(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】心拍信号抽出回路及び動物感情推定装置
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
A01K29/00 B
(21)【出願番号】P 2021015792
(22)【出願日】2021-02-03
(62)【分割の表示】P 2019129606の分割
【原出願日】2016-06-13
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2015119629
(32)【優先日】2015-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515082944
【氏名又は名称】株式会社ラングレス
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】山口 譲二
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-230538(JP,A)
【文献】特開2000-316825(JP,A)
【文献】特開2014-191033(JP,A)
【文献】特開2010-022446(JP,A)
【文献】特開昭51-084183(JP,A)
【文献】特開2009-178142(JP,A)
【文献】特開2007-252480(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0088004(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0237873(US,A1)
【文献】KeySwift,[電子回路] オペアンプを用いた無安定マルチバイブレータ - (3) シュミットトリガ回路,[online],日本,2011年08月10日,[2022年4月19日検索],インターネット<URL:http://keygum.blogspot.com/2011/08/3.html>
【文献】pcm1723,アナログシンセの VCO ブロック (8) -- リニア VCO 回路(3),[online],日本,2007年12月20日,[2022年4月19日検索],インターネット<URL:https://pcm1723.hateblo.jp/entry/20071220/1198169682>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 11/00 - 29/00
A01K 33/00 - 37/00
A01K 41/00 - 59/06
A01K 67/00 - 67/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物が発する心拍音を含む音を集音し
、集音した音に基づく音信号を出力するマイクロフォンと、
前記音信号を心拍信号に変換する処理回路と、
を有し、
前記処理回路は、
前記音信号から
、前記動物の心拍信号の周波数よりも低い低周波成分を除去することにより高周波信号を出力するハイパスフィルタと、
反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有する演算増幅器と、
前記非反転入力端子と前記出力端子との間に設けられ
ており、前記動物の心拍信号の周波数を通過させるバンドパスフィルタと、
を有し、
前記反転入力端子は前記ハイパスフィルタの出力に接続されており、
前記非反転入力端子は、前記バンドパスフィルタからの信号以外を受けず、
前記出力端子は、所定の周波数を含む、増幅された
前記心拍信号を出力し、
前記バンドパスフィルタは、前記増幅された
心拍信号の一部を前記出力端子から前記非反転入力端子へと通過させる心拍信号抽出回路。
【請求項2】
前記バンドパスフィルタは、前記非反転入力端子と前記出力端子との間に並列に設けられた抵抗とコンデンサとを有する、
請求項1に記載の心拍信号抽出回路。
【請求項3】
前記処理回路は、前記非反転入力端子と前記バンドパスフィルタとの接続点とグランドとの間に設けられた抵抗をさらに有する、
請求項1又は2に記載の心拍信号抽出回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の心拍信号抽出回路と、
前記心拍信号抽出回路から出力された
前記心拍信号に基づいて心拍変動解析を行うことにより、
前記心拍信号において、動物の平均的なR-Rインターバルの値以上のR-Rインターバルが連続して観測された回数が、動物に対応する閾値以上であるか否かに基づいて、交感神経が活発になっているか否かを判定することで、前記音信号を発した動物の感情を推定する制御部と、
を有する動物感情推定装置。
【請求項5】
心拍数範囲と、前記心拍信号により特定される単位時間あたりの心拍数が含まれる場合に発光する基本色とが対応づけられた基本色決定表を記憶する記憶部をさらに有し、
前記制御部は、前記心拍信号により特定される単位時間あたりの心拍数が含まれる前記心拍数範囲に対応する第1基本色の第1LEDを発光させ、前記心拍信号により特定される単位時間あたりの心拍数が、当該心拍数が含まれる前記心拍数範囲に隣接する他の前記心拍数範囲から所定の範囲内である場合に、前記第1基本色の第1LEDとともに、前記他の心拍数範囲に対応し前記第1基本色と異なる第2基本色の第2LEDを発光させる、
請求項4に記載の動物感情推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の感情を推定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種のペットを飼う飼い主にとっては、飼育しているペットの感情をより正確に理解できれば、ペットとの意思疎通がよりスムーズに行え、ペットとの友好がより深まるのにできないという懊悩があった。
【0003】
そこで、そのような悩みを解決すべく、特許文献1に示すように、小動物の感情を推定する装置が開発されている。特許文献1に記載の技術では、装置に電極を設け、当該電極に小動物の足を載せて微弱電流を流して刺激し、生体ポテンシャルを取得する。そして、当該装置は、取得した生体ポテンシャルに基づいて、リラックス度や興奮度を演算して表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す装置は、小動物の足を電極に載せる必要があり、小動物の自然な状態の生体ポテンシャルを取得できるとは言い難く、普段の生活の中での、動物の感情の推定がしにくいため、ユーザのニーズに応えているとは言い難かった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて成されるものであり、一般の生活の中で、動物の感情をユーザが認識することができる、動物感情推定装置及び動物感情推定装置に用いる集音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る集音器は、凹部を有する弾性部材と、凹部の底部に設けられた集音マイクと、弾性部材及び集音マイク全体を覆う衝撃吸収材とからなる。
【0008】
