(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】運動中および静的状態において生理学的な足の特徴をサポートするための装置
(51)【国際特許分類】
A43B 7/14 20220101AFI20221104BHJP
A43B 13/14 20060101ALI20221104BHJP
A43B 17/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A43B7/14 A
A43B13/14 B
A43B17/00 Z
(21)【出願番号】P 2021529516
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2019070146
(87)【国際公開番号】W WO2020025467
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】102018118609.6
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521044682
【氏名又は名称】(テーエス)2 ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】(TS)2 GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】スティーフ,トマス
(72)【発明者】
【氏名】シュプレケルマイヤー,ティノ
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0280820(US,A1)
【文献】国際公開第2016/084252(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0000211(US,A1)
【文献】実開昭48-098343(JP,U)
【文献】登録実用新案第3184409(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0258182(US,A1)
【文献】米国特許第08984770(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00-23/30
A43C 1/00-19/00
A43D 1/00-999/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の足をサポートするための装置(100)であって、前記装置は、前記装置(100)の少なくとも中央領域(620)にアーチを形成する、少なくとも1つの第1の層(101)と、前記装置の踵領域にある第1の端部領域(610)の第1の結合領域(111)、および前記装置の前足部領域にある第2の端部領域(630)の第2の結合領域(113)において前記第1の層(101)に結合される、少なくとも1つの第2の層(103)とを含み、
前記装置(100)は、前記第1の層(101)および前記第2の層(103)が、少なくとも1つのたわみ要素(105、115)によってあらかじめ画定された互いの間隔を、前記たわみ要素の位置で有するように、前記第1の結合領域(111)と前記第2の結合領域113)との間で、前記第1の層(101)と前記第2の層(103)との間に少なくとも部分的に配置される、前記少なくとも1つのたわみ要素(105、115)を含み、前記第2の層(103)は、前記第1の結合領域(111)と前記第2の結合領域(113)との間で、前記少なくとも1つのたわみ要素(105、115)を介して張力がかけられ、
前記第2の層(103)は、前記装置(100)の屈曲時、前記屈曲によって前記第1の層(101)によって形成される前記アーチの高さが増大する
ように、前記第2の端部領域(630)で作用する張力が、前記少なくとも1つのたわみ要素(105、115)を介して、前記第1の端部領域(610)において前記第1の層(101)に伝達されるように設計されている、装置(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのたわみ要素(105、115)が、別個の要素であることを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのたわみ要素(105、115)が、前記第1の層(101)および/もしくは前記第2の層(103)に強固に結合されているか、または前記第1の層(101)および/もしくは前記第2の層(103)と一体形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのたわみ要素(105、115)が、前記中央領域(620)から前記第2の端部領域(630)までの移行領域において、前記第1の層(101)と前記第2の層(103)との間に少なくとも部分的に配置されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記第2の層(103)が、前記第1の端部領域(610)の第1の結合領域(111)および前記第2の端部領域(630)の第2の結合領域(113)において前記第1の層(101)に強固に結合されているか、または前記第1の層(101)と一体形成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのたわみ要素(105、115)が、縦軸を有する細長い要素であり、前記装置(100)の前記縦軸(L)に対して60°~120°の範囲の角度を形成することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記第1の層(101)が、前記第1の層(101)の途中まで穿設された複数の窪み(1001)、および/または前記第1の層(101)を完全に貫通する開口部(1001)を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記第2の層(103)が、実質的に前記第2の層(103)の縦方向に沿った向きに配向された、少なくとも1つの切抜き部(107)を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記装置(100)が、複数のたわみ要素(105、115)を有しており、少なくとも前記中央領域(620)にある前記たわみ要素(105、115)が、前記装置(100)の前記縦軸(L)に沿って、互いに隣接して、かつ互いに接触して配置されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記複数のたわみ要素(115)の前記たわみ要素(115)が、互いに強固に結合されていることを特徴とする、請求項9に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記複数のたわみ要素(115)の前記たわみ要素(115)が、実質的に筒状の弾性要素であることを特徴とする、請求項9および10のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記中央領域(620)から前記第2の端部領域(630)までの前記移行領域において、前記第1の層(101)と前記第2の層(103)との間に少なくとも部分的に配置される前記少なくとも1つのたわみ要素(105)に加えて、前記装置(100)が、少なくとも前記中央領域(620)において、前記第1の層(101)と前記第2の層(103)との間で、前記装置(100)の前記縦軸に沿って、互いに隣接して、かつ互いに接触して配置される、複数の第2のたわみ要素(115)の集合体を更に有することを特徴とする、請求項4~8のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記中央領域(620)から前記第2の端部領域(630)までの前記移行領域において、前記第1の層(101)と前記第2の層(103)との間に少なくとも部分的に配置される前記少なくとも1つのたわみ要素(105)が、前記第1および/または前記第2の層(103)に恒久的に一体化されていることを特徴とする、請求項12に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記複数の第2のたわみ要素(115)の前記集合体を形成している前記第2のたわみ要素(115)が、互いに強固に結合されていることを特徴とする、請求項12および13のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項15】
