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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】機能性フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 23/20 20060101AFI20221104BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221104BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20221104BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221104BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20221104BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B32B23/20
B32B7/023
B05D1/36 B
B05D7/24 303A
B05D3/00 D
B05D7/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022117313
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2022070391の分割
【原出願日】2022-04-21
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2021098273
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021098276
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍児
(72)【発明者】
【氏名】清水 利人
(72)【発明者】
【氏名】山田 順也
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-132187(JP,A)
【文献】特開2012-063577(JP,A)
【文献】特開2008-107762(JP,A)
【文献】特開2013-142773(JP,A)
【文献】特開2011-081121(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043341(WO,A1)
【文献】特開2013-141771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 7/04- 7/06
G02B 1/10- 1/18
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーを含む第1樹脂組成物を溶剤で希釈した希釈液を基材上に塗布する希釈液塗布工程と、
前記溶剤の一部を蒸発させ、前記第1樹脂組成物を未硬化又は半硬化の状態のままにする乾燥工程と、
前記希釈液上に、フィラーを含む第2樹脂組成物を設ける設置工程と、
前記第1樹脂組成物及び前記第2樹脂組成物を硬化させることで、前記基材上で前記第1樹脂組成物が硬化してなる樹脂を含むプライマー層と、前記プライマー層上で前記第2樹脂組成物が硬化してなる樹脂を含む機能層と、を形成する硬化工程と、を備え、
前記希釈液塗布工程では、前記希釈液における前記第1樹脂組成物の一部を前記基材に浸透させ、
前記乾燥工程において、前記溶剤の一部を蒸発させることで、前記希釈液に残留溶剤を残しておき、
前記設置工程で、前記希釈液上に前記第2樹脂組成物が設けられた際、前記残留溶剤によって前記希釈液上の前記第2樹脂組成物の一部を前記希釈液側に流動させ、
前記プライマー層における前記フィラーの密度が、前記機能層における前記フィラーの密度よりも小さくなるようにし、
前記第1樹脂組成物が含む前記フィラーと、前記第2樹脂組成物が含む前記フィラーとを同じにする機能性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記設置工程では、加温した前記第2樹脂組成物を前記希釈液上に設ける、請求項1に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1樹脂組成物における前記フィラーの割合と、前記第2樹脂組成物における前記フィラーの割合は、同等である、請求項1に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記溶剤は、ケトン系溶剤である、請求項1に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記フィラーは、平均粒子径が20nm以上80nm以下であるシリカ粒子である、請求項1に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第1樹脂組成物及び前記第2樹脂組成物は、電離放射線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂である、請求項1に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記基材は、アセチルセルロース系樹脂を含む、請求項1に記載の機能性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性フィルムは、例えば反射防止等の光学的機能や、ハードコートやガスバリア等の保護機能を発揮する部材である。
【0003】
機能性フィルムは、基材に機能層を設けることで構成されることがある。この際、機能層は、機能性フィルムに期待される所望の機能を発揮する層として形成される。
【0004】
基材に機能層を設ける機能性フィルムでは、一般に、基材として、主成分を樹脂とするフィルムが用いられる。一方、機能層は、一般に、有機材料、無機材料又はこれらを組み合わせた材料で形成され得る。
【0005】
有機材料と無機材料とを組み合わせた材料とは、例えば、フィルム状に形成される有機材料の樹脂内に無機材料の粒状フィラーが無数に含まれるようなもの等である。
【0006】
基材に機能層を直接的に設ける場合、基材の材質と機能層の材質との関係に応じて、基材と機能層とが十分に密着しない場合がある。この場合、基材と機能層との間にプライマー層を設けることで、密着性の向上を図ることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-24913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
機能層が樹脂内に無機材料の粒状フィラーを含む場合、フィラーによって所望の機能が得られる一方で、フィラーにより機能層と基材との密着性が損なわれる場合がある。これに対して、上述のようにプライマー層を設ければ、機能層と基材との密着性を向上させ得る。しかしながら、例えば機能性フィルムの厚みに制限がある場合には、プライマー層の厚みの分だけ、機能層の厚みを小さくしなければならず、フィラーの数が減る状況が生じ得る。このとき、機能層の機能が低下する虞がある。
【0009】
本発明は上記事情を考慮してなされたものであり、基材と機能層との密着性を簡易に且つ効果的に向上でき、さらには期待される機能を好適に発揮できる機能性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]~[11]に関連する。
[1]アセチルセルロース系樹脂を含む基材と、前記基材上に設けられた、フィラーを含むプライマー層と、前記プライマー層上に設けられた、フィラーを含む機能層と、を備え、前記基材は、前記プライマー層側に、前記プライマー層が含む樹脂が一部に浸透してなる浸透層を有し、前記浸透層の厚みは、0.1μm以上3.5μm以下であり、前記プライマー層の厚みは、0.1μm以上1.0μm以下であり、前記プライマー層における前記フィラー及び前記機能層における前記フィラーは、平均粒子径が20nm以上80nm以下であるシリカ粒子であり、前記プライマー層における前記フィラーの密度は、前記機能層における前記フィラーの密度の1/3以上3/4以下であり、前記プライマー層と前記機能層とはそれぞれ一種の樹脂を含み、前記プライマー層が含む一種の樹脂と前記機能層が含む一種の樹脂とが同じである、機能性フィルム。
【0011】
[2]アセチルセルロース系樹脂を含む基材と、前記基材上に設けられた、フィラーを含むプライマー層と、前記プライマー層上に設けられた、フィラーを含む機能層と、を備え、前記基材は、前記プライマー層側に、前記プライマー層が含む樹脂が一部に浸透してなる浸透層を有し、前記浸透層の厚みは、0.1μm以上3.5μm以下であり、前記プライマー層の厚みは、0.1μm以上1.0μm以下であり、前記プライマー層における前記フィラー及び前記機能層における前記フィラーは、平均粒子径が20nm以上80nm以下であるシリカ粒子であり、前記機能層における前記フィラーは、前記機能層の厚み方向の断面で、0.5μmあたり90個以上150個以下で存在し、前記プライマー層における前記フィラーは、前記プライマー層の厚み方向の断面で、0.2μmあたり15個以上45個以下で存在し、前記プライマー層と前記機能層とはそれぞれ一種の樹脂を含み、前記プライマー層が含む一種の樹脂と前記機能層が含む一種の樹脂とが同じである、機能性フィルム。
【0012】
[3]アセチルセルロース系樹脂を含む基材と、前記基材上に設けられた、フィラーを含むプライマー層と、前記プライマー層上に設けられた、フィラーを含む機能層と、を備え、前記基材は、前記プライマー層側に、前記プライマー層が含む樹脂が一部に浸透してなる浸透層を有し、前記浸透層の厚みは、0.1μm以上3.5μm以下であり、前記プライマー層の厚みは、0.1μm以上1.0μm以下であり、前記プライマー層における前記フィラー及び前記機能層における前記フィラーは、平均粒子径が20nm以上80nm以下であるシリカ粒子であり、前記プライマー層における前記フィラーは、前記プライマー層の厚み方向の断面で、0.2μmあたり15個以上45個以下で存在し、前記プライマー層と前記機能層とはそれぞれ一種の樹脂を含み、前記プライマー層が含む一種の樹脂と前記機能層が含む一種の樹脂とが同じである、機能性フィルム。