また、本発明の一実施態様に係る動物感情推定装置は、上記集音器と、集音器を動物に装着するための装着具と、集音器から集音された音をフィルタリングして心拍信号に変換する変換器と、心拍信号に基づいて、動物の感情を推定する推定部と、推定部により推定された感情を示す情報を出力する出力部とを備える。
【0009】
また、本発明の一実施態様に係る動物感情推定方法は、動物に装着して用いる動物感情推定装置による動物の感情を推定する動物感情推定方法であって、動物の心音を含む音声信号を取得する取得ステップと、取得された音声信号を心拍信号に変換する変換ステップと、心拍信号に基づいて動物の感情を推定する推定ステップと、推定された感情を示す情報を出力する出力ステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る動物感情推定装置によれば、当該動物感情推定装置を動物が装着することで、集音器から集音された音声信号に基づいて得られる心拍信号を用いて、動物の感情を推定し、推定した感情を示す情報を出力する。したがって、動物が装着した動物感情推定装置が出力した感情を認識することで、ユーザは、一目で動物のその時々の感情を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は、動物が動物感情推定装置を装着した状態を示す図であり、(b)は、動物感情推定装置の外観図である。
【
図2】(a)は、センサー100の外観図であり、(b)は、センサー100をA-A’線で切断した場合の断面図である。
【
図3】動物感情推定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】センサー処理回路の構成を示す回路図である。
【
図5】(a)は、集音された音声信号の例を示す波形図であり、(b)は、センサー処理回路によりフィルタリングされた心拍信号の例を示す波形図である。
【
図6】顔画像表の一構成例を示すデータ概念図である。
【
図7】動物感情推定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】ポワンカレ平面のプロット例を示すグラフである。
【
図10】実施の形態2に係る動物感情推定装置10を動物が装着した状態を示す図である。
【
図11】(a)は、実施の形態2に係る動物感情推定装置10の外観斜視図であり、(b)は、(a)とは別の方向から見た場合の動物感情推定装置10の外観斜視図である。
【
図12】実施の形態2に係る動物感情推定装置10の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】(a)、(b)は、動物の集中度に応じたLEDの明滅間隔の輝度差の例を示すグラフである。
【
図14】実施の形態2に係る基本色決定表1400のデータ構成例を示すデータ概念図である。
【
図15】実施の形態2に係る動物感情推定装置10の動作を示すフローチャートである。
【
図16】(a)は、動物感情推定装置1の機能構成を示すブロック図であり、(b)は、動物感情推定装置10の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
以下、本発明に係る動物感情推定装置の一実施態様について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
<概要>
本発明に係る動物感情推定装置は、動物の大まかな感情を推定し、飼い主等のユーザに、動物が何を考えているかを示すおおよその感情を提示する。動物感情推定装置1は、
図1(a)に示すように、動物(
図1では犬)に装着して用いる。動物感情推定装置1は、装着した動物の心拍音を
図1(b)に示すセンサー(集音器)100で集音し、得られた心拍音を示す心拍信号に基づいて装着した動物の感情を推定する。そして、動物感情推定装置1は、
図1(b)に示す、動物感情推定装置1に設けられた出力部200に動物のその時々の感情を示す顔を表示する。これにより、ユーザは動物がどのような感情を抱いているのかを認識することができる。
以下、本発明に係る動物感情推定装置1について詳細に説明する。
【0014】
<構成>
図1(a)、
図1(b)に示すように、動物感情推定装置1は、対象となる動物に着装できるように構成されており、動物用のハーネスに、センサー100と、出力部200を含む制御装置が固着されてなる。なお、
図1においては、犬に装着する例を示しているが、犬以外の動物に装着して用いてもよいことは言うまでもない。
【0015】
動物感情推定装置1の内側には、センサー100が設けられ、動物感情推定装置1を装着した動物の体表に密着する。これにより、センサー100内部に設けられたマイクロフォンにより、心拍音を録音した音声信号が取得される。
図1(b)に示すように、センサー100と出力部200とは、接続線110を介して接続され、センサー100により集音された音声信号が伝達される。
図2は、センサー100の構成を示す図である。
図2(a)は、センサー100の斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)におけるセンサー100をA-A’線で切断した場合の断面図である。
【0016】
図2(a)に示すようにセンサー100は、衝撃吸収材として、スポンジ103内部に、パラボラ状の凹部を有する台部102と、マイクロフォン101とを備えた集音器である。
台部102は、樹脂などの弾性部材から成り、
図2(a)、
図2(b)に示されるように、パラボラ状(すり鉢状、漏斗状)の凹部を有する。なお、ここでは軽量化を考慮して台部として樹脂を用いることとしているが、硬質な部材であってもよく、音波の反射率の高い素材を用いるとよい。
そして、当該凹部の底部に、マイクロフォン101が設けられ、接続線110がスポンジ103の外部に導出される。
【0017】
台部102の底部にマイクロフォン101を設置することにより、マイクロフォン101が向く方向、すなわち、動物の方向の音声を取得できるとともに、動物の方向以外の方向からの音声を台部102が反射、吸収してしまうので、雑音を混ざりにくくすることができる。
【0018】
そして、マイクロフォン101と台部102との両方全体を覆うようにスポンジ103が設けられることで、スポンジが音声の導電部材となるとともに、動物が動くことによって生じる皮膚の歪みにもスポンジが形状を変えることで、センサー100と動物との密着状態を維持することができる。
図3は、動物感情推定装置1の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0019】
図3に示すように、動物感情推定装置1は、センサー100と、出力部200と、センサー処理回路310と、電源部320と、制御部330と、通信部340とから構成される。
【0020】
センサー100は、動物感情推定装置1を装着した動物の生態情報を取得する機能を有し、本実施の形態においては、音声を取得する集音器により実現される。センサー100は、取得した音声信号をセンサー処理回路310に伝達する。
【0021】
センサー処理回路310は、
図4に示す回路構成の回路であり、音声信号を心拍信号に変換して制御部330に伝達する機能を有する。センサー処理回路310は、
図1で言えば、出力部200が設けられている装置部分に内蔵される。
【0022】
