光学素子50に入射する。この結果、固定回折光学素子45で回折された第1光源光SL1によって固定被照明領域Zfが照明され、可変回折光学素子50の要素回折光学素子51で回折された第2光源光SL2によって可変被照明領域Zvが照明される。可変被照明領域Zvの照明パターンは、可変回折光学素子50のいずれの要素回折光学素子51に第2光源光SL2が入射するかで決定する。したがって、可変マスク60を用いることで、可変被照明領域Zvの照明パターンを制御することができる。
【0071】
以上に説明してきた第2の実施の形態において、照明装置10は、光を射出する光源15と、光源15から射出した光のうちの第1光源光SL1の光路外であって光源15から射出した光のうちの第2光源光SL2の光路上に位置する可変マスク60と、第1光源光SL1を回折する固定回折光学素子45と、第2光源光SL2を回折する可変回折光学素子50と、を有している。可変マスク60は、可変回折光学素子50上における第2光源光SL2の入射領域iaを変化させることができる。可変回折光学素子50は、複数の要素回折光学素子51を含んでいる。このような第2の実施の形態によれば、可変マスク60により、可変回折光学素子50に含まれる所望の要素回折光学素子51のみに第2光源光SL2を照射することができる。同時に、固定回折光学素子45には、第1光源光SL1が照射され続ける。すなわち、可変マスク60を用いることで、走査装置30を用いることなく、回折光学素子40での回折光を用いて固定被照明領域Zfを照明しながら、併せて、要素回折光学素子51での回折光を用いて所望の要素被照明領域Zveを照明することができる。したがって、走査装置30の動作にともなう振動、騒音、発熱等や、走査装置30の故障リスクを回避することができる。
【0072】
なお、上述してきた第2の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。例えば、回折光学素子40において、固定回折光学素子45及び可変回折光学素子50の面積割合を変更し、各被照明領域Zf,Zvの明るさを調整することができる。また、可変回折光学素子50に含まれる複数の要素回折光学素子51の配置、数量、面積比等も適宜変更することができる。
【0073】
また上述した第2の実施の形態において、光源15から射出した光源光SLが整形光学系25に直接入射する例を示したが、この例に限られない。図17に示すように、光源15から射出した光源光SLが光ファイバ16で搬送されるようにしてもよい。図17に示された例において、光ファイバ16の端部16aから射出した光源光SLは、整形光学系25のレンズ27に入射している。図17に示すように、光ファイバ16の端部16aから射出した光源光SLは、発散光束をなす。このため、図17に示された例では、整形光学系25のビームエクスパンダー26を用いていない。ただし、光ファイバ16から射出した光源光SLの発散の程度が低い場合には、整形光学系25のビームエクスパンダー26を設けることも可能である。
【0074】
<第3の実施の形態>
次に、図11図15を参照して、第3の実施の形態について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第1又は第2の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の第1又は第2の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0075】
図11は、第3の実施の形態に係る照明装置10の一例を示す模式図である。図11に示すように、第3の実施の形態において、照明装置10は、光を射出する光源15と、光源15から射出した光、すなわち光源光SLを整形する可変整形光学系70と、整形された光源光SLを回折する回折光学素子40と、を含んでいる。以下、照明装置10の各構成要素について説明する。
【0076】
光源15は、第1又は第2の実施の形態と同様に構成され得る。
【0077】
可変整形光学系70は、光源光SLを整形する。言い換えると、可変整形光学系70は、光源光SLの光軸に直交する断面での形状や、光源光SLの光束の立体的な形状を整形する。図示された例において、可変整形光学系70は、光源光SLを拡幅する。図11に示すように、可変整形光学系70は、光源光SLの光路に沿った順で、ビームエクスパンダー26及びレンズ27を有している。ビームエクスパンダー26は、光源15から射出したレーザー光を発散光束に整形する。レンズ27は、ビームエクスパンダー26で生成された発散光束を、平行光束に整形し直す、或いは、発散の程度を抑えて平行光束に近付ける。なお、可変整形光学系70は、回折光学素子40上での光源光SLの入射領域iaが、円形状となるように通常のレンズを用いてもよいし、当該入射領域iaが矩形状となるようにシリンドリカルレンズを用いてもよい。後述する図12に示された回折光学素子40は、入射領域iaが平面視において矩形状となることに対応している。
【0078】
