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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】殺菌方法及び殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20221104BHJP
   B65B 55/08 20060101ALI20221104BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61L2/10
B65B55/08 A
B65B55/04 V
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018168467
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2019058654
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2017185430
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松本 治
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-171624(JP,A)
【文献】特開平11-263322(JP,A)
【文献】特開2005-320051(JP,A)
【文献】特開2005-350071(JP,A)
【文献】特開2002-179191(JP,A)
【文献】特開2003-066198(JP,A)
【文献】特開2010-275840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L2
B65B55
B65B55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部及び凸部により形成された凹凸形状を有する殺菌対象物に対してLED素子を有する複数の光源のそれぞれから紫外線を照射する殺菌方法であって、
前記殺菌対象物は、一端が底面部で閉塞され、且つ他端が開口した円筒部を備え、
前記凸部は、前記底面部のうち前記円筒部の内径面と隙間を空けた位置に形成された円環状の突起であり、
前記凹部は、前記底面部のうち前記内径面と前記凸部との間に形成された円環状の溝であり、
前記殺菌方法は、前記殺菌対象物の搬送工程と、位置決め工程と、紫外線照射工程とを備え、
前記位置決め工程では、前記殺菌対象物を前記複数の光源から紫外線が出射される位置で停止させ、
前記紫外線照射工程では、前記複数の光源を前記円環状の前記凹部と対向する円上に沿って互いに等間隔で離隔するように配置し、前記複数の光源から前記凹部に向けて前記紫外線を複数回照射する殺菌方法。
【請求項2】
前記複数の光源を備える照射ユニットを、前記殺菌対象物の搬送方向に沿って複数配列し、
前記搬送工程と、位置決め工程と、紫外線照射工程とをそれぞれ複数備え、
前記複数回照射は、複数の異なる位置で行う請求項1に記載した殺菌方法。
【請求項3】
前記照射ユニットが備える複数の光源が有する前記LED素子を、それぞれ、前記殺菌対象物と対向する仮想的な真円の円周上に配置する請求項2に記載した殺菌方法。
【請求項4】
前記位置決め工程では、前記照射ユニットが備える複数の光源が有する前記LED素子から前記紫外線を1秒間照射したときに前記凹部の底部領域への平均Dose量が0.1mJ/cm以上となる位置で前記殺菌対象物を停止させる請求項2または請求項3に記載した殺菌方法。
【請求項5】
前記紫外線照射工程では、前記複数の光源のうち少なくとも一つが有する前記LED素子と、前記複数の光源のうち他が有する前記LED素子とから、前記殺菌対象物の異なる位置に対して前記紫外線を照射する請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した殺菌方法。
【請求項6】
前記複数の光源を備える照射ユニットを、前記殺菌対象物の搬送方向に沿って、隣り合う前記殺菌対象物の間隔と同じ間隔で複数配列し、前記殺菌対象物が予め設定した照射位置へ移動した時に前記複数の照射ユニットが備える前記複数の光源から前記照射位置の前記殺菌対象物に対して前記紫外線を同時に照射する請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した殺菌方法。
【請求項7】
前記紫外線として、紫外線C波を照射する請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した殺菌方法。
【請求項8】
前記殺菌対象物は、物品を収容する容器の開口部を閉塞する栓である請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した殺菌方法。
【請求項9】
凹部及び凸部により形成された凹凸形状と、一端が底面部で閉塞され、且つ他端が開口した円筒部とを有し、前記凸部は、前記底面部のうち前記円筒部の内径面と隙間を空けた位置に形成された円環状の突起であり、前記凹部は、前記底面部のうち前記内径面と前記凸部との間に形成された円環状の溝である殺菌対象物に対して紫外線を照射する殺菌装置であって、
前記紫外線を照射するLED素子を有し、且つ前記円環状の前記凹部と対向する円上に沿って互いに等間隔で離隔するように配置される複数の光源と、
前記殺菌対象物を搬送する移動部と、
前記殺菌対象物の前記凹部が前記複数の光源と対峙する照射位置に到達したときに前記移動部を停止させ、前記複数の光源から紫外線を照射させる制御部と、を備える殺菌装置。
【請求項10】
前記複数の光源が有する前記LED素子のうちの少なくとも一つは、光の強度が最大である光線の方向を前記凹部へ向けて前記紫外線を照射するように配置されている請求項に記載した殺菌装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記殺菌対象物が停止した状態で、前記複数の光源が前記紫外線を複数回照射するように制御する請求項または請求項10に記載した殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、食品を収容する容器の殺菌に用いる殺菌方法と殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線によって殺菌対象物(容器等)の殺菌を行う技術として、例えば、特許文献1に開示されているように、水銀灯を用いて紫外線を照射する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-116536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水銀灯は点灯の消灯動作を繰り返すと寿命が短くなるため、連続した点灯で用いられるが、照射領域に殺菌対象物が搬送されてきたときだけ紫外線を照射すれば、殺菌を行うことが可能であるため、連続した点灯は電力の浪費となる。また、紫外線の照射時間が長くなると、装置の周囲に存在する樹脂等を劣化させることがある。
したがって、特許文献1に記載されている技術のように、水銀灯を用いて紫外線を照射する構成に対しては、殺菌対象物が搬送されてきたときのみ水銀灯が殺菌対象物へ照射される構成とするために、シャッター機構を設ける技術が提案されている。しかしながら、シャッター機構を設ける技術を適用すると、装置の形状や製造が煩雑になるという課題がある。
【0005】
この課題は、水銀灯の代わりにLEDを用いて紫外線を照射する構成とすることで、シャッター機構を設ける必要が無くなり、装置の形状や製造を簡素化することが可能となるため、解決される。
しかしながら、凹部及び凸部により形成された凹凸形状を有する殺菌対象物に対しては、LEDを用いて紫外線を照射しても、凸部により形成された陰となる領域には紫外線が十分に当たらないため、殺菌が不十分になるという問題が発生する。