図4に示すように、センサー処理回路310は、電源入力部401と、抵抗402と、コンデンサ403と、コンデンサ404と、抵抗405と、オペアンプ406と、抵抗407と、コンデンサ408と、コンデンサ409と、抵抗410と、コンデンサ411と、ショットキーバリアダイオード412とが、
図4に示すように接続されて成る。
【0023】
電源入力部401から入力された電力は、抵抗402により制限される。
【0024】
抵抗402は、ここでは、100Ω~10kΩとする。
【0025】
コンデンサ403は、ここでは、1μF~100μFとし、センサー100から出力された音声信号のノイズを除去するノイズフィルタとして機能する。
【0026】
センサー100は、ここでは、ECM(Electret Condenser Microphone)を用いる。
【0027】
コンデンサ403によりノイズが除去された音声信号は、コンデンサ404及び抵抗405により低周波成分が除去される。すなわち、コンデンサ403と抵抗405とは、ハイパスフィルタとして機能する。ここでは、コンデンサ403は、0.1μF~10μFとし、抵抗405は、100Ω~10kΩとする。
【0028】
そして、低周波成分が除去された音声信号は、オペアンプ406により増幅される。
【0029】
オペアンプの増幅率は、抵抗407と、抵抗410とにより決定される。ここでは、抵抗407を20kΩ~200kΩとし、抵抗410を10~100Ωとする。これにより、オペアンプ406は約2000~20000倍の増幅率を得ることになる。
【0030】
コンデンサ408及びコンデンサ409は、二つで合計10μF~100μFとなるものを用い、オペアンプのフィルタとして機能する。
【0031】
コンデンサ411は、1μF~100μFのものを用い、ローパスフィルタとして機能する。
【0032】
ショットキーバリアダイオード412は、フィルタリング後の心拍信号を、出力部413に出力し、出力部413(制御部330)からの信号の逆流を防止する機能を有する。
【0033】
図4に戻って、電源部320は、動物感情推定装置1の各部に電力を供給する機能を有する。電源部320は、所謂、リチウムイオン電池や、アルカリ電池、マンガン電池などにより実現される。
【0034】
センサー処理回路310の働きにより、
図5(a)に示すような雑音交りの音声信号が、
図5(b)に示すような心拍信号に変換される。
【0035】
制御部330は、センサー処理回路310から伝達された心拍信号に基づいて、動物の感情を推定する機能を有する。そして、制御部330は、推定した動物の感情に基づく顔画像を出力部200に伝達する。また、制御部は、推定した動物の感情に基づく顔画像を通信部340に伝達する機能も有する。
【0036】
ここで、制御部330による動物の感情推定方法について説明する。制御部330は、センサー処理回路310から伝達された心拍信号に基づいて、心拍変動解析(HRV解析:Heart Rate Variation 解析)を行うことにより、動物の感情を推定する。
【0037】
一般的によく知られているHRV解析には、NN50という手法がある。これは、一定サンプル数(例えば60個とか、一定時間(例えば1分間)中の心拍数)のR-Rインターバル(拍動と拍動との間隔であり、
図4(b)の区間HIがR-Rインターバルを示す)の中で、R-Rインターバルの差分が50ms以上であることが連続して観測される回数(NN50)を数える。そして、NN50をR-Rインターバルのサンプル数で割って得られるpNN50という値に基づいて、交感神経が活発になっているか否かを判断する手法である。pNN50が低いと交感神経が活発になっている(ストレスを感じている)と判定する。ただし、ここの50msという値は、人類に対して適用するものであるため、動物にはそのまま当てはめることができない。
【0038】
そこで、動物感情推定装置1の制御部330は、まず、人間の場合の50msの時間を動物用の時間Xmsに変換する。
【0039】
一般的な人間のNN50解析に対して用いる50msという時間は、不整脈のない、安定状態にある人間の平均的な心拍数を元に算出されている。そこで、一般的に知られている人間の心拍が80bpm(beats per minute)であることを考慮すると、人間の平均的なR-Rインターバルは、750msということになる(60×1000÷80=750)。50msは、この平均R-Rインターバルの6.7%に相当する。
【0040】
そこで、仮に、動物のR-Rインターバルの平均が1000msとすると、動物のpNNX時間である時間Xmsは、X=1000×0.067=67msと算出される。したがって、制御部330は、取得した心拍信号から、平均R-Rインターバルを算出し、前述の比率6.7%を乗じることにより、動物用の時間Xmsを得る。したがって、この動物の場合、ある一定サンプル数のR-Rインターバルについて、67ms以上であることが連続して観測される回数に基づいて、交感神経が活発になっているか否かを判断する。
【0041】
制御部330は、定期的に、pNNXの時間を算出し、算出したpNNX時間に基づいて交感神経が活発になっているか否かを判断する。これにより、制御部330は、動物感情推定装置1を装着している動物がストレスを感じているか否かを判断することができる。
また、制御部330は、ポワンカレプロット解析によっても、動物の感情の推定を行う。
【0042】
本実施の形態におけるポワンカレプロットは、
図9に示すように、X軸、Y軸には、R-Rインターバルの時間をとる。そして、仮に、時刻t1におけるR-RインターバルがT1、時刻t2におけるR-RインターバルがT2、時刻t3におけるR-RインターバルがT3、時刻t4におけるR-RインターバルがT4であるとする(t1<t2<t3<t4)。このとき、ポワンカレプロットでは、連続する2つのR-RインターバルをそれぞれX座標、Y座標とする点をプロットしていく。すなわち、時刻t2のR-RインターバルT2をX座標、時刻t1のR-RインターバルT3をY座標とする点P
n-2がプロットできる。すなわち、新しい方のR-RインターバルをX座標とし一つ前のR-RインターバルをY座標とする点をプロットする。この法則に従うと、4つの連続するR-Rインターバルから、
図9に示すように、3つの点、点P
n-2(T2,T1)、点P
n-1(T3,T2)、点P
n(T4,T3)がプロットできる。ポワンカレプロット解析では、制御部330は、このようにしてプロットされた2点間の距離、並びに、3点によってなされる角度θ(
図9参照)に基づく解析を行う。
【0043】
このとき、動物の心拍数が高くなるほどプロットする点はポワンカレ平面の原点に近づき、連続する2点、すなわち、点Pn-2-Pn-1間、点Pn-1-Pn間の直線距離が短くなる傾向がある。制御部330は、心拍数が高い場合でも低い場合でも定性的に直線距離を求めるために、2点間の直線距離をある母数で除算し、正規化する。母数は、心拍数が高くなるにつれ、相対的に小さくなる値であることが望ましく、ここでは、2点のX座標、Y座標値のうち、長い方の合計値を用いることとする。こうして得られた正規化直線距離が所定の閾値よりも低い場合に、制御部330は、動物感情推定装置1を装着した動物が何かに関心を寄せていると判断する。
【0044】
また、制御部330は、ポワンカレ平面において、連続してプロットされた2点により形成される直線と、当該2点の一方と連続する点により形成される直線とが成す角度θに基づく感情推定を実行する。すなわち、
