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特許7169703赤外線透過フィルタ、および赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルム
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  • 特許-赤外線透過フィルタ、および赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルム 図1
  • 特許-赤外線透過フィルタ、および赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルム 図2
  • 特許-赤外線透過フィルタ、および赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルム 図3
  • 特許-赤外線透過フィルタ、および赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルム 図4
  • 特許-赤外線透過フィルタ、および赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】赤外線透過フィルタ、および赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20221104BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221104BHJP
【FI】
G02B5/22
B32B7/023
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021181829
(22)【出願日】2021-11-08
【審査請求日】2021-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114813
【氏名又は名称】ヤマックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松木 数磨
(72)【発明者】
【氏名】碓井 浩司
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-257721(JP,A)
【文献】特開平07-056011(JP,A)
【文献】特開2004-198617(JP,A)
【文献】国際公開第2021/220946(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線透過性を有するブラック層と、
前記ブラック層の少なくとも一部と、直接的または間接的に重なる、意匠層とを備える赤外線透過フィルタであって、
透明性を有する基材をさらに備え、
前記意匠層が、複数の第1色ドットにより構成された第1色パターン層、および前記第1色パターン層の少なくとも一部に重なる、複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層を備え、
前記意匠層が、前記第1色パターン層の少なくとも一部、および/または前記第2色パターン層の少なくとも一部に重なる、複数の第3色ドットにより構成された第3色パターン層をさらに備え、
前記意匠層が、複数の第4色ドットにより構成された第4色パターン層をさらに備え、
前記第1色ドット、前記第2色ドット、前記第3色ドット、および前記第4色ドットのうちで、前記第1色ドットが前記基材に最初に印刷されており、
前記第1色ドット、前記第2色ドット、前記第3色ドット、および前記第4色ドットのうちで、前記第1色ドットの彩度が最も低く、かつ、前記第1色ドットの明度が最も高く、
前記赤外線透過フィルタが、少なくとも前記第1色パターン層前記第2色パターン層、前記第3色パターン層、および前記第4色パターン層により構成されたデザインを有しており、前記デザインが、模様、絵、および写真の少なくとも一つを含み、
前記第1色ドットがパール顔料を含み、
前記第2色ドットがパール顔料を含
前記第3色ドットがパール顔料を含み、
前記第4色ドットがパール顔料を含む、
赤外線透過フィルタ。
【請求項2】
全面にわたって赤外線透過性を有する、請求項1に記載の赤外線透過フィルタ。
【請求項3】
赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルムであって、
意匠層を備え、
透明性を有する基材をさらに備え、
前記意匠層が、複数の第1色ドットにより構成された第1色パターン層、および前記第1色パターン層の少なくとも一部に重なる、複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層を備え、
前記意匠層が、前記第1色パターン層の少なくとも一部、および/または前記第2色パターン層の少なくとも一部に重なる、複数の第3色ドットにより構成された第3色パターン層をさらに備え、
前記意匠層が、複数の第4色ドットにより構成された第4色パターン層をさらに備え、
前記第1色ドット、前記第2色ドット、前記第3色ドット、および前記第4色ドットのうちで、前記第1色ドットが前記基材に最初に印刷されており、
前記第1色ドット、前記第2色ドット、前記第3色ドット、および前記第4色ドットのうちで、前記第1色ドットの彩度が最も低く、かつ、前記第1色ドットの明度が最も高く、
前記第1色ドットがパール顔料を含み、
前記第2色ドットがパール顔料を含
前記第3色ドットがパール顔料を含み、
前記第4色ドットがパール顔料を含む、
フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線透過フィルタ、および赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
リモコンの受光部や、携帯電話の赤外線受信部などに赤外線透過フィルタを使用することが知られている。赤外線透過フィルタは、可視光を吸収することによって可視光を遮蔽するとともに、赤外線(たとえば近赤外線)領域の光を透過させることができる。赤外線透過フィルタを、リモコン(たとえばリモコンの受光部)や、携帯電話(たとえば携帯電話の赤外線受信部)といった機器に使用することによって、可視光の機器への影響(たとえば誤作動)を抑えることができる。赤外線透過フィルタは、そのような機能を果たすことから、可視光カットフィルタと呼ばれることもある。
【0003】
