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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】パッド
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/02 20060101AFI20221104BHJP
   E03D 9/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A47K17/02 Z
E03D9/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021003749
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2021126504
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2020023464
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060594
【氏名又は名称】株式会社サンコー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中谷 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】中西 望
(72)【発明者】
【氏名】高岡 知温
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-161473(JP,A)
【文献】特開平09-310292(JP,A)
【文献】特開平7-133569(JP,A)
【文献】特開2003-210359(JP,A)
【文献】森澤純 野瀬哲昭,トイレに流せる製品群の評価システム(土佐方式)について-第五報 流通性試験について-,高知県立紙産業技術センター報告,日本,2019年12月01日,24号,P22-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
E03D 9/00- 9/16
B32B 1/00-43/00
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水層と、
該吸水層の両面それぞれに配置された表面材と
を備え、
前記吸水層及び表面材は水解性を有し、
いずれか一方の前記表面材に配置された粘着剤を備え、
前記吸水層、表面材及び粘着剤の重量は3回以内の洗浄によってDC値(Drained or Clogged value)が20%以下になる重量であって、8g以下であり、
前記吸水層及び表面材の密度は0.03~0.08g/cm 3 である
パッド。
【請求項2】
前記吸水層は、
天然パルプ繊維と、
ポリ乳酸繊維、ポリヒドロキシアルカン酸繊維、ポリ乳酸樹脂粉末またはポリヒドロキシアルカン樹脂粉末を少なくとも一つ含む生分解性プラスチック材と
を有する不織布である
請求項1に記載のパッド。
【請求項3】
前記吸水層は、
前記天然パルプ繊維を90~99重量パーセント含み、
前記生分解性プラスチック材を1~10重量パーセント含む
請求項に記載のパッド。
【請求項4】
前記吸水層は、オレフィン系樹脂材または環状オレフィン系樹脂材を5重量パーセント以下含む
請求項に記載のパッド。
【請求項5】
前記吸水層及び表面材は生分解性を有する部材によって構成されている
請求項1からのいずれか一つに記載のパッド。
【請求項6】
前記粘着剤を覆う剥離可能な剥離紙
を備える請求項1からのいずれか一つに記載のパッド。
【請求項7】
便器の上面または周面に取り付けられる
請求項1からのいずれか一つに記載のパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば便器に取り付けられ、小水又はシャワー水などの水分を吸収するパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水溶性(水解性)を有するトイレ用シートが提案されている。トイレ用シートは水中にて分解されるので、トイレに流しても、排水管は詰まらない。そのため、ユーザは使用後のトイレ用シートを水に流すことができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-210359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生活排水又は下水処理を行う設備、例えばポンプ又は配管等に大きな物体が入ると、設備への負荷が過大となるおそれがある。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、水解性(水中での崩壊性)を有し、且つ、閉塞のない排水が可能なパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るパッドは、吸水層と、該吸水層の両面それぞれに配置された表面材とを備え、前記吸水層及び表面材は水解性を有する。
