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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ボートを操縦するための装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/00 20060101AFI20221104BHJP
   B63H 25/02 20060101ALI20221104BHJP
   B63B 35/16 20060101ALI20221104BHJP
   B63B 21/04 20060101ALI20221104BHJP
   B63B 21/16 20060101ALI20221104BHJP
   A01K 73/04 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B63H25/00 C
B63H25/02 A
B63B35/16
B63B21/04 Z
B63B21/16
A01K73/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020504088
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 NO2018050097
(87)【国際公開番号】W WO2018186754
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】20170593
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】519359701
【氏名又は名称】リモイ シー グループ エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】リモイ ジャック イー.
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02436456(GB,A)
【文献】西独国特許出願公告第01126271(DE,B)
【文献】米国特許出願公開第2002/0174817(US,A1)
【文献】国際公開第2016/027055(WO,A1)
【文献】米国特許第05351430(US,A)
【文献】米国特許第05284323(US,A)
【文献】特開2006-199398(JP,A)
【文献】特開2008-247104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/00
B63H 25/02
B63B 35/16
B63B 21/04
B63B 21/16
A01K 73/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舵の偏向の必要性が低減されているかまたは該必要性がない、荷曳航する、水に浮く船(1)を操縦するための装置であって、
該船(1)上のそれぞれのウインチ(2、3)に結合された少なくとも2本の曳航索(6、7)と、それぞれの曳航索(6、7)がかかる該船(1)の船尾端にある少なくとも2つのブロック(4、5)とを含み、
該ブロック(4、5)の少なくとも1つが該船(1)の縦軸(24)に対して横方向および/または該船(1)の縦方向に移動可能であり、該移動可能なブロック(4、5)の位置が該曳航索(6、7)からの張力の作用点を決定し、
該装置が操縦ユニット(12)をさらに含み、該操縦ユニット(12)が、ナビゲーションシステムからの入力を受けるように適合されており、該操縦ユニット(12)が、該船(1)の回転中心を中心とする張力(W')の力のモーメント(26)を変化させるために、該ブロック(4、5)を該船(1)の該縦軸(24)の横方向および/または該船(1)の縦方向に移動させるアクチュエータ(21)に結合されていること、ならびに
該操縦ユニット(12)が、該曳航索の該張力を検出しかつ該船(1)にかかる該張力から該力のモーメント(26)を計算する計算ユニットを備え、それにより、該操縦ユニット(12)が、該力のモーメント(26)の変化を使用して該船(1)を操縦するように適合されていること、
該操縦ユニット(12)が、該ウインチ(2、3)の少なくとも1つに結合され、該ウインチ(23)に結合された該曳航索(6、7)の張りを減少または増大させるために該曳航索(6、7)を繰り出すまたは巻き入れるように適合されていること、ならびに
該操縦ユニット(12)がさらに、必要ならば舵の偏向を始動して該船(1)に所望の針路を達成するよう、該船(1)の舵に結合されていること
を特徴とする、装置。
【請求項2】
計算ユニットが、検出された張力および少なくとも1つのブロック(4、5)の移動から、結果的に得られる力のモーメント(26)の変化を計算することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
所与の状況における各曳航索(6、7)が、索を巻き入れるまたは繰り出すことによって、等しい長さまたは張りに維持され、計算ユニットが、索を巻き入れるまたは繰り出すためにウインチ(2、3)の少なくとも1つの上のアクチュエータに結合されていることを特徴とする、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