【0013】
[4]アセチルセルロース系樹脂を含む基材と、前記基材上に設けられた、フィラーを含むプライマー層と、前記プライマー層上に設けられた、フィラーを含む機能層と、を備え、前記基材は、前記プライマー層側に、前記プライマー層が含む樹脂が一部に浸透してなる浸透層を有し、前記浸透層の厚みは、0.1μm以上3.5μm以下であり、前記プライマー層の厚みは、0.1μm以上1.0μm以下であり、前記プライマー層における前記フィラー及び前記機能層における前記フィラーは、平均粒子径が20nm以上80nm以下であるシリカ粒子であり、前記プライマー層における前記フィラーの密度は、前記プライマー層の厚み方向の断面で、15%以上30%以下であり、前記プライマー層と前記機能層とはそれぞれ一種の樹脂を含み、前記プライマー層が含む一種の樹脂と前記機能層が含む一種の樹脂とが同じである、機能性フィルム。
【0014】
[5]フィラーを含む第1樹脂組成物を溶剤で希釈した希釈液を基材上に塗布する希釈液塗布工程と、前記溶剤の一部を蒸発させ、前記第1樹脂組成物を未硬化又は半硬化の状態のままにする乾燥工程と、前記希釈液上に、フィラーを含む第2樹脂組成物を設ける設置工程と、前記第1樹脂組成物及び前記第2樹脂組成物を硬化させることで、前記基材上で前記第1樹脂組成物が硬化してなる樹脂を含むプライマー層と、前記プライマー層上で前記第2樹脂組成物が硬化してなる樹脂を含む機能層と、を形成する硬化工程と、を備え、前記希釈液塗布工程では、前記希釈液における前記第1樹脂組成物の一部を前記基材に浸透させ、前記乾燥工程において、前記溶剤の一部を蒸発させることで、前記希釈液に残留溶剤を残しておき、前記設置工程で、前記希釈液上に前記第2樹脂組成物が設けられた際、前記残留溶剤によって前記希釈液上の前記第2樹脂組成物の一部を前記希釈液側に流動させ、前記プライマー層における前記フィラーの密度が、前記機能層における前記フィラーの密度よりも小さくなるようにし、前記第1樹脂組成物が含む前記フィラーと、前記第2樹脂組成物が含む前記フィラーとを同じにする、機能性フィルムの製造方法。
【0015】
[6]前記設置工程では、加温した前記第2樹脂組成物を前記希釈液上に設ける、上記[5]に記載の機能性フィルムの製造方法。
【0016】
[7]前記第1樹脂組成物における前記フィラーの割合と、前記第2樹脂組成物における前記フィラーの割合は、同等である、上記[5]又は[6]に記載の機能性フィルムの製造方法。
【0017】
[8]前記溶剤は、ケトン系溶剤である、上記[5]乃至[7]のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
【0018】
[9]前記フィラーは、平均粒子径が20nm以上80nm以下であるシリカ粒子である、上記[5]乃至[8]のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
【0019】
[10]前記第1樹脂組成物及び前記第2樹脂組成物は、電離放射線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂である、上記[5]乃至[9]のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
【0020】
[11]前記基材は、アセチルセルロース系樹脂を含む、上記[5]乃至[10]に記載の機能性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基材と機能層との密着性を簡易に且つ効果的に向上でき、さらには期待される機能を好適に発揮できる機能性フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施の形態に係る機能性フィルムを概略的に示す図である。
図2】一実施の形態に係る機能性フィルムの厚み方向における断面の概略図である。
図3A】一実施の形態に係る機能性フィルムの厚み方向における断面のSEM画像を示す図である。
図3B図3Aに示す機能性フィルムの厚み方向における断面で、フィラーの密度及び個数を測定する手順を示す図である。
図4A】一変形例に係る機能性フィルムの厚み方向における断面のSEM画像を示す図である。
図4B図4Aに示す変形例に係る機能性フィルムの厚み方向における断面で、フィラーの密度及び個数を測定する手順を示す図である。
図5A】他の変形例に係る機能性フィルムの厚み方向における断面のSEM画像を示す図である。
図5B図5Aに示す変形例に係る機能性フィルムの厚み方向における断面で、フィラーの密度及び個数を測定する手順を示す図である。
図6】一実施の形態に係る機能性フィルムの製造方法を説明するフローチャートである。
図7】一実施の形態に係る機能性フィルムの製造方法を実施するための製造設備を示す図である。
図8】さらに他の変形例に係る機能性フィルムを概略的に示す図である。
図9】さらに他の変形例に係る機能性フィルムを概略的に示す図である。
図10】さらに他の変形例に係る機能性フィルムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態について説明する。
【0024】
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」、「層」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば「シート」は、フィルムや板や層とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0025】
また、本明細書において「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的且つ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向(面方向)と一致する面のことを指す。さらに、本明細書において、シート状の部材の法線方向とは、対象となるシート状の部材のシート面への法線方向のことを指す。また、本発明及び本実施の形態では、単に樹脂という用語を使用するときがある。この場合の樹脂は、合成樹脂を意味する。
【0026】
<機能性フィルム>
まず、一実施の形態に係る機能性フィルム1について説明する。図1は、本実施の形態に係る機能性フィルム1を概略的に示す図である。図2は、機能性フィルム1の厚み方向における断面の概略図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、機能性フィルム1は、基材10と、基材10上に設けられたプライマー層20と、プライマー層20上に設けられた機能層30と、を備えている。
【0028】
なお、正確に説明すると、プライマー層20は、厚み方向で向き合う基材10の一対の面のうちの一方の面に直接的に接する状態で設けられている。機能層30は、厚み方向で向き合うプライマー層20の一対の面のうちの基材10側とは反対の側の面に直接的に接する状態で設けられている。
【0029】
(基材)
基材10はフィルム状の部材であり、厚み方向で向き合う一対の面を有する。基材10は、例えば可視光透過性を有してもよいし、可視光透過性を有さなくてもよい。可視光透過性を有するものである場合、可視光透過性の好ましい値は、機能性フィルム1の用途に応じて変わる。
【0030】
例えば、表示装置の表示面に機能性フィルム1が設けられる場合、基材10は無色透明であることが好ましく、その全光線透過率は87%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。表示装置の表示面に機能性フィルム1が設けられる場合、基材10の屈折率は、1.46以上1.70以下でもよく、1.48以上1.65以下でもよく、1.52以上1.64以下でもよく、1.54以上1.64以下でもよく、1.56以上1.64以下でもよい。表示装置の表示面に機能性フィルム1が設けられ、基材10が透過する光の異方性の制御が望まれる場合には、基材10は二軸延伸フィルムで構成されてもよい。
【0031】
なお、基材10は、紫外線透過性などの電離放射線透過性や、非電離放射線透過性を有してもよい。機能性フィルム1の製造プロセスの関係で、電離放射線透過性などを有することが望ましい場合もあり、この際、電離放射線透過性などを基材10に確保することで製造を有利に進められる場合がある。ちなみに、本実施の形態では、基材10が、可視光透過性とともに、紫外線透過性を有している。一方、食品の包装等の用途では、基材10の可視光透過性は低くてもよく、可視光透過性を有さなくてもよい。
【0032】
基材10は、例えば、アセチルセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などの合成樹脂を主成分として含むフィルムでもよい。なお、主成分とは、ある物質を構成する複数の成分のうちの物質全体に対して50%以上の割合で含まれる成分又は最も多く含まれる成分のことを意味する。なお、基材10は、比較的硬質な板状の部材などでもよい。しかし、金属フィルムは熱収縮率、電気伝導性などの物性値が有機樹脂とは大きく異なるため、基材10に適さない場合があり得る。
【0033】
アセチルセルロース系樹脂は、例えばトリアセチルセルロース(TAC)や、ジアセチルセルロースなどである。このうちのTACは、高い全光線透過率を確保することが望まれる場合に、有利な材質である。
【0034】
ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PEN)、ポリエチレンナフタレートなどである。ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどである。アクリル系樹脂は、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチルなどである。なお、基材10の材質は、以上に例示したもの以外のものでもよい。
