(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】電動昇降装置
(51)【国際特許分類】
B66D 3/18 20060101AFI20221104BHJP
B66D 3/20 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B66D3/18 E
B66D3/20 H
(21)【出願番号】P 2018203639
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-001323(JP,A)
【文献】特開2018-135162(JP,A)
【文献】特開2000-271177(JP,A)
【文献】特開2010-241518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 3/18
B66D 3/20
B66F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を係止して昇降させる昇降作動部と、
前記昇降作動部へ動力を供給するモータ部と、
前記昇降作動部に加わる重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
前記昇降作動部の位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
前記モータ部の制御を行う制御部と、
前記制御部へ操作の指令を行う操作指令部と、
を備えて係止した前記物品をバランス状態にて昇降自在にする電動昇降装置であって、
前記制御部は、
登録物品重量を前記操作指令部からの登録指令にて記憶部に記憶し、
係止した前記物品がバランス状態にある時、前記位置検出部からの前記位置信号と、前記重量検出部からの前記重量信号と、前記記憶部からの前記登録物品重量と、を用いて前記昇降作動部に加わる外力推定値を算出して、前記モータ部への指令を行
い、
さらに前記制御部は、前記位置信号を微分して加速度信号を得る2つの微分器と、前記加速度信号と前記記憶部に記憶されている前記登録物品重量から慣性重量を演算する演算器と、前記重量検出部から受信した前記重量信号から前記慣性重量を減算して前記外力推定値を得る減算器と、を有することを特徴とする電動昇降装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記外力推定値に0より大きく1より小さな加速度変換係数を乗算し、
これを基に前記モータ部へ加速度による指令を行う乗算器を有することを特徴とする請求項1に記載の電動昇降装置。
【請求項3】
物品を係止して昇降させる昇降作動部と、
前記昇降作動部へ動力を供給するモータ部と、
前記昇降作動部に加わる重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
前記昇降作動部の位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
前記モータ部の制御を行う制御部と、
前記制御部へ操作の指令を行う操作指令部と、
を備えて係止した前記物品をバランス状態にて昇降自在にする電動昇降装置であって、
前記制御部は、
登録物品重量を前記操作指令部からの登録指令にて記憶部に記憶し、
係止した前記物品がバランス状態にある時、前記位置検出部からの前記位置信号と、前記重量検出部からの前記重量信号と、前記記憶部からの前記登録物品重量と、を用いて前記昇降作動部に加わる外力推定値を算出して、前記モータ部への指令を行い、
さらに前記制御部は、前記外力推定値に0より大きく1より小さな加速度変換係数を乗算し、これを基に前記モータ部へ加速度による指令を行う乗算器を有することを特徴とする電動昇降装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記加速度変換係数を、前記位置信号から演算して得た前記昇降作動部の作動方向及び前記記憶部に記憶された前記登録物品重量の少なくとも1つに応じて、異なる値に切換える切換設定部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の電動昇降装置。
【請求項5】
前記昇降作動部が、
半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交互に連接され、一方の端が前記物品を係止する係止部材に連結するリンクチェーンと、
前記モータ部の駆動により回転して、前記リンクチェーンを巻回して前記リンクチェーンの繰り出しと引込みを巻回する回転部材と、を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電動昇降装置。
【請求項6】
前記昇降作動部が、
対をなして相互に噛み合い、一方の端が前記物品を係止する係止部材に連結して鉛直上方向に剛直化する噛合チェーンと、