【0007】
本開示の一実施形態においては、例えば、ユーザが剥離紙を剥がしてパッドを便器に取り付け、その後、パッドをトイレに流した場合でも、パッドは水中にて崩壊する。
【0008】
本開示の一実施形態に係るパッドは、前記吸水層及び表面材は生分解性を有する部材によって構成されている。
【0009】
本開示の一実施形態においては、崩壊したパッドの残渣は、例えば微生物及びバクテリアによって生分解される。
【0010】
本開示の一実施形態に係るパッドは、前記吸水層は、天然パルプ繊維と、ポリ乳酸繊維、ポリヒドロキシアルカン酸繊維、ポリ乳酸樹脂粉末またはポリヒドロキシアルカン樹脂粉末を少なくとも一つ含む生分解性プラスチック材とを有する不織布である。
【0011】
本開示の一実施形態においては、天然パルプ繊維、及び生分解プラスチック材によって構成されているので、吸水層は水解され、生分解される。
【0012】
本開示の一実施形態に係るパッドは、前記吸水層は、前記天然パルプ繊維を90~99重量パーセント含み、前記生分解性プラスチック材を1~10重量パーセント含む。
【0013】
本開示の一実施形態においては、吸水性を高めるべく、天然パルプによって、低密度の不織布を成形する。低密度の不織布を成形するために、天然パルプ繊維を接着させるための熱融着バインダとして、例えば、生分解性機能を有するポリ乳酸樹脂材またはポリヒドロキシアルカン樹脂材を使用する。天然パルプ繊維同士の接着には、例えばポリ乳酸繊維またはポリヒドロキシアルカン酸繊維の熱融着を用いることができる。また、表面材との接着には、例えばポリ乳酸樹脂粉末またはポリヒドロキシアルカン樹脂粉末を用いることができる。ポリ乳酸繊維、ポリ乳酸樹脂粉末、ポリヒドロキシアルカン酸繊維またはポリヒドロキシアルカン樹脂粉末は比較的高価な為、使用量を少なくすることが求められる。一方、少なすぎると不織布の成形保持が難しくなり、紙粉の発生量が多くなる。そのため、天然パルプ繊維と、生分解生性プラスチック材とを、上述のような重量パーセントにして、製造費用の削減と、成形保持とを両立させることができる。
【0014】
本開示の一実施形態に係るパッドは、前記吸水層は、オレフィン系樹脂材または環状オレフィン系樹脂材を5重量パーセント以下含む。
【0015】
本開示の一実施形態においては、オレフィン系樹脂または環状オレフィン系樹脂からなる繊維や樹脂粉末を、バインダとして使用する。オレフィン系樹脂または環状オレフィン系樹脂は生分解性が無く、またスカム量の増加を招来するおそれがあるので、5重量パーセント以下とした。5重量パーセント以下とすることによって、水中での崩壊性や流通性に影響をほとんど与えない。
【0016】
本開示の一実施形態に係るパッドは、前記吸水層及び表面材の密度は0.03~0.08g/cm3 である。
【0017】
本開示の一実施形態においては、吸水層の十分な吸水性と強度を両立させる。また密度が低すぎると製品形状の保持が困難となり、高すぎると水中での崩壊性が阻害される。上述の密度範囲に設定することによって、製品形状の保持及び水中での崩壊性を両立させることができる。
【0018】
本開示の一実施形態に係るパッドは、いずれか一方の前記表面材に配置された粘着剤を備え、前記吸水層、表面材及び接着剤の重量は10g以下である。
【0019】
本開示の一実施形態においては、排水管内におけるパッドの流通性を確保する。また10g以下にすることによって、少量のフラッシュ水、例えば、節水型トイレにおける3.8リットル/回のフラッシュ水でもパッドは崩壊し、便器から容易に排出され、排水管内に於いて容易に流通する。また、排水処理機または排水処理場にて、排水ポンプのインペラへの絡みつき、またはケースの隙間への詰まりなどが発生し難くなる。
【0020】
本開示の一実施形態に係るパッドは、いずれか一方の前記表面材に配置された粘着剤と、該粘着剤を覆う剥離可能な剥離紙とを備える。
【0021】
本開示の一実施形態においては、ユーザは、剥離紙を剥がすだけで、パッドを対象物に取り付けることができる。また、剥離紙が水解性及び生分解性を有さない場合、剥離紙のみを、排水に投入せずに、吸水層及び表面材の廃棄方法とは、別の方法で廃棄処分することができる。
【0022】
本開示の一実施形態に係るパッドは、便器の上面または周面に取り付けられる。
【0023】
