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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】地盤改良工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019004045
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020111975
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立和田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】和田 忠輔
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-033922(JP,A)
【文献】特開平09-049225(JP,A)
【文献】特開平02-027015(JP,A)
【文献】特開2016-108824(JP,A)
【文献】特開平06-158637(JP,A)
【文献】特許第3096244(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転している噴射用ロッドに設けられたノズルから流体物を噴射して原位置土を切削し、撹拌して、回転体状の改良体を造成する地盤改良工法において、
流体物の供給系統にはポンプが介装されており、
前記ポンプの脈動に起因して改良体の外周縁部には凸部が形成され、先行する凸部を形成する流体物噴流におけるポンプの脈動のサイクルと後行する凸部を形成する流体物噴流におけるポンプの脈動のサイクルを等しくして、先行して形成される凸部と後行して形成される凸部を重畳し、前記流体物噴流の到達距離を増大することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
前記噴射用ロッドに1対のノズルが設けられ、一方のノズルが他方のノズルの噴射用ロッドの中心軸に対して対称な位置から偏奇した位置に配置され、その偏奇量は先行する凸部と後行する凸部が重畳する様に設定されている請求項1の地盤改良工法。
【請求項3】
前記噴射用ロッドの回転速度が変動し、回転速度が変動した後の各ノズルの位置は回転速度が変動しない場合に各ノズルが存在した位置に対して所定の中心角だけ変位し、先行する凸部と後行する凸部が重畳する様に、回転速度が設定されている請求項1、2の何れかの地盤改良工法。
【請求項4】
前記噴射用ロッドには複数のノズルが設けられ、噴射用ロッドに流体物を供給する供給系統が複数設けられており、複数の供給系統の各々は複数のノズルの何れかに接続されており、複数の供給系統に介装されたポンプの脈動のサイクルが等しい請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項5】
前記凸部の間隔は、改良体造成の施工仕様と、ポンプの特性値に基づいて決定される請求項1~4の何れか1項に記載の地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転しながら引き上げられる噴射装置(例えばロッド先端に設けられた噴射装置:モニタ)から流体物(例えば、セメントミルク等の固化材、高圧エア)を噴射して原位置土を切削し、撹拌して、回転体状の改良体を造成する地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9で示す様に、地盤改良工法により地中に造成された改良体10の外周縁部(外周面)には、凹凸(いわゆる「角」)が形成されてしまう。図示の便宜のため、添付図面において、前記凹凸は実際よりも大きく表現されている。
図9における領域αを拡大して、図10で示す。図10において、改良体10(図9)の外周縁部に係る凸部は符号A1で示されており、凹部は符号A2で示されている。図11では、図10の領域αを、改良体10(図9)の円周方向(図9における円周方向)に展開して示されている。
図10図11では、同一幅寸法の凸部A1と凹部A2が円周方向(図11の左右方向)に交互に連続して配置されている。そして図11において、凸部A1と凹部A2の円周方向の幅寸法(図11の左右方向寸法:凸部A1と凹部A2の幅寸法)は同一である。しかし、隣接する凸部A1と凹部A2において、その幅寸法が常に等しい訳ではない。
