(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/12 20060101AFI20221104BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01N3/12
G01N3/00 E
(21)【出願番号】P 2021557728
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2020098292
(87)【国際公開番号】W WO2020259637
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】201910569723.6
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】徐 文杰
(72)【発明者】
【氏名】▲セン▼ 良通
(72)【発明者】
【氏名】陳 雲敏
(72)【発明者】
【氏名】李 珂
(72)【発明者】
【氏名】李 金龍
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203376239(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第109682688(CN,A)
【文献】特開2015-102472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表から500m~1000m離れた深地層工学の応力場及び浸透場をシミュレーションする深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステムであって、 モデルを設置し、深地層構築物の原位置軸圧、周囲圧及びその位置での浸透場を提供するように構成された三軸圧力室と、
前記三軸圧力室
内の前記モデルを取り囲むように圧力液体
を供給するとともに、前記モデルの内部に間隙水を
供給することにより、前記軸圧、周囲圧及び浸透場を発生させ、軸圧、周囲圧及び浸透場の量の値を制御するように構成されたシミュレーション制御装置と、
試験過程においてモデルの変形及び浸透流過程を監視するように構成された信号収集装置とを備え、
シミュレーション実験を行うとき、前記三軸圧力室を超重力遠心機に設置し、該超重力遠心機により重力加速度gのn倍(nは1より大きい整数である)の遠心加速度を生じ、モデルを超重力状態にして、勾配を有する自重応力を発生させ、周囲圧液体を超重力状態にし、勾配を有する周囲圧を発生させ、
前記シミュレーション制御装置は、主制御ユニット、圧力浸透流制御ユニット、データフィードバックユニット及びソースシンクユニットを備え、
前記圧力浸透流制御ユニットは軸圧制御ユニット、周囲圧制御ユニット、間隙水入口制御ユニット及び間隙水出口制御ユニットの4つであり、モデルの軸圧、周囲圧及び浸透場を独立して制御することができるように構成され、
前記遠心加速度で、試験に用いられるモデルに発生する動的過程がプロトタイプと同じ効果に達するとき、かかる時間はプロトタイプの時間の1/nであ
り、
前記超重力遠心機は、回転アームと、回転アームの端部に備えられたバスケットとを含み、前記三軸圧力室および前記圧力浸透流制御ユニットは、前記バスケット内に設置され、前記主制御ユニットおよびデータフィードバックユニットは、前記回転アームの中心に設置されている
ことを特徴とする深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記三軸圧力室は、軸圧通路、周囲圧通路、間隙水入口通路及び間隙水出口通路の4つの通路を備える、 ことを特徴とする請求項1に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項3】
前記軸圧制御ユニットは、軸圧通路に接続され、三軸圧力室内の軸圧を制御するように構成され、
前記周囲圧制御ユニットは、周囲圧通路に接続され、三軸圧力室内の周囲圧を制御するように構成され、
前記間隙水入口制御ユニットは、間隙水入口通路に接続され、間隙水出口制御ユニットは、間隙水出口通路に接続され、両者は、間隙水の入口と出口の圧力差を構成し、三軸圧力室内の浸透場を制御するように構成された、 ことを特徴とする請求項2に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項4】
前記データフィードバックユニットは、シミュレーション過程において圧力浸透流制御ユニットから三軸圧力室内に出力される軸圧、周囲圧、間隙水流量を収集し、収集したデータを主制御ユニットに伝送するように構成された、 ことを特徴とする請求項1に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項5】
前記ソースシンクユニットは、圧力浸透流制御ユニットに圧力液体及び/または間隙水を提供するように構成された、ことを特徴とする請求項1に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項6】
前記圧力浸透流制御ユニットは、圧力浸透流コントローラ及び圧力浸透流レギュレータを備え、ソースシンクユニットから排出される圧力液体または間隙水を受けた後、圧力浸透流レギュレータは、該液体の流量を監視して主制御ユニットに出力し、主制御ユニットのフィードバックに基づき、圧力浸透流コントローラから出力される液体の流量を動的に調整する、 ことを特徴とする請求項5に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項7】
