(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】薬剤塗布器
(51)【国際特許分類】
A01M 21/04 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
A01M21/04 D
(21)【出願番号】P 2020116183
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000130710
【氏名又は名称】株式会社サンエー
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】大塚 庄吾
(72)【発明者】
【氏名】梁瀬 俊之
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-15661(JP,A)
【文献】特開2007-117010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0044909(US,A1)
【文献】特開昭63-230028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を収容保持する容器と、
所定方向に伸縮可能に構成されたジャバラ部と、
前記ジャバラ部に取り付けられた摺動案内具と、
前記ジャバラ部に収容保持された泡発生体と、
空気逆止弁と、
薬液を前記容器から前記ジャバラ部へ供給する薬液供給手段と、
前記摺動案内具を前記所定方向に摺動させることにより前記ジャバラ部を伸縮させる駆動手段と、を備え、
前記ジャバラ部が伸張すると、前記空気逆止弁を介して外部の空気が前記ジャバラ部に導入され、
前記ジャバラ部が収縮すると、前記泡発生体が圧縮されることにより前記ジャバラ部内の薬液と空気とが混合して泡状となって前記ジャバラ部から排出され、
前記駆動手段は、モータと、前記モータの回転駆動力を前記摺動案内具に伝達して前記摺動案内具を前記所定方向に摺動させる駆動伝達機構と、を備えることを特徴とする薬剤塗布器。
【請求項2】
前記駆動手段は更に操作スイッチを備え、
前記操作スイッチが操作されると、前記駆動手段は前記ジャバラ部を収縮させ、
前記操作スイッチへの操作が解除されると、前記駆動手段は前記ジャバラ部を伸張させることを特徴とする請求項1に記載の薬剤塗布器。
【請求項3】
前記駆動手段は更に連続操作部を備え、
前記連続操作部が操作されると、前記駆動手段は前記ジャバラ部を連続的に伸縮させ、
前記連続操作部への操作が解除されると、前記駆動手段は前記ジャバラ部の伸縮を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤塗布器。
【請求項4】
前記駆動手段は、操作スイッチと、センサスイッチと、を更に備え、
前記駆動伝達機構は、前記モータの出力軸と同期して回転する回転体を備え、
前記操作スイッチが操作されると、前記モータが通電されて前記出力軸と同期して前記回転体が回転し、前記回転体が第1回転角度位置に達すると、前記センサスイッチがこれを感知して前記モータへの通電を停止させ、
前記操作スイッチへの操作が解除されると、前記モータが通電されて前記出力軸と同期して前記回転体が回転し、前記回転体が第2回転角度位置に達すると、前記センサスイッチはこれを感知して前記モータへの通電を停止させることを特徴とする請求項1に記載の薬剤塗布器。
【請求項5】
前記薬液供給手段は前記モータにより回転駆動される回転ポンプを備えることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の薬剤塗布器。
【請求項6】
前記ジャバラ部と連通する泡搬送管を更に備え、
前記ジャバラ部で泡状とされた薬液は前記泡搬送管へ排出され、
前記ジャバラ部と前記泡搬送管の間には泡逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の薬剤塗布器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を対象物に塗布するための薬剤塗布器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、噴霧器を用いた薬剤の散布が行われている。このようにして散布される薬剤としては、雑草等を駆除するための除草剤や、虫や虫の卵等を駆除するための殺虫剤、菌を死滅させるための殺菌剤等が挙げられる。しかしながら、噴霧器を用いて薬剤を散布すると、雑草等の対象物だけでなく、その周辺(例えば、近くの有用作物や樹木、土壌、川、湖等)にも薬剤が散布されてしまい、また散布作業者も被爆するおそれがある。