赤外線透過フィルタは、可視光を吸収するため黒色を呈する製品が一般的であるところ、赤外線透過フィルタにデザインを施す試みがなされたことがある(特許文献1参照)。そのような試みがなされた赤外線透過フィルタに関して、たとえば、特許文献1には、赤外線透過フィルター層と、赤外線透過フィルター層上に、パール顔料を含有する透かし模様層とを備える全面パネル用転写材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-56011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の全面パネル用転写材は、デザインの幅に大きな制約がある。なぜなら、透かし模様層が、単一のインキで形成されているためである。よって、この全面パネル用転写材で、たとえば、絵や写真といった、色分解を経るデザインを、転写先のパネルに付与することは難しい。
【0006】
本発明は、幅広いデザイン(たとえば、模様、絵、写真といったデザイン)を施すことができる赤外線透過フィルタを提供することを目的とする。本発明はまた、赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明は、下記項1の構成を備える。
【0008】
項1
赤外線透過性を有するブラック層と、
前記ブラック層の少なくとも一部と、直接的または間接的に重なる、意匠層とを備え、
前記意匠層が、複数の第1色ドットにより構成された第1色パターン層、および前記第1色パターン層の少なくとも一部に重なる、複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層を備え、
前記第1色ドットがパール顔料を含み、
前記第2色ドットがパール顔料を含む、
赤外線透過フィルタ。
ここで、「複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層」が、「前記第1色パターン層の少なくとも一部に重なる」とは、意匠層を垂線方向で見たときに、両者(すなわち、第1色パターン層および第2色パターン層)が重なった領域において、第1色ドットと第2色ドットとが混在することを意味する。なお、この領域では、第2色ドットの少なくとも一つが、第1色ドットの少なくとも一つに重なっていてもよい。
【0009】
項1によれば、赤外線透過フィルタが、赤外線透過性を有するブラック層を備えるため、赤外線を透過しつつ、可視光を吸収することができる。そのため、たとえば、可視光の透過に起因する機器(具体的には、赤外線透過フィルタを装着した機器)の誤作動の発生を防止することができる。
【0010】
しかも、赤外線透過フィルタが意匠層をさらに備えるため、赤外線透過フィルタにデザインを持たせることができる。
【0011】
そのうえ、意匠層が、パール顔料を含有する第1色パターン層、および第1色パターン層の少なくとも一部に重なる、パール顔料を含有する第2色パターン層を備えるため、混色が可能であり、それによって、幅広いデザイン(たとえば、模様、絵、写真といったデザイン)を施すことが可能となる。その結果、赤外線透過フィルタを機器に装着することによって、そのデザインを機器に付与することができる。
【0012】
本発明は、下記項2以降の構成をさらに備えることが好ましい。
【0013】
項2
前記意匠層が、前記第1色パターン層の少なくとも一部、および/または前記第2色パターン層の少なくとも一部に重なる、複数の第3色ドットにより構成された第3色パターン層をさらに備え、
前記第3色ドットがパール顔料を含む、
項1に記載の赤外線透過フィルタ。
ここで、「複数の第3色ドットにより構成された第3色パターン層」が、「前記第1色パターン層の少なくとも一部、および/または前記第2色パターン層の少なくとも一部に重なる」とは、意匠層を垂線方向で見たときに、第3色パターン層と、第1色パターン層および第2色パターン層の少なくとも一方とが重なった領域において、第3色ドットと、第1色ドットおよび第2色ドットの少なくとも一方とが混在することを意味する。なお、この領域では、第3色ドットの少なくとも一つが、第1色ドット少なくとも一つ、および/または第2色ドットの少なくとも一つに重なっていてもよい。
【0014】
項2によれば、意匠層が、第1色パターン層、および/または第2色パターン層に少なくとも部分的に重なる、パール顔料を含有する第3色パターン層を備えるため、混色が可能であり、それによって、デザインの幅をいっそう広げることができる。たとえば、第1色ドット、第2色ドット、および第3色ドットの色の組み合わせが、加法混色の三原色である場合、加法混色が可能であり、それによって、デザインの幅をいっそう広げることができる。
【0015】
項3
透明性を有する基材をさらに備える、請求項1または2に記載の赤外線透過フィルタ。
【0016】
項3によれば、赤外線透過フィルタが基材を備えるため、たとえば、ブラック層、意匠層、および基材が、赤外線透過フィルタの厚み方向にこの順に並んでいる場合、ブラック層や意匠層を基材で保護することができる。しかも、基材が透明性を有するため、基材越しに意匠層を視認することができる。いっぽう、ブラック層、基材、および意匠層が、赤外線透過フィルタの厚み方向にこの順に並んでいる場合には、ブラック層を基材で保護することができる。
【0017】
項4
全面にわたって赤外線透過性を有する、項1~3のいずれかに記載の赤外線透過フィルタ。
【0018】
項4によれば、赤外線透過フィルタが、全面にわたって赤外線透過性を有する、すなわち、赤外線透過性を有さない層(以下、「赤外線カット層」ということがある。)を備えないため、その層を形成するためのコストを低減することができる。
【0019】
項5
赤外線透過フィルタを加飾するためのフィルム(以下、「加飾用フィルム」と言うことがある。)であって、
意匠層を備え、
前記意匠層が、複数の第1色ドットにより構成された第1色パターン層、および前記第1色パターン層の少なくとも一部に重なる、複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層を備え、
前記第1色ドットがパール顔料を含み、
前記第2色ドットがパール顔料を含む、
フィルム。
【0020】
項5によれば、フィルムが意匠層を備えるため、このフィルムで、未加飾の赤外線透過フィルタ(たとえば、黒色を呈する赤外線透過フィルタ)を加飾することによって、赤外線透過フィルタにデザインを付与することができる。
【0021】