所与の状況における各曳航索(6、7)が、索を巻き入れるまたは繰り出すことによって、異なる長さまたは張りに維持され、計算ユニットが、索を巻き入れるまたは繰り出すためにウインチ(2、3)の少なくとも1つの上のアクチュエータに結合されていることを特徴とする、請求項1または2記載の装置。
【請求項5】
計算ユニットが、動かされたブロック(4、5)にかかる曳航索(6、7)を巻き入れてまたは繰り出して、該索(6、7)の張りを減少または増大させるように適合されていることを特徴とする、請求項3または4記載の装置。
【請求項6】
計算ユニットが、動かされたブロック(4、5)とは反対の船(1)の側で曳航索(6、7)を巻き入れてまたは繰り出して、該索(6、7)の張りを減少または増大させるように適合されていることを特徴とする、請求項3または4記載の装置。
【請求項7】
計算ユニットがまた、船(1)の縦軸(24)および/または垂直軸に対する曳航索(6、7)の角度を検出することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項8】
計算ユニットが、船(1)を操縦するために所望の力のモーメント(26)を生じさせる、移動可能なブロック(4、5)の横方向および/または縦方向移動の組み合わせを決定することを特徴とする、請求項2、3、4、5、6または7記載の装置。
【請求項9】
舵の偏向の必要性が低減されているかまたは該必要性がない水に浮く船(1)を操縦する方法であって、
該船(1)が荷曳航し、該船(1)上のそれぞれのウインチ(2、3)に結合された少なくとも2本の曳航索(6、7)が、該船(1)の船尾端にある少なくとも2つのブロック(4、5)にかかり、該ブロック(4、5)の少なくとも1つが該船(1)の縦軸(24)に対して横方向および/または該船(1)の縦方向に移動可能であり、該移動可能なブロック(4、5)が該曳航索からの張力の作用点を決定し、
該船(1)が操縦ユニット(12)を有し、該操縦ユニット(12)が、ナビゲーションシステムからの入力を受けるように結合されており、これらの入力の1つが該船(1)に所望の船首方位であり、該操縦ユニット(12)が計算ユニットを含み、これが力のモーメント(26)に対する船首方位の変化を再計算し、それが、所望の船首方位を達成するために必要な船首方位の変化を生じさせること、
該曳航索からの該張力が計算されること、
該所望の力のモーメント(26)を生じさせる該ブロック(4、6)の少なくとも1つの横方向または縦方向移動(23)が計算されること、ならびに
該操縦ユニット(12)が信号をアクチュエータ(21)に送信し、該アクチュエータが該ブロックを一定距離だけ移動させ、それが該所望の力のモーメント(26)を提供すること、ならびに
該操縦ユニット(12)が該ウインチ(2、3)の少なくとも1つに結合されて、該ウインチ(2、3)に結合された該曳航索(6、7)の張りを減少または増大させるための該曳航索(6、7)の繰り出しまたは巻き入れを提供すること、ならびに
該操縦ユニット(12)がさらに該船(1)の舵に結合されて、必要ならば、該船(1)に所望の船首方位および/または対地針路を達成するための舵の偏向を提供すること
を特徴とする、方法。
【請求項10】
船(1)がまっすぐ前に進んでいるとき各曳航索(6、7)の長さが等しく維持され、
操縦ユニット(12)が1つのブロック(4、5)を移動させ、
該船(1)に作用する力のモーメント(26)の変化の結果として該船(1)が旋回し始め、
船首方位の変化の結果として、曲がりの外側にある曳航索(6、7)が増大した張りを受け、それが次に斜行を生じさせ、その斜行がはじめに該船(1)の船首方位の変化に対処し、
該斜行を調節するために、該曲がりの外側にある索(6、7)が繰り出される、または該船(1)の縦軸の反対側にある索(6、7)が巻き入れられる
ことを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
計算ユニットがまた、船(1)に対する、好ましくは水平軸および垂直軸両方に対する曳航索(6、7)の角度を検出することを特徴とする、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
ブロック(4、5)の少なくとも1つが船(1)の縦方向および/または横方向に動かされ、該船が曳航索(6、7)の方向に対して旋回するとき、前記張力(W')の該船に対して横方向の力成分(WT')および該張力(W')の作用点と該船の回転中心との間のアーム(30)から生じる力のモーメント(26)が連続的に計算され、該アーム(30)が連続的に調節されて所望の力のモーメント(26)を達成する
ことを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に浮かぶ船、帆船およびボートの操縦、特に漁船、特にトロール船の操縦の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
トロール船は、過去数十年間、乗組員が非常に少ない比較的小さなボートから、何週間も海に出ていることができる大きなファクトリートロール船へとサイズを増してきた。
【0003】
ボートはサイズを増したが、ボート操縦の原理は基本的に同じである。オートパイロットシステムが追加されたが、それでも、推進力は主にエンジンと推進器によるものであり、操縦は主に舵によって実行される。
