(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】局所排気装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20221104BHJP
B01L 1/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
F24F7/06 C
B01L1/00 A
(21)【出願番号】P 2018180582
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593131839
【氏名又は名称】アンデックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】三橋 英雄
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-263449(JP,A)
【文献】特開2000-334314(JP,A)
【文献】登録実用新案第3197677(JP,U)
【文献】特開2007-014830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0163978(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
B01L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所的な換気を行う局所排気装置において、
作業テーブルと計量テーブルとが、前記局所排気装置の正面に隣り合って
並んで配置されており、
前記作業テーブルと計量テーブルの上の空間を囲う囲いフードであって、前記作業テーブルの正面側に作業開口を有し、
前記計量テーブルに置かれた計量装置が視認できるように前記計量テーブルの正面壁は透視可能な透明パネルにより構成され、
前記作業テーブルは上下に空気を透過する板材により構成され、前記計量テーブルは上下に空気が通過できない板材で構成され、
前記作業テーブルの下側の機械室に空気流を発生するファンが設けられ、
前記作業テーブルと計量テーブルとの間の空間の一部を封鎖する邪魔板であって、囲い式フードにより囲われた作業テーブル上の空間と計量テーブル上の空間を、邪魔板の上縁より上については互いに連通させ、上縁より下側は連通が遮られており、
前記邪魔板の上縁の高さは、前記作業開口に差し入れた腕が前記邪魔板の上縁を通過して前記計量テーブル上の空間に差し込まれて前記計量装置を利用することが可能な高さであって、かつ、計量テーブル側の前記邪魔板の上縁より下の空間は風に対する袋小路を構成し、前記作業開口から吸い込まれた空気が
前記邪魔板により連通が遮られて前記計量装置の計量に影響するセンサ部分を流れることができないことを特徴とする局所排気装置。
【請求項2】
請求項1の局所排気装置において、前記囲いフードは、前記局所排気装置の左右壁及び天井が透明のパネルで構成されていることを特徴とする局所排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤を使用する調合作業に対応するベンチ型局所排気装置に関し、特に手調色による有機溶剤の調合作業の作業性を損なわずに囲い式排気により安全性を改善した局所排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調合作業では、赤、黄、青の三原色の塗料や、白、黒の塗料等を適当に調合して目的とする塗料を作成することが行われる。黒や赤等の塗料は、たとえ誤差が僅かであっても最終的に調合される製品としての塗料の色には極めて大きな影響を与えることが知られている。したがって、こうした塗料調合作業において、僅かな誤差が最終製品の色に大きく影響を与える塗料を調合する場合には、計量を精密に行った上で調合する必要がある。この計量は、塗料の調合作業を手作業により行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-71133公報
【文献】特開平11-80625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗料調合作業は、ほとんどのケースが有機溶剤作業に該当する。有機溶剤中毒予防規則(第二条、第一項)では、一定量の有機溶剤を使用する作業を有機溶剤作業として定めており、局所排気装置を用いた調合が義務付けられている。有機溶剤中毒予防規則、第三章、第十六条によれば、局所排気装置は、例えば囲い式フードを備えた局所排気装置を利用する場合には0.4メートル/秒の制御風速、外付けフードの局所排気装置の場合は例えば下方吸引型であれば0.5メートル/秒の制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない旨規定されている。