図示された例において、可変整形光学系70のうちレンズ27は、移動支持具76によって支持されている。移動支持具76は、レンズ27の光軸odと平行な方向に、レンズ27を移動させる。図示された例において、レンズ27は、ビームエクスパンダー26からの発散光束を平行光束に変換することができる第1位置(図11の実線の位置)と、当該位置からビームエクスパンダー26に接近した第2位置(図11の二点鎖線の位置)と、の間を移動可能となっている。図11に示された例において、移動支持具76が、第1位置から第2位置に向けてレンズ27を移動させるにしたがって、回折光学素子40上での光源光SLの入射領域iaは、次第に大きくなっていく。すなわち、可変整形光学系70は、光源15から射出した光を可変整形し、回折光学素子40上での入射領域iaの大きさを調整することができる。
【0079】
図12は、図11の照明装置10に適用され得る回折光学素子40の一例を、平面図として、示している。回折光学素子40は、中心となる固定回折光学素子45と、固定回折光学素子45を周状に取り囲む可変回折光学素子50を有している。固定回折光学素子45は、レンズ27が上述した第1位置に配置された状態で、光源光SLが入射する入射領域iaと一致する。
【0080】
可変回折光学素子50は、図示された例において、二つの要素回折光学素子51に区分けされている。第1要素回折光学素子51aが、固定回折光学素子45に隣接して固定回折光学素子45を周状に取り囲む。第2要素回折光学素子51bが、第1要素回折光学素子51aに隣接して、第1要素回折光学素子51aを周状に取り囲む。固定回折光学素子45が上述した第1位置から第2位置に向けて移動を開始すると、光源光SLが、固定回折光学素子45に加えて第1要素回折光学素子51aにも入射するようになる。さらに、固定回折光学素子45が第2位置に接近すると、光源光SLが、固定回折光学素子45及び第1要素回折光学素子51aに加えて、第2要素回折光学素子51bにも入射するようになる。
【0081】
図13は、回折光学素子40によって照明される被照明領域Zの一例を示している。図13に示された例において、固定回折光学素子45からの回折光によって照明される固定被照明領域Zfは、照明装置10の前方に広がる広い領域となっている。可変回折光学素子50からの回折光によって照明される可変被照明領域Zvは、固定被照明領域Zfの更に前方となる領域を含んでいる。そして、可変被照明領域Zvは、各要素回折光学素子51に対応して二つに区分けされ、第1及び第2要素被照明領域Zve1,Zve2を含んでいる。第1要素回折光学素子51aからの回折光によって照明される第1要素被照明領域Zve1は、固定被照明領域Zfに隣接して固定被照明領域Zfの前方に位置している。第2要素回折光学素子51bからの回折光によって照明される第2要素被照明領域Zve2は、第1要素被照明領域Zve1に隣接して第1要素被照明領域Zve1の前方に位置している。
【0082】
ただし、図13に示された、被照明領域Zは一例に過ぎない。図13に示された例では、固定被照明領域Zf及び可変被照明領域Zvが重複していない例を示したが、少なくとも一部分において重複していてもよいし、いずれか一方が他方に包含されるようにしてもよいし、更には同一であってもよい。また、固定被照明領域Zf及び可変被照明領域Zvは、接している必要はなく、互いから離間していてもよい。同様に、複数の要素被照明領域Zveは、図示された例において重複していないが、少なくとも一部分において重複していてもよいし、いずれか一つが他の一つに包含されるようにしてもよいし、更にはいずれか一つが他の一つと同一であってもよい。また、複数の要素被照明領域Zveは、互いに接している必要はなく、互いから離間していてもよい。
【0083】
図11に示された照明装置10においては、光源15から射出した光源光SLが、可変整形光学系70によって可変整形される。例えば、図11に実線で示す第1位置にレンズ27が配置されている場合、可変整形光学系70は、まず、ビームエクスパンダー26によって光源光SLを発散光束に変換し、次に、レンズ27によって光源光SLを発散光束から平行光束に変換する。図示された例において、平行光束は、固定回折光学素子45の全域に入射し、可変回折光学素子50には入射しない。固定回折光学素子45は、光源光SLを回折して、固定被照明領域Zfに向ける。これにより、固定被照明領域Zfが、固定回折光学素子45で回折された光源光SLによって、照明される。
【0084】
移動支持具76は、レンズ27を移動可能に支持している。図11に二点鎖線で示す位置に配置されたレンズ27は、ビームエクスパンダー26で整形された発散光束を整形し、発散の程度を弱める。レンズ27で発散の程度を弱められた光源光SLは、可変回折光学素子50の固定回折光学素子45だけでなく、可変回折光学素子50の第1及び第2要素回折光学素子51a,51bにも入射する。このとき、固定回折光学素子45は、光源光SLを回折して、固定被照明領域Zfに向ける。同様に、第1要素回折光学素子51aは、光源光SLを回折して第1要素被照明領域Zve1に向け、第2要素回折光学素子51bは、光源光SLを回折して第2要素被照明領域Zve2に向ける。これにより、固定被照明領域Zfが固定回折光学素子45での回折光によって照明されるとともに、第1要素被照明領域Zve1が第1要素回折光学素子51aでの回折光によって照明され、且つ、第2要素被照明領域Zve2が第2要素回折光学素子51bでの回折光によって照明される。