【0003】
そこで、除去すべき雑草等に薬剤を直接塗布するための装置が種々提案されている。例えば、特許文献1には、薬液タンクから塗布器ローラに滴下された除草剤を雑草に直接塗布する除草ローラ器具が開示されている。また、特許文献2には、往復ポンプによって薬液タンクから2本の塗布ローラに除草剤を供給し、2本の塗布ローラで雑草を挟んで除草剤を雑草に直接塗布する除草剤塗布器が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の除草ローラ器具や特許文献2に開示の除草剤塗布器では、塗布量のコントロールが難しく、また使用する薬剤の種類によっては雑草に薬効成分が十分に浸透しないという問題があった。
【0005】
このような問題点を解決するものとして、所定量の除草剤を泡状にして雑草に直接塗布する塗布装置が提案されている(例えば、特許文献3)。この塗布装置は、上アゴと下アゴの開閉動作に連動するピストンを備え、上アゴと下アゴの一回の開閉運動で薬液を所定量だけ空気混合体に供給して泡状とし、これを茎葉に塗布する構成とされている。
【0006】
このような塗布装置であれば、塗布量のばらつきは生じず、また除草剤を泡状にして塗布するので垂れ落ちがなく、雑草表面に絡みつくので除草剤の滞留時間が長くなり、薬効成分を雑草に十分に浸透させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-220994号公報
【文献】特開2007-117010号公報
【文献】特開2011-15661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に開示の塗布装置は、作業者が上アゴと下アゴを握って開閉させる構造であることから、広範囲にわたり多くの雑草を駆除しようとすると握力が低下して疲れるといった作業性の問題があった。また、疲れてくると注意力も散漫になることから、作業ミスによって有用作物や土壌、水面等を被爆してしまう恐れもある。
【0009】
本発明は、より作業効率の良い薬剤塗布器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる薬剤塗布器は、薬液を収容保持する容器と、所定方向に伸縮可能に構成されたジャバラ部と、前記ジャバラ部に取り付けられた摺動案内具と、前記ジャバラ部に収容保持された泡発生体と、空気逆止弁と、薬液を前記容器から前記ジャバラ部へ供給する薬液供給手段と、前記摺動案内具を前記所定方向に摺動させることにより前記ジャバラ部を伸縮させる駆動手段と、を備え、前記ジャバラ部が伸張すると、前記空気逆止弁を介して外部の空気が前記ジャバラ部に導入され、前記ジャバラ部が収縮すると、前記泡発生体が圧縮されることにより前記ジャバラ部内の薬液と空気とが混合して泡状となって前記ジャバラ部から排出され、前記駆動手段は、モータと、前記モータの回転駆動力を前記摺動案内具に伝達して前記摺動案内具を前記所定方向に摺動させる駆動伝達機構と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる薬剤塗布器によれば、モータの回転駆動力によりジャバラ部の伸縮を行うので、作業者は長時間に亘って作業を行っても疲れにくく、作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る薬剤塗布器の使用状態を示す図。
【
図2】(a)は
図1に示す薬剤塗布器の内部構造を示す概略図、(b)は薬剤塗布器が備える駆動手段及びその周辺を示す分解斜視図。
【
図3】
図1に示す薬剤塗布器の内部構造を示す断面図。
【
図5】
図1に示す薬剤塗布器が備えるレバー装置を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る薬剤塗布器について説明する。
図1を参照して、本実施形態の薬剤塗布器1は対象物に薬剤を塗布するための装置であり、対象物としては植物や、虫、虫の卵等が挙げられる。また薬剤としては除草剤や植物成長剤、殺虫剤、殺菌剤等が挙げられる。ここでは対象物として雑草W、薬剤として除草剤を例に説明する。また、薬剤には泡立ちを良くするための添加物(界面活性剤等)が必要に応じて添加されている。
【0014】
薬剤塗布器1は、液状の薬剤(薬液)を収容する容器2と、薬液を泡状にするための泡発生器3と、泡状の薬液が搬送される泡搬送管4と、電源部5と、を備える。