本発明は、従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、凹凸形状を有する殺菌対象物を効果的に殺菌することが可能な、殺菌方法及び殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る殺菌方法は、凹部及び凸部により形成された凹凸形状を有する殺菌対象物に対して、LED素子を有する複数の光源のそれぞれから紫外線を照射する殺菌方法である。殺菌方法は、殺菌対象物の搬送工程と、位置決め工程と、紫外線照射工程とを備える。位置決め工程では、殺菌対象物を複数の光源から紫外線が出射される位置で停止させる。紫外線照射工程では、凹部への照射強度が最大となる位置に配置した少なくとも一つの光源から、殺菌対象物に対して紫外線を複数回照射する。
【0007】
また、本発明の他の態様に係る殺菌装置は、凹部及び凸部により形成された凹凸形状を有する殺菌対象物に対して、紫外線を照射する殺菌装置である。殺菌装置は、紫外線を照射する複数の光源を備える。複数の光源のそれぞれは、紫外線を照射するLED素子を有する。予め設定した照射位置に配置した殺菌対象物と複数の光源が対峙した状態で、複数のLED素子のそれぞれから同時に照射した紫外線が殺菌対象物に到達する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、殺菌対象物のうち凸部により形成された陰となる領域に対して、効率的に紫外線を当てることが可能となるため、凹凸形状を有する殺菌対象物を効果的に殺菌することが可能な、殺菌方法及び殺菌装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る殺菌装置の概略構成を示す図である。
図2】殺菌対象物に対する紫外線の照射方向を示す図である。
図3】LED素子が出射する光の強度と方向の関係を表す照度分布図である。
図4】従来の構成を備える殺菌装置において、殺菌対象物に対する紫外線の照射方向を示す図である。
図5図4中に円Vで囲んだ範囲の拡大図である。
図6】殺菌方法を表すフローチャートである。
図7】本発明の第一実施形態の変形例に係る殺菌装置の概略構成を示す図である。
図8】本発明の第一実施形態の変形例に係る殺菌装置の概略構成を示す図である。
図9】本発明の第二実施形態に係る殺菌装置の概略構成を示す図である。
図10】本発明の第二実施形態に係る殺菌装置の概略構成を示す平面図である。
図11図10のXI線矢視図である。
図12】本発明の第三実施形態に係る殺菌装置の概略構成を示す図である。
図13】本発明の第三実施形態に係る殺菌装置の概略構成を示す図である。
図14】本発明の第三実施形態の変形例に係る殺菌装置の概略構成を示す図である。
図15】本発明の実施例において、一つの照射ユニットが備えるLED素子の数と、単位時間当たりの対数減少値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態を以下において説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一、または類似の部分には、同一、または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
さらに、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
【0011】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1から図3を用いて、第一実施形態の構成を説明する。
図1中に示す殺菌装置1は、搬送装置(例えば、ベルトコンベヤー)が備える移動部2(ベルト)に載せられて搬送されてくる殺菌対象物10に対して紫外線を照射する装置である。なお、図1中には、移動部2と殺菌対象物10との位置関係を、模式的な関係として示す。
また、殺菌装置1は、複数の光源20と、近接センサ30と、位置制御部40と、照射制御部50を備える。
【0012】
第一実施形態では、一例として、殺菌装置1が、二つの光源20a,20bを備える場合について説明する。なお、図中及び以降の説明では、殺菌対象物10が搬送されてくる方向(図1中で「搬送方向」と示す)の上流に配置した光源20を光源20aと規定し、搬送方向の下流に配置した光源20を光源20bと規定する。
殺菌対象物10は、図2中に示すように、凹部12及び凸部14により形成された凹凸形状16を有している。したがって、殺菌装置1は、凹部12及び凸部14により形成された凹凸形状16を有する殺菌対象物10に対して、紫外線を照射する装置である。なお、図2中には、搬送方向に沿った中心線を切断線とした、殺菌対象物10の断面図を示す。
【0013】
第一実施形態では、一例として、殺菌対象物10を、物品を収容する容器の開口部を閉塞する栓とした場合について説明する。
栓としては、例えば、粉体の調味料を収容する容器(ガラスの瓶等)の蓋や、飲料水を収容する容器(ペットボトル)のキャップ等がある。
栓は、円筒部10aと底面部10bを備える円筒形状の部材とした場合について説明する。円筒状に形成された円筒部10aの一端は、板状の底面部10bで閉塞されており、円筒部10aの他端は開口している。
したがって、凹部12及び凸部14は、底面部10b(殺菌対象物10の底面)に形成されている。
凸部14は、底面部10bのうち、円筒部10aの内径面と隙間を空けた位置に形成された円環状の突起である。
凹部12は、底面部10bのうち、円筒部10aの内径面と凸部14との間に形成された円環状の溝である。
【0014】
(光源)
各光源20は、紫外線を照射する。
第一実施形態では、一例として、光源20が照射する紫外線を、紫外線C波(UVC)とした場合について説明する。
光源20a及び光源20bは、紫外線を照射可能であり、少なくとも主出射方向へ光を出射可能なLED素子(図示せず)を有している。
LED素子22が出射する光の強度は、例えば、図3中に示すように、LED素子22が出射する光の強度と方向との関係で規定される。なお、図3は、LED素子22が出射する光の強度と方向(角度)の関係を表す照度分布図である。また、図3中では、照度の分布を表す領域の輪郭を、点線DLで表す。さらに、図3中には、縦軸に、LED素子22が出射する光の強度を、「NORMALIZED INTENSITY.A.U」と記載して表す。
なお、「光の強度」には、例えば、輝度、照度、光束、光度を含む。
【0015】
図3中に示す例では、最も強く発光する光は、LED素子22に対して垂直な方向(0[°])で出射する光である。なお、図3中では、LED素子22に対して垂直な方向で出射する光を、矢印LFで表す。
光源20aが有するLED素子の主出射方向MRaと、光源20bが有するLED素子の主出射方向MRbとは、予め設定した位置である照射位置に配置した殺菌対象物10における、異なる位置に向いている。すなわち、複数の光源20のうち少なくとも一つ(光源20a)が有するLED素子と、複数の光源20のうち他(光源20b)が有するLED素子は、それぞれ、紫外線を照射する方向が互いに不一致である。なお、「照射位置」については、後述する。
【0016】
また、「紫外線を照射する方向が互いに不一致」とは、予め設定した照射位置に配置した殺菌対象物10と複数の光源20が対峙(正対)した状態で、複数の光源(光源20a及び光源20b)から同時に紫外線を照射した際に、複数の光源から照射した紫外線の主出射方向が、殺菌対象物10の異なる位置に到達する状態である。
したがって、「紫外線を照射する方向が互いに不一致」とは、複数の光源から照射した紫外線のベクトルが同じであり、複数の光源から照射した紫外線の主出射方向が平行であっても、複数の光源から照射した紫外線の主出射方向が、殺菌対象物10の異なる位置に到達する状態を含む。
【0017】
具体的には、図2中に示すように、主出射方向MRaは、凹凸形状16を形成する凹部12のうち、搬送方向の上流側に位置する部分である第一照射位置12aに向いている。これに加え、主出射方向MRbは、凹凸形状16を形成する凹部12のうち、搬送方向の下流側に位置する部分である第二照射位置12bに向いている。
すなわち、複数の光源20のうち少なくとも一つ(光源20a、光源20b)が有するLED素子の主出射方向MRは、凹部12を向いている。
なお、殺菌対象物10は、円筒形状の栓であるため、第一照射位置12aと第二照射位置12bは、同じ構成である凹部12の異なる位置を示している。
【0018】