前記複数の第2のたわみ要素(115)の前記集合体を形成している前記第2のたわみ要素(115)が、実質的に筒状の弾性要素であることを特徴とする、請求項12~14のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項16】
前記装置(100)が中敷であることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の装置(100)を含む靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中敷、または靴の中もしくは靴に接して恒久的に配置される装置の形態で、生理学的な足の特徴をサポートするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の足は、骨、筋肉、腱および靭帯構造で構成されており、多種多様な地面の状態に対して、足の最適な適応性によって全身の安定した直立姿勢を可能にし、また、歩行運動の間に全身にかかる応力を軽減するための緩衝装置としての役割を果たす、柔軟性のあるユニットである。更に、歩行時には、足は推進するためのてことしての役割を果たす。この機能を確実なものとするために、足の中足部領域および踵領域は、安定的な構成を取る必要がある。
【0003】
この足の柔軟性と安定性との間の相互作用が妨げられる場合、足だけでなく全身にも影響を及ぼす症状を引き起こす可能性がある。そのような症状を治療するために、例えば、整形外科用インサートまたは他の中敷などの装置が使用されるが、それらは、(着脱自在に)靴の中に配置することができ、足を楽にするか、サポートするか、導くか、または刺激する特性を有する。スポーツ活動中に足の機能をサポートするために、そのような装置を提供することもできる。
【0004】
靴外部の靴底として固定することができる、足をサポートするための装置の一実施例が、欧州特許第2822414(B1)号明細書に開示されている。これは、ランニング中に異なる段階にある足をサポートすることが意図されたスポーツシューズを開示するものである。この靴は、ゴムバンドが案内された靴底を備えている。ゴムバンドは、靴底が荷重を受けていない時に、靴底を適切に成形する役割を果たしている。
【0005】
特に、歩いたり、走ったり、ジャンプする時、足はいわゆるウィンドラス機構を利用する。ここでは、とりわけ前足部で立っている時の足趾の(上方への)過伸展と、その結果として足底筋膜にある足趾屈筋の腱に張力が生じることにより、中足部領域および踵領域の部位が挙上して三次元的に伸張し、中足骨および踵骨が固定されることによって、安定したてこの構成が生じる。ウィンドラス機構は、腱に埋め込まれた骨構造、いわゆる種子骨によってサポートされる。種子骨は、腱と骨との間隔を更に確保するものであり、これにより、中足部領域および踵領域の記載された挙上が強化される。
【0006】
弓の弦が伸張する時と同じように、足底筋膜の腱が伸張する時に、ひずみエネルギーが蓄積される(弓および弦のモデル)。このエネルギーは、更なる歩行運動のために利用することができる。特に、このエネルギーは、例えば、歩いたり、走ったり、および/またはジャンプする時に、足および全身の効率的で迅速な挙上に利用される加速動作に変換される。
【0007】
しかしながら、記載された機構の機能を確実なものとするために、特に足の筋肉および腱は、十分な生理学的剛性および弾性、ならびに生理学的な長さの比率を有することが必要とされる。ただし、多くの足の医学的状態では、もはやこれらの特徴を呈しておらず、従って記載された足の柔軟性と安定性との間の相互作用をもはや呈することはない。
【0008】
上記に鑑みて、本発明の目的は、人間の足の機能をサポートするための装置を利用可能にすることであり、この装置は、恒久的にまたは着脱自在に靴の中に配置することができ、足の柔軟性と安定性との間の相互作用、およびエネルギー効率の良い歩行運動を能動的にサポートすることができる。足の動的な機能を、可能な限り自然に能動的にサポートすることを確実にすることを目的としている。特に、本発明の更なる目的は、関節を固定することと、中足部領域と踵領域の部位とをアーチ状に伸張することと、エネルギー効率の良い足の挙上とによって、人間の足をサポートし、踵領域および中足部領域の記載されたてこの機能をサポートするか、また代替することも可能である装置を利用可能にすることである。
【発明の概要】
【0009】
これらのおよび他の目的は、請求項1に記載の人間の足をサポートするための装置、および請求項17に記載の靴によって達成される。
【0010】
本発明は、特に歩行周期の間に人間の足をサポートするための装置、およびその機能を利用可能にするものであり、この装置は、靴の中に恒久的にまたは着脱自在に配置することができることが好ましい。好ましい実施形態において、装置とは、例えば、スポーツシューズおよび/または日常的な靴のための中敷のことである。特にこの場合、装置は、靴の中に着脱自在に配置することができる。別の実施形態では、装置は、靴の構成部品として設計することができる。装置は、靴の縦軸に相当する縦軸に沿って、人間の足に従い、踵領域(第1の端部領域)と、中足部領域(中央領域)と、前足部領域(第2の端部領域)とに分割することができる。装置が靴の中に配置されるか、または靴の一部として設計される場合、これらの領域は足の各々の領域に対応する。
【0011】
特に、本発明は、人間の足をサポートするための装置に関するものであってよく、装置は、少なくとも装置の中央領域にアーチを形成する、少なくとも1つの第1の層と、装置の踵領域にある第1の端部領域の第1の結合領域、および装置の前足部領域にある第2の端部領域の第2の結合領域において第1の層に結合される、少なくとも1つの第2の層とを含み、装置は、第1の層および第2の層が、少なくとも1つのたわみ要素によってあらかじめ画定された互いの間隔を、たわみ要素の位置で有するように、第1の結合領域と第2の結合領域との間で、第1の層と第2の層との間に少なくとも部分的に配置される、少なくとも1つのたわみ要素を含み、第2の層は、第1の結合領域と第2の結合領域との間で、少なくとも1つのたわみ要素を介して張力がかけられ、第2の層は、装置の屈曲時、この屈曲によって第1の層によって形成されるアーチの高さが増大するというような方法で、第2の端部領域で作用する張力が、少なくとも1つのたわみ要素を介して、第1の端部領域において第1の層に伝達されるように設計されている。