【0085】
また、移動支持具76が、レンズ27を第1位置から第2位置へ向けて移動させるにしたがい、回折光学素子40上での光源光SLの入射領域iaは拡大する。レンズ27が第1位置と第2位置との間に位置する場合、光源光SLが、固定回折光学素子45と第1要素回折光学素子51aに入射し、第2要素回折光学素子51bに入射しないようにすることもできる。このとき、固定被照明領域Zf及び第1要素被照明領域Zve1のみが照明され、第2要素被照明領域Zve2は照明されない。
【0086】
すなわち、図11図13に示された例において、固定回折光学素子45及び可変回折光学素子50の要素回折光学素子51は、互いに隣接して、順に配置されている。また、各素子45,51での回折光によって照明されるようになる領域Zf,Zveも、互いに隣接して、順に配置されている。この結果、レンズ27を第1位置から第2位置へ移動させることにより、回折光学素子40上での光源光SLの入射領域iaを次第に拡大し、より遠くの領域まで照明することが可能となる。また逆に、レンズ27を第2位置から第1位置へ移動させることにより、回折光学素子40上での光源光SLの入射領域iaを次第に縮小し、照明される領域を近接した領域へと縮小することができる。
【0087】
以上に説明してきた第3の実施の形態において、照明装置10は、光を射出する光源15と、光源15から射出した光を回折する回折光学素子40と、光源15から射出した光源光SLの光路に沿って光源15と回折光学素子40との間に位置する可変整形光学系70と、を有している。可変整形光学系70は、光源15から射出した光源光SLを可変整形し、回折光学素子40上での入射領域iaの大きさを調整する。回折光学素子40は、回折光学素子40上での入射領域iaの大きさに依らず光源15から射出した光源光SLが入射する固定回折光学素子45と、固定回折光学素子45上での入射領域iaが拡大した際に光源15から射出した光が入射する可変回折光学素子50と、を含んでいる。このような第3の実施の形態によれば、可変整形光学系70により、可変回折光学素子50への光の照射の有無を制御している。一方、固定回折光学素子45には、光が照射され続ける。すなわち、可変回折光学素子50を用いることで、走査装置30を用いることなく、固定回折光学素子45での回折光を用いて固定被照明領域Zfを照明しながら、併せて、可変回折光学素子50での回折光を用いた可変被照明領域Zvを照明および非照明を切り替えることができる。したがって、走査装置30の動作にともなう振動、騒音、発熱等や、走査装置30の故障リスクを回避することができる。
【0088】
また、第3の実施の形態において、可変回折光学素子50は、互いに異なる回折特性を有した複数の要素回折光学素子51を含んでいる。このような照明装置10によれば、可変整形光学系70により、可変回折光学素子50に含まれる所望の要素回折光学素子51のみに光源光SLを照射することができる。同時に、可変回折光学素子50には、第1光源光SL1が照射され続ける。すなわち、可変回折光学素子50を用いることで、走査装置30を用いることなく、固定回折光学素子45での回折光を用いて固定被照明領域Zfを照明しながら、併せて、要素回折光学素子51での回折光を用いて所望の要素被照明領域Zveを照明することができる。
【0089】
さらに、第3の実施の形態において、可変整形光学系70は、レンズ27を含んでいる。このレンズ27は、当該レンズ27の光軸odと平行な方向に移動可能である。このような照明装置10によれば、レンズ27を移動させることで、可変回折光学素子50への光源光SLの照射の有無を制御すること、さらには、可変回折光学素子50に含まれる所望の要素回折光学素子51のみに光源光SLを照射することが可能となる。レンズ27の移動は、可変回折光学素子50への光源光SLの照射パターンを切り替える際にのみ実施すればよい。したがって、レンズ27の移動にともなった振動、騒音、発熱等や、レンズ27を移動させるための手段76の故障リスクは、走査装置30と比較にならない程、僅かとなる。
【0090】
なお、上述してきた第3の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第3の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の第3の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0091】
上述した第3の実施の形態において、可変整形光学系70は、レンズ27を移動させることで、回折光学素子40上での光源光SLの入射領域iaを変更する例を示したが、これに限られない。例えば、レンズ27の移動に加えて又はレンズ27の移動に代えて、図14に示すようにビームエクスパンダー26を移動可能としてもよいし、図15に示すように可変絞り73を設けるようにしてもよい。
【0092】
