(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラント、製造方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20221104BHJP
C09J 171/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
C09J171/02
(21)【出願番号】P 2021078954
(22)【出願日】2021-05-07
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】202010381129.7
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521195788
【氏名又は名称】四川省威盾匠心建設有限公司
【氏名又は名称原語表記】SICHUAN WEIDUN JIANGXIN CONSTRUCTION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Section 6,Juntian Village,Qingliu Town,Xindu District,Chengdu,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐 先成
(72)【発明者】
【氏名】劉 勇
(72)【発明者】
【氏名】李 雷
(72)【発明者】
【氏名】夏 亮亮
(72)【発明者】
【氏名】王 用才
(72)【発明者】
【氏名】郭 偉
(72)【発明者】
【氏名】劉 亜▲ニー▼
(72)【発明者】
【氏名】王 建紅
(72)【発明者】
【氏名】唐 瑞甫
(72)【発明者】
【氏名】陳 林
(72)【発明者】
【氏名】任 广
(72)【発明者】
【氏名】王 丹帝
(72)【発明者】
【氏名】樊 軍
(72)【発明者】
【氏名】徐 麗
(72)【発明者】
【氏名】▲ミン▼ 麗
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-182350(JP,A)
【文献】特開昭59-024771(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109456725(CN,A)
【文献】特開2007-169441(JP,A)
【文献】国際公開第2012/070476(WO,A1)
【文献】特開平7-207166(JP,A)
【文献】特開2002-338947(JP,A)
【文献】特開昭63-63767(JP,A)
【文献】特表2015-508419(JP,A)
【文献】特開2020-176169(JP,A)
【文献】特開2021-55017(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110003843(CN,A)
【文献】特開2005-306891(JP,A)
【文献】特開2005-213445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10- 3/12
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高耐水性、
0.3MPa以下の低弾性率の1成分MSシーラントであって、重量部で次の成分
基礎MS樹脂、20~50重量部;
可塑剤、20~50重量部;
無機充填剤、50~150重量部;
チキソトロピー剤、3~10重量部;
耐候剤、2~8重量部;
耐水接着剤、1~5重量部;
触媒、0.05~1.0重量部;
MSシーラント専用カラーマスターバッチ、0.5~3重量部;
を含み、
ここで、耐
水接着剤は、次の成分(モル単位の重量部)
3官能基型アミノシランカップリング剤、1重量部;
2官能基型アミノシランカップリング剤、1重量部;
3官能基型エポキシシランカップリング剤、1~3
重量部
を含有することを特徴とする高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラント。
【請求項2】
請求項1に記載の高耐水・低弾性率の1成分MSシーラントであって、ベースMS樹脂が加水分解性シラン末端ポリエーテル材料であり、ベースMS樹脂の数平均分子量が10000~28000であり、以下の構造を持つことを特徴とする高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラント。
【化4】
【請求項3】
請求項1に記載の高耐水、低弾性率の1成分MSシーラントであって、前記3官能基型アミノシランカップリング剤は、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシランのうちの1種以上である;2官能基型アミノシランカップリング剤は、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシランのうちの1種以上である;3官能基型エポキシシランカップリング剤は、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロピル)プロピルトリメトキシシラン、γ-(2,3-エポキシプロポキシ)-プロピルトリメトキシシランのうちの1種以上であることを特徴とする高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラント。