【0012】
装置は、少なくとも中足部領域(中央領域)において、好ましくは凸状のアーチを形成するか、または好ましくは三次元的に伸張される、少なくとも1つの第1の層を更に含む。第1の層は、例えば、好ましくは輪郭において靴の内部形状に適応する二次元構造体であってもよい。従って、第1の層が靴のインサートまたは靴の中敷に相当する輪郭形状を有することが好ましい。適切である場合、複数の第1の層を設けることができる。例えば、複数の第1の層を、縦軸に沿って互いに隣接して配置することができる。追加的にまたは代替的に、上記で互いに配置される複数の第1の層は、例えば、集合体の状態で設けることができる。第1の層は、三次元物体としての内部構造、例えば空洞、一部の層および/または適切な充填剤を有してもよい。
【0013】
第1の層によって形成されるアーチは、好ましくは、装置の踵領域(第1の端部領域)から装置の中足部領域(中央領域)に延びる。換言すれば、第1の層は、好ましくは少なくとも部分的に三次元的に凸状の表面を形成し、そのアーチの高さは、好ましくは人間の足の足裏の対応する輪郭に適切に適応する。しかしながら、第1の層はまた、小領域において人間の足に適応する別の適切な形状を有することができる。例えば、第1の層は、踵領域(第1の端部領域)、および外側の中足部領域(中央領域の外側の部分)では凹状に成形することができる。このように、この装置は、人間の足の領域に対応する装置の領域に適応させることが可能であり、これによって、可能な限り自然に忠実な様式で人間の足の機能をサポートするのを助ける。
【0014】
好ましい実施形態では、第1の層は、少なくとも部分的に、またはいくつかの部分では、構造化充填剤で充填されている。充填剤は、例えば、人間の器官でも見られるような小柱、すなわち棒状構造を有してもよい。そのような第1の層の構造化充填物により、足の自然な機能、好ましくはウィンドラス効果をサポートする際に、装置の機能をサポートすることができるか、または代替することも可能となる。このために、足に個別に適応させることができる適切な領域に、充填物を設けることができる。好ましい実施形態では、第1の層の全体積にわたる第1の層の充填物が均一であることにより、所望の用途に適応することができる。第1の層の柔軟性を更にサポートするために、適切な位置で材料の削減をもたらし、特にそのような領域の柔軟性を増大させることができる。
【0015】
好ましい実施形態では、第1の層は、好ましくは、細長い楕円形のデザインの複数の窪みまたは開口部を有し得る。開口部である場合、第1の層は完全に貫通していてもよいが、窪みの場合では、盲穴の様式で第1の層の途中まで穿設されて到達するだけであってもよい。好ましい実施形態では、窪みおよび開口部の両方を設けることができる。この第1の層の複数の窪みまたは開口部により、第1の層の異なる領域で、曲げ柔軟性およびねじり柔軟性を制御することが可能になり得る。同時に、複数の窪みまたは開口部により、皮膚の分泌および空気循環を増加させることができる。
【0016】
上記に記載された弓および弦のモデルの弦の機能を利用可能とすることができるように、第1の層は、第1の層のアーチ形状を確保するために、適切な寸法安定性を有するか、および/または適切に成形された(サポート)要素(第2のたわみ要素)によって寸法安定性が得られる材料で作製されるのが好ましい。一方では、材料は、前足部領域が上方に屈曲(背屈)する時に、第1の層が圧迫され、関連するアーチの高さが増大できるくらい十分柔軟性があることが好ましい。好ましい実施形態では、寸法的に安定な変形例に適切であると判明している材料とは、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリラクチド(PLA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、および/またはケブラーなどの繊維複合体、炭素もしくはガラス繊維複合体、および各種金属物質、および他の付加的に処理可能な材料である。第1の層は、最適な層の重量対層の強度の比を達成することができるように、特にこれらの材料から製造することができる。
【0017】
更に装置は、踵領域(第1の端部領域)、および前足部領域(第2の端部領域)において、好ましくは耐張力性の様式で第1の層に結合される、第2の層を含む。このために、例えば、適切な技術により、第2の層および第1の層を取り外し可能に、部分的に取り外し可能に、または異なる実施形態では取り外し不可に結合することができる。異なる実施形態では、第1の層および第2の層を粘着的に結合することができる(、接着接合、架橋、溶接、付加的加工、加硫、またはろう接)。異なる実施形態では、第1の層および第2例えばの層を、形状嵌合係合、例えば、実矧ぎ結合、鋸歯結合、または蟻継ぎ結合によって結合することもできる。異なる実施形態では、第1の層および第2の層を、例えば、面ファスナによる圧力バメ係合によって結合することができる。第1の層および第2の層を、好ましくは、形状嵌合係合および圧力バメ係合、例えば、リベット締めまたはネジ止めによって結合することができる。異なる実施形態では、第1の層および第2の層を、互いに一体形成することもできる。
【0018】
第2の層は、好ましくは第1の層より小さい表面積を有する二次元構造体であることが好ましい。第1の層の場合のように、第2の層の場合もまた、第2の層を複数設けることも可能である。例えば、複数の第2の層は、縦軸に沿って互いに隣接して配置することができる(弓および弦のモデルにおける複数の弦)。追加的にまたは代替的に、上記で互いに配置される複数の第2の層は、例えば、集合体の状態で設けることも可能である。第2の層もまた、三次元物体としての内部構造、例えば空洞、一部の層および/または適切な充填剤を有してもよい。第2の層は、好ましくはアーチから離れる方に向いている第1の層の側面に配置される。換言すれば、装置が靴の中に配置されるか、または靴の一部として設計される場合、第1の層が上層であることが好ましく、第2の層が下層であることが好ましい。
【0019】
人間の足の足裏の形状に適切に適応させるために、好ましい実施形態では、第1の層は、対応する三次元のアーチ形状を形成することができる。このために、好ましい実施形態では、アーチの高さは、好ましくは最大の高さの領域から両方向に、側方に傾斜していてもよい。換言すれば、第1の層は、少なくとも部分的に三次元的に凸状の表面を形成することが可能であり、そのアーチの高さは、人間の足の足裏の対応する輪郭に適切に適応する。すでに述べたように、第1の層は、例えば側方の中足部領域(側方の中央領域)に、三次元的に凸状の、上向きに隆起したアーチを形成することができるが、他の領域では、人間の足に適応する他の適切な形状を有することができる。例えば、第1の層は、踵領域(第1の端部領域)、および外側の中足部領域(外側の中央領域)においては凹状に成形することができ、これにより、装置に有益な効果がもたらされる。
【0020】
本発明によれば、装置は少なくとも1つのたわみ要素を含む。更に、本発明により、第2の層は、装置の屈曲時、前足部領域(第2の端部領域)に作用する張力(または、第2の層を伝わって作用する対応する力)が、少なくとも1つのたわみ要素を介して踵領域(第1の端部領域)における第1の層に伝達されるように設計され、これにより、この屈曲によって第1の層によって形成されるアーチの高さが増大する。ここでの屈曲とは、好ましくは背屈のことである。当業者であれば理解されるように、装置の背屈とは、装置が靴の中で使用される場合、足の甲に向かって上方に向いた屈曲に相当するものである。