図2に示す様に、容器2は、薬液を収容する容器本体21と、容器本体21の上部開口を覆う蓋22と、ホース23と、を備える。蓋22にはホース23が挿通される貫通孔22aが設けられ、貫通孔22aの内周面にはパッキン24が設けられている。これにより、容器2が横転等しても薬液が貫通孔22aから漏洩するのを防止している。また、蓋22には逆止弁25が設けられ、後述のように泡発生器3が容器2から薬液を吸入したときに容器2内が減圧するのを防止している。
【0015】
ホース23の一端23aは容器本体21の底部に到達するように設置され、ホース23の他端には泡発生器3に連結されるホース金具23bが設けられている。更に、容器2には吊り紐26が取り付けられており、作業者Pは吊り紐26を首や肩に掛けて容器2を携帯できるようになっている。
【0016】
泡発生器3は、本体カバー31と、泡発生部6と、泡発生部6に薬液を供給するための回転ポンプ(薬液供給手段)7と、駆動手段8と、把持部9と、泡発生部6に空気を供給するための空気取込具10と、を備える。
【0017】
図2及び
図3を参照して、泡発生部6は、本体カバー31にねじ止め固定されたジャバラ取付具61と、前後方向(所定方向)D1に伸縮可能な中空のジャバラ部62と、摺動案内具63と、ジャバラ部62に収容された泡発生体としてのスポンジ64と、を備える。
図3に示す様に、ジャバラ部62の一端(後端)は取付ネジ65によりジャバラ取付具61に固定され、取付ネジ65の中央には回転ポンプ7からの薬液を通過させるための貫通孔65aが設けられている。摺動案内具63はジャバラ部62の他端(前端)に取り付けられ、本体カバー31に前後方向D1に摺動自在に保持されている。
【0018】
かかる構成におおいて、摺動案内具63が前後方向D1に摺動すると、ジャバラ部62が伸縮(蠕動)し、ジャバラ部62内部のスポンジ64が圧縮/復元される。このようにスポンジ64が圧縮/復元されることにより薬液と空気とが混合されて泡が発生する。詳細は後述する。
【0019】
回転ポンプ7は一般的な容積型のロータリーポンプであり、円形のケーシング71内をおむすび型のロータ(図示せず)が回転することにより、薬液を吸入口72から吸入して吐出口73から吐出するように構成されている。回転ポンプ7の吐出口73はホースH1、ジャバラ取付具61、及び取付ネジ65を介してジャバラ部62に連通している。
【0020】
図2を参照して、駆動手段8は、回転ポンプ7を回転駆動させるためのモータMと、モータMの回転駆動力を摺動案内具63に伝達して摺動案内具63を前後方向D1に摺動させる駆動伝達機構80と、を備える。モータMは、乾電池等のバッテリで駆動する小型直流モータである。
【0021】
駆動伝達機構80は、モータMの出力軸Maに装着された第1平歯車81と、第1平歯車81と噛合する第2平歯車82と、第2平歯車82の上面に設けられたクランクピン83と、連結板84と、第2平歯車82と同軸上に設けられた略半円形のセンサ用カム85と、を備える。第2平歯車82は第1平歯車81よりも大径とされている。連結板84の一端(後端)はクランクピン83に回転自在に取り付けられ、その他端(前端)は摺動案内具63に回転自在に取り付けられている。
【0022】
かかる構成において、モータMが駆動すると、回転ポンプ7が回転駆動すると共に、第1平歯車81、第2平歯車82、及びセンサ用カム85も回転する。そして、第2平歯車82の回転に伴い連結板84が前後方向D1に摺動し、摺動案内具63を前後方向D1に摺動させる。
【0023】
図3を参照して、把持部9は、本体カバー31の後端に装着された中空の把持部本体91と、把持部本体91の後端内部に設けられた接続金具92と、を備える。接続金具92の前端はホースH2を介して回転ポンプ7の吸入口72に連結され、接続金具92の後端には取付ネジ93が設けられ、この取付ネジ93に上述のホース金具23bが着脱自在に取り付けられている。これにより、回転ポンプ7の吸入口72は、ホースH2、接続金具92、ホース金具23b、及びホース23を介して容器本体21に連通している。また、接続金具92の内部には空気逆止弁94が設けられ、取付ネジ93からホース金具23bを取り外した際に泡発生部6から薬液が逆流して漏れるのを防止している。空気逆止弁94としては、例えばダックビルバルブを用いることができる。
【0024】
空気取込具10はジャバラ部62の先端に接続されており、ジャバラ部62と連通する中空の空気取込本体11と、空気取込本体11の前端に設けられた泡逆止弁12と、泡逆止弁12の前方に設けられた取付ネジ13と、空気取込本体11の中間部に設けられた空気逆止弁14と、を備える。空気逆止弁14としては、例えばダックビルバルブを用いることができる。
【0025】