なお図11において、凸部A1と凹部A2の幅寸法が符号1PTで表示されている。
【0003】
ここで、例えば液状化対策として改良体(地中固結体)を造成する場合には、凸部A1と凹部A2を突出して、流体物(例えば、セメントミルク等の固化材、高圧エア)の噴流の到達距離を大きくすれば、液状化対策のコストを低減出来る。隣接する改良体の間隔を広くして、施工するべき改良体の本数を減少することが出来るからである。
しかし、従来技術では、図10図11で示す凸部A1と凹部A2の突出量を大きくして、流体物の噴流の到達距離を大きくする技術は提案されていない。
【0004】
その他の従来技術として、特定の周波数を持つ脈動圧力を重畳的に付加する岩盤グラウトの施工方法(特許文献1)と、長波の注入圧力の周期的変動と短波の注入圧力の周期的変動を重畳した砂質地盤のグラウト方法(特許文献2)が提案されている。しかし、これ等の従来技術(特許文献1、特許文献2)は何れも注入工法に係る技術であり、回転している噴射用ロッドに設けられたノズルから流体物を噴射して原位置土を切削し、撹拌して、回転体状の改良体を造成する地盤改良工法には該当せず、液状化防止対策に関する上述した問題を解決することは出来ない。
また、ポンプの脈動を防止することが出来る液体加圧装置(特許文献3)も提案されているが、回転している噴射用ロッドに設けられたノズルから流体物を噴射して原位置土を切削し、撹拌して、回転体状の改良体を造成する地盤改良工法に適用する旨は開示されておらず、上述した問題を解決することを意図するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3096244号公報
【文献】特許第5089430号公報
【文献】特許第3508378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、回転している噴射装置から流体物を噴射して原位置土を切削し、撹拌して、回転体状の改良体を造成する地盤改良工法において、流体物噴流の到達距離を増大することが出来る地盤改良工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は種々の研究および実験の結果、改良体の外周縁部が円滑な表面とはならずに、凸部A1と凹部A2(図10図11)が形成されてしまうのは、地上側から噴射用ロッド(例えば先端のノズル)に流体物(例えば、セメントミルク等の固化材、高圧エア)を供給する供給系統におけるポンプの脈動に起因することを見出した。
換言すれば、ポンプの脈動により、ポンプの吐出流量、吐出圧が低下すると改良体外周縁部に凹部が形成され、ポンプの吐出流量、吐出圧が増加すると改良体外周縁部に凸部が形成されることを、発明者は見出した。
そして発明者は、その様なポンプの脈動により形成される改良体外周縁部の凹凸について、凸部同士を重畳させれば、流体物噴流の到達距離が増大されることを見出した。
【0008】
係る知見から創作された本発明の地盤改良工法は、
回転している噴射用ロッド(1)に設けられたノズル(N)から流体物(例えば、セメントミルク等の固化材、高圧エア)を噴射して原位置土を切削し、撹拌して、回転体状の改良体を造成する地盤改良工法において、
流体物の供給系統(2)にはポンプ(P)が介装されており、
前記ポンプ(P)の脈動に起因して改良体(10)の外周縁部には凸部(A1)が形成され、先行する凸部(A1)を形成する流体物噴流におけるポンプの脈動のサイクルと後行する凸部(A1)を形成する流体物噴流におけるポンプの脈動のサイクルを等しくして、先行して形成される凸部(A1)と後行して形成される凸部(A1)を重畳し、前記流体物噴流の到達距離を増大することを特徴としている。
ここで、改良体(10)の円周方向において隣接する凸部(A1)同士の間隔或いは隣接する凹部(A2)同士の間隔、幅寸法或いは位置関係を、本明細書では「位相」と表現する場合がある。
また、「先行して形成される凸部(A1)と後行して形成される凸部(A1)を重畳」するという文言は、本明細書では、「先行して形成される凹部(A2)と後行して形成される凹部(A2)を重畳」する旨を包含している。
なお、噴射用ロッド(1)に設けられたノズル(N)の個数については特に限定要件は存在しない。例えば、噴射用ロッド(1)に単一のノズル(N)を設けて、いわゆる「片側噴射」を行う様に構成することも可能である。
【0009】