【0004】
トロール船および他のタイプの船の一部は補助推進器および/またはアジマス推進器もしくは他の推進手段を装備していたことは事実であるが、主流である舵が開発されてから久しい。
【0005】
舵は、ボートを操縦するための簡単かつ確実な装置である。今日、舵はオートパイロットに結合され、オートパイロットが、設定された船首方位にしたがって舵の位置を設定する。船首方位が変化する、または設定された船首方位からの逸脱が検出されるならば、オートパイロットは舵の位置を変化させてボートを所望の船首方位に戻す。
【0006】
設定された船首方位からの逸脱は、ほとんどの場合、水流および風と波の影響によって起こる。
【0007】
舵がボートの縦軸に沿ってまっすぐ向いているとき、舵は海水に対してほとんど抗力を発生しない。しかし、ボートが旋回するとき、舵はボートに対して斜めに向けられる。これが抗力を実質的に増し、角度が大きければ大きいほど、その抗力は大きくなる。抗力の増大は燃焼消費の増加を招く。
【0008】
トロール船のサイズ増大は舵の面積増大を必要とする。より大きな舵はより大きな抗力を生じさせる。これがひいては、その抗力に打ち勝つためにより多くのパワーを必要とする。
【0009】
トロール操業中の操縦は、その速度が比較的低い、わずか数ノットであるため、特に大きな舵角を必要とする。トロール操業中の燃料消費はすでに高く、舵の抗力が消費をさらに増す。
【0010】
トロール操業中は、トロール網の対称性が非常に重要であると考えられている。対称性は、引綱、すなわち、トロール船とトロールドアとの間に延びる索に均等な張りを維持することにより、最良に達成される。引綱の張りが異なるならば、トロール網は通常、対称にはならず、トロール網の開口部は最適な状態にはならない。張りは、引綱の一方を繰り出してまたは巻き入れて、その長さを減少または増大させることによって調節される。
【0011】
最適な操業を達成するために引綱の張りおよび長さを決定し、自動調節するための技術が数多くある。一例が、引綱の正しい長さを決定するときに水流を考慮するNO302391(特許文献1)に示されている。
【0012】
また、トロール操業中にトロールブロックを内に動かすことにより、流氷によって引綱が損傷することを防ぐための技術が公知である。トロールブロックは、トロール船の船尾に配置され、引綱がどの位置でボートを離れるのかを決定する。海に流氷があるならば、この位置は、ボートの側面に近すぎるべきではない。理由は、ボートの側面に沿って移動する流氷が、ボートの船尾のすぐ後で内に動く傾向があるからである。したがって、トロールブロックは、氷が比較的漂流しにくい、ボートの中心に向けていくぶん動かされる。
【0013】
GB2007181(特許文献2)は、主に曳航索が流氷と接触しないよう維持することを意図したものであるようなアイスダビットを記載している。ダビットは、図面に示す両極位置の間の中間位置に安全に配置することはできない。したがって、船を操舵するためのこれらのダビットの使用は船首方位の実質的な変更に限られる。この技術は、より小さい、またはより精密な針路変更のために好都合に使用することはできず、当然、安定な船首方位を維持することもできない。
【0014】
DE1126271(特許文献3)は、曳航索の一方または両方を担持するブロックを動かすことによって船の船首方位に影響する能力を有するシステムを示す。しかし、操縦ユニットは記載されていない。これは、ブロックの移動が、おそらくは手作業で、針路を変更するのに十分であると船長によって判断される程度に実施されることを意味する。そのような手作業の移動は非常に不正確であり、船長は、船首方位を正しく維持するために頻繁にブロックを前後に動かさなければならないであろう。
【0015】
そのうえ、DE1126271(特許文献3)においては、曳航索の張りの変化が考慮されていない。ブロックを移動させると、索の張りが変化し、これが、トロール網を歪曲させ、かつ、船の船首方位を変化させ得る。本発明は、これを考慮に入れ、必要なとき張りを調節しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】NO302391
【文献】GB2007181
【文献】DE1126271
【発明の概要】
【0017】
本発明は、トロール操業中のトロール船の燃焼消費を減らすことをその主な目的とする。これを達成するために、本発明は舵の抗力を減らす。舵の抗力を減らすために、本発明は、舵をボートの縦軸に対して斜めに向ける必要性を減らすかまたはなくす。
【0018】
これに対する解決手段は、トロールブロックの位置を横方向および/または縦方向に動かす能力を使用して、引綱の張りがボートに対して非対称に作用し、トロールブロック移動アクチュエータを操縦ユニット、たとえばオートパイロットに結合して、オートパイロットがトロールブロックの横方向および/または縦方向位置の制御を与えられ、これを使用してボートを操縦し得るようにすることである。
【0019】