しかも、意匠層が、パール顔料を含有する第1色パターン層、および第1色パターン層の少なくとも一部に重なる、パール顔料を含有する第2色パターン層を備えるため、混色が可能であり、それによって、幅広いデザイン(たとえば、模様、絵、写真といったデザイン)を施すことが可能となる。
【0022】
その結果、加飾用フィルムによって、赤外線透過フィルタ、たとえば未加飾の赤外線透過フィルタを加飾することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態における赤外線透過フィルタの概略断面図である。
図2】(a)および(b)は、本実施形態における赤外線透過フィルタからブラック層を省いた上で部分拡大した図である。(a)は、意匠層を手前に配置したうえで赤外線透過フィルタ(具体的には、ブラック層が省かれた赤外線透過フィルタ)を垂線方向で見た場合の概略図、すなわち概略平面図である。いっぽう、(b)は、(a)に示されたIIb切断線で赤外線透過フィルタ(具体的には、ブラック層が省かれた赤外線透過フィルタ)を切断した際の概略断面図である。
図3】本実施形態における加飾用フィルムの概略断面図である。
図4】本実施形態の変形例に係る赤外線透過フィルタの概略断面図である。
図5】本実施形態の変形例に係る赤外線透過フィルタの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
<1.赤外線透過フィルタ>
図1に示すように、本実施形態の赤外線透過フィルタ8は、ブラック層81と、意匠層82とを備える。すなわち、赤外線透過フィルタ8は、ブラック層81だけで構成される訳ではなく、意匠層82を備えている。赤外線透過フィルタ8は、基材83、すなわち基材フィルム83をさらに備える。赤外線透過フィルタ8は、赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合にブラック層81を取り囲むように設けられた層(以下、「周辺層」)84をさらに備える。
【0026】
赤外線透過フィルタ8の少なくとも一部において、基材83、意匠層82、およびブラック層81が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいる。すなわち、これら(具体的には、基材83、意匠層82、およびブラック層81)が、赤外線透過フィルタ8の垂線方向にこの順に並んでいる。ここで、「基材83、意匠層82、およびブラック層81が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいる」という表現は、基材83および意匠層82の間と、意匠層82およびブラック層81の間との少なくとも一方に、他の層が存在することを許容する。「この順に並んでいる」という記載を含む他の表現も、同様である。
【0027】
<1.1.基材>
赤外線透過フィルタ8は、透明性を有する基材83を備える。赤外線透過フィルタ8が基材83を備えるため、ブラック層81や意匠層82を基材83で保護することができる。しかも、基材83が透明性を有するため、基材83越しに意匠層82を視認することができる。なお、基材83は、赤外線透過性も有する。
【0028】
基材83として、たとえば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどを例示することができる。ポリエステルフィルムとして、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)などを例示することができる。ポリオレフィンフィルムとして、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを例示することができる。なお、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。
【0029】
基材83の片面または両面には易接着処理が施されていてもよい。すなわち、基材83は、たとえば、プラスチック層と、プラスチック層の少なくとも一方の面に易接着層とを有していてもよい。なお、プラスチック層は、単層構成であってもよく、複層構成であってもよい。
【0030】
基材83の厚みは、たとえば、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。基材83の厚みは、たとえば、1000μm以下であってもよく、700μm以下であってもよく、500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよい。
【0031】
<1.2.意匠層>
赤外線透過フィルタ8は意匠層82を備える。赤外線透過フィルタ8が意匠層82をさらに備えるため、赤外線透過フィルタ8にデザインを持たせることができる。なお、意匠層82は、赤外線透過性を有する。
【0032】
意匠層82は基材83に設けられていることができる。具体的には、意匠層82が、基材83の両面のうち一方の面に設けられていることができる。
【0033】
意匠層82は、ブラック層81の少なくとも一部と、直接的または間接的に重なる。なかでも、意匠層82は、ブラック層81の少なくとも一部と直接的に重なることが好ましい。
【0034】
意匠層82の形状、具体的には赤外線透過フィルタ8(または意匠層82)を垂線方向で見た場合の意匠層82の形状は、デザインに応じて適宜設定できる。もちろん、赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合における、意匠層82の大きさは、基材83の大きさよりも小さくてもよいし、同じであってもよい。
【0035】
図2に示すように、意匠層82は、複数の第1色ドット821により構成された第1色パターン層、および複数の第2色ドット822により構成された第2色パターン層を備える。第2色パターン層は、第1色パターン層の少なくとも一部に重なる。なお、図2では、意匠層82の構成の把握が容易となるように、ブラック層81を省いている。意匠層82が、パール顔料を含有する第1色パターン層、および第1色パターン層の少なくとも一部に重なる、パール顔料を含有する第2色パターン層を備えるため、混色が可能であり、それによって、幅広いデザイン(たとえば、模様、絵、写真といったデザイン)を施すことが可能となる。その結果、赤外線透過フィルタ8を機器に装着することによって、そのデザインを機器に付与することができる。
【0036】
