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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】吊具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/14 20060101AFI20221104BHJP
   B66C 1/24 20060101ALI20221104BHJP
   B66C 1/66 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B66C1/14 E
B66C1/24 B
B66C1/66 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018156563
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020029351
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390025999
【氏名又は名称】中川ヒューム管工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 惠光
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016211078(DE,A1)
【文献】特開平10-007372(JP,A)
【文献】特開2007-238219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴を備える対象物の吊り上げに用いられる吊具であって、
吊り上げ用のワイヤと連結する軸と、
前記軸の下部から水平方向に張出し、前記穴の側壁に接触する当接部を有する張出と、
前記軸の下部から前記張出と逆方向に張出し、前記対象物の底面に接触し載せる載置部を有するツメと、前記ツメの上方の前記軸に設けられ、前記当接部が接触する前記穴の側壁に対向する他の側壁に当接する突起と、
からなり、
前記張出方向において前記側壁との間の隙間をなくし、前記側壁方向の水平を保持することを特徴とする吊具。
【請求項2】
前記張出の当接部の下方が切欠であることを特徴とする請求項1に記載の吊具。
【請求項3】
前記ツメの下方が切欠であることを特徴とする請求項1に記載の吊具。
【請求項4】
前記張出の上方に、前記穴の前記側壁及び他の側壁間と直交する方向の別の両第二側壁に当接するプレートを設け、前記張出方向と直交する方向の前記両第二側壁との間の隙間をなくし、前記両第二側壁方向の水平を保持することを特徴とする請求項1に記載の吊具。
【請求項5】
前記吊具が、対向する前記穴に、2個一対で用いられることを特徴とする請求項1~請求項の何れか1項に記載の吊具。
【請求項6】
穴を備える対象物の吊り上げに用いられる吊具であって、
吊り上げ用のワイヤと連結する孔を備える軸と、
前記軸の下部から水平方向に張出し、前記穴の側壁に接触する当接部を有する張出と、
前記軸の下部から前記張出と逆方向に張出し、前記対象物の底面に接触する載置部を有するツメと、前記ツメの上方の前記軸に設けられ、前記当接部が接触する前記穴の側壁に対向する他の側壁に当接する突起と、
からなり、
2個一対で使用され、対向する前記穴位置で前記ツメの載置部に前記底面をそれぞれ載せ、前記張出の当接部を向き合わせ前記穴の側壁にそれぞれ接触させ、前記軸にそれぞれワイヤを連結し、前記ワイヤ2本を2個一対の間の上方で一箇所にまとめて上方向に引き上げることで、前記張出方向において前記側壁との間の隙間をなくし、前記側壁方向の水平を保持しつつ係止して、前記穴を備える対象物を吊り上げることを特徴とする吊具。
【請求項7】
前記穴を備える対象物が、穴を備える平板状の版であることを特徴とする請求項1~請求項の何れか1項に記載の吊具。
【請求項8】
穴を備える版の吊り上げ方法であって、
吊り上げ用のワイヤと連結する軸と、前記軸の下部から水平方向に張出し、前記穴の側壁に接触する当接部を有する張出と、前記軸の下部から前記張出と逆方向に張出し、前記版の底面に接触し載せる載置部を有するツメと、前記ツメの上方の前記軸に設けられ、前記当接部が接触する前記穴の側壁に対向する他の側壁に当接する突起と、
からなる穴を備える版用の吊具を2個一対で用いて、