より具体的には、これは、舵の偏向の必要性が低減されているかまたは該必要性がない、荷、たとえばトロール網を曳航する、水に浮く船を操縦するための装置によって達成され、該装置は、該船上のそれぞれのウインチに結合された少なくとも2本の曳航索と、それぞれの曳航索がかかる、船の船尾端にある少なくとも2つのブロックとを含み、ブロックの少なくとも1つが船の縦軸に対して横方向および/または船の縦方向に移動可能であり、移動可能なブロックの位置が曳航索からの張力の作用点を決定し、該装置は以下を特徴とする:該装置が、操縦ユニットをさらに含み、操縦ユニットが、ナビゲーションシステムからの入力を受けるように適合されており、該操縦ユニットが、船の回転中心を中心とする張力の力のモーメントを変化させるために、該ブロックを船の縦軸に対して横方向および/または船の縦方向に移動させるアクチュエータに結合されていること;ならびに操縦ユニットが、曳航索の張力を検出しかつ船にかかる張力から力のモーメントを計算する計算ユニットを備え、それにより、操縦ユニットが、該力のモーメントの変化を使用して船を操縦するように適合されていること;操縦ユニットが、該ウインチの少なくとも1つに結合され、該ウインチに結合された曳航索の張りを減少または増大させるために曳航索を繰り出すまたは巻き入れるように適合されていること;ならびに操縦ユニットがさらに、必要ならば舵の偏向を始動して、ブロックの移動と並行に作動させながら、船に所望の船首方位および対地針路を達成するよう、船の舵に結合されていること。
【0020】
少なくとも2つのブロックを有する態様において、計算ユニットは、好ましくは、検出された張力および少なくとも1つのブロックの移動から、結果的に得られる力のモーメントの変化を計算する。
【0021】
さらなる態様において、所与の状況における各曳航索は、索を巻き入れるまたは繰り出すことによって等しい長さまたは張りに維持され、計算ユニットは、索を巻き入れるまたは繰り出すためにウインチの少なくとも1つの上のアクチュエータに結合されている。
【0022】
なおさらなる態様において、計算ユニットは、必要とされ得る等しいまたは異なる張りを達成するために、動かされたブロックにかかる曳航索を巻き入れてまたは繰り出して、この索の張りを減少または増大させるように適合されている。
【0023】
代替的または補足的なさらなる態様において、計算ユニットは、動かされたブロックとは反対の船の側で曳航索を巻き入れてまたは繰り出して、この索の張りを減少または増大させるように適合されている。
【0024】
任意選択の態様において、計算ユニットはまた、船の縦軸に対する曳航索の角度を検出する。これは、曳航中に角度が実質的に変化する場合、有利であることができる。角度の検出は、水平方向角および垂直方向角両方の検出であり得る。
【0025】
好ましい態様において、計算ユニットは、船を操縦するために所望の力のモーメントを生じさせる、移動可能なブロックの横方向および/または縦方向移動の組み合わせを決定する。1つよりも多いブロックを移動させることができることにより、より大きな力のモーメントの範囲を達成することができる。
【0026】
また、本発明の目的は、舵の偏向の必要性が低減されているかまたは該必要性がない水に浮く船を操縦する方法によって達成され、該船が荷、たとえばトロール網を曳航し、該船上のそれぞれのウインチに結合された少なくとも2本の曳航索が、船の船尾端にある少なくとも2つのブロックにかかり、ブロックの少なくとも1つが船の縦軸に対して横方向および/または船の縦方向に移動可能であり、移動可能なブロックが曳航索からの張力の作用点を決定し、該方法は、以下を特徴とする:船が操縦ユニットを有し、操縦ユニットが、ナビゲーションシステムからの入力を受けるように結合されており、これらの入力の1つが船に所望の船首方位および/または対地針路であり、操縦ユニットが計算ユニットを含み、これが力のモーメントに対する船首方位の変化を再計算し、それが、所望の船首方位および/または対地針路を達成するために必要な船首方位および/または対地針路の変化を生じさせること;曳航索からの張力が計算されること;所望の力のモーメントを生じさせるブロックの少なくとも1つの横方向および/または縦方向の移動が計算されること;ならびに操縦ユニットが信号をアクチュエータに送信し、アクチュエータがブロックを一定距離だけ移動させ、それが所望の力のモーメントを提供すること;ならびに操縦ユニットがウインチの少なくとも1つに結合されて、該ウインチに結合された曳航索の張りを減少または増大させるための曳航索の繰り出しまたは巻き入れを提供すること;および操縦ユニットがさらに船の舵に結合されて、必要ならば、船に所望の船首方位および/または対地針路を達成するための舵の偏向を提供すること。
【0027】
任意選択の態様において、計算ユニットはまた、船に対する、好ましくは水平軸および垂直軸両方に対する曳航索の角度を検出する。
【0028】
代替態様において、ブロックの少なくとも1つが船の縦方向および/または横方向に動かされ、船が曳航索の方向に対して旋回するとき、前記張力の、前記船に対して横方向の力成分および張力の作用点と船の回転中心との間のアームから生じる力のモーメントが連続的に計算され、前記アームが連続的に調節されて所望の力のモーメントを達成する。
[本発明1001]
舵の偏向の必要性が低減されているかまたは該必要性がない、荷、たとえばトロール網(10)を曳航する、水に浮く船(1)を操縦するための装置であって、
該船(1)上のそれぞれのウインチ(2、3)に結合された少なくとも2本の曳航索(6、7)と、それぞれの曳航索(6、7)がかかる該船(1)の船尾端にある少なくとも2つのブロック(4、5)とを含み、