【0035】
基材10の厚みは、特に限られるものではないが、例えば10μm以上200μm以下でもよい。基材10の厚みの下限はハンドリング性などの観点から15μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましい。基材10の厚みは、薄膜化の観点では150μm以下であることが好ましい。
【0036】
また、図1及び図2に示すように、基材10は、基材主層11と、浸透層12と、を有し、浸透層12上にプライマー層20が設けられている。浸透層12は、プライマー層20が含む樹脂が基材10の一部に浸透してなるものであり、基材10におけるプライマー層20側の部分に形成されている。
【0037】
詳細は後述するが、プライマー層20は、重合性の樹脂組成物を溶剤によって希釈した希釈液から形成され、希釈液が塗布された後に、希釈液中の溶剤を蒸発させ且つ樹脂組成物を重合させる、言い換えると硬化させることで形成される。ここで、希釈液の塗布の際、まず、基材10に浸透層12の下地が形成される。上記希釈液を基材10の表面に塗布した際には、希釈液中の溶剤が基材10の表面から基材10の内部に浸透し、基材10を膨潤させる。この際に、希釈液中の樹脂組成物の一部も基材10に浸透し、このとき、浸透層12の下地が形成される。そして、この浸透状態において、プライマー層20の形成に伴い溶剤が蒸発され且つ樹脂組成部が硬化されることで、浸透層12が形成されることになる。
【0038】
浸透層12を確実に形成する観点では、基材10に溶剤が浸透し易いことが望ましく、この場合、基材10の吸水性(吸液性)が比較的高いほうが良い。アセチルセルロース系樹脂、とりわけTACは、吸水性(吸液性)が比較的高い合成樹脂であり、一般に、PETやPCよりも吸水性(吸液性)が高い。したがって、浸透層12の形成の観点では、基材10として、TACを主成分とするTACフィルムを用いるのが良い。本実施の形態では、基材10がアセチルセルロース系樹脂を含み、具体的にTACフィルムで構成されている。また、基材10が二軸延伸フィルムで構成される場合には、基材10に溶剤が浸透し易くなる傾向があり、浸透層12の形成に関して有利になり得る。したがって、基材10は、アセチルセルロース系樹脂からなる二軸延伸フィルムで構成されてもよい。また、浸透層12の形成の観点で、基材10の濡れ性は、JISK6768:1999に準拠して測定した場合に、30mN/m以上60mN/m以下でもよく、40mN/m以上50mN/mでもよい。また、浸透層12の形成において基材10の分子量が過剰に多いことは望ましくない場合もある。この観点で、基材10の重量平均分子量は、2万以上100万以下でもよく、2万5千以上80万以下でもよい。重量平均分子量は、テトラヒドロフロン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。
【0039】
基材10が透明な基材である場合、プライマー層20が含む樹脂が浸透していない基材主層11と、プライマー層20が含む樹脂が浸透している浸透層12との間では、通常、色及び/又はヘイズが相違する。図3Aは、機能性フィルム1の厚み方向における断面のSEM画像の一例である。図3Aでは、基材10が、基材主層11と、浸透層12と、を有しており、浸透層12の色が基材主層11の色よりも濃い様子を把握できる。
【0040】
基材10上に浸透層12が存在するか否かは、上述のように機能性フィルム1を厚み方向に切断して露出させた層断面のSEM画像を目視することで検証されてもよい。なお、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)で取得した画像で検証してもよい。一方で、成分分析によって、基材10のプライマー層20側の部分に基材10の主成分となる樹脂とプライマー層20が含む樹脂とが混在しているか否かを検証することで、浸透層12の有無を判断してもよい。この際の成分分析の手法は、赤外分光法や、ガスクロマトグラフ質量分析法などでもよい。
【0041】
なお、浸透層12は基材10上において必ずしも形成されなくてもよい。ただし、浸透層12が形成される場合には、基材10とプライマー層20との密着性が向上する。そのため、結果的に、基材10と機能層30との密着性が向上する。
【0042】
浸透層12の厚みは、0.1μm以上3.5μm以下であることが好ましい。浸透層12の厚みが0.1μm以上である場合、良好な密着性を確保できる。一方、浸透層12の厚みが大きくなり過ぎるのは好ましくない。例えば、可視光透過性の観点では、浸透層12の厚みは、3.5μm以下であることが好ましい。
【0043】
(プライマー層)
プライマー層20は、重合体である樹脂21を例えば主成分として含むものである。詳しくは、図2に示す本実施の形態におけるプライマー層20は、樹脂21と、樹脂21に保持された無数のフィラー40と、を有している。プライマー層20は、2つの部材を接合するために当該2つの部材の間に位置して、当該2つの部材のそれぞれに付着する層である。付着は、互いに接する2つの部材がアンカー効果、分子間引力、及び共有結合等の化学的結合のうちの少なくともいずれかで結合することを意味する。上述したように、プライマー層20は、厚み方向で向き合う基材10の一対の面のうちの一方の面に直接的に接する状態で設けられている。機能層30は、厚み方向で向き合うプライマー層20の一対の面のうちの基材10側とは反対の側の面に直接的に接する状態で設けられている。したがって、プライマー層20は、基材10と機能層30との間に位置して、基材10と機能層30とのそれぞれに付着している。
【0044】
上述したが、プライマー層20は、重合性の樹脂組成物を溶剤によって希釈した希釈液を基材10に塗布した後、溶剤を蒸発させ、且つ樹脂組成物を重合させる、言い換えると硬化させることで形成されている。すなわち、プライマー層20は、重合性の樹脂組成物を重合させた樹脂21を含む、例えば主成分として含むものとして形成される。詳細は後述するが、本実施の形態では、溶剤を蒸発させる工程と、樹脂組成物を重合(硬化)させる工程と、が別々に行われる。
【0045】
本実施の形態におけるプライマー層20が含む樹脂21は、一例として、フィラー40を除外した場合に、一種の樹脂で形成されており、言い換えると、一種の樹脂組成物を硬化させることで形成されている。ただし、プライマー層20は、二種以上の樹脂組成物を混合させたものを硬化させることで形成されてもよい。なお、本実施の形態でいう「重合性の樹脂組成物」とは、重合性の樹脂材料と、必要に応じて重合開始剤、添加剤を含むものであるが、本実施の形態では、樹脂組成物にフィラー40も含まれる。
【0046】
上記樹脂組成物の重合は、電離放射線により開始する重合及び/又は架橋でもよいし、加熱により開始する重合及び/又は架橋でもよい。
【0047】
プライマー層20を形成するための樹脂組成物に含有される重合性の樹脂材料は、重合性のモノマー、オリゴマー及びプレポリマーのうちの少なくともいずれかである。
【0048】
重合性の樹脂材料として使用され得る電離放射線により重合するモノマーは、単官能モノマーでもよいし、多官能モノマーでもよい。単官能モノマーは、例えば、(メタ)アクリレートモノマーである。多官能モノマーは、例えば、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーである。多官能(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
重合性の樹脂材料として使用され得る電離放射線により重合するオリゴマー又はプレポリマーは、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどでもよい。これら重合性のオリゴマー又はプレポリマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
また、樹脂組成物に含有される重合性の樹脂材料は、熱硬化型樹脂でもよく、この場合、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂などでもよい。
【0051】
表示装置の表示面に機能性フィルム1が設けられる場合、プライマー層20が含む樹脂21は透明である。そして、樹脂21の光透過性は高いことが望ましい。また、表示装置の表示面に機能性フィルム1が設けられる場合の樹脂21の屈折率は、1.40以上1.55以下でもよい。そして、この場合の樹脂21の屈折率は、基材10の屈折率以下でもよい。
【0052】
また、基材10における浸透層12は、上述したようにプライマー層20が含む樹脂が基材10に浸透することにより形成されている。高い光透過性と、硬化前の浸透時における基材10への浸透し易さの観点では、プライマー層20が含む樹脂21は、アクリル系樹脂、特にペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートでもよい。
【0053】
また、プライマー層20は、基材10と機能層30との接合後、これら基材10及び機能層30を剥離させることや、他の部材に接合されることを意図されたものではない。したがって、プライマー層20は、感熱接着性などの接着性を有さない。この観点で、プライマー層20が含む樹脂21は、ポリウレタン樹脂でもよい。また、本実施形態におけるプライマー層20は、硬化剤を含まない。
【0054】
樹脂21は、基材10の表面を覆うようにフィルム状に形成されており、その内部にフィラー40を保持する。フィラー40は、機能性フィルム1の機能に応じて適宜決定されるものであり、本実施の形態では、機能層30にも共通に含まれている。
【0055】
フィラー40は、例えば無機粒子であり、本実施の形態ではシリカ粒子(シリカ粒子)である。ただし、フィラー40の材質は、酸化チタン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、アルミ粉、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維などでもよい。