また、複数の光源20は、円環状の凹部12と対向する真円上(仮想的な真円上)に沿って、互いに等間隔で離間するように配置されている。すなわち、第一照射位置12aと第二照射位置12bは、円筒形状に形成された凹部12において、凹部12の周方向に沿って等間隔(180[°]間隔)で配置されている。
したがって、照射ユニットが備える複数の光源20が有するLED素子22は、それぞれ、殺菌対象物10と対向する仮想的な真円の円周上に配置されている。
したがって、予め設定した照射位置に配置した殺菌対象物10と複数の光源20が対峙した状態で、複数のLED素子のそれぞれから同時に照射した紫外線は、殺菌対象物10の異なる位置に到達することとなる。
【0019】
また、複数の光源20が有するLED素子22のうちの少なくとも一つは、光の強度が最大である光線の方向を凹部12へ向けて紫外線を照射するように配置されている。
光源20による紫外線の照射時間を「t」と定義し、単位時間当たりの対数減少値を「LRV」と定義すると、一般的に、対数減少値LRVは、照射時間tに比例する。このため、光源20の殺菌効果率を「α」と定義すると、ある時間領域における殺菌効果率αは、理論上は一定となると考えられる。
しかしながら、光源20を構成するLED素子の数と殺菌効果率αは、必ずしも比例せず、光源20を構成するLED素子の数を2倍にしても、ある時間内の殺菌効果率αが2倍にならないことも多い。
【0020】
そのため、例えば、光源20の殺菌効果を2倍にしたい場合には、照射時間を2倍にすれば目的を達成することが可能であるが、照射時間を変えない場合には、光源20を構成するLED素子の数を2倍以上にする必要がある。
また、限られた面積内においては、高出力のLED素子を配置する数が少ないほど、LED素子による発熱の放熱性が低下することを抑制することが可能となり、LED素子内のジャンクション温度上昇に伴うLED出力の低下を抑制することが可能となる。
【0021】
(近接センサ)
近接センサ30は、例えば、レーザレーダやミリ波レーダ等を用いて形成されており、移動部2の方向に設定した領域に対し、殺菌対象物10の存在を検出する。殺菌対象物10の存在を検出した近接センサ30は、殺菌対象物10の存在を検出したことを示す情報信号(以降の説明では、「対象物検出信号」と記載する場合がある)を、位置制御部40と照射制御部50に出力する。
【0022】
(位置制御部)
位置制御部40は、例えば、CPU、RAM、ROM等を備えて構成されており、移動部2の動作を制御する。
また、位置制御部40は、近接センサ30から対象物検出信号の入力を受けると、殺菌対象物10の位置が照射位置となるように、移動部2の動作を停止させる。
ここで、「照射位置」は、主出射方向MRaが第一照射位置12aに向くとともに、主出射方向MRbが第二照射位置12bに向く位置である。移動部2の動作を停止させる時間は、例えば、光源20の出力や、殺菌対象物10の形状・材質等に応じて設定する。
移動部2の動作を停止させた位置制御部40は、移動部2の動作を停止させたことを示す情報信号(以降の説明では、「搬送停止信号」と記載する場合がある)を、照射制御部50に出力する。
【0023】
(照射制御部)
照射制御部50は、例えば、CPU、RAM、ROM等を備えて構成されており、光源20の動作を制御する。
また、照射制御部50は、近接センサ30から対象物検出信号の入力を受けた後に、位置制御部40から搬送停止信号の入力を受けると、光源20a及び光源20bから、紫外線C波を照射させる。紫外線C波を照射する時間は、例えば、光源20の出力や、殺菌対象物10の形状・材質等に応じて設定する。
第一実施形態では、一例として、光源20a及び光源20bから、紫外線C波を同時に照射させる場合について説明する。
【0024】
(殺菌方法)
図1及び図2を参照しつつ、図6を用いて、第一実施形態の殺菌装置1を用いて行う、殺菌対象物10を殺菌する殺菌方法を説明する。
殺菌方法は、凹部12及び凸部14により形成された凹凸形状16を有する殺菌対象物10に対して、LED素子を有する複数の光源20のそれぞれから紫外線を照射する殺菌方法である。
また、殺菌方法は、図6中に示すように、複数の搬送工程と、複数の位置決め工程と、複数の紫外線照射工程を備える。なお、第一実施形態では、一例として、図6中に示すように、殺菌方法が、三回の搬送工程と、三回の位置決め工程と、三回の紫外線照射工程を備える場合について説明する。
【0025】
(搬送工程)
搬送工程は、移動部2に載せた殺菌対象物10を、光源20から紫外線C波を照射することが可能な領域へ搬送する工程である。
なお、図6中に示すように、2回目の搬送工程である第二搬送工程(ステップS4)は、1回目の紫外線照射工程である第一紫外線照射工程(ステップS3)の後工程として行う。同様に、3回目の搬送工程である第三搬送工程(ステップS7)は、2回目の紫外線照射工程である第二紫外線照射工程(ステップS6)の後工程として行う。
【0026】
(位置決め工程)
位置決め工程は、移動部2に載せられて搬送されている殺菌対象物10を、複数の光源20から紫外線が出射される照射位置へ配置する工程である。
これにより、位置決め工程では、殺菌対象物10を、主出射方向MRaが第一照射位置12aに向くとともに、主出射方向MRbが第二照射位置12bに向く位置へ配置する。
また、位置決め工程では、照射ユニットが備える複数の光源20が有するLED素子22から紫外線を1秒間照射したときに、凹部12の底部領域への平均Dose量が、0.1mJ/cm以上、好ましくは5mJ/cm以上となる位置で、殺菌対象物10を停止させる。
【0027】
(紫外線照射工程)
紫外線照射工程は、複数の光源20から、殺菌対象物10に対して紫外線を照射する工程である。
紫外線照射工程では、LED素子を有する複数の光源20のそれぞれから、殺菌対象物10に対して紫外線を照射する。
具体的に、紫外線照射工程では、複数の光源20のうち少なくとも一つ(光源20a)が有するLED素子の主出射方向MRaと、複数の光源20のうち他(光源20b)が有するLED素子の主出射方向MRbとを、殺菌対象物10の異なる位置へ向ける。さらに、照射位置へ配置した殺菌対象物10の異なる位置へ、光源20a及び光源20bから、同時に紫外線を照射する。
【0028】
これにより、紫外線照射工程では、複数の光源20のうち少なくとも一つ(光源20a)が有するLED素子と、複数の光源20のうち他(光源20b)が有するLED素子とから、殺菌対象物10の異なる位置に対して紫外線を照射する。
これに加え、紫外線照射工程では、主出射方向MRaを第一照射位置12aへ向け、主出射方向MRbを第二照射位置12bへ向けた状態で、光源20aが有するLED素子と、光源20bが有するLED素子とから、紫外線を照射する。
これにより、紫外線照射工程では、殺菌対象物10のうち凹部12への照射強度が最大となる位置に配置した少なくとも一つの光源20から、紫外線を照射する。また、紫外線照射工程では、複数の光源20から、凹部12に向けて紫外線を複数回照射する。
【0029】
さらに、紫外線照射工程では、複数の光源20が有するLED素子22のうち少なくとも一つから、光の強度が最大である光線の方向を凹部12へ向けて紫外線を複数回照射する。
また、紫外線照射工程では、紫外線の複数回照射を、複数の異なる位置で行う。
また、紫外線照射工程では、複数の光源20のうち少なくとも一つが有するLED素子22と、複数の光源20のうち他が有するLED素子22とから、殺菌対象物10の異なる位置(第一照射位置12a、第二照射位置12b)に対して紫外線を照射する。
【0030】
(動作・作用)
図1及び図2を参照しつつ、図4及び図5を用いて、第一実施形態の動作と作用を説明する。
殺菌装置1を用いて殺菌対象物10の殺菌を行う際には、移動部2に載せられて搬送されている殺菌対象物10を照射位置へ配置した後、光源20a及び光源20bから紫外線を照射する。
上述したように、殺菌対象物10の底面には、凹部12及び凸部14が形成されている。
【0031】
このため、従来の構成を備える殺菌装置の構造、すなわち、例えば、図4中に示すように、一つの光源20のみから照射する紫外線により、殺菌対象物10を殺菌する構造では、以下の問題が発生する。なお、図4中には、一つの光源20が有するLED素子の主出射方向を、符号「MR」で示す。同様に、一つの光源20が有するLED素子から主出射方向MR以外の方向へ出射される光の出射方向を、符号「SR」で示す。また、なお、図4中には、図2中と同様、搬送方向に沿った中心線を切断線とした、殺菌対象物10の断面図を示す。