前記圧力浸透流コントローラは、駆動アセンブリ、蓄液アセンブリ、制御アセンブリ及び出力アセンブリを備え、 前記駆動アセンブリは、ソースシンクユニットから出力される圧力液体による推力を蓄液アセンブリへの推力に変換するように構成され、 前記蓄液アセンブリは、圧力液体または間隙水を貯蔵する容器であり、 該容器の液体は、ソースシンクユニットから排出される液体と連通せず、蓄液アセンブリは、駆動アセンブリによる推力を受けた後、パイプを介して出力アセンブリにその内部の液体を輸送し、 前記制御アセンブリは、圧力浸透流レギュレータに接続され、駆動アセンブリに注入される液体の流量を制御するように構成され、 前記出力アセンブリは、蓄液アセンブリに接続され、蓄液アセンブリでの圧力液体または間隙水を三軸圧力室に注入するように構成された、 ことを特徴とする請求項6に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項8】
前記信号収集装置は、試験過程においてサンプルの変形及び浸透流過程を監視するための移動、変形及び湿度センサを備える、 ことを特徴とする請求項1に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項9】
前記三軸圧力室は、軸圧シミュレーションアセンブリ、周囲圧シミュレーションアセンブリ及び浸透流シミュレーションアセンブリをさらに備える、 ことを特徴とする請求項2に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項10】
前記軸圧シミュレーションアセンブリは、軸圧通路に接続され、三軸圧力室内モデルの頂部及び底部に位置する1ペアの軸圧圧子を備え、一方の圧子は固定され、他方の圧子は上下に移動可能であり、圧力液体の駆動でモデルに軸方向圧力を印加する、 ことを特徴とする請求項9に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項11】
前記周囲圧シミュレーションアセンブリは、周囲圧通路に接続され、前記周囲圧通路から注入される圧力液体が三軸圧力室内に入るように案内し、モデルを取り囲んだ液体を介して、モデルに対して周囲圧を発生させる、 ことを特徴とする請求項9に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項12】
前記浸透流シミュレーションアセンブリは、間隙水入口通路及び間隙水出口通路に接続され、 間隙水入口通路から注入される間隙水は、モデルのある端部に位置するとともに、前記端部に接触する多孔板に入った後にモデル内部に入り、次にモデルの他端部に接触する多孔板から流出し、間隙水出口通路に入るように案内し、モデルが原位置間隙水の圧力差を発生させ、原位置浸透場を形成する、 ことを特徴とする請求項9に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【請求項13】
前記多孔板は、モデルの底部の形状と同一の防水性板材であり、分布密度が30個以上の円形穴が設けられ、
前記モデル及び多孔板の外側は不透水性ゴム膜に包まれ、両者を同じ密閉キャビティ内に設置し、間隙水がモデルの内部において浸透場を形成するように、前記不透水性ゴム膜は間隙水入口及び出口のみを有する、
ことを特徴とする請求項12に記載の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は地盤工学分野における物理シミュレーション試験システムに関し、具体的に深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
深地層工学(deep earth engineering)とは、深地層環境での深地層構築物の建設過程及び運転過程で発生する工学プロセスである。一般的な深地層構築物としては、深地層処分場、地熱工学、岩窟天然ガス貯蔵庫などが挙げられる。
【0003】
深地層環境(deep earth environment)とは、地表から数百メートル以上の深さの環境を意味する。
【0004】
深地層構築物の原位置の応力場及び浸透場は、以下5つの特徴を同時に具備している。(1)深地層構築物が受けたオーバーバーデン圧(軸圧)が大きく、キロメートル級の深さでは20MPaに達することもあり、(2)深地層構築物が受けた周囲圧が大きく、キロメートル級の深さで20MPaに達することもあり、(3)深地層構築物が数百メートルのスケールに達し、自重応力及び周囲圧が深地層構築物の高さ方向に沿って変化し、それにより、自重応力勾配及び周囲圧勾配を形成し、(4)深地層構築物の応力場と浸透場が互いに結合し、発生する工学プロセスが非常に複雑であり、変形、応力、飽和率などの関連パラメータの変化は、数学的モデルで記述するのが難しく、試験に依存して得られ、(5)応力場及び浸透場の変化が非常に長く、上記のパラメータ変化の安定化に数百年~数千年かかる。原位置(in-situ)とは、あるパラメータを測定するとき、物質の元の条件を変化させないかまたは物質を元のシステムから分離することを意味する。プロトタイプ(prototype)とは、元のシステムにおける実物を意味し、本発明では、深地層環境での深地層構築物を意味し、モデル(model)とは、類似性理論に基づいて製造される、元のシステムの比率に応じて縮小される(拡大されてもよいし、又は、元のシステムのサイズと同じであってもよい)実物である。原位置応力場及び浸透場は、プロトタイプの応力場及び浸透場である。