【請求項4】
請求項1に記載の高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントであって、前記耐
水接着剤の製造方法は、次のステップ
調合によって原料を計量する、
3官能基型エポキシ系シランカップリング剤を75~85℃まで加熱し、30分以内に2官能基型アミノシランカップリング剤を段階的に滴下する、
30分以内に3官能基型アミノシランカップリング剤を段階的に滴下し、この温度で窒素ガスを2~5h通過させて反応させ、温度を下げて生成物を排出する
を有することを特徴とする高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラント。
【請求項5】
請求項1に記載の高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントであって、前記可塑剤が、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソノニル(DINCH)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジデシル(DPHP)のうちの1種以上であり
、無機充填剤は、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ナノ活性炭酸カルシウム、カオリン、シリカ粉末、タルク、水酸化アルミニウムのうちの1種以上であることを特徴とする高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラント。
【請求項6】
請求項1に記載の高耐水、低弾性率の1成分MSシーラントであって、前記チキソトロピー剤は、ポリアミドワックス、硬化ひまし油、乾式シリカ、有機ベントナイトのうちの1種以上であり、前記耐候剤は、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、置換アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤のうちの1種以上であることを特徴とする高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラント。
【請求項7】
請求項1に記載の高耐水、低弾性率の1成分MSシーラントであって、前記触媒がジブチルスズジラウリン酸、ジブチルスズジ酢酸、オクタン酸第一スズ、ジ(ドデシルスルフィド)ジブチルスズのうちの1種以上であることを特徴とする高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラント。
【請求項8】
請求項1に記載の高耐水、低弾性率の1成分MSシーラントであって、前記MSシーラント専用カラーマスターバッチは、二酸化チタン、カーボンブラック及びフタル酸ジイソデシル(DIDP)が質量比で2:1:7で構成されていることを特徴とする高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラント。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントの製造方法であって、以下の工程
調合によって原料を計量する、
基礎MS樹脂、可塑剤、無機充填剤、チキソトロピー剤と耐候剤を動混合機中で110℃で2h真空乾燥する、
密閉通冷却水で50℃以下に降温し、MSシーラント専用カラーマスターバッチを加えて15min攪拌し、さらに耐水接着剤を加えて30min攪拌し、最後に触媒を加えて10min攪拌し、真空脱泡15min後に排出して密封保存する
ことを含むことを特徴とする高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載された製造方法により得られた高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントの組立式建築分野における応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシーラントの技術分野に属し、高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントに関するものであり、具体的には高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラント、製造方法及びその応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