対向する前記穴位置で前記ツメの載置部に前記底面をそれぞれ載せ、前記張出の当接部を向き合わせ前記穴の側壁にそれぞれ接触させ、前記軸にそれぞれワイヤを連結し、前記ワイヤ2本を2個一対の間の上方で一箇所にまとめて上方向に引き上げることで、前記張出方向において前記側壁との間の隙間をなくし、前記側壁方向の水平を保持しつつ係止して、前記穴を備える版を吊り上げることを特徴とする穴を備える版の吊り上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴を有する版など、穴を備える物体(対象物)用の吊具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吊具は、特許文献1等に開示のように、また対象物の側面に設けた吊り上げ用のインサートにボルトで吊具を固定して吊る方法や、吊り上げ用のフック等を対象物に取り付けておいて、それにワイヤのフックを掛けて吊る方法、又は対象物に直接ワイヤを掛けて吊り上げる方法などが行われていた。
【0003】
対象物に取り付ける吊り上げ用のフック等は、対象物の施工後の外観、機能、美観から、対象物の上面に取り付けることは好ましくない。上面に取り付けた場合は、施工後に平滑化、美化など何らかの処理が必要になる。
【0004】
また、図1の穴を備える版20のように穴20aがある場合は、穴20aにL形等のフックを掛けて吊る方法も考えられるが、吊り上げ時に外れる恐れがある。
【0005】
さらに、従来の吊具では、吊り上げ対象物を吊り上げるとき、特に、図1に示すような穴を備える版20などの平板状の形態物では、ワイヤを吊り上げ対象物の下に潜り込ませて掛けて吊る。また吊り上げ対象物を所望の位置に移動させた後にも、ワイヤの取り外しの際には、ワイヤが対象物の下に位置するため、再度吊り上げ対象物を持ち上げて外す必要があった。
【0006】
また、図1に示すような穴を備える版20などの平板状の形態では、側面にインサートを付け、ボルトにより吊具を取り付けて吊り上げた場合、設置時には吊具を外すスペースが必要となり、吊具を外した後、バールなどを使用して対象物を所定の位置に移動して設置する必要があり、その場合は設置高さの調整が難しいなどの問題もあった。
【0007】
このように、吊り上げ対象物の移動、設置作業において、フックやワイヤ等の対象物への着脱作業及び移動設置がとても負担であった。また、吊り上げ時の安全性から吊具が外れない構造とすることを考慮する必要がある。
【0008】
なお、穴を備える版20とは、雨水浸透性や芝等の植生により緑化する駐車場舗装用などに使用されるコンクリート平板ブロックであり、図1に示すように、平板状のブロックに、規則的に穴2aを穿設して、枠部20bが格子状になっているものである。
【0009】
穴を備える版20の穴20aは、ここでは、表面20eより底面20f側の開口が小さい、縦横ともに断面逆台形であり、長手方向の対向する側面20cと他の側面20c、それら間に直交する位置にある第二側面20d、20dは、いずれも水平面に対して表面20e側が開口した傾斜をしている。本願発明は、特に、このような穴を備える版20用途に最適な吊具である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-046974
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、穴を備える対象物に吊具を着脱する際に、対象物の持ち上げや吊具を外すために下ろす位置をずらす等を必要とせず、設置位置で簡易に着脱でき、吊り上げ中に吊具が外れないことと、加えて、吊り上げ時の対象物のゆれも低減できる吊具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、本発明は、上記の課題を解決するために、
(1)
穴を備える対象物の吊り上げに用いられる吊具であって、
吊り上げ用のワイヤと連結する軸と、
前記軸の下部から水平方向に張出し、前記穴の側壁に接触する当接部を有する張出と、
前記軸の下部から前記張出と逆方向に張出し、前記対象物の底面に接触し載せる載置部を有するツメと、からなることを特徴とする吊具。
(2)
前記張出の当接部の下方が切欠であることを特徴とする(1)に記載の吊具。
(3)
前記ツメの下方が切欠であることを特徴とする(1)に記載の吊具。
(4)
前記ツメの上方の前記軸に、前記当接部が接触する前記穴の側壁に対向する他の側壁に当接する突起を設け、前記張出方向において前記側壁との間の隙間をなくし、前記側壁方向の水平を保持することを特徴とする(1)に記載の吊具。