【0005】
他の地盤工学の研究対象は、同時に上記5つの特徴を具備していないため、深地層工学とは本質的に異なる。
【0006】
深地層工学における変形、応力、飽和率などの関連パラメータの変化を測定するためには、試験を行う必要がある。試験は、原位置試験及びシミュレーション実験に分けられる。原位置試験とは、原位置で行われる試験であり、例えば、既存の深地層処分場に計器を設けて測定する。深地層工学の原位置試験を行うとき、一方では、試験員が設備を持って深地層環境に入って作業する必要があり、他方では、一部の実験対象が使用中の国家工事設備である。そのため、原位置テストは時間的な柔軟性と操作の利便性に欠けている。また、前述した深地層工学の応力場及び浸透場の特徴(5)のように、パラメータ変化に対する完全な測定には、百年~千年のスケールの試験時間を必要とし、一般的な意味での社会または技術活動に関わる時間スケールよりも遥かに長い。
【0007】
従って、実験室で物理シミュレーション試験を行うことがより好ましい。物理シミュレーション試験モデルとは、実物のシミュレーション実験である。例えば、実験室においては、高さが100mの深地層処分場プロトタイプの代わりに、高さが1mのモデルを用い、圧力装置でその頂底面及び側面に圧力を印加する試験である。以下、物理シミュレーション実験をシミュレーション実験と略称する。シミュレーション実験では、モデルを試験装置内に入れ、試験装置を介してモデルの面に力を印加し及び/または間隙水を導入し、モデルに応力場及び/または浸透場を発生させる方法を用いる。印加される力及び/または導入される間隙水の流量が特定の要求に達すると、原位置応力場及び/または浸透場を発生させことができる。実験室での場所の大きさの制限を考慮して、深地層工学のシミュレーションは、通常、10m以下のスケールのモデルを用いる。他の地盤工学では同時に深地層工学の5つの特徴を具備しないため、他の地盤工学をシミュレーションするときに用いるモデルは、同時に上記5つの条件を満たす必要がない。
【0008】
前述したように、シミュレーション実験では、モデルの上下底面の軸圧が一定の値であり、印加することが容易である。モデルの周囲圧の印加方式は、通常、モデルの側面に圧力液体を取り込んでモデルを押圧する方式を用いる。モデルの頂部の周囲圧は、装置に設定される圧力であり、モデルの底部の周囲圧は、頂部周囲圧と、このモデルの底部での圧力液体の自重との和である。圧力液体の密度は通常、岩石より小さいため、モデルの高さは低く、モデルの底部での圧力液体の自重は無視できるほど小さい。このため、プロトタイプに類似する周囲圧勾配を形成することができない。モデルの自重応力は、モデルのスケールに関連しているが、通常のシミュレーション実験のモデルのスケールは10メートル未満であるため、頂部と底部での自重応力の差はプロトタイプの1/10に過ぎない。浸透場のシミュレーションは通常、モデルの内部に間隙水を注入することにより実施される。モデルの応力場がプロトタイプと異なるため、結果として得られる浸透場もプロトタイプと異なる。よって、深地層工学のシミュレーション実験では、原位置の浸透場及び応力場を再現することができない。
【0009】
応力場(stress field)とは、物体内のすべての点の瞬時応力状態についての全体的な記述である。応力状態(stressstate)とは、物体内にある点のすべての可能な方向での応力である。応力(stress)とは、物体が外部要因(受力、湿度、温度場の変化など)のため変形するとき、物体内の各部分の間に相互作用する内力である。応力の作用は、この外部要因の作用に抵抗し、物体を変形後の位置から変形前の位置に回復しようとすることである。
【0010】
浸透場(seepage field)とは、岩石・土壌の内部のすべての点の流体圧力状況についての全体的な記述である。浸透流(seepage)とは、間隙水が媒体を流れることである。連続的な岩石・土壌において、2点が異なる間隙水圧力を有すると、浸透流が発生する。深地層工学では、浸透流の一般的な形態は、地下水が岩石または深地層工学の構築物内を流れるか、または両者の間を流れることである。間隙水圧力(porewaterpressure)とは、間隙水に生じた圧力である。間隙水(porewater)とは、岩石・土壌の孔隙に存在する液体であり、通常、水であり、他の液体であってもよい。
【0011】
オーバーバーデン圧(overburdenpressure)とは、研究対象に被覆される岩石・土壌の重量に起因する圧力であり、方向は垂直に下向きであり、数値が深さとともにリニアに増加する。軸圧(axialpressure)とは、断面に対して垂直で、断面の内部へ向かう圧力である。シミュレーション実験システムにおける深地層工学の軸圧とは、モデルの頂面及び底面でのオーバーバーデン圧である。
【0012】
周囲圧(confiningpressure)とは、周囲の岩石が岩石・土壌内の研究対象に印加する圧力であり、方向は水平であり、接触面に対して垂直であり、対象内へ向かう。深地層環境での周囲圧は、主にオーバーバーデン圧によって引き起こされ、通常、その数値はオーバーバーデン圧に等しく、深さとともにリニアに増加すると考えられている。
【0013】
自重応力(geostatic stress/self-weight stress)とは、岩石・土壌内における自重による応力である。岩石・土壌の任意の一点の垂直方向における自重応力は、この点における単位面積の岩石・土壌柱の質量に等しい。