組立式建築は省エネ、材料節約、工期短縮、環境保護などの利点があり、1960年代から日本の建築業界で組立式建築が盛んになり、今でも組立式建築は日本の建築市場の半分を占めている。組立式建築は工場のプレハブ現場組立の方式を採用し、組立過程の中で2~3cm幅の継ぎ目を残すことができ、継ぎ目は性能の優れたシーリング材を充填する必要がある。現在組立式建築に用いるのは伝統的なシリコーンシーリング材、ポリウレタンシーリング材及びMSシーリング材があり、伝統的なシリコーンシーリング材の弾性率が高くて、耐汚染性が低い。ポリウレタンシーリング材は耐候性が悪く、ひび割れやすい。MSシーリング材はシリコーンシーリング材とポリウレタンシーリング材の利点を兼ね備え,良好な接着性・耐候性・柔軟性・塗装性などの利点を有している。
【0003】
MSポリマーはシラン末端ポリエーテルベースの架橋ポリマーであり、シリコーン成分と溶剤を含まず、ポリウレタン基を含まず、ほとんどの配合は無臭で環境に無害、MS接着剤とシーラントの固有弾性は、動的荷重を吸収し補償することができ、応力を均一に伝達し、材料の早期疲労を防ぐ。MSシーラントは複数の基材間の接着を実現することができる。
【0004】
国内の組立式建築のシーリング材は標準、規範がない、その上、施工品質が保証されていないため、組立式建築に用いるシーリング材の品質が不揃い、シリコーン接着剤とポリウレタンシーリング材がMSシーリング材と詐称することもあり、又は継ぎ目に脱糊、漏水、耐変位差などの問題が現れ、組立式建築の推進に多くの障害をもたらした。実際の応用では、シリコーンシーリング材であっても、ポリウレタンシーリング材であっても、MSシーリング材であっても、良好なシール防水効果を達成するためには、対応するアンダーコート剤による基層処理が必要である。現場組立式建築のシーリング材の応用経験はすべて日本を参考にし、ほとんどは2成分MSシールを使用し、現場で混合攪拌し、真空脱泡する必要がある。しかし現場の施工者の資質はまちまちのため、基層の処理が不徹底、混合が不均一、脱泡が不徹底などの問題がよく現れる。1成分のMSシーリング材も品質不合格、高弾性率、耐水性・耐変位能力が低い、シリコーン接着剤とポリウレタンシーリング材の偽りなど様々な問題があり、最終的に継ぎ目のシール防水性能が不十分、水が漏れ、甚だしきに至っては組立式建築の使用寿命を短縮することを招く。応用過程の中で上述の問題を解决し、中国式組立式建築に適応させるためには、特に下塗りなしで優れた耐水性、接着性を持ち、下塗り処理後、更に性能が優れた低弾性率1成分MSシーラントが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存のシーリング材の組立式建築分野への応用に存在する技術的欠陥に対し、本出願人は一連の研究作業を経て、組立式建築用の高耐水性、低弾性率の1成分MSシーリング材を発明し、中国式組立式建築の現場応用に極めて適している。本発明の一成分MSシーラントは、現場で混合する必要がなく、施工が容易であり、組立式コンクリート部材との接着性に優れ、低弾性率で高耐水性であり、下塗りなしで10d浸水して養生した後の引張破断接着はMSシーラント100%凝集破壊であり、浸水後の定伸長下での接着は破壊されず、組立式建築物のシーリング防水性能を大幅に向上させ、組立式建築物の目地合わせに広く適用することができる。
【0006】
本発明の第一の目的は、高耐水性、低弾性率の一成分MSシーラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するには、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントであって、次の成分を含む。
基礎MS樹脂、20~50重量部;
可塑剤、20~50重量部;
無機充填剤、50~150重量部;
チキソトロピー剤、3~10重量部;
耐候剤、2~8重量部;
耐水接着剤、1~5重量部;
触媒、0.05~1.0重量部;
MSシーラント専用カラーマスターバッチ、0.5~3重量部。
ここで、耐水性接着剤は、次の成分(モル単位の質量部)を含有する。
3官能基型アミノシランカップリング剤、1重量部。
2官能基型アミノシランカップリング剤、1重量部。
3官能エポキシシランカップリング剤1~3重量部。
【0008】
本発明は,基礎MS樹脂、可塑剤、無機充填剤、チキソトロピー剤、耐候剤系に耐水接着剤を導入し、各成分の配合比を調整することにより、組立式建築用に適した高耐水低弾性率1成分MSシーラントを作製した。耐水接着剤は、3官能基型アミノシランカップリング剤、2官能基型アミノシランカップリング剤および3官能基型エポキシシランカップリング剤からなるシラン低重合体であり、MSシーリング材の耐水性を向上させるだけでなく、MSシーリング材の弾性率を低下させることができる。
【0009】
ベースのMS樹脂は加水分解性シラン末端ポリエーテル材料であることが好ましい。
【0010】
より好ましくは、前記ベースMS樹脂の数平均分子量が10000~28000、
さらに好ましくは、前記ベースMS樹脂の末端基は加水分解性シラン基であり、加水分解性シラン基はトリメトキシシリル基またはメチルジメトキシシリル基であり、以下の構造を有する。
【化1】
【0011】
前記3官能基型アミノシランカップリング剤は、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシランの1種以上であることが好ましい。
【0012】