前記モータ部の駆動により回転して、前記噛合チェーンと噛み合って前記噛合チェーンの繰り出し及び引込みを行う歯車と、を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電動昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造分野の製造組立てや搬送などに用いる電動昇降装置であって、例えば物品を昇降させる際にモータによるアシストで重量のバランスを行い、僅かな操作力で上下移動させる電動昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から工業製品の組立てを行う工場では、大きな重量を有する工具、作業用機器、製品、半完成品などの物品を吊下げて上下移動させる電動昇降装置を使用している。その電動昇降装置の中でも、大きな重量の物品に対してバランス状態を作り出し、作業者が小さな操作力(外力)で任意の高さに上下移動できるようにアシスト力を発生させるバランス型の電動昇降装置が一部で使用されている。このようにアシスト力を発生させるバランス型の電動昇降装置は、モータ部によってバランス状態を作り出し、作業者が物品に小さな操作力を加えると物品は上下移動して、操作力を止めるとその位置付近で停止する。(特許文献1、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018―002361号公報
【文献】特開2018―070361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、物品がバランス状態にある時、作業者が外力すなわち操作力を物品に加えて加速させようとすると慣性による荷重が逆方向に加わって減速させてしまう現象が起こっていた。したがって作業者はそれに抗うためにより強い力を加える必要があった。この現象は対象とする物品の重量が例えば数十Kg以上の比較的大きな重量物を扱う作業ではより顕著に起こり、重い物品を扱う電動昇降装置の操作性において改善する余地があった。
【0005】
このような問題に鑑みて、本発明はバランス型の電動昇降装置において操作性の向上を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動昇降装置は、上記の目的を達成するために、
物品を係止して昇降させる昇降作動部と、
昇降作動部へ動力を供給するモータ部と、
昇降作動部に加わる重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
昇降作動部の位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
モータ部の制御を行う制御部と、
制御部へ操作の指令を行う操作指令部と、
を備えて係止した物品をバランス状態にて昇降自在にする電動昇降装置であって、
制御部は、
登録物品重量を操作指令部からの登録指令にて記憶部に記憶し、
係止した物品がバランス状態にある時、位置検出部からの位置信号と、重量検出部からの重量信号と、記憶部からの登録物品重量と、を用いて昇降作動部に加わる外力推定値を算出して、モータ部への指令を行うように構成されている。
【0008】
さらに、
制御部は、位置信号を微分して加速度信号を得る2つの微分器と、加速度信号と記憶部に記憶されている登録物品重量から慣性重量を演算する演算器と、重量検出部から受信した重量信号から慣性重量を減算して外力推定値を得る減算器と、を有している。
【0009】
さらに、
制御部は、外力推定値に0より大きく1より小さな加速度変換係数を乗算し、これを基にモータ部へ加速度による指令を行う乗算器を有している。
【0010】
さらに、
制御部は、加速度変換係数を、位置信号から演算して得た昇降作動部の作動方向及び記憶部に記憶された登録物品重量の少なくとも1つに応じて、異なる値に切換える切換設定部を有している。
【0011】
また、
昇降作動部が、
半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交互に連接され、一方の端が物品を係止する係止部材に連結するリンクチェーンと、
モータ部の駆動により回転して、リンクチェーンを巻回してリンクチェーンの繰り出しと引込みを巻回する回転部材と、を備えている。
【0012】
また、
昇降作動部が、
対をなして相互に噛み合い、一方の端が物品を係止する係止部材に連結して鉛直上方向に剛直化する噛合チェーンと、
モータ部の駆動により回転して、噛合チェーンと噛み合って噛合チェーンの繰り出し及び引込みを行う歯車と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動昇降装置によれば、バランス状態にある比較的重い物品の昇降作業の操作性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置全体の斜視構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の本体部の一部を省略した斜視構成図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示す模式図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示す模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示す模式図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置のバランスモードでの動作を示す模式図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置のバランスモードでの動作を示す模式図