図9の例で言えば、点P
n-2と点P
n-1とを結ぶ直線と、点P
n-1と点P
nとを結ぶ直線とが成す角度θに基づく感情推定を行う。
【0045】
この角度θが90度に近づくほど、動物が何かにストレスを感じている(物音におびえる、叱られる等)傾向が高いことを発明者は発見した。また、この角度θが-90度に近づくほど、動物がリラックスしている状態にある傾向が高いことも発見した。
【0046】
したがって、制御部330は、ポワンカレ平面にプロットした、4つの点に基づいて求まる角度θを算出し、その角度に応じてストレスを感じているか否かを判断する。
【0047】
なお、pNNX解析による解析と異なる結果が得られる場合には、ストレスについては、ポワンカレプロット解析による解析結果を優先するものとする。
【0048】
また、制御部330は、心拍信号に基づいて、その単位時間辺りの心拍数が一定値以下になっているか否かを判断する。心拍数が一定値以下になっている状態が一定時間続く場合に、制御部330は、動物が眠気を感じていると判断する。なお、制御部330は、眠気があると判断した場合には、その他のストレス度や関心度がどのような状態であったとしても眠気があるとのみ判断する。
【0049】
制御部330は、このようにセンサー100から得た心拍信号に基づいてHRV解析を行うことにより動物の感情を推定する。
【0050】
通信部340は、無線により、ユーザのスマートホンなどの携帯端末と通信する機能を有し、制御部330から伝達された情報を、所定の通信プロトコルに従って、ユーザの携帯端末に送信する。送信された顔画像は、ユーザの携帯端末で表示され、ユーザは表示された顔画像を見て動物の感情を認識することができる。
【0051】
出力部200は、制御部330から伝達された顔画像を表示する機能を有する。出力部200は、例えば、並列して設けられた複数のLEDライトにより実現されてもよいし、小型のLCD等のモニターにより実現されてもよい。また、複数のLEDライトにより実現される場合には、制御部330は、顔画像ではなく、点灯すべきLEDライトを指定することとしてもよい。
【0052】
<データ>
図6は、動物感情推定装置1に記憶されている動物の状態に応じて表示すべき顔画像を示す顔画像表600のデータ概念図である。
【0053】
顔画像表600は、推定した動物の状態情報601と表示情報602とが対応付けられた表である。
【0054】
推定した動物の状態情報601は、動物の状態を示す情報であり、眠気の有無、ストレスの高低、関心度の高低の情報を含む。
【0055】
表示情報602は、推定した動物の状態情報601各々に対応する、出力部200が表示すべき顔画像を示す情報である。
【0056】
動物感情推定装置1は、顔画像表600によれば、眠気が「有」る場合には、ストレスや関心度に関わりなく、眠くなっている顔画像を表示する(顔画像表600の1段目を参照)。
【0057】
また、例えば、動物に、眠気が「無」く、ストレスが「高」く、関心度が「低い」場合には、動物にとって、不安に思っている、苛ついている等の状態にあることが推定され、目が×になり、口が弱っているような状態を示す顔画像を表示する(顔画像表600の3段目を参照)。
【0058】
動物感情推定装置1の制御部330は、顔画像表600をメモリ等に記憶しておくことで、顔画像表600を参照して、推定した動物の状態に対応する表示情報602を特定して、出力部200に表示させる。
【0059】
<動作>
図7は、動物感情推定装置1の動作を示すフローチャートである。
図7に示すように、動物感情推定装置1のセンサー100は、動物の生体情報を取得する(ステップS701)。本実施の形態においては、動物感情推定装置1は、マイクロフォン101から心拍音を含む音声信号を取得する。
【0060】
マイクロフォン101から集音された音声信号は、センサー処理回路310に伝達される。そして、センサー処理回路310により、音声信号は、フィルタリングされて、心拍信号に変換される(ステップS702)。センサー処理回路310は、心拍信号を制御部330に伝達する。
【0061】
制御部330は、伝達された心拍信号に基づき、HRV解析を行って、動物の感情を推定する(ステップS703)。すなわち、制御部330は、動物感情推定装置1を装着した動物が眠気を感じているか否か、ストレスを感じているか否か、そして、何かに関心を寄せているか否かを判定する。
【0062】
制御部330は、推定した感情に対応する顔画像を、顔画像表600を用いて決定する。そして、決定した顔画像を出力部200に出力する。
【0063】
すると、出力部200は、制御部330により指定された顔画像を表示する。動物感情推定装置1は、
図7に示す処理を、電源を入れてから、電源を切られるまで、繰り返し実行する。
【0064】
以上が、動物感情推定装置1の動作である。
【0065】
<まとめ>
上記実施の形態に示したように、実施の形態に係る動物感情推定装置1は、動物に着装されて、その心音を示す音声信号を取得する。そして、その音声信号に基づく心拍を特定し、その心拍に基づいて動物の感情を推定し、その感情を示す情報を出力することができる。したがって、ユーザは、その出力された情報を見て、動物がどのような感情を抱いているのかを一目に認識することができる。また、動物感情推定装置1は、センサー100として、その外部をスポンジ剤で覆うことにより、柔軟に変化する動物の皮膚との密着状態を維持でき、効率よく、適格に心音を取得することができる。
【0066】
<実施の形態2>
本実施の形態2に係る動物感情推定装置は、上記実施の形態1に示した場合とは異なり、出力部200は、顔画像を表示するではなく、発光する。そして、その発光色や、発光の仕方により、動物感情推定装置は、推定した動物の感情を表現する。以下、本実施の形態2に係る動物感情推定装置10について説明する。
【0067】
<構成>
図10は、本実施の形態2に係る動物感情推定装置10を動物(
図10の例では犬)が装着した状態を示す図である。また、
図11は、動物感情推定装置10の外観斜視図であって、(a)、(b)はそれぞれ異なる角度から見た動物感情推定装置10の外観を示している。
【0068】
図10、
図11に示すように、本実施の形態に係る動物感情推定装置10は、上記実施の形態1における顔画像を表示した出力部200に換えて、出力部1200を備える。出力部1200は、動物感情推定装置10の筐体150内部に設けられたLEDテープ11により実現される。筐体150は、内部に備えられたLEDテープ11が発する光を透過する半透明あるいは透明な樹脂により構成される。また、
図11に示されるように動物感情推定装置10は、装着対象の動物の胸回り及び胴回りにそれぞれベルト12a、12bを回して、動物感情推定装置10が装着した動物から外れないように装着する。
【0069】
図12は、動物感情推定装置10の機能構成を示すブロック図である。
図12に示すように、動物感情推定装置10は、センサー100と、センサー処理回路310と、電源部320と、通信部340と、出力部1200と、制御部1230と、記憶部1240とを備える。なお、本実施の形態2において、上記実施の形態1と機能が共通する機能部については、同じ符号を割り振って説明を割愛する。
【0070】