前記2官能基型アミノシランカップリング剤は、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシランの1種以上であることが好ましい。
【0013】
前記3官能基型エポキシシランカップリング剤は、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、β-(3、4エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン、3-(2、3-エポキシプロピル)プロピルトリメトキシシラン、γ-(2、3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシランのうちの1種以上であることが好ましい。
【0014】
好ましい耐水性接着剤の製造方法は、次のステップである。
3官能基型アミノシランカップリング剤、2官能基型アミノシランカップリング剤及び3官能基型エポキシシランカップリング剤のモル比は1:1:1~1:1:3で、調合によって原料を計量し、3官能基型エポキシ系シランカップリング剤を75~85℃に加熱し、30分以内に2官能基型アミノシランカップリング剤を段階的に滴下し、その後30分以内に3官能基型アミノシランカップリング剤を段階的に滴下し、この温度で窒素ガスを2~5h通過させて反応させ、温度を下げて生成物を排出する。
可塑剤は、シクロヘキサン-1、2-ジカルボン酸ジイソノニル(DINCH)、フタル酸ジイソデシル(DIDP、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジデシル(DPHP)の1種以上であることが好ましい。
【0015】
無機充填剤は、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ナノ活性炭酸カルシウム、カオリン、シリカ粉末、タルク、水酸化アルミニウムのうちの1種以上であることが好ましい。
【0016】
チキソトロピー剤は、ポリアミドワックス、硬化ひまし油、気相法シリカ、有機ベントナイトのうちの1種以上であることが好ましい。
【0017】
耐候剤は、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、フェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、置換アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤のうちの1種以上であることが好ましい。
【0018】
触媒は、ジブチルスズジラウリン酸、ジブチルスズジ酢酸、オクタン酸第一スズ、ジ(ドデシルチオ)ジブチルスズの1種以上であることが好ましい。
【0019】
MSシーラント専用カラーマスターバッチは、二酸化チタン、カーボンブラック及びフタル酸ジイソデシル(DIDP)を質量比2:1:7の割合で配合することが好ましい。
【0020】
本発明の第二の目的は、前述の高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントの製造方法を提供することで、以下のステップを含む。
【0021】
調合によって原料を計量する。基礎MS樹脂、可塑剤、無機充填剤、チキソトロピー剤と耐候剤を動混合機中で110℃で2h真空乾燥し、密閉状態で冷却水を流して50℃以下に降温させ、MSシーラント専用カラーマスターバッチを加えて15min攪拌し、さらに耐水接着剤を加えて30min攪拌し、最後に触媒を加えて10min攪拌し、真空脱泡15min後に排出して密封保存する。
【0022】
本発明の第三の目的は、上記の製造方法により得られた高耐水性、低弾性率の一成分MSシーラントと、組立式建築分野におけるその応用を提供することである。本発明の1成分MSシーラントは、現場で混合する必要がなく、施工が容易であり、組立式コンクリート部材との接着性に優れ、低弾性率で高耐水性であり、下塗りなしで10d浸水して養生した後の引張破断接着はMSシーラント100%凝集破壊であり、浸水後の定伸長下での接着は破壊されず、組立式建築物のシーリング防水性能を大幅に向上させ、組立式建築物の目地合わせに広く適用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、以下の利点および有益な効果を有する。
1.本発明は、高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントを提供することを目的とする。耐水性接着剤を導入することで、MSシーラントと組立コンクリート部材との耐水接着性が大幅に向上し、屋外環境に長期間適用しても優れた接着性とシール防水性を有し、下塗りなしで10d浸水後の引張破断接着はMSシーラントの100%凝集破壊であり、浸水後の定伸長下での接着は破壊されず、組立建築物のシール防水性が大幅に向上する。
2.本発明の高耐水低弾性率1成分MSシーラントは、固定伸長下での度が0.3MPa以下の低弾性率であり、変形の大きい合わせ目地に対して優れた接着性と耐変位性を有する。