【0014】
相違点をより具体的に説明するために、1組のプロトタイプ及びモデルの応力場のシミュレーション状況を例とする。プロトタイプは、1000mより深い場所に位置する高さが100mの岩石であり、周囲岩及び岩石の容積重量は25kN/m
3である。それが受ける各方向の圧力は、
図1に示される。頂部軸圧は25MPaであり、底部軸圧は27.5MPaであり、頂部周囲圧は25MPaであり、底部周囲圧は27.5MPaであり、頂部と底部での自重応力の差は2.5MPaであり、流体圧力は、地下水の流れ及び分布状況に関連している。モデルは、高さが1mの岩石であり、容積重量は25kN/m
3である。それに印加される頂部軸圧は25MPaであり、頂部周囲圧は25MPaであり、周囲圧の圧力液体はオイルであり、容積重量は8kN/m
3である。それが受ける各方向の圧力は、
図2に示される。モデルの底部の軸圧は頂部軸圧とモデル重力との和で、25.025MPaであり、底部の周囲圧が頂部周囲圧とオイル重力との和で、25.008MPaである。頂部と底部でのモデルの自重応力の差は0.025MPaである。モデルの応力場はプロトタイプとはかなり異なることは明らかである。
【0015】
要約すると、深地層工学のシミュレーション実験は、操作が容易で、時間割り当てが柔軟であるという利点があるが、シミュレーションの時間スケールが制限され、周囲圧勾配及び自重応力勾配を完全に再現できないという欠点がある。常重力では、深地層工学の応力場及び浸透場を好適にシミュレーションすることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来技術におけるシミュレーションの時間スケールが制限され、原位置応力場及び浸透場を完全に再現できないという欠点を克服するために、本発明では、深地層構築物の原位置応力場及び浸透場を実際に再現し、試験結果がプロトタイプの状況をより確実かつ正確に反映できるように、シミュレーション実験において同時に高い周囲圧及び高い応力を提供でき、原位置の周囲圧及び自重応力勾配をシミュレーションできる、深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明で用いられる技術的解決手段は以下のとおりである。
深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステムであって、
モデルを置き、深地層構築物の原位置軸圧、周囲圧及びその位置での浸透場を提供するための三軸圧力室と、
三軸圧力室に圧力液体及び間隙水を提供することにより、前記軸圧、周囲圧及び浸透場を発生させ、軸圧、周囲圧及び浸透場の量の値を独立かつ高精度に制御するためのシミュレーション制御装置と、
試験過程においてモデルの変形及び浸透流過程を監視するための信号収集装置とを備え、
シミュレーション実験を行うとき、前記三軸圧力室を超重力遠心機に置き、該超重力遠心機の生じた遠心加速度は重力加速度gのn倍(nは1より大きい整数)であり、モデルを超重力状態にする。
【0018】
nは100以上の整数であることが好ましい。
【0019】
超重力遠心機は、一定の角速度ωで回転し、提供する遠心加速度はr2(rがモデルにおける任意の一点と回転中心との距離である)に等しい。モデルがプロトタイプと同じ材料を用いると、遠心加速度がn倍の重力加速度であると(ng=r2)、モデルの深さhmで、研究対象は、プロトタイプのhp=nhmでの研究対象と同じ縦方向応力:σm=σpを有する。これは、超重力遠心シミュレーションの最も基本的な相似比原理である。すなわち、サイズをn倍縮小するモデルがn倍の重力加速度を受けるとき、モデルの応力場が原位置応力場である。たとえば、n=10であり、つまり、加速度が10gであると、モデルにおける1メートルの深さでの応力レベルは、プロトタイプにおける10メートルでの応力場と同じであり、n=100であり、つまり、加速度が100gであると、モデルにおける1メートルの深さでの応力レベルは、プロトタイプにおける100メートルでの応力場と同じである。
【0020】
上記技術的解決手段は、さらに以下の構成により改善することができる。
前記三軸圧力室は、4つの通路を備え、該4つの通路はそれぞれ軸圧通路、周囲圧通路、間隙水入口通路及び間隙水出口通路であることが好ましい。
【0021】
前記シミュレーション制御装置は、主制御ユニット、圧力浸透流制御ユニット、データフィードバックユニット及びソースシンクユニットを備えることが好ましい。前記圧力浸透流制御ユニットは4つであり、それぞれ軸圧制御ユニット、周囲圧制御ユニット、間隙水入口制御ユニット及び間隙水出口制御ユニットである。
【0022】
前記軸圧制御ユニットは、軸圧通路に接続され、三軸圧力室内の軸圧を制御するために用いられ、前記周囲圧制御ユニットは、周囲圧通路に接続され、三軸圧力室内の周囲圧を制御するために用いられ、前記間隙水入口制御ユニットは、間隙水入口通路に接続され、間隙水出口制御ユニットは、間隙水出口通路に接続され、両者は、間隙水の入出口での圧力差を構成し、三軸圧力室内の浸透場を制御するために用いられることが好ましい。
【0023】
前記データフィードバックユニットは、シミュレーション過程において三軸圧力室内の軸圧、周囲圧、穴圧を収集し、収集したデータを主制御ユニットに伝送するために用いられることが好ましい。
【0024】
前記ソースシンクユニットは、圧力浸透流制御ユニットに圧力液体及び/または間隙水を提供するために用いられることが好ましい。