本開示の一実施形態においては、便器の上面または周面に取り付けて、小水又はシャワー水などが、便器及び便座の間から漏出することを防ぎ、周面を伝って床に付着することを防ぐ。
【発明の効果】
【0024】
本開示の一実施形態に係るパッドにあっては、例えば、ユーザが剥離紙を剥がしてパッドを便器に取り付け、その後、パッドをトイレに流した場合でも、パッドは水中にて崩壊し、配水管が詰まることを防止できる。即ち、生活排水又は下水処理を行う設備、例えばポンプ又は配管等の詰まりを防止し、前記設備への負荷を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施の形態に係るパッドの略示斜視図である。
図2図1に示すII-II線を切断線とした略示断面図である。
図3】吸水層の構成を略示する模式図である。
図4】トイレに取り付けたパッドの略示斜視図である。
図5】高知県立紙産業技術センターにて用いられている土佐方式による流通性試験装置の構成を略示する模式図である。
図6】総試験回数N、異なる重量を有する試験片それぞれのDC値を示す表である。
図7】試験片の重量に対するDC値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本発明を、実施の形態に係るパッドを示す図面に基づいて説明する。図1は、パッドの略示斜視図、図2は、図1に示すII-II線を切断線とした略示断面図、図3は、吸水層の構成を略示する模式図である。以下の説明では、図に示す上下前後左右を適宜使用する。
【0027】
図1に示すように、パッド1は、平面視弧状且つ帯状をなす。パッド1の長さ(図1の左右寸法)は、例えば50~200mmであり、パッド1の幅(図1の前後寸法)は、例えば20~60mmであり、パッド1の厚み(図1の上下寸法)は、例えば3~15mmである。パッド1を平面視矩形状に形成してもよい。
【0028】
図2に示すように、パッド1は、吸水層10と、二つの表面材11と、粘着剤12と、剥離紙13を備える。吸水層10は、天然パルプ繊維と、ポリ乳酸繊維及びポリ乳酸樹脂粉末を含む生分解性プラスチック材とを有する不織布である。吸水層10は、天然パルプ繊維を90~99重量パーセント含み、生分解性プラスチック材を1~10重量パーセント含む。例えば、図3に示すように、吸水層10は、天然パルプ繊維10a、ポリ乳酸繊維10b、及びポリ乳酸樹脂粉末10cを備える不織布である。ポリ乳酸繊維10bは、ポリ乳酸繊維10bの平均長さが天然パルプ繊維10aよりも長くなるように、設計されており、非常に粗な骨格を形成する。なおポリ乳酸繊維10bまたはポリ乳酸樹脂粉末10cに代えて、ポリヒドロキシアルカン酸繊維またはポリヒドロキシアルカン樹脂粉末を含む生分解性プラスチック材を使用してもよい。
【0029】
該骨格の内側に天然パルプ繊維10aが配置される。天然パルプ繊維10aの密度は粗い。ポリ乳酸は、ポリ乳酸繊維10b間、ポリ乳酸繊維10bと天然パルプ繊維10aとの間、又は天然パルプ繊維10a間を繋いでいる。天然パルプ繊維10a、ポリ乳酸繊維10b、及びポリ乳酸樹脂粉末10cによって、柔らかい綿状の不織布が形成されている。天然パルプ繊維10a、ポリ乳酸繊維10b、及びポリ乳酸樹脂粉末10cは、いずれも水解性及び生分解性を有する。ここで、水解性とは、水中にて崩壊する性質をいう。以後、水解性を崩壊性とも称する。生分解性とは、バクテリア、菌類、その他の生物によって化合物が分解される性質をいう。
【0030】
なお熱接着剤(バインダ)として、パッド1の生分解性を阻害しない5重量パーセント以内でオレフィン系樹脂材または環状オレフィン系樹脂材を使用しても良い。
【0031】
吸水層10の両面それぞれに、表面材11が設けられている。表面材11は水解性を有する。表面材11は、例えば、天然パルプ繊維及びレーヨン繊維を備える不織布である。天然パルプ繊維及びレーヨン繊維は生分解性を有する。
【0032】
吸水層10の一面を上側に向け、他面を下側に向けた場合、下側に配置される表面材11に、粘着剤12が設けられる。粘着剤12は、前記表面材11に不連続に配置され、例えばドット状に配置される。粘着剤12としては、例えば、アクリル系粘着剤又はポリ酢酸ビニル系粘着剤が挙げられる。粘着剤12として、例えば、ポリ乳酸を主原料とした生分解性を有する粘着剤、又は天然ゴム由来のエラストマーに生分解性物質を配合した、生分解性を有する粘着剤を使用してもよい。なお粘着剤12を表面材11に連続的に設けてもよい。
【0033】
粘着剤12は、剥離紙13によって覆われている。剥離紙13は、例えば紙によって構成されており、粘着剤12から剥離できるように表面処理が施されている。
【0034】