図14に示された例において、ビームエクスパンダー26は、移動支持具77によって支持されている。図示された例において、移動支持具77は、レンズ27の光軸odと平行な方向に、ビームエクスパンダー26を移動させる。ビームエクスパンダー26は、レンズ27でのレンズ作用により光源光SLがコリメートされるようになる第3位置(図14の実線の位置)と、当該位置からレンズ27に接近した第4位置(図14の二点鎖線の位置)と、の間を移動可能となっている。図14に示された例において、移動支持具77が、第3位置から第4位置に向けてビームエクスパンダー26を移動させるにしたがって、回折光学素子40上での光源光SLの入射領域iaは、次第に大きくなっていく。すなわち、図14に示された例においても、可変整形光学系70は、光源15から射出した光を可変整形し、回折光学素子40上での入射領域iaの大きさを調整することができる。
【0093】
このような図14に示された変形例において、可変整形光学系70は、光源15から射出した光源光SLを発散させるビームエクスパンダー26を含み、このビームエクスパンダー26は、移動可能に支持されている。このような照明装置10によれば、ビームエクスパンダー26を移動させることで、可変回折光学素子50への光源光SLの照射の有無を制御すること、さらには、可変回折光学素子50に含まれる所望の要素回折光学素子51のみに光源光SLを照射することが可能となる。ビームエクスパンダー26の移動は、可変回折光学素子50への光源光SLの照射パターンを切り替える際にのみ実施すればよい。そして、ビームエクスパンダー26の移動にともなった振動、騒音、発熱等や、ビームエクスパンダー26の故障リスクは、走査装置30と比較にならない程、僅かとなる。
【0094】
図15に示された例において、可変絞り73は、ビームエクスパンダー26及びレンズ27での光学作用によって拡幅された光源光SLの光路上に配置されている。可変絞り73は、その中央領域において、光源光SLを透過させることができる。その一方で、外周部において、光源光SLの透過を規制する。可変絞り73は、中央の透過領域の大きさを変更することができ、これにより、回折光学素子40上での入射領域iaの大きさを調整することができる。
【0095】
このような図15に示された変形例において、可変整形光学系70は、可変絞り73を含んでいる。このような照明装置10によれば、可変絞り73により、可変回折光学素子50への光の照射の有無を制御すること、さらには、可変回折光学素子50に含まれる所望の要素回折光学素子51のみに光源光SLを照射することが可能となる。可変絞り73の動作は、可変回折光学素子50への照射パターンを切り替える際にのみ実施すればよい。したがって、可変絞り73の動作にともなった振動、騒音、発熱等や、可変絞り73の故障リスクは、走査装置と比較にならない程、僅かとなる。
【0096】
また上述した第3の実施の形態において、光源15から射出した光源光SLが可変整形光学系70に直接入射する例を示したが、この例に限られない。図18に示すように、光源15から射出した光源光SLが光ファイバ16で搬送されるようにしてもよい。図18に示された例において、光ファイバ16の端部16aから射出した光源光SLは、可変整形光学系70のレンズ27に入射している。図18に示すように、光ファイバ16の端部16aから射出した光源光SLは、発散光束をなす。このため、図18に示された例では、可変整形光学系70のビームエクスパンダー26を用いていない。ただし、光ファイバ16から射出した光源光SLの発散の程度が低い場合には、可変整形光学系70のビームエクスパンダー26を設けることも可能である。また、図18に示された例は、図11に示された照明装置10に光ファイバ16を適用しているが、図14図15に示された照明装置10に対しても光ファイバ16を適用することができる。
【0097】
以上において、複数の実施の形態とその変形例を説明してきたが、当然に、異なる実施形態や異なる変形例として説明された複数の構成を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0098】
Z 被照明領域
Zf 固定被照明領域
Zv 可変被照明領域
Zve 要素被照明領域
Zve1 第1要素被照明領域
Zve2 第2要素被照明領域
Zve3 第3要素被照明領域
Zve4 第4要素被照明領域
Zve5 第5要素被照明領域
SL 光源光
SL1 第1光源光
SL2 第2光源光
ia 入射領域
sp 走査経路
od 光軸
10 照明装置
11 制御部
15 光源
20 分割素子
25 整形光学系
26 ビームエクスパンダー
27 レンズ
30 走査装置
31 反射鏡
35 シャッター
40 回折光学素子
45 固定回折光学素子
50 可変回折光学素子
51 要素回折光学素子
51a 第1要素回折光学素子
51b 第2要素回折光学素子
51c 第3要素回折光学素子
51d 第4要素回折光学素子
51e 第5要素回折光学素子
52 ダミー部
52a 第1要素ダミー部
52b 第2要素ダミー部
52c 第3要素ダミー部
52d 第4要素ダミー部
52e 第5要素ダミー部
60 可変マスク
61 空間光変調器
70 可変整形光学系
73 可変絞り
76 移動支持具
77 移動支持具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18