該ブロック(4、5)の少なくとも1つが該船(1)の縦軸(24)に対して横方向および/または該船(1)の縦方向に移動可能であり、該移動可能なブロック(4、5)の位置が該曳航索(6、7)からの張力の作用点を決定し、
該装置が操縦ユニット(12)をさらに含み、該操縦ユニット(12)が、ナビゲーションシステムからの入力を受けるように適合されており、該操縦ユニット(12)が、該船(1)の回転中心を中心とする張力(W')の力のモーメント(26)を変化させるために、該ブロック(4、5)を該船(1)の該縦軸(24)の横方向および/または該船(1)の縦方向に移動させるアクチュエータ(21)に結合されていること、ならびに
該操縦ユニット(12)が、該曳航索の該張力を検出しかつ該船(1)にかかる該張力から該力のモーメント(26)を計算する計算ユニットを備え、それにより、該操縦ユニット(12)が、該力のモーメント(26)の変化を使用して該船(1)を操縦するように適合されていること、
該操縦ユニット(12)が、該ウインチ(2、3)の少なくとも1つに結合され、該ウインチ(4、5)に結合された該曳航索(6、7)の張りを減少または増大させるために該曳航索(6、7)を繰り出すまたは巻き入れるように適合されていること、ならびに
該操縦ユニット(12)がさらに、必要ならば舵の偏向を始動して該船(1)に所望の針路を達成するよう、該船(1)の舵に結合されていること
を特徴とする、装置。
[本発明1002]
計算ユニットが、検出された張力および少なくとも1つのブロック(4、5)の移動から、結果的に得られる力のモーメント(26)の変化を計算することを特徴とする、本発明1001の装置。
[本発明1003]
所与の状況における各曳航索(6、7)が、索を巻き入れるまたは繰り出すことによって、等しい長さまたは張りに維持され、計算ユニットが、索を巻き入れるまたは繰り出すためにウインチ(2、3)の少なくとも1つの上のアクチュエータに結合されていることを特徴とする、本発明1001または1002の装置。
[本発明1004]
所与の状況における各曳航索(6、7)が、索を巻き入れるまたは繰り出すことによって、異なる長さまたは張りに維持され、計算ユニットが、索を巻き入れるまたは繰り出すためにウインチ(2、3)の少なくとも1つの上のアクチュエータに結合されていることを特徴とする、本発明1001または1002の装置。
[本発明1005]
計算ユニットが、動かされたブロック(4、5)にかかる曳航索(6、7)を巻き入れてまたは繰り出して、該索(6、7)の張りを減少または増大させるように適合されていることを特徴とする、本発明1003または1004の装置。
[本発明1006]
計算ユニットが、動かされたブロック(4、5)とは反対の船(1)の側で曳航索(6、7)を巻き入れてまたは繰り出して、該索(6、7)の張りを減少または増大させるように適合されていることを特徴とする、本発明1003または1004の装置。
[本発明1007]
計算ユニットがまた、船(1)の縦軸(24)および/または垂直軸に対する曳航索(6、7)の角度を検出することを特徴とする、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1008]
計算ユニットが、船(1)を操縦するために所望の力のモーメント(26)を生じさせる、移動可能なブロック(4、5)の横方向および/または縦方向移動の組み合わせを決定することを特徴とする、本発明1002、1003、1004、1005、1006または1007の装置。
[本発明1009]
舵の偏向の必要性が低減されているかまたは該必要性がない水に浮く船(1)を操縦する方法であって、
該船(1)が荷、たとえばトロール網(10)を曳航し、該船(1)上のそれぞれのウインチ(2、3)に結合された少なくとも2本の曳航索(6、7)が、該船(1)の船尾端にある少なくとも2つのブロック(4、5)にかかり、該ブロック(4、5)の少なくとも1つが該船(1)の縦軸(24)に対して横方向および/または該船(1)の縦方向に移動可能であり、該移動可能なブロック(4、5)が該曳航索からの張力の作用点を決定し、
該船(1)が操縦ユニット(12)を有し、該操縦ユニット(12)が、ナビゲーションシステムからの入力を受けるように結合されており、これらの入力の1つが該船(1)に所望の船首方位であり、該操縦ユニット(12)が計算ユニットを含み、これが力のモーメント(26)に対する船首方位の変化を再計算し、それが、所望の船首方位を達成するために必要な船首方位の変化を生じさせること、
該曳航索からの該張力が計算されること、
該所望の力のモーメント(26)を生じさせる該ブロック(4、6)の少なくとも1つの横方向または縦方向移動(23)が計算されること、ならびに
該操縦ユニット(12)が信号をアクチュエータ(21)に送信し、該アクチュエータが該ブロックを一定距離だけ移動させ、それが該所望の力のモーメント(26)を提供すること、ならびに
該操縦ユニット(12)が該ウインチ(2、3)の少なくとも1つに結合されて、該ウインチ(2、3)に結合された該曳航索(6、7)の張りを減少または増大させるための該曳航索(6、7)の繰り出しまたは巻き入れを提供すること、ならびに
該操縦ユニット(12)がさらに該船(1)の舵に結合されて、必要ならば、該船(1)に所望の船首方位および/または対地針路を達成するための舵の偏向を提供すること
を特徴とする、方法。
[本発明1010]
船(1)がまっすぐ前に進んでいるとき各曳航索(6、7)の長さが等しく維持され、