パッド1は、乾式不織布製法、例えばエアレイド法を用いて以下のようにして製造される。一方の表面材11の原反の上に、解砕された天然パルプ繊維10a並びにポリ乳酸繊維10b及びポリ乳酸樹脂粉末10cを混合して、積層成形し、その上面に他方の表面材11の原反を重ね、加熱成形してパッド1に形成させる。次に、予め粘着剤12を塗工した剥離紙13を、いずれか一方の表面材11に、粘着剤12を介して、加圧接着させ、製品形状に裁断加工する。パッド1の製法は、エアレイド法に限定されるものでない。また、粘着剤12及び剥離紙13は無くてもよい。
【0035】
吸水層10及び表面材11の吸水性、強度、及び厚みなどの観点から、吸水層10及び二つの表面材11の密度が、粘着剤12及び剥離紙13を設けていない状態において、0.03~0.08g/cm3 、好ましくは0.04~0.06g/cm3 となるように、パッド1は製造される。なお密度の測定は、JIS L1913:2010 一般不織布試験法 6.1(厚さ)、6.2(単位面積当たりの重量)の測定方法に従った。密度が低すぎると製品形状の保持が困難となり、高すぎると水中での崩壊性が阻害される。上述の密度範囲に設定することによって、製品形状の保持及び水中での崩壊性を両立させることができる。また吸水層の十分な吸水性と強度を両立させる。
【0036】
排水管内における流通性の観点から、裁断後のパッド1の重量(吸水層10、表面材11及び粘着剤12の重量、換言すれば、粘着剤12を覆う剥離紙13を除いた製品重量(20℃、相対湿度65%環境下))が10g以下になるように、パッド1は製造される。後述するように、剥離紙13を除くパッド1の重量は、流通性を考慮すると、好ましくは、8g以下であり、更に好ましくは6g以下であり、より好ましくは4g以下である。
【0037】
図4は、トイレに取り付けたパッド1の略示斜視図である。トイレ2は、便器21、便座22、及び便蓋23を備える。便器21は洋式便器であり、上部に開口2aを有する。開口2aを縁取る上面(便器上縁)2bは平面視環状をなし、平坦面を形成する。便器上縁2bの前部は、平面視において、弧状且つ帯状をなす。便器21の後部には、左右方向を軸長方向とした枢軸210が設けられている。
【0038】
便座22はO型便座である。便座22は環状の板状をなす。便座22の中央部には、開口2aに対応して、穴220が設けられている。便座22の後部は、枢軸210を介して便器21に回動可能に支持されている。このため、便座22は、便座22の前部を上げ下げすることによって、枢軸210を中心に揺動可能である。便器21に対面する立ち姿勢にてトイレ2を使用する場合、便座22は上げられる。
【0039】
便座22に着座してトイレ2を使用する場合、便座22は下げられる。便座22が下げられた場合における便座22の上面は座面であり、下面は便座裏22aである。便座裏22aには、4個の弾性突起221が突設してある。このため、下げられた便座22の便座裏22aと便器上縁2bとが対面配置される。このとき、弾性突起221は、便器上縁2bに接触して便座22を支持する。弾性突起221は、便座裏22aの前部及び後部を除く便座裏22aの左部及び右部に、2個ずつ配置されている。
【0040】
パッド1は、剥離紙13を剥がした状態で、粘着剤12を下側に向け、例えば、便器上縁2bの前部に取り付けられる。パッド1は、パッド1の曲がりを便器上縁2bの曲がりに対応させて、便器上縁2bに接着される。図4においては、一つのパッド1が便器上縁2bに取り付けられている。パッド1の幅(便器の径方向における寸法)は、便器上縁2bの幅(便器の径方向における寸法)と略同じであり、幅方向において、パッド1は便器上縁2bの全体を覆う。パッド1は弾性突起221と便器上縁2bとの間に挟まれない箇所に、配置されることが好ましい。なおパッド1の取り付け位置は、便器上縁2bに限定されず、例えば、便器21の外周面(側面)に設けてもよい。
【0041】
下げられた便座22の便座裏22aと便器上縁2bとの間には、弾性突起221が介在しているため、隙間が生じる。パッド1の厚み(上下寸法)は、この隙間と略同じか又はこの隙間よりも若干厚い。そのため、便座22を下げた場合、便器上縁2bの前部において、前記隙間は、パッド1によって塞がれる。換言すれば、前記隙間を塞ぐことが可能な厚さになるように、パッド1は製造される。パッド1を前記隙間に設けることによって、小水又はシャワー水などが、便器21及び便座22の間から漏出することを防ぐことができる。またパッド1を便器21の外周面に設けることによって、小水又はシャワー水などが外周面を伝って床に付着することを防ぐことができる。
【0042】
便蓋23は、便座22を覆う卵型の板状をなす。便蓋23の後部は、枢軸210を介して便器21に回動可能に支持されている。このため、便蓋23の前部が下げられると、下方へ揺動した便蓋23によって便座22が被覆される。一方、便蓋23の前部が上げられると、便蓋23が上方へ揺動し、便座22から離隔する。