【0032】
すなわち、従来の構成を備える殺菌装置では、図5中に示すように、凸部14が壁を形成して陰となる領域により、光源20から照射する紫外線が当たりにくい領域が発生する。なお、図5中には、一つの光源20が有するLED素子から主出射方向MR以外の方向へ出射される光の出射方向を、符号「SR」で示す。また、図5中には、凸部14が壁を形成して陰となる領域を、符号「SE」で示す。
したがって、従来の構成を備える殺菌装置では、凸部14により形成された陰となる領域SEには紫外線が十分に当たらないため、殺菌が不十分になるという問題や、殺菌に時間がかかるという問題が発生する。
【0033】
これに対し、第一実施形態の殺菌装置1であれば、光源20aが有するLED素子の主出射方向MRaと、光源20bが有するLED素子の主出射方向MRbが、殺菌対象物10の異なる位置へ向いている。
このため、第一実施形態の殺菌装置1であれば、凸部14により形成された陰となる領域SEに対して、効率的に紫外線を当てることが可能となり、従来の構成を備える殺菌装置と比較して、殺菌の効率を向上させることが可能となる。また、殺菌に必要な時間を短縮することが可能となる。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0034】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の殺菌方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)位置決め工程では、殺菌対象物10を複数の光源20から紫外線が出射される位置で停止させる。さらに、紫外線照射工程では、凹部12への照射強度が最大となる位置に配置した少なくとも一つの光源20から、殺菌対象物10に対して紫外線を複数回照射する。
このため、殺菌対象物10のうち凹部12に対して、効率的に紫外線を当てることが可能となり、殺菌の効率を向上させることが可能となる。
その結果、凹凸形状16を有する殺菌対象物10を効果的に殺菌することが可能な、殺菌方法を提供することが可能となる。
これに加え、殺菌に必要な時間を短縮することが可能となるため、消費電力を低減させることが可能となるとともに、LED素子の寿命を長期化させることが可能となる。また、LED素子から発生する熱を低減させることが可能となる。
【0035】
(2)複数の光源20を備える照射ユニットを、殺菌対象物10の搬送方向に沿って複数配列する。そして、搬送工程と、位置決め工程と、紫外線照射工程とをそれぞれ複数備える。さらに、紫外線の複数回照射は、複数の異なる位置で行う。
その結果、底面部10b及び凹凸形状16に対する紫外線の照射量のばらつきを抑制することが可能となり、凹凸形状16を有する殺菌対象物10を効果的に殺菌することが可能となる。
【0036】
(3)照射ユニットが備える複数の光源20が有するLED素子22を、それぞれ、殺菌対象物10と対向する仮想的な真円の円周上に配置する。
このため、一つの照射ユニットが備える全ての光源20から一つの殺菌対象物10へ同時に紫外線を照射する場合と比較して、一つの殺菌対象物10へ紫外線を照射する光源20の数を減少させることが可能となる。
その結果、光源20の出力を凹部12に効率よく照射することが可能となる。
また、各光源20から主出射方向MR以外の方向へ出射される光が互いに重なる領域に対し、多段階で紫外線を照射することが可能となるため、エネルギーの消費量を増加させることなく、紫外線の照射時間を増加させることが可能となる。さらに、光源20が備える放熱装置の構成を簡素化することが可能となる。
【0037】
(4)位置決め工程では、照射ユニットが備える複数の光源20が有するLED素子22から紫外線を1秒間照射したときに、凹部12の底部領域への平均Dose量が、0.1mJ/cm以上、好ましくは5mJ/cm以上となる位置で、殺菌対象物10を停止させる。
その結果、凹部12の底部領域に対し、殺菌に必要な量の紫外線を短時間で照射することが可能となる。
【0038】
(5)紫外線照射工程では、複数の光源20のうち少なくとも一つが有するLED素子22と、複数の光源20のうち他が有するLED素子22とから、殺菌対象物10の異なる位置に対して紫外線を照射する。
その結果、凹部12へ向けて効率的に紫外線を当てることが可能となり、殺菌の効率を向上させることが可能となる。
【0039】
(6)紫外線として、紫外線C波を照射する。
その結果、紫外線を紫外線A波や紫外線B波とした場合と比較して、殺菌力を向上させることが可能となる。
【0040】
(7)殺菌対象物10が、物品を収容する容器の開口部を閉塞する栓である。
その結果、容器との密着性や開栓・密栓の容易性から、凹凸形状16を有するものが多い栓に対し、殺菌対象物10のうち凸部14により形成された陰となる領域SEに対して、効率的に紫外線を当てることが可能となり、殺菌の効率を向上させることが可能となる。
特に、飲料を収容する容器の栓等、飲食物を収容するために、清浄さを要求される栓に対し、殺菌の効率を向上させることが可能となる。
【0041】
(8)殺菌対象物10である栓が、一端が底面部10bで閉塞され、且つ他端が開口した円筒部10aを備えている。これに加え、凸部14が、底面部10bのうち円筒部10aの内径面と隙間を空けた位置に形成された円環状の突起であり、凹部12が、底面部10bのうち円筒部10aの内径面と凸部14との間に形成された円環状の溝である。
その結果、円状の凹凸形状16を有する殺菌対象物10を、効果的に殺菌することが可能となる。
【0042】
(9)複数の光源20を、円環状の凹部12と対向する円上に沿って互いに等間隔で離間するように配置し、複数の光源20から凹部12に向けて紫外線を照射する。
その結果、円環状の凹部12に対する紫外線の照射量のばらつきを抑制することが可能となり、円状の凹凸形状16を有する殺菌対象物10を、効果的に殺菌することが可能となる。
また、第一実施形態の殺菌装置1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
【0043】
(10)紫外線を照射する複数の光源20を備え、複数の光源20のそれぞれは、紫外線を照射するLED素子を有する。これに加え、予め設定した照射位置に配置した殺菌対象物10と複数の光源20が対峙した状態で、複数のLED素子のそれぞれから同時に照射した紫外線が、殺菌対象物10に到達する。
このため、殺菌対象物10のうち凸部14により形成された陰となる領域SEに対して、効率的に紫外線を当てることが可能となり、殺菌の効率を向上させることが可能となる。
その結果、凹凸形状16を有する殺菌対象物10を効果的に殺菌することが可能な、殺菌装置1を提供することが可能となる。
これに加え、殺菌に必要な時間を短縮することが可能となるため、消費電力を低減させることが可能となるとともに、LED素子の寿命を長期化させることが可能となる。また、LED素子から発生する熱を低減させることが可能となる。
【0044】
(11)複数の光源20が有するLED素子22のうちの少なくとも一つは、光の強度が最大である光線の方向を凹部12へ向けて紫外線を照射するように配置されている。
その結果、凹部12へ向けて効率的に紫外線を当てることが可能となり、殺菌の効率を向上させることが可能となる。
【0045】
(変形例)
(1)第一実施形態では、図2等に示すように、光源20が有するLED素子が光を出射する方向が凹部12を向いている構成としたが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、図7中に示すように、光源20が有するLED素子が光を出射する方向を凹部12の底面に沿った方向とし、さらに、紫外線を透過・導光する導光管70を介して、凹部12へ向けて紫外線を照射する構成としてもよい。
導光管70は、例えば、光ファイバー等を用いて形成し、導光管70の一端70aを凹部12に向けて配置する。さらに、光源20を、LED素子が光を出射する方向が導光管70の他端70bに向く位置に配置する。
この構成であれば、光源20を配置する自由度を向上させることが可能となる。
【0046】