(5)
前記張出の上方に、前記穴の前記側壁及び他の側壁間と直交する方向の別の両第二側壁に当接するプレートを設け、前記張出方向と直交する方向の前記両第二側壁との間の隙間をなくし、前記両第二側壁方向の水平を保持することを特徴とする(1)に記載の吊具。
(6)
前記吊具が、対向する前記穴に、2個一対で用いられることを特徴とする(1)~(5)の何れかに記載の吊具。
(7)
穴を備える対象物の吊り上げに用いられる吊具であって、
吊り上げ用のワイヤと連結する孔を備える軸と、
前記軸の下部から水平方向に張出し、前記穴の側壁に接触する当接部を有する張出と、
前記軸の下部から前記張出と逆方向に張出し、前記対象物の底面に接触する載置部を有するツメと、からなり、
2個一対で使用され、対向する前記穴位置で前記ツメの載置部に前記底面をそれぞれ載せ、前記張出の当接部を向き合わせ前記穴の側壁にそれぞれ接触させ、前記軸にそれぞれワイヤを連結し、前記ワイヤ2本を2個一対の間の上方で一箇所にまとめて上方向に引き上げることで、係止して、前記穴を備える対象物を吊り上げることを特徴とする吊具。
(8)
前記穴を備える対象物が、穴を備える平板状の版であることを特徴とする(1)~(7)の何れかに記載の吊具。
(9)
穴を備える版の吊り上げ方法であって、
吊り上げ用のワイヤと連結する軸と、前記軸の下部から水平方向に張出し、前記穴の側壁に接触する当接部を有する張出と、前記軸の下部から前記張出と逆方向に張出し、前記版の底面に接触し載せる載置部を有するツメと、からなる穴を備える版用の吊具を2個一対で用いて、
対向する前記穴位置で前記ツメの載置部に前記底面をそれぞれ載せ、前記張出の当接部を向き合わせ前記穴の側壁にそれぞれ接触させ、前記軸にそれぞれワイヤを連結し、前記ワイヤ2本を2個一対の間の上方で一箇所にまとめて上方向に引き上げることで、係止して、前記穴を備える版を吊り上げることを特徴とする穴を備える版の吊り上げ方法。
構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上の構成であるので、以下の効果を奏する。
すなわち、穴を備える対象物、例えば、穴を備える版の吊具は、ワイヤによる吊り上げ力で、当接部が穴を備える版の穴の側壁に押圧係止され、ツメで穴を備える版の底面をささえることができるので、対象物への着脱が容易で、吊具が外れることなく安全である。
【0014】
さらに、着脱の際に対象物の持ち上げを必要としないため、対象物を吊り上げ設置位置に直接下ろすことが出来、作業者の着脱作業が軽減する。加えて、吊り上げ時の対象物の揺れも低減できる形状、構造を備えているため、吊り上げ作業の安全性が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明である吊具によって吊り上げ可能な対象物である、穴を備える版の説明図である。図1(A)が平面図、(B)がA-A‘矢視断面図である。
図2】本発明である吊具の第一の実施形態の正面図である。
図3】本発明である吊具の吊り上げ原理の説明図である。
図4】本発明である吊具の第二の実施形態の説明図である。図4(A)が正面図、(B)は平面図、(C)は底面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図であり、背面図は正面図と対称に表される。
図5】本発明である吊具の第二の実施形態で穴を備える版に係止する手順の説明である。
図6】本発明である吊具の第二の実施形態の使用状態図(A)で、その断面模式図を(B)に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づき本発明について詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
図2,3に示すように、本発明の第一の実施形態である吊具1は、軸2と、張出3と、ツメ4とからなり、吊り上げる対象物、ここでは穴を備える版20の吊り上げに用いられる。
【0018】
軸2は、吊り上げ用のワイヤ6と連絡する孔2aを備える。さらに孔2aには、必要に応じて、ワイヤ6との連結を容易にするリング5などを備える。
【0019】
張出3は、軸2の下部から水平方向に張出し、穴20aの側壁20cに接触する当接部3aを有する。当接部3aは、側壁20cに当接し、吊具1の外れを防止する。さらに、当接部3aの下方に、角を切り落とした切欠3bを形成すると、吊具1を穴20aに挿入する際に邪魔にならならず、スムーズに装着できる。
【0020】