【0043】
パッド1の水解性(崩壊性)について説明する。EDANA(European Disposables And Nonwovens Association)にて策定されたガイドライン(Edition 4 of the Guidelines for Assessing the Flush ability of Disposable Nonwoven Products)に基づいて、パッド1の崩壊性を確認した。
【0044】
具体的には、スロッシュボックス崩壊性試験を行った。スロッシュボックス崩壊性試験においては、所定のボックスに、2リットルの水及び試験片を投入し、ボックスを回転速度26rpmにて60分回転させる。その後、直径12.5mmの穴を複数有する濾し器にかけて、濾し器に残留した残留物を乾燥させ、投入前の試験片の重量に対する残留物の割合いを求める。この割合いが35%未満であれば、十分な崩壊性を有し、排水管に流すことが可能とされる。今回の試験片は、剥離紙13を除いたパッド1である。また、後述するように、30分経過時に、試験片は充分に崩壊したと判断できたので、今回の回転時間は30分とした。
【0045】
上記崩壊性試験を3回行った。投入前のパッド1の重量は、いずれも3.94gである。1回目の試験によって、濾し器に残留した残留物の乾燥時の重量は、0.27g、2回目の試験によって、濾し器に残留した残留物の乾燥時の重量は、0.27g、3回目の試験によって、濾し器に残留した残留物の乾燥時の重量は、0.08gであった。前記割合いに換算すると、1回目の割合いは、0.27/3.94=6.85%、2回目の割合いは、0.27/3.94=6.85%、3回目の割合いは、0.08/3.94=2.03%であった。いずれの試験においても、前記割合いは35%未満であり、十分な崩壊性を有することが示された。前記ガイドラインでは、ボックスを60分間回転させるべきところ、今回のパッド1に対する試験では、半分の30分間回転させただけで、上記基準を満たすことができた。
【0046】
次に、パッド1の流通性試験について説明する。図5は、高知県立紙産業技術センターにて用いられている土佐方式による流通性試験装置の構成を略示する模式図である。パッド1の流通性について説明する。トイレに流せる製品評価システム(土佐方式)に基づいて、パッド1の流通性を確認した。具体的には、図5に示す流通性試験装置を使用して試験を行った。
【0047】
流通性試験装置は、節水II型大便器C910S(以下、便器3という)と、第1排水管4と、第2排水管5と、第3排水管6とを備える。便器3の1回当たりの洗浄水量は、超節水型トイレのフラッシュ水量を想定した3.8リットルである。第1排水管4の長さは30cm、呼び径は75mmであり、第1排水管4は便器3から垂直に下方に延びる。第2排水管5の長さは1m、呼び径は75mmであり、水平方向に延びる。第2排水管5は、直角エルボを介して、第1排水管4に1/100の勾配で接続されている。第3排水管6は、複数の排水管及びソケットによって構成されている。第3排水管6の長さは10m、呼び径は100mmであり、水平方向に延びる。第3排水管6は、直角エルボ及びVU異径ソケットを介して、第2排水管5に1/100の勾配で接続されている。なお第3排水管6は単数の排水管によって構成されていてもよい。
【0048】
流通性試験においては、紙産業技術センターの試験機を用いた土佐方式の試験方法に基づき実施し、便器3の水たまりに、剥離紙13を除いたパッド1(以下、試験片)を投入し、所定回数連続して、便器3に対して洗浄動作を実行する。所定回数の洗浄を、1回の試験回数として計数する。今回は、最大連続4回の洗浄を、1回の試験回数とした。なお4回未満の洗浄によって、流通性試験装置から試験片が排出された場合、即ち、第3排水管6から排出された場合には、それ以上の洗浄は不要であるので、それ以上の洗浄は行わず、1回の試験回数として数えた。例えば、連続2回の洗浄によって、試験片が流通性試験装置から排出された場合には、2回の洗浄をもって、1回の試験回数とした。
【0049】
流通性試験においては、DC(Drained or Clogged value)値(%)を求める。DC値は以下の式によって求められる。
DC値=(滞留の回数/総試験回数)×100
滞留の回数とは、流通性試験装置の排水管内に、試験片が滞留した回数をいう。
【0050】
図6は、総試験回数N、異なる重量を有する試験片それぞれのDC値を示す表である。図6において、重量は、試験片の重量(g)を示し、洗浄回数における1~4回目は、最大連続4回の洗浄回数における順番を示す。
【0051】