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示す模式図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示す模式図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置のバランスモードでの動作を示す模式図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置のバランスモードでの動作を示す模式図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置全体の斜視構成図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の正面図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示す模式図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示す模式図である。
【
図16】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置のバランスモードでの動作を示す模式図である。
【
図17】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示す模式図である。
【
図18】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示す模式図である。
【
図19】本発明の第1及び第2の実施形態に係る電動昇降装置の制御に関するブロック図である。
【
図20】本発明の第1及び第2の実施形態に係る電動昇降装置の制御の各モードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る電動昇降装置について、図面を基に詳細な説明を行う。
【0016】
図1は本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置1の外観構成を示した斜視図である。電動昇降装置1は、本体部11と、モータ部2と、リンクチェーン6と、操作指令部22aと、係止部材8aと、リンクチェーン収納部12と、で構成されている。本体部11及びモータ部2はカバーで覆われている。操作指令部22aは本体部11からリンクチェーン6に沿って下方に伸びた位置にある。係止部材8aはリンクチェーン6の一方の端に繋がって対象の物品30aを吊下げ係止する。リンクチェーン収納部12は巻上げられたリンクチェーン6の他方の端側、すなわち物品30aが係止されない側の一部を収納する。
【0017】
図2は本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置1の本体部11及びモータ部2の一部の内部構造を示したものであって、
図1のカバー等を省略して表したものである。
【0018】
モータ部2は、モータと、モータの負荷側に取り付けられた減速機と、で構成されている。モータは例えば交流サーボモータである。そして減速機はモータの回転速度を所定の速度に減速している。減速機は例えば波動歯車減速機である。波動歯車減速機は、ウエーブジェネレータと、フレクスプラインと、サーキュラスプラインとからなる。ウエーブジェネレータは外周が楕円状のものである。フレクスプラインは、外周に多数の外歯が形成されウエーブジェネレータに外嵌されてウエーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なものである。サーキュラスプラインは、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えている。そして動力は、フレクスプラインを回転出力として繋げた回転出力軸3に取り出されて伝達するようになっている。
【0019】
減速機に例えば波動歯車減速機のようなバックラッシが微小なものを使用することで、モータの正逆回転切り換えを頻繁に行ってバランスさせる時に、切り換え時の制御不能な領域をなくし、スムーズな操作感を実現できる。回転出力軸3は減速機にて減速された回転軸であり、昇降作動部7aに連結され、昇降作動部7aを連続的に正逆に回転させるものである。
【0020】
本体部11の天面にはこの電動昇降装置1を吊下げるための吊下げ用フック9が固定されている。この吊下げ用フック9は、物品を吊下げた時に電動昇降装置1が大きく傾くことがない位置に設けられる。
【0021】
リンクチェーン6は、半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交差して交互に連接されたものである。リンクチェーン6の一端は係止部材8aに繋がっていて、他端(無負荷側)はリンクチェーン収納部12に収納されている。
【0022】
係止部材8aは物品30aを係止して吊下げるためのものであって、本実施形態ではリンクチェーン6に連結されたフック形状のものを使用している。係止部材8aはフックに限らず、対象とする物品30aの形状によって適宜選択される。
【0023】