【0056】
フィラー40として無機粒子が用いられた場合、例えば機能性フィルム1の全体の硬度を上げることができる。また、所望の光学的機能も得られ得る。一方で、無機粒子は、基材10との関係では密着性の観点で良好でない場合があるが、本実施の形態では、上述のように浸透層12を形成することで、密着性が補償される。なお、浸透層12は、フィラー40を含む場合もある。フィラー40の形状は、機能性フィルム1の機能に応じて適宜決定され、例えば、球状、針状、板状などである。
【0057】
本実施の形態では、フィラー40がシリカ粒子であり、透明であるため、機能性フィルム1が全体的に光透過性であるときに、透過、屈折、反射などの光学的機能を奏し得る。表示装置の表示面に機能性フィルム1が設けられる場合、シリカ粒子であるフィラー40の屈折率は、1.40以上1.50以下でもよい。シリカ粒子であるフィラー40の屈折率は、樹脂21の屈折率よりも小さくてもよい。この場合、特にシリカ粒子であるフィラー40の屈折率と樹脂21の屈折率との差は、0.01以上0.05以下でもよい。
【0058】
プライマー層20の厚みは、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。後述のように、フィラー40の平均粒子径は例えば10nm以上100nm以下である。この際、プライマー層20の厚みが0.1μm以上である場合、良好な密着性を確保できる。プライマー層20の厚みが小さすぎると、多くのフィラー40が樹脂21から外部に露出する場合があり、密着性が低下する傾向がある。一方、プライマー層20の厚みが大きくなり過ぎるのは好ましくない。例えば、可視光透過性の観点では、プライマー層20の厚みは、1.0μm以下であることが好ましい。
【0059】
フィラー40の大きさは、特に限られるものではなく、機能性フィルム1の機能に応じて適宜決定される。フィラー40の平均粒子径は、10nm以上100nm以下でもよい。また、好ましいフィラー40の平均粒子径は、20nm以上80nm以下であり、より好ましくは35nm以上65nm以下である。20nmよりも小さい場合、コストが高くなる。また、フィラー40が大きいと、例えばヘイズが高くなるなどの光学特性の低下が生じることがある。フィラー40の平均粒子径は、JIS Z8828:2019に準拠する動的光散乱法で測定される値である。平均粒子径は、マイクロトラック・ベル社製の動的光散乱式粒子径分布測定装置(UPA150)によって測定されてもよい。
【0060】
本実施の形態ではプライマー層20がフィラー40を含むため、硬度が上げる。しかし、プライマー層20は、一般的なハードコート層を意図したものではない。この観点で、プライマー層20の厚みは大きくなくてもよく、硬くなくてもよい。この観点で、プライマー層20の厚みは、0.1μm以上1.0μm以下でよく、1.0μm未満でよく、0.9μm以下でよい。また、プライマー層20の鉛筆硬度は、3H以下でもよい。フィラー40の量は、光学性能や、基材10とプライマー層20との接合強度を考慮すると、比較的少なくてよい。例えば、プライマー層20全体におけるフィラー40の割合は、5質量%以上60質量%以下でよく、20質量%以上45質量%以下でもよい。
【0061】
また、フィラー40の平均粒子径が20nm以上80nm以下である場合、プライマー層20におけるフィラー40は、プライマー層20の厚み方向の断面で、0.2μmあたり15個以上45個以下で存在してもよいし、20個以上40個以下で存在してもよいし、25個以上35個以下で存在してもよい。
ここで説明する断面でのフィラー40の個数の測定では、まず、例えば図3Aに示すような機能性フィルム1の厚み方向での断面のSEM画像を取得する。次いで、SEM画像上のプライマー層20における0.2μm(0.796(μm)×0.251(μm))の範囲を3つ定める。そして、3つそれぞれの範囲において1つのフィラー40の占める領域として特定できる円形又は概略円形の領域の数を、画像処理ソフトウェア(製品名「ImageJ」、米国国立衛生研究所製)による所定の機能で数えることにより、フィラー40の個数を特定する。そして、3つの範囲での個数の平均値を、0.2μmあたりのフィラー40の個数として定める。
すなわち、プライマー層20の厚み方向の断面に存在するフィラー40の個数は、機能性フィルム1の厚み方向での断面の拡大画像におけるプライマー層20において、画像処理ソフトウェアにより測定されるフィラー40の個数、詳しくは3つの部分的な領域での個数の平均値である。個数の測定についての詳細は後述する。
【0062】
プライマー層20におけるフィラー40の個数が、厚み方向断面の0.2μmあたりで15個以上45個以下であるという構成では、平均粒子径が80nmのフィラー40が45個存在する場合と、平均粒子径が10nmのフィラー40が10個存在する場合とで、特性が変化する。ただし、本件発明者は、平均粒子径が80nmのフィラー40が0.2μmあたりで45個存在する場合において、プライマー層20と基材10との間に良好な密着状態が確保され得ることを確認している。また、本件発明者は、平均粒子径が10nmのフィラー40が0.2μmあたりで15個存在する場合において、フィラー40が所定の機能を発揮し得ることを確認している。
【0063】
(機能層)
機能層30は、重合体である樹脂31を例えば主成分として含むものであり、詳しくは、図2に示すように、樹脂31と、樹脂31に保持された無数のフィラー40と、を有している。本実施の形態における機能層30は、含有するフィラー40によって、機能性フィルム1において期待される所望の機能を発揮するものである。
【0064】
機能層30が発揮し得る機能は、例えば防眩や反射防止等の光学的機能、ハードコート、ガスバリア、導電性確保、磁性確保、耐擦性、断熱性、難燃性、紫外線遮断などでもよい。なお、この種の機能層30は、フィラーを含まずに、所望の機能を発揮する場合もある。
【0065】
本実施の形態ではプライマー層20と機能層30とが同じ樹脂を含み、具体的には、プライマー層20が含む樹脂21と、機能層30が含む樹脂31とが同じもの、つまり同じ樹脂成分からなる。言い換えると、樹脂21と樹脂31は、同じ重合性の樹脂組成物が硬化されることにより形成されている。
【0066】
詳しくは、本実施の形態における機能層30が含む樹脂31は、フィラー40を除外した場合に、一種の樹脂で形成され、言い換えると、一種の樹脂組成物から形成されている。そして、上記一種の樹脂は、プライマー層20の樹脂21に対応する一種の樹脂と同じとなり、上記一種の樹脂組成物は、プライマー層20を形成する一種の樹脂組成物と同じとなる。ただし、機能層30は、二種以上の樹脂組成物を混合させたものを硬化することで形成されてもよい。この場合には、プライマー層20も、同じ二種以上の樹脂組成物を混合させたものを硬化することで形成されることが好ましく、この場合、製造プロセスの効率化が図れる。
【0067】
本実施の形態のように、プライマー層20が含む樹脂21と、機能層30が含む樹脂31とが同じものとなる場合、樹脂21と樹脂31とが同種界面になり、一部又は全部で融合され得て、つまり化学的結合が形成され得て、さらには線膨張係数が一致又は略一致することにより、プライマー層20と機能層30との密着性が向上する。なお、プライマー層20が含む樹脂21と機能層30が含む樹脂31とが同じであるか否かは、成分分析によって検証してもよく、具体的には、赤外分光法や、ガスクロマトグラフ質量分析法などで検証してもよい。
【0068】
また、本実施の形態では、プライマー層20が含む樹脂21と機能層30が含む樹脂31とが同じものであるが、機能層30の形成プロセスは、プライマー層20の形成プロセスとは異なっている。詳しくは、機能層30は、溶剤で樹脂組成物を希釈することなく、樹脂組成物そのものを直接的に硬化させることで形成されている。この際、機能層30の形成に用いる樹脂組成物は、本実施の形態では、プライマー層20を形成するための重合性の樹脂組成物と同じである。
【0069】
機能層30を形成するための重合性の樹脂組成物は、プライマー層20を形成するための重合性の樹脂組成物と同じであるため、重合性のモノマー、オリゴマー及びプレポリマーのうちの少なくともいずれかと、重合開始剤とを有するか、又は、重合性のモノマー、オリゴマー及びプレポリマーのうちの少なくともいずれかと、重合開始剤と、添加剤とを有するものでよい。また、本実施の形態では、機能層30の形成用の樹脂組成物にもフィラー40が含まれる。
【0070】
樹脂組成物に含有される重合性の樹脂材料として使用され得る電離放射線により重合するモノマーは、単官能モノマーでもよいし、多官能モノマーでもよい。単官能モノマー、多官能モノマー、オリゴマー及びプレポリマーとして使用され得る物質は、プライマー層20の説明の際に例示したものと同じである。
【0071】
なお、表示装置の表示面に機能性フィルム1が設けられる場合、機能層30が含む樹脂31は透明である。そして、樹脂31の光透過性は高いことが望ましい。また、表示装置の表示面に機能性フィルム1が設けられる場合の樹脂31の屈折率は、本実施の形態ではプライマー層20が含む樹脂21と機能層30が含む樹脂31とが同じものであるため、1.40以上1.55以下でもよい。
【0072】
また、本実施の形態では、機能層30に含まれるフィラー40も、プライマー層20に含まれるフィラー40と同じである。なお、本実施の形態では、プライマー層20が含むフィラー40と、機能層30が含むフィラー40とが同じであるが、それぞれに異なるフィラーが含まれてもよい。この場合、機能性フィルムの機能の拡張が図れる。
【0073】
一方で、本実施の形態では、図2及び図3Aに示すように、プライマー層20におけるフィラー40の密度が、機能層30におけるフィラー40の密度よりも小さくなっている。この場合、基材10に接するプライマー層20中のフィラー40の数が抑えられ、基材10とプライマー層20との密着性が向上し得る。一方で、プライマー層20と機能層30との間では、同じ成分の樹脂21と樹脂31とが接する面積が増えるため、プライマー層20と機能層30との密着性が向上し得る。