【0021】
装置は、背屈の後に第1の層によって形成されたアーチが最初の構造へと戻る動きにより、前足部領域(第2の端部領域)の底屈(すなわち足裏に向かう屈曲)が引き起こされるように設計されることが好ましい。換言すれば、第1の層によって形成され、前足部領域における装置の背屈によってもたらされるアーチの高さの増大は、可逆的なものである。
【0022】
このように、好ましい実施形態では、装置は、少なくとも歩行周期の間に足を能動的にサポートするのに適切である。換言すれば、前足部領域における装置の背屈は、第1の層によって形成されるアーチが能動的に足を押し上げるという効果を有する。例えばスポーツ分野において、単に人間の足の足裏の形状に擬態し、従って足を受動的にサポートするにすぎない従来のインサートと対照的に、本発明による装置は、足が動く時に、例えば歩行周期の間に足を能動的にサポートすることが可能である。装置は、他の活動中の足、例えばジャンプまたは走るための足を同様にサポートすることが可能であり、これにより、例えば、任意の種類の靴の中敷の形態で、特に日常的な靴またはスポーツシューズの形態においても、装置を有利に使用することができる。第1の層によって形成されるアーチの能動的な動き(背屈時にアーチが挙上し、その後の反対方向の屈曲時に最初の構造に戻る)により、特に装置の自然な機能が促進されて、人間の足がサポートされる。
【0023】
このため、上記に記載された弓および弦のモデルにおける弦の機能を利用可能にするために、第2の層は、特に第1の層の強度に相当するか、またはそれを上回る強度を有する材料から作製されることが好ましい。第2の層は、負荷がかかった状態で、第1の層と比較してより小さい範囲で伸張することが好ましい。第2の層は、好ましくは適切な材料を選択することだけでなく、成形することによって達成することができる、好ましくは可能な限り最高の強度対重量比を有するべきである。好ましい実施形態では、適切な材料とは、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)および/またはケブラーなどの繊維複合体、炭素もしくはガラス繊維複合体などの耐張力性プラスチックであることが判明している。
【0024】
更に、第2の層は好ましくは二次元であり、第2の層の幅(厚さに対して直角、かつ長さに対して直角の)は、少なくともある部分において、第2の層が、一方では第2の層の材料が過負荷となることなく、発生する応力を受け入れることができるほど十分に広く、他方では重量の削減を達成するほど十分狭いというような方法で、第1の層の幅に対して設定されていることが好ましい。換言すれば、成形により、および材料を選択することによって、発生する応力および力を適切に伝達することができるほど第2の層が十分に強いことを確実にすることができる。
【0025】
本発明によれば、少なくとも1つのたわみ要素は、第1の層と第2の層との間に少なくとも部分的に配置される。換言すれば、たわみ要素の少なくとも一部分は、少なくともこの部分が結果として第1の層と第2の層との間の間隔となるように、第1の層と第2の層との間に配置される。好ましい実施形態では、少なくとも1つのたわみ要素は、層とは別個の要素である。従って、好ましい実施形態では、少なくとも1つのたわみ要素は、第1および/または第2の層に緩く置かれている、三次元の単一の物体であってもよい。
【0026】
他の実施形態では、少なくとも1つのたわみ要素を、第1の層および/または第2の層に強固に結合することができる。このために、少なくとも1つのたわみ要素は、取り外し可能に、部分的に取り外し可能に、または取り外し不能に第1の層および/または第2の層に結合することができ、好ましくは粘着的に(例えば、接着接合、架橋、溶接、付加的加工、加硫、ろう接)、形状嵌合係合によって(例えば、実矧ぎ結合、鋸歯結合、蟻継ぎ結合)、圧力バメ係合によって(例えば、面ファスナによって)、または形状嵌合係合および圧力バメ係合によって(例えば、リベット締め、ネジ止め)結合することができる。他の好ましい実施形態では、たわみ要素は、第1のおよび/または第2の層と一体形成することができる。
【0027】
たわみ要素の形状は、人間の足の足裏の湾曲に適応していることが好ましく、たわみ要素のてこの効果をサポートすることができるように選択される。換言すれば、この形状は、前足部領域(第2の端部領域)の背屈時に発生する上記に記載された応力を、少なくとも1つのたわみ要素が適切に伝達することができるように選択され、それによって装置の弓および弦の機能をサポートする。好ましい実施形態では、第1の層および/または第2の層は、たわみ要素の領域で厚肉化した部分(thickening)を有し、それによって、機械的なカウンターベアリングを形成し、装置の安定化に貢献する。
【0028】
本発明によれば、第1の層および第2の層が、互いに少なくとも1つのたわみ要素によってあらかじめ画定された間隔にあるように、たわみ要素が第1の層と第2の層との間に少なくとも部分的に配置される。換言すれば、第1の層と第2の層との間に所望の間隔を設定するために、少なくとも1つのたわみ要素が設けられる。ここで、この間隔は、少なくとも1つのたわみ要素の位置における層の間で最小の間隔であってよく、特に第1の層がアーチを形成する中央領域で大きくなる。
【0029】
従って、中足部領域(中央領域)と前足部領域(第2の端部領域)との間の移行領域に配置されることが好ましい、少なくとも1つのたわみ要素は、種子状の要素として示すことができる。少なくとも1つのたわみ要素の作用は、種子骨、すなわち、腱に埋め込まれ、骨から腱の間隔を付加的に生じさせている小さい骨の作用と同様であることが好ましい。間隔が大きくなる結果として、腱に結合された骨を動かすためにより少ない力が必要となるように、種子骨では腱に対してより大きなてこがもたらされる。これと同様に、本発明による少なくとも1つのたわみ要素を介して、てこの効果をもたらすことが可能であり、これにより、第2の層が、前足部領域における装置の背屈時に発生する応力を最適に伝達することができる。
【0030】
たわみ要素によってあらかじめ画定された層の間の間隔によって、第2の端部領域における装置の背屈時に、第1の層によって形成されるアーチの拡張を増大させることができる。別の言い方をすれば、たわみ要素のサイズを適切に選択することによって間隔を設定することにより、これを利用して装置の背屈時にアーチの拡張を調整することができる。このように、少なくとも1つのたわみ要素を適切に適応させることにより、装置を足および所望の用途に個別に適応させることができる。少なくとも1つのたわみ要素は、適切な寸法にすることができる。しかしながら、異なる実施形態では、分布およびサイズの点で、人間の足の足裏の形状に適切に適応する複数のたわみ要素を設けることも可能である。従って、好ましい実施形態では、好ましくは異なるサイズの、例えば異なる体積の、少なくとも2つのたわみ要素を、中足部領域(中央領域)と前足部領域(第2の端部領域)との間の移行領域において、第1の層と第2の層との間に少なくとも部分的に、好ましくは実質的に装置の横方向の幅に沿って設けることができる。
【0031】