本発明において、図4で示す様に、前記噴射用ロッド(1)に1対のノズル(N1、N2)が設けられ、一方のノズル(N2)が他方のノズル(N1)の噴射用ロッド(1)の中心軸に対して対称な位置(Nn1)から(所定量δ1或いは中心角δ1だけ)偏奇した位置に配置され、その偏奇量は先行する凸部(A1)と後行する凸部(A1)が重畳する様に設定されているのが好ましい。
【0010】
また本発明において、図5で示す様に、前記噴射用ロッド(1)の回転速度を変動し、回転速度が変動した後の各ノズル(N3、N4)の位置は回転速度が変動しない場合に各ノズル(N3、N4)が存在した位置(Nn3、Nn4)に対して所定の中心角(δ2)だけ変位し、先行する凸部(A1)と後行する凸部(A1)が重畳する様に、回転速度が設定されているのが好ましい。
【0011】
さらに本発明において、図6で示す様に、前記噴射用ロッド(1)には複数のノズル(例えば、1対のノズルN5、N6:3個以上のノズルでも良い)が設けられ、噴射用ロッド(1)に流体物(例えば、セメントミルク等の固化材、高圧エア)を供給する供給系統(2)が複数設けられており、複数の供給系統(例えば2系統:2-1、2-2)の各々は複数のノズル(例えば2個のノズル:N5、N6)の何れかに接続されており、複数の供給系統(例えば2系統:2-1、2-2)に介装されたポンプの脈動のサイクルが等しいことが好ましい。
【0012】
これに加えて、本発明において、前記凸部(A1)の間隔は、改良体造成の施工仕様と、ポンプ(P:固化材供給系統2に介装されるポンプ:例えばP1、P2)の特性値に基づいて決定されるのが好ましい。
ここで、改良体造成の施工仕様としては、噴射用ロッド(1)の引上げ速度、繰り返し回数、引上げピッチが選択されるのが好ましい。またポンプ特性値としては、ポンプ(P)の回転数が選択されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述の構成を具備する本発明によれば、図1で示す様に先行して形成される凸部(A1)に後行して形成される凸部(A1)を重畳させることにより、凸部(A1)同士が(図2で示す様に)重なるため、凸部(A1)先端は半径方向外方となり、地盤を切削して到達する位置が半径方向外方に延長される。その結果、噴流を構成する流体物(例えば固化材)の到達距離が増加するので、隣接する改良体10(改良体)との距離が離れていても、凸部(A1)先端(噴射装置1から最も離隔した箇所)同士が接続されることになる。
そのため、例えば液状化対策で改良体(10)を造成する場合に、到達距離が増加した分だけ隣接する改良体(10)同士の間隔が大きくなっても、凸部(A1)先端同士が接続された状態にすることが出来る。すなわち、従来技術に比較して改良体(10)の間隔を広くしても、液状化防止の効果を同レベルに保持することが出来ると共に、改良体(10)の造成数を減少することが出来る。そのため、液状化対策の品質を保持しつつ、コストを低く抑えることが可能となる。
また、先行して形成される凸部(A1)と後行して形成される凸部(A1)を重畳することにより、先行して形成される凹部(A2)と後行して形成される凹部(A2)が重畳され、その結果、改良される領域が半径方向外方へ拡径される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施態様における原理を模式的に示す説明図である。
図2】凸部同士が重畳された状態を模式的に示す説明図である。
図3】到達距離が増大した場合のメリットを示す説明図である。
図4】本発明の第1実施形態を示す説明断面図である。
図5】本発明の第2実施形態を示す説明断面図である。
図6】本発明の第3実施形態を示す説明断面図である。
図7図6の第3実施形態のブロック図である。
図8図1図7の実施形態の変形例の説明図である。
図9】地盤改良工法により造成された改良体の断面形状を示す説明図である。
図10図9の符号αで示す領域を示す拡大断面図である。
図11図10を展開して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に、図1図2を参照して、本発明の実施形態の原理を説明する。
ここで、図示の実施形態に係る地盤改良工法では、回転しながら引き上げられる噴射装置(噴射用ロッド1先端のノズルN)から流体物(例えば、セメントミルク等の固化材、高圧エア)を噴射して原位置土を切削し、撹拌して固化材と混合して、回転体形状の改良体10(図9参照)を造成している。前記流体物は供給系統(例えば、図7の供給系統2-1或いは2-2)を介して噴射用ロッド1に供給され、前記供給系統にはポンプ(例えば図7のポンプP1或いはP2)が介装されている。