出力部1200は、様々な色の光を発光する発光媒体である。上述の通り、出力部1200は、例えば、LEDテープ11により実現される。出力部1200は、制御部1230からの指示に従って、指示された発光色、発光輝度、発光タイミングで発光する。LEDテープ11は、複数のLEDが連なって構成され、各LEDはそれぞれ個別に発光色、発光輝度、発光タイミングを制御できるものである。
【0071】
制御部1230は、センサー処理回路310から出力された心拍信号に基づいて動物の感情を推定し、推定した感情に基づいて、発光色、発光輝度、発光タイミングを決定し、決定した出力内容を出力部1200に伝達する。
【0072】
制御部1230は、心拍信号に基づいて特定される単位時間当たりの発光色を決定する。制御部1230は、記憶部1240に記憶されている基本色決定表1400を参照して、出力部1200を発光させる基本色を決定する。基本色決定表1400は、心拍数範囲と、その心拍数範囲に測定した心拍数が含まれる場合に発光する基本色が対応付けられた情報である。基本色決定表1400の詳細については後述する。そして、決定した基本色に対して、心拍数が隣接する他の心拍数範囲が近いほど、隣接する心拍数範囲の基本色を混ぜるようにして発光色を決定する。また、このとき混入させる混入色で発光させるLEDと、基本色で発光させるLEDとの間のLEDは、その中間色で発光させてグラデーションするように発光色を決定する。
【0073】
制御部1230は、上記実施の形態1に示した制御部330と同様に動物の感情を、心拍数の高低、NN50や、ポワンカレプロット解析によって推定する。制御部1230は、NN50により交感神経の活発度合及びポワンカレプロット解析に基づいて角度θの角度によって動物の幸福度及び集中度を特定する。
【0074】
例えば、制御部1230は、ポワンカレプロット解析により上記実施の形態1に示した角度θが動物が幸福を感じていると特定できる角度に近い、即ち、動物が幸福を感じている度合が高いと推定される場合ほど動物の幸福度が1に近くなるように、角度θが動物が幸福を感じていないと特定できる角度に近いほど動物の幸福度が0に近くなるように正規化する。そして、幸福度の数値(0~1)に応じて、出力部1200に他の色を混入させる度合を決定する。制御部1230は、幸福度が高い(1に近い)ほど輝度が高くなるように決定する。なお、角度θにおいて動物が幸福を感じていると特定できる角度や、動物が幸福を感じていないと特定できる角度は、動物の行動情報を観察し、そのときのポワンカレプロットの変動の仕方から、特定することができる。すなわち、動物が幸福を感じているという行動をしているときのポワンカレプロットにおけるθを、動物が幸福を感じているときの角度として設定するとよい。同様に、動物が幸福を感じていないという行動をしているときのポワンカレプロットにおけるθを、動物が幸福を感じていないときの角度として設定するとよい。
【0075】
また、例えば、制御部1230は、ポワンカレプロット解析により上記実施の形態1に示した点P
nと点P
n-1の直線距離と集中度の高低の関連性を行動観察と合わせることで特定し、集中度の高低を0~1の数値に変換する。そして、制御部1230は、特定した集中度に基づいて、LEDテープ11の明滅コントラストを決定する。明滅コントラストの決定とは、最高輝度から徐々に輝度を最低輝度に下げる、または、最低輝度から徐々に輝度を最高輝度に上げるまでの輝度の差分を決定することをいう。即ち、集中度に応じて、制御部1230は、LEDテープ11を発光させる最高輝度と最低輝度を決定する。
図13は、集中度に応じた明滅の例を示している。
図13(a)は、動物の集中度が高い場合の発光制御の様子を示したグラフであり、
図13(b)は、動物の集中度が低い場合の発光制御の様子を示したグラフである。
図13(a)に示すように動物の集中度が高いと判定した場合には、制御部1230は、最高輝度と最低輝度の差分が大きくなるように最高輝度と最低輝度を決定する。当該決定は、例えば、集中度の数値と、最高輝度及び最低輝度を対応付けたテーブルを記憶部1240に記憶しておき、制御部1230が当該テーブルを参照することで実現することができる。
図13(a)における最高輝度L1と、最低輝度L2との差分Laは、
図13(b)における最高輝度L3と、最低輝度L4との差分Lbよりも大きい。制御部1230は、
図13に示すような発光制御を、動物の集中度に応じて実行する。
【0076】
制御部1230はこのようにして決定した発光色、発光輝度、発光タイミングを出力部1200に伝達する。
【0077】
記憶部1240は、動物感情推定装置10が動作上必要とする各種プログラムやデータを記憶する機能を有する記憶媒体である、記憶部1240は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等により実現される。
【0078】
<データ>
図14は、本実施の形態に係る動物感情推定装置10が保持する基本色決定表1400のデータ構成例を示すデータ概念図である。
【0079】
図14に示すように基本色決定表1400は、基本色1401と、心拍数1402が対応付けられた情報である。
【0080】
基本色1401は、動物感情推定装置10が発光する基本色を定めた情報であり、ここでは、「青」、「緑」、「黄」、「赤」の4色がある例を示している。
【0081】
心拍数1402は、センサー100が計測した心拍数に基づいて発光する基本色を決定するための心拍数の範囲を示す情報である。心拍数1402は、ここでは1分ごとの回数を示している。
【0082】
図14に示す例であれば、基本色「青」には心拍数として「65回以下」が、基本色「緑」には心拍数として「66回~70回」が、基本色「黄」には心拍数として「71回~75回」が、基本色「赤」には心拍数として「76回以上」が対応付けられている。基本色決定表1400によれば、例えば、動物感情推定装置10のセンサー100が計測した心拍数が「74回」であれば、基本色として「黄」が選択されることになる。そして、心拍数が74回と、心拍数範囲が基本色「赤」の周波数範囲寄りになっているので制御部1230は、基本色を「黄」とし、そこに、「赤」を混ぜて発光させることを決定する。
【0083】
<動作>
図15は、本実施の形態2に係る動物感情推定装置10の動作を示すフローチャートである。
【0084】
動物感情推定装置10のセンサー100は、心拍をセンシングして音声信号を取得し、その音声信号をセンサー処理回路310に出力する。センサー処理回路310は、取得した音声信号を心拍信号に変換して、制御部1230に伝達する。制御部1230は、センサー処理回路310から心拍信号を取得する(ステップS1501)。
【0085】
制御部1230は、単位時間当たりの心拍数を特定する(ステップS1502)。そして、特定した心拍数に基づいて、基本色決定表1400を参照して、発光させる発光基本色を決定する(ステップS1503)。
【0086】
制御部1230は、LEDテープ11のうち、予め定められたLEDを基本色で発光させるLEDとして特定する。次に制御部1230は、取得した心拍信号に対して心拍解析(HRV解析)を行う(ステップS1504)。
【0087】