上述のようにジャバラ部62が収縮してスポンジ64が圧縮されると、ジャバラ部62内の薬液が空気と混合して泡状になる。このように泡状になった薬液は、団塊泡Eとなって空気取込具10を介して泡搬送管4へ送り出される。次にジャバラ部62が復元すると、泡逆止弁12により団塊泡Eが泡搬送管4から逆流するのが防止されると共に、ジャバラ部62内の陰圧によって空気逆止弁14を介して外部から空気が取り込まれ、ジャバラ部62内に供給される。即ち、空気逆止弁14は、ジャバラ部62が収縮するときは閉じ、復元するときは開いて空気を取込み、泡逆止弁12は、ジャバラ部62が復元(伸張)するときは閉じ、収縮するときは開いて団塊泡Eを送り出す。
【0026】
泡搬送管4の基端(後端)には、取付ネジ13と嵌合するカップリング41が設けられており、これにより泡搬送管4が空気取込具10に着脱自在に連結されている。また、泡搬送管4の先端(前端)には金網42が設けられ、泡発生部6から送り出された団塊泡Eの垂れ落ちを防止している。更に、金網42の前方には当て具43が着脱可能に設けられている。当て具43はY字形状を有し、雑草Wの茎を捉えやすくし、薬液を目的とする適所に塗布しやすくするものである。なお、本実施形態の泡搬送管4は長尺管から構成されている。
【0027】
このように、本実施形態においては、薬液は回転ポンプ7により容器2から吸入されてジャバラ部62へ供給される。また、ジャバラ部62が圧縮状態から復元(伸張)すると、ジャバラ部62の内部圧力が陰圧となることから、外部の空気が空気逆止弁14を介してジャバラ部62へ導入される。この状態からジャバラ部62が収縮して内部のスポンジ64が圧縮されると、ジャバラ部62内部で空気と薬液とが混合されて泡状(団塊泡E)となり、泡搬送管4へ排出される。このようなジャバラ部62の収縮と伸張(蠕動運動)の繰り返しによって複数の団塊泡Eが順次生成され、泡搬送管4内をところてん式に移動して先端から吐出される。
【0028】
図2を参照して、電源部5は、複数個のバッテリ(図示せず)を内蔵するバッテリケース51を備え、バッテリケース51には差込口52が設けられ、この差込口52に電源コードCの取出用プラグC1が差し込まれて泡発生器3に接続される。
【0029】
駆動手段8は更に、操作スイッチS1と、センサスイッチS2と、連続操作部としてのレバー装置Lと、を備える。操作スイッチS1は把持部9の前方に設けられた押ボタンS11を備える。
【0030】
センサスイッチS2は、回転体としてのセンサ用カム85の回転を感知するものであって、センサ用カム85の下方に位置するケーシングS21と、ケーシングS21に支持された押圧部材S22と、押圧部材S22の下方に配置された被押圧部S23と、を備える。押圧部材S22は、その基端部S22aを中心に上下方向に揺動可能とされ、第2平歯車82に向けて付勢されている。
【0031】
かかる構成において、センサ用カム85が第2平歯車82と一体的に回転して押圧部材S22の先端部に接触すると、押圧部材S22はセンサ用カム85により下方に向けて押圧され、基端部S22aを中心に揺動し、被押圧部S23を押し下げる。センサ用カム85が更に回転して押圧部材S22から離隔すると、センサ用カム85による押圧部材S22に対する押圧が解除され、押圧部材S22は基端部S22aを中心に揺動し、元の姿勢に復帰する。これにより被押圧部S23に対する押圧も解除される。
【0032】
換言すると、センサスイッチS2はセンサ用カム85の回転角度位置を感知するものであって、回転するセンサ用カム85が所定の第1回転角度位置に達すると、押圧部材S22がセンサ用カム85により押圧されることによりこれを感知し、センサ用カム85が更に回転して所定の第2回転角度位置に達すると、押圧部材S22がセンサ用カム85から離隔することによりこれを感知する。
【0033】
図4に示す様に、操作スイッチS1は、可動接点T0と一対の固定接点T1,T2を有するc接点方式のスイッチS10を有し、押ボタンS11の操作に応じて固定接点T1,T2に対する可動接点T0の接続状態が切り替わる。通常は
図4(a)に示すように可動接点T0が固定接点T1に接続された状態に維持され、押ボタンS11が押された状態では
図4(b)に示す様に可動接点T0が固定接点T2に接続され、押ボタンS11に対する押下が解かれると
図4(a)に示すように可動接点T0が固定接点T1に接続された状態に復帰する。
【0034】
また、センサスイッチS2は可動接点T5と一対の固定接点T3,T4を有するc接点方式のスイッチS20を有し、被押圧部S23の状態に応じて固定接点T3,T4に対する可動接点T5の接続状態が切り替わる。通常は