【0005】
上記したように、たとえ誤差が僅かであっても最終的に調合される製品としての塗料の色には極めて大きな影響を与えるような塗料については、計測装置により精密に重量を測定する必要がある。このような計測作業も有機溶剤作業に該当するため、制御風速の空気流の存在する環境下で計測作業を行わなければならない。ところが、計測器による計測は極めて微妙であり、所定の制御風速の空気流が計測に影響を与えてしまうことが問題であった。
【0006】
そこで本発明は、所定の制御風速を満たした環境を提供し、かつ極めて正確に塗料の計測ができる局所排気装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、局所的な換気を行う局所排気装置において、
作業テーブルと計量テーブルとが、前記局所排気装置の正面に隣り合って並んで配置されており、
前記作業テーブルと計量テーブルの上の空間を囲う囲いフードであって、前記作業テーブルの正面側に作業開口を有し、前記計量テーブルに置かれた計量装置が視認できるように前記計量テーブルの正面壁は透視可能な透明パネルにより構成され、
前記作業テーブルは上下に空気を透過する板材により構成され、前記計量テーブルは上下に空気が通過できない板材で構成され、
前記作業テーブルの下側の機械室に空気流を発生するファンが設けられ、
前記作業テーブルと計量テーブルとの間の空間の一部を封鎖する邪魔板であって、囲い式フードにより囲われた作業テーブル上の空間と計量テーブル上の空間を、邪魔板の上縁より上については互いに連通させ、上縁より下側は連通が遮られており、
前記邪魔板の上縁の高さは、前記作業開口に差し入れた腕が前記邪魔板の上縁を通過して前記計量テーブル上の空間に差し込まれて前記計量装置を利用することが可能な高さであって、かつ、計量テーブル側の前記邪魔板の上縁より下の空間は風に対する袋小路を構成し、前記作業開口から吸い込まれた空気が前記邪魔板により連通が遮られて前記計量装置の計量に影響するセンサ部分を流れることができないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、邪魔板の上縁より下は、ファンによる空気流が邪魔板により抑制されているから、計量装置における空気流による影響が抑止される。また、作業員の腕は作業テーブルの上を経由して計量テーブルの上に差し込まれているから、作業員は有機溶剤に対して曝露しないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例の局所排気装置の斜視図を示し、
図1Aは動作状態、
図1Bは計測装置を設定する際の状態を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
図1Aにおいて、局所排気装置1は、作業者が有機溶剤を取り扱う際の曝露を防止するため、局所的な換気を行うための装置である。局所排気装置1は、パンチングメタル等上下に空気を通過する板材により構成された作業テーブル2と、作業テーブル2と同じ又は同じような高さ位置であって、作業テーブル2の隣に並んで配置される計量テーブル3を有している。計量テーブル3は孔のない板材で構成されており、上下に空気が通過できない。作業テーブル2と計量テーブル3は、局所排気装置1の正面に隣り合って配置されている。有機溶剤などの取り扱いは作業テーブル2上で行われる。計量テーブル3には、計量装置が置かれる。
【0011】
作業テーブル2と計量テーブル3の上側の空間は、後壁4a、左壁4c(図の紙面に向かって)、右壁4b、天井4d、正面壁4e、4fを有する囲い式フード4により囲われている。囲い式フード4は、図面から容易に理解出来るように、立方体状に組まれた適当なフレームが後壁4a、左壁4c、右壁4b、天井4d、正面壁4e、4fを支持枠として支持している構成である。正面壁4eは、天井4dと連続し、作業テーブル2上と計量テーブル3上の空間の上側正面を塞ぐ。また、正面壁4fは、正面壁4eと連続し、計量テーブル3上の空間の下側正面を塞ぐ。
【0012】
作業テーブル2上の空間の下前側には、局所排気装置1の前側から作業者が手を差し込んで作業できるように作業用開口4gが大きく開いている。正面壁4fは、局所排気装置1の前側で作業する作業者が計量テーブル3上の計量装置8を視認できるように透明パネルが使用されている。なお、囲い式フード4の全壁若しくは後壁以外の全壁を透明パネルで構成すれば、視認性はさらに向上する。
【0013】