まず、制御部1230は、心拍解析(HRV解析)を行って、動物の感情として、幸福度を特定する。そして、制御部1230は、その幸福度の高低に応じて、LEDを発光させる際の基本色以外の色の混入度合いを特定する(ステップS1505)。すなわち、制御部1230は、幸福度が高いほど、色むらが多く見えるようにし、低いほど、色むらが少なく見えるように発光を制御する。具体的には、幸福度が1に近づくほど、混入する基本色以外の色の数が多くなり、0に近づくほど基本色以外の色の数が少なくなるテーブルを記憶部1240に記憶しておくことで、制御部1230は、当該テーブルを参照して混入色の数を決定する。そして、制御部1230は、決定した数の色を基本色以外から選択することで混入色を決定する。このとき、記憶部1240は、各基本色毎に混入する色のテーブルを決定した混入色の数に応じてテーブルを記憶しておいてもよく、制御部1230は、当該テーブルを用いて混入色を決定することとしてもよい。また、あるいは、制御部1230は、基本色決定表1400において、発光させると決定した基本色が該当する周波数領域に隣接する周波数領域に対応する色を混入色として決定することとしてもよい。制御部1230は、基本色で発光させるLED以外のLEDのうち所定のLEDについて決定した混入色で発行させ、その他のLEDについては、基本色から混入色の間でグラデーションするように色を決定し発光させる色を決定する。
【0088】
また、制御部1230は、心拍解析に基づいて、動物の感情として、集中度を特定する。そして、特定した集中度の高低に応じて、LEDを発光させる最高輝度と最低輝度とを決定する(ステップS1506)。制御部1230は、動物の集中度が高いほど、LEDの発光のコントラストが強くなるように発光タイミングを決定する。
【0089】
制御部1230は、決定した発光色、発光輝度、発光タイミングを、出力部1200に伝達する。出力部1200は、LEDテープ11の各LEDについて、伝達された発光色を指定されたLEDにおいて点灯させ、そのLEDを伝達された最高輝度と最低輝度との間で明滅するように発光させて(ステップS1507)、ステップS1501に戻る。
【0090】
動物感情推定装置10は、ユーザから、停止入力を受け付けるまで、本処理を繰り返し、その発光色や発光のさせ方で、推定した動物の感情を表現する。
【0091】
<まとめ>
本実施の形態2に係る動物感情推定装置10によれば、LEDの発光色や、発光強度(輝度)、発光タイミング(明滅の周期の遅い早い)によって、動物の感情を表現することができる。ユーザは、その発光を見て動物がどのような感情を抱いているのかを推定することが容易になる。例えば、青や緑で比較的穏やかに明滅していると、落ち着いて心安らかなのだろうと推定したり、赤や黄で比較的早く明滅していると、興奮しながらも集中しているのだろうと推定したりすることができる。
【0092】
<変形例>
上記実施の形態に本発明に係る発明の一実施態様を説明したが、本発明に係る思想がこれに限られないことは言うまでもない。以下、本発明に係る思想として含まれる各種変形例について説明する。
【0093】
(1)上記実施の形態において動物感情推定装置1に備えた通信部340は、必須の構成ではなく、ユーザが自身のスマートホン等の携帯端末で動物の感情に関する情報を受信する必要がないと考える場合には、備えずともよい。
【0094】
(2)上記実施の形態においては、センサー100は、集音器とし、心拍の音声を取得することとしたが、動物の感情を推定できる情報を取得するものであれば、その他のものであってもよい。例えば、脈拍計や、体温計などであってもよく、動物感情推定装置1が動物の感情を推定できる情報を提供できる機器であればよい。
(3)上記実施の形態においては、動物の感情を表現する手法として、出力部200に感情を示す顔画像を表示することとしたが、これはその限りではない。
【0095】
動物の感情をユーザに伝えられるのであれば、それ以外の手法を用いてもよく、例えば、文字や言葉を用いてもよいし、あるいは、LEDライトを用いて色で表現してもよい。
【0096】
例えば、文字や言葉で感情を伝える場合には、眠気がある場合には、「ねむい~」とか「ZZZ…」というように表現してもよいし、何か興味がある(ストレスが低くて興奮度が高い)ものを見つけた場合には、「なになに?」とか「!!」というように表現してもよい。動物感情推定装置1は、この場合、上記実施の形態における顔画像表600の代わりに、顔画像表600の表示情報602部分に文字情報を記憶した文字情報表を記憶して用いることにより、当該実施例を実現できる。
【0097】
また、感情を色で表す場合には、例えば、眠気がある場合には、LEDライトを緑色に点灯させ、興味があるものを見つけた場合には、LEDライトを桃色に点灯させることとしてもよい。動物感情推定装置1は、この場合、上記実施の形態における顔画像表600の代わりに、顔画像表600の表示情報602像部分に色情報を記憶した色情報表を記憶して用いることにより当該実施例を実現できる。
【0098】
また、出力部200は、これらを組み合わせて、その時々でランダムに表示する内容を、顔画像、色、文字の中から選択して表示することとしてもよい。
【0099】
(4)上記実施の形態においては、制御部330は、定期的にpNNX時間を算出することとしているが、これは、装着する動物の心拍の平均値を予め取得し、適切な値を制御部330のメモリに記憶しておくという手法をとってもよい。この場合、都度pNNXを算出する処理を行わなくてすむので、制御部330の処理負担を軽減することができる。
【0100】
(5)上記実施の形態においては、センサー100に備えるマイクロフォン101が1つである場合を例示したが、マイクロフォンの個数は1つに限るものではない。動物感情推定装置1は、2つ以上のマイクロフォンを備えて、より効率よく心拍音を含む音声を取得できる構成を備えてもよい。
【0101】
その一例を
図8に示す。
図8(a)に示すように、コの字型のスポンジ103a内部の一端に、台部102aとその底部にマイクロフォン101aを設け、多端に台部102bとその底部にマイクロフォン101bを設ける。台部とマイクロフォンの構成は、上記実施の形態1に示したものと同様である。
そして、動物感情推定装置1の装着具に
図8(b)に示すように設ける。
【0102】
こうすることで、一方が動物の皮膚から何らかの事情により離間して集音できなかった場合であっても、他方で集音できる可能性を高めることができる。したがって、動物の感情推定を途切れることなく実行できる可能性を高めることができ、装置としての信頼性を高めることができる。
【0103】
なお、
図8では、2つの場合を示しているが、3つでも良く、その場合にT字型にしてその端部に配することとしてもよい。また、あるいは、十字型にして、その端部や中央部に設けることとしてもよい。
【0104】
そして、マイクロフォンを複数用いる場合には、動物感情推定装置1は、音声信号として、各マイクロフォンから出力された音声信号の合成波を用いる構成を採用することとしてもよいし、音声信号を明瞭に取得できたマイクロフォンからの音声信号を選択して使用する構成であってもよい。
【0105】
なお、
図8(a)においては、コの字型のスポンジ103aを示しているが、これは、長方体であってもよい。
【0106】
(6)上記実施の形態におけるスポンジ103は、動物感情推定装置1を装着した動物の皮膚との密着状態を、動物が動いても維持できるものであれば、スポンジ以外の素材を用いてもよく、柔軟性があり、音声を伝播する特性を有する素材であれば、その他の素材を用いることとしてもよい。