【0074】
フィラー40の密度の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いるとともに、画像処理ソフトウェアを用いて行う。
【0075】
具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、解像度150dpiで且つ倍率5万倍で撮影した機能性フィルム1の断面の画像を画像処理ソフトウェア(製品名「ImageJ」、米国国立衛生研究所製)で読み込み、白黒2値化処理を行う。詳しくは、以下(1)~(4)の手順が行われる。
【0076】
(1)取り込んだ画像のピクセル数を640×480に調整する。
(2)ピクセル数を調整した画像に、実際のスケールを設定する。
(3)画像が8bitのグレースケール画像でない場合に、画像を8bitのグレースケール画像に変換する。その後、グレースケール画像を、自動二値化処理の「IJ_ISODATA」且つ「B&W」を選択して、二値化処理し、白黒画像にする。さらに、その後、「Watershed」により、重なった粒子を分割する。
(4)その後、「Analize Partcles」による自動解析によって、フィラーの面積割合を特定する。フィラーの面積割合が、フィラーの密度に対応する。
図3Bは、図3Aに示すSEM画像の断面で、フィラー40の密度を測定する手順を示す図である。
詳しくは、機能層30の密度を測定する場合には、上記(3)の後の画像における機能層30から、図3Bに示す0.5μm(0.796(μm)×0.628(μm))の範囲(第1枠F1)を3つ選択し、それぞれにおいて上記自動解析を行う。そして、3つの範囲の平均値が、機能層30におけるフィラー40の密度として特定される。
プライマー層20の密度を測定する場合には、上記(3)の後の画像におけるプライマー層20から、図3Bに示す0.2μm(0.796(μm)×0.251(μm))の範囲(第2枠F2)を3つ選択し、それぞれにおいて上記自動解析を行う。そして、3つの範囲の平均値が、プライマー層20におけるフィラー40の密度として特定される。
なお、「Analize Partcles」では、フィラーとして認識する部分のサイズ(項目:Size)を、0.0001-0.10(μm)に設定する。また、フィラーとして認識する部分の真円度(Circularity)を、0.50-1.0に設定する。
また、図3Bで示した枠(F1,F2)の寸法比は特に限られずに、任意でよい。例えば、プライマー層20の厚みが0.1μmのときは、縦0.1μm×横2μmの範囲を、第2枠F2として定めてもよい。
【0077】
以上の手順で特定されるプライマー層20におけるフィラー40の密度は、5%以上50%以下でもよい。プライマー層20におけるフィラー40の密度は、15%以上30%以下でもよく、特に17.5%以上22.5%以下が良い。15%以上30%以下であるとき、機能層30への機能的な寄与とともに、基材10とプライマー層20との密着性及びプライマー層20と機能層30との密着性が良好になる。特に17.5%以上22.5%以下の場合、密着性が確実に良好になる。以上の手順で特定される機能層30におけるフィラー40の密度は、15%以上90%以下でもよい。機能層30におけるフィラー40の密度は、期待される機能に応じて適宜選択される。ただし、機能確保及びプライマー層20との良好な密着性確保の点で、機能層30におけるフィラー40の密度は、30%以上60%以下でもよいし、37.5%以上50%以下でもよいし、37.5%以上45%以下でもよい。
【0078】
なお、プライマー層20におけるフィラー40の密度は、機能層30におけるフィラー40の密度の1/3以上3/4以下でもよく、1/2以上3/4以下でもよいし、1/3以上1/2でもよい。ただし、プライマー層20におけるフィラー40の密度は、機能層30におけるフィラー40の密度と同等でもよい。
【0079】
本実施の形態では、フィラー40がシリカ粒子であり、機能性フィルム1が全体的に光透過性であるときに、透過、屈折、反射などの光学的機能を奏し得る。そして、上述したようにプライマー層20におけるフィラー40の密度は、機能層30におけるフィラー40の密度よりも小さくなっている。この場合、シリカ粒子の屈折率が樹脂21,31の屈折率よりも小さいであると、プライマー層20全体の屈折率は、機能層30全体の屈折率よりも大きくなる。ここで、プライマー層20におけるフィラー40の密度が、機能層30におけるフィラー40の密度の1/3以上3/4以下であるとき、基材10、プライマー層20、機能層30の順で屈折率が均一的に低下する層構成を形成し易くなる。この層構成を実現する場合、基材10の屈折率は1.46以上がよい。なお、上記均一的に低下とは、基材10とプライマー層20との屈折率差と、プライマー層20と機能層30との屈折率差とが比較的小さい状態で基材10、プライマー層20、機能層30の順で屈折率が低下することを意味する。上記比較的小さい状態とは、例えば0.05以下であることを意味する。このような構成であると、光が透過し易くなる。
【0080】
また、本実施の形態では機能層30がフィラー40を含むため、硬度が上げる。そして、機能層30は或る程度の硬度の確保を期待されてもよい。この観点で、機能層30の厚みは、プライマー層20の厚みの2倍以上100倍以下でもよく、5倍以上50倍以下でもよいし、10倍以上30倍以下でもよい。また、機能層30の厚みは、2μm以上10μm以下でもよいし、4μm以上8μm以下でもよいし、5μm以上7μm以下でもよい。そして、機能層30の鉛筆硬度は、3H以上でもよく、好ましくは4H以上である。また、機能層30全体におけるフィラー40の割合は、10質量%以上60質量%以下でもよく、15質量%以上40質量%以下でもよく、25質量%以上35質量%以下でもよい。
【0081】
また、フィラー40の平均粒子径が20nm以上80nm以下である場合に、機能層30におけるフィラー40は、機能層30の厚み方向の断面で、0.5μmあたり90個以上150個以下で存在してもよいし、110個以上140個以下で存在してもよいし、115個以上135個以下で存在してもよい。
ここで説明する断面でのフィラー40の個数の測定では、まず、プライマー層20におけるフィラー40の場合と同様に、例えば図3Aに示すような機能性フィルム1の厚み方向での断面のSEM画像を取得する。次いで、SEM画像上の機能層30における0.5μm(0.796(μm)×0.628(μm))の範囲を3つ定める。そして、3つそれぞれの範囲において1つのフィラー40の占める領域として特定できる円形又は概略円形の領域の個数を、画像処理ソフトウェア(製品名「ImageJ」、米国国立衛生研究所製)による所定の機能で数えることにより、フィラー40の個数を特定する。そして、3つの範囲での個数の平均値を、0.5μmあたりのフィラー40の個数として定める。これについて以下に説明する。
【0082】
すなわち、フィラー40の個数の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いるとともに、画像処理ソフトウェアを用いて行う。
【0083】
具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、解像度150dpiで且つ倍率5万倍で撮影した機能性フィルム1の断面の画像を画像処理ソフトウェア(製品名「ImageJ」、米国国立衛生研究所製)で読み込み、白黒2値化処理を行う。詳しくは、以下(1)~(4)の手順が行われる。
(1)取り込んだ画像のピクセル数を640×480に調整する。
(2)ピクセル数を調整した画像に、実際のスケールを設定する。
(3)画像が8bitのグレースケール画像でない場合に、画像を8bitのグレースケール画像に変換する。その後、グレースケール画像を、自動二値化処理の「IJ_ISODATA」且つ「B&W」を選択して、二値化処理し、白黒画像にする。さらに、その後、「Watershed」により、重なった粒子を分割する。
(4)その後、「Analize Partcles」による自動解析によって、フィラーの個数を特定する。
詳しくは、機能層30におけるフィラー40の個数を測定する場合には、上記(3)の後の画像における機能層30から、図3Bに示す0.5μm(0.796(μm)×0.628(μm))の範囲(第1枠F1)を3つ選択し、それぞれにおいて上記自動解析を行う。そして、3つの範囲の平均値が、機能層30におけるフィラー40の個数として特定される。
プライマー層20におけるフィラー40の個数を測定する場合には、上記(3)の後の画像におけるプライマー層20から、図3Bに示す0.2μm(0.796(μm)×0.251(μm))の範囲(第2枠F2)を3つ選択し、それぞれにおいて上記自動解析を行う。そして、3つの範囲の平均値が、プライマー層20におけるフィラー40の個数として特定される。
なお、「Analize Partcles」では、フィラーとして認識する部分のサイズ(項目:Size)を、0.0001-0.10(μm)に設定する。また、フィラーとして認識する部分の真円度(Circularity)を、0.50-1.0に設定する。
上述したが、上記枠(F1,F2)の寸法比は特に限られずに、任意でよい。例えば、プライマー層20の厚みが0.1μmのときは、縦0.1μm×横2μmの範囲を、第2枠F2として定めてもよい。
【0084】
図3Bでは、左側の第1枠F1でのフィラー40の個数が、114個であった。中央の第1枠F1でのフィラー40の個数は、114個であった。右側の第1枠F1でのフィラー40の個数は、106個であった。そして、3つの範囲での個数の平均値である111個が、機能層30における0.5μmあたりのフィラー40の個数として特定された。
【0085】
また、左側の第2枠F2でのフィラー40の個数は、33個であった。中央の第2枠F2でのフィラー40の個数は、31個であった。右側の第2枠F2でのフィラー40の個数は、27個であった。そして、3つの範囲での個数の平均値である30個が、プライマー層20における0.2μmあたりのフィラー40の個数として特定された。
