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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】窒化物半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/04 20100101AFI20221104BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20221104BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H01L33/04
H01L33/32
H01L21/205
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017217351
(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公開番号】P2019087710
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-07-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 泰斗
(72)【発明者】
【氏名】岩山 章
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 素顕
(72)【発明者】
【氏名】赤▲崎▼ 勇
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-198045(JP,A)
【文献】特開2016-157734(JP,A)
【文献】特開2008-226906(JP,A)
【文献】特開2004-014675(JP,A)
【文献】特開2010-212493(JP,A)
【文献】特表2010-514193(JP,A)
【文献】特開2002-231997(JP,A)
【文献】特開2000-164512(JP,A)
【文献】特開平10-154829(JP,A)
【文献】特開2002-335011(JP,A)
【文献】特開2007-053376(JP,A)
【文献】特開2002-134835(JP,A)
【文献】Samuel James Bader et al.,"Introducing the spiked p-n junction for tunnel devices and current gain",2016 74th Annual Device Research Conference (DRC),米国,IEEE,2016年08月25日,DOI: 10.1109/DRC.2016.7548415
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属気相成長法を用い、反応炉内で基板の表面に窒化物半導体を用いたトンネル接合層を形成する窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
p型不純物を添加してp型トンネル接合層を形成するp型トンネル接合層形成工程と、
前記p型トンネル接合層形成工程を実行後、前記p型トンネル接合層の表面に前記反応炉内のO(酸素)を吸着させる成長中断工程と、
前記成長中断工程を実行後、O(酸素)を吸着した前記p型トンネル接合層の表面にn型不純物を添加してn型トンネル接合層を形成するn型トンネル接合層形成工程と、
を備え、
前記p型トンネル接合層形成工程から前記n型トンネル接合層形成工程まで、前記反応炉内に前記基板を保持して実行し、
前記成長中断工程では、キャリアガスの種類を窒素に変更し、前記基板の温度を前記p型トンネル接合層の成長温度よりも低い、前記n型トンネル接合層の成長温度にすることを特徴とする窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記成長中断工程における、前記トンネル接合層の形成を中断する時間は3分以上であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒化物半導体発光素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のほとんどはp型半導体層とn型半導体層とを積層して形成される。高い効率で動作する素子を実現するためには、電気抵抗が小さいp型半導体層及びn型半導体層が必要である。ところが、紫外可視光波長域発光・受光素子として有用であるとされる窒化物半導体は、p型半導体層のGaNにおいて、電気抵抗率が1Ωcm以上である。これは、n型窒化物半導体や赤外半導体であるn型GaAs(ガリウムヒ素)やp型GaAsの電気抵抗率が0.01Ωcm以下であることに比べて100倍以上大きい。さらに、深紫外領域で必要とされる、AlN(窒化アルミニウム)モル分率が大きいAlGaNは、p型AlGaNが得られないという課題がある。
【0003】