【0025】
前記圧力浸透流制御ユニットは、圧力浸透流コントローラ及び圧力浸透流レギュレータを備え、ソースシンクユニットから出力される圧力液体または間隙水を受けた後、圧力浸透流レギュレータは該圧力液体の流量を監視して主制御ユニットに出力し、主制御ユニットのフィードバックに基づき、圧力浸透流コントローラから出力される圧力液体の流量を動的に調整することが好ましい。
【0026】
前記圧力浸透流コントローラは、駆動アセンブリ、蓄液アセンブリ、制御アセンブリ及び出力アセンブリを備え、前記駆動アセンブリは、ソースシンクユニットから出力される圧力液体による自体への推力を自体による蓄液アセンブリへの推力に変換するために用いられ、前記蓄液アセンブリは、圧力液体または間隙水を貯蔵する容器であり、該容器での液体は、ソースシンクユニットから出力される液体と連通せず、蓄液アセンブリは、駆動アセンブリによる自体への推力を受けた後、パイプを介して出力アセンブリにその内部の液体を輸送し、前記制御アセンブリは、圧力レギュレータに接続され、駆動アセンブリに入力される液体の流量を制御するために用いられ、前記出力アセンブリは、蓄液アセンブリに接続され、蓄液アセンブリでの圧力液体または間隙水を三軸圧力室に出力するために用いられることが好ましい。
【0027】
前記信号収集装置は、試験過程においてサンプルの変形及び浸透流過程を監視するための移動、変形、湿度などのセンサを備えることが好ましい。
【0028】
前記三軸圧力室は、軸圧シミュレーションアセンブリ、周囲圧シミュレーションアセンブリ及び浸透流シミュレーションアセンブリをさらに備える。前記軸圧シミュレーションアセンブリは、軸圧通路に接続され、三軸圧力室内モデルの頂部及び底部に位置する1ペアの軸圧圧子を備え、一方の圧子が固定され、他方の圧子が上下に移動可能であり、圧力液体の駆動でモデルに軸方向圧力を印加することが好ましい。
【0029】
前記周囲圧シミュレーションアセンブリは、周囲圧通路に接続され、通路から出力される圧力液体が三軸圧力室内に入るように案内し、モデルを取り囲んだ液体を介して、モデルに対して周囲圧を発生させることが好ましい。
【0030】
前記浸透流シミュレーションアセンブリは、間隙水入口通路及び間隙水出口通路に接続され、間隙水入口通路から出力される間隙水は、モデルのある端に位置するとともに、この端に接触する多孔板に入った後にモデル内部に入り、次にモデルの他端に接触する多孔板から流出し、間隙水出口通路に流入するように案内し、モデルが原位置間隙水の圧力差を発生させ、それにより原位置浸透場を形成することが好ましい。
【0031】
前記多孔板は、モデルの底部の形状と同一の防水性板材であり、分布密度が30個以上の円形穴が設置され、前記モデル及び多孔板の外側は不透水性ゴム膜に包まれ、両者を同じ密閉キャビティ内に位置させ、間隙水がモデルの内部において浸透場を形成するように、前記不透水性ゴム膜は間隙水入口及び出口のみを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
以上の技術的特徴を有する本発明の有益な効果は以下のとおりである。
本試験装置は、超重力遠心機により自重応力場勾配及び周囲圧勾配をシミュレーションすることができる。また、圧力浸透流制御ユニットにより周囲圧、軸圧及び間隙水流量をシミュレーションすることで、モデルの応力場及び浸透場を原位置応力場及び浸透場として、シミュレーション実験の類似性、信頼性及び精度を向上させることができる。
【0033】
試験装置の圧力浸透流制御ユニットは、4つであり、軸圧制御ユニット、周囲圧制御ユニット、間隙水入口制御ユニット及び間隙水出口制御ユニットである。それぞれのユニットは、圧力浸透流コントローラ及び圧力浸透流レギュレータを備え、主制御ユニットからフィードバックされる圧力を受けることにより、圧力浸透流コントローラの出力圧力を調整することができる。制御ユニットの命令によって、三軸圧力室に精度が1%となる圧力を出力するか、精度が1%となる間隙水の圧力差を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】深地層工学における岩石プロトタイプの受力分析図である。
【
図2】常重力下のシミュレーション実験でのモデルの受力分析図である。
【
図3】本発明の実施例1の全体構造を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施例1の三軸圧力室の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面及び実施例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、本発明の明細書等の内容に基づいて、当業者は本発明に対して様々な変更又は修正を行うことができ、これらの等価形態は同様に本願の特許請求の範囲に規定される技術的範囲に属する。
【0036】
以下、深地層処分場を例として、本システムの必要性及び優越性について説明する。
【0037】
深地層処分場(deep geological disposal)とは、地表から500m~1000m離れた地下で高放射性廃棄物を貯蔵する装置である。高放射性廃棄物は、高レベル放射性廃棄物(high level radioactive waste)であり、英語略称がHLWであり、放射性核種の含有量または濃度が高く、放熱量が大きく、操作及び輸送過程において特殊に遮断する必要がある放射性廃棄物である。