図4(a)に示すように可動接点T5が固定接点T4に接続された状態に維持され、被押圧部S23が押下された状態では
図4(c)に示す様に可動接点T5が固定接点T3に接続され、被押圧部S23に対する押下が解かれると
図4(a)に示す様に可動接点T5が固定接点T4に接続された状態に復帰する。
【0035】
そして、電源部5(
図2)に接続されたプラス電源は、可動接点T0に接続され、マイナス電源はモータMに接続されている。更に、固定接点T1は固定接点T3と常時接続され、固定接点T2は固定接点T4と常時接続され、可動接点T5はモータMと常時接続されている。
【0036】
よって、
図4(a)に示す初期状態では、可動接点T0が固定接点T1に接続され、可動接点T5が固定接点T4に接続されているため、モータMは通電されていない。この状態で押ボタンS11が押されると、
図4(b)に示す様に可動接点T0が固定接点T2に接続される。このとき可動接点T5は固定接点T4に接続されているため、モータMが通電されて駆動する。このようにしてモータMが駆動すると、回転ポンプ7が回転駆動して薬液がジャバラ部62に供給される。これと同時に第1及び第2平歯車81,82が回転して摺動案内具63が後方に摺動し、ジャバラ部62が収縮する。その結果、団塊泡Eが1個生成されて泡搬送管4に押し出される。このとき、第2平歯車82と同軸上のセンサ用カム85も回転し、センサ用カム85が第1回転角度位置に達すると(即ち、センサ用カム85が押圧部材S22を介して被押圧部S23を押圧すると)、
図4(c)に示す様に可動接点T5が固定接点T3に接続され、モータMが停止する。即ち、作業者Pにより押ボタンS11が押されると、モータMが所定量だけ回転して自動停止し、ジャバラ部62が収縮した状態に維持される。
【0037】
次に押ボタンS11が解放されると、
図4(d)に示す様に可動接点T0が固定接点T1に接続される。このとき可動接点T5は固定接点T3に接続されているため、再びモータMが通電されて駆動する。すると、回転ポンプ7が回転駆動すると同時に摺動案内具63が前方に摺動してジャバラ部62が復元する。このときセンサ用カム85も回転し、センサ用カム85が第2回転角度位置に達すると(即ち、センサ用カム85が押圧部材S22から離隔し、被押圧部S23に対する押圧が解除されると)、
図4(a)に示す様に可動接点T5が固定接点T4に接続され、モータMが止まり、初期状態となる。即ち、作業者Pが押ボタンS11を解放すると、モータMが所定量だけ回転して自動停止し、ジャバラ部62が復元した状態に維持される。
【0038】
このように、第2平歯車82と共にセンサ用カム85が1回転する毎に回転ポンプ7により所定量の薬液がジャバラ部62へ供給されると共に、摺動案内具63が1往復してジャバラ部62が1回作動(収縮及び伸張/蠕動)し、団塊泡Eが1個生成されてジャバラ部62から排出される。
【0039】
なお、ジャバラ部62が1回作動して生成される団塊泡Eの1個当りの薬液量や、薬液と空気の混合比、泡の硬軟等は、スポンジ64の容積比や回転ポンプ7の回転数により決まり、回転ポンプ7の回転数は第1平歯車81と第2平歯車82の歯数により調節することができる。
【0040】
レバー装置LはモータMを連続的に駆動させるものである。例えば、塗布作業開始前に空の容器2に薬液を注入した状態では、ホース23をはじめとする配管や回転ポンプ7内に空気が残っているが、モータMを連続的に駆動させることで配管や回転ポンプ7内に薬液を充満させることができる。また、作業終了後に配管内を水で洗浄する際にもレバー装置Lが用いられる。
【0041】
図2及び
図5を参照して、レバー装置Lは、レバーL1と、ピストンL2と、ピストンL2に外嵌されたバネL3と、を備える。レバーL1を引くとピストンL2が後方にスライドし、ピストンL2の先端がセンサスイッチS2の押圧部材S22を押し下げ、被押圧部S23が下方に押圧される。レバーL1を解放するとバネL3の付勢力によってピストンL2は前方にスライドして元の位置に戻り、被押圧部S23に対する押圧が解除される。
【0042】
よって、
図4(a)に示す初期状態において作業者PがレバーL1を引くと、
図4(d)に示すように可動接点T5が固定接点T3に接続されモータMが回転し、この状態からレバーL1が解放されてピストンL2が元の位置に戻ると、
図4(a)の初期状態に戻り、モータMは停止する。即ち、作業者PがレバーL1を引き続ける限り、回転するセンサ用カム85の角度位置にかかわらず、モータMは連続的に駆動する。
【0043】