トンネル接合は通常のpn接合に比べてp型半導体層及びn型半導体層のそれぞれにp型不純物及びn型不純物が高濃度に添加されたpn接合である。これにより、トンネル接合は通常のpn接合に比べてp型半導体層とn型半導体層との界面に形成される空乏層の厚みが薄くなる。これにより、トンネル接合のp型半導体層とn型半導体層とに逆バイアス電圧を印加すると電子が空乏層を通り抜けp型半導体層の価電子帯からn型半導体層の伝導帯へ移動する(トンネルする)ことができる。つまり、トンネル接合はn型半導体層からp型半導体層に向けて電流を流すことができる。
【0004】
ゆえに、窒化物半導体発光素子において、電子に比べ移動度が低く有効質量が大きい正孔の供給源であるp型半導体層の大部分を、トンネル接合を用いることによって、正孔に比べ移動度が高く有効質量が小さい電子の供給源であるn型半導体層に置き換えることができる。つまり、窒化物半導体発光素子にトンネル接合を用いることによって、電気抵抗が大きいp型半導体層の大部分を電気抵抗の小さいn型半導体層に置き換えることができる。そして、さらにトンネル接合自体の電気抵抗を小さくすることができれば、従来の素子の電気抵抗をより小さくすることができ、さらに、現在実用化が遅れている面発光レーザや深紫外発光素子の実用化が可能になる。しかし、窒化物半導体はバンドギャップが大きく、アクセプタ(p型不純物)の濃度を高くすることが難しい。このため、窒化物半導体を用いたトンネル接合は、電気抵抗を小さくすることが難しいと考えられてきた。
【0005】
非特許文献1、2の窒化物半導体発光素子はトンネル接合層にGaInN層を用いている。そして、非特許文献1、2の窒化物半導体発光素子はMOCVD法(有機金属気相成長法)を用いてトンネル接合層を形成している。
【0006】
非特許文献1の窒化物半導体発光素子ではトンネル接合層のバンドギャップが小さくなり、InN(窒化インジウム)が添加されて発生するピエゾ分極によって大きな分極電荷が生じるため、トンネル接合を介して、窒化物半導体発光素子であるLEDを駆動する際に必要な低電流密度領域(100A/cm2以下)において、極めて低い電圧降下を示すことが開示されている。
【0007】
また、非特許文献2の窒化物半導体発光素子では、レーザ駆動に必要な高電流密度領域(10kA/cm2以下)において、素子の表面側にp型コンタクト層(p型半導体層)を有した従来の素子と同等の低い駆動電圧を示すことが開示されている。
つまり、非特許文献1、2の窒化物半導体発光素子は、トンネル接合層にGaInN層を用いると、MOCVD法によって電気抵抗が小さいトンネル接合層を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】Sriram Krishnamoorthy, Fatih Akyol, Pil Sung Park, Siddharth Rajan"Low resistance GaN/InGaN/GaN tunnel junctions"、Applied Physics Letter、(米国)、2013年、Vol.102,Issue11、P.113503
【文献】Daiki Takasuka, Yasuto Akatsuka, Masataka Ino, Norikatsu Koide, Tetsuya Takeuchi, Motoaki Iwaya, Satoshi Kamiyama and Isamu Akasaki"GaInN-based tunnel junctions with graded layers"、Applied Physics Express、(米国)、2016年、Vol.9,Number8、P.081005
【文献】Erin C. Young, Benjamin P. Yonkee, Feng Wu, Sang Ho Oh, Steven P. DenBaars, Shuji Nakamura and James S. Speck" Hybrid tunnel junction contacts to III-nitride light-emitting diodes"、Applied Physics Express、(米国)、2016年、Vol.9,Number2、P.022102
【文献】B.P.Yonkee, E.C.Young, S.P.DenBaars, S.Nakamura, J.S.Speck"Silver free III-nitride flip chip light-emitting-diode with wall plug efficiency over 70% utilizing a GaN tunnel junction"Applied Physics Letter、(米国)、2016年、Vol.109,Issue19、P.191104
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、多くの窒化物半導体発光素子において、Inの組成が大きいGaInNをトンネル接合層に用いると、トンネル接合層に光が吸収される光吸収ロスが生じることが知られている。この光吸収ロスを抑制する方法として、よりバンドギャップの大きなGaN等の材料を用い、MOCVD法とMBE法とを組み合わせてエピタキシャル成長をさせてトンネル接合層を形成する方法が提案されている。