これに加えて、意匠層82が、第1色パターン層の少なくとも一部、および/または第2色パターン層の少なくとも一部に重なる、複数の第3色ドット823により構成された第3色パターン層をさらに備える。意匠層82が第3色パターン層を備えるため、混色が可能であり、それによって、デザインの幅をいっそう広げることができる。たとえば、第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823の色の組み合わせが、加法混色の三原色である場合、加法混色が可能であり、それによって、デザインの幅をいっそう広げることができる。
【0037】
第1色パターン層、第2色パターン層および第3色パターン層の広がりは、デザインに応じてそれぞれ独立に設定できる。ここで、第1色パターン層、第2色パターン層および第3色パターン層の広がりとは、赤外線透過フィルタ8(または意匠層82)を垂線方向で見た場合の、これらの層の広がりを意味する。
【0038】
第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823は円形で示されているものの、これらの形状は、たとえば、矩形であってもよく、多角形であってもよく、その他の形状であってもよい。第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823の形状は、それぞれ独立に設定できる。
【0039】
第1色パターン層の網点面積率、すなわち第1色ドット821で覆われた面積が単位面積に占める比率は、デザインに応じて適宜設定できるところ、たとえば1%~99%であることができる。ここで、「(網点面積率が)1%~99%である」とは、網点面積率が1%以上99%以下に収まることを意味する。よって、たとえば、網点面積率30%の第1色パターン層や、網点面積率が10%から90%に渡る第1色パターン層は、「(網点面積率が)1%~99%である」に該当することになることを念のため断っておく。網点面積率は、5%以上であってもよく、10%以上であってもよく、20%以上であってもよく、30%以上であってもよく、40%以上であってもよく、50%以上であってもよく、60%以上であってもよく、70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。網点面積率は、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。なお、第1色パターン層は、ドットグラデーションのように、部位によって異なる網点面積率を有していていてもよい。
【0040】
第2色パターン層の網点面積率の説明は、第1色パターン層の網点面積率の説明(網点面積率の値や、網点面積率が部位によって異なっていてもよい、といった説明)と重複するため省略する。よって、第1色パターン層の網点面積率の説明を、第2色パターン層の網点面積率の説明としても扱うことができる。第3色パターン層の網点面積率の説明も、同様の理由で省略する。よって、第1色パターン層の網点面積率の説明を、第3色パターン層の網点面積率の説明としても扱うことができる。第1色パターン層、第2色パターン層および第3色パターン層の網点面積率は、それぞれ独立に設定できる。
【0041】
とりわけ、意匠層82を構成するパターン層(具体的には、第1色パターン層、第2色パターン層および第3色パターン層)のうち、少なくとも一つの網点面積率は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることが好ましい。これは、70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。
【0042】
第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823が呈する色は、互いに異なっているところ、それぞれが、赤色、緑色、および青色からなる群より選ばれた一種であることが好ましい。これらの色は、加法混色の三原色であるので、これらの色の組み合わせで加法混色が可能であり、それによって、デザインの幅が広がるためである(たとえば、模様、絵、写真といったデザインを意匠層82に施すことが可能となる)。
【0043】
個別に説明すると、第1色ドット821が呈する色は、特に限定されないものの、赤色、緑色、および青色からなる群より選ばれた一種であることが好ましい。第2色ドット822が呈する色も、特に限定されないものの、赤色、緑色、および青色からなる群より選ばれた一種であり、かつ、第1色ドット821とは異なった色であることが好ましい。第3色ドット823が呈する色も、特に限定されないものの、赤色、緑色、および青色からなる群より選ばれた一種であり、かつ、第1色ドット821とも第2色ドット822とも異なった色であることが好ましい。
【0044】
第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823はパール顔料を含む。これらがパール顔料を含むため、パール顔料で反射光(たとえば干渉光)を発生させることができる。したがって、第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823が呈する色の組み合わせが、たとえば、加法混色の三原色、すなわち色光の三原色である場合に、加法混色が可能であり、それによって、いっそうデザインの幅を広げることができる(たとえば、模様、絵、写真といったデザインを意匠層82に施すことが可能となる)。
【0045】
パール顔料は、真珠光沢を発現させることが可能な顔料である。パール顔料は、いわゆる干渉タイプであっても、いわゆる着色タイプであっても、いわゆる複合タイプであってもよい。なお、パール顔料は、一種または二種以上を使用することができる。
【0046】
パール顔料は、基材と、基材を被覆する金属酸化物を備えることが好ましい。パール顔料の基材として、たとえば雲母、ガラス、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、シリカを挙げることができる。金属酸化物として、たとえば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化鉄を挙げることができる。パール顔料は、有機着色層をさらに備えていてもよい。すなわち、パール顔料は、有機着色層でさらに被覆されていてもよい。
【0047】
パール顔料のサイズ(たとえば粒径)は、近赤外線の透過率に影響を与えるため、近赤外線の透過率を考慮して、パール顔料のサイズを適宜設定することが好ましい。