【0038】
高放射性廃棄物の深地層処分の基本原理は、地下数百メートルにおいて、核廃棄物を貯蔵するための処分場を建設し、工学的障壁及び地質学的障壁で形成される多重障壁システムによって、核廃棄物が数万、さらには、数百万年の期間、地表の生物圏に害を及ぼさないことを確保することである。高放射性廃棄物を金属製処分缶に密封して貯蔵し、金属製処分缶を処分場内に置き、処分缶と周囲岩との間に緩衝材を充填する。緩衝材は、一般に高圧縮ベントナイトで製造され、水にさらされると膨張し、周囲岩を支えることができ、また、ベントナイトは核種に対し高い遮断作用を持っている。
【0039】
高放射性廃棄物を深地層処分場に埋めることにより、人間の生活環境から永久に隔離することができる。深地層処分場において高放射性廃棄物を処分する具体的な方法は、高放射性廃棄物をガラス固化体に加工処理し、金属製包装容器に密封することであり、このような金属製包装容器が処分缶と呼ばれる。1つの処分場には複数の処分缶が含まれる。処分場を建設する前に、まず深い岩石に洞穴を掘削し、洞穴の内部に緩衝障壁を充填し、緩衝障壁内に処分場を建設する必要がある。処分場の周囲岩は、花崗岩、粘土岩、凝灰岩及び岩塩などを含み、処分される廃棄物は、高放射性廃棄物のガラス固化体、使用済燃料及びα廃棄物などである。放射性廃棄物を深地層処分することは、複雑な系統的工学である。技術的には、場所の選択及び場所の評価、地下実験室の建設及び設計、処分場の建設、運転及び閉鎖を含む。高放射性廃棄物を安全に処分するためには、深地層処分が最も現実的で実行可能な方法であると考えられている。
【0040】
ガラス固化体、金属包装容器、緩衝障壁及び周囲岩などは深地層処分場の近接場を形成する。深地層処分場の近接場の水-力の複数の場の相互作用は、数百年~数千年も続く可能性がある。水-力の複数の場の相互作用は、浸透流過程と変形過程の結合を意味する。これは、変形により、材料の孔隙率が変化し、浸透係数が変化し、浸透流により、材料の飽和率が変化し、強度パラメータが変化するためである。処分場は、通常、地下水の飽和帯に位置する。処分場は、密閉後の初期に、その内部が不飽和状態であり、地下水が徐々に浸透することにより、飽和し、該過程は再飽和と呼ばれる。再飽和過程と同時に、処分缶内の高レベル放射性廃棄物は崩壊反応により熱を放出し続け、熱の蓄積により処分缶の表面温度は上昇する。処分場では、熱伝導、地下水の浸透、水蒸気輸送、緩衝材の膨張及び周囲岩変形の複数の物理過程の相互作用が同時に発生している。この過程で、応力、穴圧、飽和率及び温度の変化により、緩衝材及び周囲岩の工学的特性が変化し、再飽和過程にさらに影響を及ぼす。
【0041】
高レベル放射性廃棄物の深地層処分工学では、処分場が再飽和した後、地下水が徐々に金属製処分缶を腐食し、最終的には処分場に入って核廃棄物と接触する。このとき、核廃棄物の核種は地下水に溶けて外部へ移動し、工学的障壁及び地質学的障壁を通って地表の生物圏に入る。処分場の密閉後の再飽和過程に必要な時間は、処分場の安全性評価に求められる問題の1つであり、この過程には約100年かかる。一方、再飽和状態は、近接場と遠方場での核種の移動の際のソース強度及び境界条件に直接影響を与える。他方、熱-水-力の相互作用後の処分場の近接場の浸透流、力学及び溶質移動特性は、処分場の安全性評価に重要な影響を及ぼす。従って、処分場の近接場の100年スケールでの再飽和過程についての研究が特に重要となる。
【0042】
実施例1:
図2~4に、本実施例の深地層工学の原位置応力場及び浸透場の超重力シミュレーションシステムを示す。遠心加速度を発生させるための超重力遠心機1と、モデルを置くための三軸圧力室2と、試験過程においてモデルの変形及び浸透流過程を監視するための信号収集装置206と、三軸圧力室に圧力液体及び間隙水を提供することにより、前記軸圧、周囲圧及び浸透場を発生させ、軸圧、周囲圧及び浸透場の量の値を制御するためのシミュレーション制御装置とを備える。上記超重力遠心機1が発生可能な遠心加速度は、重力加速度のn倍であり、nが1より大きい超重力加速度を発生させる。通常、nが100以上の超高重力加速度を発生させる。上記三軸圧力室2内に4つの通路が設けられる。上記三軸圧力室の4つの通路は、それぞれ軸圧通路2013、周囲圧通路2021、間隙水入口通路2031及び間隙水出口通路2032である。該三軸圧力室2は従来の三軸圧力室である。上記シミュレーション制御装置は、主制御ユニット5、圧力浸透流制御ユニット、データフィードバックユニット7及びソースシンクユニット8を備える。上記圧力浸透流制御ユニット6は、軸圧制御ユニット601、周囲圧制御ユニット603、間隙水入口制御ユニット603及び間隙水出口制御ユニット604の4つである。上記軸圧制御ユニット601は、軸圧通路2013に接続され、三軸圧力室2の軸圧を制御するために用いられる。上記周囲圧制御ユニット603は、周囲圧通路2021に対応し、三軸圧力室2の周囲圧を制御するために用いられる。上記間隙水入口制御ユニット603は、間隙水入口通路2031に対応し、間隙水出口制御ユニット604は、間隙水出口通路2032に対応する。両者は、間隙水の入口と出口での圧力差を構成し、三軸圧力室2での浸透場を制御するために用いられる。上記データフィードバックユニット7は、シミュレーション過程において圧力浸透流制御ユニットから三軸圧力室内に出力される軸圧、周囲圧及び間隙水流量を収集し、収集したデータを主制御ユニット5に伝送するために用いられる。上記ソースシンクユニット8は、圧力浸透流制御ユニット6に圧力液体及び/または間隙水を提供するために用いられる。上記シミュレーションシステムでは、超重力遠心機1を運転して生じた超重力加速度により、勾配を有する周囲圧及び自重応力場をシミュレーションし、圧力浸透流制御ユニット6により、プロトタイプの原位置の浸透場をシミュレーションする。