具体的には、先ず、MOCVD法を実行することができるMOCVD装置を用いてトンネル接合層のp型不純物を高濃度に添加したGaN層(以下、p++GaN層という)までを基板の表面に積層して作製する。そして、基板をMOCVD装置の反応炉から取り出す。そして、MBE法を実行することができるMBE装置の反応炉に基板をセットして、n型不純物を高濃度に添加したGaN層(以下、n++GaN層という)から後の部分をp++GaN層の表面に積層して形成する。つまり、光吸収ロスを抑制した窒化物半導体発光素子を作る方法とは、MOCVD法と、Mgの表面偏析が少ないMBE法とを用いるハイブリッド成長法である。
【0010】
このハイブリッド成長法は、基板をMOCVD装置の反応炉から取り出すと、基板に作製したp++GaN層の表面が自然に酸化する。そして、還元作用を有するH2(水素)等の元素を用いない(すなわち、酸化したp++GaN層にO(酸素)が残留し易い)MBE法を用いてn++GaN層から後の部分を積層して形成する。
このハイブリッド成長法を用いて作製された非特許文献3、4の窒化物半導体発光素子は、p++GaN層とn++GaN層との界面(以下、トンネル接合層の界面という)に極めて高い濃度のO(酸素)(1×1020cm-3以上)が存在する状態を形成し、電流密度7~10kA/cm2の範囲において1.5×10-4Ωcm2という低い微分抵抗を得ている。
しかし、このハイブリッド成長法は、MOCVD装置の反応炉から取り出した基板をMBE装置の反応炉にセットして窒化物半導体発光素子の再成長を行うことになる。つまり、このハイブリッド成長法は、MOCVD装置の反応炉から一旦基板を取り出して、MBE装置の反応炉にセットする手間が掛かるうえ、高価な二種類の結晶成長装置(MOCVD装置、及びMBE装置)を用いなければならない。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、素子の電気抵抗が小さく、これにより高効率で発光することができる窒化物半導体発光素子を容易に製造することができる窒化物半導体発光素子の製造方法、及び素子の電気抵抗が小さく、これにより高効率で発光することができる窒化物半導体発光素子を提供することを解決すべき課題としている。
【0012】
上記課題を解決するために発明者らが鋭意検討した結果、従来、上述したように、GaInNを用いないとトンネル接合層の電気抵抗を小さくすることが難しいMOCVD法のみを用い(すなわち、他の成長法(MBE法)を用いて再成長を行う必要がない)た窒化物半導体において、GaNを用いた(すなわち、GaInNを用いない)トンネル接合層の電気抵抗を小さくすることができる手法を見出した。具体的には、トンネル接合層の界面において積極的にトンネル接合層の形成を中断させることによって、トンネル接合層の界面に比較的低い濃度でO(酸素)を存在させることによって、窒化物半導体で形成されたトンネル接合層の電気抵抗を大幅に小さくできることを新たに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の窒化物半導体発光素子の製造方法は、
有機金属気相成長法を用い、反応炉内で基板の表面に窒化物半導体を用いたトンネル接合層を形成する窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
p型不純物を添加してp型トンネル接合層を形成するp型トンネル接合層形成工程と、
前記p型トンネル接合層形成工程を実行後、前記p型トンネル接合層の表面に前記反応炉内のO(酸素)を吸着させる成長中断工程と、
前記成長中断工程を実行後、O(酸素)を吸着した前記p型トンネル接合層の表面にn型不純物を添加してn型トンネル接合層を形成するn型トンネル接合層形成工程と、
を備え、
前記p型トンネル接合層形成工程から前記n型トンネル接合層形成工程まで、前記反応炉内に前記基板を保持して実行し、
前記成長中断工程では、キャリアガスの種類を窒素に変更し、前記基板の温度を前記p型トンネル接合層の成長温度よりも低い、前記n型トンネル接合層の成長温度にすることを特徴とする。
【0014】
本発明の窒化物半導体発光素子の製造方法はトンネル接合層を作製する際に、p型トンネル接合層形成工程からn型トンネル接合層形成工程まで、MOCVD法を実行する反応炉内に基板を保持して実行する。つまり、この窒化物半導体発光素子の製造方法は基板を一度も大気に暴露すること(すなわち、成長の途中で基板を反応炉から取り出すこと)がない。つまり、この窒化物半導体発光素子の製造方法はトンネル接合層を形成する途中で反応炉から基板を取り出す必要がない。
また、本発明の窒化物半導体発光素子の製造方法のO(酸素)は原料ガスとして意図的に反応炉内に供給されたものではなく、素子を形成するために用いる原料に微量に含有されていたり外界から反応炉内に僅かにリークしたりすることによって反応炉内に少なからず存在するものである。通常、O(酸素)が半導体内に混入することは、半導体の特性の劣化を引き起こす可能性があるため極力抑制すべきものである。しかし、この窒化物半導体発光素子の製造方法は半導体内にO(酸素)が混入する現象を積極的に利用するものである。