昇降作動部7aは、回転部材と、リンクチェーン6と、を含んで構成される。回転部材は、駆動源のモータ部2からの動力の伝達によって回転する。リンクチェーン6は、係止部材8aに接続されている。本実施形態では昇降作動部7aの回転部材は円筒の形状であって、回転出力軸3と繋がっていて、リンクチェーン6の繰り出しと引込みを行う。リンクチェーン6が巻回される位置は、おおよそ吊下げ用フック9の鉛直下付近であって、本体部11の重心位置に近いところに設けられる。リンクチェーン6は回転部材に設けられたポケット溝に嵌入されておおよそ180度ほど巻回される。本実施形態では係止部材8aに繋がった昇降作動部7aにリンクチェーン6を用いたが、これに限らずワイヤーロープ等であっても良い。その時には昇降作動部7aの回転部材はドラム形状で、ワイヤーロープはその一端がドラムの胴部に固定されて巻回される。
【0024】
モータ部2の反負荷側にはモータの回転角位置を検出する位置検出部4が連結されている。位置検出部4は例えばアブソリュートエンコーダであって、光学式にてモータの回転角位置を検出して位置信号を出力する。この位置検出部4は、係止部材8aの繰り出し位置すなわち昇降位置を検出することができる。本実施形態では、位置検出部4はモータ部2の反負荷側に配置したがこれに限らず、減速機の出力である回転出力軸3や昇降作動部7aに設けられても良く、また両方に設けられても良い。さらに光学式に限らず磁気式や静電容量式等であっても良い。
【0025】
重量検出部5は、昇降作動部7aに巻きつけられているリンクチェーン6から伝達される力を反力として検出できるように昇降作動部7aを吊下げた構造を有している。重量検出部5は、起歪体と起歪体に貼られた歪みゲージとを備えている。歪みゲージは重量に応じて起歪体に生ずる歪みを電気信号に変換するホイートストーンブリッジ回路に組み込まれ、これによって重量検出部5は重量信号を出力する。
【0026】
なお重量検出部5はこれに限らず、係止部材8aに加わる重量を検出できれば良く、減速機と昇降作動部7aとの間に設けた回転出力軸3の捻れからトルクを検出するような回転軸型の構造であっても良い。また重量検出部5は、モータ部2のケーシングと本体部11の固定部材の間に設けてモータ部2が受ける反力を検出する鼓型の構造のものであっても良い。
【0027】
そして制御部10が本体部11内に配置されている。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えている。制御部10は、位置検出部4からの位置信号及び重量検出部5からの重量信号等を基に、モータ部2を制御する。制御部10をはじめとする電装部は、電動昇降装置1を粉粒や水滴のかかる場所での使用も可能にするためにカバーにて覆われた本体部11内に配置されている。制御部10は、さらに位置検出部4、重量検出部5及び各回路へ電源を供給する電源回路や、モータ部2を駆動する駆動回路を含んでいる。
【0028】
操作指令部22aは、係止部材8aの鉛直上方向でリンクチェーン6の端部近傍に配置されている。操作指令部22aは例えば箱型の形状であって、照光式の操作釦等が設けられている。これらの操作釦は制御部10にスパイラルコード13で電気的に繋がっていて係止部材8aの昇降に係る指令を制御部10へ行うことができる。操作指令部22aの操作釦は、例えばバランス釦22bと、保持釦22cと、上昇釦22dと、下降釦22eと、からなる。バランス釦22bは、係止部材8aに吊下げた物品30aの重量をモータ部2のアシスト駆動によってキャンセルして、物品30aをバランス状態にすることを指令するためのものである。なおバランス釦22bは係止部材8aに係止された対象の物品の重量を登録する登録指令釦としての役割も有している。保持釦22cは、現在の係止部材8aの位置を保持することを指令するためのものである。すなわち制御部10は、昇降作動部7aの昇降位置を保持する保持モードと、係止部材8a及びこれに係止された物品30aをバランス状態にするバランスモードと、を操作指令部22aの保持釦22c及びバランス釦22bの指令によって切換え可能である。上昇釦22dは、一時的に保持状態若しくはバランス状態を解除して、モータ部2を直接的に所定の速度で駆動して係止部材8aを上昇させる。下降釦22eは、一時的に保持状態若しくはバランス状態を解除して、モータ部2を直接的に所定の速度で駆動して係止部材8aを下降させる。これら操作指令部22aの各操作釦は、発光によって押されたことを作業者に報知する。操作指令部22aは、制御部10との接続を赤外線や電波等を用いた無線方式で行い、電池にて駆動され、リンクチェーン6から取り外し可能なものであっても良い。
【0029】
図3から
図11は本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示す模式図である。
図3から
図7は床31に置かれた物品30aを持ち上げて、床31からの高さh1の固定構造物32へ移動させる際の経過状態を示している。
【0030】
図3において、電動昇降装置1は保持モード若しくはバランスモードのいずれかにある。作業者は、係止部材8aを床31に置かれた物品30aに係止するため、係止部材8aを下降させる必要がある。係止部材8aを下降させる方法には2つの方法がある。第1の方法は、作業者は電動昇降装置1を保持モード若しくはバランスモードにしておき、係止部材8aが所望の位置に到達するまで下降釦22eを押し続ける。第2の方法は、作業者は保持モード中に係止部材8aに何も係止させない状態でバランス釦22bを押してバランスモードにする。するとその時に重量検出部5が検出した重量で電動昇降装置1はバランス状態となる。係止部材8aはバランス状態であるので、作業者は自在に係止部材8aを僅かな操作力で上下移動することができる。したがって作業者は係止部材8aを掴んで係止部材8aが所望の位置に到達するまで引き下げる。