(2)第一実施形態では、図2等に示すように、光源20aの主出射方向MRaを第一照射位置12aに向け、光源20bの主出射方向MRbを第二照射位置12bに向けた構成としたが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、図8中に示すように、平行に配列した光源20a及び光源20bが有するLED素子が光を出射する方向を凹部12に向ける。さらに、光源20a及び光源20bと殺菌対象物10との間に、光源20a及び光源20bが有するLED素子から出射した光を平行光に変換する光学材80を配置した構成としてもよい。
光学材80は、例えば、レンズ等を用いて形成する。そして、光学材80を、光源20a及び光源20bが有するLED素子から出射して、光学材80によって平行光となり凹部12の底部領域へ照射される位置に配置する。
この構成であれば、複数の光源20を配置する位置ずれの許容度を向上させることが可能となる。
【0047】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1及び図2を参照しつつ、図9から図11を用いて、第二実施形態の構成を説明する。
第二実施形態の構成は、光源20と、照射制御部50の構成を除き、上述した第一実施形態と同様である。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
(光源)
各光源20は、紫外線を照射する。
第二実施形態では、一例として、殺菌装置1が、四つの光源20a~20dを備える場合について説明する。なお、図中及び以降の説明では、殺菌対象物10が搬送されてくる方向(図9及び図10中で「搬送方向」と示す)の上流に配置した光源20を光源20aと規定し、搬送方向の下流に配置した光源20を光源20bと規定する。
同様に、光源20aと光源20bとの間に配置され、光源20a及び光源20bよりも上下方向(図9及び図11中で「上下方向」と示す)で上方に配置した光源20を光源20cと規定する。さらに、光源20aと光源20bとの間に配置され、光源20a及び光源20bよりも下方に配置した光源20を光源20dと規定する。
なお、図10中には、搬送方向に沿った中心線を切断線とした、殺菌対象物10の断面図を示す。また、図11中には、上下方向に沿った中心線を切断線とした、殺菌対象物10の断面図を示す。
【0049】
各光源20は、紫外線を照射する。
主出射方向MRaと、主出射方向MRbと、光源20cが有するLED素子の主出射方向MRcと、光源20dが有するLED素子の主出射方向MRdとは、照射位置に配置した殺菌対象物10における、異なる位置に向いている。
具体的には、図9及び図10中に示すように、主出射方向MRaは、凹凸形状16を形成する凹部12のうち、搬送方向の上流側に位置する第一照射位置12aに向いている。これに加え、図9及び図10中に示すように、主出射方向MRbは、凹凸形状16を形成する凹部12のうち、搬送方向の下流側に位置する第二照射位置12bに向いている。
【0050】
さらに、図9及び図11中に示すように、主出射方向MRcは、凹凸形状16を形成する凹部12のうち、第一照射位置12aと第二照射位置12bとの間において、上方に位置する部分である第三照射位置12cに向いている。これに加え、図9及び図11中に示すように、主出射方向MRdは、凹凸形状16を形成する凹部12のうち、第一照射位置12aと第二照射位置12bとの間において、下方に位置する部分である第四照射位置12dに向いている。
なお、上述した第一実施形態と同様、殺菌対象物10は、円筒形状の栓であるため、第一照射位置12a、第二照射位置12b、第三照射位置12c及び第四照射位置12dは、同じ構成である凹部12の異なる位置を示している。また、第一照射位置12a、第二照射位置12b、第三照射位置12c及び第四照射位置12dは、円筒形状に形成された凹部12において、等間隔で配置されている。
【0051】
また、複数の光源20a~20dは、円環状の凹部12と対向する円上(仮想的な円上)に沿って、互いに等間隔で離間するように配置されている。
すなわち、第一照射位置12a、第二照射位置12b、第三照射位置12c及び第四照射位置12dは、円筒形状に形成された凹部12において、凹部12の周方向に沿って等間隔(90[°]間隔)で配置されている。
したがって、第一照射位置12a、第二照射位置12b、第三照射位置12c及び第四照射位置12dは、殺菌対象物10のうち各光源20と対向する面の中心(底面部10bの中心)を基準として分割した象限が異なる位置に配置されている。
【0052】
(照射制御部)
照射制御部50は、近接センサ30から対象物検出信号の入力を受けた後に、位置制御部40から搬送停止信号の入力を受けると、光源20a及び光源20bから、紫外線C波を照射させる。そして、光源20a及び光源20bからの紫外線C波の照射を停止させた後に、光源20c及び光源20dから、紫外線C波を照射させる。
したがって、複数の光源20のうち少なくとも一つ(光源20a、光源20b)と、複数の光源20のうち他(光源20c、光源20d)とは、互いに異なるタイミングで紫外線を照射する。
また、互いに異なるタイミングで紫外線を照射する光源20が有するLED素子の主出射方向MRが向いている位置は、殺菌対象物10の紫外線が照射される面に、等間隔で配置されている。
【0053】
(殺菌方法)
図1及び図2図9から図11を参照して、第二実施形態の殺菌装置1を用いて行う、殺菌対象物10を殺菌する殺菌方法を説明する。
殺菌方法は、搬送工程と、位置決め工程と、紫外線照射工程を備える。なお、搬送工程と位置決め工程は、上述した第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
(紫外線照射工程)
紫外線照射工程は、複数の光源20から、殺菌対象物10に対して紫外線を照射する工程である。
また、第二実施形態における紫外線照射工程は、紫外線照射前段工程と、紫外線照射前段工程の後工程である紫外線照射後段工程を備える。
紫外線照射前段工程では、主出射方向MRaを第一照射位置12aへ向け、主出射方向MRbを第二照射位置12bへ向けた状態で、光源20aが有するLED素子と、光源20bが有するLED素子とから、紫外線を照射する。
【0055】
紫外線照射後段工程では、まず、紫外線照射前段工程で紫外線を照射している光源20(光源20a、光源20b)からの紫外線の照射を停止させる。
その後、主出射方向MRcを第三照射位置12cへ向け、主出射方向MRdを第四照射位置12dへ向けた状態で、光源20cが有するLED素子と、光源20dが有するLED素子とから、紫外線を照射する。
すなわち、第二実施形態における紫外線照射工程では、殺菌対象物10のうち光源20と対向する面の中心を基準として分割した象限が異なる位置へ、互いに異なるタイミングで紫外線を照射する。
【0056】
(動作・作用)
図1から図11を参照して、第二実施形態の動作と作用を説明する。なお、上述した第一実施形態と同様の動作と作用については、その説明を省略する場合がある。
殺菌装置1を用いて殺菌対象物10の殺菌を行う際には、まず、移動部2に載せられて搬送されている殺菌対象物10を、照射位置へ配置した後、光源20a及び光源20bから紫外線を照射する。
その後、光源20a及び光源20bからの紫外線の照射を停止させた後に、光源20c及び光源20dから、紫外線を照射する。
【0057】
上述したように、殺菌対象物10の底面には、凹部12及び凸部14が形成されているため、従来の構成を備える殺菌装置の構造では、殺菌が不十分になるという問題や、殺菌に時間がかかるという問題が発生する(図4及び図5を参照)。
これに対し、第二実施形態の殺菌装置1であれば、主出射方向MRaから主出射方向MRdが、それぞれ、殺菌対象物10の異なる位置へ向いている。
このため、第二実施形態の殺菌装置1であれば、凸部14により形成された陰となる領域SEに対して、効率的に紫外線を当てることが可能となり、従来の構成を備える殺菌装置と比較して、殺菌の効率を向上させることが可能となる。また、殺菌に必要な時間を短縮することが可能となる。
【0058】
さらに、第二実施形態の殺菌装置1であれば、光源20a及び光源20bから紫外線を照射し、光源20a及び光源20bからの紫外線の照射を停止させた後に、光源20c及び光源20dから紫外線を照射する。すなわち、第二実施形態の殺菌装置1であれば、複数の光源20のうち少なくとも一つと、複数の光源20のうち他とは、互いに異なるタイミングで紫外線を照射することで、多段階(二段階)で紫外線の照射を行う。