また、この窒化物半導体発光素子の製造方法は、還元作用の高い元素であるH2を用いたMOCVD法であっても、成長中断工程を実行することによって、p型トンネル接合層の表面にO(酸素)を吸着させて、トンネル接合層の界面にO(酸素)を存在させることができる。つまり、この窒化物半導体発光素子の製造方法は基板を一度も大気に暴露せず成長中断工程を実行し、トンネル接合層の界面にO(酸素)を存在させることによってトンネル接合層の電気抵抗を小さくすることができる。
【0015】
また、本発明の窒化物半導体発光素子は、
窒化物半導体によって形成されたトンネル接合層を備えた窒化物半導体発光素子であって、
前記トンネル接合層は、
p型不純物が添加されたp型トンネル接合層と、
前記p型トンネル接合層の表面に積層され、n型不純物が添加されたn型トンネル接合層と、
を有し、
前記p型トンネル接合層と前記n型トンネル接合層との界面のO(酸素)の濃度は2×1018cm-3以上、かつ3×1018cm-3以下であり、厚み方向において1×10 18 cm -3 以上の領域が少なくとも5nm以上存在することを特徴とする。
【0016】
この窒化物半導体発光素子は、従来の窒化物半導体発光素子のように、トンネル接合層の界面に高い濃度のO(酸素)を存在させなくても、トンネル接合層の電気抵抗を良好に抑えることができる。このため、この窒化物半導体発光素子はO(酸素)を添加することによるトンネル接合層の結晶性への影響を抑えることができる。
【0017】
したがって、本発明の窒化物半導体発光素子の製造方法は良好に発光することができる窒化物半導体発光素子を容易に製造することができ、本発明の窒化物半導体発光素子は良好に発光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1~3、及び比較例1の試料を用いて素子形成した状態の構造を示す模式図である。
図2】実施例1~3、及び比較例1の試料のトンネル接合層の厚み方向におけるO(酸素)の濃度の変化を示すグラフである。
図3】実施例1~3、及び比較例1の試料の電流に対する電圧の大きさの変化を示すグラフである。
図4】電流密度が10kA/cm2における、成長中断時間に対する、駆動電圧、及びO(酸素)のピーク濃度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0020】
発明の窒化物半導体発光素子の製造方法の成長中断工程における、トンネル接合層の形成を中断する時間は3分以上であり得る。この場合、この窒化物半導体発光素子の製造方法は、成長条件を変更するための時間(3分以上)を十分に確保することによって、成長中断工程の前後の成長条件に全く異なるものを採用し易くなる。つまり、成長中断工程において、次の層(n型トンネル接合層)の結晶成長における最適な成長条件に確実に変更することができるため、p型トンネル接合層、及びn型トンネル接合層のそれぞれにとって最適な成長条件を採用し易くなる。このため、この窒化物半導体発光素子の製造方法はp型トンネル接合層、及びn型トンネル接合層のそれぞれの成長条件をさらに最適化することができ、トンネル接合層の電気抵抗をより小さくすることができる。
【0021】
次に、本発明の窒化物半導体発光素子を具体化した実施例1~3、及び比較例1について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
<実施例1~3及び比較例1>
【0023】
実施例1~3、及び比較例1の窒化物半導体発光素子は、図1に示すように、第1n-GaN層11、GaInN/GaN5重量子井戸活性層12、p-AlGaN層13、p-GaN層14、トンネル接合層15、及び第2n-GaN層16を備えている。
【0024】
実施例1~3、及び比較例1の窒化物半導体発光素子は、基板であるサファイア基板9(以下、基板9という)の表面側(表は図1における上側である、以下同じ。)に低温堆積緩衝層(図示せず)を介して形成したu-GaN層10の表面側に、MOCVD法(有機金属気相成長法)を用いて積層して結晶成長する。
【0025】
先ず、基板9の表面側に形成されたu-GaN層10の表面に第1n-GaN層11を積層して結晶成長する。詳しくは、先ず、MOCVD法を実行することができるMOCVD装置の反応炉内にu-GaN層10が表面に形成された基板9をセットする。そして、反応炉内にN(窒素)の原料であるNH3(アンモニア)、及びキャリアガスであるH2(水素)を供給して、反応炉内の温度を調節して基板の温度を1050℃にする。反応炉内に供給するガスは、別途記載があるまで供給を停止しない。そして、反応炉内にGa(ガリウム)の原料であるTMGa(トリメチルガリウム)と、ドナー(n型不純物)であるSi(ケイ素)の原料であるSiH4(シラン)とを供給して、2μmの厚みの第1n-GaN層11を積層して結晶成長させる。反応炉内へのSiH4の供給量は第1n-GaN層11に添加されるドナー(n型不純物)であるSiの濃度が1×1019cm-3になるように調節する。
【0026】
次に、第1n-GaN層11の表面にGaInN/GaN5重量子井戸活性層12を積層して結晶成長する。GaInN/GaN5重量子井戸活性層12は、GaInN井戸層(図示せず)、及びGaNバリア層(図示せず)を有している。