操縦ユニット(12)が1つのブロック(4、5)を移動させ、
該船(1)に作用する力のモーメント(26)の変化の結果として該船(1)が旋回し始め、
船首方位の変化の結果として、曲がりの外側にある曳航索(6、7)が増大した張りを受け、それが次に斜行を生じさせ、その斜行がはじめに該船(1)の船首方位の変化に対処し、
該斜行を調節するために、該曲がりの外側にある索(6、7)が繰り出される、または該船(1)の縦軸の反対側にある索(6、7)が巻き入れられる
ことを特徴とする、本発明1009の方法。
[本発明1010]
計算ユニットがまた、船(1)に対する、好ましくは水平軸および垂直軸両方に対する曳航索(6、7)の角度を検出することを特徴とする、本発明1009または1010の方法。
[本発明1011]
ブロック(4、5)の少なくとも1つが船(1)の縦方向および/または横方向に動かされ、該船が曳航索(6、7)の方向に対して旋回するとき、前記張力(W')の該船に対して横方向の力成分(W T ')および該張力(W')の作用点と該船の回転中心との間のアーム(30)から生じる力のモーメント(26)が連続的に計算され、該アーム(30)が連続的に調節されて所望の力のモーメント(26)を達成する
ことを特徴とする、本発明1008~1010のいずれかの方法。
【0029】
以下、図面に示す態様を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】トロール船をトロール網とともに上から示す。
図2】船尾から見たトロール船の第一の態様を示す。
図3】船尾から見たトロール船のもう1つの態様を示す。
図4】トロール船を示す図1の詳細を示す。
図5】トロール網からの力の作用点の変更を得るための代替態様を示す。
図6】船が旋回するときの図5の態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
図1はトロール船1を示す。トロール船は1対のトロールウインチ2、3を有する。普通はさらなるウインチがあるが、本発明を説明するために2つしか示さない。
【0032】
トロール船1の船尾には1対のトロールブロック4、5がある。1対の引綱6、7が各ウインチ2、3からそれぞれのトロールブロック4、5にかかってそれぞれのトロールドア8、9まで延びている。トロールドアはトロール網10のそれぞれの翼端に結合している。
【0033】
トロール船はホイールハウスまたはブリッジ11を有する。操縦ユニット(以下、オートパイロット装置によって例示する)12がホイールハウス11内に示されている。オートパイロット12は舵(図示せず)およびエンジン(図示せず)に結合される。オートパイロットは、通常は衛星ベースであるが(たとえばGPS)、コンパスを含むものでもよいナビゲーションシステムから入力を受ける。
【0034】
上記すべてはトロール漁業の分野において一般的な知識であり、詳細は当業者には周知であろう。
【0035】
図2は、第一の態様のトロール船1を船尾から示す。推進器13が示されている。舵は省略されている。
【0036】
船尾にはトロールランプ14がある。同じく船尾にはガントリー15がある。1対のトロールブロック4、5がガントリー15から吊り下げられている。トロールブロック4、5はガントリーに沿って動かし得る。
【0037】
図3は、トロールブロック4、5がダビット16、17の他端に配置されているもう1つの態様を示す。ダビットは、トロールブロック4、5がボートの中心線18に対してもっとも遠い位置にある外寄り位置16'、17'と、トロールブロックが中心線18にもっとも近い内寄り位置16、17との間で動かすことができる。これらのタイプのダビットは、その目的がトロールブロックをボート側面に沿って移動する氷から離れさせることであるため、一般にアイスダビットと呼ばれる。
【0038】
トロールウインチ2、3は、ウインチを回転させる油圧モータ(図示せず)中の油圧を計測する、または、ウインチが電動式であるならば、モータのトルクを計測するセンサを備える。この圧力またはトルクはそれぞれの引綱の張りW1、W2に相当する。また、より直接的に張りを計測するセンサがあってもよい。
【0039】
図1に示すように、引綱の張りW1、W2は、トロールブロック4、5の位置に作用点を有する。両トロールブロックがボートの中心18から等しい距離に配置されているとき、張力W1、W2は均衡し、結果的に生じる力Wはボートをほぼ真後に引く。しかし、図4に示すようにブロック4、5が中心18から異なる距離の位置に配置されるならば、結果的に生じる力W'は、ボートの長手に対して横方向に移動した作用点を有する。この結果的に生じる力はボートの船尾を一方の側に引く。本発明の原理は、トロールブロックの一方または両方を横方向および/または縦方向に移動させて、結果的に生じる力Wをも移動させて、図4の矢印W'によって示すように、力のベクトルを横方向に与えることである。すると、力W'は、ボートの中心線からアーム25分だけ離れたところでボートに作用する。すると、力はボートを一方の側に引き、ひいてはボートを旋回させる。
【0040】