少なくとも1つのたわみ要素の寸法設計によるものだけでなく、層の間のたわみ要素の位置決めによって、アーチの拡張を設定することができる。異なる実施形態では、少なくとも1つのたわみ要素の位置決めが、ウィンドラス効果のサポートを最適化するために利用され得る。好ましい実施形態では、少なくとも1つのたわみ要素が、中足部領域(中央領域)と前足部領域(第2の端部領域)との間の移行領域において、第1の層と第2の層との間に少なくとも部分的に配置される。縦軸に沿った前足部領域(第2の端部領域)の方向で踵領域(第1の端部領域)の始まる部分から計算すると、少なくとも1つのたわみ要素は、装置の全長の好ましくは約45%~85%(より好ましくは50%~82%、更により好ましくは60%~80%)に相当する、この始まりの部分からの距離に配置することができる。この領域における少なくとも1つのたわみ要素の位置が、天然のたわみ要素である種子骨の位置に極めて効果的に擬態するものであるため、装置のこの領域に少なくとも1つのたわみ要素を配置することによって、ウィンドラス効果を最適にサポートすることができるということが分かっている。また、この領域で特定の病態および/または顧客/患者のために位置を適応させることが可能であってよいか、またはそうすることを必要とすることができる。
【0032】
少なくとも1つのたわみ要素によって設定される、たわみ要素の位置における第1の層と第2の層との間の間隔は、好ましくは0.1~20mmの範囲、より好ましくは0.2~10mmの範囲、より好ましくは0.5~8mmの範囲、および最も好ましくは1~5mmの範囲とすることができる。
【0033】
換言すれば、前足部領域(第2の端部領域)において、足の甲に向かって装置が屈曲した場合に、上記に記載された弓および弦のモデルのような第2の層に加えられる応力または力により、第1の層によって形成されるアーチの高さが増大するように、すなわち、例えば中足部領域のこの領域に三次元のアーチを生じさせ、更に上方に隆起させるように、たわみ要素が設けられる。
【0034】
少なくとも1つのたわみ要素は、装置の幅方向に沿って配置されることが好ましい。たわみ要素は、装置の横軸に沿った楕円形の形状を有することができ、好ましくは、両側に向かって小さくなる、実質的に円形の断面を有することができる。換言すれば、少なくとも1つのたわみ要素を、第1の層の三次元的に凸状の表面に、従って人間の足の足裏に好ましくは適切に適応させることができるが、このことにより、人間の足をサポートする時の装置の機能が促進される。たわみ要素は、発生する機械的負荷に耐えることが可能であり、装置全体の曲げ柔軟性をできるだけ制限することのない材料から作製されることが好ましい。このために、少なくとも1つのたわみ要素は、加圧下において安定的であり、かつ曲げ弾力性があることが好ましい。
【0035】
少なくとも1つのたわみ要素に対し、追加的にまたは代替的に、複数の個々のたわみ本体またはサポート要素(第2のたわみ要素)の集合体を、好ましい実施形態において設けることができる。そのような第2のたわみ要素の集合体は、記載される少なくとも1つのたわみ要素の機能をサポートすることができるか、または実現することができる。ここでは、集合体の個々のたわみ本体(第2のたわみ要素)が弾性材料であることが好ましい。たわみ本体(第2のたわみ要素)は、それらの形状および配置によって第1の層の形成をサポートすることができ、前足部の上方への屈曲時に第1の層が隆起することを促進することもできる。
【0036】
少なくとも1つのたわみ要素、および/または複数のたわみ本体(第2のたわみ要素)の集合体のたわみ要素は、例えば強度のあるプラスチック材料などの材料、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリラクチド(PLA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、および/またはケブラーなどの繊維複合体、炭素もしくはガラス繊維複合体などの材料を含むことが好ましい。好ましい実施形態では、少なくとも1つのたわみ要素および/またはたわみ本体(第2のたわみ要素)は、第1の層と同じ材料を含むか、または第1の層の材料からなる。
【0037】
上記に記載されているように、本発明によれば、少なくとも1つのたわみ要素が第1の層と第2との間に少なくとも部分的に配置されており、これによって、あらかじめ画定された所望の間隔が、第1の層と第2の層との間にもたらされる。好ましい実施形態では、第2の層は、前足部領域(第2の端部領域)および踵領域(第1の端部領域)における第1の層へのそれぞれの結合領域の間にあるたわみ要素を介して張力がかけられる。この張力は、好ましくは、荷重を受けた状態(靴の中で使用される装置の上に使用者が立っている時)であっても、第1の層によって形成されるアーチが(少なくとも部分的に、および/またはある部分において)維持されるという効果を有する。特に、この張力は、アーチが少なくとも中足部領域(中央領域)で維持されるようなものであることが好ましい。少なくとも1つのたわみ要素により、層が互いに相対して動くことができるようにすることが好ましい。
【0038】
換言すれば、好ましくは第1の層への結合領域の間にある第2の層は、弓に接した弦の様式で、第1の層のたわみ要素を介して張力がかけられる。前足部領域(第2の端部領域)で装置が背屈するために、対応する応力または力が第2の層を介して踵領域(第1の端部領域)において第1の層に伝達される場合、これにより、第1の層が更に曲げられ、その対応するアーチの高さが増大してひずみのエネルギーが蓄積されるが、このひずみのエネルギーは、続いて装置が前足部領域(第1の端部領域)で再度屈曲すると、再び解放される。
【0039】
すでに述べたように、装置は、踵領域と、中足部領域と、前足部領域とに分割することができる。異なる実施形態では、第2の端部領域とは前足部領域に相当し、第1の端部領域とは踵領域に相当し、中央領域とは中足部領域に相当するものである。異なる実施形態では、装置の縦軸に沿った前足部領域の長さは、装置の全長の約25%~45%の寸法となり、対応する踵領域の長さは、全長の約5%~25%の寸法となり、対応する中足部領域の長さは、全長の約40%~60%の寸法となる。
【0040】
このように、装置は、ウィンドラス効果、また足筋の腱のばね作用を擬態することが可能である。従って、装置は、歩いたり、または走ったりする時に能動的に足をサポートすることが可能であり、自然な方法でそうすることが可能である。従って、この装置によって、足の病態、例えば扁平足、外反扁平足(pes valgo planus)、開張足および凹足を、能動的にサポートし、矯正することができる。代替的にまたは追加的に、この装置を使用して、様々なスポーツ活動中に足をサポートすることもできる。
【0041】
装置の更なる効果としては、初期の立脚期、例えば、歩いたり、走ったり、ジャンプなどをする時であっても、緩衝機能を提供することが可能であり、回内を許容して、地面との接触が終わるまでエネルギーを蓄積することができることである。従って、装置は、ウィンドラス機構をサポートすることによって、足の裏を能動的に上げることができ、これにより、歩行運動の装置に対して好ましい影響を与えることができる。ウィンドラス機構をサポートすることによって、固定する間に足がサポートされる。
【0042】
この効果は特に、第2の層がたわみ要素を介して第1の層と相対して伸張され、中足部領域において第1の層に直接接触していない(無荷重状態における)場合に達成される。しかしながら、例えば、装置の安定性をサポートする充填剤が中足部領域の層の間にも設けられ、続いて、この充填剤を介して第2の層が第1の層に間接的に接触するということも可能である。
【0043】