【0086】
また、上記自動解析によって、図3Bにおける各枠F1,F2でフィラーの面積割合(密度)を特定した結果は、以下のとおりであった。
左側の第1枠F1でのフィラー40の密度は、41.8%であった。中央の第1枠F1でのフィラー40の密度は、40.5%であった。右側の第1枠F1でのフィラー40の密度は、39.4%であった。そして、3つの範囲での密度の平均値である40.6%が、機能層30における0.5μmあたりのフィラー40の密度として特定された。
左側の第2枠F2でのフィラー40の密度は、26.0%であった。中央の第2枠F2でのフィラー40の密度は、24.0%であった。右側の第2枠F2でのフィラー40の密度は、20.8%であった。そして、3つの範囲での密度の平均値である23.6%が、プライマー層20における0.2μmあたりのフィラー40の密度として特定された。
【0087】
図4A及び図5Aは、変形例に係る機能性フィルムの厚み方向における断面のSEM画像を示している。図4Aにおける浸透層12は、図3Aにおける浸透層12よりも薄い。図5Aでは、浸透層12が無い。
【0088】
図4Bは、図4Aに示すSEM画像の断面で、フィラー40の個数を測定する手順を示す図である。図5Bは、図5Aに示すSEM画像の断面で、フィラー40の個数を測定する手順を示す図である。図4B及び図5Bにはそれぞれ、3つの第1枠F1と、3つの第2枠F2とが示されている。図4B及び図5Bの画像で、フィラー40の個数及び密度を測定した結果は、以下のとおりである。
【0089】
図4Bでは、左側の第1枠F1でのフィラー40の個数は、101個であった。中央の第1枠F1でのフィラー40の個数は、109個であった。右側の第1枠F1でのフィラー40の個数は、103個であった。そして、3つの範囲での個数の平均値である104個が、機能層30における0.5μmあたりに表示されたフィラー40の個数として特定された。
【0090】
また、左側の第2枠F2でのフィラー40の個数は、29個であった。中央の第2枠F2でのフィラー40の個数は、27個であった。右側の第2枠F2でのフィラー40の個数は、25個であった。そして、3つの範囲での個数の平均値である27個が、プライマー層20における0.2μmあたりに表示されたフィラー40の個数として特定された。
【0091】
また、図4Bにおける左側の第1枠F1でのフィラー40の密度は、40.4%であった。中央の第1枠F1でのフィラー40の密度は、41.9%であった。右側の第1枠F1でのフィラー40の密度は、38.9%であった。そして、3つの範囲での密度の平均値である40.4%が、機能層30における0.5μmあたりのフィラー40の密度として特定された。
図4Bにおける左側の第2枠F2でのフィラー40の密度は、33.4%であった。中央の第2枠F2でのフィラー40の密度は、26.4%であった。右側の第2枠F2でのフィラー40の密度は、25.5%であった。そして、3つの範囲での密度の平均値である28.4%が、プライマー層20における0.2μmあたりのフィラー40の密度として特定された。
【0092】
図5Bでは、左側の第1枠F1でのフィラー40の個数は、111個であった。中央の第1枠F1でのフィラー40の個数は、95個であった。右側の第1枠F1でのフィラー40の個数は、96個であった。そして、3つの範囲での個数の平均値である101個が、機能層30における0.5μmあたりに表示されたフィラー40の個数として特定された。
【0093】
また、左側の第2枠F2でのフィラー40の個数は、31個であった。中央の第2枠F2でのフィラー40の個数は、22個であった。右側の第2枠F2でのフィラー40の個数は、21個であった。そして、3つの範囲での個数の平均値である25個が、プライマー層20における0.2μmあたりに表示されたフィラー40の個数として特定された。
【0094】
また、図5Bにおける左側の第1枠F1でのフィラー40の密度は、36.5%であった。中央の第1枠F1でのフィラー40の密度は、33.7%であった。右側の第1枠F1でのフィラー40の密度は、35.3%であった。そして、3つの範囲での密度の平均値である35.2%が、機能層30における0.5μmあたりのフィラー40の密度として特定された。
図5Bにおける左側の第2枠F2でのフィラー40の密度は、26.0%であった。中央の第2枠F2でのフィラー40の密度は、19.6%であった。右側の第2枠F2でのフィラー40の密度は、15.7%であった。そして、3つの範囲での密度の平均値である20.4%が、プライマー層20における0.2μmあたりのフィラー40の密度として特定された。
【0095】
図3B図4B及び図5Bでフィラー40の個数及び密度を測定した結果を示す表1を以下に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1では、プライマー層20におけるフィラー40の個数平均値・密度平均値を、機能層30におけるフィラー40の個数平均値・密度平均値で割った値が示される。プライマー層20におけるフィラー40の個数平均値/機能層30におけるフィラー40の個数平均値は、左、真ん中、右の順で、0.27、0.26、0.25であった。言い換えると、プライマー層20におけるフィラー40の個数は、機能層30におけるフィラー40の個数の1/4周辺である。図3B図4B図5Bの機能性フィルムにおける機能層30の密着性はいずれも良好であった。この結果から、プライマー層20におけるフィラー40の個数が、機能層30におけるフィラー40の個数の1/5以上1/3以下であれば、機能層30の密着性は良好になると推認される。
また、プライマー層20におけるフィラー40の密度平均値/機能層30におけるフィラー40の密度平均値は、左、真ん中、右の順で、0.58、0.70、0.58であった。言い換えると、プライマー層20におけるフィラー40の密度は、機能層30におけるフィラー40の個数の1/2~3/4周辺である。この結果から、プライマー層20におけるフィラー40の密度が、機能層30におけるフィラー40の密度の1/2以上3/4以下であれば、機能層30の密着性は良好になると推認される。なお、本件発明者は、プライマー層20におけるフィラー40の密度が、機能層30におけるフィラー40の密度の1/3以上であれば、良好な密着性が得られることも確認している。
【0098】
<機能性フィルムの製造方法>
次に、機能性フィルム1の製造方法の一例を説明する。
【0099】
図6は、機能性フィルム1の製造方法を説明するフローチャートである。図7は、図6で説明する機能性フィルム1の製造方法を実施するための製造設備100の一例を示す図である。
【0100】
図6に示す機能性フィルム1の製造方法では、希釈液塗布工程(S61)、乾燥工程(S62)、設置工程(S63)及び硬化工程(S64)がこの順で行われる。なお、図6には、各工程に対応する基材10及び基材10上に形成される層の状態が概略的に示されている。以下、各工程を詳述する。
【0101】
(希釈液塗布工程)
ステップS61で行う希釈液塗布工程では、樹脂組成物を溶剤で希釈した希釈液を基材10上に塗布する。希釈液の塗布は、例えばグラビアロールで行ってもよいし、ディップコータで行ってもよい。本実施の形態では、樹脂組成物が上述したとおり重合性の樹脂組成物であり、例えば、電離放射線硬化性、より具体的には紫外線硬化性の樹脂材料を含む樹脂組成物が用いられる。また、樹脂組成物にはフィラー40も含まれる。
【0102】
溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等の一種又は複数種でなるケトン系溶剤であり、MEKとMIBKとの混合溶剤などでもよい。希釈液100質量部における溶剤は、例えば40質量部以上99質量部以下であり、樹脂組成物は、1質量部以上60質量部以下である。希釈液では、溶剤の残部が樹脂組成物になる。
【0103】
本実施の形態では、上記のように希釈液を基材10の表面に塗布することにより、希釈液中の溶剤を基材10の表面から基材10の内部に浸透させ、基材10を膨潤させ、この際に、希釈液中の樹脂組成物も基材10に浸透させる(12’)。この後、溶剤が乾燥工程(S62)で蒸発され且つ硬化工程(S64)で樹脂組成部が硬化されることで、浸透層12が形成されることになる。
【0104】
浸透層12を確実に形成する観点では、樹脂を主成分とする基材10に溶剤が浸透し易いことが好ましく、溶剤は樹脂溶解性の高いものが好ましい。アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系、塩素系等の極性の溶剤は、一般に、樹脂溶解性が高いため、浸透層12の形成の観点で好ましく、特にケトン系溶剤及びエステル系溶剤が浸透層12の形成の観点で好ましい。ただし、溶剤として、炭化水素系などの非極性溶剤が用いられてもよい。
【0105】
プライマー層20の厚みは、上述したように0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましいが、基材10上に塗布された希釈液の厚みは、乾燥、縮合、重合などを考慮して、3μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0106】
(乾燥工程)
ステップS62で行う乾燥工程では、基材10上の希釈液を乾燥させ、希釈液中の溶剤の一部又は全部を蒸発させるとともに、希釈液中の樹脂組成物を未硬化又は半硬化の状態のままにする。乾燥は、ヒータを有する乾燥炉103に基材10を通すことにより行ってもよいし、自然乾燥でもよい。なお、樹脂組成物を半硬化の状態にする場合には、この乾燥工程で紫外線照射工程(半硬化処理工程)を実施してもよいし、乾燥工程の前に紫外線照射工程(半硬化処理工程)を実施しておいてもよい。なお、乾燥は、「希釈液中の溶剤の一部又は全部を蒸発させる」と説明したように、液体成分の一部を蒸発させること又は液体成分の全部を蒸発させることを意味する。