【0048】
パール顔料の含有量は、インキ100質量%中、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましく、3.0質量%以上がさらに好ましい。パール顔料の含有量は、インキ100質量%中、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。なぜなら、パール顔料の含有量が少ない程、近赤外線の透過率が高くなる傾向があるためである。なお、第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823におけるパール顔料の含有量は、それぞれ独立に設定できる。
【0049】
第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823は樹脂を含むことができる。樹脂として、たとえば、天然樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、スチレン-マレイン酸-アクリル系樹脂、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823の樹脂は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0050】
第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤、滑剤などを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823の添加剤は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0051】
第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823はインキで形成することができる。インキは、これら(すなわち第1色ドット821、第2色ドット822、および第3色ドット823)の含有可能成分(具体的には、上述したパール顔料や樹脂など)に加えて、たとえば溶剤などを含むことができる。溶剤としては、たとえば、有機溶剤(たとえば、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤など)、水などを挙げることができる。
【0052】
<1.3.ブラック層>
図1に示すように、赤外線透過フィルタ8は、赤外線透過性を有するブラック層81を備える。赤外線透過フィルタ8が、赤外線透過性を有するブラック層81を備えるため、赤外線を透過しつつ、可視光を吸収することができる。そのため、たとえば、可視光の透過に起因する機器(具体的には、赤外線透過フィルタ8を装着した機器)の誤作動の発生を防止することができる。なお、ブラック層81が呈する色は、もちろん、完全な無彩色の黒色に限らず、色味をいくらかもっていてもよい。
【0053】
ブラック層81の形状、具体的には赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合のブラック層81の形状は適宜設定できる。赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合、ブラック層81の大きさが、基材83の大きさよりも小さいことが好ましい。
【0054】
ブラック層81は、ベタ層であることが好ましい。ここで、「ベタ層」とは、赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合、ブラック層81に隙間が無い層を意味する。すなわち、ブラック層81がベタ状をなすことが好ましい。
【0055】
ブラック層81の厚みは特に限定されないものの、たとえば1μm~50μmが好ましい。なお、ブラック層81は、単層構成であってもよく、複層構成であってもよい。
【0056】
ブラック層81は樹脂を含むことができる。樹脂として、たとえば、天然樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、スチレン-マレイン酸-アクリル系樹脂、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。
【0057】
ブラック層81は着色剤を含むことができる。着色剤として、近赤外線の透過性に優れた着色剤を使用することができる。たとえば、波長800nm~1300nmのなかの少なくとも一波長、好ましくは波長830nm~1250nmのなかの少なくとも一波長の透過性に優れた着色剤を使用することができる。なお、着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。
【0058】
ブラック層81は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤、滑剤などを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。
【0059】
ブラック層81はインキで形成することができる。インキは、ブラック層81の含有可能成分(具体的には、上述した樹脂や着色剤など)に加えて、たとえば溶剤などを含むことができる。溶剤としては、たとえば、有機溶剤(たとえば、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤)、水などを挙げることができる。ブラック層81を形成ためのインキとして、たとえば、IR BLACK NX、IR BLACK OL、IR BLACK 改A、IR BLACK PEX、IR BLACK BN、IR BLACK FLATといった、セイコーアドバンス社製のIRインキを挙げることができる。
【0060】
<1.4.周辺層>
赤外線透過フィルタ8は、赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合にブラック層81を取り囲むように設けられた層、すなわち周辺層84をさらに備える。赤外線透過フィルタ8を垂線方向で見た場合に、周辺層84の縁(厳密には内側の縁)は、ブラック層81の縁(厳密には外側の縁)と、全体的または部分的に重なっていてもよいし、重なっていなくともよい。なお、周辺層84は、基材83上に設けられていることができる。
【0061】