3.本発明に記載された高耐水低弾性率の1成分MSシーラントは、施工が簡単で便利であり、現場で混合する必要がなく、開封後そのまま使用することができ、2成分による現場施工管理及び付帯機械設備の複雑性などの問題を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施例に関連し、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。説明された実施例は本発明の一部の実施例にすぎず、明らかにすべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を要することなく入手した他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0025】
実施例1
高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントであって、重量部で次の成分が含む。
ベースMS樹脂:分子構造
【化2】
数平均分子量10000、50重量部;
可塑剤は、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソノニル(DINCH)、50重量部;
無機充填剤は、重質炭酸カルシウム及びタルク、150重量部;
チキソトロピー剤は、硬化ひまし油、10重量部;
耐候剤は、サリチル酸エステル類紫外線吸収剤、フェノン類紫外線吸収剤、8重量部;
触媒は、カプリル酸第一スズ、ジ(ドデシル硫黄)ジブチルスズ、1重量部。
MSシーラント専用カラーマスターバッチは、二酸化チタン、カーボンブラックとフタル酸ジイソデシル(DIDP)の質量比2:1:7配合、3重量部。
耐水性接着剤5重量部。ここで、耐水性接着剤は、次の成分(モル単位の質量部)を含有する。
3官能基型アミノシランカップリング剤、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、1重量部;2官能基型アミノシランカップリング剤、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1重量部;3官能基型エポキシシランカップリング剤、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリメトキシシラン、3重量部;3官能基型エポキシ系シランカップリング剤を75~85℃に加熱し、30分以内に2官能基型アミノシランカップリング剤を段階的に滴下した後、30分以内に3官能基型アミノシランカップリング剤を段階的に滴下し、この温度で窒素ガスを2~5h通過させて反応させ、温度を下げて生成物を排出する。
【0026】
高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントの製造方法は、次のステップを含む。
調合によって原料を計量する。基礎MS樹脂、可塑剤、無機充填剤、チキソトロピー剤と耐候剤を動混合機中で110℃で2h真空乾燥し、密閉状態で冷却水を流して50℃以下に降温し、MSシーラント専用カラーマスターバッチを加えて15min攪拌し、さらに耐水接着剤を加えて30min攪拌し、最後に触媒を加えて10min攪拌し、真空脱泡15min後に排出して密封保存する。
【0027】
実施例2
高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントであって、重量部で次の成分を含む。
ベースMS樹脂分子構造は次のとおり。
【化3】
数平均分子量は10000~28000、20重量部;
可塑剤、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、20重量部;
無機充填剤、軽質炭酸カルシウム、シリコン微粉末、50重量部;
チキソトロピー剤、気相法シリカ、有机ベントナイト、3重量部;
耐候剤、ヒンダードアミン系光安定剤、2重量部;
触媒、ジブチルスズ二酢酸塩、0.05重量部;
MSシーラント専用カラーマスターバッチ、二酸化チタン、カーボンブラックとフタル酸ジイソデシル(DIDP)を質量比2:1:7で組成、0.5重量部。
耐水性接着剤、1重量部。ここで、耐水性接着剤は、次の成分(モル単位の質量部)を含有する。
3官能基型アミノシランカップリング剤、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、1重量部;2官能基型アミノシランカップリング剤、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、1重量部;3官能基型エポキシシランカップリング剤、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、β-(3、4エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン、3-(2、3-エポキシプロピル)プロピルトリメトキシシラン、γ-(2、3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、1重量部;耐水性接着剤の製造方法は実施例1と同様である。