【0107】
本実施の形態では、溶剤の一部が蒸発され、希釈液中に残留溶剤が意図的に残される。また、希釈液中の樹脂組成物は、未硬化の状態にする。本実施の形態では、プライマー層20におけるフィラー40の密度が、機能層30におけるフィラー40の密度よりも小さくなる機能性フィルム1を作製する。この場合、希釈液中に残留溶剤を残し且つ樹脂組成物を未硬化にすると、プライマー層20におけるフィラー40の密度が、機能層30におけるフィラー40の密度よりも小さくなり易くなり、この理由で残留溶剤を残し且つ樹脂組成物を未硬化としている。
【0108】
ただし、溶剤の一部が蒸発され且つ樹脂組成物が半硬化とされた場合や、溶剤の全部が蒸発され且つ樹脂組成物が未硬化とされた場合でも、プライマー層20におけるフィラー40の密度が、機能層30におけるフィラー40の密度よりも小さくなる場合もある。単純な方法で実現するならば、希釈液中のフィラーの量を少なくすればよい。一方で、プライマー層20におけるフィラー40の密度と機能層30におけるフィラー40の密度とを同等にしたい場合には、溶剤の全部を蒸発させ且つ樹脂組成物を半硬化にしてもよい。
【0109】
(設置工程)
ステップS63で行う設置工程では、乾燥工程後の希釈液上に、機能層30形成用の樹脂組成物を設ける。樹脂組成物の設置手法は特に限られないが、ダイヘッドから塗布してもよい。乾燥工程後の希釈液は、溶剤の少なくとも一部が蒸発されていることで本実施の形態では粘性を有する。
【0110】
本実施の形態では、設置工程で用いられる樹脂組成物が、希釈液塗布工程において溶剤によって希釈された樹脂組成物と同じ物質である。また、本実施の形態では、加温された樹脂組成物が希釈液上に設けられる。これにより、プライマー層20におけるフィラー40の密度が、機能層30におけるフィラー40の密度よりも小さくなり易くなる。なお、言うまでもないが、本実施の形態では、設置工程で用いられる樹脂組成物におけるフィラー40の割合と、希釈液塗布工程で用いられた樹脂組成物におけるフィラー40の割合は、同等である。
【0111】
希釈液上に樹脂組成物を設けた場合、本実施の形態では、希釈液中の残留溶剤によって希釈液上に設けられた樹脂組成物の一部を希釈液側に流動させることができる。この現象は、希釈液の樹脂溶解性が高い場合に促進され、この観点で、溶剤としては、ケトン系溶剤などが良い。また、このとき、樹脂組成物が加温されていることで、樹脂組成物の一部が希釈液側に流れ易くなる。そして、この際、残留溶剤が蒸発して樹脂組成物と置き換わることで、その後、樹脂組成物が硬化された際に、プライマー層20におけるフィラー40の密度が機能層30におけるフィラー40の密度よりも小さくなる状態を形成できる。なお、本実施の形態では、機能層30におけるフィラー40が隣り合うもの同士で互いに接触する状態が多く形成される傾向になり、且つ溶剤に引き寄せられ易くなる性質も有さないことから、希釈液側には基本的に引き込まれない。
【0112】
(硬化工程)
そして、ステップS64で行う硬化工程では、希釈液中及び希釈液上の樹脂組成物を硬化させることで、基材10上で樹脂組成物が硬化してなる樹脂を含むプライマー層20と、プライマー層20上で樹脂組成物が硬化してなる樹脂を含む機能層30と、を形成する。樹脂組成物の硬化は、例えば紫外線を照射することにより行われる。
【0113】
上述したとおり、本実施の形態では、希釈液中の残留溶剤によって希釈液上に設けられた樹脂組成物の一部を希釈液側に流動させ、この際、残留溶剤が蒸発して樹脂組成物と置き換わる。この状態で、紫外線によって樹脂組成物が硬化されることにより、プライマー層20におけるフィラー40の密度が機能層30におけるフィラー40の密度よりも小さくなる状態が得られる。以上をもって、本実施の形態では、機能性フィルム1が製造されるが、この硬化工程の後に、追加の硬化工程(紫外線照射)が行われてもよい。なお、硬化工程では、希釈液上の樹脂組成物にモールドでパターンを形成しながら、樹脂組成物が硬化されてもよい。
【0114】
(製造設備)
図7に示す製造設備100は、供給ロール101と、グラビアロール102と、乾燥炉103と、ダイヘッド104と、第1UV硬化装置105と、巻取ロール106と、を備えている。
【0115】
供給ロール101は、基材10を巻き付け、基材10をグラビアロール102側へ送り出す。グラビアロール102は、希釈液を基材10に転写することで塗布する。乾燥炉103は、内部に搬送された希釈液付きの基材10をヒータで加熱することで、希釈液を乾燥させる。ダイヘッド104は、乾燥炉103を通過した基材10上の希釈液に加温した樹脂組成物を塗布する。第1UV硬化装置105は、モールドを有するロール105Aで樹脂組成物にパターンを形成しながら、樹脂組成物側とは反対の側から基材10を介して紫外線を照射し、樹脂組成物を硬化させる。そして、巻取ロール106は、機能性フィルム1を順次巻き取る。
【0116】
以上のような製造設備100では、グラビアロール102で希釈液塗布工程が行われる。乾燥炉103で乾燥工程が行われる。ダイヘッド104で設置工程が行われる。そして、第1UV硬化装置105で硬化工程が行われる。なお、機能性フィルム1の製造設備は、上記製造設備100とは異なるものであってもよい。機能性フィルムを形成するための材料の選択に応じて、製造工程及び製造設備が変わることは言うまでもない。
【0117】
以上に説明した本実施の形態に係る機能性フィルム1は、基材10と、基材10上に設けられたプライマー層20と、プライマー層20上に設けられた機能層30と、を備え、プライマー層20がフィラー40を含むとともに、機能層30がフィラー40を含む。これにより、プライマー層20によって基材10と機能層30との密着性を向上させながら、プライマー層20内のフィラー40及び機能層30のフィラー40によって期待される機能が発揮される。よって、基材10と機能層30との密着性を簡易に且つ効果的に向上でき、さらには期待される機能を好適に発揮できる。
【0118】
特に本実施の形態では、プライマー層20におけるフィラー40の密度が、機能層30におけるフィラー40の密度よりも小さい。これにより、基材10に接するプライマー層20中のフィラー40の数が抑えられ、基材10とプライマー層20との密着性が向上し得る。一方で、プライマー層20と機能層30との間では、樹脂21と樹脂31とが接する面積が増えるため、プライマー層20と機能層30との密着性が向上し得る。
【0119】
また、本実施の形態では、プライマー層20と機能層30とが同じ樹脂を含む。この場合、プライマー層20の樹脂21と機能層30の樹脂31とが同種界面になり、プライマー層20と機能層30とが界面において一部又は全部で融合され得て、さらにはプライマー層20と機能層30との線膨張係数が一致又は略一致する、あるいは近くなる。これにより、プライマー層20と機能層30との密着性が向上し、結果的に、基材10と機能層30との密着性が向上する。また、プライマー層20の樹脂21と機能層30の樹脂31とが同じである場合、プライマー層20の形成材料は機能層30の形成材料を流用でき、入手が容易である。よって、基材10と機能層30との密着性を簡易に且つ効果的に向上できる。なお、プライマー層20を形成する樹脂組成物は、第1樹脂組成物に対応し、機能層30を構成する樹脂組成物は、第2樹脂組成物に対応する。本実施の形態では、第1樹脂組成物と第2樹脂組成物とが同じ組成物であるが、第1樹脂組成物と第2樹脂組成物とは異なる組成物でもよい。
【0120】
また、基材10は、プライマー層20側に、プライマー層20が含む樹脂が一部に浸透してなる浸透層12を有する。これにより、基材10と機能層30との密着性を効果的に向上できる。
【0121】
より詳しくは、本実施の形態に係る機能性フィルム1は、以下の構成(1)又は構成(2)を備える。
<構成(1)>
機能性フィルム1は、アセチルセルロース系樹脂を含む基材10と、基材10上に設けられた、フィラー40を含むプライマー層20と、プライマー層20上に設けられた、フィラー40を含む機能層30と、を備える。基材10は、プライマー層20側に、プライマー層20が含む樹脂が一部に浸透してなる浸透層12を有し、浸透層12の厚みは、0.1μm以上3.5μm以下である。プライマー層20の厚みは、0.1μm以上1.0μm以下である。プライマー層20におけるフィラー40及び機能層30におけるフィラー40は、平均粒子径が20nm以上80nm以下であるシリカ粒子である。プライマー層20におけるフィラー40の密度は、機能層30におけるフィラー40の密度の1/3以上3/4以下である。プライマー層20と機能層30とはそれぞれ一種の樹脂を含み、プライマー層20が含む一種の樹脂と機能層30が含む一種の樹脂とが同じである。
<構成(2)>
機能性フィルム1は、機能性フィルム1は、アセチルセルロース系樹脂を含む基材10と、基材10上に設けられた、フィラー40を含むプライマー層20と、プライマー層20上に設けられた、フィラー40を含む機能層30と、を備える。基材10は、プライマー層20側に、プライマー層20が含む樹脂が一部に浸透してなる浸透層12を有し、浸透層12の厚みは、0.1μm以上3.5μm以下である。プライマー層20の厚みは、0.1μm以上1.0μm以下である。プライマー層20におけるフィラー40及び機能層30におけるフィラー40は、平均粒子径が20nm以上80nm以下であるシリカ粒子である。機能層30におけるフィラー40は、機能層30の厚み方向の断面で、0.5μmあたり90個以上150個以下で存在する。プライマー層20におけるフィラー40は、プライマー層20の厚み方向の断面で、0.2μmあたり15個以上45個以下で存在する。プライマー層20と機能層30とはそれぞれ一種の樹脂を含み、プライマー層20が含む一種の樹脂と機能層30が含む一種の樹脂とが同じである。
【0122】