【0027】
先ず、GaInN井戸層を積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内へのH2、TMGa、及びSiH4の供給を停止する。すなわち、NH3以外の原料のガスの供給を停止する。そして、反応炉内にキャリアガスとしてN2(窒素)を供給する。そして、反応炉内の温度を調節して基板9の温度を780℃にする。そして、反応炉内にGaの原料であるTEGa(トリエチルガリウム)と、In(インジウム)の原料であるTMIn(トリメチルインジウム)とを供給して、3nmの厚みのGaInN井戸層を積層して結晶成長させる。
【0028】
次に、GaInN井戸層の表面にGaNバリア層を積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内へのTMInの供給を停止して、6nmの厚みのGaNバリア層を積層して結晶成長させる。こうして成長させたGaInN量子井戸層、及びGaNバリア層を1ペアとして、この1ペアを5ペア積層して結晶成長する。こうしてGaInN/GaN5重量子井戸活性層12を形成する。そして、反応炉内へのTEGa及びTMInの供給を停止する。
【0029】
次に、GaInN/GaN5重量子井戸活性層12の表面にp-AlGaN層13を積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内へ供給するキャリアガスをN2からH2に切り替える。そして、反応炉内の温度を調節して基板9の温度を1000℃にする。そして、反応炉内にTMGa、Al(アルミニウム)の原料であるTMAl(トリメチルアルミニウム)、及びアクセプタ(p型不純物)であるMg(マグネシウム)の原料であるCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を供給して、20nmの厚みのp-AlGaN層13を積層して結晶成長させる。反応炉内へのCp2Mgの供給量はp-AlGaN層13に添加されるMgの濃度が3×1019cm-3になるように調節する。
【0030】
次に、p-AlGaN層13の表面にp-GaN層14を積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内へTMAlの供給を停止して、160nmの厚みのp-GaN層14を積層して結晶成長させる。p-GaN層14に添加されるMgの濃度は4×1019cm-3である。
【0031】
次に、反応炉内でp-GaN層14の表面に窒化物半導体を用いたトンネル接合層15を形成する。トンネル接合層15はp型トンネル接合層であるp++-GaN層15A、及びn型トンネル接合層であるn++-GaN層15Bを有している。
【0032】
先ず、p型不純物を添加してp++-GaN層15Aを形成するp型トンネル接合層形成工程を実行する。
反応炉内にTEGa、及びCp2Mgを供給する。こうして、2nmの厚みのp++-GaN層15Aを成長させ、p++-GaN層15Aに添加されるMgの濃度が2×1020cm-3以上になるようにする。こうして、p++-GaN層15Aの結晶成長を終了する。そして、反応炉内へのTEGa、及びCp2Mgの供給を停止する。すなわち、NH3以外の原料のガスの供給を停止する。
【0033】
次に、p型トンネル接合層形成工程を実行後、p++-GaN層15Aの表面に反応炉内のO(酸素)を吸着させる成長中断工程を実行する。
成長中断工程では、p++-GaN層15Aの表面にn++-GaN層15Bを積層して結晶成長するために、成長温度、成長圧力、キャリアガスや原料ガスの供給量等の成長条件をn++-GaN層15Bの成長条件に変更する。
具体的には、p++-GaN層15Aを結晶成長した後、トンネル接合層15の形成を所定の時間中断する成長中断工程を実行し、p++-GaN層15Aの表面に反応炉内に存在するO(酸素)原子を吸着させた後、p++-GaN層15Aの表面にn++-GaN層15Bを積層して結晶成長させる。
【0034】
従来技術では、成長中の結晶内にC(炭素)やO(酸素)等の不要な不純物が混入し、半導体の特性の劣化が生じることを抑えるために、p++-GaN層15Aを結晶成長した後、n++-GaN層15Bを積層して結晶成長させる際の成長条件への変更を極力短い時間で行っている。このため、従来技術では、p++-GaN層15Aを結晶成長させる際の成長条件を意図的にn++-GaN層15B結晶成長させる際の成長条件と同じにしたり、成長条件のパラメータ(成長温度、成長圧力、キャリアガスや原料ガスの供給量等)をp++-GaN層15Aの成長条件からn++-GaN層15Bの成長条件に変更しながら結晶成長を継続して行ったりする方法が多く採用されている。
【0035】
本発明では、反応炉内に存在しないほうが好ましいO2(酸素)を積極的に利用する。このO2(酸素)は原料ガスとして意図的に反応炉内に供給されたものではなく、素子を形成するために用いる原料に微量に含有されていたり外界から反応炉内に僅かにリークしたりすることによって反応炉内に少なからず存在するものである。
【0036】