次に、雑草Wへの薬剤の塗布作業について説明する。まず、適宜希釈された薬剤を容器2に注入し、ホース23の先端に設けられたホース金具23bを把持部9の取付ネジ93に接続する。吊り紐26を使って容器2を首または肩に掛ける。バッテリケース51に電池をセットし、差込口52に電源ケーブルCのプラグC1を差し込み、バッテリーケース51を腰バンド等に固定する。
【0044】
次に、作業者Pはレバー装置Lを操作して(レバーL1を引いて)モータMを連続駆動させる。これにより、回転ポンプ7が回転駆動すると共にジャバラ部62が蠕動し、団塊泡Eが連続的に生成される。このようにして生成された複数個の団塊泡Eは、泡搬送管4の先端に向かってところてん式に順次移動し、泡搬送管4の先端(当て具43の吐出口)から吐出される。このように泡搬送管4の先端から団塊泡Eが吐出することを確認したら作業者PはレバーL1から手を離してレバー装置Lに対する操作を解除し、モータMの駆動を止める。この時点で泡搬送管4の内部は団塊泡Eで満たされた状態となっている。
【0045】
次に、作業者Pは把持部9を把持して当て具43の二股部を雑草Wの茎に当てがい、操作スイッチS1を操作する(押ボタンS11を押す)。すると、上述のようにモータMが駆動し、団塊泡Eが1個生成されて泡搬送管4に送り出される。これにより、泡搬送管4内の最下流側の団塊泡Eが1個、当て具43の吐出口から押し出されて雑草Wに塗布され、この状態でモータMが自動停止する。その後、作業者Pが操作スイッチS1に対する操作を解除(押ボタンS11を解放)すると、上述したようにモータMが再び駆動し、ジャバラ部62が復帰した状態でモータMが自動停止する。
【0046】
このように、本実施形態の薬剤塗布器1によれば、電動モータMの回転駆動力を利用して団塊泡Eを生成するので、手動で団塊泡を生成する従来の塗布器と比較して作業者Pの疲労を軽減でき、また疲労による作業ミスの発生を抑制することができる。
【0047】
泡搬送管4として長尺管を用いることで、低い箇所へ塗布する場合でも立ったまま作業ができ、腰への負担を軽減できる。また、泡搬送管4は泡発生器3に着脱自在に装着されるので、任意長さの泡搬送管と付け替えて使用することで作業効率を更に向上できる。
【0048】
更に、本実施形態の薬剤塗布器1は微弱電流で駆動可能であるため、薬剤塗布器1全体を小型化及び軽量化することが可能であり、片手作業を容易にできる。
【0049】
また、操作スイッチS1の操作と解放に応じてセンサ用カム85(第2平歯車82)が半回転する毎にモータMが自動停止するように構成されているので、センサ用カム85が1回転する毎にモータMが自動停止するように構成した場合と異なり、モータMが所定量を超えて駆動してしまうといった誤作動が起こりにくい。
【0050】
以上、本発明の実施形態に係る薬剤塗布器について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形、修正が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、連続操作部としてレバー装置Lを用いたが、モータMに連続的に通電させて駆動させられるものであればその構成に制限はなく、例えば押ボタンスイッチを利用しものであっても構わない。
【0052】
また、上記実施形態においては、回転体としてセンサ用カム85を用い、センサ用カム85の回転角度位置を感知することにより回転体の回転量を検知したが、回転体はセンサ用カム85に限定されない。また、上記実施形態ではセンサ用カム85の回転量(回転角度位置)を感知することで第2平歯車82の回転量を感知したが、センサ用カム85を用いずに第2平歯車82の回転量を直接感知してもよく、この場合には第2平歯車82が回転体として機能する。
【0053】
更に、当て具43は上述のものに限定されず、対象物の形状等に適したものであればその形状に制限はない。また、対象物の形状等に応じて当て具43を省略することもできる。
【0054】
上記実施形態では泡発生体としてスポンジ64を用いたが、伸縮することによって薬液と空気とを混合させて泡を発生できるものであればスポンジ64に限定されず、例えばタワシ(ナイロンタワシ、アクリルタワシ、ステンレスタワシ等)やコイルバネ等であっても構わない。
【符号の説明】
【0055】
1 薬剤塗布器
2 容器
3 泡発生器
4 泡搬送管
6 泡発生部
7 回転ポンプ(薬液供給手段)
8 駆動手段
14 空気逆止弁
62 ジャバラ部
63 摺動案内具
64 スポンジ (泡発生体)
80 駆動伝達機構
81 第1平歯車
82 第2平歯車
85 センサ用カム(回転体)
E 団塊泡
L レバー装置(連続操作部)
M モータ
S1 操作スイッチ
S2 センサスイッチ