ツメ4は、軸2の下部から張出3と逆方向に、ここでは一段低い位置に、腕4aを介して張出し、穴を備える版20の底面20fに接触し載せる載置部4bを有する。また、載置部4bの下方に、角を切り落とした切欠4cを形成すると、吊具1を穴20aに挿入する際に邪魔にならならず、スムーズに装着できる。
【0021】
このようにしてなる吊具1は、例えば、図3に示すように、2個一対で、穴を備える版20の吊り上げに使用される。ツメ4の載置部4bに、対向する穴20位置(左右にずれていても問題ない、前後左右、水平バランスが取れる位置が望ましい。)で底面20fを載せる。
【0022】
その際、2個一対で、張出3の当接部3aを向き合わせ、穴20aの側壁20cにそれぞれ接触する。孔2aにそれぞれワイヤ6を接続し、2本のワイヤ6を、2個一対の吊具1の間の上方で一箇所にまとめて、上方向に引き上げる。それにより、吊具1は、穴を備える版20の底面20fにツメ4が係止し、穴20aの側壁20cにその引き上げ力により当接部3cが押圧係止され、外れない。
【0023】
このようにして、吊具1を穴を備える版20の穴20aに挿入して吊り上げると、図3に示すように、Ls<Lr、θ<90°、X>0、h>0の前提で、吊り上げ力Pは、穴を備える版20の中央に向かって斜めに引っ張られる。このPの力によって吊り上げる上方向力Pと水平方向の力(分力)Pが作用する。
【0024】
このPによって吊具1は、ツメ4を中心に回転し、当接部3aが、穴20aの側壁20cに突き当たり、反力Rが発生し、ツメ4側にそれに対応するRが発生して穴20aから外れないように働く。吊具1のツメ4にRの力が作用して吊り上げ力となる。
【0025】
なお、穴20aは、上方に向かって開口している形状であるが、垂直の側壁でもツメの載置部4bの基部の位置と当接部3aの距離が穴の20cの間隔より長く、穴20a内に斜めの状態で収まる長さであれば、同様に係止することができる。
【0026】
このように、ツメ4の位置と、張出3に水平力が作用することによって、吊具1のツメ4が穴を備える版20の穴20aから外れることが無く、安全に、対象物を吊り上げることができる。なお、対象物の形状によっては、1つの吊具1で吊り上げることもできる。
【実施例2】
【0027】
図4-6に示すように、本発明の第二の実施形態である吊具11は、実施例1において、(1)突起2bと、(2)プレート3cを備える点が異なる。プレート3cの幅は、穴20aの第二側壁20dとの距離(クリアランス)を少なくした幅とすることによって、吊り上げ時の対象部の揺れを低減できる。その他の点は、実施例1と同様であるので、それらの説明を省略する。
【0028】
突起2bは、穴を備える版20を地面上に設置した場合にツメ4を外しやすくするためのもので、側壁2cに当接させ、てこの原理でツメ4を外す。
【0029】
プレート3cは、張出3の上方に設けられ、穴20aの側壁20cと他の側壁20c間と直交する方向の別の両第二側壁20dの上部に当接する。それにより、張出3の方向と直交する方向の両第二側壁20dとの間の隙間をなくし、両第二側壁20dの方向の揺れを低減させることができる。
【0030】
このようにしてなる吊具11は、図5に示す(A)→(C)の手順によって、穴を備える版20に、装着、係止される。したがって、穴を備える版20が地面上に設置された場合は、着脱の際に、穴を備える版20の持ち上げは必要ない。極めて簡単に、本発明の吊具11を、穴を備える対象物に係止できる。吊具1も同様である。
【0031】
一般に、穴20aは、平板状の吊具11の厚みに対して横方向に幅が広い。吊り上げ時に、穴を備える版20の水平を保持するためには、吊具の穴20a内での傾きを防止する必要がある。
【0032】
そこで、図6に示すように、吊具11は、穴20aの上部で、プレート3cが第二側壁20dに当接し、吊具11と第二側壁20dとの隙間を少なくし、吊具11の傾きを抑制する。それにより、吊具11によって、吊り上げ時、穴を備える版20の水平を保持して、一層安全な設置作業が可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1 吊具
2 軸
2a 孔
2b 突起
3 張出
3a 当接部
3b 切欠
3c プレート
4 ツメ
4a 腕
4b 載置部
4c 切欠
5 リング
6 ワイヤ
11 吊具
20 穴を備える版
20a 穴
20b 枠部
20c 側壁
20d 第二側壁
20e 表面
20f 底面
図1
図2
図3
図4
図5
図6