このため、全ての光源20a~20dから同時に紫外線を照射する場合と比較して、同時に紫外線を照射する光源20の数を減少させることが可能となる。
さらに、各光源20から主出射方向MR以外の方向へ出射される光が互いに重なる領域に対し、多段階で紫外線を照射することが可能となるため、エネルギーの消費量を増加させることなく、紫外線の照射時間を増加させることが可能となる。これに加え、光源20が備える放熱装置の構成を簡素化することが可能となる。
【0059】
また、第二実施形態の殺菌装置1では、互いに異なるタイミングで紫外線を照射する光源20が有するLED素子の主出射方向MRが向いている位置が、殺菌対象物10の紫外線が照射される面に、等間隔で配置されている。
このため、各光源20から主出射方向MR以外の方向へ出射される光が互いに重なる領域に対し、多段階で効率的に紫外線を照射することが可能となる。
なお、上述した第二実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第二実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0060】
(第二実施形態の効果)
第二実施形態の殺菌方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)複数の光源20のうち少なくとも一つ(光源20a、光源20b)と、複数の光源20のうち他(光源20c、光源20d)とから、互いに異なるタイミングで紫外線を照射する。
このため、全ての光源20から同時に紫外線を照射する場合と比較して、同時に紫外線を照射する光源20の数を減少させることが可能となる。
その結果、光源20の出力を低減させることが可能となり、エネルギーの消費量を低減させることが可能となる。
また、各光源20から主出射方向MR以外の方向へ出射される光が互いに重なる領域に対し、多段階で紫外線を照射することが可能となるため、エネルギーの消費量を増加させることなく、紫外線の照射時間を増加させることが可能となる。さらに、光源20が備える放熱装置の構成を簡素化することが可能となる。
【0061】
(2)殺菌対象物10のうち光源20と対向する面の中心を基準として分割した象限が異なる位置へ、互いに異なるタイミングで紫外線を照射する。
その結果、各光源20から主出射方向MR以外の方向へ出射される光が互いに重なる領域に対し、多段階で効率的に紫外線を照射することが可能となる。
【0062】
(変形例)
(1)第二実施形態では、第一照射位置12a、第二照射位置12b、第三照射位置12c及び第四照射位置12dを、殺菌対象物10のうち各光源20と対向する面の中心を基準として分割した象限が異なる位置に配置したが、これに限定するものではない。
すなわち、第一照射位置12a、第二照射位置12b、第三照射位置12c及び第四照射位置12dを、殺菌対象物10のうち各光源20と対向する面の中心を基準として分割した象限が同じ位置に配置してもよい。
【0063】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1から図11を参照しつつ、図12及び図13を用いて、第三実施形態の構成を説明する。
図12中に示す殺菌装置1は、搬送装置が備える移動部2に載せられて搬送されてくる複数の殺菌対象物10に対して、複数の照射ユニット60から紫外線を照射する装置である。なお、図12中には、移動部2と殺菌対象物10との位置関係を、模式的な関係として示す。
また、殺菌装置1は、複数の照射ユニット60を備える。
【0064】
なお、第三実施形態では、一例として、殺菌装置1が、二つの照射ユニット60a,60bを備える場合について説明する。したがって、第三実施形態では、移動部2に載せられて搬送されてくる二つの殺菌対象物10U,10Dに対して、二つの照射ユニット60a,60bから紫外線を照射する場合について説明する。
また、図12中及び以降の説明では、搬送方向の上流に配置された殺菌対象物10を殺菌対象物10Uと規定し、搬送方向の下流に配置された殺菌対象物10を殺菌対象物10Dと規定する。同様に、搬送方向の上流に配置した照射ユニット60を照射ユニット60aと規定し、搬送方向の下流に配置した照射ユニット60を照射ユニット60bと規定する。
【0065】
照射ユニット60aと照射ユニット60bは、殺菌対象物10の搬送方向に沿って、隣り合う殺菌対象物10Uと殺菌対象物10Dとの間隔と同じ間隔で配列する。
各照射ユニット60は、光源20と、近接センサ30と、位置制御部40と、照射制御部50を備える。なお、各照射ユニット60が備える近接センサ30及び位置制御部40の構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
(光源)
各光源20は、紫外線を照射する。
第三実施形態では、一例として、図13中に示すように、照射ユニット60aが、二つの光源20a,20bを備え、照射ユニット60bが、二つの光源20c,20dを備える場合について説明する。
光源20aは、殺菌対象物10の中心よりも上方に配置した光源20である。
光源20bは、殺菌対象物10の中心よりも下方に配置した光源20である。
また、光源20aと光源20bは、円環状の凹部12と対向する円上(仮想的な円上)に沿って、等間隔(180[°]間隔)で配置されている。
【0067】
光源20aが有するLED素子の主出射方向と、光源20bが有するLED素子の主出射方向とは、殺菌対象物10Uにおける、異なる位置に向いている(図9及び図10を参照)。
光源20cは、殺菌対象物10が搬送されてくる方向(図12及び図13中で「搬送方向」と示す)の上流に配置した光源20である。
光源20dは、搬送方向の下流に配置した光源20である。
また、光源20cと光源20dは、円環状の凹部12と対向する円上(仮想的な円上)に沿って、等間隔(180[°]間隔)で配置されている。
光源20cが有するLED素子の主出射方向と、光源20dが有するLED素子の主出射方向とは、殺菌対象物10Dにおける、異なる位置に向いている(図9及び図10を参照)。
【0068】
したがって、照射ユニット60aが備える光源20a,20bと、照射ユニット60bが備える光源20c,20dは、図13(c)中に示すように、互いに補完して配置されている。これにより、光源20a~20dは、図13(c)中に示すように、円環状の凹部12と対向する円上に沿って、互いに等間隔で離間するように配置されている。
すなわち、第三実施形態の殺菌装置1は、複数の光源20を備える照射ユニット60を、殺菌対象物10の搬送方向に沿って複数配列して形成されている。これに加え、複数の照射ユニット60が備える光源20が有するLED素子を、それぞれ、殺菌対象物10のうち光源20と対向する面の中心から外径までの距離が同じ円の円周上に配置している。
【0069】
(照射制御部)
照射制御部50は、近接センサ30から対象物検出信号の入力を受けた後に、位置制御部40から搬送停止信号の入力を受けると、光源20a及び光源20bから、殺菌対象物10Uに対して、紫外線C波を照射させる。これに加え、光源20c及び光源20dから、殺菌対象物10Dに対して、紫外線C波を照射させる。
したがって、第三実施形態では、複数の光源20を備える照射ユニット60を、殺菌対象物10の搬送方向に沿って、隣り合う殺菌対象物10U,10Dの間隔と同じ間隔で複数配列する。これに加え、殺菌対象物10U,10Dが予め設定した照射位置へ移動した時に、照射ユニット60a,60bが備える複数の光源20から、照射位置の殺菌対象物10U,10Dに対して、紫外線を同時に照射する。
【0070】
(殺菌方法)
図1から図13を参照して、第三実施形態の殺菌装置1を用いて行う、殺菌対象物10を殺菌する殺菌方法を説明する。
殺菌方法は、搬送工程と、位置決め工程と、紫外線照射工程を備える。なお、搬送工程は、上述した第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
(位置決め工程)
位置決め工程は、移動部2に載せられて搬送されている殺菌対象物10U及び殺菌対象物10Dを、照射位置へ配置する工程である。