【0031】
図4に示すように、作業者が上述のいずれかの方法で、係止部材8aを物品30aに係止させる位置まで下降させて、係止部材8aを物品30aに係止させたところで上昇釦22dを押すと、係止部材8aは上昇を始める。作業者は、
図5に示すように、物品30aが床31から完全に離れる位置h2に到達するまで、上昇釦22dを押し続ける。物品30aが床31から完全に離れる位置h2に到達した後、作業者がバランス釦22b(登録指令釦)を押すと、制御部10はその時の昇降作動部7aに加わる重量、すなわち物品30aの重量を登録物品重量として記憶部53aにて記憶し、これを基にしてバランス制御を開始する。なお登録物品重量は、物品30aの重量が既知である場合、操作指令部22aに設けた図示しない釦、制御部10と有線や無線で接続されたコンピュータなどによって記憶部53aにて登録済みのものを指定するものであっても良い。
【0032】
物品30aの重量によって係止部材8aが鉛直下向きに引っ張られるため、リンクチェーン6、昇降作動部7a、回転出力軸3、モータ部2を介して重量検出部5も鉛直下向きに引っ張られ、重量検出部5の起歪部が変形する。制御部10は、昇降作動部7aに加わる重量を起歪部に添着された歪みゲージにて検出した重量信号を基に演算して、物品30aがバランスするように、モータ部2を駆動する制御を行う。制御部10は、バランスモードでは常に重量検出部5からの重量信号を受信して、モータ部2によって昇降作動部7aにて発生させる係止部材8aへの鉛直上向きの力と、係止部材8aに加わる鉛直下向きの力を釣り合わせる。したがって
図6に示すように、作業者が物品30aに鉛直上向きの比較的小さな外力すなわち操作力を加えると、物品30aは上昇して、例えば
図7の位置h3へ物品30aを持ち上げることができる。一方、作業者が物品30aに鉛直下向きの比較的小さな外力すなわち操作力を加えると、物品30aは下降する。ゆえに物品30aはバランスモードにて昇降自在の状態となっている。
【0033】
本発明の目的は作業者がこの外力を物品30aへ加えた際に、物品30aから受ける反力を作業者が感じるため、特に重量物における操作性に改善の余地がある。この改善についての詳細は後述する。
【0034】
その後に作業者は、電動昇降装置1をレール34に沿って、吊下げ用フック9を係止したブロック35を水平移動させ、固定構造物32の所定位置の上方へ移動させる。なおブロック35はレール34に沿って水平移動が可能な部材である。そして作業者は下降釦22eを押し続けると、物品30aが下降して固定構造物32に着地し、係止部材8aがさらに下降し、やがて係止部材8aが物品30aから取り外し可能となって、物品30aの移動が完了する。そして作業者が下降釦22eの押すのを止めると、制御部10は保持モードに切換えて次の指令を待つ。
【0035】
図8から
図11は固定構造物32に置かれた物品30aを持ち上げて床31へ移動させる際の経過を示している。
図8における電動昇降装置1は、作業者が上述の第1の方法若しくは第2の方法にて係止部材8aを物品30aに係止できる位置まで到達させたものである。
【0036】
次いで作業者は保持モードにて上昇釦22dを押して、
図9に示すように物品30aが固定構造物32から離れる位置h4まで上昇させて、保持モードを保つ。次いで作業者はブロック35を水平移動させて、電動昇降装置1を物品30aの移動先の床31の鉛直上に水平移動させる。
【0037】
そして作業者は、バランス釦22b(登録指令釦)を押す。すると
図10に示すように、制御部10はその時の昇降作動部7aに加わる重量、すなわち物品30aの重量を登録してバランスモードを開始する。そこで作業者が物品30aに鉛直下向きの比較的小さな外力すなわち操作力を加えると、物品30aは下昇して、例えば
図11に示す位置h5へ物品30aを下げることができる。そして作業者は下降釦22eを押し続けると、物品30aが下降して床31に着地し、係止部材8aがさらに下降し、やがて係止部材8aが物品30aから取り外し可能となって、物品30aの移動が完了する。もちろん位置h5は限りなくゼロに近い位置まで物品30aを下げることができるが、バランス状態で位置h5は負の値にはできないため、作業者は着地の安全が確認できたところで下降釦22eを押して係止部材8aを強制的に下げ、下降釦22eを押すのを止めると、制御部10は保持モードに切換えて次の指令を待つ。
【0038】
図12は本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の斜視図である。また
図13は本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の正面図である。
【0039】