ここで、p++-GaN層15Aを結晶成長した後、トンネル接合層15の形成を中断する時間を0、3、10、及び30分の4種類に変更した場合について説明する。比較例1はトンネル接合層15の形成を中断する時間が0分であり、実施例1はトンネル接合層15の形成を中断する時間が3分であり、実施例2はトンネル接合層15の形成を中断する時間が10分であり、実施例3はトンネル接合層15の形成を中断する時間が30分である。
【0037】
比較例1の場合、p++-GaN層15Aの成長条件を上述した条件(キャリアガスがH2で基板9の温度を1000℃にした状態)ではなく、後述するn++-GaN層15Bの成長条件に一致させることで、トンネル接合層15の形成を中断する時間を0分(成長中断工程の時間を0分)にしている(すなわち、p型トンネル接合層形成工程において、予め、キャリアガスをH2からN2に切り替えると共に、反応炉内の温度を調節して基板の温度を710℃にした状態でp++-GaN層15Aを結晶成長させる。)。
【0038】
実施例1~3の場合、成長中断工程において、キャリアガスをH2からN2に切り替えると共に、反応炉内の温度を調節して基板9の温度を710℃にする。そして、トンネル接合層15の形成を中断する時間(3分以上)を設ける。つまり、成長中断工程における、トンネル接合層15の形成を中断する時間は3分以上である。ここで、反応炉内のO2(酸素)の量は、素子を形成するために用いる原料に含有されるO2(酸素)の量やMOCVD装置の反応炉の種類や状態によって異なる。このため、各反応炉における最適なトンネル接合層15の形成を中断する時間の長さは異なる可能性もある。しかし、いずれにしても、半導体であるトンネル接合層15の形成を中断する時間を設けることは、従来技術における半導体の結晶成長の際には極力避けられてきたことである。
【0039】
次に、成長中断工程を実行後、O(酸素)を吸着したp++-GaN層15Aの表面にn型不純物を添加してn++-GaN層15Bを形成するn型トンネル接合層形成工程を実行する。
詳しくは、実施例1~3、及び比較例1のそれぞれにおいて、反応炉内にTEGa、及びSiH4を供給する。これにより、n++-GaN層15Bを成長させる。n++-GaN層15Bに添加されるSiの濃度は、トンネル接合層15において、3×1020cm-3以上の領域が10nm以上となるようにTEGa、及びSiH4の反応炉内への供給量や成長時間等の成長条件を調整した。その後、反応炉内へのTEGa及びSiH4の供給を停止する。すなわち、NH3以外の反応炉内への原料の供給を停止する。こうして、実施例1~3、及び比較例1のそれぞれにおいてトンネル接合層15を形成する。トンネル接合層15はp型トンネル接合層形成工程からn型トンネル接合層形成工程まで、反応炉内に基板9を保持して実行する。
【0040】
次に、トンネル接合層15の表面に第2n-GaN層16を積層して結晶成長する。詳しくは、キャリアガスをN2からH2に切り替える。そして、反応炉内の温度を調節して基板9の温度を1050℃にする。そして、反応炉内にTMGa、及びSiH4を供給する。そして、第2n-GaN層16を400nmの厚みで積層して結晶成長させる。第2n-GaN層16に添加されるn型不純物であるSiの濃度は1×1019cm-3である。
そして、反応炉内へのTMGa及びSiH4の供給を停止して結晶成長を終了する。そして、反応炉内へ供給するキャリアガスをH2からN2に切り替える。そして、反応炉内の温度を調節して基板9の温度が400℃以下になった時点で、反応炉内へのNH3の供給を停止する。そして、基板9の温度が室温になった後、反応炉内のパージを行い、基板9を反応炉から取り出す。こうして、図1に示す層構造を有した実施例1~3、及び比較例1の基板9を作成することができる。
【0041】
次に、上記の手順に基づいて結晶成長して層構造を形成し、窒化物半導体によって形成されたトンネル接合層15を備えた実施例1~3、及び比較例1の試料のそれぞれを電流注入可能な素子に形成する前の状態における、O(酸素)の試料の厚み方向の濃度プロファイルをSIMSにより測定した結果を図2に示す。実施例1~3、及び比較例1の試料のトンネル接合層15はMgが添加されたp++-GaN層15Aと、p++-GaN層15Aの表面に積層され、Siが添加されたn++-GaN層15Bとを有している。
ここで、SIMSの測定条件を以下に示す。測定装置:CAMECA IMS-6F、一次イオン種:Cs、一次加速電圧、5.0kV、検出領域:60μmφである。測定濃度はそれぞれイオン注入した標準試料を用いて較正した。
図2に示すように、比較例1の試料のトンネル接合層15の界面15C付近(図2の横軸における0nm付近)のO(酸素)の最大の濃度はおよそ4×1017cm-3であり、試料の厚み方向において2×1017cm-3以上の領域が少なくとも5nm以上存在する。