これにより、位置決め工程では、殺菌対象物10Uを、光源20aが有するLED素子の主出射方向と、光源20bが有するLED素子の主出射方向が、殺菌対象物10Uにおける、異なる位置に向く位置へ配置する。これに加え、位置決め工程では、殺菌対象物10Dを、光源20cが有するLED素子の主出射方向と、光源20dが有するLED素子の主出射方向が、殺菌対象物10Dにおける、異なる位置に向く位置へ配置する。
【0072】
なお、複数の殺菌対象物10に対し、最初に行う位置決め工程では、移動部2に載せられて搬送されている一つの殺菌対象物10Uのみを、照射位置へ配置する。(紫外線照射工程)
紫外線照射工程は、複数の光源20から、殺菌対象物10に対して紫外線を照射する工程である。
紫外線照射工程では、まず、主出射方向MRaを殺菌対象物10Uの第一照射位置12aへ向け、主出射方向MRbを殺菌対象物10Uの第二照射位置12bへ向ける。これに加え、紫外線照射工程では、主出射方向MRcを殺菌対象物10Dの第三照射位置12cへ向け、主出射方向MRdを殺菌対象物10Dの第四照射位置12dへ向ける。そして、光源20aが有するLED素子と、光源20bが有するLED素子と、光源20cが有するLED素子と、光源20dが有するLED素子とから、紫外線を照射する。
【0073】
すなわち、第三実施形態における紫外線照射工程では、殺菌対象物10U,10Dが予め設定した照射位置へ移動した時に、二つの照射ユニット60a,60bが備える複数の光源20a~20dから、照射位置の殺菌対象物10U,10Dに対して紫外線を同時に照射する。
なお、複数の殺菌対象物10に対し、最初に行う紫外線照射工程では、一つの殺菌対象物10Uのみが照射位置へ移動した時に、照射ユニット60aが備える複数の光源20a,20bから、照射位置の殺菌対象物10Uに対して紫外線を照射する。
【0074】
(動作・作用)
図1から図13を参照して、第三実施形態の動作と作用を説明する。なお、上述した第一実施形態と同様の動作と作用については、その説明を省略する場合がある。
殺菌装置1を用いて殺菌対象物10の殺菌を行う際には、まず、移動部2に載せられて搬送されている殺菌対象物10U,10Dを、照射位置へ配置した後、光源20a及び光源20bと、光源20c及び光源20dから、紫外線を同時に照射する。
このため、第三実施形態の殺菌装置1であれば、光源20a~光源20dから紫外線を同時に照射する。すなわち、第三実施形態の殺菌装置1であれば、複数の光源20のうち少なくとも一つと、複数の光源20のうち他とは、互いに異なる位置で紫外線を同時に照射することで、多段階(二段階)で紫外線の照射を行う。
【0075】
このため、一つの照射ユニットに四つの光源20を備える構成とし、四つの光源20から一つの殺菌対象物10へ同時に紫外線を照射する場合と比較して、一つの殺菌対象物10へ紫外線を照射する光源20の数を減少させることが可能となる。
さらに、各光源20から主出射方向MR以外の方向へ出射される光が互いに重なる領域に対し、多段階で紫外線を照射することが可能となるため、エネルギーの消費量を増加させることなく、紫外線の照射時間を増加させることが可能となる。これに加え、光源20が備える放熱装置の構成を簡素化することが可能となる。
【0076】
また、第三実施形態の殺菌装置1では、互いに異なる位置で紫外線を照射する光源20が有するLED素子の主出射方向MRが向いている位置が、殺菌対象物10の紫外線が照射される面に、等間隔で配置されている。
このため、各光源20から主出射方向MR以外の方向へ出射される光が互いに重なる領域に対し、多段階で効率的に紫外線を照射することが可能となる。
なお、上述した第三実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第三実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0077】
(第三実施形態の効果)
第三実施形態の殺菌方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)複数の光源20を備える照射ユニット60を、殺菌対象物10の搬送方向に沿って複数配列する。これに加え、複数の照射ユニット60が備える光源20が有するLED素子を、それぞれ、殺菌対象物10のうち光源20と対向する面の中心から外径までの距離が同じ円の円周上に配置する。
このため、一つの照射ユニットが備える全ての光源20から一つの殺菌対象物10へ同時に紫外線を照射する場合と比較して、一つの殺菌対象物10へ紫外線を照射する光源20の数を減少させることが可能となる。
その結果、光源20の出力を低減させることが可能となり、エネルギーの消費量を低減させることが可能となる。
また、各光源20から主出射方向MR以外の方向へ出射される光が互いに重なる領域に対し、多段階で紫外線を照射することが可能となるため、エネルギーの消費量を増加させることなく、紫外線の照射時間を増加させることが可能となる。さらに、光源20が備える放熱装置の構成を簡素化することが可能となる。
【0078】
(2)複数の光源20を備える照射ユニット60を、殺菌対象物10の搬送方向に沿って、隣り合う殺菌対象物10U,10Dの間隔と同じ間隔で複数配列する。これに加え、殺菌対象物10U,10Dが予め設定した照射位置へ移動した時に、照射ユニット60a,60bが備える複数の光源20から、照射位置の殺菌対象物10U,10Dに対して紫外線を同時に照射する。
このため、一つの照射ユニットが備える全ての光源20から一つの殺菌対象物10へ同時に紫外線を照射する場合と比較して、一つの殺菌対象物10へ紫外線を照射する光源20の数を減少させることが可能となる。
その結果、光源20の出力を低減させることが可能となり、エネルギーの消費量を低減させることが可能となる。
【0079】
(変形例)
(1)第三実施形態では、照射ユニット60aが二つの光源20a,20bを備え、照射ユニット60bが二つの光源20c,20dを備える構成としたが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、図14中に示すように、照射ユニット60aが三つの光源20e~20gを備え、照射ユニット60bが三つの光源20h~20jを備える構成としてもよい。
この場合、三つの光源20e~20gは、殺菌対象物10の底面を見て正三角形の頂角にそれぞれ配置する。また、三つの光源20h~20jは、殺菌対象物10の底面を見て正三角形の頂角にそれぞれ配置するとともに、それぞれの主出射方向が、光源20e~20gの主出射方向の間を向くように配置する。
【0080】
すなわち、光源20e~20gは、円環状の凹部12と対向する円上(仮想的な円上)に沿って、等間隔(120[°]間隔)で配置されている。同様に、光源20h~20jは、円環状の凹部12と対向する円上(仮想的な円上)に沿って、等間隔(120[°]間隔)で配置されている。
また、三つの光源20e~20gのうち一つ(光源20e)と、三つの光源20h~20jのうち一つ(光源20h)は、搬送方向に沿って平行に配置する。
したがって、照射ユニット60aが備える光源20e~20gと、照射ユニット60bが備える光源20h~20jは、図14(c)中に示すように、互いに補完して配置されている。これにより、光源20e~20jは、図14(c)中に示すように、円環状の凹部12と対向する円上に沿って、互いに等間隔で離間するように配置されている。
【0081】
そして、照射制御部50は、近接センサ30から対象物検出信号の入力を受けた後に、位置制御部40から搬送停止信号の入力を受けると、光源20e~20gから、殺菌対象物10Uに対して、紫外線C波を照射させる。これに加え、光源20h~20jから、殺菌対象物10Dに対して、紫外線C波を照射させる。
【実施例
【0082】
第一実施形態から第三実施形態を参照しつつ、以下に記載する実施例により、実施例1から実施例5の殺菌装置と、比較例の殺菌装置について説明する。
(実施例1)
実施例1の殺菌装置は、第一実施形態と同様の構成、すなわち、二つの光源を備え、各光源が有するLED素子の主出射方向が、円環状に形成された凹部において、等間隔で配置された二箇所の照射位置に向いている構成を備える(図1及び図2を参照)。
さらに、実施例1の殺菌装置は、二つの光源から同時に紫外線を照射する構成を備える。