本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40は、係止部材8bと、昇降作動部7bと、昇降支持部41と、リンクアーム46と、モータ部2と、重量検出部5と、位置検出部4と、制御部10と、を備えている。係止部材8bは対象の物品を載せ置くものである。昇降作動部7bは係止部材8bを上下方向に昇降可能にするものである。昇降支持部41は昇降作動部7bを支持固定する。リンクアーム46は係止部材8bの昇降の姿勢を案内矯正する。モータ部2は昇降作動部7bを駆動する。重量検出部5は係止部材8bに印加される重量を検出する。位置検出部4はモータ部2に繋がって係止部材8bの昇降位置を検出する。制御部10はモータ部2を用いて係止部材8bの昇降動作を制御する。そして電動昇降装置40は、これに加えて、車輪43、電源44、ハンドル45及び操作指令部22aを含み、移動台車の構造となっている。
【0040】
車輪43は、自由に方向転換可能な複数の自在輪と、方向転換が不能な固定輪からなる複数の従動輪と、で構成されている。したがって作業者は、ハンドル45を押し引き操作することで電動昇降装置40を操舵することができる。
【0041】
昇降作動部7bが昇降支持部41上に、係止部材8bを昇降可能にするように載置されている。昇降作動部7bは、例えば対をなして相互に噛合可能な噛合チェーン42を有する。噛合チェーン42は、噛み合いが外れた方向に伸長してかつ屈曲自在な状態で昇降作動部7b内の噛合チェーン収容部に収容されている。そして噛合チェーン42は、昇降作動部7bに接続されている駆動源によって駆動され、剛直化した状態で鉛直上方向に繰り出されて進み、噛合チェーン42の噛み合った方の一方の端が接続されている支持板48を介して係止部材8bを上昇させる。噛合チェーン42の噛み合った方の端部は、係止部材8bを構成する支持板48にボルト等によって接続固定される。一方、噛合チェーン42のもう一方の端部は噛み合いが外れた箇所からそれぞれ反対方向に昇降作動部7bの噛合チェーン収容部内に設けた案内部に沿って動き、自由端として収容されている。噛合チェーン42は昇降作動部7bのケース内の歯車と噛み合うことで繰り出し及び引き込みすることが可能である。そしてこの歯車の回転軸は軸継ぎ手を介して駆動源であるモータ部2に接続されている。
【0042】
モータ部2は例えば減速機を取り付けた交流サーボモータであって、減速機は重量物である物品を昇降させるのに必要なトルクに増幅させている。本発明の実施形態では減速機は波動歯車減速機を使用している。波動歯車減速機は、ウエーブジェネレータと、フレクスプラインと、サーキュラスプラインとからなる。ウエーブジェネレータは外周が楕円状のものである。フレクスプラインは、外周に多数の外歯が形成されウエーブジェネレータに外嵌されてウエーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なものである。サーキュラスプラインは、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えている。そして動力は、フレクスプラインを回転出力として繋げたスプロケット回転軸に取り出されて伝達する。電動昇降装置40においては回転動力系のガタつきは可能な限り低減させることが望ましく、減速機のバックラッシは昇降作動部7bの昇降状態に影響するので、本発明の実施形態ではバックラッシが極めて微小な波動歯車減速機を用いている。
【0043】
モータの回転角位置を検出する位置検出部4が、モータ部2の反負荷側に取り付けられている。この位置検出部4は、本実施形態ではモータ部2の反負荷側に配置したエンコーダである。位置検出部4は変形例として、昇降作動部7bのケース内の歯車や歯車の回転軸に設けて噛合チェーン42の繰り出し位置を検出しても良い。また位置検出部4を減速機の部分に設けても良い。また本実施形態では位置検出部4は光学的な反射によるエンコーダであるがこれに限らず、光学式で透過式のものであっても良いし、磁力を使用したものであっても良い。さらに位置検出部4は昇降支持部41に設置した反射型の光センサ等で構成し、支持板48の高さを測定して係止部材8bの鉛直方向の位置を検出しても良い。
【0044】
リンクアーム46は、鉛直方向にそれぞれ伸縮する複数のアームで構成され、昇降作動部7bによる係止部材8bの昇降姿勢を案内及び矯正保持している。そしてリンクアーム46は、鉛直上方向に複数段積み上げて、組み合わせた構造である。
【0045】
昇降支持部41は金属フレームや板金等で構成され、リンクアーム46及び昇降作動部7bを支持固定している。
【0046】
係止部材8bは支持板48と天板47を含んでいて、支持板48の上には天板47が配置され、支持板48は天板47を支持している。さらに重量検出部5が、支持板48の上面部付近に、支持板48と天板47との間に挟み込まれるように配置されている。重量検出部5は例えば歪みゲージを有したロードセルである。重量検出部5は起歪部を有して起歪部に歪みゲージが添着されている。そして重量検出部5は、歪みゲージを含んでホイートストーンブリッジ回路を構成して歪み量に応じたアナログ信号を出力し、これを増幅して演算を行って天板47に加わる重量を求め、重量信号として出力する。そしてこの重量信号は、配線ケーブル(不図示)等によって制御部10へ送信されている。なお配線ケーブルは伸縮するスパイラルコードであっても良いし、アーム部22に沿うようにして配線及び固定されていても良い。また有線に限らず無線で制御部10へ送信するものであっても良い。なお本実施形態では、重量検出部5は係止部材8bに4つ設けてあるがこれに限るものではない。
【0047】