【0043】
本実施例では、
図3、4及び5に示すように、超重力遠心機1は、回転アーム及びバスケットを備え、三軸圧力室2はバスケット内に置かれる。シミュレーション制御装置は、主制御ユニット5、圧力浸透流制御ユニット6、データフィードバックユニット7及びソースシンクユニット8を備える。圧力浸透流制御ユニット6は、軸圧制御ユニット601、周囲圧制御ユニット602、間隙水入口制御ユニット603及び間隙水出口制御ユニット604の4つである。深地層処分場をシミュレーションするためのモデル10は三軸圧力室2内に設置され、ソースシンクユニット8はパイプ9、及び圧力浸透流制御ユニット6を介して三軸圧力室2に接続される。圧力浸透流制御ユニット6及びデータフィードバックユニット7はいずれも主制御ユニット5及び三軸圧力室2に接続され、三軸圧力室2及び圧力浸透流制御ユニット6はバスケット内に設置され、データフィードバックユニット7及び主制御ユニット5は回転アームの中心に設置され、ソースシンクユニット8は超重遠心機1の外に設置される。
【0044】
本実施例では、上記圧力浸透流制御ユニット6は、圧力浸透流コントローラ及び圧力浸透流レギュレータを備える。より具体的には、軸圧コントローラ6011、軸圧レギュレータ6012、周囲圧コントローラ6021、周囲圧レギュレータ6022、間隙水入口コントローラ6031、間隙水入口レギュレータ6032、間隙水出口コントローラ6041、及び間隙水出口レギュレータ6042を備える。軸圧コントローラ6011、周囲圧コントローラ6021、間隙水入口コントローラ6031、間隙水出口コントローラ6041は、圧力浸透流コントローラと総称される。軸圧レギュレータ6012、周囲圧レギュレータ6022、間隙水入口レギュレータ6032、間隙水出口レギュレータ6042は、圧力浸透流レギュレータと総称される。上記圧力浸透流レギュレータは、主制御ユニット5から出力される圧力フィードバック信号を受信し、この信号に基づき、圧力浸透流コントローラの出力圧力または出力される間隙水の流量を調整する。
【0045】
本実施例では、上記圧力浸透流コントローラは、駆動アセンブリ、蓄液アセンブリ、制御アセンブリ及び出力アセンブリを備える。上記駆動アセンブリは、ソースシンクユニット8から出力される圧力液体による推力を蓄液アセンブリへの推力に変換するために用いられ、上記蓄液アセンブリは、圧力液体または間隙水を貯蔵する容器である。該容器の液体は、ソースシンクユニット8から注入される液体と連通せず、蓄液アセンブリは、駆動アセンブリによる推力を受けた後に、パイプを介して出力アセンブリにその内部の液体を輸送する。上記制御アセンブリは、圧力レギュレータに接続され、駆動アセンブリに入力される液体の流量を制御するために用いられ、上記出力アセンブリは、蓄液アセンブリに接続され、蓄液アセンブリの圧力液体または間隙水を三軸圧力室2に出力するために用いられる。
【0046】
本実施例では、上記圧力浸透流レギュレータは、動的調整機能を有し、ソースシンクユニット8から出力される圧力液体または間隙水を受けた後、主制御ユニット5からフィードバックされる圧力に基づき、圧力浸透流コントローラに入出力される液体の流量を動的に調整することができる。
【0047】
本実施例では、上記三軸圧力室2は、軸圧シミュレーションアセンブリ、周囲圧シミュレーションアセンブリ及び浸透流シミュレーションアセンブリをさらに備える。上記軸圧シミュレーションアセンブリは、三軸圧力室内モデルの頂部及び底部に位置する1ペアの軸圧圧子であり、上圧子2011は、固定され、下圧子2012は、上下に移動可能で、軸圧通路2013に接続され、下圧子2012は、圧力液体の駆動でモデル10に軸圧を印加する。上記周囲圧シミュレーションアセンブリは、周囲圧通路2021に接続され、通路から出力される圧力液体が三軸圧力室2のキャビティ内に入るように案内し、モデル10を取り囲んだ液体により、モデルに対して周囲圧を発生させる。上記浸透流シミュレーションアセンブリは、間隙水入口通路2031及び間隙水出口通路2032に接続され、間隙水入口通路2031から出力される圧力液体がモデル10の底部の多孔板204に入った後にモデル10に入り、次にモデル10の頂部の多孔板205を経由して間隙水出口通路2032から流出するように案内し、モデル10の頂底面に、実際の状況と同じ浸透流境界を発生させ、それにより、実際の状況と同じ浸透場を形成する。
【0048】
本実施例では、上記底部多孔板204及び頂部多孔板205は、半径がモデルの半径と同一の防水板材であり、30個の円形穴が均一に分布している。
【0049】
三軸圧力室2は、耐圧範囲が10~50MPaの高強度合金鋼製円筒状三軸圧力室であり、キャビティ内のサイズは200mm×200mmより大きい。強度の経験値から推算すると、50~300gの遠心加速度の範囲内において正常に動作できる。
【0050】
三軸圧力室2には深地層処分場モデル10が内蔵され、三軸圧力室2のキャビティの頂部には、間隙水出口通路2032に接続される多孔板205が設けられ、底部には、間隙水入口通路2031に接続される多孔板204が設けられる。三軸圧力室2の外側底部には、軸圧通路2013及び周囲圧通路2021が設けられ、三軸圧力室2内には、上圧子2011、下圧子2012が設けられる。