これに対して、実施例1~3の試料では、トンネル接合層15の界面15C付近のO(酸素)の最大の濃度が少なくとも2×1018cm-3であり、試料の厚み方向において1×1018cm-3以上の領域が少なくとも5nm以上存在する。また、実施例3の試料ではトンネル接合層15の界面15C付近のO(酸素)の最大の濃度が3×1018cm-3である。つまり、実施例1~3の試料はp++-GaN層15Aとn++-GaN層15Bとの界面のO(酸素)の濃度は少なくとも2×1018cm-3以上、3×1018cm-3以下である。そして、成長中断工程において、トンネル接合層15の形成を中断する所定の時間を3分以上とすることによって、p++-GaN層15Aの表面に反応炉内のO2(酸素)を良好に吸着させることができることがわかった。また、実施例1~3の試料(成長中断の時間が3分以上である場合)は、p++-GaN層15Aとn++-GaN層15Bとの界面15Cに吸着して取り込まれたO(酸素)の濃度がほぼ同じであることがわかった。
【0042】
次に、実施例1~3、及び比較例1の試料のそれぞれを用いて電流の注入が可能な素子の形成を行う。
【0043】
先ず、表面からの平面視において、基板9上に直径35μmの円形形状であるメサ構造20を形成する。詳しくは、フォトリソグラフィ及びドライエッチングを用いて基板9上にメサ構造20を形成する。より詳しくは、基板9上の最も表面に積層して結晶成長した第2n-GaN層16の表面に直径35μmの円形形状のフォトレジスト又は金属マスクを形成する(図示せず。)。フォトレジスト又は金属マスクが形成された直下はエッチングで除去されない。また、フォトレジスト又は金属マスクが形成されていない領域は、表面に第1n-GaN層11が露出するまでエッチングされる。露出した第1n-GaN層11には後述する第2電極22を形成する。こうして、基板9上に直径35μmの円形形状であるメサ構造20を形成する。
【0044】
次に、メサ構造20を形成した基板9をO2(酸素)雰囲気中にて、725℃で30分間アニール処理を行い、埋め込まれたp-AlGaN層13、p-GaN層14、及びトンネル接合層15のp++-GaN層15AのMgを活性化させる。ここで、活性化とはp型不純物であるMgに結合しているH(水素)を離脱させてMgを活性化させ、Mgが添加されたp-AlGaN層13、p-GaN層14、及びトンネル接合層15のp++-GaN層15Aの電気伝導性を向上させることである。こうして活性化することで、エッチングによって、側面が露出したp-AlGaN層13、p-GaN層14及びトンネル接合層15のp++-GaN層15Aのそれぞれの側面からMgを不活性化させていたHを離脱させる。
【0045】
次に、第1電極21、及び第2電極22を形成する。詳しくは、円形形状をなした第1電極21をメサ構造20の表面に形成する。また、円環状をなした第2電極22をメサ構造20の周囲を囲むように、第1n-GaN層11の露出した表面に形成する。第1電極21、及び第2電極22は、Ti/Al/Ti/Auである。また、第1電極21、及び第2電極22はそれぞれを一括して形成する。こうして、第1電極21からトンネル接合層15、及びGaInN/GaN5重量子井戸活性層12を通過して第2電極22に電流を流すことができる実施例1~3、及び比較例1の窒化物半導体発光素子を形成する。
【0046】
次に、電流の注入が可能な素子に形成された実施例1~3、及び比較例1の試料について電流電圧特性を測定した結果を図3に示す。また、トンネル接合層15の界面15CにおけるO(酸素)の濃度のピークの大きさと、電流密度が10kA/cm2における、結晶成長を中断する時間に対する駆動電圧の依存性とを図4に示す。
図4に示すように、成長中断時間が0分(比較例1)から3分(実施例1)にかけて、界面15CにおけるO(酸素)の濃度が急激に高くなる。そして、成長中断時間が3分より長くなる(実施例1~3)と界面15CにおけるO(酸素)の濃度はほぼ一定になる(○印を結ぶ曲線参照。)。
また、成長中断時間が0分(比較例1)の場合に比べて、成長中断時間が3分より長くなる(実施例1~3)と、トンネル接合層15を含む駆動電圧は大きく低減(およそ1V)し、より小さな駆動電圧を実現できることがわかった(図3、及び図4における□印を結ぶ曲線参照。)。
すなわち、MOCVD法を用いてアクセプタ(p型不純物)であるMgを2×1020cm-3以上含む層(p++-GaN層15A)を所定の厚み(2nm以上)で形成した後、MOCVD装置の反応炉から基板9を取り出すことなく、意図的にトンネル接合層15の形成を所定の時間中断する成長中断工程を実行する。そして、トンネル接合層15の界面15CにおけるO(酸素)濃度のピークの大きさを2×1018cm-3以上にする。そして、ドナー(n型不純物)であるSiを3×1020cm-3以上含む層(n++GaN層15B)を所定の厚み(10nm以上)で形成する。これにより、バンドギャップが大きく、光吸収ロスが少なく、電気抵抗が小さい窒化物半導体のトンネル接合層15を形成できることがわかった。
【0047】
このように、この窒化物半導体発光素子の製造方法はトンネル接合層15を作製する際に、p型トンネル接合層形成工程からn型トンネル接合層形成工程まで、MOCVD法を実行する反応炉内に基板9を保持して実行する。つまり、この窒化物半導体発光素子の製造方法は基板9を一度も大気に暴露すること(すなわち、成長の途中で基板9を反応炉から取り出すこと)がない。つまり、この窒化物半導体発光素子の製造方法はトンネル接合層15を形成する途中で反応炉から基板9を取り出す必要がない。