局所排気装置1は、作業テーブル2上の空気を、作業テーブル2を透過させて吸い込むプル型の排気装置である。外気は作業用開口4gから取り込まれ、矢印aに示すように作業テーブル2に吸い込まれる。作業テーブル2上と計量テーブル3との間の空間の一部を封鎖する邪魔板9が設けられている。囲い式フード4により囲われた作業テーブル2上の空間と計量テーブル3上の空間は、邪魔板9の上縁9aより上については互いに連通しているが、上縁9aより下側は邪魔板9の箇所だけは連通が遮られている。この結果、邪魔板9の上縁9aより下に位置する計量テーブル3側の空間は風の袋小路を構成し、作業用開口4gから吸い込まれた空気が計量装置8の測定位置(計量に影響するセンサ部分)を流れることができない。
【0014】
作業テーブル2の下には、空気流を発生するファン10(
図2)を格納する機械室5が設けられており、局所排気装置1の正面の扉6を開けてファン10のメンテナンスができるようになっている。機械室5の右側面には、ファン10から吹き出された空気を吐き出すダクト7が設けられている。このダクト7には、屋外に設けられた排気口に続くダクトが接続される(図示せず)。
【0015】
図1Bは、計量テーブル3の正面壁4fの透明パネルを取り外し、計量装置8を設置する様子を示している。正面壁4fは、留具11により囲い式フードから取り外したり、取り付けたりすることができるようになっている。
【0016】
図2を用いて、局所排気装置1の作用について説明する。
図2Aは正面図であり、
図2B及び
図2Cの断面図における切断場所を示している。
図2Bは局所排気装置1を作業テーブル側で縦に切断して、ファンの方を眺めたX-X断面を示している。機械室5の内部は仕切板5aにより、作業テーブル2を経由してファンに吸い込まれる経路と、ファンが設置される場所とに分割されている。ファンの吸い込み口は、局所排気装置1の後ろ側に向いて設けられており、局所排気装置1の正面の作業用開口から進入した空気が作業テーブルの後ろ側の奥まで到達し、一様な空気流を形成するように配置されている。
【0017】
図2Cは、局所排気装置1を作業テーブル2側で横に切断して、上から眺めている。図中、シンボル的に示した腕P、Qは、作業員の腕であって、腕Pが作業テーブル上の作業の様子を示している。作業用開口4gは、作業員が作業テーブル2上に腕Pを挿入することに使用される。計量テーブル3の上の計量装置8を利用するときには、作業員は腕Qを作業用開口4gと作業テーブル2上の空間及び邪魔板9の上縁9aを経由して計量テーブル3上の空間に差し込む。邪魔板9の上縁9aより下は、作業テーブル2が空気を機械室5側のファン10への流れを止めている。また、計量テーブル3上の空間ではファン10による作業テーブル2への空気流の影響が邪魔板9により抑制されている。よって、計量装置8の測定位置においては、風にとっては行き止まりの袋小路空間となり空気流による影響が抑止される。また、腕Qは、作業テーブル2の上を経由して計量テーブル3の上に差し込まれているから、作業員は、有機溶剤に対して曝露しない。また、計量テーブル3の正面壁4fは透明パネルであるため、視認しやすく計量作業が容易にできるという利点がある。
【0018】
上記実施例においては、邪魔板9の上縁9aより下の空間に風に対する袋小路を構成したが、計測作業の後に、この場所の換気が必要であるならば、計測作業以外は換気するようにしても良い。例えば、計量テーブル3をパンチングメタルと孔無し板の二重にして、計測作業以外では孔無し板を取り外す構成にしても良い。また、本実施例の局所排気装置1は、プル型の排気装置であったが、天井4dにプッシュ型のファンを取り付けてプッシュプル型の局所排気装置としても良い。この場合、天井4dからの空気流が計量テーブル3側に流れないように、天井4dから邪魔板9の上縁9aへ向かって延びる整流板を別途設けて置くのが良い。この場合、邪魔板9と整流板との間に空間を開けておき、作業員は腕Qを作業用開口4gと作業テーブル2上の空間及び邪魔板9と整流板の間を経由して計量テーブル3上の空間に差し込む。また、本実施例においては、右効きの仕様になっているが、作業テーブル2と計量テーブル3の左右を入れ替えて左効きの仕様にしても良い。上記実施例においては、計量テーブル3は孔のない板材で構成されており、上下に空気が通過できないように構成したが、作業テーブル2と同じくパンチメタルとして、空気を通さない別の板を下側に配置しても良い。
【符号の説明】
【0019】
1 局所排気装置
2 作業テーブル
3 計量テーブル
4 囲い式フード
4a 後壁
4b 右壁
4c 左壁
4d 天井
4e、4f 正面壁
4g 作業用開口
5 機械室
5a 仕切板
6 扉
7 ダクト
8 計量装置
9 邪魔板
9a 上縁
10 ファン
11 留具