また重量検出部5は、昇降作動部7b内の歯車の軸に起歪部を設けてそこに歪みゲージを添着してトルク値を求め重量を演算して求めるような構成にしても良い。重量検出部5はこの他、減速機と一体で設けて減速機の出力軸を起歪部として歪みゲージを設けたものであっても良い。この場合重量検出は、歪みゲージ式に限らず、磁歪式や静電容量式等によるものであっても良い。
【0048】
制御部10は昇降支持部41にブラケット等で固定されていて、重量検出部5は制御部10にケーブル等で接続されている。制御部10はモータ部2を駆動する回路を含み、モータ部2とケーブルで電気的に接続されている。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えている。制御部10は、位置検出部4からの位置信号及び重量検出部5からの重量信号を基に、モータ部2を制御する。制御部10は、さらに位置検出部4、重量検出部5及び各回路へ電源を供給する電源回路や、モータ部2を駆動する駆動回路を含んでいる。
【0049】
電源44は昇降支持部41にブラケット等で固定されていて、 例えば電池とインバータ等で構成され、制御部10やモータ部2等へ電源供給を行う。
【0050】
操作指令部22aは例えばハンドル45に取り付けられ、制御部10とケーブル等で繋がって、操作の指令を行うものである。なお操作指令部22aはハンドル45から着脱可能であって良いし、制御部10と無線で繋がって通信するものであっても良い。また操作指令部22aに配置された釦類は第2の実施形態では第1の実施形態と同様のものであるが、これに限るものではない。
【0051】
この構成で、作業者が物品を係止部材8bに載せ置いて操作指令部22aに配置されたバランス釦22b(登録指令釦)を押すと、制御部10は係止部材8bに設けられた重量検出部5から重量信号を受信し、これに基づき、係止部材8bが受ける重量をキャンセルしてバランスするように指令するための指令信号を演算する。そして制御部10は、この指令信号によってモータ部2の駆動を行い、係止部材8bに置かれた物品のバランス状態を保つ。その後作業者は係止部材8b若しくは物品に手を添えて鉛直方向の成分を有する小さな外力を加えるという操作で、物品を上下方向に昇降移動させることができる。そして作業者がこの外力を止めると、係止部材8bはその位置近傍でバランス状態となる。すなわち制御部10は、係止部材8bに加わる鉛直下向きの力と、昇降作動部7bが発生させる係止部材8bへの力とを釣り合わせ、係止部材8b及び載置された物品をバランス状態に保つ。
【0052】
図14から
図18は、床31から高さh6の固定構造物33aに置かれた物品30bを持ち上げて他の場所の床31から高さh10の固定構造物33bへ移動させる際の経過を示している。
【0053】
固定構造物33aは床31上に電動昇降装置40が挿入可能に離間して設置された台状のものである。そして対象とする物品30bは固定構造物33aに載置されている。
【0054】
作業者は固定構造物33aの高さよりも少し低い位置h7以下へ操作指令部22aの各釦を操作して係止部材8bを昇降させ、物品30bの鉛直下側で、固定構造物33aに挟まれた空間に電動昇降装置40を移動させ保持釦22cを押して保持モードにしておく(
図14)。
【0055】
次いで作業者は操作指令部22aの上昇釦22dを押して、物品30bが固定構造物33aから離れる位置h8まで係止部材8bを上昇させる(
図15)。物品30bが固定構造物33aから離れる位置h8まで係止部材8bが上がったら、作業者はバランス釦22b(登録指令釦)を押す。すると電動昇降装置40は、この時に係止部材8bに加わる荷重を基にしてバランスを保つバランスモードへ移行する。
【0056】
図16はバランスモード中の電動昇降装置40を示していて、作業者が物品30b若しくは係止部材8bに手を添えて鉛直上方向に持ち上げるように外力を加えると、物品30bは鉛直上向きに移動し、外力の印加が終わるとその近傍で停止する。作業者は固定構造物33aに対して物品30bが充分離れた位置となるように持ち上げて、電動昇降装置40を固定構造物33aから離間させて、さらに物品30bを別の場所へ移動させる際の搬送に適した高さに移動させる。
【0057】
その後作業者は保持釦22cを押して保持モードに切換えて物品30bの高さを保持させ、電動昇降装置40を操舵して、移動先の固定構造物33bの近傍まで移動する。そして作業者はバランス釦22bを押してバランスモードに切換え、外力を加えて固定構造物33bの高さh10よりも若干高い位置h11になるように物品30bの高さを調整する。そして
図17に示すように、作業者は電動昇降装置40を固定構造物33bの間に挿入する。
【0058】
次いで作業者は下降釦22eを押して係止部材8bを下降させ、物品30bを固定構造物33bに着地させ(
図18)、さらに下降釦22eを押して電動昇降装置40を固定構造物33b間から抜け出すことができる高さまで係止部材8bを下降させることで作業は完了となる。
【0059】
図19は本発明の第1及び第2の実施形態における制御部10とその周辺の接続を示したブロック図である。
図19は電動昇降装置の制御構成とこれと接続されているモータ部2、位置検出部4及び重量検出部5との関係を模式的に示している。なお制御部10は、LSIなどを用いたハードウェアによって実現してもよく、コンピュータープログラムを用いたソフトウェアによって実現してもよい。
【0060】
制御部10は、位置検出部4から出力された位置信号θと、重量検出部5から出力された重量信号FLを入力として、モータ部2へのモータ加速度指令信号Faを出力としている。