【0051】
三軸圧力室2内にモデル10を入れた後、間隙水入口通路2031、間隙水出口通路2032を介して間隙水を注入し、形成される浸透場をシミュレーションし、軸圧通路2013を介して圧力液体を注入する。下圧子2012は、圧力液体の作用下で上へ移動し、モデル10を押圧し、軸圧をシミュレーションし、周囲圧通路2021を介して圧力液体を注入し、圧力液体は、モデル10を取り込んで押圧し、周囲圧をシミュレーションする。
三軸圧力室2内に信号収集装置206が設けられる。具体的には、試験過程におけるサンプルの変形及び浸透流過程を監視するために移動、変形及び湿度などのセンサを備え、信号収集装置206は、三軸圧力室2内に設置され、センサ通路2061を介してデータをシステム外のプロセッサに伝送する。
【0052】
本発明の圧力制御モジュールは、圧力軸圧25MPa、周囲圧25MPa、間隙水圧力10MPaをサーボ制御し、深地層環境の実際の縦方向、水平応力場及び浸透場をシミュレーションする。
【0053】
本発明のシミュレーションシステムは、超重力遠心機により生じた超重力場に依存し、圧力浸透流制御ユニットにより、遠心機内の装置が深地層工学の複数場の相互作用過程をシミュレーションし、超重力遠心機により生じた超重力場がスケール効果による自重損失を補償する。シミュレーションプロトタイプは自重応力場を有し、さらに、モデルにおける各点と遠心機回転軸との距離は異なる。モデルの底部を基準とするng遠心加速度で、モデルの底部と遠心機回転軸との距離をRとし、モデルの頂部と遠心機回転軸距離との距離をrとして、計算して、遠心機回転の角速度ng/R2、モデル頂部の遠心加速度ngr2/R2を得ることができる。該モデルの容積重量をγとすると、該システムがシミュレーションする自重応力勾配は、γng(R+r)/R2となる。制御ユニットがモデルに軸圧を印加し、プロトタイプの縦方向応力場をシミュレーションし、制御ユニットがモデルに周囲圧を印加し、プロトタイプの水平方向応力場をシミュレーションし、浸透流制御ユニットがモデルに穴圧を印加し、プロトタイプの浸透流過程をシミュレーションし、遠心機のスケール効果は、プロトタイプの長期(千年または万年)の応力場、浸透場の変化を再現する。遠心機のスケール効果とは、ngの遠心加速度で、試験に用いられるモデルサイズがプロトタイプの1/nであることであり、遠心機のスケール効果とは、ngの遠心加速度で、試験に用いられるモデルに発生する動的過程がプロトタイプと同じ効果に達するとき、かかる時間がプロトタイプの時間の1/nであることである。
【0054】
本発明の具体的な稼動工程は以下のとおりである。
深地層処分場、緩衝障壁、及び周囲岩モデル10が取り付けられる三軸圧力室2を超重力遠心機1のバスケット内に置き、圧力浸透流制御装置6に関連するパイプ9を三軸圧力室2に接続し、ソースシンクユニット8を介して圧力浸透流制御装置6に間隙水及び圧力液体を注入し、センサ通路2061を信号収集装置206に接続する。
【0055】
設定した後、超重力遠心機1を開き、遠心加速度を1gから100gに徐々に増加させる。加速過程において、シミュレーション制御装置のデータフィードバックユニット7により、三軸圧力室2に入力(注入)される圧力液体及び間隙水の流量をリアルタイムに監視し、主制御ユニット5にリアルタイムでフィードバックし、シミュレーション制御装置における圧力浸透流制御ユニットにより、ソースシンクユニット8から入力(注入)される圧力液体及び間隙水の流量を監視し、主制御ユニット5にリアルタイムでフィードバックし、主制御ユニット5から発出される命令に基づき、入出力(注排出)される液体流量を調整する。信号収集装置206のデータをシステムの外のプロセッサで出力する。
【0056】
試験に必要な遠心加速度に達した後、信号収集装置206により長期の圧力、変位及び浸透流に対する監視を実行し始める。
【0057】
試験終了後、停止し、遠心加速度を1gまで徐々に低下させ、三軸圧力室2の処理モデル10を取り出す。システム外のプロセッサでは、試験全過程において収集されるデータを整理し、後続分析を行う。
【0058】
本実施例では、圧力、流量センサによる測定、及び、ホストコンピュータにより予め設定される圧力、流量の値との比較により、軸圧、周囲圧及び間隙水の圧力差の出力制御精度は1%となる。
【0059】
本明細書に例示されるのは、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明の動作原理およびアイデアの下で行われたすべての同等の技術的交換は、本発明の保護範囲と見なされる。
【符号の説明】
【0060】
1 超重力遠心機
2 三軸圧力室
2011 上圧子
2012 下圧子
2013 軸圧通路
2021 周囲圧通路
2031 間隙水入口通路
2032 間隙水出口通路
204 頂部多孔板
205 底部多孔板
206 信号収集装置
2061 信号収集通路
5 主制御ユニット
601 軸圧制御ユニット
6011 軸圧コントローラ
6012 軸圧レギュレータ
602 周囲圧制御ユニット
6021 周囲圧コントローラ
6022 周囲圧レギュレータ
603 間隙水入口制御ユニット
6031 間隙水入口コントローラ
6032 間隙水入口レギュレータ
604 間隙水出口制御ユニット
6041 間隙水出口コントローラ
6042 間隙水出口レギュレータ
7 データフィードバックユニット
8 ソースシンクユニット
9 パイプ
10 モデル