これは、図1のトロール船1を示す図4により詳細に示されている。ホイールハウス11中、ホイールまたは舵輪20が示され、それがオートパイロット12に結合されている。また、2つのトロールウインチ2、3および2つのトロールブロック4、5が示されている。オートパイロット12はアクチュエータ21に結合され、そのアクチュエータは、制御ライン22を介してトロールブロック5の1つに接続されている。オートパイロット12はまた、同様なやり方で、他方のトロールブロック4に接続されているアクチュエータ(図示せず)に結合されてもよい。もっとも簡単な態様においては、オートパイロット12を一方のトロールブロック5に結合するだけで十分である。しかし、オートパイロット12を両方のトロールブロック4、5に結合することが好ましい。
【0041】
アクチュエータ21は、油圧または電動アクチュエータ12またはトロールブロック5を矢印23の方向に横に移動させることができる任意の他のアクチュエータであり得る。当然、アクチュエータがトロールブロック5を反対方向、すなわちボート1の中心線24に対して外に移動させることができることもまた、本発明の範囲内である。
【0042】
オートパイロット12が、ボート1の対地針路がたとえば左舷側に変更されると決定するならば、オートパイロットは、符番5'によって示すように、右舷のトロールブロック5をボート1の中心に向けて、すなわちより中心線24に近く移動させ得る。これが、結果的な力Wをも左舷側に、すなわちW'によって示される位置へと移動させる。
【0043】
それにより、トロール索6、7によってボート1に加えられた結果的な力W'は、中心線24からアーム25分だけ左舷寄りでボートに作用する。これがボートに対して力のモーメント26を生じさせ、この力のモーメントが船を左舷側に移動または旋回させようとする。左舷側トロールブロック4を中心線24から離れさせることによっても同じ効果を達成することができる。
【0044】
左舷側トロールブロック4を中心線24に向けて移動させる、または右舷側トロールブロック5を中心線から離れさせるならば、右舷方向への船の移動および/または旋回が起こる。
【0045】
また、ブロックの1つまたは複数を横方向に移動させる代わりに、ブロックを船に対して縦方向に移動させることも可能である。その例が図5に示されている。
【0046】
図5は、ブロック5を、それが反対側のブロック4と船1の船尾端から同じ距離にあるその初期位置で示す。そして、ブロック5は、矢印23によって示すように、一定の距離だけ船の前方に位置5'へと動かされる。ブロック5の位置のこの変更はトロール索7の作用点をも移動させて、トロール索は、線7'によって示すように船1から延びるようになる。
【0047】
トロール索7'は初期位置7からわずかに外に移動する。トロール網は船1の数百メートル後方に配置されるため、トロール索7、7'の角度の変化は無視しうる程度であり、したがって、トロール索7、7'の移動は平行移動とみなされ得る。その結果、トロール索7、7'のわずかな外向きの移動は、両方向矢印25によって示すように、トロール索6、7'からの結果的な力をも一方の側にわずかに移動させ、結果的な力ベクトルWは力ベクトルW'の位置に移動するようになる。これは、船の回転中心を前方かつおそらくはわずかに横方向にも移動させ、船1を旋回させるように作用する力のモーメント26を創出する。この力のモーメント26は、ブロック5を同じ距離だけ横方向に移動させる場合よりも小さいが、ブロック5を縦方向に移動させる技術は、ブロックを横方向に移動させる技術の補足または代替として使用することができる。
【0048】
図5に見られるように、結果的な力のベクトルW'の作用点28もまた、船の縦方向に点28'へと移動する。
【0049】
また、ブロックの1つまたは複数の横方向移動と縦方向移動とを組み合わせることが考えられる。
【0050】
結果的な力ベクトルの作用点28'の縦方向移動は、ベクトルが中心軸24と平行である場合には限られた効果しか有しないが、この作用点の縦方向移動は、船1が旋回し始めるとき、実質的に効果を有する。これが図6に示されている。
【0051】
図6に見られるように、結果的な力W'は、横方向力成分WT'と縦方向力成分WL'とに分解することができる。両成分は、回転中心29を中心に船を旋回させようとするが、横方向成分WT'は、縦方向力成分WL'よりも実質的に長いアーム30で作用する。船がトロール網、すなわちトロール索6、7の方向に対して旋回すればするほど、横方向力成分WT'は大きくなり、ひいては、船を旋回させるように作用する力のモーメントは大きくなる。
【0052】
ブロック5の縦方向位置を調節することにより、回転中心と作用点との間のアーム30を調節して、船1の旋回に望まれる力の運動量を得ることができる。たとえば、横方向力成分WT'が増して船中心軸とトロール索6、7との間の角度が縮小するときは、ブロックをさらに船尾に移動させてアーム30を縮小し、それによって力のモーメント26を実質的に一定に維持することができる。
【0053】
トロールブロックの一方が横方向および/または縦方向に移動すればするほど、または両トロールブロックが同じ側に向けて横方向に移動すればするほど、力W'は同じ側に移動し、ボートはより急旋回する。このボートの旋回は、舵位置を変更することなく起こさせることができる。舵は、ゼロ位置に、すなわちボートの縦軸と平行に維持されることもできるし、水流とともに振れることを許されることもできる。したがって、舵によって発生する抗力は増大せず、燃料消費を同じレベルに維持することができる。
【0054】