周辺層84は、赤外線透過性を有していてもよく、赤外線透過性を有していなくてもよい。ここで、周辺層84が赤外線透過性を有するかどうかは、たとえば、赤外線透過フィルタ8の周辺層84の形成された領域において、近赤外線の透過率、具体的には波長800nm~1300nmのなかの少なくとも一波長、好ましくは波長830nm~1250nmのなかの少なくとも一波長の光の透過率が50%以上である場合に、周辺層84が赤外線透過性を有する、と判断することができる。
【0062】
周辺層84は樹脂を含むことができる。樹脂として、たとえば、天然樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、スチレン-マレイン酸-アクリル系樹脂、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。
【0063】
周辺層84は着色剤を含むことができる。たとえば、周辺層84が、赤外線透過性を有する場合、着色剤として、近赤外線の透過性に優れた着色剤を使用することができる。たとえば、波長800nm~1300nmのなかの少なくとも一波長、好ましくは波長830nm~1250nmのなかの少なくとも一波長の透過性に優れた着色剤を使用することができる。なお、着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。
【0064】
周辺層84は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤、滑剤などを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。
【0065】
周辺層84はインキで形成することができる。インキは、周辺層84の含有可能成分(具体的には、上述した樹脂や着色剤など)に加えて、たとえば溶剤などを含むことができる。溶剤としては、たとえば、有機溶剤(たとえば、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤)、水などを挙げることができる。周辺層84を形成ためのインキとして、たとえば、IR BLACK NX、IR BLACK OL、IR BLACK 改A、IR BLACK PEX、IR BLACK BN、IR BLACK FLATといった、セイコーアドバンス社製のIRインキを挙げることができる。
【0066】
周辺層84を形成するために、ブラック層81を形成するためのインキと同一組成のインキを使用してもよい。すなわち、周辺層84の組成が、ブラック層81の組成と同一であってもよい。この場合、周辺層84とブラック層81とで共通のインキを使用することができるため、周辺層84とブラック層81とを一括して印刷することができ、その結果、工数を低減することができる。
【0067】
<1.5.赤外線透過性>
赤外線透過フィルタ8は、少なくともブラック層81と意匠層82とが重なった領域において、近赤外線の透過率、具体的には波長800nm~1300nmのなかの少なくとも一波長、好ましくは波長830nm~1250nmのなかの少なくとも一波長の光の透過率が50%以上であることが好ましい。ここで、「少なくともブラック層81と意匠層82とが重なった領域」の「少なくとも」は、「ブラック層81と意匠層82と」を修飾することを念のため断っておく。この透過率は、55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。
【0068】
赤外線透過フィルタ8は、全面にわたって赤外線透過性を有することが好ましい。具体的には、赤外線透過フィルタ8は、全面にわたって近赤外線の透過率、具体的には波長800nm~1300nmのなかの少なくとも一波長、好ましくは波長830nm~1250nmのなかの少なくとも一波長の光の透過率が50%以上であることが好ましい。赤外線透過フィルタ8が、全面にわたって赤外線透過性を有する、すなわち、赤外線透過性を有さない層(すなわち赤外線カット層。たとえば、上述の赤外線透過性を有さない周辺層84)を備えないため、その層を形成するためのコストを低減することができる。
【0069】
<2.赤外線透過フィルタの作製方法>
赤外線透過フィルタ8は、たとえば、基材83の上に、インキを印刷し、乾燥することによって意匠層82を形成し、意匠層82が形成された基材83に、インキを印刷し、乾燥することによってブラック層81を形成し、必要に応じて、インキを印刷し、乾燥することによって周辺層84を形成する、という手順で作成することができる。各層の印刷方法は特に限定されず、たとえば、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷などを挙げることができる。各層(具体的には、意匠層82やブラック層81、周辺層84)の印刷方法は、独立に定めることができる。なお、意匠層82を構成する各層(たとえば、第1色パターン層や、第2色パターン層、第3色パターン層など)の印刷方法も、独立に定めることができる。なかでも、スクリーン印刷が好ましい。
【0070】
<3.赤外線透過フィルタの使用例>
赤外線透過フィルタ8は、たとえば赤外線カメラや赤外線センサといった機器に使用することができる。
【0071】
<4.加飾用フィルム>
図3に示すように、本実施形態の加飾用フィルム80は、意匠層82と、基材83とを備える。加飾用フィルム80は周辺層84をさらに備える。
【0072】
すなわち、加飾用フィルム80は、ブラック層81を備えていないこと以外は、赤外線透過フィルタ8と同様の構造を備えている。したがって、加飾用フィルム80の構造や部材(具体的には、意匠層82、基材83、周辺層84)などの説明は、赤外線透過フィルタ8の構造や部材などの説明と重複するため省略する。よって、赤外線透過フィルタ8の構造や部材などの説明を、加飾用フィルム80の構造や部材などの説明としても扱うことができる。
【0073】
加飾用フィルム80は、赤外線透過フィルタ、たとえば未加飾の赤外線透過フィルタを加飾するために使用することができる。未加飾の赤外線透過フィルタとして、たとえば、黒色を呈する赤外線透過フィルタを挙げることができる。
【0074】
加飾用フィルム80を使用する際、赤外線透過フィルタ(たとえば未加飾の赤外線透過フィルタ)よりも加飾用フィルム80が手前になるように加飾用フィルム80を配置することができる。このとき、加飾用フィルム80の基材83が手前になるように配置してもよい。すなわち、加飾用フィルム80の意匠層82が、基材83よりも赤外線透過フィルタ寄りとなるように配置してもよい。いっぽう、加飾用フィルム80の意匠層82が手前になるように配置してもよい。すなわち、加飾用フィルム80の基材83が、意匠層82よりも赤外線透過フィルタ寄りとなるように配置してもよい。