【0061】
位置検出部4から出力された位置信号θは、微分器50aにて微分されて速度信号に変換される。そして速度信号はさらに微分器50bにて微分されて加速度信号に変換される。さらに加速度信号はローパスフィルタ51にて微分器50a及び微分器50bにて発生するノイズ等を除去する。ローパスフィルタ51は、作業者が加えた操作力に応じて発生する荷重の変化を分別できれば良いので、通過させる周波数帯域は数Hz程度でのフィルタである。ローパスフィルタ51でノイズを除去した加速度信号は演算器52に入力される。
【0062】
一方で、重量検出部5から出力された重量信号のうち、電動昇降装置40が保持モードにあって、バランス釦22b(登録指令釦)が作業者によって押された直後に得たものを基に登録物品重量を算出し、この登録物品重量は記憶部53aに記憶される。そして演算器52は、加速度信号と記憶部53aに記憶されている登録物品重量を参照して慣性重量Fjを算出して出力する。
【0063】
重量検出部5は一定の周期で昇降作動部7a若しくは7bに加わる重量を重量信号FLにて出力している。
【0064】
減算器55は重量信号FLから慣性重量Fjを減算して、結果を外力推定値Fcとして出力する。
【0065】
乗算器56は外力推定値Fcを入力として、切換設定部54にて定められた加速度変換係数kをこれに乗算し、モータ加速度指令信号Faとしてモータ部2へ出力する。
【0066】
切換設定部54は、記憶部53aにて記憶されている登録物品重量mと、位置検出部4から出力された位置信号θを基に加速度変換係数kを決定して乗算器56へ送信する。切換設定部54は、切換え時に使用する加速度変換係数kを記憶部53bに記憶させ、必要に応じて取り出して使用する。
【0067】
ここで加速度変換係数kは0より大きく1より小さい係数である。したがって作業者は、加速度変換係数kが大きい場合は慣性力による影響が小さく、加速度変換係数kが小さい場合は慣性力による影響が大きく感じられることになる。加速度変換係数kの決定は、例えば対象の物品の重量が大きい場合に慣性力による影響を小さく、対象の物品の重量が小さい場合に慣性力による影響を大きくする。したがって作業者は比較的重量が大きい物品を扱う場合には抵抗感を小さめにし、比較的重量が小さい物品を扱う場合には抵抗感を少し大きめに設定することで快適な操作が可能となる。
【0068】
さらに切換設定部54は、昇降作動部7a、7bの作動方向すなわち対象とする物品の上昇及び下降によっても加速度変換係数kを変更する。例えば対象とする物品を上昇させる時は慣性力による影響を小さく、下降させる時は慣性力による影響を大きくすることができる。したがって作業者は、例えば物品を上昇させる場合には抵抗感を小さく、物品を下降させる場合には抵抗感を少し多く設定することで快適な操作が可能となる。加速度変換係数kの設定は、重量と移動方向のマトリックス表を作成して行っても良い。
【0069】
図20は本発明の第1及び第2の実施形態における電動昇降装置の動作モードについて示す図である。電動昇降装置は操作指令部22aからの指令に基づき制御部10によって保持モード又はバランスモードを選択的に切換え可能である。電動昇降装置が保持モードにある時は、制御部10は昇降作動部7a、7bをその位置で保持するように、すなわち速度がゼロとなるように制御する。そして電動昇降装置が保持モードにあってバランス釦22bが作業者によって押されたことを制御部10が検出すると、その時の重量検出部5からの重量信号を記憶部53aに記憶させて、バランスモードに移行する。電動昇降装置がバランスモードにある時は、制御部10は昇降作動部7a、7bに加わる力をキャンセルするように制御する。そして電動昇降装置がバランスモードにあって保持釦22cが作業者によって押されたことを制御部10が検出すると、保持モードに移行する。なお制御部10は、係止部材8a、8bに物品が係止されているか否やに関係なく、保持モードとバランスモードが実施される。そして保持モード及びバランスモードのいずれの状態においても、作業者が上昇釦22d若しくは下降釦22eを押すと、モータ部2によって係止部材8a、8bの昇降が行われる。
【0070】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の活用例として、物品の移動をアシストして行う電動昇降装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 :電動昇降装置
2 :モータ部
3 :回転出力軸
4 :位置検出部
5 :重量検出部
6 :リンクチェーン
7a、7b :昇降作動部
8a、8b :係止部材
9 :吊下げ用フック
10:制御部
11 :本体部
12 :リンクチェーン収納部
13 :スパイラルコード
22a :操作指令部
22b :バランス釦(登録指令釦)
22c :保持釦
22d :上昇釦
22e :下降釦
30a、30b :物品
31 :床
32 :固定構造物
33a、33b :固定構造物
34 :レール
35 :ブロック
40 :電動昇降装置
41 :昇降支持部
42 :噛合チェーン
43 :車輪
44 :電源
45 :ハンドル
46 :リンクアーム
47 :天板
48 :支持板
50a、50b :微分器
51 :ローパスフィルタ
52 :演算器
53a、53b :記憶部
54 :切換設定部
55 :減算器
56 :乗算器