トロールブロックの1つまたは複数が横方向および/または縦方向に移動するとき、船尾からウインチまでのトロール索の経路がいくぶん変化する。これが、船上の索のより長いまたはより短い経路を生じさせ得る。計算ユニットは、この経路長の変化を計算に入れ、この経路長の変化を補償するように索の長さを調節するように設定され得る。
【0055】
図面に示す本発明の好ましい態様は以下のように作用する。
トロールブロック3、4を移動させるアクチュエータ21に結合されているオートパイロットはまた、引綱張り値を受ける。ボートが所期の対地針路から逸れた、または対地針路が手動または自動入力によって変更されたために船首方位の変更が求められているとオートパイロット12が決定すると、オートパイロットは、ボートを所期の対地針路に戻すために必要な力のモーメントを計算する。オートパイロットは、引綱の張りをチェックし、結果的な力Wを計算し、必要な力のモーメントを創出するために結果的な力Wによって必要とされるアーム25または30を決定する。一方のトロールブロック4、5を移動させるだけで必要なアーム25または30を達成することができるならば、オートパイロットは、該当するアクチュエータ21に対し、必要なアームに相当する距離だけトロールブロック4、5の一方を移動させるよう、信号を送る。
【0056】
ブロック4、5の一方を移動させるだけでは必要なアーム25、30を達成することができないならば、オートパイロットは、ブロック間で移動距離を分割し、両アクチュエータに対し、ブロック4、5のそれぞれ一方を移動させるよう、信号を送る。
【0057】
所期の対地針路に達したところで、オートパイロットは、アクチュエータ21に対し、動かされた1つのブロックまたは両方のブロック4、5を、結果的な力Wが中心線24でボートに作用するところの位置、または縦方向移動の場合、アーム30がゼロに近いところの位置に戻すよう、信号を送る。
【0058】
また、船およびトロール網に依存して、船は、船首を所期の船首方位へと旋回させる代わりに、所期の対地針路中で横向きおよび/または部分的に横向きに「這う」ように動くこともあり得る(ただし船首は異なる方向を指す)。これは完全に許容され得る。
【0059】
ボートを正しい対地針路から押し離そうとする横方向の水流または他の影響があるならば、オートパイロットは、ブロック4、5を中心線24から不均等な距離または異なる縦方向位置に維持し得る。
【0060】
また、本発明にしたがって、一方または両方のトロールブロック4、5の横方向および/または縦方向移動を舵の角度調節と組み合わせるという選択肢もある。これは、対地針路の変更がブロック4、5の移動によって達成することができない大きさである場合、特に好都合である。そのような場合、必要な舵の偏向は、対地針路の変更を舵のみによって達成する場合よりも実質的に小さくなる。
【0061】
ボートが舵の代わりにアジマス推進器、ポッドまたは他の操縦手段を有するならば、それらは、水中での抗力が最小になるように配置される。
【0062】
網を揚げるとき引綱6、7の張りが均等であることが理想的であるが、張りが均等でないこともあり得る。オートパイロットはこれを考慮に入れなければならない。均等な張りからの逸脱は、曳航される器具に加わる異なる力により、ボートの船首方位の変化を生じさせ得る。従来、これは、ウインチシステム中の張り(普通は油圧によって表される)を調整することにより、すなわち、実際には引綱の一方を繰り出すまたは巻き入れることにより、対処されてきた。
【0063】
船がまっすぐ前に進んでいるが、横波を受けている、またはゆるく旋回中であるとき(たとえばトロール網がエッジをたどるとき)、ブロックの一方がたとえば内に動かされる。それにより、船はその動きと同じ方向に旋回する。これは、曲がりの船外側にある引綱が増大した張りを受ける結果を生じさせる。同時に、曲がりの船内側にある引綱は減少した張りを受ける。これが船の旋回を妨げようとする。これを防ぐためには、引綱が所望の張りを有するまで、索を繰り出すことによって旋回の船外側の引綱を緩めるおよび/または索を巻き入れることによって船内側の引綱を締める。オートパイロットは、索の巻き入れまたは繰り出しを生じさせるために、ウインチ上のアクチュエータに結合される。
【0064】
船がまっすぐ前に進んでいるとき、トロール網からの結果的な力はボートの中心線に対して平行であることが理想的である。しかし、特定の条件において、中心線に対して斜めになることがある。その結果、結果的な力の迎え角を考慮し得るよう、ボートに対する引綱の角度を計測することが有利である。
【0065】
上記はトロール船の操縦を説明するが、本発明は、後に荷を曳航する他のタイプのボートの操縦に使用されてもよい。1つのそのような例がタグボートである。もう1つの例が地震探査船である。地震探査船は、それに取り付けられた1つまたは複数の地震ケーブルを有する。ケーブルが船を離れる直前でケーブルをブロックにかけ、ブロックが横方向および/または縦方向に移動することができるようにブロックを配置することにより、ケーブルからの抗力の作用点を横方向および/または縦方向に移動させることができる。地震ケーブルからの抗力は概してトロール網の抗力よりも実質的に小さいが、その抗力を船の船首方位を変更するための手段として使用すると、必要な舵の偏向を減らし、ひいては舵の抗力を減らし得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6