【0075】
赤外線透過フィルタを加飾するために、たとえば、加飾用フィルム80を赤外線透過フィルタに接着剤や粘着剤でくっつけてもよい。その方法として、たとえば、加飾用フィルム80の周辺層84と赤外線透過フィルタとを接着剤や粘着剤、両面テープ(たとえば両面粘着テープ)でくっつける方法を挙げることができる。いっぽう、赤外線透過フィルタが機器にはめ込まれている場合には、赤外線透過フィルタよりも加飾用フィルム80が手前となるように、赤外線透過フィルタと同じように加飾用フィルム80を機器にはめ込んでもよい。この場合、接着剤や粘着剤、両面テープでくっつける必要はないものの、接着剤や粘着剤、両面テープでくっつけてもよい。
【0076】
<4.本実施形態には種々の変更を加えることができる>
上述の本実施形態には、種々の変更を加えることができる。たとえば、以下の変形例から、一つまたは複数を選択して、上述の本実施形態に変更を加えることができる。
【0077】
上述の本実施形態では、赤外線透過フィルタ8の少なくとも一部において、基材83、意匠層82、およびブラック層81が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいる、という構成を説明した(図1参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、図4に示すように、赤外線透過フィルタ8の少なくとも一部において、ブラック層81、基材83、および意匠層82が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいてもよい。なお、図5に示すように、赤外線透過フィルタ8がクリア層88をさらに備えていてもよい。この場合、赤外線透過フィルタ8の少なくとも一部において、ブラック層81、基材83、意匠層82、およびクリア層88が、赤外線透過フィルタ8の厚み方向にこの順に並んでいることができる。クリア層88は透明性を有することができる。クリア層88は樹脂を含むことができる。クリア層88は、着色剤を含まないことが好ましい。着色剤として、顔料、染料を挙げることができる。クリア層88は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤、滑剤などを挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用することができる。クリア層88は、たとえば印刷で形成されてもよく、ラミネート(たとえば粘着フィルムのラミネート)によって形成されてもよい。これと同様に、加飾用フィルム80もクリア層88をさらに備えていてもよい。
【0078】
上述の本実施形態では、赤外線透過フィルタ8が基材83を備える、という構成を説明した(図1参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、赤外線透過フィルタ8が、基材83を備えていなくてもよい。これと同様に、加飾用フィルム80も、基材83を備えていなくてもよい。
【0079】
上述の本実施形態では、赤外線透過フィルタ8が周辺層84を備える、という構成を説明した(図1参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、赤外線透過フィルタ8が、周辺層84を備えていなくてもよい。これと同様に、加飾用フィルム80も、周辺層84を備えていなくてもよい。
【0080】
上述の本実施形態では、意匠層82が第3色パターン層を備える、という構成を説明した(図1参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、意匠層82が第3色パターン層を備えていなくてもよい。
【0081】
上述の本実施形態では、意匠層82が、第1色パターン層、第2色パターン層、および第3色パターン層で構成されることを説明した(図1参照)。しかしながら、本実施形態は、これに限定されない。たとえば、意匠層82が、複数の第4色ドットにより構成された第4色パターン層をさらに備えていてもよい。第4色パターン層や第4色ドットの説明(たとえば、形状、網点面積率、色、含有可能成分、インキなど)は、第1色パターン層や第1色ドット821の説明と重複するため省略する。よって、第1色パターン層や第1色ドット821の説明を、第4色パターン層や第4色ドットの説明としても扱うことができる。なお、第1色ドット821、第2色ドット822、第3色ドット823、および第4色ドットのうちで、第1色ドット821が最初に基材83に印刷される場合、これらのドットのうちで、第1色ドット821の彩度が最も低く、しかも、第1色ドット821の明度が最も高いことが好ましい。このような第1色ドット821が呈する色として白色を挙げることができる。第1色ドット821が呈する色が白色であると、第1色ドット821でハイライト(要するに、最も明るく見える白色部分)を形成することができる。このとき、第1色ドット821が、白色または銀色のパール顔料を含むことが好ましい。これによれば、加法混色で表現可能なハイライトに比べて、キレイな(たとえば低彩度な)白色のハイライトを形成することができる。ちなみに、この場合(具体的には、第1色ドット821が最初に基材83に印刷される場合)、第2色ドット822が呈する色が、赤色、緑色、および青色からなる群より選ばれた一種であり、第3色ドット823が呈する色が、赤色、緑色、および青色からなる群より選ばれた一種であり、かつ、第2色ドット822とは異なった色であり、第4色ドットが呈する色が、赤色、緑色、および青色からなる群より選ばれた一種であり、かつ、第2色ドット822とも第3色ドット823とも異なった色であることが好ましい。
【0082】
上述の本実施形態では、デザインを持つ層に関して、意匠層82だけが、ブラック層81の少なくとも一部と、直接的または間接的に重なる、という構成を説明した(図1参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、意匠層82以外の層(たとえば、ベタ状をなすこと以外は意匠層82と同じ層)がブラック層81の他の部分と、直接的または間接的に重なっていてもよい。
【実施例
【0083】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を意味する。
【0084】
<近赤外線の透過率の測定方法>