第1の層と、第2の層と、少なくとも1つのたわみ要素との相互作用の結果、縦軸の周りのねじれ、横軸の周りの曲げ弾力性を可能にし、かつ、各々の足に適応する装置を可能にし得る。装置は、異なる領域で異なる度合いの曲げ柔軟性とねじれ柔軟性とを有することができる。
【0044】
本発明はまた、人間の足をサポートするための上記に記載された装置を含む靴を利用可能とするものである。この装置は、あらゆる種類の靴、特にカスタムメイドの整形外科用の靴で使用するのに好適であるが、通常の靴(日常的な靴、ビジネスシューズ)、またはスポーツシューズで使用するのにも好適である。好ましい実施形態では、装置は中敷であってもよく、靴の中に着脱自在に配置することができる。あるいは、好ましい実施形態では、装置を恒久的に靴の中に配置することができるか、または靴および/または靴の靴底部分として設計することができる。
本発明の実施形態は、下記で更に詳細に説明され、図に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】ウィンドラス機構を例示するための人間の足の概略図を示す。
【
図2】足をサポートするための装置を伴う、人間の足の概略図を示す。
【
図3】足をサポートするための装置の側面図を示す。
【
図4】足をサポートするための装置の個々の構成要素の図を示す。
【
図5】足をサポートするための装置の平面図を示す。
【
図6】足をサポートするための装置の様々な図を示す。
【
図7】足をサポートするための装置の第2の層を示す。
【
図8】足をサポートするための装置のたわみ要素の様々な図を示す。
【
図9】足をサポートするための装置の第2の層の様々な図を示す。
【
図10】足をサポートするための装置の複数の第2のたわみ要素を示す。
【
図11】複数の第2のたわみ要素によって足をサポートするための装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、概略的に描写された足300の例を使用して、ウィンドラス機構を例示するものである。図の左側の部分Aにおいて、足300は横断面で示されており、これにより、特に、破線によって示されるアーチ601に沿って上方に湾曲している足の骨310が確認できる。足趾311の背屈、すなわち、
図1Bの矢印605によって示されているような、足趾311の上方への過伸展時に、足底面305にある足趾屈筋(図示せず)の腱301、および足底筋膜に張力がかかる。従って、
図1Aおよび1Bに示すように、アーチ601の対応する変化によって、および矢印603によって中足部領域310が挙上する。アーチ610の高さが増大する。弓に張力がかかった弦と同様に、これによりひずみのエネルギーが蓄積され、弛緩時には加速のために利用することができる。例えば歩行時、特に足趾離地時にひずみのエネルギーが解放され、足300を上げるための加速動作に利用される。
【0047】
図2は、
図1による足300と、足300をサポートするための装置100とを示すものであり、この装置100は、足300をサポートするために、靴(図示せず)の内部で使用されている。装置100は、(足300に対応して)踵領域610(第1の端部領域610)と、中足部領域620(中央領域620)と、前足部領域630(第2の端部領域360)とに分割することができ、これらは装置100の縦軸Lに沿って延びており、図では線607および609によって分割されている。
【0048】
図示されるように、装置100は、まず第一に、靴(図示せず)の中に配置される時に足300の方向を向いており、従って、靴が地面に置かれた場合に上層となる第1の層101を含む。この第1の層101は、中足部領域620において足の方向にアーチを形成し、踵領域610の領域111および前足部領域630の領域113で、第2の層103に結合されている。図示されるように、靴(図示せず)の中に配置する場合、第2の層103は、足300および第1の層101のアーチから離れる方に向いている装置100の側面に配置される。従って、靴(図示せず)が地面に置かれた場合、第2の層103は、第1の層101の下に配置される。第2の層103に結合されるたわみ要素105は、ここでは第1の層101と第2の層103との間に配置される。たわみ要素は、例えば、第2の層103と一体形成することができる。第2の層103とたわみ要素との間を結合することにより、装置100内部でのたわみ要素105の望ましくない移動、例えば縦軸Lに沿った移動が防止されるが、このような移動は、層101、103の機能を変化させることになる。第2の層103が、前頭面において三次元の輪郭を有しないため、ここで横軸周りの曲げが促進される。しかしながら、たわみ要素を第1の層101に少なくとも部分的に一体化することも可能である。
【0049】
図2で分かるように、第2の層103は、踵領域610および前足部領域630における第1の層101への結合領域111と113との間にあるたわみ要素105により、張力がかかる。弓および弦のモデルでは、従って、第2の層103は弦に対応し、一方で第1の層101は弓に対応する。たわみ要素105は、層101、103の間の所定の間隔をあらかじめ画定するものであり、この間隔は、たわみ要素105の寸法設計と位置決めとによって調整することができる。図にも示されているように、第2の層103は、中足部領域620において第1の層101に接している。従って、これらの層101、103は、互いに相対して移動可能となる。
【0050】
特に、
図2Bから分かるように、第2の層103は、示されている装置100の背屈時に前足部領域630に作用する張力または力が、たわみ要素105を介して踵領域610の第1の層101に伝達され、それにより、第1の層101によって形成されるアーチの高さが増大するように設計されている。これは、足趾311が上方に(矢印605の方向に)延びる間に、
図1Bにおける足の骨310のアーチ601が、記載されたように自然に拡張することに対応するものであり、これにより、足300を上げることと固定すること、従って足のウィンドラス機構がサポートされる。ここで、たわみ要素105はアーチの拡張を強化する効果を特に有し、このアーチの拡張は、層101、103の間にあるたわみ要素105を適切に寸法設計し、位置決めすることによって、最適に調整することができる。
【0051】
換言すれば、本発明による装置は、足をサポートする中敷の形態で、または靴の中で強固に一体化された装置として、上記に記載された足の柔軟性と安定性との間の相互作用、いわゆるウィンドラス効果を技術的に実現することが可能であり、これにより足を能動的にサポートすることができる。本発明は、特に、第2の層103に張力をかけるために設けられるたわみ要素について提案するものであり、それによって第1の層101と第2の層103との間の間隔を調整することができ、その結果、装置の機能を個々の必要条件に適応させることができる。
【0052】
装置は、歩行周期の間に足に適応させるだけのものではなく、足を能動的にサポートする。本発明による装置は、従って、ウィンドラス効果を現実的に実現する際に、例えば、歩いたり、または走る時に、能動的に足を上げ、足を導くことができる。前足部領域から中足部領域までの移行領域に少なくとも1つのたわみ要素105を設けることにより、中足部領域内のアーチの拡張を能動的にサポートすることが可能となり、これにより前足部領域および中足部領域のてこの機能をサポートすることができるが、このてこの機能は歩行時の推進力に必要なものである。たわみ要素を有する弓およびの弦の設計によって、装置は更に足趾屈筋腱のばね作用をサポートする。このばね作用は、踵が持ち上げられた時、および足趾の過伸展時に、対応する筋肉にあらかじめ張力を生じさせることよって発生する。更に、この装置の設計はまた、足の緩衝機能もサポートする。