図1図2では、回転体状の改良体10を造成する際に、改良体10の外周縁部に形成される凸部A1同士(凸部A11及び凸部A12)を重畳する原理を模式的に示している。
【0016】
改良体の外周縁部を円周方向に展開した図1において、図1の上方において実線で表示されている凸部A11と凹部A21の配置(或いはその位相)と、図1の下方において点線で表示されている凸部A12と凹部A22の配置(或いはその位相)は同一である。ここで、凸部A1(A11、A12)或いは凹部A2(A21、A22)の図1における幅寸法は、符号PTにより表示されている。
図1において、符号「+(プラス)」は、図1上方の実線で示す位相と、図1下方の点線で示す位相を重ね合わせ、以て、凸部A1同士を重畳させることを意味している。
図1図2では簡略化のため、凸部A1(A11、A12)或いは凹部A2(A21、A22)の幅寸法及び間隔は、全く同一になっている。しかし、実際の施工においては、凸部A1(A11、A12)或いは凹部A2(A21、A22)の幅寸法及び間隔は同一ではなく、異なっている場合が多い。その様な場合でも、凸部A1同士を重畳させる。
【0017】
図1上方の実線で示す位相と図1下方の点線で示す位相とを重畳するための具体的な態様については、図4図8を参照して後述する。
図1上方の実線で示す位相と、図1下方の点線で示す位相の凸部A1同士を重畳した状態が、図2で模式的に示されている。
図2において実線で示す凸部A1が凸部同士を重畳する以前の状態を示し、凸部A1Aを重畳させることにより、図2において点線で示す様に、凸部A1が半径方向外方(図2では上方)に拡径する(凸部A1の掘削距離が増大する)。換言すれば、図2において実線で示す凸部A1が凸部同士を重畳しない場合の状態を示し、点線で示す凸部A1Aは凸部A1同士が重畳した状態を示している。明確には図示されていないが、凸部A1同士を重畳するに伴い、凹部A2も半径方向外方(図2では上方)に拡径する。図2において、凹部A2が拡径した領域は点線で示されている。
【0018】
図3において、実線は、相互に隣接する改良体(地中固結体)10-1、10-2において、凸部同士が重畳されておらず、凸部A11、A12の突出量が増大していない状態を示している。実線で示す状態では、改良体10-1側の凸部A11と改良体10-2側の凸部A12とは離隔している。そのため、図3の実線の状態で効果的に液状化防止対策を施す為には、2つの改良体10-1、10-2の間隔を短くしなければならない。
一方、凸部同士を重畳して凸部A11A、A12Aを形成し、図3の点線で示す様に凸部A11、A12の半径方向外方への突出量を増大すれば(流体物噴流の到達距離を増大させれば)、図3において点線で示す様に、隣接する改良体10-1、10-2同士が接続する。その結果、2つの改良体10-1、10-2の間隔を短くしなくても、効果的な液状化防止対策となる。
図3では明示されていないが、2つの改良体10-1、10-2の有効径D1は同一である。従って、図1図2で説明した様に凸部A1同士を重畳すれば(図3の点線で示す状態とせしめれば)、流体物噴流の到達距離が増大するので、隣接する改良体10-1、10-2を接続して液状化防止を効率的に行うことが出来る。
【0019】
本発明の第1実施形態の説明図である図4は、図1上方の実線で示す凸部A11と、図1下方の点線で示す凸部A12とを重畳するための具体的な手法の一例を示している。上述した様に、凸部A1(A11、A12)、凹部A2(A21、A22)が形成されるのは、供給系統におけるポンプの脈動に起因する。
図4で示す様に、噴射用ロッド1の外周における2箇所の位置(直径方向両端近傍の位置)には、固化材噴射用の一対のノズルN1、N2が設けられている。ノズルN2は、ノズルN1のロッド中心点Oに対して点対称な位置Nn1(図4において、点線で示す位置)に対して、噴射用ロッド1の回転方向(矢印CW方向)とは反対方向(反時計方向CCW方向)に、中心角δ1で示す分だけ偏奇している。
【0020】
ここで、ノズルN1とノズルN2には、例えば同一の供給系統(同一のポンプ)から固化材が供給されている。
その上で、偏奇量に相当する中心角δ1は、先行する凸部A1(例えば図1の凸部A11)を形成する固化材噴流におけるポンプの脈動サイクルと、後行する凸部A1(例えば図1の凸部A12)を形成する固化材噴流におけるポンプの脈動サイクルを考慮して、先行する凸部A1と後行する凸部A1が重畳する様に設定されている。