近赤外線の透過率、具体的には波長850nm、940nm、1100nm、1200nmの光の透過率は、紫外可視近赤外線分光光度計V-570(日本分光社製)で測定した。
【0085】
<試験例1_WRGB5質量%>
基材フィルム(東山フィルム社製のHK33WF)の上に、白インキをスクリーン印刷することによってべた状の白インキ層を形成し、白インキ層の上に、赤インキをスクリーン印刷することによってべた状の赤インキ層を形成し、赤インキ層の上に、緑インキをスクリーン印刷することによってべた状の緑インキ層を形成し、緑インキ層の上に、青インキをスクリーン印刷することによってべた状の青インキ層を形成し、青インキ層の上に、ブラックインキ(セイコーアドバンス社製のIR BLACK BN)をスクリーン印刷することによってべた状のブラックインキ層を形成した。このような手順で、試験用フィルタを作製した。白、赤、緑、青インキに使用したパール顔料は次のとおりであった。いずれのインキにおいても、パール顔料は、インキ100質量%として5質量%で使用した。
白インキ 「TWINCLEPEARL SXA」(日本光研工業社製)
赤インキ 「TWINCLEPEARL RXB」(日本光研工業社製)
緑インキ 「TWINCLEPEARL GXB」(日本光研工業社製)
青インキ 「TWINCLEPEARL BSB」(日本光研工業社製)
試験用フィルタの波長940nmの透過率は67.8%であった。
【0086】
<試験例2_RGB5質量%>
白インキ層を形成しなかったこと以外は、試験例1と同様の手順で試験用フィルタを作製した。すなわち、基材フィルム(東山フィルム社製のHK33WF)の上に、赤インキをスクリーン印刷することによってべた状の赤インキ層を形成し、赤インキ層の上に、緑インキをスクリーン印刷することによってべた状の緑インキ層を形成し、緑インキ層の上に、青インキをスクリーン印刷することによってべた状の青インキ層を形成し、青インキ層の上に、ブラックインキをスクリーン印刷することによってべた状のブラックインキ層を形成した。使用した各インキは、試験例1と同じである。
試験用フィルタの波長940nmの透過率は71.9%であった。
【0087】
<試験例3_WRGB10質量%>
各インキのパール顔料を10質量%に変更したこと以外は、試験例1と同様の手順で試験用フィルタを作製した。
試験用フィルタの波長940nmの透過率は57.2%であった。
【0088】
<試験例4_RGB10質量%>
各インキのパール顔料を10質量%に変更したこと以外は、試験例2と同様の手順で試験用フィルタを作製した。
試験用フィルタの波長940nmの透過率は63.1%であった。
【0089】
<試験例1~4で作製した試験用フィルタの透過率>
これらの試験用フィルタの波長940nm透過率は、赤外線透過フィルタとして使用可能な値であった。
【0090】
<試験例5における試験用フィルタの作製>
基材フィルム(東山フィルム社製のHK33WF)の上に、白インキをスクリーン印刷することによって白インキ層を形成し、次いで、赤インキをスクリーン印刷することによって赤インキ層を形成し、次いで、緑インキをスクリーン印刷することによって緑インキ層を形成し、次いで、青インキをスクリーン印刷することによって青インキ層を形成し、青インキ層の上に、ブラックインキ(セイコーアドバンス社製のIR BLACK BN)をスクリーン印刷することによってべた状のブラックインキ層を形成した。このような手順で試験用フィルタを作製した。白、赤、緑、青インキ層の網点面積率を表1に示す。白、赤、緑、青インキに使用したパール顔料は次のとおりであった。いずれのインキにおいても、パール顔料は、インキ100質量%として10質量%で使用した。
白インキ 「Spectraval White」(メルク社製)
赤インキ 「Spectraval Red」(メルク社製)
緑インキ 「Spectraval Green」(メルク社製)
青インキ 「Spectraval Blue」(メルク社製)
【0091】
<試験例6~84における試験用フィルタの作製>
表1および2にしたがって、網点面積率を変えたこと以外は、試験例5と同様の手順で試験用フィルタを作製した。なお、試験例6~84には、実施例(上述の項1に該当する例)と、比較例(上述の項1に該当しない例)とが混在していることを念のため断っておく。たとえば、試験例6~10のうち、試験例6、7、8、および10が実施例に該当し、試験例9が比較例に該当する。試験例9が比較例に該当する理由は、赤インキ層(すなわちR)を構成するドットと、青インキ層(すなわちB)を構成するドットが混在していないためである。具体的には、試験用フィルタの厚み方向において、赤インキ層(すなわちR)と、青インキ層(すなわちB)との間にべた状の緑インキ層(すなわちG)が存在し、緑インキ層(すなわちG)が両者を隔てているので、赤インキ層(すなわちR)を構成するドットと、青インキ層(すなわちB)を構成するドットとが混在していないためである。
【0092】
<試験例5~84で作製した試験用フィルタの透過率>
これらの試験用フィルタにおける近赤外線の透過率を表1および2に示す。
【表1】
【表2】
表1および2において、「W」は白インキ層、「R」は赤インキ層、「G」は緑インキ層、「B」は青インキ層を意味する。なお、網点面積率100%で示された層はベタ層である。「-」で示された層は、その試験例では存在しない。
【0093】
これらの試験用フィルタの透過率も、赤外線透過フィルタとして使用可能な値であった。
【符号の説明】
【0094】
8…赤外線透過フィルタ、81…ブラック層、82…意匠層、821…第1色ドット、822…第2色ドット、823…第3色ドット、83…基材、84…周辺層、80…加飾用フィルム、88…クリア層
【要約】
【課題】本発明は、幅広いデザイン(たとえば、模様、絵、写真といったデザイン)を施すことができる赤外線透過フィルタを提供することを目的とする。
【解決手段】赤外線透過性を有するブラック層81と、ブラック層81の少なくとも一部と、直接的または間接的に重なる、意匠層82とを備え、意匠層82が、複数の第1色ドットにより構成された第1色パターン層、および第1色パターン層の少なくとも一部に重なる、複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層を備え、第1色ドットがパール顔料を含み、第2色ドットがパール顔料を含む、赤外線透過フィルタ。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5