【0107】
(7)上記実施の形態において、pNNX解析の秒数をR-Rインターバルの6.7%として算出する例を示したが、これは、6.7%以外の数値を用いてもよい。適宜、装着する動物に応じて、適切な値に設定して使用するとよい。
【0108】
(8)上記実施の形態においては、NN50など時間領域解析に基づくHRV解析を行ったが、センシングした心拍信号に対して離散フーリエ変換(高速フーリエ変換)を施し、周波数領域での解析を行って、動物の感情を推定することとしてもよい。具体的には、心拍間のばらつきをフーリエ変換にかけて、高周波成分と低周波成分の分布に応じて、交感神経系の活性度合いを特定する。このように、動物感情推定装置1、10は、周波数領域での解析により動物の感情を推定してもよい。
【0109】
(9)上記実施の形態2においては、特に記載していないが、動物感情推定装置10は、推定した動物の感情に基づいて決定した発光色、発光輝度、発光タイミングを外部の発光装置に伝達して、発光させることとしてもよい。例えば、内部にLEDを備えた剣を模した玩具の刀身を、発光させる構成をとってもよい。また、あるいは、動物を模した玩具の眼にLEDを設けて、そのLEDを発光させる構成をとってもよい。また、ペット・家畜用トイレにセンサーを設置して排泄時間を記録することで、排泄時の心拍を狙って記録することができ、尿結石、膀胱炎などの兆候を予測する一助とすることができる。具体的には、上記センサーが反応しているときの心拍信号の心拍解析を行って、動物が排泄をしているときに苦しんでいるかどうかを特定して、尿結石、膀胱炎等の病を患っている可能性を予測することができる。そのために動物感情推定装置10は、ペット・家畜用トイレに設置されているセンサーからの信号を受信して、その時の心拍信号にペット・家畜用トイレにいるときの動物の心拍信号であることを特定できる識別情報を心拍信号に付与することとしてもよい。これにより、動物感情推定装置10は、どの状態のときの心拍解析であるかを特定することができる。また、その心拍信号や心拍信号に基づく解析結果を外部に出力する際にもその識別情報を出力し、ユーザによる動物の心情解析に役立てることとしてもよい。
【0110】
(10)上記実施の形態においては、動物感情推定装置1、10が動物の感情を推定することとしているが、動物感情推定装置1、10は、センシングした心拍信号を通信部340が外部装置(例えば、ユーザの携帯端末)に送信し、外部装置が動物の感情を推定して、出力部200、1200が出力する情報を決定し、決定した顔画像や発光色を動物感情推定装置10に送信して、動物感情推定装置1、10の出力部200、1200が受信した顔画像や発光色を出力する構成としてもよい。
【0111】
(11)上記実施の形態2においては、出力部1200の一態様として発光するLEDテープ11を用いる例を説明したが、発光手段がLEDテープに限られないことは言うまでもない。例えば、個別に発光色制御が可能な複数のLED、あるいは、その他のランプにより実現することとしてもよい。
【0112】
(12)上記実施の形態2においては、特に記載していなかったが、発光に用いるLEDの発光面を装置内部側、即ち、動物に装着した際に、動物側に向くように、動物感情推定装置10に設けることとしてもよい。これは、LEDを直接外に向けて発光させると、場合によっては、発光が強すぎて、動物をカメラ等で撮影した場合に、画像が白飛びする可能性がある。しかし、LEDの発光面を装置内部方向に向けて配置する構成にすることによって、そのような可能性を抑制することができる。
【0113】
(13)動物感情推定装置1、10の各機能部は、集積回路(IC(Integrated Circuit)チップ、LSI(Large Scale Integration))等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを用いてソフトウェアによって実現してもよい。また、各機能部は、1または複数の集積回路により実現されてよく、複数の機能部の機能を1つの集積回路により実現されることとしてもよい。LSIは、集積度の違いにより、VLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIなどと呼称されることもある。すなわち、動物感情推定装置1は、例えば、
図16(a)に示すように、センサー100と、センサー処理回路310と、電源回路320aと、出力回路200aと、制御回路330aと、通信回路340aとから成るように構成してもよい。同様に動物感情推定装置10は、例えば、
図16(b)に示すように、センサー100と、センサー処理回路310と、電源回路320aと、出力回路1200aと、制御回路1230aと、通信回路340aと、記憶回路1240aとから成るように構成してもよい。なお、各回路は上記実施の形態に示した同名の各機能部と同様の機能を有する。
【0114】
動物感情推定装置1、10の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、各機能を実現するソフトウェアである動物感情推定プログラムの命令を実行するCPU、上記動物感情推定プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記動物感情推定プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記動物感情推定プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記動物感情推定プログラムは、当該動物感情推定プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。本発明は、上記動物感情推定プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0115】
なお、上記動物感情推定プログラムは、例えば、C言語、C++などのプログラミング言語、ActionScript、JavaScript(登録商標)などのスクリプト言語、Objective-C、Java(登録商標)などのオブジェクト指向プログラミング言語、HTML5などのマークアップ言語などを用いて実装できる。
【0116】
(14)本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。例えば、上記実施の形態で示した発光制御は一例であり、心拍数や心拍解析に基づいて行う発光制御の対応関係(基本色の決定、色むらの決定、発光輝度の決定の対応関係)は適宜変更してもよく、更には、発光の明滅周期を変更したりしてもよい。
【0117】
(15)上記実施の形態および各種変形例に示す構成を適宜組み合わせることとしてもよい。
【0118】
<補足>
ここで、本発明に係る集音器、動物感情推定装置及び動物感情推定方法について、その一実施態様と、当該態様により奏する効果を説明する。
【0119】
(a)本発明の一実施態様に係る集音器は、凹部を有する弾性部材と、凹部の底部に設けられた集音マイクと、弾性部材及び集音マイク全体を覆う衝撃吸収材とからなる。
【0120】
これにより、集音器は、衝撃吸収材があることにより、動物との密着状態を維持でき、凹部を有する弾性部材の底部に集音マイクを設けることで、凹部が面する方向の音声を効率よく集音できる。