本実施例で述べた高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントの製造方法は、実施例1と同じである。
【0028】
実施例3
基礎MS樹脂、25重量部;
可塑剤、フタル酸ジイソノニル(DINP)、25重量部;
無機充填剤、ナノ活性炭酸カルシウム、50重量部;
チキソトロピー剤、ポリアミドワックス、5重量部;
耐候剤、2重量部;
MSシーラント専用カラーマスターバッチ、2重量部;
耐水接着剤、実施例1の耐水接着剤、2重量部;
触媒、ラウリン酸ジブチルスズ、0.5重量部;
本実施例で述べた高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントの製造方法は、実施例1と同じである。
【0029】
実施例4
基礎MS樹脂、25重量部;
可塑剤、フタル酸ジイソノニル(DINP)、25重量部;
無機充填剤、ナノ活性炭酸カルシウム、50重量部;
チキソトロピー剤、ポリアミドワックス、5重量部;
耐候剤、2重量部;
MSシーラント専用カラーマスターバッチ、2重量部;
耐水接着剤、実施例2の耐水接着剤、3.5重量部;
触媒、ラウリン酸ジブチルスズ、0.5重量部;
本実施例で述べた高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントの製造方法は、実施例1と同じである。
【0030】
実施例5
基礎MS樹脂、25重量部;
可塑剤、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、25重量部;
無機充填剤、ナノ活性炭酸カルシウム50重量部、重質炭酸カルシウム20部;
チキソトロピー剤、ポリアミドワックス、5重量部;
耐候剤、2重量部;
MSシーラント専用カラーマスターバッチ、2重量部;
耐水接着剤、実施例1の耐水接着剤、2重量部;
触媒、ラウリン酸ジブチルスズ、0.5重量部。
本実施例で述べた高耐水性、低弾性率の1成分MSシーラントの製造方法は、実施例1と同じである。
【0031】
実施例6
基礎MS樹脂、25重量部;
可塑剤、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、25重量部;
無機充填剤、ナノ活性炭酸カルシウム50重量部、シリコン微粉末20重量部;
チキソトロピー剤、ポリアミドワックス、5重量部;耐候剤、2重量部;
MSシーラント専用カラーマスターバッチ、2重量部;
耐水接着剤、実施例1の耐水接着剤、5重量部;
触媒、ラウリン酸ジブチルスズ、0.5重量部。
【0032】
実施例7 実施例1の比較例
基礎MS樹脂、25重量部;
可塑剤、DINP、25重量部;
無機充填剤、ナノ活性炭酸カルシウム、50重量部;
ポリアミドワックス、5重量部;
耐候剤、2重量部;
MSシーラント専用カラーマスターバッチ、2重量部;
γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、2重量部;
触媒、ラウリン酸ジブチルスズ、0.5重量部。
【0033】
実施例8 試験で比較
実施例3~6で得られた高耐水性低弾性率1成分MSシーラントと実施例1の比較実施例7と比較して試験比較を行い、性能試験の方法又は基準は次の通りである。
(1)引張弾性率試験標準GB/T13477.8-2017に準拠して試験し、材料はコンクリート標準試験ブロックであり、寸法は75*25*2mm、接着面積は12mm*12mm*50mmであり、標準条件23±2℃、相対湿度50±5%で28d養生する。
(2)常温定伸長下での接着性試験GB/T13477.10-2017に基づいてサンプル試験を行い、標準条件で28d養生し、定伸長下での度100%。
(3)浸水後定伸長下での接着性試験GB/T13477.11-2017に基づいてサンプル作成試験を行い、標準条件で28日間養生し、10d水に浸した後、標準条件で1d乾燥した後に試験を行う。
(4)浸水後の引張接着性試験GB/T13477.8-2017に基づいてサンプル作成試験を行い、標準条件で28d養生し、試験サンプルを引張して破壊し、破壊状況を記録する。
【0034】
【0035】
試験片は引張破壊まで、破壊の状況によって一般的に接着界面破壊あるいは凝集破壊に分け、凝集破壊はコロイド内部から破壊し、これはMSシーラントのコンクリートに対する接着力が良いことを表明する。界面破壊とは、MSシーリング材とコンクリートの界面で接着剤が破壊されること、MSシーリング材とコンクリートの接着力が低いことを示す。
【0036】
以上の試験結果から、本発明における耐水接着剤の添加により、MSシーラントとコンクリートとの接着性に優れ、低弾性率、高耐水性が可能であり、下塗りなしで10d浸水養生後の引張破断接着はMSシーラント100%凝集破壊であり、浸水後の定伸長下での接着は破壊せず、組立建築分野への応用に非常に適していることが分かった。
【0037】
本発明の実施例が示され説明されているが、本発明の原理および精神から逸脱することなく、様々な変更、修正、置換および変形が可能であることは、当業者にとって自明であろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義される。