そのため、ノズルN2を中心角δ1だけ偏奇させることによって、ノズルN2から噴射される固化材噴流で切削、撹拌、混合される領域に造成される改良体の外周縁部の凸部A1(例えば図1の凸部A12)は、ノズルN1から噴射される固化材噴流で切削、撹拌、混合される領域に造成される改良体の外周縁部の凸部A1(例えば図1の凸部A11)に対して重畳する。
【0021】
従って、噴射用ロッド1から固化材噴流を噴射しつつ、噴射用ロッド1を回転して引き上げる際に、ノズルN2から噴射される固化材噴流で切削、撹拌、混合される領域の凸部A1の位置(或いは位相)は、(例えば)先行するノズルN1から噴射される固化材噴流で切削、撹拌、混合される領域の凸部A1の位置(位相)と重畳する。
そして、先行して形成される凸部A1(例えば図1の凸部A11)と後行の凸部A1(例えば図1の凸部A12)が重畳するため、凸部A1において、固化材噴流により形成される改良体10における到達距離が半径方向外方に増大する。
【0022】
図示の実施形態では、噴射用ロッド1の回転方向が時計方向(矢印CW方向)であるため、図4の右側半分では、ノズルN1から固化材噴流を噴射した領域における凸部A1が先行する凸部となり、ノズルN2から固化材噴流を噴射した領域における凸部A1が後行の凸部となる。そして、ノズルN1からの噴流で形成される先行する凸部A1に、ノズルN2からの噴流で形成される後行の凸部A1が重畳する。
一方、図4の左側半分では、ノズルN2からの固化材噴流で形成された凸部A1が先行する凸部となり、ノズルN1から噴射した固化材噴流で形成された凸部A1が後行する凸部となる。そして、ノズルN2からの固化材噴流で形成された先行する凸部A1と、ノズルN1から噴射した固化材噴流で形成された後行の凸部A1が重畳する。
そのため、図4における右側半分の領域においても、左側半分の領域においても、先行する凸部と後行の凸部とは重畳し、改良体10における到達距離が増大する。
【0023】
図4の第1実施形態によれば、先行して形成される凸部A1(例えば図1の凸部A11)に後行して形成される凸部A1(例えば図1の凸部A12)を重畳させることが出来るので、ノズルN2を中心角δ1だけ偏奇させることにより、凸部A1同士が、図2で示す様に重なり、固化材噴流により形成される改良体10における到達距離が半径方向外方に増大する。その結果、隣接する改良体10との距離が離れていても、凸部A1先端(噴射装置から最も離隔した箇所)同士が接続されることになる。
そのため、例えば液状化対策で改良体10を造成する場合に、凸部A1の先端同士が接続された状態にして、液状化防止の効果を発揮することが出来る。そして、改良体10同士の間隔が大きくして、改良体10の造成数を減少させ、コストを低く抑えることが出来る。
【0024】
図5は第2実施形態を示している。図5において、噴射用ロッド1には、その直径方向両端の2箇所であって、噴射用ロッド1の中心Oに対して相互に点対称な位置に、一対の固化材噴射用のノズルN3、N4が設けられている。
図5の第2実施形態では、噴射用ロッド1が半回転(矢印CW方向)する度毎に当該回転を一時的に停止して、再度(同方向に)回転する。噴射用ロッド1の回転を停止する時間は、回転を停止しない場合にノズルN3、N4が存在したであろう位置Nn3、Nn4(図5では点線で示す)に対して、中心角δ2だけ位相が遅れるのに相当する時間である。そして中心角δ2は、先行する凸部A1(例えば図1の凸部A11)と後行する凸部A1(例えば図1の凸部A12)が重畳する角度であり、回転速度の設定(制御)により決定される。
【0025】
噴射用ロッド1が半回転する度毎に当該回転を一時的に停止することにより、図5で示す様に中心角δ2に相当する遅れが発生し、停止前にノズルN3、N4から固化材噴流が噴射された領域の凸部の位置(位相)と、停止後、回転を再開した後にノズルN3、N4から固化材噴流が噴射される領域の凸部の位置(位相)は、停止していた時間の分だけ偏奇する(位相が遅れる)。係る偏奇(位相の遅れ)は中心角δ2に相当し、それにより、回転を停止する以前に形成された凸部A1(例えば図1の凸部A11)と、回転を停止した以後に形成される凸部A1(例えば図1の凸部A12)は重畳される。
そのため、図5の第2実施形態においても、(停止前に)形成される先行する凸部と停止後に形成された後行の凸部の位置が重畳し(位相が同期し)、改良体10における固化材噴流の到達距離が増大する。