【0083】
(実施例2)
実施例2の殺菌装置は、四つの光源を備え、各光源が有するLED素子の主出射方向が、円環状に形成された凹部において、等間隔で配置された四箇所の照射位置に向いている構成を備える(図9から図11を参照)。
(実施例3)
実施例3の殺菌装置は、六つの光源を備え、各光源が有するLED素子の主出射方向が、円環状に形成された凹部において、等間隔で配置された六箇所の照射位置に向いている構成を備える。
【0084】
(実施例4)
実施例4の殺菌装置は、八つの光源を備え、各光源が有するLED素子の主出射方向が、円環状に形成された凹部において、等間隔で配置された八箇所の照射位置に向いている構成を備える。
(実施例5)
実施例5の殺菌装置は、五つの光源を備え、五つのうち四つの光源が有するLED素子の主出射方向が、円環状に形成された凹部において、等間隔で配置された四箇所の照射位置に向いている構成を備える。これに加え、実施例5の殺菌装置は、五つのうち残り一つの光源が有するLED素子の主出射方向が、底面部の中心に向いている構成を備える。
【0085】
(比較例)
比較例の殺菌装置は、一つの光源のみを備え、一つのみの光源が有するLED素子の主出射方向が、底面部の中心に向いている構成を備える(図4を参照)。
(性能評価(シミュレーション))
実施例1から実施例5の殺菌装置と、比較例の殺菌装置を用いて殺菌を行うことで、紫外線の照射性能に対するシミュレーションを行った。
照射性能に対する性能評価は、殺菌対象物10の凹凸形状16を形成する凹部12及び凸部14の断面に対し、それぞれ、インコヒーレントな放射照度(以下、「放射照度」と記載する)を測定することで行った。なお、LED素子の出力は、20[mW]に設定した。
【0086】
さらに、実施例2から実施例4の殺菌装置に対し、それぞれ、紫外線の照射方法を変えて殺菌を行うことで、殺菌性能に対する性能評価を行った。
具体的には、紫外線の照射時間は5[s]とし、単位時間当たりの対数減少値(LRV値)である「LRV/s」を算出することで、殺菌性能に対する性能評価を行った。
まず、一つの殺菌対象物に対する複数のLED素子を備えて構成された照射装置を、一つの照射ユニットと規定した。各照射ユニットが備える複数のLED素子は、一つの殺菌対象物に対して等間隔で円周状に設置した。
【0087】
そして、一つの照射ユニットが備えるLED素子の数と、単位時間当たりの対数減少値との関係を検出した。その検出結果は、図15に示す。
図15中に表されているように、一つの照射ユニットが備えるLED素子の数が多いほど殺菌性能は向上するが、単位時間当たりの対数減少値とLED素子の数は比例しないことが確認された。なお、図15中では、横軸に、一つの照射ユニットが備えるLED素子の数(図中では、「1ユニット当たりのLED数」と示す)を表す。また、図15中では、縦軸に、単位時間当たりの対数減少値(図中では、「LRV/s」と示す)を表す。
【0088】
すなわち、高出力のLED素子を限られた面積内に複数配置すると、LED素子による発熱の放熱性が低下し、LED素子内のジャンクション温度が上昇するため、LED素子の出力が低下する。
そして、一つの殺菌対象物に対する複数のLED素子を備えて構成された照射装置を一つの照射ユニットと規定すると、その照射ユニットにおいて、円周上へ等間隔に配置されたLED素子の数と単位時間当たりの対数減少値(LRV/s)との関係を見ると、比例係数は1.0以下となる。
【0089】
この結果に基づき、実施例2から実施例4についての性能評価を行った。
実施例2の殺菌装置に対する殺菌性能の評価は、以下に示す二種類の測定A1及びA2により行った。
A1.四つの光源から同時に紫外線を照射した場合の放射照度を測定。
A2.四つの光源のうち周方向で隣り合わない二つの照射位置に紫外線を照射する二つの光源と、残りの光源とから互いに異なるタイミングで紫外線を照射することで、二段階で紫外線の照射を行った場合の放射照度を測定。
【0090】
実施例3の殺菌装置に対する殺菌性能の評価は、以下に示す二種類の測定B1及びB2により行った。
B1.六つの光源を、殺菌対象物10の底面を見て正三角形の頂角に配置された三つの照射位置に紫外線を照射する三つ一組の光源を、二組に分類する。そして、二組の光源により、互いに異なるタイミングで紫外線を照射することで、二段階で紫外線の照射を行った場合の放射照度を測定。
B2.六つの光源を、殺菌対象物10の底面の中心を通過する直線の上に配置された二つの照射位置に紫外線を照射する二つ一組の光源を、三組に分類する。そして、三組の光源により、互いに異なるタイミングで紫外線を照射することで、三段階で紫外線の照射を行った場合の放射照度を測定。
【0091】
実施例4の殺菌装置に対する殺菌性能の評価は、以下に示す三種類の測定C1,C2,C3により行った。
C1.八つの光源から同時に紫外線を照射した場合の放射照度を測定。
C2.八つの光源から互いに異なるタイミングで紫外線を照射することで、二段階で紫外線の照射を行った場合の放射照度を測定。
C3.八つの光源から互いに異なるタイミングで紫外線を照射することで、四段階で紫外線の照射を行った場合の放射照度を測定。
【0092】
(評価結果)
・照射性能
実施例1から実施例5の殺菌装置と、比較例の殺菌装置に対し、放射照度を測定した結果、実施例1から実施例5は、比較例と比較して、凹部12に対する放射照度が高いことが確認された。
これにより、実施例1から実施例5の殺菌装置は、比較例の殺菌装置と比較して、照射性能が高いことが確認された。
【0093】
・殺菌性能
実施例2の殺菌装置に対しては、紫外線の照射方法を変えて放射照度を測定した結果、B1の測定ではLRV/sが0.65となり、B2の測定ではLRV/sが0.70となった。
実施例3の殺菌装置に対しては、紫外線の照射方法を変えて放射照度を測定した結果、C1の測定ではLRV/sが0.90となり、C2の測定ではLRV/sが1.05となった。
実施例4の殺菌装置に対しては、紫外線の照射方法を変えて放射照度を測定した結果、A1の測定ではLRV/sが1.1となり、A2の測定ではLRV/sが1.30となり,A3の測定ではLRV/sが1.40となった。
【0094】
(多段照射の検証)
一つの殺菌対象物に対する1回の紫外線の照射時間を1[s]とし、単位時間当たりの対数減少値(LRV/s)が3を満たすために必要な、LED素子の数をシミュレーションした。
その結果、一つの照射ユニットが備えるLED素子の数が2個である構成では、9つの照射ユニットが備えるLED素子が必要、すなわち、18個のLED素子が必要であった。
また、一つの照射ユニットが備えるLED素子の数が4個である構成では、5つの照射ユニットが備えるLED素子が必要、すなわち、20個のLED素子が必要であった。
また、一つの照射ユニットが備えるLED素子の数が8個である構成では、3つの照射ユニットが備えるLED素子が必要、すなわち、24個のLED素子が必要であった。
【0095】
以上により、少ない数のLED素子を備えて構成された照射ユニットを、殺菌対象物の搬送方向に沿って複数配列し、LED素子から紫外線を多段照射することで、殺菌効率を向上させることが可能であることが確認された。
これにより、多段階で紫外線の照射を行う構成が、1つの照射ユニットが備える全ての光源から同時に紫外線を照射する構成と比較して、殺菌性能が高いことが確認された。
さらに、紫外線の照射を行う段階が多いほど、殺菌性能が高いことが確認された。
【符号の説明】
【0096】
1…殺菌装置、2…移動部、10…殺菌対象物、10a…円筒部、10b…底面部、12…凹部、12a…第一照射位置、12b…第二照射位置、12c…第三照射位置、12d…第四照射位置、14…凸部、16…凹凸形状、20…光源、22…LED素子、30…近接センサ、40…位置制御部、50…照射制御部、60…照射ユニット、70…導光管、80…光学材、MR…主出射方向、DL…照度の分布を表す領域の輪郭、LF…LED素子22に対して垂直な方向で出射する光、SE…凸部14が壁を形成して陰となる領域
図1
図2
図3
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図10
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