また、この窒化物半導体発光素子の製造方法のO(酸素)は原料ガスとして意図的に反応炉内に供給されたものではなく、素子を形成するために用いる原料に微量に含有されていたり外界から反応炉内に僅かにリークしたりすることによって反応炉内に少なからず存在するものである。通常、O(酸素)が半導体内に混入することは、半導体の特性の劣化を引き起こす可能性があるため極力抑制すべきものである。しかし、この窒化物半導体発光素子の製造方法は半導体内にO(酸素)が混入する現象を積極的に利用するものである。
また、この窒化物半導体発光素子の製造方法は、還元作用の高い元素であるH2を用いたMOCVD法であっても、成長中断工程を実行することによって、p型トンネル接合層の表面にO(酸素)を吸着させて、トンネル接合層15の界面15CにO(酸素)を存在させることができる。つまり、この窒化物半導体発光素子の製造方法は基板9を一度も大気に暴露せず成長中断工程を実行し、トンネル接合層15の界面15CにO(酸素)を存在させることによってトンネル接合層15の電気抵抗を小さくすることができる。
【0048】
また、この窒化物半導体発光素子は、従来の窒化物半導体発光素子のように、トンネル接合層15の界面15Cに高い濃度のO(酸素)を存在させなくても、トンネル接合層15の電気抵抗を良好に抑えることができる。このため、この窒化物半導体発光素子はO(酸素)を添加することによるトンネル接合層15の結晶性への影響を抑えることができる。
【0049】
したがって、本発明の窒化物半導体発光素子の製造方法は良好に発光することができる窒化物半導体発光素子を容易に製造することができ、本発明の窒化物半導体発光素子は良好に発光することができる。
【0050】
また、この窒化物半導体発光素子の製造方法は成長中断工程における、トンネル接合層15の形成を中断する時間は3分以上である。このため、この窒化物半導体発光素子の製造方法は、成長条件を変更するための時間(3分以上)を十分に確保することによって、成長中断工程の前後の成長条件に全く異なるものを採用し易くなる。つまり、成長中断工程において、次の層(n++-GaN層15B)の結晶成長における最適な成長条件に確実に変更することができるため、p++-GaN層15A、及びn++-GaN層15Bのそれぞれにとって最適な成長条件を採用し易くなる。このため、この窒化物半導体発光素子の製造方法はp++-GaN層15A、及びn++-GaN層15Bのそれぞれの成長条件をさらに最適化することができるため、トンネル接合層15の電気抵抗をより小さくすることができる。
【0051】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1~3に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1~3では、トンネル接合層の裏面側は一般的な青色LED構造であるが、これに限らず、高電流密度領域における電圧降下が大きく改善されることから、端面レーザダイオードや、第1n-GaN層の裏面側に、多層膜反射鏡を設けた面発光レーザ構造としても良い。
(2)実施例1~3では、p型不純物としてMgを用いているが、これに限らず、p型不純物である、Zn,Be、Ca、Sr、及びBa等であっても良い。
(3)実施例1~3では、n型不純物としてSiを用いているが、これに限らず、n型不純物である、Ge、Te等であっても良い。
(4)実施例1~3では、GaInN/GaN5重量子井戸活性層の表面にp-AlGaN層を積層して形成しているが、これに限らず、GaInN量子井戸活性層の表面にp-AlGaN層を積層して形成しなくても良い。
(5)実施例1~3では、サファイア基板を用いているが、これに限らず、窒化ガリウム基板やAlN基板等の他の基板を用いても良い。
(6)実施例1~3では、トンネル接合層のp++-GaN層の厚みを2nmとしているが、これに限らず、トンネル接合層のp++-GaN層の厚みを2nmより小さくしても良く、2nmより大きくしても良い。
(7)実施例1~3では、トンネル接合層のn++-GaN層の厚みを10nm以上としているが、これに限らず、トンネル接合層のn++-GaN層の厚みを10nmより小さくしても良い。
(8)実施例1~3では、トンネル接合層にGaNを用いているが、活性層の発光波長の長さに応じて、GaInNやAlGaNをトンネル接合層の材料として用いても良い。
(9)実施例1~3では、リークによって反応炉内に存在するO2(酸素)をトンネル接合層の界面に吸着しているが、原料ガスとしてO2やNO等を反応炉内に供給しても良い。
(10)実施例1~3では、結晶成長を中断する時間が3分以上であるが、p++-GaN層の表面によりO(酸素)が吸着しやすい条件、例えば、キャリアガスとして還元作用の高いH2を用いず、全てN2用いたり、p++-GaN層の結晶成長中よりNH3の供給量を小さくしたり、成長温度よりも低い基板温度にしたりする等で結晶成長を中断する時間をより短くすることもできる。
【0052】
9…サファイア基板(基板)
15…トンネル接合層
15A…p++-GaN層(p型トンネル接合層)
15B…n++-GaN層(n型トンネル接合層)
15C…界面
図1
図2
図3
図4