上記構成(1)及び構成(2)によれば、基材10と機能層30との密着性を簡易に且つ極めて効果的に向上でき、さらには期待される機能を好適に発揮でき、特に良好な光学的機能を得たい場合に非常に有利になる。そして、本実施の形態におけるプライマー層20は、基材10に浸透層12を形成し、基材10とアンカー効果及び分子間引力により接合し得るとともに、機能層30とは樹脂共通であり同時に硬化されることで、アンカー効果、分子間引力及び化学的結合により接合し得る。これにより、極めて良好な密着性が得られる。なお、以上に説明した接合状態は必ずしも生じていなくてもよく、このような接合状態は本開示を限定するものではない。
【0123】
<変形例>
以下、機能性フィルムの変形例について説明する。図8乃至図10はそれぞれ、変形例に係る機能性フィルム2~4を概略的に示している。以下の変形例の構成部分のうちの上述の実施の形態と同様のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0124】
図8に示す機能性フィルム2は、上述の実施の形態で説明した基材10、プライマー層20及び機能層30に加えて、第1追加機能層50と、表面保護層60とをさらに備えている。第1追加機能層50は、機能層30上に設けられ、表面保護層60は、第1追加機能層50上に設けられている。
【0125】
正確に説明すると、第1追加機能層50は、厚み方向で向き合う機能層30の一対の面のうちのプライマー層20側とは反対の側の面に直接的に接する状態で設けられている。表面保護層60は、厚み方向で向き合う第1追加機能層50の一対の面のうちの機能層30側とは反対の側の面に直接的に接する状態で設けられている。
【0126】
第1追加機能層50の機能は特に限られるものではなく、例えば防眩や反射防止等の光学的機能、ハードコート、ガスバリア、導電性確保、磁性確保、耐擦性、断熱性、難燃性、紫外線遮断などでもよい。第1追加機能層50の材質は、有機材料、無機材料又はこれらを組み合わせた材料でもよい。表面保護層60は、機能性フィルム2の最表面を構成する。
【0127】
図9に示す機能性フィルム3は、基材10と、基材10上に設けられたプライマー層20と、プライマー層20上に設けられた機能層30と、を備えるが、プライマー層20にフィラー40が含まれない点で上述の実施の形態と相違する。
【0128】
本変形例に係る機能性フィルム3でも、プライマー層20が含む樹脂21と機能層30が含む樹脂31とが同じ樹脂となる。したがって、プライマー層20の樹脂21と機能層30の樹脂31とが同種界面になり、プライマー層20と機能層30とが界面において一部又は全部で融合され得て、さらにはプライマー層20と機能層30との線膨張係数が一致又は略一致する。これにより、プライマー層20と機能層30との密着性が向上し、結果的に、基材10と機能層30との密着性が向上する。
【0129】
本変形例に係る機能性フィルム3の製造の際には、図6に示した希釈液塗布工程で、フィラー40を含まない樹脂組成物が使用される。一方で、設置工程で、乾燥後の希釈液上に設ける樹脂組成物は、フィラー40を含む。ただし、設置工程で使用する樹脂組成物は、フィラー40を除いた場合の成分が、希釈液塗布工程で希釈液によって希釈された樹脂組成物と同じである。また、この変形例の場合も、乾燥工程において、希釈液中に残留溶剤を残したり、樹脂組成物を未硬化にしたり、設置工程で樹脂組成物を加温して設けることで、樹脂組成物の流動現象を適宜発生させることができる。
【0130】
また、図10に示す機能性フィルム4は、基材10と、基材10上に設けられたプライマー層20と、プライマー層20上に設けられた機能層30と、を備えるが、プライマー層20及び機能層30にフィラー40が含まれていない。
【0131】
本変形例に係る機能性フィルム4でも、プライマー層20が含む樹脂21と機能層30が含む樹脂31とが同じ樹脂となる。したがって、プライマー層20の樹脂21と機能層30の樹脂31とが同種界面になり、プライマー層20と機能層30とが界面において一部又は全部で融合され得て、さらにはプライマー層20と機能層30との線膨張係数が一致又は略一致する。これにより、プライマー層20と機能層30との密着性が向上し、結果的に、基材10と機能層30との密着性が向上する。
【0132】
本変形例に係る機能性フィルム4の製造の際には、図6に示した希釈液塗布工程で、フィラー40を含まない樹脂組成物が使用される。また、設置工程で、乾燥後の希釈液上に設ける樹脂組成物も、フィラー40を含まない。そして、希釈液塗布工程で使用する樹脂組成物と、設置工程で使用する樹脂組成物は同じである。また、乾燥工程において、希釈液中に残留溶剤を残したり、樹脂組成物を未硬化にしたり、設置工程で樹脂組成物を加温して設けることで、樹脂組成物の流動現象を適宜発生させることができる。
【実施例
【0133】
次に、上述した実施の形態に係る機能性フィルムを具体的に作製した実施例及びその比較例と、これらの性能を比較した評価結果について説明する。
【0134】
(実施例1)
実施例1に係る機能性フィルムは、基材10と、基材10上に設けられたプライマー層20と、プライマー層20上に設けられた機能層30と、を備え、プライマー層20と機能層30とが同じ樹脂を含んでいる。すなわち、プライマー層20と機能層30とが同じ樹脂組成物を重合させることで形成される。そして、樹脂組成物にはフィラー40が含まれている。そして、プライマー層20及び機能層30は、プライマー層20におけるフィラー40の密度が機能層30におけるフィラー40の密度よりも小さくなるように形成されている。また、基材10には、浸透層12を形成した。
【0135】
実施例1の各部の形成材料の詳細は、以下である。
・基材10は、厚み80μmのTACフィルムである。
・樹脂組成物は、フィラー40を含む電離放射線硬化型樹脂である。より詳しくは、樹脂阻組成物は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートである。
・フィラー40は、シリカ粒子である。シリカ粒子の平均粒子径は、65nmである。
・樹脂組成物を希釈する溶剤は、MEKとMIBKの混合物である。
【0136】
(実施例2)
実施例2に係る機能性フィルムは、プライマー層20におけるフィラー40の密度と機能層30におけるフィラー40の密度とを同等にした点以外は、実施例1と同じである。
【0137】
(比較例)
比較例に係る機能性フィルムは、基材上に、直接的にフィラーを含む樹脂組成物を設け、その後、硬化させることにより形成されている。すなわち、比較例に係る機能性フィルムは、浸透層及びプライマー層を備えていない。基材、フィラー及び樹脂組成物の材質は、実施例1,2と同じものである。
【0138】
(評価結果)
実施例および比較例に係る機能性フィルムの評価として、密着性をクロスカット法によって評価した。具体的には、JIS K5600-5-6:1999に準拠し、クロスカットCCJ-1(コーテック社製)を用い、各機能性フィルムの表面に碁盤目状の切り傷を入れ、1mm角を100マス作製した。そして、ニチバン株式会社製の工業用24mm幅のセロテープ(登録商標)を碁盤目の上に貼り、その上からヘラで往復10回擦って、密着させ150°方向に急速剥離を行なった。このような動作を5回繰り返し、残った升目の数をカウントした。そして、残った升目の数を分子、升目の全個数を分母にして、評価した。この評価では、残った升目の数が大きい程、密着性が高いと評価される。また、この評価は、機能性フィルムが製造された直後の初期状態と、環境温度-40℃から85℃の間の300回の温度サイクル試験後の状態と、で行った。
【0139】
評価結果は、以下の表の通りである。
【0140】
【表2】
【0141】
実施例1では、初期状態及び温度サイクル試験後の状態のそれぞれで、100マスが全て残っていた。実施例2では、初期状態に関して、100マスが全て残っており、温度サイクル試験後の状態に関して、100マス中98マスが残っていた。一方で、比較例では、初期状態及び温度サイクル試験後の状態のそれぞれで、100マス全てが剥がれてしまった。すなわち、100マス全てで機能層が基材から剥がれてしまった。
【0142】
この評価結果により、実施例にかかる機能性フィルムの密着性の高さが確認された。特に、プライマー層20におけるフィラー40の密度が機能層30におけるフィラー40の密度よりも小さくした場合には、密着性がより向上することも確認された。
【0143】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上述の実施の形態には種々の変更を加えてもよい。このような変形例も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。
【符号の説明】
【0144】
1,2,3,4…機能性フィルム
10…基材
11…基材主層
12…浸透層
20…プライマー層
21…樹脂
30…機能層
31…樹脂
40…フィラー
50…第1追加機能層
60…表面保護層
100…製造設備
101…供給ロール
102…グラビアロール
103…乾燥炉
104…ダイヘッド
105…第1UV硬化装置
105A…ロール
106…巻取ロール
【要約】
【課題】基材と機能層との密着性を簡易に且つ効果的に向上でき、さらには期待される機能を好適に発揮できる機能性フィルムを提供する。
【解決手段】一実施の形態に係る機能性フィルム1は、アセチルセルロース系樹脂を含む基材10と、基材10上に設けられた、フィラー40を含むプライマー層20と、プライマー層20上に設けられた、フィラー40を含む機能層30と、を備える。基材10は、プライマー層20が含む樹脂が一部に浸透してなる浸透層12を有し、浸透層12の厚みは、0.1μm以上3.5μm以下である。プライマー層20の厚みは、0.1μm以上1.0μm以下である。フィラー40は、平均粒子径が20nm以上80nm以下であるシリカ粒子である。プライマー層20におけるフィラー40の密度は、機能層30におけるフィラー40の密度の1/3以上3/4以下である。プライマー層20と機能層30とはそれぞれ一種の樹脂を含み、プライマー層20が含む一種の樹脂と機能層30が含む一種の樹脂とが同じである。
【選択図】図3A
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10