重量2.1gの一つの試験片を使用した試験において、総試験回数は8回であり、1回目の洗浄におけるDC値は37.5%、2回目の洗浄におけるDC値は0%である。即ち、2回以内の洗浄で、重量2.1gの試験片は流通性試験装置から排出される。
【0052】
重量2.8gの一つの試験片を使用した試験において、総試験回数は6回であり、1回目の洗浄におけるDC値は50%、2回目の洗浄におけるDC値は0%である。即ち、2回以内の洗浄で、重量2.8gの試験片は流通性試験装置から排出される。
【0053】
重量3.4gの一つの試験片を使用した試験において、総試験回数は8回であり、1回目の洗浄におけるDC値は75%、2回目の洗浄におけるDC値は0%である。即ち、2回以内の洗浄で重量3.4gの試験片は流通性試験装置から排出される。
【0054】
重量4.2gの一つの試験片を使用した試験において、総試験回数は50回であり、1回目の洗浄におけるDC値は96%、2回目の洗浄におけるDC値は18%、3回目の洗浄におけるDC値は4%、4回目の洗浄におけるDC値は2%である。
【0055】
重量8.5gの試験片を使用した試験においては、重量4.2gの試験片を二つ使用した。この試験において、総試験回数は10回であり、1回目の洗浄におけるDC値は100%、2回目の洗浄におけるDC値は80%、3回目の洗浄におけるDC値は20%、4回目の洗浄におけるDC値は10%である。
【0056】
重量12.7gの試験片を使用した試験においては、重量4.2gの試験片を三つ使用した。この試験において、総試験回数は5回であり、3回目までの洗浄におけるDC値は100%、4回目の洗浄におけるDC値は80%である。
【0057】
なお上述の試験結果に示すパッド1の滞留は、全て図5の第3排水管6で見られ、試験片のパッドは図5の便器3、第1排水管4及び第2排水管5内では容易に流通し、滞留は全く見られなかった。
【0058】
図7は、試験片の重量に対するDC値を示すグラフである。図7において、白丸は、重量2.1gの試験片の試験結果を、白三角は、重量2.8gの試験片の試験結果を、白四角は、重量3.4gの試験片の試験結果を、黒丸は、重量4.2gの試験片の試験結果を、クロスマークは、重量8.5gの試験片の試験結果を、黒四角は、重量12.7gの試験片の試験結果を、プロットしたものである。またL1は、1回目の洗浄におけるDC値から導いた一次関数の近似式のグラフを示し、L2は、2回目の洗浄におけるDC値から導いた一次関数の近似式のグラフを示し、L3は、3回目の洗浄におけるDC値から導いた一次関数の近似式のグラフを示し、L4は、4回目の洗浄におけるDC値から導いた一次関数の近似式のグラフを示す。
【0059】
パッド1は速やかに排出されることが好ましく、またユーザが受け入れ可能な洗浄回数を考慮すると、排出に必要な洗浄回数は3回以下であることが好ましく、2回以下であることが更に好ましい。グラフL3によれば、3回以内の洗浄によって排出可能なパッド1(剥離紙13を除く)の重量、即ち、グラフL3において、DC値0%となるパッド1の重量は、約7.0gである。また3回以内の洗浄によって、DC値20%以下となるパッド1の重量は、約8.2gである。なおDC値0%となるパッド1の重量が約7.0gであることから、7gが臨界的な値となるが、速やかに排出される確率を考慮すると、更に小さい数値である6gが好ましい。
【0060】
グラフL2によれば、2回以内の洗浄によって排出可能なパッド1(剥離紙13を除く)の重量、即ち、グラフL2において、DC値0%となるパッド1の重量は、約3.5gである。また2回以内の洗浄によって、DC値20%以下となるパッド1の重量は、約4.5gである。したがって、流通性確保の観点から、剥離紙13を除くパッド1の重量は、8g以下であることが望ましく、更に好ましくは6g以下であり、より好ましくは4g以下である。
【0061】
実施形態に係るパッド1にあっては、例えば、ユーザが剥離紙13を剥がしてパッド1を便器に取り付け、使用後のパッド1をトイレに流した場合でも、パッド1は水中にて崩壊し、配水管の詰まりを防止できる。そのため、生活排水又は下水処理を行う設備、例えばポンプ又は配管等への負荷を低減させることができる。また崩壊したパッド1の残渣は、例えば、菌によって炭素及び水などに生分解され、環境への負荷を低減させることができる。なおパッド1は少なくとも崩壊性を有すればよく、その形状は限定されない。
【0062】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 パッド
10 吸水層
11 表面材
12 粘着剤
13 剥離紙
10a 天然パルプ繊維
10b ポリ乳酸繊維
10c ポリ乳酸樹脂粉末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7