【0053】
従って、装置100は、足の病理学的変化を補うために使用することができる。特に、扁平足、外反扁平足(pes valgo planus)、開張足および凹足などの足の病態を、この装置によって能動的にサポートして、矯正することができる。しかしながら、代替的または追加的に、例えば、装置をスポーツシューズの中に(恒久的または着脱自在に)配置する場合では、この装置を使用して、スポーツ活動中に足をサポートすることもできる。
【0054】
図3は、組み立てられた状態における装置100の概略的側面図を示し、
図4は、
図3に由来する個々の構成要素を示している。装置100は、好ましくは中敷であってもよく、靴の中に着脱自在に配置することができる。あるいは、装置100は、靴の中に恒久的に配置することも可能であり、この場合、第2の層103が靴の靴底に強固に結合されているか、または靴の靴底の一部の層であるかのいずれかである。
【0055】
図3に図示されるように、第1の層101は、踵領域610の領域11
1および前足部領域630の領域113で、第2の層103に結合されている。ここで、第1の層
101は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリラクチド(PLA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、および/またはケブラーなどの繊維複合体、炭素もしくはガラス繊維複合体、または1もしくは複数の各種金属物質、および/またはポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、PLE、ナイロン、各種エラストマーなどの、他の更に付加的に処理可能な材料もしくは膨張性材料の二次元構造体であり、上方に凸状に伸張して三次元形状を形成するものである。換言すれば、第1の層101は、第1の層101の領域に、装置100の縦軸Lに沿った最も高いアーチを形成し(図では、最大のアーチの高さである領域121)、このアーチは、第1の層101の領域123に向かって小さくなる。換言すれば、この場合、第1の層は三次元的に伸張した、人間の足の足裏に適応する凸面を好ましくは形成する。
図3では層101、103の間に配置され、前足部領域630と中足部領域620との間の移行領域に配置されるたわみ要素105が、
図4では別々に図示されている。図示される場合では、たわみ要素105は、境界線609から左側にわずかに寄って配置されており、これにより、たわみ要素105が同一の寸法設計では、たわみ要素105が線609から右側に寄っている場合と比較すると、第1の層101と第2の層103との間の前足部領域の間隔が小さくなる。従って、前足部領域における構造的な高さが最適化される。
【0056】
図5は、第2の層103が第1の層101の上方に配置されている装置100の平面図を示す(装置100が靴の中に配置される場合の下から見た図であり、第2の層103が第1の層101を通して見えている)。
図6は、平面図(部分B)に加えて、更に、側面図(部分A)と、踵領域610から前足部領域630までの装置100の縦軸に沿った図(部分C)とを示すものである。図から分かるように、第1の層101および第2の層103の両方は二次元の設計であり、(図の平面における)第2の層103の最も小さい幅が十分に広いため、第2の層103が個々の領域で発生する応力を受け入れることができ、材料の過負荷が防止され、最適化された重量対強度比が確保される。この層の幅は、装置100が靴の中に配置され、靴が地面に置かれている場合、ここでは地面に平行な平面に沿った幅である。この第2の層103の幅のために、第2の層は、上記に記載された弓および弦のモデルにおける弦の機能を果たすのに十分に強力なものとなる。
【0057】
図6Cは、最大のアーチの高さの領域121と、最も低いアーチの高さの領域123とを示している。この図から分かるように、このように第1の層101の凸面が人間の足の足裏の三次元形状に適応し、従ってその形状に個別に変化させることも可能である。
【0058】
第2の層103は、第1の層101に対して後方に向かって狭まっているのが好ましく、発生する応力を最適な様式で受け入れることができるように成形されているということが、特に
図5および6から分かる。
図5に図示されるように、特に前足部領域にある第2の層103は、第1の層101と第2の層103との間の好適な形状嵌合を確実に生じさせることが可能な、好適な幅を有する。
【0059】
図5および6はまた、第1の層101が、好ましくは、軸モーメントおよび極抵抗モーメント(axial and polar resistance moment)を低減させる役割を果たす、細長い楕円形のスリット/穿孔を有することを示している。このために、図示されるように、第1の層101は好ましくは複数の窪みまたは開口部1001を含み、それらは細長い楕円形状であることが好ましい。図示される場合では、これらは複数の孔1001として、すなわち、第1の層101を完全に貫通する開口部として形成されている。すでに述べたように、代替的または追加的に、盲穴の様式で第1の層の途中まで穿設されて到達するだけの窪みを設けることも可能である。第1の層101に複数の窪み1001または開口部1001を適応させることによって、第1の層101の異なる領域で、曲げ柔軟性およびねじれ柔軟性を適応させることができる。同時に、複数の窪み1001または開口部1001により、皮膚の分泌および空気循環を増加させることができる。
【0060】
図5はまた、領域1002を示しており、この領域1002には、たわみ要素105の高さで第1の層101を厚肉化する材料が、機械的なカウンターベアリングとして、および層101とたわみ要素105とを安定させるために設けられている。また、領域1003では、第1の層101が平面的にへこんでいることと、第1の層101の材料の厚さが薄くなっていることが示されている。このようにして、これらの領域では、目標とされる様式で柔軟性の向上が達成される。
【0061】
図7は、異なるサイズの2つのたわみ要素105を備えた第2の層103を示している。2つ以上のたわみ要素105を配置することによって、たわみ要素105を、上向きに凸状になった第1の層101の形状、従って足の足裏に対して適切に適応させることができる。たわみ要素105のサイズが異なることにより、それに応じて、第1の層と第2の層との間に異なる間隔を設定することができる。このように、装置の幅に沿って適切に寸法設計されたたわみ要素を分配することによって、所望の効果を人間の足に適切に適応させることができる。
【0062】
例えば、たわみ要素105は、
図8に示されるように成形することができる。
図8は、断面図(部分A)、第1の側面図(部分B)、および、第1の側面図と比較して、たわみ要素105の縦軸106の周りを90°回転させた第2の側面図(部分C)におけるたわみ要素を示す。換言すれば、好ましい実施形態におけるたわみ要素は、人間の足の足裏に装置を適応させるようにサポートする、実質的に楕円形の断面を少なくとも部分的に有し得る。たわみ要素105の形状は、第1の層101および第2の層103の弓および弦のメカニズムをサポートするように適応させることができる。このために、たわみ要素105は、少なくとも部分的に楕円形の断面を有する、細長い要素として設計することができることが好ましい。