【0121】
また、本発明の一実施態様に係る動物感情推定装置は、上記集音器と、集音器を動物に装着するための装着具と、集音器から集音された音をフィルタリングして心拍信号に変換する変換器と、心拍信号に基づいて、動物の感情を推定する推定部と、推定部により推定された感情を示す情報を出力する出力部とを備える。
【0122】
また、本発明の一実施態様に係る動物感情推定方法は、動物に装着して用いる動物感情推定装置による動物の感情を推定する動物感情推定方法であって、動物の心音を含む音声信号を取得する取得ステップと、取得された音声信号を心拍信号に変換する変換ステップと、心拍信号に基づいて動物の感情を推定する推定ステップと、推定された感情を示す情報を出力する出力ステップとを含む。
【0123】
これにより、動物感情推定装置は、動物の心拍信号に基づいて、動物の感情を推定し、推定した感情を示す情報を出力するので、ユーザは、一目に動物がどのような感情を抱いているのかを認識することができる。
【0124】
(b)上記(a)に係る集音器において、凹部は、パラボラ状に形成されていることとしてもよい。
【0125】
凹部がパラボラ状に形成されることにより、凹部が向いている方向の音声を効率よく集音できる。
【0126】
(c)上記(a)又は(b)に係る集音器において、衝撃吸収材は、スポンジであることとしてもよい。
【0127】
これにより、集音マイクの周囲をスポンジで覆われることになるので、スポンジの柔軟性により集音器による集音の対象との密着状態を維持し易くなる。
【0128】
(d)上記(a)に係る動物感情推定装置において、出力部は、動物の感情を点灯された色で示すLEDライトであることとしてもよい。
これにより、動物の感情を色で表現できる。したがって、ユーザは、動物の気分をある程度認識でき、意志疎通がしやすくなる。例えば、怒っていれば赤に点灯したり、のんびりしたり眠いときは緑に点灯したりすることで、動物感情推定装置は、動物の感情をユーザが認識できるようにすることができる。
【0129】
(e)上記(a)に係る動物感情推定装置において、出力部は、動物の感情を示す顔画像を表示する表示装置であることとしてもよい。
【0130】
これにより、動物感情推定装置は、ユーザに、一目で動物の感情を認識させることができる。
【0131】
(f)上記(a)、(d)、(e)のいずれかに係る動物感情推定装置において、推定部は、心拍信号に基づいて、動物の関心度及びストレス度を推定し、ストレス度及び関心度に基づいて動物の感情を推定することとしてもよい。
【0132】
これにより、動物感情推定装置は、動物の心拍信号に基づいて、動物のストレス度や関心度を推定することができる。そして、推定したストレス度や、関心度に基づいて動物の感情を推定することができる。
【0133】
(g)上記(a)、(d)~(f)のいずれかに係る動物感情推定装置において、推定部は、心拍信号に基づいて、第1の拍動と第1の拍動に連続する第2の拍動との間の第1心拍時間T1と、第2の拍動と第2の拍動に連続する第3の拍動との間の第2心拍時間T2と、第3の拍動と第3の拍動に連続する第4の拍動との間の第3心拍時間T3を特定し、横軸及び縦軸に心拍時間をとった座標系に、点Pn(T2,T1)と点Pn+1(T3,T2)をプロットした場合の、点Pnと点Pn+1との間の距離に基づいて、動物の関心度を推定することとしてもよい。
【0134】
これにより、動物感情推定装置は、心拍信号の拍動の間隔の推移に応じて、動物の関心度を推定することができる。
【0135】
(h)上記(a)、(d)~(g)のいずれかに係る動物感情推定装置において、推定部は、第4の拍動と、第4の拍動に連続する第5の拍動との間の第4心拍時間T4を特定し、点Pnと点Pn+1とを結んで得られる直線と、点Pn+1と、点Pn+2(T4,T3)とを結んで得られる直線とが成す角度に応じて、動物のストレス度を推定することとしてもよい。
【0136】
これにより、動物感情推定装置は、心拍信号の拍動の間隔の推移に応じて、動物のストレス度を推定することができる。したがって、動物感情推定装置は、そのストレス度の高低により、動物の快、不快を判断することができる。
【0137】
(i)上記(d)に係る動物感情推定装置において、推定部は、心拍信号に基づいて、単位時間当たりの心拍数を特定し、特定した心拍数に基づいてLEDを発光させる色を決定することとしてもよい。
【0138】
これにより、動物感情推定装置は、動物の感情の推定に寄与する心拍数に基づいて、感情を表す色を発光することができるので、ユーザは、動物感情推定装置が発光する発光色から動物の感情を容易に推定することができる。
【0139】
(j)上記(i)に係る動物感情推定装置において、動物感情推定装置は、単位時間当たりの心拍数の範囲に対して、LEDを発光させる基本色を対応付けて記憶する記憶部を備え、推定部は、心拍信号に基づいて、特定した単位時間当たりの心拍数に対応する基本色を特定してLEDを発光させる色を決定することとしてもよい。
【0140】
心拍数範囲に発光させる色を対応付けて記憶しておくことで、動物感情推定装置は、発光する基本色を決定することができる。
【0141】
(k)上記(j)に係る動物感情推定装置において、出力部は、LEDライトを複数備え、推定部は、複数のLEDのうち、基本色で発光させる基本色LEDを特定し、基本色LED以外の複数のLEDは、心拍信号に基づいて特定される心拍数の範囲に隣接する心拍数の範囲であって、心拍信号に基づいて特定される心拍数に近い方の範囲に対応付けられた色で発光させることとしてもよい。
【0142】
これにより、動物感情推定装置は、発光させる発光色によりバリエーションを持たせることができるので、多様な発光のさせ方で、多様な感情表現をすることができる。したがって、ユーザにとっても、見た目として楽しく興味を覚える発光のさせ方ができる。
【0143】
(l)上記(k)に係る動物感情推定装置において、推定部は、心拍信号に基づいて推定された動物の幸福度合を推定し、推定した幸福度合に基づいてLEDを発光させる際の色むらを特定することとしてもよい。
【0144】
これにより、動物感情推定装置は、動物の幸福度合に応じて、多様に色を混ぜて発光させたり、混ぜる色数を抑えて発光させたりすることができるので、ユーザに、動物の幸福度合を一目で特定させることができる。
【0145】
(m)上記(l)に係る動物感情推定装置において、推定部は、心拍信号に基づいて推定された動物の集中度合いを推定し、推定した集中度合いに基づいてLEDを明滅させる最高輝度と最低輝度とを特定することとしてもよい。
【0146】
これにより、動物感情推定装置は、動物の集中度合いを、発光の明滅間隔で表現することができるので、ユーザに、動物の物事に対する集中度合いを一目で認識させることができる。例えば、明滅の強度差が強ければ、何らかの事象に対して興味を強く持っている状態であることをユーザに認識させることができ、例えば、明滅の強度差が弱ければ、動物が穏やかな状態であることをユーザに認識させることができる。
【符号の説明】
【0147】
1 動物感情推定装置
100 センサー(集音器)
101、101a、101b マイクロフォン
102、102a、102b 台部(弾性部材)
103、103a スポンジ(衝撃吸収材)
110 配線
200 出力部
310 センサー処理回路
320 電源部
330 制御部
340 通信部