第2実施形態におけるその他の構成、作用効果は、図4の第1実施形態と同様である。
【0026】
図6図7は、本発明の第3実施形態を示している。
図6においても、噴射用ロッド1はロッド1の中心Oに対して点対称に配置された2つのノズルN5、N6を備えている。
第3実施形態では2系統の固化材供給系統2を有しており、第1のノズルN5には第1の固化材供給系統2-1が連通しており、第2のノズルN6には第2の固化材供給系統2-2が連通している。
【0027】
図7で示す様に、第1の固化材供給系統2-1は、第1の固化材供給源3-1、第1のポンプP1を備えており、噴射用ロッド1を回転駆動する回転掘削機構4を介して、噴射用ロッド1に接続されている。明確には図示されないが、第1の固化材供給系統2-1は、ロッド1に配置された第1のノズルN5に接続されている。
一方、第2の固化材供給系統2-2は、第2の固化材供給源3-2、第2のポンプP2を備えており、噴射用ロッド1を駆動する回転掘削機構4を介して、噴射用ロッド1に接続されている。明確には図示されないが、第2の固化材供給系統2-2は、ロッド1に配置された第2のノズルN6に接続されている。
【0028】
第1の固化材供給系統2-1を経由して第1のノズルN5から噴射される固化材噴流により切削、撹拌、混合される領域の凸部の位置(位相)は、第1の固化材供給系統2-1に介装された第1のポンプP1の脈動サイクルに基いて決定される。また、第2の固化材供給系統2-2を経由して第2のノズルN6から噴射される固化材噴流により切削、撹拌、混合される領域の凸部の位置(位相)は、第2の固化材供給系統2-2に介装された第2のポンプP2の脈動サイクルに基いて決定される。
そして、第1のポンプP1の脈動サイクルと第2のポンプP2の脈動サイクルとを考慮して、第1のノズルN5から噴射される固化材噴流により形成される凸部と、第2のノズルN6から噴射される固化材噴流により形成される凸部が重畳する様に設定されている。
図6図7の第3実施形態においても、第1のノズルN5、第2のノズルN6から噴射される噴流で形成される凸部の位置が重畳する(位相が同期する)ため、固化材噴流の到達距離が半径方向外方に増大する。
第3実施形態におけるその他の構成、作用効果は、図4図5の実施形態と同様である。
【0029】
図4図7の実施形態では、改良体外周面の凹部と凸部の幅寸法(改良体外周面の周方向寸法)が同一に示されている。しかし、実際の施工現場では、凹部と凸部の幅寸法が同一ではない場合が多い。例えば図8で示す様に、凸部A1の幅寸法B(図8の上下方向寸法)に対して、凹部A2Aの幅寸法(図8の上下方向寸法)が大きい場合が存在する。或いは、図8と逆の場合も存在する。
この様な場合であっても、例えば図4図7の各実施形態で説明した態様で、先行する凸部に後行の凸部を重畳すれば良い。
なお、改良体外周面の凹部と凸部の幅寸法(改良体外周面の周方向寸法)の比率が図8とは異なっていても、図4図7の実施形態の何れかを適用して、先行する凸部に後行の凸部を重畳することが出来る。
【0030】
図4図8で示す各実施形態において、凸部A1の間隔、幅寸法等の制御量(制御パラメータ)は、改良体造成の施工仕様と、ポンプP(固化材供給系統2に介装されるポンプ:例えばP1、P2)の特性値に基づいて決定される。
或いは、改良体造成の施工仕様と、ポンプPの特性値に加えて、凸部A1と凹部A2の幅(改良体周方向寸法)の比率に基づいて決定される。
ここで、改良体造成の施工仕様としては、噴射用ロッド1の引上げ速度、繰り返し回数、引上げピッチがある。またポンプ特性値としては、ポンプPの回転数がある。
【0031】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図4図6では噴射用ロッドには一対のノズルが設けられているが、3つ以上のノズルを設けることも可能である。さらに図5においては、噴射用ロッドに単一のノズルを設けて、いわゆる「片側噴射」を行う様に構成することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・噴射用ロッド
2、2-1、2-2・・・固化材供給系統(流体物供給系統)
10・・・改良体
A1・・・凸部
A2・・・凹部
N、N1、N2、N3、N4、N5、N6・・・ノズル
P、P1、P2・・・ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11