図7に図示されるように、たわみ要素105の縦軸106は、実質的に幅方向611の方向を向いていることが好ましい。別の言い方をすれば、このたわみ要素105の縦軸106は、装置100の縦軸L(
図3を参照のこと)と60°~120°の範囲の角度を形成する。好ましい実施形態では、たわみ要素は、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリラクチド(PLA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、および/またはケブラーなどの繊維複合体、炭素もしくはガラス繊維複合体、各種金属物質、または他の更に付加的に処理可能な材料から製造される。特に、これらの材料から適切に選択することによって、最適な重量対強度比を達成することが可能となり、これにより、たわみ要素が耐張力性、寸法安定性、耐圧縮性、曲げ弾性、およびねじり弾性を有することができる。
【0063】
図9は、たわみ要素105のない第2の層103(部分A、左上の側面図および右上の平面図)と、更なる実施形態における、たわみ要素105を備えた第2の層103(部分C、左上の側面図および右上の平面図)とを示している。
図9の部分BおよびDは、前足部領域630の方向に、踵領域610から装置100の縦軸に沿って後方から見た、上記に図示されたそれぞれの部分AおよびCの対応する第2の層103を示している。図示されるように、この好ましい実施形態の第2の層103は、軸モーメントおよび極抵抗モーメントを低減する役割を果たす、細長い楕円形の切抜き部107を含むことが好ましい。好ましい実施形態では、第2の層103は、このように、実質的に第2の層103の縦方向に沿った向きに配向された、少なくとも1つの細長い楕円形の切抜き部を有し得る。そのような切抜き部を複数設けることも可能である。図に示されているように、図示された実施例における細長い楕円形の切抜き部107は、第2の層103の前足部領域630からたわみ要素105を経て、中足部領域620に延びている。
【0064】
好ましい実施形態では、装置100は、記載された少なくとも1つのたわみ要素105に加えて、または代替的に、複数のたわみ本体またはサポート要素(第2のたわみ要素115)を有し得る。どちらの場合も、これらのたわみ本体、サポート要素、第2のたわみ要素115は、たわみ本体、サポート要素、第2のたわみ要素115が互いに強固に結合された集合体を形成することができる。
図10は、複数のそのような第2のたわみ要素115の集合体を、側面図(A)および平面図(B)において示すものである。明確にするために、図では、第2のたわみ要素115のうちの2つのみが示されている。図示されるように、これらの第2のたわみ要素は、実質的に筒状であり、実質的に円形の断面を有する。図示されるように、少なくとも装置の中足部領域にある第2のたわみ要素115は、装置100の縦軸に相当する方向で互いに接しているか、および/または互いに強固に結合されている。この第2のサポート要素115の同一平面の配置により、かつ、例えば足の形状に応じた、例えばそれぞれの第2のサポート要素の個々の断面の好適な幾何学的構造により、横軸の周りの装置の変形時に(特に前足部領域における装置の背屈時に)、中足部領域の第1の層101が有利に伸張/挙上する。第1の層のこの挙上、すなわち、対応するアーチの高さの拡張は、第2のたわみ要素によって能動的にサポートされる。
【0065】
第2のたわみ要素115は、複数の第2のたわみ要素115の集合体を形成しており、互いに強固に結合されていることが好ましい。このために、異なる実施形態では、第2のたわみ要素115を粘着的に結合することができる(例えば、接着接合、架橋、溶接、付加的加工、加硫、またはろう接)。このために、異なる実施形態では、第2のたわみ要素115を、形状嵌合係合、例えば、実矧ぎ結合、鋸歯結合、または蟻継ぎ結合によって結合することもできる。このために、異なる実施形態では、第2のたわみ要素115を、例えば、面ファスナによる圧力バメ係合によって結合することができる。このために、異なる実施形態では、第2のたわみ要素115を、形状嵌合係合および圧力バメ係合、例えば、リベット締めまたはネジ止めによって結合することができる。
【0066】
好ましい実施形態では、第2のたわみ要素115は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリラクチド(PLA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、および/またはケブラーなどの繊維複合体、炭素もしくはガラス繊維複合体、または1もしくは複数の各種金属物質、および/またはポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、PLE、ナイロンもしくは各種エラストマーなどの、他の更に付加的に処理可能な材料もしくは膨張性材料から作製される。
【0067】
第2のたわみ要素115の集合体は、従って、すべての物体または各々の個々の物体に直接影響を与えることができるように幾何学的に配置された、三次元物体の集合体である。例示された第2のたわみ要素115の集合体は、例えば、足によって生じる面荷重が加わる時に、中足部領域の第1の層101の安定性をサポートする。
【0068】
好ましい実施形態では、例示されているように、第2のたわみ要素115は筒状の形状である。筒の幅が小さくなる場合、対応する第2のサポート要素115が弾性的に変形すると筒の高さが増加するので、これらの第2のたわみ要素115の縦方向に関しては、筒状の形状が好適な断面であるということが判明している。従って、この形状によって第1の層101のアーチの高さの記載された拡張が有利な様式でサポートされる。代替的な実施形態では、第2のたわみ要素115は、中空球状物または球形シェルとして構成することもできる。第2のたわみ要素115は、弾力的に変形可能であることが好ましく、第2のたわみ要素115のそれぞれの直径は、第1の層101のアーチの高さを適切に調整することができるように選択される。第1のたわみ要素105の効果をサポートするために、少なくとも1つの第1のたわみ要素105に、複数の第2のたわみ要素を付加的に設けることができる。特に、複数の第2のたわみ要素115により、特に歩行周期の間の第1の層101の下降および上昇の制御が可能になる。
【0069】
上記に記載した第1のたわみ要素105に加えて、装置100が複数の第2のたわみ要素115を有するような設計が
図11に示されている。ここで、
図11Aは側面図、
図11Bは平面図を示しており、
図11Cは、装置の踵領域610から前足部領域630に向かう、後方からの図を示している。図示されるように、少なくとも中足部領域(中央領域620)にある第2のたわみ要素115が、装置100の縦軸(
図3を参照のこと)に沿って、互いに隣接して、かつ接触して配置されている。
図11から分かるように、個々の第2のたわみ要素115は、第1の層101と第2の層103との間で装置100の幅方向に配置されており、それぞれの実質的に筒状のたわみ要素115の厚さは、例えば、第1の層101の形状に適切に適応させることができる。図示されるように、複数の第2のたわみ要素115を使用して、第1のたわみ要素105の機能をサポートすることができる。あるいは、好ましい実施形態では、複数の第2のたわみ要素115は、第1のたわみ要素105に置き換えることが可能である。